<実施の形態1>
(炭化珪素エピタキシャル成長装置)
まず、この発明の炭化珪素エピタキシャル成長装置の構成について説明する。図1は、この発明における実施の形態1である炭化珪素エピタキシャル成長装置の主要部の概略構成を示す断面図である。同図に示すように、本発明の実施の形態1にかかる炭化珪素エピタキシャル成長装置の主要部である成長炉10が示されている。
実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、図1に示すような成長炉10を備える。成長炉10は、ウエハホルダー11、回転台13、誘導加熱コイル15及びサセプター16を主要構成部として含んでいる。
サセプター16は内部に成長空間S10を有しており、外部に巻回された誘導加熱コイル15によって誘導加熱される。また、サセプター16において、上方に設けられたガス供給口51からエピタキシャル成長用の成長ガスG1を供給され、上方に設けられたガス排出口52から成長ガスG1が排出される。
サセプター16の成長空間S10内に平面視円状のウエハホルダー11を有する。ウエハホルダー11は、各々が他の領域より表面が凹んで形成される複数のウエハポケット12を有し、複数のウエハポケット12内に収容される態様で複数の炭化珪素基板1がウエハホルダー11上に載せられる。複数のウエハポケット12はそれぞれ平面視円状に形成され、それぞれの中心点がウエハホルダー11のホルダー中心点C11から等距離になるように、円周方向に沿って均等に配置される(後述する図2参照)。
回転台13は、ウエハホルダー11を搭載し、誘導加熱コイル15によって誘導加熱される。回転台13は、回転軸13Xを中心とした回転動作が可能であり、回転軸13Xの一部がサセプター16外に露出している。なお、ウエハホルダー11は平面視してそのホルダー中心点C11が回転軸13Xの中心に位置するように配置される。
誘導加熱コイル15は、外部に露出した回転台13の回転軸13Xの近接領域を含み、サセプター16の外周を巻回している。誘導加熱コイル15は図示しない高周波電源が接続されており、上記高周波電源から誘導加熱コイル15に高周波電力が供給されることにより、サセプター16、回転台13及びサセプター16内の成長空間S10を誘導加熱することができる。このように、誘導加熱コイル15と高周波電源とにより誘導加熱機構を構成する。
ウエハホルダー11の表面は、ウエハポケット12の形成領域を除き、第1領域A10と第2領域A20とに分類される。第1領域A10は第2領域A20に比べ回転台13の回転軸13Xに近い位置に設けられる。なお、図1では、ウエハホルダー11は、底面から第1領域A10及び第2領域A20を含む表面までの厚みD11を有している。
図2は、本発明の実施の形態1にかかる炭化珪素エピタキシャル成長装置の主要部の概略構成を示す上面図であり、図2のA−A断面が図1となる。すなわち、図1は、ウエハホルダー11を回転台13上に載置した状態において、炭化珪素基板1を収容するウエハポケット12とウエハホルダー11の中心とを結ぶ線に沿って切った断面図となる。
したがって、図2は、本発明の実施の形態1である炭化珪素エピタキシャル成長装置のサセプター16内のウエハポケット12及び回転台13の平面配置を示している。なお、図2では、ウエハホルダー11上に炭化珪素基板1を載置していない状態を示している。
実施の形態1では、ウエハホルダー11は円盤状であり、複数の炭化珪素基板1を載置できるように、ウエハホルダー11の表面には、複数のざぐり加工が施され、このざぐり加工によって、ウエハホルダー11には他の領域より表面が凹んで、平面視円状のウエハポケット12が複数個形成される。
炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層を成膜する際、ウエハ載置領域であるウエハポケット12内の底面上に炭化珪素基板1が載置される。実施の形態1では、ウエハホルダー11は平面視円状の円盤状であるとしたが、円盤状でなくても、平面視して矩形状を呈していてもよい。
複数のウエハポケット12はそれぞれ、炭化珪素基板1のピックアップ性を考慮して、平面視して炭化珪素基板1よりも、少し広い領域で形成される。
なお、ウエハポケット12の構造は図2で示した構造に限定されず、炭化珪素基板1と同じサイズでウエハホルダー11にざぐり加工を行い、ざぐり加工した箇所に炭化珪素基板1をピックアップするための箇所をさらに形成して、それをウエハポケット12とする変形例も考えられる。
図3はウエハポケット12の変形例であるウエハポケット12Bの1つについて構造を示す説明図である。同図(a) がウエハポケット12Bの平面構造を示す平面図であり、同図(b) が同図(a) のB−B断面、同図(c) が同図(a) のC−C断面をそれぞれ示す断面図である。
図3に示すように、ウエハポケット12Bは一部に半径方向外側に延びるピックアップ領域121を有している。なお、ウエハポケット12Bはピックアップ領域121を除き、平面視円状の炭化珪素基板1とほぼ同じ平面形状で形成される。
このように、変形例のウエハポケット12Bは平面形状を炭化珪素基板1と同じに設定しても、ウエハホルダー11のウエハポケット12B内に載置された炭化珪素基板1を、ピックアップ領域121を利用してウエハポケット12Bから取り出すことができる。
なお、図1において、ウエハホルダー11の表面は、ウエハホルダー11の上面全体を示す。すなわち、ウエハホルダー11がざぐり加工されて凹状となった部分の下面、すなわち、ウエハポケット12の底面も含まれる。
ウエハホルダー11は、回転台13上に搭載され、炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層を成膜する際には、回転台13の回転動作に伴い回転台13と共に一定速度で回転する。
前述したように、ウエハホルダー11のウエハポケット12以外の表面側は、第1領域A10と第2領域A20とに分類される。
第2領域A20はウエハホルダー11の外周側面からホルダー中心点C11に向けて幅W20の広さで設けられる。第1領域A10はウエハホルダー11の表面のうち第2領域A20以外の領域となる。
このように、ウエハホルダー11の表面は第1の領域である第1領域A10と第2の領域である第2領域A20とを有し、第1領域A10及び第2領域A20は、ウエハホルダー11のホルダー中心点C11を基準として第1領域A10よりも第2領域A20の方が遠くなる位置関係を有している。
そして、第2領域A20の表面粗さSR2は、第1領域A10の表面粗さSR1に比べ大きくなるように設定される。すなわち、第1の表面粗さである表面粗さSR1と第2の表面粗さである表面粗さSR2との表面粗さ関係は「SR1<SR2」を満足する。
表面粗さSR2は、表面粗さSR1の1.2倍以上、5倍以下であることが望ましい。表面粗さSR2が、表面粗さSR1の1.2倍よりも小さい場合、第2領域A20の第1領域A10に対する温度上昇度合が小さいため、ウエハホルダー11の面内温度の均一性の改善効果は小さい。
また、表面粗さSR2が、表面粗さSR1の5倍より大きい場合、第2領域A20の表面は表面温度が高くなりすぎるため、エピタキシャル成長時に、炭化珪素の副生成物が厚く第2領域A20に付着する。第2領域A20上に副生成物膜として厚く堆積されると、膜応力で副生成物膜の膜剥がれが発生しやすくなるため、サセプター16内である成長空間S10に成長ガスG1及び窒素ガスを含むプロセスガスを導入した場合、付着力の弱い副生成物膜が容易に剥がれるため、副生成物の発塵量が増加する。副生成物の発塵量が増加すると、炭化珪素基板1上に落下する粒子が増え、そのあとエピタキシャル成長処理により形成するエピタキシャル成長層に欠陥が発生してしまうため好ましくない。
上述したように、第1領域A10の表面粗さSR1と第2領域A20の表面粗さSR2とは、「表面粗さSR2は、表面粗さSR1の1.2倍以上、5倍以下である」という表面粗さ関係を有することにより、第2領域A20に付着する副生成物膜の膜剥がれによる発塵を抑制することができ、かつ、ウエハホルダー11全体の温度の均一性の向上を図ることができる。
表面粗さSR1及び表面粗さSR2は、ウエハホルダー11を作製する過程で用いるエンドミルの先端形状を変えることによって、種々の表面粗さで加工できる。ウエハポケット12形成用の加工処理もエンドミルを使用するため、表面粗さSR1及び表面粗さSR2の設定と、ウエハポケット12の形成とを、エンドミルを用いた同じ工程で連続して作製できる。
この際、ウエハポケット12の底面を構成する表面領域は第1領域A10から除かれる。すなわち、ウエハポケット12の底面の表面粗さSR12は任意である。ただし、ウエハポケット12の底面の表面粗さSR12は、第1領域A10の表面粗さSR1以下、可能であれば、表面粗さSR12を表面粗さSR1に等しくすることが望ましい。
また、ウエハポケット12の表面粗さSR12は、第2領域A20の幅W20がウエハポケット12の内側に及んだ場合でも、ウエハポケット12の面内で第2領域A20と重なる表面は、第1領域A10の表面粗さSR1としてもよい。
このほか、ブラスト法によって表面粗さSR1及び表面粗さSR2を加工する方法もあるが、ウエハホルダー11の母材が強度の弱いグラファイトであるため、ブラスト材料の噴射圧によって、母材が破損することが懸念される。また、ブラスト材料が母材に噛み込むことによる汚染も懸念される。さらには、ブラスト工程が別途必要になるので、費用増加に加え製造期間が延びるため生産性が低下する。
ウエハホルダー11、回転台13及びサセプター16は構成材料として、本実施の形態では炭化珪素でコーティングされたグラファイトが用いられる。炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層を成膜する際に、炭化珪素基板1を約1500℃以上に加熱する必要があるため、それに耐え得る必要があるからである。
図4は、炭化珪素でコーティングされたウエハホルダー11の構造を模式的に示す断面図である。同図に示すように、ウエハホルダー11はグラファイトを構成材料として形成されたホルダー主要部11aとホルダー主要部11aの表面全体を薄く覆った炭化珪素形成層11bとにより構成される。
ここで、ウエハホルダー11、回転台13及びサセプター16に関し炭化珪素形成層を形成することなく、グラファイトのみを構成材料として形成した場合を考える。この場合、炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層を成膜する工程中に、グラファイトが発塵する可能性がある。発塵したグラファイトの微粒子が炭化珪素基板1に載った状態でエピタキシャル成長層を成膜すると、微粒子が載った箇所を起点として結晶が異常成長し、エピタキシャル成長層に結晶欠陥が生じる。そのため、グラファイトを炭化珪素でコーティングすることが望ましい。すなわち、図4で示したウエハホルダー11のように、ウエハホルダー11、回転台13及びサセプター16それぞれの表面全体を炭化珪素形成層11bに相当する炭化珪素被覆層で覆った炭化珪素被覆構造にすることが望ましい。
ウエハホルダー11、回転台13及びサセプター16に上記炭化珪素被覆構造を採用すると、それぞれにおいて炭化珪素被覆層の存在によってグラファイトの発塵が抑制される。また、グラファイトから金属不純物が拡散するようなことも抑制される。金属不純物は、エピタキシャル成長層に結晶欠陥を生じさせるということ以外にも、半導体装置の電気特性に影響を与えるため、拡散させないことが好ましい。したがって、ウエハホルダー11、回転台13及びサセプター16には、炭化珪素でコーティングされたグラファイトを用いた上記炭化形成被覆構造を採用することが好ましい。なお、上記炭化珪素被覆構造に代えて、CVD法や焼結法で作製される炭化珪素材を用いてもウエハホルダー11、回転台13及びサセプター16を構成しても良い。
このように、ウエハホルダー11、回転台13及びサセプター16に上記炭化珪素被覆構造を採用することにより、ウエハホルダー11、回転台13及びサセプター16の構成材料であるグラファイトの発塵を効果的に抑制することができる。この際、実施の形態1の効果であるウエハホルダー11全体の温度の均一性の向上は維持される。
上記効果は、ウエハホルダー11、回転台13及びサセプター16のうち、少なくともウエハホルダー11に上記炭化珪素被覆構造を採用することが望ましい。なぜなら、ウエハホルダー11は炭化珪素基板1を載置し、炭化珪素基板1に最も影響を与える可能性が高いからである。
本実施の形態では、炭化珪素エピタキシャル成長装置を以上のような構成としたことにより、エピタキシャル成長層を成膜する際に、エピタキシャル成長層が成膜される炭化珪素基板の面内温度分布の均一性を向上させることができる。以下、この点を詳述する。
従来の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いても、本実施の形態の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いても、ウエハホルダー11上の炭化珪素基板1は、ウエハホルダー11からの伝導熱の他に、サセプター16の内壁等からの輻射熱によっても加熱される。
従来の炭化珪素エピタキシャル成長装置のウエハホルダー11上に載置される複数の炭化珪素基板1それぞれにおいて、ウエハホルダー11の外周に近い領域は、ウエハホルダー11のホルダー中心点C11に近い領域に比べて低温となる。これは、複数の炭化珪素基板1それぞれにおいて、ウエハホルダー11の外周に近い領域は、ウエハホルダー11のホルダー中心点C11に近い領域に比べて、サセプター16内の成長空間S10の外側に位置することにより、熱が逃げやすく、上記輻射熱温度格差傾向により、温度が低くなる傾向があるためと考えられる。
上述したように、第2領域A20は第1領域A10に比べ、サセプター16からの輻射熱を受けられる方向が限定されるため、第2領域A20が第1領域A10に比べ温度が低くなるという、上記輻射熱温度格差傾向がある。
一方、実施の形態1は、上述したように、ウエハホルダー11のホルダー中心点C11を基準として第1領域A10よりも第2領域A20の方が遠くなる位置関係を有し、かつ、表面粗さSR1及びSR2は表面粗さ関係「SR1<SR2」を満足することを特徴としている。
実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、上記特徴を有することにより、第2領域A20が第1領域A10に比べより多くの誘導電流が流れる結果、第2領域A20の方が第1領域A10より温度上昇が生じやすいという、上記輻射熱温度格差傾向とは反対の誘導電流温度格差効果を発揮することができる。
その結果、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、上記誘導得電流温度格差効果によって、第2領域A20が第1領域A10に比べ温度が低くなる上記輻射熱温度格差傾向を効果的に抑制することになり、エピタキシャル成長処理の実行時に、ウエハホルダー11全体の表面温度の均一性を向上させることができる。
したがって、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、ウエハホルダー11に複数の炭化珪素基板1を載置してエピタキシャル成長層を成膜する際に、エピタキシャル成長層が成膜される炭化珪素基板1の面内温度分布の均一性を向上させることができる。
なお、炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層を成膜する際、エピタキシャル成長層が成膜される炭化珪素基板1の面内温度分布の均一性を向上させるために、他には、ウエハホルダー11の裏面側において、ウエハホルダーの外周に近く、平面視して第2領域A20に一致する裏面第2領域の表面粗さSR2rを、ウエハホルダー11のホルダー中心点C11近く、平面視して第1領域A10に一致する裏面第1領域の表面粗さSR1rよりも、大きくする裏面上表面粗さ設定方法が考えられる。この際、表面粗さSR1rを表面粗さSR1に等しく、表面粗さSR2rを表面粗さSR2に等しくなるように設定する。
上記裏面上表面粗さ設定方法により、裏面第2領域の温度を高温化でき、ウエハホルダー11の裏面側における面内温度の均一性を向上することができる。ただし、ウエハホルダー11の厚みは2mm〜4mm程度を有するため、ウエハホルダー11の裏面側の面内温度分布を、ウエハホルダー11の表面側の温度の面内分布に反映させるのは困難である。ウエハホルダー11の表面側における第2領域A20は、高温化されたウエハホルダー11の裏面側における裏面第2領域からの伝熱によって、ある程度加熱されるが、ウエハホルダー11の表面からの放熱の影響が大きいため、ウエハホルダー11の面内温度は均一になりにくい。さらに、ウエハホルダー11を作製する場合、ウエハホルダー11の表面側のウエハポケット12形成用の加工処理とは別に、ウエハホルダー11の裏面に裏面第2領域、及び裏面第1領域を加工する必要がある。つまり、ウエハホルダー11の表面側と裏面側のそれぞれについて、加工機とウエハホルダー11との位置合わせ調整を2回実施する必要がある。一方、実施の形態1で作製されるウエハホルダー11は、第1領域A10及び第2領域A20は、ウエハポケット12と同じ表面側に形成されるため、加工機とウエハホルダー11との位置合わせ調整は1回で済む。このため、作製時間は短時間化され、作製コストの削減が図れる。
また、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、ウエハホルダー11のみが加工され、誘導加熱される回転台13及びサセプター16が加工されることはない。したがって、誘導加熱される回転台13及びサセプター16の厚みを薄くする必要がないため、回転台13及びサセプター16の加熱効率を下げることなく、エピタキシャル成長層を成膜する際に、エピタキシャル成長層が成膜される炭化珪素基板1の面内温度分布の均一性を向上させることができる。
図1において、ウエハホルダー11は回転台13上に載置されているだけであり、接着されているものではない。本実施の形態では、回転台13は、断面形状がU字型のような形状をしており、円盤状の底部と、底部の外周を囲う側部とを有するが、底部のみであってもよい。また、底部も円盤状でなくてもよく、平面視して矩形状を呈していてもよい。
図1において、ウエハホルダー11は、ウエハホルダー11を回転台13上に載置したときに、ウエハホルダー11の側面が回転台13の側面と離れるように隙間を設けているが、ウエハホルダー11の側面が回転台13の側面と接するような構成でも良い。しかしながら、ウエハホルダー11の側面が回転台13の側面と接すると、回転台13からウエハホルダー11へ伝導する熱量が微量ながらも増えるので、ウエハホルダー11は、ウエハホルダー11の側面が回転台13の側面と離れるように隙間を設ける方が望ましい。
また、ウエハホルダー11の側面または回転台13の側面には、炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層を成膜する際に、副生成物が形成される場合があるので、ウエハホルダー11の搬送のしやすさからも、ウエハホルダー11は、ウエハホルダー11の側面と回転台13の側面とが離れるように隙間を設ける方が望ましい。
図1において、第2領域A20の幅W20は、ウエハホルダー11の外周の端部から、ウエハホルダー11の半径R11の1/10以上1/3以下の範囲に設定することが好ましい。第2領域A20の幅W20が半径R11の1/10より狭くなりすぎると、ウエハホルダー11全体の面積に対して第2領域A20の面積が小さくなりすぎるため、第2領域A20による高温化の効果である上記誘導電流温度格差効果がほとんど得られなくなるので好ましくない。
また、第2領域A20の幅W20が、半径R11の1/3より広くなりすぎると、ウエハホルダー11のホルダー中心点C11に近い領域の温度も上昇するため、ウエハホルダー11の面内の温度分布はあまり改善しなくなるので好ましくない。
実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置において、ウエハホルダー11の表面に形成される第1領域A10及び第2領域A20は、各々がウエハ載置領域である複数のウエハポケット12外に設けられる。
このため、ウエハポケット12の形成を目的とした加工処理時に、同時に第1領域A10及び第2領域A20の表面粗さSR1及びSR2を設定するための加工が行えるので、比較的簡単に第1領域A10及び第2領域A20を形成することができる効果を奏する。
さらに、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、第2領域A20の幅W20が、ウエハホルダー11の外周の端部から、ウエハホルダー11の半径R11の1/10以上1/3以下の範囲に設定している。このため、ウエハホルダー11上のそれぞれの炭化珪素基板1において、ウエハホルダー11の外周に近い領域は、ウエハホルダー11のホルダー中心点C11に近い領域に比べて低温となることが避けられ、上記輻射熱温度格差傾向を抑制する効果が十分に得られる。すなわち、エピタキシャル成長層を成膜する際に、エピタキシャル成長層が成膜される炭化珪素基板1の面内温度分布の均一性を向上させる効果が十分に得られる。
(炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法)
次に、本発明の実施の形態1である炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いて、炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層を成膜する、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法を説明する。
まず、サセプター16の外部において、複数のウエハポケット12内に収容する態様で、ウエハホルダー11上に複数の炭化珪素基板1を載置する。そして、炭化珪素基板1が載置されたウエハホルダー11を、サセプター16の成長空間S10内に設けられた回転台13上に載置する。
次に、サセプター16内の成長空間S10を減圧して所望の真空状態とする。そして、サセプター16の外周に巻回されている誘導加熱コイル15に、高周波電源から高周波電力を供給することにより、サセプター16及び成長空間S10内の回転台13は誘導加熱される。サセプター16及び回転台13が誘導加熱されると、サセプター16の内壁等からの輻射熱によって、真空状態にあるサセプター16内の成長空間S10も加熱される。
ウエハホルダー11、回転台13、及びサセプター16は同じグラファイトを構成材料として用いている。ここで、回転台13の厚みが6mm程度、サセプター16の厚みは10mm程度である。
そして、炭化珪素基板1は、サセプター16の内壁や、回転台13がU字型のような形状の場合は、回転台13の側部から、輻射熱及びウエハホルダー11からの伝導熱によって加熱される。炭化珪素基板1が所望の温度になると、サセプター16内の成長空間S10に成長ガスG1を供給する。炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層を成膜するためには、サセプター16内に供給される成長ガスG1を炭化珪素基板1上で分解させる必要があるため、本実施の形態では、炭化珪素基板1は約1500℃まで加熱される。
成長ガスG1としては、SiH4ガス、C3H88ガス及びH2ガスを供給する。炭化珪素基板1上に成膜するエピタキシャル成長層の電気的な特性を調整する必要がある場合等は、必要に応じて、トリメチルアルミニウム(TMA:TriMethylAluminium)ガスやN2ガスを成長ガスと共に供給する。本実施の形態では、N2ガスを成長ガスG1と共に供給する。サセプター16は、ガス供給口51から成長ガスG1等が供給されると同時に、ガス排出口52から成長ガスG1の排気もなされる構造になっているため、サセプター16内は常に新しい成長ガスG1等で満たされる。
炭化珪素基板1は本実施の形態では約1500℃まで加熱されるので、サセプター16内に供給された成長ガスG1は炭化珪素基板1上で分解する。そして、炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層を成膜することができる。所望の厚みまでエピタキシャル成長層を成膜すると、サセプター16内へ成長ガスG1等の供給を停止し、高周波電源から誘導加熱コイル15への電力供給も停止する。その後、ウエハホルダー11をサセプター16の外部へ出し、ウエハポケット12からエピタキシャル成長層が成膜された炭化珪素基板1を取り出す。
前述したように、本明細書では、エピタキシャル成長層が成膜された炭化珪素基板1を、本実施の形態では「炭化珪素エピタキシャルウエハ」と呼ぶ。そして、上述した実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いて、炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層を成膜する方法が、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法となる。
実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、エピタキシャル成長層を成膜する際に、ウエハホルダー11全体の表面温度の均一性を図っているため、エピタキシャル成長層が成膜される炭化珪素基板1の面内温度分布の均一性を向上させることができる。
したがって、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用い、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法によって製造された炭化珪素エピタキシャルウエハは、炭化珪素エピタキシャルウエハ面内のエピタキシャル成長層のキャリア濃度の均一性を向上させることができる。炭化珪素エピタキシャルウエハのエピタキシャル成長層のキャリア濃度は、エピタキシャル成長層成膜時の炭化珪素基板1の温度との相関が強いからである。
上述したように、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法は、以下のステップ(a) 〜(c) を備えている。
(a) ウエハホルダー11のウエハ載置領域であるウエハポケット12の底面上に炭化珪素基板1を載せるステップと、
(b) 誘導加熱コイル15による誘導加熱機構によってサセプター16及び回転台13を誘導加熱するステップと、
(c) サセプター16の成長空間S10に成長ガスG1及びN2ガスを供給して炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層を形成し、炭化珪素基板1及びエピタキシャル成長層からなる炭化珪素エピタキシャルウエハを得るステップとを備える。
そして、上記ステップ(a) 〜(c) は、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いて実行される。この際、上記ステップ(a) 〜(c) は複数のウエハポケット12の底面上に載せられる複数の炭化珪素基板1に対して実行される。
実施の形態1の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法は、上記ステップ(a) 〜(c) からなるエピタキシャル成長処理の実行時において、ウエハホルダー11全体の表面温度の均一性が高い状態でエピタキシャル成長層を形成することができるため、エピタキシャル成長層のキャリア濃度の均一性の向上を図ることができる。
図5は実施の形態1の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法による効果を説明するためのグラフである。すなわち、図5は、実施の形態1である炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法と、従来の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法との温度分布を比較するグラフである。
図5において、温度分布L1は、本発明の実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いた実施の形態1の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法の実行時におけるウエハホルダー11の面内温度分布を示す。一方、温度分布L2は、従来の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いた従来の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法の実行時における面内温度分布を示している。なお、図5で示すグラフの縦軸は、ウエハホルダーの温度を最も高いキャリア濃度で規格化した数値を示しており、横軸は、ウエハホルダー11の中心から外周の向きに、炭化珪素エピタキシャルウエハの直径に沿った7点の測定箇所を示す。数値が大きい方がウエハホルダー11の外周に近いことを意味する。なお、温度測定は、高温水素ガスによる炭化珪素エピタキシャル成長層のエッチング量から温度を換算して測定した。
図5に示すように、従来の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いた場合、ウエハホルダー11の外周領域に近い箇所の温度は、ウエハホルダー11の中心に近い箇所の温度よりも大幅に低い。一方、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法の場合、ウエハホルダー11の外周領域に近い箇所の温度の低温化が抑制され、ウエハホルダー11の面内温度の均一性が向上していることが分かる。
また、炭化珪素エピタキシャルウエハのエピタキシャル成長層の膜厚分布は、キャリア濃度と比べて、エピタキシャル成長層成膜時の炭化珪素基板1の温度に対して敏感に左右されないため、従来の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いた場合と、本実施の形態の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いた場合とでは同等の良好な膜厚分布が得られる。
(炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する。以下で示す例では、炭化珪素半導体装置として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の製造方法について説明する。
図6は、この発明の実施の形態1である炭化珪素半導体装置の製造方法によって製造されたMOSFET101を示す断面図である。
図6において、MOSFET101は、n型の炭化珪素基板1と、炭化珪素基板1の上面上に形成されたエピタキシャル成長層2と、エピタキシャル成長層2の上層部に選択的に形成されたp型のベース領域3と、ベース領域3の上層部に選択的に形成されたn型のソース領域4とを備える。MOSFET101は、エピタキシャル成長層2の上面のうち露出している面と、ベース領域3の上面と、ソース領域4の上面の一部とを覆うゲート絶縁膜5と、ゲート絶縁膜5上に形成されるゲート電極6とをさらに備える。
MOSFET101は、ソース領域4上に形成されたソース電極7と、炭化珪素基板1の下面上、すなわち、炭化珪素基板1のエピタキシャル成長層2が形成されなかった面上に、形成されたドレイン電極8とをさらに有している。
炭化珪素基板1と炭化珪素基板1上に形成されたエピタキシャル成長層2とを合わせた積層構造が炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wとなる。炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wのエピタキシャル成長層2は、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用い、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法を実行して製造された層である。
実施の形態1の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法では、炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層2を成膜する際、成長ガスとともにN2ガスを供給したため、エピタキシャル成長層2はn型となっている。
次に、図6で示す構造のMOSFET101の製造方法について説明する。まず、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いて、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法を実行することにより、炭化珪素基板1及びエピタキシャル成長層2からなる炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wを得る。なお、炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法は、上述したステップ(a) 〜(c) によって実行される。
次に、炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wのエピタキシャル成長層2内に、MOSFET101の素子領域を形成する。MOSFET101の素子領域は、上述した、ベース領域3及びソース領域4が相当する。
まず、エピタキシャル成長層2上に、ベース領域3の形成予定領域に開口部を有する第1のマスクを形成し、上記第1のマスク上からp型不純物としてAlイオンをイオン注入してエピタキシャル成長層2の上層部に選択的にp型のベース領域3を形成する。
次に、上記第1のマスクを除去し、エピタキシャル成長層2及びベース領域3上に、ソース領域4の形成予定領域に開口部を有する第2のマスクを形成した後、上記第2のマスク上からn型不純物としてNイオンをイオン注入して、ベース領域3の上層部に選択的にn型のソース領域4を形成する。その後、第2のマスクを除去する。
以上のように、MOSFET101の素子領域であるベース領域3及びソース領域4が形成される。
次に、CVD法などにより酸化珪素を主成分とする膜を堆積することによって、ベース領域3及びソース領域4を有するエピタキシャル成長層2の上面上にゲート絶縁膜5を形成する。ゲート絶縁膜5は、エピタキシャル成長層2の上面のうち露出している面と、ベース領域3の上面と、ソース領域4の上面の一部とを覆うように選択的に形成される。
次に、ゲート絶縁膜5上に、導電性を有する多結晶珪素膜をCVD法によって形成することにより、ゲート電極6を形成する。
最後に、ソース領域4のうちゲート絶縁膜5が形成されておらず、露出した表面上にソース電極7を、炭化珪素基板1の下面上にドレイン電極8を、スパッタリング法や蒸着法等によって形成する。ソース電極7及びドレイン電極8の材料としては、アルミニウム合金等が用いられる。
以上が、実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法である、MOSFET101の製造方法である。実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いて製造された炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wは、炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wの面内のエピタキシャル成長層2のキャリア濃度の均一性が向上している。したがって、実施の形態1のMOSFET101の製造方法によって、低抵抗かつ高耐圧特性を有するMOSFET101を製造できる結果、従来よりも高い素子歩留まりでMOSFET101を製造できる。
上述したように、実施の形態1のMOSFET101の製造方法は、以下のステップ(a) 〜(d) を備えている。
(a) ウエハホルダー11のウエハ載置領域であるウエハポケット12上に炭化珪素基板1を載せるステップと、
(b) 誘導加熱コイル15による誘導加熱機構によってサセプター16及び回転台13を誘導加熱するステップと、
(c) サセプター16の成長空間S10に成長ガスG1及びN2ガスを供給して炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層2を形成し、炭化珪素基板1及びエピタキシャル成長層2からなる炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wを得るステップと、
(d) 炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wのエピタキシャル成長層2内に、ベース領域3及びソース領域4を含む素子領域を形成する工程とを備える。
そして、少なくとも上記ステップ(a) 〜(c) は、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いて実行される。また、上記ステップ(a) 〜 (c) は複数のウエハポケット12の底面上に載せられる複数の炭化珪素基板1に対して実行される。
実施の形態1のMOSFET101の製造方法は、キャリア濃度の均一性が高いエピタキシャル成長層2にMOSFET101の素子領域を形成することができるため、製造される炭化珪素半導体装置であるMOSFET101の歩留り向上を図ることができる。
次に、炭化珪素半導体装置の製造方法として、ショットキーバリアダイオードの製造方法について説明する。
図7は、この発明の実施の形態1である炭化珪素半導体装置の製造方法によって製造されたショットキーバリアダイオード102を示す断面図である。
図7において、ショットキーバリアダイオード102は、n型の炭化珪素基板1と、炭化珪素基板1の上面上に形成されたエピタキシャル成長層2と、エピタキシャル成長層2の上層部に選択的に形成されたp型のイオン注入領域9とを備える。ショットキーバリアダイオード102は、2つのイオン注入領域9の上面の一部に跨り、かつ、イオン注入領域9,9間に挟まれたエピタキシャル成長層2の上面上に形成されたショットキー電極40と、炭化珪素基板1の下面上に形成されたオーミック電極41とをさらに備える。
MOSFET101と同様に、炭化珪素基板1と炭化珪素基板1上に形成されたエピタキシャル成長層2とを合わせた積層構造が炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wとなる。エピタキシャル成長層2は、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用い、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法を実行して製造された層である。実施の形態1では、炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層2を成膜する際、成長ガスとともにN2ガスを供給したので、図7のショットキーバリアダイオードのエピタキシャル成長層2もn型である。
次に、図7のショットキーバリアダイオード102の製造方法について説明する。まず、本実施の形態にかかる炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いて、本実施の形態の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法を実行することにより、炭化珪素基板1及びエピタキシャル成長層2からなる炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wを得る。なお、炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法は、上述したステップ(a) 〜(c) によって実行される。
次に、炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wのエピタキシャル成長層2内にショットキーバリアダイオード102の素子領域を形成する。ショットキーバリアダイオード102の素子領域は、上述した、イオン注入領域9が相当する。
まず、エピタキシャル成長層2上に、イオン注入領域9の形成予定領域に開口部を有する第3のマスクを形成し、上記第3のマスク上からp型不純物としてAlイオンをイオン注入して、エピタキシャル成長層2の上層部に選択的にイオン注入領域9を形成する。次に、Alイオンをイオン注入するために使用した上記第3のマスクを除去する。以上のように、ショットキーバリアダイオード102の素子領域であるイオン注入領域9が形成される。
次に、隣接するイオン注入領域9の上面の一部に跨り、イオン注入領域9に挟まれたエピタキシャル成長層2の上面上にショットキー電極40を形成する。そして、炭化珪素基板1の下面上、すなわち、炭化珪素基板1のエピタキシャル成長層2が形成されなかった面上にオーミック電極41を形成する。ショットキー電極40は、隣接するイオン注入領域9の上面の一部と、イオン注入領域9,9に挟まれたエピタキシャル成長層2の上面とショットキー接合し、オーミック電極41は、炭化珪素基板1とオーミック接合する。
以上が、実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法としてのショットキーバリアダイオード102の製造方法である。実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いて製造された炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wは、炭化珪素エピタキシャルウエハ1W面内のエピタキシャル成長層2のキャリア濃度の均一性が向上している。したがって、実施の形態1のショットキーバリアダイオード102の製造方法によって、低抵抗かつ高耐圧特性を有するショットキーバリアダイオード102を製造できるため、従来よりも高い素子歩留まりでショットキーバリアダイオード102を製造できる。
上述したように、実施の形態1のショットキーバリアダイオード102の製造方法は、以下のステップ(a) 〜(d) を備えている。
(a) ウエハホルダー11のウエハ載置領域であるウエハポケット12上に炭化珪素基板1を載せるステップと、
(b) 誘導加熱コイル15による誘導加熱機構によってサセプター16及び回転台13を誘導加熱するステップと、
(c) サセプター16の成長空間S10に成長ガスG1及びN2ガスを供給して炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層を形成し、炭化珪素基板1及びエピタキシャル成長層2からなる炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wを得るステップと、
(d) 炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wのエピタキシャル成長層2内に、イオン注入領域9を含む素子領域を形成する工程とを備える。
そして、少なくとも上記ステップ(a) 〜(c) は、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いて実行される。また、上記ステップ(a) 〜 (c)は複数のウエハポケット12の底面上に載せられる複数の炭化珪素基板1に対して実行される。
実施の形態1のショットキーバリアダイオード102の製造方法は、キャリア濃度の均一性が高いエピタキシャル成長層2内に素子領域を形成することができるため、製造される炭化珪素半導体装置であるショットキーバリアダイオード102の歩留り向上を図ることができる。
上述した例では、実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法で製造される炭化珪素半導体装置として、MOSFET101とショットキーバリアダイオード102とを取り上げて説明した。
しかしながら、製造される炭化珪素半導体装置は、MOSFET101やショットキーバリアダイオード102に限らず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他の半導体デバイスを炭化珪素半導体装置として製造してもよい。すなわち、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いて製造した炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wを製造対象基板とし、エピタキシャル成長層2に素子領域が製造される炭化珪素半導体装置であればよい。
MOSFET101やショットキーバリアダイオード102以外の他の炭化珪素半導体装置であっても、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いて製造した炭化珪素エピタキシャルウエハ1Wは、炭化珪素エピタキシャルウエハ1W面内のエピタキシャル成長層2のキャリア濃度の均一性が向上している。その結果、低抵抗かつ高耐圧特性を有する炭化珪素半導体装置を製造することができるため、従来よりも高い素子歩留まりで炭化珪素半導体装置を製造できることは言うまでもない。
実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置に関し、炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長層2を成膜する装置として説明した。しかしながら、他の材料、すなわち炭化珪素以外を主材料とした基板上にエピタキシャル成長層2を成膜するために、本実施の形態にかかる炭化珪素エピタキシャル成長装置を使用してもよい。この場合において、エピタキシャル成長層2の成膜方法は、適宜変更されるものであることは言うまでもない。
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2では、本発明の実施の形態1と相違する部分について説明し、同一または対応する部分についての説明は適宜省略する。
図8は、この発明における実施の形態2である炭化珪素エピタキシャル成長装置の主要部の概略構成を示す上面図である。実施の形態2の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置と比較してウエハホルダーのみが異なるため、図8では、ウエハホルダー21の平面構造を中心に図示している。なお、図8のD−D断面が実施の形態1の図1に相当する。
実施の形態2の炭化珪素エピタキシャル成長装置におけるウエハホルダー21は、図8に示すように、各々がウエハ載置領域となる複数のウエハポケット22を有し、複数のウエハポケット22の底面上に複数の炭化珪素基板1を載置することができる。複数のウエハポケット22はそれぞれ平面視円状に形成され、それぞれの中心点がウエハホルダー21のホルダー中心点C21から等距離になるように、円周方向に沿って均等に配置される。なお、複数のウエハポケット22の底面がウエハホルダー21の表面となる。
そして、複数のウエハポケット22の底面はそれぞれ第1領域A100と第2領域A200とに分類されていることを特徴としている。第1領域A100及び第2領域A200はウエハポケット22の底面から、実施の形態1の第1領域A10及び第2領域A20と同様の形成深さで形成される。
第2領域A200はウエハポケット22のホルダー中心点C21から最も遠い最外点P2からホルダー中心点C21に向けて距離W22の広さで設けられる。第1領域A100はウエハポケット22の底面のうち第2領域A200以外の領域となる。この際、第1領域A100は、ウエハポケット22のホルダー中心点C21から最も近い最内点P1から最外点P2に向けて距離W12に設定される。
このように、ウエハホルダー21におけるウエハポケット22の表面は第1の領域である第1領域A100と第2の領域である第2領域A200とを有し、第1領域A100及び第2領域A200は、ウエハホルダー21のホルダー中心点C21を基準として第1領域A100よりも第2領域A200の方が遠くなる位置関係を有している。
第1領域A100の第1の表面粗さである表面粗さSR10、第2領域A200の第2の表面粗さである表面粗さSR20との表面粗さ関係は、表面粗さSR20が表面粗さSR10より大きい。すなわち、表面粗さSR10と表面粗さSR20との表面粗さ関係は「SR10<SR20」を満足する。
したがって、実施の形態2の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、実施の形態1の場合と同様、第2領域A200は第1領域A100よりも、上記誘導電流温度格差効果を発揮して高温化が可能である。
このように、実施の形態2の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置が備えるウエハホルダー11及びウエハポケット12が、ウエハホルダー21及びウエハポケット22に変わった点が異なる。
上述したように、ウエハホルダー21における各ウエハポケット22は、第2領域A200が、ウエハホルダー21の最外点P2からウエハホルダー21のホルダー中心点C21に向かって、距離W22を有する弓形状に形成され、第1領域A100は、ウエハポケット22における、第2領域A200以外の領域となる。
第2領域A200の距離W22は、ウエハポケット22の半径R22の1/10以上1/2以下の範囲が好ましい。距離W22がウエハポケット22の半径R22の1/10より小さいと、高温化する第2領域A200の面積が、ウエハホルダー21の全体面積と比較して小さすぎるため、第2領域A200による高温化の効果である上記誘導電流温度格差効果がほとんど得られず、ウエハホルダー21の面内温度を均一化するのは困難で好ましくない。
また、距離W22がウエハポケット22の半径R22の1/2より大きいと、ウエハホルダー21のホルダー中心点C21に近い領域の温度も上がるため、ウエハホルダー21の面内の温度分布はあまり改善しないため好ましくない。
上述のように、第2領域A200の距離W22をウエハポケット22の半径R22の1/10以上1/2以下の範囲とすることにより、上記輻射熱温度格差傾向を抑制するに十分な上記誘導電流温度格差効果を得ることができる。すなわち、エピタキシャル成長層を成膜する際に、エピタキシャル成長層が成膜される炭化珪素基板1の面内温度分布の均一性を向上させる効果が十分に得られる。
なお、上記効果を確実に発揮するには、ウエハポケット22の半径はウエハホルダー21の半径の1/3〜1/2の範囲であり、ウエハポケット22の中心点のウエハホルダー21のホルダー中心点C21からの配置距離はウエハホルダー21の半径の1/10〜7/10程度にすることが望ましい。
表面粗さSR20は、表面粗さSR10の1.2倍以上10倍以下であることが望ましい。表面粗さSR20が、表面粗さSR10の1.2倍よりも小さい場合、第2領域A200の温度上昇が小さいため、ウエハホルダー11の面内温度の均一性の改善効果は小さい。
また、表面粗さSR20が、表面粗さSR10の10倍より大きい場合、炭化珪素基板1の裏面とウエハポケット22の第2領域A200との間に隙間が生じるため、プロセスガスが炭化珪素基板1の裏面に回り込んで、副生成物が形成される。炭化珪素基板1の裏面に副生成物が形成されると、後工程のプロセスにおいて炭化珪素基板1の真空吸着不良で搬送不良が発生したり、ウエハポケット22からの取り出し時における炭化珪素基板1の位置出し精度が悪化したりする等、不具合が発生するため好ましくない。
上述したように、第1領域A100の表面粗さSR10と第2領域A200の表面粗さSR20とは、「表面粗さSR20は、表面粗さSR10の1.2倍以上、10倍以下である」という表面粗さ関係を有することにより、第2領域A200に付着する副生成物の形成に伴う不具合を抑制し、かつ、ウエハホルダー11全体の温度の均一性の向上を図ることができる。
実施の形態2では、炭化珪素エピタキシャル成長装置を以上のような構成としたことにより、エピタキシャル成長層を成膜する際に、エピタキシャル成長層が成膜される炭化珪素基板の面内温度分布の均一性を向上させることができる。以下、この点を詳述する。
上述したように、第2領域A200は第1領域A100に比べ、サセプター16からの輻射熱を受けられる方向が限定されるため、第2領域A200が第1領域A100に比べ温度が低くなる上記輻射熱温度格差傾向がある。
実施の形態2は、上述したように、ウエハホルダー21のホルダー中心点C21を基準として第1領域A100よりも第2領域A200の方が遠くなる位置関係を有し、かつ、表面粗さSR10及びSR20は表面粗さ関係「SR10<SR20」を満足することを特徴としている。
実施の形態2の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、上記特徴を有することにより、第2領域A200が第1領域A100に比べより多くの誘導電流が流れる結果、第2領域A200の方が第1領域A100より温度上昇が生じやすいという、上記輻射熱温度格差傾向とは反対の誘導電流温度格差効果を発揮することができる。
その結果、実施の形態2の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、上記誘導得電流温度格差効果によって、第2領域A200が第1領域A100に比べ温度が低くなる上記輻射熱温度格差傾向を効果的に抑制する結果、エピタキシャル成長処理の実行時に、ウエハホルダー21全体の表面温度の均一性を向上させることができる。
したがって、実施の形態2の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、ウエハホルダー21に複数の炭化珪素基板1を載置してエピタキシャル成長層を成膜する際に、エピタキシャル成長層が成膜される炭化珪素基板1の面内温度分布の均一性を向上させることができる。
このように、実施の形態2の炭化珪素エピタキシャル成長装置においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
さらに、実施の形態2では、ウエハポケット22のウエハ搭載面である底面の表面粗さを変化させている。このため、表面粗さを変化させる面である第1領域A100及び第2領域A200に副生成物はほとんど付着しないため、副生成物の膜剥がれによる発塵の影響はほとんどない。
したがって、発塵の影響はほとんどない点において、実施の形態2の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、実施の形態1よりも優れている。
実施の形態2の炭化珪素エピタキシャル成長装置は、発塵の影響を考慮する必要がないため、実施の形態1の炭化珪素エピタキシャル成長装置よりも低コストで得ることができる。
<その他>
なお、上述した表面粗さSR1,SR2,SR10,SR12,SR20等の表面粗さとして例えば「算術平均粗さRa(μm)」等が考えられる。本発明は表面粗さの比に着目しているため、単位については詳細に説明していない。以下、具体例を説明する。
例えば、第1領域A10及びA100の表面粗さSR1及びSR10(以下、「第1の最終表面粗さ」と略記)の絶対値として0.3〜0.8μm(中心値は0.6μm)が考えられ、第2領域A20及びA200の表面粗さSR2及びSR20(以下、「第2の最終表面粗さ」と略記)の絶対値として0.8〜1.2μm(中心値は1.0μm)が考えられる。但し、第2の最終表面粗さは、第1の最終表面粗さの1.2〜5倍を満足する必要が有る。
なお、第1及び第2の最終表面粗さは、例えば、カーボン母材を構成材料としたホルダー主要部11aをエンドミルで加工後、ホルダー主要部11aの全体を炭化珪素でコーティングして炭化珪素形成層11bを形成することにより設定される(図4参照)。
また、炭化珪素でコーティングする前のウエハホルダー11であるホルダー主要部11aにおいて、第1領域A10及びA100表面粗さ(以下、「第1の下地表面粗さ」と略記)の絶対値として1.8〜2.2μmが考えられ、第2領域A20及び200表面粗さ(以下、「第2の下地表面粗さ」と略記)の絶対値として2.7〜3.0μmが考えられる。第1及び第2の下地表面粗さの設定は、例えば、ホルダー主要部11aに対しエンドミルによる加工処理を実行して設定される。
その後、ホルダー主要部11aの表面全体を炭化珪素形成層11bで覆うようにコーディングすることにより、図4に示す構造のウエハホルダー11を得る。炭化珪素形成層11bのコーティング後の第1及び第2の最終表面粗さは、コーティング前の第1及び第2の下地表面粗さを反映しつつ、より小さな値になることにより、上述した値(第1の最終表面粗さ:0.3〜0.8μm、第2の最終表面粗さ:0.8〜1.2μm)に設定することができる。
実施の形態1の炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法では、成長ガスG1及びN2ガスを供給してn型のエピタキシャル成長層2を形成したが、N2ガスに代えて、p型ドーパントして例えばAl(CH3)2ガスを供給することにより、炭化珪素基板1上にp型のエピタキシャル成長層を形成することも勿論可能である。
また、実施の形態2においても、実施の形態2の炭化珪素エピタキシャル成長装置を用いて、実施の形態1と同様な炭化珪素エピタキシャルウエハの製造方法及び炭化珪素半導体装置の製造方法を実行することができるのは勿論である。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。