JP2020132485A - スラグ、スラグの製造方法、及び、土木用資材 - Google Patents

スラグ、スラグの製造方法、及び、土木用資材 Download PDF

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克美 山田
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Abstract

【課題】耐ホウ素溶出性に優れるスラグ、上記スラグの製造方法、及び、上記スラグを用いた土木用資材を提供する。
【解決手段】
ガラス相と、
結晶相として、少なくともCaMg(SiOと、
B:0.15質量%以上と、
Ba:1.0質量%以上2.5質量%未満、及び/又は、Sr:0.40質量%以上1.7質量%未満と、を含有するスラグであって、
Cu−Kα線を線源としたXRD測定によって得られる下記Index Gが7.0以上であり、
ガラス相中、Baの含有量が8.0質量%未満、且つ、Srの含有量が7.0質量%未満である、耐ホウ素溶出性に優れるスラグ。
Index G=I[glass]/(I[27°]+I[32°]+I[47°])×100
【選択図】なし

Description

本発明は、スラグ、スラグの製造方法、及び、土木用資材に関する。
鉄鋼業の発展にともない、製鉄過程において生成される産業副産物も増加の一途をたどっている。とりわけ、高炉や転炉操業といった製鉄業の上工程で副次的に生成するスラグは世界的に見ても増加傾向にあり、適切な再利用サイクルを確立できないと将来的には立ち行かない状況にある。一部では、成分と粒度を調整することで、路盤材などの土木用資材として利用したり、マリンブロックと呼ばれる海洋での漁礁用途に活用されてきているが、地球環境保全の観点でアルカリ元素、重金属等の厳しい溶出規制が課せられており、なかなか再利用が進まない現状である。
環境への影響が大きな代表的な元素としては、Cd、Hg、Cr、Pbなどが挙げられるほか、F、Se、As、B等も環境への排出が厳しく規制されている。このような背景もあり、環境への悪影響が考えられる成分の抑制方法が、既に種々提案されており、B(ホウ素)に関しては特許文献1〜3等に開示されている。
特開2004−298741号公報 特開2007−90155号公報 特開2015−178098号公報
特許文献1には、対象はスラグではないが、フッ素およびホウ素が含まれる土壌や焼却灰に、酸化マグネシウムあるいは石膏を添加した酸化マグネシウムを粉末状またはスラリー状で添加し・混合することで、フッ素、ホウ素を固定化し、溶出を抑えることが出来るとしている。
また、特許文献2には、火力発電所等から排出される石炭灰に、所定期間、加湿養生するステップを施すことで、石炭灰からのホウ素溶出抑制ができる手法が開示されている。更に本文献においては、加湿養生ステップに加えて、高炉B種セメントを固化材料として添加することにより、更に高い溶出抑制効果が得られるとしている。
しかし、特許文献1で開示された酸化マグネシウムの添加はコストが高いうえ、最終混合物が硬化して塊状となり、建築資材として再利用しにくい問題がある。一方、特許文献2に記載された技術では、ホウ素溶出抑制のための加湿養生ステップが長時間必要で、生産性の観点で実用に適さない。
これに対して、特許文献3には、ホウ素含有物質に、ホウ素溶出量の極めて少ない製鋼スラグと適量の水を混合し、乾燥・養生処理を行うことにより、ホウ素含有物質からのホウ素溶出量を大幅に低減できる技術が開示されている。しかしながら、本技術は、乾燥・養生に数日を要し、またホウ素溶出量の高いスラグを対象としていないため、ホウ素を多く含むホウ素含有スラグの処理方法として有効であるかは不明である。
本発明は、上記実情を鑑みて、耐ホウ素溶出性に優れるスラグ、上記スラグの製造方法、及び、上記スラグを用いた土木用資材を提供することを目的とする。
また、スラグの路盤材展開のための予備処理としては、従来、Free−CaOによる膨張を抑制するための転炉スラグの蒸気エージング技術が広く知られている。この処理には数か月に及ぶ処理時間が必要で、コスト面からも路盤材展開への大きな障害となっている。一方、今回の発明の対象となる溶鉱炉スラグではFree−CaOは低く膨張の懸念はない。しかし、後述のとおり原料に起因して不可避的に含まれるホウ素が、ガラス相内で特定元素と共存することにより不安定化し、使用中のホウ素溶出の懸念が大きい。このため、本発明においては、Mn鉱石を使用してFeMnを精製する際に副生成物として発生するスラグ中のホウ素をガラス相内に安定的に固定し、当該スラグが環境庁告知46号(環告46号)の溶出試験において、ホウ素溶出1mg/L以下を満足するために必要なスラグの構造ならびに好適なスラグ予備処理方法を提供する。
なお、環境庁告知46号の溶出試験は以下のとおりである。
(環境庁告知46号の溶出試験)
試料と溶媒(純水に塩酸を加え、pHが5.8以上6.3以下となるようにしたもの)とを重量体積比10%の割合で混合し、かつ、その混合液が500ml以上となるように調整後、試料液を常温(おおむね20℃)常圧(おおむね1気圧)で振とう機(あらかじめ振とう回数を毎分約200回に、振とう幅を4cm以上5cm以下に調整したもの)を用いて、6時間連続して振とうする。得られた試料液を10分から30分程度静置後、毎分約3,000回転で20分間遠心分離した後の上澄み液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過してろ液を取り、ICP等の機器分析で定量分析を行う。
本発明者らは、上述した課題を解決するために、代表的なホウ素含有スラグのホウ素溶出現象とスラグ内におけるホウ素の存在状態の相関を鋭意調査した。スラグ(特に、製錬炉スラグ)には多種多様な元素が含まれ、これらが、様々な物質(結晶相およびガラス相)を形成している。本発明者らは、特にホウ素溶出が顕在化する時のスラグ中でのホウ素の占有的形態と特徴的な共存元素を調べることにより、ホウ素がスラグ形成時の最終凝固部(ガラス相)に濃縮しやすいこと、更に、製錬炉に入れる鉱石から混入するBaやSrに代表される重いアルカリ土類金属が、スラグ中のガラス相内でホウ素と共存することで、ホウ素溶出が促進される可能性が高いことを知見した。
まず、本発明者らが行った基礎的な実験について説明する。
表1に示す組成を有するホウ素を含有する製錬炉スラグ(溶融温度:1420℃)を、2.0mmアンダーに粒度調整し、環境庁告知46号の溶出試験に準拠してホウ素の溶出試験を実施したところ、溶出量は5.0〜18.0mg/Lと溶出規制値1.0mg/Lを大きく超える結果となった。なお、ホウ素の分析限界値は0.1mg/Lである。
次に、この製錬炉スラグを溶融温度以上である1500℃に再加熱し、種々の冷却速度で室温まで冷やしたのち、同様に試料を処理してホウ素の溶出試験を行った。その結果、冷却速度の増大に伴い、ホウ素溶出量が急減し、600℃/分以上の急冷処理では、溶出量が1.0mg/L以下に制御可能であることがわかった。
製錬炉スラグの成分は、原料に大きく依存するものの、基本的にはCaOやSiOを主体とする結晶相と様々な元素を含有するガラス相からなっており、その中でホウ素が安定化されていないことがホウ素溶出量増大の要因となっていると考えた。そこで、本発明者らは、このスラグ中でのホウ素の存在形態について、XRD(X−Ray Diffraction)、EPMA(Electron Probe Micro Analysis)およびTEM(Transmission Electron Microscope)/EELS(Electron Energy Loss Spectroscopy)等での詳細調査を実施した。
最初にXRD回折においてはスラグ試料を乳鉢で1mmφ以下まで粉砕し、これをCu−Kα線を線源とするXRD装置にてθ−2θ測定を実施し、スラグを構成する結晶相の同定を行った。さらに、2θ領域30°近傍に現れるガラス相からの回折ピーク(実質的に、2θ:25°〜40°間に形成されるハロー)の高さを計測し、この回折位置に近い代表的な結晶相(CaMg(SiO)の強い3本のピーク高さの和との比で相対的にガラス相の存在量を評価した。次に、塊状のスラグを樹脂に埋め込み、機械研磨によって平滑面を得たのち、導電性を確保するための炭素蒸着を行った後、EPMAによる元素マッピングの取得を行った。この時、加速電圧は10kV、倍率500、プローブ電流値0.5μAで約140μm角の領域を3視野程度分析し、ホウ素と他元素との存在位置の関係を調査した。
更に、EPMAでホウ素が明らかに濃化していると判明した領域からFIB(Focused Ion Beam)装置を用いて薄膜試料を採取し、これをTEM観察・分析した。これらの調査から、本発明者らは、ホウ素溶出量の多い未処理スラグでは、ホウ素がスラグを構成するガラス相に濃縮していること、このガラス相の組成は主要な結晶相と比べて明らかにBa、Sr等が高いことを知見した。また、1500℃からの冷却速度を高めることにより、ホウ素が濃縮する傾向のあるガラス相の比率が増加し、相対的なホウ素の濃縮度が低下することもわかった。本検討結果のうち、ホウ素とBa等の共存傾向を示すEPMA元素マップの取得結果を図1に示した。なお、図1のいずれのマッピング像においても、より輝度の高い部分が元素濃縮の高さを反映している。
本発明者らは、ホウ素の不安定化の要因となる元素としてBaおよびSrに着眼し、これらの元素がホウ素と共存しない構造としてガラス相比率を増大させる検討を更に実施し、SiO添加と高処理からの冷却速度の組み合わせによる最適化検討を行った。図2に後述するIndex G(ガラス相の比率の指標)とB溶出量(ホウ素溶出量)の関係を示す。基本的にはIndex Gが5を超えると、Bの溶出量は1mg/L未満に抑制されていることが分る。さらに、原料スラグに対して10質量%以上のSiO添加によって、100℃程度の冷却速度でも、ホウ素溶出抑制に有効なガラス相比率の増大が得られることが判った。この結果を図3に例示した。極端な冷却速度の増大はスラグの粉化により、路盤材としての利用が難しくなる懸念もあり、冷却速度の上限としては数百℃/分程度が望ましい。
以上の点から、本発明者らは、ガラス相の比率を上げるとともに、ガラス相中のBaの含有量及びガラス相中のSr含有量を抑えることで、耐ホウ素溶出性が向上することを知見した。
本発明は以上の知見に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
(1) ガラス相と、
結晶相として、少なくともCaMg(SiOと、
B:0.15質量%以上と、
Ba:1.0質量%以上2.5質量%未満、及び/又は、Sr:0.40質量%以上1.7質量%未満と、を含有するスラグであって、
Cu−Kα線を線源としたXRD測定によって得られる下記Index Gが7.0以上であり、
ガラス相中、Baの含有量が8.0質量%未満、且つ、Srの含有量が7.0質量%未満である、耐ホウ素溶出性に優れるスラグ。
Index G=I[glass]/(I[27°]+I[32°]+I[47°])×100
ここで、I[glass]は2θが25〜40°の範囲に観測されるハローのピークトップにおける高さを表し、I[27°]、I[32°]及びI[47°]はそれぞれ2θが27°付近、32°付近及び47°付近に観測されるCaMg(SiOに由来する結晶ピークのピークトップにおける高さを表す。
(2) SiO:22.0〜50.0質量%
CaO:25.0〜45.0質量%
Al:2.0〜20.0質量%
MgO:2.0〜18.0質量%
Total Mn:1.0〜18.0質量%
を含有する、上記(1)に記載のスラグ。
(3) 上記(1)又は(2)に記載のスラグを製造する、スラグの製造方法であって、
Mn鉱石からFeMnを製造する際に副生する原料スラグを準備する、原料スラグ準備工程と、
上記原料スラグを上記原料スラグの溶融温度以上に加熱して溶融させることで、溶融原料スラグを得る、溶融工程と、
上記溶融原料スラグを平均冷却速度600℃/分以上で室温まで冷却することで、耐ホウ素溶出性に優れるスラグを得る、冷却工程とを備える、スラグの製造方法。
(4) 上記(1)又は(2)に記載のスラグを製造する、スラグの製造方法であって、
Mn鉱石からFeMnを製造する際に副生する原料スラグを準備する、原料スラグ準備工程と、
上記原料スラグ100質量部に対して、SiOを10質量部以上添加することで、原料スラグとSiOとの混合物を得る、SiO添加工程と、
上記混合物を上記原料スラグの溶融温度以上に加熱して溶融させることで、溶融混合物を得る、溶融工程と、
上記溶融混合物を平均冷却速度100℃/分以上で室温まで冷却することで、耐ホウ素溶出性に優れるスラグを得る、冷却工程とを備える、スラグの製造方法。
(5) 上記(1)又は(2)に記載のスラグを用いた、土木用資材。
以下に示すように、本発明によれば、耐ホウ素溶出性に優れるスラグ、上記スラグの製造方法、及び、上記スラグを用いた土木用資材を提供することができる。
特に本発明は、製鉄業の副生成物として利用拡大が望まれるスラグの中で、特に原料としてMn鉱石を使用してFeMnを精製するにあたり、生成する製錬炉スラグに関するものである。Mn鉱石を原料とする以上、スラグ中のMnが高いことは回避しがたい。しかし、Mn鉱石の産地に依存してBaやSrが共存することが多く、このことがスラグ中のBaやSrが高い原因となり、結果的にスラグ中に含まれるホウ素の不安定化を招き、路盤材として利用する際のホウ素溶出上限値を満足できないと考えられる。本発明は、生成した一次スラグ中に残存するBaやSrの存在状態の調査に基づき、これらをガラス相中に存在するホウ素と共存させない構造およびそのための適切な予備処理方法を提供し、製錬炉副生成物の工業的利用を可能とする。
なお、本明細書において、耐ホウ素溶出性に優れるとは、環告46号の溶出試験において、ホウ素溶出が1mg/L以下であることを言う。
スラグ中でホウ素とBaとOとが共存していることを示すEPMA元素マッピング像 Index GとB溶出量との関係 SiO添加量に対するIndex G及びB溶出量の関係
以下、本発明のスラグ、上記スラグの製造方法、及び、上記スラグを用いた土木用資材について説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
[スラグ]
本発明のスラグは、
ガラス相と、
結晶相として、少なくともCaMg(SiOと、
B:0.15質量%以上と、
Ba:1.0質量%以上2.5質量%未満、及び/又は、Sr:0.40質量%以上1.7質量%未満と、を含有するスラグであって、
Cu−Kα線を線源としたXRD測定によって得られる後述するIndex Gが7.0以上であり、
ガラス相中、Baの含有量が8.0質量%未満、且つ、Srの含有量が7.0質量%未満である、耐ホウ素溶出性に優れるスラグ、である。
本発明のスラグとしては、例えば、鉄鋼製造プロセス等をはじめとする種々のプロセスの溶解工程や精錬工程で生じたスラグ、または、その処理品が挙げられる。スラグの種類に制限はなく、例えば、高炉スラグ、製鋼スラグ(例えば、転炉脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱珪スラグ、脱硫スラグ、電気炉スラグ、鋳造スラグなど)、溶融還元スラグ(例えば、鉄鉱石、Cr鉱石、Ni鉱石、Mn鉱石などの溶融還元により生じるスラグ)、その他の製錬炉や精錬炉から発生するスラグ、ごみ焼却灰溶融スラグ、廃棄物ガス化溶融スラグなど、種々のスラグを対象とすることができる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、製錬炉スラグ又はその処理品であることが好ましく、製錬炉スラグの処理品であることがより好ましい。
以下、本発明のスラグの組成、本発明のスラグにおけるIndex G、並びに、本発明のスラグにおけるガラス相中のBa及びSrについて説明する。
〔組成〕
本発明のスラグは、
B:0.15質量%以上と、
Ba:1.0質量%以上2.5質量%未満、及び/又は、Sr:0.40質量%以上1.7質量%未満と、を含有する。
Bの含有量の上限は特に制限されないが、通常、0.5質量%以下である。
本発明のスラグは、高炉スラグや製鋼スラグで一般的なケイ酸塩を主体とした組成で構成され、上記B並びにBa及び/又はSrに加え、さらに、
SiO:22.0〜50.0質量%
CaO:25.0〜45.0質量%
Al:2.0〜20.0質量%
MgO:2.0〜18.0質量%
Total Mn:1.0〜18.0質量%
を含有するのが好ましい。
ここで、SiO、CaO、Al及びMgOの量は金属元素の定量値からそれぞれの化学量論組成を加味した量を示している。また、Total MnはMnのトータルの含有量を表す。
本発明のスラグは上記成分以外の成分を含有していてもよい。そのような成分としては、例えば、P、Fe、SC等が挙げられる。
組成の分析には、蛍光X線分析法を用いる。すなわち、試料を粉砕してペレット状とし、JISK0119等に基づいて各種元素の定量値を求める。SiO、CaO、Al及びMgOに関しては酸化物の化学量論組成を加味して量に換算する。
一方、B、Ba及びSrに関しては、レーザーICP(Induced Coupled Plasma)発光分光分析法を用いて定量する。
〔Index G〕
本発明のスラグにおいて、Cu−Kα線を線源としたXRD測定によって得られる下記Index Gは7.0以上である。Index Gはガラス相の比率の指標であり、値が大きい程ガラス相の比率が高いことを表す。
Index G=I[glass]/(I[27°]+I[32°]+I[47°])×100
ここで、I[glass]は2θが25〜40°の範囲に観測されるハローのピークトップにおける高さを表し、I[27°]、I[32°]及びI[47°]はそれぞれ2θが27°付近、32°付近及び47°付近に観測されるCaMg(SiOに由来する結晶ピークのピークトップにおける高さを表す。
上記2θが25〜40°の範囲に観測されるハローとは、ピークトップの2θが25〜40°の範囲に観測されるハローであり、ガラス相に由来するハローである。
上記Index Gは、本発明の効果がより優れる理由から、8.0以上であることが好ましく、9.0以上であることがより好ましく、10.0以上であることがさらに好ましく、11.0以上であることが特に好ましく、12.0以上であることが最も好ましい。
上記Index Gの上限は特に制限されないが、通常、30.0以下である。
〔ガラス相中のBa及びSr〕
本発明のスラグにおいて、ガラス相中、Baの含有量は8.0質量%未満、且つ、Srの含有量が7.0質量%未満である。
<ガラス相中のBa>
上述のとおり、本発明のスラグにおいて、ガラス相中のBaの含有量は8.0質量%未満である。
上記ガラス相中のBaの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、5.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましく、2.0質量%以下であることが特に好ましい。
上記ガラス相中のBaの含有量の下限は特に制限されず0質量%である。
<ガラス相中のSr>
上述のとおり、本発明のスラグにおいて、ガラス相中のSrの含有量は7.0質量%未満である。
上記ガラス相中のSrの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、5.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましく、2.0質量%以下であることが特に好ましい。
ガラス相中のSrの含有量の下限は特に制限されず0質量%である。
<分析方法>
ガラス相中のBaの含有量及びSrの含有量は電子顕微鏡により測定することができる。具体的には、EPMA(Electron Probe Micro Analysis)、TEM(Transmission Electron Microscope)、又は、SEM(Scanning Electron Microscope)に付随する特性X線分析により測定することができる。
〔用途〕
本発明のスラグは、耐ホウ素溶出性に優れるため、土木用資材(特に、路盤材)に有用である。
[スラグの製造方法]
上述した本発明のスラグを製造する方法は特に制限されないが、得られるスラグがより優れた耐ホウ素溶出性を示す理由から、下記好適な態様1及び下記好適な態様2が好ましく、下記好適な態様2がより好ましい。以下、「得られるスラグがより優れた耐ホウ素溶出性を示す」ことを「本発明の効果がより優れる」とも言う。
〔好適な態様1〕
上記好適な態様1は、下記(1)〜(3)の工程を備える。なお、上記好適な態様1は下記(1)〜(3)の工程以外の工程を備えてもよい。
(1)原料スラグ準備工程
Mn鉱石からFeMnを製造する際に副生する原料スラグを準備する工程
(2)溶融工程
上記原料スラグを上記原料スラグの溶融温度以上に加熱して溶融させることで、溶融原料スラグを得る工程
(3)冷却工程
上記溶融原料スラグを平均冷却速度600℃/分以上で室温まで冷却することで、耐ホウ素溶出性に優れるスラグを得る工程
以下、各工程について説明する。
<原料スラグ準備工程>
原料スラグ準備工程は、Mn鉱石からFeMnを製造する際に副生する原料スラグを準備する工程である。
上記原料スラグの組成は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、
B:0.15質量%以上(通常、0.5質量%以下)
Ba:1.0質量%以上2.5質量%未満、及び/又は、Sr:0.40質量%以上1.7質量%未満
SiO:22.0〜40.0質量%
CaO:25.0〜45.0質量%
Al:2.0〜20.0質量%
MgO:2.0〜18.0質量%
Total Mn:1.0〜18.0質量%
を含有することが好ましい。
<溶融工程>
溶融工程は、上記原料スラグを上記原料スラグの溶融温度以上に加熱して溶融させることで、溶融原料スラグを得る工程である。原料スラグの溶融温度は、一部サンプリングして示差熱分析等を行って求めることができる。あるいは、原料スラグの成分分析を行い、既存の状態図や熱力学平衡計算ソフトウェアを用いて計算してもよい。
加熱の温度(加熱温度)は上記原料スラグの溶融温度以上であれば特に制限されない。原料スラグの溶融温度より20℃以上高い温度まで加熱することが好ましい。加熱の温度の上限は特に制限されないが、1600℃以下であることが好ましい。
上記原料スラグの溶融温度以上で保持する時間(加熱時間)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10秒〜30分であることが好ましく、30秒〜5分であることがより好ましい。
なお、溶融工程の前に、原料スラグを粉砕機(例えば、ボールミル、アトライター等)で粉砕(例えば、粒子径10mm以下に粉砕)してもよい。
また、上記原料スラグとして溶融温度以上に加熱して溶融された副生直後の原料スラグ(溶融原料スラグ)を用いる場合は、再度溶融温度以上に加熱する必要はなく、副生直後の原料スラグ(溶融原料スラグ)に対して、次の冷却工程の冷却を施せばよい。
<冷却工程>
冷却工程は、上記溶融原料スラグを平均冷却速度600℃/分以上で室温(例えば、25℃)まで冷却することで、耐ホウ素溶出性に優れるスラグを得る工程である。
なお、上述のとおり、「耐ホウ素溶出性に優れる」とは、環告46号の溶出試験において、ホウ素溶出が1mg/L以下であることを言う。
上記平均冷却速度は、本発明の効果がより優れる理由から、1,000℃/分以上であることが好ましく、5,000℃/分以上であることがより好ましく、10,000℃/分であることがさらに好ましい。
上記平均冷却速度の上限は特に制限されないが、通常、10,000℃以下である。
〔好適な態様2〕
上記好適な態様2は、下記(1)〜(4)の工程を備える。なお、上記好適な態様2は下記(1)〜(4)の工程以外の工程を備えてもよい。
(1)原料スラグ準備工程
Mn鉱石からFeMnを製造する際に副生する原料スラグを準備する工程
(2)SiO添加工程
上記原料スラグ100質量部に対して、SiOを10質量部以上添加することで、原料スラグとSiOとの混合物を得る工程
(3)溶融工程
上記混合物を上記原料スラグの溶融温度以上に加熱して溶融させることで、溶融混合物を得る工程
(4)冷却工程
上記混合物を平均冷却速度600℃/分以上で室温まで冷却することで、耐ホウ素溶出性に優れるスラグを得る工程
<原料スラグ準備工程>
原料スラグ準備工程は、Mn鉱石からFeMnを製造する際に副生する原料スラグを準備する工程である。具体例及び好適な態様は上述した好適な態様1と同じである。
<SiO添加工程>
SiO添加工程は、上記原料スラグ100質量部に対して、SiOを10質量部以上添加することで、原料スラグとSiOとの混合物を得る工程である。
上記SiOの添加量(SiO添加量)は、本発明の効果がより優れる理由から、原料スラグ100質量部に対して、15質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。以下、原料スラグ100質量部に対するSiOの添加量(質量部)を単にSiOの添加量(SiO添加量)とも言う。
上記SiO添加量の上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、30質量部以下であることが好ましい。
SiOを添加することで冷却によりガラス相が形成され易くなり、平均冷却速度が小さくてもガラス相の比率が高くなるものと推測される。
<溶融工程>
溶融工程は、上記混合物を上記原料スラグの溶融温度以上に加熱して溶融させることで、溶融混合物を得る工程である。具体例及び好適な態様は上述した好適な態様1と同じである。
<冷却工程>
冷却工程は、上記溶融混合物を平均冷却速度100℃/分以上で室温(通常、25℃)まで冷却することで、耐ホウ素溶出性に優れるスラグを得る工程である。なお、上述のとおり、「耐ホウ素溶出性に優れる」とは、環告46号の溶出試験において、ホウ素溶出が1mg/L以下であることを言う。
上記平均冷却速度は、本発明の効果がより優れる理由から、600℃/分以上であることが好ましく、1000℃/分以上であることがより好ましく、10000℃/分であることがさらに好ましい。
上記平均冷却速度の上限は特に制限されないが、通常、10000℃以下である。
[土木用資材]
本発明の土木用資材は、上述した本発明のスラグを用いた土木用資材(特に、路盤材)である。すなわち、本発明の路盤材は、上述した本発明のスラグを用いて製造した土木用資材(特に、路盤材)である。
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
以下のとおり、実施例1(原料スラグの溶融温度:1420℃)のスラグを製造した。なお、実施例1のスラグを製造した方法は上述した好適な態様2に該当する。
<原料スラグ準備工程>
Mn鉱石からFeMnを製造する際に副生する原料スラグを準備した。原料スラグの組成は下記表1に記載のとおりであった。
ここで表1中、数値は質量%を表し、f−CaOは遊離CaOの含有量を表し、T.MnはMnのトータルの含有量を表し、T.FeはFeのトータルの含有量を表す。なお、上記原料スラグはSrを含有しない。
<SiO添加工程>
上記原料スラグ100質量部に対して、SiOを20質量部添加することで、原料スラグとSiOとの混合物を得た。
<溶融工程>
次いで、上記混合物を1500℃で60秒間保持して溶融させることで、溶融混合物を得た。
<冷却工程>
その後、上記溶融混合物を平均冷却速度100℃/分で室温まで冷却した。このようにしてスラグを製造した。
〔実施例2〕
以下のとおり、実施例2のスラグを製造した。なお、実施例2のスラグを製造した方法は上述した好適な態様1に該当する。
<原料スラグ準備工程>
上述した実施例1と同じ原料スラグを準備した。
<溶融工程>
次いで、上記原料スラグを1500℃で60秒間保持して溶融させることで、溶融原料スラグを得た。
<冷却工程>
その後、上記溶融原料スラグを平均冷却速度650℃/分で室温まで冷却した。このようにしてスラグを製造した。
〔実施例3及び実施例5〕
SiO添加工程におけるSiO添加量、及び、冷却工程における平均冷却速度を表2に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様の手順に従ってスラグを製造した。
〔実施例4及び比較例1〜3〕
冷却工程における平均冷却速度を表2に記載のとおり変更した以外は、実施例2と同様の手順に従ってスラグを製造した。
〔スラグの組成〕
得られたスラグ(処理後のスラグ)の組成(質量%)を表2に示す。なお、いずれのスラグも結晶相としてCaMg(SiOを含有する。また、いずれのスラグもSrを含有しない。
〔Index G〕
得られたスラグを乳鉢で粒子径1mm以下まで粉砕してスラグ粉末を得た。得られたスラグ粉末について、Cu−Kα線を線源として、XRD測定を行った。そして、2θが25〜40°の範囲に観測されるハローのピークトップにおける高さ、並びに、2θが27°付近、32°付近及び47°付近に観測されるCaMg(SiOに由来する結晶ピークのピークトップにおける高さを求め、上述したIndex Gを算出した。結果を表2に示す。
〔ガラス相中のBa〕
得られたスラグについて、ガラス相中のBaの含有量を分析した。具体的には、EPMAでBa及びBの濃化が認められたガラス相部分から試料を作製し、TEM/EDS(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)分析により実施した。なお、上述のとおり、いずれのスラグもSrを含有しないため、いずれのスラグにおいてもガラス相中のSrの含有量は0質量%である。
結果を表2に示す。
〔B溶出量〕
得られたスラグについて環告46号で規定されるホウ素の溶出試験を行い、B溶出量を求めた。結果を表2に示す。実用上、B溶出量が1.0mg/L以下であることが好ましい。
表2から分かるように、Index Gが7.0以上であり、ガラス相中、Baの含有量が8.0質量%未満、且つ、Srの含有量が7.0質量%未満である実施例1〜5のスラグは、優れた耐ホウ素溶出性を示した。なかでも、Index Gが9.0以上である実施例3〜5は、より優れた耐ホウ素溶出性を示した。そのなかでも、Index Gが10.0以上である実施例4〜5は、さらに優れた耐ホウ素溶出性を示した。そのなかでも、Index Gが14.0以上である実施例5は、特に優れた耐ホウ素溶出性を示した。
一方、Index Gが7.0未満であり、ガラス相中のBaの含有量が8.0質量%以上である比較例1〜3のスラグは、耐ホウ素溶出性が不十分であった。
本発明の技術は、特に、Mn鉱石を原料としてFeMn鋼を精製する工程において発生する、ホウ素を高濃度で含む溶鉱炉スラグを路盤材として利用するに当たり、環告46号試験においてホウ素の溶出量が1mg/L以下であるような安定したスラグ構造およびそのための適正な予備処理法を提供するものである。本技術の適用によって、種々のMn鉱石に含まれる不純物成分の大小にかかわらず、ホウ素をスラグ中に安定的に固定できるため、FeMn鋼製造における副生物をインフラ整備に展開可能である。

Claims (5)

  1. ガラス相と、
    結晶相として、少なくともCaMg(SiOと、
    B:0.15質量%以上と、
    Ba:1.0質量%以上2.5質量%未満、及び/又は、Sr:0.40質量%以上1.7質量%未満と、を含有するスラグであって、
    Cu−Kα線を線源としたXRD測定によって得られる下記Index Gが7.0以上であり、
    ガラス相中、Baの含有量が8.0質量%未満、且つ、Srの含有量が7.0質量%未満である、耐ホウ素溶出性に優れるスラグ。
    Index G=I[glass]/(I[27°]+I[32°]+I[47°])×100
    ここで、I[glass]は2θが25〜40°の範囲に観測されるハローのピークトップにおける高さを表し、I[27°]、I[32°]及びI[47°]はそれぞれ2θが27°付近、32°付近及び47°付近に観測されるCaMg(SiOに由来する結晶ピークのピークトップにおける高さを表す。
  2. SiO:22.0〜50.0質量%
    CaO:25.0〜45.0質量%
    Al:2.0〜20.0質量%
    MgO:2.0〜18.0質量%
    Total Mn:1.0〜18.0質量%
    を含有する、請求項1に記載のスラグ。
  3. 請求項1又は2に記載のスラグを製造する、スラグの製造方法であって、
    Mn鉱石からFeMnを製造する際に副生する原料スラグを準備する、原料スラグ準備工程と、
    前記原料スラグを前記原料スラグの溶融温度以上に加熱して溶融させることで、溶融原料スラグを得る、溶融工程と、
    前記溶融原料スラグを平均冷却速度600℃/分以上で室温まで冷却することで、耐ホウ素溶出性に優れるスラグを得る、冷却工程とを備える、スラグの製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載のスラグを製造する、スラグの製造方法であって、
    Mn鉱石からFeMnを製造する際に副生する原料スラグを準備する、原料スラグ準備工程と、
    前記原料スラグ100質量部に対して、SiOを10質量部以上添加することで、原料スラグとSiOとの混合物を得る、SiO添加工程と、
    前記混合物を前記原料スラグの溶融温度以上に加熱して溶融させることで、溶融混合物を得る、溶融工程と、
    前記溶融混合物を平均冷却速度100℃/分以上で室温まで冷却することで、耐ホウ素溶出性に優れるスラグを得る、冷却工程とを備える、スラグの製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載のスラグを用いた、土木用資材。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2022061112A (ja) * 2020-10-06 2022-04-18 Jfeスチール株式会社 ホウ素含有スラグの改質方法及びこれを利用した土木建築用資材の製造方法、並びに改質スラグ
JP2022096598A (ja) * 2020-12-17 2022-06-29 Jfeスチール株式会社 ホウ素含有物質の改質方法及び土木建築用資材の製造方法

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