JP2019090517A - 内面樹脂ライニング薄肉鋼管およびその製造方法 - Google Patents

内面樹脂ライニング薄肉鋼管およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】良好なねじ部(鋼管外面のねじ形状が規定のJIS形状であり、かつ鋼管内面の凹凸量が小さい)を備えた内面樹脂ライニング薄肉鋼管およびその製造方法を提供する。
【解決手段】JIS G 3452の配管用炭素鋼管に対して、外径が同じで、厚さが100%未満78%以上であり、鋼管内面に樹脂ライニングを有し、鋼管端部に、鋼管外面にJIS B 0202またはJIS B 0203に基づくねじを有するねじ部を備え、前記ねじ部における鋼管内面の凹凸量が最大高さRzで200.0μm以下であることを特徴とする内面樹脂ライニング薄肉鋼管。
【選択図】図1

Description

本発明は、主に水道用配管に用いられる内面樹脂ライニング薄肉鋼管およびその製造方法に関するものである。
上水道などの水道用鋼管には、JIS G 3452に規定された配管用炭素鋼管(以下、「JIS規定の鋼管」ともいう)が用いられる。その配管用炭素鋼管の管端部には、管外面にねじ(雄ねじ)が形成されたねじ部が設けられ、内面にねじ(雌ねじ)が形成された管継手を介して、隣接する配管用炭素鋼管と接合される。ねじには、JIS B 0202の管用平行ねじ(以下、「JIS規定の平行ねじ」ともいう)、あるいは、JIS B 0203の管用テーパねじ(以下、「JIS規定のテーパねじ」ともいう)が用いられる(以下、両者を合わせて、「JIS規定のねじ」ともいう)。
このようなJIS G 3452に規定された配管用炭素鋼管に対して、外径は同じであるが、厚さ(肉厚)を薄くした鋼管(薄肉鋼管)が軽量化鋼管として提案されるようになってきた。
その際、鋼管外面にねじ(雄ねじ)を形成するには、鋼管をチェザーという刃で切削加工してねじ山を形成する切削ねじが長年主流であったが、ねじ部での鋼管肉厚の減少が不可避であり、特に、薄肉鋼管に適用した場合には、ねじ谷底部の肉厚が極めて薄くなり、切削加工が困難になったり、ねじ接合部の強度が低下して、耐震性が著しく低下してしまったりするという問題があった。
これに対して、近年、転造ローラーという外面にねじ山が形成されたローラー(転造工具)を鋼管に押し当てて、塑性加工によりねじ山を形成する転造ねじが普及しつつある。転造ねじは、切削ねじと異なり、ねじ谷底部の鋼管の厚さが確保されるので、ねじ接合部の強度が高くなり、薄肉鋼管に適用した場合でも、十分な耐震性を有することができるという利点がある。
上記のような転造ねじを形成する方法には、図1(a)に示すように、鋼管を回転させながら、鋼管の端から徐々に転造ローラー(転造工具、たとえば5個)の間に送りこんでいく、いわゆる「歩み転造」と、図1(b)に示すように、鋼管に対して、通常3個の回転する転造ローラー(転造工具)をそれぞれ同時に寄せていく、いわゆる「寄せ転造」とがある。
このような転造ねじに関して、特許文献1には、JIS B 0202に規定された厚さに対して、厚さを70%〜50%に薄くした薄肉鋼管に中子を挿入して、規定のねじ山形状を得る方法が開示されている。薄肉鋼管の場合、歩み転造では、JIS B 0202やJIS B 0203に規定された形状にねじ山が盛り上がらず、ねじ山不良を招くが、この問題は、特許文献1によれば、中子を挿入することで解決できるとしている。
一方、鋼管内面の腐食防止のために、配管用炭素鋼管の内面に樹脂ライニング(例えば、ポリエチレン粉体やポリオレフィン粉体等のライニング)が施された内面樹脂ライニング鋼管が広く使用されている(例えば、特許文献2、3参照)。
このような内面樹脂ライニング鋼管でも、軽量化のために、JIS G 3452の規定よりも薄肉化した薄肉鋼管(内面樹脂ライニング薄肉鋼管)が求められるようになっている。
特許第3483845号公報 特許第5928328号公報 特許第5353297号公報
しかしながら、上述したような、JIS規定の鋼管よりも薄肉化した内面樹脂ライニング薄肉鋼管を製造しようとした場合、以下のような問題が発生する。
まず、薄肉鋼管の鋼管端部外面にJIS規定のねじを転造加工によって形成する場合、鋼管の厚さが薄くなるにつれて、鋼管の剛性が低くなるため、転造工具を鋼管外面に押し当てた際に、鋼管がつぶれたり、転造工具の押し込みと同方向の変形が大きくなり、転造工具に対する反力が低下したりする。その結果、ねじ山の形成のために転造工具外周に設けられた凹部への材料の変形・充満(塑性流動)が小さくなって、規定のねじ山形状が形成できないという問題がある。規定のねじ山形状が形成できないと、管内を通過する流体が継手部から漏れたり、継手耐震強度が低下することになる。
この問題に対して、内面樹脂ライニング薄肉鋼管の場合は、前述した特許文献1のように、鋼管端部に中子を挿入して、規定のねじ山形状を得る方法は適用することができない。中子を挿入した場合、少なくとも鋼管内面が中子と高い面圧で接触し、場合によっては回転摺動することによって、鋼管内面の樹脂ライニングが損傷・剥離して、耐食性が大きく低下してしまうからである。仮に、上記のような鋼管内面の樹脂ライニングの損傷・剥離を許容して、転造ねじの形成後に鋼管内面を補修しようとしても、樹脂ライニング(例えば、ポリエチレン)自体の表面エネルギが低いため、補修材が付着ないし固着しにくく、補修できないか、または補修材がはがれてしまい、補修の効果が得られないため、耐食性を発揮することが困難になる。
さらに、薄肉鋼管の転造ねじの形成で顕著になる問題として、図2に示すように、転造加工後のねじ部の鋼管内面に、鋼管外面の螺旋状のねじ山と同じ位相で凹凸が発生することが起きることがあげられる。
このような鋼管内面の凹凸が大きくなると、鋼管内面の樹脂ライニングがその凹凸変形に追随できず、部分的に剥離してしまい、結果的に耐食性が低下してしまうので、内面樹脂ライニング薄肉鋼管と言えなくなる。この現象は、薄肉鋼管の厚さがJIS B 0202に規定された厚さの87.5%未満になると、一段と生じ易くなる。
また、鋼管内面の樹脂ライニングが剥離しない場合でも、上記のような鋼管内面の凹凸があると、鋼管と管継手との接合部に止水の目的で設けるOリングが、鋼管内面の凹凸によって変形し、密封が不完全となって、継手部の耐食性を低下させる。図3に、典型的なポリエチレン粉体ライニング鋼管の継手部断面を示すが、図3に示すOリングの場合、仮にねじ部内面に凹凸があることを想定すれば、Oリングは確実にその影響を受ける。鋼管の外面に形成されたらせん状のねじ山と同位相に形成された管内面の凹凸が大きい場合、Oリングは、少なくとも一つの突起を乗り越えることになり、止水効果が低下することは容易に推察される。
したがって、鋼管内面の樹脂ライニングが剥離せず、かつOリングの止水機能を損なうことがない程度に、ねじ部の鋼管内面の凹凸量を小さくすることが必要になる。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、良好なねじ部(鋼管外面のねじ形状がJIS規定の形状であり、かつ鋼管内面の凹凸量が小さい)を備えた内面樹脂ライニング薄肉鋼管およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために、以下のような検討を行った。
まず、JIS規定の鋼管よりも薄肉化した場合に、特許文献1のような中子を用いることなく、鋼管端部外面にJIS規定の形状のねじを、転造によって形成できる鋼管の厚さの範囲を検討した。
次に、その厚さ範囲を前提にして、ねじ部における鋼管内面の凹凸量について、鋼管内面の樹脂ライニングが剥離せず、かつOリングの止水機能を損なうことがない範囲を見定め、その範囲内に鋼管内面の凹凸量を抑える方法について検討した。
本発明は、そのような検討によって得られた知見(詳細は、後述の[発明を実施するための形態]の欄において述べる)に基づいており、以下のような特徴を有している。
[1]JIS G 3452に規定された配管用炭素鋼管に対して、外径が同じで、厚さが100%未満78%以上であり、鋼管内面に樹脂ライニングを有し、鋼管端部に、鋼管外面にJIS B 0202またはJIS B 0203に基づく形状のねじを有するねじ部を備え、前記ねじ部の鋼管内面の凹凸量が最大高さRzで200.0μm以下であることを特徴とする内面樹脂ライニング薄肉鋼管。
[2]JIS G 3452に規定された配管用炭素鋼管に対して、外径が同じで、厚さが87.5%未満78%以上であることを特徴とする前記[1]に記載の内面樹脂ライニング薄肉鋼管。
[3]前記[1]または[2]に記載の内面樹脂ライニング薄肉鋼管を製造する方法であって、薄肉鋼管を製造する薄肉鋼管製造工程と、前記薄肉鋼管の内面に樹脂ライニングを形成する内面樹脂ライニング工程と、内面に樹脂ライニングを有する薄肉鋼管の鋼管端部外面にねじを形成するねじ形成工程とを備えることを特徴とする内面樹脂ライニング薄肉鋼管の製造方法。
[4]前記ねじ形成工程は、転造によってねじを形成する転造ねじ形成工程であり、前記ねじ形成工程において、下記の(A)、(B)、(C)のうちの少なくとも1つを行うことを特徴とする前記[3]に記載の内面樹脂ライニング薄肉鋼管の製造方法。
(A)歩み転造を用い、摩擦係数が0.08以下である潤滑剤を使用する。
(B)歩み転造を用い、転造工具の回転速度を70rpm以下にする。
(C)寄せ転造を用いる。
本発明によれば、良好なねじ部(鋼管外面のねじ形状がJIS規定の形状であり、かつ鋼管内面の凹凸量が小さい)を備えた内面樹脂ライニング薄肉鋼管を得ることができる。
その結果、従来の内面樹脂ライニング鋼管と比べて、同等の継手耐震強度を有しながら、鋼管の重量を低減することが可能となり、配管の作業性や施工性を改善することができる。さらに、構造物への付加的な荷重を軽減することで、構造物全体の耐震強度にも余裕を与えることが可能となる。また、ねじ部の加工においては、中子の利用を省略することが可能となり、ねじ加工設備のトータルコスト削減や加工時間短縮による生産能率向上を図ることができる。
歩み転造と寄せ転造を示す図である。 ねじ部の鋼管内面の凹凸を示す図である。 鋼管と管継手との接合部を示す図である。 転造ねじ形状に及ぼす肉厚の影響を示す図である。 ねじ部の内面凹凸量に及ぼす潤滑剤(摩擦係数)の影響を示す図である。 ねじ部の内面凹凸量に及ぼす転造工具の回転速度の影響を示す図である。 ねじ部の内面凹凸量に及ぼす転造加工方法の影響を示す図である。 ねじ部の内面凹凸量に及ぼす転造加工方法の影響を示す図である。 歩み転造での応力状態を示す図である(有限要素法解析)。 寄せ転造での応力状態を示す図である(有限要素法解析)。
前述したように、ここでは、本発明を想到した経過を中心にして述べる。
なお、本発明では、JIS規定の鋼管(配管用炭素鋼管)を基準にして、その薄肉化を図ったわけであるが、以下では、JIS規定の鋼管のうち、呼び径25A(外径34mm、肉厚3.2mm)の鋼管を基準にして、その薄肉化を検討した場合を代表例として述べる。
ちなみに、本発明においては、JIS規定の鋼管の厚さは、JIS G 3452:2014の表4における「厚さ」のことであり、その際の「厚さの許容差」については(+0%、−12.5%)と見なしている。
まず、JIS規定の鋼管よりも薄肉化した場合に、特許文献1のような中子を用いることなく、鋼管端部外面にJIS規定のねじを転造によって形成できる鋼管の厚さの範囲を検討した。
具体的には、呼び径25A(外径34mm、肉厚3.2mm)の鋼管を基準鋼管とし、外径は基準鋼管と同じ34mmにして、基準鋼管の厚さts(3.2mm)に対して厚さtを薄くした(すなわち、厚さの比t/tsを小さくした)。ねじはJIS規定のテーパねじとし、装置が小型で済む歩み転造でねじの形成を行った。潤滑剤は切削油を用い、転造工具の回転速度は88rpmとした。なお、中子は用いなかった。
図4に、厚さの比を小さくした場合のねじ部断面形状の一例を示す。図4(a)は厚さの比100%(t/ts=1.0)、図4(b)は厚さの比78%(t/ts=0.78)、図4(c)は厚さの比66%(t/ts=0.66)である。
図4に示すように、厚さの比78%(t/ts=0.78)の場合は、厚さの比100%(t/ts=1.0)と同じように、JIS規定のねじが形成されている。これに対して、厚さの比66%(t/ts=0.66)の場合は、JIS規定のねじが形成できていない。
この結果等から、JIS規定の鋼管の厚さに比べて100%未満78%以上の厚さであれば、特許文献1のような中子を用いることなく、鋼管端部外面にJIS規定のねじを転造によって形成できると判断した。
次に、その厚さ範囲(JIS規定の鋼管の厚さに比べて100%未満78%以上の厚さ)を前提にして、ねじ部の鋼管内面の凹凸量について、鋼管内面の樹脂ライニングが剥離せず、かつOリングの止水機能を損なうことがない範囲を検討した。なお、鋼管内面の凹凸量は、ねじ部全体を基準長さにして、最大高さRz(JIS B 0601:2001)で評価した。
その結果、ねじ部の鋼管内面の凹凸量Rzが200.0μm以下であれば、鋼管内面の樹脂ライニングが剥離せず、かつOリングの止水機能を損なうことがないと判断された(詳細は後述する)。
そこで、ねじ部の鋼管内面の凹凸量Rzを200.0μm以下に抑える方法について検討した。
その際、薄肉鋼管として、上述した基準鋼管(呼び径25A(外径34mm、厚さ3.2mm))に対する厚さの比が78%の鋼管(外径34mm、厚さ2.5mm)を用いた。ねじはJIS規定のテーパねじとし、歩み転造でねじの形成を行った。
その結果、基本的には、鋼管外面にJIS規定のねじ山形状を形成するのに必要な量を超えた材料の塑性流動、すなわち、転造工具側への過剰な材料の充満・流れ込みを抑制することがポイントであるとわかった。
図5に、使用する潤滑剤と、ねじ部内面の凹凸形状の関係の一例を示す。図5(a)は切削油(摩擦係数0.1〜0.3)を使用した場合、図5(b)は固形潤滑剤(摩擦係数0.04〜0.06)を使用した場合である。なお、転造工具の回転速度は505rpmとした。
図5に示すように、切削油(摩擦係数0.1〜0.3)を使用した場合に比べて、固形潤滑剤(摩擦係数0.04〜0.06)を使用した場合は、鋼管内面の凹凸量Rzが300.0μmから120.0μmに軽減していることがわかる。
この鋼管内面の凹凸量の軽減によって、初期内径約29.0mm(初期内半径約14.5mm)の鋼管の凹部と凸部の変形量差、すなわち鋼管の内周長変化による歪の差分Δ0.18mm/14.5mm=0.012と1.2%の歪差を軽減できた。一般に、樹脂に対する1%の歪差は十分大きいことから、鋼管内面の凹凸部での局所的な1.2%の歪差低減は、鋼管内面ライニングの剥離防止に非常に効果的と言える。
同様に、Oリングの変形量に関し、線径3.5mmのOリングの場合、機能発揮のためのつぶし代は0.46±0.14mmであり、図3に示したOリングに対し、鋼管内面の凹凸量Rzが300.0μmある場合、つぶし代の許容偏差を超える径差があることは、止水効果を発揮しない懸念があることがわかる。一方、摩擦を低減した場合、つぶし代の許容範囲内にあることがいえる。
この結果等から、摩擦係数が0.08以下である潤滑剤を使用することによって、転造工具側への過剰な材料の充満・流れ込みを抑制して(すなわち、ねじ部外面が盛り上がる傾向を緩和して)、鋼管内面の凹凸量Rzを200.0μm以下にすることができ、内面樹脂ライニング鋼管の被覆機能やOリング機能に特に不具合なく、ねじ転造成形を行うことができると判断された。ただし、転造工具のスリップ等を考えて、潤滑剤の摩擦係数は0.03以上であることが好ましい。
図6に、転造工具の回転速度と、ねじ部内面の凹凸形状の関係の一例を示す。図6(a)は転造工具の回転速度を505rpmとした場合、図6(b)は転造工具の回転速度を88rpmとした場合である。なお、潤滑剤は切削油を使用した。
図6に示すように、転造工具の回転速度を505rpmにした場合に比べて、転造工具の回転速度を88rpmにした場合は、鋼管内面の凹凸量Rzが340.0μmから230.0μmに軽減していることがわかる。
この結果等から、転造工具の回転速度を70rpm以下にすることによって、転造工具側への過剰な材料の充満・流れ込みを抑制して、鋼管内面の凹凸量Rzを200.0μm以下にすることができ、内面樹脂ライニング鋼管の被覆機能やOリング機能に特に不具合なく、ねじ転造成形を行うことができると判断された。ただし、生産性を考えると、転造工具の回転速度40rpm以上にすることが好ましい。
図7、図8に、転造加工方法と、転造加工後の鋼管の外観(内面の凹凸状態)およびねじ部内面の凹凸形状の関係の一例を示す。図7(a)と図8(a)は歩み転造によってねじ形成を行った場合であり、図7(b)と図8(b)は寄せ転造によってねじ形成を行った場合である。なお、潤滑剤は切削油を用い、転造工具の回転速度は、歩み転造の場合88rpm、寄せ転造の場合200rpmとした。ちなみに、図7(a)と図8(a)の歩み転造は、前述した図6(b)と同じ条件である。
図7(a)と図8(a)に示すように、歩み転造によってねじ形成を行った場合は、鋼管内面に凹凸が発生した(凹凸量Rz=230.0μm)。これに対して、図7(b)と図8(b)に示すように、寄せ転造によってねじ形成を行った場合は、鋼管内面に凹凸が発生しなかった(凹凸量Rz=0.0μm)。
これは、有限要素法を用いた成形模擬解析からわかったことであるが、歩み転造では、図9に示すように、転造中に、転造工具と接触している部位での鋼管内面での管軸方向応力が圧縮となり、管軸方向に波形ひいては鋼管内面の凹凸を形成し易い傾向にある。一方、寄せ転造の場合は、図10に示すように、転造工具との接触部において、管軸方向に引張の応力が作用していることがわかり、上記の波形の発生が抑制される傾向にあり、結果的に鋼管内面の凹凸を軽減するか、もしくは発生を抑制する。よって、寄せ転造の適用が望ましいと解釈される。
この結果等から、寄せ転造でねじ形成を行うことによって、鋼管内面の凹凸量Rzを200.0μm以下にすることができ、内面樹脂ライニング鋼管の被覆機能やOリング機能に特に不具合なく、ねじ転造成形を行うことができると判断された。
以上は、JIS規定の鋼管のうち、呼び径25A(外径34mm、肉厚3.2mm)の鋼管を基準鋼管として、JIS規定のテーパねじを転造形成した場合であったが、その他のJIS規定の鋼管を基準鋼管とした場合や、JIS規定の平行ねじを転造形成した場合でも、同様のことが言える。
ここで、前述したように、ねじ部における鋼管内面の凹凸量Rzが200.0μm以下であれば、鋼管内面の樹脂ライニングが剥離せず、かつOリングの止水機能を損なうことがないと判断した点について述べる。
まず、「鋼管内面の樹脂ライニングが剥離しない」については、ねじ山ピッチが2.3091mmである呼び径25A以上を基準鋼管にして薄肉化する場合は、凹凸量Rzが250.0μm以下であればよいと判断し、ねじ山ピッチが1.8143mmである呼び径15A、20Aを基準鋼管にして薄肉化する場合は、凹凸量Rzが200.0μm以下であればよいと判断した。
ここで、凹凸量Rzが上記の値(250μm以下、200.0μm以下)であることの物理的意味は、ねじ部において、ねじ形成前は凹凸のない状況から、凹凸が発生した場合の鋼管長手方向の伸び量が3%を越えないことを意味している。このねじ部の伸び量が3%を越えないことの意味合いとしては、テーパねじの転造成形を行うことによって発生する鋼管端部の縮径にともなう鋼管の伸び量が約7%であり、トータル約10%の伸び(これは上限であり、当然ながら小さいほどよい)が内面ライニング(例えば、ポリエチレン)に作用しないことを意図するものであり、ライニング層として鋼管内面に接着したまま剥離せずに残存する限界歪約10%を勘案して算定したものである。
一方、「Oリングの止水機能を損なうことがない」については、厳密には、用いるOリングの線径と、ちょうどOリングと接触する鋼管内面位置での凹凸量に依存するため、一概に言えないが、基本的には、Oリングのつぶし代の許容範囲内の凹凸量であることを意味している。具体的には、一例として、線径2.4mmのOリングを用いた場合、JIS規格に基づいて算出すると、つぶし代の基準値は、0.37mm±0.10mmであり、Oリングと接触する位置における鋼管内面の凹凸量Rzが200.0μm以下である必要がある。ちなみに、鋼管内面が平らで凹凸がなければ、Oリングは隙間なく接触するが、鋼管内面に凹凸があるとOリングが鋼管内面に接触しないところが出てくる。
以上のことから、ねじ部の鋼管内面の凹凸量Rzが200.0μm以下であれば、鋼管内面の樹脂ライニングが剥離せず、かつOリングの止水機能を損なうことがないと判断した。
そして、上記のような検討結果に基づいて、内面樹脂ライニング薄肉鋼管として、JIS規定の鋼管に比べて、外径が同じで、厚さが100%未満78%以上であり、鋼管内面に樹脂ライニングを有し、鋼管端部に、鋼管外面にJIS規定のねじ(転造ねじ)を有するねじ部を備え、前記ねじ部における鋼管内面の凹凸量Rzが200.0μm以下である内面樹脂ライニング薄肉鋼管を想到した。
そして、その内面樹脂ライニング薄肉鋼管を製造する方法は、製造対象の薄肉鋼管の厚さと同じ板厚の鋼板を用いて、鍛接法または電縫法によって薄肉鋼管を製造する薄肉鋼管製造工程と、その薄肉鋼管の内面に樹脂ライニングを形成する内面樹脂ライニング工程と、内面に樹脂ライニングを有する薄肉鋼管の鋼管端部外面に転造ねじを形成する転造ねじ形成工程とを設け、転造ねじ形成工程において、下記の(A)、(B)、(C)のうちの少なくとも1つを行うようにすればよい。
(A)歩み転造を用い、摩擦係数が0.08以下(好ましくは、0.03以上)である潤滑剤を使用する。
(B)歩み転造を用い、転造工具の回転速度を70rpm以下(好ましくは、40rpm以上)にする。
(C)寄せ転造を用いる。
このようにすることによって、良好なねじ部(鋼管外面のねじ形状がJIS規定の形状であり、かつ鋼管内面の凹凸量が小さい)を備えた内面樹脂ライニング薄肉鋼管を得ることができる。
その結果、従来の内面樹脂ライニング鋼管と比べて、鋼管の重量を低減しつつ、同等の継手耐震強度を有することが可能となり、配管の作業性や施工性を改善することができる。また、構造物への負荷も軽減できるので、構造物全体の耐震強度にも余裕を与えることが可能となる。さらに、ねじ部の加工においては、中子の利用を省略することが可能となり、ねじ加工設備のトータルコスト削減や加工時間短縮による生産能率向上を図ることができる。
特に、肉厚がJIS規定の鋼管の厚さの87.5%未満78%以上の厚さである内面樹脂ライニング薄肉鋼管では、ねじ部の鋼管内面の凹凸が大きくなって、鋼管内面の樹脂ライニングが剥離したり、Oリングの止水機能を損なったりしやすいが、上記のように、良好なねじ部を形成できるようになり、軽量化による効果も大きいことから、上述した効果が顕著に現れる。

Claims (4)

  1. JIS G 3452に規定された配管用炭素鋼管に対して、外径が同じで、厚さが100%未満78%以上であり、
    鋼管内面に樹脂ライニングを有し、
    鋼管端部に、鋼管外面にJIS B 0202またはJIS B 0203に基づく形状のねじを有するねじ部を備え、
    前記ねじ部の鋼管内面の凹凸量が最大高さRzで200.0μm以下であることを特徴とする内面樹脂ライニング薄肉鋼管。
  2. JIS G 3452に規定された配管用炭素鋼管に対して、外径が同じで、厚さが87.5%未満78%以上であることを特徴とする請求項1に記載の内面樹脂ライニング薄肉鋼管。
  3. 請求項1または2に記載の内面樹脂ライニング薄肉鋼管を製造する方法であって、
    薄肉鋼管を製造する薄肉鋼管製造工程と、
    前記薄肉鋼管の内面に樹脂ライニングを形成する内面樹脂ライニング工程と、
    内面に樹脂ライニングを有する薄肉鋼管の鋼管端部外面にねじを形成するねじ形成工程とを備えることを特徴とする内面樹脂ライニング薄肉鋼管の製造方法。
  4. 前記ねじ形成工程は、転造によってねじを形成する転造ねじ形成工程であり、
    前記ねじ形成工程において、下記の(A)、(B)、(C)のうちの少なくとも1つを行うことを特徴とする請求項3に記載の内面樹脂ライニング薄肉鋼管の製造方法。
    (A)歩み転造を用い、摩擦係数が0.08以下である潤滑剤を使用する。
    (B)歩み転造を用い、転造工具の回転速度を70rpm以下にする。
    (C)寄せ転造を用いる。
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