(本発明の基礎となった知見)
従来、魚の鮮度を推定するのに、熟練者が魚の外見及び表面の状況を目で確認し、その色合い、つや、及び、鱗の状況などから鮮度を推定するという官能的な手法が一般的に採用されてきた。しかしながら、この方法は、熟練者の主観によるところが大きく、客観性に欠ける。
そこで、近年、客観的に魚の鮮度を推定する方法として、「K値」と呼ばれる魚の鮮度を定量的に評価する指標が提案されている。魚の筋肉中のアデノシン三リン酸(ATP)は、魚の死後、関連酵素によって次の経路で分解される。つまり、アデノシン三リン酸(ATP)から、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)、イノシン一リン酸(IMP)、イノシン(HxR)を経て、最後に、ヒポキサンチン(Hx)に分解される。この分解経路は、魚の種類に寄らず一定である。そこで、鮮度が落ちるに従ってATPが減少し、イノシン酸及びヒポキサンチンが生成されることに注目して、イノシン酸及びヒポキサンチンの量の上記全物質の量に対する割合をK値と定義し、K値を測定することで魚の鮮度を定量的に推定する。
しかしながら、K値の測定では、各物質量の測定に化学反応を利用していることから、測定の準備に手間がかかり、反応が安定するまでに時間を要するという問題がある。さらに、化学反応のために、魚肉の一部をサンプルとして切り取らなければならず、衛生面を考えると、より非接触で非侵襲な方法が望まれる。
そこで、最近、食材の鮮度を短時間で、しかも非接触で推定する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1では、魚の水晶体に光を当て、その反射光をスペクトル分析する。これによって、魚の目の濁りに依存した変化を捉えることで、魚の鮮度を推定できることを示唆している。また、特許文献2では、魚肉の表面に光を当て、270nmの波長の光での反射率(言い換えると、吸光度)を計測することにより、魚肉の表面に付着した細菌数を推定している。これら特許文献1及び2の手法は、いずれも、上述したK値測定のような化学反応を利用しないため、短時間で測定が可能であり、また、非接触による計測であるため、衛生的にも優位である。
しかしながら、上記特許文献1の手法では、魚の目の濁りに依存したスペクトルパワーの減衰を捉えて鮮度を推定しているが、目の濁りと鮮度との関係、スペクトルの変化状況、及び、その捉え方等について、具体的な記述がなく、鮮度推定としての有効性は不明である。
また、上記特許文献2の手法では、魚肉の表面に光を当て、270nm付近の波長域での反射率(言い換えると、吸光度)を観測することで、魚肉の表面に付着した微生物中のATP量を間接的に測定することで鮮度を推定するものである。基本的には、この手法は、肉や野菜など食する部分そのものの観測において優位であるが、甲殻類や魚などの場合は、表面の細菌数と中身の肉との関係付けがさらに必要であることから、魚全体の鮮度推定としての有効性は不明であると思われる。
そこで、本発明は、短時間で、かつ、非接触及び非侵襲で魚の鮮度を推定する方法であって、従来よりも高い精度で、魚全体としての鮮度を客観的に推定することができる魚の鮮度推定方法及び鮮度推定装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ね、魚眼での吸光度スペクトルを調べたところ、315nm〜450nmの波長帯域において、魚全体の鮮度(死後経過時間)に依存して特徴的な形状が現れることを発見した。よって、そのような吸光度スペクトルにおける特徴的な形状を利用することで、高い精度で魚の鮮度を推定できるとの知見を得るに至った。
つまり、本発明の一形態に係る魚の鮮度推定方法は、魚の鮮度推定方法であって、315nm〜450nmの波長帯域の全て又は一部を含む光を魚の眼に照射して得られる吸光度スペクトルを取得する吸光度スペクトル取得ステップと、取得された吸光度スペクトルの形状を用いて、前記魚の鮮度を推定する鮮度推定ステップとを含む魚の鮮度推定方法である。
これにより、魚全体の鮮度(魚の死後経過時間)との関連性が高い波長帯域(315nm〜450nm)及び照射対象(魚眼)を用いて得られる吸光度スペクトルの形状に基づいて魚の鮮度が推定される。よって、短時間で、かつ、非接触及び非侵襲で魚の鮮度を推定する方法であって、従来よりも高い精度で、魚全体としての鮮度を客観的に推定することができる魚の鮮度推定方法が実現される。
また、本発明の一形態に係る魚の鮮度推定方法は、魚の鮮度推定方法であって、315nm〜450nmの波長帯域における複数の互いに異なる波長の光それぞれを魚の眼に照射して得られる複数の吸光度を取得する吸光度取得ステップと、取得された複数の吸光度を用いて、前記魚の鮮度を推定する鮮度推定ステップとを含む魚の鮮度推定方法である。
これにより、魚全体の鮮度(魚の死後経過時間)との関連性が高い波長帯域(315nm〜450nm)における複数の互いに異なる波長の光及び照射対象(魚眼)を用いて得られる吸光度(例えば吸光度の差、比等)に基づいて魚の鮮度が推定される。よって、短時間で、かつ、非接触及び非侵襲で魚の鮮度を推定する方法であって、従来よりも高い精度で、魚全体としての鮮度を客観的に推定することができる魚の鮮度推定方法が実現される。
ここで、前記鮮度推定ステップでは、410nm〜430nmの波長帯域に現れる吸光度のピーク値が、魚が腐敗した場合に魚が新鮮な場合と比べて高くなることに基づいて前記魚の鮮度を推定することとしてもよい。
これにより、410nm〜430nmに対応する吸光度のピーク値が新鮮な魚では小さい値になり、一方、新鮮でない魚では大きな値になるという特性を利用して、高い精度で魚の鮮度が推定される。
また、前記鮮度推定ステップでは、315nm〜380nmの波長帯域の任意の波長での吸光度を、410nm〜430nmの波長帯域での吸光度のピーク値から差し引いて得られる第1吸光度差が一定閾値より小さい場合に前記魚が新鮮であると推定することとしてもよい。
これにより、魚眼の吸光度スペクトルでは、315nm〜380nmの波長帯域の任意の波長での吸光度を、410nm〜430nmの波長帯域での吸光度のピーク値から差し引いて得られる第1吸光度差が、新鮮な魚では小さい値になり、一方、新鮮でない魚では大きな値になるという特性を利用して、高い精度で魚の鮮度が推定される。
また、前記鮮度推定ステップでは、450nm以上の波長帯域の任意の波長での吸光度を、410nm〜430nmの波長帯域での吸光度のピーク値から差し引いて得られる第2吸光度差が一定閾値より小さい場合に前記魚が新鮮であると推定することとしてもよい。
これにより、魚眼の吸光度スペクトルでは、450nm以上(例えば450nm〜600nm等)の波長帯域の任意の波長での吸光度を、410nm〜430nmの波長帯域での吸光度のピーク値から差し引いて得られる第2吸光度差が、新鮮な魚では小さい値になり、一方、新鮮でない魚では大きな値になるという特性を利用して、高い精度で魚の鮮度が推定される。
また、前記吸光度スペクトル取得ステップでは、315nm〜380nmの波長帯域に加えて450nm以上の波長帯域を含む光を前記魚の眼に照射して得られる吸光度スペクトルを取得し、前記鮮度推定ステップでは、前記吸光度スペクトルにおける315nm〜380nmの波長帯域での吸光度と、450nm以上の波長帯域での吸光度との差である第3吸光度差に基づいて、前記魚の鮮度を推定することとしてもよい。このとき前記鮮度推定ステップでは、前記第3吸光度差が一定の閾値以下である場合に前記魚は新鮮であり、前記第3吸光度差が前記一定の閾値よりも大きい別の閾値以上である場合に前記魚は新鮮でないと推定することとしてもよい。
これにより、魚眼の吸光度スペクトルでは、315nm〜380nmの波長帯域での吸光度から、450nm以上(例えば450nm〜600nm等)の波長帯域での吸光度を差し引いて得られる第3吸光度差が、新鮮な魚では小さい値になり、一方、新鮮でない魚では大きな値になるという特性を利用して、高い精度で魚の鮮度が推定される。
また、前記吸光度スペクトル取得ステップでは、異なる波長の光を出射する複数の光源を用いることにより、前記吸光度スペクトルを取得することとしてもよい。
これにより、複数の光源を切り替えて魚眼に照射することで簡易に吸光度スペクトルを取得でき、魚眼に照射する光の波長をスイープさせたり複数の波長に分光させたりするための複雑な光学系が不要となる。
また、前記吸光度スペクトル取得ステップでは、前記魚の眼球中の生体液を抽出し、抽出した眼球中の生体液に前記光を照射し、前記眼球中の生体液を透過した光を計測することにより、前記吸光度スペクトルを取得することとしてもよい。
これにより、魚の眼球中の生体液での光の透過特性を利用して、より精度の高い吸光度スペクトルを取得し、より高い精度で、魚の鮮度を推定することができる。
また、前記吸光度スペクトル取得ステップは、分類用として、新鮮な魚と新鮮でない魚を含む複数の魚を対象として前記吸光度スペクトルを取得するステップと、鮮度推定用として、鮮度を推定する対象となる魚を対象として前記吸光度スペクトルを取得するステップとを含み、前記鮮度推定ステップは、前記吸光度スペクトル取得ステップにおいて分類用として取得された複数の前記吸光度スペクトルを、2つのクラスに分類するステップと、前記吸光度スペクトル取得ステップにおいて鮮度推定用として取得された前記吸光度スペクトルが、前記2つのクラスのいずれに属する吸光度スペクトルに類似するかを判定し、その判定の結果に基づいて、前記魚の鮮度を推定するステップとを含むこととしてもよい。
これにより、315nm〜450nmの波長帯域を含む魚眼の吸光度スペクトルは、新鮮な魚のものと新鮮でない魚のものの2種類に自動的にクラスタリングされるという特性を利用して、複雑な判定処理を用いることなく、高い精度で魚の鮮度が推定される。
また、本発明の一形態に係る魚の鮮度推定装置は、魚の鮮度を推定する鮮度推定装置であって、315nm〜450nmの波長帯域の全て又は一部を含む光を魚の眼に照射して得られる吸光度スペクトルを取得する吸光度スペクトル取得部と、取得された吸光度スペクトルの形状を用いて、前記魚の鮮度を推定する鮮度推定部とを備える鮮度推定装置である。
これにより、魚全体の鮮度(魚の死後経過時間)との関連性が高い波長帯域(315nm〜450nm)及び照射対象(魚眼)を用いて得られる吸光度スペクトルの形状に基づいて魚の鮮度が推定される。よって、短時間で、かつ、非接触及び非侵襲で魚の鮮度を推定することができ、従来よりも高い精度で、魚全体としての鮮度を客観的に推定することができる。
ここで、さらに、前記光を魚の眼に照射し、前記眼における反射光又は透過光の強度を検出する分光光度計を備え、前記吸光度スペクトル取得部は、前記分光光度計で検出された反射光又は透過光の強度を用いて前記吸光度スペクトルを算出することにより、前記吸光度スペクトルを取得することとしてもよい。
これにより、分光光度計を用いて対象の魚から吸光度スペクトルを取得できるので、鮮度を推定したい魚が与えられると、その場で、即座に、その魚の鮮度を推定することができる。
また、前記分光光度計は、前記光を照射する対象となる魚の眼球中の生体液を吸い上げて保持するための着脱可能なスポイトを有し、前記スポイトは、吸い上げられた前記眼球中の生体液を溜めておく、石英で形成された液溜り部を有することとしてもよい。
これにより、鮮度を推定したい魚が与えられると、その場で、即座に、魚の眼球中の生体液での光の透過特性を利用して魚の鮮度を推定することができる。
また、さらに、異なる波長の光を出射する複数の光源を有して前記複数の光源それぞれからの光を魚の眼に照射し、前記眼における反射光の強度を検出する反射強度測定器を備え、前記吸光度スペクトル取得部は、前記反射強度測定器で検出された反射光の強度を用いて前記吸光度スペクトルを算出することにより、前記吸光度スペクトルを取得することとしてもよい。
これにより、複数の光源を切り替えて魚眼に照射することで簡易に吸光度スペクトルを取得でき、魚眼に照射する光の波長をスイープさせたり複数の波長に分光させたりするための複雑な光学系が不要となる。
また、本発明の一形態に係る魚の鮮度推定方法は、魚の鮮度推定方法であって、410nm〜430nmの波長帯域における一波長の光を魚の眼に照射して得られる吸光度を取得する吸光度取得ステップと、取得された吸光度を用いて、前記魚の鮮度を推定する鮮度推定ステップとを含む魚の鮮度推定方法である。
これにより、魚全体の鮮度(魚の死後経過時間)との関連性が高い波長帯域(410nm〜430nm)における波長の光及び照射対象(魚眼)を用いて得られる吸光度に基づいて魚の鮮度が推定される。よって、短時間で、かつ、非接触及び非侵襲で魚の鮮度を推定する方法であって、魚の鮮度を客観的に推定することができる魚の鮮度推定方法が実現される。
また、本発明の一形態に係る魚の鮮度推定装置は、魚の鮮度を推定する鮮度推定装置であって、410nm〜430nmの波長帯域における一波長の光を魚の眼に照射して得られる吸光度を取得する吸光度取得部と、取得された吸光度を用いて、前記魚の鮮度を推定する鮮度推定部とを備える鮮度推定装置である。
これにより、魚全体の鮮度(魚の死後経過時間)との関連性が高い波長帯域(410nm〜430nm)及び照射対象(魚眼)を用いて得られる吸光度に基づいて魚の鮮度が推定される。よって、短時間で、かつ、非接触及び非侵襲で魚の鮮度を推定することができ、魚全の鮮度を客観的に推定することができる。
なお、上記鮮度推定方法及び鮮度推定装置の全般的又は具体的な態様は、システム、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、方法、装置、システム、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、本発明の一態様に係る魚の鮮度推定方法及び鮮度推定装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態及びその変形例は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態及びその変形例で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態における魚の鮮度推定装置10の構成を示す図である。この鮮度推定装置10は、魚の鮮度を推定する装置であり、分光光度計20及び端末装置30から構成される。なお、本図には、鮮度を推定する対象となる魚12も併せて図示されている。魚12は、眼の位置を調整することが可能な台(図示せず)等に設置されるのが好ましい。
分光光度計20は、310nm〜450nmの波長帯域の全て又は一部を含む光を魚12の眼に照射し、その分光特性を計測する(反射光又は透過光の強度を検出する)測定器の一例であり、光源21、回折格子22、焦点レンズ23、集光レンズ24及び受光器25を備える。なお、図1には、反射光を検出するタイプの分光光度計20が示されている。
光源21は、310nm〜450nmの波長帯域の全て又は一部を含む光を発する光源の一例であり、例えば、紫外領域から可視領域までの波長の光を発するキセノンフラッシュランプ等である。回折格子22は、光源21から発せられた光を単色光に分光する分光器である。焦点レンズ23は、回折格子22にて分光された光を集光して魚12の眼に照射するレンズである。集光レンズ24は、魚12の眼で反射した光を集光して受光器25に導くレンズである。受光器25は、集光レンズ24を通して入射された反射光の強度を検出する(光を電気信号に変換する)センサであり、例えば、光電子増倍管又はフォトダイオード等である。この分光光度計20によれば、駆動装置(図示せず)からの制御信号によって回折格子22の回折角を変化(スイープ)させることで、紫外領域から可視領域までの波長の光を魚12の眼に照射し、各波長における反射光の強度(つまり、分光特性)を出力することができる。
なお、分光器として、回折格子22に代えて、プリズムが用いられてもよい。また、焦点レンズ23及び集光レンズ24は、任意の構成要素であり、なくてもよく、あるいは、ミラー等の他の光学系に置き換えられてもよい。また、単色光を魚12に照射する代わりに、310nm〜450nmの波長帯域の全て又は一部を含む光(例えば、紫外領域から可視領域までの波長をもつ光)を魚12に照射し、反射又は透過した光を分光して検出することで、上記波長帯域における反射光又は透過光の強度を一括で検出してもよい。
端末装置30は、分光光度計20で得られた分光特性(反射光又は透過光の強度)を用いて魚12の鮮度を推定する処理を行う装置であり、吸光度スペクトル取得部31、鮮度推定部32及び出力部33を備える。
吸光度スペクトル取得部31は、310nm〜450nmの波長帯域の全て又は一部を含む光を魚12の眼に照射して得られる吸光度スペクトルを取得する処理部であり、本実施の形態では、分光光度計20から分光特性(反射光又は透過光の強度)を取得する通信インターフェースと、取得した分光特性から吸光度スペクトルを算出する演算処理部等で構成される。
より詳しくは、吸光度スペクトル取得部31は、分光光度計20から、波長ごとの反射光又は透過光の強度を受け取ると、以下の式1に従って、波長ごとの吸光度を算出することにより、吸光度スペクトルを算出する。
A(r)=−log(I(r)/I0(r)) 式1
ここで、A(r)は、波長rにおける吸光度、I(r)は、波長rにおける反射光又は透過光の強度、I0(r)は、波長rにおける入射光の強度である。なお、吸光度スペクトル取得部31は、上記式1に従って波長ごとの吸光度を算出する際に、入射光の強度I0(r)については、予め内部に保持している値(使用する分光光度計20による入射光の強度)を用いる。
鮮度推定部32は、吸光度スペクトル取得部31で取得された吸光度スペクトルの形状を用いて魚12の鮮度を推定する処理部であり、演算処理部等で構成される。推定の具体例は、後述する。
出力部33は、鮮度推定部32での推定の結果を出力する処理部であり、例えば、魚12が新鮮であるか、又は、新鮮でないかを表示する液晶ディスプレイ等である。なお、出力部33は、推定結果の表示においては、テキストだけでなく、図、色等を用いて推定結果を表示してもよいし、表示出力に代えて、あるいは、表示出力に加えて、音声により、あるいは、外部へのデータ出力により、推定結果を出力してもよい。
なお、吸光度スペクトル取得部31及び鮮度推定部32は、専用の電子回路等によってハードウェア的に実現されてもよいし、プログラムを実行するプロセッサによってソフトウェア的に実現されてもよい。ソフトウェア的に実現される場合には、吸光度スペクトル取得部31及び鮮度推定部32は、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プロセッサの作業領域としての揮発性メモリ、プログラムを実行するプロセッサ、プロセッサによる制御の下で周辺回路との間で信号の授受を行う入出力インターフェース等を備えるコンピュータによって実現される。
図2は、図1に示される鮮度推定装置10の具現例を示す図である。ここでは、図1に示される端末装置30として、スマートフォン(多機能携帯電話機)14が採用されている。スマートフォン14で実行されるアプリ(アプリケーションプログラム)によって、吸光度スペクトル取得部31及び鮮度推定部32が実現されている。吸光度スペクトル取得部31は、有線又は無線の通信インターフェースを介して、分光光度計20から、魚12の眼における反射光又は透過光の波長ごとの強度を取得する。また、図2に示される分光光度計20は、集光レンズ24を通過した光を受光器25に導く反射板26を備え、これにより、小型携帯化されている。本図に示されるようなスマートフォン14及び小型携帯化された分光光度計20を用いることで、魚の販売店、家庭等で、その場で、簡単な操作で、客観的に、魚の鮮度を知ることができる。
なお、本発明に係る鮮度推定装置10では、分光光度計20は、必須の構成要素ではない。分光光度計等を用いて算出された吸光度スペクトルが予め生成されている場合には、吸光度スペクトル取得部31は、そのように予め生成された吸光度スペクトルを取得してもよい。たとえば、吸光度スペクトル取得部31は、端末装置30に接続された補助記憶装置から、そこに格納された吸光度スペクトルを読み出すことで、吸光度スペクトルを取得してもよい。
同様に、本発明に係る魚の鮮度推定装置10では、出力部33は、必須の構成要素ではない。鮮度推定部32での推定結果については、例えば、端末装置30と接続された外部装置がその推定結果を読み出して活用してもよい。
図3は、以上のように構成された本実施の形態における鮮度推定装置10の基本動作(つまり、魚の鮮度推定方法)を示すフローチャートである。
まず、分光光度計20で、310nm〜450nmの波長帯域の全て又は一部を含む光を魚12の眼に照射する(計測ステップS10)。
吸光度スペクトル取得部31は、計測ステップS10での照射によって得られる波長ごとの反射光又は透過光の強度を分光光度計20から取得し、吸光度スペクトルを算出することにより、吸光度スペクトルを取得する(吸光度スペクトル取得ステップS11)。
続いて、鮮度推定部32は、吸光度スペクトル取得部31で取得された吸光度スペクトルの形状を用いて魚12の鮮度を推定する(鮮度推定ステップS12)。具体的な推定方法は、後述する。
最後に、出力部33は、鮮度推定部32での推定の結果を表示する等して出力する(出力ステップS13)。
なお、本発明に係る魚の鮮度推定方法では、分光光度計20による計測ステップ(S10)は必須ではない。たとえば、吸光度スペクトル取得部31は、端末装置30に接続された補助記憶装置から、そこに格納された吸光度スペクトルを読み出すことで、吸光度スペクトルを取得してもよい。
同様に、本発明に係る魚の鮮度推定方法では、出力部33による出力ステップ(S13)も必須ではない。たとえば、鮮度推定部32での推定結果は、端末装置30と接続された外部装置によって読み出され、活用されてもよい。
(鮮度の推定例1)
次に、本実施の形態における鮮度推定装置10による鮮度の推定例1として、410nmから430nmの波長帯域における吸光度スペクトルのピークが魚の死後の時間経過とともに増加することに基づいて魚の鮮度を推定する方法を説明する。
図4は、鮮度の推定例1で用いられる吸光度スペクトル(250nm〜600nmの波長帯域)を示す図である。図4に示す吸光度スペクトルの縦軸(吸光度:units)は、吸光度(入力する光の強度と、透過光強度(或いは反射光強度)との比を1から引いたもの)を対数軸で表したものである。ここでは、ウグイの魚眼における角膜と水晶体の間に存在するジェル状の液体(以後、この液体を「眼球中の生体液」という)について実測で得られた吸光度スペクトルが示されている。なお、ウグイは、コイ目コイ科ウグイ亜科に分類される魚である。ここには、ウグイの死後から36時間後までをおよそ6時間おき(6、12、18、24、30、36hr)に観測された吸光度スペクトルが重ねて表示されている。この実験では、6時間おきにウグイの魚眼から眼球中の生体液のみを注射器にて抽出し、5000rpmの回転速度にて30分間、遠心分離機にかけた後、その上澄み液を1mm×1cmのセル内に入れ、分光光度計20を用いて、250nm〜600nmの光を照射し、得られた上澄み液での透過光の強度から吸光度スペクトルを算出している。なお、魚眼に対して光を照射してその反射光の強度に基づいて吸光度スペクトルを算出しても同じ傾向を有する結果が得られると予想される。
この実験結果から分かるように、新鮮な状態にあるウグイ(ウグイの死後から、ウグイが腐敗すると予想される死後18時間までのウグイ)の吸光度スペクトルでは、410nmから430nmにおけるピークは低いが、24時間以降のウグイの吸光度スペクトルでは、410nmから430nmにおいて高いピークを示している。従って、410nmから430nmの吸光度と、それ以外の安定している(つまり波長変化に対する吸光度変化があまりない)波長帯(例えば315nmから380nmの波長帯)の吸光度との差又は比を算出し、その算出した値の大きさと一定値(閾値)とを比較して、その比較結果の大小により魚が新鮮であるか腐敗しているかを判断することが可能となる。判断の一具体例として、例えば吸光度スペクトルのピークが存在する410nmから430nmの波長帯域における吸光度のピーク値(例えば最大値)と315nmから380nmの波長帯域における吸光度の最大値との差が、閾値(例えば0.2)未満であれば魚が新鮮であり、その閾値以上であれば魚が新鮮ではない(つまり魚が腐敗している)と判断してもよい。
なお、ウグイが新鮮な状態にあるか否かをウグイの死後18時間を超えるか否かで判断した根拠は、次の通りである。
図5は、常温20度の気温環境下で放置したウグイの死後の時間経過(横軸)と腐敗状況を示す硬直指数(縦軸:hardness(N))との関係を示す実験結果である。この実験では、hardnessテスターを使用した。hardnessテスターは、円錐形の先を魚体の筋肉部分に押し当て、その弾力性から魚の硬直度合い(硬直指数)を測る機器である。hardnessテスターで得られる硬直度合い(硬直指数)の単位は、ニュートン(N)である。非特許文献1(“Freshness assessment of cultured see breamby chemical physical and sensory methods” C Alasalver etc. Food chemistry 72 (2001) 33〜40pp)によると、一般的な鮮度指標である上述したK値と比較すると、K値を用いて腐敗したと判断される状況に相当する硬直指数は、およそ5Nであると記載されている。
図5では、魚体の中央部分の3箇所の魚の筋肉に対して硬直指数を調べた平均値がプロットされている。魚は、死後の時間が経つにつれて筋肉が硬直してくるため、硬直指数(hardness(N))は減少してくるが、経験的に腐敗したといわれる硬直指数5Nの値を示した時間は18時間であった。よって、常温でのウグイの腐敗時間は、死後18時間付近であろうと思われる。この実験結果に基づいて、死後18時間までのウグイは新鮮であり、死後18時間を超えるウグイは新鮮でないと判断した。
以上説明した鮮度推定装置10における魚の鮮度の推定に係る動作は、より具体的には、図6のフローチャートに示される通りである。図6は、鮮度の推定例1における鮮度推定部32の動作(つまり、魚の鮮度推定方法)を示すフローチャートである。
鮮度推定部32は、吸光度スペクトルにおける315nm〜380nmの波長帯域での吸光度の最大値X1を算出する(S20)。また、鮮度推定部32は、吸光度スペクトルにおける410nm〜430nmの波長帯域での吸光度のピーク値としての最大値X2を算出する(S21)。
そして、鮮度推定部32は、両最大値の差である第1吸光度差と閾値(例えば0.2)とを比較し(S22)、差が閾値より小さい場合に(S22でYes)、魚は新鮮であると判断(つまり推定)し(S23)、一方、差が閾値以上である場合に(S22でNo)、魚は新鮮でないと判断(推定)する(S24)。この第1吸光度差は、410nm〜430nmの吸光度のピーク値(例えば最大値)から、315nm〜380nmの吸光度の値(例えば最大値等)を差し引いて得られる値である。
以上のように、本実施の形態における鮮度推定装置10及び鮮度推定方法によれば、吸光度スペクトル取得部31によって、315nm〜450nmの波長帯域の全て又は一部を含む光を魚の眼に照射して得られる吸光度スペクトルが取得され、鮮度推定部32によって、410nmから430nmの波長帯の吸光度と、それ以外の安定している315nm〜380nmの波長帯の吸光度との差又は比を算出し、例えばその値の大きさが一定値(閾値)未満であれば魚が新鮮であり、閾値以上であれば腐敗していると判定する。なお、410nmから430nmの波長帯の吸光度は、例えばその波長帯の吸光度の最大値であり、また、それ以外の安定している315nm〜380nmの波長帯の吸光度は、例えばその波長帯の最大値であり、最大値の代わりに最小値、波長帯域内の平均値等でもよい。
これにより、魚全体の鮮度(魚の死後経過時間)との関連性が高い波長帯域(315nm〜450nm)及び照射対象(魚眼)を用いて得られる吸光度スペクトルの形状に基づいて魚の鮮度が推定される。よって、短時間で、かつ、非接触及び非侵襲で魚の鮮度を推定することができ、従来よりも高い精度で、魚全体としての鮮度が客観的に推定される。
なお、上記鮮度の推定例1では、1種類の閾値(第1閾値)を用いて魚の鮮度が推定されたが、複数の閾値を用いてもよい。たとえば、魚の種類、及び、魚の保存状態ごとに、図4に示されるような吸光度スペクトルを取得し、新鮮な魚と新鮮でない魚を区別するための、上述した各波長帯域(410〜430nm、315〜380nm)の吸光度についての差又は比についての閾値を定めておき、それらの閾値を図7に示される閾値テーブル32aのように登録し、鮮度推定部32に保持させておく。そして、鮮度推定部32は、ユーザから、鮮度推定の対象となる魚の種類、及び、その魚の保存状態の入力を受け付けると、閾値テーブル32aを参照することで、受け付けた魚の種類及び保存状態に対応する閾値を読み出し、読み出した閾値を用いて魚の鮮度を推定する。これにより、魚の種類及び保存状態を考慮したより精度の高い鮮度推定ができる。
なお、スペクトルのピークが存在する410nm〜430nm以外の安定している(つまり波長変化に対する吸光度変化があまりない)波長帯としては、上述した315nmから380nmの波長帯以外にも、例えば450nm以上(例えば450nm〜600nm)の波長帯がある。従って、410nm〜430nmの波長帯における吸光度と、450nm以上(例えば450nm〜600nm)の波長帯における吸光度との差又は比の値の大小により魚の新鮮度を推定してもよい。また、その差又は比の値と、予め定めた閾値との比較結果の大小により魚が新鮮であるか否かを判断してもよい。なお、450nm以上においては600nm以上(例えば可視領域を超えた赤外領域の1000nmまで)においても同様に安定的であると予想し得る。450nm以上の波長帯の吸光度を用いた動作例を図8のフローチャートに示す。図8は、鮮度の推定例1における鮮度推定部32の他の動作例を示すフローチャートである。同図に示すように、鮮度推定部32は、吸光度スペクトルにおける450nm以上(例えば450nm〜600nm)の波長帯域での吸光度の最大値X1を算出する(S20a)。また、鮮度推定部32は、吸光度スペクトルにおける410nm〜430nmの波長帯域での吸光度の最大値X2を算出する(S21a)。そして、鮮度推定部32は、両最大値の差である第2吸光度差と閾値(例えば0.3)とを比較し(S22a)、差が閾値より小さい場合に(S22aでYes)、魚は新鮮であると判断(つまり推定)し(S23a)、一方、差が閾値以上である場合に(S22aでNo)、魚は新鮮でないと判断(推定)する(S24a)。この場合の第2吸光度差は、410nm〜430nmの吸光度のピーク値(例えば最大値)から、450nm以上の波長帯での吸光度の値(例えば450nm〜600nmにおける最大値等)を差し引いて得られる値である。この場合に鮮度推定部32が保持する閾値テーブルは、例えば図9に示す閾値テーブル32bのようになる。
(鮮度の推定例2)
次に、本実施の形態における鮮度推定装置10による鮮度の推定例2として、吸光度スペクトルにおける315nm〜380nmの波長帯域での吸光度と450nm以上(例えば450nm〜600nm)の波長帯域での吸光度との差である第3吸光度差に基づいて魚の鮮度を推定する方法を説明する。
図4に示す吸光度スペクトルによれば、腐敗する(新鮮でなくなる)前である18時間以前のスペクトルと、腐敗すると予想される18時間を超えた24時間以降のスペクトルとを比較すると、全体的に腐敗後の吸光度が高くなっている。特に、紫外領域である315nm〜380nmの波長帯域の吸光度は、450nm以上の波長帯域に比べて、腐敗前後の差が大きくなっていることが分かる。
以上の知見に基づいて、この鮮度の推定例2では、まず、吸光度スペクトル取得部31は、315nm〜380nmの波長帯域に加えて450nm以上(例えば450nm〜600nm)の波長帯域を含む光を魚の眼に照射して得られる吸光度スペクトルを取得する。そして、鮮度推定部32は、吸光度スペクトルにおける315nm〜380nmの波長帯域での吸光度と、450nm以上(例えば450nm〜600nm)の波長帯域での吸光度との差である第3吸光度差に基づいて、魚の鮮度を推定する。より詳しくは、鮮度推定部32は、第3吸光度差が一定閾値(閾値A)以下である場合に魚は新鮮であり、第3吸光度差が、その一定閾値よりも大きい別の閾値(閾値B)以上である場合に魚は新鮮でないと推定する。
より具体的には、図10のフローチャートに示される通りである。図10は、鮮度の推定例2における端末装置30の動作例(つまり、魚の鮮度推定方法)を示すフローチャートである。まず、吸光度スペクトル取得部31は、315nm〜380nmの波長帯域に加えて450nm〜600nmの波長帯域を含む光を魚の眼に照射して得られる吸光度スペクトルを取得する(S50)。
そして、鮮度推定部32は、吸光度スペクトルにおける315nm〜380nmの波長帯域での吸光度A(315〜380)から、450nm以上(例えば450nm〜600nm)の波長帯域での吸光度A(450〜600)を差し引くことで、両吸光度Aの差である第3吸光度差を算出する(S51)。
さらに、鮮度推定部32は、第3吸光度差と閾値A(例えば、0.2)及び閾値B(例えば、0.25)と比較する(S52)。その結果、第3吸光度差が閾値A(例えば、0.2)以下である場合(第3吸光度差≦閾値A)に魚は新鮮であり(S53)、第3吸光度差が閾値A(例えば、0.2)より大きく閾値B(0.25)より小さい場合(閾値A<第3吸光度差<閾値B)に魚は腐敗の疑いがあり(S54)、第3吸光度差が閾値B以上である場合(閾値B≦第3吸光度差)に魚は新鮮でないと推定する(S55)。
以上のように、鮮度の推定例2では、鮮度推定部32は、吸光度スペクトルにおける315nm〜380nmの波長帯域での吸光度と、450nm以上(例えば450nm〜600nm)の波長帯域での吸光度との差である第3吸光度差が閾値A以下である場合に魚は新鮮であり、第3吸光度差が閾値B以上である場合に魚は新鮮でないと推定する。
これにより、魚眼の吸光度スペクトルでは、315nm〜380nmの波長帯域での吸光度と450nm以上(例えば450nm〜600nm)の波長帯域での吸光度との差である第3吸光度差が、新鮮な魚では小さい値になり、一方、新鮮でない魚では大きな値になるという特性を利用して、高い精度で魚の鮮度が推定される。
なお、上記鮮度の推定例2では、1組の閾値(一定の閾値である閾値Aと、別の閾値である閾値B)を用いて魚の鮮度が推定されたが、複数組の閾値を用いてもよい。たとえば、魚の種類、及び、魚の保存状態ごとに、図4に示されるような吸光度スペクトルを取得し、新鮮な魚と新鮮でない魚を区別するための、第3吸光度差の閾値の組を決定しておき、それら複数組の閾値を図11に示される閾値テーブル32cのように登録し、鮮度推定部32に保持させておく。そして、鮮度推定部32は、ユーザから、鮮度推定の対象となる魚の種類、及び、その魚の保存状態の入力を受け付けると、閾値テーブル32cを参照することで、受け付けた魚の種類及び保存状態に対応する閾値の組を読み出し、読み出した閾値の組を用いて魚の鮮度を推定する。これにより、魚の種類及び保存状態を考慮したより精度の高い鮮度推定ができる。
(変形例1)
次に、上記実施の形態の変形例1について、説明する。本変形例では、異なる波長の光を出射する複数の光源(単色光の複数の光源)を用いることにより吸光度スペクトルを取得する。
上記実施の形態では、光源21からの光を、回折角を変化させながら回折格子22で分光することで、紫外領域あるいは紫外領域から可視領域にわたる連続的な吸光度スペクトルを取得し、その吸光度スペクトルの形状を用いて、魚の鮮度を推定した。しかしながら、上記鮮度の推定例1、2では、少なくとも2箇所の波長帯域における吸光度がわかれば、吸光度の差又は比の大小を算出し、魚の鮮度を推定できる。例えば、鮮度の推定例1のように吸光度のピークの部分とピーク以外のなだらかな部分(安定している部分)との差からピークが他の部分と比べてどれだけ突出しているかという度合いの大小を判断して魚の鮮度を推定できる。また、例えば、鮮度の推定例2のように2つの異なる波長帯それぞれで安定している部分(つまり波長変化に対する吸光度変化が比較的少ない部分)における吸光度の差の大小を判断して魚の鮮度を推定できる。
そこで、本変形例では、上述した分光光度計20の代わりに反射強度測定器20aを利用することで、異なる波長の光を出射する複数の光源(単色光の複数の光源)を用いて簡易に2つの波長の吸光度を取得し、魚の鮮度を推定する。
図12は、本変形例における反射強度測定器20aの構成を示す図である。この反射強度測定器20aは、図1に示される上記実施の形態における分光光度計20の光源21及び回折格子22に代えて、光源21a及び光源21bと選択器27とが備えられている。反射強度測定器20aは、分光光度計20を変形したものであり、端末装置30とのインターフェースについては分光光度計20と同様である。以下、反射強度測定器20aにおいて、上述した分光光度計20と同一の構成要素には同一の符号を付けて説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
2つの光源21a、21bは、異なる波長の光を出射する複数の光源(単色光の複数の光源)である。選択器27は、2つの光源21a、21bから出射された光の一方だけを選択して通過させる選択スイッチである。この選択器27は、駆動装置(図示せず)からの制御信号によって2つの光源21a、21bのそれぞれを順次、選択することで、異なる波長の2つの光を順次、魚12の眼に照射する。
端末装置30では、吸光度スペクトル取得部31は、反射強度測定器20aから、2つの光源21a、21bのそれぞれから出射された光によって生じた反射光又は透過光の強度を受け取り、上記式1に従って、2つの波長における吸光度を算出することにより、簡易に、吸光度スペクトルを算出する。鮮度推定部32は、吸光度スペクトル取得部31で取得された吸光度スペクトルの形状、つまり、2つの波長における吸光度を用いて、上記鮮度の推定例1、2で説明された手順に従って、魚12の鮮度を推定する。
2つの光源21a、21bの組み合わせ例は、以下の通りである。
(1)組み合わせ例1
一方の光源21aが410nm〜430nmの間の任意の波長を中心波長(ピーク波長)とする狭帯域の光を出射し、他方の光源21bが315nm〜380nm間の任意の波長を中心波長(ピーク波長)とする狭帯域の光を出射する。これにより、上記鮮度の推定例1と同様に、魚の鮮度を推定することができる。
(2)組み合わせ例2
一方の光源21aが410nm〜430nmの間の任意の波長を中心波長(ピーク波長)とする狭帯域の光を出射し、他方の光源21bが450nm以上(例えば450nm〜600nmの間)の任意の波長を中心波長(ピーク波長)とする狭帯域の光を出射する。これにより、上記鮮度の推定例1で示した他の例と同様に、魚の鮮度を推定することができる。
(3)組み合わせ例3
一方の光源21aが315nm〜380nmの波長帯域における波長を含む紫外光を出射し、他方の光源21bが450nm以上の波長帯域の光(例えば450nm〜600nmの波長帯域における波長を含む可視光、或いは更に1000nmまでの波長帯域における波長を含む赤外光)を出射する。これにより、上記鮮度の推定例2と同様に、魚の鮮度を推定することができる。
以上のように、本変形例によれば、複数の光源を切り替えて魚眼に照射することで簡易に吸光度スペクトルを取得でき、魚眼に照射する光の波長をスイープさせたり複数の波長に分光させたりするための複雑な光学系が不要となる。よって、比較的安価で、小型の鮮度推定装置による魚の鮮度推定が可能になる。
(変形例2)
次に、上記実施の形態の変形例2について、説明する。本変形例では、魚の眼球中の生体液を抽出し、抽出した眼球中の生体液に光を照射し、眼球中の生体液を透過した光を計測することにより、吸光度スペクトルを取得する。
上記実施の形態では、魚眼に光をあて、その反射光を用いて魚の鮮度を推定したが、本変形例では、魚眼から眼球中の生体液を抽出し、眼球中の生体液に光をあてた際の吸光度(つまり、透過光)を用いて鮮度を推定する。このような透過光を利用する方法は、反射光を利用する方法に比べ、魚眼から眼球中の生体液を抽出する手間と時間がかかるが、魚の死後の時間変化に伴ってその吸光度が変化することが確認できている眼球中の生体液のみを用いて魚の鮮度を推定できるので(上記鮮度の推定例1、2参照)、より高い精度による魚の鮮度推定が可能となる。
以下、眼球中の生体液の吸光度スペクトルを得る過程を説明する。図13は、本変形例における魚の眼球中の生体液を抽出する装置及び処理手順を示す図である。
まず、魚から眼球中の生体液を抽出する(図13の(a))。図13の(a)に示されるように、魚42はトレイ41上に置かれる。トレイ41上には、魚眼を定位置に置くための印があり、その印の上に魚眼が位置するように、魚42をトレイ41上に置く。トレイ41は、上下に移動する台40の上に載置されており、台40の上方には、注射器43が固定されている。注射器43の針は、トレイ41における魚眼の位置を示す印に向いている。トレイ41に魚42を設置した後、自動又は手動で台40を上昇させ、魚42の眼の角膜に注射器43の針が刺さった状態になったときに、台40の上昇を止める。このとき、角膜の圧力を検知して自動的に台40が停止する機構を設けてもよいし、手動で台40を停めてもよい。魚眼に注射器43の針が刺さった状態で、注射器43のピストン部に固定された押圧器44を引き上げることにより、魚の眼球中の生体液を注射器43に抽出する。
このようにして一定量の眼球中の生体液を抽出した後、眼球中の生体液を遠心分離機46にかける(図13の(b))。眼球中の生体液の上澄み液のみの透過光の強度を測ることで、より歪の少ない吸光度スペクトルを得ることができるからである。そのために、まず、注射器43のピストン部に固定された押圧器44を引き下げることにより、注射器43に溜まった眼球中の生体液を遠沈管45に注入し、遠心分離機46で、遠心分離する。なお、遠心分離の時間としては、例えば、5000rpmにて30分間行うことで、目標となる眼球中の生体液の吸光度スペクトルを得ることができるが、回転速度及び時間はこれに限ることではない。
遠心分離の結果、可視光で透明な部分が上澄み液となるので、この部分(上澄み液)のみを、空にしておいた注射器43に吸い上げ(図13の(c))、これをセル47に入れる(図13の(d))。なお、セル47は、紫外領域から赤外領域までの広帯域にて光を透過する材質でできている必要があり、例えば、石英などで構成されていることが望ましい。
図14は、本変形例における分光光度計20bの構成を示す図である。この分光光度計20bでは、構成要素は、上記実施の形態における実施の形態での分光光度計20と同一であるが、ここでは、反射光ではなく、透過光の強度を検出できるように、集光レンズ24及び受光器25が配置されている。つまり、光源21から出射された光は、回折格子22に入射される。回折格子22に入射された光は、回折格子22にて分光され、焦点レンズ23で集光され、セル47に照射される。なお、焦点レンズ23で集光された光がセル47の適切な位置に照射されるように、セル47が、位置調整が可能な台に載置されていてもよい。
セル47を透過した光は、セル47の後方に設置してある集光レンズ24にて集光され、受光器25に入射する。なお、集光レンズ24は、ここを通過した光が受光器25に集光されるように、位置が調整されている。
なお、端末装置30での処理は、基本的に、上記実施の形態と同一である。つまり、吸光度スペクトル取得部31は、このような透過型の分光光度計20bから、透過光の強度を受け取り、上記式1に従って、各波長における吸光度を算出することにより、吸光度スペクトルを算出する。鮮度推定部32は、吸光度スペクトル取得部31で算出された吸光度スペクトルの形状を用いて、魚42の鮮度を推定する。
以上のように、本変形例によれば、魚の眼球中の生体液の上澄み液における光の透過特性を利用して、より精度の高い吸光度スペクトルを取得し、これにより、より高い精度で、魚の鮮度を推定することができる。
なお、本変形例では、注射器43で眼球中の生体液を抽出し、それを遠心分離機46にて分離した上澄み液をセル47に入れ替えて吸光度スペクトルを取得したが、図15に示されるような液溜り部付きスポイト50に眼球中の生体液を抽出し、液溜り部付きスポイト50ごと分光光度計20bで分光特性を得ることで、吸光度スペクトルを取得してもよい。図15は、本変形例に適用可能な液溜り部付きスポイト50を示す図である。液溜り部付きスポイト50は、図15に示されるように、吸い上げられた眼球中の生体液を溜めておく、石英で形成された液溜り部51を有する。
図16は、液溜り部付きスポイト50を用いて分光特性を得る場合の分光光度計20bの構成を示す図である。ここでは、液溜り部付きスポイト50ごと分光光度計20bで分光特性を得る場合の分光光度計20bの構成が示されている。この分光光度計20bは、図14に示された分光光度計20bにおけるセル47に代えて、光を照射する対象となる魚の眼球中の生体液を吸い上げて保持するための着脱可能な液溜り部付きスポイト50を備える。
このような構成によれば、液溜り部付きスポイト50で魚の眼球中の生体液を抽出し、液溜り部付きスポイト50を分光光度計20bに装着して分光特性を取得し、端末装置30によって上記鮮度の推定例1、2で説明したような処理を行うことで、遠心分離機46を用いることなく、より簡便な方法で手間をかけることなく、魚の鮮度を推定することができる。
また、このような液溜り部付きスポイト50を用いた方法によれば、魚から眼球中の生体液を抽出する手間と時間がかかるが、死後の時間変化とともにその吸光度が変化することが確認できている眼球中の生体液のみを用いて鮮度を判定するので、魚眼からの反射光を用いる方法に比べ、より高精度で魚の鮮度を推定できる。
(変形例3)
次に、上記実施の形態の変形例3について、説明する。本変形例では、統計処理によるクラスタリングによって新鮮な魚の吸光度スペクトルと新鮮でない魚の吸光度スペクトルに分類しておき、鮮度が未知の魚の吸光度スペクトルが、いずれに分類された吸光度スペクトルに類似するかを判定することによって、魚の鮮度を推定する。
上記実施の形態では、魚眼の吸光度スペクトルの形状と魚の鮮度との関係を分析しておき、その分析の結果得られた閾値を用いて、鮮度が未知な魚の吸光度スペクトルの形状から、魚の鮮度を推定した。しかしながら、本発明者らは、吸光度スペクトルの形状と魚の鮮度との関係を分析しておかなくても、様々な魚の吸光度スペクトルに対する統計処理によるクラスタリング(多変量解析)によって、自動的に、新鮮な魚の吸光度スペクトルと新鮮でない魚の吸光度スペクトルとを分類できることを発見した。よって、その分類結果を用いることで、鮮度が未知の魚の吸光度スペクトルから、その魚の鮮度を容易に推定できることが判明した。
図17Aは、本変形例における鮮度推定装置の基本動作(つまり、魚の鮮度推定方法)を示すフローチャートである。この鮮度推定方法は、大きく分けて、2つのステップから構成される。つまり、まず、予め、新鮮な魚の吸光度スペクトルと新鮮でない魚の吸光度スペクトルとを分類(学習)しておく(S60)。次に、その分類結果を用いることで、鮮度が未知の魚の吸光度スペクトルから、その魚の鮮度を推定する(S70)。
図17Bは、図17AにおけるステップS60(事前の分類)の詳細な手順を示すフローチャートである。端末装置30の吸光度スペクトル取得部31は、事前の分類(学習)用として、新鮮な魚と新鮮でない魚とを含む複数の魚を対象として、分光光度計20を用いて、吸光度スペクトル(例えば、315nm〜600nmの波長帯域の吸光度スペクトル)を取得する(S61)。そして、端末装置30の鮮度推定部32は、吸光度スペクトル取得部31において事前の分類(学習)用として取得された複数の吸光度スペクトルを、統計処理によるクラスタリング(多変量解析)により、2つのクラスに分類する(S62)。この分類においては、いずれの吸光度スペクトルが新鮮な魚のものであり、いずれの吸光度スペクトルが新鮮でない魚のものかという教示は不要である。分類対象の全ての吸光度スペクトルが、可能な限り、高い分離度で、2つのクラスに分類されるように、統計処理によるクラスタリング(多変量解析)を実行する。これにより、上述したように、自動的に、新鮮な魚の吸光度スペクトルと新鮮でない魚の吸光度スペクトルとに分類される。
図17Cは、図17AにおけるステップS70(鮮度推定)の詳細な手順を示すフローチャートである。吸光度スペクトル取得部31は、鮮度推定用として、鮮度を推定する対象となる魚を対象として、分光光度計20を用いて、吸光度スペクトル(例えば、315nm〜600nmの波長帯域の吸光度スペクトル)を取得する(S71)。そして、鮮度推定部32は、吸光度スペクトル取得部31において鮮度推定用として取得された吸光度スペクトルが、上記分類(図17AのステップS60;図17BのステップS61〜S62)で得られた2つのクラスのいずれに属する吸光度スペクトルに類似するかを判定し(S72)、その判定の結果に基づいて、魚の鮮度を推定する(S73〜S74)。つまり、判定の結果、鮮度推定用として取得された吸光度スペクトルが新鮮な魚の吸光度スペクトルにより類似する場合には(S72で、「鮮魚クラスに類似」)、その魚は新鮮であると判断し(S73)、一方、鮮度推定用として取得された吸光度スペクトルが新鮮でない魚の吸光度スペクトルにより類似する場合には(S72で、「腐魚クラスに類似」)、その魚は新鮮でないと判断する(S74)。これにより、鮮度が未知な魚の吸光度スペクトルから、その魚の鮮度を推定できる。
なお、類似性については、吸光度スペクトルを多次元ベクトルとみなし、多次元ベクトル同士の距離によって判断してもよい。つまり、新鮮な魚のクラスとして分類された吸光度スペクトルの平均(吸光度スペクトル)と鮮度が未知な魚の吸光度スペクトルとの距離、及び、新鮮でない魚のクラスに分類された吸光度スペクトルの平均(吸光度スペクトル)と鮮度が未知な魚の吸光度スペクトルとの距離のいずれが小さいかで、類似性を判断してもよい。
図18は、本変形例における鮮度推定の結果を示す図である。ここでは、多変量解析の1手法であるSIMCA(Soft Independent Modeling of
Class Analogy)法により作成された2つのクラスと、クラスの学習に用いなかった魚の眼から得られた吸光度スペクトルとの距離をプロットした図が示されている。横軸は、新鮮な魚のクラス(鮮魚クラス)との距離を示し、縦軸は、新鮮でない魚のクラス(腐魚クラス)との距離を示す。丸印のプロットは、事前の分類(学習)用に用いた死後18時間を越える魚(腐魚)のデータであり、四角印のプロットは、事前の分類(学習)用に用いた死後16時間までの魚(鮮魚)のデータであり、三角印のプロットは、テスト用に用いた死後18時間を越える魚(腐魚)のデータであり、+印のプロットは、テスト用に用いた死後16時間までの魚(腐魚)のデータである。なお、クラスとの距離とは、そのクラスに属する吸光度スペクトルの平均(吸光度スペクトル)からの距離である。
事前の分類(学習)用として、8つの魚眼から、死後1時間から96時間まで、1時間ごとに吸光度スペクトルを算出し、それらの吸光度スペクトルを用いた。得られた多数の吸光度スペクトルをSIMCA法にて、2つのクラスに分離した。なお、SIMCA法とは、多変量解析の一手法である(http://www.gls.co.jp/glsoft/chemomet/chemometo/simca/simca.html参照)。なお、統計処理によるクラスタリング(多変量解析)は、SIMCA法に限られず、他のクラスタリング手法であってもよい。
図18の丸印と四角印のプロットから分かるように、SIMCA法により、テスト用に用いた吸光度スペクトルは、死後1−16時間の魚の吸光度スペクトルから構成される鮮度の高い魚に対応するクラスと、死後18時間以降の魚の吸光度スペクトルから構成される鮮度の低い魚に対応するクラスとに分離された。
そして、事前の分類(学習)に用いなかった魚の8つの魚眼から時間変化に伴って得られた吸光度スペクトルについて、既に分類された2つのクラスとの距離を算出すると、鮮度の高い魚(死後16時間までの魚)に対応する吸光度スペクトルは、鮮度の高いクラスと距離が近く、また、鮮度の悪い魚(死後18時間以降の魚)に対応する吸光度スペクトルは、鮮度の低いクラスと距離が近かった。この手法による鮮度推定の正答率は、90%以上の高い確率であった。このように高い精度で鮮度を推定できたのは、魚の眼球中の生体液の吸光度スペクトルが、鮮度の高い魚と鮮度の低い魚とで、異なる特徴を有することによると考えられる。
以上のように、本変形例によれば、統計処理によるクラスタリングによって新鮮な魚の吸光度スペクトルと新鮮でない魚の吸光度スペクトルに分類しておき、鮮度が未知の魚の吸光度スペクトルが、いずれに分類された吸光度スペクトルに類似するかを判定することで、魚の鮮度が推定された。これにより、例えば315nm〜450nmの波長帯域を含む魚眼の吸光度スペクトルは、新鮮な魚のものと新鮮でない魚のものの2種類に自動的にクラスタリングされるという特性を利用して、複雑な判定処理を用いることなく、高い精度で魚の鮮度が推定される。
(変形例4)
次に、上記実施の形態の変形例4について、説明する。本変形例では、上述した吸光度スペクトル(図4参照)において吸光度のピークが現れる一定の波長帯(例えば410nm〜430nm)における一波長の光を出射する単一の光源(単色光の光源)を用いることにより吸光度を取得する。このように一波長での吸光度によっても、鮮度の推定対象となる魚の種類、魚の周囲の湿度等の条件をある程度定めておくことにより、魚の鮮度の推定が可能となる。
そこで、本変形例では、上述した実施の形態の変形例2で示した反射強度測定器20aの代わりに反射強度測定器20cを利用することで、単色光の単一光源を用いて簡易に吸光度を取得し、吸光度を予め定めた閾値と比較することで、魚の鮮度を推定する。このため、吸光度スペクトルを用いる端末装置30の代わりに、1つの吸光度から魚の鮮度を推定するための端末装置30aを用いる。吸光度がその閾値より小さければ魚が新鮮であると推定でき、閾値以上であれば新鮮でないと推定できる。閾値は、予め魚の種類毎に実験して定めることができ、例えば図4に基づいて魚の死後の経過時間が18時間の場合の吸光度を新鮮であるか否かの境界として閾値を定めることができる。具体的には、例えば、0.3±0.05を閾値とすることができる。
また、例えば魚の周囲の湿度を一定にするために、魚を食品用ラップフィルムで覆って湿度をおよそ90%程度に保った状態において吸光度の測定が行われるようにしてもよい。
図19は、本変形例における鮮度推定装置10a(端末装置30a及び反射強度測定器20c)の構成を示す図である。端末装置30aは、図1で示した端末装置30の吸光度スペクトル取得部31の代わりに吸光度取得部31aを備え、鮮度推定部32の代わりに1つの吸光度と閾値との比較により魚の鮮度の推定する鮮度推定部39を備える。反射強度測定器20cは、図12に示される反射強度測定器20aの光源21bと選択器27とを除いて支持器29を加えたものである。以下、端末装置30a及び反射強度測定器20cにおいて、上述した端末装置30及び反射強度測定器20aと同一の構成要素には同一の符号を付けて説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
光源21aは、410nm〜430nmの波長帯における一波長の単色光を発する光源である。支持器29は、光源21aの光軸を一定範囲で移動可能となるように光源21aを支持する機構である。
受光器25aは、集光レンズ24を通して入射された反射光の強度を検出する(光を電気信号に変換する)センサであり、例えば、光電子増倍管又はフォトダイオード等である。
反射強度測定器20cでは、光源21aから照射された光が焦点レンズ23を経由して魚の眼に当たる位置を、支持器29によって変化させて複数回の測定を行う。魚の眼からの反射光を、集光レンズ24を経由して受光することにより受光器25aは、複数回の測定で検出した反射光の強度のうち最大の強度のものを端末装置30aに送出する。
端末装置30aの吸光度取得部31aは、410nm〜430nmの波長帯域における光を魚の眼に照射して得られる吸光度を取得する処理部であり、反射強度測定器20cから反射光又は透過光の強度を取得する通信インターフェースと、上述の式1に従って吸光度を算定する演算処理部等で構成される。
鮮度推定部39は、吸光度取得部31aで取得された吸光度を用いて魚12の鮮度を推定(つまり魚の鮮度推定方法を実行)する処理部であり、演算処理部等で構成される。
端末装置30aでは、吸光度取得部31aが、反射強度測定器20cから、光源21aから出射された光によって生じた反射光又は透過光の強度を受け取り、上記式1に従って、吸光度を算出する。そして、鮮度推定部39が、その吸光度と閾値とを比較することにより、魚が新鮮か否かを推定し、出力部33がその推定結果を出力する。例えば、鮮度推定部39では、吸光度が閾値より小さい場合に、魚が新鮮であると判断(推定)し、吸光度が閾値以上であれば腐敗していると判断(推定)する。
以上のように、本変形例によれば、単一の光源を用いて光を魚眼に照射する簡易な構成で魚の鮮度推定が可能になる。なお、支持器29によって光源21aの光軸を変化させなくても(つまり支持器29がなくても)、魚12の眼と反射強度測定器20cから照射される光の光軸との位置関係を変化させて複数回の測定を行って、吸光度の平均値、最大値等を用いることである程度精度良く魚の鮮度推定を行うことができる。
以上、本発明の一つまたは複数の態様に係る魚の鮮度推定方法及び鮮度推定装置について、実施の形態及びその変形例に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態又は変形例に施したものや、異なる実施の形態又は変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
たとえば、上記実施の形態及び変形例では、鮮度推定部32は、魚が新鮮であるか新鮮でないか、あるいは、魚が新鮮であるか腐敗の疑いがあるか新鮮でないかを推定した。しかしながら、このような2段階及び3段階での推定に限られず、鮮度推定部32は、吸光度スペクトルにおける吸光度差又は比と閾値との差分、あるいは、鮮度が未知の魚の吸光度スペクトルと新鮮な魚のクラスとの距離の大きさに依存して、新鮮である可能性を確率つきで推定してもよい。
また、上記実施の形態では、複数の鮮度の推定例が示され、上記変形例では、クラスタリングによる鮮度の推定例が示されたが、これらの複数の推定例は、選択的に用いられてもよいし、任意に組み合わせることで用いられてもよい。いずれの推定例を用いるかは、端末装置30における事前の設定で決定されてもよいし、端末装置30とユーザとの対話によって都度、決定されてもよい。
また、上記実施の形態における魚の鮮度推定方法は、次のようなプログラムによって実現されてもよい。そのプログラムは、コンピュータに、315nm〜450nmの波長帯域の全て又は一部を含む光を魚の眼に照射して得られる吸光度スペクトルを取得する吸光度スペクトル取得ステップと、取得された吸光度スペクトルの形状を用いて、魚の鮮度を推定する鮮度推定ステップとを実行させる。このようなプログラムにより、従来よりも高い精度で、魚全体としての鮮度を客観的に推定することができる魚の鮮度推定方法が実現される。
また、上記実施の形態では、315nm〜450nmの波長帯域の光を用いる等と記載し、また、315nm〜380nmの範囲、410nm〜430nmの範囲、また、600nm、1000nm等の波長を示したが、魚の個体差や測定環境等の影響で、波長帯域の範囲或いは個々の波長は、実際には±5nm程度の余裕(誤差)を考慮すべきである。このため実際に用いられるべき波長帯域の範囲は、例えば、315nm±5nm〜450nm±5nm、315nm±5nm〜380nm±5nm、410nm±5nm〜430nm±5nm等となる。
また、上記実施の形態では、鮮度推定装置10の主要な処理部(吸光度スペクトル取得部31、鮮度推定部32)は、1台の端末装置30で構成され、鮮度推定装置10aの主要な処理部(吸光度取得部31a、鮮度推定部39)は、1台の端末装置30aで構成されたが、複数の端末装置及びコンピュータにより構成されてもよい。つまり、複数の端末装置及びコンピュータが、通信を行うことで、連携して、魚の鮮度を推定する処理を実行してもよい。