以下、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法の実施形態(以下、単に「実施形態の製造方法」ということがある。)を、適宜図面を参照して説明する。
≪熱可塑性エラストマー組成物の製造方法≫
実施形態の製造方法は、混合器中で、ポリマー成分又はその原料を含む混合対象物を溶融混合する溶融混合工程を含み、
前記溶融混合工程において、脱揮溶剤の存在下に、前記ポリマー成分又はその原料を溶融混合しつつ脱揮処理を行う方法である。当該方法により、前記ポリマー成分を含む熱可塑性エラストマー組成物を製造できる。
ポリマー成分の原料を用いる場合、上記の溶融混合時に、ポリマー成分の原料から、ポリマー成分を合成することができる。
<第一実施形態>
第一実施形態における製造方法は、混合器中で、ポリマー成分の原料を溶融混合する溶融混合工程を含み、
前記溶融混合工程において、脱揮溶剤の存在下に、前記ポリマー成分又はその原料を溶融混合しつつ脱揮処理を行う方法である。
図1は、第一実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に用いられる混合器を示す模式図である。
混合器1aは、上部が開放された縦型円筒形状の容器本体2と、容器本体2に投入されたポリマー成分の原料及び脱揮溶剤を加熱する加熱器10と、加熱されたポリマー成分の原料及び脱揮溶剤を撹拌する撹拌装置12とを備える。加熱器10は、容器本体2の下方に、容器本体2の底面に近接して、若しくは接して配置されている。加熱器10には、電熱線やヒーター等の電気加熱装置等の公知のものが使用できる。撹拌装置12は、主軸12aと、その下端に固定された二枚の羽根状の撹拌子12bとを有し、撹拌子12bは容器本体2の内側に、主軸12aが容器本体3の中心に一致するように配置されている。主軸12aを駆動装置12cにより回転させると、撹拌子12bが容器本体2の周方向に旋回する。撹拌子12bは、連続的に作動されてもよいし、間欠的に作動されてもよい。撹拌子12bの形状は羽根状でなくてもよく、例えば板状、捻れた棒状等の公知のものが使用できる。
容器本体2の開放された上部から容器本体2にポリマー成分の原料及び脱揮溶剤が投入されると、容器本体2に投入されたポリマー成分の原料は、加熱器10によってその融点以上の温度(溶融混合温度)に加熱されると共に、撹拌子12bによって撹拌混合され、脱揮溶剤の存在下に、ポリマー成分の原料が溶融混合される(溶融混合工程)。このようにすることで、ポリマー成分の原料が溶融し、ポリマー成分が合成される。
なお、混合器1aにポリマー成分の原料及び脱揮溶剤を投入する順序は特に制限されない。例えば、まず混合器1aにポリマー成分の原料を投入し、その後に脱揮溶剤を添加してもよい。又は、まず混合器1aに脱揮溶剤を投入し、その後にポリマー成分の原料を添加してもよい。或いは、予めポリマー成分の原料及び脱揮溶剤を混合して混合物としておき、当該混合物を混合器1aに投入してもよい。
上記の溶融混合温度は、混合対象物の成分に応じて適宜定めればよいが、ポリマー成分の原料及び脱揮溶剤の融点以上の温度であることが好ましく、混合対象物に含まれる各種物質の熱分解温度未満の温度を例示できる。一例として、溶融混合の温度は、100〜280℃であってもよく、160〜230℃であってもよく、180〜220℃であってもよい。
なお、混合器1aにポリマー成分の原料及び脱揮溶剤を投入する際の、ポリマー成分の原料の状態は特に制限されず、溶融状態のポリマー成分の原料を混合器1aに投入してもよく、混合器1aに投入した後に、混合器1a内でポリマー成分の原料を溶融させてもよい。混合器1a内でポリマー成分の原料を溶融させる場合、まずポリマー成分の原料を混合器1aに投入して溶融混合した後に混合器1aに脱揮溶剤を投入してもよく、ポリマー成分の原料を混合器1aに投入して溶融混合するのと同時に、混合器1aに脱揮溶剤を投入してもよく、脱揮溶剤と未溶融状態のポリマー成分の原料を混合器1aに投入した後に、混合器1a内でポリマー成分の原料を溶融させ溶融混合してもよい。
前記混合器中で混合される混合対象物は、ポリマー成分の原料以外にも、熱可塑性エラストマー組成物を構成する各成分を含むことができ、それらの成分をポリマー成分の原料とともに溶融混合してもよい。なお、ポリマー成分の原料が溶融しているのであれば、混合対象物に含まれる全ての成分が溶融していなくともよい。
本明細書において「混合対象物」とは、混合器中に投入され、前記溶融混合工程において混合され、脱揮溶剤と接触可能なものをいう。
溶融混合工程において、混合器1a中では、脱揮溶剤と溶融状態のポリマー成分の原料とが、又は脱揮溶剤と合成され溶融状態のポリマー成分とが接触することとなる。この時の脱揮溶剤の状態は、液体状態又は気体状態が好ましい。溶融混合により上記接触が促進され、ポリマー成分の原料及び/又はポリマー成分に由来する揮発成分の少なくとも一部が、脱揮溶剤に溶解するものと考えられる。
本実施形態の製造方法では、前記溶融混合工程において、前記溶融混合しつつ脱揮処理を行う。本明細書において「脱揮処理」とは、脱揮溶剤を揮発させて混合器内から排出することを意味する。混合器1aでは、ポリマー成分の原料及び脱揮溶剤を収容する内部空間が大気開放されているので、溶融混合温度で気化した脱揮溶剤が、混合器1a内から排出される(脱揮処理)。
脱揮処理により、脱揮溶剤が混合器から排出される際に、ポリマー成分の原料及び/又はポリマー成分に由来する揮発成分の少なくとも一部が、脱揮溶剤とともに排出され、混合対象物から除去される。
脱揮処理により、上記揮発成分の少なくとも一部が、脱揮溶剤とともに排出されるのは、脱揮溶剤と揮発成分とが共沸するためであると考えられる。かかる操作により、熱可塑性エラストマー組成物を加熱した際に発生し得る揮発成分の量を低減させることができる。また、このような揮発成分は、臭気成分に該当する場合が多く、多くの場合、熱可塑性エラストマー組成物から発生する臭気も低減できる。さらには、このような揮発成分を原因とするフォギング現象の抑制を可能とする。
溶融混合工程では、脱揮溶剤と溶融状態のポリマー成分の原料とが、又は脱揮溶剤と溶融状態で合成されたポリマー成分とが接触する。このように溶融状態で脱揮溶剤と接触することで、脱揮溶剤との接触面積が増大し、脱揮処理により、より効果的に混合対象物から揮発成分を除去することが可能となる。そのため、製造された熱可塑性エラストマー組成物では、加熱により放出され得る揮発成分の量を、より効果的に低減できる。
本実施形態の製造方法では、前記溶融混合工程において、前記溶融混合しつつ脱揮処理を行うことにより、単一の工程で、混合対象物の混合と揮発成分の除去とが達成される。
本明細書において「脱揮溶剤」とは、脱揮処理において揮発可能な物質である。すなわち、脱揮溶剤は、脱揮処理の圧力下での沸点が溶融混合温度より低いものが好ましく、上記沸点が180℃以下であるものが好ましく、160℃以下であるものがより好ましく、120℃以下であるものがさらに好ましい。脱揮処理時が大気開放である場合、脱揮処理の圧力下での沸点とは、1気圧での沸点である。脱揮処理が真空引きである場合、脱揮処理の圧力下での沸点とは、真空引きされた混合器内部分の圧力下での沸点である。
脱揮溶剤の沸点の下限値としては、取り扱い性の観点から、1気圧での沸点が40℃以上のものを例示できる。
脱揮溶剤の前記沸点の数値範囲の一例としては、脱揮溶剤は、1気圧での沸点が40℃以上180℃以下であってもよく、50℃以上160℃以下であってもよく、60℃以上120℃以下であってもよい。
また、ポリマー成分の原料を含む混合対象物との混合が良好となり、揮発成分の除去の効果が高められることから、脱揮溶剤は、液体状態で混合器に投入可能なものが好ましい。すなわち、脱揮溶剤は1気圧での融点が10℃未満であるものが好ましい。
脱揮溶剤としては、揮発成分の溶解性の観点から極性溶媒が挙げられ、水、アルコール等のプロトン性極性溶媒であってもよく、特に水が好ましい。
混合器中で混合される混合対象物の合計100質量部に対して、混合される前記脱揮溶剤の量比が0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましい。脱揮溶剤の量を上記下限値以上とすることで、脱揮処理により、より効果的に揮発成分を除去することが可能となる。
混合器中で混合される混合対象物の合計100質量部に対して、混合される前記脱揮溶剤の量比の上限は、一例として、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。脱揮溶剤の量を上記上限値以下とすることで、溶融混合が不均一となる等の不具合が生じることを防止できる。
また、溶融混合工程において、混合対象物と脱揮溶剤とはおそらく混合状態となり、製造された熱可塑性エラストマー組成物に脱揮溶剤が含まれ得るが、脱揮溶剤の量を上記上限値以下とすることで、製造された熱可塑性エラストマー組成物に脱揮溶剤が含有され難くなる。
前記混合器中で混合される混合対象物の合計100質量部に対して、混合される脱揮溶剤の量比の数値範囲の一例としては、0.1質量部以上30質量部以下であってもよく、1質量部以上20質量部以下であってもよく、3質量部以上10質量部以下であってもよい。
脱揮処理により混合器内から脱揮溶剤が排出されるのであるから、前記混合器中で混合される混合対象物及び脱揮溶剤の合計100質量%に対する脱揮溶剤の含有量の割合よりも、製造された熱可塑性エラストマー組成物100質量%に含有され得る脱揮溶剤の含有量の割合のほうが、値が小さくなることが好ましい。
実施形態の製造方法によれば、加熱により放出され得る揮発成分の量が低減された熱可塑性エラストマー組成物を製造可能である。
揮発成分が効果的に低減されたことは以下の数値を指標とできる。すなわち、実施形態の製造方法により製造された熱可塑性エラストマー組成物を、120℃で60分間加熱したときに放出された揮発成分が、n−デカン換算で35μg/g未満であることが好ましく、25μg/g未満であることがより好ましく、15μg/g未満であることがさらに好ましく、10μg/g未満であることが特に好ましい。前記揮発成分の下限値は特に制限されるものではないが、0.1μg/g以上であってもよい。熱可塑性エラストマー組成物の加熱方法及び当該揮発成分の定量方法は、実施例に記載の方法により行うこととする。
また、120℃で60分間加熱したときに放出され得る揮発成分の量が低減されたことは、実施形態の製造方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物と、実施形態の製造方法において脱揮溶剤を使用せずに製造して得られた熱可塑性エラストマー組成物とを比較し、前記加熱により放出され得る揮発成分の量を比較して、実施形態の製造方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物のほうで放出された揮発成分の量が少ない、又は放出された揮発成分が無いことで確認できる。
揮発成分としては、具体的には揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)が挙げられる。揮発性有機化合物としては、1気圧での沸点が260℃以下の有機化合物、1気圧での沸点が150℃以下の有機化合物等が挙げられ、1気圧での沸点が50〜260℃の有機化合物を例示できる。揮発成分は、脂肪族炭化水素、環状シロキサン、アルコール類、カルボン酸類、及び芳香族化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含んでいてもよい。カルボン酸類としては、酢酸、ピバル酸、イソ吉草酸、吉草酸、酪酸、及びカプロン酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含んでいてもよい。
なかでも、ポリマー成分が、環状酸無水物基を側鎖に有するポリマーを含む場合、特に臭気の強い上記カルボン酸類が発生し易いが、実施形態の製造方法によれば、これらのカルボン酸類を効果的に低減可能である。
また、本発明の一実施形態として、120℃で60分間加熱したときに放出された揮発成分が、n−デカン換算で35μg/g未満である熱可塑性エラストマー組成物を提供する。前記揮発成分は、25μg/g未満であることがより好ましく、15μg/g未満であることがさらに好ましく、10μg/g未満であることが特に好ましい。前記揮発成分の下限値は特に制限されるものではないが、0.1μg/g以上であってもよい。熱可塑性エラストマー組成物の加熱方法及び当該揮発成分の定量方法は、実施例に記載の方法により行うこととする。なお当該熱可塑性エラストマー組成物は、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物の製造方法により製造されたものに限定されない。
なお、上記の第一実施形態では、混合器1a中に、ポリマー成分の原料を投入し、溶融混合においてにポリマー成分を合成したが、混合器1a中に、予め合成されたポリマー成分を投入してもよい。すなわち、前記第一実施形態でポリマー成分の原料と記載された部分をポリマー成分と読みかえることができる。
この場合、混合器1a中では、脱揮溶剤とポリマー成分とが溶融混合され、脱揮処理を経て、ポリマー成分に由来する揮発成分の少なくとも一部が、脱揮溶剤とともに排出され、混合対象物から除去される。かかる操作により、熱可塑性エラストマー組成物を加熱した際に発生し得る揮発成分の量を低減させることができる。また、このような揮発成分は、臭気成分に該当する場合が多く、多くの場合、熱可塑性エラストマー組成物から発生する臭気も低減できる。さらには、このような揮発成分を原因とするフォギング現象の抑制を可能とする。
<第二実施形態>
第二実施形態における製造方法では、第一の投入口15と、ベント部17と、押出口19とを有する混合器1bを用い、混合器1b中で、ポリマー成分の原料を溶融混合する溶融混合工程を含み、前記溶融混合工程において、脱揮溶剤の存在下に、前記ポリマー成分又はその原料を溶融混合しつつ脱揮処理を行う方法である。
図2は、第二実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に用いられる混合器を示す模式図である。
上記の第一実施形態では、混合器1aを用いて熱可塑性エラストマー組成物を製造したが、第二実施形態の製造方法では、混合器1bを用いて熱可塑性エラストマー組成物を製造する(図2参照)。前記第一実施形態の製造方法と共通する点については、説明を省略する。
混合器1bは、横置き円筒形状の容器本体3と、容器本体3に投入されたポリマー成分の原料及び脱揮溶剤を加熱する加熱器13と、加熱されたポリマー成分の原料及び脱揮溶剤を撹拌しながら容器本体3の長手方向(後述する移動方向F)に搬送する螺旋搬送装置14とを備える。溶融混合部としての容器本体3は、ポリマー成分の原料及び脱揮溶剤を投入するための第一の投入口15と、気化した脱揮溶剤を排出するためのベント部17と、合成されたポリマー成分を押し出すための押出口19とを有する。第一の投入口15は、移動方向Fにおける容器本体3の上流端に、ベント部17は第一の投入口15よりも下流側に設けられている。押出口19は、容器本体3の下流端に接続されたヘッダ20の先端に形成されている。加熱器13は、容器本体3の周囲に、容器本体3の外周面に近接して、若しくは接して配置されている。加熱器13には、電熱線や、ヒーター等の電気加熱装置等の公知のものが使用できる。螺旋搬送装置14は、主軸14aと、主軸14aの回りに固定された一条螺旋のスクリュー(螺子)14bとを有し、容器本体3の内側に、主軸14aの長手方向が容器本体3と一致するように配置されている。主軸14aを駆動装置14cにより回転させるとスクリュー14bも共に回転し、スクリュー14bの螺旋形状によって移動方向Fへの被処理物の搬送を可能にする。スクリュー14bの螺子の条数はひとつに限らず、複数のスクリュー14bが主軸14aの回りに平行に設けられてもよい。また、螺旋搬送装置14は、裸子を有する主軸14aを複数備えていてもよい(後述する二軸スクリュー押出機等)。
容器本体3に接続された投入枡14dから第一の投入口15を通じて容器本体3にポリマー成分の原料及び脱揮溶剤が導入されると、容器本体3に投入されたポリマー成分の原料は、スクリュー14bの回転に伴って移動方向Fに沿って容器本体3の上流側から下流側に向けて搬送されると共に撹拌混合される。また、搬送の過程で加熱器13によってその融点以上の温度に加熱される。これにより、脱揮溶剤の存在下に、ポリマー成分の原料が溶融混合される(溶融混合工程)。
ポリマー成分の原料を溶融させることで、溶融混合時に、ポリマー成分の原料から、ポリマー成分を合成することができる。ポリマー成分の原料及び/又はポリマー成分を含む混合対象物は、螺旋搬送装置14により溶融混合されつつ、移動方向Fへと移動する。溶融混合部としての容器本体3の内側において、脱揮溶剤と溶融したポリマー成分の原料とが、又は脱揮溶剤と合成され溶融したポリマー成分とが接触する。
本実施形態の製造方法では、前記溶融混合工程において、前記溶融混合しつつ脱揮処理を行う。混合対象物及び脱揮溶剤を収容する混合器1bの内部空間がベント部17を介して大気開放されているので、溶融混合温度で気化した脱揮溶剤は、ベント部17を通じて混合器1b内から排出される(脱揮処理)。
ここで、ベント部17は、第一の投入口15よりも、移動方向Fの下流側に設けられているので、脱揮溶剤と溶融状態のポリマー成分の原料とが、又は脱揮溶剤と溶融状態で合成されたポリマー成分とが接触し混合された後に、脱揮溶剤をベント部17から排出する脱揮処理を行うことができ、より効果的に揮発成分を除去することが可能となる。
混合器1bは、前記溶融混合工程を経て混合器1b中で混合された混合対象物を排出する押出口19を有するので、脱揮処理を経た熱可塑性エラストマー組成物を押出口19から押出して所望の形状に押出成形することができる。形状としては、ペレット状、フィルム状、チューブ状等の形状が挙げられる。
押出成形の押出し量は、特に制限されるものではないが、1〜50kg/hを例示できる。
混合器1bとしては、ベント部を備えた押出機を例示できる。容器本体3としては、押出機のシリンダを例示できる。押出機は、二軸スクリュー押出機等の二軸押出機、単軸スクリュー押出機等の単軸押出機が挙げられ、混練性能の観点から二軸押出機が好ましい。
本実施形態においては、混合器1b中で、脱揮溶剤と溶融状態のポリマー成分の原料とが、又は脱揮溶剤と溶融状態で合成されたポリマー成分とが混合され、脱揮処理を経て、ポリマー成分の原料及び/又はポリマー成分に由来する揮発成分の少なくとも一部が、脱揮溶剤とともに排出され、混合対象物から除去される。かかる操作により、熱可塑性エラストマー組成物を加熱した際に発生し得る揮発成分の量を低減させることができる。また、このような揮発成分は、臭気成分に該当する場合が多く、多くの場合、熱可塑性エラストマー組成物から発生する臭気も低減できる。さらには、このような揮発成分を原因とするフォギング現象の抑制を可能とする。
なお、図3に示す混合器1cのように、ベント部17に接続された吸引装置18によって、真空引きして、溶融混合温度で気化した脱揮溶剤を、ベント部17を通じて混合器1c内から排出してもよい。これにより、脱揮溶剤の気化が促進され、より一層効率的に揮発成分を除去可能である。真空引きは、混合器1a等にも適用することもできる。
<第三実施形態>
図4は、第三実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に用いられる混合器を示す模式図である。
本実施形態において、容器本体3は、脱揮溶剤を投入するための第二の投入口16をさらに有する。第二の投入口16は、第一の投入口15よりも下流側であって、ベント部17よりも上流側に設けられている。
第三実施形態における製造方法では、第一の投入口15と、第二の投入口16と、ベント部17と、押出口19とを有する混合器1dを用い、混合器1d中で、ポリマー成分の原料を溶融混合する溶融混合工程を含み、前記溶融混合工程において、脱揮溶剤の存在下に、前記ポリマー成分又はその原料を溶融混合しつつ脱揮処理を行う。
上記の第二実施形態では、混合器1bを用いて、第一の投入口15からポリマー成分の原料及び脱揮溶剤を投入して熱可塑性エラストマー組成物を製造したが、第三実施形態の製造方法では、混合器1dを用いて、第一の投入口15からポリマー成分の原料を投入し、第二の投入口16から脱揮溶剤を投入する(図4参照)。前記第二実施形態の製造方法と共通する点については、説明を省略する。
本実施形態の製造方法によれば、ポリマー成分の原料と脱揮溶剤とを分けて投入することにより、混合対象物の調製及び管理が容易となり、より効果的に揮発成分を除去することが可能となる。
<第四実施形態>
実施形態の製造方法で製造される熱可塑性エラストマー組成物は、動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物であることが好ましい。動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物としては、分散相及び連続相からなり、前記分散相は前記ポリマー成分を含み、前記連続相は熱可塑性樹脂を含むものが挙げられる。
動的架橋は、架橋剤と、該架橋剤と反応するポリマー分子とを含む原料を溶融混練しながら架橋反応を行うことで形成できる。この架橋反応によって、ポリマー成分の溶融粘度が上昇し、熱可塑性樹脂との粘度比が大きくなり、ポリマー成分が分散相を形成するとされる。
動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物は、エラストマーとしての優れたゴム弾性と、熱可塑性樹脂としての優れた加工性の性質とを合わせ持った非常に有用なものである。本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物によれば、それを構成成分とした動的架橋型熱可塑性エラストマーを提供できる。
第四実施形態における製造方法は、混合器中で、ポリマー成分の原料と熱可塑性樹脂とを溶融混合し、溶融条件下に前記原料を動的架橋して、前記ポリマー成分を得る溶融混合工程を含み、前記溶融混合工程において、脱揮溶剤の存在下に、前記ポリマー成分又はその原料と熱可塑性樹脂とを溶融混合しつつ前記脱揮処理を行う方法である。本実施形態の製造方法によれば、動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物を製造可能である。
ここで、本明細書における「溶融条件下に動的架橋する」とは、溶融状態の前記混合物に、混練によって剪断応力をかけながら、前記ポリマーと前記原料化合物とを反応させることを意味する。
動的架橋を行う装置は、バッチ式、連続式いずれであってもよい。このような装置としては溶融混練装置を例示でき、例えば単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどが挙げられ、上記で例示した混合器1a,1b,1c,1dが好ましい。
≪混合対象物が含むことのできる各種成分≫
前記混合器中で混合される混合対象物は、ポリマー成分又はポリマー成分の原料以外にも、熱可塑性エラストマー組成物を構成可能な各成分(例えば、プロセスオイル、熱可塑性樹脂、クレイ等)を含むことができる。以下、上記の実施形態の製造方法で用いることができ、混合対象物に配合可能な各種成分について説明する。
<ポリマー成分>
実施形態に係るポリマー成分は、カルボニル含有基及び/又は含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下であるポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のものであってよい。
実施形態に係るポリマー成分の原料としては、後述するポリマー(例えば、ポリマー(A)及び/又はポリマー(B)又はそれらの原料)と、後述する[ポリマー成分の製造方法]における原料化合物とが挙げられる。
実施形態に係るポリマー成分は、ポリマー(A)及び/又はポリマー(B)が、エラストマー性を有するエラストマー性ポリマー(A)及び/又はエラストマー性を有するエラストマー性ポリマー(B)である、エラストマー成分であってもよい。
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性及びエラストマー性(弾性)を有する。ただし、以下に例示するように、熱可塑性エラストマー組成物において、これを構成する一要素であるポリマーの主鎖部分(及び後述の主鎖部分を形成するポリマー)は、必ずしもエラストマー性を有さなくともよい。かかる場合、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物が有するエラストマー性は、上記の架橋部位によって発揮されるものと考えられる。ここで、「ポリマーの主鎖」とは、ポリマー(A)〜(B)から、後述の架橋部位を構成する側鎖(側鎖(a)、側鎖(a’)、側鎖(b)、及び側鎖(c))を除いた部分をいう。
ポリマー(A)〜(B)において、「側鎖」とは、ポリマーの側鎖および末端をいう。また、「カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)」とは、ポリマーの主鎖を形成する原子(通常、炭素原子)に、水素結合性架橋部位としてのカルボニル含有基および/または含窒素複素環(より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環)が化学的に安定な結合(共有結合)をしていることを意味する。また、「側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有され」とは、水素結合性架橋部位を有する側鎖(以下、便宜上、場合により「側鎖(a’)」と称する。)と、共有結合性架橋部位を有する側鎖(以下、便宜上、場合により「側鎖(b)」と称する。)の双方の側鎖を含むことによってポリマーの側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方が含有されている場合の他、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を有する側鎖(1つの側鎖中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖:以下、このような側鎖を便宜上、場合により「側鎖(c)」と称する。)を含むことで、ポリマーの側鎖に、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方が含有されている場合を含む概念である。
このようなポリマー成分は、延伸性が向上するといった観点から、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
ポリマー(A)〜(B)は、例えば、天然高分子または合成高分子等のガラス転移点が室温(25℃)以下のポリマーを主鎖とし、かつ、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を含むもの;天然高分子または合成高分子等のガラス転移点が室温(25℃)以下のポリマーを主鎖とし、かつ、側鎖として、水素結合性架橋部位を有する側鎖(a’)及び共有結合性架橋部位を有する側鎖(b)を含有するもの;天然高分子または合成高分子等のガラス転移点が室温(25℃)以下のポリマーを主鎖とし、かつ、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖(c)を含むもの;等としてもよい。
ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分を形成するポリマーとしては、それぞれ、ジエン系ゴム、ジエン系ゴムの水素添加物、オレフィン系ゴム、水添されていてもよいポリスチレン系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、及び、ポリアミド系ポリマーの中から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。なお、前記ポリオレフィン系ポリマーとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、リニアポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン等が挙げられる。また、このようなポリマー成分(前記ポリマー(A)〜(B))の主鎖部分を形成するポリマーとしては、老化しやすい二重結合がないという観点からは、ジエン系ゴムの水添物、オレフィン系ゴム、ポリオレフィン系ポリマーが好ましく、コストの低さ、反応性の高さ(無水マレイン酸等の化合物のエン反応が可能な二重結合を多数有する)の観点からは、ジエン系ゴムが好ましい。なお、上記主鎖部分を形成するポリマーは、エラストマー性を有するポリマーであってもよく、エラストマー性を有さないポリマーであってもよい。
また、このようなポリマー成分の主鎖部分を形成するポリマーとしては、圧縮永久歪を低下できるといった観点から、中でも、ポリエチレン(より好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE))、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、及び、ポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ポリエチレン(より好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE))、及び、エチレン−ブテン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。
このようなポリマー成分(前記ポリマー(A)〜(B))の主鎖部分を形成するポリマーは、エラストマー性を有するゴム系ポリマーであってもよく、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などのジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物;エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンゴム、ポリプロピレンゴムなどのオレフィン系ゴム;エピクロロヒドリンゴム;多硫化ゴム;シリコーンゴム;ウレタンゴム;等が挙げられる。
また、ポリマー成分(前記ポリマー(A)〜(B))の主鎖部分を形成するポリマーは、エラストマー性を有するポリマー成分であってもよく、例えば、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー(例えば、SBS、SIS、SEBS等)、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、ポリアミド系エラストマー性ポリマー等が挙げられ、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマーが好ましい。ポリオレフィン系エラストマー性ポリマーとしては、エチレン系共重合体を例示でき、エチレン−αオレフィン共重合体が好ましい。αオレフィンとしては、1−ブテン等が挙げられる。
また、エラストマー性を有するポリマー(前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B))の主鎖部分を形成するポリマーとしては、老化しやすい二重結合がないという観点からは、ジエン系ゴムの水添物、オレフィン系ゴムが好ましく、コストの低さ、反応性の高さ(無水マレイン酸等の化合物のエン反応が可能な二重結合を多数有する)の観点からは、ジエン系ゴムが好ましい。また、前記ポリマー成分として好適な前記エラストマー成分(前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B))の主鎖部分の形成に、それぞれオレフィン系ゴムを用いると、二重結合が存在しないため劣化がより十分に抑制される傾向にある。
さらに、ポリマー(A)〜(B)は、液状または固体状であってもよく、その分子量は特に限定されず、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物が用いられる用途や要求される物性等に応じて適宜選択することができる。
実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を加熱(脱架橋等)した時の流動性を重視する場合は、上記ポリマー(A)〜(B)は液状であることが好ましく、例えば、主鎖部分を形成するポリマーがイソプレンゴム、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムである場合には、ポリマー(A)〜(B)を液状のものとするために、該主鎖部分の重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましく、1,000〜50,000程度であることが特に好ましい。
一方、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の強度を重視する場合は、上記ポリマー(A)〜(B)は固体状であることが好ましく、例えば、主鎖部分部分を形成するポリマーがイソプレンゴム、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムである場合には、ポリマー(A)〜(B)を固体状のものとするために、該主鎖部分の重量平均分子量が100,000以上であることが好ましく、500,000〜1,500,000程度であることが特に好ましい。
前記主鎖部分の重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography(GPC))により測定した重量平均分子量(ポリスチレン換算)である。測定にはテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いることが好ましい。
実施形態の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記ポリマー(A)〜(B)は2種以上を混合して用いることができる。この場合の各ポリマー同士の混合比は、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物が用いられる用途や要求される物性等に応じて任意の比率とすることができる。
また、前記ポリマー(A)〜(B)のガラス転移点は、前述のように25℃以下である。ポリマーのガラス転移点がこの範囲であれば、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物が室温でゴム状弾性を示すためである。また、実施形態において「ガラス転移点」は、示差走査熱量測定(DSC−Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。測定に際しては、昇温速度は10℃/minとする。
このようなポリマー(A)〜(B)の主鎖部分を形成するポリマーは、ポリマー(A)〜(B)のガラス転移点が25℃以下となり、得られる熱可塑性エラストマー組成物からなる成形物が室温(25℃)でゴム状弾性を示すことから、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴム;エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)などのオレフィン系ゴム;であることが好ましい。また、前記ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分の形成に、それぞれオレフィン系ゴムを用いると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の引張強度が向上し、二重結合が存在しないため組成物の劣化がより十分に抑制される傾向にある。
ポリマー(A)〜(B)に用いることが可能な前記スチレン−ブタジエンゴム(SBR)の結合スチレン量や、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマーの水添率等は、特に限定されず、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物が用いられる用途や、組成物に要求される物性等に応じて任意の比率に調整することができる。
また、上記ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分の形成に、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)を用いる場合、そのエチレン含有量は、好ましくは10〜90モル%であり、より好ましくは30〜90モル%である。エチレン含有量がこの範囲であれば、熱可塑性エラストマー(組成物)としたときの圧縮永久歪、機械的強度、特に引張強度に優れるため好ましい。
また、上記ポリマー(A)〜(B)は、上述のように、側鎖として、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a);水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a’)及び共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b);並びに、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有する側鎖(c);のうちの少なくとも1種を有するものとなる。なお、本明細書において、側鎖(c)は、側鎖(a’)としても機能しつつ側鎖(b)としても機能するような側鎖であるとも言える。以下において、各側鎖を説明する。
<側鎖(a’):水素結合性架橋部位を含有する側鎖>
水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a’)は、水素結合による架橋を形成し得る基(例えば、水酸基、後述の側鎖(a)に含まれる水素結合性架橋部位等)を有し、その基に基づいて水素結合を形成する側鎖であればよく、その構造は特に制限されるものではない。ここにおいて、水素結合性架橋部位は、水素結合によりポリマー同士を架橋する部位である。なお、水素結合による架橋は、水素のアクセプター(孤立電子対を含む原子を含有する基等)と、水素のドナー(電気陰性度が大きな原子に共有結合した水素原子を備える基等)とがあって初めて形成されることから、ポリマー同士の側鎖間において水素のアクセプターと水素のドナーの双方が存在しない場合には、水素結合による架橋が形成されない。そのため、ポリマー同士の側鎖間において、水素のアクセプターと水素のドナーの双方が存在することによって初めて、水素結合性架橋部位が系中に存在することとなる。なお、本明細書においては、ポリマー同士の側鎖間において、水素のアクセプターとして機能し得る部分(例えばカルボニル基等)と、水素のドナーとして機能し得る部分(例えば水酸基等)の双方が存在することをもって、その側鎖の水素のアクセプターとして機能し得る部分とドナーとして機能し得る部分とを、水素結合性架橋部位と判断することができる。
このような側鎖(a’)中の水素結合性架橋部位としては、より強固な水素結合を形成するといった観点から、以下において説明する、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位(側鎖(a)に含まれる水素結合性架橋部位)であることが好ましい。すなわち、かかる側鎖(a’)としては、後述の側鎖(a)がより好ましい。また、同様の観点で、前記側鎖(a’)中の水素結合性架橋部位としては、カルボニル含有基および含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位であることがより好ましい。
<側鎖(a):カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖>
カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)は、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有するものであればよく、他の構成は特に限定されない。このような水素結合性架橋部位としては、カルボニル含有基および含窒素複素環を有するものがより好ましい。
このようなカルボニル含有基としては、カルボニル基を含むものであればよく、特に限定されず、その具体例としては、アミド、エステル、イミド、カルボキシ基、カルボニル基等が挙げられる。このようなカルボニル含有基は、カルボニル含有基を前記主鎖に導入し得る化合物を用いて、前記主鎖(主鎖部分を形成するポリマー)に導入した基であってもよい。例えば、前記カルボニル含有基は、前記主鎖(主鎖部分のポリマー)である高密度ポリエチレンにカルボニル含有基を前記主鎖に導入し得る化合物を用いてカルボニル含有基を導入することで形成される基であってもよい。このようなカルボニル含有基を前記主鎖に導入し得る化合物は特に限定されず、その具体例としては、ケトン、カルボン酸およびその誘導体等が挙げられる。
このようなカルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の炭化水素基を有する有機酸が挙げられ、該炭化水素基は、脂肪族、脂環族、芳香族等のいずれであってもよい。また、カルボン酸誘導体としては、具体的には、例えば、カルボン酸無水物、アミノ酸、チオカルボン酸(メルカプト基含有カルボン酸)、エステル、アミノ酸、ケトン、アミド類、イミド類、ジカルボン酸およびそのモノエステル等が挙げられる。
また、前記カルボン酸およびその誘導体等としては、具体的には、例えば、マロン酸、マレイン酸、スクシン酸、グルタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、p−フェニレンジ酢酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−アミノ安息香酸、メルカプト酢酸などのカルボン酸および置換基含有するこれらのカルボン酸;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸などの酸無水物;マレイン酸エステル、マロン酸エステル、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、酢酸エチルなどの脂肪族エステル;フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、エチル−m−アミノベンゾエート、メチル−p−ヒドロキシベンゾエートなどの芳香族エステル;キノン、アントラキノン、ナフトキノンなどのケトン;グリシン、チロシン、ビシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、メチオニン、プロリン、N−(p−アミノベンゾイル)−β−アラニンなどのアミノ酸;マレインアミド、マレインアミド酸(マレインモノアミド)、コハク酸モノアミド、5−ヒドロキシバレルアミド、N−アセチルエタノールアミン、N,N’−ヘキサメチレンビス(アセトアミド)、マロンアミド、シクロセリン、4−アセトアミドフェノール、p−アセトアミド安息香酸などのアミド類;マレインイミド、スクシンイミドなどのイミド類;等が挙げられる。
これらのうち、カルボニル基(カルボニル含有基)を導入し得る化合物として、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸等の、環骨格中にカルボニル基を有する環状酸無水物であることが好ましく、無水マレイン酸であることが特に好ましい。
また、前記側鎖(a)が含窒素複素環を有する場合、前記含窒素複素環は、直接又は有機基を介して前記主鎖に導入されていればよく、その構成等は特に制限されるものではない。このような含窒素複素環は、複素環内に窒素原子を含むものであれば複素環内に窒素原子以外のヘテロ原子、例えば、イオウ原子、酸素原子、リン原子等を有するものでも用いることができる。ここで、前記側鎖(a)中に含窒素複素環を用いた場合には、複素環構造を有すると架橋を形成する水素結合がより強くなり、得られる実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の引張強度、及び耐衝撃性が向上するため好ましい。
また、上記含窒素複素環は置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、ヘキシル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基などのアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子からなる基;シアノ基;アミノ基;芳香族炭化水素基;エステル基;エーテル基;アシル基;チオエーテル基;水酸基;チオール基;カルボキシ基;イソシアネート基;エポキシ基;アルコキシシリル基等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。これらの置換基の置換位置は特に限定されず、置換基数も限定されない。
さらに、上記含窒素複素環は、芳香族性を有していても、有していなくてもよいが、芳香族性を有していると得られる実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪や機械的強度がより向上するため好ましい。
また、このような含窒素複素環は、特に制限されるものではないが、水素結合がより強固になり、圧縮永久歪や機械的強度がより向上するといった観点から、5員環、6員環であることが好ましい。このような含窒素複素環としては、含窒素複素環をベンゼン環と縮合させたもの、含窒素複素環同士を縮合させたものであってもよい。このような含窒素複素環としては、例えば、ピロリン、ピロリドン、オキシインドール(2−オキシインドール)、インドキシル(3−オキシインドール)、ジオキシインドール、イサチン、インドリル、フタルイミジン、β−イソインジゴ、モノポルフィリン、ジポルフィリン、トリポルフィリン、アザポルフィリン、フタロシアニン、ヘモグロビン、ウロポルフィリン、クロロフィル、フィロエリトリン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン、イミダゾロン、イミダゾリドン、ヒダントイン、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリドン、インダゾール、ピリドインドール、プリン、シンノリン、ピロール、ピロリン、インドール、インドリン、オキシルインドール、カルバゾール、フェノチアジン、インドレニン、イソインドール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、オキサトリアゾール、チアトリアゾール、フェナントロリン、オキサジン、ベンゾオキサジン、フタラジン、プテリジン、ピラジン、フェナジン、テトラジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、アントラニル、ベンゾチアゾール、ベンゾフラザン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、アントラゾリン、ナフチリジン、チアジン、ピリダジン、ピリミジン、キナゾリン、キノキサリン、トリアジン、ヒスチジン、トリアゾリジン、メラミン、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ヒドロキシエチルイソシアヌレートおよびこれらの誘導体等が挙げられる。これらのうち、特に含窒素5員環については、下記の化合物(化学式で記載の環状構造)、下記一般式(10)で表されるトリアゾール誘導体および下記一般式(11)で表されるイミダゾール誘導体が好ましく例示される。また、これらは上記した種々の置換基を有していてもよいし、水素付加または脱離されたものであってもよい。
式(10)及び(11)中の置換基X、Y、Zは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリール基又はアミノ基である。なお、上記式(10)中のXおよびYのいずれか一方は水素原子ではなく、同様に、上記式(11)中のX、YおよびZの少なくとも1つは水素原子ではない。
このような置換基X、Y、Zとしては、水素原子、アミノ基以外に、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基、ドデシル基、ステアリル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐状のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;フェニル基、トリル基(o−、m−、p−)、ジメチルフェニル基、メシチル基などのアリール基;等が挙げられる。
これらのうち、置換基X、Y、Zとしては、アルキル基、特に、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、2−エチルヘキシル基であることが、得られる実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の加工性が良好となるため好ましい。
また、含窒素6員環については、下記の化合物が好ましく例示される。これらについても上記した種々の置換基(例えば、前述の含窒素複素環が有していてもよい置換基)を有していてもよいし、水素付加または脱離されたものであってもよい。
また、上記含窒素複素環とベンゼン環または含窒素複素環同士が縮合したものも用いることができ、具体的には、下記の縮合環が好適に例示される。これらの縮合環についても上記した種々の置換基を有していてもよいし、水素原子が付加または脱離されたものであってもよい。
このような含窒素複素環としては、中でも、得られる実施形態の熱可塑性エラストマー組成物のリサイクル性、圧縮永久歪、硬度および機械的強度、特に引張強度に優れるため、トリアゾール環、イソシアヌレート環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環、トリアジン環及びヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種であることが好ましく、トリアゾール環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環およびヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、前記側鎖(a)において、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環の双方が含まれる場合、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環は、互いに独立の側鎖として主鎖に導入されていてもよいが、上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環とが互いに異なる基を介して結合した1つの側鎖として主鎖に導入されていることが好ましい。このように、側鎖(a)としては、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖が1つの側鎖として主鎖に導入されていることが好ましく、下記一般式(1):
[式(1)中、Aは含窒素複素環であり、Bは単結合;酸素原子、アミノ基NR’(R'は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)又はイオウ原子;或いはこれらの原子又は基を含んでもよい有機基である。]
で表される構造部分を含有する側鎖が1つの側鎖として主鎖に導入されていることがより好ましい。このように、前記側鎖(a)の前記水素結合性架橋部位としては、上記一般式(1)で表される構造部分を含有することが好ましい。
ここで、上記式(1)における含窒素複素環Aは、具体的には、上記で例示した含窒素複素環が挙げられる。また、上記式(1)における置換基Bとしては、具体的には、例えば、単結合;酸素原子、イオウ原子またはアミノ基NR’(R’は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基);これらの原子または基を含んでもよい有機基であり、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基またはアラルキレン基;これらの原子または基を末端に有する、炭素数1〜20のアルキレンエーテル基(アルキレンオキシ基、例えば、−O−CH2CH2−基)、アルキレンアミノ基(例えば、−NH−CH2CH2−基等)またはアルキレンチオエーテル基(アルキレンチオ基、例えば、−S−CH2CH2−基);これらを末端に有する、炭素数1〜20のアラルキレンエーテル基(アラルキレンオキシ基)、アラルキレンアミノ基またはアラルキレンチオエーテル基;等が挙げられる。
ここで、上記アミノ基NR’の炭素数1〜10のアルキル基としては、異性体を含む、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。上記式(1)における置換基Bの酸素原子、イオウ原子およびアミノ基NR’;ならびに;これらの原子または基を末端に有する炭素数1〜20の、アルキレンエーテル基、アルキレンアミノ基、アルキレンチオエーテル基、または、アラルキレンエーテル基、アラルキレンアミノ基、アラルキレンチオエーテル基等の酸素原子、アミノ基NR’およびイオウ原子は、隣接するカルボニル基と組み合わされ共役系のエステル基、アミド基、イミド基、チオエステル基等を形成することが好ましい。
これらのうち、前記置換基Bは、共役系を形成する、酸素原子、イオウ原子またはアミノ基;これらの原子または基を末端に有する、炭素数1〜20のアルキレンエーテル基、アルキレンアミノ基またはアルキレンチオエーテル基であることが好ましく、アミノ基(NH)、アルキレンアミノ基(−NH−CH2−基、−NH−CH2CH2−基、−NH−CH2CH2CH2−基)、アルキレンエーテル基(−O−CH2−基、−O−CH2CH2−基、−O−CH2CH2CH2−基)であることが特に好ましい。
また、側鎖(a)が、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖である場合、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する前記水素結合性架橋部位は、下記式(2)または(3)で表される1つの側鎖として、そのα位またはβ位で上記ポリマー主鎖に導入されている側鎖であることがより好ましい。
[式中、Aは含窒素複素環であり、BおよびDはそれぞれ独立に単結合;酸素原子、アミノ基NR’(R’は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)またはイオウ原子;あるいはこれらの原子または基を含んでもよい有機基である。]
ここで、含窒素複素環Aは上記式(1)で例示した含窒素複素環Aと基本的に同一であり、置換基BおよびDはそれぞれ独立に、上記式(1)で例示した置換基Bと基本的に同一である。ただし、上記式(3)における置換基Dは、上記式(1)の置換基Bとして例示したもののうち、単結合;酸素原子、窒素原子またはイオウ原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキレン基またはアラルキレン基の共役系を形成するものであることが好ましく、単結合であることが特に好ましい。すなわち、上記式(3)のイミド窒素と共に、酸素原子、窒素原子またはイオウ原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキレンアミノ基またはアラルキレンアミノ基を形成することが好ましく、上記式(3)のイミド窒素に含窒素複素環が直接結合する(単結合)ことが特に好ましい。具体的には、上記置換基Dとしては、単結合;上記した酸素原子、イオウ原子またはアミノ基を末端に有する炭素数1〜20のアルキレンエーテルまたはアラルキレンエーテル基等;異性体を含む、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、フェニレン基、キシリレン基等が挙げられる。
また、側鎖(a)が上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖である場合、前記側鎖(a)の前記水素結合性架橋部位が下記一般式(101):
[式(101)中、Aは含窒素複素環である。]
で表される構造部分を含有することが好ましい。このような式(101)中の含窒素複素環Aは上記式(1)で例示した含窒素複素環Aと基本的に同一のものである。また、このような側鎖(a)の前記水素結合性架橋部位としては、高モジュラス、高破断強度の観点から、下記一般式(102):
で表される構造を有するものがより好ましい。更に、前記側鎖(a)が上記一般式(102)で表される基であることが特に好ましい。
上記ポリマー成分が有することのできる上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環との割合は特に限定されず、2:1であると相補的な相互作用を形成しやすくなり、また、容易に製造できるため好ましい。
このようなカルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)は、主鎖部分100モル%に対して、0.1〜50モル%の割合(導入率)で導入されていることが好ましく、1〜30モル%の割合で導入されていることがより好ましい。このような側鎖(a)の導入率が0.1モル%未満では架橋時の引張強度が十分でない場合があり、他方、50モル%を超えると架橋密度が高くなりゴム弾性が失われる場合がある。すなわち、導入率が上記した範囲内であれば、上記ポリマー成分の側鎖同士の相互作用によって、分子間で効率良く架橋が形成されるため、架橋時の引張強度が高く、リサイクル性に優れるため好ましい。
上記導入率は、側鎖(a)として、上記カルボニル含有基を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a−i)と上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a−ii)とがそれぞれ独立に導入されている場合には、該カルボニル含有基を含有する側鎖(a−i)と該含窒素複素環を含有する側鎖(a−ii)との割合に従って、これらを一組で1つの側鎖(a)として考えて算出する。なお、側鎖(a−i)及び(a−ii)のうちの何れかが過剰の場合は、多い方の側鎖を基準として、上記導入率を考えればよい。
また、上記導入率は、例えば、主鎖部分を形成するポリマーがエチレン−プロピレンゴム(EPM)である場合には、エチレンおよびプロピレンモノマー単位100ユニット当り、側鎖部分の導入されたモノマーが、0.1〜50ユニット程度である。
また、側鎖(a)としては、反応後に前記主鎖を形成するポリマー(ポリマー形成用の材料)に、官能基として環状酸無水物基(好ましくは環骨格中にカルボニル基を有する環状酸無水物基、より好ましくは無水マレイン酸基)を有するポリマー(環状酸無水物基を側鎖に有するポリマー)を用いて、前記官能基(環状酸無水物基)と、該環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)とを反応させて、水素結合性架橋部位を形成して、ポリマーの側鎖を側鎖(a)としたものが好ましい。このような含窒素複素環を導入し得る化合物は、上記で例示した含窒素複素環そのものであってもよく、無水マレイン酸等の環状酸無水物基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基等)を有する含窒素複素環であってもよい。
ここで、「環状酸無水物基」とは、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸等の環状酸無水物が、ポリマーに結合するのに必要な構造の変化を受けて生じた基を意味する。環状酸無水物基が環骨格中にカルボニル基を有する環状酸無水物基である場合、環状酸無水物基は、カルボン酸の脱水縮合により生じた構造(例えば、−CO−O−CO−で表される構造)を有していてよい。
ここで、上記環状酸無水物基を側鎖に有するポリマーは、環状酸無水物変性ポリマーともいうことができる。環状酸無水物変性ポリマーは、環状酸無水物を直接または有機基を介してポリマーに結合させて形成することができる。
ここで、側鎖(a)における含窒素複素環の結合位置について説明する。なお、窒素複素環を便宜上「含窒素n員環化合物(n≧3)」とする。
以下に説明する結合位置(「1〜n位」)は、IUPAC命名法に基づくものである。
例えば、非共有電子対を有する窒素原子を3個有する化合物の場合、IUPAC命名法に基づく順位によって結合位置を決定する。具体的には、上記で例示した5員環、6員環および縮合環の含窒素複素環に結合位置を記している。
このような側鎖(a)においては、直接または有機基を介して共重合体と結合する含窒素n員環化合物の結合位置は特に限定されず、いずれの結合位置(1位〜n位)でもよい。好ましくは、その1位または3位〜n位である。
含窒素n員環化合物に含まれる窒素原子が1個(例えば、ピリジン環等)の場合は、分子内でキレートが形成されやすく組成物としたときの引張強度等の物性に優れるため、3位〜(n−1)位が好ましい。含窒素n員環化合物の結合位置を選択することにより、ポリマーは、ポリマー同士の分子間で、水素結合、イオン結合、配位結合等による架橋が形成されやすく、リサイクル性に優れ、機械的特性、特に引張強度に優れるものとなる傾向にある。
<側鎖(b):共有結合性架橋部位を含有する側鎖>
本明細書において「共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b)」は、ポリマーの主鎖を形成する原子(通常、炭素原子)に、共有結合性架橋部位(後述するアミノ基含有化合物等の「共有結合を生成する化合物」等と反応することで、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生成しうる官能基等)が化学的に安定な結合(共有結合)をしていることを意味する。なお、側鎖(b)は共有結合性架橋部位を含有する側鎖であるが、共有結合性部位を有しつつ、更に、水素結合が可能な基を有して、側鎖間において水素結合による架橋を形成するような場合には、後述の側鎖(c)として利用されることとなる(なお、ポリマー同士の側鎖間に水素結合を形成することが可能な、水素のドナーと、水素のアクセプターの双方が含まれていない場合、例えば、系中に単にエステル基(−COO−)が含まれている側鎖のみが存在するような場合には、エステル基(−COO−)同士では特に水素結合は形成されないため、かかる基は水素結合性架橋部位としては機能しない。他方、例えば、カルボキシ基やトリアゾール環のような、水素結合の水素のドナーとなる部位と、水素のアクセプターとなる部位の双方を有する構造をポリマー同士の側鎖にそれぞれ含む場合には、ポリマー同士の側鎖間で水素結合が形成されるため、水素結合性架橋部位が含有されることとなる。また、例えば、ポリマー同士の側鎖間に、エステル基と水酸基とが共存して、それらの基により側鎖間で水素結合が形成する場合、その水素結合を形成する部位が水素結合性架橋部位となる。そのため、側鎖(b)が有する構造自体や、側鎖(b)が有する構造と他の側鎖が有する置換基の種類等に応じて、側鎖(c)として利用される場合がある。)。また、ここにいう「共有結合性架橋部位」は、共有結合によりポリマー同士を架橋する部位である。
このような共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b)は特に制限されないが、例えば、官能基を側鎖に有するポリマー(前記主鎖部分を形成させるためのポリマー)と、前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)とを反応させることで、形成される共有結合性架橋部位を含有するものであることが好ましい。このような側鎖(b)の前記共有結合性架橋部位における架橋は、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により形成されてなることが好ましい。そのため、前記主鎖を構成するポリマーが有する前記官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生成しうる官能基であることが好ましい。
このような「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」としては、例えば、1分子中にアミノ基および/またはイミノ基を2個以上(アミノ基およびイミノ基をともに有する場合はこれらの基を合計して2個以上)有するポリアミン化合物;1分子中に水酸基を2個以上有するポリオール化合物;1分子中にイソシアネート(NCO)基を2個以上有するポリイソシアネート化合物;1分子中にチオール基(メルカプト基)を2個以上有するポリチオール化合物;等が挙げられる。ここにおいて「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」は、かかる化合物が有する置換基の種類や、かかる化合物を利用して反応せしめた場合に反応の進行の程度、等によっては、前記水素結合性架橋部位及び前記共有結合性架橋部位の双方を導入し得る化合物となる(例えば、水酸基を3個以上有する化合物を利用して、共有結合による架橋部位を形成する場合において、反応の進行の程度によっては、官能基を側鎖に有するポリマーの該官能基に2個の水酸基が反応して、残りの1個の水酸基が水酸基として残るような場合も生じ、その場合には、水素結合性の架橋を形成する部位も併せて導入され得ることとなる。)。そのため、ここに例示する「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」には、「水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物」も含まれ得る。このような観点から、側鎖(b)を形成する場合には、「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」の中から目的の設計に応じて化合物を適宜選択したり、反応の進行の程度を適宜制御する等して、側鎖(b)を形成すればよい。なお、共有結合性架橋部位を形成する化合物が複素環を有している場合には、より効率よく水素結合性の架橋部位も同時に製造することが可能になり、後述の側鎖(c)として、前記共有結合性架橋部位を有する側鎖を効率よく形成することが可能となる。そのため、かかる複素環を有しているような化合物の具体例については、側鎖(c)を製造するための好適な化合物として、特に側鎖(c)と併せて説明する。なお、側鎖(c)は、その構造から、側鎖(a)や側鎖(b)等の側鎖の好適な一形態であるとも言える。
このような「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」として利用可能な前記ポリアミン化合物としては、例えば、以下に示す脂環族アミン、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、含窒素複素環アミン等が挙げられる。
このような脂環族アミンとしては、具体的には、例えば、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、ジ−(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
また、前記脂肪族ポリアミンとしては、特に制限されないが、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノヘプタン、ジアミノドデカン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、トリエチレンテトラミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジイソプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’,N’’−トリメチルビス(ヘキサメチレン)トリアミン等が挙げられる。
前記芳香族ポリアミンおよび前記含窒素複素環アミンとしては、特に制限されないが、例えば、ジアミノトルエン、ジアミノキシレン、テトラメチルキシリレンジアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等が挙げられる。
また、前記ポリアミン化合物は、その水素原子の一つ以上を、アルキル基、アルキレン基、アラルキレン基、オキシ基、アシル基、ハロゲン原子等で置換してもよく、また、その骨格に、酸素原子、イオウ原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
また、前記ポリアミン化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の混合比は、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物が用いられる用途、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物に要求される物性等に応じて任意の比率に調整することができる。
上記で例示したポリアミン化合物のうち、ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン等が、圧縮永久歪、機械的強度、特に引張強度の改善効果が高く好ましい。
「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」として利用可能な前記ポリオール化合物は、水酸基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、例えば、以下に示すポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げられる。
このようなポリエーテルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシフェニルメタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール;ポリオキシテトラメチレンオキサイド;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ポリエステルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパンその他の低分子ポリオールの1種または2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸その他の低分子カルボン酸やオリゴマー酸の1種または2種以上との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンなどの開環重合体;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)などの低分子ポリオール;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」として利用可能な前記ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)等の脂肪族ポリイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)等の脂環式ポリイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物;これらのイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物と上記で例示したポリオール化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマー;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリチオール化合物は、チオール基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、その具体例としては、メタンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパジチオール、トルエン−3,4−ジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、4,4’−チオビスベンゼンチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ポリチオール(チオコールまたはチオール変性高分子(樹脂、ゴム等))等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
このような「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」と反応する、前記主鎖を構成するポリマーが有する官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生成し得る官能基が好ましく、かかる官能基としては、環状酸無水物基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、チオール基等が好適に例示される。
なお、前記側鎖(b)を有するポリマー(B)は、かかる側鎖(b)の部分において、前記共有結合性架橋部位における架橋、すなわち、前記官能基と上述した「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」との反応により形成される共有結合による架橋を1分子中に少なくとも1個有しており、特に、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により架橋が形成される場合は、2個以上有しているのが好ましく、2〜20個有しているのがより好ましく、2〜10個有しているのがさらに好ましい。
また、前記側鎖(b)の共有結合性架橋部位における架橋が、第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有していることが、得られる熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪および機械的強度(破断伸び、破断強度)がより容易に改善され得るとの理由から好ましい。なお、この場合において、第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)に対して、水素結合を形成することが可能な基を含む側鎖を有するポリマーが含まれている場合(例えば、水酸基等を含む側鎖を有するポリマーが他に存在する場合等)には、前記共有結合性架橋部位が、後述の側鎖(c)として機能し得る。例えば、前記側鎖(a’)として前記側鎖(a)を有するポリマー(B)の場合(すなわちポリマー(B)が側鎖(a)及び(b)の双方を有するポリマーである場合)において、共有結合性架橋部位における架橋が前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合を有する場合、それらの基と、側鎖(a)(カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する側鎖)中の基とが水素結合(相互作用)することで、架橋密度をより向上させることも可能となるものと考えられる。なお、このような第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有している構造の側鎖(b)を形成するとの観点で、「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」としては、上記で例示したもののうち、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)であることが好ましい。
なお、上述のような共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)を利用しても、反応の進行度や置換基の種類、用いる原料の化学量論比等によっては、水素結合性の架橋部位も併せて導入されるような場合もあるため、前記共有結合性架橋部位の好適な構造については、側鎖(c)中の共有結合性架橋部位の好適な構造と併せて説明する。
<側鎖(c):水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖>
このような側鎖(c)は、1つの側鎖中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖である。このような側鎖(c)に含まれる水素結合性架橋部位は、側鎖(a’)において説明した水素結合性架橋部位として例示したものと同一のものでよく、側鎖(a)中の水素結合性架橋部位として例示したものと同一のものが好ましい。また、側鎖(c)に含まれる共有結合性架橋部位としては、側鎖(b)中の共有結合性架橋部位として例示したものと同一のものを利用できる(その好適な架橋も同一のものを利用できる。)。
このような側鎖(c)は、官能基を側鎖に有するポリマー(前記主鎖部分を形成させるためのポリマー)と、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)とを反応させることで、形成される側鎖であることが好ましい。 このような水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)としては、複素環(特に好ましくは含窒素複素環)を有しかつ共有結合性架橋部位を形成することが可能な化合物(共有結合を生成する化合物)が好ましく、中でも、複素環含有ポリオール、複素環含有ポリアミン、複素環含有ポリチオール等がより好ましい。
なお、このような複素環を含有する、ポリオール、ポリアミンおよびポリチオールは、複素環(特に好ましくは含窒素複素環)を有するものである以外は、前述の「共有結合性架橋部位を形成することが可能な化合物(共有結合を生成する化合物)」において説明したポリオール、ポリアミンおよびポリチオールとして例示したものを適宜利用することができる。また、このような複素環含有ポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、ビス、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、コウジ酸、ジヒドロキシジチアン、トリスヒドロキシエチルトリアジンが挙げられる。また、前記複素環含有ポリアミンとしては、特に制限されないが、例えば、アセトグアナミン、ピペラジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ベンゾグアナミン、メラミンが挙げられる。更に、このような複素環含有ポリチオールとしては、ジメルカプトチアジアゾール、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレートが挙げられる。このように、側鎖(c)としては、官能基を側鎖に有するポリマー(前記主鎖部分を形成させるためのポリマー)と、複素環を含有するポリオール、ポリアミンおよびポリチオール等とを反応させて、得られる側鎖であることが好ましい。
なお、「水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)」と反応する、前記主鎖を構成するポリマーが有する官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生成し得る官能基が好ましく、かかる官能基としては、環状酸無水物基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、チオール基等が好適に例示される。
また、前記側鎖(c)を有するポリマー(B)は、かかる側鎖(c)の部分において、前記共有結合性架橋部位における架橋を1分子中に少なくとも1個有しており、特に、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により架橋が形成される場合は、2個以上有しているのが好ましく、2〜20個有しているのがより好ましく、2〜10個有しているのがさらに好ましい。また、前記側鎖(c)の共有結合性架橋部位における架橋が、第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有していることが、得られる熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪および機械的強度(破断伸び、破断強度)がより改善されるとの理由から好ましい。
(側鎖(b)〜(c)中の共有結合性架橋部位として好適な構造について)
側鎖(b)及び/又は(c)に関して、共有結合性架橋部位における架橋が、第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有している場合であって、これらの結合部位が水素結合性架橋部位としても機能する場合、得られる熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪および機械的強度(破断伸び、破断強度)がより高度に改善されるとの理由から好ましい。このように、共有結合性架橋部位を有する側鎖中の第三級アミノ結合(−N=)やエステル結合(−COO−)が、他の側鎖との間において、水素結合を形成するような場合、かかる第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有している共有結合性架橋部位は、水素結合性架橋部位も備えることとなり、側鎖(c)として機能し得る。
なお、例えば、前記側鎖(a’)として前記側鎖(a)を有するポリマー(B)の場合であって、前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合を含有している共有結合性架橋部位を有する場合において、前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合が、前記側鎖(a)中の基と水素結合(相互作用)を形成すると、架橋密度をより向上させることが可能となるものと考えられる。ここで、前記主鎖を構成するポリマーが有する官能基と反応して前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合を含有している共有結合性架橋部位を形成させることが可能な化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成することが可能な化合物)としては、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)を好適なものとして挙げることができる。
前記側鎖(b)及び/又は側鎖(c)の上記共有結合性架橋部位における架橋としては、下記一般式(4)〜(6)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ含有しているものが好ましく、式中のGが第三級アミノ結合、エステル結合を含有しているものがより好ましい(なお、以下の構造において、水素結合性架橋部位を含む場合、その構造を有する側鎖は、側鎖(c)として利用されるものである。)。
上記一般式(4)〜(6)中、E、J、KおよびLはそれぞれ独立に単結合;酸素原子、アミノ基NR’(R’は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)またはイオウ原子;あるいはこれらの原子または基を含んでもよい有機基であり、Gは酸素原子、イオウ原子または窒素原子を含んでいてもよく、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1〜20の炭化水素基である。
ここで、置換基E、J、KおよびLはそれぞれ独立に、上記一般式(1)で例示した置換基Bと基本的に同一である。
また、置換基Gは、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、酸素原子、イオウ原子または窒素原子を含んでいてもよい。このような置換基Gとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,7−ヘプチレン基、1,8−オクチレン基、1,9−ノニレン基、1,10−デシレン基、1,11−ウンデシレン基、1,12−ドデシレン基などのアルキレン基;N,N−ジエチルドデシルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジプロピルドデシルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジエチルオクチルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジプロピルオクチルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジエチルステアリルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジプロピルステアリルアミン−2,2’−ジイル、;ビニレン基;1,4−シクロへキシレン基等の2価の脂環式炭化水素基;1,4−フェニレン基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,3−フェニレンビス(メチレン)基などの2価の芳香族炭化水素基;プロパン−1,2,3−トリイル、ブタン−1,3,4−トリイル、トリメチルアミン−1,1’,1’’−トリイル、トリエチルアミン−2,2’,2’’−トリイル等の3価の炭化水素基;イソシアヌレート基、トリアジン基等の酸素原子、イオウ原子または窒素原子を含む3価の環状炭化水素;下記式(12)および(13)で表される4価の炭化水素基;およびこれらを組み合わせて形成される置換基;等が挙げられる。
さらに、前記側鎖(c)の上記共有結合性架橋部位における架橋が、上述した上記ポリマーの主鎖にα位またはβ位で結合する下記式(7)〜(9)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ含有するのが好ましく、式中のGが第三級アミノ基を含有しているのがより好ましい(式(7)〜(9)に示す構造は水酸基とカルボニル基を含有しており、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む構造といえ、かかる構造を有する側鎖は側鎖(c)として機能し得る。)。また、式中のGとしては、耐熱性が高く、水素結合により、高強度になるという観点から、イソシアヌレート基(イソシアヌレート環)であることが好ましい。
式(7)〜(9)中、置換基E、J、KおよびLはそれぞれ独立に、上記式(4)〜(6)で例示した置換基E、J、KおよびLと基本的に同一であり、置換基Gは、上記式(4)で例示した置換基Gと基本的に同一である。
また、このような式(7)〜(9)のいずれかで表される構造としては、具体的には、下記式(14)〜(25)で表される化合物が好適に例示される。
(式中、lは、1以上の整数を表す。)
(式中、l、mおよびnは、それぞれ独立に1以上の整数を表す。)
また、前記側鎖(b)及び(c)において、上記共有結合性架橋部位における架橋は、環状酸無水物基と、水酸基あるいはアミノ基及び/又はイミノ基との反応により形成されることが好ましい。例えば、反応後に主鎖部分を形成するポリマーが官能基として環状酸無水物基(例えば無水マレイン酸基)を有している場合に、該ポリマーの環状酸無水物基と、水酸基あるいはアミノ基および/またはイミノ基を有する前記共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)とを反応させて、共有結合により架橋する部位を形成してポリマー間を架橋させることで、形成される架橋としてもよい。
また、このような側鎖(b)及び(c)において、前記共有結合性架橋部位における架橋は、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により形成されてなることがより好ましい。
以上、側鎖(a’)、側鎖(a)、側鎖(b)、側鎖(c)について説明したが、このようなポリマー中の側鎖の各基(構造)等は、NMR、IRスペクトル等の通常用いられる分析手段により確認することができる。
また、前記ポリマー(A)は、前記側鎖(a)を有するガラス転移点が25℃以下のポリマーであり、前記ポリマー(B)は、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有しているガラス転移点が25℃以下のポリマー(側鎖として、側鎖(a’)及び側鎖(b)の双方を有するポリマーや、側鎖に側鎖(c)を少なくとも一つ含むポリマー等)である。このようなポリマー成分としては、前記ポリマー(A)〜(B)のうちの1種を単独で利用してもよく、あるいは、それらのうちの2種以上を混合して利用してもよい。
なお、ポリマー(B)は、側鎖(a’)及び側鎖(b)の双方を有するポリマーであっても、側鎖(c)を有するポリマーであってもよいが、このようなポリマー(B)の側鎖に含有される水素結合性架橋部位としては、より強固な水素結合が形成されるといった観点から、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位(より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位)であることが好ましい。また、前記ポリマー(B)の側鎖に含有される前記共有結合性架橋部位における架橋は、その架橋部位を含む側鎖間において水素結合等の分子間相互作用を引き起こさせることも可能となるといった観点から、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により形成されてなることが好ましい。
このようなポリマー(A)〜(B)を製造する方法としては特に制限されず、上述のような側鎖(a);側鎖(a')及び側鎖(b);、並びに、側鎖(c);からなる群から選択される少なくとも1種を、ガラス転移点が25℃以下のポリマーの側鎖として導入することが可能な公知の方法を適宜採用することができる。例えば、ポリマー(B)を製造するための方法としては、特開2006−131663号公報に記載の方法を採用してもよい。また、上述のような側鎖(a’)及び側鎖(b)を備えるポリマー(B)を得るために、例えば、官能基としての環状酸無水物基(例えば無水マレイン酸基)を側鎖に有するポリマーに、前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)と、前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)との混合物(混合原料)を利用して、それぞれの側鎖を同時に導入してもよい。
また、このようなポリマー(A)〜(B)を製造する方法としては、例えば、官能基(例えば環状酸無水物基等)を側鎖に有するポリマーを用いて、該ポリマーを、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物、並びに、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物及び前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物と反応させて、前記側鎖(a)を有するポリマー;側鎖(a')及び側鎖(b)を有するポリマー;及び/又は前記側鎖(c)を有するポリマー(前記ポリマー(A)〜(B))を製造する方法を採用してもよい。なお、このような反応の際に採用する条件(温度条件や雰囲気条件等)は特に制限されず、官能基や該官能基と反応させる化合物(水素結合性架橋部位を形成する化合物及び/又は共有結合性架橋部位を形成する化合物)の種類に応じて適宜設定すればよい。なお、前記ポリマー(A)の場合は、水素結合部位を持つモノマーを重合して製造しても良い。
このような官能基(例えば環状酸無水物基)を側鎖に有するポリマーとしては、前述のポリマー(A)〜(B)の主鎖を形成することが可能なポリマーであって、官能基を側鎖に有するものが好ましい。ここで、「官能基を側鎖に含有するポリマー」とは、主鎖を形成する原子に官能基(上述の官能基等、例えば、環状酸無水物基等)が化学的に安定な結合(共有結合)をしているポリマーをいい、ポリマー(例えば公知の天然高分子または合成高分子)と官能基を導入し得る化合物とを反応させることにより得られるものを好適に利用できる。
また、このような官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生成し得る官能基であることが好ましく、中でも、環状酸無水物基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、チオール基等が好ましく、組成物中にクレイを含む場合、クレイをより効率よく分散させることが可能であるといった観点からは、環状酸無水物基が特に好ましい。
また、このような環状酸無水物基としては、環骨格中にカルボニル基を有する環状酸無水物基であってよく、無水コハク酸基、無水マレイン酸基、無水グルタル酸基、無水フタル酸基が好ましく、中でも、容易にポリマー側鎖に導入可能で、工業上入手が容易である観点からは、無水マレイン酸基がより好ましい。また、前記官能基が環状酸無水物基である場合には、例えば、前記官能基を導入しうる化合物として、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸およびこれらの誘導体等の環状酸無水物を用いて、ポリマー(例えば公知の天然高分子または合成高分子)に官能基を導入してもよい。
なお、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物としては特に制限されないが、前述の「水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)」を利用することが好ましい。また、前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物としては特に制限されないが、前述の「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」を利用することが好ましい。また、水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)、及び、共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)としては、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(例えば、含窒素複素環含有ポリオール、含窒素複素環含有ポリアミン、含窒素複素環含有ポリチオール等)も好適に利用することができる。
また、組成物中にクレイを含む場合、このようなポリマー成分(ポリマー(A)〜(B))を製造する方法に、官能基(例えば環状酸無水物基)を側鎖に有するポリマーを用いて、該ポリマーを、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物、並びに、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物及び前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物と反応させて、前記側鎖(a)を有する前記ポリマー(A)、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されている前記ポリマー(B)を製造する方法を採用する場合、官能基を側鎖に有するポリマーを、前記原料化合物と反応させる前に、クレイと官能基を側鎖に有するポリマーとを混合し、その後、前記原料化合物を添加し、反応させて、ポリマー成分の調製と同時に組成物を形成する方法(クレイを先添加する方法)を採用してもよい。
実施形態の熱可塑性エラストマー組成物が、ポリマー(A)をポリマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物である場合においては、組成物中に側鎖(a)に由来する特性を付与できるため、特に破断伸び、破断強度、流動性を向上させることが可能となる。また、ポリマー(B)をポリマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中に、側鎖中の共有結合性架橋部位に由来する特性を付与できるため、特に圧縮永久歪を向上させることが可能となる。なお、ポリマー(B)をポリマー成分として含有する熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中において、共有結合性架橋部位に由来する特性の他に、水素結合性架橋部位(側鎖(a’)において説明した水素結合性架橋部位)に由来する特性をも付与できるため、流動性(成形性)を保持した状態で、耐圧縮永久歪性を併せて発揮させることも可能となり、その側鎖の種類やポリマー(B)の種類等を適宜変更することで、用途に応じた所望の特性を、より効率よく発揮させることも可能となる。
また、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物においては、ポリマー(A)をポリマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物と、ポリマー(B)をポリマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物とをそれぞれ別々に製造した後、これを混合して、ポリマー成分としてポリマー(A)及び(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物としてもよい。また、本明細書においては、ポリマー成分は、ポリマー(A)及び(B)を少なくとも含有していればよいが、組成物中に共有結合性架橋部位を存在せしめて、より効率よく共有結合性架橋部位の特性を利用するといった観点から、ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のポリマーを混合して用いてもよい。例えば、ポリマー成分として、ポリマー(A)を用いる場合に、ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のポリマーを組み合わせて用いた場合には、組成物中に含まれる側鎖に由来して、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有するポリマー(B)を利用した熱可塑性エラストマー組成物と、ほぼ同様の特性を付与することも可能となる。また、ポリマー成分としてポリマー(A)及び(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合や、ポリマー(A)及びポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のポリマーを含有する熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合には、各成分(例えばポリマー(A)とポリマー(B)の各成分)の比率を適宜変更することで、所望の特性を適宜発揮させることも可能となる。
また、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物がポリマー成分として、ポリマー(A)及び(B)を含有する場合には、ポリマー(A)とポリマー(B)の含有比率は質量比([ポリマー(A)]:[ポリマー(B)])で1:9〜9:1とすることが好ましく、2:8〜8:2とすることがより好ましい。このようなポリマー(A)の含有比率が前記下限未満では流動性(成形性)、機械的強度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると圧縮永久歪が低下する傾向にある。
さらに、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物がポリマー成分として、ポリマー(A)と、ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のポリマー(以下、場合により「ポリマー(C)」と称する。)とを含有する場合には、ポリマー(A)とポリマー(C)の含有比率は質量比([ポリマー(A)]:[ポリマー(C)])で1:9〜9:1とすることが好ましく、2:8〜8:2とすることがより好ましい。このようなポリマー(A)の含有比率が前記下限未満では流動性(成形性)、機械的強度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると圧縮永久歪が低下する傾向にある。
また、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中に側鎖(a’)と側鎖(b)の双方が存在する場合には、その側鎖(a’)の全量と側鎖(b)の全量とが、質量比を基準として、1:9〜9:1となっていることが好ましく、2:8〜8:2となっていることがより好ましい。このような側鎖(a’)の全量が前記下限未満では流動性(成形性)、機械的強度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると圧縮永久歪が低下する傾向にある。なお、このような側鎖(a’)は、側鎖(a)を含む概念である。そのため、側鎖(a’)として側鎖(a)のみが含まれるような場合においても、上記質量比で、組成物中に側鎖(a)と側鎖(b)の双方が存在することが好ましい。
実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、十分に高度な引張応力と十分に高い耐熱性とを発揮することが可能である。なお、このような熱可塑性エラストマー組成物においては、組成を適宜変更することで、用途に応じて必要となる特性(例えば、自己修復性及び/又は耐圧縮永久歪性等の特性)も適宜発揮させることが可能である。すなわち、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、十分に高度な引張応力と十分に高い耐熱性とを発揮できるとともに、付加的に、その組成に応じて、十分な耐圧縮永久歪性及び/又は十分な自己修復性を発揮することも可能である。このように、組成を適宜変更することで熱可塑性エラストマー組成物の用途に応じて、必要となる特性をバランスよく適宜発揮させることが可能であるため、上述のような各種用途に用いる場合には、その用途に応じて必要となる特性を考慮して、組成物中の成分の種類(組成)を適宜変更して利用することが好ましい。
熱可塑性エラストマー組成物におけるポリマー成分の含有量は、本発明に係るポリマー成分の種類等に応じて適宜定めればよいが、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物100質量%に対する、前記ポリマー成分の含有量の割合は、例えば、5質量%以上が好ましく、5質量%以上80質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましく、20質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。熱可塑性エラストマー組成物100質量%に対する、前記ポリマー成分の含有量の割合が上記範囲内であることにより、熱可塑性エラストマー組成物のゴム弾性を好ましいものとすることができる。
[ポリマー成分の製造方法]
実施形態に係るポリマー成分は、環状酸無水物基を側鎖に有するポリマーと、下記の<1>〜<3>からなる群から選択される少なくとも一種の原料化合物との混合物を得て、前記ポリマーと前記原料化合物との反応物として得ることができる。
<1>前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(I)、
<2>前記化合物(I)及び前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(II)の混合原料、
<3>前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成可能な化合物。
係る反応は、ポリマー成分の原料を溶融混合する溶融混合工程において生じさせることができる。
すなわち、溶融混合工程として、
混合器中で、環状酸無水物基を側鎖に有するポリマーと、上記の<1>〜<3>からなる群から選択される少なくとも一種の原料化合物とを溶融混合する工程を例示できる。
ここで、「環状酸無水物基を側鎖に有するポリマー」とは、ポリマーの主鎖を形成する原子に環状酸無水物基が化学的に安定な結合(共有結合)をしているポリマーのことをいい、例えば、前記ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーと、環状酸無水物基を導入し得る化合物とを反応させることにより得られるものを好適に利用することができる。
なお、このような主鎖部分を形成することが可能なポリマーとしては、上記の<ポリマー成分>において例示したものが挙げられる。
また、前記環状酸無水物基を導入し得る化合物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸およびこれらの誘導体等の環状酸無水物が挙げられる。
また、環状酸無水物基を側鎖に有するポリマーの前記環状酸無水物基としては、環骨格中にカルボニル基を有する環状酸無水物基が好ましく、無水コハク酸基、無水マレイン酸基、無水グルタル酸基、無水フタル酸基が好ましく、中でも、原料の反応性が高く、しかも工業的に原料の入手が容易であるといった観点からは、無水マレイン酸基がより好ましい。
環状酸無水物基を側鎖に有するポリマーは、通常行われる方法、例えば、ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーに、通常行われる条件、例えば、加熱下での撹拌等により環状酸無水物をグラフト重合させる方法で製造してもよい。また、環状酸無水物基を側鎖に有するポリマーとしては、市販品を用いてもよい。
このような環状酸無水物基を側鎖に有するポリマーの市販品としては、例えば、LIR−403(クラレ社製)、LIR−410A(クラレ社試作品)などの無水マレイン酸変性イソプレンゴム;LIR−410(クラレ社製)などの変性イソプレンゴム;クライナック110、221、231(ポリサー社製)などのカルボキシ変性ニトリルゴム;CPIB(日石化学社製)、HRPIB(日石化学社ラボ試作品)などのカルボキシ変性ポリブテン;ニュクレル(三井デュポンポリケミカル社製)、ユカロン(三菱化学社製)、タフマーM(例えば、MP0610(三井化学社製)、MP0620(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴム;タフマーM(例えば、MA8510、MH7010、MH7020(三井化学社製)、MH5010、MH5020(三井化学社製)、MH5040(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性エチレン−ブテンゴム;アドテックスシリーズ(無水マレイン酸変性EVA、無水マレイン酸変性EMA(日本ポリオレフィン社製))、HPRシリーズ(無水マレイン酸変性EEA、無水マレイン酸変性EVA(三井・ジュポンポリオレフィン社製))、ボンドファストシリーズ(無水マレイン酸変性EMA(住友化学社製))、デュミランシリーズ(無水マレイン酸変性EVOH(武田薬品工業社製))、ボンダイン(エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸三元共重合体(アトフィナ社製))、タフテック(無水マレイン酸変性SEBS、M1943(旭化成社製))、クレイトン(無水マレイン酸変性SEBS、FG1901,FG1924(クレイトンポリマー社製))、タフプレン(無水マレイン酸変性SBS、912(旭化成社製))、セプトン(無水マレイン酸変性SEPS(クラレ社製))、レクスパール(無水マレイン酸変性EVA、ET−182G、224M、234M(日本ポリオレフィン社製))、アウローレン(無水マレイン酸変性EVA、200S、250S(日本製紙ケミカル社製))などの無水マレイン酸変性ポリエチレン;アドマー(例えば、QB550、LF128(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性ポリプロピレン;等が挙げられる。
また、前記環状酸無水物基を側鎖に有するポリマーとしては、高分子量で高強度であるといった観点から、無水マレイン酸変性ポリマーが好ましく、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴム、無水マレイン酸変性エチレン−ブテンゴムがより好ましい。
前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(I)としては、上記のポリマー成分において説明した水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)として例示したものを好適に利用することができ、例えば、上記実施形態の熱可塑性エラストマー組成物において説明した含窒素複素環そのものであってもよく、あるいは、前記含窒素複素環に無水マレイン酸等の環状酸無水物基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基等)が結合した化合物(前記置換基を有する含窒素複素環)であってもよい。なお、このような化合物(I)としては、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を同時に導入することが可能な化合物)を利用してもよい(なお、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を有する側鎖は、水素結合性架橋部位を有する側鎖の好適な一形態といえる。)。
また、このような化合物(I)としては、特に制限されず、目的とするポリマー中の側鎖の種類(側鎖(a)又は側鎖(a’))に応じて、上述のような化合物(I)の中から好適な化合物を適宜選択して用いることができる。このような化合物(I)としては、より高い反応性が得られるといった観点からは、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよい、トリアゾール、ピリジン、チアジアゾール、イミダゾール、イソシアヌレート、トリアジンおよびヒダントインであることが好ましく、前記置換基を有している、トリアゾール、ピリジン、チアジアゾール、イミダゾール、イソシアヌレート、トリアジンおよびヒダントインであることがより好ましく、前記置換基を有しているトリアゾール、イソシアヌレート、トリアジンであることが更に好ましく、前記置換基を有しているトリアゾールが特に好ましい。なお、このような置換基を有していてもよいトリアゾール、ピリジン、チアジアゾール、イミダゾールおよびヒダントインとしては、例えば、4H−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、アミノピリジン、アミノイミダゾール、アミノトリアジン、アミノイソシアヌレート、ヒドロキシピリジン、ヒドロキシエチルイソシアヌレート等が挙げられる。
また、前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(II)としては、上記の熱可塑性ポリマー成分において説明した「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」として例示したものと同一のものを好適に利用することができる(その化合物として好適なものも同一でよい。)。また、このような化合物(II)としては、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を同時に導入することが可能な化合物)を利用してもよい(なお、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を有する側鎖は、共有結合性架橋部位を有する側鎖の好適な一形態といえる。)。
このような化合物(II)としては、耐圧縮永久歪性の観点から、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、ポリエーテルポリオールが好ましく、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミドがより好ましく、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートが更に好ましい。
また、前記化合物(I)及び/又は(II)としては、より効率よく組成物中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入することが可能となることから、前記環状酸無水物基と反応して、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を同時に導入することが可能な化合物)を利用することが好ましい。このような水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物としては、前記複素環含有ポリオール、前記複素環含有ポリアミン、前記複素環含有ポリチオールを好適に利用することができ、含窒素複素環含有ポリオール、含窒素複素環含有ポリアミン、含窒素複素環含有ポリチオールをさらに好適に利用することができ、中でも、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートが特に好ましい。
また、化合物(I)及び化合物(II)の添加量(これらの総量:一方の化合物のみを利用する場合には、その一方の化合物の量となる。)は、特に制限されないが、該化合物中にアミン、アルコール等の活性水素が含まれる場合においては、環状酸無水物基100モル%に対して、該化合物中のアミン、アルコール等の活性水素が20〜250モル%となる量であることが好ましく、50〜150モル%となる量であることがより好ましく、80〜120モル%となる量であることが更に好ましい。このような添加量が前記下限未満では、導入される側鎖の量が少なくなって、架橋密度を十分に高度なものとすることが困難となり、引張強度等の物性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、添加した化合物(I)及び化合物(II)のうち前記架橋部位を形成しないものの割合が増えるため、却って架橋密度が下がってしまう傾向にある。
また、化合物(I)及び化合物(II)の添加量は、これらの総量が(一方の化合物のみを利用する場合には、その一方の化合物の量となる。)、前記混合物中の前記ポリマー(環状酸無水物基を側鎖に有するポリマー)100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.3〜7質量部であることがより好ましく、0.5〜5.0質量部であることが更に好ましい。このような化合物(I)及び化合物(II)の添加量(質量部に基づく量)が前記下限未満では架橋密度が上がらず所望の物性が発現しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると架橋密度が下がる傾向にある。
化合物(I)及び化合物(II)の双方を利用する場合において、化合物(I)及び化合物(II)を添加する順序は特に制限されず、どちらを先に加えても良い。また、化合物(I)及び化合物(II)の双方を利用する場合において、化合物(I)を、環状酸無水物基を側鎖に有するポリマーの、環状酸無水物基の一部と反応させてもよい。これにより、未反応の環状酸無水物基(反応させていない環状酸無水物基)に、化合物(II)を反応させて共有結合性架橋部位を形成させることも可能となる。ここにいう一部とは、環状酸無水物基100モル%に対して1モル%以上50モル%以下であることが好ましい。この範囲であれば、得られるポリマー(B)において、化合物(I)に由来した基(例えば含窒素複素環等)を導入した効果が十分に発現され、リサイクル性がより向上する傾向にある。なお、化合物(II)は、共有結合による架橋が適当な個数(例えば、1分子中に1〜3個)となるように前記環状酸無水物基と反応させることが好ましい。
前記ポリマーと前記原料化合物(化合物(I)及び/又は化合物(II))とを反応させると、前記ポリマーが有する環状酸無水物基が開環されて、環状酸無水物基と前記原料化合物(前記化合物(I)及び/又は化合物(II))とが化学結合される。このような前記ポリマーと前記原料化合物(前記化合物(I)及び/又は化合物(II))とを反応(環状酸無水物基を開環)させる際の温度条件は特に制限されず、前記化合物と環状酸無水物基との種類に応じて、これらが反応可能な温度に調整すればよいが、軟化させて反応を瞬時に進める観点からは、100〜280℃であってもよく、160〜230℃であってもよく、180〜220℃であってもよい。
このような反応により、前記化合物(I)と環状酸無水物基とが反応した箇所においては、少なくとも水素結合性架橋部位が形成されるため、前記ポリマーの側鎖に水素結合性架橋部位(カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する部位、より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環を有する部位)を含有させることが可能となる。このような反応により、形成(導入)される側鎖を、上記式(2)または(3)で表される構造を含有するものとすることができる。
また、このような反応により、前記化合物(II)と環状酸無水物基とが反応した箇所においては、少なくとも、共有結合性架橋部位が形成されるため、前記ポリマーの側鎖を共有結合性架橋部を含有するもの(側鎖(b)又は側鎖(c))とすることが可能となる。そして、このような反応により、形成される側鎖を、上記式(7)〜(9)で表される構造を含有するものとすることもできる。
なお、このようなポリマー中の側鎖の各基(構造)、すなわち、未反応の環状酸無水物基、上記式(2)、(3)および(7)〜(9)で表される構造等は、NMR、IRスペクトル等の通常用いられる分析手段により確認することができる。
このようにして反応させることで、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下であるポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー成分を得ることができる。
<プロセスオイル>
実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、その加工性やゴム加工製品の品質を改善するためにプロセスオイルを含有することができる。かかるプロセスオイルとしては、特に制限されず、いかなるものであってもよいが、プロセスオイルは石油由来(Petroleum-Derived)の炭化水素油を含有するものが好ましい。プロセスオイルにおける石油由来の炭化水素油の含有割合は、50質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、95質量%以上であってよく、実質的に石油由来の炭化水素油からなるものであってもよい。
プロセスオイルとしては、ポリマー成分とのなじみがよく、流動性、耐熱性、色安定性、および耐汚染性に優れるとの観点から、バラフィンオイルが好ましい。本明細書において「パラフィンオイル」とは、そのオイルに対して、ASTM D3238−85に準拠した相関環分析(n−d−M環分析)を行って、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率(パラフィン部:CP)、ナフテン炭素数の全炭素数に対する百分率(ナフテン部:CN)、及び、芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率(芳香族部:CA)をそれぞれ求めた場合において、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率(CP)が60%以上であるものを意味し、60%以上90%以下であるものが好ましく、70%以上85%以下であるものがより好ましい。
また、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記プロセスオイルが、JIS K 2283(2000年発行)に準拠して測定される、40℃における動粘度が50mm2/s〜700mm2/sのものであることが好ましく、150〜600mm2/sであることがより好ましく、300〜500mm2/sであることが更に好ましい。このような動粘度(ν)が前記下限未満ではオイルのブリードが起こりやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると充分な流動性を付与できなくなる傾向にある。なお、このようなプロセスオイルの動粘度は、40℃の温度条件下において、JIS K 2283(2000年発行)に準拠して測定される値を採用するが、例えば、JIS K 2283(2000年発行)に準拠したキャノン・フェンスケ式粘度計(例えば柴田科学社製の商品名「SOシリーズ」)を利用して、40℃の温度条件で自動測定した値を採用してもよい。
さらに、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記プロセスオイルが、JIS K2256(2013年発行)に準拠したU字管法により測定されるアニリン点が80℃〜145℃であることが好ましく、100〜145℃であることがより好ましく、105〜145℃であることが更に好ましい。なお、このようなプロセスオイルのアニリン点は、JIS K2256(2013年発行)に準拠したU字管法により測定される値を採用するが、例えば、JIS K2256(2013年発行)に準拠したアニリン点測定装置(例えば田中科学機器社製の商品名「aap−6」)を利用して測定した値を採用してもよい。
このようなプロセスオイルとしては、適宜市販のものを利用することができ、例えば、JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P200」、「スーパーオイルMシリーズ P400」、「スーパーオイルMシリーズ P500S」;出光興産社製の商品名「ダイアナプロセスオイルPW90」、「ダイアナプロセスオイルPW150」、「ダイアナプロセスオイルPW380」;日本サン石油社製の商品名「SUNPARシリーズ(110、115、120、130、150、2100、2280など)」;モービル社製の商品名「ガーゴイルアークティックシリーズ(1010、1022、1032、1046、1068、1100など)」等を適宜利用してもよい。
熱可塑性エラストマー組成物におけるプロセスオイルの含有量は、ポリマー成分やプロセスオイルの種類等に応じて適宜定めればよいが、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物100質量%に対する、前記プロセスオイルの含有量の割合は、0.1質量%以上が好ましく、0.1質量%以上95質量%以下が好ましく、1質量%以上90質量%以下が好ましく、30質量%以上85質量%以下がより好ましく、35質量%以上70質量%以下がさらに好ましく、50質量%以上85質量%以下が特に好ましい。熱可塑性エラストマー組成物100質量%に対する、前記プロセスオイルの含有量の割合が上記下限値以上(特に、上記下限値が30質量%以上)であることにより、熱可塑性エラストマー組成物の硬度を低下させ、成型加工性をより優れたものとできる。また、熱可塑性エラストマー組成物100質量%に対する、前記プロセスオイルの含有量の割合が上記上限値以下であることにより、成形加工機器等の汚染が、より効果的に防止される。
プロセスオイルは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組合せて用いてもよい。
熱可塑性エラストマー組成物の硬度は、特に制限されるものではないが、成型加工性に優れるとの観点から、硬度の値が小さいものが好ましい。例えば、硬化後の熱可塑性エラストマー組成物は、JIS K6253に準拠したショアA硬度が70以下であることが好ましく、60以下であるものがより好ましく、50以下であるものが更に好ましい。なお、前記熱可塑性エラストマー組成物100質量%に対する、前記プロセスオイルの含有量の割合を、例えば80質量%以上とすることで、硬化後の上記ショアA硬度が0の熱可塑性エラストマー組成物も製造可能である。
熱可塑性エラストマー組成物の硬度は、原料化合物の種類や配合量等により、適宜調節可能であるが、上記プロセルオイルを配合し、上記プロセルオイルの配合量によって硬度を調節することができる。熱可塑性エラストマー組成物におけるプロセルオイルの配合量を増加させるほど、熱可塑性エラストマー組成物の硬度の値を小さくでき、熱可塑性エラストマー組成物の加工性を向上可能である。
<熱可塑性樹脂>
実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物であることが好ましい。動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物としては、分散相及び連続相からなり、前記分散相は前記ポリマー成分を含み、前記連続相は熱可塑性樹脂を含むものが挙げられる。
動的架橋は、架橋剤と、該架橋剤と反応するポリマー分子とを含む原料を溶融混錬しながら架橋反応を行うことで形成できる。この架橋反応によって、ポリマー成分の溶融粘度が上昇し、熱可塑性樹脂との粘度比が大きくなり、ポリマー成分が分散相を形成するとされる。
動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物は、エラストマーとしての優れたゴム弾性と、熱可塑性樹脂としての優れた加工性の性質とを合わせ持った非常に有用なものである。本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物によれば、それを構成成分とした動的架橋型熱可塑性エラストマーを提供できる。
熱可塑性樹脂は、本発明に係るポリマー成分に該当しない熱可塑性樹脂であれば特に制限されるものではないが、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。これら樹脂として、具体的には低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂は、熱可塑性エラストマーであってもよく、スチレン系エラストマーが好ましい。スチレン系エラストマーとしては、上記の中でも、スチレン−共役ジエンブロック共重合体が好ましい。スチレン系エラストマーは、水素添加されたものであってもよい。スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、等が挙げられる。
熱可塑性エラストマー組成物における熱可塑性樹脂の含有量は、本発明に係るポリマー成分の種類等に応じて適宜定めればよいが、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物100質量%に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合は、例えば、5質量%以上が好ましく、5質量%以上80質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましく、20質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。熱可塑性エラストマー組成物100質量%に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合が上記範囲内であることにより、熱可塑性エラストマー組成物の加工性を好ましいものとすることができる。
熱可塑性エラストマー組成物が熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性エラストマー組成物100質量%に対する、前記ポリマー成分及び前記熱可塑性樹脂の合計含有量の割合は、例えば、10質量%以上が好ましく、10質量%以上85質量%以下が好ましく、30質量%以上75質量%以下がより好ましく、50質量%以上65質量%以下がさらに好ましい。熱可塑性エラストマー組成物100質量%に対する、前記ポリマー成分及び前記熱可塑性樹脂の合計含有量の割合が上記範囲内であることにより、熱可塑性エラストマー組成物の加工性及びゴム弾性を好ましいものとすることができる。
熱可塑性エラストマー組成物における、前記ポリマー成分及び前記熱可塑性樹脂の含有量の合計と、前記プロセスオイルと、の含有割合(ポリマー成分及び前記熱可塑性樹脂の合計)/(プロセスオイル)が質量比で5/1〜1/5であることが好ましく、3/1〜1/3であることがより好ましく、2/1〜1であることがさらに好ましい。なお、熱可塑性エラストマー組成物が熱可塑性樹脂を含まない場合には、前記ポリマー成分及び前記熱可塑性樹脂の含有量の合計とは、ポリマー成分のみの含有量とする。上記質量比が上記範囲内であることにより、熱可塑性エラストマー組成物内におけるプロセスオイルの担持が好適となり、熱可塑性エラストマー組成物の加工性及びゴム弾性の両立を高いレベルで実現可能できる。
<クレイ>
実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、クレイを含有することができる。かかるクレイとしては特に制限されず、公知のクレイ(粘度鉱物等)を適宜利用することができる。また、このようなクレイとしては、天然のクレイ、合成クレイ、有機化クレイが挙げられる。
このようなクレイの中でも、ケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイ、並びに、有機化クレイからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
また、ケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイとは、クレイの構成成分である金属酸化物の金属の主成分がケイ素(Si)及びマグネシウム(Mg)であるクレイを指し、その他の金属酸化物(アルミニウム(Al)、鉄(Fe)等)を副成分として含んでいても良い。ケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイとしては特に制限されず、公知のものを適宜利用することができる。ケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイを用いることで、粒径が小さいため補強性を高くすることが可能となる。また、このようなケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイとしては、入手のし易さの観点から、スメクタイト構造を有するクレイが好ましい。
また、このようなケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイとしては、例えば、スティブンサイト、ヘクトライト、サポナイト、タルク等を挙げることができるが、中でも、分散性の観点から、スティブンサイト、ヘクトライト、サポナイトを用いることがより好ましい。
また、ケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイとしては、合成クレイが好ましい。このような合成クレイとしては、市販のものを利用してもよく、例えば、クニミネ工業社製の商品名「スメクトンSA」、「スメクトンST」、水澤化学工業社製の商品名「イオナイト」、コープケミカル株式会社製の商品名「ルーセンタイト」などを適宜利用することができる。
また、前記有機化クレイは特に制限されないが、クレイが有機化剤により有機化されてなるものであることが好ましい。このような有機化される前のクレイとしては特に制限されず、いわゆる粘土鉱物であればよく、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカ、フッ素化マイカ、カオリナイト、パイロフィロライト等が挙げられる。また、このようなクレイは天然物であっても合成物であってもよい。
また、前記有機化剤としては特に制限されず、クレイを有機化することが可能な公知の有機化剤を適宜利用することができ、例えば、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、トリオクタデシルアンモニウムイオン等を用いることができる。
また、このような有機化クレイとしては、単層分散性の観点から、クレイの4級アンモニウム塩を好適に利用することができる。このような有機化クレイの4級アンモニウム塩としては、特に制限されないが、例えば、トリメチルステアリルアンモニウム塩、オレイルビス(2−ヒドロキシルエチル)の塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩、ジメチルオクタデシルアンモニウム塩、及び、これらのうちの2種以上の混合物を好適に用いることができる。なお、このような有機化クレイの4級アンモニウム塩としては、引張強度、耐熱性向上の観点から、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩、ジメチルオクタデシルアンモニウム塩、及び、これらの混合物をより好適に利用でき、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩とジメチルオクタデシルアンモニウム塩との混合物を更に好適に利用できる。
また、このような有機化クレイとしては、市販のものを利用してもよく、例えば、クニミネ工業社製の商品名「クニフィル−D36」、「クニフィル−B1」、「クニフィル−HY」などの他、ホージュン社製の商品名「エスベンシリーズ(C,E,W,WX,N−400,NX,NX80,NZ,NZ70,NE,NEZ,NO12S,NO12」、「オルガナイトシリーズ(D,T)などを適宜利用することができる。このような市販の有機化クレイの中でも、クニミネ工業社製の商品名「クニフィル−D36」とホージュン社製の商品名「エスベンシリーズWX」を好適に利用できる。
このように、クレイとしては、高分散性の観点から、ケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイ、有機化クレイが好ましく、中でも、より高度な引張応力(モジュラス)が得られることから、有機化クレイを用いることが特に好ましい。
また、熱可塑性エラストマー組成物がクレイを含む場合、前記クレイの含有量が前記ポリマー成分100質量部に対して20質量部以下が好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましく、0.05〜5質量部であることが更に好ましい。このようなクレイの含有量が前記下限以上であることにより、引張応力及び耐熱性を向上させる効果が好適に発揮される傾向にあり、他方、前記上限以下であると架橋の程度が好ましいものとなるため伸びや強度が良好となる傾向にある。
<その他の成分>
実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、前記ポリマー成分以外に、さらに必要に応じて、本発明の目的を損わない範囲で、これらに該当しない他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、前記ポリマー成分以外のポリマー(以下、「ポリマー類」という。)、補強剤(充填剤)、水素結合性の補強剤(充填剤)アミノ基を導入してなる充填剤(以下、単に「アミノ基導入充填剤」という。)、該アミノ基導入充填剤以外のアミノ基含有化合物、金属元素を含む化合物(以下、単に「金属塩」という。)、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラーなどの各種添加剤等が挙げられる。例えば、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤としては、以下に記載のようなものを適宜利用することができる。
前記ポリマー成分以外のポリマーとしては、ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のポリマーを好適に利用することができる。
また、このような補強剤(充填剤)としては、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム等を上げることができる。カーボンブラックとしては、シリカとしては湿式シリカ、炭酸カルシウムとしてはが好適に用いられる。
このような老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、脂肪族および芳香族のヒンダードアミン系等の化合物を適宜利用することができる。また、前記酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等を適宜利用することができる。また、前記顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料等を適宜利用することができ、また、前記可塑剤としては、例えば、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバチン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クエン酸等の誘導体をはじめ、ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ系等を適宜利用することができる。なお、このような添加剤等としては、特開2006−131663号公報に例示されているようなものを適宜利用してもよい。
なお、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物が、前記ポリマー成分以外の他の成分(例えば、前記添加剤等)を含有する場合において、前記他の成分の含有量は特に制限されるものではないが、ポリマー類、補強材(充填剤)の場合は、前記ポリマー成分100質量部に対して300質量部以下とすることが好ましく、20〜200質量部とすることがより好ましい。このような他の成分の含有量が前記下限未満では他の成分を利用することによる効果が十分に発現しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、利用する成分の種類にもよるが、前記ポリマー成分の効果が薄まって、物性が低下してしまう傾向にある。
また、前述の他の成分が、その他の添加剤の場合(ポリマー類、補強材(充填剤)以外のものである場合)は、前記他の成分の含有量は、前記ポリマー成分100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましく、0.1〜10質量部とすることがより好ましい。このような他の成分の含有量が前記下限未満では他の成分を利用することによる効果が十分に発現しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記ポリマー成分の反応に悪影響を及ぼし、却って物性が低下してしまう傾向にある。
実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、前記ポリマー成分と、所望により、プロセスオイル、熱可塑性樹脂、クレイ、及びそれらに該当しないその他の成分からなる群から選択される少なくとも1つの成分と、を含む。実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、上記の成分を、含有量(質量%)の合計が100質量%を超えないように含有することができる。
<用途など>
実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、加熱(例えば100〜280℃に加熱)することにより、ポリマー成分の水素結合性架橋部位において形成されていた水素結合や、他の架橋構造が解離する等して軟化し、流動性を付与することができる。これは、加熱により分子間または分子内で形成されている側鎖同士の相互作用(主に水素結合による相互作用)が弱まるためであると考えられる。なお、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物においては、側鎖に、少なくとも水素結合性架橋部位を含むポリマー成分が含有されているため、加熱により流動性が付与された後、放置した場合に、解離した水素結合が再び結合して硬化するため、その組成によっては、熱可塑性エラストマー組成物に、より効率よくリサイクル性を発現させることも可能となる。
また、本発明の一実施形態として、可塑性エラストマー組成物の硬化物を得ることができる。硬化は、一例として、熱可塑性エラストマー組成物を、上記の流動性を付与可能な温度以下とすれば硬化する。
したがって、本発明の一実施形態として、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の硬化物を提供できる。
上記のとおり、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を加熱して流動性を付与し成形加工し、硬化させ、熱可塑性エラストマー組成物の成形品を得ることができる。
成形加工法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形等が挙げられる。
ここでいう加熱とは、前記溶融混合時の加熱に対応するものであってよく、或いは、一度、熱可塑性エラストマー組成物の成形品を得た後に、それを再度加熱して、流動性を付与する際の加熱に対応するものであってもよい。
熱可塑性エラストマー組成物の成形品は、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の硬化物であり、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を用いて製造されたものであってよく、熱可塑性エラストマー組成物を含むものであってよく、熱可塑性エラストマー組成物からなるものであってよい。
実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の成形品としては、ペレット、シートなどの、各種製品の素材として用いられるものも含まれる。
実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、ゴム弾性を活用して種々のゴム用途に使用することができる。またホットメルト接着剤として、またはこれに含ませる添加剤として使用すると、耐熱性およびリサイクル性を向上させることができるので好ましい。実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、自動車用ゴム部品、ホース、ベルト、シート、防振ゴム、ローラー、ライニング、ゴム引布、シール材、手袋、防舷材、医療用ゴム(シリンジガスケット、チューブ、カテーテル)、ガスケット(家電用、建築用)、アスファルト改質剤、ホットメルト接着剤、ブーツ類、グリップ類、玩具、靴、サンダル、キーパッド、ギア、ペットボトルキャプライナー等の用途に好適に用いられる。
上記自動車用ゴム部品としては、具体的には、例えば、タイヤのトレッド、カーカス、サイドウォール、インナーライナー、アンダートレッド、ベルト部などのタイヤ各部;外装のラジエータグリル、サイドモール、ガーニッシュ(ピラー、リア、カウルトップ)、エアロパーツ(エアダム、スポイラー)、ホイールカバー、ウェザーストリップ、カウベルトグリル、エアアウトレット・ルーバー、エアスクープ、フードバルジ、換気口部品、防触対策部品(オーバーフェンダー、サイドシールパネル、モール(ウインドー、フード、ドアベルト))、マーク類;ドア、ライト、ワイパーのウェザーストリップ、グラスラン、グラスランチャンネルなどの内装窓枠用部品;エアダクトホース、ラジエターホース、ブレーキホース;クランクシャフトシール、バルブステムシール、ヘッドカバーガスケット、A/Tオイルクーラーホース、ミッションオイルシール、P/Sホース、P/Sオイルシールなどの潤滑油系部品;燃料ホース、エミッションコントロールホース、インレットフィラーホース、ダイヤフラム類などの燃料系部品;エンジンマウント、インタンクポンプマウントなどの防振用部品;CVJブーツ、ラック&ピニオンブーツ等のブーツ類;A/Cホース、A/Cシール等のエアコンデショニング用部品;タイミングベルト、補機用ベルトなどのベルト部品;ウィンドシールドシーラー、ビニルプラスチゾルシーラー、嫌気性シーラー、ボディシーラー、スポットウェルドシーラーなどのシーラー類;等が挙げられる。
また、実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を、ゴムの改質剤(例えば、流れ防止剤)として、室温でコールドフローを起こす樹脂あるいはゴムに含ませると、押出し時の流れやコールドフローを防止することができる。
(製造方法)
熱可塑性エラストマー組成物は、ポリマー成分又はその原料と、必要に応じて、前記熱可塑性エラストマー組成物を構成するその他の各成分とを配合した混合対象物を溶融混合することで得ることができる。なお、ポリマー成分又はその原料(熱可塑性エラストマー組成物が熱可塑性樹脂を含む場合は熱可塑性樹脂も)が溶融しているのであれば、配合される全ての成分が溶融していなくともよい。
ポリマー成分の原料を用いる場合、上記の溶融混合時に、ポリマー成分の原料から、ポリマー成分を合成することができる。
前記熱可塑性エラストマー組成物を構成する上述の各成分の配合を行う装置としては、混合器、例えば撹拌翼式混合器を用いることができ、配合を行う時間は5分〜40分であってよい。また、各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
前記熱可塑性エラストマー組成物を構成する上述の各成分の溶融混合の温度は、熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分又はその原料に応じて適宜定めればよいが、ポリマー成分又はその原料を含む各種物質の融点以上の温度であることが好ましく、各種物質の熱分解温度未満の温度を例示できる。一例として、溶融混合の温度は、100〜280℃であってもよく、160〜230℃であってもよく、180〜220℃であってもよい。
また、溶融混合を行う装置は、バッチ式、連続式いずれであってもよい。このような装置としては溶融混練装置を例示でき、例えば単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどが挙げられる。
溶融混合を行う時間は、熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分又はその原料に応じて適宜定めればよいが、2分〜30分であってよい。
実施形態の熱可塑性エラストマー組成物が、動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物である場合、
ポリマーと、前記ポリマーを架橋させる架橋剤と、熱可塑性樹脂と、を含む混合物を得て、溶融条件下に前記ポリマーと前記架橋剤とを動的架橋させることにより、実施形態に係るポリマー成分を得ることができる。また、以下により、実施形態に係るポリマー成分を得ることができる。
環状酸無水物基を側鎖に有するポリマーと、上記の<2>〜<3>からなる群から選択される少なくとも一種の原料化合物と、熱可塑性樹脂と、を含む混合物を得て、溶融条件下に前記ポリマーと原料化合物とを動的架橋させることにより、ポリマー成分を得ることができる。
係る反応は、ポリマー成分の原料を溶融混合する溶融混合工程において生じさせることができる。
すなわち、溶融混合工程として、
混合器中で、環状酸無水物基を側鎖に有するポリマーと、上記の<2>〜<3>からなる群から選択される少なくとも一種の原料化合物と、熱可塑性樹脂と、を溶融混合し、溶融条件下に前記ポリマーと前記原料化合物とを動的架橋して、前記ポリマー成分を得る工程を例示できる。
動的架橋時の温度は、熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分又はその原料に応じて適宜定めればよいが、上記の溶融混合の温度を例示でき、ポリマー成分の原料を含む各種原料の融点以上の温度であることが好ましく、各種原料の熱分解温度未満の温度を例示できる。一例として、溶融混合の温度は、100〜280℃であってもよく、160〜230℃であってもよく、180〜220℃であってもよい。
また、例えば、ポリマー(A)をポリマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物と、ポリマー(B)をポリマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物とをそれぞれ別々に製造した後、これを混合して、ポリマー成分としてポリマー(A)及び(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物としてもよい。また、ポリマー成分としてポリマー(A)及び(B)を組み合わせて含有する熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合には、ポリマー(A)とポリマー(B)の比率を適宜変更して、組成物中に存在する水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位の比率等を適宜変更することで、所望の特性を発揮させることも可能である。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(三井化学社製の商品名「タフマーMH5040」)35kg、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)0.78kg、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製の商品名「HJ590N」)25kg、スチレン系ブロックコポリマー(クレイトン社製の商品名「G1633EU」)40kg、プロセスオイル(JXTGエネルギー社製の商品名「YU−8J」、Cp78.6)62kg、有機化クレイ(ホージュン社製の商品名「エスベンWX」)0.035kg、および、老化防止剤(ADEKA社製の商品名「アデカスタブAO−50」)0.49kgを計量し、撹拌翼式混合器にて50℃以下の温度で均一に混合し原料混合物を得た。
得られた原料混合物を二軸押出機の原料フィーダーに投入した。原料フィーダーにはコイルフィードが設けてあり、時間あたり一定量が二軸押出機のホッパーに投下される仕組みである。また、同じホッパーに、原料混合物(混合対象物)の合計量100質量部に対して、水を、送液ポンプと送液ノズルにて0.1質量部供給し、200℃で混練した。その際、押出し量は20kg/hであった。二軸押出機のシリンダにはベント口が設けてあり、ベント口を減圧することで水と揮発成分を脱揮除去しながら混練することで熱可塑性エラストマー組成物を得た。次いでこの組成物をペレタイズすることでペレットを得た。
[実施例2]
上記の実施例1において、水の供給量を、原料混合物の合計量100質量部に対して.2質量部供給した以外は、実施例1と同様にして、ペレットを作製した。
[実施例3]
上記の実施例1において、水の供給量を、原料混合物の合計量100質量部に対して.5質量部供給した以外は、実施例1と同様にして、ペレットを作製した。
[比較例1]
上記の実施例1において、水を供給せず、かつ、ベント口を塞いで減圧脱揮しなかった以外は、実施例1と同様にして、ペレットを作製した。
[比較例2]
上記の実施例1において、水を供給しなかった以外は、実施例1と同様にして、ペレットを作製した。
<評価>
・120℃加熱時の揮発成分定量
上記実施例1〜3、比較例1〜2で得られたペレット(形状:円柱状 直径4mm×高さ3.5mm)1gを、20mlヘッドスペース容器内に秤量し、密栓した(ヘッドスペース法)。これを120℃に昇温し60分間保持した後、ヘッドスペース容器の気相部1mlをサンプリングし、GC/MS測定に供した。下記GC/MS条件にて、保持時間0〜25分の間に検出されたピークの面積総和から総揮発分を定量した。また、検量用標準として既知量のn−デカンについても同様の操作を行い、得られた面積値よりエラストマーの加熱発生成分の定量(n−デカン換算)を行った。
(GC/MS条件)
カラム :DB−5(30m×0.32mm×1.0μm)
キャリアガス :He(流量1.5ml/min)
インジェクション温度:200℃
ディテクター温度 :280℃
・臭気官能評価
上記実施例1〜3、比較例1〜2で得られたペレットを100g計量し、4リットルのステンレス缶に入れ、密閉蓋をした状態で80℃の恒温槽で1時間加熱した。恒温槽からステンレス缶を取り出し、密閉したまま室温まで冷ました後、蓋を開け、鼻を近づけ、臭いの有無を確認した。
製造条件、及び上記の評価結果を表1に示す。
GC/MSで検出された揮発成分は、脂肪族炭化水素、環状シロキサン、アルコール類、カルボン酸類(酢酸、ピバル酸、イソ吉草酸、吉草酸、酪酸、及びカプロン酸)、及び芳香族化合物を含むものであった。
ポリマー成分の原料と水とを含む混合物を、混合器に供給して溶融混合し、ベント脱揮を行って製造された実施例1〜3のペレットは、120℃で60分間加熱したときに放出された揮発成分の量が、n−デカン換算で35μg/g未満に低減されていた。また実際の官能評価試験においても、臭気は確認されなかった。
対して、ポリマー成分の原料に水を添加しなかった比較例1〜2のペレットは、ベント脱揮の有無に関わらず、上記実施例1〜3のペレットよりも、上記揮発成分の放出量が多いものであった。また実際の官能評価試験においても、臭気が確認された。
すなわち、熱可塑性エラストマー組成物の原料に水を添加した混合物を、脱揮ベントを有する押出機に供給して溶融混練することで、製造された熱可塑性エラストマー組成物における揮発成分の発生量を、非常に効果的に低減可能であることがわかる。
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項の範囲によってのみ限定される。