JP2018093778A - 薬剤揮散装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】風向きにかかわらず、高い揮散量が得られる薬剤揮散装置を提供する。【解決手段】常温揮散性薬剤を保持した担体2と、担体2を内部に収容し通風開口部4を有する容器3と、容器3を吊り下げる紐5を備えた薬剤揮散装置1であり、容器3は、正面と背面を有する略板状であり、容器3の正面または背面に対する風の入射角が90°であるとき、左右のモーメントが等しくなり、風の入射角が90°以外のときは、左右のモーメントが等しくならない形状を有する(但し、左右とは、容器3の正面側に立って容器3を平面視したときの左右をいう)。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、飛翔害虫を防除するための薬剤を常温下で揮散させる薬剤揮散装置に関する。
近年、蚊等の飛翔害虫の防除のために常温揮散性の薬剤を担体に保持させ、屋内や屋外に吊り下げることにより、薬剤を空間に継続して揮散させ、虫よけ効果を有する揮散装置が知られている。これらは、トランスフルトリン、メトフルトリンといった薬剤を使用し、飛翔害虫の家屋内への侵入などを防止するものである。これらの製剤は常温揮散性薬剤を使用したものであるものの、自然に薬剤揮散させるため、風速、気温、風向きなどのばらつきにより揮散量が変動し、効果にばらつきが生じやすい。
そこで、特許文献1には、薬剤保持体を容器内に回動可能に収納し、空気の力で薬剤保持体を回転させるようにした薬剤放散器が提案されている。しかしながら、薬剤保持体を薬剤装置内に収納する場合には、回動する角度が容器で制限を受けるおそれがあり、さらに回動させるために装置自体が大型化するおそれがある。また、風の吹く方向に対して常に薬剤保持体が正面を向いているわけではなく、風が常に薬剤保持体に有効に当たるとは限らない。そのため、常に高い揮散量が得られないという問題がある。
特開2014−135910号公報
本発明は、風向きにかかわらず、高い揮散量が得られる薬剤揮散装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の薬剤揮散装置は、以下の通りである。
(1)常温揮散性薬剤を保持した担体と、この担体を内部に収容し通風開口部を有する容器と、この容器を吊り下げる吊り下げ具とを備え、前記容器は、正面と背面を有する略板状であり、容器の正面または背面に対する風の入射角が90°であるとき、左右のモーメントが等しくなり、前記風の入射角が90°以外のときは、左右のモーメントが等しくならない形状を有する(但し、左右とは、容器の正面側に立って容器を平面視したときの左右をいう)、ことを特徴とする薬剤揮散装置。
(2)前記容器は、幅方向において両側部よりも厚さが大きい部位を有すると共に、正面および背面は共に左右対称形であり、かつ正面と背面の形状が合同でない(1)に記載の薬剤揮散装置。
(3)前記容器は、横幅をw、最大厚みをtとしたときに、1≦w/t≦12の関係を有する(2)に記載の薬剤揮散装置。
(4)前記常温揮散性薬剤が、トランスフルトリン、メトフルトリン、エンペントリンおよびプロフルトリン等からなる群より選ばれる、蒸気圧0.5×10-3Pa〜5.0×10-3Pa(25℃)のピレスロイド系殺虫剤を含む(1)〜(3)のいずれかに記載の薬剤揮散装置。
(5)前記容器は正面部と背面部とを備え、この正面部と背面部との間に前記担体が位置すると共に、前記正面部と背面部とに通風開口部が形成されている(1)〜(4)のいずれかに記載の薬剤揮散装置。
(6)前記正面部および背面部の一方または両方は、水平断面が円弧形、台形、三角形または波形である(5)に記載の薬剤揮散装置。
(7)前記吊り下げ具は、上端から前記容器までの垂直距離をx、前記吊り下げ具を取り付ける前記容器の上面部の2つの取付部間の距離をyとするとき、0≦y/x≦2の関係を有する(1)〜(76)のいずれかに記載の薬剤揮散装置。
本発明によれば、容器は、正面と背面を有する略板状であり、正面または背面に対する風の入射角が90°のときは、左右のモーメントが等しくなるので、容器は回転しないが、90°以外のときは、左右のモーメントが等しくないので、容器は回転し、正面または背面に対する風の入射角が90°の位置で回転を止める。これにより容器の正面または背面が風上に向きやすくなり、風が容器の通風開口部を通過して容器内に侵入しやすくなる。そのため、容器内の担体に保持された常温揮散性薬剤の揮散が促進される。その結果、風向きにかかわらず、高い揮散量が得られるようになる。
本発明の一実施形態に係る薬剤揮散装置を示す正面図である。 図1の薬剤揮散装置の断面図である。 図1における容器を吊り下げる紐の寸法を説明するための説明図である。 図1の薬剤揮散装置における容器の平面図である。 (a)〜(c)は薬剤揮散装置の動作を示す説明図である (a)〜(c)は薬剤揮散装置への回転モーメントの作用を示す説明図である (a)〜(d)はそれぞれ本発明における容器の他の例を示す断面図である。 (a)および(b)は吊り下げ紐の容器への取り付け方法を示す説明図である。 (a)および(b)は吊り下げ部材の容器への取り付け方法を示す説明図である。 風向きに対する容器の形状の影響を試験する試験方法を示す説明図である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る薬剤揮散装置を説明する。図1および図2は、本実施形態の薬剤揮散装置1の使用状態を示している。この薬剤揮散装置1は、屋内または屋外において、常温揮散性薬剤を保持した担体2を収容した容器3を吊り下げ紐5で上から吊り下げて使用される。容器3の正面には複数の通風開口部4が形成されており、背面にも同様に複数の通風開口部4´が形成されている(図2を参照)。
容器3は、図2に示すように、正面部3aと背面部3bとを備えた略板状体である。本発明において、容器3の正面とは正面部3aの外表面をいい、容器3の背面とは背面部3bの外表面をいう。
正面部3aと背面部3bは、少なくともそれらの側縁部で互いに一体化され、内部に通気用の空間6が形成される。通風開口部4、4´は、容器3の正面から背面に向けて通気性を保持するよう、正面部3aと背面部3bとに同一形状で、かつ同じ位置に設けられている。このような通風開口部4、4´を設けることにより、通風開口部4、4´から担体2に保持された常温揮散性薬剤を揮散させることができる。
なお、通風開口部4、4´の形状や形成位置は、正面部3aと背面部3bとの間で通気性が確保され、常温揮散性薬剤が効率よく揮散できる限り、特に制限されず、任意の形状や位置に設計することができ、例えば容器3の側面に設けてもよいが、常温揮散性薬剤の揮散量を多くするうえで、容器3の表面積に対する通風開口部4、4´の総面積の比が大きいほど好ましい。
容器3は、別部材として成形した正面部3aと背面部3bとを少なくとも側縁部で重ね合わせるか、もしくは突合せて、一体化しているが、一体成形して形成されていてもよい。正面部3aと背面部3bは、内面に複数の挟持部材8a、8bが突設されており、各挟持部材8a、8bは、それらの間に担体2を挟持させた状態で突き合わされ、一体化される。
容器3(正面部3aおよび背面部3b)を構成する素材は、特に制限されるものではなく、例えば、各種プラスチック、金属、ガラス、紙、木、陶磁器等により形成することができる。
正面部3aと背面部3bとの一体化には、例えば係止部材を用いた方法、熱融着による方法、接着剤等を用いる方法等を用いることができる。係止部材を用いた方法としては、例えば、正面部3aと背面部3bの周縁部の一方に図示しない爪部を設け、他方に凹部を設け、爪部を凹部に係止させる方法が挙げられる。正面部3aと背面部3bとは、上記の係止部材を用いるなどして、着脱自在に一体化されていてもよい。
常温揮散性薬剤を保持した担体2としては、例えば繊維材から形成したネットが挙げられる。このネットは、常温揮散性薬剤が揮散するのに有用な通気孔となる目開きを有する。具体的には、短繊維または長繊維の糸を用いて、レース編みやメリヤス編みなどの手法を用いて編み上げたものを使用することができる。
前記短繊維または長繊維の糸の素材としては、例えば、パルプ、綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリサルフォン、レーヨン、メタアクリル酸樹脂、その他生分解性樹脂(ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸))などが挙げられ、これらの素材の1種または2種以上の素材を混合して使用することができる。これらの中でも特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンが好ましい。
なお、繊維には、例えば、防カビ剤、色素、紫外線吸収剤、香料等の従来公知の添加物を含有させることもできる。
ネットの目開き(通気孔)の割合は、特に制限されないが、ネットの総面積に占める目開き部分の総面積の割合が5〜80%、好ましくは10〜50%であるのがよい。目開きの割合が小さすぎると、糸に保持された常温揮散性薬剤の揮散性が低下するおそれがあり、一方、目開きの割合が大きすぎると、単位面積あたりの糸の重量(すなわち目付け)が小さくなり、常温揮散性薬剤の保持量が低下する傾向がある。
前記ネットに保持させる常温揮散性薬剤は、常温で揮散しうる薬剤であり、各種の害虫防除剤(殺虫剤、忌避剤等)、芳香剤、消臭・防臭剤、殺菌剤、防カビ剤等の各種薬剤のなかから、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。常温揮散性薬剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記害虫防除剤としては、例えば、有機リン系、カーバメート系、ピレスロイド系等の各種殺虫剤、忌避剤、昆虫成長調節剤等が挙げられる。害虫防除剤を例示すると、例えば、有機リン系殺虫剤としては、DDVP、ダイアジノン等が挙げられ、カーバメート系殺虫剤としては、プロポクサー等が挙げられ、ピレスロイド系殺虫剤としては、フタルスリン、プラレトリン、テフルスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、ジメフルトリン、メパフルトリン、プロフルトリン、エムペントリン、テラレスリン等が挙げられる。これらのうち、トランスフルトリン、メトフルトリン、エンペントリン、プロフルトリンが好ましい。また、その他の害虫防除剤として、植物精油、テルペン、およびこれらの異性体や誘導体等が挙げられる。
前記芳香剤としては、例えば、ラベンダー油、じゃ香、竜延香、アビエス油、シトロネラ油、ユーカリ油、フェンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、レモン油、レモングラス油、ナツメッグ油、ハッカ油、オレンジ油、テレピン油、セイジ油などの精油類、ピネン、リモネン、リナロール、ゲラニオール、シトロネラール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、アネトール、オイゲノール、アルデヒド、シトラール、シトロネラール、ワニリン、カルボン、ケトン、メントン、アセトフェノン、クマリン、シネオール、酢酸エチル、酢酸オクチル、酢酸リナリル、酢酸ブチルシクロヘキシル、酢酸ブチルシクロヘプチル、イソ酪酸イソプロピル、カプロン酸アリル、安息香酸エチル、桂皮酸メチル、サリチル酸メチルなどの香料等が挙げられる。
前記消臭・防臭剤としては、例えば、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、アミルシンナミックアルデヒド、アニシックアルデヒド、ジフェニルオキサイド、安息香酸メチル、安息香酸エチル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、ネオリン、サフロール、シトロネラ油、レモングラス油等が挙げられる。
前記殺菌剤としては、例えば、IPMP(イソプロピルメチルフェノール)、PCMX(p−クロロ−m−キシレノール)、AIT(アリルイソチオシアネート)、ヒノキチオール、安定化二酸化塩素等が挙げられる。
さらに、常温揮散性薬剤には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤をも含有させることができる。添加剤としては、例えば、効力増強剤、揮散率向上剤、安定剤等が挙げられる。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記揮散率向上剤としては、例えば、フエネチルイソチオシアネート、ハイミツクス酸ジメチル等が挙げられる。前記安定剤としては、例えば、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、メルカプトベンズイミダゾール、ジラウリル−チオ−ジ−プロピオネート、2,2'−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4'−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオ−ビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、フェニル−β−ナフチルアミン、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、α−トコフェロール、アスコルビン酸、エリソルビン酸等が挙げられる。
常温揮散性薬剤を担体2に保持させる方法は、特に制限されず、例えば、常温揮散性薬剤を溶剤に溶解させて溶液を調製し、該溶液中に担体(ネット)を浸漬、常温揮散性薬剤を含浸させる方法や、前記溶液もしくは常温揮散性薬剤の原体(薬剤そのもの)を前記ネットの上に噴霧もしくは滴下することによりネットに常温揮散性薬剤を含浸させる方法、担体2に薬剤を練り込む方法等を採用することができる。さらに、必要に応じて、常温揮散性薬剤を含浸させた後、乾燥等によって用いた溶剤を除去してもよい。また、常温揮散性薬剤を保持させる際の上記各操作は、常温揮散性薬剤の保持量が所望の量に達するまで繰り返し行なうことができる。
常温揮散性薬剤の溶液を調製するための溶剤としては、特に制限はないが、例えば、水、ナフテン、灯油、パラフィン等の炭化水素類、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、メタノール、イソプロパノール、1−オクタノール、1−ドデカノール等のアルコール類、アセトン、アセトフェノン等のケトン類、ジヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アジピン酸ジオクチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジエチル等のエステル類、キシレン、クロルセン、シリコーンオイル等の1種もしくは2種以上が挙げられる。
常温揮散性薬剤(薬剤)の保持量は、通常、薬剤の種類等を考慮して、所望の効果(揮散性や有効期間)を奏するように適宜決定される。具体的には、担体2の単位面積あたり、最大600g/m2程度の量の常温揮散性薬剤を保持させることができる。
なお、担体2を、図示しない枠体に保持させてもよい。担体2を保持した枠体をカートリッジ式とすれば、温揮散性薬剤が全てもしくは殆ど揮散してしまい効力が消失もしくは低下した場合に、この使用後の枠体を新たな枠体に取り替えることで、再度、優れた効果を発現させることができる。
図1、図2に示されるように、容器3はフック形の固定具9から吊り下げ紐5で吊り下げられている。吊り下げ紐5は、両端を結んで輪状にした1本の紐からなる。
このとき、吊り下げ紐5は、後述するように、容器3が回転して風に対して容器3の正面が風上を向きやすいようにする必要がある。具体的には、図3に示すように、1本の吊り下げ紐5を三角形にして容器3を吊り下げると共に、固定具9から容器3までの垂直距離をx、2本または1本の紐5をそれぞれ取り付ける前記容器の上端面の2つの紐取付部の距離をyとするとき、0≦y/x≦2の関係を有するのが好ましい。これにより、風向きに応じて容器3が風上に回転しやすくなる。y/xは0.01以上がより好ましい。y/xが0の場合、すなわちy=0の場合は、1本の紐で吊り下げていることを意味する。y=0の場合も、容器は風で回転し、正面または背面に対する風の入射角が90°の位置で回転を止める。
また、吊り下げ紐5は、容器3と固定具9との距離(すなわち上記垂直距離x)が1mm以上であるのが好ましい。
また、吊り下げ紐5は、径が50mm以下であり、かつ比較的柔らかい素材からなるのが好ましい。剛直な紐を使用すると、容器3が回転し難くなる。具体的には、柔らかさの程度は、長さ15cmの紐を床に垂直に立てたとき、少なくとも吊り下げ紐の上端が床面に接触する程度に撓むくらいの柔らかさを有しているのがよく、床面に全面が接触してもよい。
吊り下げ紐5の素材としては、例えばマルチフィラメント、モノフィラメントなどの繊維糸、樹脂、エラストマーなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。吊り下げ紐5は輪状に結んだ1本の紐の他に、2本の紐で容器3を吊り下げるようにしてもよい。
前記したフック形の固定具9は、天井面などに取り付けられたものであるが、フック形ではなく、例えば屋外では物干し竿、ベランダや階段の手摺などに吊り下げ紐5を結びつけるようにしてもよく、特に制限されない、
図4は、本実施形態における容器3の形状を示すための平面図である。同図に示すように、容器3は、正面部3aと背面部3bを有する略板状であり、かつ幅方向において両側部よりも厚さが大きい部位(図4の実施形態では中央部L)を有すると共に、正面および背面は共に左右対称形である。湾曲した正面部3aの上部は、蓋となる上面部3cによって塞がれている。上面部3cは正面部3aと一体に成形されている。
具体的には、容器3は、互いに両側部で重ね合わされて一体化した正面部3aと背面部3bにおいて、正面部3aは幅方向において中央部Lの厚みが最も大きい凸状の円弧形に形成されている。背面部3bは外面が平坦に形成されている。
なお、前記した左右対称形には平坦面である場合も含むが、本発明では正面と背面が同時に平坦面であってはならない。
正面部3aと背面部3bとを接合した容器3は、図4に示すように、横幅をw、最大厚みをtとしたときに、1≦w/t≦12であるのがよい。また、容器の正面と背面の形状は合同でないのが好ましい。合同でないとは、3次元的に同一ではないという意味である。合同である場合には、正面部3aが風上を向かなくなるので好ましくない。具体的には、例えば円柱形の容器はw/t=1であるが、正面と背面の形状が合同であるため、左右のモーメントが等しくなり、本実施形態における容器3の形状から除外される。円柱形の容器では、風を受ける面が小さく、風を受ける面を大きくすると、装置自体が大型化する。
容器3の上面部3cには、図4に示すように、紐5を取り付けるための取付孔10,10が形成されている。取付孔10,10は、例えば1本の紐をこれらの取付孔10,10に通して、両端を結んで輪状にするのに適している。また、取付孔10,10に代えて、吊り下げ紐5を結びつけるか、あるいは係止するフック形等の突起であってもよい。
本実施形態における容器3が上記関係を有する場合は、風向きにかかわらず、正面部3aは、常に風上(風の吹く方向を矢印Kで示す)を向くので、通風開口部4から風が侵入しやすくなり、常温揮散性薬剤の揮散量が増大する。すなわち、容器3は、図5(a)に示す静止状態において、風が吹いてくると(同図(b)、容器3が風の吹く方向(矢印Kで示す)に回転して、正面部3aが風上に向くようになる(同図(c)。
なお、上記関係式を満足する限り、正面部3aは全面が円弧状である必要はなく、一部であってもよい。また、本実施形態では、容器3の正面部3aが風上を向く形状を有するが、背面部3bが風上を向く形状を有するようにしてもよい。
上記のように、容器3が回転して、正面部3aが風上に向くようになるのは、容器3が、容器3の正面または背面に対する風の入射角が90°において、左右のモーメントが等しくなる形状を有するためである。言い換えると、容器3は、風の入射角が90°以外のときは、左右のモーメントが等しくならないので、回転するが、風の入射角に対して90°の位置に到達すると、回転を停止するので、常に容器3の正面部3aが風上に向くようになる。
ここで、風の入射角、すなわち容器の正面または背面に向かって吹く風の角度とは、図4に符号wで示す幅方向に対する風の角度をいう。また、モーメントとは力のモーメントをいい、物体を回転させる力の大きさを表す量を示している。
具体的に、図6(a)〜(c)を参照して説明する。図6(a) に示すように、容器3の正面部3aへの風の入射角が90°でない場合には、風の力Fに対して、容器3の左右両端には幅方向に平行な分力と垂直な分力とが存在する。ここで、垂直な分力をFrおよびFlとする。また、容器3の重心(G)からの距離をLr,Llとすると、揮散装置を回転させるモーメントは、それぞれ
左回りモーメント= Fr×Lr
右回りモーメント= Fl×Ll
となる。なお、右回りとは、容器3の正面3a側に立って容器3を平面視したときの時計回りをいい、左回りとは、容器3の正面3a側に立って容器3を平面視したときの反時計回りをいう。
ここで、Lr=Llであるが、容器3の正面部3aの傾きから Fr>Flとなるため、
(Fr×Lr)>(Fl×Ll)
の関係が成立する。従って、左回りのモーメントが働いて容器3は左回り(反時計回り)に回転する。
Fr>Flとなる理由を図6(a) に基づいて説明する。FrおよびFlは、それぞれ単一の分力でなく、Frは領域A内に加わる風の力の垂直分力の総和を示し、Flは領域B内に加わる風の力の垂直分力の総和を示している。領域AとBとは、容器3の重心Gを通る垂直な線分と容器3の表面で交差する線で仕切られている。風の向きに直交する領域AとBの表面積は、A>Bであり、そのため領域A全体に加わる垂直分力Frは、領域B全体に加わる垂直分力Flよりも大きくなる。
一方、図6(b) に示すように、容器3の正面部3aへ風の入射角が90°の場合には、左右両端の回転モーメントは、F×Lr(Ll)となり、左右のモーメントは等しくなるため、回転は止まる。
これに対して、図6(c) に示すように、平面状の正面部3a´を有する容器3´の場合(但し3a‘と3b’は合同でない)、正面部3a´への風の入射角が90°以外であっても、風の垂直分力FrとFlは等しくなるが、容器3´の右側面にも風の力が作用する(側面への風の力を矢印Fsで示す)。そのため、モーメントは、容器3´を正面部3a´側から平面視したとき、左回り(反時計回り)>右回り(時計回り)となり、容器3´は左回り(反時計回り)に回転し、左右のモーメントがつりあった位置(力Fsが消失する位置)で回転が止まる。
本発明では、容器3の正面部3aまたは背面部3bの形状は、上述した円弧形に限定されるものではなく、幅方向において両側部よりも厚さが大きい部位を有すると共に、正面および背面は共に左右対称形であるのが好ましく、上記関係式、すなわち1≦w/t≦12の関係を有し、かつ容器の正面と背面の形状は合同でないという条件を充足するのがより好ましい。例えば、図7(a)〜(c)に示すように、水平断面が台形の正面部31a、三角形の正面部32a、波形の正面部33aなどであってもよい。
図7(d)は、正面両側にそれぞれリブ15、15を突設したものである。リブ15,15は容器3の縦方向の全長にわたって設けてもよく、一部のみであってもよい。また、リブ15は両側のみに限定されず、複数個所にリブを設けてもよい。これは、一定の幅(長さ)で風を受けることができる表面積を大きくできるためである。
吊り下げ紐5を容器3に取り付ける方法は、図3、図4に示した方法に限定されるものではなく、種々の方法が採用可能である。例えば、図8(a)、(b)に示すように、吊り下げ紐5をフック状の引っ掛け部7に引っ掛け、両端を結ぶようにしてもよい。図8(a)、(b)に示す引っ掛け部7は、容器3の正面部3aまたは背面部3bの上端部を略U字形に切り欠いて形成されているが、これに限定されない。
また、吊り下げ紐5に代えて、図9(a)、(b)に示すような吊り下げ部材5´を用いてもよい。この吊り下げ部材5´には、例えばプラスチック、エラストマー、金属などの線材その他の吊り下げ可能な部材を使用することができる。吊り下げ部材5・は一端に係止部16が設けられ、この係止部16を容器3の上面に設けた孔(図示せず)に挿入し、当該孔に係止させる。吊り下げ部材5・の他端には球形部17が設けられており、この球形部17を容器3の側面上端に設けた凹部18に挿入し、吊り下げ部材5・をループ状に取り付ける。
図8(a)、(b)および図9(a)、(b)に示す吊り下げ紐5や吊り下げ部材5´はいずれも前記した0≦y/x≦2の関係(図3を参照)を有するのが好ましい。
本実施形態の薬剤揮散装置1は、例えば、屋内や屋外に吊り下げて使用する。このようにして用いると、風向きに応じて、容器3は回転して風上を向くので、高い揮散量を得ることができるので、例えば、蚊、蝿等の飛翔害虫が侵入する箇所である建物の出入り口や窓等の開口部にこれを吊り下げると、害虫の防除に効果的である。
また、例えば、トイレや室内の芳香、消臭等を簡便に行うことができる。また、本発明の薬剤揮散装置を、例えば、送風機やファン等の送風手段の前面に配置すると、送風によって常温揮散性薬剤の揮散性をさらに高めることができる。
以下、容器3の形状について試験を行ったので、その試験結果を具体的に説明するが、本発明は以下の試験例によって何ら限定されるものではない。
(試験例)
図10(a)は試験に使用した容器13を示している。この容器13はプラスチック板を筒状に加工したものであり、上下に蓋はない。容器13の正面13aは、表1に示す所定寸法の円弧状であり、背面13bは平坦になっている。正面13aおよび背面13bの開口率(総面積に対する通風開口部の面積の割合)はいずれも10%である。
容器13について、図10(a)に示す寸法w、t、hが異なる仕様の試料No.1〜10を用意した。この容器13を紐5で吊り下げ、これに、図示しない送風機(家庭用の扇風機)から風(矢印Kで示す)を当て、容器13の正面13aまたは背面13bが風の来る方向(風上)に向くか否かを調べた。このとき、送風機を図10(b)に示すように容器13に対して0°、45°、90°、135°の位置に設置し、容器13に向かって風(K)を送った。容器13に当る風速は、1.5m/秒、1.0m/秒および0.5m/秒の3段階で試験を行った。
試験は下記のように評価した。
○:容器13の正面13aまたは背面13bが風の来る方向に向く。
×:容器13が回転して風の来る方向に向かないか、あるいは風で連続して回転する。
試験結果を表1に示す。
Figure 2018093778
試料No.1、2、5〜10について、さらに以下の点が明らかになる。
(a)容器13に対して風の入射角が0°のとき、容器の正面13a側に立って容器13を平面視した場合において、反時計回りに回転する左回りモーメントが加わり、右回りモーメントが0であるので、容器13は反時計回りに回転して、正面13aが風の来る方向に向く。
(b) 容器13に対して風の来る角度が45°のとき、容器の正面13a側に立って容器13を平面視した場合において、(左回りモーメント)>(右回りモーメント)となるので、容器13は反時計方向に回転して、正面13aが風の来る方向に向く。
(c)容器13に対して風の来る角度が90°のとき、容器の正面13a側に立って容器13を平面視した場合において、左右のモーメントは等しくなるので、容器13は回転せず、容器13の正面13aが風の来る方向に向いたままである。
(d)容器13に対して風の入射角が135°のとき、容器の正面13a側に立って容器13を平面視した場合において、(左回りモーメント)<(右回りモーメント)となるので、容器13は時計方向に回転して、正面13aが風の来る方向に向く。
また、表1から、容器13が1≦w/t≦12(但し、wは横幅、tは最大厚みである)の関係を有する試料No.1,2,5〜10は、容器13の正面13aが風の来る方向に向き、風速の影響も受けないことが確認された。
一方、試料No.3は、w/tが12を超えるため、特に風速が高い場合に、容器13が回転して、風の来る方向に向かなかった。また、試料No.4は、厚みtが0であるので、左右のモーメントは等しくなり、いずれの角度であっても、特に風速が高いときには、容器13は回転して風の来る方向に向かないか、あるいは風で連続して回転するようになる。
なお、以上の実施形態では、正面が円弧状その他の形状を有し、背面が平坦な容器について説明したが、正面が平坦ないしそれに近い形状を有し、背面が円弧状その他の形状を有する容器であっても同様の効果が得られる。
1 薬剤揮散装置
2 担体
3 容器
3a 正面部
3b 背面部
3c 上面部
4、4´ 通風開口部
5 吊り下げ紐(吊り下げ具)
5´ 吊り下げ部材(吊り下げ具)
6 空間
8a、8b 挟持部材
9 固定具
10 取付孔
13 容器
15 リブ
16 係止部
17 球形部
18 凹部

Claims (7)

  1. 常温揮散性薬剤を保持した担体と、この担体を内部に収容し通風開口部を有する容器と、この容器を吊り下げる吊り下げ具とを備え、
    前記容器は、正面と背面を有する略板状であり、容器の正面または背面に対する風の入射角が90°であるとき、左右のモーメントが等しくなり、前記風の入射角が90°以外のときは、左右のモーメントが等しくならない形状を有する(但し、左右とは、容器の正面側に立って容器を平面視したときの左右をいう)、ことを特徴とする薬剤揮散装置。
  2. 前記容器は、幅方向において両側部よりも厚さが大きい部位を有すると共に、正面および背面は共に左右対称形であり、かつ正面と背面の形状が合同でない請求項1に記載の薬剤揮散装置。
  3. 前記容器は、横幅をw、最大厚みをtとしたときに、1≦w/t≦12の関係を有する請求項2に記載の薬剤揮散装置。
  4. 前記常温揮散性薬剤が、トランスフルトリン、メトフルトリン、エンペントリンおよびプロフルトリン等からなる群より選ばれる、蒸気圧0.5×10-3Pa〜5.0×10-3Pa(25℃)のピレスロイド系殺虫剤を含む請求項1〜3のいずれかに記載の薬剤揮散装置。
  5. 前記容器は正面部と背面部とを備え、この正面部と背面部との間に前記担体が位置すると共に、前記正面部と背面部とに通風開口部が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の薬剤揮散装置。
  6. 前記正面部および背面部の一方または両方は、水平断面が円弧形、台形、三角形または波形である請求項5に記載の薬剤揮散装置。
  7. 前記吊り下げ具は、上端から前記容器までの垂直距離をx、前記吊り下げ具を取り付ける前記容器の2つの取付部間の距離をyとするとき、0≦y/x≦2の関係を有する請求項1〜76のいずれかに記載の薬剤揮散装置。
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