配列表の説明
SEQ ID NO:1 ヒトMAp19 cDNA
SEQ ID NO:2 ヒトMAp19タンパク質(リーダーあり)
SEQ ID NO:3 ヒトMAp19タンパク質(成熟)
SEQ ID NO:4 ヒトMASP-2 cDNA
SEQ ID NO:5 ヒトMASP-2タンパク質(リーダーあり)
SEQ ID NO:6 ヒトMASP-2タンパク質(成熟)
SEQ ID NO:7 ヒトMASP-2 gDNA(エキソン1-6)
抗原:(MASP-2成熟タンパク質を基準にした)
SEQ ID NO:8 CUBI配列(aa1〜121)
SEQ ID NO:9 CUBEGF配列(aa1〜166)
SEQ ID NO:10 CUBEGFCUBII(aa1〜293)
SEQ ID NO:11 EGF領域(aa122〜166)
SEQ ID NO:12 セリンプロテアーゼドメイン(aa429〜671)
SEQ ID NO:13 セリンプロテアーゼドメイン不活性(Ser618からAlaへの変異を有するaa610〜625)
ペプチド阻害因子:
SEQ ID NO:20 MBL完全長cDNA
SEQ ID NO:21 MBL完全長タンパク質
SEQ ID NO:22 OGK-X-GP(コンセンサス結合)
発現阻害因子:
SEQ ID NO:30 CUBI-EGFドメインのcDNA(SEQ ID NO:4のヌクレオチド22〜680)
SEQ ID NO:31
MASP-2翻訳開始点を含むSEQ ID NO:4のヌクレオチド12〜45(センス)
SEQ ID NO:32
MASP-2 MBL結合部位を含む領域をコードするSEQ ID NO:4のヌクレオチド361〜396(センス)
SEQ ID NO:33
CUBIIドメインを含む領域をコードするSEQ ID NO:4のヌクレオチド610〜642
クローニングプライマー:
SEQ ID NO:38〜47は、ヒト化抗体用のクローニングプライマーである。
SEQ ID NO:48は、9aaペプチド結合である。
発現ベクター:
SEQ ID NO:49は、MASP-2ミニ遺伝子インサートである。
SEQ ID NO:50は、マウスMASP-2 cDNAである。
SEQ ID NO:51は、マウスMASP-2タンパク質(w/リーダー)である。
SEQ ID NO:52は、成熟マウスMASP-2タンパク質である。
SEQ ID NO:53は、ラットMASP-2 cDNAである。
SEQ ID NO:54は、ラットMASP-2タンパク質(w/リーダー)である。
SEQ ID NO:55は、成熟ラットMASP-2タンパク質である。
SEQ ID NO:56〜59は、ヒトMASP-2Aを生成するために用いられるヒトMASP-2の部位特異的変異誘発用オリゴヌクレオチドである。
SEQ ID NO:60〜63は、マウスMASP-2Aを生成するために用いられるマウスMASP-2の部位特異的変異誘発用オリゴヌクレオチドである。
SEQ ID NO:64〜65は、ラットMASP-2Aを生成するために用いられるラットMASP-2の部位特異的変異誘発用オリゴヌクレオチドである。
SEQ ID NO:66 17D20_dc35VH21N11VL(OMS646)重鎖可変領域(VH)(シグナルペプチドなし)をコードするDNA
SEQ ID NO:67 17D20_dc35VH21N11VL(OMS646)重鎖可変領域(VH)ポリペプチド
SEQ ID NO:68 17N16mc重鎖可変領域(VH)ポリペプチド
SEQ ID NO:69: 17D20_dc35VH21N11VL(OMS646)軽鎖可変領域(VL)をコードするDNA
SEQ ID NO:70: 17D20_dc35VH21N11VL(OMS646)軽鎖可変領域(VL)ポリペプチド
SEQ ID NO:71: 17N16_dc17N9軽鎖可変領域(VL)ポリペプチド
詳細な説明
本発明は、古典経路を完全な状態のままにしておきながら、レクチン媒介MASP-2経路を阻害することが可能だという本発明者らによる驚くべき発見に基づく。本発明はまた、免疫系の古典的(C1q依存性)経路成分を完全な状態のままにしておきながら、レクチン媒介補体経路活性化に関連した細胞障害を阻害するための治療標的としてのMASP-2の使用について説明する。
I.定義
本明細書において特に定義がない限り、本明細書において用いられる全ての用語は、本発明の当業者によって理解されるものと同じ意味を有する。本発明を説明するために明細書および特許請求の範囲において用いられる用語をわかりやすくするために、以下の定義が提供される。
本明細書で使用する「MASP-2依存性補体活性化」という用語は、レクチン経路C3コンバターゼC4b2aの形成とそれに続く、C3切断産物C3bの蓄積時のC5コンバターゼC4b2a(C3b)nの形成につながる、生理学的条件下(すなわち、Ca++の存在下)で起こるレクチン経路のMASP-2依存性活性化を含み、主に、オプソニン化を引き起こすことが判明されている。
本明細書で使用する「第二経路」という用語は、例えば、真菌細胞壁および酵母細胞壁に由来するザイモサン、グラム陰性細菌の外膜に由来するリポ多糖(LPS)、およびウサギ赤血球、ならびに多くの純粋な多糖、ウサギ赤血球、ウイルス、細菌、動物腫瘍細胞、寄生生物、および損傷細胞によって誘発され、従来、補体因子C3からC3bの自発的タンパク質分解生成から生じると考えられてきた補体活性化を指す。
本明細書で使用する「レクチン経路」という用語は、マンナン結合レクチン(MBL)、CL-11、およびフィコリン(H-フィコリン、M-フィコリン、またはL-フィコリン)を含む血清炭水化物結合タンパク質および非血清炭水化物結合タンパク質の特異的結合を介して起こる補体活性化を指す。
本明細書で使用する「古典経路」という用語は、外来粒子に結合している抗体によって誘発され、認識分子C1qの結合を必要とする補体活性化を指す。
本明細書で使用する「MASP-2阻害物質」という用語は、MASP-2に結合するかまたはMASP-2と直接相互作用して、MASP-2依存性補体活性化を効果的に阻害する任意の作用物質を指し、抗MASP-2抗体およびそのMASP-2結合断片、天然ペプチドおよび合成ペプチド、低分子、可溶性MASP-2受容体、発現阻害因子、ならびに単離された天然阻害因子を含み、レクチン経路において別の認識分子(例えば、MBL、H-フィコリン、M-フィコリン、またはL-フィコリン)との結合においてMASP-2と競合するペプチドも包含するが、このような他の認識分子に結合する抗体を包含しない。本発明の方法において有用なMASP-2阻害物質は、MASP-2依存性補体活性化を20%超、例えば、50%超、例えば、90%超低下させ得る。一態様において、MASP-2阻害物質は、MASP-2依存性補体活性化を90%超低下させる(すなわち、MASP-2補体活性化を10%またはそれ未満しかもたらさない)。
本明細書で使用する「抗体」という用語は、標的ポリペプチド、例えば、MASP-2ポリペプチドまたはその一部に特異的に結合する、任意の抗体産生哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、およびヒトを含む霊長類)に由来するかあるいはハイブリドーマ、ファージセレクション、組換え発現、またはトランスジェニック動物(または抗体もしくは抗体断片を産生する他の方法)に由来する抗体およびその抗体断片を包含する。「抗体」という用語は、抗体源、または抗体が作製されるやり方の点で(例えば、ハイブリドーマ、ファージセレクション、組換え発現、トランスジェニック動物、ペプチド合成などによって)限定されることが意図されない。例示的な抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、および組換え抗体;汎(pan)特異的、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、三重特異性抗体);ヒト化抗体:マウス抗体;キメラ、マウス-ヒト、マウス-霊長類、霊長類-ヒトモノクローナル抗体;および抗イディオタイプ抗体を含み、任意のインタクトな抗体またはその断片でもよい。本明細書で使用する「抗体」という用語は、インタクトなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけでなく、その断片(例えば、dAb、Fab、Fab'、F(ab') 2、Fv)、単鎖(ScFv)、その合成変種、天然変種、抗体部分と、必要とされる特異性の抗原結合断片を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、および必要とされる特異性の抗原結合部位または断片(エピトープ認識部位)を含む免疫グロブリン分子の他の任意の改変された構成も包含する。
「モノクローナル抗体」は均質な抗体集団を指し、モノクローナル抗体は、エピトープの選択的結合に関与するアミノ酸(天然および非天然)からなる。モノクローナル抗体は標的抗原に対して高度に特異的である。「モノクローナル抗体」という用語は、インタクトなモノクローナル抗体および完全長モノクローナル抗体だけでなく、その断片(例えば、Fab、Fab'、F(ab') 2、Fv)、単鎖(ScFv)、その変種、抗原結合部分を含む融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ならびに必要とされる特異性およびエピトープに結合する能力の抗原結合断片(エピトープ認識部位)を含む免疫グロブリン分子の他の任意の改変された構成も包含する。この用語は、抗体源、または抗体が作製されるやり方の点で(例えば、ハイブリドーマ、ファージセレクション、組換え発現、トランスジェニック動物などによって)限定されることが意図されない。この用語は、「抗体」の定義で前述された免疫グロブリン全体および断片などを含む。
本明細書で使用する「抗体断片」という用語は、完全長抗体、例えば、抗MASP-2抗体に由来または関連する、一般的には、その抗原結合領域または可変領域を含む、部分を指す。抗体断片の例示的な例には、Fab、Fab'、F(ab) 2、F(ab') 2、およびFv断片、scFv断片、ダイアボディ、直鎖抗体、単鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
本明細書で使用する「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHドメインまたはVLドメインを含み、これらのドメインは1本のポリペプチド鎖に存在する。一般的に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このためにscFvは抗原結合のために望ましい構造を形成することができる。
本明細書で使用する「キメラ抗体」は、非ヒト種(例えば、げっ歯類)抗体に由来する可変ドメインおよび相補性決定領域を含有するが、抗体分子の残りがヒト抗体に由来する、組換えタンパク質である。
本明細書で使用する「ヒト化抗体」は、ヒト抗体フレームワークに移植された、非ヒト免疫グロブリンに由来する特異的な相補性決定領域に一致する最小配列を含むキメラ抗体である。ヒト化抗体は、典型的には、抗体相補性決定領域のみが非ヒトに由来する組換えタンパク質である。
本明細書で使用する「マンナン結合レクチン」(「MBL」)という用語は、マンナン結合タンパク質(「MBP」)と同意義である。
本明細書で使用する「膜侵襲複合体」(「MAC」)は、膜に入り込み、膜を破壊する、5種類の終末補体成分の複合体(C5bとC6、C7、C8、およびC9との組み合わせ)(C5b-9とも呼ばれる)を指す。
本明細書で使用する「対象」は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウサギ、ブタ、およびげっ歯類を含むが、それに限定されるわけではない、全ての哺乳動物を含む。
本明細書で使用するアミノ酸残基の略語は以下の通りである:アラニン(Ala;A)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、アルギニン(Arg;R)、システイン(Cys;C)、グルタミン酸(Glu;E)、グルタミン(Gln;Q)、グリシン(Gly;G)、ヒスチジン(His;H)、イソロイシン(Ile;I)、ロイシン(Leu;L)、リジン(Lys;K)、メチオニン(Met;M)、フェニルアラニン(Phe;F)、プロリン(Pro;P)、セリン(Ser;S)、スレオニン(Thr;T)、トリプトファン(Trp;W)、チロシン(Tyr;Y)、およびバリン(Val;V)。
最も広い意味では、天然アミノ酸は、それぞれのアミノ酸の側鎖の化学特性に基づいてグループに分けることができる。「疎水性」アミノ酸とは、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、Val、Ala、CysまたはProを意味する。「親水性」アミノ酸とは、Gly、Asn、Gln、Ser、Thr、Asp、Glu、Lys、Arg、またはHisを意味する。このアミノ酸グループは、以下のように、さらにサブグループに分けることができる。「無電荷親水性」アミノ酸とは、Ser、Thr、Asn、またはGlnを意味する。「酸性」アミノ酸とはGluまたはAspを意味する。「塩基性」アミノ酸とはLys、Arg、またはHisを意味する。
本明細書で使用する「保存的アミノ酸置換」という用語は、以下のそれぞれのグループ内のアミノ酸間の置換によって例示される:(1)グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン、(2)フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、(3)セリンおよびスレオニン、(4)アスパラギン酸およびグルタミン酸、(5)グルタミンおよびアスパラギン、ならびに(6)リジン、アルギニンおよびヒスチジン。
本明細書で使用する「オリゴヌクレオチド」という用語は、リボ核酸(RNA)もしくはデオキシリボ核酸(DNA)またはその模倣物のオリゴマーまたはポリマーを指す。この用語は、天然のヌクレオチド、糖、およびヌクレオシド間(バックボーン)共有結合からなるオリゴヌクレオ塩基(oligonucleobase)、ならびに非天然改変を有するオリゴヌクレオチドもカバーする。
本明細書で使用する「エピトープ」は、抗体が結合する、タンパク質(例えば、ヒトMASP-2タンパク質)上の部位を指す。「重複エピトープ」は、直鎖エピトープおよび非直鎖エピトープを含む、少なくとも1個(例えば、2個、3個、4個、5個、または6個)の共通アミノ酸残基を含む。
本明細書で使用する「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は同義に用いられ、長さにも翻訳後修飾に関係なく任意のペプチド結合アミノ酸鎖を意味する。本明細書に記載のMASP-2タンパク質は野生型タンパク質を含有してもよく、野生型タンパク質でもよく、50個以下(例えば、1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、7個以下、8個以下、9個以下、10個以下、12個以下、15個以下、20個以下、25個以下、30個以下、35個以下、40個以下、または50個以下)の保存的アミノ酸置換を有する変種でもよい。保存的置換は、典型的には、以下のグループ内の置換を含む;グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシン、およびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリン、およびスレオニン;リジン、ヒスチジン、およびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。
一部の態様において、ヒトMASP-2タンパク質は、SEQ ID NO:5に示されたアミノ酸配列を有するヒトMASP-2タンパク質と70(例えば、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100)%同一、または70(例えば、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100)%超同一のアミノ酸配列を有してもよい。
一部の態様において、ペプチド断片は、長さが少なくとも6個(例えば、少なくとも7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、110個、120個、130個、140個、150個、160個、170個、180個、190個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、もしくは600個、またはそれ以上の)アミノ酸残基(例えば、SEQ ID NO:5の少なくとも6個の連続したアミノ酸残基)でもよい。一部の態様において、ヒトMASP-2タンパク質の抗原性ペプチド断片は、長さが500個未満(例えば、450個未満、400個未満、350個未満、325個未満、300個未満、275個未満、250個未満、225個未満、200個未満、190個未満、180個未満、170個未満、160個未満、150個未満、140個未満、130個未満、120個未満、110個未満、100個未満、95個未満、90個未満、85個未満、80個未満、75個未満、70個未満、65個未満、60個未満、55個未満、50個未満、49個未満、48個未満、47個未満、46個未満、45個未満、44個未満、43個未満、42個未満、41個未満、40個未満、39個未満、38個未満、37個未満、36個未満、35個未満、34個未満、33個未満、32個未満、31個未満、30個未満、29個未満、28個未満、27個未満、26個未満、25個未満、24個未満、23個未満、22個未満、21個未満、20個未満、19個未満、18個未満、17個未満、16個未満、15個未満、14個未満、13個未満、12個未満、11個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、または6個未満)のアミノ酸残基(例えば、SEQ ID NO:5のいずれか1つにある500個未満の連続したアミノ酸残基)である。
パーセント(%)アミノ酸配列同一性は、最大のパーセント配列同一性を実現するように配列をアラインメントし、必要であればギャップを導入した後の、参照配列中のアミノ酸と同一の候補配列中のアミノ酸のパーセントと定義される。パーセント配列同一性を求める目的で、当技術分野における技術の範囲内の様々なやり方で、例えば、公的利用可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを用いて、アラインメントを実現することができる。比較されている配列の完全長にわたって最大アラインメントを実現するのに必要な、任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータは公知の方法によって決定することができる。
II.本発明の概略
レクチン(MBL、M-フィコリン、H-フィコリン、L-フィコリン、およびCL-11)は先天的補体系を誘発する特異的認識分子であり、この系は、レクチン開始経路、およびレクチンによって開始される終末補体エフェクター分子活性化を増幅する関連する終末経路増幅ループを含む。C1qは後天的補体系を誘発する特異的認識分子であり、この系は、古典的開始経路、およびC1qによって開始される終末補体エフェクター分子活性化を増幅する関連する終末経路増幅ループを含む。本発明者らは、これらの2つの主要な補体活性化系を、それぞれ、レクチン依存性補体系およびC1q依存性補体系と呼ぶ。
補体系は、免疫防御における必須の役割に加えて、多くの臨床状態における組織損傷の一因となる。従って、これらの副作用を阻止するために治療上有効な補体阻害因子を開発する差し迫った必要性がある。古典経路を完全な状態のままにしておきながら、レクチン媒介MASP-2経路を阻害することが可能だという認識の下で、補体の免疫防御能力を完全に遮断することなく、ある特定の病態の原因となる補体活性化系のみを特異的に阻害することが極めて望ましいことに気がついた。例えば、補体活性化が主にレクチン依存性補体系によって媒介される疾患状態では、この系だけを特異的に阻害することが有利であると考えられる。このために、免疫複合体処理を取り扱い、かつ感染症に対する宿主防御を助けるためにC1q依存性補体活性化系は完全な状態のままになると考えられる。
レクチン依存性補体系を特異的に阻害する治療用物質の開発において対象となる好ましいタンパク質成分はMASP-2である。レクチン依存性補体系の公知の全てのタンパク質成分(MBL、H-フィコリン、M-フィコリン、L-フィコリン、MASP-2、C2-C9、B因子、D因子、およびプロペルジン)のうち、レクチン依存性補体系に特有にあり、かつ系が機能するのに必要とされるものはMASP-2しかない。レクチン(MBL、H-フィコリン、M-フィコリン、L-フィコリン、およびCL-11)もレクチン依存性補体系において特有の成分である。しかしながら、これらのレクチン成分のいずれか1つが消失しても、レクチン重複性のために系の活性化は必ずしも阻害されるとは限らないと考えられる。レクチン依存性補体活性化系の阻害を保証するためには5種類全てのレクチンを阻害することが必要であると考えられる。さらに、MBLおよびフィコリンは補体とは無関係にオプソニン活性も有することが公知であるので、レクチン機能を阻害すると、感染症に対する、この有益な宿主防御機構が失われてしまうと考えられる。対照的に、MASP-2が阻害標的である場合には、この補体非依存的レクチンオプソニン活性は完全な状態のままであると考えられる。レクチン依存性補体活性化系を阻害する治療標的としてのMASP-2の付加的な利益は、補体タンパク質の最も低い血漿中濃度の中にMASP-2血漿中濃度(約500ng/ml)があることである。従って、完全な阻害を得るためには、それに応じた低い濃度の高親和性MASP-2阻害因子で十分である可能性がある(Moller-Kristensen, M., et al., J. Immunol Methods 282:159-167, 2003)。
III.血栓性微小血管症におけるMASP-2の役割、ならびにMASP-2阻害物質を用いた治療方法
概説
血栓性微小血管症(TMA)は小さな血管中の血餅を特徴とする病態である(Benz. K.; et al., Curr Opin Nephrol Hypertens 19(3):242-7(2010))。基礎をなす血管内皮に対するストレスまたは損傷が一次ドライバー(primary driver)であると考えられている。TMAの臨床および実験室での所見には、血小板減少症、貧血、紫斑病、および腎不全が含まれる。古典的なTMAは溶血性尿毒症症候群(HUS)および血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)である。TMAの特徴的な基礎をなす病理学的特徴は、細動脈および細静脈における血小板活性化および微小血栓形成である。微小血管内皮に対する損傷またはストレスによって少なくとも部分的に開始された補体活性化はまた、劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)、全身デゴス病、ならびに、癌に続発するTMA、癌化学療法に続発するTMA、および移植に続発するTMAを含む他のTMAに関与している。
特定の補体成分に遺伝的欠損がある患者の研究によって、腎炎宿主における補体の病理学的役割について直接の証拠が得られた。多くの報告において、腎損傷と補体調節H因子欠損との関係性が述べられている(Ault, B.H., Nephrol. 14:1045-1053, 2000; Levy, M., et al., Kidney Int. 30:949-56, 1986; Pickering, M.C., et al., Nat. Genet, 31:424-8, 2002)。H因子欠損によって、活性化に関連してB因子およびC3が消費されるために、これらの成分の血漿中レベルが低くなる。これらの患者の血清中のC5b-9の循環レベルも増大する。このことは補体活性化を意味する。膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)および特発性溶血性尿毒症症候群(HUS)はH因子欠損またはH因子変異と関連する。H因子欠損ブタ(Jansen, J.H., et al., Kidney Int. 53:331-49, 1998)およびH因子ノックアウトマウス(Pickering, M.C., 2002)はMPGN様の症状を示す。このことは補体調節におけるH因子の重要性を裏付けている。他の補体成分の欠損が、全身性エリテマトーデス(SLE)の発症に続発する腎臓病に関連する(Walport, M.J., Davies, et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 815:267-81, 1997)。C1q、C4、およびC2の欠損は、免疫複合体およびアポトーシス物質の不完全なクリアランスに関連する機構を介したSLE発症の強力な素因である。これらのSLE患者の多くでは、糸球体全体の免疫複合体の沈着を特徴とするループス腎炎が起こる。
aHUS
非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は、「血栓性微小血管症」と呼ばれる一群の状態の一部である。非典型HUS(aHUS)において、この疾患は不完全な補体調節に関連し、散発性または家族性であり得る。家族性aHUS症例は、補体因子H、I因子、B因子、メンブレンコファクターCD46、ならびに補体因子H関連タンパク質1(CFHR1)および補体因子H関連タンパク質3(CFHR3)を含む、補体活性化タンパク質または補体調節タンパク質をコードする遺伝子の変異に関連する(Zipfel, P.F., et al., PloS Genetics 3(3):e41(2007))。aHUSに関連する、この広範な遺伝子変異の統合的な特徴は、細胞表面または組織表面における補体活性化の増強の素因である。従って、本発明の一局面は、有効量のMASP-2阻害物質を投与することによって、H因子欠損に関連したaHUSに罹患している患者を治療することを含む。本発明の別の局面は、有効量のMASP-2阻害物質を投与することによって、I因子、B因子、メンブレンコファクターCD46、CFHR1、またはCFHR3の欠損に関連したHUSに罹患している患者を治療することを含む。
最近、多様な変異体補体因子セットによって引き起こされるaHUSにおける補体活性化の増強の基礎をなす分子病態生理学の理解に向けてかなりの進歩があった。この機構はH因子変異について最もよく理解されている。H因子は、溶解状態で、ならびに宿主細胞表面において補体活性化の負の制御因子として作用する、20個のショートコンセンサスリピート(SCR)ドメインを含む豊富な血清タンパク質である。それは、I因子および他のコファクターと共に活性化型C3を標的とし、その不活性化を促進し、さらなる補体活性化を未然に防ぐ。宿主細胞表面にある補体活性化を効果的に制御するために、H因子は宿主細胞と相互作用する必要があり、これはSCRドメイン16〜20によって媒介される。現在に至るまで述べられた、aHUSに関連した全てのH因子変異は、(SCR)ドメイン16〜20を含むC末端領域においてクラスター化している。これらの変異H因子タンパク質は溶解状態ではC3活性化制御において完全に機能するが、宿主細胞表面と相互作用することができず、その結果、細胞表面上でのC3活性化を制御することができない(Exp Med 204(6):1249-56(2007))。従って、変異H因子タンパク質は宿主細胞表面と相互作用せず、従って、微小血管内皮を含む宿主細胞表面での補体活性化を効果的に低下できないので、ある特定のH因子変異はaHUSと関連する。結果として、初期C3活性化が起こると、微小血管内皮表面でのその後の補体活性化は、H因子変異を有する患者では勢いが変わることなく進行する。この制御されていない補体活性化は、最終的には、血管内皮に対する進行性の損傷、その後の血小板凝集および微小血管凝固、ならびに部分的に閉塞した微小血管を通るRBC通過のずり応力によって引き起こされる溶血につながる。従って、aHUS疾患症状発現ならびに臨床および実験室での所見は、微小血管内皮表面での負の補体調節の欠陥と直接関連がある。
H因子変異に類似して、負の補体モジュレーターであるI因子およびメンブレンコファクタータンパク質(CD46)の機能喪失型変異もaHUSと関連がある。aHUSは、B因子、C3タンパク質の機能獲得変異に関連することが見出されたので、これらのタンパク質については反対のことが観察されている(Pediatr Nephrol 25(12):2431-42(2010))。従って、多数のまとまったデータは補体活性化がaHUS発生に関係していることを示している。この考えは、aHUSの治療において終末補体タンパク質C5を遮断するモノクローナル抗体であるエクリズマブの治療有効性によって最も説得力をもって裏付けられる。
aHUSにおけるエフェクター機構としての補体の中心的な役割が広く認められているが、補体活性化を開始するトリガーおよび関与する分子経路は未解決である。前記の変異を有する全ての個体がaHUSを発症するとは限らない。実際に、家族研究から、aHUSの浸透度は約50%しかないことが示唆されている(Ann Hum Genet 74(1):17-26(2010))。この疾患の自然経過から、aHUSは、ほとんどの場合、感染エピソードまたは損傷などの開始事象後に発症することが示唆されている。感染性作用物質は補体系を活性化することが周知である。既存の獲得免疫の非存在下で、感染性作用物質による補体活性化は主にレクチン経路を介して開始され得る。従って、感染症によって誘発されるレクチン経路活性化は、aHUSの素因のある個体における補体活性化の後の病理学的増幅のための開始トリガーになる可能性があり、最終的には、疾患進行につながる可能性がある。従って、本発明の別の局面は、有効量のMASP-2阻害物質を投与することによって、感染症に続発するaHUSに罹患している患者を治療することを含む。
宿主組織に対する他の形態の損傷、特に、血管内皮に対する損傷がレクチン経路を介して補体を活性化する。酸化ストレスを受けているヒト血管内皮細胞は、例えば、レクチンに結合し、補体レクチン経路を活性化する表面部分を発現することによって反応する(Am J. Pathol 156(6):1549-56(2000))。虚血/再灌流後の血管損傷もまたインビボでレクチン経路を介して補体を活性化する(Scand J Immunol 61(5):426-34(2005))。この状況におけるレクチン経路活性化は、宿主に対して病理学的結果を招き、MASP-2遮断によるレクチン経路阻害はさらなる宿主組織損傷および有害事象を阻止する(Sehwaeble PNAS 2011)。
従って、aHUSを突然引き起こす他のプロセスも補体レクチン経路を活性化することが公知である。従って、レクチン経路は、aHUSの遺伝的素因のある個体において無秩序なやり方で不適切に増幅され、従って、aHUS病理発生を開始する初期補体活性化機構であり得る可能性が高い。推論によって、抗MASP-2抗体を含む、レクチン経路を介して補体活性化を遮断する作用物質は、aHUS感受性個体において疾患進行を阻止するかまたは増悪を減少させると予想される。
この考えのさらなる裏付けとして、最近の研究から、aHUSの小児症例における重要な病原学的作用物質として肺炎連鎖球菌(S.pneumonia)が特定された(Nephrology(Carlton), 17:48-52(2012); Pediatr Infect Dis J. 30(9):736-9(2011))。この特定の病因学には、好ましくない予後と高い死亡率および長期の病的状態があるように思われる。特に、これらの症例には、aHUSの素因であることが公知の同時発生的な補体遺伝子変異の証拠がなく、微小血管障害症、尿毒症、および溶血の症状発現につながる非腸性感染症が伴った。肺炎連鎖球菌は補体活性化において特に有効であり、主としてレクチン経路を介して補体を活性化することに気付くことが重要である。従って、肺炎球菌感染症に関連した非腸性HUSの場合、微小血管障害症、尿毒症、および溶血の症状発現は主としてレクチン経路活性化によって動かされると予想され、抗MASP-2抗体を含むレクチン経路を遮断する作用物質は、これらの患者においてaHUS進行を阻止し、疾患重篤度を減少させると予想される。従って、本発明の別の局面は、有効量のMASP-2阻害物質を投与することによって、肺炎連鎖球菌感染症に関連した非腸性aHUSに罹患している患者を治療することを含む。
前述に従って、一部の態様において、aHUSに関連した腎不全を発症するリスクを有する対象の状況において、該対象における腎不全を寛解または予防するのに有効な量のMASP-2阻害物質を、該腎不全を寛解または予防するのに有効な期間にわたって投与する工程を含む、aHUSを発症する可能性またはaHUSに関連した腎不全を発症する可能性を低下させるための方法が提供される。一部の態様において、該方法は、対象が、aHUSに関連した症状を発現する前に、aHUSを発症するリスクを有するどうか判定する工程をさらに含む。他の態様において、該方法は、対象が、aHUSを示す少なくとも1つまたは複数の症状の発現(例えば、対象に貧血、血小板減少症、および/もしくは腎機能不全の存在)、ならびに/または、対象から得られた生検材料において血栓性微小血管症の存在に基づいて、aHUSを発症するリスクを有するかどうかを判定する工程を含む。対象がaHUSを発症するリスクを有するかどうかの判定は、対象がaHUSを発症する遺伝的素因を有するかどうかを判定することを含み、これは、(例えば、対象の遺伝子型を収めたデータベースから)遺伝情報を評価することによって、あるいはaHUSに関連した遺伝子マーカーの有無を判定するために対象に対して少なくとも1つの遺伝子スクリーニング試験を実施することによって(すなわち、ゲノムシークエンシングもしくは遺伝子特異的分析(例えば、PCR分析)により、補体因子H(CFH)、I因子(CFI)、B因子(CFB)、メンブレンコファクターCD46、C3、補体因子H関連タンパク質1(CFHR1)、もしくはTHBD(抗凝固タンパク質トロンボジュリン(thrombodulin)をコードする)、もしくは補体因子H関連タンパク質3(CFHR3)、または補体因子H関連タンパク質4(CFHR4)をコードする遺伝子中のaHUSに関連した遺伝子変異の有無を判定することによって)、および/あるいは対象がaHUS家族歴を有するかどうか判定することによって実施されてもよい。aHUSに関連した遺伝子変異の有無について遺伝子スクリーニングする方法は十分に確立している。例えば、 Noris M et al. 「Atypical Hemolytic-Uremic Syndrome」, 2007 Nov 16 [2011年5月10日更新]. In:Pagon RA, Bird TD, Dolan CR, et al.,編. GeneReviews(商標), Seattle(WA):University of Washington, Seattleを参照されたい。
例えば、全体的に見て、補体因子H(CFH)変異を有する人の中の疾患浸透度は48%であり、CD46変異の浸透度は53%であり、CFI変異の浸透度は50%であり、C3変異の浸透度は56%であり、THBD変異の浸透度は64%である(Caprioli J. et al., Blood, 108:1267-79(2006); Noris et al., Clin J Am Soc Nephrol 5:1844-59(2010))。Caprioli et al., (2006)、前記に記載されたように、補体因子H(CFH)変異を有するかなりの数の個体がaHUSを一度も発症せず、生理学的条件において補体活性化の影響から宿主を守るためには、これらの個体における最適以下のCFH活性で十分であると想定される。しかしながら、補体を活性化し、正常よりも多い量のC3bを生成する作用物質に曝露された場合に、C3bが血管内皮細胞上に沈着しないようにするためには、最適以下のCFH活性では十分でない。
従って、一態様において、MASP-2依存性補体活性化を阻害するのに有効な量のMASP-2阻害物質を含む組成物を対象に投与する工程を含む、非H因子依存的非典型溶血性尿毒症症候群に罹患している該対象または該非H因子依存的非典型溶血性尿毒症症候群を発症するリスクを有する該対象におけるMASP-2依存性補体活性化を阻害するための方法が提供される。別の態様において、貧血、血小板減少症、またはクレアチニン増加の有無を判定するために対象を定期的にモニタリングする工程、ならびに、貧血、血小板減少症、またはクレアチニン増加が存在するとの判定に基づいてMASP-2阻害物質で治療する工程を含む、H因子依存的非典型溶血性尿毒症症候群を発症するリスクを有する該対象におけるMASP-2依存性補体活性化を阻害するための方法が提供される。別の態様においてaHUS臨床症状の誘発に関連することが公知である事象、例えば、薬物曝露(例えば、化学療法)、感染症(例えば、細菌感染症)、悪性腫瘍、損傷、臓器移植もしくは組織移植、または妊娠の前、最中、または後にMASP-2阻害物質を投与する工程を含む、H因子非依存的aHUSを発症するリスクを有する対象がaHUSに関連した臨床症状に罹患する可能性を低下させるための方法が提供される。
一態様において、貧血、血小板減少症、またはクレアチニン増加の有無を判定するために、aHUSを発症するリスクを有する対象を定期的にモニタリングする工程、および、貧血、血小板減少症、またはクレアチニン増加が存在するとの判定に基づいてMASP-2阻害物質で治療する工程を含む、aHUSに関連した臨床症状に該対象が罹患する可能性を低下させるための方法が提供される。
別の態様において、aHUS臨床症状の誘発に関連することが公知である事象、例えば、薬物曝露(例えば、化学療法)、感染症(例えば、細菌感染症)、悪性腫瘍、損傷、臓器移植もしくは組織移植、または妊娠の前、最中、または後にMASP-2阻害物質を投与する工程を含む、aHUSに関連した臨床症状にaHUSを発症するリスクを有する対象が罹患する可能性を低下させるための方法が提供される。
一部の態様において、MASP-2阻害物質は、aHUS臨床症状の誘発に関連した事象の前、最中、または後に、少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、またはそれより長い期間、投与され、かつ、状態が回復するまでまたは管理されるまで医師によって決定されるように繰り返されてもよい。前aHUSの状況において、MASP-2阻害物質は、例えば、動脈内投与、静脈内投与、筋肉内投与、吸入投与、鼻投与、皮下投与、または他の非経口投与によって対象に全身投与されてもよい。
一部の態様では、aHUSの初期診断の状況において、またはaHUSの診断と一致する1つもしくは複数の症状(例えば、貧血、血小板減少症、および/もしくは腎機能不全の存在)を示す対象において、対象は、第一選択の療法としてプラスマフェレーシスの非存在下で、またはプラスマフェレーシスと組み合わせて有効量のMASP-2阻害物質(例えば、抗MASP-2抗体)で治療される。第一選択の療法として、MASP-2阻害物質は、例えば、動脈内投与、静脈内投与、筋肉内投与、吸入投与、鼻投与、皮下投与、または他の非経口投与によって対象に全身投与されてもよい。一部の態様において、出血、感染症、および障害への曝露、ならびに/もしくは血漿ドナーに固有のアレルギーを含む潜在的なプラスマフェレーシス合併症を回避するためにプラスマフェレーシスの非存在下で、またはプラスマフェレーシスを他の点で嫌がる対象において、またはプラスマフェレーシスを利用できない状況において、MASP-2阻害物質は第一選択の療法として対象に投与される。
一部の態様において、前記方法は、カテーテルを介して(例えば、静脈内に)aHUSに罹患している対象にMASP-2阻害物質を第1の期間(例えば、少なくとも1日〜1週間または2週間)投与した後に、該対象にMASP-2阻害物質を第2の期間(例えば、少なくとも2週間またはそれより長い慢性期)皮下投与する工程を含む。一部の態様において、第1の期間および/または第2の期間における投与はプラスマフェレーシスの非存在下で行われる。一部の態様において、該方法は、治療前に、および任意で治療中に、対象における少なくとも1種類の補体因子(例えば、C3、C5)のレベルを決定する工程をさらに含み、標準値または健常対照対象と比較して低下した少なくとも1種類の補体因子のレベルの決定は、MASP-2阻害物質による継続治療の必要性を示す。
一部の態様において、前記方法は、aHUSに罹患している対象または該aHUSを発症するリスクを有する対象に、MASP-2阻害物質、例えば、抗MASP-2抗体を、静脈内、筋肉内、または好ましくは皮下のいずれかで投与する工程を含む。治療は慢性であり、かつ毎日〜毎月、好ましくは2週間ごとに実施されてもよい。抗MASP-2抗体は単独で投与されてもよく、エクリザマブ(eculizamab)などC5阻害因子と組み合わせて投与されてもよい。
HUS
非典型HUSと同様に、典型HUSは、TMAの臨床および実験室での所見を全て示す。しかしながら、典型HUSは、多くの場合、小児疾患であり、通常、家族要素も、補体遺伝子変異との直接的な関連性もない。典型HUSの原因は、ある特定の腸病原体の感染症と密接に関連している。患者は、典型的には、急性腎不全、ヘモグロビン尿症、および血小板減少症を呈し、典型的には、血性下痢のエピソードをたどる。この状態は、志賀赤痢菌(Shigella dissenteria)、サルモネラ属(Salmonella)、または志賀毒素様産生腸管出血性大腸菌株、例えば、大腸菌O157:H7の腸感染症によって引き起こされる。これらの病原体は、汚染された食品または水供給から得られる。HUSは医学的緊急事態であり、死亡率は5〜10%である。生存者のかなりの部分が慢性腎臓疾患を発症し(Corrigan and Boineau, Pediatr Rev 22(11):365-9(2011))、腎臓移植を必要とする場合がある。
典型HUSにおける微小血管凝固は主として腎臓微小血管系において発生するが、腎臓微小血管系だけで発生するとは限らない。基礎をなす病態生理は志賀毒素(STX)によって媒介される。STXは腸疾患微生物によって腸管腔に排出され、腸障壁を横断し、血流に進入し、ブロボトリアオジル(blobotriaosyl)セラミド受容体CD77を介して血管内皮細胞に結合し(Boyd and Lingwood Nephron 51:207(1989))、CD77は糸球体内皮上に優先的に発現し、STXの毒作用を媒介する。STXは内皮に結合すると、血管内皮を傷つけ、白血球を活性化し、vWF依存性血栓形成を引き起こす一連の事象を誘導する(Forsyth et al., Lancet 2:411-414(1989); Zoja et al., Kidney Int. 62:846-856(2002); Zanchi et al., J. Immunol 183:1460-1469(2008); Morigi et al., Blood 98:1828-1835(2001); Guessou et al., Infect. Immun., 73:8306-8316(2005))。これらの微小血栓は腎臓および他の臓器の小動脈および毛細血管を妨害または閉塞する。狭くなった血管をRBCが押し分けて進むので、微小血栓による小動脈および毛細血管の中の血流の閉塞によって、RBCに印加されるずり応力が増大する。この結果、ずり応力によってRBCが破壊され、分裂赤血球と呼ばれるRBC断片が形成されることがある。分裂赤血球の存在はHUSにおける特徴的な所見である。この機構は微小血管障害性溶血(microangiopathic hemolysis)として公知である。さらに、血流閉塞によって虚血が引き起こされ、罹患臓器へのさらなる損傷を引き起こす補体媒介性炎症反応が開始する。
補体のレクチン経路は、2つの主な機構:(1)内皮損傷によって引き起こされる、MASP-2を介した直接的な凝固カスケード活性化、および(2)微小血管血流の初期閉塞に起因する虚血によって誘導される、レクチンを介したその後の補体活性化によって、HUS発生に寄与する。
STXは微小血管内皮細胞を傷つけ、傷つけられた内皮細胞は、補体系を活性化することが公知である。前記で詳述したように、内皮細胞損傷後の補体活性化は主としてレクチン経路によって動かされる。酸化ストレスを受けたヒト血管内皮細胞は、レクチンに結合し、補体レクチン経路を活性化する表面部分を発現することによって反応する(Collard et al., Am J Pathol.156(5):1549-56(2000))。虚血再灌流後の血管損傷もまたインビボでレクチン経路を介して補体を活性化する(Scand J Immunol 61(5):426-34(2005))。この状況におけるレクチン経路の活性化は宿主に対して病理学的結果を招き、MASP-2遮断によるレクチン経路の阻害は、さらなる宿主組織損傷および有害事象を阻止する(Schwaeble et al., PNAS(2011))。補体活性化に加えて、MASP-2のレクチン依存性活性化はプロトロンビンを切断してトロンビンを形成し、凝固を促進することが示されている。従って、傷つけられた内皮細胞による補体レクチン経路の活性化は凝固系を直接、活性化することができる。従って、MASP-2を介したプロソンビン(prothombin)活性化による補体レクチン経路は、STXによる初期内皮損傷と、HUSにおいて発生する凝固および微小血管血栓症とを関連付ける主要な分子経路である可能性が高い。従って、MASP-2機能を遮断する抗体を含むが、これに限定されないレクチン経路阻害因子は、HUSに罹患している患者における微小血管凝固、血栓症、および溶血を阻止または軽減すると予想される。実際に、抗MASP-2抗体の投与によって典型HUSモデルのマウスが著しく保護される。実施例36に記載のように、および図45に示したように、STXおよびLPSに曝露された対照マウスは全て重篤なHUSを発症し、48時間以内に瀕死になったか、または死亡した。他方で、さらに図45に示したように、抗MASP-2抗体で処置され、次いで、STXおよびLPSに曝露されたマウスは全て生存した(フィッシャー直接確率法p<0.01;N=5)。従って、抗MASP-2療法によって、このHUSモデルのマウスが著しく保護される。MASP-2抗体などのMASP-2阻害物質の投与はHUS患者の治療において有効であり、腸疾患大腸菌または他のSTX産生病原体による感染症によって引き起こされる微小血管凝固、血栓症、および溶血からの保護を提供すると予想される。
本明細書でSTXによって引き起こされるHUSについて示されたが、抗MASP-2療法は、他の毒性物質によって引き起こされる内皮損傷によるHUS様症候群にも有益であると予想される。これには、マイトマイシン、チクロピジン、シクプラチン(cycplatin)、キニーネ、シクロスポリン、ブレオマイシンなどの作用物質、ならびに他の化学療法薬物および免疫抑制薬物が含まれる。従って、抗MASP-2抗体療法またはMASP-2活性を阻害する他のモダリティーは、凝固、血栓形成、およびRBC破壊を効果的に阻止または制限し、HUSおよび他のTMA関連疾患(すなわち、aHUSおよびTTP)における腎不全を阻止すると予想される。
HUSに罹患している患者は下痢および嘔吐を呈することが多く、通常、患者の血小板数は少なく(血小板減少症)、RBCは少ない(貧血)。前HUS下痢期は典型的には約4日続き、この期間の間、HUSを発症するリスクを有する対象は、典型的には、重篤な下痢に加えて、以下の症状のうちの1つまたは複数を示す:血管内赤血球破壊のスミア証拠を伴う30%未満のヘマトクリットレベル、血小板減少症(血小板数<150×103/mm3)、および/または、腎機能障害の存在(年齢の基準範囲の上限を超える血清クレアチニン濃度)。乏尿症(>1日にわたって≦0.5mL/kg/hの尿量)の存在を、HUSの発症への進行の尺度として使用することができる(C. Hickey et al., Arch Pediatr Adolesc Med 165(10):884-889(2011)を参照されたい)。典型的には、大腸菌細菌(大腸菌O157:H7)または赤痢菌属(Shigella)またはサルモネラ属種の感染症の存在についての試験が行われる。腸原性(enterogenic)大腸菌(例えば、大腸菌O157:H7)の感染症についての試験で陽性と判定された対象では、抗生物質の使用は禁忌となる。なぜなら、抗生物質を使用すると、STX産生の増加によってHUSを発症するリスクが高まる可能性があるからである(Wong C. et al., N Engl J. Med 342:1930-136(2000)を参照されたい)。赤痢菌属またはサルモネラ属についての試験で陽性と判定された対象の場合、感染症を取り除くために、典型的には、抗生物質が投与される。HUSの他の十分に確立した第一選択の療法には、体積膨張(volume expansion)、透析、およびプラスマフェレーシスが含まれる。
前述に従って、一部の態様において、前HUS期に関連した1つまたは複数の症状に罹患している対象およびHUSを発症するリスクを有する対象(すなわち、対象は、以下のうちの1つまたは複数を示す:下痢、血管内赤血球破壊のスミア証拠を伴う30%未満のヘマトクリットレベル、血小板減少症(150×103/mm3未満の血小板数)、および/または、腎機能障害の存在(年齢の基準範囲の上限を超える血清クレアチニン濃度))の状況において、腎機能障害を寛解または予防するのに有効な量のMASP-2阻害物質を、該腎機能障害を寛解または予防するのに有効な期間にわたって投与する工程を含む、該対象におけるHUSを発症するリスクを低下させるための方法または腎不全の可能性を低下させる方法が提供される。一部の態様において、MASP-2阻害物質は、少なくとも1日、2日、3日、4日、またはそれ以上の期間にわたって投与され、状態が回復するまで、または管理されるまで医師によって決定されるように繰り返されてもよい。前HUSの状況において、MASP-2阻害物質は、例えば、動脈内投与、静脈内投与、筋肉内投与、吸入投与、鼻投与、経口投与、皮下投与、もしくは他の非経口投与によって対象に全身投与されてもよい。
殺菌性抗生物質、特に、βラクタムによる大腸菌O157:H7感染症の治療はHUSを発症するリスクの増大と関連付けられている(Smith et al., Pediatr Infect Dis J 31(1):37-41(2012)。一部の態様において、抗生物質の使用が禁忌となる腸大腸菌(例えば、大腸菌O157:H7)に感染していることが分かっている、前HUS期に関連した症状に罹患している対象の状況において、該対象における乏尿症の存在を抑制または阻止するのに有効な量のMASP-2阻害物質を、該乏尿症の存在を抑制または阻止するのに有効な第1の期間(例えば、少なくとも1日、2日、3日、または4日)にわたって投与する工程を含む、該対象におけるHUSを発症するリスクを低下させるためのまたは腎不全の可能性を低下させる方法が提供され、該第1の期間のMASP-2阻害物質の投与は抗生物質の非存在下で行われる。一部の態様において、該方法は、第2の期間(例えば、少なくとも1〜2週間)にわたってMASP-2阻害物質を抗生物質と組み合わせて対象に投与する工程をさらに含む。
他の態様において、前HUS期に関連した症状に罹患し、赤痢菌属またはサルモネラ属に感染していると分かっている対象の状況において、該対象において乏尿症の存在を抑制または阻止するのに有効な量のMASP-2阻害物質を、該乏尿症の存在を抑制または阻止するのに有効な期間にわたって投与する工程を含む、該対象におけるHUSを発症するリスクを低下させるための方法または腎不全の可能性を低下させる方法が提供され、MASP-2阻害物質の投与は適切な抗生物質の存在下または非存在下である。
一部の態様において、HUSの初期診断の状況において、またはHUSの診断と一致する1つもしくは複数の症状(例えば、腎不全、もしくは低フィブリノゲンの非存在下での微小血管障害性溶血性貧血、もしくは血小板減少症の存在)を示す対象において、対象は、第一選択の療法としてプラスマフェレーシスの非存在下で、またはプラスマフェレーシスと組み合わせて有効量のMASP-2阻害物質(例えば、抗MASP-2抗体)で治療される。第一選択の療法として、MASP-2阻害物質は、例えば、動脈内投与、静脈内投与、筋肉内投与、吸入投与、鼻投与、皮下投与、もしくは他の非経口投与によって対象に全身投与されてもよい。一部の態様において、出血、感染症、および障害への曝露、ならびに/もしくは血漿ドナーに固有のアレルギーなどのプラスマフェレーシス合併症を回避するためにプラスマフェレーシスの非存在下で、またはプラスマフェレーシスを他の点で嫌がる対象において、またはプラスマフェレーシスを利用できない状況において、MASP-2阻害物質は第一選択の療法として対象に投与される。
一部の態様において、前記方法は、カテーテルを介して(例えば、静脈内に)HUSに罹患している対象にMASP-2阻害物質を第1の期間(例えば、少なくとも1日〜1週間または2週間続く急性期)投与する工程を含み、その後に、該対象にMASP-2阻害物質を第2の期間(例えば、少なくとも2週間またはそれ以上の慢性期)皮下投与する工程を含む。一部の態様において、第1の期間および/または第2の期間における投与はプラスマフェレーシスの非存在下で行われる。一部の態様において、該方法は、治療前に、任意で治療中に、対象における少なくとも1種類の補体因子(例えば、C3、C5)のレベルを決定する工程をさらに含み、標準値または健常対照対象と比較して低下した該少なくとも1種類の補体因子のレベルの決定は、治療の必要性を示し、正常レベルの決定は改善を示す。
一部の態様において、前記方法は、HUSに罹患している対象または該HUSを発症するリスクを有する対象に、MASP-2阻害物質、例えば、抗MASP-2抗体を皮下投与または静脈内投与する工程を含む。治療は、好ましくは、毎日であるが、毎週または毎月と頻度が少なくてもよい。治療は、少なくとも1週間、および3ヶ月と長く続く。抗MASP-2抗体は単独で投与されてもよく、エクリズマブなどのC5阻害因子と組み合わせて投与されてもよい。
TTP:
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、凝固カスケードまたは補体系を活性化する自己免疫または遺伝性機能不全によって引き起こされる、命にかかわる血液凝固系障害である(George, JN, N Engl J Med; 354:1927-35(2006))。これは、体中の小さな血管における、非常に多くの微少な血塊すなわち血栓症の原因となる。赤血球は、赤血球膜を傷つける、ずり応力に供され、これは血管内溶血を引き起こす。結果として生じる血流減少および内皮損傷は、脳、心臓、および腎臓を含む臓器損傷の原因となる。TTPは、臨床的に、血小板減少症、微小血管障害性溶血性貧血、神経学的変化、腎不全、および発熱を特徴とする。血漿交換前の時代、急性エピソード中の死亡率は90%であった。血漿交換を用いても6ヶ月における生存は約80%である。
TTPは、フォン・ウィルブランド因子(vWF)の大きな多量体から小さなユニットへの切断を担うメタロプロテアーゼである酵素ADAMTS-13の遺伝的阻害または後天的阻害から生じ得る。ADAMTS-13阻害または欠損は最終的に凝固の増大をもたらす(Tsai, H. J Am Soc Nephrol 14:1072-1081, (2003))。ADAMTS-13はvWF活性を調節する。その非存在下では、vWFは、血小板に結合する可能性の高い大きな多量体を形成し、患者を微小血管系における血小板凝集および血栓症にかかりやすくする。
アップショー・シュールマン症候群(USS、先天性TTPとも呼ばれる)は、ADAMTS13遺伝子変異による先天性ADAMTS13活性欠損症である(Schulman et al., Blood, 16(1):943-57, 1960; Upshaw et al., New Engl. J. Med, 298 (24):1350-2, 1978)。先天性TTPを有する個体において非常に多くのADAMTS13変異が特定されている(Kinoshita et al., International Journal of Hematology, 74:101-108 (2001); Levy et al., Nature, 413 (6855):488-494 (2001); Kokame et al., PNAS 99(18):11902-11907 (2002); Savasan et al., Blood, 101:4449-4451 (2003); Matsumoto et al., Blood, 103:1305-1310 (2004)およびFujimura et al., Brit. J. Haemat 144:742-754 (2008))。USSを有する対象は典型的には正常ADAMTS13活性の5〜10%を有する(Kokame et al., PNAS 99(18):11902-11907, 2002)。後天性TTPとUSSにはいくつかの類似点があるが、USSには臨床的特徴にいくつかの重要な相違点がある。USSは通常、乳児期または小児期に現れ、重篤な高ビリルビン血症と出生直後のクームズ試験陰性、新鮮血漿注入に対する応答、および頻繁な再発を特徴とする(Savasan et al., Blood, 101:4449-4451, 2003)。いくつかの場合では、この遺伝性ADAMTS13欠損を有する患者は出生時に軽度の表現型があり、フォン・ウィルブランド因子レベルが高い臨床状況、例えば、感染時または妊娠時にしか、TTPに関連する症状を発症しない。例えば、Fujimuraらは、USSが遺伝的に確認された6つの家族から、初回妊娠中に障害があると診断された9人の日本人女性を報告した。15件の妊娠のそれぞれにおいて2番目〜3番目の三半期の間に血小板減少症が起こり、多くの場合、その後にTTPが起こった。これらの女性全員はADAMTS13活性が重度に欠損していることが見出された(Fujimura et al., Brit. J. Haemat 144:742-754, 2008)。
前述に従って、一部の態様では、アップショー・シュールマン症候群(USS)を有する対象(すなわち、対象がADAMTS13活性を欠損していると分かっており、かつ/または対象が1つもしくは複数のADAMTS13遺伝子変異を有すると分かっている)の状況において、TTPに関連する1つまたは複数の臨床症状を寛解させるのにまたは予防するのに有効な量のMASP-2阻害物質(例えば、MASP-2抗体)を、該臨床症状を寛解させるのにまたは予防するのに有効な期間にわたって投与する工程を含む、先天性TTPに関連する臨床症状(例えば、血小板減少症、貧血、発熱、および/または腎不全)を発症する可能性を低下させるための方法が提供される。一部の態様において、該方法は、対象が、TTPに関連する任意の症状を発現する前に、またはTTPを示す少なくとも1つもしくは複数の症状の発現(例えば、貧血、血小板減少症、および/もしくは腎不全の存在)に基づいて、先天性TTPに関連する症状を発症するリスクを有するかどうか判定する工程をさらに含む。対象が、先天性TTPに関連する症状を発症するリスクを有するかどうか(すなわち、対象がUSSを有するかどうか)判定する工程は、対象が、ADAMTS13をコードする遺伝子に変異を有するかどうか判定すること、および/または対象がADAMTS13活性を欠損しているかどうか判定すること、および/または対象がUSSの家族歴を有するかどうか判定することを含む。USSに関連する遺伝子変異の有無について遺伝子スクリーニングする方法は十分に確立されている。例えば、Kinoshita et al., International Journal of Hematology, 74:101-108 (2001); Levy et al., Nature, 413 (6855):488-494 (2001); Kokame et al., PNAS 99(18):11902-11907 (2002); Savasan et al., Blood, 101:4449-4451 (2003); Matsumoto et al., Blood, 103:1305-1310 (2004) および Fujimura et al., Brit. J. Haemat 144:742-754 (2008)を参照されたい。
一態様において、貧血、血小板減少症、またはクレアチニン増加の有無を判定するために、USSと診断された対象を定期的にモニタリングする工程、および、貧血、血小板減少症、もしくはクレアチニン増加が存在するとの判定に基づいて、またはTTP臨床症状の誘発に関連することが公知である事象、例えば、薬物曝露(例えば、化学療法)、感染症(例えば、細菌感染症)、悪性腫瘍、損傷、移植、もしくは妊娠の存在に基づいてMASP-2阻害物質(例えば、MASP-2抗体)で治療する工程を含む、TTPに関連する臨床症状に該対象が罹患する可能性を低下させるための方法が提供される。
別の態様において、TTPに関連する1つまたは複数の臨床症状を寛解させるのにまたは予防するのに有効な量のMASP-2阻害物質(例えば、MASP-2抗体)を、該臨床症状を寛解させるのにまたは予防するのに有効な期間にわたって投与する工程を含む、USSを有する対象およびTTPに関連する臨床症状に罹患している対象を治療するための方法が提供される。
TTPは、ADAMTS-13に対する自己抗体が原因で発症することもある。さらに、TTPは、乳癌、胃腸管癌、もしくは前立腺癌(George. JN., Oncology(Wiiliston Park). 25:908-14(2011))、妊娠(第二期もしくは分娩後), George JN., Curr Opin Hematol 10:339-344(2003))の間に発症し得るか、または疾患、例えば、HIVもしくは全身性エリテマトーデスのような自己免疫疾患に関連する(Hamasaki K, et al., Clin Rheumatol. 22:355-8(2003))。TTPはまた、ヘパリン、キニーネ、免疫性成分、癌化学療法剤(ブレオマイシン、シスプラチン、シトシンアラビノシド、ダウノマイシン、ゲムシタビン、マイトマイシンC、およびタモキシフェン)、シクロスポリンA、経口避妊薬、ペニシリン、リファンピン、ならびにチクロピジンおよびクロピドグレルを含む抗血小板薬物を含む、ある特定の薬物療法によって引き起こされることもある(Azarm, T. et al., J Res Med Sci., 16:353-357(2011))。TTPに関連した他の要因または状態は、毒素、例えば、ハチ毒、敗血症、脾臓血球貯留(splenic sequestration)、移植、脈管炎、血管手術、ならびに連鎖球菌肺炎およびサイトメガロウイルスのような感染症である(Moake JL., N Engl J Med., 347:589-600(2002))。肺炎連鎖球菌感染症に関連した内皮細胞損傷の結果として、一過的な機能的ADAMTS-13欠損によるTTPが発生することがある(Pediair Nephrol., 26:631-5(2011))。
血漿交換はTTPの標準治療法である(Rock GA, et al., N Engl J Med 325:393-397(1991))。血漿交換によって、遺伝的欠陥を有する患者ではADAMTS-13活性が取り替えられ、後天性自己免疫TTPを有する患者ではADAMTS-13自己抗体が除去される(Tsai, H-M, Hematol Oncol Clin North Am., 21(4):609-v(2007))。免疫抑制薬物などの、さらなる作用物質が療法に日常的に加えられる(George, JN, N Engl J Med, 354:1927-35(2006))。しかしながら、血漿交換は患者の約20%にしか成功せず、患者の1/3超において再発が生じ、プラスマフェレーシスは高価であり、技術的に大変な労力を要する。さらに、多くの患者は血漿交換に耐えられない。結果として、依然として、さらなる、かつより優れたTTP治療法が非常に必要とされている。
TTPは血液凝固カスケードの障害であるので、補体系アンタゴニストによる治療が疾患の安定化および治療の助けとなり得る。補体第二経路の病理学的活性化がaHUSと結びつけられているが、TTPにおける補体活性化の役割はあまりはっきりとしていない。ADAMTS13の機能的欠損はTTPの感受性に重要であるが、急性エピソードを引き起こすには十分でない。環境要因および/または他の遺伝的変異がTTP症状発現の一因となり得る。例えば、凝固カスケード、vWF、血小板機能、内皮血管表面の成分、または補体系の調節に関与するタンパク質をコードする遺伝子が急性血栓性微小血管症の発症に関係している可能性がある(Galbusera, M. et al., Haematologica, 94; 166-170(2009))。特に、補体活性化は重要な役割を果たすことが示されている。ADAMTS-13欠損に関連した血栓性微小血管症に由来する血清はC3およびMAC沈着ならびにその後の好中球活性化を引き起こすことが示されており、これらは補体不活性化によって抑制され得る(Ruiz-Torres MP, et al., Thromb Haemost, 93:443-52(2005))。さらに、古典的/レクチン経路および第二経路の活性化と一致して、TTPの急性エピソード中にC4d、C3bBbP、およびC3aのレベルが増大することが最近示された(M. Reti et al., J Thromb Haemost. Feb 28.(2012) doi:10.1111/j.1538-7836.2012.04674.x.[印刷より先の電子出版物])。急性エピソードにおける、この補体活性化量の増加は終末経路活性化を開始し、TTPのさらなる増悪の原因となり得る。
TTPにおけるADAMTS-13およびvWFの役割は、明らかに、微小血管障害症での血小板の活性化および凝集ならびにずり応力および沈着におけるその後の役割を担っている。活性化された血小板は補体の古典経路および第二経路と相互作用し、これらを誘発する。血小板によって媒介される補体活性化は炎症メディエーターであるC3aおよびC5aを増加させる(Peerschke E et al., Mol Immunol, 47:2170-5(2010))。従って、血小板は遺伝性TTPまたは自己免疫TTPにおける古典的補体活性化の標的として役立ち得る。
前記のように、MASP-2を介したプロソンビン(prothombin)活性化による補体レクチン経路は、HUSにおいて発生する内皮損傷と凝固および微小血管血栓症とを関連付ける主要な分子経路である。同様に、補体レクチン経路の活性化はTTPにおいて凝固系を直接、動かし得る。レクチン経路活性化は、TTPにおいてADAMTS-13欠損によって引き起こされる初期内皮損傷に反応して開始され得る。従って、MASP-2機能を遮断する抗体を含むが、これに限定されないレクチン経路阻害因子は、TTPに罹患している患者において微小血管凝固、血栓症、および溶血に関連した微小血管障害症を軽減すると予想される。
TTPに罹患している患者は、典型的には、以下のうちの1つまたは複数を伴って緊急治療室にいる:紫斑病、腎不全、低血小板、貧血、および/または脳卒中を含む血栓症。TTPの現行の治療標準は、2週間もしくはそれ以上の期間にわたる、典型的には1週間に3回であるが毎日までの、交換プラスマフェレーシスの血管内カテーテル送達(例えば、静脈内カテーテルまたは他の形態のカテーテル)を伴う。対象が、ADAMTS13の阻害因子(すなわち、ADAMTS13に対する内因性抗体)の存在についての試験で陽性と判定された場合には、プラスマフェレーシスは免疫抑制療法(例えば、コルチコステロイド、リツキサン、またはシクロスポリン)と組み合わせて行われ得る。難治性TTP(TTP患者の約20%)を有する対象は少なくとも2週間のプラスマフェレーシス療法に反応しない。
前述に従って、一態様において、TTPの初期診断の状況において、またはTTPの診断と一致する1つもしくは複数の症状(例えば、中枢神経系合併症、重篤な血小板減少症(アスピリンを服用していない場合、5000/μL未満もしくは5000/μLの血小板数、アスピリンを服用している場合、20,000/μL未満もしくは20,000/μLの血小板数)、重篤な心臓合併症、重篤な肺合併症、胃腸管梗塞、または壊疽)を示す対象において、プラスマフェレーシスの非存在下で第一選択の療法として、またはプラスマフェレーシスと組み合わせて有効量のMASP-2阻害物質(例えば、抗MASP-2抗体)で対象を治療するための方法が提供される。第一選択の療法として、MASP-2阻害物質は、例えば、動脈内投与、静脈内投与、筋肉内投与、吸入投与、鼻投与、皮下投与、もしくは他の非経口投与によって対象に全身投与されてもよい。一部の態様において、出血、感染症、ならびに血漿ドナーに固有の障害および/もしくはアレルギーへの曝露などの潜在的なプラスマフェレーシス合併症を回避するためにプラスマフェレーシスの非存在下で、またはプラスマフェレーシスを他の点で嫌がる対象において、またはプラスマフェレーシスを利用できない状況において、MASP-2阻害物質は第一選択の療法として対象に投与される。一部の態様において、MASP-2阻害物質は、免疫抑制剤(例えば、コルチコステロイド、リツキサン、もしくはシクロスポリン)と組み合わせて(同時投与を含む)、および/または高濃度のADAMTS-13と組み合わせてTTPに罹患している対象に投与される。
一部の態様において、前記方法は、カテーテルを介して(例えば、静脈内に)TTPに罹患している対象にMASP-2阻害物質を第1の期間(例えば、少なくとも1日〜1週間または2週間続く急性期)投与する工程、その後に、該対象にMASP-2阻害物質を第2の期間(例えば、少なくとも2週間またはそれ以上の慢性期)皮下投与する工程を含む。一部の態様において、第1の期間および/または第2の期間における投与はプラスマフェレーシスの非存在下で行われる。一部の態様において、該方法は、TTPに関連した1つまたは複数の症状に対象が罹患しないように対象を維持するために用いられる。
別の態様において、TTPの1つまたは複数の症状を緩和するのに有効な量のMASP-2阻害因子を投与することによって、難治性TTPに罹患している対象(すなわち、少なくとも2週間のプラスマフェレーシス療法に反応しない対象)を治療するための方法が提供される。一態様において、MASP-2阻害因子(例えば、抗MASP-2抗体)は、慢性的に少なくとも2週間またはそれ以上の期間にわたって、皮下投与または他の非経口投与を介して難治性TTPを有する対象に投与される。投与は、状態が回復するまで、または管理されるまで医師によって決められたように繰り返されてもよい。
一部の態様において、前記方法は、治療前に、任意で治療中に、対象における少なくとも1種類の補体因子(例えば、C3、C5)のレベルを決定する工程をさらに含み、標準値または健常対照対象と比較して低下した該少なくとも1種類の補体因子のレベルの決定は、MASP-2阻害物質による継続治療の必要性を示す。
一部の態様において、前記方法は、TTPに罹患している対象または該TTPを発症するリスクを有する対象にMASP-2阻害物質、例えば、抗MASP-2抗体を皮下投与または静脈内投与する工程を含む。治療は、好ましくは、毎日であるが、隔週と頻度が少なくてもよい。治療は、対象の血小板数が少なくとも2日間連続して150,000/mlを超えるまで続けられる。抗MASP-2抗体は単独で投与されてもよく、エクリズマブなどのC5阻害因子と組み合わせて投与されてもよい。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、以下の特徴のうちの少なくとも1つまたは複数を示す:該抗体が、10nMもしくはそれ未満のKDでヒトMASP-2を結合させること、該抗体が、MASP-2のCCP1ドメイン中のエピトープを結合させること、該抗体が、インビトロアッセイ法において1%ヒト血清中でのC3b沈着を10nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、90%ヒト血清中でのC3b沈着を30nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、Fv、Fab、Fab'、F(ab)2、およびF(ab')2からなる群より選択される抗体断片であること、該抗体が単鎖分子であること、該抗体がIgG2分子であること、該抗体がIgG1分子であること、該抗体が、S228P変異を含むIgG4分子であること、、ならびに/または該抗体が古典経路を実質的に阻害しないこと。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、第二経路を実質的に阻害しない。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、古典経路も第二経路も実質的に阻害しない(すなわち、古典経路および補体第二経路を完全な状態のままにしておきながらレクチン経路を阻害する)。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、TTPに罹患している対象に由来する血清中での血栓形成を未処理血清と比較して少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害する。一部の態様において、MASP-2阻害抗体は、TTPに罹患している対象由来の血清中での血栓形成を、血清中でのC5b-9沈着に対する阻害効果よりも少なくとも20パーセント以上(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%)高いレベルで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、TTP患者由来の血清中での血栓形成を未処理血清と比較して少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は静脈内カテーテルまたは他のカテーテル送達方法を介して対象に投与される。
一態様において、本発明は、TTPに罹患している対象における血栓形成を阻害する方法であって、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を該対象に投与する工程を含み、該抗体またはその抗原結合断片が、(I)(a)(i)SEQ ID NO:67の31〜35のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H1;および(ii)SEQ ID NO:67の50〜65のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H2;および(iii)SEQ ID NO:67の95〜102のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H3を含む、重鎖可変領域、ならびに、(b)(i)SEQ ID NO:70の24〜34のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L1;および(ii)SEQ ID NO:70の50〜56のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L2;および(iii)SEQ ID NO:70の89〜97のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L3を含む、軽鎖可変領域、または、(II)SEQ ID NO:67と少なくとも90%の同一性(例えば、SEQ ID NO:67と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO:70と少なくとも90%の同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する軽鎖可変領域を含むそれらの変種を含む、方法を提供する。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。一部の態様において、該方法は、SEQ ID NO:70に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示した重鎖可変領域とSEQ ID NO:70に示した軽鎖可変領域とを含む参照抗体OMS646によって認識されるヒトMASP-2上エピトープの少なくとも一部を特異的に認識するMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を、対象に投与する工程を含む。
デゴス病
悪性萎縮性丘疹症としても公知のデゴス病は、皮膚、胃腸管、およびCNSの小さな血管の内皮を冒す極めて珍しいTMAである。この脈管障害は細静脈および細動脈(artiole)の閉塞を引き起こし、その結果として皮膚病変、腸管虚血、ならびに脳卒中、てんかん、および認知障害を含むCNS障害をもたらす。皮膚における結合組織壊死は小さな動脈の血栓性閉塞によるものである。しかしながら、デゴス病の原因は不明である。脈管炎、凝固障害、または原発性内皮細胞機能不全が結び付けられてきた。デゴス病の50%生存率は2〜3年しかない。デゴス病に有効な治療法はないが、症状を軽減するために抗血小板薬物、抗凝血剤、および免疫抑制剤が利用される。
デゴス病の機序は未知であるが、補体経路が結び付けられてきた。Margoらは、4人のデゴス病末期患者の皮膚血管、胃腸管血管、および脳血管に、目立ったC5b-9沈着があることを確認した(Margo et al., Am J Clin Pathol 135(4):599-610, 2011)。エクリズマブを用いた実験的治療は初めのうちは皮膚および腸の病変部の治療に有効であったが、全身疾患の進行を阻止しなかった(Garrett-Bakelman F. et al., 「C5b-9 is a potential effector in the pathophysiology of Degos disease; a case report of treatment with eculizumab」 (Abstract), Jerusalem: International Society of Hematology; 2010, Poster #156;およびPolito J. et al, 「Early detection of systemic Degos disease (DD) or malignant atrophic papulosis (MAP) may increase survival」 (Abstract), San Antonio, TX: American College of Gastroenterology; 2010, Poster #1205を参照されたい)。
デゴス病に罹患している多くの患者は血液凝固欠陥を有する。皮膚にある小さな動脈の血栓性閉塞が、この疾患に特有のものである。この疾患には補体経路が結びつけられているので、他のTMAについて本明細書で説明したように、MASP-2機能を遮断する抗体を含むが、これに限定されないレクチン経路阻害因子が、デゴス病に罹患している患者の治療において有益なことが期待される。
従って、別の態様において、本発明は、薬学的担体中のMASP-2抗体などのMASP-2阻害物質の治療的有効量を含む組成物を、デゴス病にまたはデゴス病に起因する状態に罹患している対象に投与することによってデゴス病を治療するための方法を提供する。MASP-2阻害物質は、例えば、動脈内投与、静脈内投与、筋肉内投与、吸入投与、皮下投与、もしくは他の非経口投与によって、またはことによっては非ペプチド性作用物質の場合の経口投与によって、デゴス病またはデゴス病に起因する状態に罹患している対象に全身投与される。抗MASP-2抗体は単独で投与されてもよく、C5阻害因子、例えば、エクリザマブ(eculizamab)と併用投与されてもよい。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、以下の特徴のうちの少なくとも1つまたは複数を示す:該抗体が、10nMもしくはそれ未満のKDでヒトMASP-2を結合させること、該抗体が、MASP-2のCCP1ドメイン中のエピトープを結合させること、該抗体が、インビトロアッセイ法において1%ヒト血清中でのC3b沈着を10nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、90%ヒト血清中でのC3b沈着を30nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、Fv、Fab、Fab'、F(ab)2、およびF(ab')2からなる群より選択される抗体断片であること、該抗体が単鎖分子であること、該抗体がIgG2分子であること、該抗体がIgG1分子であること、該抗体が、S228P変異を含むIgG4分子であること、ならびに/または該抗体が古典経路を実質的に阻害しないこと。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、第二経路を実質的に阻害しない。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、古典経路も第二経路も実質的に阻害しない(すなわち、古典経路および補体第二経路を完全な状態のままにしておきながらレクチン経路を阻害する)。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、デゴス病に罹患している対象由来の血清中での血栓形成を未処理血清と比較して少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害する。一部の態様において、MASP-2阻害抗体は、デゴス病に罹患している対象由来の血清中での血栓形成を、血清中でのC5b-9沈着に対する阻害効果よりも少なくとも20パーセント以上(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%)高いレベルで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、デゴス病患者由来の血清中での血栓形成を未処理血清と比較して少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は静脈内カテーテルまたは他のカテーテル送達方法を介して対象に投与される。
一態様において、本発明は、デゴス病に罹患している対象における血栓形成を阻害する方法であって、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を該対象に投与する工程を含み、該抗体またはその抗原結合断片が、(I)(a)(i)SEQ ID NO:67の31〜35のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H1;および(ii)SEQ ID NO:67の50〜65のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H2;および(iii)SEQ ID NO:67の95〜102のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H3を含む、重鎖可変領域、ならびに、(b)(i)SEQ ID NO:70の24〜34のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L1;および(ii)SEQ ID NO:70の50〜56のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L2;および(iii)SEQ ID NO:70の89〜97のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L3を含む、軽鎖可変領域、または、(II)SEQ ID NO:67と少なくとも90%の同一性(例えば、SEQ ID NO:67と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO:70と少なくとも90%の同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する軽鎖可変領域を含むそれらの変種を含む、方法を提供する。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。一部の態様において、該方法は、SEQ ID NO:70に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示した重鎖可変領域とSEQ ID NO:70に示した軽鎖可変領域とを含む参照抗体OMS646によって認識されるヒトMASP-2上エピトープの少なくとも一部を特異的に認識するMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を、対象に投与する工程を含む。
劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)
劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)は抗リン脂質抗体(APLA)症候群の極端な異型である。CAPSは病原性抗体による静脈血栓症および動脈血栓症を特徴とする。CAPSは、多臓器血栓症、虚血、および臓器不全を伴うTMAである。他のTMAと同様に、様々な臓器にある小さな血管の閉塞を特徴とする。CAPSの死亡率は約50%と高く、感染症または外傷に関連することが多い。患者は、抗リン脂質抗体、一般的にはIgGを有する。
臨床上、CAPSは、小さな血管閉塞の病理組織学的証拠を示す少なくとも3つの臓器または組織が関与する。末梢血栓症は、CNS系、心血管系、腎臓系、または肺系にある静脈および動脈が関与することがある。患者は、抗生物質、抗凝血剤、コルチコステロイド、血漿交換、および静脈内免疫グロブリンで治療される。それにもかかわらず、多臓器不全が原因で死亡する場合がある。
補体経路がCAPSに関係している。例えば、動物モデルでの試験により、補体阻害が、CAPSに関連する血栓症を阻止するための有効な手段になり得ることが示されている(Shapira L. et al., Arthritis Rheum 64(8):2719-23, 2012)。さらに、Shapiraらによってさらに報告されたように、CAPSに罹患している対象に、補体経路を遮断する用量のエクリズマブを投与すると急性進行性の血栓事象が食い止められ、血小板減少症が逆転した(Lim W., Curr Opin Hematol 18(5):361-5, 2011も参照されたい)。従って、他のTMAについて本明細書で説明したように、MASP-2機能を遮断する抗体を含むが、これに限定されないレクチン経路阻害因子が、CAPSに罹患している患者の治療において有益なことが期待される。
従って、別の態様において、本発明は、薬学的担体中のMASP-2抗体などのMASP-2阻害物質の治療的有効量を含む組成物を、CAPSにまたはCAPSに起因する状態に罹患している対象に投与することによってCAPSを治療するための方法を提供する。MASP-2阻害物質は、例えば、動脈内投与、静脈内投与、筋肉内投与、吸入投与、皮下投与、もしくは他の非経口投与によって、またはことによっては非ペプチド性作用物質の場合の経口投与によって、CAPSまたはCAPSに起因する状態に罹患している対象に全身投与される。抗MASP-2抗体は単独で投与されてもよく、C5阻害因子、例えば、エクリザマブと併用投与されてもよい。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、以下の特徴のうちの少なくとも1つまたは複数を示す:該抗体が、10nMもしくはそれ未満のKDでヒトMASP-2を結合させること、該抗体が、MASP-2のCCP1ドメイン中のエピトープを結合させること、該抗体が、インビトロアッセイ法において1%ヒト血清中でのC3b沈着を10nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、90%ヒト血清中でのC3b沈着を30nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、Fv、Fab、Fab'、F(ab)2、およびF(ab')2からなる群より選択される抗体断片であること、該抗体が単鎖分子であること、該抗体がIgG2分子であること、該抗体がIgG1分子であること、該抗体が、S228P変異を含むIgG4分子であること、ならびに/または該抗体が古典経路を実質的に阻害しないこと。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、第二経路を実質的に阻害しない。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、古典経路も第二経路も実質的に阻害しない(すなわち、古典経路および補体第二経路を完全な状態のままにしておきながらレクチン経路を阻害する)。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、CAPSに罹患している対象由来の血清中での血栓形成を未処理血清と比較して少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害する。一部の態様において、MASP-2阻害抗体は、CAPSに罹患している対象由来の血清中での血栓形成を、血清中でのC5b-9沈着に対する阻害効果よりも少なくとも20パーセント以上(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%)高いレベルで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、CAPS患者由来の血清中での血栓形成を未処理血清と比較して少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は静脈内カテーテルまたは他のカテーテル送達方法を介して対象に投与される。
一態様において、本発明は、CAPSに罹患している対象における血栓形成を阻害する方法であって、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を該対象に投与する工程を含み、該抗体またはその抗原結合断片が、(I)(a)(i)SEQ ID NO:67の31〜35のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H1;および(ii)SEQ ID NO:67の50〜65のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H2;および(iii)SEQ ID NO:67の95〜102のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H3を含む、重鎖可変領域、ならびに、(b)(i)SEQ ID NO:70の24〜34のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L1;および(ii)SEQ ID NO:70の50〜56のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L2;および(iii)SEQ ID NO:70の89〜97のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L3を含む、軽鎖可変領域、または、(II)SEQ ID NO:67と少なくとも90%の同一性(例えば、SEQ ID NO:67と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO:70と少なくとも90%の同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する軽鎖可変領域を含むそれらの変種を含む、方法を提供する。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。一部の態様において、該方法は、SEQ ID NO:70に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示した重鎖可変領域とSEQ ID NO:70に示した軽鎖可変領域とを含む参照抗体OMS646によって認識されるヒトMASP-2上エピトープの少なくとも一部を特異的に認識するMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を、対象に投与する工程を含む。
癌に続発するTMA
あらゆるタイプの全身悪性腫瘍がTMAの臨床的および病理的な症状発現の原因となり得る(例えば、Batts and Lazarus, Bone Marrow Transplantation 40:709-719, 2007を参照されたい)。癌関連TMAは肺で認められることが多く、腫瘍塞栓に関連するように思われる(Francis KK et al., Commun Oncol 2:339-43, 2005)。腫瘍塞栓は血流を低下させ、従って、罹患した小動脈および細静脈において低灌流状態をまねくことがある。結果として生じた組織ストレスおよび損傷は補体のレクチン経路を局所的に活性化すると予想される。次に、活性化レクチン経路はプロトロンビンからトロンビンへのMASP-2依存的切断を介して凝固カスケードを活性化して、TMAに特有の血栓形成促進状態をまねくことがある。この状況でMASP-2を阻害すると局所的なトロンビン活性化が低下し、それによって、血栓形成促進状態を軽減すると予想される。
よって、他のTMAについて本明細書で説明したように、MASP-2機能を遮断する抗体を含むが、これに限定されないレクチン経路阻害因子が、癌に続発するTMAに罹患している患者の治療において有益なことが期待される。
従って、別の態様において、本発明は、薬学的担体中のMASP-2抗体などのMASP-2阻害物質の治療的有効量を含む組成物を、癌に続発するTMAに罹患している対象または該TMAを発症するリスクを有する対象に投与することによって、癌に続発するTMAを治療または予防するための方法を提供する。MASP-2阻害物質は、例えば、動脈内投与、静脈内投与、筋肉内投与、吸入投与、皮下投与、もしくは他の非経口投与によって、またはことによっては非ペプチド性作用物質の場合の経口投与によって、癌に続発するTMAに罹患している対象または該TMAを発症するリスクを有する対象に全身投与される。抗MASP-2抗体は単独で投与されてもよく、C5阻害因子、例えば、エクリザマブと併用投与されてもよい。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、以下の特徴のうちの少なくとも1つまたは複数を示す:該抗体が、10nMもしくはそれ未満のKDでヒトMASP-2を結合させること、該抗体が、MASP-2のCCP1ドメイン中のエピトープを結合させること、該抗体が、インビトロアッセイ法において1%ヒト血清中でのC3b沈着を10nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、90%ヒト血清中でのC3b沈着を30nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、Fv、Fab、Fab'、F(ab)2、およびF(ab')2からなる群より選択される抗体断片であること、該抗体が単鎖分子であること、該抗体がIgG2分子であること、該抗体がIgG1分子であること、該抗体が、S228P変異を含むIgG4分子であること、ならびに/または該抗体が古典経路を実質的に阻害しないこと。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、第二経路を実質的に阻害しない。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、古典経路も第二経路も実質的に阻害しない(すなわち、古典経路および補体第二経路を完全な状態のままにしておきながらレクチン経路を阻害する)。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、癌に続発するTMAに罹患している対象由来の血清中での血栓形成を未処理血清と比較して少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、癌に続発するTMAに罹患している対象由来の血清中での血栓形成を未処理血清と比較して少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は静脈内カテーテルまたは他のカテーテル送達方法を介して対象に投与される。
一態様において、本発明は、癌に続発するTMAに罹患している対象における血栓形成を阻害する方法であって、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含み、該抗体またはその抗原結合断片が、(I)(a)(i)SEQ ID NO:67の31〜35のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H1;および(ii)SEQ ID NO:67の50〜65のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H2;および(iii)SEQ ID NO:67の95〜102のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H3を含む、重鎖可変領域、ならびに、(b)(i)SEQ ID NO:70の24〜34のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L1;および(ii)SEQ ID NO:70の50〜56のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L2;および(iii)SEQ ID NO:70の89〜97のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L3を含む、軽鎖可変領域、または、(II)SEQ ID NO:67と少なくとも90%の同一性(例えば、SEQ ID NO:67と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO:70と少なくとも90%の同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する軽鎖可変領域を含むそれらの変種を含む、方法を提供する。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。一部の態様において、該方法は、SEQ ID NO:70に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示した重鎖可変領域とSEQ ID NO:70に示した軽鎖可変領域とを含む参照抗体OMS646によって認識されるヒトMASP-2上エピトープの少なくとも一部を特異的に認識するMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を、対象に投与する工程を含む。
癌化学療法に続発するTMA
化学療法後TMA(chemotherapy-associated TM)は、化学療法剤、例えば、ゲムシタビン(gemcytabin)、マイトマイシン、オキサリプラチンなどで治療した悪性新生物の病歴を有する患者の2〜10%において発症する、血小板減少症、微小血管性溶血性貧血、および腎臓機能不全を伴う状態である。化学療法後TMAは高い死亡率、不良な臨床成績に関連する(例えば、Blake-Haskins et al., Clin Cancer Res 17(18):5858-5866, 2011を参照されたい)。
化学療法後TMAの原因は微小血管内皮に対する非特異的で有毒な傷害を含むと考えられている。マイトマイシン誘導性TMAの動物モデルにおいて内皮細胞に対する直接的な損傷が示されている(Dlott J. et al., Ther Apher Dial 8:102-11, 2004)。様々な機構を介した内皮細胞損傷が補体のレクチン経路を活性化することが示されている。例えば、Stahlらは、酸化ストレスに曝露された内皮細胞がインビトロおよびインビボの両方で補体のレクチン経路を活性化することを示している(Collard et al., Am J Pathol. 156(5):1549-56, 2000; La Bonte et al., J Immunol. 15;188(2):885-91, 2012)。インビボでは、このプロセスは血栓症(thombosis)につながり、レクチン経路を阻害すると血栓症が阻止されることが示されている(La Bonte et al. J Immunol. 15;188(2):885-91, 2012)。さらに、本明細書の実施例37〜39において証明したように、微小血管系に対する局所的損傷と、その後のTMA応答発生を誘導するためにFITC-Dexの局所的な光励起が用いられるTMAマウスモデルにおいて、本発明者らは、MASP-2阻害によってTMAを阻止できることを示している。従って、化学療法剤による微小血管内皮損傷によって補体のレクチン経路が活性化されることがあり、次いで、補体のレクチン経路の活性化によって局所的な血栓形成促進状態が生じて、TMA応答が促進される。レクチン経路の活性化および血栓形成促進状態の生成はMASP-2依存性であるので、MASP-2機能を遮断する抗体を含むが、これに限定されないMASP-2阻害因子がTMA応答を軽減し、癌化学療法後TMAのリスクを低下させることが期待される。
従って、別の態様において、本発明は、薬学的担体中のMASP-2抗体などのMASP-2阻害物質の治療的有効量を含む組成物を、化学療法に続発するTMAに罹患している対象または該TMAを発症するリスクを有する対象に投与することによって、化学療法に続発するTMAを治療または予防するための方法を提供する。MASP-2阻害物質は、例えば、動脈内投与、静脈内投与、筋肉内投与、吸入投与、皮下投与、もしくは他の非経口投与によって、またはことによっては非ペプチド性作用物質の場合の経口投与によって、化学療法を受けたことがある対象、化学療法を受けている対象、または化学療法を受けることになっている対象に全身投与される。抗MASP-2抗体は単独で投与されてもよく、C5阻害因子、例えば、エクリザマブと併用投与されてもよい。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、以下の特徴のうちの少なくとも1つまたは複数を示す:該抗体が、10nMもしくはそれ未満のKDでヒトMASP-2を結合させること、該抗体が、MASP-2のCCP1ドメイン中のエピトープを結合させること、該抗体が、インビトロアッセイ法において1%ヒト血清中でのC3b沈着を10nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、90%ヒト血清中でのC3b沈着を30nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、Fv、Fab、Fab'、F(ab)2、およびF(ab')2からなる群より選択される抗体断片であること、該抗体が単鎖分子であること、該抗体がIgG2分子であること、該抗体がIgG1分子であること、該抗体が、S228P変異を含むIgG4分子であること、ならびに/または該抗体が古典経路を実質的に阻害しないこと。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、第二経路を実質的に阻害しない。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、古典経路も第二経路も実質的に阻害しない(すなわち、古典経路および補体第二経路を完全な状態のままにしておきながらレクチン経路を阻害する)。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、癌化学療法に続発するTMAに罹患している対象由来の血清中での血栓形成を未処理血清と比較して少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、癌化学療法に続発するTMAに罹患している対象からの血清中での血栓形成を未処理血清と比較して少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は静脈内カテーテルまたは他のカテーテル送達方法を介して対象に投与される。
一態様において、本発明は、癌化学療法に続発するTMAに罹患している対象における血栓形成を阻害する方法であって、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を該対象に投与する工程を含み、該抗体またはその抗原結合断片が、(I)(a)(i)SEQ ID NO:67の31〜35のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H1;および(ii)SEQ ID NO:67の50〜65のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H2;および(iii)SEQ ID NO:67の95〜102のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H3を含む、重鎖可変領域、ならびに、(b)(i)SEQ ID NO:70の24〜34のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L1;および(ii)SEQ ID NO:70の50〜56のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L2;および(iii)SEQ ID NO:70の89〜97のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L3を含む、軽鎖可変領域、または、(II)SEQ ID NO:67と少なくとも90%の同一性(例えば、SEQ ID NO:67と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO:70と少なくとも90%の同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する軽鎖可変領域を含むそれらの変種を含む、方法を提供する。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。一部の態様において、該方法は、SEQ ID NO:70に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示した重鎖可変領域とSEQ ID NO:70に示した軽鎖可変領域とを含む参照抗体OMS646によって認識されるヒトMASP-2上エピトープの少なくとも一部を特異的に認識するMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を、対象に投与する工程を含む。
移植に続発するTMA
移植後TMA(transplantation-associated TMA)(TA-TMA)は、移植患者、例えば、同種造血幹細胞移植レシピエントにおいて起こり得る破滅的な症候群である(例えば、Batts and Lazarus, Bone Marrow Transplantation 40:709-719, 2007を参照されたい)。この状態の原因は十分に理解されていないが、結果として内皮細胞損傷になる応答の集まりが関与する可能性が高い(Laskin B.L. et al., Blood 118(6):1452-62, 2011)。前記で議論したように、内皮細胞損傷は、レクチン経路の活性化および血栓形成促進環境の生成のための典型的な刺激である。
最近のデータから、TA-TMA発生におけるレクチン経路を介した補体活性化の役割がさらに裏付けられる。Laskinらは、組織学的TA-TMAを有する対象の腎臓細動脈C4d沈着(75%)が対照(8%)と比較してはるかによく見られることを証明した(Laskin B.L., et al., Transplantation, 27; 96(2):217-23, 2013)。従って、C4dは、レクチン経路または古典経路を介した局所的な補体結合を意味する、TA-TMAの病理学的マーカーであり得る。
レクチン経路の活性化および血栓形成促進状態の生成はMASP-2依存性であるので、MASP-2機能を遮断する抗体を含むが、これに限定されないMASP-2阻害因子がTMA応答を軽減し、移植後TMA(TA-TMA)のリスクを低下させることが期待される。
従って、別の態様において、本発明は、薬学的担体中のMASP-2抗体などのMASP-2阻害物質の治療的有効量を含む組成物を、移植に続発するTMAに罹患している対象または該TMAを発症するリスクを有する対象に投与することによって、移植に続発するTMAを治療または予防するための方法を提供する。MASP-2阻害物質は、例えば、動脈内投与、静脈内投与、筋肉内投与、吸入投与、皮下投与、もしくは他の非経口投与によって、またはことによっては非ペプチド性作用物質の場合の経口投与によって、移植処置を受けたことがある対象、移植処置を受けている対象、または移植処置を受けることになっている対象に全身投与される。抗MASP-2抗体は単独で投与されてもよく、C5阻害因子、例えば、エクリザマブと併用投与されてもよい。一部の態様において、本発明は、同種幹細胞移植を受ける前、受けている間、または受けた後に、対象に、ある量のMASP-2阻害物質、例えば、MASP-2阻害抗体を含む組成物を投与する工程を含む、同種幹細胞移植に続発するTMAを治療または予防するための方法を提供する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、以下の特徴のうちの少なくとも1つまたは複数を示す:該抗体が、10nMもしくはそれ未満のKDでヒトMASP-2を結合させること、該抗体が、MASP-2のCCP1ドメイン中のエピトープを結合させること、該抗体が、インビトロアッセイ法において1%ヒト血清中でのC3b沈着を10nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、90%ヒト血清中でのC3b沈着を30nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、Fv、Fab、Fab'、F(ab)2、およびF(ab')2からなる群より選択される抗体断片であること、該抗体が単鎖分子であること、該抗体がIgG2分子である、該抗体がIgG1分子であること、該抗体が、S228P変異を含むIgG4分子であること、ならびに/または該抗体が古典経路を実質的に阻害しないこと。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、第二経路を実質的に阻害しない。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、古典経路も第二経路も実質的に阻害しない(すなわち、古典経路および補体第二経路を完全な状態のままにしておきながらレクチン経路を阻害する)。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、移植に続発するTMAに罹患している対象由来の血清中での血栓形成を未処理血清と比較して少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、移植に続発するTMAに罹患している対象由来の血清中での血栓形成を未処理血清と比較して少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は静脈内カテーテルまたは他のカテーテル送達方法を介して対象に投与される。
一態様において、本発明は、移植に続発するTMAに罹患している対象における血栓形成を阻害する方法であって、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を該対象に投与する工程を含み、該抗体またはその抗原結合断片が、(I)(a)(i)SEQ ID NO:67の31〜35のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H1;および(ii)SEQ ID NO:67の50〜65のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H2;および(iii)SEQ ID NO:67の95〜102のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H3を含む、重鎖可変領域、ならびに、(b)(i)SEQ ID NO:70の24〜34のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L1;および(ii)SEQ ID NO:70の50〜56のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L2;および(iii)SEQ ID NO:70の89〜97のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L3を含む、軽鎖可変領域、または、(II)SEQ ID NO:67と少なくとも90%の同一性(例えば、SEQ ID NO:67と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO:70と少なくとも90%の同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する軽鎖可変領域を含むそれらの変種を含む、方法を提供する。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。一部の態様において、該方法は、SEQ ID NO:70に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示した重鎖可変領域とSEQ ID NO:70に示した軽鎖可変領域とを含む参照抗体OMS646によって認識されるヒトMASP-2上エピトープの少なくとも一部を特異的に認識するMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を、対象に投与する工程を含む。
IV.他の疾患および状態におけるMASP-2の役割、ならびにMASP-2阻害物質を用いた治療方法
腎臓状態
補体系の活性化は、メサンギウム増殖性糸球体腎炎(IgA腎症、ベルジェ病)(Endo, M., et al., Clin. Nephrology 55:185-191, 2001)、膜性糸球体腎炎(Kerjashki, D., Arch B Cell Pathol. 58:253-71, 1990; Brenchley, P.E., et al., Kidney Int., 41:933-7, 1992; Salant, D.J., et al., Kidney Int. 55:976-84, 1989)、膜性増殖性糸球体腎炎(メサンギウム毛細管性糸球体腎炎)(Bartlow, B.G.. et al., Kidney Int. 15:294-300, 1979; Meri, S. et al., J. Exp. Med. 175:939-50, 1992)、急性感染後糸球体腎炎(連鎖球菌感染後糸球体腎炎)、クリオグロブリン血症糸球体腎炎(Ohsawa, I., et al., Clin Immunol, 101:59-66, 2001)、ループス腎炎(Gatenby, P.A., Autoimmunity 11:61-6, 1991)、およびヘーノホ・シェーンライン紫斑病腎炎(Endo, M., et al., Am. J. Kidney Dis. 35:401-407, 2000)を含む多種多様な腎臓病の発生に関係している。数十年間にわたって腎臓病における補体の関与が認められてきたが、腎臓病の発病期、発症期、および回復期におけるその正確な役割については、いまだに重大な議論となっている。正常条件下での補体の寄与は宿主にとって有益であるが、補体の不適切な活性化および沈着が組織損傷の一因となる場合がある。
糸球体の炎症である糸球体腎炎は、多くの場合、糸球体構造または尿細管構造への免疫複合体の沈着によって開始され、次いで、この沈着によって補体活性化、炎症、および組織損傷が誘発されるという多くの証拠がある。KahnおよびSinniahは、様々な形の糸球体腎炎の患者から採取された生検材料中の尿細管基底膜におけるC5b-9沈着が増加していることを証明した(Kahn, T.N., et al., Histopath. 26:351-6, 1995)。IgA腎症(IgA nephrology)患者の研究において(Alexopoulos, A., et al., Nephrol. Dial. Transplant 10:1166-1172, 1995)、尿細管上皮/基底膜構造におけるC5b-9沈着は血漿中クレアチニンレベルと相関関係にあった。膜性腎症の別の研究から、臨床成績と尿中sC5b-9レベルとの関係性が証明された(Kon, S. P., et al., Kidney Int. 48:1953-58, 1995)。高いsC5b-9レベルは予後不良と正の相関関係があった。Lehto et al.は、膜性糸球体腎炎患者に由来する尿中に、原形質膜中の膜侵襲複合体を阻害する補体制御因子であるCD59、ならびにC5b-9の高いレベルを測定した(Lehto, T., et al., Kidney Int. 47; 1403-11, 1995)。これらの同じ患者から採取された生検試料の病理組織学的分析から糸球体におけるC3およびC9タンパク質の沈着が証明されたのに対して、これらの組織におけるCD59発現は正常腎臓組織と比較して減少した。これらの様々な研究から、進行中の補体媒介性糸球体腎炎は、組織損傷の程度および疾患予後と相関する補体タンパク質の尿排泄をもたらすことが示唆された。
糸球体腎炎の様々な動物モデルにおける補体活性化の阻害からも、この疾患の原因における補体活性化の重要性が証明された。膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)モデルにおいて、(C5b-9を形成することができない)C6欠損ラットに抗Th1抗血清を注入すると、C6+正常ラットよりも糸球体細胞増殖が90%少なくなり、血小板およびマクロファージ浸潤が80%少なくなり、コラーゲンIV型合成(メサンギウム基質拡大のマーカー)が減少し、タンパク尿がおよび50%少なくなった(Brandt.J., et al., Kidney Int. 49:335-343, 1996)。これらの結果は、このラット抗胸腺細胞血清モデルにおける補体による主要な組織損傷メディエーターとしてのC5b-9を意味する。別の糸球体腎炎モデルでは、段階的な投与量のウサギ抗ラット糸球体基底膜を注入すると多形核白血球(PMN)の用量依存的な流入が発生し、これは(補体を消費する)コブラ毒因子による前処理によって減弱した(Scandrett, A.L., et al., Am. J. Physiol 268:F256-F265, 1995)。コブラ毒因子で処置されたラットは、対照ラットよりも減少した組織病的変化、減少した長期タンパク尿、低いクレアチニンレベルも示した。ラットにおける3種類のGNモデル(抗胸腺細胞血清、ConA 抗ConA、および受動的ヘイマン腎炎)を用いて、Couser et al.は、組換えsCR1タンパク質を使用することによって補体を阻害するアプローチの潜在的な治療有効性を証明した(Couser, W.G., et al., J. Am. Soc. Nephrol. 5:1888-94, 1995)。sCR1で処置されたラットは、対照ラットと比べて、PMN、血小板、およびマクロファージ流入の有意な減少、メサンギウム融解およびタンパク尿の減少を示した。NZB/W F1マウスモデルにおいて抗C5 MoAbを使用することによって、糸球体腎炎における補体活性化の重要性のさらなる証拠が得られている。抗C5 MoAbはC5切断を阻害し、従って、C5aおよびC5b-9の生成を遮断する。抗C5 MoAbを用いた6ヶ月間の連続療法によって、糸球体腎炎経過が有意に寛解した。炎症促進成分へのヒト補体成分C5の切断を阻止するヒト化抗C5 MoAbモノクローナル抗体(5G1.1)は、糸球体腎炎の潜在的な治療法として、Alexion Pharmaceuticals, Inc., New Haven, Connecticutにより開発されている最中である。
特定の補体成分の遺伝的欠損がある患者の研究によって、腎損傷における補体の病理学的役割について直接の証拠が得られた。多くの報告によって、腎臓病と補体制御H因子の欠損との関係が実証されている(Ault, B.H.. Nephrol. 14:1045-1053, 2000; Levy, M., et al., Kidney Int. 30:949-56, 1986; Pickering, M.C., et al., Nat. Genet, 31:424-8, 2002)。H因子が欠損すると、B因子およびC3の血漿中レベルが低下し、C5b-9が消費される。非定型膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)および特発性溶血性尿毒症症候群(HUS)が両方ともH因子欠損と関連づけられている。H因子欠損ブタ(Jansen, J.H., et al., Kidney Int. 55:331-49, 1998)およびH因子ノックアウトマウス(Pickering, M.C., 2002)はMPGN様の症状を示す。このことは、補体調節におけるH因子の重要性を裏付けている。他の補体成分の欠損が、全身性エリテマトーデス(SLE)の発症に続発する腎臓病と関連づけられている(Walport, M.J., Davies, et al., Ann. N. Y, Acad. Sci. 815:267-81, 1997)。C1q、C4、およびC2の欠損は、免疫複合体およびアポトーシス材料の不完全なクリアランスに関連する機構を介したSLE発症の強力な素因である。これらのSLE患者の多くにおいて、糸球体全体の免疫複合体沈着を特徴とするループス腎炎が発生する。
補体成分に対する自己抗体が患者において特定されたことによって、補体活性化と腎臓病を結び付けるさらなる証拠が得られている。これらの自己抗体の一部は腎臓病と直接、関係づけられている(Trouw, L.A., et al., Mol. Immunol. 38:199-206, 2001)。これらの多数の自己抗体は腎臓病とかなり高度の相関関係を示すので、この活性を示すために腎炎因子(NeF)という用語が導入された。臨床研究において、腎炎因子陽性患者の約50%がMPGNを発症した(Spitzer, R.E. et al., Clin. Immunol. Immunopathol. 64:177-83, 1992)。C3NeFは、第二経路C3コンバターゼ(C3bBb)に対する自己抗体であり、このコンバターゼを安定化し、それによって第二経路活性化を促進する(Daha, M.R., et al., J. Immunol. 116:1-7, 1976)。同様に、古典経路C3コンバターゼ(C4b2a)に対して特異性を有する自己抗体はC4NeFと呼ばれ、このコンバターゼを安定化し、それによって古典経路の活性化を促進する(Daha, M.R. et al., J. Immunol. 125:2051-2054, 1980; Halbwachs, L., et al., J, Clin. Invest. 65:1249-56, 1980)。抗C1q自己抗体はSLE患者における腎炎と関連することが述べられている(Hovath, L. et al., Clin. Exp. Rheumatol, 19:667-72, 2001 ; Siegert, C, et al., J. Rheumatol 18:230-34, 1991; Siegert, C, et al., Clin. Exp. Rheumatol. 10:19-23, 1992)。これらの抗C1q自己抗体の力価の増加は腎炎の拡大を予測すると報告された(Coremans, I.E. et al., Am. J. Kidney Dis. 26:595-601, 1995)。SLE患者の死後腎臓から溶出された免疫沈着から、これらの抗C1q自己抗体の蓄積が明らかになった(Mannick, M, et al., Arthritis Rheumatol. 40:1504-11, 1997)。これらの事実は全て、これらの自己抗体の病理学的役割を示唆している。しかしながら、抗C1q自己抗体を有する全ての患者が腎臓病を発症するとは限らず、健常個体の中には低力価の抗C1q自己抗体を有するものもいる(Siegert, C.E., et al., Clin. Immunol. Immunopathol. 67:204-9, 1993)。
補体活性化の第二経路および古典経路に加えて、レクチン経路も腎臓病において重要な病理学的役割を有する可能性がある。ヘーノホ・シェーンライン紫斑病腎炎(Endo, M. et al., Am. J. Kidney Dis. 35:401-407, 2000)、クリオグロブリン血症糸球体腎炎(Ohsawa, I., et al., Clin. Immunol. 101:59-66, 2001)、およびIgAニューロパチー(Endo, M., et al., Clin. Nephrology 55:185-191, 2001)を含む、いくつかの異なる腎臓病と診断された患者から得られた腎臓生検材料における免疫組織化学的技法によって、高レベルのMBL、MBL関連セリンプロテアーゼ、および補体活性化産物が検出されている。従って、数十年間にわたって補体と腎臓病との関係が公知であったという事実にもかかわらず、これらの腎臓病に補体が正確にどのように影響を及ぼすのかというデータは完璧には程遠い。
血液障害
敗血症は、侵入微生物に対する患者の抑えきれないほど激しい反応によって引き起こされる。補体系の主な機能は、侵入細菌および他の病原体に対する炎症反応を組織化することである。この生理学的役割と一致して、非常に多くの研究において、補体活性化は敗血症の発生において主要な役割を有することが示されている(Bone, R.C., Annals. Internal, Med. 115:457-469, 1991)。敗血症の臨床徴候の定義は絶えず発展している。敗血症は、通常、感染症に対する全身宿主反応と定義される。しかしながら、何度も、敗血症症状を有する患者において感染症の臨床証拠(例えば、陽性の細菌血液培養)は発見されていない。この矛盾は、1992年にConsensus Conferenceにおいて初めて考慮に入れられ、この際に、「全身炎症反応症候群」(SIRS)という用語が確立され、これには細菌感染症の定義可能な存在が必要とされなくなった(Bone, R.C., et al., Crit. Care Med. 20:724-726, 1992)。現在、敗血症およびSIRSには炎症反応の調節不能が伴うという一般的な合意がある。これを簡単に見直すために、本発明者らは、敗血症の臨床上の定義を、重篤な敗血症、敗血症ショック、およびSIRSも含むと考える。
1980年代後半より前の敗血症患者における最も優勢な感染源はグラム陰性細菌であった。グラム陰性細菌細胞壁の主成分であるリポ多糖(LPS)は、動物に注射されると、様々な細胞タイプからの炎症メディエーターの放出を刺激し、急性感染症状を誘導することが公知であった(Haeney, M.R., et al., Antimicrobial Chemotherapy 41(Suppl. A):41-6, 1998)。興味深いことに、原因微生物のスペクトルは、今のところ、はっきりしない理由のために、1970年代後半および1980年代では主にグラム陰性細菌から、現在では主にグラム陽性細菌に変わったように見える(Martin, G.S., et al., N. Eng. J. Med. 348:1546-54, 2003)。
多くの研究から、炎症の媒介、ならびにショック、特に、敗血症ショックおよび出血性ショックの特徴への寄与において補体活性化の重要性が示されている。通常、グラム陰性生物およびグラム陽性生物はいずれも敗血症ショックを引き起こす。LPSは、主に第二経路を介した強力な補体活性化因子であるが、抗体によって媒介される古典経路活性化も生じる(Fearon, D.T., et al., N. Engl. J. Med. 292:937-400, 1975)。グラム陽性細胞壁の主成分はペプチドグリカンおよびリポテイコ酸であり、両成分とも強力な補体第二経路活性化因子であるが、特異的抗体の存在下では古典的補体経路も活性化することができる(Joiner, K.A., et al., Ann. Rev. Immunol. 2:461-2, 1984)。
敗血症中にも起こり得る様々な炎症反応をアナフィラトキシンであるC3aおよびC5aが媒介することに研究者が気付いた際に、補体系は敗血症の発生に最初に関係付けられた。これらのアナフィラトキシンは、敗血症ショックにおいて中心的な役割を果たす事象である血管拡張および微小血管透過性の増大を誘起する(Schumacher, W.A., et al., Agents Actions 34:345-349, 1991)。さらに、アナフィラトキシンは、気管支痙攣、マスト細胞からのヒスタミン放出、および血小板凝集を誘導する。さらに、これらは、顆粒球に対して非常に多くの作用、例えば、走化性、凝集、接着、リソソーム酵素の放出、毒性のあるスーパーオキシドアニオンの生成、およびロイコトリエン形成を発揮する(Shin, H.S., et al., Science 162:361-363, 1968; Vogt, W., Complement 3:177-86, 1986)。これらの生物作用は、ショックまたは急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの敗血症合併症の発症において役割を果たすと考えられている(Hammerschmidt, D.E., et al., Lancet 1:947-949, 1980; Slotman, G.T., et al., Surgery 99:744-50, 1986)。さらに、高レベルのアナフィラトキシンC3aは敗血症における致死的転帰と関連づけられている(Hack, C.E., et al., Am. J. Med. 86:20-26, 1989)。一部のショック動物モデルでは、ある特定の補体欠損系統(例えば、C5欠損系統)はLPS注入の影響に対する耐性がより高い(Hseuh, W, et al., Immunol. 70:309-14, 1990)。
げっ歯類における敗血症の発病の最中の抗体によるC5a生成の遮断は生存率を著しく向上させることが示されている(Czermak, B.J., et al., Nat. Med. 5:788-792, 1999)。抗体または低分子阻害因子を用いてC5a受容体(C5aR)が遮断された場合に、同様の所見がなされた(Huber-Lang, M.S., et al., FASEB J. 16:1567-74, 2002; Riedemann, N.C., et al., J. Clin. Invest. 110:101-8, 2002)。サルにおける初期実験研究から、C5aの抗体遮断は大腸菌(E. coli)誘導性の敗血症ショックおよび成人呼吸窮迫症候群を減弱したことが示唆されている(Hangen, D.H. et al., J. Surg. Res. 46:195-9, 1989; Stevens, J.H., et al., J. Clin. Invest. 77:1812-16, 1986)。あまり重篤でない敗血症の患者および生存者と比較して、敗血症にかかったヒトでは、C5aは増大し、多臓器不全を伴う有意に低い生存率と関連づけられた(Nakae, H,, et al., Res. Commun. Chem. Pathol. Pharmacol. 84:189-95, 1994; Nakae, et al., Surg. Today 26:225-29, 1996; Bengtson, A., et al., Arch. Surg. 123:645-649, 1988)。敗血症の間にC5aが有害作用を発揮する機構はまだ詳細に調べられていないが、最近のデータから、敗血症の間にC5aが生成されると、血液好中球の自然免疫機能(Huber-Lang, M.S., et al., J. Immunol. 169:3223-31 , 2002)、呼吸バーストを発現する能力、およびサイトカインを生成する能力(Riedemann, N.C., et al., Immunity 19:193-202, 2003)が著しく損なわれることが示唆されている。さらに、敗血症の間のC5a生成は凝血促進作用を有するように見える(Laudes, I.J., et al., Am. J. Pathol. 160:1867-75, 2002)。補体調節タンパク質CI INHもまた敗血症およびARDSの動物モデルにおいて有効性を示した(Dickneite, G., BehringIns. Mitt. 93:299-305, 1993)。
レクチン経路は敗血症の発生においても役割を有し得る。MBLは、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌を含む臨床上重要なある範囲の微生物に結合し、レクチン経路を活性化することが示されている(Neth, O., et al., Infect. Immun, 68:688, 2000)。リポテイコ酸(LTA)は、LPSのグラム陽性対応物だとますますみなされている。これは、単核食細胞および全血からのサイトカイン放出を誘導する強力な免疫賦活薬である(Morath, S., et al., J. Exp. Med. 195:1635, 2002; Morath, S., et al., Infect. Immun. 70:938, 2002)。最近、L-フィコリンが、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含む非常に多くのグラム陽性細菌種から単離されたLTAに特異的に結合し、レクチン経路を活性化することが証明された(Lynch, N.J., et al., J. Immunol. 172:1198-02, 2004)。MBLはまた、ポリグリセロリン酸鎖がグリコシル基で置換されているエンテロコッカス属(Enterococcus)の種に由来するLTAに結合するが、黄色ブドウ球菌を含む他の9種に由来するLTAに結合しないことも示されている(Polotsky, V.Y., et al., Infect. Immun. 64:380, 1996)。
従って、本発明の一局面は、薬学的担体中に治療的有効量のMASP-2阻害物質を含む組成物を、重篤な敗血症、敗血症ショック、敗血症に起因する急性呼吸窮迫症候群、および全身炎症反応症候群を含むが、それに限定されるわけではない、敗血症または敗血症に起因する状態に罹患している対象に投与することによって、敗血症または敗血症に起因する状態を治療するための方法を提供する。薬学的担体中に治療的有効量のMASP-2阻害物質を含む組成物を、出血性ショック、溶血性貧血、自己免疫血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、または他の骨髄/血液破壊状態を含む他の血液障害に罹患している対象に投与することによって、このような状態を治療するための関連する方法が提供される。MASP-2阻害物質は、例えば、動脈内投与、静脈内投与、筋肉内投与、吸入(特に、ARDSの場合)、皮下投与、もしくは他の非経口投与によって対象に全身投与されるか、またはことによっては非ペプチド作用物質の場合の経口投与によって対象に投与される。MASP-2阻害物質組成物は、敗血症および/またはショックの後遺症と闘うために1種類または複数種のさらなる治療用物質と組み合わされてもよい。進行した敗血症もしくはショックまたはそれに起因する窮迫状態の場合、MASP-2阻害組成物は、適宜、速効性の剤形で、例えば、MASP-2阻害物質組成物を含有する溶液のボーラスの静脈内送達または動脈内送達によって投与されてもよい。状態が回復するまで、医師によって決められたように反復投与が行われてもよい。
凝固障害
播種性血管内凝固(「DIC」)、例えば、著しい身体外傷に続発するDICにおける補体系の役割について証拠が得られてきた。
以前の研究により、C4-/-マウスは腎臓再灌流傷害から保護されないことが示されている(Zhou, W., et al.,「Predominant role for C5b-9 in renal ischemia/reperfusion injury」, J Clin Invest 105:1363-1371(2000))。C4-/-マウスが古典経路またはレクチン経路のいずれかを介して補体を活性化できる可能性があるかどうか調べるために、古典経路活性化経路またはレクチン経路活性化経路に特異的なアッセイ法においてC4-/-血漿中のC3代謝回転が測定された。古典経路を介した活性化誘発時にC3切断は観察されなかったが、C4欠損血清中に極めて効率の高いレクチン経路依存性C3活性化が観察された(図30)。第二経路活性化に関する以前に発表された多くの論文によれば、3つ全ての経路について許容される実験条件下でも、マンナン上およびザイモサン上のC3b沈着はMASP-2-/-マウスにおいて大きく損なわれていることが分かる。マンナンまたはザイモサンの代わりに免疫グロブリン複合体でコーティングされたウェル内で同じ血清を使用した場合に、MASP-2+/+マウス血清およびMASP-2-/-血清においてC3b沈着およびB因子切断は見られたが、C1q枯渇血清では見られない。これにより、初期C3bが古典的活性を介して提供された場合に、第二経路活性化はMASP-2-/-血清中で促進されることが示される。図30Cは、C4欠損血漿中で、レクチン経路依存的にC3を効率的に活性化できるという驚くべき知見を示す。
この「C4バイパス」は、血漿と可溶性のマンナンまたはマンノースとのプレインキュベーションによってレクチン経路活性化を阻害することによって失われる。
補体系の異常な非免疫性活性化はヒトにとって潜在的に有害であり、血液学的経路活性化において、特に、炎症経路および血液学的経路の両方が活性化される重篤な外傷状況においても重要な役割を果たしている可能性がある。正常な健康状態において、C3変換は総血漿C3タンパク質の<5%である。敗血症および免疫複合体疾患を含む激しい感染症では、C3変換は自然に約30%に回復し、補体レベルは、利用増大およびプール分配の変化のために往々にして正常よりも低い。30%超の速やかなC3経路活性化は、一般的に、血管拡張および組織に対する体液喪失の明らかな臨床証拠を示す。30%超のC3変換では、開始機構は主に非免疫性であり、結果として生じる臨床徴候は患者に有害である。健康状態および管理された疾患における補体C5レベルはC3よりもかなり安定しているように見える。C5レベルの著しい減少およびまたは変換は、異常な多発外傷(例えば、交通事故)およびショック肺症候群の可能性の高い発症に対する患者の反応に関連する。従って、血管プールのうちの30%超の補体C3活性化、もしくは任意のC5関与の補体C3活性化いずれに関する、またはその両方に関する任意の証拠は、患者における有害な病理学的変化の前触れである可能性が高いとみなされ得る。
C3およびC5は両方とも、マスト細胞および好塩基球に作用して血管拡張性化学物質を放出させるアナフィラトキシン(C3aおよびC5a)を遊離する。これらは多形核細胞(PMN)を免疫学的混乱(有益な反応)の中心に導く走化性勾配を設けるが、C5aがこれらの食細胞に対して特異的なクランピング(凝集)作用を有し、食細胞が反応部位からランダムに離れて行かないようにするので相違する。感染症の正常制御ではC3はC5を活性化する。しかしながら、多発外傷では、C5は広範囲に活性化され、C5aアナフィラトキシンを全身に生じるように見える。この制御されていない活性のために血管系内に多形体が群がり、次いで、これらの塊は肺毛細血管に押し流され、閉塞し、スーパーオキシド遊離の結果として局所損傷作用を生じる。理論に拘束されるものではないが、この機構は、おそらく、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発生において重要である。だが、最近、この考えには異論が差し挟まれている。C3aアナフィラトキシンはインビトロでは強力な血小板凝集因子(aggregator)であることが示され得るが、インビボで、これらの関与はあまり明確でなく、創傷治癒における血小板物質およびプラスミンの放出は二次的にしか補体C3に関与しない可能性がある。DICを生成するにはC3活性化の長期増大が必要である可能性がある。
外傷とDICとの関係を説明することができる、前記で概説された活性化補体成分の細胞作用および血管作用に加えて、新しく浮上しつつある科学的発見が、補体系と凝固系との間の直接的な分子的関係および機能クロストークを特定した。裏付けるデータがC3欠損マウスにおける研究から得られている。C3はそれぞれの補体経路の共通成分であるので、C3欠損マウスは全ての補体機能を欠くと予想される。しかしながら、驚いたことに、C3欠損マウスは終末補体成分を完璧に活性化することができる(Huber-Lang, M., et al., 「Generation of C5a in the absence of C3: a new complement activation pathway」, Nat. Med 12:682-687(2006))。深く掘り下げた研究から、終末補体成分のC3非依存的活性化は凝固カスケードの律速酵素であるトロンビンによって媒介されることが明らかになった(Huber et al., 2006)。初期補体活性化後のトロンビン活性化を媒介する分子成分は依然として謎である。
本発明者らは、補体カスケードと凝固カスケードとの間のクロストークの分子基盤だと考えられるものを解明し、2つの系をつなぐ中心的な制御点としてMASP-2を特定した。MASP-2の基質特異性についての生化学的研究から、周知のC2およびC4補体タンパク質に加えて、可能性のある基質としてプロトロンビンが特定された。MASP-2はプロトロンビンの機能関連部位を特異的に切断し、凝固カスケードの律速酵素であるトロンビンを生成する(Krarup, A., et al., 「Simultaneous Activation of Complement and Coagulation by MBL-Associated Serine Protease 2」, PLoS. ONE. 2;e623(2007))。MASP-2によって生成されたトロンビンは、規定された再構成インビトロ系においてフィブリン沈着を促進することができる。このことから、MASP-2切断の機能的関連性が証明される(Krarup et al., 2007)。本明細書の以下の実施例において議論されるように、本発明者らは、レクチン経路活性化後の正常げっ歯類血清中のトロンビン活性化を記録に残すことによって、この発見の生理学的意義をさらに確証し、このプロセスが中和MASP-2モノクローナル抗体によって遮断されることを証明した。
MASP-2は、補体系および凝固系の両方の活性化を促進することができる、レクチン経路における中心的な分岐点である可能性がある。レクチン経路活性化は多くのタイプの外傷性損傷に対する生理学的反応であるので、本発明者らは、同時に発生する全身性の炎症(補体成分によって媒介される)および散在性の凝固(凝固経路を介して媒介される)を、MASP-2が両経路を活性化する能力によって説明できると考えている。これらの知見から、DICの発生におけるMASP-2の役割ならびにDICの治療または予防におけるMASP-2阻害の治療利益がはっきりと示唆される。MASP-2は補体系と凝固系との分子的関連を提供している可能性があり、外傷の状況において発生するようにレクチン経路活性化はMASP-2-トロンビン軸を介して凝固系活性化を直接、開始することができ、そのため、外傷とDICとの機構的関連を提供することができる。本発明の一局面によれば、MASP-2の阻害によってレクチン経路活性化が阻害され、アナフィラトキシンC3aおよびC5aの生成が減少すると考えられる。DICを発生するにはC3活性化の長期増大が必要であると考えられる。
微小循環性凝固(毛細血管および小血管の中の血餅(blot clot))は、このような敗血症ショックの状況において発生する。実施例17ならびに図18および図19に記載のように、敗血症のMASP-2(-/-)マウスモデルの保護表現型によって証明されたように、敗血症ショックにおけるレクチン経路の役割が明らかにされている。さらに、実施例15ならびに図16Aおよび図16Bにおいて証明されたように、MASP-2(-/-)マウスは、微小血管における限局性凝固のモデルである播種性血管内凝固(DIC)の限局性シュワルツマン反応モデルにおいて保護される。
V.MASP-2阻害物質
一局面において、本発明は、血栓性微小血管症に罹患している対象または該血栓性微小血管症を発症するリスクを有する対象におけるMASP-2依存性補体活性化を阻害する方法を提供する。MASP-2阻害物質は、生きている対象におけるMASP-2依存性補体活性化を阻害するのに有効な量で投与される。本発明のこの局面の実施において、代表的なMASP-2阻害物質には、MASP-2の生物学的活性を阻害する分子(例えば、低分子阻害因子、抗MASP-2抗体、またはMASP-2と相互作用するか、もしくはタンパク質間相互作用を妨害する遮断ペプチド)、ならびに、MASP-2発現を減少させ、それによって、MASP-2がレクチン補体経路を活性化しないようにする分子(例えば、MASP-2アンチセンス核酸分子、MASP-2特異的RNAi分子、およびMASP-2リボザイム)が含まれる。MASP-2阻害物質は一次療法として単独で用いられてもよく、他の医学的処置の治療利益を向上させる補助療法として他の治療剤と併用されてもよい。
MASP-2依存性補体活性化の阻害は、本発明の方法に従うMASP-2阻害物質の投与の結果として生じた補体系成分の以下の変化のうちの少なくとも1つを特徴とする:MASP-2依存性補体活性化系産物C4b、C3a、C5a、および/もしくはC5b-9(MAC)の生成もしくは産生の阻害(例えば、実施例2に記載のように測定される)、感作されていないウサギ赤血球もしくはモルモット赤血球を用いた溶血アッセイ法において評価される補体活性化の低下(例えば、実施例33に記載のように測定される)、C4切断およびC4b沈着の減少(例えば、実施例2に記載のように測定される)、またはC3切断およびC3b沈着の減少(例えば、実施例2に記載のように測定される)。
本発明によれば、MASP-2依存性補体活性化系の阻害において有効なMASP-2阻害物質が用いられる。本発明のこの局面の実施において有用なMASP-2阻害物質には、例えば、抗MASP-2抗体およびその断片、MASP-2阻害ペプチド、低分子、MASP-2可溶性受容体、ならびに発現阻害因子が含まれる。MASP-2阻害物質は、MASP-2の生物学的機能を遮断することによってMASP-2依存性補体活性化系を阻害してもよい。例えば、阻害物質は、MASP-2タンパク質間相互作用を効果的に遮断してもよく、MASP-2二量体化または集合を妨害してもよく、Ca2+結合を遮断してもよく、MASP-2セリンプロテアーゼ活性部位を妨害してもよく、MASP-2タンパク質発現を減少させてもよい。
一部の態様において、MASP-2阻害物質は、C1q依存性補体活性化系の機能を損なわずにMASP-2補体活性化を選択的に阻害する。
一態様において、本発明の方法において有用なMASP-2阻害物質は、補体系の他の抗原よりも少なくとも10倍高い親和性で、SEQ ID NO:6を含むポリペプチドに特異的に結合する特異的MASP-2阻害物質である。別の態様において、MASP-2阻害物質は、補体系の他の抗原よりも少なくとも100倍高い合親和性で、SEQ ID NO:6を含むポリペプチドに特異的に結合する。MASP-2阻害物質の結合親和性は適切な結合アッセイ法を用いて決定することができる。
MASP-2ポリペプチドは、C1補体系のプロテアーゼであるMASP-1、MASP-3、ならびにC1rおよびC1sに類似した分子構造を示す。SEQ ID NO:4に示されたcDNA分子は、MASP-2(SEQ ID NO:5に示されたアミノ酸配列からなる)の代表例をコードし、分泌後に切断されて成熟型ヒトMASP-2(SEQ ID NO:6)を生じる、リーダー配列(aa1〜15)を有するヒトMASP-2ポリペプチドを提供する。図2に示したように、ヒトMASP2遺伝子は12個のエキソンを含む。ヒトMASP-2 cDNAは、エキソンB、C、D、F、G、H、I、J、K、およびLによってコードされる。図2に示したように、オルタナティブスプライスから、エキソンB、C、D、およびEから生じる(SEQ ID NO:1)によってコードされるMBL関連タンパク質19(「MAp19」、「sMAP」とも呼ばれる)(SEQ ID NO:2)と呼ばれる20kDaタンパク質が生じる。SEQ ID NO:50に示されたcDNA分子はマウスMASP-2(SEQ ID NO:51に示されたアミノ酸配列からなる)をコードし、分泌後に切断されて成熟型マウスMASP-2(SEQ ID NO:52)を生じる、リーダー配列を有するマウスMASP-2ポリペプチドを提供する。SEQ ID NO:53に示されたcDNA分子はラットMASP-2(SEQ ID NO:54に示されたアミノ酸配列からなる)をコードし、分泌後に切断されて成熟型ラットMASP-2(SEQ ID NO:55)を生じる、リーダー配列を有するラットMASP-2ポリペプチドを提供する。
当業者であれば、SEQ ID NO:4、 SEQ ID NO:50、およびSEQ ID NO:53に開示される配列は、それぞれ、ヒトMASP-2、マウスMASP-2、およびラットMASP-2の単一の対立遺伝子であり、対立遺伝子変化およびオルタナティブスプライシングが生じると予想されることを認めると考えられる。サイレント変異を含有する対立遺伝子変種および変異によってアミノ酸配列が変化する対立遺伝子変種を含む、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:50、およびSEQ ID NO:53に示したヌクレオチド配列の対立遺伝子変種は本発明の範囲内である。MASP-2配列の対立遺伝子変種は、標準的な手順に従って、異なる個体に由来するcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーをプローブすることによってクローニングすることができる。
ヒトMASP-2タンパク質(SEQ ID NO:6)のドメインが図1および図2Aに示され、N末端C1r/C1s/ウニVegf/骨形成タンパク質(CUBI)ドメイン(SEQ ID NO:6のaa1〜121)、上皮細胞成長因子様ドメイン(aa122〜166)、別のCUBIドメイン(aa167〜293)、ならびに補体対照タンパク質ドメインの縦列配列およびセリンプロテアーゼドメインを含む。MASP2遺伝子のオルタナティブスプライシングから図1に示したMAp19が得られる。MAp19は、図1に示したように、MASP-2のN末端CUBI-EGF領域とエキソンEに由来する4個のさらなる残基(EQSL)を含有する非酵素タンパク質である。
いくつかのタンパク質が、タンパク質間相互作用を介してMASP-2に結合するかまたはMASP-2と相互作用することが示されている。例えば、MASP-2は、レクチンタンパク質であるMBL、H-フィコリン、およびL-フィコリンに結合し、これらとCa2+依存性複合体を形成することが公知である。それぞれのMASP-2/レクチン複合体は、タンパク質C4およびC2のMASP-2依存性切断を介して補体を活性化することが示されている(Ikeda, K., et al., J. Biol Chem. 262:7451-7454, 1987; Matsushita, M., et al., J. Exp. Med 176:197-2284, 2000; Matsushita, M., et al., J. Immunol.168:3502-3506, 2002)。研究により、MASP-2のCUB1-EGFドメインはMASP-2とMBLとの結合に不可欠なことが示されている(Thielens, N.M., et al., J. Immunol. 166:5068, 2001)。CUB1EGFCUBIIドメインは、活性MBL複合体の形成に必要なMASP-2二量体化を媒介することも示されている(Wallis, R., et al., J. Biol. Chem. 275:30962-30969, 2000)。従って、MASP-2依存性補体活性化に重要なことが公知であるMASP-2標的領域に結合するMASP-2阻害物質、または該MASP-2標的領域を妨害するMASP-2阻害物質を特定することができる。
抗MASP-2抗体
本発明のこの局面の一部の態様において、MASP-2阻害物質は、MASP-2依存性補体活性化系を阻害する抗MASP-2抗体を含む。本発明のこの局面において有用な抗MASP-2抗体は、任意の抗体産生哺乳動物に由来するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または組換え抗体を含み、多重特異的、キメラ、ヒト化、抗イディオタイプ、および抗体断片でもよい。抗体断片には、本明細書においてさらに説明されるように、Fab、Fab'、F(ab) 2、F(ab') 2、Fv断片、scFv断片、および単鎖抗体が含まれる。
いくつかの抗MASP-2抗体が文献において述べられており、一部は以下の表1に列挙される。以前に述べられた、これらの抗MASP-2抗体のMASP-2依存性補体活性化系を阻害する能力を、本明細書に記載のアッセイ法を用いてスクリーニングすることができる。例えば、本明細書の実施例10および11にさらに詳述されるように、MASP-2依存性補体活性化を遮断する抗ラットMASP-2 Fab2抗体が特定されている。MASP-2阻害物質として機能する抗MASP-2抗体が特定されたら、以下でさらに述べられるように、抗イディオタイプ抗体を作製するのに使用することができ、他のMASP-2結合分子を特定するのに使用することができる。
エフェクター機能が低下した抗MASP-2抗体
本発明のこの局面の一部の態様では、古典的補体経路の活性化から生じ得る炎症を緩和するために、抗MASP-2抗体は低下したエフェクター機能を有するる。IgG分子が古典的補体経路を誘発する能力は、この分子のFc部分内にあることが示されている(Duncan, A.R.. et al., Nature 332:738-740 1988)。この分子のFc部分が酵素切断によって除去されているIgG分子には、このエフェクター機能がない(Harlow, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1988を参照されたい)。従って、エフェクター機能を最小化する遺伝子操作Fc配列を有することによって、またはヒトIgG2もしくはIgG4アイソタイプにすることによって、この分子のFc部分を欠いた結果としてエフェクター機能が低下した抗体を作製することができる。
エフェクター機能が低下した抗体は、本明細書の実施例9に記載のように、ならびにJolliffe et al., Int'l Rev. Immunol. 10:241-250, 1993およびRodrigues et al., J. Immunol. 151:6954-6961, 1998にも記載のように、IgG重鎖のFc部分の標準的な分子生物学的操作によって作製することができる。エフェクター機能が低下した抗体はまた、補体を活性化しかつ/またはFc受容体と相互作用する能力が低下したヒトIgG2およびIgG4アイソタイプも含む(Ravetch, J. V., et al., Annu. Rev. Immunol. 9:457-492, 1991 ; Isaacs, J.D., et al., J. Immunol. 148:3062-3071, 1992; van de Winkel, J.G., et al., Immunol Today 14:215-221, 1993)。IgG2またはIgG4アイソタイプからなる、ヒトMASP-2に特異的なヒト化抗体または完全ヒト抗体は、Vaughan, T.J., et al., Nature Biotechnical 16:535-539, 1998に記載のように当業者に公知のいくつかの方法の1つによって作製することができる。
抗MASP-2抗体の作製
抗MASP-2抗体は、MASP-2ポリペプチド(例えば、完全長MASP-2)または抗原性MASP-2エピトープ含有ペプチド(例えば、MASP-2ポリペプチドの一部)を用いて作製することができる。免疫原性ペプチドは5アミノ酸残基と小さくてもよい。例えば、本発明の方法において有用な抗MASP-2抗体を誘導するために、SEQ ID NO:6の全アミノ酸配列を含むMASP-2ポリペプチドが用いられてもよい。タンパク質間相互作用に関与することが公知である特定のMASP-2ドメイン、例えば、CUBIおよびCUBIEGFドメイン、ならびにセリン-プロテアーゼ活性部位を含む領域が、実施例3に記載のように組換えポリペプチドとして発現され、抗原として用いられてもよい。さらに、MASP-2ポリペプチド(SEQ ID NO:6)の少なくとも6アミノ酸の部分を含むペプチドもまた、MASP-2抗体を誘導するのに有用である。MASP-2抗体を誘導するのに有用なMASP-2由来抗原のさらなる例を以下の表2に示した。抗体を産生させるのに用いられるMASP-2ペプチドおよびポリペプチドは、実施例5〜7においてさらに述べられるように、天然ポリペプチドまたは組換えペプチドもしくは合成ペプチドおよび触媒的に不活性な組換えポリペプチド、例えば、MASP-2Aとして単離されてもよい。本発明のこの局面の一部の態様において、抗MASP-2抗体は、実施例8および9に記載のように、ならびに以下でさらに述べられるようにトランスジェニックマウス系統を用いて得られる。
抗MASP-2抗体の作製において有用な抗原はまた、融合ポリペプチド、例えば、MASP-2またはその一部と免疫グロブリンポリペプチドまたはマルトース結合タンパク質との融合も含む。ポリペプチド免疫原は完全長分子またはその一部でもよい。ポリペプチド部分がハプテン様である場合には、このような部分は、免疫のために、都合よく、巨大分子担体(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、または破傷風トキソイド)に接合または連結されてもよい。
ポリクローナル抗体
MASP-2に対するポリクローナル抗体は、当業者に周知の方法を用いて、動物をMASP-2ポリペプチドまたはその免疫原性部分で免疫することによって調製することができる。例えば、Green et al.,「Production of Polyclonal Antisera」, Immunochemical Protocols(Manson, ed.), 105頁を参照されたい。実施例6においてさらに述べられる。MASP-2ポリペプチドの免疫原性は、ミネラルゲル、例えば、水酸化アルミニウムまたはフロイントアジュバント(完全もしくは不完全)、界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノールを含むアジュバントを用いて高まることができる。ポリクローナル抗体は、典型的には、動物、例えば、ウマ、ウシ、イヌ、ニワトリ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ヤギ、またはヒツジにおいて産生される。または、本発明において有用な抗MASP-2抗体はまた、ヒトに近い霊長類に由来してもよい。ヒヒにおいて診断および治療に有用な抗体を産生するための一般的な技法は、例えば、Goldenberg et al.,国際特許公報WO91/11465、およびLosman, M.J., et al., Int. J. Cancer 46:310, 1990において見られ得る。次いで、免疫学的に活性な抗体を含有する血清が、当技術分野において周知の標準的な手順を用いて、このような免疫動物の血液から生成される。
モノクローナル抗体
一部の態様において、MASP-2阻害物質は抗MASP-2モノクローナル抗体である。抗MASP-2モノクローナル抗体は、単一のMASP-2エピトープに対して作製されているので高度に特異的である。本明細書で使用する「モノクローナル」という修飾語は、抗体が実質的に均一な抗体集団から得られているという特徴を示し、特定の方法による抗体の作製を必要とすると解釈してはならない。モノクローナル抗体は、連続培養細胞株による抗体分子の作製を提供する任意の技法、例えば、Kohler, G., et al., Nature 256:495, 1975に記載のハイブリドーマ法を用いて得ることができる。または、モノクローナル抗体は、組換えDNA法(例えば、Cabillyに対する米国特許第4,816,567号を参照されたい)によって作製されてもよい。モノクローナル抗体は、Clackson, T., et al., Nature 352:624-628, 1991、およびMarks, J.D., et al., J. Mol Biol. 222:581-597, 1991に記載の技法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含む任意の免疫グロブリンクラスおよびその任意のサブクラスの抗体でよい。
例えば、モノクローナル抗体は、適切な哺乳動物(例えば、BALB/cマウス)に、MASP-2ポリペプチドまたはその一部を含む組成物を注射することによって得ることができる。予め決められた期間の後に、脾臓細胞をマウスから取り出し、細胞培地に懸濁する。次いで、脾臓細胞を不死細胞株と融合して、ハイブリドーマを形成する。形成されたハイブリドーマを細胞培養において増殖させ、MASP-2に対するモノクローナルを産生する能力についてスクリーニングする。抗MASP-2モノクローナル抗体の作製についてさらに述べている例を実施例7に示す(Current Protocols in Immunology, Vol.1., John Wiley & Sons, 2.5.1-2.6.7頁, 1991も参照されたい)。
抗原曝露に反応して特異的ヒト抗体を産生するように操作されたトランスジェニックマウスを用いて、ヒトモノクローナル抗体を得ることができる。この技法では、ヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座および軽鎖遺伝子座の要素を、内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座および軽鎖遺伝子座の標的破壊を含有する胚性幹細胞株に由来するマウスの系統に導入する。このトランスジェニックマウスは、ヒト抗原、例えば、本明細書に記載のMASP-2抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、実施例7においてさらに述べられるように従来のケーラー・ミルステイン技術を用いて、このような動物に由来するB細胞を適切なミエローマ細胞株と融合することによってヒトMASP-2抗体分泌ハイブリドーマを作製するのに使用することができる。ヒト免疫グロブリンゲノムを有するトランスジェニックマウスは、(例えば、Abgenix, Inc., Fremont, CA.およびMedarex, Inc., Annandale, N.J.から)市販されている。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、例えば、Green, L.L., et al., Nature Genet. 7:13, 1994; Lonberg, N., et al., Nature 368:856, 1994;およびTaylor, L.D., et al., Int. Immun. 6:579, 3994によって述べられている。
モノクローナル抗体は、十分に確立した様々な技法によってハイブリドーマ培養物から単離および精製することができる。このような単離法には、プロテインA Sepharoseを用いたアフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが含まれる(例えば、Coliganの2.7.1-2.7.12頁および2.9.1-2.9.3頁; Baines et al., 「Purification of Immunoglobulin G(IgG)」, Methods in Molecular Biology, The Humana Press, Inc., Vol.10, 79-104頁, 1992を参照されたい)。
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはファージ由来抗体が作製されたら、最初に特異的MASP-2結合について試験される。MASP-2に特異的に結合する抗体を検出するために、当業者に公知の様々なアッセイ法を使用することができる。例示的なアッセイ法には、標準的な方法によるウエスタンブロットまたは免疫沈降分析(例えば、Ausubel et al.,に記載)、免疫電気泳動、酵素結合免疫吸着測定法、ドットブロット、阻害アッセイ法または競合アッセイ法、およびサンドイッチアッセイ法(Harlow and Land, Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988に記載)が含まれる。MASP-2に特異的に結合する抗体が特定されたら、抗MASP-2抗体は、いくつかのアッセイ法の1つ、例えば、レクチン特異的C4切断アッセイ法(実施例2に記載)、C3b沈着アッセイ法(実施例2に記載)、またはC4b沈着アッセイ法(実施例2に記載)においてMASP-2阻害物質として機能する能力について試験される。
抗MASP-2モノクローナル抗体の親和性は当業者によって容易に決定することができる(例えば、Scatchard, A., NY Acad. Sci. 51:660-672, 1949を参照されたい)。一態様において、本発明の方法に有用な抗MASP-2モノクローナル抗体は、<100nM、好ましくは、<10nM、最も好ましくは<2nMの結合親和性でMASP-2に結合する。一部の態様において、本発明の方法において有用なMASP-2阻害モノクローナル抗体は、(I)(a)(i)SEQ ID NO:67の31〜35のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H1;および(ii)SEQ ID NO:67の50〜65のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H2;および(iii)SEQ ID NO:67の95〜102のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H3を含む、重鎖可変領域、ならびに、(b)(i)SEQ ID NO:70の24〜34のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L1;および(ii)SEQ ID NO:70の50〜56のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L2;および(iii)SEQ ID NO:70の89〜97のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L3を含む、軽鎖可変領域、または、(II)SEQ ID NO:67と少なくとも90%の同一性(例えば、SEQ ID NO:67と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO:70と少なくとも90%の同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する軽鎖可変領域を含むそれらの変種を含む、MASP-2阻害モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
キメラ/ヒト化抗体
本発明の方法において有用なモノクローナル抗体には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であるが、鎖の残りが、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同である、キメラ抗体、ならびに、このような抗体の断片が含まれる(Cabillyに対する米国特許第4,816,567号;およびMorrison, S.L., et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 81:6851-6855, 1984)。
本発明において有用なキメラ抗体の一形態は、ヒト化モノクローナル抗MASP-2抗体である。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの可変重鎖および可変軽鎖に由来する非ヒト(例えば、マウス)相補性決定領域(CDR)をヒト可変ドメインに導入することによって作製される。次いで、典型的に、非ヒト対応物のフレームワーク領域においてヒト抗体残基が代用される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含んでもよい。これらの改変は、抗体の性能にさらに磨きをかけるためになされる。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、および典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、Fvフレームワーク領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFvフレームワーク領域に対応する。ヒト化抗体はまた、任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含む。さらなる詳細については、Jones, P.T, et al., Nature 321:522-525, 1986; Reichmann, L., et al., Nature 332:323-329, 1988;およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596, 1992を参照されたい。
本発明において有用なヒト化抗体には、少なくともMASP-2結合CDR3領域を含むヒトモノクローナル抗体が含まれる。さらに、IgA抗体またはIgM抗体ならびにヒトIgG抗体を作製するためにFc部分が交換されてもよい。このようなヒト化抗体は、ヒトMASP-2を特異的に認識するが、ヒトにおいて抗体それ自体に対する免疫応答を引き起こさないので特に臨床において有用であると考えられる。その結果、このようなヒト化抗体は、ヒトでのインビボ投与に特に反復投与または長期投与が必要な場合にはより適している。
マウス抗MASP-2モノクローナル抗体からヒト化抗MASP-2抗体の作製の一例が本明細書の実施例6において示される。ヒト化モノクローナル抗体を作製する技法は、例えば、Jones, P.T, et al., Nature 321:522, 1986; Carter, P., et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:4285, 1992; Sandhu, J.S., Crit. Rev. Biotech. 12:437, 1992; Singer, I.I., et al., J. Immun. 150:2844, 1993; Sudhir (ed.), Antibody Engineering Protocols, Humana Press, Inc., 1995; Kelley, 「Engineering Therapeutic Antibodies」, Protein Engineering:Principles and Practice, Cleland et al.(eds.), John Wiley & Sons, Inc., 399-434頁, 1996;およびQueen, 1997に対する米国特許第5,693,762号にも記載されている。さらに、Protein Design Labs (Mountain View, CA)などの特定のマウス抗体領域からヒト化抗体を合成する商業的実体がある。
組換え抗体
抗MASP-2抗体は組換え法を用いて作製することもできる。例えば、ヒト抗体断片(VH、VL、Fv、Fd、Fab、またはF(ab') 2)を作製するようにヒト免疫グロブリン発現ライブラリー(例えば、Stratagene, Corp., La Jolla, CAから入手可能)を用いてヒト抗体を作製することができる。次いで、キメラ抗体の作製法に類似した技法を用いて、これらの断片を用いてヒト抗体全体を構築する。
抗イディオタイプ抗体
望ましい阻害活性を有する抗MASP-2抗体が特定されたら、これらの抗体を用いて、当技術分野において周知の技法を用いてMASP-2の一部に似ている抗イディオタイプ抗体を生成することができる。例えば、Greenspan, N.S., et al., FASEB J. 7:437, 1993を参照されたい。例えば、MASP-2に結合し、補体活性化に必要とされるMASP-2タンパク質相互作用を完全に阻害する抗体を用いて、MASP-2タンパク質上のMBL結合部位に似ている、従って、MASP-2の結合リガンド、例えば、MBLに結合し、これを中和する抗イディオタイプを生成することができる。
免疫グロブリン断片
本発明の方法において有用なMASP-2阻害物質は、インタクトな免疫グロブリン分子だけでなく、抗体断片から形成された、Fab、Fab'、F(ab) 2、F(ab') 2、およびFv断片、scFv断片、ダイアボディ、直鎖抗体、単鎖抗体分子、ならびに多重特異性抗体を含む周知の断片も包含する。
抗体とそのエピトープの結合には抗体分子の小さな部分であるパラトープしか関与しないことは当技術分野において周知である(例えば、Clark, W.R., The Experimental Foundations of Modern Immunology, Wiley & Sons, Inc., NY, 1986を参照されたい)。抗体のpFc'およびFc領域は古典的補体経路のエフェクターであるが、抗原結合に関与しない。pFc'領域が酵素切断されている抗体、またはpFc'領域なしで作製されている抗体はF(ab')2断片と呼ばれ、インタクトな抗体の抗原結合部位を両方とも保持する。単離されたF(ab') 2断片は、その2つの抗原結合部位のために二価モノクローナル断片と呼ばれる。同様に、Fc領域が酵素切断されている抗体、またはFc領域なしで作製されている抗体はFab断片と呼ばれ、インタクトな抗体分子の抗原結合部位のうちの1つを保持する。
抗体断片は、従来の方法による抗体全体のタンパク質加水分解、例えば、ペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体断片は、抗体をペプシンで酵素切断して、F(ab') 2と呼ばれる5S断片を得ることによって作製することができる。この断片は、3.5S Fab'一価断片を生じるチオール還元剤を用いてさらに切断することができる。任意で、ジスルフィド結合を切断する、スルフヒドリル基のブロック基を用いて、切断反応を行うことができる。代替として、ペプシンを用いた酵素切断によって、2つの一価Fab断片および1つのFc断片が直接、生成される。これらの方法は、例えば、Goldenbergに対する米国特許第4,331,647号; Nisonoff, A., et al., Arch. Biochem. Biophys. 89:230, 1960; Porter, R.R., Biochem, J. 73:119, 1959; Edelman, et al., Methods in Enzymology 1:422, Academic Press, 1967;ならびにColiganの2.8.1〜2.8.10頁および2.10.〜2.10.4頁に記載されている。
一部の態様において、FcとFcγ受容体が結合すると開始する古典的補体経路の活性化を回避するためには、Fc領域の無い抗体断片を使用することが好ましい。Fcγ受容体相互作用を回避するMoAbを作製することができる、いくつかの方法がある。例えば、モノクローナル抗体のFc領域をタンパク質分解酵素による部分消化(例えば、フィシン消化)を用いて化学的に除去し、それによって、例えば、抗原結合抗体断片、例えば、Fab断片またはF(ab) 2断片を生成することができる(Mariani, M., et al., Mol. Immunol. 28:69-71, 1991)。または、Fcγ受容体に結合しないヒトγ4 IgGアイソタイプを、本明細書に記載のようにヒト化抗体の構築中に使用することができる。Fcドメインの無い抗体、単鎖抗体、および抗原結合ドメインはまた、本明細書に記載の組換え法を用いて操作することもできる。
単鎖抗体断片
代替的に、重鎖Fv領域および軽鎖Fv領域が接続されている、MASP-2に特異的なペプチド単鎖結合分子を作製することができる。Fv断片は、単鎖抗原結合タンパク質(scFv)を形成するようにペプチドリンカーで接続されてもよい。これらの単鎖抗原結合タンパク質は、オリゴヌクレオチドで接続されている、VHおよびVLドメインをコードするDNA配列を含む、構造遺伝子を構築することによって調製される。構造遺伝子は発現ベクターに挿入され、その後に、大腸菌などの宿主細胞に導入される。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを有する1本のポリペプチド 鎖を合成する。scFvを作製するための方法は、例えば、Whitlow, et al.,「Methods:A Companion to Methods in Enzymology」2:97, 1991; Bird, et al., Science 242:423, 1988; Ladnerに対する米国特許第4,946,778号; Pack, P., et al., Bio/Technology 11:1271, 1993に記載されている。
例示的な例として、MASP-2特異的scFvは、インビトロでリンパ球をMASP-2ポリペプチドに曝露し、(例えば、固定化または標識されたMASP-2タンパク質またはペプチドを使用することによって)ファージベクター中または類似ベクター中の抗体ディスプレイライブラリーを選択することによって得ることができる。潜在的なMASP-2ポリペプチド結合ドメインを有するポリペプチドをコードする遺伝子は、ファージまたは細菌、例えば、大腸菌にディスプレイされたランダムペプチドライブラリーをスクリーニングによって得ることができる。これらのランダムペプチドディスプレイライブラリーを用いて、MASP-2と相互作用するペプチドをスクリーニングすることができる。このようなランダムペプチドディスプレイライブラリーを作製およびスクリーニングするための技法は当技術分野において周知である(Lardnerに対する米国特許第5,223,409号; Ladnerに対する米国特許第4,946,778号; Ladnerに対する米国特許第5,403,484号; Ladnerに対する米国特許第5,571,698号;およびKay et al., Phage Display of Peptides and Proteins Academic Press, Inc., 1996)。このようなライブラリーをスクリーニングするためのランダムペプチドディスプレイライブラリーおよびキットは、例えば、CLONTECH Laboratories, Inc.(Palo Alto, Calif.)、Invitrogen Inc.(San Diego, Calif.)、New England Biolabs, Inc.(Beverly, Mass.)、およびPharmacia LKB Biotechnology Inc.(Piscataway, N.J.)から市販されている。
本発明のこの局面において有用な抗MASP-2抗体断片の別の形態は、MASP-2抗原上のエピトープに結合し、MASP-2依存性補体活性化を阻害する、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識ユニット」)は、関心対象の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。このような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ鎖反応を用いて抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することによって調製される(例えば、Larrick et al., Methods; A Companion to Methods in Enzymology 2:106, 1991; Courtenay-Luck, 「Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies」, Monoclonal Antibodies:Production, Engineering and Clinical Application, Ritter et al., (eds.), 166頁, Cambridge University Press, 1995;およびWard et al.,「Genetic Manipulation and Expression of Antibodies」, Monoclonal Antibodies:Principles and Applications, Birch et al., (eds,), 137頁, Wiley-Liss, Inc., 1995を参照されたい)。
MASP-2依存性補体活性化を阻害するために、本明細書に記載のMASP-2抗体は、それを必要とする対象に投与される。一部の態様において、MASP-2阻害物質は、エフェクター機能が低下した、高親和性ヒトまたはヒト化モノクローナル抗MASP-2抗体である。
ペプチド阻害因子
本発明のこの局面の一部の態様において、MASP-2阻害物質は、MASP-2依存性補体活性化系を阻害する、単離された天然ペプチド阻害因子および合成ペプチド阻害因子を含む単離されたMASP-2ペプチド阻害因子を含む。本明細書で使用する「単離されたMASP-2ペプチド阻害因子」という用語は、MASP-2に結合することによって、レクチン経路の別の認識分子(例えば、MBL、H-フィコリン、M-フィコリン、もしくはL-フィコリン)への結合についてMASP-2と競合することによって、および/またはMASP-2と直接相互作用してMASP-2依存性補体活性化を阻害することによって、MASP-2依存性補体活性化を阻害するペプチドを指し、該ペプチドは実質的に純粋であり、かつ天然で一緒に見出され得る他の物質を現実的でかつ目的の用途に適した程度まで本質的に含まない。
ペプチド阻害因子は、タンパク質間相互作用および触媒部位を妨害するためにインビボで首尾よく用いられてきた。例えば、最近、LFA-1と構造上関連する接着分子に対するペプチド阻害因子が凝固障害における臨床使用に認可された(Ohman, E.M., et al., European Heart J. 16:50-55, 1995)。インテグリン依存性接着を阻止または妨害する短い直鎖ペプチド(<30アミノ酸)が述べられている(Murayama, O., et al., J. Biochem. 120:445-51, 1996)。インテグリン依存性接着を遮断するために、長さが25〜200アミノ酸残基に及ぶ長いペプチドも首尾よく用いられてきた(Zhang, L., et al., J. Biol. Chem. 271(47):29953-57, 1996)。一般的に、長いペプチド阻害因子は短いペプチドよりも高い親和性および/またはゆっくりとしたオフレート(off-rate)を有し、従って、強力な阻害因子になり得る。環式ペプチド阻害因子もまたヒト炎症疾患治療のためのインビボで有効なインテグリン阻害因子であると示されている(Jackson, D.Y., et al., J. Med. Chem. 40:3359-68, 1997)。環式ペプチドを作製する方法の1つは、ペプチドの末端アミノ酸がシステインであり、それによって、末端アミノ酸間のジスルフィド結合によってペプチドが環状形態で存在することが可能になるペプチド合成を伴う。この環状形態は、造血性新生物の治療のためにインビボでの親和性および半減期を改善することが示されている(例えば、Larsonに対する米国特許第6,649,592号)。
合成MASP-2ペプチド阻害因子
本発明のこの局面の方法において有用なMASP-2阻害ペプチドは、MASP-2機能に重要な標的領域を模倣するアミノ酸配列によって例示される。本発明の方法の実施において有用な阻害ペプチドはサイズが約5アミノ酸〜約300アミノ酸に及ぶ。表3は、本発明のこの局面の実施において有用であり得る例示的な阻害ペプチドのリストを提供する。例えば、レクチン特異的C4切断アッセイ法(実施例2に記載)およびC3b沈着アッセイ法(実施例2に記載)を含む、いくつかのアッセイ法の1つにおいて、候補MASP-2阻害ペプチドがMASP-2阻害物質として機能する能力を試験することができる。
一部の態様において、MASP-2阻害ペプチドはMASP-2ポリペプチドに由来し、完全長成熟MASP-2タンパク質(SEQ ID NO:6)、またはMASP-2タンパク質の特定のドメイン、例えば、CUBIドメイン(SEQ ID NO:8)、CUBIEGFドメイン(SEQ ID NO:9)、EGFドメイン(SEQ ID NO:11)、およびセリンプロテアーゼドメイン(SEQ ID NO:12)より選択される。前記のように、CUBEGFCUBII領域は二量体化およびMBLとの結合に必要なことが示されている(Thielens et al., 前記)。特に、MASP-2のCUBIドメインにあるペプチド配列TFRSDYN(SEQ ID NO:16)は、Asp105からGly105へのホモ変異を有し、その結果、MBL複合体からMASP-2が失われるヒトを特定した研究においてMBLとの結合に関与することが示されている(Stengaard-Pedersen, K., et al., New England J. Med. 349:554-560, 2003)。
一部の態様において、MASP-2阻害ペプチドは、MASP-2に結合し、レクチン補体経路に関与するレクチンタンパク質に由来する。マンナン結合レクチン(MBL)、L-フィコリン、M-フィコリン、およびH-フィコリンを含む、この経路に関与する、いくつかの異なるレクチンが特定されている(Ikeda, K., et al., J. Biol. Chem. 262:7451-7454, 1987; Matsushita, M., et al., J. Exp. Med. 176:1497-2284, 2000; Matsushita, M., et al., J. Immunol. 168:3502-3506, 2002)。これらのレクチンは、それぞれが炭水化物認識ドメインを有するN末端コラーゲン様繊維を有するホモ三量体サブユニットのオリゴマーとして血清中に存在する。これらの異なるレクチンはMASP-2に結合することが示されており、レクチン/MASP-2複合体はタンパク質C4およびC2を切断することによって補体を活性化する。H-フィコリンは、24アミノ酸のアミノ末端領域、11個のGly-Xaa-Yaaリピートを有するコラーゲン様ドメイン、12アミノ酸のネック(neck)ドメイン、および207アミノ酸のフィブリノゲン様ドメインを有する(Matsushita, M., et al., J. Immunol. 168:3502-3506, 2002)。H-フィコリンはGlcNAcに結合し、ネズミチフス菌(S.typhimurium)、S.ミネソタ(S.minnesota)、および大腸菌に由来するLPSでコーティングされたヒト赤血球を凝集させる。H-フィコリンはMASP-2およびMAp19に結合し、レクチン経路を活性化することが示されている。すなわち、L-フィコリン/P35もまたGlcNAcに結合し、ヒト血清中のMASP-2およびMAp19に結合することが示されている。この複合体はレクチン経路を活性化することが示されている(Matsushita, M., et al., J. Immunol. 164:2281, 2000)。従って、本発明において有用なMASP-2阻害ペプチドは、MBLタンパク質(SEQ ID NO:21)、H-フィコリンタンパク質(GenBankアクセッション番号NM_173452)、M-フィコリンタンパク質(GenBankアクセッション番号O00602)、およびL-フィコリンタンパク質(GenBankアクセッション番号NM_015838)より選択される少なくとも5個のアミノ酸の領域を含んでもよい。
より具体的には、科学者達は、MBL上のMASP-2結合部位が、MBPのコラーゲン様ドメインのC末端部分にあるヒンジとネックとの間にある12個のGly-X-Yトリプレット
内にあることを特定した(Wallis, R. et al., J. Biol Chem. 279:14065, 2004)。このMASP-2結合部位領域はまたヒトH-フィコリンおよびヒトL-フィコリンにおいても高度に保存されている。アミノ酸配列「OGK-X-GP」(SEQ ID NO:22)を含む、3種類全てのレクチンタンパク質において存在し、文字「O」がヒドロキシプロリンを表しかつ文字「X」が疎水残基である、コンセンサス結合部位が記載されている(Wallis et al., 2004, 前記)。従って、一部の態様において、本発明のこの局面において有用なMASP-2阻害ペプチドは長さが少なくとも6個のアミノ酸であり、SEQ ID NO:22を含む。アミノ酸配列
を含む、MBLに由来するペプチドは、インビトロでMASP-2に結合することが示されている(Wallis, et al., 2004, 前記)。MASP-2との結合を増強するために、天然のMBLタンパク質において見られるような三重らせんの形成を増強する、各末端に2個のGPOトリプレットが隣接するペプチドを合成することができる
(Wallis, R., et al., J. Biol. Chem. 279:14065, 2004においてさらに説明される)。
MASP-2阻害ペプチドはまた、H-フィコリンのコンセンサスMASP-2結合領域に由来する配列
を含む、ヒトH-フィコリンに由来してもよい。L-フィコリンのコンセンサスMASP-2結合領域に由来する配列
を含む、ヒトL-フィコリン由来ペプチドも含まれる。
MASP-2阻害ペプチドはまた、抗トロンビンIIIのC末端部分と連結したC4切断部位である
などのC4切断部位に由来してもよい(Glover, G.I., et al., Mol. Immunol. 25:1261(1988))。
(表3)例示的なMASP-2阻害ペプチド
注:文字「O」はヒドロキシプロリンを表す。文字「X」は疎水残基である。
C4切断部位に由来するペプチドならびにMASP-2セリンプロテアーゼ部位を阻害する他のペプチドは、不可逆的プロテアーゼインヒビターになるように化学的に改変することができる。例えば、適切な改変は、C末端、Asp、もしくはGluにおける、または官能側鎖に付加されるハロメチルケトン(Br、Cl、I、F);アミノ基または他の官能側鎖にあるハロアセチル(または他のαハロアセチル)基;アミノ末端もしくはカルボキシ末端または官能側鎖にあるエポキシド含有基またはイミン含有基;あるいはアミノ末端もしくはカルボキシ末端または官能側鎖にあるイミデートエステルを含んでもよいが、必ずしもこれに限定されない。このような改変を行えば、ペプチドの共有結合によって酵素を永久に阻害するという利点が得られると考えられる。これによって有効量が少なくなる可能性があり、かつ/またはペプチド阻害因子の投与頻度の低下が必要になる可能性がある。
前記の阻害ペプチドに加えて、本発明の方法において有用なMASP-2阻害ペプチドには、本明細書に記載のように得られた抗MASP-2 MoAbのMASP-2結合CDR3領域を含有するペプチドが含まれる。ペプチド合成において使用するためのCDR領域の配列は、当技術分野において公知の方法によって決定することができる。重鎖可変領域は、一般的に長さが100〜150アミノ酸のペプチドである。軽鎖可変領域は、一般的に長さが80〜130アミノ酸のペプチドである。重鎖可変領域内および軽鎖可変領域内のCDR配列には、当業者によって容易に配列決定され得る、たった約3〜25アミノ酸の配列が含まれる。
当業者であれば、MASP-2阻害ペプチドの実質的に相同なバリエーションもMASP-2阻害活性を示すことを認めると考えられる。例示的なバリエーションには、本ペプチドのカルボキシ末端部分またはアミノ末端部分に挿入、欠失、交換、および/またはさらなるアミノ酸を有するペプチド、ならびにその混合物が含まれるが、必ずしもこれに限定されない。従って、MASP-2阻害活性を有する相同なペプチドは本発明の方法において有用だとみなされる。記載のペプチドはまた、重複モチーフおよび保存的置換による他の改変も含んでよい。保存的変種は本明細書の他の場所において説明され、あるアミノ酸を、類似した電荷、サイズ、または疎水性などのアミノ酸と交換することを含む。
インタクトなタンパク質中のセグメントにさらによく似せるために、MASP-2阻害ペプチドは、溶解度を増加するように、および/または正電荷もしくは負電荷を最大にするように改変されてもよい。誘導体は、望ましいMASP-2阻害特性を機能的に保持する限り、本明細書において開示されたペプチドの正確な一次アミノ酸構造を有してもよく、有さなくてもよい。改変は、一般的に公知である20種類のアミノ酸の1つまたは別のアミノ酸を用いたアミノ酸置換、補助的な望ましい特徴、例えば、酵素分解に対する耐性を有する誘導体化アミノ酸もしくは置換アミノ酸またはDアミノ酸を用いたアミノ酸置換、あるいは天然コンフォメーションおよび1個のアミノ酸、複数のアミノ酸、またはペプチドの機能を模倣する別の分子もしくは化合物、例えば、炭水化物を用いた置換;アミノ酸欠失;一般的に公知である20種類のアミノ酸の1つまたは別のアミノ酸を用いたアミノ酸挿入、補助的な望ましい特徴、例えば、酵素分解に対する耐性を有する誘導体化アミノ酸もしくは置換アミノ酸またはDアミノ酸を用いたアミノ酸挿入、あるいは天然コンフォメーションおよび1個のアミノ酸、複数のアミノ酸、またはペプチドの機能を模倣する別の分子もしくは化合物、例えば、炭水化物を用いた置換;あるいは天然コンフォメーション、電荷分布、および親ペプチドの機能を模倣する別の分子または化合物、例えば、炭水化物または核酸モノマーを用いた置換を含んでもよい。ペプチドはまたアセチル化またはアミド化によって改変されてもよい。
誘導体阻害ペプチドの合成は、ペプチド生合成、炭水化物生合成などの公知の技法に頼ってもよい。出発点として、当業者は、関心対象のペプチドのコンフォメーションを決定するために適切なコンピュータプログラムに頼ることがある。本明細書において開示されたペプチドのコンフォメーションが分かったら、当業者は、親ペプチドの基本コンフォメーションおよび電荷分布を保持するが、親ペプチドに存在しない特徴または親ペプチドに見られる特徴以上に強化された特徴を有し得る誘導体を作製するために、合理的設計のやり方で、1つまたは複数の部位に、どんな種類の置換を加えることができるかを決定することができる。候補誘導体分子が特定されたら、MASP-2阻害物質として機能するかどうか判定するために、本明細書に記載のアッセイ法を用いて誘導体を試験することができる。
MASP-2阻害ペプチドのスクリーニング
MASP-2の重要な結合領域の分子構造を模倣し、MASP-2の補体活性を阻害するペプチドを生成およびスクリーニングするために、分子モデリングおよび合理的分子設計も使用することができる。以前に述べられたように、モデリングに用いられる分子構造には、抗MASP-2モノクローナル抗体のCDR領域、ならびに二量体化に必要な領域、MBLとの結合に関与する領域、およびセリンプロテアーゼ活性部位を含む、MASP-2機能に重要なことが公知の標的領域が含まれる。ある特定の標的に結合するペプチドを特定する方法は当技術分野において周知である。例えば、ある特定の分子に結合する巨大分子構造、例えば、ペプチドの新規構築のために分子インプリンティングを使用することができる。例えば、Shea, K.J.,「Molecular Imprinting of Synthetic Network Polymers:The De Novo synthesis of Macromolecular Binding and Catalytic Sties」, TRIP 2(5) 1994を参照されたい。
例示的な例として、MASP-2結合ペプチドの模倣物を調製する方法の1つは以下の通りである。公知のMASP-2結合ペプチド、またはMASP-2阻害を示す抗MASP-2抗体の結合領域の機能的モノマー(鋳型)が重合される。次いで、鋳型は取り出され、その後に、鋳型によって残された空隙の中に別のクラスのモノマーが重合されて、鋳型に類似した、1つまたは複数の望ましい特性を示す新たな分子が得られる。このようにペプチドを調製することに加えて、MASP-2阻害物質である他のMASP-2結合分子、例えば、多糖、ヌクレオシド、薬物、核タンパク質、リポタンパク質、炭水化物、糖タンパク質、ステロイド、脂質、および他の生物学的に活性な材料も調製することができる。この方法は、天然対応物よりも安定性が高い多種多様な生物学的模倣物の設計に有用である。なぜなら、これらの生物学的模倣物は、典型的に、機能的モノマーのフリーラジカル重合によって調製され、その結果、非生分解性バックボーンを有する化合物が得られるからである。
ペプチド合成
MASP-2阻害ペプチドは、当技術分野において周知の技法、例えば、J. Amer. Chem. Soc. 85:2149-2154, 1963においてMerrifieldによって最初に述べられた固相合成技法を用いて調製することができる。自動合成は、例えば、Applied Biosystems 431 A Peptide Synthesizer(Foster City, Calif.)を用いて、製造業者により提供される説明書に従って実現することができる。他の技法は、例えば、Bodanszky, M., et al., Peptide Synthesis, 第二版, John Wiley & Sons, 1976ならびに当業者に公知の他の参照文献において見られ得る。
ペプチドはまた、当業者に公知の標準的な遺伝子工学的技法を用いて調製することもできる。例えば、ペプチドは、ペプチドをコードする核酸を発現ベクターに挿入し、DNAを発現させ、必要とされるアミノ酸の存在下でDNAをペプチドに翻訳することによって酵素的に作製することができる。次いで、ペプチドを、クロマトグラフィー法もしくは電気泳動法を用いて精製するか、またはペプチドをコードする配列を、担体タンパク質をコードする核酸配列とインフレーム(in phase)で発現ベクターに挿入することによって、ペプチドと融合し、後で切断することができる担体タンパク質によって精製する。融合タンパク質ペプチドは、クロマトグラフィー法、電気泳動法、または免疫学的技法(例えば、抗体を介した樹脂と担体タンパク質との結合)を用いて単離されてもよい。ペプチドは、化学的方法論を用いて、または酵素的に、例えば、加水分解酵素によって切断することができる。
本発明の方法において有用なMASP-2阻害ペプチドはまた、従来技法に従って組換え宿主細胞において産生することもできる。MASP-2阻害ペプチドをコードする配列を発現させるために、ペプチドをコードする核酸分子を、発現ベクター内で転写発現を制御する調節配列に機能的に連結し、次いで、宿主細胞に導入しなければならない。プロモーターおよびエンハンサーなどの転写調節配列に加えて、発現ベクターは、翻訳調節配列、および発現ベクターを有する細胞の選択に適したマーカー遺伝子を含んでもよい。
MASP-2阻害ペプチドをコードする核酸分子は、「遺伝子合成機(gene machine)」によりホスホルアミダイト法などのプロトコールを用いて合成することができる。遺伝子または遺伝子断片の合成などの適用に化学合成二本鎖DNAが必要である場合には、それぞれの相補鎖が別々に作製される。短い遺伝子(60〜80塩基対)の作製は技術的に簡単であり、相補鎖を合成し、次いで、これらをアニーリングすることによって達成することができる。さらに大きな遺伝子を作製するために、合成遺伝子(二本鎖)がモジュール形式で、長さが20〜100ヌクレオチドの一本鎖断片から組み立てられる。ポリヌクレオチド合成に関する総説については、例えば、Glick and Pasternak,「Molecular Biotechnology, Principles and Applications of Recombinant DNA」, ASM Press, 1994; Itakura, K., et al., Annu. Rev, Biochem. 53:323, 1984;およびClimie, S., et al., Proc. Nal'l Acad. Sci. USA 87:633, 1990を参照されたい。
低分子阻害因子
一部の態様において、MASP-2阻害物質は、低分子量を有する天然物質および合成物質を含む低分子阻害因子、例えば、ペプチド、ペプチドミメティック、および非ペプチド阻害因子(オリゴヌクレオチドおよび有機化合物を含む)である。MASP-2低分子阻害因子は、抗MASP-2抗体の可変領域の分子構造に基づいて作製することができる。
低分子阻害因子はまた、コンピュータ計算薬物設計(computational drug design)を用いて、MASP-2結晶構造に基づいて設計および生成されてもよい(Kuntz I.D., et al., Science 257:1078, 1992)。ラットMASP-2の結晶構造は説明されている(Feinberg, H., et al., EMBO J. 22:2348-2359, 2003)。Kuntzらに記載の方法を用いて、MASP-2に結合すると予想される低分子構造のリストを出力するコンピュータプログラム、例えば、DOCKの入力として、MASP-2結晶構造座標が用いられる。このようなコンピュータプログラムの使用は当業者に周知である。例えば、プログラムDOCKを用いて、CambridgeCrystallographicデータベースに見られる化合物と酵素結合部位とのフィット(fit)を評価することによってHIV-1プロテアーゼインヒビターである独特の非ペプチドリガンドを特定するために、HIV-1プロテアーゼインヒビターの結晶構造が用いられた(Kuntz, I.D., et al., J. Mol. Biol. 161:269-288, 1982; DesJarlais, R.L., et al., PNAS 87:6644-6648, 1990)。
コンピュータ計算方法によって潜在的なMASP-2阻害因子として特定された低分子構造のリストは、MASP-2結合アッセイ法、例えば、実施例10に記載のMASP-2結合アッセイ法を用いてスクリーニングされる。次いで、MASP-2に結合すると見出された低分子は、MASP-2依存性補体活性化を阻害するかどうか判定するために、機能アッセイ法、例えば、実施例2に記載の機能アッセイ法においてアッセイされる。
MASP-2可溶性受容体
他の適切なMASP-2阻害物質は、当業者に公知の技法を用いて作製することができるMASP-2可溶性受容体を含むと考えられる。
MASP-2の発現阻害因子
本発明のこの局面の別の態様において、MASP-2阻害物質は、MASP-2依存性補体活性化を阻害することができるMASP-2発現阻害因子である。本発明のこの局面の実施において、代表的なMASP-2発現阻害因子には、MASP-2アンチセンス核酸分子(例えば、アンチセンスmRNA、アンチセンスDNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド)、MASP-2リボザイム、およびMASP-2 RNAi分子が含まれる。
アンチセンスRNA分子およびDNA分子は、MASP-2 mRNAにハイブリダイズし、MASP-2タンパク質の翻訳を阻止することによってMASP-2 mRNAの翻訳を直接遮断するように働く。アンチセンス核酸分子はMASP-2の発現を妨害することができるという条件で、多数の異なるやり方で構築されてもよい。例えば、アンチセンス核酸分子は、MASP-2 cDNA(SEQ ID NO:4)のコード領域(またはその一部)の相補鎖を転写できるように、正常な転写方向に対して、MASP-2 cDNA(SEQ ID NO:4)のコード領域(またはその一部)を逆にすることによって構築することができる。
アンチセンス核酸分子は、通常、1つの標的遺伝子または複数の標的遺伝子の少なくとも一部と実質的に同一である。しかしながら、発現を阻害するために核酸は完全に同一である必要はない。一般的に、高い相同性を用いて、短いアンチセンス核酸分子の使用を補うことができる。最小パーセント同一性は典型的には約65%超であるが、さらに高いパーセント同一性によって、内因性配列の発現がより効果的に抑制される場合がある。約80%超のかなり高いパーセント同一性が典型的に好ましいが、約95%〜完全同一性が典型的に最も好ましい。
アンチセンス核酸分子は、標的遺伝子と同じイントロンパターンまたはエキソンパターンを有する必要はない。標的遺伝子の非コードセグメントが、標的遺伝子発現のアンチセンス抑制の実現の点でコードセグメントと等しく有効な場合がある。少なくとも約8個かそれくらいのヌクレオチドのDNA配列がアンチセンス核酸分子として用いられ得るが、さらに長い配列が好ましい。本発明において、有用なMASP-2阻害物質の代表例は、SEQ ID NO:4に示された核酸配列からなるMASP-2 cDNAの相補鎖と少なくとも90パーセント同一のアンチセンスMASP-2核酸分子である。SEQ ID NO:4に示された核酸配列は、SEQ ID NO:5に示されたアミノ酸配列からなるMASP-2タンパク質をコードする。
MASP-2 mRNAに結合するアンチセンスオリゴヌクレオチドの標的化は、MASP-2タンパク質合成のレベルを低下させるのに用いられ得る別の機構である。例えば、ポリガラクツロナーゼおよびムスカリン2型アセチルコリン受容体の合成は、それぞれのmRNA配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによって阻害される(Chengに対する米国特許第5,739,119号、およびShewmakerに対する米国特許第5,759,829号)。さらに、アンチセンス阻害の例は、核タンパク質サイクリン、多罪耐性遺伝子(MDG1)、ICAM-1、E-セレクチン、STK-1、線条体GABAA受容体、およびヒトEGFを用いて証明されている(例えば、Baracchiniに対する米国特許第5,801,154号; Bakerに対する米国特許第5,789,573号; Considineに対する米国特許第5,718,709号;およびReubensteinに対する米国特許第5,610,288号を参照されたい)。
どのオリゴヌクレオチドが本発明において有用であるか当業者が判断することができる系が述べられている。この系は、転写物内の配列の到達性の指標としてRnaseH切断を用いて標的mRNA内の適切な部位をプローブすることを伴う。Scherr, M., et al., Nucleic Acids Res. 25:5079-5085, 1998; Lloyd, et al., Nucleic Acids Res. 29:3665-3673, 2001。RNAseHに対して脆弱な部位を作製するために、MASP-2転写物のある特定の領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの混合物が、MASP-2を発現する細胞抽出物、例えば、肝細胞に添加され、ハイブリダイズされる。この方法は、宿主細胞内の標的mRNAとの特異的結合を減少させるかまたは防止する二量体、ヘアピン、または他の二次構造を形成する相対的な能力に基づいて、アンチセンス組成物の最適配列選択を予測することができるコンピュータ支援配列選択と組み合わせることができる。これらの二次構造分析および標的部位選択の検討は、OLIGOプライマー分析ソフトウェア(Rychlik, I., 1997)およびBLASTN 2.0.5アルゴリズムソフトウェア(Altschul, S.F., et al., Nucl. Acids Res. 25:3389-3402, 1997)を用いて行うことができる。標的配列に対するアンチセンス化合物は好ましくは長さが約8〜約50のヌクレオチドを含む。約9〜約35などのヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドが特に好ましい。本発明者らは、アンチセンスオリゴヌクレオチドに基づく本発明の方法の実施のために、9〜35ヌクレオチド(すなわち、長さが9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35塩基ほど)の範囲内の全てのオリゴヌクレオチド組成物が非常に好ましいことを意図する。MASP-2 mRNAの非常に好ましい標的領域は、AUG翻訳開始コドンにあるかまたはAUG翻訳開始コドンの近くにある標的領域、およびmRNAの5'領域に実質的に相補的なこれらの配列、例えば、MASP-2遺伝子ヌクレオチド配列(SEQ ID NO:4)の-10〜+10領域である。例示的なMASP-2発現阻害因子を表4に示した。
前述のように、本明細書で使用する「オリゴヌクレオチド」という用語は、リボ核酸(RNA)もしくはデオキシリボ核酸(DNA)またはその模倣物のオリゴマーまたはポリマーを指す。この用語はまた、天然ヌクレオチド、糖、および共有結合のヌクレオシド間(バックボーン)結合からなるオリゴヌクレオ塩基、ならびに非天然の改変を有するオリゴヌクレオチドをカバーする。これらの改変があると、天然オリゴヌクレオチドでは提供されない、ある特定の望ましい特性、例えば、低い毒性、ヌクレアーゼ分解に対する高い安定性、および多量の細胞取り込みを導入することが可能になる。例示的な態様において、本発明のアンチセンス化合物は、リン酸置換基がホスホロチオエートによって置換されている、アンチセンスオリゴヌクレオチドの寿命を延ばすホスホジエステルバックボーン改変だけ天然DNAと異なる。同様に、オリゴヌクレオチドの一端または両端は、核酸鎖内の隣接する塩基対の間にインターカレートする1種類または複数種のアクリジン誘導体で置換されてもよい。
アンチセンスに代わる別のものは「RNA干渉」(RNAi)の使用である。二本鎖RNA(dsRNA)はインビボで哺乳動物において遺伝子サイレンシングを誘発することができる。RNAiおよびコサプレッションの天然機能は、レトロトランスポゾンなどの可動遺伝要素、および活性化した場合に宿主細胞内で異常なRNAまたはdsRNAを産生するウイルスによる侵入からのゲノムの保護であるように思われる(例えば、Jensen, J., et al., Nat. Genet. 27:209-12, 1999を参照されたい)。二本鎖RNA分子は、それぞれの長さが約19〜25(例えば、19〜23ヌクレオチド)である、二本鎖RNA分子を形成することができる2本のRNA鎖を合成することによって調製することができる。例えば、本発明の方法において有用なdsRNA分子は、表4に列挙された配列およびその相補鎖に対応するRNAを含んでもよい。好ましくは、少なくとも1本のRNA鎖は1〜5ヌクレオチドの3'オーバーハングを有する。合成されたRNA鎖は、二本鎖分子を形成する条件下で組み合わされる。このRNA配列は、25ヌクレオチドまたはそれ未満の全長でSEQ ID NO:4の少なくとも8個のヌクレオチド部分を含んでもよい。ある特定の標的に対するsiRNA配列の設計は当技術分野における通常の技術の範囲内である。siRNA配列を設計し、少なくとも70%の発現ノックダウンを保証する商業サービスが利用可能である(Qiagen, Valencia, Calif)。
dsRNAは薬学的組成物として投与され、核酸が望ましい標的細胞に導入される公知の方法によって実施することができる。一般的に用いられる遺伝子導入法には、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、およびウイルス法が含まれる。このような方法は、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., 1993に開示される。
MASP-2の量および/または生物学的活性を減少させるために、リボザイム、例えば、MASP-2 mRNAを標的とするリボザイムも利用することができる。リボザイムは、リボザイム配列に完全または部分的に相同な配列を有する核酸分子を切断することができる触媒RNA分子である。標的RNAと特異的に対になり、特定の位置のホスホジエステルバックボーンを切断し、それによって、標的RNAを機能的に不活化するRNAリボザイムをコードするリボザイムトランスジーンを設計することができる。この切断を実施する際に、リボザイムそのものは変化せず、従って、再利用し、他の分子を切断することができる。アンチセンスRNAの中にリボザイム配列を含めると、RNA切断活性がアンチセンスRNAに付与され、それによって、アンチセンス構築物の活性が増大する。
本発明の実施において有用なリボザイムは、典型的には、標的MASP-2 mRNAの少なくとも一部とヌクレオチド配列において相補的な、少なくとも約9個のヌクレオチドのハイブリダイズ領域、および標的MASP-2 mRNAを切断するように適合された触媒領域を含む(一般的に、EPA No.0321201; WO88/04300; Haseloff, J., et al., Nature 534:585-591, 1988; Fedor, M.J., et al., Proc. Natl. Acad, Sci. USA 87:1668-1672, 1990; Cech, T.R., et al., Ann. Rev, Biochem. 55:599-629, 1986を参照されたい)。
リボザイムは、リボザイム配列を組み込んだRNAオリゴヌクレオチドの形で細胞に直接、標的化されてもよく、望ましいリボザイムRNAをコードする発現ベクターとして細胞に導入されてもよい。リボザイムは、アンチセンスポリヌクレオチドについて述べられたやり方とほとんど同じやり方で使用および適用することができる。
本発明の方法において有用なアンチセンスRNAおよびDNA、リボザイム、ならびにRNAi分子は、DNA分子およびRNA分子を合成するための当技術分野において公知の任意の方法によって調製することができる。これらには、当技術分野において周知のオリゴデオキシリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチドを化学合成するための技法、例えば、固相ホスホルアミダイト化学合成が含まれる。または、RNA分子は、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のインビトロ転写およびインビボ転写によって作製されてもよい。このようなDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターなどの適切なRNAポリメラーゼプロモーターを組み込んだ多種多様なベクターに組み込まれてもよい。または、使用されるプロモーターに応じて構成的または誘導的にアンチセンスRNAを合成するアンチセンスcDNA構築物を細胞株に安定して導入することができる。
安定性を増大させかつ半減期を延長する手段として、DNA分子の様々な周知の改変を導入することができる。有用な改変には、分子の5'末端および/もしくは3'末端へのリボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドの隣接配列の付加、またはオリゴデオキシリボヌクレオチドバックボーン内のホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエートもしくは2'O-メチルの使用が含まれるが、これに限定されない。
VI.薬学的組成物および送達方法
投薬
別の局面において、本発明は、治療的有効量のMASP-2阻害物質および薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含む、本明細書において開示された疾患または状態に罹患している対象におけるMASP-2依存性補体活性化の副作用を阻害するための組成物を提供する。MASP-2依存性補体活性化に関連した状態を治療または寛解させるために、MASP-2阻害物質を、治療上有効な用量で、それを必要とする対象に投与することができる。治療上有効な用量は、疾患または状態に関連した症状を寛解させるのに十分なMASP-2阻害物質の量を指す。
MASP-2阻害物質の毒性および治療有効性は、実験動物モデル、例えば、実施例1に記載のヒトMASP-2トランスジーンを発現するマウスMASP-2-/-マウスモデルを用いた標準的な薬学的手順によって求めることができる。このような動物モデルを用いて、NOAEL(無毒性量)およびMED(最小有効量)を標準的な方法を用いて求めることができる。NOAEL効果とMED効果との用量比が治癒比であり、比NOAEL/MEDとして表される。大きな治癒比または指数を示すMASP-2阻害物質が最も好ましい。細胞培養アッセイ法および動物研究から得られたデータを、ヒトでの使用のために、ある範囲の投与量の処方において使用することができる。MASP-2阻害物質の投与量は、好ましくは、毒性がほとんどない、または毒性がない、MEDを含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。
任意の化合物製剤について、動物モデルを用いて、治療上有効な用量を評価することができる。例えば、MEDを含む循環血漿中濃度範囲に達する用量を動物モデルにおいて処方することができる。血漿中のMASP-2阻害物質の定量レベルはまた、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
毒性研究に加えて、有効投与量はまた、生きている対象に存在するMASP-2タンパク質の量およびMASP-2阻害物質の結合親和性に基づいて評価されてもよい。正常ヒト対象におけるMASP-2レベルは500ng/mlの範囲内の低レベルで血清中に存在し、ある特定の対象におけるMASP-2レベルは、Moller-Kristensen M., et al., J. Immunol Methods 282:159-167, 2003に記載の定量MASP-2アッセイ法を用いて決定することができる。
一般的に、MASP-2阻害物質を含む、投与される組成物の投与量は、対象の年齢、体重、身長、性別、全身状態(general medical condition)、および既往歴などの要因に応じて変化する。例示として、抗MASP-2抗体などのMASP-2阻害物質は、約0.010〜10.0mg/kg対象体重、好ましくは0.010〜1.0mg/kg対象体重、より好ましくは0.010〜0.1mg/kg対象体重の投与量範囲内で投与することができる。一部の態様において、組成物は、抗MASP-2抗体およびMASP-2阻害ペプチドの組み合わせを含む。
ある特定の対象における本発明のMASP-2阻害組成物および方法の治療有効性、ならびに適切な投与量は、当業者に周知の補体アッセイ法に従って決定することができる。補体は非常に多くの特異的産物を生成する。過去十年間に、小さな活性化断片C3a、C4a、およびC5a、ならびに大きな活性化断片iC3b、C4d、Bb、およびsC5b-9を含む、これらの活性化産物の大部分について高感度かつ特異的なッセイが開発され、市販されている。これらのアッセイ法の大部分は、断片の上に露出しているが、新抗原(ネオ抗原)が形成される天然タンパク質の上には露出していない新抗原(ネオ抗原)と反応するモノクローナル抗体を利用する。このために、これらのアッセイ法は非常に簡単かつ特異的である。大部分はELISA技術に頼っているが、C3aおよびC5aの場合は、ラジオイムノアッセイ法が依然として用いられる場合もある。これらの後者のアッセイ法は、処理されていない断片、および循環中に見られる主な形態である、これらの「desArg」断片を両方とも測定する。処理されていない断片およびC5adesArgは細胞表面受容体と結合することによって迅速に切断され、従って、非常に低い濃度で存在する。これに対して、C3adesArgは細胞に結合せず、血漿中に蓄積する。C3a測定は、高感度の経路依存的な補体活性化指標を提供する。第二経路活性化はBb断片を測定することによって評価することができる。膜侵襲経路活性化の液相産物であるsC5b-9の検出は、補体が最後まで活性化されているという証拠を提供する。レクチン経路および古典経路はいずれも同じ活性化産物であるC4aおよびC4dを生成するので、これらの2つの断片を測定しても、これらの2つの経路のどちらが活性化産物を生成したかという情報は得られない。
MASP-2依存性補体活性化の阻害は、本発明の方法によるMASP-2阻害物質の投与の結果として生じる補体系成分の以下の変化のうちの少なくとも1つを特徴とする:MASP-2依存性補体活性化系の産物C4b、C3a、C5a、および/もしくはC5b-9(MAC)の生成または産生の阻害(例えば、実施例2に記載のように測定される)、C4切断およびC4b沈着の減少(例えば、実施例10に記載のように測定される)、またはC3切断およびC3b沈着の減少(例えば、実施例10に記載のように測定される)。
さらなる作用物質
MASP-2阻害物質を含む組成物および方法は、任意で、MASP-2阻害物質の活性を増大し得る1種類または複数種のさらなる治療用物質、または関連する治療機能を相加的もしくは相乗的に提供する1種類または複数種のさらなる治療用物質を含んでもよい。例えば、ADAM-TS13の阻害因子が陽性である、TTPに罹患している対象を治療する状況において、1種類または複数種のMASP-2阻害物質は1種類または複数種の免疫抑制剤と組み合わせて(同時投与を含めて)投与されてもよい。適切な免疫抑制剤には、コルチコステロイド、リツキサン、シクロスポリンなどが含まれる。HUSもしくはaHUSに罹患している対象または該HUSもしくは該aHUSを発症するリスクを有する対象を治療する状況において、1種類または複数種のMASP-2阻害物質は適切な抗生物質と組み合わせて(同時投与を含めて)投与されてもよい。aHUSに罹患している対象または該aHUSを発症するリスクを有する対象を治療する状況において、1種類または複数種のMASP-2阻害物質は、他の補体阻害物質、例えば、エクリズマブ(Soliris)、TT-30、B因子に対する抗体、または終末補体成分もしくは第二経路増幅を阻害する他の作用物質と組み合わせて(同時投与を含めて)投与されてもよい。
望ましい治療結果を実現するために、さらなる作用物質の含有および選択が決定されると考えられる。一部の態様において、MASP-2阻害物質は1種類または複数種の抗炎症剤および/または鎮痛剤と組み合わせて投与されてもよい。適切な抗炎症剤および/または鎮痛剤には、セロトニン受容体アンタゴニスト;セロトニン受容体アゴニスト;ヒスタミン受容体アンタゴニスト;ブラジキニン受容体アンタゴニスト;カリクレイン阻害因子;ニューロキニン1およびニューロキニン2受容体サブタイプアンタゴニストを含むタキキニン受容体アンタゴニスト;カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体アンタゴニスト;インターロイキン受容体アンタゴニスト;PLA2アイソフォーム阻害因子およびPLCγアイソフォーム阻害因子を含むホスホリパーゼ阻害因子、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害因子(COX-1阻害因子、COX-2阻害因子、または非選択的COX-1阻害因子および-2阻害因子のいずれでもよい)、リポオキシゲナーゼ阻害因子を含む、アラキドン酸代謝産物合成経路において活性のある酵素の阻害因子;エイコサノイドEP-1およびEP-4受容体サブタイプアンタゴニストならびにトロンボキサン受容体サブタイプアンタゴニストを含む、プロスタノイド受容体アンタゴニスト;ロイコトリエンB4受容体サブタイプアンタゴニストおよびロイコトリエンD4受容体サブタイプアンタゴニストを含む、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト;μオピオイド、δオピオイド、およびκオピオイド受容体サブタイプアゴニストを含む、オピオイド受容体アゴニスト;P2X受容体アンタゴニストおよびP2Y受容体アゴニストを含む、プリン受容体アゴニストおよびアンタゴニスト;アデノシン三リン酸(ATP)感受性カリウムチャンネルオープナー;MAPキナーゼ阻害因子;ニコチン性アセチルコリン阻害因子;ならびにαアドレナリン受容体アゴニスト(α-1、α-2、ならびに非選択的α-1およびα-2アゴニストを含む)が含まれる。
本発明のMASP-2阻害物質はまた、1種類または複数種の他の補体阻害因子と、例えば、C5の阻害因子と組み合わせて投与されてもよい。現在に至るまで、C5に対する抗体のエクリズマブ(Solaris(登録商標))は、ヒトでの使用に認可されている唯一の補体標的化薬物である。しかしながら、薬理学的作用物質の中にはインビボで補体を遮断するものもあることが示されている。K76COOHおよびメシル酸ナファムスタットは動物移植モデルにおいて、かなりの有効性を示した2種類の作用物質である(Miyagawa, S., et al., Transplant Proc. 24:483-484, 1992)。低分子量ヘパリンも補体活性の調節において有効なことが示されている(Edens, R.E., et al., Complement Today, pp. 96-120, Basel:Karger, 1993)。これらの低分子阻害因子は、本発明のMASP-2阻害物質と併用するための作用物質として有用な場合があると考えられている。
他の天然の補体阻害因子が本発明のMASP-2阻害物質と組み合わせて有用な場合がある。補体の生物学的阻害因子には可溶性補体因子1(sCR1)が含まれる。これは、ヒト細胞の外膜において見ることができる天然阻害因子である。他の膜阻害因子には、DAF、MCP、およびCD59が含まれる。組換え型の抗補体活性がインビトロおよびインビボで試験されている。sCR1は、血液を新たに移植された臓器に灌流させてから数分以内に、補体系(第二および古典)が超活発拒絶反応症候群(hyperactive rejection syndrome)のトリガーとなる異種移植において有効なことが示されている(Piatt, J.L., et al., Immunol. Today 11:450-6, 1990; Marino, I.R., et al., Transplant Proc. 1071:6, 1990; Johnstone, P.S., et al., Transplantation 54:573-6, 1992)。sCR1の使用は移植臓器を保護し、移植臓器の生存期間を延ばす。これは、補体経路が臓器生存の発生に関与していることを意味する(Leventhal, J.R., et al., Transplantation 55:857-66, 1993; Pruitt, S.K., et al., Transplantation 57:363-70, 1994)。
本発明の組成物と併用するのに適したさらなる補体阻害因子には、例として、MoAb、例えば、Alexion Pharmaceuticals, Inc., New Haven, Connecticutによって開発されている抗C5抗体(例えば、エクリズマブ)、および抗プロペルジンMoAbが含まれる。
薬学的担体および送達ビヒクル
一般的に、他の任意の選択された治療用物質と組み合わされた本発明のMASP-2阻害物質組成物は、適宜、薬学的に許容される担体中に含まれる。担体は、無毒で、生体適合性があり、MASP-2阻害物質(およびそれと組み合わされた他の任意の治療用物質)の生物学的活性に悪影響を及ぼさないように選択される。ペプチド用の例示的な薬学的に許容される担体は、Yamadaに対する米国特許第5,211,657号に記載されている。本発明において有用な抗MASP-2抗体および阻害ペプチドは、経口投与、非経口投与、または外科的投与を可能にする、固体、半固体、ゲル、液体、または気体の形をした調製物、例えば、錠剤、カプセル、散剤、顆粒、軟膏、溶液、デポジトリ(depository)、吸入剤、および注射剤に処方されてもよい。本発明はまた、医療装置などをコーティングすることによる組成物の局所投与も意図する。
注射、注入、または灌注、および局部送達を介した非経口送達に適した担体には、蒸留水、生理的リン酸緩衝食塩水、通常のリンガー液もしくは乳酸加リンガー液、デキストロース液、ハンクス液、またはプロパンジオールが含まれる。さらに、溶媒または分散媒として滅菌不揮発性油が使用されることもある。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の生体適合性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が注射液の調製において有用である。担体および作用物質は、液体、懸濁液、重合可能もしくは重合不可能なゲル、ペースト、または軟膏として配合されてもよい。
担体はまた、作用物質の送達を持続(すなわち、延長、遅延、もしくは調節)するために、または治療用物質の送達、取り込み、安定性、もしくは薬物動態を増強するために送達ビヒクルを含んでもよい。このような送達ビヒクルは、非限定的な例として、タンパク質、リポソーム、炭水化物、合成有機化合物、無機化合物、ポリマーまたはコポリマーのヒドロゲル、およびポリマーミセルからなる、微粒子、マイクロスフェア、ナノスフェア、またはナノ粒子を含んでもよい。適切なヒドロゲルおよびミセル送達系には、WO2004/009664A2に開示されるPEO:PHB:PEOコポリマーおよびコポリマー/シクロデキストリン複合体、ならびに米国特許出願公開第2002/0019369A1号に開示されるPEOおよびPEO/シクロデキストリン複合体が含まれる。このようなヒドロゲルは目的の作用部位に局所に注射されてもよく、持効性デポーを形成するように皮下または筋肉内に注射されてもよい。
関節内送達の場合、MASP-2阻害物質は、注射可能な前記の液体担体もしくはゲル担体、注射可能な前記の持効性送達ビヒクル、またはヒアルロン酸もしくはヒアルロン酸誘導体の中に入れて運ばれてもよい。
非ペプチド作用物質の経口投与の場合、MASP-2阻害物質は、スクロース、コーンスターチ、またはセルロースなどの不活性な増量剤または希釈剤の中に入れて運ばれてもよい。
局部投与の場合、MASP-2阻害物質は、軟膏、ローション剤、クリーム、ゲル、点眼薬、坐剤、スプレー、液体もしくは粉末の中に入れて運ばれてもよく、ゲルまたはマイクロカプセル送達系の中に入れて経皮パッチを介して運ばれてもよい。
エアゾール剤、定量吸入器、ドライパウダー吸入器、およびネブライザーを含む様々な鼻送達系および肺送達系が開発中であり、それぞれ、エアゾール剤、吸入剤、または噴霧送達ビヒクルの中に入れて本発明の送達に適切に合わることができる。
くも膜下腔内(IT)送達または脳室内(ICV)送達の場合、適切に滅菌した送達系(例えば、液体;ゲル、懸濁液など)を用いて、本発明の組成物を投与することができる。
本発明の組成物はまた、生体適合性の賦形剤、例えば、分散剤または湿潤剤、懸濁剤、希釈剤、緩衝液、浸透促進剤、乳化剤、結合剤、増粘剤、調味料(経口投与の場合)を含んでもよい。
抗体およびペプチドのための薬学的担体
抗MASP-2抗体および阻害ペプチドに関してより具体的には、例示的な製剤を、水、油、食塩水、グリセロール、またはエタノールなどの滅菌液体でもよい薬学的担体と共に、生理学的に許容される希釈剤に溶解した化合物の注射投与量の溶液または懸濁液として非経口投与することができる。さらに、抗MASP-2抗体および阻害ペプチドを含む組成物中には、補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などが存在してもよい。薬学的組成物のさらなる成分には、石油(例えば、動物由来、野菜由来、または合成由来の石油)、例えば、ダイズ油および鉱油が含まれる。一般的に、グリコール、例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが注射液に好ましい液体担体である。
抗MASP-2抗体および阻害ペプチドはまた、活性物質を徐放または拍動放出(pulsatile release)するように処方することができるデポー注射剤または移植片調製物の形で投与することができる。
発現阻害因子のための薬学的に許容される担体
本発明の方法において有用な発現阻害因子に関してより具体的には、前記の発現阻害因子および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む組成物が提供される。該組成物はコロイド分散系をさらに含んでもよい。
発現阻害因子を含む薬学的組成物には、溶液、エマルジョン、およびリポソーム含有製剤が含まれ得るが、これに限定されない。これらの組成物は、前もって形成された液体、自己乳化固体、および自己乳化半固体を含むが、これに限定されない様々な成分から生成することができる。このような組成物の調製は、典型的には、発現阻害因子を、以下のうちの1つまたは複数と組み合わせることを含む:緩衝液、酸化防止剤、低分子量ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、グルコース、スクロース、またはデキストリンを含む炭水化物、EDTAなどのキレート剤、グルタチオン、ならびに他の安定剤および賦形剤。適切な希釈剤の例は、中性緩衝食塩水または非特異的血清アルブミンと混合された食塩水である。
一部の態様において、前記組成物は、典型的には、ある液体を液滴の形で別の液体の中に分散させた不均一系であるエマルジョンとして調製および処方することができる(Idson, Pharmaceutical Dosage Forms, Vol.1, Rieger and Banker (eds.), Marcek Dekker, Inc., N.Y., 1988を参照されたい)。エマルジョン製剤において用いられる天然乳化剤の例には、アラビアゴム、蜜ろう、ラノリン、レシチン、およびホスファチドが含まれる。
一態様において、核酸を含む組成物をマイクロエマルジョンとして処方することができる。本明細書で使用するマイクロエマルジョンは、単一の、光学的に等方な、かつ熱力学的に安定した液体溶液である、水、油、および両親媒性物質の系を指す(Rosoff, Pharmaceutical Dosage Forms, Vol.1を参照されたい)。本発明の方法はまた、アンチセンスオリゴヌクレオチドを望ましい部位に導入および送達するためにリポソームを使用することがある。
局部投与用の発現阻害因子の薬学的組成物および製剤は、経皮パッチ、軟膏、ローション剤、クリーム、ゲル、点眼薬、坐剤、スプレー、液体、および粉末を含んでもよい。従来の薬学的担体、ならびに水性、粉末、または油性の主剤および増粘剤などが用いられてもよい。
投与の方法
MASP-2阻害物質を含む薬学的組成物は、局所投与方法または全身投与方法が、治療されている状態に最も適しているかどうかに応じて多くのやり方で投与することができる。さらに、体外再灌流法に関して本明細書において前述したように、MASP-2阻害物質は、本発明の組成物の導入を介して再循環血液または血漿に投与することができる。さらに、本発明の組成物を移植可能な医療装置の表面に、または移植可能な医療装置にコーティングするかまたは組み込むことによって、本発明の組成物を送達することができる。
全身送達
本明細書で使用する「全身送達」および「全身投与」という用語は、筋肉内(IM)投与経路、皮下投与経路、静脈内(IV)投与経路、動脈内投与経路、吸入投与経路、舌下投与経路、頬投与経路、局部投与経路、経皮投与経路、鼻投与経路、直腸投与経路、腟投与経路、および送達作用物質を1つまたは複数の目的の治療作用部位に効果的に分散させる他の投与経路を含む、経口経路および非経口経路を含むが、これに限定されないことが意図される。本組成物の好ましい全身送達経路には、静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路、および吸入経路が含まれる。本発明の特定の組成物において用いられる選択された作用物質の正確な全身投与経路は、部分的には、ある特定の投与経路に関連した代謝変換経路に対する作用物質感受性を説明するように決定されることが理解されると考えられる。例えば、ペプチド物質は、最も適切には、経口以外の経路によって投与することができる。
MASP-2阻害抗体およびポリペプチドを、それを必要とする対象に任意の適切な手段によって送達することができる。MASP-2抗体およびポリペプチドの送達方法は、経口投与経路、肺投与経路、非経口投与経路(例えば、筋肉内投与経路、腹腔内投与経路、静脈内(IV)投与経路、もしくは皮下注射投与経路)、吸入投与経路(例えば、細粉製剤を介した吸入投与経路)、経皮投与経路、鼻投与経路、腟投与経路、直腸投与経路、または舌下投与経路を含み、それぞれの投与経路に適した剤形で処方することができる。
代表的な例として、ポリペプチドを吸収することができる身体の膜、例えば、鼻、胃腸、および直腸の膜に適用することによって、MASP-2阻害抗体およびペプチドを生体内に導入することができる。ポリペプチドは典型的には浸透促進剤と共に吸収性の膜に適用される(例えば、Lee, V.H.L., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Sys. 5:69, 1988; Lee, V.H.L., J. Controlled Release 13:213, 1990; Lee, V.H.L,, Ed., Peptide and Protein Drug Delivery, Marcel Dekker, New York(1991); DeBoer, A.G., et al., J. Controlled Release 13:241, 1990を参照されたい)。例えば、STDHFは、胆汁塩と構造が類似し、鼻送達用の浸透促進剤として用いられてきたステロイド性界面活性剤であるフシジン酸合成誘導体である(Lee, W.A., Biopharm. 22, Nov./Dec. 1990)。
酵素分解からポリペプチドを保護するために、MASP-2阻害抗体およびポリペプチドを脂質などの別の分子と結合させて導入することができる。例えば、ある特定のタンパク質を体内の酵素加水分解から保護し、従って、半減期を延長するために、ポリマー、特にポリエチレングリコール(PEG)の共有結合が用いられてきた(Fuertges, P., et al., J. Controlled Release 11:139, 1990)。タンパク質送達のための多くのポリマー系が報告されている(Bae, Y.H., et al., J. Controlled Release 9:271, 1989; Hori, R., et al., Pharm. Res. 6:813, 1989:Yamakawa, L, et al., J. Pharm. Sci. 79:505, 1990; Yoshihiro, I., et al., Controlled Release 10:195, 1989; Asano, M., et al., J. Controlled Release 9:111, 1989; Rosenblatt, J., et al., J. Controlled Release 9:195, 1989; Makino, K., J. Controlled Release 12:235, 1990; Takakura, Y., et al., J. Pharm. Sci. 78:117, 1989; Takakura, Y., et al., J. Pharm. Sci. 78:219, 1989)。
最近、血清安定性および循環半減期が改善したリポソームが開発された(例えば、Webbに対する米国特許第5,741,516号を参照されたい)。さらに、潜在的な薬物担体としてのリポソームおよびリポソーム様調製の様々な方法が詳しく調べられている(例えば、Szokaに対する米国特許第5,567,434号;Yagiに対する米国特許第5,552,157号;Nakamoriに対する米国特許第5,565,213号;Shinkarenkoに対する米国特許第5,738,868号;およびGaoに対する米国特許第5,795,587号を参照されたい)。
経皮適用の場合、MASP-2阻害抗体およびポリペプチドは担体および/またはアジュバントなどの他の適切な成分と組み合わされてもよい。このような他の成分が、目的の投与のために薬学的に許容される必要があり、かつ組成物の活性成分の活性を分解することができないことを除けば、該成分がどういったものかには制限はない。適切なビヒクルの例には、精製コラーゲンを含む、または含まない、軟膏、クリーム、ゲル、または懸濁液が含まれる。MASP-2阻害抗体およびポリペプチドはまた、好ましくは、液体または半液体の形で、経皮パッチ、硬膏、および包帯に含浸されてもよい。
本発明の組成物は、望ましいレベルの治療効果を維持するよう決定された間隔で定期的に全身投与されてもよい。例えば、組成物は、例えば、皮下注射によって2〜4週間ごとにまたはそれより少ない頻度で投与されてもよい。投与計画は、作用物質の組み合わせの作用に影響を及ぼし得る様々な要因を考慮して医師によって決定されると考えられる。これらの要因は、治療されている状態の進行の程度、患者の年齢、性別、および体重、ならびに他の臨床要因を含むと考えられる。それぞれの個々の作用物質の投与量は、組成物に含まれるMASP-2阻害物質、ならびに任意の薬物送達ビヒクル(例えば、持効性送達ビヒクル)の存在および内容の関数として変化すると考えられる。さらに、送達作用物質の投与頻度および薬物動態学的挙動の変動の原因となるように投与量を調節することができる。
局所送達
本明細書で使用する「局所」という用語は、目的の限局作用の部位の中に、または目的の限局作用の部位の周囲に薬物を適用することを包含し、例えば、皮膚または他の患部組織への局部送達、眼送達、くも膜下腔内(IT)、脳室内(ICV)、関節内、洞内、頭蓋内、もしくは小胞内の投与、留置、または灌注を含んでもよい。局所投与は、低用量の投与が全身副作用を回避するために、ならびに局所送達部位に活性物質を送達および濃縮するタイミングをより正確に制御するために好ましい場合がある。局所投与は、代謝、血流などの患者間のばらつきに関係なく標的部位において既知濃度を供給する。改善された投与量制御は直接的な送達方法によっても提供される。
MASP-2阻害物質の局所送達は、疾患または状態を治療するための外科的方法の状況において、例えば、動脈バイパス外科手術、アテレクトミー、レーザー処置、超音波処置、バルーン血管形成術、およびステント留置などの処置中に実現することができる。例えば、バルーン血管形成術と共にMASP-2阻害因子を対象に投与することができる。バルーン血管形成術は、収縮したバルーンを有するカテーテルを動脈に挿入することを伴う。収縮したバルーンはアテローム性動脈硬化巣の近くに配置され、プラークが血管壁に押しつけられるように膨張される。結果として、バルーン表面は血管の表面にある血管内皮細胞の層と接触する。MASP-2阻害物質は、アテローム性動脈硬化巣の部位に該物質を放出できるようにバルーン血管形成術カテーテルに取り付けられてもよい。該物質は、当技術分野において公知の標準的な手順に従ってバルーンカテーテルに取り付けることができる。例えば、バルーンが膨張されるまで、該物質はバルーンカテーテルの一区画に保管されてもよく、膨張時に該物質は局所環境に放出される。または、バルーンが膨張された場合に、該物質は動脈壁細胞と接触するようにバルーン表面に含浸されてもよい。該物質はまた、穴のあいたバルーンカテーテル、例えば、Flugelman, M.Y., et al., Circulation 85:1110-1117, 1992に開示される穴のあいたバルーンカテーテルの中に入れて送達されてもよい。治療用タンパク質をバルーン血管形成術カテーテルに取り付けるための例示的な手順については、公開されたPCT出願WO95/23161も参照されたい。同様に、MASP-2阻害物質は、ステントに適用されるゲルまたはポリマーコーティングの中に含まれてもよく、血管留置後にステントがMASP-2阻害物質を溶出するようにステント材料に組み込まれてもよい。
関節炎および他の筋骨格障害の治療において用いられるMASP-2阻害組成物は関節内注射によって局所送達されてもよい。このような組成物は、適宜、持効性送達ビヒクルを含んでもよい。局所送達が望ましいことがある場合のさらなる例として、泌尿生殖器状態の治療において用いられるMASP-2阻害組成物は、適宜、膀胱内に、または別の泌尿生殖器構造の中に点滴注入されてもよい。
医療装置へのコーティング
MASP-2阻害物質、例えば、抗体および阻害ペプチドは、移植可能なまたは取り付け可能な医療装置の表面上(表面の中)に固定化されてもよい。改変された表面は典型的には動物身体への移植の後に生組織と接触する。「移植可能なまたは取り付け可能な医療装置」とは、装置(例えば、ステントおよび移植可能な薬物送達装置)の通常の手術中に動物身体の組織に移植されるかまたは動物身体の組織に取り付けられる任意の装置が意図される。このような移植可能なまたは取り付け可能な医療装置は、例えば、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、Sepharose、寒天、デンプン、ナイロン、ステンレス鋼、チタン、ならびに生分解性および/または生体適合性ポリマーから作製することができる。タンパク質と装置との連結は、連結されたタンパク質の生物学的活性を破壊しない任意の技法によって、例えば、タンパク質のN末端残基、C末端残基の一方または両方を装置に取り付けることによって実現することができる。タンパク質の1つまたは複数の内部部位において取り付けが行われてもよい。複数の取り付け(タンパク質の内部および末端)も使用することができる。タンパク質固定化のために官能基(例えば、カルボキシル、アミド、アミノ、エーテル、ヒドロキシル、シアノ、ニトリド、スルファナミド(sulfanamido)、アセチリニック(acetylinic)、エポキシド、シラニック(silanic)、アンヒドリック(anhydric)、スクシニミック(succinimic)、アジド)を含めるように、移植可能なまたは取り付け可能な医療装置の表面を改変することができる。カップリング化学には、MASP-2抗体または阻害ペプチド上において利用可能な官能基とのエステル、エーテル、アミド、アジドおよびスルファナミド誘導体、シアナート(cyanate)、ならびに他の連結の形成が含まれるが、これに限定されない。MASP-2抗体または阻害断片はまた、アフィニティタグ配列を、タンパク質、例えば、GST(D.B. Smith and K.S. Johnson, Gene 67:31, 1988)、ポリヒスチジン(E. Hochuli et al., J. Chromatog. 411:77, 1987)、またはビオチンに付加することによって非共有結合によって取り付けることもできる。このようなアフィニティタグは、タンパク質と装置とを可逆的に取り付けるために用いられてもよい。
タンパク質はまた、例えば、医療装置の表面の共有結合活性化によって、装置本体の表面に共有結合により取り付けることもできる。代表的な例として、以下の反応基対(対の一方のメンバーが装置本体の表面に存在し、対の他方のメンバーがマトリックス細胞タンパク質上に存在する)のいずれかによって、マトリックス細胞タンパク質を装置本体に取り付けることができる:エステル結合を生じるヒドロキシル/カルボン酸;エステル結合を生じるヒドロキシル/無水物;ウレタン結合を生じるヒドロキシル/イソシアネート。マトリックス細胞タンパク質の沈着を可能にするために、有用な反応基を有さない装置本体の表面を高周波放電プラズマ(RFGD)エッチングで処理して反応基を生成することができる(例えば、酸素含有基を導入するための酸素プラズマ処理;アミン基を導入するためのプロピルアミノプラズマ処理)。
核酸分子を含むMASP-2阻害物質、例えば、ペプチド阻害因子をコードするアンチセンス、RNAi、またはDNAを、装置本体に取り付けられた多孔性マトリックスに埋め込むことができる。表層を作製するのに有用な代表的な多孔性マトリックスは、様々な商業的供給業者から得られることができるような腱もしくは真皮コラーゲンから調製された多孔性マトリックス(例えば、SigmaおよびCollagen Corporation)、またはJefferiesに対する米国特許第4,394,370号およびKoezukaに対する同第4,975,527号に記載のように調製されたコラーゲンマトリックスである。あるコラーゲン材料はUltraFiber(商標)と呼ばれ、Norian Corp.(Mountain View, California)から入手できる。
所望であれば、ある特定のポリマーマトリックスが使用されてもよく、例えば、Uristに対する米国特許第4,526,909号および同第4,563,489号において開示されるようにアクリルエステルポリマーおよび乳酸ポリマーを含む。有用なポリマーの具体例は、オルトエステル、無水物、プロピレン-コフマレートのポリマー、または1種類もしくは複数種のα-ヒドロキシカルボン酸モノマー(例えば、α-ヒドロキシ酢酸(グリコール酸)および/もしくはα-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸))のポリマーである。
治療レジメン
予防用途では、薬学的組成物は、MASP-2依存性補体活性化に関連した状態にかかりやすい対象、またはそうでなければ該状態のリスクを有する対象に、該状態の症状を発症するリスクを排除するのにまたは低下させるのに十分な量で投与される。治療用途では、薬学的組成物は、MASP-2依存性補体活性化に関連した状態に罹患していると疑われる対象、または該状態に既に罹患している対象に、状態の症状を軽減するのに、または少なくとも部分的に緩和するのに十分な治療的有効量で投与される。予防レジメンおよび治療レジメンの両方において、MASP-2阻害物質を含む組成物は、対象において十分な治療成績が得られるまで、いくつかの投与量に分けて投与されてもよい。本発明のMASP-2阻害組成物の適用は、急性状態、例えば、再灌流傷害もしくは他の外傷の治療の場合は、組成物の単回投与によって、または限定された一連の投与によって行われてもよい。または、組成物は、慢性状態、例えば、関節炎または乾癬の治療の場合は、長期間にわたって定期的な間隔で投与されてもよい。
本発明の方法および組成物は、典型的には診断上および治療上の医療処置ならびに外科的処置に起因する炎症および関連プロセスを阻害するのに使用することができる。このようなプロセスを阻害するために、本発明のMASP-2阻害組成物は周術期に(periprocedurally)適用されてもよい。本明細書で使用する「周術期に」は、術前および/または術中および/または術後に、すなわち、処置の前、処置の前および最中に、処置の前および後に、処置の前、最中、および後に、処置の最中に、処置の最中および後に、または、処置の後に阻害組成物を投与することを指す。周術期の適用は、例えば、部位への注射または連続灌注もしくは間欠灌注によって、あるいは全身投与によって手術部位または処置部位に組成物を局所投与することによって行われてもよい。MASP-2阻害物質溶液の局所周術期送達に適した方法はDemopulosに対する米国特許第6,420,432号およびDemopulosに対する同第6,645,168号に開示される。MASP-2阻害物質を含む軟骨保護組成物の局所送達に適した方法は国際PCT特許出願WO01/07067A2に開示される。MASP-2阻害物質を含む軟骨保護組成物の標的全身送達に適した方法および組成物は国際PCT特許出願WO03/063799A2に開示される。
本発明の一局面において、血栓性微小血管症(TMA)に罹患している対象または該TMAを発症するリスクを有する対象に薬学的組成物が投与される。一態様において、TMAは、溶血性尿毒症症候群(HUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、および非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)からなる群より選択される。一態様において、TMAはaHUSである。一態様において、該組成物はaHUS患者に疾患の急性期に投与される。一態様において、該組成物は、寛解期のaHUS患者(すなわち、急性期aHUSのエピソードから回復した対象または部分的に回復した対象。例えば、このような寛解は、例えば、本明細書に参照により組み入れられる、Loirat C et al., Orphanet Journal of Rare Diseases 6:60, 2011に記載のように、多い血小板数および/または低い血清中LDH濃度によって証明される)に投与される。一態様において、対象は、(i)癌に続発するTMA;(ii)化学療法に続発するTMA;または(iii)移植(例えば、臓器移植、例えば、腎臓移植もしくは同種造血幹細胞移植)に続発するTMAであるTMAに罹患しているか、または該TMAを発症するリスクを有する。一態様において、対象は、アップショー・シュールマン症候群(USS)に罹患しているか、または該USSを発症するリスクを有する。一態様において、対象は、デゴス病に罹患しているか、または該デゴス病を発症するリスクを有する。一態様において、対象は、劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)に罹患しているか、または該CAPS発症するリスクを有する。治療的用途では、薬学的組成物は、血栓形成を阻害するのに、状態の症状を軽減するのに、または状態の症状を少なくとも部分的に緩和するのに十分な治療的有効量で、TMAに罹患している対象または該TMAを発症するリスクを有する対象に投与される。
予防レジメンおよび治療レジメンの両方において、MASP-2阻害物質を含む組成物は、対象において十分な治療成績が得られるまで、いくつかの投与量に分けて投与されてもよい。本発明の一態様において、MASP-2阻害物質は抗MASP-2抗体を含み、抗MASP-2抗体は、適切には、0.1mg〜10,000mg、より適切には1.0mg〜5,000mg、より適切には10.0mg〜2,000mg、より適切には10.0mg〜1,000mg、さらにより適切には50.0mg〜500mgの投与量で成人患者(例えば、70kgの平均成人体重)に投与されてもよい。小児患者の場合、投与量は患者の体重に比例して調節することができる。本発明のMASP-2阻害組成物の適用は、TMAの治療の場合は、組成物の単回投与によって、または限定された一連の投与によって行われてもよい。または、組成物は、TMAの治療の場合は、長期間にわたって、定期的な間隔で、例えば、毎日、週2回、毎週、隔週、毎月、または隔月、投与されてもよい。
一部の態様において、TMAに罹患している対象または該TMAを発症するリスクを有する対象は、補体タンパク質C5の切断を阻害する終末補体阻害因子による治療を以前に受けたことがあるかまたは現在受けている。一部の態様において、前記方法は、MASP-2阻害因子を含む本発明の組成物を対象に投与する工程を含み、補体タンパク質C5の切断を阻害する終末補体阻害因子を対象に投与する工程をさらに含む。一部の態様において、終末補体阻害因子はヒト化抗C5抗体またはその抗原結合断片である。一部の態様において、終末補体阻害因子はエクリズマブである。
本発明の一局面において、薬学的組成物は、aHUSにかかりやすい対象、またはそうでなければ該aHUSを発症するリスクを有する対象に、状態の症状を発症するリスクを排除するのにまたは低下させるのに十分な量で投与される。治療用途では、薬学的組成物は、aHUSに罹患していると疑われる対象、または該aHUSに既に罹患している対象に、状態の症状を軽減するのに、または少なくとも部分的に低下させるのに十分な治療的有効量で投与される。本発明の一局面において、投与前に、(i)貧血、(ii)血小板減少症、(iii)腎機能不全、および(iv)クレアチニン増加を含むaHUSの1つまたは複数の症状を示すかどうか判定するために、対象は検査されてもよい。次いで、本発明の組成物は、これらの症状を改善するのに有効な量でかつ十分な時間投与される。
本発明の別の局面において、本発明のMASP-2阻害組成物は、aHUSを発症する高いリスクを有する対象を予防的に治療し、それによって、対象がaHUSを送達する可能性を低下させるために使用することができる。aHUSに関連することが公知である遺伝子マーカーの、対象における存在は、最初に、対象から得られた試料に対して遺伝子スクリーニング試験を実施して、aHUSに関連した少なくとも1種類の遺伝子マーカー、補体因子H(CFH)、I因子(CFI)、B因子(CFB)、メンブレンコファクターCD46、C3、補体因子H関連タンパク質(CFHR1)、抗凝固タンパク質トロンボジュリン(THBD)、補体因子H関連タンパク質3(CFHR3)、または補体因子H関連タンパク質4(CFHR4)の存在を特定することによって、判定される。次いで、aHUSの少なくとも1つの症状、例えば、貧血、血小板減少症、腎機能不全、およびクレアチニン増加の有無を判定するために、対象は定期的に(例えば、毎月、年4回、年2回、または毎年)モニタリングする。これらの症状のうちの少なくとも1つが存在するとの判定に基づいて、対象に、MASP-2依存性補体活性化を阻害するのに有効な量のMASP-2阻害物質を、1つまたは複数の該症状を改善するのに有効な量でかつ十分な時間投与することができる。本発明のなおさらなる局面において、スクリーニングされ、aHUSに関連した遺伝子マーカーの1つを有すると判定されたために、aHUSを発症するリスクの高い対象は、薬物曝露、感染症(例えば、細菌感染症)、悪性腫瘍、損傷、臓器移植または組織移植、および妊娠を含む、aHUS臨床症状の誘発に関連した事象の発生についてモニタリングされてもよい。
本発明のなおさらなる局面において、MASP-2依存性補体活性化を阻害するのに有効な量のMASP-2阻害物質を含む組成物は、感染症に続発する非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)に罹患している対象または該aHUSを発症するリスクを有する対象に投与することができる。例えば、肺炎連鎖球菌感染症に関連した非腸性aHUSに罹患している患者または該非腸性aHUSを発症するリスクを有する患者は本発明の組成物を用いて治療されてもよい。
本発明のなおさらなる局面において、aHUSに罹患している対象は、最初に、第1の期間、例えば、1時間、12時間、1日、2日、または3日、カテーテルライン、例えば、静脈内カテーテルラインまたは皮下カテーテルラインを通って投与される本発明のMASP-2阻害組成物を用いて治療されてもよい。次いで、対象は、第2の期間、定期的な皮下注射、例えば、毎日、週2回、毎週、隔週、毎月、または隔月の注射によって投与されるMASP-2阻害組成物を用いて治療されてもよい。
本発明のなおさらなる局面において、本発明のMASP-2阻害組成物は、出血、感染症、ならびに血漿ドナーに固有の障害および/もしくはアレルギーへの曝露を含む潜在的なプラスマフェレーシス合併症を回避するためにプラスマフェレーシスの非存在下で、またはプラスマフェレーシスを他の点で嫌がる対象において、またはプラスマフェレーシスを利用できない状況において、aHUSに罹患している対象(すなわち、aHUS症状がプラスマフェレーシスで治療されたことがなく、かつMASP-2阻害組成物による治療時にプラスマフェレーシスで治療されない対象)に投与されてもよい。
本発明のなおさらなる局面において、プラスマフェレーシスで患者を治療すると同時に、本発明のMASP-2阻害組成物はaHUSに罹患している対象に投与されてもよい。次いで、例えば、血漿交換後に、または血漿交換と交互に、プラスマフェレーシス治療を受けている対象にMASP-2阻害組成物を投与することができる。
本発明のなおさらなる局面において、aHUSに罹患しているかまたは該aHUSを発症するリスクを有し、かつ本発明のMASP-2阻害組成物で治療されている、対象は、少なくとも1種類の補体因子のレベルを、定期的に、例えば、12時間ごとにまたは毎日、決定することによってモニタリングすることができ、標準値または健常対象と比較して低下した該少なくとも1種類の補体因子のレベルの決定は、組成物による継続治療の必要性を示す。
予防レジメンおよび治療レジメンの両方において、MASP-2阻害物質を含む組成物は、対象において十分な治療成績が得られるまで、いくつかの投与量に分けて投与されてもよい。本発明の一態様において、MASP-2阻害物質は抗MASP-2抗体を含み、抗MASP-2抗体は、適切には、0.1mg〜10,000mg、より適切には1.0mg〜5,000mg、より適切には10.0mg〜2,000mg、より適切には10.0mg〜1,000mg、さらにより適切には50.0mg〜500mgの投与量で成人患者(例えば、70kgの平均成人体重)に投与されてもよい。小児患者の場合、投与量は患者の体重に比例して調節することができる。本発明のMASP-2阻害組成物の適用は、aHUSの治療の場合は、組成物の単回投与によって、または限定された一連の投与によって行われてもよい。または、組成物は、aHUSの治療の場合は、長期間にわたって、定期的な間隔で、例えば、毎日、週2回、毎週、隔週、毎月、または隔月、投与されてもよい。
一部の態様において、aHUSに罹患している対象は、補体タンパク質C5の切断を阻害する終末補体阻害因子による治療を以前に受けたことがあるかまたは現在受けている。一部の態様において、前記方法は、MASP-2阻害因子を含む本発明の組成物を対象に投与する工程を含み、補体タンパク質C5の切断を阻害する終末補体阻害因子を対象に投与する工程をさらに含む。一部の態様において、終末補体阻害因子はヒト化抗C5抗体またはその抗原結合断片である。一部の態様において、終末補体阻害因子はエクリズマブである。
本発明の一局面において、薬学的組成物は、HUSにかかりやすい対象、またはそうでなければ該HUSを発症するリスクを有する対象に、状態の症状を発症するリスクを排除するのにまたは低下させるのに十分な量で投与される。治療用途では、薬学的組成物は、HUSに罹患していると疑われる対象または該HUSに既に罹患している対象に、状態の症状を軽減するのにまたは少なくとも部分的に緩和するのに十分な治療的有効量で投与される。
本発明の別の局面では、HUSを発症するリスクを有する対象において腎機能障害を発症する可能性は、MASP-2依存性補体活性化を阻害するのに有効な量の本発明のMASP-2阻害組成物を対象に投与することによって低下させることができる。例えば、HUSを発症するリスクがあり、かつ本発明のMASP-2阻害組成物で治療される対象は、下痢、血管内赤血球破壊のスミア証拠を伴う30%未満のヘマトクリットレベル、血小板減少、およびクレアチニンレベル上昇を含むHUSに関連した1つまたは複数の症状を示し得る。さらなる例として、HUSを発症するリスクがあり、かつ本発明のMASP-2阻害組成物で治療される対象は、大腸菌、赤痢菌属、またはサルモネラ属に感染してもよい。大腸菌、赤痢菌属、またはサルモネラ属に感染している、このような対象は、抗生物質治療と同時に本発明のMASP-2阻害組成物を用いて治療されてもよく、特に、抗生物質治療が禁忌となる腸大腸菌の場合は、抗生物質で同時に治療することなくMASP-2阻害組成物を用いて治療されてもよい。抗生物質で治療されたことのある、腸原性大腸菌に感染している対象は、HUSを発症するリスクが高い場合があり、このリスクを下げるために、適宜、本発明のMASP-2阻害組成物で治療されてもよい。腸原性大腸菌に感染している対象は、第1の期間、抗生物質の非存在下で本発明のMASP-2阻害組成物で治療され、次いで、第2の期間、本発明のMASP-2阻害組成物および抗生物質の両方で治療されてもよい。
本発明のなおさらなる局面において、HUSに罹患している対象は、最初に、第1の期間、例えば、1時間、12時間、1日間、2日間、または3日間、カテーテルライン、例えば、静脈内カテーテルラインまたは皮下カテーテルラインを通って投与される本発明のMASP-2阻害組成物を用いて治療されてもよい。次いで、対象は、第2の期間、定期的な皮下注射、例えば、毎日、週2回、毎週、隔週、毎月、または隔月の注射によって投与されるMASP-2阻害組成物を用いて治療されてもよい。
本発明のなおさらなる局面において、本発明のMASP-2阻害組成物は、出血、感染、および障害への曝露、ならびに/もしくは血漿ドナーに固有のアレルギーを含む潜在的なプラスマフェレーシス合併症を回避するためにプラスマフェレーシスの非存在下で、またはプラスマフェレーシスを他の点で嫌がる対象において、またはプラスマフェレーシスを利用できない状況において、HUSに罹患している対象(すなわち、HUS症状がプラスマフェレーシスで治療されたことがなく、かつMASP-2阻害組成物による治療時にプラスマフェレーシスで治療されない対象)に投与されてもよい。
本発明のなおさらなる局面において、本発明のMASP-2阻害組成物は、プラスマフェレーシスによって患者を治療すると同時に、HUSに罹患している対象に投与されてもよい。次いで、例えば、血漿交換後に、または血漿交換と交互に、プラスマフェレーシス治療を受けている対象にMASP-2阻害組成物を投与することができる。
本発明のなおさらなる局面において、HUSに罹患しているかまたは該HUSを発症するリスクがあり、かつ本発明のMASP-2阻害組成物で治療されている、対象は、少なくとも1種類の補体因子のレベルを、定期的に、例えば、12時間ごとにまたは毎日、決定することによってモニタリングすることができ、標準値または健常対象と比較して低下した該少なくとも1種類の補体因子のレベルの決定は、組成物による継続治療の必要性を示す。
予防レジメンおよび治療レジメンの両方において、MASP-2阻害物質を含む組成物は、対象において十分な治療成績が得られるまで、いくつかの投与量に分けて投与されてもよい。本発明の一態様において、MASP-2阻害物質は抗MASP-2抗体を含み、抗MASP-2抗体は、適切には、0.1mg〜10,000mg、より適切には1.0mg〜5,000mg、より適切には10.0mg〜2,000mg、より適切には10.0mg〜1,000mg、さらにより適切には50.0mg〜500mgの投与量で成人患者(例えば、70kgの平均成人体重)に投与されてもよい。小児患者の場合、投与量は患者の体重に比例して調節することができる。本発明のMASP-2阻害組成物の適用は、HUSの治療の場合は、組成物の単回投与によって、または限定された一連の投与によって行われてもよい。または、組成物は、HUSの治療の場合は、長期間にわたって、定期的な間隔で、例えば、毎日、週2回、毎週、隔週、毎月、または隔月、投与されてもよい。
一部の態様において、HUSに罹患している対象は、補体タンパク質C5の切断を阻害する終末補体阻害因子による治療を以前に受けたことがあるかまたは現在受けている。一部の態様において、前記方法は、MASP-2阻害因子を含む本発明の組成物を対象に投与する工程を含み、補体タンパク質C5の切断を阻害する終末補体阻害因子を対象に投与する工程をさらに含む。一部の態様において、終末補体阻害因子はヒト化抗C5抗体またはその抗原結合断片である。一部の態様において、終末補体阻害因子はエクリズマブである。
本発明の一局面において、薬学的組成物は、TTPにかかりやすい対象、またはそうでなければ該TTPを発症するリスクを有する対象に、状態の症状を発症するリスクを排除するのにまたは低下させるのに十分な量で投与される。治療用途では、薬学的組成物は、TTPに罹患していると疑われる対象またはTTPに既に罹患している対象に、状態の症状を軽減するのにまたは少なくとも部分的に緩和するのに十分な治療的有効量で投与される。
本発明の別の局面において、中枢神経系合併症、血小板減少、重篤な心臓合併症、重篤な肺合併症、胃腸管梗塞、および壊疽を含むTTPの症状のうちの1つまたは複数を示す対象は、本発明のMASP-2阻害組成物を用いて治療されてもよい。本発明の別の局面において、低レベルのADAMTS13を有すると判定され、ADAMTS13の阻害因子(すなわち、抗体)の存在についての試験でも陽性と判定された対象は、本発明のMASP-2阻害組成物を用いて治療されてもよい。本発明のなおさらなる局面において、ADAMTS13の阻害因子の存在についての試験で陽性と判定された対象は、本発明のMASP-2阻害組成物による治療と同時に免疫抑制剤(例えば、コルチコステロイド、リツキサン、またはシクロスポリン)を用いて治療されてもよい。本発明のなおさらなる局面において、低レベルのADAMTS13を有すると判定され、ADAMTS13の阻害因子の存在についての試験で陽性と判定された対象は、本発明のMASP-2阻害組成物による治療と同時にADAMTS13を用いて治療されてもよい。
本発明のなおさらなる局面において、TTPに罹患している対象は、最初に、第1の期間、例えば、1時間、12時間、1日間、2日間、または3日間、カテーテルライン、例えば、静脈内カテーテルラインまたは皮下カテーテルラインを通って投与される本発明のMASP-2阻害組成物を用いて治療されてもよい。次いで、対象は、第2の期間、定期的な皮下注射、例えば、毎日、週2回、毎週、隔週、毎月、または隔月の注射によって投与されるMASP-2阻害組成物を用いて治療されてもよい。
本発明のなおさらなる局面において、本発明のMASP-2阻害組成物は、出血、感染、および障害への曝露、ならびに/もしくは血漿ドナーに固有のアレルギーを含む潜在的なプラスマフェレーシス合併症を回避するためにプラスマフェレーシスの非存在下で、またはプラスマフェレーシスを他の点で嫌がる対象において、またはプラスマフェレーシスを利用できない状況において、HUSに罹患している対象(すなわち、TTP症状がプラスマフェレーシスで治療されたことがなく、かつMASP-2阻害組成物による治療時にプラスマフェレーシスで治療されない対象)に投与されてもよい。
本発明のなおさらなる局面において、プラスマフェレーシスで患者を治療すると同時に、本発明のMASP-2阻害組成物はTTPに罹患している対象に投与されてもよい。次いで、例えば、血漿交換後に、または血漿交換と交互に、プラスマフェレーシス治療を受けている対象にMASP-2阻害組成物を投与することができる。
本発明のなおさらなる局面において、難治性TTP、すなわち、プラスマフェレーシスなどの他の治療に十分に反応したことがないTTPの症状に罹患している対象は、さらなるプラスマフェレーシスと共に、またはさらなるプラスマフェレーシスを伴わずに本発明のMASP-2阻害組成物で治療されてもよい。
本発明のなおさらなる局面において、TTPに罹患しているかまたは該TTPを発症するリスクがあり、かつ本発明のMASP-2阻害組成物で治療されている、対象は、少なくとも1種類の補体因子のレベルを、定期的に、例えば、12時間ごとにまたは毎日、決定することによってモニタリングすることができ、標準値または健常対象と比較して低下した該少なくとも1種類の補体因子のレベルの決定は、組成物による継続治療の必要性を示す。
予防レジメンおよび治療レジメンの両方において、MASP-2阻害物質を含む組成物は、対象において十分な治療成績が得られるまで、いくつかの投与量に分けて投与されてもよい。本発明の一態様において、MASP-2阻害物質は抗MASP-2抗体を含み、抗MASP-2抗体は、適切には、0.1mg〜10,000mg、より適切には1.0mg〜5,000mg、より適切には10.0mg〜2,000mg、より適切には10.0mg〜1,000mg、さらにより適切には50.0mg〜500mgの投与量で成人患者(例えば、70kgの平均成人体重)に投与されてもよい。小児患者の場合、投与量は患者の体重に比例して調節することができる。本発明のMASP-2阻害組成物の適用は、TTPの治療の場合は、組成物の単回投与によって、または限定された一連の投与によって行われてもよい。または、組成物は、TTPの治療の場合は、長期間にわたって、定期的な間隔で、例えば、毎日、週2回、毎週、隔週、毎月、または隔月、投与されてもよい。
一部の態様において、TTPに罹患している対象は、補体タンパク質C5の切断を阻害する終末補体阻害因子による治療を以前に受けたことがあるかまたは現在受けている。一部の態様において、前記方法は、MASP-2阻害因子を含む本発明の組成物を対象に投与する工程を含み、補体タンパク質C5の切断を阻害する終末補体阻害因子を対象に投与する工程をさらに含む。一部の態様において、終末補体阻害因子はヒト化抗C5抗体またはその抗原結合断片である。一部の態様において、終末補体阻害因子はエクリズマブである。
VI.実施例
以下の実施例は、本発明の実施について意図された最良の形態の単なる例示であり、本発明を限定すると解釈してはならない。本明細書中の全ての文献引用が明確に参照により組み入れられる。
実施例1
本実施例は、MASP-2が欠損しているが(MASP-2-/-)MAp19は十分な(MAp19+/+)マウス系統の生成について述べる。
材料および方法:図3に示したように、セリンプロテアーゼドメインをコードするエキソンを含む、マウスMASP-2のC末端をコードする3つのエキソンを破壊するために、ターゲティングベクターpKO-NTKV1901を設計した。pKO-NTKV1901を用いて、マウスES細胞株E14.1a(SV129Ola)をトランスフェクトした。ネオマイシン耐性およびチミジンキナーゼ感受性のクローンを選択した。600個のESクローンをスクリーニングした。このうち4個の異なるクローンが特定され、図3に示したように、サザンブロットによって、予想された選択的標的化および組換え事象を含むことが立証された。胚移植によって、これら4個の陽性クローンからキメラを生成した。次いで、キメラを遺伝的バックグラウンドC57/BL6において戻し交配して、トランスジェニック雄を作製した。トランスジェニック雄を雌と交配させてF1を得た。子孫の50%は、破壊されたMASP-2遺伝子についてヘテロ接合性を示した。ヘテロマウスを交雑させて、ホモMASP-2欠損子孫、ヘテロマウス、および野生型マウスをそれぞれ1:2:1の比で得た。
結果および表現型:結果として生じたホモMASP-2-/-欠損マウスは生存可能であり、生殖能力があることが見出され、正しい標的化事象を確認するためにサザンブロットによって、MASP-2 mRNAの非存在を確認するためにノザンロットによって、MASP-2タンパク質の非存在を確認するためにウエスタンブロットによって、MASP-2欠損であることが立証された(データ示さず)。LightCycler装置による時間分解型RT-PCRを用いて、MAp19 mRNAの存在およびMASP-2 mRNAの非存在がさらに確認された。MASP-2-/-マウスは、予想通り、MAp19、MASP-1、およびMASP-3のmRNAおよびタンパク質を発現し続ける(データ示さず)。MASP-2-/-マウスにおけるプロペルジン、B因子、D因子、C4、C2、およびC3のmRNAの存在および量をLightCycler分析によって評価し、野生型同腹仔対照のものと同一であることが見出された(データ示さず)。ホモMASP-2-/-マウスに由来する血漿は、実施例2にさらに記載のように、レクチン経路を介した補体活性化が完全に欠損している。
純粋なC57BL6バックグラウンドのMASP-2-/-系統の生成:MASP-2-/-マウスをC57BL6純系と9世代にわたって戻し交配した後に、MASP-2-/-系統を実験動物モデルとして使用した。
マウスMASP-2-/-, MAp19+/+であり、ヒトMASP-2トランスジーン(マウスMASP-2ノックアウトおよびヒトMASP-2ノックイン)を発現するトランスジェニックマウス系統も以下のように生成した。
材料および方法:図4に示したように、最初の3つのエキソン(エキソン1〜エキソン3)を含むヒトMASP2遺伝子のプロモーター領域の後に、次の8つのエキソンからなるコード配列に相当するcDNA配列を含み、それによって、その内因性プロモーターによって駆動される完全長MASP-2タンパク質をコードする「ミニhMASP-2」と呼ばれるヒトMASP-2をコードするミニ遺伝子(SEQ ID NO:49)を構築した。欠損マウスMASP2遺伝子を、遺伝子導入により発現されるヒトMASP-2で置換するために、ミニhMASP-2構築物をMASP-2-/-受精卵に注入した。
実施例2
本実施例はレクチン経路を介した補体活性化にはMASP-2が必要であることを証明する。
方法および材料:
レクチン経路特異的C4切断アッセイ法:C4切断アッセイ法は、Petersen, S.V., et al., J. Immunol Methods 257:107(2001)によって述べられており、L-フィコリンに結合する黄色ブドウ球菌由来リポテイコ酸(LTA)に起因するレクチン経路活性化を測定する。下記のようにプレートをLPSおよびマンナンまたはザイモサンでコーティングした後に、MASP-2-/-マウスに由来する血清を添加することによって、Petersen et al., (2001)に記載のアッセイ法がMBLを介したレクチン経路活性化を測定するように適合化された。このアッセイ法を、古典経路によるC4切断の可能性を取り除くようにも変更した。これは、レクチン経路認識成分とそのリガンドとの高親和性結合を可能にするが、内因性C4の活性化を阻止し、それによって、C1複合体を解離することによって古典経路の関与を排除する、1M NaClを含有する試料希釈緩衝液を使用することによって達成された。簡単に述べると、変更されたアッセイ法では、血清試料(高塩(1M NaCl)緩衝液で希釈した)をリガンドコーティングプレートに添加した後に、生理学的濃度の塩を含む緩衝液に溶解した一定量の精製C4を添加した。MASP-2を含有する結合した認識複合体はC4を切断し、その結果、C4bが沈着する。
アッセイ方法;
(1)Nunc Maxisorbマイクロタイタープレート(Maxisorb, Nunc, カタログ番号442404, Fisher Scientific)を、コーティング緩衝液(15mM Na2CO3, 35mM NaHCO3, pH9.6)で希釈した1μg/mlマンナン(M7504 Sigma)または他の任意のリガンド(例えば、以下の列挙したリガンド)でコーティングした。
以下の試薬をアッセイ法において使用した:
a.マンナン(100μlコーティング緩衝液中に1μg/ウェルのマンナン(M7504 Sigma));
b.ザイモサン(100μlコーティング緩衝液中に1μg/ウェルのザイモサン(Sigma));
c.LTA(100μlコーティング緩衝液中に1μg/ウェルまたは20μlメタノール中に2μg/ウェル);
d.コーティング緩衝液中に1μgのH-フィコリン特異的Mab 4H5;
e.エロコッカス・ビリダンス(Aerococcus viridans)に由来するPSA(100μlコーティング緩衝液中に2μg/ウェル);
f.コーティング緩衝液中に100μl/ウェルのホルマリン固定黄色ブドウ球菌DSM20233(OD550=0.5)。
(2)プレートを4℃で一晩インキュベートした。
(3)一晩のインキュベーション後、プレートを0.1%HSA-TBSブロッキング緩衝液(0.1%(w/v)HSAを含む10mM Tris-CL、140mM NaCl、1.5mM NaN3、pH7.4)とともに1〜3時間インキュベートし、次いで、プレートをTBS/tween/Ca2+(0.05%Tween20および5mM CaCl2、1mM MgCl2、pH7.4を含むTBS)で3回洗浄することによって、残存するタンパク質結合部位を飽和させた。
(4)試験しようとする血清試料をMBL結合緩衝液(1M NaCl)で希釈し、希釈試料をプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした。緩衝液だけが入っているウェルを陰性対照として使用した。
(5)4℃で一晩のインキュベーション後、プレートをTBS/tween/Ca2+で3回洗浄した。次いで、ヒトC4(100μl/ウェル。1μg/ml。BBS(4mMバルビタール、145mM NaCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2、pH7.4)で希釈した)をプレートに添加し、37℃で90分間インキュベートした。プレートをTBS/tween/Ca2+で3回、再洗浄した。
(6)C4b沈着を、アルカリホスファターゼ結合ニワトリ抗ヒトC4c(TBS/tween/Ca2+で1:1000に希釈した)で検出し、アルカリホスファターゼ結合ニワトリ抗ヒトC4cをプレートに添加し、室温で90分間インキュベートした。次いで、プレートをTBS/tween/Ca2+で3回、再洗浄した。
(7)100μlのp-ニトロフェニルリン酸基質溶液を添加し、室温で20分間インキュベートし、マイクロタイタープレートリーダーにおいてOD405を読み取ることによって、アルカリホスファターゼを検出した。
結果:図5AおよびBは、MASP-2+/+(十字)、MASP-2+/-(黒丸)、およびMASP-2-/-(黒三角)の血清希釈液中のマンナン(図5A)およびザイモサン(図5B)におけるC4b沈着の量を示す。図5Cは、野生型血清に対して基準化されたC4b沈着量の測定に基づく、野生型マウス(n=5)と比較した、MASP-2-/+マウス(n=5)およびMASP-2-/-マウス(n=4)の、ザイモサン(白色の棒)またはマンナン(影付きの棒)でコーティングされたプレート上での相対的C4コンバターゼ活性を示す。エラーバーは標準偏差を示す。図5A〜Cに示したように、MASP-2-/-マウスに由来する血漿は、マンナンコーティングプレート上およびザイモサンコーティングプレート上でのレクチン経路を介した補体活性化が完全に欠損している。これらの結果から、MASP-2はレクチン経路のエフェクター成分であることがはっきりと証明される。
組換えMASP-2はMASP-2-/-マウスに由来する血清中でレクチン経路依存性C4活性化を再構成する
MASP-2の非存在がMASP-2-/-マウスにおけるレクチン経路依存性C4活性化消失の直接の原因であることを証明するために、血清試料への組換えMASP-2タンパク質の添加の効果を前記のC4切断アッセイ法において調べた。機能的に活性なマウスMASP-2組換えタンパク質および触媒不活性マウスMASP-2A(セリンプロテアーゼドメイン中の活性部位セリン残基がアラニン残基で置換された)組換えタンパク質を以下の実施例3に記載のように産生および精製した。4匹のMASP-2-/-マウスからプールされた血清を、漸増タンパク質濃度の組換えマウスMASP-2または不活性組換えマウスMASP-2Aとプレインキュベートし、C4コンバターゼ活性を前記のようにアッセイした。
結果:図6に示したように、機能的に活性なマウス組換えMASP-2タンパク質(白三角として示した)をMASP-2-/-マウスから得られた血清に添加すると、レクチン経路依存性C4活性化がタンパク質濃度依存的に回復したのに対して、触媒不活性マウスMASP-2Aタンパク質(星として示した)はC4活性化を回復しなかった。図6に示した結果は、プールされた野生型マウス血清を用いて観察されたC4活性化(点線として示した)に対して基準化されている。
実施例3
本実施例は、組換え完全長ヒトMASP-2、ラットおよびマウスのMASP-2、MASP-2に由来するポリペプチド、ならびに触媒不活化変異型MASP-2の組換え発現およびタンパク質産生について述べる。
完全長ヒトMASP-2、マウスMASP-2、およびラットMASP-2の発現:
ヒトMASP-2の完全長cDNA配列(SEQ ID NO:4)を、CMVエンハンサー/プロモーター領域の制御下で真核生物発現を駆動する哺乳動物発現ベクターpCI-Neo(Promega)にもサブクローニングした(Kaufman R.J. et al., Nucleic Acids Research 19:4485-90, 1991; Kaufman, Methods in Emymology, 185:537-66(1991)に記載)。完全長マウスcDNA(SEQ ID NO:50)およびラットMASP-2 cDNA(SEQ ID NO:53)をそれぞれpED発現ベクターにサブクローニングした。次いで、Maniatis et al., 1989に記載の標準的なリン酸カルシウムトランスフェクション手順を用いて、MASP-2発現ベクターを、付着性のチャイニーズハムスター卵巣細胞株DXB1にトランスフェクトした。これらの構築物でトランスフェクトされた細胞は非常にゆっくりと増殖した。このことは、コードされたプロテアーゼが細胞傷害性であることを意味する。
別のアプローチでは、MASP-2の内因性プロモーターによって駆動されるヒトMASP-2 cDNAを含有するミニ遺伝子構築物(SEQ ID NO:49)をチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)に一過的にトランスフェクトした。ヒトMASP-2タンパク質を培養培地に分泌させ、下記のように単離した。
完全長触媒不活性MASP-2の発現:
原理:認識小成分MBLまたはフィコリン(L-フィコリン、H-フィコリン、もしくはM-フィコリンのいずれか)がそれぞれの炭水化物パターンに結合した後に、MASP-2は自己触媒切断によって活性化される。血清からのMASP-2の単離手順中に、または組換え発現後の精製中に、MASP-2を活性化する自己触媒切断が起こることが多い。抗原として使用するための、より安定したタンパク質調製物を得るために、ラットではプロテアーゼドメインの触媒三残基(catalytic triad)に存在するセリン残基をアラニン残基で(SEQ ID NO:55 Ser617からAla617)、またはマウスでは(SEQ ID NO:52 Ser617からAla617)で;ヒトでは(SEQ ID NO:3 Ser618からAla618)で置換することによって、MASP-2Aと呼ばれる触媒不活性型MASP-2を作製した。
触媒不活性なヒトMASP-2Aタンパク質およびマウスMASP-2Aタンパク質を生成するために、表5に示したオリゴヌクレオチドを用いて部位特異的変異誘発を行った。酵素的に活性なセリンをコードするヒトcDNAおよびマウスcDNAの領域にアニーリングするように表5のオリゴヌクレオチドを設計した。セリンコドンをアラニンコドンに変えるためにオリゴヌクレオチドはミスマッチを含有する。例えば、開始コドンから酵素的に活性なセリンまで、このセリンから停止コドンまでの領域を増幅して、Ser618からAla618への変異を含有する変異MASP-2Aからの完全オープンリーディングフレームを生成するために、PCRオリゴヌクレオチドSEQ ID NO:56〜59をヒトMASP-2 cDNA(SEQ ID NO:4)と組み合わせて使用した。アガロースゲル電気泳動およびバンド調製の後にPCR産物を精製し、標準的なテーリング手順を用いて単一アデノシン重複を作製した。次いで、アデノシン尾部のあるMASP-2AをpGEM-T easyベクターにクローニングし、形質転換によって大腸菌に導入した。
SEQ ID NO:64およびSEQ ID NO:65をキナーゼ処理し、これらの2つのオリゴヌクレオチドを等モル量で組み合わせ、100℃で2分間、加熱し、室温までゆっくりと冷却することによってアニーリングすることによって、触媒不活性ラットMASP-2Aタンパク質を生成した。結果として生じたアニーリング断片はPst1およびXba1適合末端を有し、野生型ラットMASP-2 cDNA(SEQ ID NO:53)のPst1-Xba1断片の代わりに挿入して、ラットMASP-2Aを生成した。
下記のように、ヒトMASP-2A、マウスMASP-2A、およびラットMASP-2Aをそれぞれ哺乳動物発現ベクターpEDまたはpCI-Neoにさらにサブクローニングし、チャイニーズハムスター卵巣細胞株DXB1にトランスフェクトした。
別のアプローチでは、Chen et al., J. Biol. Chem., 276(28):25894-25902, 2001に記載の方法を用いて触媒不活性型MASP-2を構築する。簡単に述べると、完全長ヒトMASP-2 cDNAを含有するプラスミド(Thiel et al., Nature 386:506, 1997に記載)をXho1およびEcoR1で消化し、MASP-2 cDNA(SEQ ID NO:4として本明細書に記載)をpFastBac1バキュロウイルストランスファーベクター(Life Technologies, NY)の対応する制限部位にクローニングする。次いで、ペプチド領域アミノ酸610〜625をコードする二本鎖オリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:13)を天然領域アミノ酸610〜625で置換して、不活性プロテアーゼドメインを有するMASP-2完全長ポリペプチドを作製することによって、Ser618にあるMASP-2セリンプロテアーゼ活性部位をAla618に変える。
ヒトMasp-2に由来するポリペプチド領域を含有する発現プラスミドの構築
MASP-2の様々なドメインを分泌させるために、MASP-2シグナルペプチド(SEQ ID NO:5の残基1-15)を用いて以下の構築物を作製する。MASP-2(SEQ ID NO:6)の残基1〜121をコードする領域(N末端CUBIドメインに対応する)を増幅するPCRによって、ヒトMASP-2 CUB1ドメイン(SEQ ID NO:8)を発現する構築物を作製する。MASP-2(SEQ ID NO:6)の残基1〜166をコードする領域(N末端CUB1EGFドメインに対応する)を増幅するPCRによって、ヒトMASP-2 CUBIEGFドメイン(SEQ ID NO:9)を発現する構築物を作製する。MASP-2(SEQ ID NO:6)の残基1〜293をコードする領域(N末端CUBIEGFCUBIIドメインに対応する)を増幅するPCRによって、ヒトMASP-2 CUBIEGFCUBIIドメイン(SEQ ID NO:10)を発現する構築物を作製する。確立されたPCR法に従って、Vent
Rポリメラーゼおよび鋳型としてpBS-MASP-2を用いたPCRによって前述のドメインを増幅する。センスプライマーの5'プライマー配列
は、PCR産物の5'末端にBamHI制限部位(下線)を導入する。以下の表5に示した、それぞれのMASP-2ドメインのアンチセンスプライマーは、それぞれのPCR産物の末端に停止コドン(太字体)の後にEcoRI部位(下線)を導入するように設計されている。DNA断片を増幅したら、BamHIおよびEcoRIで消化し、pFastBac1ベクターの対応する部位にクローニングする。結果として生じた構築物を制限酵素マッピングによって特徴決定し、dsDNA配列決定によって確認する。
MASP-2の組換え真核生物発現、ならびに酵素的に不活性なマウスMASP-2A、ラットMASP-2A、およびヒトMASP-2Aのタンパク質産生
標準的なリン酸カルシウムトランスフェクション手順(Maniatis et al., 1989)を用いて、前記のMASP-2発現構築物およびMASP-2A発現構築物をDXB1細胞にトランスフェクトした。調製物が他の血清タンパク質で確実に汚染されないようにするために、MASP-2Aを無血清培地中で産生させた。1日おきに(計4回)、培地をコンフルエント細胞から回収した。組換えMASP-2Aレベルの平均は、3種類の種それぞれについて培地1リットルにつき約1.5mgであった。
MASP-2Aタンパク質の精製:MASP-2A(前記のSer-Ala変異体)を、MBP-A-アガロースカラムでのアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。この戦略によって、外部タグを使用することなく迅速な精製が可能になった。MASP-2A(等量のローディングバッファー(150mM NaClおよび25mM CaCl2を含有する50mM Tris-Cl, pH7.5で希釈した培地100〜200ml)を、10mlのローディングバッファーで予め平衡状態にしたMBP-アガロースアフィニティカラム(4ml)にロードした。さらに10mlのローディングバッファーで洗浄した後に、1.25M NaClおよび10mM EDTAを含有する50mM Tris-Cl, pH7.5を用いて、タンパク質を1ml画分中に溶出させた。MASP-2Aを含有する画分をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって特定した。必要に応じて、MASP-2Aを、MonoQカラム(HR5/5)でのイオン交換クロマトグラフィーによってさらに精製した。タンパク質を、50mM NaClを含有する50mM Tris-Cl pH7.5を用いて透析し、同じ緩衝液で平衡状態にしたカラムにロードした。洗浄後、結合しているMASP-2Aを、10mlにわたって0.05〜1MのNaCl勾配で溶出させた。
結果:収量0.25〜0.5mgのMASP-2Aタンパク質を培地200mlから得た。MALDI-MSによって求められた分子量77.5kDaは、グリコシル化のために非修飾ポリペプチドの算出値(73.5kDa)よりも大きい。それぞれのN-グリコシル化部位におけるグリカンの付着が、観察された質量の原因となっている。MASP-2AはSDS-ポリアクリルアミドゲル上でシングルバンドとして移動し、このことから、MASP-2Aは生合成中にタンパク質分解処理されないことが証明される。平衡超遠心分離によって求められた重量平均分子量はグリコシル化ポリペプチドのホモ二量体の算出値と一致する。
組換えヒトMASP-2ポリペプチドの産生
組換えMASP-2およびMASP2A由来ポリペプチドを産生するための別の方法は、Thielens, N.M., et al., J. Immunol 166:5068-5077, 2001に記載されている。簡単に述べると、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)昆虫細胞(Novagen, Madison, WIから得たReady-Plaque Sf9細胞)を、50IU/mlペニシリンおよび50mg/mlストレプトマイシン(Life Technologies)を添加したSf900II無血清培地(Life Technologies)中で増殖および維持する。イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)(High Five)昆虫細胞(Jadwiga Chroboczek, Institut de Biologie Structurale, Grenoble, Franceにより提供された)を、50 IU/mlペニシリンおよび50mg/mlストレプトマイシンで添加した、10%FCS(Dominique Dutscher, Brumath, France)を含有するTC100培地(Life Technologies)中で維持する。組換えバキュロウイルスを、Bac-to-Bacシステム(Life Technologies)を用いて生成する。バクミドDNAを、Qiagen midiprep精製系(Qiagen)を用いて精製し、製造業者のプロトコールに記載のようにSf900 II SFM培地(Life Technologies)に溶解したセルフェクション(cellfectin)を用いてSf9昆虫細胞をトランスフェクトするのに使用する。組換えウイルス粒子を4日後に収集し、ウイルスプラークアッセイ法によって滴定し、King and Possee, The Baculovirus Expression System:A Laboratory Guide, Chapman and Hall Ltd., London, pp.111-114, 1992に記載のように増幅する。
High Five細胞(1.75×107細胞/175cm2組織培養フラスコ)に、Sf900 II SFM培地中、感染効率2で、MASP-2ポリペプチドを含有する組換えウイルスを28℃で96時間、感染させる。上清を遠心分離によって収集し、ジイソプロピルホスホロフルオリデートを1mMの最終濃度まで添加する。
MASP-2ポリペプチドを培地中に分泌させる。培養上清を、50mM NaCl、1mM CaCl2、50mM塩酸トリエタノールアミン, pH8.1に対して透析し、同じ緩衝液で平衡状態にしたQ-Sepharose Fast Flowカラム(Amersham Pharmacia Biotech)(2.8×12cm)に1.5ml/minでロードする。溶出は、同じ緩衝液に溶解した350mM NaClまでの1.2リットル直線勾配を適用することによって行う。組換えMASP-2ポリペプチドを含有する画分をウエスタンブロット分析によって特定し、60%(w/v)まで(NH4) 2SO4を添加することによって沈降させ、4℃で一晩静置する。ペレットを、145mM NaCl、1mM CaCl2、50mM塩酸トリエタノールアミン, pH7.4に再懸濁し、同じ緩衝液で平衡状態にしたTSK G3000 SWGカラム(7.5×600mm)(Tosohaas, Montgomeryville, PA)に適用する。次いで、精製されたポリペプチドを、Microsepマイクロコンセントレーター(microconcentrator)(m.w.カットオフ=10,000)(Filtron, Karlstein, Germany)での限外濾過によって0.3mg/mlまで濃縮する。
実施例4
本実施例はMASP-2ポリペプチドに対するポリクローナル抗体を作製する方法について述べる。
材料および方法;
MASP-2抗原:以下の単離されたMASP-2ポリペプチドを用いてウサギを免疫することによって、ポリクローナル抗ヒトMASP-2抗血清を作製する:血清から単離されたヒトMASP-2(SEQ ID NO:6);実施例3に記載の組換えヒトMASP-2(SEQ ID NO:6)、不活性プロテアーゼドメイン(SEQ ID NO:13)を含有するMASP-2A;ならびに前記の実施例3に記載のように発現された、組換えCUBI(SEQ ID NO:8)、CUBEGFI(SEQ ID NO:9)、およびCUBEGFCUBII(SEQ ID NO:10)。
ポリクローナル抗体: BCG(カルメット・ゲラン杆菌ワクチン)で初回刺激を受けた6週齢ウサギを、滅菌食塩水に溶解した100μgのMASP-2ポリペプチド100μg/mlの注射によって免疫する。注射を4週間ごとに行い、実施例5に記載のようにELISAアッセイ法によって抗体価をモニタリングする。プロテインAアフィニティクロマトグラフィーによる抗体精製のために、培養上清を収集する。
実施例5
本実施例は、ラットMASP-2ポリペプチドまたはヒトMASP-2ポリペプチドに対するマウスモノクローナル抗体を作製するための方法について述べる。
材料および方法:
雄A/Jマウス(Harlan, Houston, Tex.)、8〜12週齢に、完全フロイントアジュバント(Difco Laboratories, Detroit, Mich.)を含む200μlのリン酸緩衝食塩水(PBS)pH7.4に溶解したヒトまたはラットのrMASP-2またはrMASP-2Aポリペプチド(実施例3に記載のように作った)100μgを皮下注射する。2週間の間隔で2回、マウスに、不完全フロイントアジュバントに溶解したヒトまたはラットのrMASP-2またはrMASP-2Aポリペプチド50μgを皮下注射する。4週目に、マウスに、PBSに溶解したヒトまたはラットのrMASP-2またはrMASP-2Aポリペプチド50μgを注射し、4日後に融合する。
それぞれの融合について、免疫したマウスの脾臓からシングルセル懸濁液を調製し、Sp2/0ミエローマ細胞との融合に使用する。50%ポリエチレングリコール(M.W.1450)(Kodak, Rochester, N.Y.)および5%ジメチルスルホキシド(Sigma Chemical Co., St. Louis. Mo.)を含有する培地中で、5×108個のSp2/0および5×108個の脾臓細胞を融合する。次いで、10%胎仔ウシ血清、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、0.1mMヒポキサンチン、0.4μMアミノプテリン、および16μMチミジンを添加したIscove培地(Gibco, Grand Island, N.Y.)に溶解して、細胞を1.5×105個の脾臓細胞/懸濁液200μlの濃度まで調節する。200マイクロリットルの細胞懸濁液を、約20個の96ウェルマイクロカルチャープレートの各ウェルに添加する。約10日後に、ELISAアッセイ法における精製因子MASP-2との反応性についてスクリーニングするために培養上清を取り出す。
ELISAアッセイ法: 50ng/mlの精製hMASP-2 50μlまたはラットrMASP-2(もしくはrMASP-2A)を室温で一晩、添加することによって、Immulon2(Dynatech Laboratories, Chantilly, Va.)マイクロテストプレートのウェルをコーティングする。コーティング用のMASP-2濃度が低いので、高親和性抗体の選択が可能である。プレートをパチンとはじくことによって、コーティング溶液を除去した後に、非特異的部位をブロックするために、PBSに溶解した200μlのBLOTTO(無脂肪ドライミルク)を各ウェルに1時間、添加する。次いで、1時間後、ウェルを緩衝液PBST(0.05%Tween20を含有するPBS)で洗浄する。それぞれの融合ウェルから50マイクロリットルの培養上清を収集し、50μlのBLOTTOと混合し、次いで、マイクロテストプレートの個々のウェルに添加する。1時間のインキュベーション後に、ウェルをPBSTで洗浄する。次いで、結合したマウス抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗マウスIgG(Fc特異的)(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, Pa.)との反応によって検出し、BLOTTOで1:2,000に希釈する。発色させるために、0.1%3,3,5,5テトラメチルベンジジン(Sigma, St. Louis, Mo.)および0.0003%過酸化水素(Sigma)を含有するペルオキシダーゼ基質溶液をウェルに30分間、添加する。反応を50μlの2M H2SO4/ウェルを添加することによって止める。反応混合物の450nmでの光学密度をBioTek ELISA Reader(BioTek Instruments, Winooski, Vt.)で読み取る。
MASP-2結合アッセイ法:
前記のMASP-2 ELISAアッセイ法の試験において陽性と判定された培養上清を、MASP-2に対するMASP-2阻害物質の結合親和性を決定するために結合アッセイ法において試験することができる。阻害物質が補体系の他の抗原に結合するかどうか判定するために類似アッセイ法も使用することができる。
ポリスチレンマイクロタイタープレートウェル(96ウェル培地結合プレート, Corning Costar, Cambridge, MA)を、リン酸緩衝食塩水(PBS)pH7.4に溶解したMASP-2(20ng/100μl/ウェル, Advanced Research Technology, San Diego, CA)で4℃において一晩コーティングする。MASP-2溶液を吸引した後に、ウェルを、1%ウシ血清アルブミン(BSA; Sigma Chemical)を含有するPBSで室温において2時間ブロックする。MASP-2コーティングのないウェルはバックグラウンド対照として役立つ。ブロッキング溶液に溶解した様々な濃度のハイブリドーマ上清または精製抗MASP-2 MoAbのアリコートをウェルに添加する。室温で2時間のインキュベーション後に、ウェルをPBSで大規模にリンスする。ブロッキング溶液に溶解したペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG(Sigma Chemical)を添加し、室温で1時間インキュベートすることによって、MASP-2に結合した抗MASP-2 MoAbを検出する。プレートをPBSで徹底的に再度リンスし、100μlの3,3',5,5'テトラメチルベンジジン(TMB)基質(Kirkegaard and Perry Laboratories, Gaithersburg, MD)を添加する。TMBの反応を、100μlの1Mリン酸を添加することによってクエンチし、プレートをマイクロプレートリーダー(SPECTRA MAX 250, Molecular Devices, Sunnyvale, CA)において450nmで読み取る。
次いで、陽性ウェル由来の培養上清を、機能アッセイ法、例えば、実施例2に記載のC4切断アッセイ法において補体活性化を阻害する能力について試験する。次いで、陽性ウェル中の細胞を限界希釈によってクローニングする。MoAbを、前記のようにELISAアッセイ法においてhMASP-2との反応性について再試験する。選択されたハイブリドーマをスピナーフラスコの中で増殖させ、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーによる抗体精製のために、使用済みの培養上清を収集する。
実施例6
本実施例は、ヒト化マウス抗MASP-2抗体および抗体断片の生成および作製について述べる。
実施例5に記載のように、雄A/Jマウスにおいてマウス抗MASP-2モノクローナル抗体を生成する。次いで、マウス抗体は、マウス抗体の免疫原性を弱めるために、マウス定常領域をそのヒト対応物で置換して抗体のキメラIgGおよびFab断片を生成することによって、下記のようにヒト化され、該抗体のキメラIgGおよびFab断片は、本発明によるヒト対象におけるMASP-2依存性補体活性化の副作用を阻害するのに有用である。
1.マウスハイブリドーマ細胞に由来する抗MASP-2可変領域遺伝子のクローニング
RNAzolを用いて製造業者のプロトコール(Biotech, Houston, Tex.)に従って、総RNAを、抗MASP-2 MoAbを分泌するハイブリドーマ細胞(実施例7に記載のように得た)から単離する。プライマーとしてオリゴdTを用いて第一鎖cDNAを総RNAから合成する。免疫グロブリン定常C領域に由来する3'プライマー、および5'プライマーとしてリーダーペプチドまたはマウスV
H遺伝子もしくはV
K遺伝子の最初のフレームワーク領域に由来する縮重プライマーセットを用いてPCRを行う。アンカーPCRは、Chen and Platsucas(Chen, P.F., Scand. J. Immunol. 35:539-549, 1992)に記載のように行う。V
K遺伝子をクローニングするために、Not1-MAK1プライマー
を用いて二本鎖cDNAを調製する。アニーリングされたアダプターAD1
およびAD2
を二本鎖cDNAの5'末端および3'末端の両方に連結する。3'末端にあるアダプターをNot1消化によって除去する。次いで、消化産物を、5'プライマーとしてAD1オリゴヌクレオチドおよび3'プライマーとしてMAK2
を使用するPCRにおける鋳型として使用する。約500bpのDNA断片をpUC19にクローニングする。クローニングされた配列が、予想されたマウス免疫グロブリン定常領域を含むことを確認するために、配列分析用に、いくつかのクローンを選択する。Not1-MAK1およびMAK2オリゴヌクレオチドはV
K領域に由来し、それぞれ、Cκ遺伝子の最初の塩基対から182bpおよび84bp下流にある。完全なV
Kおよびリーダーペプチドを含むクローンを選択する。
V
H遺伝子をクローニングするために、Not1 MAG1プライマー
を用いて二本鎖cDNAを調製する。アニーリングされたアダプターAD1およびAD2を、二本鎖cDNAの5'末端および3'末端の両方に連結する。3'末端にあるアダプターをNot1消化によって除去する。消化産物を、プライマーとしてAD1オリゴヌクレオチドおよびMAG2
を使用するPCRにおける鋳型として使用する。長さが500〜600bpのDNA断片をpUC19にクローニングする。Notl-MAG1およびMAG2オリゴヌクレオチドはマウスCγ.7.1領域に由来し、それぞれ、マウスCγ.7.1遺伝子の最初の塩基対から180bp下流および93bp下流にある。完全なV
Hおよびリーダーペプチドを含むクローンを選択する。
2.キメラMASP-2 IgGおよびFab用の発現ベクターの構築
Kozakコンセンサス配列をヌクレオチド配列の5'末端に付加し、スプライスドナーを3'末端に添加するためのPCR反応の鋳型として、前記のクローニングされたV
H遺伝子およびV
K遺伝子を使用する。PCRエラーが存在しないことを確認するために配列を分析した後に、V
H遺伝子およびV
K遺伝子を、それぞれ、ヒトC.γ1を含有する発現ベクターカセットおよびヒトC.κを含有する発現ベクターカセットに挿入して、pSV2neoV
H-huCγ1およびpSV2neoV-huCγを得る。重鎖ベクターおよび軽鎖ベクターのCsCl勾配精製プラスミドDNAを用いて、エレクトロポレーションによってCOS細胞をトランスフェクトする。48時間後に、約200ng/mlのキメラIgGの存在を確認するために、培養上清をELISAによって試験する。細胞を回収し、総RNAを調製する。プライマーとしてオリゴdTを用いて、総RNAから第一鎖cDNAを合成する。Fd DNA断片およびκDNA断片を生成するために、このcDNAをPCRにおける鋳型として使用する。Fd遺伝子の場合、5'プライマーとして
およびCH1由来3'プライマー
を用いてPCRを行う。DNA配列は、ヒトIgG1の完全なV
HドメインおよびヒトCH1ドメインを含有することが確認される。適切な酵素で消化した後に、Fd DNA断片を、発現ベクターカセットpSV2dhfr-TUSのHindIII制限部位およびBamHI制限部位に挿入して、pSV2dhfrFdを得る。pSV2プラスミドは市販されており、様々な供給源に由来するDNAセグメントからなる。pBR322DNA(薄い線)は、pBR322のDNA複製起点(pBRori)およびラクタマーゼアンピシリン耐性遺伝子(Amp)を含有する。幅広のハッチングによって表され、印が付けられているSV40 DNAは、SV40 DNA複製起点(SV40ori)、初期プロモーター(dhfr遺伝子およびneo遺伝子の5'側)、ならびにポリアデニル化シグナル(dhfr遺伝子およびneo遺伝子の3'側)を含有する。SV40由来ポリアデニル化シグナル(pA)もFd遺伝子の3'末端に配置される。
κ遺伝子の場合、5'プライマーとして
およびC
K由来3'プライマー
を用いてPCRを行う。DNA配列は、完全なV
K領域およびヒトC
K領域を含有することが確認される。適切な制限酵素を用いた消化後に、κDNA断片を発現ベクターカセットpSV2neo-TUSのHindIII制限部位およびBamHI制限部位に挿入して、pSV2neoKを得る。Fd遺伝子およびκ遺伝子の発現は、HCMV由来エンハンサーおよびプロモーターエレメントによって駆動される。Fd遺伝子は、鎖間ジスルフィド結合に関与するシステインアミノ酸残基を含まないので、この組換えキメラFabは、非共有結合により連結された重鎖および軽鎖を含有する。このキメラFabはcFabと呼ばれる。
重鎖と軽鎖の間のジスルフィド結合を有する組換えFabを得るために、ヒトIgG1のヒンジ領域に由来する9個のさらなるアミノ酸(EPKSCDKTH SEQ ID NO:48)のコード配列を含むように、前記のFd遺伝子を延長することができる。Fd遺伝子の3'末端にある30アミノ酸をコードするBstEII-BamHI DNAセグメントを、延長したFdをコードするDNAセグメントと取り替えて、pSV2dhfrFd/9aaを得ることができる。
3.キメラ抗MASP-2 IgGの発現および精製
キメラ抗MASP-2 IgGを分泌する細胞株を生成するために、NSO細胞を、エレクトロポレーションによってpSV2neoVH-huC.γ1およびpSV2neoV-huCκの精製プラスミドDNAでトランスフェクトする。トランスフェクト細胞を、0.7mg/ml G418の存在下で選択する。細胞を、血清含有培地を用いて250mlスピナーフラスコ中で増殖させる。
100mlスピナー培養物の培養上清を、10ml PROSEP-Aカラム(Bioprocessing, Inc., Princeton, NJ.)にロードする。カラムを10ベッド体積のPBSで洗浄する。結合している抗体を50mMクエン酸緩衝液, pH3.0で溶出させる。pHを7.0に調節するために、等量の1M Hepes, pH8.0を、精製抗体を含有する画分に添加する。残留塩を、Millipore膜限外濾過(M.W.カットオフ:3,000)によるPBSを用いた緩衝液交換によって除去する。精製抗体のタンパク質濃度をBCA法(Pierce)によって求める。
4.キメラ抗MASP-2 Fabの発現および精製
キメラ抗MASP-2 Fabを分泌する細胞株を生成するために、CHO細胞を、エレクトロポレーションによってpSV2dhfrFd(またはpSV2dhfrFd/9aa)およびpSV2neoκの精製プラスミドDNAでトランスフェクトする。トランスフェクト細胞をG418およびメトトレキセートの存在下で選択する。選択された細胞株を漸増濃度のメトトレキセートの中で増幅する。細胞を限界希釈によってシングルセルサブクローニングする。次いで、高産生シングルセルサブクローニング細胞株を、無血清培地を用いて100mlスピナーフラスコ中で増殖させる。
キメラ抗MASP-2 Fabを、MASP-2 MoAbに対するマウス抗イディオタイプMoAbを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって精製する。抗イディオタイプMASP-2 MoAbは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と結合したマウス抗MASP-2 MoAbでマウスを免疫し、ヒトMASP-2と競合することができる特異的MoAb結合をスクリーニングすることによって作製することができる。精製のために、cFabまたはcFab/9aaを産生するCHO細胞のスピナー培養物由来の上清100mlを、抗イディオタイプMASP-2 MoAbと結合したアフィニティカラムにロードする。次いで、カラムをPBSで徹底的に洗浄した後に、結合しているFabを50mMジエチルアミン、pH11.5で溶出させる。残留塩を前記のように緩衝液交換によって除去する。精製Fabのタンパク質濃度をBCA法(Pierce)によって求める。
キメラMASP-2 IgG、cFab、およびcFAb/9aaがMASP-2依存性補体経路を阻害する能力は実施例2または実施例7に記載の阻害アッセイ法を用いることによって求めることができる。
実施例7
本実施例は、L-フィコリン/P35、H-フィコリン、M-フィコリン、またはマンナンを介したMASP-2依存性補体活性化を遮断することができるMASP-2阻害物質を特定するための機能スクリーニングとして用いられるインビトロC4切断アッセイ法について述べる。
C4切断アッセイ法: C4切断アッセイ法は、Petersen, S.V., et al., J. Immunol. Methods 257:107, 2001によって述べられており、L-フィコリンに結合する黄色ブドウ球菌由来リポテイコ酸(LTA)に起因するレクチン経路活性化を測定する。
試薬:ホルマリン固定黄色ブドウ球菌(DSM20233)を以下のように調製する。細菌をトリプティックソイ血液培地中で37℃において一晩増殖させ、PBSで3回洗浄し、次いで、PBS/0.5%ホルマリン中で室温において1時間固定し、PBSでさらに3回洗浄した後に、コーティング緩衝液(15mM Na2Co3、35mM NaHCO3、pH9.6)に再懸濁する。
アッセイ法:Nunc MaxiSorbマイクロタイタープレート(Nalgene Nunc International, Rochester, NY)のウェルを、コーティング緩衝液に溶解した1ugのL-フィコリンと共に、コーティング緩衝液に溶解した100μlのホルマリン固定黄色ブドウ球菌DSM20233(OD550=0.5)でコーティングする。一晩のインキュベーション後、ウェルを、TBS(10mM Tris-HCl、140mM NaCl pH7.4)に溶解した0.1%ヒト血清アルブミン(HSA)でブロックし、次いで、0.05%Tween20および5mM CaCl2を含有するTBS(洗浄液緩衝液)で洗浄する。ヒト血清試料を、内因性C4の活性化を阻止し、C1複合体(C1q、C1r、およびC1sからなる)を解離する、20mM Tris-HCl、1M NaCl、10mM CaCl2、0.05%Triton X-100、0.1%HSA、pH7.4で希釈する。抗MASP-2 MoAbおよび阻害ペプチドを含むMASP-2阻害物質を様々な濃度で血清試料に添加する。希釈試料をプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートする。24時間後、プレートを洗浄緩衝液で徹底的に洗浄する。次いで、100μlの4mMバルビタール、145mM NaCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2、pH7.4に溶解した、0.1μgの精製ヒトC4(Dodds, A.W., Methods Enzymol. 223:46, 1993に記載のように得た)を各ウェルに添加する。37℃で1.5時間後に、プレートを再洗浄し、C4b沈着をアルカリホスファターゼ結合ニワトリ抗ヒトC4c(Immunsystem, Uppsala, Swedenから得た)を用いて検出し、比色分析基質ρ-ニトロフェニルリン酸を用いて測定する。
マンナン上でのC4アッセイ法:MBLを介したレクチン経路活性化を測定するために、プレートをLSPおよびマンナンでコーティングした後に、様々なMASP-2阻害物質と混合した血清を添加することによって、前記のアッセイ法を適合化させる。
H-フィコリン(Hakata Ag)上でのC4アッセイ法:H-フィコリンを介したレクチン経路活性化を測定するために、プレートをLPSおよびH-フィコリンでコーティングした後に、様々なMASP-2阻害物質と混合した血清を添加することによって、前記のアッセイ法を適合化させる。
実施例8
以下のアッセイ法は、野生型マウスおよびMASP-2-/-マウスにおける古典経路活性化の存在を証明する。
方法:マイクロタイタープレート(Maxisorb, Nunc, カタログ番号442404, Fisher Scientific)を、10mM Tris、140mM NaCl、pH7.4に溶解した0.1%ヒト血清アルブミンで室温において1時間コーティングした後に、TBS/tween/Ca2+で1:1000に希釈したヒツジ抗全血清(whole serum)抗血清(Scottish Antibody Production Unit, Carluke, Scotland)と4℃で一晩インキュベートすることによって、免疫複合体をインサイチューで生成した。血清試料を野生型およびMASP-2-/-マウスから得て、コーティングされたプレートに添加した。野生型血清試料およびMASP-2-/-血清試料からC1qを枯渇させた対照試料を調製した。C1q枯渇マウス血清は、ウサギ抗ヒトC1q IgG(Dako, Glostrup, Denmark)でコーティングされたプロテインA結合Dynabeads(Dynal Biotech, Oslo, Norway)を用いて供給業者の説明書に従って調製した。プレートを37℃で90分間インキュベートした。結合しているC3bを、TBS/tw/Ca++で1:1000に希釈したポリクローナル抗ヒトC3c抗体(DakoA062)を用いて検出した。二次抗体はヤギ抗ウサギIgGである。
結果:図7は、野生型血清、MASP-2-/-血清、C1q枯渇野生型血清、およびC1q枯渇MASP-2-/-血清中のIgGでコーティングされたプレート上の相対的C3b沈着レベルを示す。これらの結果からMASP-2-/-マウス系統において古典経路は損なわれていないことが証明される。
実施例9
以下のアッセイ法を用いて、免疫複合体によって古典経路が開始する条件下でMASP-2阻害物質の効果を分析することによって、MASP-2阻害物質が古典経路を遮断するかどうか試験する。
方法:免疫複合体によって古典経路が開始する補体活性化の状態に対するMASP-2阻害物質の効果を試験するために、90%NHSを含有する3つ組の試料50μlを、10μg/ml免疫複合体(IC)またはPBSの存在下で37℃においてインキュベートする。37℃でのインキュベーション中に、200nM抗プロペルジンモノクローナル抗体を含有する3つ組の対応する試料(+/-IC)も含める。37℃で2時間のインキュベーション後に、さらなる補体活性化を止めるために、13mM EDTAを全ての試料に添加し、すぐに、試料を5℃まで冷却する。次いで、試料を-70℃で保管した後に、ELISAキット(Quidelカタログ番号A015およびA009)を用いて製造業者の説明書に従って補体活性化産物(C3aおよびsC5b-9)をアッセイする。
実施例10
本実施例はMASP-2活性を遮断する高親和性抗MASP-2 Fab2抗体断片の特定について述べる。
背景および原理:MASP-2は、MBLおよびフィコリンの結合部位、セリンプロテアーゼ触媒部位、タンパク質分解基質C2の結合部位、タンパク質分解基質C4の結合部位、MASP-2酵素前駆体自己活性化のためのMASP-2切断部位、ならびに2つのCa++結合部位を含む、多くの別個の機能ドメインを有する複合タンパク質である。高親和性でMASP-2に結合するFab2抗体断片を特定し、特定されたFab2断片がMASP-2機能活性を遮断できるかどうか判定するために機能アッセイ法において試験した。
MASP-2機能活性を遮断するためには、抗体またはFab2抗体断片は、MASP-2機能活性に必要とされるMASP-2上の構造エピトープに結合し、これを妨害しなければならない。従って、高親和性結合抗MASP-2 Fab2の多くまたは全ては、それらが、MASP-2機能活性に直接関与するMASP-2上の構造エピトープに結合する場合を除いて、MASP-2機能活性を阻害しないことがある。
レクチン経路C3コンバターゼ形成の阻害を測定する機能アッセイ法を用いて、抗MASP-2 Fab2の「遮断活性」を評価した。レクチン経路におけるMASP-2の最も重要な生理学的役割は、レクチン媒介補体経路の次の機能成分、すなわち、レクチン経路C3コンバターゼを生成することであることが公知である。レクチン経路C3コンバターゼは、C3をC3aおよびC3bにタンパク分解によって切断する重要な酵素複合体(C4bC2a)である。MASP-2はレクチン経路C3コンバターゼ(C4bC2a)の構造成分ではない。しかしながら、レクチン経路C3コンバターゼを構成する2つのタンパク質成分(C4b、C2a)を生成するために、MASP-2の機能活性が必要とされる。さらに、MASP-2がレクチン経路C3コンバターゼを生成するためには、前記で列挙されたMASP-2の別個の機能活性の全てが必要であるように見える。これらの理由で、抗MASP-2 Fab2の「遮断活性」の評価において使用するための好ましいアッセイ法は、レクチン経路C3コンバターゼ形成の阻害を測定する機能アッセイ法だと考えられる。
高親和性Fab2の生成:ヒト軽鎖抗体可変配列および重鎖抗体可変配列のファージディスプレイライブラリー、ならびに関心対象の選択されたリガンドと反応するFab2を特定するための自動抗体選択技術を用いて、ラットMASP-2タンパク質(SEQ ID NO:55)に対する高親和性Fab2を作製した。抗体スクリーニングのために、既知量のラットMASP-2(約1mg、>85%純粋)タンパク質を利用した。親和性が最も高い抗体を選択するために3回の増幅を利用した。ELISAスクリーニングのために、抗体断片を発現する約250個の異なるヒットを選んだ。この後に、異なる抗体のユニークさ(uniqueness)を決定するために高親和性ヒットを配列決定した。
50個のユニークな抗MASP-2抗体を精製し、以下でさらに詳述するように、それぞれの精製Fab2抗体250μgをMASP-2結合親和性の特徴決定および補体経路の機能試験に使用した。
抗MASP-2 Fab2の阻害(遮断)活性の評価に用いられるアッセイ法
1.レクチン経路C3コンバターゼ形成の阻害を測定するためのアッセイ法:
背景:レクチン経路C3コンバターゼは、C3を2つの強力な炎症誘発断片であるアナフィラトキシンC3aおよびオプソニンC3bにタンパク分解によって切断する酵素複合体(C4bC2a)である。C3コンバターゼの形成は、炎症を媒介する点でレクチン経路の重要な段階であるように思われる。MASP-2はレクチン経路C3コンバターゼ(C4bC2a)の構造成分ではない。従って、抗MASP-2抗体(またはFab2)は、既にあるC3コンバターゼの活性を直接阻害しない。しかしながら、レクチン経路C3コンバターゼを構成する2つのタンパク質成分(C4b、C2a)を生成するために、MASP-2セリンプロテアーゼ活性が必要とされる。従って、MASP-2機能活性を阻害する抗MASP-2 Fab2(すなわち、遮断抗MASP-2 Fab2)はレクチン経路C3コンバターゼの新規形成を阻害する。C3は、その構造の一部として、珍しく、かつ高反応性のチオエステル基を含有する。このアッセイ法ではC3がC3コンバターゼによって切断されると、C3b上のチオエステル基は、エステル結合またはアミド結合を介してプラスチックウェルの底に固定化された巨大分子上のヒドロキシル基またはアミノ基と共有結合を形成することができ、従って、ELISAアッセイ法におけるC3bの検出が容易になる。
酵母マンナンはレクチン経路の公知の活性化因子である。C3コンバターゼ形成を測定する以下の方法では、マンナンでコーティングされたプラスチックウェルを希釈ラット血清と37℃で30分間インキュベートして、レクチン経路を活性化した。次いで、ウェルを洗浄し、標準的なELISA法を用いて、ウェル上に固定化されたC3bについてアッセイした。このアッセイ法において生成されたC3bの量は、レクチン経路C3コンバターゼの新規形成を直接反映するものである。このアッセイ法では、選択された濃度の抗MASP-2 Fab2がC3コンバターゼ形成を阻害し、その結果として起きるC3b生成を阻害する能力を試験した。
方法:
96ウェルCostar Medium Bindingプレートを、1ug/50Tl/ウェルで、50mM炭酸緩衝液、pH9.5で希釈したマンナンと5℃で一晩インキュベートした。一晩のインキュベーション後、200Tl PBSで各ウェルを3回洗浄した。次いで、ウェルを、PBSに溶解した100Tl/ウェルの1%ウシ血清アルブミンでブロックし、穏やかに混合しながら室温で1時間インキュベートした。次いで、各ウェルを200TlのPBSで3回洗浄した。抗MASP-2 Fab2試料を、5Cで、Ca++およびMg++を含有するGVB緩衝液(4.0mMバルビタール、141mM NaCl、1.0mM MgCl2、2.0mM CaCl2、0.1%ゼラチン、pH7.4)で選択された濃度まで希釈した。0.5%ラット血清を5Cで前記の試料に添加し、100Tlを各ウェルに移した。プレートに蓋をし、補体活性化を可能にするために37C水浴中で30分間インキュベートした。37C水浴から、氷と水の混合物を含む容器にプレートを移すことによって、反応を止めた。各ウェルを、PBS-Tween20(0.05%Tween20を含むPBS)で200Tlで5回洗浄し、次いで、200TlのPBSで2回洗浄した。2.0mg/mlウシ血清アルブミンを含有するPBSに溶解した100Tl/ウェルの一次抗体(ウサギ抗ヒトC3c、DAKO A0062)1:10,000希釈液を添加し、穏やかに混合しながら室温で1時間インキュベートした。各ウェルを5×200TlのPBSで洗浄した。2.0mg/mlウシ血清アルブミンを含有するPBSに溶解した、100Tl/ウェルの二次抗体(ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG, American Qualex A102PU)1:10,000希釈液を添加し、シェーカーに載せて穏やかに混合しながら室温で1時間インキュベートした。各ウェルをPBSで200Tlで5回洗浄した。100Tl/ウェルのペルオキシダーゼ基質TMB(Kirkegaard & Perry Laboratories)を添加し、室温で10分間インキュベートした。100Tl/ウェルの1.0M H3PO4を添加することによってペルオキシダーゼ反応を止め、OD450を測定した。
2.MASP-2依存性C4切断の阻害を測定するためのアッセイ法:
背景:MASP-2のセリンプロテアーゼ活性は高度に特異的であり、MASP-2のタンパク質基質はC2およびC4の2種類しか特定されていない。C4の切断によってC4aおよびC4bが生成される。抗MASP-2 Fab2は、C4切断に直接関与するMASP-2上の構造エピトープ(例えば、C4のMASP-2結合部位;MASP-2セリンプロテアーゼ触媒部位)に結合し、それによって、MASP-2のC4切断機能活性を阻害する可能性がある。
酵母マンナンはレクチン経路の公知の活性化因子である。MASP-2のC4切断活性を測定する以下の方法では、マンナンでコーティングされたプラスチックウェルを希釈ラット血清と37Cで30分間インキュベートして、レクチン経路を活性化した。このELISA法において用いられる一次抗体はヒトC4しか認識しないので、希釈ラット血清にヒトC4(1.0Tg/ml)も添加した。次いで、ウェルを洗浄し、標準的なELISA方法を用いて、ウェルに固定化されたヒトC4bについてアッセイした。このアッセイ法において生成されたC4bの量はMASP-2依存性C4切断活性の尺度である。このアッセイ法では、選択された濃度の抗MASP-2 Fab2がC4切断を阻害する能力を試験した。
方法:96ウェルCostar Medium Bindingプレートを、1.0Tg/50Tl/ウェルで、50mM炭酸緩衝液、pH9.5で希釈したマンナンと5Cで一晩インキュベートした。200Tl PBSで各ウェルを3回洗浄した。次いで、ウェルを、PBSに溶解した100Tl/ウェルの1%ウシ血清アルブミンでブロックし、穏やかに混合しながら室温で1時間インキュベートした。各ウェルを200TlのPBSで3回洗浄した。抗MASP-2 Fab2試料を、5Cで、Ca++およびMg++を含有するGVB緩衝液(4.0mMバルビタール、141mM NaCl、1.0mM MgCl2、2.0mM CaCl2、0.1%ゼラチン、pH7.4)で選択された濃度まで希釈した。これらの試料に1.0Tg/ml/ヒトC4(Quidel)も含めた。前記の試料に0.5%ラット血清を5Cで添加し、100Tlを各ウェルに移した。プレートに蓋をし、補体を活性化するために37C水浴中で30分間インキュベートした。37C水浴から、氷と水の混合物を含む容器にプレートを移すことによって、反応を止めた。各ウェルを、PBS-Tween20(0.05%Tween20を含むPBS)で200Tlで5回洗浄した。次いで、各ウェルを200TlのPBSで2回洗浄した。2.0mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSに溶解した、100Tl/ウェルのビオチン結合ニワトリ抗ヒトC4c(Immunsystem AB, Uppsala, Sweden)1:700希釈液を添加し、穏やかに混合しながら室温で1時間インキュベートした。各ウェルを200TlのPBSで5回洗浄した。2.0mg/ml BSAを含有するPBSに溶解した、100Tl/ウェルの0.1Tg/mlのペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(Pierce Chemical#21126)を添加し、シェーカーに載せて穏やかに混合しながら室温で1時間インキュベートした。各ウェルを200TlのPBSで5回洗浄した。100Tl/ウェルのペルオキシダーゼ基質TMB(Kirkegaard & Perry Laboratories)を添加し、室温で16分間インキュベートした。100Tl/ウェルの1.0M H3PO4を添加することによってペルオキシダーゼ反応を止め、OD450を測定した。
3.抗ラットMASP-2 Fab2と「天然」ラットMASP-2との結合アッセイ法
背景:MASP-2は、通常、特異的レクチン分子(マンノース結合タンパク質(MBL)およびフィコリン)も含むMASP-2二量体複合体として血漿中に存在する。従って、抗MASP-2 Fab2と生理学的に関連する形態のMASP-2との結合の研究に興味があるのであれば、精製組換えMASP-2ではなく、Fab2と血漿中の「天然」MASP-2との相互作用が用いられる結合アッセイ法を開発することが重要である。この結合アッセイ法では、最初に、10%ラット血清に由来する「天然」MASP-2-MBL複合体をマンナンコーティングウェルに固定化した。次いで、標準的なELISA法を用いて、固定化「天然」MASP-2に対する様々な抗MASP-2 Fab2の結合親和性を研究した。
方法:96ウェルCostar High Bindingプレートを、1Tg/50Tl/ウェルで、50mM炭酸緩衝液、pH9.5で希釈したマンナンと5℃で一晩インキュベートした。200TlのPBSで各ウェルを3回洗浄した。ウェルを100Tl/ウェルの、PBST(0.05%Tween20を含むPBS)に溶解した0.5%無脂肪ドライミルクでブロックし、穏やかに混合しながら室温で1時間インキュベートした。各ウェルを200TlのTBS/Tween/Ca++洗浄緩衝液(5.0mM CaCl2を含有するTris緩衝食塩水、0.05%Tween20、pH7.4)で3回洗浄した。High Salt Binding Buffer(20mM Tris、1.0M NaCl、10mM CaCl2、0.05%Triton-X100、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン、pH7.4)に溶解した10%ラット血清を氷上で調製した。100Tl/ウェルを添加し、5℃で一晩インキュベートした。ウェルを200TlのTBS/Tween/Ca++洗浄緩衝液で3回洗浄した。次いで、ウェルを200TlのPBSで2回洗浄した。Ca++およびMg++を含有するGVB緩衝液(4.0mMバルビタール、141mM NaCl、1.0mM MgCl2、2.0mM CaCl2、0.1%ゼラチン、pH7.4)で希釈した100Tl/ウェルの選択された濃度の抗MASP-2 Fab2を添加し、穏やかに混合しながら室温で1時間インキュベートした。各ウェルを200TlのPBSで5回洗浄した。2.0mg/mlウシ血清アルブミンを含むPBSで1:5000に希釈した100Tl/ウェルのHRP結合ヤギ抗Fab2(Biogenesisカタログ番号0500-0099)を添加し、穏やかに混合しながら室温で1時間インキュベートした。各ウェルを200TlのPBSで5回洗浄した。100Tl/ウェルのペルオキシダーゼ基質TMB(Kirkegaard & Perry Laboratories)を添加し、室温で70分間インキュベートした。100Tl/ウェルの1.0M H3PO4を添加することによってペルオキシダーゼ反応を止め、OD450を測定した。
結果:
ELISAスクリーニングのために、高親和性でラットMASP-2タンパク質と反応した約250個の異なるFab2を選んだ。異なる抗体のユニークさを決定するために、これらの高親和性Fab2を配列決定した。さらなる分析のために、50個のユニークな抗MASP-2抗体を精製した。それぞれの精製Fab2抗体250μgを、MASP-2結合親和性の特徴決定および補体経路の機能試験に使用した。この分析の結果を以下の表6に示した。
(表6)レクチン経路補体活性化を遮断する抗MASP-2 FAB2
表6に示したように、試験した50個の抗MASP-2 Fab2のうち17個のFab2が、10nM Fab2に等しい、または10nM Fab2未満のIC50でC3コンバターゼ形成を強力に阻害するMASP-2遮断Fab2であると特定された(34%の陽性ヒット率)。17個のFab2のうち8個のIC50はnM以下の範囲である。さらに、表6に示したMASP-2遮断Fab2のうち17個全てが、レクチン経路C3コンバターゼアッセイ法においてC3コンバターゼ形成の本質的に完全な阻害を示した。図8Aは、試験された他のFab2抗体を代表するFab2抗体#11についてのC3コンバターゼ形成アッセイ法の結果を図示する。この結果を表6に示した。それぞれのMASP-2分子がFab2に結合している場合でも、「遮断」Fab2がMASP-2機能をほんのわずかにしか阻害しない場合があるのは理論上可能なので、これは重要な考慮事項である。
マンナンはレクチン経路の公知の活性化因子であるが、ラット血清中に抗マンナン抗体が存在することでも古典経路が活性化し、古典経路C3コンバターゼを介してC3bが生成され得ることも理論上可能である。しかしながら、本実施例において列挙された17個の遮断抗MASP-2 Fab2はそれぞれC3b生成を強力に阻害する(>95%)。従って、このことから、レクチン経路C3コンバターゼに対する、このアッセイ法の特異性が証明される。
それぞれの遮断Fab2の見かけのKdを算出するために、17個全ての遮断Fab2を用いて結合アッセイ法も行った。遮断Fab2のうちの6個についての、天然ラットMASP-2に対する抗ラットMASP-2 Fab2の結合アッセイ法の結果も表6に示した。図8Bは、Fab2抗体#11を用いた結合アッセイ法の結果を図示する。他のFab2についても同様の結合アッセイ法を行った。この結果を表6に示した。一般的に、6個のFab2のそれぞれと「天然」MASP-2の結合について得られた見かけのKdは、C3コンバターゼ機能アッセイ法におけるFab2のIC50と妥当によく一致する。MASP-2はそのプロテアーゼ活性が活性化されると「不活性」型から「活性」型へとコンフォメーション変化を受けるという証拠がある(Feinberg et al., EMBO J 22:2348-59(2003); Gal et al., J. Biol.Chem. 250:33435-44(2005))。C3コンバターゼ形成アッセイ法において用いられる正常ラット血漿中には、MASP-2は主に「不活性な」酵素前駆体コンフォメーションの状態で存在する。対照的に、結合アッセイ法では、MASP-2は、固定化マンナンと結合したMBLとの複合体の一部として存在する。従って、MASP-2は「活性」コンフォメーション状態にあると考えられる(Petersen et al., J. Immunol Methods 257:107-16, 2001)。その結果、これらの2つの機能アッセイ法において試験された17個の遮断Fab2のそれぞれについてIC50とKdの間に厳密な対応関係が予想されるとは限らないと考えられる。なぜなら、それぞれのアッセイ法において、Fab2は異なるコンフォメーション型のMASP-2を結合するからである。にもかかわらず、Fab2#88を除いて、2つのアッセイ法において試験された他の16個のFab2のそれぞれについてIC50と見かけのKdの間に妥当に密接な対応関係があるように思われる(表6を参照されたい)。
MASP-2によって媒介されるC4切断の阻害について遮断Fab2のいくつかを評価した。図8Cは、Fab2#41による阻害、IC50=0.81nMを示すC4切断アッセイ法の結果を図示する(表6を参照されたい)。図9に示したように、試験されたFab2の全てが、C3コンバターゼアッセイ法において得られたIC50とほぼ同じIC50でC4切断を阻害することが見出された(表6を参照されたい)。
マンナンはレクチン経路の公知の活性化因子であるが、ラット血清中に抗マンナン抗体が存在することでも古典経路が活性化し、それによって、C1sを介したC4切断によってC4bが生成され得ることも理論上可能である。しかしながら、C4b生成を強力に阻害する(>95%)、いくつかの抗MASP-2 Fab2が特定されている。従って、このことから、MASP-2によって媒介されるC4切断に対する、このアッセイ法の特異性が証明される。C4はC3と同様に、その構造の一部として、珍しく、かつ高反応性のチオエステル基を含有する。このアッセイ法においてC4がMASP-2によって切断されると、C4b上のチオエステル基は、エステル結合またはアミド結合を介してプラスチックウェルの底に固定化された巨大分子上のヒドロキシル基またはアミノ基と共有結合を形成することができ、従って、ELISA法におけるC4bの検出が容易になる。
これらの結果から、C4およびC3コンバターゼ活性を両方とも機能的に遮断する、ラットMASP-2タンパク質に対する高親和性FAB2が作製され、それによって、レクチン経路活性化が阻止されることがはっきりと証明される。
実施例11
本実施例は、実施例10に記載のように生成された遮断抗ラットMASP-2 Fab2抗体のいくつかのエピトープマッピングについて述べる。
方法:
図10に示したように、全てN末端6×Hisタグを有する以下のタンパク質を、pED4ベクターを用いてCHO細胞において発現させた:
ラットMASP-2A、活性中心にあるセリンをアラニンに変えることによって不活性化された完全長MASP-2タンパク質(S613A);
ラットMASP-2K、自己活性化を低下させるように変えられた完全長MASP-2タンパク質(R424K);
CUBI-II、CUBIドメイン、EGF様ドメイン、およびCUBIIドメインしか含まないラットMASP-2 N末端断片;ならびに
CUBI/EGF様、CUBIドメインおよびEGF様ドメインしか含まないラットMASP-2 N末端断片。
以前に述べられたように(Chen et al., J. Biol. Chem. 276:25894-02(2001))、これらのタンパク質をニッケル-アフィニティクロマトグラフィーによって培養上清から精製した。
ラットMASP-2のCCPIIおよびセリンプロテアーゼドメインを含有するC末端ポリペプチド(CCPII-SP)を、pTrxFus(Invitrogen)を用いてチオレドキシン融合タンパク質として大腸菌において発現させた。タンパク質を、Thiobondアフィニティ樹脂を用いて細胞溶解産物から精製した。チオレドキシン融合パートナーを陰性対照として空のpTrxFusから発現させた。
全ての組換えタンパク質をTBS緩衝液で透析し、280nmのODを測定することによって濃度を求めた。
ドットブロット分析:
前述したおよび図10に示した5個の組換えMASP-2ポリペプチドの段階希釈液(ならびにCCPII-セリンプロテアーゼポリペプチドの陰性対照としてチオレドキシンポリペプチド)をニトロセルロース膜上にスポットした。スポットされたタンパク質の量は5倍段階で100ng〜6.4pgであった。後の実験において、スポットされたタンパク質の量は、再度、5倍段階で50ng〜16pgであった。膜を、TBS(ブロッキング緩衝液)に溶解した5%スキムミルク粉末でブロックし、次いで、ブロッキング緩衝液(5.0mM Ca2+を含有する)に溶解した1.0μg/mlの抗MASP-2 Fab2とインキュベートした。結合しているFab2を、HRP結合抗ヒトFab(AbD/Serotec;1/10,000に希釈した)およびECL検出キット(Amersham)を用いて検出した。1枚の膜を、陽性対照としてポリクローナルウサギ抗ヒトMASP-2 Ab(Stover et al., J Immunol 163:6848-59(1999)に記載)とインキュベートした。この場合、結合しているAbを、HRP結合ヤギ抗ウサギIgG(Dako; 1/2,000に希釈した)を用いて検出した。
MASP-2結合アッセイ法
ELISAプレートを、炭酸緩衝液(pH9.0)に溶解した1.0μg/ウェルの組換えMASP-2AまたはCUBI-IIポリペプチドで4℃において一晩コーティングした。ウェルを、TBSに溶解した1%BSAでブロックし、次いで、5.0mM Ca2+を含有するTBSに溶解した抗MASP-2 Fab2の段階希釈液を添加した。プレートをRTで1時間インキュベートした。TBS/tween/Ca2+で3回洗浄した後、TBS/Ca2+で1/10,000に希釈したHRP結合抗ヒトFab(AbD/Serotec)を添加し、プレートをRTでさらに1時間インキュベートした。結合している抗体を、TMBペルオキシダーゼ基質キット(Biorad)を用いて検出した。
結果:
Fab2と様々なMASP-2ポリペプチドとの反応性を証明したドットブロット分析の結果を以下の表7に示した。表7に示した数値は、ほぼ最大半量のシグナル強度を得るのに必要とされる、スポットされたタンパク質の量を示す。示したように、(チオレドキシン融合パートナー単独を除く)全てのポリペプチドが、陽性対照Ab(ポリクローナル抗ヒトMASP-2血清、ウサギにおいて産生された)によって認識された。
(表7)ドットブロットにおける様々な組換えラットMASP-2ポリペプチドとの反応性
経路活性が第2週および第3週にわたって観察され、抗MASP-2 MoAb投与後17日までにマウスにおいてレクチン経路が完全に回復した。NR=反応なし。陽性対照抗体は、ウサギにおいて産生されたポリクローナル抗ヒトMASP-2血清である。
全てのFab2がMASP-2AならびにMASP-2Kと反応した(データ示さず)。Fab2の大半はCCPII-SPポリペプチドを認識したが、N末端断片を認識しなかった。2つの例外はFab2#60およびFab2#57である。Fab2#60はMASP-2AおよびCUBI-II断片を認識するが、CUBI/EGF様ポリペプチドもCCPII-SPポリペプチドも認識しない。このことから、Fab2#60は、CUBII中のエピトープまたはCUBIIとEGF様ドメインにまたがるエピトープに結合することが示唆される。Fab2#57は、MASP-2Aを認識するが、試験されたいかなるMASP-2断片も認識することはなく、このFab2がCCP1中のエピトープを認識することを示す。Fab2#40および#49は完全なMASP-2Aにしか結合しなかった。図11に示したELISA結合アッセイ法において、Fab2#60は、わずかに低い見かけの親和性ではあるがCUBI-IIポリペプチドにも結合した。
これらの知見から、MASP-2タンパク質の複数の領域に対するユニークな遮断Fab2が特定されたことが証明される。
実施例12
本実施例はマウス腎臓虚血/再灌流モデルにおけるMASP-2-/-マウスの分析について述べる。
原理/背景:体温での腎臓における虚血-再灌流(I/R)損傷は、血液量減少性ショック、腎臓動脈閉塞、およびクロスクランピング(cross-clamping)法を含む多数の臨床状態において関連がある。
腎臓虚血-再灌流(I/R)は、50%までの死亡率に関連する急性腎不全の重要な原因である (Levy et al., JAMA 275:1489-94, 1996; Thadhani et al., N. Engl. J. Med. 334:1448-60, 1996)。移植後腎不全は、腎臓移植後によく見られ、かつ脅威となる合併症である(Nicholson et al., Kidney Int. 55:2585-91, 2000)。腎臓I/R損傷の有効な治療法は現在利用できず、血液透析が利用可能な唯一の治療法である。腎臓I/R損傷の病態生理学は複雑である。最近の研究により、腎臓I/R損傷の発生において補体活性化のレクチン経路が重要な役割を有し得ることが示されている(deVries et al., Am. J. Path. 165:1677-88, 2004)。
方法:
MASP-2(-/-)マウスを実施例1に記載のように生成し、少なくとも10世代にわたってC57B1/6と戻し交配した。6匹の雄MASP-2(-/-)および6匹の野生型(+/+)マウス、体重22〜25gに、Hypnovel(6.64 mg/kg; Roche products Ltd. Welwyn Garden City, UK)の腹腔内注射を投与し、その後に、イソフルラン(Abbott Laboratories Ltd., Kent, UK)吸入によって麻酔をかけた。イソフルランは、肝毒性がほとんどない穏やかな吸入麻酔薬であるので選択された。濃度は正確に作製され、長期麻酔の後でも動物は速やかに回復する。Hypnovelは動物において神経遮断性鎮痛の状態を生じ、少量のイソフルランが投与される必要があることを意味するので投与された。一定の体温を維持するために動物の真下に暖かいパッドを敷いた。次に、腹部縦切開を行い、一対の開創器を用いて体腔を開いた。右腎および左腎の腎静脈および腎動脈の上部および下部にある結合組織を取り除き、毛細血管瘤鉗子を55分間、適用することによって腎茎をきつく締めた。この虚血期間は、当初、この研究室で行われた先行研究に基づいた(Zhou et al., J. Clin. Invest. 105:1363-71(2000))。さらに、虚血滴定(ischemic titration)後に55分の標準的な虚血時間が選択され、55分で、5%未満の低い死亡率で、可逆的でもある損傷が一貫して得られることが見出された。閉塞後、0.4mlの暖かい食塩水(37℃)を腹腔に入れ、次いで、虚血期間に腹部を閉じた。毛細血管瘤鉗子を取り外した後、腎臓に血液が再び流れ始めたことを示す色の変化まで腎臓を観察した。さらに0.4mlの暖かい食塩水を腹腔に入れ、開口部を縫合した。その後、動物をケージに戻した。鉗子を取り外して24時間後に尾血液試料を採取し、48時間でマウスを屠殺し、さらなる血液試料を収集した。
腎損傷の評価:6匹の雄MASP-2(-/-)および6匹のWT(+/+)マウスにおいて、再灌流してから24時間後および48時間後の腎機能を評価した。血中クレアチニン測定値を質量分析によって求めた。血中クレアチニン測定値は、再現性のある腎機能指数(感度<1.0μmol/L)を提供する。図12は、再灌流してから24時間後および48時間後の野生型C57B1/6対照およびMASP-2(-/-)の血中尿素窒素クリアランスを図示する。図12に示したように、MASP-2(-/-)マウスは、24時間および48時間で野生型対照マウスと比較して血中尿素量の有意な低下を示した。このことから、虚血再灌流傷害モデルにおける腎臓損傷からの保護機能効果が示された。
全体的に見て、外科的処置および虚血発作の24時間後および48時間後に、WT(+/+)マウスおよびMASP-2(-/-)マウスの両方において血中尿素の増加が見られた。別途、非虚血WT(+/+)外科手術動物における血中尿素レベルが5.8mmol/Lと求められた。図12に示されたデータに加えて、1匹のMASP-2(-/-)動物が、24時間で6.8mmol/Lおよび48時間で9.6mmol/Lの値で、虚血発作からのほぼ完全な保護を示した。この動物は、虚血性損傷が存在しなかった可能性がある、潜在的なアウトライアーとして、群分析から排除した。従って、図12に示した最終分析は5匹のMASP-2(-/-)マウスおよび6匹のWT(+/+)マウスを含み、MASP-2(-/-)マウスにおいて24時間および48時間で血中尿素の統計的に有意な低下が見られた(スチューデントt検定p<0.05)。これらの知見により、MASP-2活性阻害には、虚血性損傷による腎臓損傷からの保護効果または治療効果があると予想されることが示される。
実施例13
本実施例はマウス黄斑変性モデルにおけるMASP-2-/-の結果について述べる。
原理/背景:加齢黄斑変性(AMD)は、先進国における55歳以降の失明の第1位の原因である。AMDは、2つの主な型:新生血管型(ウェット)AMDおよび萎縮型(ドライ)AMDで発生する。新生血管型(ウェット)型はAMDに関連した重篤な失明の90%を占めるが、AMD個体の約20%しかウェット型を発症しない。AMDの臨床上の顕著な特徴には、複数のドルーゼン、地図状萎縮、および脈絡膜血管新生(CNV)が含まれる。2004年12月に、FDAは、ウェット(新生血管)型AMDを治療するための、血管内皮増殖因子(VEGF)を特異的な標的とし、その作用を遮断する新種の眼用薬物であるMacugen(ペガプタニブ)を認可した(Ng et al., Nat Rev. Drug Discov 5:123-32(2006))。Macugenは、AMD患者サブグループを対象とした有望な新しい治療選択肢であるが、依然として、この複雑な疾患のさらなる治療法を開発することが差し迫って必要とされている。複数の独立した研究分野が、補体活性化の中心的な役割をAMD発生に結びつけている。最も重篤な型のAMDである脈絡膜血管新生(CNV)の発生には補体経路の活性化が関与している可能性がある。
25年以上前に、Ryanは、動物におけるCNVのレーザー誘導性損傷モデルについて述べた(Ryan, S.J., Tr. Am. Opth. Soc. LXXVII:707-745, 1979)。当初、このモデルはアカゲザルを用いて開発されたが、その後、類似のCNVモデルを開発するために、マウスを含む様々な研究動物において同じ技術が使用されてきた(Tobe et al., Am. J. Pathol. 153:1641-46, 1998)。このモデルでは、ブルッフ膜を破壊するためにレーザー光凝固が用いられ、これはCNV様の膜を形成する行為である。レーザー誘導性モデルはヒト状態の重要な特徴の多くを捕らえる(最近の総説については、Ambati et al., Survey Ophthalmology 48:251-293, 2003を参照されたい)。現在、レーザー誘導性マウスモデルは十分に確立しており、大規模な、かつ増加し続けている研究プロジェクトにおける実験基盤として用いられる。レーザー誘導性モデルは、このモデルを用いた発生および薬物阻害の前臨床試験がヒトにおけるCNVに関連するほどヒトCNVと十分な生物学的類似性を共有すると一般に受け入れられている。
方法:
MASP-2-/-マウスを実施例1に記載のように生成し、10世代にわたってC57Bl/6と戻し交配した。本研究では、新生血管AMDの促進モデルであるレーザー誘導性CNVの経過においてMASP-2(-/-)雄マウスおよびMASP-2(+/+)雄マウスを評価した場合の結果を、組織損傷の尺度としての走査型レーザー共焦点顕微鏡観察によるレーザー誘導性CNVの体積、ならびにレーザー損傷後のELISAによる網膜色素上皮(RPE)/脈絡膜におけるCNVに関与する強力な血管新生因子であるVEGFレベルの決定に焦点を当てて比較した。
脈絡膜血管新生(CNV)の誘導:0日目に、薬物群の割り付けが知らされていない一人の人が、それぞれの動物の両眼に対してレーザー光凝固(532nm、200mW、100ms、75μm; Oculight GL, Iridex, Mountain View, CA)を行った。標準的なやり方で、スリットランプ送達系およびコンタクトレンズとしてカバーガラスを用いて視神経周囲にレーザースポットを適用した。レーザー損傷の形態エンドポイントは、ブルッフ膜の破壊と相関すると考えられている兆候であるキャビテーションバルブ(cavitation bubble)の出現であった。詳細な方法および評価されたエンドポイントは以下の通りである。
フルオレセイン血管造影:レーザー光凝固の1週間後に、フルオレセイン血管造影をカメラおよびイメージングシステム(TRC501Aカメラ; ImageNet 2.01システム; Topcon, Paramus, NJ)を用いて行った。0.1mlの2.5%フルオレセインナトリウムを腹腔内注射した後に、写真を、眼底カメラレンズと接触している20-Dレンズによって取り込んだ。レーザー光凝固または血管造影に関与していない網膜の専門家がフルオレセイン血管造影図を盲検形式で一気に評価した。
脈絡膜血管新生(CNV)の体積:レーザー損傷の1週間後に、眼を摘出し、4%パラホルムアルデヒドで4℃において30分間固定した。前区を取り出すことによって眼杯を得て、PBSで3回洗浄した後に、メタノール系列で脱水および再水和した。緩衝液(1%ウシ血清アルブミンおよび0.5%TritonX-100を含有するPBS)で2回、室温で30分間ブロッキングした後に、眼杯を、0.2%BSAおよび0.1%TritonX-100を含有するPBSで希釈した、0.5%FITC-イソレクチンB4(Vector laboratories, Burlingame, CA)と4℃で一晩インキュベートした。0.5%FITC-イソレクチンB4は内皮細胞の表面にある末端β-D-ガラクトース残基に結合し、マウス脈管構造を選択的に標識する。0.1%TritonX-100を含有するPBSで2回、洗浄した後に、神経感覚網膜をそっと剥がし、視神経から切り離した。4つの弛緩放射状切開部(relaxing radial incision)を作り、残っているRPE-脈絡膜-強膜複合体を、antifade培地(Immu-Mount Vectashield Mounting Medium; Vector Laboratories)に入れてフラットマウント(flatmount)し、カバーガラスをかけた。
フラットマウントを走査型レーザー共焦点顕微鏡(TCS SP; Leica, Heidelberg, Germany)によって調べた。青色アルゴン波長(488nm)で励起し、515〜545nmの発光を取り込むことによって血管を視覚化した。全てのイメージング研究に40×油浸対物レンズを使用した。RPE-脈絡膜-強膜複合体の表面から水平光学切片(1μm段階)を得た。病変とつながっている周囲の脈絡膜血管ネットワークを特定することができる最も深い焦平面が病変の床(floor)であると判断された。レーザーの標的となった領域内にあり、この基準面の表面にある任意の血管がCNVと判断された。それぞれの切片の画像をデジタル保存した。CNV関連蛍光の面積を、顕微鏡ソフトウェア(TCS SP; Leica)によるコンピュータ画像分析によって測定した。それぞれの水平切片にある全蛍光面積の合計をCNV体積の指数として使用した。治療群の割り付けが知らされていない作業者がイメージングを行った。
CNVを発症している各レーザー病変の確率は、属する群(マウス、眼、およびレーザースポット)の影響を受けるので、病変体積の平均を、線形混合モデルとスプリットプロット反復測定(split plot repeated-measures)デザインを用いて比較した。全プロット因子(whole plot factor)は動物が属する遺伝群であったのに対して、スプリットプロット因子は眼であった。統計的有意性は0.05水準と決められた。平均のポストホック比較を、多重比較のためのボンフェローニ調整(Bonferroni adjustment)を用いて構築した。
VEGF ELISA 12個のレーザースポットによる損傷の3日後に、RPE-脈絡膜複合体を、溶解緩衝液(20mMイミダゾールHCl、10mM KCl、1mM MgCL2、10mM EGTA、1%Triton X-100、10mM NaF、1mMモリブデン酸Na、および1mM EDTAとプロテアーゼインヒビター)に入れて氷上で15分間、超音波処理した。上清中のVEGFタンパク質レベルを、450〜570nm(Emax; Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で全てのスプライスバリアントを認識するELISAキット(R&D Systems, Minneapolis, MN)によって求め、総タンパク質に対して基準化した。光凝固にもイメージングにも血管造影にも関与しなかった作業者が、2つ組の測定を盲検形式で行った。VEGF数を少なくとも3回の独立した実験の平均+/-SEMとして表し、マン・ホイットニーU検定を用いて比較した。P<0.05で帰無仮説を棄却した。
結果:
VEGFレベルの評価:
図13Aは、0日目にC57Bl6野生型マウスおよびMASP-2(-/-)マウスから単離されたRPE-脈絡膜複合体におけるVEGFタンパク質レベルを図示する。図13Aに示したように、VEGFレベルの評価は、C57bl野生型対照マウスに対するMASP-2(-/-)マウスにおけるVEGFベースラインレベルの減少を示す。図13Bは、レーザー誘導性損傷の3日後に測定されたVEGFタンパク質レベルを図示する。図13Bに示したように、VEGFレベルはレーザー誘導性損傷の3日後に野生型(+/+)マウスでは有意に増加し、発表された研究(Nozaki et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:2328-33(2006))と一致する。しかしながら、驚いたことに、MASP-2(-/-)マウスでは非常に低レベルのVEGFが見られた。
脈絡膜血管新生(CNV)の評価:
レーザー誘導性黄斑変性後のVEGFレベルの低下に加えて、レーザー損傷の前後にCNV面積が求められた。図14は、レーザー誘導性損傷後7日目にC57bl野生型マウスおよびMASP-2(-/-)マウスにおいて測定されたCNV体積を図示する。図14に示したように、MASP-2(-/-)マウスは、レーザー誘導性損傷後7日目に野生型対照マウスと比較してCNV面積の約30%の縮小を示した。
これらの知見により、MASP(-/-)マウス対野生型(+/+)対照から分かるようなVEGFに減少およびCNVの縮小が示され、かつ、阻害因子によるMASP-2の遮断が黄斑変性治療において予防効果または治療効果を有することが示される。
実施例14
本実施例は、トロンビン活性化が生理学的条件下でレクチン経路活性化後に起こることを証明し、MASP-2が関与する程度を証明する。正常ラット血清中で、レクチン経路が活性化されると、補体が活性化されると同時に(C4沈着として評価される)、トロンビンが活性化される(トロンビン沈着として評価される)。図15Aおよび図15Bから分かるように、この系におけるトロンビン活性化はMASP-2遮断抗体(Fab2形式)によって阻害され、補体活性化の阻害濃度反応曲線(図15A)と一致する阻害濃度反応曲線(図15B)を示す。これらのデータから、外傷において発生するようにレクチン経路が活性化されると、MASP-2に完全に依存するプロセスにおいて補体系および凝固系が活性化されることが示唆される。推論によって、MASP2遮断抗体は、過度の全身凝固、例えば、重大な外傷症例における死亡につながる顕著な特徴の1つである播種性血管内凝固の症例の緩和において有効であると判明する可能性がある。
実施例15
本実施例は、播種性血管内凝固(「DIC」)におけるレクチン経路の役割を評価するために、MASP-2-/-欠損マウスおよびMASP-2+/+十分マウスにおけるDICの限局性シュワルツマン反応モデルを用いて得られた結果を提供する。
背景/原理:
前記のように、MASP-2の遮断はレクチン経路活性化を阻害し、アナフィラトキシンであるC3aおよびC5aの生成を減少させる。C3aアナフィラトキシンはインビトロでは強力な血小板凝集因子であることが示され得るが、インビボにおいて、これらの関与はあまり明確でなく、創傷治癒における血小板物質およびプラスミンの放出は二次的にしか補体C3を必要としない可能性がある。本実施例では、播種性血管内凝固を生成するためにはC3活性化の長期増大が必要かどうかを取り扱うために、レクチン経路の役割をMASP-2(-/-)マウスおよびWT(+/+)マウスにおいて分析した。
方法:
この研究において用いられるMASP-2(-/-)マウスを実施例1に記載のように生成し、少なくとも10世代にわたってC57Bl/6と戻し交配した。
この実験では限局性シュワルツマン反応モデルを使用した。限局性シュワルツマン反応(LSR)はリポ多糖(LPS)誘導性反応であり、自然免疫系の細胞性要素および体液性要素からの寄与が十分に特徴決定されている。補体へのLSRの依存性は十分に証明されている(Polak, L. et al., Nature 223:738-739(1969); Fong J.S., et al., J Exp Med 134:642-655(1971))。LSRモデルでは、マウスをTNFα(500ng、陰嚢内)で4時間、刺激し、次いで、マウスに麻酔をかけ、精巣挙筋の生体内顕微鏡のために準備した。観察のために、血流(1〜4mm/s)が良好な後毛細管小静脈(15〜60μm直径)のネットワークを選択した。動物を、好中球または血小板を選択的に標識するように蛍光抗体で処置した。血管ネットワークを連続的にスキャンし、後の分析のために全ての血管の画像をデジタル記録した。微小循環の基礎状態を記録するために、マウスに、LPS(100μg)を単独で、または以下に列挙した作用物質と一緒に1回、静脈内注射した。次いで、同じ血管ネットワークを、1時間、10分ごとにスキャンした。フルオロフォアの特異的蓄積を、バックグラウンド蛍光を差し引くことによって特定し、画像を閾値化(thresholding)することによって強調した。記録された画像から反応の大きさを測定した。シュワルツマン反応の一次尺度は凝集物データであった。
この研究では、公知の補体経路枯渇物質、コブラ毒因子(CVF)、または終末経路阻害因子(C5aRアンタゴニスト)に曝露されたMASP-2+/+十分マウスまたは野生型マウスを比較した。結果(図16A)から、CVFならびにC5aRアンタゴニストは両方とも脈管構造内の凝集物の出現を阻止したことが証明される。さらに、MASP-2-/-欠損マウス(図16B)も、レクチン経路の関与を裏付ける、限局性シュワルツマン反応の完全阻害を示した。これらの結果から、DIC生成におけるMASP-2の役割がはっきりと証明され、DICの治療および予防のためのMASP-2阻害因子の使用が裏付けられる。
実施例16
本実施例はマウス腎臓移植モデルにおけるMASP-2(-/-)マウスの分析について述べる。
背景/原理:
腎臓移植の機能的帰結におけるMASP-2の役割をマウスモデルを用いて評価した。
方法:
腎臓移植の機能的帰結を、6匹のWT(+/+)移植レシピエント(B6)および6匹のMASP-2(-/-)移植レシピエントを用いた一側性腎摘出レシピエントマウスへの単一腎臓同系移植を用いて評価した。移植された腎臓の機能を評価するために、移植して5日後に、残っている元からある腎臓をレシピエントから取り出し、24時間後に血中尿素窒素(BUN)レベルを測定することによって腎機能を評価した。
結果:
図17は、WT(+/+)レシピエントおよびMASP-2(-/-)レシピエントにおける腎臓移植6日後の腎臓の血中尿素窒素(BUN)レベルを図示する。図17に示したように、腎不全を示すBUNレベルのかなりの増大がWT(+/+)(B6)移植レシピエントにおいて観察された(マウスの正常BUNレベルは<5mMである)。対照的に、MASP-2(-/-)同系移植レシピエントマウスは実質的に低いBUNレベルを示した。このことは腎機能の改善を示唆している。これらの結果はWT(+/+)腎臓ドナー由来の移植片を用いて得られたことに注目する。このことから、治療利益を実現するためには、移植レシピエントだけに機能的レクチン経路が存在しないことで十分であることが示唆される。
まとめると、これらの結果により、MASP-2阻害を介した一過的なレクチン経路阻害が、腎臓移植における病的状態および遅延した移植片機能を軽減する方法を提供し、このアプローチは他の移植の場において有用である可能性が高いことが示される。
実施例17
本実施例は、MASP-2(-/-)マウスがマウス複数菌敗血症腹膜炎(Polymicrobial Septic Peritonitis)モデルにおける敗血症ショックに対して耐性があることを証明する。
背景/原理:
感染症におけるMASP-2(-/-)の潜在的な効果を評価するために、複数菌敗血症腹膜炎モデルである腸管穿孔(CLP)モデルを評価した。このモデルは、ヒト敗血症腹膜炎の経過を最も正確に模倣すると考えられている。腸管穿孔(CLP)モデルは、盲腸を結紮し、針で穴を開け、細菌が腹腔に連続して漏出し、リンパドレナージを通って血液に到達し、次いで、全ての腹部臓器に分配され、多臓器不全および敗血症ショックを引き起こすモデルである(Eskandari et al.,J Immunol 148(9):2724-2730(1992))。CLPモデルは患者において観察される敗血症の経過を模倣し、初期の超炎症反応の後に顕著な低炎症期を誘導する。この期間、動物は細菌曝露に対して高感受性になる(Wichterman et al., J. Surg. Res. 29(2):189-201(1980))。
方法:
腸管穿孔(CLP)モデルを用いた複数菌感染症の死亡率をWT(+/+)(n=18)およびMASP-2(-/-)(n=16)マウスにおいて測定した。簡単に述べると、MASP-2欠損マウスおよびその野生型同腹仔に麻酔をかけ、盲腸を体外に出し、遠位端の30%上側で結紮した。その後に、盲腸に0.4mm直径の針で1回、穴を開けた。次いで、盲腸を腹腔の元の場所に戻し、皮膚を鉗子で閉じた。CLPに供されたマウスの生存を、CLP後、14日間にわたってモニタリングした。細菌量を測定するために、CLPの16時間後にマウスにおいて腹膜洗浄液を収集した。腹膜洗浄液の段階希釈液をPBSで調製し、ミュラー・ヒントンプレートに接種し、その後に、嫌気条件下で37℃において24時間インキュベートした。この後に細菌量を求めた。
CLPの16時間後にWT(+/+)マウスおよびMASP-2(-/-)マウスの肺および脾臓において、定量リアルタイムポリメラーゼ鎖反応(qRT-PCR)によって細菌感染症に対するTNF-αサイトカイン反応も測定した。WT(+/+)マウスおよびMASP-2(-/-)マウスにおけるCLPの16時間後のTNF-α血清レベルをサンドイッチELISAでも定量した。
結果:
図18は、CLP手順後の日数の関数としてのCLP処置動物の生存率パーセントを図示する。図18に示したように、MASP-2(-/-)マウスにおけるレクチン経路欠損は、腸管穿孔モデルを用いた複数菌感染症後のマウス死亡率をWT(+/+)マウスと比較して増加させない。しかしながら、図19に示したように、MASP-2(-/-)マウスは、WT(+/+)同腹仔と比較した場合にCLP後に腹膜洗浄液中に有意に多い細菌量(細菌数の約1000倍の増加)を示した。これらの結果により、MASP-2(-/-)欠損マウスは敗血症ショックに対して耐性があることが示される。C3沈着がMASP-2依存性であると証明されたので、このモデルにおけるMASP-2欠損マウスの細菌クリアランスの低下は、C3bによって媒介される食作用の障害が原因である可能性がある。
MASP-2(-/-)マウスにおける細菌感染症に対するTNF-αサイトカイン反応はWT(+/+)対照と比較して大きくないことが判明した(データ示さず)。CLPの16時間後、WT(+/+)マウスにおけるTNF-αの血清中濃度がMASP-2(-/-)マウスとは対照的に有意に高いことも判明し、MASP-2(-/-)マウスでは、TNF-αの血清中レベルはほとんど変化しないままであった。これらの結果から、敗血症状態に対する激しい炎症反応はMASP-2(-/-)マウスにおいて和らげられ、高細菌数の存在下で動物が生存できたと示唆される。
まとめると、これらの結果から、敗血症の症例におけるレクチン経路補体活性化の潜在的な有害作用、および手に負えない敗血症を有する患者における高い死亡率が証明される。これらの結果から、MASP-2欠損が炎症性免疫応答を調節し、敗血症の間に炎症メディエーターの発現レベルを低下させることがさらに証明される。従って、MASP-2に対する阻害モノクローナル抗体の投与によるMASP-2(-/-)の阻害は、敗血症ショックに罹患している対象における炎症反応を減少させるのに有効であると考えられる。
実施例18
本実施例は、マウス鼻腔内感染モデルにおけるMASP-2(-/-)マウスの分析について述べる。
背景/原理:
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、広範囲の感染、特に、免疫無防備状態の個体における広範囲の感染の原因となるグラム陰性日和見性ヒト細菌病原体である。緑膿菌は、後天的な院内感染症、特に、院内肺炎の主な原因である。緑膿菌はまた嚢胞性線維症(CF)患者における高い罹病率および死亡率の原因でもある。緑膿菌肺感染症は、広範囲の組織損傷をもたらす強力な好中球動員および激しい肺炎症を特徴とする(Palanki M.S. et al., J. Med. Chem 51:1546-1559(2008))。
本実施例では、MASP-2(-/-)マウスにおけるレクチン経路の除去が細菌感染に対するマウスの感受性を増加させるかどうか判定するために研究に着手した。
方法:
22匹のWT(+/+)マウス、22匹のMASP-2(-/-)マウス、および11匹のC3(-/-)マウスに緑膿菌細菌株が鼻腔内投与された。マウスを感染後6日にわたってモニタリングし、生存率パーセントを示すカプラン・マイヤープロットを構築した。
結果:
図20は、感染6日後のWT(+/+)、MASP-2(-/-)、またはC3(-/-)マウスの生存率パーセントのカプラン・マイヤープロットである。図20に示したように、MASP-2(-/-)マウス対WT(+/+)マウスにおいて差違は観察されなかった。しかしながら、C3(-/-)マウスにおいて古典的(C1q)経路を除去すると、細菌感染に対する重篤な感受性が生じた。これらの結果により、MASP-2阻害は細菌感染に対する感受性を増加させないことが証明され、古典的補体経路を用いて感染症と闘う患者の能力を損なうことなく、MASP-2を阻害することによって、外傷患者における望ましくない炎症性合併症を減少させることが可能であることが示される。
実施例19
本実施例は、実施例10に記載のように特定された代表的な高親和性抗MASP-2 Fab2抗体の薬力学的分析について述べる。
背景/原理:
実施例10に記載のように、ラットレクチン経路を遮断する高親和性抗体を特定するために、ラットMASP-2タンパク質を用いてファージディスプレイライブラリーをパンニングした。このライブラリーは大きな免疫学的多様性を提供するように設計され、完全ヒトイムノグロビン(immunoglobin)遺伝子配列を用いて構築された。実施例10に記載のように、ラットMASP-2タンパク質と高親和性で結合する約250個の個々のファージクローンをELISAスクリーニングによって特定した。これらのクローンの配列決定によって、50個のユニークなMASP-2抗体コードファージが特定された。これらのクローンからFab2タンパク質を発現させ、精製し、MASP-2結合親和性およびレクチン補体経路機能阻害について分析した。
実施例10の表6に示したように、この分析の結果として、機能遮断活性を有する17個の抗MASP-2 Fab2を特定した(遮断抗体については34%のヒット率)。Fab2によるレクチン補体経路の機能阻害は、MASP-2によるC4切断の直接の尺度であるC4沈着のレベルにおいて明らかであった。重要なことに、C3コンバターゼ活性を評価した場合に、阻害は同じように明らかであった。このことから、レクチン補体経路の機能遮断が証明される。実施例10に記載のように特定された17個のMASP-2遮断Fab2は、10nM Fab2に等しい、または10nM Fab2未満のIC50値でC3コンバターゼ形成を強力に阻害する。特定された17個のFab2のうち8個のIC50はnM以下の範囲である。さらに、図8A〜Cに示したように、および実施例10の表6にまとめたように、MASP-2遮断Fab2のうち17個全てがレクチン経路C3コンバターゼアッセイ法においてC3コンバターゼ形成の本質的に完全な阻害を示した。さらに、表6に示した17個の遮断抗MASP-2 Fab2はそれぞれC3b生成を強力に阻害する(>95%)。従って、レクチン経路C3コンバターゼを対象としたこのアッセイ法の特異性が証明される。
ラットIgG2cおよびマウスIgG2a完全長抗体アイソタイプ変種はFab2#11から得られた。本実施例は、薬力学パラメータについての、これらのアイソタイプのインビボ特徴決定について述べる。
方法:
実施例10に記載のように、ラットMASP-2タンパク質を用いてFabファージディスプレイライブラリーをパンニングした。これから、Fab2#11を特定した。ラットIgG2cおよびマウスIgG2a完全長抗体アイソタイプ変種はFab2#11から得られた。ラットIgG2cおよびマウスIgG2a完全長抗体アイソタイプを、以下の通り薬力学パラメータについてインビボで特徴決定した。
マウスにおけるインビボ研究:
インビボでの血漿レクチン経路活性に対する抗MASP-2抗体投与の効果を調べるために、マウスにおいて薬力学的研究を行った。この研究では、0.3mg/kgまたは1.0mg/kgのマウス抗MASP-2 MoAb(Fab2#11に由来するマウスIgG2a完全長抗体アイソタイプ)の皮下(sc)投与後および腹腔内(ip)投与後の様々な時点で、C4沈着をレクチン経路アッセイ法においてエクスビボで測定した。
図21は、0.3mg/kgまたは1.0mg/kgのマウス抗MASP-2 MoAbの皮下投与後の様々な時点でマウス(n=3マウス/群)から採取された未希釈血清試料においてエクスビボで測定されたレクチン経路特異的C4b沈着を図示する。抗体投与前に収集されたマウス由来の血清試料は陰性対照(100%活性)として役立ったのに対して、100nMの同じ遮断抗MASP-2抗体をインビトロで添加した血清を陽性対照(0%活性)として使用した。
図21に示した結果から、1.0mg/kg用量のマウス抗MASP-2 MoAbの皮下投与後に迅速かつ完全なC4b沈着阻害が証明される。0.3mg/kg用量のマウス抗MASP-2 MoAbの皮下投与後にC4b沈着の部分阻害が見られた。
0.6mg/kgのマウス抗MASP-2 MoAbをマウスに単回ip投与した後、レクチン経路回復の時間経過が3週間続いた。図22に示したように、抗体投与後に、レクチン経路活性が急激に低下し、それに続いて、ip投与後、約7日続く完全なレクチン経路阻害が生じた。レクチンのゆっくりとした回復。
これらの結果から、Fab2#11に由来するマウス抗MASP-2 Moabは全身送達された場合に、マウスのレクチン経路を用量反応の様式で阻害することが証明される。
実施例20
本実施例は、加齢黄斑変性のマウスモデルにおける有効性についてのFab2#11に由来するマウス抗MASP-2 Moabの分析について述べる。
背景/原理:
実施例10に記載のように、ラットMASP-2タンパク質を用いてFabファージディスプレイライブラリーをパンニングした。これから、Fab2#11を機能的に活性な抗体として特定した。ラットIgG2cおよびマウスIgG2aアイソタイプの完全長抗体はFab2#11から得られた。実施例19に記載のように、マウスIgG2aアイソタイプの完全長抗MASP-2抗体の薬力学パラメータについて特徴決定した。本実施例では、Fab2#11に由来するマウス抗MASP-2完全長抗体を、Bora P.S. et al., J Immunol 174:491-497(2005)に記載の加齢黄斑変性(AMD)のマウスモデルにおいて分析した。
方法:
実施例19に記載のようにFab2#11に由来するマウスIgG2a完全長抗MASP-2抗体アイソタイプを、以下の変更を加えて実施例13に記載のように加齢黄斑変性(AMD)のマウスモデルにおいて試験した。
マウス抗MASP-2 MoAbの投与
アイソタイプ対照MoAb処置と一緒に、2つの異なる用量(0.3mg/kgおよび1.0mg/kg)のマウス抗MASP-2 MoAbをCNV誘導の16時間前にWT(+/+)マウス(n=8マウス/群)にip注射した。
脈絡膜血管新生(CNV)の誘導
実施例13に記載のように、脈絡膜血管新生(CNV)の誘導およびCNV体積の測定をレーザー光凝固を用いて行った。
結果:
図23は、アイソタイプ対照MoAbまたはマウス抗MASP-2 MoAb(0.3mg/kgおよび1.0mg/kg)で処置されたマウスにおけるレーザー損傷の7日後に測定されたCNV面積を図示する。図23に示したように、1.0mg/kg抗MASP-2 MoAbで前処置されたマウスでは、レーザー処置の7日後に統計的に有意な(p<0.01)約50%のCNV縮小が観察された。図23にさらに示したように、0.3mg/kg用量の抗MASP-2 MoAbがCNV縮小において有効でないことが観察された。実施例19に記載のように、およびに図21に示したように、0.3mg/kg用量の抗MASP-2 MoAbは、皮下投与後に部分的および一過的なC4b沈着阻害を有すると示されたことに注目する。
本実施例に記載の結果から、抗MASP-2 MoAbなどの阻害因子によるMASP-2の遮断には、黄斑変性の治療において予防効果および/または治療効果があることが証明される。これらの結果は、野生型対照マウスと比較してMASP-2(-/-)マウスにおいてレーザー処置の7日後に30%のCNV縮小が観察された、実施例13に記載のMASP-2(-/-)マウスで行われた研究において観察された結果と一致することに注目する。さらに、本実施例の結果から、全身送達された抗MASP-2抗体は眼において局所的な治療利益を提供することがさらに証明され、それによって、全身投与経路がAMD患者を治療する可能性が強調される。要約すると、これらの結果から、AMD治療におけるMASP-2 MoAbの使用を支持する証拠が得られる。
実施例21
本実施例は、MASP-2欠損マウスが髄膜炎菌の感染の後の髄膜炎菌誘導死から保護され、野生型対照マウスと比較して菌血症のクリアランスを増強したことを証明する。
原理:髄膜炎菌は、髄膜炎および他の形態の髄膜炎菌性疾患、例えば、髄膜炎菌血症における役割で知られている従属栄養グラム陰性双球菌細菌である。髄膜炎菌は、小児期における罹病および死亡の主な原因の一つである。重篤な合併症には、敗血症、ウォーターハウス・フリーデリクセン症候群、副腎不全、および播種性血管内凝固(DIC)が含まれる。例えば、Rintala E. et al., Critical Care Medicine 28(7):2373-2378(2000)を参照されたい。本実施例では、MASP-2欠損マウスが髄膜炎菌誘導死にかかりやすいかどうか取り扱うために、MASP-2(-/-)マウスおよびWT(+/+)マウスにおいてレクチン経路の役割を分析した。
方法:
MASP-2ノックアウトマウスを実施例1に記載のように生成し、少なくとも10世代にわたってC57Bl/6と戻し交配した。400mg/kgの鉄デキストランに溶解した投与量5×108cfu/100μl、2×108cfu/100μl、または3×107cfu/100μlの髄膜炎菌血清群A Z2491を用いた静脈内注射によって、10週齢MASP-2 KOマウス(n=10)および野生型C57/B6マウス(n=10)に接種した。感染後のマウスの生存を、72時間の期間にわたってモニタリングした。感染を検証し、血清からの細菌クリアランスの割合を決定するために、感染後1時間おきにマウスから血液試料を採取し、分析して、髄膜炎菌の血清レベル(log cfu/ml)を求めた。
結果:
図24Aは、感染用量5×108/100μl cfuの髄膜炎菌を投与した後のMASP-2 KOマウスおよびWTマウスの生存率パーセントを図示する。図24Aに示したように、最高用量5×108/100μl cfuの髄膜炎菌に感染させた後、感染後72時間の期間全体を通じてMASP-2 KO マウスの100%が生存した。対照的に、感染24時間後にWTマウスのうち20%しか生存していなかった。これらの結果から、MASP-2欠損マウスは髄膜炎菌誘導死から保護されることが証明される。
図24Bは、5×108cfu/100μlの髄膜炎菌に感染させたMASP-2 KOマウスおよびWTマウスから採取された血液試料中の様々な時点で回収された髄膜炎菌のlog cfu/mlを図示する。図24Bに示したように、WTマウスでは、血中の髄膜炎菌のレベルは感染24時間後に約6.5log cfu/mlのピークに達し、感染48時間後に0まで落ちた。対照的に、MASP-2 KOマウスでは、髄膜炎菌のレベルは感染6時間後に約3.5log cfu/mlのピークに達し、感染後36時間までに0まで落ちた。
図25Aは、2×108cfu/100μlの髄膜炎菌に感染させた後のMASP-2 KOマウスおよびWTマウスの生存率パーセントを図示する。図25Aに示したように、用量2×108cfu/100μlの髄膜炎菌に感染させた後、感染後72時間の期間全体を通じてMASP-2 KOマウスの100%が生存した。対照的に、感染24時間後にWTマウスのうち80%しか生存していなかった。図24Aに示した結果と一致して、これらの結果から、MASP-2欠損マウスは髄膜炎菌誘導死から保護されることがさらに証明される。
図25Bは、2×108cfu/100μlの髄膜炎菌に感染させたWTマウスから採取された血液試料中の様々な時点で回収された髄膜炎菌のlog cfu/mlを図示する。図25Bに示したように、2×108cfuに感染させたWTマウスの血中の髄膜炎菌のレベルは感染12時間後に約4log cfu/mlのピークに達し、感染24時間後に0まで落ちた。図25Cは、2×108cfu/100μlの髄膜炎菌に感染させたMASP-2 KOマウスから採取された血液試料中の様々な時点で回収された髄膜炎菌のlog cfu/mlを図示する。図25Cに示したように、2×108cfuに感染させたMASP-2 KOマウスの血中の髄膜炎菌のレベルは感染2時間後に約3.5log cfu/mlのピークレベルに達し、感染3時間後に0まで落ちた。図24Bに示した結果と一致して、これらの結果から、MASP-2 KOマウスにWTマウスと同用量の髄膜炎菌を感染させたが、MASP-2 KOマウスはWTと比較して菌血症のクリアランスを増強したことが証明される。
最低用量の3×107cfu/100μlの髄膜炎菌に感染させた後のMASP-2 KOマウスおよびWTマウスの生存率パーセントは72時間の期間で100%であった(データ示さず)。
考察
これらの結果により、MASP-2欠損マウスは髄膜炎菌誘導死から保護され、WTマウスと比較して菌血症のクリアランスを増強したことが示される。従って、これらの結果を考慮して、MASP-2 MoAbなどのMASP-2阻害因子の治療適用は、髄膜炎菌細菌の感染症(すなわち、敗血症およびDIC)を治療するのに、予防するのに、またはその影響を軽減するのに有効であると予想される。さらに、これらの結果によって、MASP-2 MoAbなどのMASP-2阻害因子の治療適用が、対象に髄膜炎菌感染症にかかるリスクを増大させないことが示される。
実施例22
本実施例は、新規レクチン経路媒介のおよびMASP-2依存性のC4バイパス補体C3活性化の発見について述べる。
原理:
補体活性化阻害因子を用いて心筋虚血/再灌流傷害(MIRI)を制限する主な治療利益は、20年前に、心筋梗塞の実験ラットモデルにおいて説得力をもって証明された。細胞表面補体受容体1型(CR1)の可溶性切断型誘導体である組換えsCR1が静脈内投与され、その効果がMIRIのラットインビボモデルにおいて評価された。sCR1による治療は梗塞体積を40%超縮小させた(Weisman, H.F., et al., Science 249:146-151(1990))。その後、この組換え阻害因子の治療可能性は臨床試験において証明され、MI患者にsCR1を投与すると虚血後心臓における収縮不全が阻止されることが示された(Shandelya, S., et al., Circulation 87:536-546(1993))。しかしながら、虚血組織における補体活性化につながる主な機構は、適切な実験モデルが無く、酸素欠乏細胞の補体活性化につながる分子プロセスならびに異なる補体活性化経路間のクロストークおよび相乗作用が十分に理解されていないことが主な原因で最終的に明確にされていない。
免疫応答の基本成分として補体系は、抗体依存性機構および抗体非依存性機構の両方を介して侵入微生物に対する保護を提供する。補体系は、走化性、食作用、細胞接着、およびB細胞分化を含む免疫応答の中で多くの細胞性相互作用および体液性相互作用を組織化する。3つの異なる経路:古典経路、第二経路、およびレクチン経路が補体カスケードを開始する。古典経路の認識小成分であるC1qは、様々な標的、最も顕著には免疫複合体に結合して、関連するセリンプロテアーゼであるC1rおよびC1sの段階的活性化を開始し、獲得免疫系が関与した後の病原体および免疫複合体を排除するための主な機構を提供する。C1qと免疫複合体が結合すると、C1r酵素前駆体二量体がその活性型に変換されて、C1sを切断し、それによってC1sを活性化する。C1sは2つの切断段階でC1q結合を補体活性化に変える。すなわち、最初に、C1sはC4をC4aおよびC4bに変換し、次いで、C4bに結合するC2を切断してC3コンバターゼC4b2aを形成する。この複合体は豊富な血漿成分C3をC3aおよびC3bに変換する。C4b2a複合体の近くにC3bが蓄積すると、基質特異性がC3からC5へと変化して、C5コンバターゼC4b2a(C3b)nが形成される。古典経路活性化を介して生成されるC3コンバターゼ複合体およびC5コンバターゼ複合体は、レクチン経路活性化経路を介して生成されるものと同一である。第二経路では、成分C3の自発的な低レベル加水分解により、タンパク質断片が細胞表面に沈着し、外来細胞において補体活性化が誘発されるのに対して、宿主組織の表面にある細胞関連調節タンパク質は活性化を防ぎ、従って、自己損傷を阻止することになる。第二経路と同様にレクチン経路は免疫複合体の非存在下で活性化されることがある。多分子レクチン経路活性化複合体が、病原体関連分子パターン(PAMP)、主に、細菌病原体、真菌病原体、もしくはウイルス病原体の表面に存在する炭水化物構造、またはアポトーシス細胞、壊死細胞、悪性細胞、もしくは酸素欠乏細胞の表面に存在する異常なグリコシルパターンに結合することによって、活性化は開始される(Collard, C.D., et al., Am. J. Pathol. 156:1549-1556(2000); Walport, M.J., N. Engl. J. Med. 344:1058-1066(2001); Schwaeble, W., et al., Immunobiology 205:455-466(2002);およびFujita, T., Nat. Rev. Immunol. 2:346-353(2002))。
マンナン結合レクチン(MBL)は、MBL関連セリンプロテアーゼ(MASP)と呼ばれる新規のセリンプロテアーゼのグループと複合体を形成することが示された最初の炭水化物認識小成分であり、その発見の順番に従って番号が付けられた(すなわち、MASP-1、MASP-2、およびMASP-3)。ヒトでは、レクチン経路活性化複合体は、異なる炭水化物結合特異性を有する4種類の代替の炭水化物認識小成分、すなわち、MBL2、および3つの異なるフィコリンファミリーメンバー、すなわち、L-フィコリン、H-フィコリン、およびM-フィコリン、ならびにMASPを用いて形成することができる。2つの形態のMBLであるMBL AおよびMBL Cならびにフィコリン-Aは、マウス血漿中およびラット血漿中でMASPとレクチン活性化経路複合体を形成する。以前に、本発明者らは、ヒト、マウス、およびラットにおいて、MASP-2、およびMAp19またはsMAPと呼ばれる19kDaのさらなる切断型MASP-2遺伝子産物をクローニングおよび特徴決定した(Thiel, S., et al., Nature 386:506-510(1997); Stover, C.M., et al., J. Immunol. 162:3481-3490(1999); Takahashi, M., et al., Int. Immunol. 11:859-863(1999):およびStover, C.M., et al., J. Immunol. 163:6848-6859(1999))。MAp19/sMAPはプロテアーゼ活性が無いが、MASPと炭水化物認識複合体との結合において競合することによってレクチン経路活性化を調節する可能性がある(Iwaki, D. et al., J. Immunol. 77:8626-8632(2006))。
レクチン経路認識複合体の結合を補体活性化に変えるためには3種類のMASPのうちMASP-2だけが必要とされることを示唆する証拠がある(Thiel, S., et al. (1997); Vorup-Jensen, T., et al., J. Immunol. 165:2093-2100(2000); Thiel, S., et al., J. Immunol. 165:878-887(2000); Rossi, V., et al., J. Biol Chem. 276:40880-40887(2001))。この結論は、ごく最近になって述べられた、MASP-1およびMASP-3が欠損しているマウス系統の表現型によって強調される。MASP-1/3欠損マウスは、インビトロでのレクチン経路媒介補体活性化の開始の遅延に加えてレクチン経路機能活性を保持する。MASP-1およびMASP-3を欠損した血清を組換えMASP-1で再構成すると、このレクチン経路活性化の遅延が克服される。このことは、MASP-1がMASP-2活性化を促進し得ることを意味している(Takahashi, M., et al., J. Immunol. 180:6132-6138(2008))。ごく最近の研究により、第二経路活性化酵素D因子をその酵素前駆体型から酵素活性型に変換するためにはMASP-1が(おそらくMASP-3も)必要とされることが示されている(Takahashi, M., et al., J. Exp. Med. 207:29-37(2010))。このプロセスの生理学的な重要性は、MASP-1/3欠損マウスの血漿中に第二経路機能活性を有さないことによって強調される。
レクチン経路炭水化物認識小成分MBL AおよびMBL Cの複合標的欠損を有する、最近作製されたマウス系統は、残存しているマウスレクチン経路認識小成分フィコリンAを介して依然としてレクチン経路活性化を開始し得る(Takahashi, K., et al., Microbes Infect. 4:773-784(2002))。MASP-2欠損マウスにおける残存するレクチン経路機能活性を全く有さないので、健康および疾患における自然体液性免疫のこのエフェクター部門の役割を研究するための決定的なモデルが提供される。
C4欠損マウス系統およびMASP-2欠損マウス系統が利用できるので、本発明者らは、新規のレクチン経路特異的であるが、MASP-2依存性のC4バイパス補体C3活性化経路を規定することができた。この新規のレクチン経路媒介C4バイパス活性化経路の虚血後組織消失への不可欠な寄与はMIRIにおけるMASP-2欠損の顕著な保護表現型によって強調される。これに対して、同じモデルにおいて試験されたC4欠損マウスは保護を示さない。
本実施例において、本発明者らは、新規のレクチン経路媒介およびMASP-2依存性のC4バイパス補体C3活性化について述べる。この新たな活性化経路の生理学的関連性は、心筋虚血/再灌流傷害(MIRI)の実験モデルにおけるMASP-2欠損の保護表現型によって証明される。これに対して、C4欠損動物は保護されなかった。
方法:
MASP-2欠損マウスは肉眼的異常を示さない
MASP-2欠損マウスを実施例1に記載のように生成した。ヘテロ(+/-)MASP-2欠損マウスおよびホモ(-/-)MASP-2欠損マウスはいずれも健康であり、かつ生殖能力があり、肉眼的異常を示さない。それらの平均余命はWT同腹仔の平均余命(>18ヶ月)とほぼ同じである。疾患実験モデルにおいてこれらのマウスの表現型を試験する前に、本発明者らのMASP-2-/-系統を11世代にわたってC57BL/6バックグラウンドと戻し交配した。MASP-2 mRNAが全く存在しないことが、ポリA+で選択された肝臓RNA調製物のノザンブロッティングによって確認されたのに対して、MAp19またはsMAP(MASP2遺伝子の切断型オルタナティブスプライシング産物)をコードする1.2kb mRNAは豊富に発現していた。
MASP-2(B鎖)のセリンプロテアーゼドメインのコード配列またはA鎖のコード配列の残りに特異的なプライマーペアを用いたqRT-PCR分析から、B鎖をコードするmRNAはMASP-2-/-マウスにおいて検出できないが、破壊されたA鎖mRNA転写物の存在量はかなり多いことが分かった。同様に、MASP-2+/-マウスおよびMASP-2-/-マウスにおいて、MAp19/sMAPをコードするmRNAの存在量は多い。それぞれの遺伝子型の5匹の動物についてのELISAによって求められた血漿中MASP-2レベルは、WT対照については300ng/ml(範囲260〜330ng/ml)、ヘテロマウスについては360ng/ml(範囲330〜395ng/ml)、MASP-2-/-マウスでは検出できなかった。qRT-PCRを用いて、mRNA発現プロファイルは明らかにされ、MASP-2-/-マウスが、MASP-2十分同腹仔とほぼ同じ存在量で、MBL A、MBL C、フィコリンA、MASP-1、MASP-3、C1q、C1rA、C1sA、B因子、D因子、C4、およびC3のmRNAを発現することを証明した(データ示さず)。
MASP-2-/-(n=8)およびMASP-2+/+(n=7)同腹仔の血漿中C3レベルを、市販のマウスC3 ELISAキット(Kamiya, Biomedical, Seattle, WA)を用いて測定した。MASP-2欠損マウスのC3レベル(平均0.84mg/ml、+/-0.34)はWT対照のC3レベル(平均0.92、+/-0.37)とほぼ同じであった。
結果:
MASP-2はレクチン経路機能活性に不可欠である
実施例2に記載のように、および図5に示したように、MASP-2-/-血漿のインビトロ分析から、C4活性化のためにマンナンコーティング表面およびザイモサンコーティング表面を活性化した場合に、レクチン経路機能活性を全く有さないことが分かった。同様に、MASP-2-/-血漿中には、N-アセチルグルコサミンでコーティングされた表面上においてレクチン経路依存性のC4切断もC3切断も検出できなかった。N-アセチルグルコサミンはMBL A、MBL C、およびフィコリンAに結合し、これらを介して活性化を誘発する(データ示さず)。
MASP-2-/-マウスの血清および血漿の分析から、レクチン経路を介して補体を活性化するためにMASP-2は本質的に必要とされることがはっきりと証明された。しかしながら、レクチン経路機能活性が完全に欠損していても、他の補体活性化経路は完全な状態のままである。すなわち、MASP-2-/-血漿は、古典経路(図26A)および第二経路(図26B)を介して依然として補体を活性化することができる。図26Aおよび図26Bでは、記号「*」記号は、WT(MASP-2(+/+))由来の血清を示す。記号「●」は、WT由来の血清(C1q枯渇)を示す。記号「□」は、MASP-2(-/-)由来の血清を示す。記号「△」は、MASP-2(-/-)由来の血清(C1q枯渇)を示す。
図26Aは、MASP-2-/-マウスが機能的な古典経路を保持していることを図示する。C3b沈着を、免疫複合体でコーティングされたマイクロタイタープレート上でアッセイした(BSAでコーティングし、次いで、ヤギ抗BSA IgGを添加することによって生成した)。図26Bは、MASP-2欠損マウスが機能的な第二経路を保持していることを図示する。C3b沈着を、第二経路だけを活性化する条件(Mg2+およびEGTAを含有する緩衝液)下でザイモサンコーティングマイクロタイタープレート上でアッセイした。図26Aおよび図26Bに示した結果は2つ組の平均であり、3回の独立した実験を代表している。血漿源について同じ記号を始めから終わりまで使用した。これらの結果により、第二経路を直接誘発するが、古典経路およびレクチン経路を不活性化するように設計された実験条件下で図26Bに示した結果において証明されたように、機能的な第二経路がMASP-2欠損マウスにおいて存在することが示される。
補体活性化のレクチン経路は心筋虚血/再灌流損傷(MIRI)における炎症組織消失に決定的に寄与する
MIRIへのレクチン経路機能活性の寄与を研究するために、本発明者らは、冠状動脈左前下行枝(LAD)の一過的な結紮および再灌流後のMIRIモデルにおいてMASP-2-/-マウスおよびWT同腹仔対照を比較した。補体C4の有無はMIRIにおける虚血組織消失の程度に影響を及ぼさない。本発明者らは、実験MIRI後の心筋壊死域に対するC4欠損の影響を評価した。図27Aおよび図27Bに示したように、C4欠損マウスおよびそのWT同腹仔の両方において同一の心筋壊死域が観察された。図27Aは、C4-/-マウス(n=6)および対応するWT同腹仔対照(n=7)におけるLAD結紮および再灌流後のMIRI誘導性組織消失を図示する。図27BはAARの関数としてのINFを図示し、C4-/-マウスがWT対照(破線)と同程度にMIRIを受けやすいことをはっきりと証明している。
これらの結果から、C4欠損マウスはMIRIから保護されないことが証明される。この結果は、主なC4活性化断片であるC4bが古典経路およびレクチン経路C3コンバターゼC4b2aの必須成分であるという広く認められている考えと対立するので思いもよらないものであった。従って、本発明者らは、C4欠損マウスおよびヒト血漿中に、残存するレクチン経路特異的な補体C3活性化を検出できるかどうか評価した。
レクチン経路は新規のMASP-2依存性C4バイパス活性化経路を介してC4の存在下で補体C3を活性化することができる
C4欠損モルモット血清中にC4バイパス活性化経路が存在することを示した歴史的報告に勇気づけられて(May, J.E., and M Frank, J. Immunol. 111:1671-1677(1973))、本発明者らは、C4欠損マウスに、残存する古典経路機能活性またはレクチン経路機能活性があり得るかどうかを分析し、第二経路の寄与を排除する経路特異的アッセイ条件下でC3活性化をモニタリングした。
第二経路活性化を阻止する血漿濃度(1.25%およびそれ未満)のカルシウム再添加血漿を用いて、C3b沈着をマンナンコーティングマイクロタイタープレート上でアッセイした。C3切断は古典経路活性化について試験されたC4欠損血漿中では検出できなかったが(データ示さず)、レクチン経路を介して補体活性化を開始した場合に、C4欠損マウス血漿中に強力な残存するC3切断活性が観察された。レクチン経路依存性は、C4欠損血漿希釈液を可溶性マンナンとプレインキュベーションした後のC3切断の競合阻害によって証明される(図28Aを参照されたい)。図28A〜Dに示したように、C4の非存在下でMASP-2依存性のC3活性化が観察された。図28Aは、C4+/+(十字)およびC4-/-(白丸)マウス血漿によるC3b沈着を図示する。アッセイ前にC4-/-血漿を過剰な(1μg/ml)液相マンナンとプレインキュベーションすると、C3沈着が完全に阻害される(黒丸)。結果は3回の独立した実験を代表する。図28Bは、野生型、MASP-2欠損(白四角)、およびC4-/-マウス血漿(1%)を様々な濃度の抗ラットMASP-2 mAbM11(横座標)と混合し、C3b沈着をマンナンコーティングプレート上でアッセイした実験の結果を図示する。結果は4回のアッセイ法の平均(±SD)である(2つのそれぞれのタイプの血漿の2つ組)。図28Cは、ヒト血漿:プールされたNHS(十字)、C4-/-血漿(白丸)、およびC4-/-血漿(黒丸)を1μg/mlマンナンとプレインキュベートした実験の結果を図示する。結果は3回の独立した実験を代表する。図28Dは、抗ヒトMASP-2 mAbH3によるC4十分ヒト血漿およびC4欠損ヒト血漿(1%)中でのC3b沈着の阻害(3つ組の平均±SD)を図示する。図28Bに示したように、同時にアッセイされたMASP-2-/-血漿においてレクチン経路依存性C3活性化は検出されなかった。このことは、このC4バイパスC3活性化経路がMASP-2依存性であることを意味する。
これらの知見をさらに確証するために、本発明者らは、組換えヒトMASP-2AおよびラットMASP-2A(抗原の自己溶解性分解を阻止するために、部位特異的変異誘発によって活性プロテアーゼドメインのセリン残基がアラニン残基で置換された)に対する親和性スクリーニングによってファージディスプレイ抗体ライブラリーから単離された一連の組換え型阻害mAbを作った。MASP-2に対する組換え抗体(AbH3およびAbM11)を、抗原として組換えヒトMASP-2AおよびラットMASP-2A(Chen, C.B. and Wallis, J. Biol. Chem. 276:25894-25902(2001))を用いてコンビナトリアル抗体ライブラリー(Knappik, A., et al., J. Mol. Biol. 296:57-86(2000))から単離した。マウス血漿中でレクチン経路を介したC4活性化およびC3活性化を強力に阻害した抗ラットFab2断片(IC50約1nM)を完全長IgG2a抗体に変換した。ポリクローナル抗マウスMASP-2A抗血清をラットにおいて産生させた。これらのツールによって、以下でさらに述べるように、本発明者らは、この新規のレクチン経路特異的C4バイパスC3活性化経路のMASP-2依存性を確認することができた。
図28Bに示したように、マウスMASP-2およびラットMASP-2に選択的に結合する阻害モノクローナル抗体M211は、C4欠損マウスにおけるC4バイパスC3活性化およびレクチン経路を介したWTマウス血漿のC3活性化を類似するIC50値で濃度依存的に阻害した。全てのアッセイ法を、第二経路活性化経路を機能不全にする血漿高度希釈液で行った(最も高い血漿濃度は1.25%であった)。
ヒトにおける類似するレクチン経路特異的C4バイパスC3活性化の存在を調べるために、本発明者らは、両方のヒトC4遺伝子(すなわち、C4AおよびC4B)の遺伝子欠損があり、その結果、C4が完全に存在しないドナーの血漿を分析した(Yang, Y., et al., J. Immunol., 173:2803-2814(2004))。図28Cは、この患者の血漿が、(第二活性化経路を機能不全にする)血漿高度希釈液中で効率的にC3を活性化することを示す。マンナンコーティングプレート上でのレクチン経路特異的なC3活性化形式が、過剰濃度の液相マンナンを添加することによってマウスC4欠損血漿(図28A)およびヒトC4欠損血漿(図28C)において証明された。ヒトC4欠損血漿中での、このC3活性化機構のMASP-2依存性を、ヒトMASP-2に特異的に結合し、MASP-2機能活性を除去するモノクローナル抗体であるAbH3を用いて評価した。図28Dに示したように、AbH3は、C4十分ヒト血漿およびC4欠損ヒト血漿の両方においてC3b(およびC3dg)沈着を同等の有効性で阻害した。
C4バイパスC3活性化における他の補体成分の可能性のある役割を評価するために、本発明者らは、レクチン経路特異的アッセイ条件下および古典経路特異的アッセイ条件下で、MASP-2-/-、C4-/-、およびC1q-/-血漿(対照として)と共に、MASP-1/3-/-マウスおよびBf/C2-/-マウスの血漿を試験した。C3切断の相対量を、WT血漿を使用した場合に沈着したC3の量に対してプロットした。
図29Aは、レクチン活性化経路特異的アッセイ条件下または古典的活性化経路特異的アッセイ条件下で試験された、様々な補体欠損マウス系統に由来する血漿中でのC3コンバターゼ活性の比較分析を図示する。WTマウス(n=6)、MASP-2-/-マウス(n=4)、MASP-1/3-/-マウス(n=2)、C4-/-マウス(n=8)、C4/MASP-1/3-/-マウス(n=8)、Bf/C2-/-(n=2)、およびC1q-/-マウス(n=2)の希釈血漿試料(1%)を同時に試験した。Bf/C2-/-血漿を2.5μg/ml組換えラットC2で再構成すると(Bf/C2-/-+C2)、C3b沈着が回復した。結果は平均(±SD)である。**p<0.01(WT血漿と比較)。図29Aに示したように、レクチン経路特異的アッセイ条件下で試験されたC4-/-血漿では、かなりのC3沈着が見られるが、古典経路特異的条件下では見られない。また、MASP-2欠損血漿ではレクチン経路活性化経路を介したC3沈着は見られなかったが、同じ血漿が古典経路を介してC3を沈着させた。MASP-1/3-/-血漿では、C3沈着はレクチン特異的アッセイ条件下および古典経路特異的アッセイ条件下の両方で発生した。C4およびMASP-1/3の複合欠損を有する血漿ではレクチン経路特異的条件を用いても古典経路特異的条件を用いてもC3沈着は見られなかった。C2/Bf-/-血漿ではレクチン経路を介しても古典経路を介してもC3沈着は検出することができない。しかしながら、C2/Bf-/-マウス血漿を組換えC2で再構成すると、レクチン経路を介したC3切断および古典経路を介したC3切断が回復した。C1q-/-血漿を用いてアッセイ条件を検証した。
図29Bは、レクチン活性化経路特異的アッセイ条件下で試験された(1%血漿。結果は3回の独立した実験を代表する)、様々な補体欠損マウス系統WT、fB-/-、C4-/-、MASP-1/3-/-に由来する血漿、およびMASP-2-/-血漿中のC3コンバターゼ活性の時間分解型キネティクスを図示する。図29Bに示したように、MASP-2-/-血漿中でC3切断は見られなかったが、fB-/-血漿はWT血漿とほぼ同じキネティクスでC3を切断した。C4-/-ならびにMASP-1/3欠損血漿において、C3からC3b(およびC3dg)へのレクチン経路依存性変換の大幅な遅延が見られた。MASP-1/3-/-血漿におけるこのC3活性化遅延は、最近、MASP-3依存性ではなくMASP-1依存性であることが示された(Takahashi, M., et al., J. Immunol. 180:6132-6138(2008))。
考察:
本実施例に記載の結果から、MASP-2機能活性は、C4存在下およびC4非存在下の両方でレクチン経路を介したC3活性化に不可欠なことが強く示唆される。さらに、この新規のレクチン経路特異的なC4バイパスC3活性化経路が働くためにはC2およびMASP-1が必要とされる。MASP-2-/-血漿ならびにC4-/-血漿におけるレクチン経路機能活性の比較分析から、以前は認められていなかった、C4非依存性であるが、MASP-2依存性の補体C3活性化経路の存在が明らかになり、C4が全く存在しなくてもレクチン経路依存形式でC3を活性化できることが分かった。この新規のMASP-2依存性C3コンバターゼの詳細な分子組成および活性化事象の順序はまだ解明されていないが、本発明者らの結果は、このC4バイパス活性化経路がさらに補体C2ならびにMASP-1の存在を必要とすることを意味する。C4およびMASP-1/3複合欠損を有するマウスの血漿中で、レクチン経路を介したC3切断活性が失われたのは、MASP-1がMASP-2を直接切断し、活性化することによってMASP-2依存性補体活性化を増強するという、ごく最近、述べられた役割から説明がつく可能性がある(Takahashi, M., et al., J. Immunol. 180:6132-6138(2008))。同様に、MASP-1は、C2を切断する能力によってMASP-2機能活性を助ける可能性がある(Moller-Kristensen, et al., Int. Immunol. 19:141-149(2007))。両活性が、MASP-1/3欠損血漿がレクチン活性化経路を介してC3を切断する速度の低下と、C4バイパス活性化経路を介してC3変換を維持するのにMASP-1が必要とされ得る理由の説明となる可能性がある。
組換えラットC2をC2/fB-/-血漿に添加すると、再構成された血漿がマンナンコーティングプレート上でC3を活性化する能力を回復したので、C2/fB-/-血漿がレクチン経路を介してC3を活性化できないことがC2依存性であると示された。
C4欠損が古典的補体活性化経路を特異的に破壊すると同時に、レクチン経路が、MASP-2依存性C4バイパス活性化経路を介して生理学的に重要なレベルのC3コンバターゼ活性を保持するという知見から、実験的肺炎連鎖球菌感染症(Brown, J. S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 99:16969-16974(2002);実験的アレルギー脳脊髄炎(Boos, L.A., et al., Glia 49:158-160(2005);およびC3依存性マウス肝臓再生モデル(Clark, A., et al., Mol. Immunol. 45:3125-3132(2008))を含む様々な疾患モデルにおけるレクチン経路の役割の再評価が求められた。後者のグループは、C4-/-マウスにおいて、抗体を介したB因子機能活性枯渇によって第二経路をインビボ阻害しても、C3切断依存的な肝臓再生に影響を及ぼさなかったので、C4欠損マウスが第二経路に依存せずにC3を活性化できることを証明した(Clark, A., et al., (2008))。このレクチン経路媒介C4バイパスC3活性化経路はまた、本発明者らのMIRIモデルならびに以前に述べられた腎臓同種移植片拒絶モデルにおけるC4欠損の保護表現型の欠如の説明となる可能性がある(Lin, T., et al., Am. J. Pathol. 168:1241-1248(2006))。対照的に、本発明者らの最近の結果から、腎臓移植モデルにおけるMASP-2-/-マウスの重要な保護表現型が独立して証明されている(Farrar, C.A., et al., Mol. Immunol. 46:2832(2009))。
要約すると、この実施例の結果から、MASP-2依存性C4バイパスC3活性化は、C4の利用可能性がC3活性化を限定する条件下で重要であり得る生理学的に関連する機構であるという考えが裏付けられる。
実施例23
本実施例は、WT(+/+)、MASP-2(-/-)、F11(-/-)、F11/C4(-/-)、およびC4(-/-)マウスにおけるトロンビン基質によるC3活性化およびマンナン上へのC3沈着について述べる。
原理:
実施例14に記載のように、トロンビン活性化は、生理学的条件下でレクチン経路活性化後に起こり、かつ、MASP-2が関与する程度を証明することが判明した。C3は補体系活性化において中心的な役割を果たす。C3活性化は古典補体活性化経路および第二補体活性化経路の両方に必要とされる。C3がトロンビン基質によって活性化されるかどうかを判定するために、実験を行った。
方法:
トロンビン基質によるC3活性化
C3活性化を、以下の活性化型トロンビン基質の存在下で測定した:ヒトFCXIa、ヒトFVIIa、ウシFXa、ヒトFXa、ヒト活性化タンパク質C、およびヒトトロンビン。C3を様々なトロンビン基質とインキュベートし、次いで、10%SDS-ポリアクリルアミドゲル上で還元条件下で分離した。セルロース膜を用いた電気泳動移動後に、膜をモノクローナルビオチン結合ラット抗マウスC3とインキュベートし、ストレプトアビジン-HRPキットを用いて検出し、ECL試薬を用いて発色させた。
結果:
C3の活性化には、インタクトなa鎖が切断型a'鎖および可溶性C3aに切断されることが必要である(図30に示していない)。図30は、トロンビン基質によるヒトC3活性化に関するウエスタンブロット分析の結果を示す。切断されていないC3α鎖および活性化産物a'鎖を矢印で示した。図30に示したように、インビトロで、C3を活性化型ヒト凝固因子XIおよび第X因子ならびに活性化ウシ凝固因子Xとインキュベートすると、補体プロテアーゼの非存在下でC3を切断することができる。
マンナン上へのC3沈着
WT、MASP-2(-/-)、F11(-/-)、F11(-/-)/C4(-/-)、およびC4(-/-)から得られた血清試料に対してC3沈着アッセイ法を行った。F11は、凝固因子XIをコードする遺伝子である。C3活性化を測定するために、マイクロタイタープレートをマンナン(1μg/ウェル)でコーティングし、次いで、TBS/tween/Ca2+に溶解したヒツジ抗HSA血清(2μg/ml)を添加した。プレートを、TBSに溶解した0.1%HSAでブロックし、前記のように洗浄した。血漿試料を、4mMバルビタール、145mM NaCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2、pH7.4で希釈し、プレートに添加し、37℃で1.5時間インキュベートした。洗浄後、結合しているC3bを、ウサギ抗ヒトC3c(Dako)を用いて、その後にアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗ウサギIgGおよびpNPPを用いて検出した。
結果:
図31は、WT、MASP-2(-/-)、F11(-/-)、F11(-/-)/C4(-/-)、およびC4(-/-)から得られた血清試料に対するC3沈着アッセイ法の結果を示す。図31に示したように、C4が全く存在しなくても機能的レクチン経路がある。さらに図31に示したように、この新規のレクチン経路依存性補体活性化は凝固因子XIを必要とする。
考察:
この実験において得られた結果の前に、補体のレクチン経路は活性のためにC4を必要とすると当業者に考えられていた。従って、C4ノックアウトマウス(およびC4欠損ヒト)由来のデータは、このような生物が(古典経路欠損に加えて)レクチン経路を欠損していると仮定して解釈された。本結果から、この考えは間違っていると証明された。従って、C4欠損動物の表現型に基づいて、ある特定の疾患状況においてレクチン経路が重要でないことを示唆した過去の研究の結論は間違っている可能性がある。本実施例に記載のデータにより、全血清の生理学的な文脈の中で、レクチン経路は凝固カスケードの成分を活性化できることも示される。従って、MASP-2が関与する、補体と凝固との間のクロストークがあることが証明される。
実施例24
本実施例は、発作性夜間血色素尿症(PNH)患者から得られた血液試料に由来する赤血球の溶解に対する抗MASP-2抗体の効果を評価する方法について述べる。
背景/原理:
発作性夜間血色素尿症(PNH)はマルキアファーヴァ・ミケーリ症候群とも呼ばれ、補体誘導性の血管内溶血性貧血を特徴とする、後天的な、潜在的に命にかかわる血液疾患である。PNHの顕著な特徴は、補体第二経路が無秩序に活性化した結果である慢性的な血管内溶血である。Lindorfor, M.A., et al., Blood 115(11)(2010)。PNHにおける貧血は血流中の赤血球の破壊が原因である。PNHの症状には、尿中のヘモグロビンの出現による赤色尿、および血栓症が含まれる。PNHは自然発症することがあり、これは「一次PNH」と呼ばれるか、または再生不良性貧血などの他の骨髄障害の状況では「二次PNH」と呼ばれる。PNHの治療には、貧血の場合は輸血、血栓症の場合は血液凝固阻止、および補体系を阻害することによって免疫破壊から血球を保護するモノクローナル抗体エクリズマブ(Soliris)の使用(Hillmen P. et al., N. Engl. J. Med. 350(6) 552-9(2004))が含まれる。しかしながら、エクリズマブで治療されたPNH患者のかなりの部分には、臨床的に意義のある免疫を介した溶血性貧血が残る。なぜなら、この抗体は補体第二経路の活性化を遮断しないからである。
本実施例は、ABO型が同じ酸性化正常ヒト血清とインキュベートされた、PNH患者(Solirisで治療されていない)から得られた血液試料に由来する赤血球の溶解に対する抗MASP-2抗体の効果を評価する方法について述べる。
方法:
試薬:
正常ドナーに由来する赤血球およびPNHに罹患している患者(Solirisで治療されていない)に由来する赤血球を静脈穿刺によって得て、本明細書に参照により組み入れられる、Wilcox, L.A., et al., Blood 78:820-829(1991)に記載のように調製する。レクチン経路の機能遮断活性を有する抗MASP-2抗体は、実施例10に記載のように生成することができる。
溶血分析:
PNH患者に由来する赤血球の溶血を遮断する能力に対する抗MASP-2抗体の効果を判定するための方法は、Lindorfer, M.A., et al., Blood 15(11):2283-91(2010)およびWilcox, L.A., et al., Blood 78:820-829(191)に記載の方法を用いて行われる。両参照文献とも本明細書に参照により組み入れられる。Lindorfer et al.に記載のように、PNH患者試料に由来する赤血球を遠心分離し、バフィーコートを吸引し、それぞれの実験の前に細胞をゼラチンベロナール緩衝液(GVB)で洗浄する。以下のように、赤血球を、APCを介した溶解に対する感受性について試験する。ABO型が同じ正常ヒト血清を、0.15mM CaCl2および0.5mM MgCl2を含有するGVB(GVB+2)で希釈し、pH6.4まで酸性化し(酸性化NHS、aNHS)、これを用いて、赤血球を50%aNHSに溶解して1.6%のヘマトクリットまで再構成する。次いで、混合物を37℃でインキュベートし、1時間後、赤血球を遠心分離によってペレット化する。回収された上清のアリコートの光学密度を405nMで測定し、これを用いて溶解パーセントを算出する。酸性化血清-EDTA中で再構成された試料を同様に処理し、これを用いて、バックグラウンドの補体によって媒介されなかった溶解(典型的には、3%未満)を規定する。完全溶解(100%)は、赤血球を蒸留水中でインキュベートした後に求められる。
PNH赤血球の溶血に対する抗MASP-2抗体の効果を判定するために、PNH患者に由来する赤血球を漸増濃度の抗MASP-2抗体の存在下でaNHS中でインキュベートし、その後に、溶血の存在/量を定量する。
抗MASP-2抗体が後の補体第二経路活性化を遮断することが示されているという事実を考慮して、抗MASP-2抗体は、第二経路を介したPNH赤血球溶血の遮断において有効であり、PNHに罹患している患者を治療する治療剤として有用だと予想される。
実施例25
本実施例は、クリオグロブリン血症に罹患している患者から得られた血液試料中のクリオグロブリンによる補体活性化に対する抗MASP-2遮断抗体の効果を評価する方法について述べる。
背景/原理:
クリオグロブリン血症は血清中のクリオグロブリンの存在を特徴とする。クリオグロブリンは、低温で可逆的に凝集する1種類または混合性の免疫グロブリン(典型的にはIgM抗体)である。凝集は、古典経路の補体活性化および血管床、特に、周辺部における炎症につながる。クリオグロブリン血症の臨床症状には脈管炎および糸球体腎炎が含まれる。
クリオグロブリン血症は、クリオグロブリンの組成に基づいて以下のように分類されることがある。I型クリオグロブリン血症、すなわち単純クリオグロブリン血症(simple cryoglobulinemia)は、モノクローナル免疫グロブリン、通常、免疫グロブリンM(IgM)の結果である。II型およびIII型クリオグロブリン血症(混合型クリオグロブリン血症)はリウマチ因子(RF)を含む。リウマチ因子(RF)は、通常、ポリクローナルIgGのFc部分と複合体を形成したIgMである。
クリオグロブリン血症に関連した状態には、C型肝炎感染症、リンパ球増殖性障害、および他の自己免疫疾患が含まれる。クリオグロブリンを含有する免疫複合体は、おそらく補体を活性化する能力により、全身炎症の臨床症候群の原因となる。IgG免疫複合体は、通常、補体の古典経路を活性化するが、IgMを含有する複合体はレクチン経路を介して補体を活性化することもできる(Zhang, M.. et al., Mol Immunol 44(1-3):103-110(2007)およびZhang. M., et al., J. Immunol. 177(7):4727-34(2006))。
免疫組織化学的研究から、クリオグロブリン免疫複合体はレクチン経路成分を含有することがさらに証明されている。クリオグロブリン血症糸球体腎炎患者由来の生検材料はインサイチューでレクチン経路活性化の免疫組織化学的証拠を示した(Ohsawa, I., et al., Clin Immunol 101(1):59-66(2001))。これらの結果から、レクチン経路はクリオグロブリン疾患における炎症および有害事象の一因となり得ることが示唆される。
方法:
クリオグロブリン血症の副作用を遮断する能力に対する抗MASP-2抗体の効果を判定するための方法は、本明細書に参照により組み入れられるNg Y.C. et al., Arthritis and Rheumatism 31(1):99-107(1988)に記載のように液相C3変換アッセイ法を用いて行われる。Ng et al.,に記載のように、本態性混合型クリオグロブリン血症(EMC)では、モノクローナルリウマチ因子(mRF)、通常、IgMはポリクローナルIgGと複合体を形成して、特徴的な寒冷沈降物免疫複合体(IC)(II型クリオグロブリン)を形成する。免疫グロブリンおよびC3は、皮膚、神経、および腎臓などの患部組織の血管壁にあることが証明されている。Ng et al.,に記載のように、125I標識mRFを、血清(正常ヒト血清およびクリオグロブリン血症に罹患している患者から得られた血清)に添加し、37℃でインキュベートし、赤血球との結合を測定する。
液相C3変換は、血清(正常ヒト血清およびクリオグロブリン血症に罹患している患者から得られた血清)中で、以下のICの存在下または非存在下で、抗MASP-2抗体の存在下または非存在下で判定される:BSA-抗BSA、mRF、mRF+IgG、またはクリオグロブリン。ICへのC3およびC4の固定は、F(ab')2抗C3およびF(ab')2抗C4を用いた共沈アッセイ法を用いて測定される。
抗MASP-2抗体がレクチン経路活性化を遮断することが示されているという事実を考慮して、抗MASP-2抗体は、クリオグロブリン血症に関連した補体媒介性副作用の遮断において有効であり、クリオグロブリン血症に罹患している患者を治療する治療剤として有用だと予想される。
実施例26
本実施例は、貧血として現れた寒冷凝集素症を有する患者から得られた血液試料に対する抗MASP-2抗体の効果を評価する方法について述べる。
背景/原理:
寒冷凝集素症(CAD)は自己免疫性溶血性貧血の一種である。寒冷凝集素抗体(通常、IgM)は低温によって活性化され、赤血球に結合し、赤血球を凝集させる。寒冷凝集素抗体は補体と一緒になって、赤血球の表面にある抗原を攻撃する。これは、細網内皮系による赤血球クリアランスを誘発する赤血球オプソニン化(opsoniation)(溶血)を引き起こす。凝集が起こる温度は患者ごとに異なる。
CADは貧血として現れる。赤血球破壊の速度が、骨髄が十分な数の酸素運搬細胞を産生する能力を上回った場合に、貧血が起こる。CADは、感染性疾患(マイコプラズマ性肺炎、ムンプス、単核球症)、リンパ球増殖性疾患(リンパ腫、慢性リンパ性白血病)、または結合組織障害などの基礎疾患または障害によって引き起こされることがあり、「二次CAD」と呼ばれる。一次CAD患者は低悪性度のリンパ球増殖性骨髄障害を有するとみなされる。一次CADおよび二次CADは後天性の状態である。
方法:
試薬:
正常ドナーに由来する赤血球およびCADに罹患している患者を静脈穿刺によって得る。レクチン経路の機能遮断活性を有する抗MASP-2抗体は実施例10に記載のように生成することができる。
寒冷凝集素(cold aggultinin)媒介のレクチン経路活性化を遮断する抗MASP-2抗体の効果は、以下のように判定することができる。血液群I陽性患者由来の赤血球を、抗MASP-2抗体の存在下または非存在下で寒冷凝集素(すなわち、IgM抗体)で感作する。次いで、C3結合を測定することによって、赤血球がレクチン経路を活性化する能力について試験する。
抗MASP-2抗体がレクチン経路活性化を遮断することが示されているという事実を考慮して、抗MASP-2抗体は、寒冷凝集素症に関連した補体媒介性副作用の遮断において有効であり、寒冷凝集素症に罹患している患者を治療する治療剤として有用だと予想される。
実施例27
本実施例は、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)マウスから得られた血液試料中の赤血球の溶解に対する抗MASP-2抗体の効果を評価する方法について述べる。
背景/原理:
非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は、溶血性貧血、血小板減少症、ならびに腎臓および他の臓器の微小循環中の血小板血栓によって引き起こされる腎不全を特徴とする。aHUSは不完全な補体調節に関連し、散発性または家族性であり得る。aHUSは、補体因子H、メンブレンコファクターBおよびI因子、ならびに補体因子H関連1(CFHR1)および補体因子H関連3(CFHR3)を含む補体活性化をコードする遺伝子の変異に関連する。Zipfel, P.F., et al., PloS Genetics 3(3):e41(2007)。本実施例は、aHUSマウスから得られた血液試料に由来する赤血球の溶解に対する抗MASP-2抗体の効果を評価する方法について述べる。
方法:
内因性マウスfH遺伝子が、aHUS患者においてよく見られる変異体型fHをコードするヒトホモログで置換されている、この疾患のマウスモデルにおいて、抗MASP-2抗体がaHUSを治療する効果を判定することができる。本明細書に参照により組み入れられる、Pickering M.C. et al., J. Exp. Med. 204(6):1249-1256(2007)を参照されたい。Pickering et al.,に記載のように、このようなマウスはaHUS様の病態を発症する。aHUS治療のための抗MASP-2抗体の効果を評価するために、抗MASP-2抗体を変異aHUSマウスに投与し、抗MASP-2 ab処置対照および未処置対照から得られた赤血球の溶解を比較する。抗MASP-2抗体が、レクチン経路活性化を遮断することが示されているという事実を考慮して、抗MASP-2抗体は、aHUSに罹患している哺乳動物対象における赤血球の溶解の遮断において有効だと予想される。
実施例28
本実施例は緑内障治療のために抗MASP-2抗体の効果を評価する方法について述べる。
原理/背景:
制御されていない補体活性化は、緑内障における網膜神経節細胞(RGC)、RGCのシナプス、およびRGCの軸索に対する変性損傷の進行の一因となることが示されている。Tezel G. et al., Invest Ophthalmol Vis Sci 51:5071-5082(2010)を参照されたい。例えば、ヒト組織の病理組織学的研究および様々な動物モデルを用いたインビボ研究から、緑内障網膜においてC1qおよびC3を含む補体成分が合成され、終末補体複合体が形成されることが証明されている(Stasi K. et al., Invest Ophthalmol Vis Sci 47:1024-1029(2006)、Kuehn M.H. et al., Exp Eye Res 83:620-628(2006)を参照されたい)。Kuehn M.H. et al., Experimental Eye Research 87:89-95(2008)においてさらに記載されるように、補体の合成および沈着は網膜I/Rによって誘導され、補体カスケードの破壊はRGC変性を遅延する。この研究において、補体成分C3が標的破壊されたマウスは、正常動物と比較した場合に一過的な網膜I/R後にRGC変性の遅延を示すことが見出された。
方法:
RGC変性に対する抗MASP-2抗体の効果を判定するための方法は、本明細書に参照により組み入れられる、Kuehn M.H. et al., Experimental Eye Research 87:89-95(2008)に記載のように網膜I/Rの動物モデルにおいて行われる。Kuehn et al.,に記載のように、網膜虚血は、動物に麻酔をかけ、次いで、リン酸緩衝食塩水を含有するリザーバーとつながっている30ゲージ針を角膜に通して眼の前眼房に挿入することによって誘導される。次いで、網膜脈管構造を通る循環を完全に阻止するのに十分な104mmHgの眼内圧となるように、食塩水リザーバーを持ち上げる。眼内虚血の増大は虹彩および網膜の脱色(blanching)によって確認され、虚血は左眼のみで45分間維持される。右目は対照として役立ち、カニューレ処置を受けない。次いで、虚血発作の1週間後または3週間後にマウスを安楽死させる。虚血発作前に投与される抗MASP抗体の効果を評価するために、抗MASP-2抗体をマウスの眼に局所投与するか、全身投与する。
眼の免疫組織化学は、補体沈着を検出するためにC1qおよびC3に対する抗体を用いて行われる。標準的な電子顕微鏡法を用いて視神経損傷も評価することができる。生存している網膜RGCの定量はγシヌクレイン標識を用いて行われる。
結果:
Kuehn et al.に記載のように、正常対照マウスでは、一過的な網膜虚血が、視神経の変成変化ならびに免疫組織化学により検出可能なC1qおよびC3の網膜沈着をもたらす。対照的に、C3欠損マウスは軸索変性の著しい減少を示し、誘導の1週間後に、ごくわずかなレベルの視神経損傷しか示さなかった。これらの結果に基づいて、このアッセイ法がMASP-2ノックアウトマウスにおいて行われた場合、および抗MASP-2抗体が虚血発作前に正常マウスに投与された場合には同様の結果が観察されると予想される。
実施例29
本実施例は、抗MASP-2抗体などのMASP-2阻害因子が放射線曝露の治療および/または急性放射線症候群の治療、寛解、もしくは予防に有効であることを証明する。
原理:
高線量の電離放射線に曝露されると、2つの主な機構:骨髄に対する毒性および胃腸症候群によって死が引き起こされる。骨髄毒性は全ての血液細胞を減少させ、生物は感染症および出血によって死亡しやすくなる。胃腸症候群の方がひどく、消化管上皮層が破壊され、腸内分泌機能が失われることが原因で腸のバリア機能が失われることで誘導される。これは、死を招き得る敗血症および関連する全身炎症反応症候群につながる。
補体のレクチン経路は、組織損傷および外来表面(すなわち、細菌)への曝露に反応して炎症を起こさせる自然免疫機構である。この経路を遮断すると、虚血性の腸組織損傷または敗血症ショックのマウスモデルにおける良好な転帰が得られる。レクチン経路は、放射線誘導性組織損傷に反応して過度の、かつ有害な炎症を誘発し得ると仮説が立てられている。従って、レクチン経路の遮断は、二次損傷を減少させて、急性放射線曝露後の生存期間を延長させる可能性がある。
本実施例に記載のように行われる研究の目的は、抗マウスMASP-2抗体を投与することによる、放射線損傷マウスモデルにおける生存に対するレクチン経路遮断の効果を評価することであった。
方法および材料:
材料 この研究において用いられた試験物品は、トランスフェクトされた哺乳動物細胞において産生されたレクチン補体経路のMASP-2タンパク質成分を遮断する、(i)高親和性抗マウスMASP-2抗体(mAbM11)および(ii)高親和性抗ヒトMASP-2抗体(mAbH6)であった。投与濃度は、1mg/kgの抗マウスMASP-2抗体(mAbM11)、5mg/kgの抗ヒトMASP-2抗体(mAbH6)、または滅菌食塩水であった。それぞれの投与セッションのために、十分な量の新鮮な投与溶液を調製した。
動物 若い成獣雄Swiss-WebsterマウスをHarlan Laboratories(Houston, TX)から得た。動物を、Alpha-Dri床敷を入れたソリッドボトムケージに収容し、保証されたPMI 5002 Rodent Diet(Animal Specialties, Inc., Hubbard OR)および水を自由に与えた。温度をモニタリングし、動物飼育室を12時間明/12時間暗の光周期で稼働した。
照射 マウスを施設内で2週間、順化させた後に、320kV高安定X線発生装置、金属セラミックX線管、可変X線ビームコリメータ、およびフィルターを備えたTherapax X-RAD 320システム(Precision X-ray Incorporated, East Haven, CT)を用いて、10匹からなる群における線量率0.78Gy/minの全身曝露によって6.5Gyおよび7.0Gyの放射線を照射した。線量レベルは、LD50/30が6.5〜7.0Gyであることを示した、同じ系統のマウスを用いて行われた以前の研究(データ示さず)に基づいて選択された。
薬物製剤および投与 プロトコールに従って、適切な体積の濃縮原液を氷冷食塩水で希釈して0.2mg/mlの抗マウスMASP-2抗体(mAbM11)または0.5mg/mlの抗ヒトMASP-2抗体(mAbH6)の投与溶液を調製した。抗MASP-2抗体mAbM11およびmAbH6の投与は、動物体重に基づいて1mg/kgのmAbM11、5mg/kgのmAbH6、または食塩水ビヒクルを送達するように25ゲージ針を用いてIP注射を介して行った。
研究デザイン 表8に記載のように、マウスを群に無作為に割り当てた。体重および温度を毎日、測定および記録した。照射後7日目に群7、群11、および群13のマウスを屠殺し、血液を深麻酔下での心臓穿刺によって収集した。照射後30日目に生存している動物を同様に屠殺し、血液を収集した。収集された血液試料から、プロトコールに従って血漿を調製し、分析のためにスポンサーに返した。
統計解析 カプラン・マイヤー生存曲線を作成し、ログランク法およびウィルコクソン法を用いて処置群間の平均生存期間を比較するのに使用した。平均と標準偏差、または平均と平均の標準誤差を報告する。統計比較は、照射された対照動物と個々の処置群との間で両側独立t検定(two-tailed unpaired t-test)を用いて行った。
結果
7.0Gy曝露群および6.5Gy曝露群のカプラン・マイヤー生存率プロットを、それぞれ、図32Aおよび図32Bに示し、以下の表9にまとめた。全体的に見て、照射前に抗マウスMASP-2 ab(mAbM11)で処置すると、ビヒクル処置された照射対照動物と比較して照射マウスの生存率が6.5Gy(20%増加)および7.0Gy(30%増加)曝露レベルの両方において増加した。6.5Gy曝露レベルでは、照射後に抗マウスMASP-2 abで処置すると、ビヒクル対照照射動物と比較して生存率が中程度に(15%)増加した。
比較すると、7.0Gy曝露レベルでの処置動物は全て、ビヒクル処置された照射対照動物と比較して生存率の増加を示した。生存における最大の変化はmAbH6を与えた動物において生じ、対照動物と比較して45%増加した。さらに、7.0Gy曝露レベルでは、ビヒクル処置された照射対照動物における死亡はまず照射後8日目に発生したのに対して、mAbH6処置群における死亡はまず照射後15日目に発生し、対照動物よりも7日延びた。7.0Gy曝露レベルでは、mAbH6を与えたマウスの死亡までの期間の平均(27.3±1.3日)は対照動物(20.7±2.0日)と比較して有意に延びた(p=0.0087)。
本研究全体を通じて照射前の日(-1日目)と比較した体重変化パーセントを記録した。全ての照射動物において一過的な体重減少が生じた。対照と比較して、mAbM11処置またはmAbH6処置による変化の差の証拠はなかった(データ示さず)。研究終了時に、生存している動物は全て開始(-1日目)体重から体重増加を示した。
(表9)放射線に曝露された試験動物の生存率
*同じ照射曝露レベルでの対照照射動物と処置群との間の両側独立t検定によるp=0.0087。
考察
急性放射線症候群は、3つの規定された亜症候群(subsyndrome)からなる:造血亜症候群、胃腸亜症候群、および脳血管亜症候群。観察される症候群は放射線線量によって決まり、造血影響は、1Gyを超える著しい部分的放射線曝露または全身放射線曝露を受けたヒトにおいて観察される。造血症候群は、免疫系に対する損傷と同時に発生する、血球数、赤血球および白血球ならびに血小板の変化を伴う汎血球減少につながる重篤な骨髄機能低下を特徴とする。底が発生した場合に、末梢血に好中球および血小板はほとんど存在せず、好中球減少症、発熱、敗血症の合併症、および制御できない出血が死につながる。
本研究では、mAbH6の投与は、7.0Gyで照射されたSwiss-Webster雄マウスにおける全身X線照射の生存能力を増大させることが見出された。とりわけ、7.0Gy曝露レベルでは、mAbH6を与えた動物の80%が30日まで生存したのに対して、ビヒクル処置された対照照射動物の35%が30日まで生存した。重要なことに、この処置群の最初の死亡日は照射後15日目まで発生せず、ビヒクル処置された対照照射動物において観察された最初の死亡日よりも7日延びた。不思議なことに、低いX線曝露(6.5Gy)では、mAbH6の投与は、ビヒクル処置された対照照射動物と比較して生存能力にも死亡の遅延にも影響を及ぼすようにみえなかった。曝露レベル間の、この反応の違いには複数の理由がある可能性があるが、全ての仮説の検証に、微生物培養および血液学的パラメータのための暫定的な試料収集を含めて、さらなる研究が必要である可能性がある。単に、群に割り付けられた動物の数によって、処置に関連したわずかな差が見落とされた可能性があるというのが1つの説明である可能性がある。例えば、群のサイズがn=20であれば、65%(6.5Gy曝露でmAbH6)と80%(7.0Gy曝露でmAbH6)との間の生存における差は3匹の動物である。他方で、35%(7.0Gy曝露でビヒクル対照)と80%(7.0Gy曝露でmAbH6)との間の差は9匹の動物であり、処置に関連した差の確かな証拠を提供する。
これらの結果から、抗MASP-2抗体は、急性放射線症候群の有害作用のリスクを有する哺乳動物対象または急性放射線症候群の有害作用に罹患している哺乳動物対象の治療において有効であることが証明される
実施例30
本実施例は、MASP-2欠損マウスが、髄膜炎菌血清群Aまたは髄膜炎菌血清群Bに感染した後に髄膜炎菌誘導死から保護されることを証明する。
方法:
MASP-2ノックアウトマウス(MASP-2 KOマウス)を実施例1に記載のように生成した。100μl体積で投与量2.6×107CFUの髄膜炎菌血清群A Z2491を腹腔内(i.p.)注射することによって、10週齢MASP-2 KOマウス(n=10)および野生型(WT)C57/BL6マウス(n=10)に接種した。感染用量を、最終濃度400mg/kgの鉄デキストランと一緒にマウスに投与した。72時間の期間にわたって感染後のマウスの生存をモニタリングした。
別の実験では、100μl体積で投与量6×106CFUの髄膜炎菌血清群B MC58株をi.p.注射することによって、10週齢MASP-2 KOマウス(n=10)および野生型C57/BL6マウス(n=10)に接種した。感染用量を、最終用量400mg/kgの鉄デキストランと一緒にマウスに投与した。72時間の期間にわたって感染後のマウスの生存をモニタリングした。感染後72時間の期間中に、以下の表10に記載の疾病スコアリングパラメータに基づいて、WTマウスおよびMASP-2 KOマウスの疾病スコアも求めた。この疾病スコアリングはFransen et al., (2010)の手法に基づき、これにわずかな変更を加えた。
(表10)感染マウスにおける臨床徴候に関連した疾患スコアリング
感染を検証し、血清からの細菌クリアランスの割合を決定するために、感染後1時間おきにマウスから血液試料を採取し、分析して、髄膜炎菌の血清レベル(log cfu/mL)を求めた。
結果:
図33は、感染用量2.6×107cfuの髄膜炎菌血清群A Z2491を投与させた後のMASP-2 KOマウスおよびWTマウスの生存率パーセントを図示したカプラン・マイヤープロットである。図33に示したように、感染後72時間の期間全体を通じて100%のMASP-2 KOマウスが生存した。対照的に、感染24時間後、WTマウスの80%しか生存しておらず(p=0.012)、感染72時間後、WTマウスの50%しか生存していなかった。これらの結果から、MASP-2欠損マウスは髄膜炎菌血清群A Z2491誘導死から保護されることが証明される。
図34は、感染用量6×106cfuの髄膜炎菌血清群B MC58株を投与した後のMASP-2 KOマウスおよびWTマウスの生存率パーセントを図示したカプラン・マイヤープロットである。図34に示したように、感染後72時間の期間全体を通じてMASP-2 KOマウスの90%が生存した。対照的に、感染24時間後、WTマウスの20%しか生存していなかった(p=0.0022)。これらの結果から、MASP-2欠損マウスは髄膜炎菌血清群B MC58株誘導死から保護されることが証明される。
図35は、6×106cfuの髄膜炎菌血清群B MC58株にi.p.感染させた後のMASP-2 KOマウスおよびWTマウスから採取された血液試料中の様々な時点で回収された髄膜炎菌血清群B MC58株のlog cfu/mLを図示する(両マウス群において様々な時点でのn=3)。結果を平均±SEMとして表した。図35に示したように、WTマウスにおいて、血中の髄膜炎菌レベルは感染24時間後に約6.0 log cfu/mLのピークに達し、感染後36時間までに約4.0 log cfu/mLまで落ちた。対照的に、MASP-2 KOマウスにおいて、髄膜炎菌レベルは感染12時間後に約4.0 log cfu/mLのピークに達し、感染後36時間までに約1.0 log cfu/mLまで落ちた。(記号「*」はp<0.05を示す;記号「**」はp=0.0043を示す)。これらの結果から、MASP-2 KOマウスにWTマウスと同用量の髄膜炎菌血清群B MC58株を感染させたが、MASP-2 KOマウスはWTと比較して菌血症のクリアランスを増強したことが証明される。
図36は、6×106cfuの髄膜炎菌血清群B MC58株による感染の3時間後、6時間後、12時間後、および24時間後のMASP-2 KOマウスおよびWTマウスの平均疾病スコアを図示する。図36に示したように、MASP-2欠損マウスは感染に対して高い耐性を示し、感染の6時間後(記号「*」はp=0.0411を示す)、12時間後(記号「**」はp=0.0049を示す)、および24時間後(記号「***」はp=0.0049を示す)の疾病スコアは非常にWTマウスと比較して非常に低かった。図36の結果を平均±SEMとして表した。
要約すると、本実施例の結果から、MASP-2欠損マウスは、髄膜炎菌血清群Aまたは髄膜炎菌血清群Bの感染の後に髄膜炎菌誘導死から保護されることが証明される。
実施例31
本実施例は、髄膜炎菌の感染の後の抗MASP-2抗体投与が髄膜炎菌に感染したマウスの生存率を増加させることを証明する。
背景/原理:
実施例10に記載のように、ラットMASP-2タンパク質を用いてFabファージディスプレイライブラリーをパンニングした。これから、Fab2#11を、機能的に活性な抗体として特定した。ラットIgG2cおよびマウスIgG2aアイソタイプの完全長抗体はFab2#11から生成された。(実施例19に記載のように)マウスIgG2aアイソタイプの完全長抗MASP-2抗体の薬力学パラメータについて特徴決定した。
本実施例では、Fab2#11に由来するマウス抗MASP-2完全長抗体を髄膜炎菌感染のマウスモデルにおいて分析した。
方法:
前記のように生成された、Fab2#11に由来するマウスIgG2a完全長抗MASP-2抗体アイソタイプを、以下のように髄膜炎菌感染のマウスモデルにおいて試験した。
感染後のマウス抗MASP-2モノクローナル抗体(MoAb)の投与
高用量(4×106cfu)の髄膜炎菌血清群B MC58株によるi.p.注射の3時間後に、9週間齢C57/BL6 Charles Riverマウスを、阻害性マウス抗MASP-2抗体(1.0mg/kg)(n=12)または対照アイソタイプ抗体(n=10)で処置した。
結果:
図37は、感染用量4×106cfuの髄膜炎菌血清群B MC58株を投与した後、感染3時間後に阻害性抗MASP-2抗体(1.0mg/kg)または対照アイソタイプ抗体を投与したマウスの生存率パーセントを図示したカプラン・マイヤーである。図37に示したように、感染後72時間の期間全体を通じて抗MASP-2抗体で処置されたマウスの90%は生存した。対照的に、感染後72時間の期間全体を通じてアイソタイプ対照抗体で処置されたマウスの50%しか生存しなかった。記号「*」は、2つの生存曲線の比較によって求められた場合、p=0.0301を示す。
これらの結果から、抗MASP-2抗体投与は、髄膜炎菌に感染した対象において治療して生存率を向上させるのに有効であることが証明される。
本明細書において証明されたように、髄膜炎菌に感染した対象の治療における抗MASP-2抗体の使用は、感染後3時間後に投与された場合に有効であり、感染後、24時間〜48時間以内で有効であると予想される。髄膜炎菌性疾患(髄膜炎菌血症または髄膜炎)は医学的緊急事態であり、髄膜炎菌性疾患が疑われたら(すなわち、髄膜炎菌が病原学的作用物質であるとはっきりと識別される前に)、治療は典型的に速やかに開始されると考えられる。
実施例30において証明されたMASP-2ノックアウトマウスでの結果を考慮して、髄膜炎菌の感染の前の抗MASP-2抗体投与もまた感染症を予防するのにまたは感染症の重篤度を向上するのに有効であると考えられる。
実施例32
本実施例は、抗MASP-2抗体の投与がヒト血清中の髄膜炎菌感染症を治療するのに有効であることを証明する。
原理:
機能的MBLの血清レベルが低い患者は反復性の細菌感染および真菌感染に対して高い感受性を示す(Kilpatrick et al., Biochim Biophys Acta 1572:401-413(2002))。髄膜炎菌はMBLによって認識されることが公知であり、MBL欠損血清はナイセリア属を溶解しないことが示されている。
実施例30および31に記載の結果を考慮して、補体欠損血清および対照ヒト血清における髄膜炎菌感染症を治療する抗MASP-2抗体投与の有効性を決定するために、一連の実験を行った。補体経路を保存するために高濃度の血清(20%)中で実験を行った。
方法:
1.様々な補体欠損ヒト血清におけるおよびヒト抗MASP-2抗体で処理されたヒト血清における血清殺菌活性
この実験では、以下の補体欠損ヒト血清および対照ヒト血清を使用した。
(表11)試験されたヒト血清試料(図38に示した)
ヒトMASP-2に対する組換え抗体は、抗原として組換えヒトMASP-2A(Chen, C.B. and Wallis, J. Biol. Chem. 276:25894-25902(2001))を用いてコンビナトリアル抗体ライブラリー(Knappik, A., et al., J. Mol Biol. 296:57-86(2000))から単離した。ヒト血清中でレクチン経路を介したC4活性化およびC3活性化を強力に阻害した抗ヒトscFv断片(IC50〜20nM)を特定し、完全長ヒトIgG4抗体に変換した。
髄膜炎菌血清群B-MC58を、阻害性ヒト抗MASP-2抗体(100μl総体積中に3μg)を添加して、または添加せずに、表11に示した様々な血清とそれぞれ20%の血清濃度で37℃において振盪しながらインキュベートした。試料を、以下の時点:0分、30分、60分、および90分の間隔において採取し、プレーティングし、次いで、生菌数を求めた。熱失活ヒト血清を陰性対照として使用した。
結果:
図38は、表11に示したヒト血清試料中の様々な時点で回収された髄膜炎菌血清群B-MC58の生菌数のlog cfu/mLを図示する。表12は図38のスチューデントt検定結果を示す。
(表12)図38のスチューデントt検定結果(60分の時点)
図38および表12に示したように、ヒト抗MASP-2阻害抗体を添加することによって、ヒト20%血清における髄膜炎菌の補体依存性死滅は有意に増大した。
2. 20%(v/v)のMASP-2欠損マウス血清における髄膜炎菌の補体依存性死滅
この実験では、以下の補体欠損マウス血清および対照マウス血清を使用した。
(表13)(図39に示したように)試験されたマウス血清試料
髄膜炎菌血清群B-MC58を、様々な補体欠損マウス血清とそれぞれ20%の血清濃度で37℃において振盪しながらインキュベートした。試料を、以下の時点:0分、15分、30分、60分、90分、および120分の間隔において採取し、プレーティングし、次いで、生菌数を求めた。熱失活ヒト血清を陰性対照として使用した。
結果:
図39は、表13に示したマウス血清試料中の様々な時点で回収された髄膜炎菌血清群B-MC58の生菌数のlog cfu/mLを図示する。図39に示したように、MASP-2-/-マウス血清の髄膜炎菌に対する殺菌活性レベルはWTマウス血清よりも高い。記号「**」はp=0.0058を示す。記号「***」はp=0.001を示す。表14は図39のスチューデントt検定結果を示す。
要約すると、本実施例の結果から、MASP-2-/-血清の髄膜炎菌に対する殺菌活性レベルはWT血清よりも高いことが証明される。
実施例33
本実施例は、発作性夜間血色素尿症(PNH)のマウスモデルから得られた血液試料に由来する赤血球の溶解に対するMASP-2欠損の阻害作用を証明する。
原理/背景:
発作性夜間血色素尿症(PNH)はマルキアファーヴァ・ミケーリ症候群とも呼ばれ、補体誘導性の血管内溶血性貧血を特徴とする、後天的な、潜在的に命にかかわる血液疾患である。PNHの顕著な特徴は、補体制御因子CD55およびCD59がPNH赤血球上に存在しないために補体第二経路が無秩序に活性化した結果である慢性的な補体媒介性血管内溶血と、その後に起こるヘモグロビン尿症および貧血である。Lindorfer, M.A., et al., Blood 115(11)(2010)、Risitano, A.M, Mini-Reviews in Medicinal Chemistry, 11:528-535(2011)。PNHにおける貧血は血流中の赤血球の破壊が原因である。PNHの症状には、尿中のヘモグロビンの出現による赤色尿、背部痛、疲労、息切れ、および血栓症が含まれる。PNHは自然発症することがあり、これは「一次PNH」と呼ばれるか、または再生不良性貧血などの他の骨髄障害の状況では「二次PNH」と呼ばれる。PNHの治療には、貧血の場合は輸血、血栓症の場合は血液凝固阻止、および補体系を阻害することによって免疫破壊から血球を保護するモノクローナル抗体エクリズマブ(Soliris(登録商標))の使用(Hillmen P. et al., N. Engl. J. Med. 350(6) 552-9(2004))が含まれる。エクリズマブ(Soliris(登録商標))は、補体成分C5を標的とし、C5コンバターゼによるC5切断を遮断し、それによって、C5aの産生およびMACの集合を阻止するヒト化モノクローナル抗体である。エクリズマブによるPNH患者の治療は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)によって測定されるように血管内溶血を減少させ、そのため、患者の約半分におけるヘモグロビン安定化および輸血非依存性につながった(Hillmen P, et al., Mini-Reviews in Medicinal Chemistry, vol11(6)(2011))。エクリズマブ療法を受けているほぼ全員の患者においてLDHレベルが正常またはほぼ正常になったが(血管内溶血の管理のため)、患者の約1/3しか11gr/dL超のヘモグロビン値に達せず、エクリズマブを服用した残りの患者は中程度から重度の(すなわち、輸血依存性)貧血をほぼ同じ割合で示し続ける(Risitano A.M. et al., Blood 113:4094-100(2009))。Risitano et al., Mini-Reviews in Medicinal Chemistry 11:528-535(2011)に記載のように、エクリズマブを服用しているPNH患者は、PNH赤血球のかなりの部分に結合しているC3断片を含んだ(が、未治療患者は含んでいなかった)ことが証明された。このことから、膜に結合しているC3はPNH赤血球に対してオプソニンとして働き、その結果、特異的C3受容体を介して細網内皮細胞内に閉じ込められ、その後に、血管外溶血が起こるという結論が導かれた。従って、C3断片を介した血管外溶血を発症している患者は赤血球輸血を必要とし続けるので、これらの患者には、エクリズマブの使用の他に治療方針が必要とされる。
本実施例は、PNHのマウスモデルから得られた血液試料に由来する赤血球の溶解に対するMASP-2欠損血清およびMASP-2阻害物質で処理された血清の作用を評価する方法について説明し、PNHに罹患している対象を治療するMASP-2阻害の有効性を証明し、エクリズマブなどのC5阻害因子を用いた療法を受けているPNH対象におけるC3断片を介した血管外溶血の作用を寛解させるためのMASP-2阻害因子の使用も支持する。
方法:
PNH動物モデル:
血液試料を、CrryおよびC3が欠損している遺伝子ターゲティングマウス(Crry/C3-/-)ならびにCD55/CD59欠損マウスから得た。これらのマウスには、それぞれの表面補体制御因子がなく、従って、これらのマウスの赤血球はPNHヒト血球と同様に自発的な補体自己溶解を受けやすい。
これらの赤血球をさらに感作させるために、これらの細胞をマンナンでコーティングして、およびマンナンでコーティングせずに使用し、次いで、WT C56/BL6血漿、MBLヌル血漿、MASP-2-/-血漿、ヒトNHS、ヒトMBL-/-血漿、およびヒト抗MASP-2抗体で処理したNHSの中で溶血するかどうか試験した。
1.MASP-2欠損/枯渇血清ならびに対照におけるCrry/C3二重欠損マウス赤血球およびCD55/CD59二重欠損マウス赤血球の溶血アッセイ法
1日目、マウスRBC(±マンナンコーティング)の調製
含まれる材料:新鮮なマウス血液、BBS/Mg2+/Ca2+(4.4mMバルビツール酸、1.8mMナトリウムバルビトン、145mM NaCl、pH7.4、5mM Mg2+、5mM Ca2+)、塩化クロム、CrCl3・6H2O(BBS/Mg2+/Ca2+に溶解して0.5mg/mL)、およびマンナン、BBS/Mg2+/Ca2+に溶解して100μg/mL。
全血(2mL)を冷却遠心分離機に入れて2000×g、4℃で1〜2分間スピンダウンした。血漿およびバフィーコートを吸引した。次いで、RBCペレットを2mL氷冷BBS/ゼラチン/Mg2+/Ca2+に再懸濁し、遠心分離工程を繰り返すことによって、試料を3回洗浄した。3回目の洗浄後、ペレットを4mLのBBS/Mg2+/Ca2+に再懸濁した。2mLのRBCアリコートを非コーティング対照として取っておいた。残りの2mLには、2mLのCrCl3および2mLのマンナンを添加し、試料を穏やかに混合しながら室温で5分間インキュベートした。7.5mLのBBS/ゼラチン/Mg2+/Ca2+を添加することによって反応を終結させた。試料を前記のようにスピンダウンし、2mLのBBS/ゼラチン/Mg2+/Ca2+に再懸濁し、前記のようにさらに2回洗浄し、次いで、4℃で保管した。
2日目、溶血アッセイ法
材料は、BBS/ゼラチン/Mg2+/Ca2+(前記)、試験血清、96ウェル丸底プレートおよび96ウェル平底プレート、ならびに410〜414nmで96ウェルプレートを読み取る分光光度計を含んだ。
最初に、RBC濃度を求め、細胞を109/mLまで調整し、この濃度で保管した。使用前に、アッセイ緩衝液を108/mLまで希釈し、次いで、100ul/ウェルを使用した。溶血を410〜414nm(541nmより大きな感度を可能にする)で測定した。試験血清希釈液を氷冷BBS/ゼラチン/Mg2+/Ca2+に溶解して調製した。100μlのそれぞれの血清希釈液をピペットで丸底プレートに入れた(プレートレイアウトを参照されたい)。100μlの適切に希釈したRBC調製物を添加し(すなわち、108/mL)(プレートレイアウトを参照されたい)、37℃で約1時間インキュベートし、溶解のために観察した(この時点でプレートの写真を撮ってもよい)。次いで、プレートを最大速度で5分間スピンダウンした。液相のうち100μlを吸引し、平底プレートに移し、ODを410〜414nmで記録した。RBCペレットを保持した(後で、これらを水で溶解して、反対の結果を得ることができる)。
実験#1:
CD55/CD59二重欠損マウスおよびCrry/C3二重欠損マウスの血液から新鮮血を得て、前記のプロトコールに詳述したように赤血球を調製した。細胞を分け、細胞の半分をマンナンでコーティングし、もう半分を処理せずにしておき、最終濃度を1×108/mLまで調整した。このうち100μlを溶血アッセイ法において使用した。溶血アッセイ法は前記のように行った。
実験#1の結果:レクチン経路はPNH動物モデルにおける赤血球溶解に関与する
初期実験において、非コーティングWTマウス赤血球は、いかなるマウス血清中でも溶解されないことが判明した。さらに、マンナンコーティングCrry-/-マウス赤血球はWTマウス血清中ではゆっくりと溶解されるが(37℃で3時間超)、MBLヌル血清中では溶解されないことが判明した(データ示さず)。
マンナンコーティングCrry-/-マウス赤血球はヒト血清中では迅速に溶解されるが、熱失活NHS中では溶解されないことが判明した。重要なことに、マンナンコーティングCrry-/-マウス赤血球は、1/640まで希釈されたNHS中で溶解された(すなわち、1/40、1/80、1/160、1/320、および1/640希釈液は全て溶解した)(データ示さず)。この希釈液中では、第二経路は働かない(8%血清濃度を下回るとAP機能活性は著しく低下する)。
実験#1からの結論
マンナンコーティングCrry-/-マウス赤血球は、MBLを含まない高度に希釈したヒト血清ではなく、MBLを含む高度に希釈したヒト血清の中で非常によく溶解される。試験した全ての血清濃度における効率的な溶解は、第二経路がこの溶解に関与せず、必要もされないことを意味している。MBL欠損マウス血清およびヒト血清がマンナンコーティングCrry-/-マウス赤血球を溶解できないことにより、古典経路も、観察された溶解と全く関係がないことが示される。レクチン経路認識分子(すなわち、MBL)が必要とされるので、この溶解はレクチン経路によって媒介される。
実験#2:
Crry/C3二重欠損マウスおよびCD55/CD59二重欠損マウスから新鮮血を得て、マンナンコーティングCrry-/-マウス赤血球を、前記のように溶血アッセイ法において以下の血清の存在下で分析した:MBLヌル;WT;ヒト抗MASP-2抗体で前処理されたNHS;および対照として熱失活NHS。
実験#2の結果:MASP-2阻害因子はPNH動物モデルにおける赤血球溶解を阻止する
マンナンコーティングCrry-/-マウス赤血球と共にNHSを、1/640まで(すなわち、1/40、1/80、1/160、1/320、および1/640に)希釈された希釈液、ヒトMBL-/-血清、抗MASP-2mAbで前処理されたNHS、および対照として熱失活NHSの中でインキュベートした。
ELISAマイクロタイタープレートをスピンダウンして、溶解されなかった赤血球を丸底ウェルプレートの底に収集した。各ウェルの上清を収集し、ELISAリーダーにおいてOD415nmで読み取ることによって、溶解された赤血球から放出されたヘモグロビンの量を測定した。
対照熱失活NHS(陰性対照)では、予想したとおり溶解は観察されなかった。1/8および1/16に希釈されたMBL-/-ヒト血清はマンナンコーティングマウス赤血球を溶解した。1/8および1/16に希釈された抗MASP-2-抗体で前処理されたNHSはマンナンコーティングマウス赤血球を溶解したのに対して、WTヒト血清は1/32の希釈までマンナンコーティングマウス赤血球を溶解した。
図40は、熱失活(HI)NHS、MBL-/-、抗MASP-2抗体で前処理されたNHS、およびNHS対照由来の血清における、ある範囲の血清濃度のヒト血清によるマンナンコーティングマウス赤血球の溶血(溶解マウス赤血球(Cryy/C3-/-)から上清へのヘモグロビン放出によって測定した。測光法によって測定した)を図示する。
図40に示した結果から、抗MASP-2抗体を用いたMASP-2阻害はCH50を有意に変え、自己由来補体活性化からの保護が不完全な感作赤血球の補体媒介性溶解を阻害したことが証明される。
実験#3
非コーティングCrry-/-マウス赤血球における、Crry/C3二重欠損マウスおよびCD55/CD59二重欠損マウスから得られた新鮮血を、前記のように溶血アッセイ法において、以下の血清の存在下で分析した:MBL-/-;WT血清;抗MASP-2抗体で前処理されたNHS、および対照として熱失活NHS。
結果:
図41は、熱失活(HI)NHS、MBL-/-、抗MASP-2抗体で前処理されたNHS、およびNHS対照由来の血清における、ある範囲の血清濃度のヒト血清による非コーティングマウス赤血球の溶血(溶解WTマウス赤血球から上清へのヘモグロビン放出によって測定した。測光法によって測定した)を図示する。図41に示したように、阻害性MASP-2は非感作WTマウス赤血球の補体媒介性溶解を阻害することが証明された。
図42は、熱失活(HI)NHS、MBL-/-、抗MASP-2抗体で前処理されたNHS、およびNHS対照由来の血清における、ある範囲の血清濃度のヒト血清による非コーティングマウス赤血球の溶血(溶解マウス赤血球(CD55/59-/-)から上清へのヘモグロビン放出によって測定した。測光法によって測定した)を図示する。
(表12)血清濃度として表したCH
50値
注:「CH
50」は補体媒介性溶血が50%に達した点である。
要約すると、本実施例の結果から、阻害MASP-2は、自己由来補体活性化からの保護が不完全な感作および非感作赤血球の補体媒介性溶解を阻害することが証明される。従って、MASP-2阻害因子はPNHに罹患している対象を治療するのに使用することができ、エクリズマブ(Soliris(登録商標))などのC5阻害因子による治療を受けているPNH患者における血管外溶血を寛解させるため(すなわち、血管外溶血を阻害するため、血管外溶血を予防するため、または血管外溶血の重篤度を減少させるため)にも使用することができる。
実施例34
本実施例は、実施例29において前述された研究に対する後続の研究について述べ、MASP-2抗体などのMASP-2阻害因子が、放射線曝露の治療および/または急性放射線症候群の治療、寛解、もしくは予防に有効であるという、さらなる証拠を提供する。
原理:実施例29に記載の初期研究では、6.5Gy曝露レベルおよび7.0Gy曝露レベルの両方において、照射前にマウスに抗MASP-2抗体で処置すると、ビヒクル処置された照射対照動物と比較して照射マウスの生存率が増加することが証明された。実施例29において、6.5Gy曝露レベルでは、照射後に抗MASP-2抗体で処置すると、ビヒクル対照照射動物と比較して生存率が中程度に増加することがさらに証明された。本実施例は、最初の研究の結果を確認するために行われた別の放射線研究について述べる。
方法:
研究Aのデザイン:
Swiss Websterマウス(n=50)を電離放射線(8.0Gy)に曝露させた。放射線曝露の18時間前および2時間後に実施され、その後、毎週、実施された抗MASP-2抗体療法(mAbH6 5mg/kg)の死亡率に対する効果を評価した。
研究Aの結果:
図43に示したように、抗MASP-2抗体mAbH6の投与によって、8.0Gyに曝露されたマウスの生存率が増加し、調整された生存率中央値はビヒクル対照を与えたマウスと比較して4日から6日へと増加し、死亡率はビヒクル対照を与えたマウスと比較して12%減少した(ログランク検定、p=0.040)。
研究Bのデザイン:
Swiss Websterマウス(n=50)を、以下の群において、電離放射線(8.0Gy)に曝露させた:(I:ビヒクル)食塩水対照;(II:低)抗MASP-2抗体mAbH6(5mg/kg)を照射18時間前および照射2時間後に投与;(III;高)mAbH6(10mg/kg)を照射18時間前および照射2時間後に投与;ならびに(IV:高、照射後)mAbH6(10mg/kg)を照射2時間後のみ投与。
研究Bの結果:
照射前および照射後の抗MASP-2抗体の投与は、ビヒクル対照を与えた動物と比較して生存平均を4日から5日に調節した。抗MASP-2抗体処置マウスにおける死亡率はビヒクル対照マウスと比較して6〜12%減少した。さらに、重大で有害な治療効果は観察されなかったことに注目する(データ示さず)。
要約すると、本実施例において示した結果は実施例29に示した結果と一致する。これから、抗MASP-2抗体は、急性放射線症候群の有害作用のリスクを有する哺乳動物対象、または急性放射線症候群の有害作用に罹患している哺乳動物対象の治療において有効であることがさらに証明される。
実施例35
この研究は、LPS(リポ多糖)誘導性血栓症のマウスモデルにおいてMASP-2-欠損の効果を調べる。
原理:
志賀毒素を産生する大腸菌に感染することによって引き起こされる溶血性尿毒症症候群(HUS)は、小児における急性腎不全の第1位の原因である。本実施例では、MASP-2阻害が血管内血栓の形成を阻害または予防するのに有効であるかどうか判定するために、MASP-2-/-(KO)マウスにおいてLPS誘導性血栓症(微小血管凝固)のシュワルツマンモデルを行った。
方法:
MASP-2-/-(n=9)およびWT(n=10)マウスをLPS誘導性血栓症(微小血管凝固)のシュワルツマンモデルにおいて分析した。マウスにセラチアLPSを投与し、経時的に血栓形成をモニタリングした。微小血栓およびLPS誘導性微小血管凝固の発生率の比較を行った。
結果:
とりわけ、セラチアLPS後に、試験された全てのMASP-2-/-マウス(9/9)が血管内血栓を形成しなかった。対照的に、同時に試験された10匹のWTマウスのうち7匹に微小血栓が検出された(p=0.0031、フィッシャー直接確率法)。図44に示したように、MASP-2-/-マウスおよびWTマウスにおいてLPS感染後の微小血管閉塞の発病までの時間を測定した。60分にわたって測定された血栓形成を伴うWTマウスのパーセントを示し、血栓形成が約15分と早い段階で検出された。WTマウスの80%までが60分で血栓形成を示した。対照的に、図44に示したように、どのMASP-2-/-にも60分で血栓形成がなかった(ログランク:p=0.0005)。
これらの結果から、MASP-2阻害はHUSモデルにおける血管内血栓の発症を防ぐことが証明される。
実施例36
本実施例は、精製志賀毒素2(STX2)+LPSの腹腔内同時注射を用いたHUSマウスモデルにおける抗MASP-2抗体の効果について述べる。
背景:
精製志賀毒素2(STX2)+LPSの腹腔内同時注射を用いてHUSマウスモデルを開発した。マウス腎臓の生化学分析およびマイクロアレイ分析から、STX2+LPS曝露は、どちらか一方の作用物質単独の効果とは異なることが明らかになった。これらのマウスの血液分析および血清分析から、好中球増加症、血小板減少症、赤血球溶血、ならびに血清クレアチニンおよび血中尿素窒素の増加が示された。さらに、マウス腎臓の組織学分析および電子顕微鏡から、糸球体フィブリン沈着、赤血球うっ血、微小血栓形成、および糸球体の超微細変化が証明された。このHUSモデルは、C57BL/6マウスにおいて、ヒト疾患を規定する血小板減少症、溶血性貧血、および腎不全を含むヒトHUS病態の全ての臨床症状を誘導することが証明された(J. Immunol. 187(1):172-80(2011))。
方法:
体重が18〜20gのC57BL/6雌マウスをCharles River Laboratoriesから購入し、2つの群に分けた(各群に5匹のマウス)。一方のマウス群を、総体積150μl食塩水で希釈した組換え抗MASP-2抗体mAbM11(100μg/マウス;5mg/kg体重の最終濃度に相当する)による腹腔内(i.p.)注射によって前処置した。対照群には、いかなる抗体も含まない食塩水を与えた。抗MASP-2抗体 mAbM11のi.p注射の6時間後に、全てのマウスに、総体積150μlに溶解した、致死未満量(3μg/動物;150μg/kg体重に相当する)の霊菌(Serratia marcescens)LPS(L6136; Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)および4.5ng/動物の用量の(225ng/kgに相当する)のSTX2(LD50用量の2倍)の複合i.p.注射を与えた。対照には食塩水注射を使用した。
投与後6時間ごとにマウスの生存をモニタリングした。マウスがHUS病態の嗜眠段階に達したらすぐに選別した。36時間後に、全てのマウスを選別し、免疫組織化学および走査型電子顕微鏡のために両腎臓を取り出した。実験の終わりに血液試料を心臓穿刺によって採取した。血清を分離し、処置群および対照群においてBUNおよび血清クレアチニンレベルを測定するために-80℃で凍結状態に保った。
免疫組織化学:
それぞれのマウス腎臓の1/3を4%パラホルムアルデヒドで24時間、固定し、処理し、パラフィン包埋した。厚さが3マイクロメートルの切片を切断し、後でHE染色液で染色するために帯電スライドの上に置いた。
電子顕微鏡:
腎臓の中央部分を約1〜2mm3のブロックに切断し、1×PBSに溶解した2.5%グルタルアルデヒドで4℃において一晩固定した。その後、レスター大学電子顕微鏡施設(University of Leicester Electron Microscopy Facility)が固定組織を処理した。
クリオスタット切片:
腎臓の残りの1/3を約1〜2mm3のブロックに切断し、液体窒素で瞬間凍結し、クリオスタット切片用およびmRNA分析用に-80℃に保った。
結果:
図45は、STX/LPSによって誘導されるモデルにおける、食塩水処置対照マウス(n=5)および抗MASP-2抗体処置マウス(n=5)の経時的(時間)な生存率パーセントを図示する。とりわけ、図45に示したように、全ての対照マウスが42時間までに死亡した。きわだって対照的に、100%の抗MASP-2抗体処置マウスが実験の時間経過全体を通じて生存した。図45に示した結果と一致して、死亡した、または重篤な疾患の徴候により間引かなければならなかった未処置マウスの全てに重大な糸球体損傷があったのに対して、全ての抗MASP-2処置マウスの糸球体は正常にみえたことが観察された(データ示さず)。これらの結果から、血栓性微小血管症(TMA)、例えば、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非典型HUS(aHUS)、もしくは血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)に罹患している対象、またはTMA、例えば、HUS、aHUS、もしくはTTPを発症するリスクを有する対象を治療するために、抗MASP-2抗体などのMASP-2阻害因子が使用できることが証明される。
実施例37
本実施例は、血栓症のマウスFITC-デキストラン/光誘導性内皮細胞損傷モデルにおけるMASP-2欠損およびMASP-2阻害の効果について述べる。
背景/原理:実施例35および実施例36において証明したように、MASP-2欠損(MASP-2 KO)および(阻害性MASP-2抗体の投与を介した)MASP-2阻害によって典型HUSモデルにおいてマウスが保護されたのに対して、STXおよびLPSに曝露された対照マウスは全て重篤なHUSを発症し、瀕死になり、48時間以内に死亡した。例えば、図54に示したように、MASP-2阻害抗体で処置し、次いで、STXおよびLPSに曝露されたマウスは全て生き残った(フィッシャー直接p<0.01; N=5)。従って、抗MASP-2療法は、このHUSモデルにおいてマウスを保護する。
HUS、aHUS、TTP、および他の原因を有するTMAを治療するためのMASP-2阻害因子の利益をさらに証明する目的で、血栓性微小血管症(TMA)のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)-デキストラン誘導性内皮細胞損傷モデルにおけるMASP-2欠損およびMASP-2阻害の効果を分析するために以下の実験を行った。
方法:
生体顕微鏡観察
Frommhold et al., BMC Immunology 12:56-68, 2011に記載のように生体顕微鏡観察用にマウスを調製した。簡単に述べると、ケタミン(125mg/kg体重, Ketanest, Pfitzer GmbH, Karlsruhe, Germany)およびキシラジン(12.5mg/kg体重; Rompun, Bayer, Leverkusen, Germany)を腹腔内(i.p.)注射することによってマウスを麻酔し、体温を37℃に維持するためにヒーティングパッドの上に置いた。生体顕微鏡観察は、食塩水液浸系対物レンズ(saline immersion objective)(SW40/0.75開口数, Zeiss, Jena, Germany)を備えた正立顕微鏡(Leica, Wetzlar, Germany)上で行った。呼吸しやすくするために、PE90チューブ(Becton Dickson and Company, Sparks, MD, USA)を用いてマウスに挿管した。血液サンプリングおよび全身モノクローナル抗体(mAb)投与のために、PE10チューブ(Becton Dickson and Company, Sparks, MD, USA)を用いて左頚動脈にカニューレ処置した。
精巣挙筋調製
Sperandio et al., Blood, 97:3812-3819, 2001に記載のように、生体顕微鏡観察用に精巣挙筋を外科的に調製した。簡単に述べると、陰嚢を切り開き、精巣挙筋を固定化した。縦方向に切開し、カバーガラス上で筋肉を広げた後に、精巣上体および精巣を動かし、ピンで側面に留めて、顕微鏡で精巣挙筋の微小循環が全て見えるようにした。Panasonic S-VHSレコーダーに搭載されているCCDカメラ(CF8/1; Kappa, Gleichen, Germany)によって精巣挙筋の細静脈を記録した。Frommhold et al., BMC Immunology 12:56-68, 20112011により以前に述べられたように、温度管理された(35℃重炭酸緩衝食塩水)を精巣挙筋に灌流させた。
光励起FITCデキストラン損傷モデル
精巣挙筋細静脈および小動脈の内皮の制御された光線量依存的な血管損傷を、光毒性(FITC)-デキストラン(カタログ番号FD150S, Sigma Aldrich, Poole, U.K.)の光励起によって誘導した。この処置は局所的な血栓症を引き起こす。光毒性試薬として、FITC-デキストランの10%w/v溶液60μLを、左頚動脈アクセスを通して注射し、10分間、循環血液全体にわたって均質に広げた。十分に灌流された細静脈を選択した後に、再現性のある管理されたやり方で血栓症を刺激するために、FITC-デキストラン蛍光と内皮表面に対する低〜中程度の光毒性を誘導するように低〜中強度(800〜1500)のハロゲン光を関心対象の血管に集中させた。ハロゲンランプ(12V, 100W, Zeiss, Oberkochen, Germany)を用いて、FITC-デキストランの励起に必要な光毒性光強度を発生させた。蛍光色素の光誘導性励起に起因する光毒性は、ある閾値の光強度および/または照射期間を必要とし、内皮表面を直接加熱することによって、またはSteinbauer et al., Langenbecks Arch Surg 385:290-298, 2000に記載のように反応性酸素ラジカルを発生させることによって引き起こされる。
各血管に適用される光の強度を、調整のために、低出力測定用の波長補正ダイオード検出器(Labmaster LM-2, Coherent, Auburn, USA)によって測定した。ビデオスキャンのオフライン分析を、コンピュータ支援微小循環分析システム(CAMAS, Dr. Zeintl, Heidelberg)によって行った。赤血球速度を、Zeintl et al., Int J Microcirc Clin Exp, 8(3):293-302, 2000に記載のように測定した。
血栓症誘導前のモノクローナル抗ヒトMASP-2阻害抗体(mAbH6)およびビヒクル対照の適用
盲検試験デザインを用いて、生体顕微鏡観察の精巣挙筋モデルにおける血栓症の光毒性誘導の16時間前に、9週齢の雄C57BL/6 WT同腹子マウスに、MASP-2機能活性阻害因子である組換えモノクローナルヒトMASP-2抗体(mAbH6)(10mg/kg体重の最終濃度で与えた)または等量のアイソタイプ対照抗体(MASP-2阻害活性なし)をi.p.注射した。血栓症誘導の1時間前にmAbH6または対照抗体をもう1回投与した。このモデルではMASP-2ノックアウト(KO)マウスも評価した。
mAbH6(組換えヒトMASP-2に対して作製した)は強力なヒトMASP-2機能活性阻害因子であり、種特異性があるためにマウスMASP-2と交差反応し、マウスMASP-2に結合し、マウスMASP-2を阻害するが、親和性は低い(データは示さず)。マウスMASP-2に対するmAbH6の低親和性を補うために、種特異性の変化およびマウスMASP-2に対する低親和性を克服して、インビボ条件下でマウスMASP-2機能活性を効果的に妨げるようにmAbH6を高濃度(10mg/kg体重)で与えた。
この盲検試験では、試験した1本1本の細静脈(venuole)が完全に閉塞するのに必要な時間(選択基準は、比較可能な直径および血流速度によるものであった)を記録した。
生体顕微鏡観察ビデオ記録を用いて、微小血管閉塞を有するマウスのパーセント、発病時間、および閉塞までの時間を60分間の観察期間にわたって評価した。
結果:
図46は、FITC/デキストランUVモデルにおいて、FITC/デキストラン注射の16時間前および1時間前に投与されるアイソタイプ対照またはヒトMASP-2抗体mAbH6(10mg/kg)で処置した後の、損傷誘導後の時間の関数としての微小血管閉塞を有するマウスのパーセントを図示する。図46に示したように、アイソタイプ対照抗体を与えた野生型マウスの85%が30分またはそれ未満で閉塞したのに対して、ヒトMASP-2抗体(mAbH6)で前処置した野生型マウスの19%しか同じ期間内に閉塞しなかった。ヒトMASP-2抗体処置群において最終的に閉塞したマウスにおいて閉塞までの時間は延びた。さらに、MASP-2 mAbH6処置マウスのうち3匹は60分間の観察期間内に全く閉塞しなかった(すなわち、血栓性閉塞から保護された)ことが留意される。
図47は、ヒトMASP-2抗体(mAbH6)で処置したマウスおよびアイソタイプ対照抗体で処置したマウスの閉塞時間を分単位で図示する。データは、平均値(水平バー)および標準誤差バー(垂直バー)を伴ったスキャッター・ドットとして報告した。この図は、閉塞を観察することができたマウスにおける閉塞時間を示す。従って、60分間の観察中に閉塞しなかった3匹のMASP-2抗体処置マウスは、この分析に含めなかった(閉塞しなかった対照処置マウスは無かった)。分析に使用した統計検定は独立t検定であった。記号「*」はp=0.0129を示す。図47に示したように、閉塞した4匹のMASP-2抗体(mAbH6)処置マウスでは、MASP-2抗体処置によって、低光強度(800〜1500)を用いた血栓症のFITC-デキストラン/光誘導性内皮細胞損傷モデルにおける静脈閉塞時間は、アイソタイプ対照抗体で処置したマウスと比較して有意に延びた。アイソタイプ対照の完全閉塞時間の平均は19.75分であったのに対して、MASP-2抗体処置群の完全閉塞時間の平均は32.5分であった。
図48は、低光強度(800〜1500)を用いた血栓症のFITC-デキストラン/光誘導性内皮細胞損傷モデルにおける、野生型マウス、MASP-2 KOマウス、および血栓症誘導の16時間前に10mg/kgをi.p.投与し、次いで再び1時間前にi.v.投与することでヒトMASP-2抗体(mAbH6)前処置した野生型マウスの閉塞までの時間を分単位で図示する。図48には、閉塞した動物しか含めなかった。アイソタイプ対照抗体を与えた野生型マウスについてはn=2;MASP-2 KOについてはn=2;およびヒトMASP-2抗体(mAbH6)を与えた野生型マウスについてはn=4。記号「*」はp<0.01を示す。図48に示したように、MASP-2欠損およびMASP-2阻害(10mg/kgのmAbH6)によって、低光強度(800〜1500)を用いた血栓症のFITC-デキストラン/光誘導性内皮細胞損傷モデルにおける静脈閉塞時間が延びた。
結論:
本実施例の結果から、レクチン経路を遮断するMASP-2阻害物質(例えば、MASP-2機能を遮断する抗体)は、TMAマウスモデルにおける多数の微小血管障害のうちの顕著な特徴である微小血管凝固および血栓症を阻害することがさらに証明される。従って、HUS、aHUS、TTP、または他の微小血管障害に罹患している患者においてMASP-2阻害物質、例えば、MASP-2阻害抗体の投与が有効な療法であり、微小血管凝固および血栓症を防止すると期待される。
実施例38
本実施例は、血小板が豊富なヒト血漿中で、ヒトMASP-2阻害抗体(mAbH6)が血小板機能に影響を及ぼさないことを証明した試験について述べる。
背景/原理:実施例37に記載のように、ヒトMASP-2阻害抗体(mAbH6)を用いたMASP-2阻害によって、血栓症のFITC-デキストラン/光誘導性内皮細胞損傷モデルにおける静脈閉塞時間が延びることが証明された。MASP-2阻害抗体(mAbH6)が血小板機能に影響を及ぼすかどうか判定するために以下の実験を行った。
方法:ADP誘導性血小板凝集に対するヒトmAbH6 MASP-2抗体の効果を以下の通りに試験した。濃度が1μg/mlまたは0.1μg/mlのヒトMASP-2 mAbH6の溶液40μLを、新鮮に調製された血小板が豊富なヒト血漿360μLに添加した。アイソタイプ対照抗体を陰性対照として使用した。抗体を血漿に添加した後に、最終濃度が2μMのADPを添加することによって血小板活性化を誘導した。1mLキュベットの中で小さな磁石を用いて溶液を攪拌することによってアッセイ法を開始した。2チャンネルChrono-log Platelet Aggregometer Model 700 Whole Blood/Optical Lumi-Aggregometerにおいて血小板凝集を測定した。
結果:
溶液中での凝集パーセントを5分間にわたって測定した。結果を以下の表13に示した。
上記の表13に示したように、対照抗体またはMASP-2 mAbH6抗体で処置したADP誘導性血小板の凝集間で有意差は観察されなかった。これらの結果から、ヒトMASP-2抗体(mAbH6)は血小板機能に影響を及ぼさないことが証明される。従って、ヒトMASP-2阻害抗体(mAbH6)を用いたMASP-2阻害によって、血栓症のFITC-デキストラン/光誘導性内皮細胞損傷モデルにおける静脈閉塞時間が延びることを証明した実施例37に記載の結果は血小板機能に対するmAbH6の効果によるものではなかった。従って、MASP-2阻害は血小板機能に直接影響を及ぼすことなく血栓症を阻止する。このことから既存の抗血栓剤とは異なる治療機構が明らかになった。
実施例39
本実施例は、TMAマウスモデルにおける血栓形成および血管閉塞に対するMASP-2阻害の効果について述べる。
背景/原理:レクチン経路は、内皮細胞ストレスまたは損傷の状況での補体系活性化において中心的な役割を果たす。この活性化は、aHUSを呈する多くの患者において機能不全になっている第二経路によって迅速に増幅される。従って、MASP-2およびレクチン経路の活性化を阻止すると、膜侵襲複合体形成、血小板活性化、および白血球動員につながる一連の酵素反応が止まると予想される。この効果によって組織損傷が制限される。
さらに、MASP-2は第Xa因子様活性を有し、プロトロンビンを切断してトロンビンを形成する。このMASP-2によって動かされる凝固系活性化は止血を不均衡にし、TMAの病態の原因となる可能性がある。従って、補体系および凝固系の活性化を遮断するMASP-2阻害因子、例えば、MASP-2阻害抗体を用いてMASP-2を阻害すると、aHUSおよび他のTMA関連状態における転帰が改善すると期待される。
実施例37に記載のように、ヒトMASP-2阻害抗体(mAbH6)を用いたMASP-2阻害によって、血栓症のFITC-デキストラン/光誘導性内皮細胞損傷モデルにおける静脈閉塞時間が延びたことが証明された。このTMAモデルでは、FITC-デキストランのIV注射によってマウスに感光性が与えられ、その後に、マウス精巣挙筋の微小血管系にあるFITC-デキストランが局所的に光活性化された(Thorlacius H et al., Eur J Clin. Invest 30(9):804-10, 2000; Agero et al., Toxicon 50(5):698-706, 2007)。
TMAマウスモデルにおいて、MASP-2阻害抗体(mAbH6)が血栓形成および血管閉塞に対して用量反応効果を有するかどうか判定するために以下の実験を行った。
方法:フルオレセインイソチオシアネート標識デキストラン(FITC-デキストラン)を光活性化することによってC57Bl/6マウスの精巣挙筋の微小血管系において局所的な血栓症を誘導した。実施例37に記載の方法と以下の変更を用いて、生体顕微鏡観察を使用して血栓形成および血管閉塞の発現を測定した。TMA誘導の1時間前にマウス群にmAbH6(2mg/kg、10mg/kg、もしくは20mg/kg)またはアイソタイプ対照抗体(20mg/kg)を静脈内(iv)注射によって投与した。血栓形成発現までの時間および完全血管閉塞までの時間を記録した。30〜60分間にわたって録画した生体顕微鏡観察イメージのビデオ再生分析を用いて、血管サイズ、血流速度、光強度、血小板接着に相当するものである血栓形成発現の速度、血栓形成発現までの時間、完全血管閉塞の速度、および完全血管閉塞までの時間を評価した。統計解析はSigmaPlot v12.0を用いて行った。
結果:
血栓形成の開始
図49は、漸増量のヒトMASP-2阻害抗体(2mg/kg、10mg/kg、もしくは20mg/kgのmAbH6)またはアイソタイプ対照抗体で処置したFITC-デキストラン誘導性血栓性微小血管症マウスにおける時間の関数としての血栓を有するマウスのパーセントを示したカプラン・マイヤープロットである。図49に示したように、血栓形成の開始は対照処置マウスと比べてmAbH6処置マウスにおいて用量依存的に遅延した。
図50は、mAbH6用量の関数としての血栓形成発現までの時間の中央値(分)を図示する(*対照と比較してp<0.01である)。図50に示したように、血栓形成発現までの時間の中央値は、漸増量のmAbH6を用いて対照群の6.8分から20mg/kg mAbH6処置群の17.7分まで延びた(p<0.01)。基礎をなす実験データおよび統計解析を表14および表15に示した。
ビデオグラフィック録画の評価に基づいて記録したマウス一匹一匹の血栓形成発現までの時間を以下の表14に詳述した。
(表14)光色素誘導性損傷後の血栓形成発現までの時間
*血管は、示された観察期間中に発現を示さなかった。
対照とmAbH6処置動物との間で閉塞発現までの時間を比較した統計解析を以下の表15に示した。
(表15)発現までの時間: FITC Dex用量反応試験からのデータ
事象=観察された発現までの時間
中央値(分)およびその95%CIはカプラン・マイヤー推定法に基づいた。
NE=推定不能
*p値はダネット・フ(Dunnett-Hsu)多重比較によって調整した。
微小血管閉塞
図51は、漸増量のヒトMASP-2阻害抗体(2mg/kg、10mg/kg、もしくは20mg/kgのmAbH6)またはアイソタイプ対照抗体で処置したFITC-デキストラン誘導性血栓性微小血管症マウスにおける時間の関数としての微小血管閉塞を有するマウスのパーセントを示したカプラン・マイヤープロットである。図51に示したように、mAbH6処置群における完全微小血管閉塞は対照マウスと比較して遅延した。
図52は、mAbH6用量の関数としての微小血管閉塞までの時間の中央値を図示する(*対照と比較してp<0.05)。図52に示したように、完全微小血管閉塞までの時間の中央値は対照群の23.3分から2mg/kg mAbH6処置群の38.6分まで延びた(p<0.05)。2mg/kg mAbH6処置群と同様に、10mg/kgまたは20mg/kgのmAbH6を投与した(完全に微小血管が閉塞するための時間の中央値はそれぞれ40.3分および38分であった)。基礎をなす実験データおよび統計解析を表16および表17に示した。
ビデオグラフィック録画の一次評価に基づいて記録したマウス一匹一匹の完全血管閉塞までの時間を以下の表16に詳述した。
(表16)光色素誘導性損傷後の完全閉塞までの時間
*血管は、示された観察期間中に完全に閉塞しなかった。
対照とmAbH6処置動物との間で完全閉塞までの時間を比較した統計解析を以下の表17に示した。
(表17)完全微小血管閉塞までの時間:FITC Dex用量反応試験からのデータ
事象=観察された閉塞までの時間
中央値(分)およびその95%CIはカプラン・マイヤー推定法に基づいた。
NE=推定不能
*p値はダネット・フ多重比較によって調整した。
概要
表18にまとめたように、血栓形成の開始は対照処置マウスと比べてmAbH6処置マウスにおいて用量依存的に遅延した(発現までの時間の中央値10.4〜17.7分対6.8分)。完全閉塞までの時間の中央値は、対照処置群と比べて全mAbH6処置群において有意に遅延した(表18)。
(表18)血栓形成および完全閉塞の発現までの時間の中央値
#中央値はカプラン・マイヤー推定法に基づいた。
*対照と比較してp<0.05(ウィルコクソンを多重比較用のダネット・フによって調整した)。
これらの結果から、MASP-2に結合し、かつ補体系のレクチン経路を遮断するヒトモノクローナル抗体であるmAbH6はTMAの実験マウスモデルにおいて微小血管血栓症を用量依存的に緩和したことが証明される。従って、MASP-2阻害物質、例えば、MASP-2阻害抗体の投与は、HUS、aHUS、TTP、または他の微小血管障害、例えば、劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)、全身デゴス病、ならびに癌に続発するTMA、癌化学療法に続発するTMA、および移植に続発するTMAを含む他のTMAに罹患している患者において有効な療法であり、微小血管凝固および血栓症を防止すると期待される。
実施例40
本実施例は、免疫系の古典的(C1q依存的)経路および第二経路成分を完全な状態のままにしておきながら、MASP-2に結合し、かつレクチンを介した補体活性化を阻害する完全ヒトscFv抗体をファージディスプレイを用いて特定することについて述べる。
概略:
ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることによって完全ヒト高親和性MASP-2抗体を特定した。抗体の可変軽鎖断片および可変重鎖断片をscFv形式および完全長IgG形式で単離した。ヒトMASP-2抗体は、免疫系の古典的(C1q依存的)経路成分を完全な状態のままにしておきながら、レクチン経路を介した補体第二経路活性化に関連する細胞損傷を阻害するのに有用である。一部の態様において、このMASP-2阻害抗体は、以下の特徴を有する:(a)ヒトMASP-2に対する親和性が高い(例えば、10nMまたはそれ未満のKD)、および(b)30nMまたはそれ未満のIC50で90%ヒト血清中でMASP-2依存性補体活性を阻害すること。
方法:
完全長触媒不活性MASP-2の発現:
ヒトMASP-2ポリペプチドをコードするヒトMASP-2完全長cDNA配列(SEQ ID NO:4)とリーダー配列(SEQ ID NO:5)を哺乳動物発現ベクターpCI-Neo(Promega)にサブクローニングした。哺乳動物発現ベクターpCI-Neo(Promega)は、CMVエンハンサー/プロモーター領域の制御下で真核生物において発現を駆動する(Kaufman R.J. et al., Nucleic Acids Research 19:4485-90, 1991; Kaufman, Methods in Enzymology, 185:537-66 (1991)に記載)。
触媒不活性ヒトMASP-2Aタンパク質を作製するために、本明細書に参照により組み入れられるUS2007/0172483に記載のように部位特異的変異誘発を行った。アガロースゲル電気泳動後にPCR産物を精製し、バンド調製物および1アデノシンオーバーラップを標準的なテーリング法を用いて作製した。次いで、アデノシンテールMASP-2AをpGEM-T easyベクターにクローニングし、形質転換によって大腸菌(E.coli)に導入した。ヒトMASP-2Aを哺乳動物発現ベクターpEDまたはpCI-Neoのいずれかにさらにサブクローニングした。
標準的なリン酸カルシウムトランスフェクション法(Maniatis et al.,1989)を用いて、前記のMASP-2A発現構築物をDXB1細胞に導入した。確実に調製物が他の血清タンパク質で汚染されないように、MASP-2Aを無血清培地中で産生させた。培地をコンフルエント細胞から一日おきに収集した(合計4回)。組換えMASP-2Aレベルの平均は培養培地1リットルあたり約1.5mgであった。MBP-A-アガロースカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィーによってMASP-2A(前記のSer-Ala変異体)を精製した。
パニング/scFv変換およびフィルタースクリーニングによって特定したScFv候補クローンに対するMASP-2A ELISA
ヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列のファージディスプレイライブラリーを抗原パニングに供し、その後に、ヒトMASP-2タンパク質に対する高親和性scFv抗体を特定するために自動抗体スクリーニングおよび選択を行った。HIS-タグ化MASP-2Aまたはビオチン-タグ化MASP-2Aに対するscFvファージライブラリーパニングを3回行った。3回目のパニングを最初にMBLで溶出させ、次いでTEA(アルカリ性)で溶出させた。標的MASP-2Aに対するscFv断片を示すファージの特異的濃縮をモニタリングするために、固定化MASP-2Aに対するポリクローナルファージELISAを行った。3回目のパニングからのscFv遺伝子をpHOG発現ベクターにクローニングし、MASP-2Aに対する特異的クローンを探すためにスモールスケールフィルタースクリーニングに供した。
3回目のパニングからのscFv断片をコードするプラスミドを含有する細菌コロニーをつつき、ニトロセルロース膜上で格子状にし(grid)、非誘導培地上で一晩増殖させてマスタープレートを作製した。3回目のパニングから合計18,000個のコロニーをつつき、分析した。半分は競合的溶出由来であり、半分は、その後のTEA溶出由来であった。MASP-2Aに対するscFvファージミドライブラリーのパニングとそれに続くscFv変換およびフィルタースクリーニングによって137個の陽性クローンが得られた。137個のうち108個のクローンが、MASP-2結合についてのELISAアッセイ法において陽性であった(データは示さず)。このうち45個のクローンを、正常ヒト血清中でMASP-2活性を妨げる能力についてさらに分析した。
レクチン経路C3コンバターゼ形成の阻害を測定するためのアッセイ法
レクチン経路C3コンバターゼ形成の阻害を測定する機能アッセイ法を用いて、MASP-2 scFv候補クローンの「ブロッキング活性」を評価した。レクチン経路C3コンバターゼを構成する2つのタンパク質成分(C4b、C2a)を生成するためにはMASP-2セリンプロテアーゼ活性が必要とされる。従って、MASP-2機能活性を阻害するMASP-2 scFv(すなわち、ブロッキングMASP-2 scFv)はレクチン経路C3コンバターゼの新規形成を阻害する。C3は、その構造の一部として珍しい高反応性のチオエステル基を含有する。このアッセイ法においてC3コンバターゼによりC3が切断されると、C3b上にあるチオエステル基は、エステル結合またはアミド結合を介して、プラスチックウェルの底に固定化された高分子上にあるヒドロキシル基またはアミノ基と共有結合を形成することができ、従って、ELISAアッセイ法におけるC3b検出が容易になる。
酵母マンナンは公知のレクチン経路アクチベーターである。C3コンバターゼの形成を測定する以下の方法では、マンナンでコーティングしたプラスチックウェルを希釈ヒト血清とインキュベートして、レクチン経路を活性化した。次いで、ウェルを洗浄し、標準的なELISA法を用いてウェル上に固定化したC3bについてアッセイした。このアッセイ法において生成したC3bの量は、レクチン経路C3コンバターゼの新規形成を直接反映したものである。このアッセイ法では、選択された濃度のMASP-2 scFvクローンが、C3コンバターゼ形成およびその結果として起きるC3b生成を阻害する能力を試験した。
方法:
前記のように特定した45個の候補クローンを発現させ、精製し、同じストック濃度まで希釈し、確実に全クローンに等量の緩衝液があるように、Ca++およびMg++を含有するGVB緩衝液(4.0mMバルビタール、141mM NaCl、1.0mM MgCl2、2.0mM CaCl2、0.1%ゼラチン、pH7.4)で再希釈した。scFvクローンをそれぞれ、2μg/mLの濃度で3つ組で試験した。陽性対照はOMS100 Fab2であり、0.4μg/mLで試験した。scFv/IgGクローンの存在下および非存在下でC3c形成をモニタリングした。
マンナンを、50mM炭酸緩衝液(15mM Na2CO3+35mM NaHCO3+1.5mM NaN3)、pH9.5で20μg/mL(1μg/ウェル)の濃度まで希釈し、ELISAプレートに4℃で一晩コーティングした。翌日、マンナンコーティングプレートをPBS 200μlで3回洗浄した。次いで、1%HSAブロッキング溶液100μlをウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートはPBS 200μlで3回洗浄され、かつ、試料の添加までPBS 200μlを加えて氷上で保管された。
正常ヒト血清をCaMgGVB緩衝液で0.5%まで希釈し、この緩衝液に、scFvクローンまたはOMS100 Fab2陽性対照を0.01μg/mL;1μg/mL(OMS100対照のみ)および10μg/mLにおいて3つ組で添加し、氷上で45分間プレインキュベートした後に、ブロックされたELISAプレートに添加した。37℃で1時間インキュベートすることによって反応を開始した。プレートを氷浴に移すことによって反応を止めた。ウサギα-マウスC3c抗体の後にヤギα-ウサギHRPを用いてC3b沈着が検出された。陰性対照は、抗体を含まない緩衝液(抗体なし=最大C3b沈着)であった。陽性対照は、EDTAを含む緩衝液(C3b沈着なし)であった。バックグラウンドは、ウェルがマンナンを含まないこと以外は同じアッセイ法を行うことによって決定された。マンナンを含有するウェルのシグナルから、マンナンを含まないプレートに対するバックグラウンドシグナルを差し引いた。カットオフ基準は、関連のないscFvクローン(VZV)および緩衝液のみの活性の半分に設定した。
結果:
カットオフ基準に基づいて、合計13個のクローンがMASP-2活性を妨げることが見出された。>50%の経路抑制を生じた13個全てのクローンを選択および配列決定して、10個のユニークなクローンを得た。10個全てのクローンが同じ軽鎖サブクラス、λ3を有することが見出されたが、3つの異なる重鎖サブクラス:VH2、VH3、およびVH6を有することが見出された。機能アッセイ法において、10個の候補scFvクローンから5個が、0.5%ヒト血清を用いて、25nM目標基準よりも少ないIC50nM値を示した。
有効性が向上した抗体を特定するために、前記のように特定した3個の母scFvクローンを軽鎖シャッフリングに供した。このプロセスには、6人の健常ドナーに由来するナイーブヒトλ軽鎖(VL)ライブラリーと対になった、母クローンそれぞれのVHからなるコンビナトリアルライブラリーの作製を伴った。次いで、結合親和性および/または機能が改善されたscFvクローンがあるかどうか、このライブラリーをスクリーニングした。
(表19)主要な娘クローンおよびそれらのそれぞれの母クローン(全てscFv形式)のIC
50 (nM)で表した機能的有効性の比較
上記の表19に示し、下記の表20A〜Fに列挙した母クローンおよび娘クローンの重鎖可変領域(VH)配列を以下に示した。
Kabat CDR(31-35(H1)、50-65(H2)、および95-102(H3))を太字で示した。Chothia CDR(26-32(H1)、52-56(H2)、および95-101(H3))に下線を引いた。
17D20_35VH-21N11VL重鎖可変領域(VH)(SEQ ID NO:66によってコードされる、SEQ ID NO:67)
d17N9重鎖可変領域(VH)(SEQ ID NO:68)
以下の表21A〜Fに列挙した母クローンおよび娘クローンの軽鎖可変領域(VL)配列を以下に示した。
Kabat CDR(24〜34(L1);50〜56(L2);および89〜97(L3)を太字で示した。Chothia CDR(24〜34(L1);50〜56(L2);および89〜97(L3)に下線を引いた。KabatシステムでナンバリングしてもChothiaシステムでナンバリングしても、これらの領域は同一である。
17D20m_d3521N11軽鎖可変領域(VL)(SEQ ID NO:69によってコードされる、SEQ ID NO:70)
17N16m_d17N9軽鎖可変領域(VL)(SEQ ID NO:71)
MASP-2抗体であるOMS100およびMoAb_d3521N11VL(SEQ ID NO:67に示した重鎖可変領域とSEQ ID NO:70に示した軽鎖可変領域を含む。「OMS646」および「mAbH6」とも呼ぶ)はいずれも高い親和性でヒトMASP-2に結合し、機能的補体活性を妨げる能力を有することが証明されており、これらをドットブロット分析によってエピトープ結合について分析した。これらの結果により、OMS646抗体およびOMS100抗体はMASP-2に対して高度に特異的であり、MASP-1/3に結合しないことが示される。どちらの抗体も、MAp19にも、MASP-2のCCP1ドメインを含有しないMASP-2断片にも結合しなかった。このことから結合部位はCCP1を含むと結論付けられた。
MASP-2抗体OMS646は、C1s、C1r、またはMASP-1と比較して5000倍超の選択性で組換えMASP-2に強く結合することが決定された(Kd60〜250pM)(以下の表22を参照されたい)。
(表22)固相ELISA試験によって評価した場合のOMS646 MASP-2抗体-MASP-2相互作用の親和性および特異性
*平均±SD; n=12。
OMS646はレクチン依存的な終末補体成分活性化を特異的に遮断する
方法:
膜侵襲複合体(MAC)沈着に及ぼすOMS646の影響を、レクチン経路、古典経路、および第二経路の経路特異的条件を用いて分析した。この目的のために、Wieslab Comp300補体スクリーニングキット(Wieslab, Lund, Sweden)を製造業者の説明書に従って使用した。
結果:
図53Aは、レクチン経路特異的アッセイ条件下、抗MASP-2抗体(OMS646)の存在下または非存在下でのMAC沈着レベルを図示する。図53Bは、古典経路特異的アッセイ条件下、抗MASP-2抗体(OMS646)の存在下または非存在下でのMAC沈着レベルを図示する。図53Cは、第二経路特異的アッセイ条件下、抗MASP-2抗体(OMS646)の存在下または非存在下でのMAC沈着レベルを図示する。
図53Aに示したように、OMS646は、レクチン経路を介したMAC沈着活性化を約1nMのIC50値で遮断する。しかしながら、OMS646は、古典経路を介した活性化から生じたMAC沈着(図53B)にも第二経路を介した活性化から生じたMAC沈着(図53C)にも影響を及ぼさなかった。
マウスに静脈内(IV)投与または皮下(SC)投与した後のOMS646の薬物動態学および薬物動力学
マウスにおける28日間の単回投与PK/PD試験においてOMS646の薬物動態学(PK)および薬物動力学(PD)を評価した。この試験では、5mg/kgおよび15mg/kgの用量レベルの皮下(SC)投与OMS646ならびに5mg/kgの用量レベルの静脈内(IV)投与OMS646を試験した。
OMS646のPKプロファイルに関して、図54は、示された用量のOMS646を投与した後の時間の関数としてのOMS646濃度(n=3動物/群の平均)を図示する。図54に示したように、5mg/kg SCのOMS646は、投与してから約1〜2日後に5〜6ug/mLの最大血漿中濃度に達した。5mg/kg SCのOMS646のバイオアベイラビリティは約60%であった。図54にさらに示したように、15mg/kg SCのOMS646は、投与してから約1〜2日後に10〜12ug/mLの最大血漿中濃度に達した。全群について、OMS646は体循環からゆっくりと除去され、終末相半減期(terminal half-life)は約8〜10日であった。OMS646のプロファイルはマウスにおけるヒト抗体に典型的である。
OMS646のPD活性を図55Aおよび図55Bに図示した。図55Aおよび55Bは、5mg/kg IV(図55A)群および5mg/kg SC(図55B)群における、それぞれのマウスのPD応答(全身レクチン経路活性の低下)を示す。破線はアッセイ法のベースラインを示す(最大阻害;アッセイ前に、インビトロで過剰なOMS646が添加されたナイーブマウス血清)。図55Aに示したように、5mg/kgのOMS646をIV投与した後に全身レクチン経路活性はすぐに、ほぼ検出不可能なレベルまで低下した。レクチン経路活性は28日間の観察期間にわたってわずかな回復しか示さなかった。図55Bに示したように、5mg/kgのOMS646 SCが投与されたマウスでは、時間依存的なレクチン経路活性阻害が観察された。薬物を投与してから24時間以内にレクチン経路活性はほぼ検出不可能なレベルまで低下し、少なくとも7日間、低いレベルのままであった。レクチン経路活性は時間と共に徐々に増加したが、28日間の観察期間内に投与前のレベルに戻らなかった。15mg/kg SCを投与した後に観察されたレクチン経路活性対時間プロファイルは5mg/kg SC用量とほぼ同じであった(データは示さず)。これはPDエンドポイントの飽和を示している。さらに、データから、IVまたはSCのいずれかで投与された5mg/kgのOMS646の毎週用量が、マウスにおける全身レクチン経路活性の連続的な抑制を達成するのに十分であることが示された。
実施例41
本実施例により、MASP-2阻害抗体(OMS646)は、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の急性期および寛解期中に得たこの疾患を有する患者由来の血清に曝露された後の活性化ヒト微小血管内皮細胞(HMEC-1)表面におけるaHUS血清誘導性補体C5b-9沈着を阻害することが証明される。
背景/原理:MASP-2に特異的に結合し、かつレクチン経路活性化を阻害するMASP-2抗体であるOMS646の存在下または非存在下で、疾患の(1)急性期中および(2)寛解期中に得たaHUS患者血清に曝露された後の活性化HMEC-1細胞表面におけるaHUS血清誘導性補体C5b-9沈着を分析するために以下の試験を行った。
方法:
患者:この試験のために、国際HUS/TTP登録簿(International Registry of HUS/TTP)に収められ、Mario Negri研究所、移植・希少疾患免疫学・遺伝学研究室(Laboratory of Immunology and Genetics of Transplantation and Rare Diseases of the Mario Negri Institute)によって遺伝子型が同定されたaHUS患者の中から、疾患の急性期および寛解中に試験する4人のaHUS患者を選択した。1人のaHUS患者はヘテロ接合性p.R1210C補体因子H(CFH)変異を有しており、1人のaHUS患者は抗CFH自己抗体を有していたが、他の2人のaHUS患者にはCFHの変異も抗体も見出されなかった。
表23および表24は、本試験で分析した4人のaHUS患者における補体遺伝子変異および抗CFH自己抗体をスクリーニングした結果と、急性期中または寛解時に測定した臨床データおよび生化学データをまとめたものである。
(表23)本試験における4人のaHUS患者の臨床パラメータ
注:n.a.=入手不可。
(表24)本試験における4人のaHUS患者の補体パラメータ
実験方法:真皮由来ヒト微小血管内皮細胞株(HMEC-1)に由来する細胞をガラススライド上にプレートして、コンフルエントな場合に使用した。コンフルエントHMEC-1細胞を10μM ADP(アデノシン二リン酸)で10分間活性化し、次いで、疾患の急性期に収集した前記の表23および表24に記載した4人のaHUS患者もしくは寛解期にある同じaHUS患者または4人の健常対照対象由来の血清と4時間インキュベートした。前記の実施例40のように作製したMASP-2阻害抗体であるOMS646(100μg/mL)の存在下もしくは非存在下で、または補体阻害の陽性対照である可溶型補体受容体1(sCR1)(150μg/mL)の存在下で、血清を試験培地(0.5%BSAを含むHBSS)で1:2に希釈した。インキュベーション段階終了時に、HMEC-1細胞をウサギ抗ヒト補体C5b-9で処理した後にFITC結合二次抗体で処理した。それぞれの実験において、aHUS患者血清(急性期および寛解)と同時に1人の健常対照由来の血清を試験した。内皮細胞表面にある蛍光染色を取得するために共焦点倒立レーザー顕微鏡を使用した。試料1個につき15視野を取得し、ソフトウェアImageJに組み込まれている特定の機能を用いて自動端線検出(edge detection)によって蛍光染色が占める面積を評価し、分析した1視野あたりのピクセル2で表した。最低値および最高値を示した視野を算出から排除した。
統計解析(一方向ANOVAに続いて多重比較用チューキー(Tukey)検定)のために、それぞれの患者および対照について、それぞれの実験条件において考慮された13視野のピクセル2で示した結果を使用した。
結果:
4人のaHUS患者由来の血清を用いた補体沈着分析の結果を以下の表25Aにまとめた。4人の健常対象由来の血清を用いた結果を以下の表25Bにまとめた。
(表25A)ADP活性化HMEC-1細胞上でのaHUS血清誘導性C5b-9沈着に対する補体阻害因子の効果
(表25B)ADP活性化HMEC-1細胞上でのC5b-9沈着に対する4人の健常対照対象(aHUSに罹患していない)由来の血清に対する補体阻害因子の効果
表25Aおよび表25Bについて、データは平均±SEである。°P<0.001対対照;*P<0.001、**P<0.01対aHUS急性期未処理;§P<0.001、§§P<0.01、§§§P<0.05対aHUS寛解期未処理。
図56は、ADP活性化HMEC-1細胞上でのaHUS血清誘導性C5b-9沈着に対するMASP-2抗体(OMS646)およびsCR1の阻害効果を図示する。図56では、データは平均±SEである。°P<0.0001対対照;*P<0.0001対aHUS急性期未処理;^P<0.0001対aHUS急性期+sCR1;§P<0.0001対aHUS寛解期未処理、および#P<0.0001対aHUS寛解期+sCR1。
表25A、25B、および図56に示したように、(急性期中または寛解中のいずれかに収集した)aHUS患者由来の血清に静止状態で4時間曝露されたADP刺激HMEC-1細胞は、共焦点顕微鏡観察によって検出した場合に細胞表面に非常に濃いC5b-9沈着を示した。C5b-9被覆面積を測定することによって、aHUS血清が急性期に収集されたか寛解中に収集されたかに関係なく、aHUS患者由来の血清に曝露された細胞上には、健常対照対象由来の血清に曝露された細胞よりも有意に多い量のC5b-9沈着が観察された。急性期と寛解との間に血清誘導性内皮C5b-9沈着の差は観察されなかった。
表25A、25B、および図56にさらに示したように、MASP-2抗体OMS646を(急性期中または寛解中に患者から得た)aHUS血清に添加すると、未処理aHUS血清と比較して内皮細胞表面におけるC5b-9沈着は有意に減少した。しかしながら、C5b-9沈着に対するOMS646の阻害効果は、補体汎阻害因子sCR1によって生じた効果よりも大きくなかった。実際に、OMS646の存在下でのaHUS血清誘導性C5b-9沈着とsCR1の存在下でのaHUS血清誘導性C5b-9沈着との間に統計的に有意な差が観察された(図56ならびに表25Aおよび表25B)。
4人のaHUS患者の平均として算出した場合に、(100%とした同じ患者由来の未処理血清によって誘導されたC5b-9沈着と比較した)補体阻害因子の存在下で観察されたC5b-9沈着の減少のパーセントは以下の通りであった。
急性期:
sCR1(150μg/ml):C5b-9沈着における91%減少
OMS646(100μg/ml):C5b-9沈着における40%減少
寛解期:
sCR1(150μg/ml):C5b-9沈着における91%減少
OMS646(100μg/ml):C5b-9沈着における54%減少
結論:本実施例に記載の結果から、活性化微小血管内皮細胞によって補体のレクチン経路が刺激され、この刺激は、aHUSに特有の悪化した補体活性化応答の重大な促進因子であることが証明される。このレクチン経路刺激と、結果として生じた悪化した補体活性化応答はaHUSの急性期および臨床寛解中の両方で起こることも証明される。さらに、この発見は、aHUSに関連する特定の補体欠陥に限定されるようには見えない。本実施例においてさらに証明されるように、MASP-2阻害抗体、例えば、OMS646を用いたレクチン経路の選択的阻害によって、原因が多岐にわたるaHUS患者において補体沈着が減少する。
実施例42
本実施例により、MASP-2阻害抗体(OMS646)は、aHUSの(1)急性期中および(2)寛解期中に得たaHUS患者血清に曝露された後の活性化ヒト微小血管内皮細胞(HMEC-1)表面におけるaHUS血清誘導性血小板凝集および血栓形成を阻害することが証明される。
方法:
患者:3人のaHUS患者(実施例41の表23、表24、表25A、および表25Bに記載の患者番号1、番号2、および番号4)(1人の患者はヘテロ接合性p.R1210C CFH変異を有していたが、他の2人の患者には変異も抗CFH抗体も見出されなかった)を疾患の急性期および寛解中に試験した。この試験のために、国際HUS/TTP登録簿に収められ、Mario Negri研究所、移植・希少疾患免疫学・遺伝学研究室によって遺伝子型が同定された患者の中から患者を選択した。灌流実験の血液ドナーとして5人の健常対象も選択した。
方法:コンフルエントHMEC-1細胞を10μM ADPで10分間活性化し、次いで、疾患の急性期に収集した3人のaHUS患者(実施例41記載の患者番号1、2、および4)由来の血清もしくは寛解時の同じ患者由来の血清と、または健常対象由来の対照血清と3時間インキュベートした。MASP-2阻害抗体である実施例40に記載のように作製したOMS646(100μg/mL)または補体阻害の陽性対照であるsCR1(150μg/mL)の存在下または非存在下で、血清を試験培地(0.5%BSAを含むHBSS)で1:2に希釈した。患者番号1および番号2については、さらなるウェルを、100μg/mLの関連のないアイソタイプ対照抗体または20μg/mLのOMS646を含む試験培地で1:2に希釈した血清(急性期および寛解)とインキュベートした(後者については、症例番号1は寛解中のみ試験し、症例番号2は急性期および寛解時両方を試験した)。
インキュベーション段階終了時に、HMEC-1細胞をフローチャンバーに入れて、健常対象から得たヘパリン添加全血(10UI/mL)(血小板を標識する蛍光色素メパクリンを含有する)と共に、微小循環中で発生するずれ応力(60ダイン/cm2、3分)で灌流させた。灌流してから3分後に、内皮細胞単層をアセトンで固定した。共焦点倒立レーザー顕微鏡によって、内皮細胞表面にある血小板血栓の画像を試料1個につき15枚取得した。血栓が占める面積はImageJソフトウェアを用いて評価した。最低値および最高値を示した視野を算出から排除した。
統計解析(一方向ANOVAに続いて多重比較用チューキー検定)のために、それぞれの患者および対照について、それぞれの実験条件において考慮された13視野のピクセル2で示した結果を使用した。
結果:
3人のaHUS患者由来の血清を用いた血栓形成実験の結果を以下の表26Aにまとめた。5人の健常対象由来の血清を用いた結果を表26Bにまとめた。
(表26A)ADP活性化HMEC-1細胞上でのaHUS血清誘導性血栓形成に対する補体阻害因子の効果(ピクセル
2±SE)
(表26B)ADP活性化HMEC-1細胞上での血栓形成アッセイ法における5人の健常対照対象(aHUSに罹患していない)由来の血清に対する補体阻害因子の効果(ピクセル
2±SE)
表26Aおよび表26Bについて、データは平均±SEである。°P<0.001対対照;*P<0.001、***P<0.05対aHUS急性期未処理;§P<0.001、§§§P<0.05対aHUS寛解期未処理。
図57は、ADP活性化HMEC-1細胞上でのaHUS血清誘導性血栓形成に対するMASP-2抗体(OMS646)およびsCR1の効果を図示する。図57において、示したデータは平均±SEである。°P<0.0001、°°P<0.01対対照;*P<0.0001、**P<0.01対aHUS急性期未処理;§P<0.0001対aHUS寛解期未処理。
表26Aおよび図57に示したように、健常対照対象由来の血清に曝露された細胞と比較して、急性期中または寛解時に収集したaHUS血清で処理したHMEC-1細胞において血栓被覆面積の著しい増加が観察された(表26Bおよび図57)。図57および表26Aに示したように、OMS646は(100μg/mlおよび20μg/mlのいずれも)、急性期に採取したaHUS血清に予め曝露された細胞上での血栓形成を部分的に阻害した。抗血栓形成効果はOMS646の2つの異なる用量間で同等であり、sCR1の効果と差が無かった(図57および表26A)。関連のないアイソタイプ対照抗体の添加にはaHUS血清誘導性血栓形成に対する阻害効果が無かった。
図57および表26Aにさらに示したように、OMS646の阻害効果は寛解期に収集したaHUS血清の方がずっと明らかであった。実際に、100μg/mlおよび20μg/ml用量のいずれでもOMS646を、寛解時に収集したaHUS患者血清に添加すると、sCR1添加によって観察された血栓形成と同じように血栓形成がほぼ完全に阻害された。関連のないアイソタイプ対照抗体は有意な阻害効果を示さなかった。
3人のaHUS患者の平均として算出した場合に、補体阻害因子を用いて記録した、(100%とした同じ患者由来の未処理血清によって誘導された血栓と比較した)血栓沈着によって覆われたHMEC-1表面の減少のパーセントは以下の通りであった。
急性期:
sCR1(150μg/ml):60%減少
OMS646(100μg/ml):57%減少
OMS646(20μg/ml):45%減少
寛解期:
sCR1(150μg/ml):85%減少
OMS646(100μg/ml):79%減少
OMS646(20μg/ml):89%減少
結果の考察:
本実施例における結果から、MASP-2阻害抗体、例えば、(実施例40に記載のように作製された)OMS646はHMEC-1細胞におけるaHUS血清誘導性血栓形成に対して強力な阻害効果を有することが証明される。驚いたことに、血栓形成に対するOMS646の阻害効果は、(実施例41に記載のように)HMEC-1において誘導されたC5b-9沈着に対する効果よりも大きかった。100μg/mlおよび20μg/ml用量のOMS646を、寛解時に収集したaHUS患者血清に添加することで血栓形成がほぼ完全に阻害されたことも驚くべきことである。別の驚くべき発見は、OMS646は急性期および寛解中いずれも、広範囲のかつほぼ完璧な補体系阻害因子である陽性対照sCR1と同じくらいの効果があったことが観察されたことである(Weisman H. et al., Science 249:146-151, 1990; Lazar H. et al., Circulation 100:1438-1442, 1999)。
健常対象由来の対照血清もHMEC-1細胞において中程度の血栓形成を誘導したことが留意される。本発明者らは、OMS646を用いてもsCR1を用いても、対照血清によって誘導された血栓形成に対して、一貫した阻害効果を観察しなかった。特定の理論に拘束されるつもりはないが、対照によって誘導される血栓は、対照血清とインキュベートしたHMEC-1において観察された非常に弱いC5b-9沈着により裏付けられるように補体に依存しないと考えられる(実施例41を参照されたい)。
結論:
結論として、MASP-2阻害抗体、例えば、OMS646の観察された抗血栓効果は、(実施例41に記載し、図56に示したように)この実験系において観察されたC5b-9沈着に対するOMS646の阻害効果に基づいて予想されたものよりもかなり大きいように見える。例えば、「C5a/C5aR interaction mediates complement activation and thrombosis on endothelial cells in atypical hemolytic uremic syndrome (aHUS)」という表題のGastoldi et al., Immunobiology 217:1129-1222 Abstract 48 (2012)に記載のように、C5b-9沈着を阻害(60%減少)するC5抗体の添加によって、HMEC-1における血栓形成が同等の程度(60%減少)まで制限されたことが決定された。対照的に、MASP-2阻害抗体(100μg/mLのOMS646)は(急性期=40%減少;寛解期=54%減少)の平均値でC5b-9沈着を阻害し、これよりもかなり高いパーセント(急性期=57%減少;寛解期=79%減少)で血栓形成を阻害した。比較すると、OMS646は陽性対照の補体阻害因子(150μg/mLのsCR1、C5b-9沈着の急性期阻害=91%減少;寛解期=91%減少)よりも低いパーセントで補体沈着を阻害したが、血栓形成阻害の点では陽性対照であるsCR1 (150μg/mLのsCR1、急性期=60%減少;寛解期=85%減少)と同じぐらい有効であった。これらの結果から、MASP-2阻害抗体(例えば、OMS646)は、急性期と寛解期の両期中のaHUS対象から得た血清中での血栓形成の阻害において驚くべき効果があることが証明される。
前述に従って、一態様において、本発明は、血栓性微小血管症(TMA)に罹患している対象または該TMAを発症するリスクを有する対象に、MASP-2依存性補体活性化を阻害するのに有効な量のMASP-2阻害抗体を含む組成物を投与する工程を含む、該対象における血栓形成を阻害する方法を提供する。一態様において、TMAは、溶血性尿毒症症候群(HUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、および非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)からなる群より選択される。一態様において、TMAはaHUSである。一態様において、該組成物はaHUS患者に疾患の急性期に投与される。一態様において、該組成物は、寛解期のaHUS患者(すなわち、急性期aHUSのエピソードから回復した対象または部分的に回復した対象。例えば、このような寛解は、例えば、本明細書に参照により組み入れられる、Loirat C et al., Orphanet Journal of Rare Diseases 6:60, 2011に記載のように多い血小板数および/または低い血清中LDH濃度によって証明される)に投与される。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、以下の特徴のうちの少なくとも1つまたは複数を示す:該抗体が、10nMもしくはそれ未満のKDでヒトMASP-2を結合させること、該抗体が、MASP-2のCCP1ドメイン中のエピトープを結合させること、該抗体が、インビトロアッセイ法において1%ヒト血清中でのC3b沈着を10nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、90%ヒト血清中でのC3b沈着を30nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、Fv、Fab、Fab'、F(ab)2、およびF(ab')2からなる群より選択される抗体断片であること、該抗体が単鎖分子であること、該抗体がIgG2分子であること、該抗体がIgG1分子であること、該抗体が、S228P変異を含むIgG4分子であること、ならびに/または該抗体が古典経路を実質的に阻害しないこと。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、第二経路を実質的に阻害しない。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、古典経路も第二経路も実質的に阻害しない(すなわち、古典経路および補体第二経路を完全な状態のままにしておきながらレクチン経路を阻害する)。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、TMA、例えば、aHUS(急性期または寛解期)に罹患している対象由来の血清中での血栓形成を未処理血清と比較して少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害する。一部の態様において、MASP-2阻害抗体は、aHUSに罹患している対象由来の血清中での血栓形成を、血清中でのC5b-9沈着に対する阻害効果よりも少なくとも20パーセント以上(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%)高いレベルで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、寛解期にあるaHUS患者由来の血清中での血栓形成を未処理血清と比較して少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害する。一部の態様において、MASP-2阻害抗体は、寛解期にあるaHUS患者における血清中での血栓形成を、血清中でのC5b-9沈着に対する阻害効果よりも少なくとも20パーセント以上(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%)高いレベルで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は静脈内カテーテルまたは他のカテーテル送達方法を介して対象に投与される。
一態様において、本発明は、TMAに罹患している対象における血栓形成を阻害する方法であって、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を該対象に投与する工程を含み、該抗体またはその抗原結合断片が、(I)(a)(i)SEQ ID NO:67の31〜35のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H1;および(ii)SEQ ID NO:67の50〜65のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H2;および(iii)SEQ ID NO:67の95〜102のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H3を含む、重鎖可変領域、ならびに、(b)(i)SEQ ID NO:70の24〜34のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L1;および(ii)SEQ ID NO:70の50〜56のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L2;および(iii)SEQ ID NO:70の89〜97のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L3を含む、軽鎖可変領域、または、(II)SEQ ID NO:67と少なくとも90%の同一性(例えば、SEQ ID NO:67と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO:70と少なくとも90%の同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する軽鎖可変領域を含むそれらの変種を含む、方法を提供する。
一態様において、TMAは、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)(急性期または寛解期のいずれか)、HUS、およびTTPからなる群より選択される。一態様において、対象はaHUSの急性期にある。一態様において、対象はaHUSの寛解期にある。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。一部の態様において、該方法は、SEQ ID NO:70に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示した重鎖可変領域とSEQ ID NO:70に示した軽鎖可変領域とを含む参照抗体OMS646によって認識されるヒトMASP-2上エピトープの少なくとも一部を特異的に認識するMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を、対象に投与する工程を含む。結合メンバー間の競合は、インビトロで、例えば、ELISAを用いて、および/または同じエピトープもしくは重複エピトープに結合する特異的結合メンバーを特定できるように、他の非タグ化結合メンバーの存在下で検出することができる特定のレポーター分子を一方の結合メンバーにタグ化することによって容易にアッセイされ得る。従って、ヒトMASP-2との結合において参照抗体OMS646と競合するヒト抗体抗原結合部位を含む特異的抗体またはその抗原結合断片が本発明において提供される。
実施例43
本実施例により、ヒトMASP-2阻害抗体(OMS646)は、真皮由来初代ヒト微小血管内皮細胞(MVEC)において、TMA患者血漿を介したアポトーシス誘導を阻害できることが証明される。
背景/原理:
TMAの病態生理は、様々な要因によって誘導される内皮細胞損傷と、それに続く、血小板血栓および/またはフィブリン血栓による細い血管(例えば、細い小動脈および毛細血管)の閉塞を伴うことが公知である(Hirt-Minkowsk P. et al., Nephron Clin Pract 114:c219-c235, 2010; Goldberg R.J. et al., Am J Kidney Dis 56(6):1168-1174, 2010)。MVECは、TMA関連障害を有する患者由来の血漿にインビトロで曝露された場合にアポトーシス損傷を受けることが示されている(Stefanescu et al., Blood Vol 112 (2):340-349, 2008; Mitra D. et al., Blood 89:1224-1234, 1997を参照されたい)。TMAに関連するアポトーシス損傷は、このような患者の組織生検材料(皮膚、骨、骨髄、脾臓、腎臓、回腸)から得たMVECにおいて実証されている。MVECに対するアポトーシス傷害はMVEC中の膜結合型補体調節タンパク質のレベルを低下させることも示されている(例えば、Mold and Morris, Immunology 102:359-364, 2001; Christmas et al., Immunology 119:522, 2006を参照されたい)。
終末補体成分が関与する正のフィードバックループは、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、ならびに劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)、デゴス病に関連するTMA、ならびに癌に続発するTMA、癌化学療法に続発するTMA、自己免疫に続発するTMA、および移植に続発するTMAを含むTMAの病態生理に関与すると考えられている。これらの状態はそれぞれ、mAbエクリズマブを用いた抗C5療法に応答することが公知であるか、または、mAbエクリズマブを用いた抗C5療法に応答すると考えられている(Chapin J. et al., Brit. J. Hematol 157:772-774, 2012; Tsai et al., Br J Haematol 162(4):558-559, 2013); Magro C. M. et al., Journal of Rare Diseases 8:185, 2013)。
ヒトMASP-2阻害抗体(OMS646)が、aHUS、ADAMTS13欠損関連血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、CAPSおよび全身デゴス病、ならびに癌に続発するTMA、移植に続発するTMA、自己免疫疾患に続発するTMA、および化学療法に続発するTMAに罹患している患者から得た血漿試料中での初代ヒト真皮MVECにおけるTMA患者血漿を介したアポトーシス誘導を遮断する能力を分析するために以下の実験を行った。
方法:
本明細書に参照により組み入れられる、Stefanescu R. et al., Blood Vol 112 (2):340-349, 2008に記載のように、真皮由来初代ヒトMVECにおけるTMA患者血漿を介したアポトーシス誘導を遮断するMASP-2阻害抗体(OMS646)の有効性を分析するためにインビトロアッセイ法を行った。このアッセイ法において使用した血漿試料は、健常対照対象のコレクションから、および急性期または回復期の血栓性微小血管症を有する個体から得た。TMA患者における細小血管症の存在は、末梢血スミア上に分裂赤血球を検出することによって評価した。さらに、Stefanescu R. et al., Blood Vol 112 (2):340-349, 2008に記載のようにTTPを評価した。
内皮細胞(EC)培養
Stefanescuらに記載のように、真皮由来初代ヒトMVECはScienCell Research Labs (San Diego, CA)から購入した。MVECは継代数5および6回までCD34を発現した(Blood 89:1224-1234, 1997)。MVECは、内皮細胞増殖補助剤、ペニシリン、ストレプトマイシンおよび15%胎仔ウシ血清を含有するECM1001培地(ScienCell Research Labs)に溶解した0.1%ゼラチン水溶液でコーティングしたポリスチレンフラスコ中で維持した。全MVECを継代数2〜6回において使用した。継代培養は0.25%トリプシン-EDTAへの5〜10分間の曝露を伴った。
アポトーシスアッセイ法
TTP/HUS血漿誘導性アポトーシスに対して感受性であることが公知である代表的な真皮由来初代ヒトMVECをリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、0.1%ゼラチン水溶液でコーティングした12ウェルプレートのチャンバーに0.15×106生細胞/mLでプレートした。プレートされたMVEC細胞を完全培地中で24時間、飢餓状態にし、次いで、MASP-2 mAb OMS646(150μg/mL)の存在下または非存在下で様々な濃度(2%〜20%v/v)のTMA患者血漿試料または健常ドナー血漿に18時間、曝露し、次いで、細胞をトリプシン処理によって収集した。各TMA患者試料を2つ組で分析した。血漿を介したアポトーシスの程度を、ヨウ化プロピジウム(PI)染色を用いて評価した。>5×103の細胞をサイトフルオログラフ(cytofluorograph)で分析し、A0ピークをコンピュータソフトウェア(MCycle Av, Phoenix Flow Systems, San Diego, CA)によって明らかにした。酵素結合免疫測定法(ELISA)ベースの細胞溶解産物由来細胞質ヒストン結合DNA断片の定量も製造業者(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)の指示に従って行った。
結果:
MASP-2 mAb(OMS646)の存在下でのTMA患者血漿誘導性MVECアポトーシスアッセイ法の結果を以下の表27に示した。
(表27)MASP-2 mAb(OMS646)の存在下で真皮由来の初代ヒトMVECに対して試験したTMA患者血漿
表27において使用した略語:
「APLA」=劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)に関連する抗リン脂質抗体
「SLE」=全身性エリテマトーデス
「CVA」=脳血管発作(脳卒中)
Stefanescu R. et al., Blood Vol 112 (2):340-349, 2008において報告された結果と一致して、13個のTMA患者血漿試料の存在下、MASP-2抗体の非存在下で真皮由来初代MVECの有意なアポトーシスが観察された。健常ヒト対象由来の対照血漿試料も同時に試験され、MVECにおいてアポトーシスを誘導しなかった(データは示さず)。表27に示したように、MASP-2阻害mAb(OMS646)は、試験した13個の患者血漿試料のうちの6個(46%)において、初代MVECにおけるTMA患者血漿を介したアポトーシス誘導を阻害した(表27の「レスポンダー」)。特に、MASP-2阻害mAb(OMS646)は、aHUS、TTP、デゴス病、SLE、移植、およびAPLA(CAPS)に罹患している患者から得た血漿中でのアポトーシスを阻害したことが留意される。このアッセイ法において試験した、MASP-2 mAbがアポトーシスを遮断しなかった7個の患者試料(表27の「非レスポンダー」)については、アポトーシスはいくつかの経路によって誘導することができ、このような経路の全てが補体依存性であるとは限らないことが留意される。例えば、Stefanescu R. et al., Blood Vol 112 (2):340-349, 2008において述べられたように、ECアッセイ法におけるアポトーシスは、アポトーシス誘導に必要な傷害レベルの決定において役割を果たしている可能性のある血漿因子によって影響を受けるEC活性化基礎状態に依存する。Stefanescu R.らにおいてさらに述べられたように、アポトーシスを調節することができる、さらなる因子、例えば、サイトカインおよび様々な補体系成分がTMA患者血漿中に存在する可能性がある。従って、これらの複雑な因子が原因で、TMA血漿誘導性アポトーシスを示した血漿試料の全てにおいてMASP-2抗体がブロッキング効果を示さなかったことは驚くべきことではない。
さらに、この点に関して、TMA血漿誘導性アポトーシスアッセイ法と抗C5抗体エクリズマブを用いて同様の分析が行われ、よく似た結果が観察されたことが留意される(Chapin et al., Blood (ASH Annual Meeting Abstracts): Abstract #3342, 120: 2012を参照されたい)。かなり成功した商品であるエクリズマブの臨床有効性は、このモデルにおいて証明された有効性よりも大きいように見える。このことから、このインビトロモデルは補体阻害薬物の臨床能力を過小評価している可能性があることが示唆される。
これらの結果から、MASP-2阻害抗体、例えば、OMS646は、TMA、例えば、aHUS、TTP、デゴス病、SLE、移植、およびAPLA(CAPS)に罹患している患者から得た血漿中でのTMA血漿誘導性アポトーシスの阻害に有効であることが証明される。内皮損傷およびアポトーシスがTMA、例えば、特発性TTPおよび散発性HUSの病態において重要な役割を果たすことが分かっている(Kim et al., Microvascular Research vol 62(2):83-93, 2001)。Dangらに記載のように、アポトーシスはTTP患者の赤脾髄において証明されたが、健常対照対象では証明されなかった(Dang et al., Blood 93(4):1264-1270, 1999)。アポトーシスの証拠はHUS 患者のMVEC由来腎糸球体細胞でも観察されている(Arends M. J. et al., Hum Pathol 20:89, 1989)。従って、MASP-2阻害物質、例えば、MASP-2阻害抗体(例えば、OMS646)の投与は、TMA、例えば、aHUS、TTP、または他の微小血管症障害、例えば、CAPS、全身デゴス病を含む他のTMA、および癌に続発するTMA;化学療法に続発するTMA、または移植に続発するTMAに罹患している患者において有効な療法であると期待される。
前述に従って、一態様において、本発明は、MASP-2依存性補体活性化を阻害するのに有効な量のMASP-2阻害抗体を含む組成物を、血栓性微小血管症(TMA)に罹患している対象または該TMAを発症するリスクを有する対象に投与する工程を含む、該対象における内皮細胞損傷および/もしくは内皮細胞アポトーシスならびに/または血栓形成を阻害する方法を提供する。一態様において、TMAは、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、および溶血性尿毒症症候群(HUS)からなる群より選択される。一態様において、TMAはaHUSである。一態様において、該組成物はaHUS患者に疾患の急性期に投与される。一態様において、該組成物は寛解期のaHUS患者(すなわち、急性期aHUSのエピソードから回復した対象または部分的に回復した対象。例えば、このような寛解は、例えば、本明細書に参照により組み入れられる、Loirat C et al., Orphanet Journal of Rare Diseases 6:60, 2011に記載のように多い血小板数および/または低い血清中LDH濃度によって証明される)に投与される。
一態様において、対象は、(i)癌に続発するTMA;(ii)化学療法に続発するTMA;または(iii)移植(例えば、臓器移植、例えば、腎臓移植もしくは同種造血幹細胞移植)に続発するTMAであるTMAに罹患しているか、または該TMAを発症するリスクを有する。一態様において、対象は、アップショー・シュールマン症候群(USS)に罹患しているか、または該USSを発症するリスクを有する。一態様において、対象は、デゴス病に罹患しているか、または該デゴス病を発症するリスクを有する。一態様において、対象は、劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)に罹患しているか、または該CAPSを発症するリスクを有する。
本明細書において開示された態様のいずれかによれば、MASP-2阻害抗体は、以下の特徴のうちの少なくとも1つまたは複数を示す:該抗体が、10nMもしくはそれ未満のKDでヒトMASP-2を結合させること、該抗体が、MASP-2のCCP1ドメイン中のエピトープを結合させること、該抗体が、インビトロアッセイ法において1%ヒト血清中でのC3b沈着を10nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、90%ヒト血清中でのC3b沈着を30nMもしくはそれ未満のIC50で阻害すること、該抗体が、Fv、Fab、Fab'、F(ab)2、およびF(ab')2からなる群より選択される抗体断片であること、該抗体が単鎖分子であること、該抗体がIgG2分子であること、該抗体がIgG1分子であること、該抗体が、S228P変異を含むIgG4分子であること、ならびに/または該抗体が古典経路を実質的に阻害しないこと。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、第二経路を実質的に阻害しない。一態様において、該抗体はMASP-2に結合し、レクチン経路を選択的に阻害し、古典経路を実質的に阻害しない(すなわち、古典的補体経路を完全な状態のままにしておきながらレクチン経路を阻害する)。
一態様において、MASP-2阻害抗体は、TMA、例えば、aHUS(急性期もしくは寛解期)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、癌に続発するTMA;化学療法に続発するTMA;移植(例えば、臓器移植、例えば、腎臓移植もしくは同種造血幹細胞移植)に続発するTMAに罹患している対象由来の血清中での、またはアップショー・シュールマン症候群(USS)に罹患している対象由来の血清中での、またはデゴス病に罹患している対象由来の血清中での、または劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)に罹患している対象における血漿誘導性MVECアポトーシスを阻害し、血漿誘導性MVECアポトーシスは未処理血清と比較して少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、例えば、少なくとも20%、例えば、少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%最大99%まで阻害される。一部の態様において、MASP-2阻害抗体は、TMA(例えば、例えば、aHUS(急性期もしくは寛解期)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、癌に続発するTMA;化学療法に続発するTMA;移植(例えば、臓器移植、例えば、腎臓移植もしくは同種造血幹細胞移植)に続発するTMAに罹患している対象由来の血清中での、またはアップショー・シュールマン症候群(USS)に罹患している対象由来の血清中での、またはデゴス病に罹患している対象由来すの血清中での、または劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS))に罹患している対象における血栓形成を、血清中でのC5b-9沈着に対する阻害効果よりも少なくとも20パーセント以上(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%)高いレベルで阻害する。
一態様において、MASP-2阻害抗体は静脈内カテーテルまたは他のカテーテル送達方法を介して対象に投与される。
一態様において、本発明は、TMA(例えば、aHUS(急性期もしくは寛解期)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、癌に続発するTMA;化学療法に続発するTMA;移植(例えば、臓器移植、例えば、腎臓移植もしくは同種造血幹細胞移植)に続発するTMAに罹患している対象における、またはアップショー・シュールマン症候群(USS)に罹患している対象由来の血清中での、またはデゴス病に罹患している対象由来の血清中での、または劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS))に罹患している対象における血栓形成を阻害する方法であって、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を該対象に投与する工程を含み、該抗体またはその抗原結合断片が、(I)(a)(i)SEQ ID NO:67の31〜35のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H1;および(ii)SEQ ID NO:67の50〜65のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H2;および(iii)SEQ ID NO:67の95〜102のアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H3を含む、重鎖可変領域、ならびに(b)(i)SEQ ID NO:70の24〜34のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L1;および(ii)SEQ ID NO:70の50〜56のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L2;および(iii)SEQ ID NO:70の89〜97のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L3を含む、軽鎖可変領域、または、(II)SEQ ID NO:67と少なくとも90%の同一性(例えば、SEQ ID NO:67と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO:70と少なくとも90%の同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有する軽鎖可変領域を含むそれらの変種を含む、方法を提供する。
一態様において、対象は、癌に続発するTMA;化学療法に続発するTMA;移植(例えば、臓器移植、例えば、腎臓移植または同種造血幹細胞移植)に続発するTMAからなる群より選択されるTMA、アップショー・シュールマン症候群(USS)、デゴス病、および劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)に罹患している。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。一部の態様において、該方法は、SEQ ID NO:70に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、ある量のMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を対象に投与する工程を含む。
一部の態様において、前記方法は、SEQ ID NO:67に示した重鎖可変領域とSEQ ID NO:70に示した軽鎖可変領域とを含む参照抗体OMS646によって認識されるヒトMASP-2上エピトープの少なくとも一部を特異的に認識するMASP-2阻害抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を、対象に投与する工程を含む。
例示的な態様が例示および説明されたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更が可能なことが理解されると考えられる。
排他的な権利または特権を主張する本発明の態様は、添付の特許請求の範囲で規定される。