JP2019167582A - アーク溶射方法 - Google Patents

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【課題】新規な手段によって溶射形成される擬合金溶射層aの組成をコントロールする。【解決手段】2本の異なる組成の溶射用線材1、2をアーク溶射によって被溶射物Pに溶射し、被溶射物Pにはそれぞれの溶射用線材1、2が合わさった擬合金溶射皮膜aが形成される。このとき、両溶射用線材間に印加する電圧を調整する。その電圧Vが高くなると、Znの含有量は増加しているのに対し、Alは減少している。このことから、2本の成分の異なる溶射用線材を送給しながら両溶射用線材の交差部にアークを発生させ、その熱によって生じた溶融部分を気体で噴射して擬合金溶射皮膜を形成する際、前記二本の溶射用線材の間の電圧を制御することによって、前記擬合金溶射皮膜の前記二つの成分の含有量を異ならせて、組成の異なる前記擬合金溶射皮膜を形成し得ることが理解できる。【選択図】図3

Description

この発明は、二本の成分の異なる溶射用線材でもって擬合金溶射皮膜を形成するアーク溶射方法に関する。
自動車工業や航空機工業、化学工業等のさまざまな分野で耐摩耗性や耐熱性、断熱性などの向上を目的に種々の部材表面に溶射皮膜を形成することが行われている。また、橋梁や鉄鋼構造物、上下水道など地中に埋設して使用する鉄系金属管などは耐食性向上を目的にその管等の内外周面に金属溶射による皮膜形成が行われている。
その耐食性が求められる環境では、通常、亜鉛(Zn)を含む擬合金溶射が行われ、亜鉛は犠牲陽極作用によって腐食に対する保護層として働く。
その擬合金溶射は、図5に示すように、2本の異なる組成の溶射用線材(ワイヤー)1、2をアーク溶射によって被溶射物Pに溶射し、被溶射物Pにはそれぞれの溶射用線材1、2が合わさった擬合金溶射皮膜aが形成される方法である。
そのアーク溶射を行う装置Aは、溶射用線材1、2がそれぞれのドラム1a、2aから送り出しローラ3、3によって溶射ヘッド4の線材供給管5、5に繰り出され、線材1、2は電源Eによって所要の電圧Vが印加されている。このため、対の線材供給管5から送り出された両溶射用線材1、2はその先端部でアーク6が生じ、そのアーク6でもって両溶射用線材1、2を溶融し、その溶融した線材をなす亜鉛等が噴流管7からの空気等のガス噴流bによって被溶射物Pに吹き飛ばされて溶射され、その表面に擬合金溶射皮膜aが形成される(特許文献1明細書段落0019〜0023、図1等参照)。
特開2013−151709号公報
近年、さらなる耐食性向上のため、亜鉛スズマグネシウム(Zn−Sn−Mg)合金と亜鉛の擬合金溶射や、アルミニウムシリコン(Al−Si)合金とアルミニウムマグネシウム(Al−Mg)合金の擬合金溶射が開発され、その耐食性が向上したことが報告されており、今後もより優れた耐摩耗層や耐食層の開発が望まれると考えられる。
この耐摩耗性や耐食性向上が期待できる成分が開発された場合でも、その成分によっては加工性が低下し、伸線が困難な場合がある。すなわち、溶射用線材は、一般に、太い径の線材を伸線して所定の細い径に加工している。このとき、溶射用線材の成分によっては、線材の加工性が低下して、線材の伸線時に断線し易くなることがあり、このような場合には、所望の成分を有する溶射用線材を製造することが困難となり、これにより、所望の組成を有する擬合金溶射皮膜を形成することが困難になる。 例えば、Zn−Sn−Mg系合金線材においては、Sn量が少ないと、若干脆くなり、このため加工性が低下して伸線時に断線し易くなる。このことから、Sn量が30質量%以下の合金線材、例えばZn−30Sn−0.3Mg線材を製造することは困難であった。これにより、上記のような一方の溶射用線材にZn−Sn−Mg系合金線材を用い、他方の溶射用線材にZn線材を用いたアーク溶射では、Sn量が約15質量%程度又はそれ以下である所望の組成の擬合金溶射皮膜を形成することは困難であった(特許文献1明細書段落0005〜同0006)。
このため、加工性が高く、伸線が容易な組成の溶射用線材とし、アーク溶射時の工夫によって擬合金溶射層の組成を所要のものとすることが考えられる。
その一例として、溶射用線材の送線速度を変えたり、2本の溶射用線材を異なる線径にしたりすることによって、溶射形成される擬合金溶射層の組成をコントロールする方法が提案されている(特許文献1特許請求の範囲)。
しかし、この方法は、溶射用線材の線径の微調整が困難なため、擬合金組成の細かい調整ができない。また、線径の異なる溶射用線材を変えるための設備変更に時間がかかるうえに、2本の溶射用線材の径が異なると、アーク発生時のバランスが悪くなり、溶射が真っ直ぐ飛ばない等の問題がある。
この発明は、以上の実状の下、他の手段でもって、溶射形成される擬合金溶射層の組成をコントロールすることを課題とする。
上記課題を達成するため、この発明は、擬合金溶射時の印加電圧によって歩留りの変化率が溶射用線材の組成によって異なることから、2本の異なる溶射用線材に印加する電圧を制御することによってさまざまな組成の擬合金溶射皮膜を形成するようにしたのである。
すなわち、サンドブラストした鋼板を用意し、図4に示すように、その鋼板11を円管12の外周面に貼り付け、円管12の中央部に図5の溶射ヘッド(溶射ガン)4を向け、その溶射ヘッド4を一定速度で軸方向に走査させ、それに伴って、鋼板11に付着した溶材量を測定した。溶射材は、亜鉛(Zn)、アルミニウム合金(Al−12Si)を使用し、その亜鉛/亜鉛、アルミニウム合金/アルミニウム合金、亜鉛/アルミニウム合金の組み合わせの溶射用線材1、2において、アーク電圧(V)、送線量(送線速度)一定、走査方向量(パス数)を変化させた実験における「歩留り」を測定した。その結果を表1に示し、アーク電圧:26Vのときの歩留りを基準:1とした歩留りを図1、図2に示す。表1中、パス数:1は一方向のみの走査、例えば往路のみの走査、同4は二往復の走査をいう。
Figure 2019167582
この表1、図1から、溶射用線材1/2:亜鉛/亜鉛の亜鉛合金「歩留り変化率」はアーク電圧の上昇に連れて緩やかに傾斜しているが、同アルミニウム合金/アルミニウム合金のアルミニウム合金「歩留り変化率」はアーク電圧の上昇に連れて急に傾斜している。また、表1、図2から、溶射用線材1/2:亜鉛/アルミニウム合金の亜鉛・アルミニウム合金「歩留り変化率」は、前記亜鉛合金とアルミニウム合金との間の傾斜となっている。
以上から、溶射用線材1、2に種々の組成のものを使用し、その両線材1、2間に印加する電圧Vを適宜に調整することによって、それらの線材1、2の歩留り量が異なり、歩留りは、溶射皮膜aの含有量と考えることができることから、溶射用線材1、2間への印加電圧Vによって、溶射皮膜aにおけるその線材1、2の組成成分が異なる(調整し得る)ことが分かる。
この発明による擬合金溶射皮膜形成の対象物としては、上記のように、自動車工業や航空機工業、化学工業等のさまざまな分野で耐摩耗性や耐熱性、断熱性などの向上を目的とする種々の部材や、橋梁や鉄鋼構造物、上下水道など地中に埋設して使用する鉄系金属管などは耐食性向上を目的とする管内外周面等が挙げられる。鉄系金属管にはダクタイル鋳鉄管などがある。
この発明は、以上のように構成し、2本の異なる溶射用線材に印加する電圧を制御するようにしたので、さまざまな組成の擬合金溶射皮膜層を形成することができる。
アーク電圧と歩留りの関係図 同関係図 アーク電圧とZn、Alの含有量関係図 アーク溶射による皮膜形成方法を示し、(a)は側面概略図、(b)は正面概略図 同詳細側面図
上記表1、図1、図2の実験結果に基づき、同様に、図4に示したように、サンドブラストしていない鋼板11を円管12の外周面に貼り付け、円管12の中央部に図5の溶射ヘッド(溶射ガン)4を向け、その溶射ヘッド4を一定速度で軸方向に走査させ、それに伴って、鋼板11に付着した溶材量を測定した。溶射用線材1、2は、φ2.0mmの亜鉛、アルミニウム合金(Al−12Si)を使用し、アーク電圧(V)、送線量:一定(26.7g/10秒)、走査方向量(パス数:4)における、鋼板11表面の溶射皮膜aの亜鉛及びアルミニウムの含有量(mass%)を測定した。その測定は、鋼板11に付着する溶射皮膜aを採取してその皮膜aを粉砕し、X線回折装置(XRD)により、その中のZnとAlの含有量を測定した。その結果を、表2、図3に示す。
Figure 2019167582
この表2、図3から、電圧Vの増加によって(電圧Vが高くなると)、Znの含有量は増加しているのに対し、Alは減少している。このことから、二本の成分の異なる溶射用線材を送給しながら両溶射用線材の交差部にアークを発生させ、その熱によって生じた溶融部分を気体bで噴射して擬合金溶射皮膜aを形成する際、前記二本の溶射用線材1、2の間の電圧Vを制御することによって、前記擬合金溶射皮膜aの前記二つの成分の含有量を異ならせて、組成の異なる前記擬合金溶射皮膜aを形成し得ることが理解できる。
上記実施形態は、異なる溶射用線材1、2が亜鉛とアルミニウム合金でもって擬合金溶射皮膜aを形成する場合であったが、亜鉛スズマグネシウム合金と亜鉛、又はアルミニウムシリコン合金とアルミニウムマグネシウム合金等の各種金属、合金の擬合金溶射皮膜を形成する場合に、この発明は採用し得ることは勿論である。
また、溶射用線材1、2は同一径、送線速度(送線量)は一定とし、電圧Vの調整のみを行ったが、電圧Vの調整に加えて、溶射線径や送線速度の調整を行っても良い。すなわち、同一径が好ましいが、線径や送線速度が異なれば、その径などの異なりによる電圧に基づく組成の変化率を測定して、その測定値に基づいて溶射被覆を行うことができる。
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1、2 溶射用線材
3 送りローラ
4 溶射ヘッド(溶射ノズル)
5 線材供給管
6 アーク
11 鋼板
12 円管
A アーク溶射装置
E 電源
P 被溶射物
V 電圧
a 皮膜
b 気体(噴流)

Claims (1)

  1. 二本の成分の異なる溶射用線材(1、2)を送給しながら両溶射用線材(1、2)の交差部にアーク(6)を発生させ、その熱によって生じた溶融部分を気体(b)で噴射して擬合金溶射皮膜(a)を形成する際、前記二本の溶射用線材(1、2)の間の電圧(V)を制御することによって、前記擬合金溶射皮膜(a)の前記二つの成分の含有量を異ならせて、組成の異なる前記擬合金溶射皮膜(a)を形成することを特徴とするアーク溶射方法。
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