JP2020037538A - アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドの医薬用途 - Google Patents

アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドの医薬用途 Download PDF

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Abstract

【課題】安価に大量生産可能なアンジオテンシン変換酵素2活性を有するポリペプチドの医薬用途を提供する。【解決手段】アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドであって特定アミノ酸配列をその活性部位に含むポリペプチドまたはその誘導体を有効成分として含有する、高血圧、心不全、心組織線維化症、急性呼吸窮迫症候群または急性肺傷害等を処置または予防するための医薬組成物に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、原核微生物由来カルボキシペプチダーゼの医薬用途、詳細にはアンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来のカルボキシペプチダーゼの医薬用途に関する。より詳細には、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するポリペプチドにおける高血圧改善、心不全改善、急性呼吸窮迫症候群改善等の作用を有する医薬組成物に関する。
アンジオテンシン変換酵素2は、ヒトを含む哺乳類の血圧調整機構であるレニン−アンジオテンシン系において重要な酵素の一つである。図3にレニン−アンジオテンシン系の血圧調整機構を示す。
レニンは、主に腎臓の傍糸球体細胞で生合成され、様々な刺激で血中に放出され、肝臓で合成される基質タンパクであるアンジオテンシノーゲンに作用してアンジオテンシンIを遊離する。
アンジオテンシンIは、主に肺循環中において、アンジオテンシン変換酵素やキマーゼによりアンジオテンシンIIに変換される。生じたアンジオテンシンIIは、AT1受容体に作用し、血管収縮、細胞増殖、肥大などを引き起こす。また、アンジオテンシンIIは、AT2受容体にも作用し、血管拡張、増殖抑制などを引き起こす。
一方、アンジオテンシン変換酵素2は、アンジオテンシンIまたはアンジオテンシンIIに作用して、それぞれアンジオテンシン(1−9)またはアンジオテンシン(1−7)を遊離する。また、アンジオテンシン(1−9)はアンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きでアンジオテンシン(1−7)に変換される。
アンジオテンシン(1−7)はMas受容体に作用し、血管拡張、増殖抑制等の作用を引き起こす。これらの作用は血圧降下を惹起するのみではなく、急性呼吸促迫症候群(ARDS)発症時における炎症を抑制する効果ももたらす。例えば、呼吸不全(非特許文献1)や心不全のモデルマウス(非特許文献2および非特許文献3)にアンジオテンシン変換酵素2を投与すると症状が改善することが報告されている(特許文献1)。アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)がマウスでも重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスの受容体であることを証明し、SARSウイルス感染により肺のACE2タンパク質の発現量が減少することが、SARSウイルスがARDS/急性肺傷害の病態を増悪させる原因の一つであることが知られている(非特許文献4)。非特許文献5は、ヒトACE2の基質特異性および酵素活性のpH依存性や、NaCl濃度依存性を明らかにしている。非特許文献6では、ACE2の酵素活性を組換えACE2タンパク質を用いて解析し、さまざまなペプチドに対するACE2の酵素活性が検討されている。
動物由来のACE2は、多様な糖鎖を持つ糖タンパク質であり、疎水性細胞膜貫通領域を持つ膜タンパク質であることから、大量生産は難しく、遺伝子組換え技術を利用して大量に生産できるものが求められていた。組換えACE2、ACE2の製造および使用方法は、特に非特許文献7、特許文献2、特許文献3、または特許文献4に記載されている。遺伝子組換え技術を用いたアンジオテンシン変換酵素2に関する研究として、昆虫由来のアンジオテンシン変換酵素2が知られている(特許文献5)。
特表2008-540600公報 WO2000/18899公報 WO2002/012471公報 WO2004/000367公報 特表2011-519264公報
Imai et. al., Nature 436, 112-116, 2005 Zhong et al., Circulation 122, 717-728, 2010 Sato et al., J. Clin. Invest. 123, 5203-5211, 2013 Kuba K et al., Nat Med. Aug;11(8):875-9, 2005 Takahashi et al. , Biomedical Research, Vol. 36 , No. 3, p. 219-224, 2015 Vickers et al., J. Biol. Chem. 277, 14838-14843, 2002 Crackower et al., Nature 417, 822-828,2002
本発明者らは、ACEがアンジオテンシンIIを産生し、血圧上昇あるいは疾患の増悪をもたらすのに対し、ACE2はアンジオテンシンIIを分解し、血圧低下あるいは疾患の改善作用をもたらすという有用性に着目し、ACE2の医薬としての用途を目指した。しかしながら、既知のACE2は動物由来の糖タンパク質であり、組換え技術を用いて調製するにも、宿主として真核細胞微生物または哺乳動物細胞を用いる必要があり、大量生産には適していない。そこで、動物以外を由来とするACE2の発見を目的として、医薬として利用できる物質の探索を試みた。
本発明者らは、意外にも、Lee MM, et al., Proteins 77(3), 647-657, 2009に記載されているBacillus subtilis細菌由来カルボキシペプチダーゼ(BS−CAP)がACE2とよく似た立体構造を有していることをin silicoスクリーニングによって、初めて見出した。つづいて、BS−CAPとのアミノ酸配列の相同性を検索したところ、Paenibacillus sp. B38細菌由来カルボキシペプチダーゼ(B38−CAP)ならびにBacillus amyloliquefaciens細菌由来カルボキシペプチダーゼ(BA−CAP)を見出した。文献検索により、B38−CAPは新規であることが判明した。一方、BA−CAPはDunlap,C.A., et al., Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 65, 2104-2109, 2015にそのゲノムDNAの配列が記載され、またデータベースにその推定アミノ酸配列が記載され、カルボキシペプチダーゼであることが示唆されているが、そこにはBA−CAPが実際にタンパク質として単離され、活性測定されたことは記載されていない。
本発明者らは実際、大腸菌のタンパク質発現システムを用いて、BS−CAP、B38−CAPならびにBA−CAPの組み換えタンパク質を調製した。BS−CAP、B38−CAP、BA−CAPは、いずれも試験管内においてACE2と同様の比活性でアンジオテンシンIIを分解し、アンジオテンシン1−7に変換した。本発明者らは、B38−CAPおよびそれをコードする核酸配列について特許出願している(PCT/JP2018/7338(出願日:2018年2月27日)公報)。ここでは、糖鎖のない可溶性アンジオテンシン変換酵素2活性を有する酵素を提供し、原核微生物による大量生産の可能な遺伝子、前記遺伝子を含有する発現プラスミドおよび前記発現プラスミドにより形質転換された形質転換体を提供している。
本発明者らはさらに、BS−CAP、B38−CAP、BA−CAPのアンジオテンシン変換酵素2(以下、ACE2と略す場合がある。)活性についてNaCl濃度依存性を調べたところ、B38−CAPがNaCl濃度依存的に顕著な酵素活性の上昇を示したため、生体内においてACE2活性を示すことが考えられた。また、組換えタンパク質の生産に関しても、B38−CAPの生産効率が高いことが分かった。そこで、マウスにB38−CAPを投与したところ、血漿中のアンジオテンシンII濃度が有意に低下した。さらに、B38−CAP投与は、アンジオテンシンII持続投与によって誘導される血圧上昇、心肥大、線維化を抑制した。また、B38−CAP投与は、大動脈縮窄手術(TAC)圧負荷ストレスによって引き起こされる心肥大、線維化、心機能低下を有意に改善した。さらに、マウス盲腸結紮穿孔(CLP)による敗血症性のARDSモデルにおいて、B38−CAPの腹腔内1回投与は、マウスの生存率ならびに肺の急性炎症を有意に改善した。また、マウスへの2週間のB38−CAP持続投与後でも肝機能、腎機能に異常は認めなかった。
以上の結果から、B38−CAPが動物の生体内においてACE2と同様のカルボキシペプチダーゼとしてアンジオテンシンIIを分解することが分かり、ヒトや動物の循環器疾患ならびにARDSに対して実際に治療薬となることを見出し、本発明を完成した。
したがって、本発明は、以下の態様を含む。
<原核微生物由来ポリペプチドを含有する医薬組成物>
[1]
アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドであって、下記のアミノ酸配列をその活性部位に含むポリペプチド:
1)His-Glu-Xaa-Xaa-His(配列番号26)のアミノ酸配列(ここに、Xaaは任意のアミノ酸残基である)、および
2)His-Glu-(Ser/Gly)のアミノ酸配列(ここに、Ser/GlyはSerまたはGlyを意味する)、またはその誘導体を有効成分として含有する、医薬組成物。
[2]
アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドが、配列番号6から8および10から17記載のアミノ酸配列を有するペプチドおよびその変異体、ならびに
Nam-Xaa-Pro-Lys(Dnp)-OH (ここに、Namは2−メチルアミノベンゾイル、XaaはLeu、Met、Ile、Phe、Val、Trp、Arg、Tyr、Thr、Lys、His、Ala、Asn、Gln、Ser、Proのうち任意のアミノ酸残基、Dnpは2,4−ジニトロフェニルを示す)、
・Nma-Phe-His-Lys(Dnp)-OH (ここに、NamおよびDnpは前記と同様)、
・Cbz(カルボベンゾキシ)-Phe-Tyr、Z(ベンジルオキシカルボニル)-Ala-Xaa (ここに、XaaはArg、His、Trp、Tyr、Phe、Ile、Ala、Val、Ser、Met、Asn、Glu、Glyのうち任意のアミノ酸残基)、
・Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa(N3-(2,4-ジニトロフェニル)-L-2,3-ジアミノプロピオニル)-Ala-Ala-Trp、
・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp、および
・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp 、
のうち、少なくとも1つのペプチドのC末端アミノ酸残基を1残基切断する活性を有している、[1]記載の医薬組成物。
[3]
アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドが、配列番号7記載のアミノ酸配列を有するペプチドのC末端アミノ酸残基を1残基切断する活性を有している、[1]または[2]記載の医薬組成物。
[4]
原核微生物由来ポリペプチドが、Leishmania属、Escherichia属、Gimesia属、Thermus属、Chloroflexus属、Deinococcus属、Parachlamydia属、Fusobacterium属、Leptotrichia属、Bacillus属、Chlamydia属、Paenibacillus属、Clostridium属、Leptospira属、Enterococcus属、Geobacillus属、Haloferax属、Halorubrum属、Roseobacter属、Thermococcus属、Pyrococcus属、Leuconostoc属、Haloarcula属、およびRhodobacter属の中から選ばれる少なくとも1つの属から産生される、[1]から[3]までのいずれか記載の医薬組成物。
[5]
原核微生物由来ポリペプチドが、Bacillus属およびPaenibacillus属の中から選ばれる少なくとも1つの属から産生される、[4]記載の医薬組成物。
[6]
原核微生物由来ポリペプチドが、Leishmania major、Escherichia coli、Gimesia maris、Thermus aquaticus、Chloroflexus aurantiacus、Deinococcus radiodurans、Parachlamydia acanthamoebae、Fusobacterium nucleatum、Leptotrichia goodfellowii、Bacillus cereus、Chlamydia trachomatis、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Paenibacillus sp. B38、Clostridium saccharolyticum、Leptospira interrogans、Thermus thermophilus、およびPyrococcus furiosusの中から選ばれる少なくとも1つの菌株から産生される、[4]記載の医薬組成物。
[7]
原核微生物由来ポリペプチドが、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、およびPaenibacillus sp. B38の中から選ばれる少なくとも1つの菌株から産生されるポリペプチドである、[6]記載の医薬組成物。
[8]
原核微生物由来ポリペプチドが、糖鎖を有していない、[1]から[7]のいずれか記載の医薬組成物。
[9]
原核微生物由来ポリペプチドが、以下の中から選ばれる少なくとも1つである、[1]から[8]のいずれか記載の医薬組成物:
1)配列番号20記載のアミノ酸配列を有するBS−CAP、
2)配列番号20記載のアミノ酸配列を有するBS−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するBS−CAP変異体、
3)配列番号24記載のアミノ酸配列を有するBA−CAP、
4)配列番号24記載のアミノ酸配列を有するBA−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するBA−CAP変異体
5)配列番号1記載のアミノ酸配列を有するB38−CAP、および
6)配列番号1記載のアミノ酸配列を有するB38−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するB38−CAP変異体。
[10]
高血圧、心不全、心組織線維化症、急性呼吸窮迫症候群または急性肺傷害、例えば酸吸引もしくは敗血症により誘発される重症急性肺損傷、肺水腫、または重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス感染もしくはインフルエンザウイルス感染関連肺損傷および障害が原因となるものを処置または予防するための、[1]から[9]のいずれか記載の医薬組成物。
<原核微生物由来ポリペプチド>
[11]
アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドであって、下記のアミノ酸配列をその活性部位に含むポリペプチド:
1)His-Glu-Xaa-Xaa-His(配列番号26)のアミノ酸配列(ここに、Xaaは任意のアミノ酸残基である)、および
2)His-Glu-(Ser/Gly)のアミノ酸配列(ここに、Ser/GlyはSerまたはGlyを意味する)、またはその誘導体。
ただし、配列番号1記載のアミノ酸配列を有するB38−CAPおよび、配列番号1記載のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するB38−CAP変異体を除く。
[12]
配列番号6から8および10から17記載のアミノ酸配列を有するペプチドおよびその変異体、ならびにNam-Xaa-Pro-Lys(Dnp)-OH (ここに、Namは2−メチルアミノベンゾイル、XaaはLeu、Met、Ile、Phe、Val、Trp、Arg、Tyr、Thr、Lys、His、Ala、Asn、Gln、Ser、Proのうち任意のアミノ酸残基、Dnpは2,4−ジニトロフェニルを示す)、
・Nma-Phe-His-Lys(Dnp)-OH (ここに、NamおよびDnpは前記と同様)、
・Cbz(カルボベンゾキシ)-Phe-Tyr、Z(ベンジルオキシカルボニル)-Ala-Xaa (ここに、XaaはArg、His、Trp、Tyr、Phe、Ile、Ala、Val、Ser、Met、Asn、Glu、Glyのうち任意のアミノ酸残基)、
・Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa(N3-(2,4-ジニトロフェニル)-L-2,3-ジアミノプロピオニル)-Ala-Ala-Trp、
・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp、および
・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp 、
のうち、少なくとも1つのペプチドのC末端アミノ酸残基を1残基切断する活性を有している、[11]記載のポリペプチド。
[13]
アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドが、配列番号7記載のアミノ酸配列を有するペプチドのC末端アミノ酸残基を1残基切断する活性を有している、[11]または[12]記載のポリペプチド。
[14]
Leishmania属、Escherichia属、Gimesia属、Thermus属、Chloroflexus属、Deinococcus属、Parachlamydia属、Fusobacterium属、Leptotrichia属、Bacillus属、Chlamydia属、Paenibacillus属、Clostridium属、Leptospira属、Enterococcus属、Geobacillus属、Haloferax属、Halorubrum属、Roseobacter属、Thermococcus属、Pyrococcus属、Leuconostoc属、Haloarcula属、およびRhodobacter属の中から選ばれる少なくとも1つの属から産生される、[11]から[13]のいずれか記載のポリペプチド。
[15]
Bacillus属およびPaenibacillus属の中から選ばれる少なくとも1つの属から産生され、[14]記載のポリペプチド。
[16]
Leishmania major、Escherichia coli、Gimesia maris、Thermus aquaticus、Chloroflexus aurantiacus、Deinococcus radiodurans、Parachlamydia acanthamoebae、Fusobacterium nucleatum、Leptotrichia goodfellowii、Bacillus cereus、Chlamydia trachomatis、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Paenibacillus sp. B38、Clostridium saccharolyticum、Leptospira interrogans、Thermus thermophilus、およびPyrococcus furiosusの中から選ばれる少なくとも1つの菌株から産生される、[11]から[14]のいずれか記載のポリペプチド。
[17]
Bacillus subtilisから産生されるポリペプチドである、[16]記載のポリペプチド。
[18]
糖鎖を有していない、[11]から[17]のいずれか記載のポリペプチド。
[19]
可溶性である、[11]から[18]のいずれか記載のポリペプチド。
[20]
以下の中から選ばれる少なくとも1つである、[11]から[19]のいずれか記載のポリペプチド:
1)配列番号20記載のアミノ酸配列を有するBS−CAP、
2)配列番号20記載のアミノ酸配列を有するBS−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するBS−CAP変異体、
3)配列番号24記載のアミノ酸配列を有するBA−CAP、
4)配列番号24記載のアミノ酸配列を有するBA−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するBA−CAP変異体。
<原核微生物由来ポリペプチドをコードする核酸等>
[21]
[11]から[20]のいずれか記載のポリペプチドをコードする核酸。
[22]
以下の(a)〜(f)のいずれかに記載の核酸:
(a)配列番号2、21および25のいずれか記載の塩基配列からなる核酸、
(b)配列番号2、21および25のいずれか記載の塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列からなり、かつアンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードする核酸、
(c)配列番号2、21および25のいずれか記載の塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつアンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードする核酸
(d)配列番号1、20および24のいずれか記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、
(e)配列番号1、20および24のいずれか記載のアミノ酸配列と同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、かつアンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードする核酸、および
(f)配列番号1、20および24のいずれか記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加および/または逆位されたアミノ酸配列からなり、かつアンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードする核酸。
[23]
[21]または[22]記載の核酸を含有する組換えベクター。
[24]
[23]記載の組換えベクターを含有する形質転換体。
[25]
原核微生物である、[24]記載の形質転換体。
[26]
大腸菌である、[25]記載の形質転換体。
[27]
[24]から[26]のいずれか記載の形質転換体を培地に培養し、培養物からアンジオテンシン変換酵素2活性を有するポリペプチドを採取することを特徴とする、[11]から[20]のいずれか記載のポリペプチドを製造する方法。
<原核微生物由来ポリペプチドをコードする核酸を含有する医薬組成物>
[28]
[21]または[22]記載の核酸を含有する、医薬組成物。
[29]
[23]記載の組換えベクターを含有する、医薬組成物。
[30]
高血圧、心不全、心組織線維化症、急性呼吸窮迫症候群または急性肺傷害、例えば酸吸引もしくは敗血症により誘発される重症急性肺損傷、肺水腫、または重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス感染もしくはインフルエンザウイルス感染関連肺損傷および障害が原因となるものを処置または予防するための、[28]または[29]記載の医薬組成物。
<スクリーニング方法>
[31]
アンジオテンシン変換酵素2活性を調節する物質をスクリーニングする方法であって、
a)本発明ACE2ポリペプチドを本発明ACE2ポリペプチドの基質と接触させ、および基質の分解を検出し、それにより本発明ACE2ポリペプチドの活性を評価する段階、
b)本発明ACE2ポリペプチドを、ACE2活性を調節し得る候補物質の存在下、本発明ACE2ポリペプチドの基質と接触させ、および基質の分解を検出し、それにより本発明ACE2ポリペプチドの活性を評価する段階、ならびに
c)段階a)およびb)で評価された本発明ACE2ポリペプチドの活性を比較し、その結果、段階a)で測定された活性が段階b)で測定された活性と異なることにより、候補物質が本発明ACE2ポリペプチドの活性を調節することが示唆される段階、
を含む方法。
[32]
アンジオテンシン変換酵素2活性を向上させる物質をスクリーニングする方法であって、
a)本発明ACE2ポリペプチドを本発明ACE2ポリペプチドの基質と接触させ、および基質の分解を検出し、それにより本発明ACE2ポリペプチドの活性を評価する段階、
b)本発明ACE2ポリペプチドを、ACE2活性を向上させ得る候補物質の存在下、本発明ACE2ポリペプチドの基質と接触させ、および基質の分解を検出し、それにより本発明ACE2ポリペプチドの活性を評価する段階、ならびに
c)段階a)およびb)で評価された本発明ACE2ポリペプチドの活性を比較し、その結果、段階b)で測定された活性が段階a)で測定された活性よりも亢進している場合に、候補物質が本発明ACE2ポリペプチドの活性を向上させることが示唆される段階、
を含む方法。
[33]
アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドが、[11]から[20]記載のポリペプチド、または、[9]におけるB38−CAPもしくはB38−CAP変異体である、[31]または[32]記載の方法。
[34]
基質が、配列番号6から8および10から17記載のアミノ酸配列を有するペプチドおよびその変異体、ならびにNam-Xaa-Pro-Lys(Dnp)-OH (ここに、Namは2−メチルアミノベンゾイル、XaaはLeu、Met、Ile、Phe、Val、Trp、Arg、Tyr、Thr、Lys、His、Ala、Asn、Gln、Ser、Proのうち任意のアミノ酸残基、Dnpは2,4−ジニトロフェニルを示す)、
・Nma-Phe-His-Lys(Dnp)-OH (ここに、NamおよびDnpは前記と同様)、
・Cbz(カルボベンゾキシ)-Phe-Tyr、Z(ベンジルオキシカルボニル)-Ala-Xaa (ここに、XaaはArg、His、Trp、Tyr、Phe、Ile、Ala、Val、Ser、Met、Asn、Glu、Glyのうち任意のアミノ酸残基)、
・Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa(N3-(2,4-ジニトロフェニル)-L-2,3-ジアミノプロピオニル)-Ala-Ala-Trp、
・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp、および
・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp 、
のうちの少なくとも1つである、[31]から[33]のいずれか記載の方法。
[35]
アンジオテンシン変換酵素2活性を向上させ得る候補物質が、各種微生物、動物組織、動物細胞、植物組織、植物細胞、およびそれらの培養物および培養液、ならびに発酵食品、加工食品から得られる、[31]から[34]のいずれか記載の方法。
B38−CAPはマウス体内においてACE2と同様のカルボキシペプチダーゼとしてアンジオテンシンIIを分解することが証明された。B38−CAPおよびその誘導体や、BS−CAPおよびその誘導体、BA−CAPおよびその誘導体のみならず、アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来の本発明のポリペプチドは、ヒトや動物の循環器疾患ならびに急性呼吸促迫症候群(ARDS)等の新規治療薬となることが期待される。
図1は、B38−CAPのSDS-ポリアクリルアミド電気泳動を示す図である。1は、分子量マーカーの電気泳動レーン、2は、精製タンパク質の電気泳動レーンを示す。 図2は、B38−CAPによるアンジオテンシンIIの分解を表すクロマトグラムである。(A)は、アンジオテンシンII、(B)は、アンジオテンシン(1−7)、(C)は、フェニルアラニン、(D)は、アンジオテンシンII+ヒトACE2、(E)はアンジオテンシンII+B38−CAP。 図3は、レニン−アンジオテンシン系による血圧調節機構を説明する図である。図3において、枠線内の二段表記の上段はホルモンの名称、下段はそのアミノ酸配列、二重枠線内は反応を触媒する酵素の名称を示す。ACEはアンジオテンシン変換酵素、ACE2はアンジオテンシン変換酵素2の略である。 図4は、B38−CAPのマウスにおける血中動態を示すグラフである。 図5は、マウスにおけるB38−CAPのアンジオテンシンII中和作用を示すグラフである。Ang IIはアンジオテンシンIIを、−および+はそれぞれ、不存在および存在を示す。 図6は、アンジオテンシンIIによる高血圧に対するB38−CAP持続投与の降圧作用を示すグラフである。Ang IIはアンジオテンシンIIを、−および+はそれぞれ、不存在および存在を示す。 図7は、アンジオテンシンIIによる高血圧に対するB38−CAP1回投与の降圧作用を示すグラフである。Ang IIはアンジオテンシンIIを示す。 図8−1は、アンジオテンシンIIによる心肥大に対するB38−CAP連続投与の抑制作用を示すグラフである。心エコーグラフにおけるPWdおよびIVSdはそれぞれ心臓後壁の厚さおよび心室中隔の厚さを意味する。 図8−2はアンジオテンシンIIによる心肥大に対するB38−CAPの抑制作用を示す、マウス心臓における図面に代わる写真である。写真のスケールバーは2 mm。Ang IIはアンジオテンシンIIを示す。 図9は、アンジオテンシンIIによる心肥大に対するB38−CAP1回投与の抑制作用を示すグラフである。Ang IIはアンジオテンシンIIを、−および+はそれぞれ、不存在および存在を示す。 図10−1は、アンジオテンシンIIによる心線維化に対するB38−CAP1回投与の抑制作用を示す、図面に代わる写真である。写真のスケールバーは100 mm。 図10−2は、アンジオテンシンIIによる心線維化に対するB38−CAP1回投与の抑制作用を示すグラフである。Ang IIはアンジオテンシンIIを、−および+はそれぞれ、不存在および存在を示す。 図11−1は、TAC圧負荷ストレスによる心肥大に対するB38−CAP持続投与の抑制作用を示すグラフである。Shamは偽手術の正常コントロール実験群。 図11−2は、TAC圧負荷ストレスによる心肥大に対するB38−CAP持続投与の抑制作用を示す、マウス心臓における図面に代わる写真である。写真のスケールバーは2 mm。−および+はそれぞれ、不存在および存在を示す。 図12−1は、TAC圧負荷ストレスによる心機能低下に対するB38−CAP持続投与の抑制作用を示すグラフである。図中、LVDsは心エコーにおける左室収縮末期内径、LVDdは心エコーにおける左室拡張末期内径、%FSは心臓の駆出率を示す。−および+はそれぞれ、不存在および存在を示す。 図12−2は、TAC圧負荷ストレスによる心機能低下に対するB38−CAP持続投与の改善作用を示す、心エコーの図面に代わる写真である。 図13−1は、TAC圧負荷ストレスによる心線維化に対するB38−CAP持続投与の抑制作用を示す、図面に代わる写真である。写真のスケールバーは100 mm。 図13−2は、TAC圧負荷ストレスによる心線維化に対するB38−CAP持続投与の抑制作用を示すグラフである。−および+はそれぞれ、不存在および存在を示す。 図14は、マウス腹膜炎・敗血症モデルにおけるB38−CAPの急性炎症改善作用を示すグラフである。 図15は、B38−CAP持続投与の肝機能、腎機能に対する影響を示すグラフである。−および+はそれぞれ、不存在および存在を示す。 図16は、BS−CAPおよびBA−CAPによるアンジオテンシンIIの分解を表すクロマトグラムである。(A)はアンジオテンシンII、(B)はアンジオテンシン(1−7)、(C)はフェニルアラニン、(D)はアンジオテンシンII+BS−CAP、(E)はアンジオテンシンII+BA−CAP。
上記の通り、B38−CAPは、Paenibacillus sp. B38細菌由来の新たに発見されたカルボキシペプチダーゼである。B38−CAPがヒトACE2とよく似た立体構造、酵素活性を持つことは、そのアミノ酸配列からは予測不可能であり、本発明者らの探索的研究により発見することができた。そして、B38−CAPはマウス体内においてヒトACE2と同様にカルボキシペプチダーゼとしてアンジオテンシンIIを分解することにより、高血圧、心不全(心肥大、線維化、心機能低下)、急性呼吸窮迫症候群(死亡率、肺の急性炎症)を改善できることを今回、新たに見出した。そして、本発明者らはさらに、Bacillus subtilis細菌由来カルボキシペプチダーゼ(BS−CAP)がACE2とよく似た立体構造を有し、つづいてBS−CAPとのアミノ酸配列の相同性を検索し、Bacillus amyloliquefaciens細菌由来カルボキシペプチダーゼ(BA−CAP)を見出し、これらもB38−CAP同様、ACE2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドであることを確認した。これにより、本発明における特定のACE2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドはヒトや動物の循環器疾患ならびにARDSに対して実際に治療薬となり得ると考えられる。
なお、ヒトACE2と原核微生物由来カルボキシペプチダーゼとのアミノ酸配列とは大きく異なっており、また、アンジオテンシンII等のペプチドに対するヒトACE2における基質認識部位の構造は現時点では不明である。従って、ある種の原核微生物由来ポリペプチドがカルボキシペプチダーゼであることが知られているとしても、それらがACE2様の基質特異性を有するカルボキシペプチダーゼであるかどうかまでは、本発明者らの行った実験をしなければ分からない。本発明においては、B38−CAPに加えBS−CAP、BA−CAPがACE2活性を有することが明らかになったので、これらと同じファミリーに属するポリペプチドも同様、ACE2活性を有すると想定される。
<原核微生物由来ポリペプチドを含有する医薬組成物>
本発明は一つの態様として、アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドであって、下記のアミノ酸配列をその活性部位に含むポリペプチド:
1)His-Glu-Xaa-Xaa-His(配列番号26)のアミノ酸配列(ここに、Xaaは任意のアミノ酸残基である)、および
2)His-Glu-(Ser/Gly)のアミノ酸配列(ここに、Ser/GlyはSerまたはGlyを意味する)、またはその誘導体を有効成分として含有する、医薬組成物に関する。
本明細書に使用されている「原核微生物由来ポリペプチド」とは、原核微生物から産生されるポリペプチドを意味する。原核微生物とは、細胞核、すなわち明確な境界を示す核膜を持たない細胞からなる微生物であり、真正細菌(狭義の細菌)と古細菌より構成され、典型的には、Leishmania属、Escherichia属、Gimesia属、Thermus属、Chloroflexus属、Deinococcus属、Parachlamydia属、Fusobacterium属、Leptotrichia属、Bacillus属、Chlamydia属、およびPaenibacillus属を意味するが、これらに限定されない。好ましい属は、Bacillus属、Paenibacillus属、Clostridium属、Leptospira属、Enterococcus属、Geobacillus属、Haloferax属、Halorubrum属、Roseobacter属、Thermococcus属、Pyrococcus属、Leuconostoc属、Haloarcula属、およびRhodobacter属である。さらに好ましくは、原核微生物とは、Leishmania major、Escherichia coli、Gimesia maris、Thermus aquaticus、Chloroflexus aurantiacus、Deinococcus radiodurans、Parachlamydia acanthamoebae、Fusobacterium nucleatum、Leptotrichia goodfellowii、Bacillus cereus、Chlamydia trachomatis、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Paenibacillus sp. B38、Clostridium saccharolyticum、Leptospira interrogans、Thermus thermophilus、およびPyrococcus furiosusの中から選ばれる菌株を意味するが、これらに限定されない。特に好ましくは、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、およびPaenibacillus sp. B38の中から選ばれる。
本明細書に使用されている「アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)活性」とは、アンジオテンシンI(配列番号6)、アンジオテンシン1−9(配列番号7)、アンジオテンシンII(配列番号8)、アペリン−13(配列番号10)、アペリン−36(配列番号11)、des-Arg9-ブラジキニン(配列番号12)、Lys-des-Arg9-ブラジキニン(配列番号13)、beta-カソモルフィン(配列番号14)、ダイノルフィンA 1−13(配列番号15)、グレリン(配列番号16)、および/またはニューロテンシン1−8(配列番号17)などの基質からC末端の一残基を開裂する活性を示し、適切には、アンジオテンシンIから一残基を開裂してアンジオテンシン1−9を生じ、アンジオテンシンIIから一残基を開裂してアンジオテンシン1−7を生じる活性を示す。
本明細書に使用されているアンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドのうち、アンジオテンシン1−9(配列番号7)からC末端の一残基を開裂する活性を有するものが好ましい。本発明において、B38−CAP、BS−CAPおよびBA−CAP等の本発明のポリペプチドは、アンジオテンシン1−9を分解する一方で、ヒトACE2はアンジオテンシン1−9を分解しないことが判明した(非特許文献6)。
本明細書において、「ACE2活性を有する」とは、インビトロにおいて上記基質の分解が、当業者に周知の通常の手法により検出できる検出限界以上の活性を有することを意味する。
原核微生物由来ポリペプチドの特徴としては、糖鎖を有していない、膜貫通領域を有していない、およびシグナルペプチドを有していないことが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドはその活性部位に下記のアミノ酸配列を含んでいる:
1)His-Glu-Xaa-Xaa-His(配列番号26)のアミノ酸配列(ここに、Xaaは任意のアミノ酸残基である)、および
2)His-Glu-(Ser/Gly)のアミノ酸配列(ここに、Ser/GlyはSerまたはGlyを意味する)。アミノ酸配列1)は、金属結合残基の2つのヒスチジンと触媒残基のグルタミン酸が含まれている配列であり、アミノ酸配列2)は、金属結合残基のグルタミン酸が含まれている配列である。
本発明におけるポリペプチドの例としては、プロテアーゼの分類データベース(https://www.ebi.ac.uk/merops/)においてファミリーM32(https://www.ebi.ac.uk/merops/cgi-bin/famsum?family=M32)に分類されるポリペプチドが挙げられ、具体的には、以下のポリペプチドおよびその誘導体が例示される:
・リーシュマニア (Leishmania major) 由来のLmaCP1 カルボキシペプチダーゼ(MER0015184) 、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体、
・大腸菌 (Escherichia coli) 由来ペプチダーゼ (MER0858205) 、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体、
・プランクトミケス (Gimesia maris) 由来のカルボキシペプチダーゼ Taq (MER0107615)、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体、
・テルムス・アクウァーティクス (Thermus aquaticus) 由来のカルボキシペプチダーゼ Taq (MER0001186) 、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体、
・緑色非硫黄細菌 (Chloroflexus aurantiacus) 由来のカルボキシペプチダーゼ Taq (MER0023467) 、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体、
・デイノコッカス・ラディオデュランス (Deinococcus radiodurans) カルボキシペプチダーゼ Taq (MER0011644) 、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体、
・クラミジア (Parachlamydia acanthamoebae) 由来のカルボキシペプチダーゼ Taq (MER0231159) 、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体、
・フソバクテリウム (Fusobacterium nucleatum) 由来のypwA ペプチダーゼ (MER0332046)、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体、
・グラム陰性紡錘状桿菌 (Leptotrichia goodfellowii) 由来のypwA プチダーゼ (MER0295175) 、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体、
・セレウス菌(Bacillus cereus) 由来ペプチダーゼ (MER0858095) 、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体、
・クラミジア・トラコマチス (Chlamydia trachomatis) 由来ペプチダーゼ (MER0858199)、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体、ならびに
・枯草菌(Bacillus subtilis) 由来ペプチダーゼ (MER0857975) 、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体。
さらに、本発明におけるポリペプチドの例としては、以下を挙げることができる:
・Bacillus subtilis NBRC 13719株由来のBS−CAP、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体
・Bacillus amyloliquefaciens NBRC 3022株由来のBA−CAP、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体、ならびに
・Paenibacillus sp. B38株由来のB38−CAP、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体。
BS−CAP、BA−CAP、およびB38−CAPについて、詳細には、:
1)配列番号20記載のアミノ酸配列を有するBS−CAP、
2)配列番号20記載のアミノ酸配列を有するBS−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するBS−CAP変異体、
3)配列番号24記載のアミノ酸配列を有するBA−CAP、
4)配列番号24記載のアミノ酸配列を有するBA−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するBA−CAP変異体
5)配列番号1記載のアミノ酸配列を有するB38−CAP、および
6)配列番号1記載のアミノ酸配列を有するB38−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するB38−CAP変異体、である。
アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドにおける好ましいものは、BS−CAP、その変異体、BA−CAP、その変異体、およびB38−CAP、その変異体であり、より好ましいものはB38−CAP、およびその変異体である。
本発明で使用されるアンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドは実質的に純粋である。「実質的に純粋」とは、約75%ないし約100%の純度を有するポリペプチドを示す。好ましい実施態様において、アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドは約90%ないし約100%の純度を有し、最も好ましい実施態様においては少なくとも95%の純度を有している。
本発明の医薬組成物における有効成分には、本発明におけるACE2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドの断片または誘導体が含まれる。ACE2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドの「断片」は、天然における全長のタンパク質配列の6またはそれ以上の連続的なアミノ酸を有する、ACE2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドアミノ酸配列の一部であって、その活性部位に下記のアミノ酸配列を含んでいるものを意味する:
1)His-Glu-Xaa-Xaa-His(配列番号26)のアミノ酸配列(ここに、Xaaは任意のアミノ酸残基である)、および
2)His-Glu-(Ser/Gly)のアミノ酸配列(ここに、Ser/GlyはSerまたはGlyを意味する)。アミノ酸配列1)は、金属結合残基の2つのヒスチジンと触媒残基のグルタミン酸が含まれている配列であり、アミノ酸配列2)は、金属結合残基のグルタミン酸が含まれている配列である。
本発明におけるポリペプチドの「誘導体」は、1またはそれ以上のアミノ酸配列および/または1またはそれ以上の化学的部分、例えばアシル化剤またはスルホン化剤を付加したものを含み、ただしその誘導体は親ポリペプチドの生物活性を保持している、ACE2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドのペプチド類縁体を意味する。
また、誘導体には、例えば、PEG化アミノ酸、グリコシル化(例えば、O結合型グリコシル化)アミノ酸、プレニル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチニル化アミノ酸、および/または有機誘導体化剤と結合した改変アミノ酸残基を含むポリペプチドが挙げられる。改変アミノ酸残基は、親ポリペプチドにおけるインビボ安定性、インビボ半減期、取り込み/投与、組織局在化若しくは分散、タンパク質複合体の形成、および/または純度のうち1以上を強化することができる。
ポリエチレングリコール(PEG)は、生体材料、生命工学および医学で広く使用されている。これは主にPEGが、生体適合性で無毒性であり、非免疫原性で水溶性のポリマーであるためである(Zhao and Harris, ACS Symposium Series 680: 458-72, 1997)。薬物送達の分野では、PEG誘導体は、免疫原性、タンパク質分解および腎臓クリアランスを低下させるためにならびに溶解性を高めるためにタンパク質との共有結合(すなわち「PEG(ペグ)化」)で広く使用されている(Zalipsky, Adv. Drug Del. Rev. 16:157-82, 1995)。同様に、PEGは、溶解性を高めるために、毒性を低下させるためにおよび生体内分布を変化させるために低分子量の、相対的に疎水性の薬物に付着されている。通常、PEG化された薬物は溶液として注射される。一つの側面において、PEHは、約3kDから約50kD、および好ましくは約5kDから約30kDに及ぶ分子量を有する。ポリペプチドとのPEGの共有結合は、既知の化学合成技術により達成することができる。例えば、本発明の一つの側面において、タンパク質のPEG化は、適当な反応条件の下でNHS-活性化PEGをタンパク質と反応させることにより達成することができる。
さらに、本発明における誘導体には、重合体分子がカップリングされたポリペプチドが含まれる。ポリペプチドにカップリングされる重合体分子は、ポリオール(すなわち、ポリ-OH)、ポリアミン(すなわち、ポリ-NH2)およびポリカルボキシル酸(すなわち、ポリ-COOH)などの天然および合成同種重合体、ならびにさらに異種重合体、すなわち、一つまたは複数の異なるカップリング基、例えば、ヒドロキシル基およびアミン基を含む重合体を含めて、本発明により定義されるような分子量を有する任意の適当な重合体分子とすることができる。適当な重合体分子の例には、ポリプロピレングリコール(PEG)、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)およびポリプロピレングリコールを含む、ポリアルキレングリコール(PAG)などのポリアルキレンオキシド(PAO)、PEG-グリシジルエーテル(Epox-PEG)、PEG-オキシカルボニルイミダゾール(CDI-PEG)分枝ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリ-D,L-アミノ酸、ポリエチレン-マレイン酸無水物共重合体、ポリスチレン-マレイン酸無水物共重合体、カルボキシメチル-デキストランを含むデキストラン、ヘパリン、相同アルブミン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを含むセルロース、キトサン加水分解物、ヒドロキシエチルスターチおよびヒドロキシプロピルスターチなどのデンプン、グリコーゲン、アガロースおよびその誘導体、グアールガム、プルラン、イヌリン、キサンタンガム、カラギナン、ペクチン、アルギン酸加水分解物ならびに生体高分子からなる群より選択される重合体分子が含まれる。
本発明の医薬組成物は、高血圧、心不全、心組織線維化症、急性呼吸窮迫症候群または急性肺傷害、例えば酸吸引もしくは敗血症により誘発される重症急性肺損傷、肺水腫、または重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス感染もしくはインフルエンザウイルス感染関連肺損傷および障害が原因となるものを処置または予防するために使用される。
本明細書において、「処置」とは、(1)疾患または状態の発症を遅延させる;(2)疾患または状態の症状の進行、増悪または悪化を減速または停止させる;(3)疾患または状態の症状の寛解をもたらす;あるいは(4)疾患または状態を治癒させることを目的とする方法またはプロセスを意味する。処置は、予防的措置として疾患または状態の発症前に施してもよいし、あるいはまた、処置は、疾患の開始後に施してもよい。
本明細書において、「予防」とは、疾患または状態の発症を予防することを意味する。
本発明において医薬組成物とは、通常、疾患の治療もしくは予防、あるいは検査・診断のための薬剤を意味する。
本発明の医薬組成物は、当業者に公知の方法で製剤化することが可能である。例えば、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は、指示された範囲の適当な容量が得られるように設定する。
注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなビヒクルを用いて通常の調剤に従って処方することができる。
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬(例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウム)を含む等張液が挙げられる。適当な溶解補助剤、例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80(TM)、HCO-50等)を併用してもよい。
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジルおよび/またはベンジルアルコールを併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液および酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩酸プロカイン)、安定剤(例えば、ベンジルアルコールおよびフェノール)、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填する。
本発明の医薬組成物は、好ましくは非経口投与により投与される。例えば、注射剤型、経鼻投与剤型、経肺投与剤型、経皮投与型の組成物とすることができる。例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などにより全身または局部的に投与することができる。
投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択することができる。ポリペプチドを含有する医薬組成物の投与量は、例えば、1回につき体重1kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲に設定することが可能である。または、例えば、患者あたり0.001〜100000mgの投与量とすることもできるが、本発明はこれらの数値に必ずしも制限されるものではない。投与量および投与方法は、患者の体重、年齢、症状などにより変動するが、当業者であればそれらの条件を考慮し適当な投与量および投与方法を設定することが可能である。
次に、臨床的利用について説明する。
高血圧
心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力が高い病態を意味する。血圧の高さは、心臓が血液を押し出す力と血管の拡張で決まり、血管の弾力性も関係している。また、血圧は、腎臓や神経系、内分泌系、血管内皮からの物質など、多くの因子によって調整されている。ACE2は、血管収縮等を引き起こすアンジオテンシンIIを分解するため、血圧降下作用が期待される。
心不全
心筋障害により心筋のポンプ機能が低下し、末梢主要臓器の酸素需要に見合うだけの血液量を絶対的にまたは相対的に拍出できない状態にあり、肺または体静脈系にうっ血を来たし、生活機能に障害を生じた病態である。その病態は、長期間にわたる血行動態負荷、過剰な交感神経系・レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系などの神経体液性因子の活性化等をともなう臨床症候群としてとらえられる。ACE2は、血管収縮等を引き起こすアンジオテンシンIIを分解するため、心不全改善が期待される。
心組織線維化症
心組織に存在する少量の線維組織は生理学的に重要な役割を果たしているが、心臓が様々な侵襲を受けるとその反応として、心組織の線維化が亢進し種々の障害が起きる。特に左室心筋組織の過剰な線維化は左室拡張機能障害を悪化させ、心不全の発症進展に関与する。ACE2は、線維化を亢進させるアンジオテンシンIIを分解するため、心組織線維化症の改善が期待される。
急性呼吸窮迫症候群または急性肺傷害
本明細書における以下の実施例にて証明されたように、本発明ポリペプチドは、動物における高血圧、心不全、心組織線維化症、ならびに敗血症により誘発される急性肺傷害を実際に改善した。ACE2がこれらの疾患を改善することに加え、酸吸引により誘発される重症急性肺損傷、肺水腫、または重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス感染もしくはインフルエンザウイルス感染関連肺損傷および障害などの他が原因となる急性肺傷害を改善することがこれまでに報告されているため、本発明ポリペプチドは酸吸引により誘発される重症急性肺損傷、肺水腫、または重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス感染もしくはインフルエンザウイルス感染関連肺損傷および障害などの他が原因となるものについても改善作用が期待できる。
本発明のACE2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドは、ヒトアンジオテンシン変換酵素2と同様の基質特異性と酵素活性を示しており、上記の疾患を処置または予防する医薬として利用できる。
ヒトACE2のアミノ酸配列は、他の哺乳類のACE2のアミノ酸配列と非常に類似しており、例えばゴリラ(Gorilla gorilla gorilla)とは99%の類似性があり(以下、カッコ内の数字は類似の割合を示す)、チンパンジー(Pan troglodytes、99%)、オラウータン(Pongo abelii、98%)、ヤギ(Capra hircus、82%)、ブタ(Sus scrofa、81%)、イヌ(Canis lupus familiaris、84%)、ヒツジ(Ovis aries、82%)、アライグマ(Procyon lotor、84%)、ヤク(Bos mutus、81%)、シャチ(Orcinus orca、81%)、ハンドウイルカ(Tursiops truncatus、81%)、ゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus、84%)、ウシ(Bos taurus、81%)、ウサギ(Oryctolagus cuniculus、85%)、ウマ(Equus caballus、87%)、アルパカ(Vicugna pacos、83%)、ネコ(Felis catus、85%)、マウス(Mus musculus、82%)、ラット(Rattus norvegicus、82%)と80%以上の高い類似性を示している。従って、本発明のポリペプチドは、ヒト以外の哺乳動物においても、同様に、動物医薬として利用できると考えられる。
<原核微生物由来ポリペプチド>
本発明は別の態様として、アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドであって、下記のアミノ酸配列をその活性部位に含むポリペプチド:
1)His-Glu-Xaa-Xaa-His(配列番号26)のアミノ酸配列(ここに、Xaaは任意のアミノ酸残基である)、および
2)His-Glu-(Ser/Gly)のアミノ酸配列(ここに、Ser/GlyはSerまたはGlyを意味する)、またはその誘導体(ただし、配列番号1記載のアミノ酸配列を有するB38−CAPおよび、配列番号1記載のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するB38−CAP変異体を除く)に関する。
本明細書に使用されている「原核微生物由来ポリペプチド」は、上記の意味の通りである。
原核微生物由来ポリペプチドは、糖鎖を有していない、膜貫通領域を有していない、およびシグナルペプチドを有していないことが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に使用されている「アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)活性」とは、アンジオテンシンI(配列番号6)、アンジオテンシン1−9(配列番号7)、アンジオテンシンII(配列番号8)、アペリン−13(配列番号10)、アペリン−36(配列番号11)、des-Arg9-ブラジキニン(配列番号12)、Lys-des-Arg9-ブラジキニン(配列番号13)、beta-カソモルフィン(配列番号14)、ダイノルフィンA 1−13(配列番号15)、グレリン(配列番号16)、および/またはニューロテンシン1−8(配列番号17)、ならびにNam-Xaa-Pro-Lys(Dnp)-OH (ここに、Namは2−メチルアミノベンゾイル、XaaはLeu、Met、Ile、Phe、Val、Trp、Arg、Tyr、Thr、Lys、His、Ala、Asn、Gln、Ser、Proのうち任意のアミノ酸残基、Dnpは2,4−ジニトロフェニルを示す)、
・Nma-Phe-His-Lys(Dnp)-OH (ここに、NamおよびDnpは前記と同様)、
・Cbz(カルボベンゾキシ)-Phe-Tyr、Z(ベンジルオキシカルボニル)-Ala-Xaa (ここに、XaaはArg、His、Trp、Tyr、Phe、Ile、Ala、Val、Ser、Met、Asn、Glu、Glyのうち任意のアミノ酸残基)、
・Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa(N3-(2,4-ジニトロフェニル)-L-2,3-ジアミノプロピオニル)-Ala-Ala-Trp、
・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp、および
・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp、
などの基質からC末端の一残基を開裂する活性を示し 、適切には、アンジオテンシンIから一残基を開裂してアンジオテンシン1−9を生じ、アンジオテンシンIIから一残基を開裂してアンジオテンシン1−7を生じる活性を示す。
本明細書に使用されているアンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドのうち、アンジオテンシン1−9(配列番号7)からC末端の一残基を開裂する活性を有するものが好ましい。本発明において、B38−CAP、BS−CAPおよびBA−CAP等の本発明のポリペプチドは、アンジオテンシン1−9を分解する一方で、ヒトACE2はアンジオテンシン1−9を分解しないことが判明した(非特許文献6)。
本明細書において、「ACE2活性を有する」とは、インビトロにおいて上記基質の分解が、当業者に周知の通常の手法により検出できる検出限界以上の活性を有することを意味する。
本発明のポリペプチドは好ましくは、可溶性である。「可溶性」とは、水に溶解できることを意味し、注射剤等の医薬組成物に容易に調製できる性質として重要である。本明細書において、「可溶性」には、水溶性のみならず、当業者に周知の可溶化剤を混合することにより注射用水に溶かすことのできる程度の性質も包含する。
本発明におけるポリペプチドの例としては、上記の通り、プロテアーゼの分類データベース(https://www.ebi.ac.uk/merops/)においてファミリーM32(https://www.ebi.ac.uk/merops/cgi-bin/famsum?family=M32)に分類されるポリペプチドが挙げられる。
さらに、本発明におけるポリペプチドの例としては、以下を挙げることができる:
・Bacillus subtilis NBRC 13719株由来のBS−CAP、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体、ならびに
・Bacillus amyloliquefaciens NBRC 3022株由来のBA−CAP、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有する、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するその変異体。
BS−CAP、およびBA−CAPについて、詳細には、:
1)配列番号20記載のアミノ酸配列を有するBS−CAP、
2)配列番号20記載のアミノ酸配列を有するBS−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するBS−CAP変異体、
3)配列番号24記載のアミノ酸配列を有するBA−CAP、ならびに
4)配列番号24記載のアミノ酸配列を有するBA−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するBA−CAP変異体、である。
アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドにおける好ましいものは、BS−CAP、その変異体、BA−CAP、およびその変異体である。
本発明で使用されるアンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドは実質的に純粋である。「実質的に純粋」とは、約75%ないし約100%の純度を有するポリペプチドを示す。好ましい実施態様において、アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドは約90%ないし約100%の純度を有し、最も好ましい実施態様においては少なくとも95%の純度を有している。
本発明は、本発明のACE2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドの断片または誘導体を含む。ACE2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドの「断片」は上記の通りである。本発明におけるポリペプチドの「誘導体」は上記の通りであり、例えば、PEG化アミノ酸、グリコシル化(例えば、O結合型グリコシル化)アミノ酸、プレニル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチニル化アミノ酸、および/または有機誘導体化剤と結合した改変アミノ酸残基を含むポリペプチドが挙げられる。改変アミノ酸残基は、インビボ安定性、インビボ半減期、取り込み/投与、組織局在化若しくは分散、タンパク質複合体の形成、および/または純度のうち1以上を強化することができる。
<原核微生物由来ポリペプチドをコードする核酸等>
核酸
本発明はさらなる別の態様として、本発明のポリペプチドをコードする核酸等に関する。ポリペプチドを構成する各アミノ酸をコードするコドンは周知であるので、当業者であれば、ポリペプチドのアミノ酸配列が分かれば、それをコードする核酸の塩基配列も知れる。
本発明はまた、さらなる態様として、本発明は、以下の(a)〜(f)のいずれか記載の核酸等に関する:
(a)配列番号2、21および25のいずれか記載の塩基配列からなる核酸、
(b)配列番号2、21および25のいずれか記載の塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列からなり、かつアンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードする核酸、
(c)配列番号2、21および25のいずれか記載の塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつアンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードする核酸
(d)配列番号1、20および24のいずれか記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸
(e)配列番号1、20および24のいずれか記載のアミノ酸配列と同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、かつアンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードする核酸
(f)配列番号1、20および24のいずれか記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加および/または逆位されたアミノ酸配列からなり、かつアンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードする核酸。
本明細書において、「核酸」はDNAであってもよく、RNAであってもよい。配列番号2、21および25にはDNAの塩基配列を記載しているが、核酸がRNAである場合には、配列番号2、21および25の塩基配列を対応するRNAの塩基配列に読み替えればよく、具体的には、配列番号2、21および25のいずれか記載の塩基配列におけるチミン残基をウラシル残基に読み替えればよい。
本発明の核酸は、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードしている限り、配列番号2、21および25のいずれか記載の塩基配列に対して変異を有していてもよい。より具体的には、配列番号2、21および25のいずれか記載の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上であればよい。ここで、基準塩基配列に対する、対象塩基配列の配列同一性は、例えば次のようにして求める。まず、基準塩基配列および対象塩基配列をアラインメントする。ここで、各塩基配列には、配列同一性が最大となるようにギャップを含めてもよい。続いて、基準塩基配列及び対象塩基配列において、一致した塩基の塩基数を算出し、下記式(I)にしたがって、配列同一性を求めることができる。
式1
核酸配列同一性(%)=
一致した塩基数/対象塩基配列の総塩基数×100 (I)
あるいは、本発明の核酸は、配列番号2、21および25のいずれか記載の塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつアンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。ここで、「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、Molecular Cloning-A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION(Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載の方法が挙げられる。例えば、5×SSC(20×SSCの組成:3M塩化ナトリウム,0.3Mクエン酸溶液,pH7.0)、0.1質量%N−ラウロイルサルコシン、0.02質量%のSDS、2質量%の核酸ハイブルダイゼーション用ブロッキング試薬、および50%ホルムアミドからなるハイブリダイゼーションバッファー中で、55〜70℃で数時間から一晩インキュベーションを行うことによりハイブリダイズさせる条件を挙げることができる。なお、インキュベーション後の洗浄の際に用いる洗浄バッファーとしては、好ましくは0.1質量%SDS含有1×SSC溶液、より好ましくは0.1質量%SDS含有0.1×SSC溶液が挙げられる。
また、本発明の核酸は、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードしている限り、配列番号1、20および24のいずれか記載のアミノ酸配列と同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするものであってもよい。ここで、基準アミノ酸配列に対する、対象アミノ酸配列の配列同一性は、例えば次のようにして求めることができる。まず、基準アミノ酸配列及び対象アミノ酸配列をアラインメントする。ここで、各アミノ酸配列には、配列同一性が最大となるようにギャップを含めてもよい。続いて、基準アミノ酸配列及び対象アミノ酸配列において、一致したアミノ酸の数を算出し、下記式(II)にしたがって、配列同一性を求めることができる。
式2
アミノ酸配列同一性(%)=
一致したアミノ酸数/対象アミノ酸配列の総アミノ酸数×100 (II)
あるいは、本実施形態の核酸は、配列番号1、20および24のいずれか記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加および/または逆位されたアミノ酸配列からなり、かつアンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。ここで、1若しくは数個とは、例えば1〜30個であってもよく、1〜10個であってもよく、1〜5個、あるいは1〜3個であってもよい。
ベクター
本発明は1つの実施形態において、上述した核酸を含有する組換えベクターに関する。
本実施形態の組換えベクターは、発現ベクターであってもよい。本実施形態の組換えベクターを宿主中で発現させることにより、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質を製造することができる。本実施形態の組換えベクターにおいて、上述した核酸の5’末端又は3’末端に、ヒスチジンタグ、FLAGタグ等のタグ配列をコードするDNAが付加されていてもよい。発現用プラスミドは、特に限定されるものではなく、形質転換する宿主を原核微生物とし、原核微生物の発現用プラスミドとして用いられるものであれば良い。宿主を大腸菌とする場合には、例えば、大腸菌発現プラスミドpET−32aを使用することができる。
形質転換体
1つの実施形態において、本発明は、上述した組換えベクターを含有する形質転換体に関する。本発明のポリペプチドは、本発明の発現プラスミドで原核微生物を形質転換し、得られた形質転換体を培地中で培養することにより製造することができる。例えば、発現用プラスミドおよび宿主は、原核微生物の形質転換に適したものであれば良く、または、酵母、麹菌、昆虫細胞、動物細胞、植物細胞などの異種タンパク質発現系を用いても生産することもできる。
組換えベクターの宿主への導入(形質転換)は従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、カルシウム処理された菌体を用いるコンピテント細胞法や、エレクトロポレーション法等が挙げられる。また、プラスミドベクター以外にも、ファージベクター、ウイルスベクター等を宿主に感染させて形質転換する方法を利用してもよい。
大腸菌とpET−32aとの上記組合せ以外に、例えば以下のものを用いることができる。
宿主として大腸菌を用いる場合:発現プラスミドとしてpETシリーズ、pUCシリーズ、M13mpシリーズ、pCAMBIAシリーズ、pKK223、pACYC184、pBR322、pMALシリーズ、pGEXシリーズ、pColdシリーズなど。
宿主として枯草菌(Bacillus subtilis)を用いる場合:発現プラスミドとしてpHTシリーズ、pALシリーズ、pBE-Sなど。
宿主としてブレビバチルス菌(Brevibacillus)を用いる場合:発現プラスミドとしてpBICシリーズ、pNCシリーズ、pNIシリーズ、pNY326、pNCMO2など。
<原核微生物由来ポリペプチドをコードする核酸を含有する医薬組成物>
本発明は、さらなる別の態様として、本発明の核酸または組換えベクターを含有する医薬組成物に関する。
本発明において、ACE2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドをポリペプチドとして用いる代わりに、本発明の医薬組成物は、ACE2に加え、またはその代わりにACE2をコードする核酸、特にDNA分子を含むことができる。この形態において、ACE2を核酸シャトル(ベクター中にACE2のコーディング領域およびACE2発現の制御配列を含む)により送達することができる。
ACE2のDNA分子は、好ましくは組換え体のプラスミドとして、直接、または組換えウイルスまたは細菌の部分として投与してよい。インビボ投与の例として、筋肉内経路によるかまたは遺伝子銃による「裸の」DNA分子の直接注射が挙げられる。組換え有機体の例には、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、Listeria monocytogenesが挙げられる(要約はCoulie、P. G.(1997)、Mol. Med. Today 3、261- 30268に記載されている)。さらに、核酸の合成担体、例えばカチオン脂質、ミクロスフェア、ミクロペレット、ま
たはリポソームは、ACE2をコードする核酸分子のインビボ投与に用いることができる。所望により、適用は、物理的方法、例えばエレクトロポーレーションと組み合わせてよい。原則的には、あらゆる遺伝子療法を用いてよく、呼吸器疾患に有用な遺伝子療法システムがKlink et al.、J Cyst Fibros. 2004 Aug;3 Suppl 2:203-12に記載されている。このように、本発明は、肺損傷または肺疾患を治療するための医薬を製造するためのACE2の使用も含む。
また、本発明は医薬組成物に加え、少なくとも本発明のポリペプチド、核酸、核酸を含有する組換えベクター、または本発明の医薬組成物を含む、本発明の治療方法または予防方法に用いるためのキットを提供する。該キットには、その他、薬学的に許容される担体、媒体、使用方法を記載した指示書等をパッケージしておくこともできる。
<スクリーニング方法>
本発明はさらなる別の態様として、アンジオテンシン変換酵素2活性を調節する物質をスクリーニングする方法であって、
a)本発明ACE2ポリペプチドを本発明ACE2ポリペプチドの基質と接触させ、および基質の分解を検出し、それにより本発明ACE2ポリペプチドの活性を評価する段階、
b)本発明ACE2ポリペプチドを、ACE2活性を調節し得る候補物質の存在下、本発明ACE2ポリペプチドの基質と接触させ、および基質の分解を検出し、それにより本発明ACE2ポリペプチドの活性を評価する段階、ならびに
c)段階a)およびb)で評価された本発明ACE2ポリペプチドの活性を比較し、その結果、段階a)で測定された活性が段階b)で測定された活性と異なることにより、候補物質が本発明ACE2ポリペプチドの活性を調節することが示唆される段階、
を含む方法に関する。
この態様において、アンジオテンシン変換酵素2活性を調節する物質をスクリーニングする方法は、アンジオテンシン変換酵素2活性を向上させる物質をスクリーニングする方法が好ましい。
すなわち、本発明はさらに、アンジオテンシン変換酵素2活性を向上させる物質をスクリーニングする方法であって、
a)本発明ACE2ポリペプチドを本発明ACE2ポリペプチドの基質と接触させ、および基質の分解を検出し、それにより本発明ACE2ポリペプチドの活性を評価する段階、
b)本発明ACE2ポリペプチドを、ACE2活性を向上させ得る候補物質の存在下、本発明ACE2ポリペプチドの基質と接触させ、および基質の分解を検出し、それにより本発明ACE2ポリペプチドの活性を評価する段階、ならびに
c)段階a)およびb)で評価された本発明ACE2ポリペプチドの活性を比較し、その結果、段階b)で測定された活性が段階a)で測定された活性よりも亢進している場合に、候補物質が本発明ACE2ポリペプチドの活性を向上させることが示唆される段階、
を含む方法に関する。
「本発明ACE2ポリペプチド」は、本発明のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)活性を有する原核微生物由来ポリペプチド、ならびにB38−CAPおよびB38−CAP変異体の中から選ぶことができる。また、本発明ポリペプチドの完全長および活性化部位の部分も、当業者に知られる任意のスクリーニングアッセイで用いることができる。
基質は、配列番号6から8および10から17記載のアミノ酸配列を有するペプチド、およびその変異体の中から選ぶことができる。ここに、変異体とは、ペプチドのC末端側から2つのアミノ酸残基以外のアミノ酸残基を失欠、置換、修飾したものを意味する。
基質としてはさらに、以下が挙げられる:
・Nam-Xaa-Pro-Lys(Dnp)-OH (ここに、Namは2−メチルアミノベンゾイル、XaaはLeu、Met、Ile、Phe、Val、Trp、Arg、Tyr、Thr、Lys、His、Ala、Asn、Gln、Ser、Proのうち任意のアミノ酸残基、Dnpは2,4−ジニトロフェニルを示す)、
・Nma-Phe-His-Lys(Dnp)-OH (ここに、NamおよびDnpは前記と同様)、
・Cbz(カルボベンゾキシ)-Phe-Tyr、Z(ベンジルオキシカルボニル)-Ala-Xaa (ここに、XaaはArg、His、Trp、Tyr、Phe、Ile、Ala、Val、Ser、Met、Asn、Glu、Glyのうち任意のアミノ酸残基)、
・Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa(N3-(2,4-ジニトロフェニル)-L-2,3-ジアミノプロピオニル)-Ala-Ala-Trp、
・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp、および
・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp。
上記基質およびその他の基質は、Lee et al., Biosci. Biotech. Biochem. 58, 1490-1495, 1994およびLee et al., Proteins 77, 647-657, 2009に記載されており、これらも本明細書の記載とみなすことができる。
ACE2活性を調節し得る候補物質には、ACE2活性を向上または低下させる物質が含まれる。
ACE2活性を向上させる物質は、ヒトまたは動物における内在性ACE2のACE2活性を向上させると期待され、ヒトまたは動物における高血圧、心不全、心組織線維化症、急性呼吸窮迫症候群または急性肺傷害、例えば酸吸引もしくは敗血症により誘発される重症急性肺損傷、肺水腫、または重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス感染もしくはインフルエンザウイルス感染関連肺損傷および障害が原因となるものを処置または予防する医薬として、あるいはそのような効果を期待できる健康食品、健康機能性食品素材として利用することができる。
本発明はさらに、スクリーニング方法を行うための使用説明書を任意で含む組合せを含んだ組合品およびキットが提供される。この組合品には、本発明ACE2ポリペプチドおよびスクリーニングする本発明ACE2ポリペプチドの基質、ならびに任意で基質のタンパク質分解を検出するための試薬が含まれる。特定の本発明ACE2ポリペプチドによるタンパク質分解を受ける、色素産生性または蛍光発生性分子とできる基質は、本発明ACE2ポリペプチドが試験基質を切断する能力を試験することにより実験的に同定することができる。
本発明スクリーニング方法に供される被験体は、各種微生物、動物組織、動物細胞、植物組織、植物細胞、発酵食品、加工食品である。例えば、細胞は、物理的または化学的な破壊方法を用いて破壊することができる。物理的破壊方法の例は、超音波処理および機械的剪断を含む。化学的溶解方法の例は、界面活性剤による溶解および酵素による溶解を含む。当業者は本方法で用いる抽出物を得るために細胞抽出物の調製方法を容易に応用できる。
細胞の抽出物が調製されたら、抽出物を本発明ACE2ポリペプチドと、該ポリペプチドの基質との会合が起り得る条件の下で混合する。浸透圧、pH、温度および使用する細胞抽出物の濃度などの特徴は、基質との会合を最適化するように変化させることができる。
具体的なスクリーニング方法では、例えば、各種微生物の抽出液や培養上清を水、メタノール、エタノール等の溶媒でホモジネートし、これを遠心分離して得られた上清を、反応溶液、例えば50 mM HEPES (pH 7.5), 0.6 M NaCl, 0.01% Triton X-100, 20 nM B38-CAP, 20 μM Nam-His-Pro-Lys(Dnp)-OH(ここに、NamおよびDnpは前記と同様)に加え、候補物質を処理していない未処理群コントロールとの活性の違いを測定する。コントロールと比較して活性が上昇すればACE2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドの活性向上物質が含まれていることになる。
本発明のポリペプチド、ならびにB38−CAPおよびB38−CAP変異体の中から選ばれるポリペプチドは、ヒトACE2と比較し、可溶性酵素の大量生産が容易である。従って、これらポリペプチドを用いれば、本発明のスクリーニング方法を安価に実施でき、それゆえに大量の被験体に応用できるというメリットがある。
本明細書で用いられているアミノ酸の3文字表記と1文字表記の対応は以下の通りである。
アラニン:Ala:A
アルギニン:Arg:R
アスパラギン:Asn:N
アスパラギン酸:Asp:D
システイン:Cys:C
グルタミン:Gln:Q
グルタミン酸:Glu:E
グリシン:Gly:G
ヒスチジン:His:H
イソロイシン:Ile:I
ロイシン:Leu:L
リジン:Lys:K
メチオニン:Met:M
フェニルアラニン:Phe:F
プロリン:Pro:P
セリン:Ser:S
スレオニン:Thr:T
トリプトファン:Trp:W
チロシン:Tyr:Y
バリン:Val:V
以下、本発明を参考例および実施例により、詳細に説明する。これらは、単なる例示であり、本発明は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることに留意すべきである。
参考例
参考例1:原核微生物由来アンジオテンシン変換酵素2(以下、アンジオテンシン変換酵素2をACE2と略記する)のスクリーニング
Paenibacillus sp. B38株(独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターにARIF-B38(FERM P-20321)として寄託されている)からゲノムDNAを単離した。つぎに、得られたゲノムDNAの塩基配列をシークエンサーにより解析した。ACE2はカルボキシペプチダーゼ活性を有していることから、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST、https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用いて、解析したゲノムDNA塩基配列の中からカルボキシペプチダーゼをコードすると推定される領域(推定領域)を検索した。推定領域の塩基配列から設計したプライマー(塩基配列3および4)を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により推定領域のDNAを増幅した。増幅したDNAの塩基配列を配列番号5に示す。
増幅したDNAを大腸菌用発現プラスミドpET−32a(Novagen, Madison, WI, USA)のマルチクローニングサイトに挿入し、推定領域の発現プラスミドを構築した。得られた発現プラスミドにより大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、これをLB培地(Novagen, Madison, WI, USA)中で培養することにより、推定領域にコードされたタンパク質を発現させた。
ACE2活性の測定は非特許文献4に従って行った。すなわち、消光性蛍光基質2−メチルアミノベンゾイル(Nma)−ヒスチジン(His)−プロリン(Pro)−[Nε−(2,4−ジニトロフェニル)−リシル][Lys(Dnp)]を用いて、これを分解する活性について、推定領域にコードされたタンパク質をスクリーニングした。その結果、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質を発見した。また、このタンパク質をコードする塩基を配列番号2に示す。
参考例2:原核微生物由来ACE2の精製
大腸菌用発現プラスミドpET−32aのマルチクローニングサイトに配列番号2に示す原核微生物由来ACE2をコードするDNA全長を組み込み、発現プラスミドを構築した。得られた発現プラスミドにより大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、これをLB培地中で培養することにより、原核微生物由来ACE2を発現させた。超音波破砕機により大腸菌を破砕し、遠心分離により菌体破砕液上清を取得した。陰イオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過クロマトグラフィーにより、単一酵素を取得した(図1)。図1中、符号1は分子量マーカー、符号2は精製タンパク質を電気泳動したレーンである。
精製タンパク質の分子量は約57kDaであり、アミノ酸配列から計算した分子量57,597と一致した。培養液1L(リットル)あたり約100mgの原核微生物由来ACE2が得られた。以下、これを「B38−CAP」と称する。
参考例3:B38−CAPの酵素活性
参考例2により得られた精製B38−CAPについて、基質Nma-His-Pro-Lys(Dnp) (ここに、NamおよびDnpは前記と同様)に対する動力学定数を非特許文献4に基づき測定した。表1にその結果を示す。動力学定数は、実験を3回繰り返して行って得られた平均値である。本参考例で使用したヒトACE2はコスモ・バイオ株式会社から購入した。ヒトACE2の動力学定数値は、非特許文献4から引用した値である。
B38−CAPの動力学定数は、ヒトACE2と近似な値を示している。
参考例4:B38−CAPによる各種ペプチドの加水分解実験
まず、B38−CAPおよびヒトACE2によるアンジオテンシンIIの加水分解実験を行った。結果を図2に示す。
図2において、(A)は、アンジオテンシンIIのみ、(B)は、アンジオテンシン(1−7)のみ、(C)は、フェニルアラニンのみ、(D)は、アンジオテンシンIIにヒトACE2を添加し、37℃で3時間インキュベートしたもの、(E)はアンジオテンシンIIに原核微生物由来ACE2(B38-CAP)を添加し、37℃で3時間インキュベートしたものである。
HPLCの測定条件は、溶媒AからBへのリニアグラジエント(溶媒A:0.1%トリフルオロ酢酸、溶媒B:アセトニトリル)、分析時間10分、検出波長:210nm、カラム:TSKgel Super-ODS(10cm)とした。
図2は、B38−CAPがヒトACE2と同様、アンジオテンシンIIからアンジオテンシン(1−7)を生成することを示している。
次に、各種ペプチドの加水分解実験の結果を表2に示す。表中、↓(下向き矢印)は、切断部位、〇は切断される、×は切断されない、をそれぞれ意味する。ヒトACE2のデータは、非特許文献6から引用した値である。
(表中、ニューロテンシン1-8のアミノ酸配列に記載されたpEは、ピログルタミン酸残基を表す。)
表2は、B38−CAPは、ヒトACE2と同じ酵素活性を有していることを示している。
参考例5:ヒトACE2阻害剤によるB38−CAPに対する阻害実験
ヒトACE2阻害剤として知られているニコチアナミンを用い、B38−CAPが阻害されるか調べた。結果、IC50は、ヒトACE2が84nMであるところ、B38−CAPは74nMであり、同程度であった。B38−CAPがニコチアナミンによって阻害を受けることは、ヒトACE2とB38−CAPの活性部位の構造が類似していることを示唆している。
以下の実施例により、B38−CAPが動物に対して各種の薬理活性を示すことを証明する。
実施例1
B38−CAPの血中動態
B38−CAP(2 mg/kg)をマウス(C57BL/6N系統、雄、12週齢)に腹腔内1回投与した後、経時的に血液を採取し、反応溶液(0.1 M HEPES、pH 7.5, 0.3 M NaCl、0.01% Triton X-100、0.02% NaN3、20μM Nam-Leu-Pro-Lys(Dnp)-OH)に血漿を加え、コントロールと比較し、血漿中のACE2活性を測定した。これにより、マウス血中のB38−CAP濃度を経時的に求めた。得られた結果を図4に示す。血中B38−CAP濃度は、投与後1時間以内に最高濃度に達し、8時間後には低値になったが、12時間後でも血中B38−CAPによるACE2活性は検出できた。
実施例2
マウスにおけるアンジオテンシンIIによる高血圧に対するB38−CAPの降圧作用
実施例2−1:マウスにおけるB38−CAのアンジオテンシンII中和作用
マウス(C57BL/6N系統、雄、12週齢)にアンジオテンシンII(1 mg/kg/day)を浸透圧ポンプを用いて2週間持続投与し、血中のアンジオテンシンII(Ang II)は上昇した。これに対し、同時にB38−CAを充填した別の浸透圧ポンプをマウスに移植し、B38−CAを持続投与(2 mg/kg/day)すると、血中のAng II濃度は有意に低下した。
得られた結果を図5に示す。
実施例2−2:アンジオテンシンIIによる高血圧に対するB38−CAPの降圧作用
マウスにアンジオテンシンII (Ang II 1 mg/kg/day)を浸透圧ポンプを用いて2週間持続投与すると血圧が上昇した。これに対し、同時に別の浸透圧ポンプでB38−CA (2 mg/kg/day)を持続投与すると血圧が有意に低下した。
得られた結果を図6に示す。
同様に、B38−CA (2 mg/kg)を1日1回腹腔投与すると血圧が有意に低下した。血圧測定は、B38−CAを投与後6時間後に行った。
得られた結果を図7に示す。
図6および7は、B38−CAが動物の生体内においてアンジオテンシンIIの血圧上昇作用を確かに抑制することを示している。
実施例3
アンジオテンシンIIによる心肥大に対するB38−CAPの抑制作用
マウスにアンジオテンシンII (Ang II 1 mg/kg/day)を浸透圧ポンプを用いて2週間持続投与すると心臓が肥大し、心臓の重量(心重量/体重比)が増加した。これに対し、同時に別の浸透圧ポンプでB38−CA (2 mg/kg/day) を持続投与すると、心重量増加の抑制、心臓壁肥厚の抑制といった心肥大抑制が認められた。
得られた結果を図8に示す。
マウスにアンジオテンシンII (Ang II 1 mg/kg/day)を浸透圧ポンプを用いて2週間持続投与すると心臓が肥大し、心臓の重量が増加し、心不全遺伝子(Myh7)の発現が上昇した。これに対し、B38−CA(2 mg/kg)を1日1回腹腔投与すると、心臓壁肥厚の阻止、心不全遺伝子発現の低下といった心肥大抑制が認められた。心肥大遺伝子の測定は、qRT-PCRによる組織中mRNAの定量測定で行った。
得られた結果を図9に示す。
実施例4
アンジオテンシンIIによる心線維化に対するB38−CAP1回投与の抑制作用
マウスにアンジオテンシンII(Ang II 1 mg/kg/day)を浸透圧ポンプを用いて2週間持続投与すると、心臓組織の線維化(Masson-Trichrome染色の中央にある灰色領域)が増加し、線維化遺伝子(Col8a-1ならびにTgfb2)の発現が上昇した。これに対し、B38−CA (2 mg/kg)を1日1回腹腔投与すると、線維化領域の縮小、線維化遺伝子の発現低下といった線維化の抑制が認められた。線維化遺伝子の測定は、qRT-PCRによる組織中mRNAの定量測定で行った。
得られた結果を図10−1および図10−2に示す。
実施例5
TAC圧負荷ストレスによる心肥大に対するB38−CAP持続投与の抑制作用
マウスに横行大動脈縮窄手術(Transverse aortic constriction; TAC)により心臓に圧負荷ストレスをかけると、2週間後に心臓が肥大し、心臓の重量(心重量/体重比)が増加し、心不全遺伝子(BNPならびにMyh7)の発現が上昇した。これに対し、同時に別の浸透圧ポンプでB38−CAP (2 mg/kg/day)を持続投与すると、心重量増加の抑制、心不全遺伝子の発現低下といった心肥大抑制が認められた。心不全遺伝子の測定は、qRT-PCRによる組織中mRNAの定量測定で行った。
得られた結果を図11−1および図11−2に示す。Shamは偽手術の正常コントロール実験群。写真のスケールバーは2 mm。
実施例6
TAC圧負荷ストレスによる心機能低下に対するB38−CAP持続投与の抑制作用
マウスにTAC手術により心臓に圧負荷ストレスをかけると、2週間後、心エコーにて左室収縮末期内径(LVDs)ならびに左室拡張末期内径(LVDd)が増加し、心臓の駆出率(%FS)が減少するなど心機能が低下した。これに対し、浸透圧ポンプでB38−CAP (2 mg/kg/day)を持続投与すると、明らかな心機能改善が認められた。
得られた結果を図12−1および12−2に示す。Shamは偽手術の正常コントロール実験群。
実施例7
TAC圧負荷ストレスによる心線維化に対するB38−CAP持続投与の抑制作用
マウスにTAC手術により心臓に圧負荷ストレスをかけると、2週間後に心臓組織の線維化(Masson-Trichrome染色の中央にある灰色領域)が増加し、線維化遺伝子(Col8a-1)の発現が上昇する。これに対し、浸透圧ポンプでB38−CAP (2 mg/kg/day)を持続投与すると、線維化領域の縮小、線維化遺伝子の発現低下といった線維化の抑制が認められた。 Shamは偽手術の正常コントロール実験群。線維化遺伝子の測定は、qRT-PCRによる組織中mRNAの定量測定で行った。
得られた結果を図13−1および13−2に示す。写真のスケールバーは100 mm。
実施例8
マウス腹膜炎・敗血症モデルにおけるB38−CAPの急性炎症改善作用
盲腸結紮穿孔による腹膜炎・敗血症モデル(cecal ligation and puncture: CLP)において、B38−CAP (2 mg/kg)の腹腔内1回投与(CLPと同時)により、CLP後24時間後の生存率、腹腔洗浄液(Peritoneal Lavage Fluid: PLF)中の炎症細胞数が改善傾向を示した。気管支肺胞洗浄液(Bronchoalveolar Lavage Fluid: BALF)中の炎症細胞数は、B38−CAP投与により有意に低下し、肺の急性炎症が抑制された。
得られた結果を図14に示す。
実施例9
B38−CAP持続投与の肝機能、腎機能に対する影響
TAC手術あるいはSham手術(正常コントロール実験群)のマウスに、浸透圧ポンプでB38−CAP (2 mg/kg/day)を2週間持続投与した後、血液を採取し、血清中の肝機能マーカー(AST、ALT)ならびに腎機能マーカー(BUN、Cr)を測定した。いずれも正常範囲内で肝機能、腎機能に異常は認められなかった。
得られた結果を図15に示す。
実施例10
Bacillus subtilis由来カルボキシペプチダーゼの単離
Bacillus subtilis由来カルボキシペプチダーゼは、Lee MM, et al., Proteins 77(3), 647-657, 2009に記載されているypwA遺伝子(GenBankアクセッションナンバー: L47838)にコードされているポリペプチド(UniProtKBアクセッションナンバー: P50848、PDB ID: 3HQ2)である。
Bacillus subtilis NBRC 13719株(独立行政法人製品評価技術基盤機構に寄託されている)からゲノムDNAを単離し、以下の手法によりポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)によりypwA遺伝子を増幅した。
反応溶液の組成:KOD−Plus−(東洋紡株式会社製)のプロトコール
PCR反応:94℃、2分を1回、94℃、15秒、50℃、30秒、68℃、1分を30回、68℃、10分を1回。
プライマーの配列(BS−CAP用):
(1) GATATACCATGGAGATACATACATATGAAAAAG(配列番号18)
(2) GTGGTGCTCGAGTTATAACAGATAGAGATTTGAATATTTG(配列番号19)
増幅されたDNAの塩基配列は、Lee MM, et al., Proteins 77(3), 647-657, 2009に記載されているypwA遺伝子と一致した。
これを参考例2と同様に調製、精製し、単一酵素を取得した。このタンパク質をBS−CAPと称する。
BS−CAPのアミノ酸配列および塩基配列をそれぞれ、配列番号20および21に示す。
実施例11
Bacillus amyloliquefaciens由来カルボキシペプチダーゼの単離
Dunlap,C.A., et al., Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 65, 2104-2109, 2015には、DNA配列が記載されている(GenBankアクセッションナンバー: AFZ91113)。また、データベースにその推定アミノ酸配列が記載され、カルボキシペプチダーゼであることが示唆されている。しかし、BA−CAPが実際にタンパク質として単離され、活性測定されたことは記載されていない。
Bacillus amyloliquefaciens NBRC 3022株(独立行政法人製品評価技術基盤機構に寄託されている)からゲノムDNAを単離し、PCR反応において以下のプライマーを利用する以外は、実施例1記載の手法に従い、単一酵素を取得した。このタンパク質をBA−CAPと称する。
プライマーの配列(BA−CAP用)
(1) GATATACCATGGATTTACATACATATGAAAAAG(配列番号22)
(2) GTGGTGCTCGAGTTATAAATATAAATTTGAATATTTGCCG(配列番号23)
増幅されたDNAの塩基配列は、文献2に記載されている遺伝子と一致した。
これを参考例2と同様に調製、精製し、単一酵素を取得した。このタンパク質をBA−CAPと称する。
BA−CAPのアミノ酸配列および塩基配列をそれぞれ、配列番号24および25に示す。
実施例12
BS−CAPおよびBA−CAPの酵素活性
実施例1にて調製したBS−CAPおよび実施例2にて調製したBA−CAPによるアンジオテンシンIIの加水分解実験を行ったところ、アンジオテンシンII(Asp-Arg-Val-Tyr-Ile-His-Pro-Phe)からC末端アミノ酸残基のPheを分離し、アンジオテンシン(1−7)(Asp-Arg-Val-Tyr-Ile-His-Pro)を生成した。
得られた結果を図16に示す。
これらの結果は、参考例2にて調製したB38−CAPによるアンジオテンシンIIの加水分解実験と同様の結果であることから、BS−CAPおよびBA−CAPも、ヒトおよび動物に対してB38−CAPと同様な効果が期待できる。
図16において、(A)は、アンジオテンシンIIのみ、(B)は、アンジオテンシン(1−7)のみ、(C)は、フェニルアラニンのみ、(D)は、アンジオテンシンIIにBS−CAPを添加し、37℃で3時間インキュベートしたもの、(E)はアンジオテンシンIIにBA−CAPを添加し、37℃で3時間インキュベートしたものである。
HPLCの測定条件は、溶媒AからBへのリニアグラジエント(溶媒A:0.1%トリフルオロ酢酸、溶媒B:アセトニトリル)、分析時間10分、検出波長:210nm、カラム:TSKgel Super-ODS(10cm)とした。
B38−CAPは、Paenibacillus sp. B38細菌由来の新規に発見されたカルボキシペプチダーゼである。また、B38−CAPがACE2とよく似た立体構造、酵素活性を持つことは、アミノ酸配列からは予測不可能であり、発明者らの探索的研究により発見することができた。B38−CAPは試験管内ならびにマウス体内においてACE2と同様にカルボキシペプチダーゼとしてアンジオテンシンIIを分解することにより、高血圧、心不全(心肥大、線維化、心機能低下)、急性呼吸窮迫症候群(死亡率、肺の急性炎症)を改善する。
ヒト組換えACE2タンパク質は糖鎖構造を持つため、その調製には哺乳類細胞のタンパク質生産系が必要であり、莫大なコストと時間がかかる。これに対し、本発明におけるACE2活性を有するポリペプチドは元来、糖鎖構造を有していないため、大腸菌のタンパク質生産系で調製することができ、大幅なコストと時間の節約が可能であり、タンパク質製剤として活用の実現性が高い。また、B38−CAPとACE2は収斂進化の産物であることから、収斂進化の分子探索を活用した機能的酵素の「ジェネリック」タンパク質製剤の開発が有効である可能性を示すことができた。

Claims (35)

  1. アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドであって、下記のアミノ酸配列をその活性部位に含むポリペプチド:
    1)His-Glu-Xaa-Xaa-His(配列番号26)のアミノ酸配列(ここに、Xaaは任意のアミノ酸残基である)、および
    2)His-Glu-(Ser/Gly)のアミノ酸配列(ここに、Ser/GlyはSerまたはGlyを意味する)、またはその誘導体を有効成分として含有する、医薬組成物。
  2. アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドが、配列番号6から8および10から17記載のアミノ酸配列を有するペプチドおよびその変異体、ならびに、
    Nam-Xaa-Pro-Lys(Dnp)-OH (ここに、Namは2−メチルアミノベンゾイル、XaaはLeu、Met、Ile、Phe、Val、Trp、Arg、Tyr、Thr、Lys、His、Ala、Asn、Gln、Ser、Proのうち任意のアミノ酸残基、Dnpは2,4−ジニトロフェニルを示す)、
    ・Nma-Phe-His-Lys(Dnp)-OH (ここに、NamおよびDnpは前記と同様)、
    ・Cbz(カルボベンゾキシ)-Phe-Tyr、Z(ベンジルオキシカルボニル)-Ala-Xaa (ここに、XaaはArg、His、Trp、Tyr、Phe、Ile、Ala、Val、Ser、Met、Asn、Glu、Glyのうち任意のアミノ酸残基)、
    ・Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa(N3-(2,4-ジニトロフェニル)-L-2,3-ジアミノプロピオニル)-Ala-Ala-Trp、
    ・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp、および
    ・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp、
    のうち、少なくとも1つのペプチドのC末端アミノ酸残基を1残基切断する活性を有している、請求項1記載の医薬組成物。
  3. アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドが、配列番号7記載のアミノ酸配列を有するペプチドのC末端アミノ酸残基を1残基切断する活性を有している、請求項1または2記載の医薬組成物。
  4. 原核微生物由来ポリペプチドが、Leishmania属、Escherichia属、Gimesia属、Thermus属、Chloroflexus属、Deinococcus属、Parachlamydia属、Fusobacterium属、Leptotrichia属、Bacillus属、Chlamydia属、Paenibacillus属、Clostridium属、Leptospira属、Enterococcus属、Geobacillus属、Haloferax属、Halorubrum属、Roseobacter属、Thermococcus属、Pyrococcus属、Leuconostoc属、Haloarcula属、およびRhodobacter属の中から選ばれる少なくとも1つの属から産生される、請求項1から3までのいずれか記載の医薬組成物。
  5. 原核微生物由来ポリペプチドが、Bacillus属およびPaenibacillus属の中から選ばれる少なくとも1つの属から産生される、請求項4記載の医薬組成物。
  6. 原核微生物由来ポリペプチドが、Leishmania major、Escherichia coli、Gimesia maris、Thermus aquaticus、Chloroflexus aurantiacus、Deinococcus radiodurans、Parachlamydia acanthamoebae、Fusobacterium nucleatum、Leptotrichia goodfellowii、Bacillus cereus、Chlamydia trachomatis、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Paenibacillus sp. B38、Clostridium saccharolyticum、Leptospira interrogans、Thermus thermophilus、およびPyrococcus furiosusの中から選ばれる少なくとも1つの菌株から産生される、請求項4記載の医薬組成物。
  7. 原核微生物由来ポリペプチドが、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、およびPaenibacillus sp. B38の中から選ばれる少なくとも1つの菌株から産生されるポリペプチドである、請求項6記載の医薬組成物。
  8. 原核微生物由来ポリペプチドが、糖鎖を有していない、請求項1から7のいずれか記載の医薬組成物。
  9. 原核微生物由来ポリペプチドが、以下の中から選ばれる少なくとも1つである、請求項1から8のいずれか記載の医薬組成物:
    1)配列番号20記載のアミノ酸配列を有するBS−CAP、
    2)配列番号20記載のアミノ酸配列を有するBS−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するBS−CAP変異体、
    3)配列番号24記載のアミノ酸配列を有するBA−CAP、
    4)配列番号24記載のアミノ酸配列を有するBA−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するBA−CAP変異体
    5)配列番号1記載のアミノ酸配列を有するB38−CAP、および
    6)配列番号1記載のアミノ酸配列を有するB38−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するB38−CAP変異体。
  10. 高血圧、心不全、心組織線維化症、急性呼吸窮迫症候群または急性肺傷害、例えば酸吸引もしくは敗血症により誘発される重症急性肺損傷、肺水腫、または重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス感染もしくはインフルエンザウイルス感染関連肺損傷および障害が原因となるものを処置または予防するための、請求項1から9のいずれか記載の医薬組成物。
  11. アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドであって、下記のアミノ酸配列をその活性部位に含むポリペプチド:
    1)His-Glu-Xaa-Xaa-His(配列番号26)のアミノ酸配列(ここに、Xaaは任意のアミノ酸残基である)、および
    2)His-Glu-(Ser/Gly)のアミノ酸配列(ここに、Ser/GlyはSerまたはGlyを意味する)、またはその誘導体。
    ただし、配列番号1記載のアミノ酸配列を有するB38−CAPおよび、配列番号1記載のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するB38−CAP変異体を除く。
  12. 配列番号6から8および10から17記載のアミノ酸配列を有するペプチドおよびその変異体、ならびにNam-Xaa-Pro-Lys(Dnp)-OH (ここに、Namは2−メチルアミノベンゾイル、XaaはLeu、Met、Ile、Phe、Val、Trp、Arg、Tyr、Thr、Lys、His、Ala、Asn、Gln、Ser、Proのうち任意のアミノ酸残基、Dnpは2,4−ジニトロフェニルを示す)、
    ・Nma-Phe-His-Lys(Dnp)-OH (ここに、NamおよびDnpは前記と同様)、
    ・Cbz(カルボベンゾキシ)-Phe-Tyr、Z(ベンジルオキシカルボニル)-Ala-Xaa (ここに、XaaはArg、His、Trp、Tyr、Phe、Ile、Ala、Val、Ser、Met、Asn、Glu、Glyのうち任意のアミノ酸残基)、
    ・Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa(N3-(2,4-ジニトロフェニル)-L-2,3-ジアミノプロピオニル)-Ala-Ala-Trp、
    ・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp、および
    ・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp、
    のうち、少なくとも1つのペプチドのC末端アミノ酸残基を1残基切断する活性を有している、請求項11記載のポリペプチド。
  13. アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドが、配列番号7記載のアミノ酸配列を有するペプチドのC末端アミノ酸残基を1残基切断する活性を有している、請求項11または12記載のポリペプチド。
  14. Leishmania属、Escherichia属、Gimesia属、Thermus属、Chloroflexus属、Deinococcus属、Parachlamydia属、Fusobacterium属、Leptotrichia属、Bacillus属、Chlamydia属、Paenibacillus属、Clostridium属、Leptospira属、Enterococcus属、Geobacillus属、Haloferax属、Halorubrum属、Roseobacter属、Thermococcus属、Pyrococcus属、Leuconostoc属、Haloarcula属、およびRhodobacter属の中から選ばれる少なくとも1つの属から産生される、請求項11から13のいずれか記載のポリペプチド。
  15. Bacillus属およびPaenibacillus属の中から選ばれる少なくとも1つの属から産生され、請求項14記載のポリペプチド。
  16. Leishmania major、Escherichia coli、Gimesia maris、Thermus aquaticus、Chloroflexus aurantiacus、Deinococcus radiodurans、Parachlamydia acanthamoebae、Fusobacterium nucleatum、Leptotrichia goodfellowii、Bacillus cereus、Chlamydia trachomatis、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Paenibacillus sp. B38、Clostridium saccharolyticum、Leptospira interrogans、Thermus thermophilus、およびPyrococcus furiosusの中から選ばれる少なくとも1つの菌株から産生される、請求項11から14のいずれか記載のポリペプチド。
  17. Bacillus subtilisから産生されるポリペプチドである、請求項16記載のポリペプチド。
  18. 糖鎖を有していない、請求項11から17のいずれか記載のポリペプチド。
  19. 可溶性である、請求項11から18のいずれか記載のポリペプチド。
  20. 以下の中から選ばれる少なくとも1つである、請求項11から19のいずれか記載のポリペプチド:
    1)配列番号20記載のアミノ酸配列を有するBS−CAP、
    2)配列番号20記載のアミノ酸配列を有するBS−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するBS−CAP変異体、
    3)配列番号24記載のアミノ酸配列を有するBA−CAP、
    4)配列番号24記載のアミノ酸配列を有するBA−CAPにおいて、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列であって、アンジオテンシン変換酵素2活性を有するBA−CAP変異体。
  21. 請求項11から20のいずれか記載のポリペプチドをコードする核酸。
  22. 以下の(a)〜(f)のいずれかに記載の核酸:
    (a)配列番号2、21および25のいずれか記載の塩基配列からなる核酸、
    (b)配列番号2、21および25のいずれか記載の塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列からなり、かつアンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードする核酸、
    (c)配列番号2、21および25のいずれか記載の塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつアンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードする核酸
    (d)配列番号1、20および24のいずれか記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、
    (e)配列番号1、20および24のいずれか記載のアミノ酸配列と同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、かつアンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードする核酸、および
    (f)配列番号1、20および24のいずれか記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加および/または逆位されたアミノ酸配列からなり、かつアンジオテンシン変換酵素2活性を有するタンパク質をコードする核酸。
  23. 請求項21または22記載の核酸を含有する組換えベクター。
  24. 請求項23記載の組換えベクターを含有する形質転換体。
  25. 原核微生物である、請求項24記載の形質転換体。
  26. 大腸菌である、請求項25記載の形質転換体。
  27. 請求項24から26のいずれか記載の形質転換体を培地に培養し、培養物からアンジオテンシン変換酵素2活性を有するポリペプチドを採取することを特徴とする、請求項11から20のいずれか記載のポリペプチドを製造する方法。
  28. 請求項21または22記載の核酸を含有する、医薬組成物。
  29. 請求項23記載の組換えベクターを含有する、医薬組成物。
  30. 高血圧、心不全、心組織線維化症、急性呼吸窮迫症候群または急性肺傷害、例えば酸吸引もしくは敗血症により誘発される重症急性肺損傷、肺水腫、または重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス感染もしくはインフルエンザウイルス感染関連肺損傷および障害が原因となるものを処置または予防するための、請求項28または29記載の医薬組成物。
  31. アンジオテンシン変換酵素2活性を調節する物質をスクリーニングする方法であって、
    a)本発明ACE2ポリペプチドを本発明ACE2ポリペプチドの基質と接触させ、および基質の分解を検出し、それにより本発明ACE2ポリペプチドの活性を評価する段階、
    b)本発明ACE2ポリペプチドを、ACE2活性を調節し得る候補物質の存在下、本発明ACE2ポリペプチドの基質と接触させ、および基質の分解を検出し、それにより本発明ACE2ポリペプチドの活性を評価する段階、ならびに
    c)段階a)およびb)で評価された本発明ACE2ポリペプチドの活性を比較し、その結果、段階a)で測定された活性が段階b)で測定された活性と異なることにより、候補物質が本発明ACE2ポリペプチドの活性を調節することが示唆される段階、
    を含む方法。
  32. アンジオテンシン変換酵素2活性を向上させる物質をスクリーニングする方法であって、
    a)本発明ACE2ポリペプチドを本発明ACE2ポリペプチドの基質と接触させ、および基質の分解を検出し、それにより本発明ACE2ポリペプチドの活性を評価する段階、
    b)本発明ACE2ポリペプチドを、ACE2活性を向上させ得る候補物質の存在下、本発明ACE2ポリペプチドの基質と接触させ、および基質の分解を検出し、それにより本発明ACE2ポリペプチドの活性を評価する段階、ならびに
    c)段階a)およびb)で評価された本発明ACE2ポリペプチドの活性を比較し、その結果、段階b)で測定された活性が段階a)で測定された活性よりも亢進している場合に、候補物質が本発明ACE2ポリペプチドの活性を向上させることが示唆される段階、
    を含む方法。
  33. アンジオテンシン変換酵素2活性を有する原核微生物由来ポリペプチドが、請求項11から請求項20記載のポリペプチド、または、請求項9におけるB38−CAPもしくはB38−CAP変異体である、請求項31または32記載の方法。
  34. 基質が、配列番号6から8および10から17記載のアミノ酸配列を有するペプチドおよびその変異体、ならびにNam-Xaa-Pro-Lys(Dnp)-OH (ここに、Namは2−メチルアミノベンゾイル、XaaはLeu、Met、Ile、Phe、Val、Trp、Arg、Tyr、Thr、Lys、His、Ala、Asn、Gln、Ser、Proのうち任意のアミノ酸残基、Dnpは2,4−ジニトロフェニルを示す)、
    ・Nma-Phe-His-Lys(Dnp)-OH (ここに、NamおよびDnpは前記と同様)、
    ・Cbz(カルボベンゾキシ)-Phe-Tyr、Z(ベンジルオキシカルボニル)-Ala-Xaa (ここに、XaaはArg、His、Trp、Tyr、Phe、Ile、Ala、Val、Ser、Met、Asn、Glu、Glyのうち任意のアミノ酸残基)、
    ・Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa(N3-(2,4-ジニトロフェニル)-L-2,3-ジアミノプロピオニル)-Ala-Ala-Trp、
    ・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp、および
    ・Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Ala-Ser-Gly-Lys-Dpa-Ala-Ala-Trp、
    のうちの少なくとも1つである、請求項31から33のいずれか記載の方法。
  35. アンジオテンシン変換酵素2活性を向上させ得る候補物質が、各種微生物、動物組織、動物細胞、植物組織、植物細胞、およびそれらの培養物および培養液、ならびに発酵食品、加工食品から得られる、請求項31から34のいずれか記載の方法。
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