多くの患者は、これらの障害に対して従来の処置には反応しない。例えば、STAR−D(Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression)は、大気分障害と診断された2千万人のアメリカ人の三分の一のみが完全な緩和を実現し、様々な抗うつ病薬の試験による処置での試みの後でさえ、多くの患者が薬物学的介入に対して難治性のままであることを予測する。The Numbers Count: Mental Disorders in America, National Institute of Mental Health (2012)を参照。同様に、合衆国の三分の一は、慢性の、緩和しない疼痛に苦しんでいる。人口の少なくとも40%は、身体上及び精神上の後遺症が組み合わせられたときに慢性疼痛を経験する。Institute of Medicine of The National Academies of Science, Report Brief, June 2011を参照。
うつ病、及び可能性のある他の神経精神病学的疾患を処置するための新規な脳刺激技術の用途は、新たな、急速に発展している分野である。経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation(TMS))及び経頭蓋低電圧刺激(Transcranial Low Voltage Electrical Stimulation(TLVES))(経頭蓋電気刺激Transcranial Electrical Stimulation(tES)としても知られる)のようなこれらの技術は、それらの使用の相対的な容易さ、安全性及び神経生物学的効果のため、有望なアプローチとして新たに出現している。
TLVESは、頭蓋に配置された電極を通じて脳組織を通過する弱電流(1−4mAmps)の使用を含む。激痛、偏頭痛に対する予防のような症状用、うつ病用、及び幻覚用の効果的な電極配置が知られている。tESは、tDCS(direct current stimulation)、tACS(alternating current stimulation)、又は意図的に無秩序な電流であるtRNS(random noise stimulation)の形態で伝達されることができる。tESにより、多くのパラメータは、(振動波の数学的ベースの)周波数及び周波数の範囲、波形、及びオフセットを含んで交互に行われうる。刺激は、両方のバックグラウンドの電気的状態に影響を与えうる、又は時折振動状態に影響を与えうる、又はニューロン発射を交互に行いうる。これは、生理学的研究で証明されているように、神経細胞の興奮性に持続的な変化を引き起こす。これは、おそらく、臨床ベースの研究でみられるように、繰り返される刺激が有意な治療効果をもたらしうることによるメカニズムであろう。
うつ病もまた、ニューロン系の相対的に痛みのない活性化を実証するために、1985年に初めて導入された経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation(TMS))で処置されている。近年、TMSは、皮質ニューロン系に沿って伝搬される電磁気刺激の完全性及び影響を調査するために適用されている。ごく最近では、商業的なTMSシステムは、大うつ病性障害(Major Depressive Disorder(MDD))を処置するために開発されている。例えば、NEUROSTAR TMS THERAPY(登録商標) System(Neuronetics, Inc.)は、精神科医の監督下で行われる37分間の外来患者のTMS処置である。これは、麻酔又は鎮静作用を必要とせず、患者は、処置時に起きたままであり、注意を払い続ける。処置は、典型的には、約4−6週間、毎日施される。
NeuroStar TMS治療時に、磁場パルスが生成され、左、前頭前皮質に向けられ、これは、うつ病の患者に異常に機能するように実証されている脳の領域である。これらのTMS磁場は、磁気共鳴画像化(magnetic resonance imaging(MRI))装置で用いられるものと同様の型及び強度である。磁場パルスは、髪、肌及び頭蓋を通じ、脳へ制限なく伝わる。
脳の内部では、磁場パルスは、影響を与えられるニューラルネットワーク内に電気的な変化を誘起すると考えられる。生成される電位の量は非常に小さく、患者には感じられないが、神経組織の活動を変化させることができ、セロトニン、ノルエピネフリン及びドーパミンのような神経伝達化学物質の解放を導くと考えられる。また、局所脳血流(regional Cerebral Blood Flow)(rCBF)は、TMSにより直接的に変化されうる。
TMSの大きな欠点の1つは、時間、お金及び煩わしさについての大きな人間への負担と同等である数週間の厳密にスケジューリングされた処置が必要なことであり、しばしば、患者が従わないことがある。
TLVES及びTMSのような技術についてはさておき、神経疾患を処置するために現在利用可能な多くの医薬品が存在する。これらは、抗けいれん薬、抗てんかん薬、バルビツレート、バルビツール酸誘導体、麻酔薬、耳鳴り処置薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、抗うつ病薬、神経弛緩薬、抗高血圧薬、抗精神病薬、カルシウムチャネル遮断薬、ACE阻害薬及びベータ遮断薬、気分安定薬及び興奮剤、及び幻覚薬を含むが、これらに限定されない。しかし、このような薬物の多くは、それらの有効性及びそれらの副作用によって制限されている。例えば、これらの薬物の多くは、もうろう状態、うつ病、不眠症、体重変化、性機能障害、認知機能障害、衰弱、疲労、幻覚、及び臨床でのそれらの使用を厳しく制限する他の副作用を生じると知られている。
近年、精神神経系疾患を処置するためのNMDA受容体アンタゴニストの使用に関心が集まっている。NDMA抑制剤は、NMDA型グルタミン酸受容体(NMDAR)の作用に拮抗して又は阻害して機能する精神薬理学的な薬のクラスである。それらは、動物及びヒトの麻酔として共通に用いられる。それらが引き起こす麻酔の状態は、解離麻酔と呼ばれる。いくつかの合成オピオイドもまた、メペリジン、デキストロプロポキシフェン、トラマドール及びケトベミドンのようなNMDARアンタゴニストとして機能する。ケタミン、デキストロメトルファン、フェンサイクリジン及び一酸化窒素を含むが、これらの限定されない一部のNMDA受容体アンタゴニストは、それらの解離性、幻覚誘発性、及び/又は多幸化特性について知られている。
ある特定のNMDA抑制剤であるケタミンは、抗うつ病薬に反応しない双極性疾患を有する患者のうつ病の処置に有効であることが示されている。Preskorn, Biol. Psychiatry (2012) 72:522−23を参照。大うつ病性障害及び双極性うつ病の患者では、ケタミンは、即効性抗うつ効果を生じることができ、典型的な抗うつ病薬が機能することにしばしば必要となる数週間に対して、2時間以内に効く。単体で使用されるとき、ケタミンは、自殺念慮の軽減に4から7日を提供すると考えられる。しかし、ケタミンは、うつ病の自殺念慮の軽減を持続的に提供するものではないと考えられる。
例示的なシステム及び方法が本明細書で説明される。「例示的」の語は、「例、実例又は例証として機能する」ことを意味するものとして本明細書で使用されることを理解するべきである。「例示的」又は「例」として本明細書で説明される実施形態又は特徴は、他の実施形態又は特徴に好ましい又は有利であると解釈される必要はない。本明細書で説明される例示的な実施形態は、限定的であることを意味するものではない。開示されるシステム及び方法の特定の態様は、その全てが本明細書で熟慮される多様多種の異なる構成にアレンジされる又は組み合わせられることが明示的に理解されるであろう。
各種態様では、本開示は、患者の視床皮質律動異常疾患を処置する方法に関する。本方法は、例えば、TMS又は経頭蓋低電圧電気刺激(TLVES)のような経頭蓋電気又は磁気刺激と組み合わせて、治療上効果的な量の解離性麻酔薬を患者に投与することを含む。
視床皮質律動異常と関連する神経疾患の非制限的な例は、うつ病、慢性うつ病、双極性うつ病、神経性の疼痛又は中枢性疼痛、反射性交感神経性ジストロフィー(reflex sympathetic dystrophy(RSD))としても知られる複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome(CRPS))、強迫性障害、パニック障害、固縮、筋緊張異常、耳鳴り、振戦、てんかん、小発作てんかん、欠神てんかん、自閉症、パーキンソン病、強迫性障害(OCD)、精神分裂病、統合失調感情障害、偏頭痛、下肢静止不能症候群等を含む。また、ヘロイン、アヘン剤、コカイン、覚せい剤、アルコール及び精神安定剤のような各種薬物乱用の使用者は、視床皮質律動異常を有すると知られている。
TMSは、制御された手法で、変動する磁界を形成及び印加することを含む。磁界の拡大及び縮小により生成される流束は、TMS頭部コイルにより与えられる患者の組織の電気的な変化を形成する。一部の結果は、ニューロンを脱分極し、活動電位を生成すると考えられている。別のあり得る結果は、磁気刺激により与えられる細胞の電気的状態の改変であると考えられている。TLVESを超えるTMSの1つのキーとなる利点は、TMSが、特に8の字形状コイルを用いたときに、より空間的に集中する方法で脳に伝達しうることである。本明細書で説明されるTMS処置における1つのパラメータは、脳組織の刺激をもたらすために使用される電磁気周波数である。例えば、1Hz以下の刺激周波数は、本明細書で説明されるTMS処置と共に使用されてもよい。1Hz以下の刺激周波数は、シングル−パルスTMSとも呼ばれているが、この用語は、一般的には、ランダム間隔で数秒ごとに伝達されるTMSを説明するために用いられる。高い周波数で伝達されるTMSが、本明細書で説明されるTMS処置と共に使用されてもよいが、高い周波数で伝達されるこのようなTMS処置は、repetitive TMS(rTMS)と説明されることもある。TMSの抑制及び興奮性効果は、長期増強及び長期抑制と同種であると仮定されている。別のアプローチは、繰り返し刺激のバーストを伝達し、シータバースト刺激(theta−burst stimulation(TBS))も伝達し、初期刺激は、後の刺激についてシステムをプライミングする。
低電圧(通常、約20ボルト未満)で与えられる経頭蓋電気刺激は、いくつかの形態を取り、固定電流DC刺激(fixed current DC stimulation(tDCS))、交流電流刺激(alternating current stimulation(tACS))又はランダム(ノイズ)電流生成(random (noise) current generation(tRNS))を含む。経頭蓋低電圧電気刺激(transcranial low voltage electrical stimulation(TLVES))と関連する供与量は、頭蓋骨上の電極の大きさ及び位置、並びに電流の期間、周波数及び強度(mAmps)について定義されうる。約4mAmps未満の電流は、これらの技術で一般的に使用される。一部の実施形態では、商業的に入手可能なコンピュータで制御されたDC刺激器が使用されてもよい。
本明細書で説明される経頭蓋電気及び磁気刺激は、個人の相対的に広い範囲にわたって一定でありうるが、所定の個人にとっての電気又は電磁気刺激への個人の反応に違いがあることを理解すべきである。刺激の強度が、所定の個人に対して較正されている1つの方法は、運動反応を喚起する運動皮質(しばしば、MIとも呼ばれる)に印加される刺激の最小強度を得るために人を試験することである。この運動閾値は、一般的に、刺激を実施するために必要な最小強度として報告されており、デバイスの利用可能な出力のパーセンテージについて定義される、又は、それに代えて、磁場測定の強度、すなわち、テスラ単位、について定義されてもよい。いずれにしても、刺激が特定の患者の処置にもたらす度合いは、刺激周波数、(以下に説明されるような前処置を含む)処置の繰り返し頻度、及び特定の患者の個人的な反応特性によって影響される。応答のこれら及び同様の個人変動性は、個人生理学及び化学に帰すると思われ、少なくとも一部が遺伝的に決定されている。特定のTMSパラメータは、インタートレインインターバル(刺激のトレイン間の時間)、セッション当たりのトレインの数、及びセッションの期間を含む。最も共通の不快感は、頭痛、頭皮の痛み、吐き気、及び一過性の難聴であり、これらの要因も、患者が処置に応答する態様に影響を与える。よって、本明細書で説明される方法を任意の患者に実行することは、一定量の経験及び判断を訓練し、患者の個々の感度に調節するために実務家を必要とすることを理解すべきである。例えば、臨床医が、先立って、患者がTMSの良好な候補ではないと提案するような、ある患者に医学的又は心理学的な弱さが現れていると認識したとき、又は患者がTMS治療を避けることを望んでいるとき、tES処置は、それに替わる効果的なアプローチを提供する。tES処置は、TMS処置の良好な候補でない患者にとって重要な臨床的利益を提供する。また、tESは、TMS処置の薬物副作用に敏感な患者にとって有効な切り替え治療として重要でありうる。
NMDA受容体アンタゴニストは、NMDA型グルタミン酸受容体(NMDAR)の作用に拮抗して又は阻害して機能する解離性麻酔薬のクラスである。それらは、動物用の麻酔薬として用いられており、ヒト用にはあまり一般的でない。それらが誘導する麻酔薬の状態は、解離性麻酔と呼ばれる。NMDA受容体は、脳のニューロンと脊柱のニューロンとの間で電気信号の移動を可能にするイオンチャネル型受容体である。電気信号を通過させるために、NMDA受容体は、開いていなければならない。開いたままにするために、グルタメート及びグリシンが、NMDA受容体に結合しなければならない。NMDA受容体に結合されたグリシン及びグルタメートを有し、かつ開いたイオンチャネルを有するNMDA受容体は、「活性化(activated)」と呼ばれる。
ケタミン((RS)−2−(2−クロロフェニル)−2−メチルアミノシクロヘキサノン)は、ヒト及び獣医学で使用される薬物である。ケタミンは、通常、鎮静薬と組み合わせて、全身麻酔の誘導及び持続に主に用いられる。他の使用は、集中治療における鎮静作用、無痛覚(特に救急医療)、及び気管支けいれんの処置を含む。ケタミンは、無痛覚、麻酔、幻覚、血圧上昇及び気管支拡張を含む、ヒトに広範囲の効果を有し、脳及び心臓組織の灌流を維持する。
ケタミンは、抗うつ剤に反応しない双極性疾患の患者のうつ病処置に有効であることが示されている。特に、自殺念慮を軽減することが知られている。大うつ病性障害を有する人間では、典型的な抗うつ剤が、機能するまでに数週間掛かるのに対して、速効抗うつ効果を生じ、2時間以内に効く。
ケタミンは、また、反射性交感神経性ジストロフィー(reflex sympathetic dystrophy(RSD))としても知られる複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome(CRPS))の実験的及び議論の余地のある処置としても使用されている。CRPS/RSDは、知覚、自律神経、運動及びジストロフィーサイン及び症候によって特徴付けられる重篤な慢性疼痛症状である。CRPSの疼痛は、連続的であり、しばしば、時間とともに悪化し、通常、刺激するイベントの苦しさ及び時間に対して不釣合いである。ケタミンを注入した強迫性障害(OCD)患者では、上記の疾患よりも、一層恩恵が制限される。(Pittenger, et ah, Biol Psychiatry (2012) 72:964−970.)
他のNMDA受容体アンタゴニストは、アダマンタン誘導体、アマンタジン、メマンチン、リマンタジン、アリルシクロヘキシルアミン、ジエチシクリジン(Dieticyclidine)、エスケタミン、エチシクリジン、ガシクリジン、メタフィット、メトキセタミン、ネラメキサン、フェンシクリジン、フェニルへクシルシクロフィロリジン(Phenylhexylcyclopyrrolidine)、ロリシクリジン、テノシクリジン、チレタミン、メトキシジン(Methoxydine(4−MeO−PCP))、モルフィナン、デキストロメトルファン、デキストロルファン、メトルファン、モルファノル(Morphanol)、2−MDP、8A−PDHQ、アプチガネル、デキスオキサドロル(Dexoxadrol)、ジエチルエーテル、ジゾシルピン、エトオキサドロル(Etoxadrol)、イボガイン(Tabemanthe ibogaから見つけられた)、ミダフォテル(Midafotel)、NEFA、一酸化二窒素、ノルイボカイン、ペルジンホテル、レマセミド(Remacemide)、セルホテル(Selfotel)及びキセノンを含む。
一態様では、本開示は、視床皮質律動異常に関連する症状を処置する方法に関する。本方法は、解離性麻酔薬と組み合わせて、例えば、TMS又はTLVESのような経頭蓋電気又は電磁気刺激により患者を処置することを含む。一態様では、解離性麻酔薬は、NMDAR抑制剤であり、例えば、ケタミンである。ケタミンのような解離性麻酔薬と組み合わせて電気又は電磁気刺激を使用することにより、刺激をしない処置のために通常必要である投薬量と比べて、しばしば解離性麻酔薬の低減された投薬量で、改善された治療上の応答をもたらす。例えば、TMSと組み合わせて使用されたとき、ケタミンの投薬量は、TMS処置の過程で標準的な市販製剤で届けられる約10mgから約500mgでありうる。より具体的には、ケタミン用量は、約20mgから約400mgの範囲であり得、具体的には、約50mgから約350mgの範囲であり、より具体的には、約100mgから約350mgの範囲であり、更に具体的には、約200mgから約300mgの範囲である。
組み合わせ処置(すなわち、麻酔薬と組み合わせた刺激)は、適切な投薬レベルで、約20秒から約120秒延長しうる。特に、刺激期間は、約20秒から約100秒、約30秒から約90秒、約40秒から約100秒、又はより具体的には、約20、30、30、50、60、70、80、90、110又は120秒、延長しうる。一つの特定の実施例では、約50から350mgの間のケタミン用量は、約20−60秒延長したTMS処置の治療で注入される。また、長い注入時間は、患者に対してケタミンのより穏やかな伝達を提供することができ、一般的に、気分を良くし、副作用を少なくする。
組み合わせ処置の間、電気又は電磁気刺激は、麻酔薬の投与時、又は麻酔薬の投与前及び/又は投与後に行う。例えば、麻酔薬の投与は、約1から15分の刺激期間、より具体的には約3から10分又は更に具体的には約5分の範囲だけ先行されうる。刺激期間の先行に続いて、麻酔薬の投与が始まり、刺激は、投与の治療時に継続しうる。麻酔薬の投与に続いて、刺激は、その後、約1から15分、より具体的には約3から10分又は更に具体的には約5分の範囲で継続されうる。
TMSを用いる組み合わせ処置時に、TMSヘッドコイルは、視床皮質律動異常に関連する疾患の主要部の処置のために前帯状領域に向けられる。耳鳴りを処置するときには、連合野の刺激が適切であってもよい。脳の領域が更なる様々な別の健康状態に関係することについて将来より詳しく知られたとき、脳の領域がこのような別の健康状態の処置のための刺激の集中であるべきことについてより明確になる。
TMS処置のための適切な供与量は、患者の運動閾値の約80%から120%であってもよい。当業者によって理解されるように、患者の運動閾値は、TMSが随意運動野の関連領域に向けられるとき、患者の親指がけいれんし始めるTMSパワー出力の量を反映する。これは、実現される安全なパラメータ内で作用するための1つの簡素な方法を提供するような脳刺激に関連する。より具体的には、TMS処置のために適切な供与量は、患者の運動閾値の約90から120%、100%から120%又は105%から115%である。TMS処置のために適切な供与量の1つの例は、患者の運動閾値の110%である。一般的に、供与量の周波数は、1Hzであり、刺激は、本明細書で説明される組み合わせ処置時に継続される。
TLVES用の刺激の適切な度合い及び位置を実現するために、同様の方法が当業者には知られている。例えば、TLVESにより、電極の配置は、前後方向(例えば、額の中央と頭部の後部の中央又はOz)でありうる。通常、患者は、1,000から2,500mAmpsで10−50分、例えば、約1,000、1,200、1,300、1,500、2,000又は2,500mAmpsで約15、25、25又は45分処置されうる。刺激は、約800から約1200mAmps、例えば、約1000mAmpsのオフセットを含んでもよい。TLVESは、本明細書で説明されるような組み合わせ処置時に連続的であってもよい。また、TLVESは、解離性麻酔薬の注入開始の前、例えば、注入開始の約1−15分前、より具体的には、例えば、注入開始の約1、2、5、10又は15分前に開始されてもよい。TLVESは、注入が完了すると、有限時間継続しうる。
解離性麻酔薬は、静脈内、筋肉内、経口、鼻腔内、及び適切な場合には吸入を含む従来の伝達方法により患者に伝達されうる。麻酔薬、その半減期、伝達方法及び吸収率に応じて、組み合わせ処置時の刺激時間は、麻酔薬が、刺激時に治療上有効な分量で存在することを確実にするように調整されうる。麻酔薬が静脈内伝達されるとき、患者は、その効果を実質的に即座に経験する。麻酔薬が経口伝達される場合には、麻酔薬が治療上有効である間に刺激が生じることを確実にするために、更なる時間が刺激に追加されうる。ケタミン及び他の解離性麻酔薬の薬物動態は、本技術分野の他者により相対的によく研究されており、それらの研究から導かれる理解は、血流に入り、患者の組織への処置に利用可能となるために麻酔薬用の時間を定めるために、薬剤投与の時間、方法及び量を予測する十分な根拠を提供する。
組み合わせ処置の前に、患者は、約10から80秒のプライミング刺激処置を受けてもよい。例えば、TMSが組み合わせ処置に使用されるとき、TMSヘッドコイルは、それぞれ約10から40秒のプライミング処置時に、左及び右背外側前頭前皮質に向けられる。プライミング刺激処置のための周波数は、右前頭前皮質に対して約1Hz及び左前頭前皮質に対して約1Hzでありうる。組み合わせ処置は、プライミングTMS処置の完了直後に続くことができる、又は組み合わせ処置は、患者の許容範囲及びコンプライアンスに応じて、プライミング処置の後、1日まで続くことができる。電気又は電磁気刺激の他の形態によるプライミングもまた、患者のニーズ及び許容範囲に応じて使用されうる。
更に別の代替では、患者は、組み合わせ処置の前の数週間又は数日、電気又は電磁気刺激で前処置されてもよい。前処置される患者に対しては、プライミングは必要ない。したがって、一連の前処置の後、例えば、翌日に組み合わせ処置が開始されうる。組み合わせ処置がTMSを使用するとき、前処置は、通常、約3日から2週間毎日(7日のうち約6日)、治療規制を用いたTMS処置を含む。例えば、前処置は、処置セッションと処置セッションの間が45分で、1時間半の一日あたり4回までのTMS処置セッションを含んでもよい。一例として、前処置セッションは、背外側前頭前皮質(左)に向けられる1Hzでの刺激、左前頭前皮質に再び向けられる10Hzでの刺激、右前頭前皮質への20Hzでの刺激、及び前帯状領域を覆う領域への20Hzでの刺激を含む。
一部の患者は、ケタミンによる処置について懸念し、恐れのために敏感になる場合がある。したがって、バリウム(ジアゼパム)又はベルセド(ミダゾラム)のような抗不安薬の使用が適切である。また、ゾフラン(オンダンセトロン)のような制吐薬が一部の患者には適切である。
組み合わせが1週間に1回又は2週間に1回ベースで行われる場合、大きな前向きな成果が、TMS処置+ケタミンの組み合わせに関連付けられている。別の代替手段は、例えば、2、3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、20、21日又はそれ以上ごとの処置を含む。一部の例では、患者は、様々な理由で治療を止めたが、数週間又は数ヶ月後に再開した。前向きな成果は、約3−11日、より具体的には、約一週間の通常間隔で約2−20、より具体的には、約5−15回の処置で期待されうる。また、前向きな成果は、長い又は短い間隔で実現され、これは、患者のスケジュール及びコンプライアンスの問題により散発的であってもよい。特定の実施例では、うつ病は、少なくとも約5回の処置セッション、より具体的には約6−8回の処置セッションで処置が成功し得るが、慢性痛は、所望の成果を実現するため、特に、痛みが、重篤なうつ及び/又は依存を伴う場合、数回の追加処置セッションを要してもよい。一部の例では、患者は、メンテナンスの目的のために、進行中のまれな処置(例えば、1から4ヶ月ごと)が与えられてもよい。
TMSの使用のみが、うつ病をやわらげるための軽度の処置のために約20−30%の患者に有効であると報告される。TMSは、報告によれば、重度のうつ病の処置にも有効である。うつ病の処置にケタミンのみを使用することが約60−70%の成功率をもたらすことを研究は示唆している。しかし、ケタミンのみについてのこの成功を実現するために、ケタミンの用量は、報告によれば、ケタミンが、本明細書で説明されるようにTMSと組み合わせて使用される場合に必要な用量よりも5−15倍多い。また、ケタミンのみによる軽減は、ケタミンのみの研究において非常に一過性である。
比較すると、前向きな成果が実現されるTMS+ケタミンの組み合わせによる処置が完了した患者の割合は、TMSのみ又はケタミンのみのいずれかにより報告された成功率よりも高い。また、TMS+ケタミンの組み合わせによる処置から前向きな成果を有する患者は、本明細書で説明されるように、より強固、すなわち、長く続き、前向きな結果を実現する傾向にあり、不利益な副作用を低減する。前向きな成果は、仕事に戻る、破綻した仕事に復帰する、大学へ復学する、結婚する、破綻した関係を和解する、薬物乱用からの自制が信頼できる、及びオピオイド麻薬の破壊的な用量の劇的な低減を含む。また、本明細書で説明された組み合わせ治療を受けた後に前向きな結果が実現された多くの患者は、それらの症状について他のすべての処置を以前に失敗している。これらの処置は、rTMS、VNS、TLVES、ECT、高圧酸素処置、ケタミン(のみ)の注入を含む薬物、及び同種療法のような別の薬物処置を含んでいた。
したがって、説明された処置は、TMS又はTLVESと組み合わせた少量の麻酔薬を用いて優れた成果を提供する。少量の麻酔薬しか必要なければ、処置は、副作用が小さくなる。また、TMS又はTLVESの必要性が少ないことは、優れた患者のコンプライアンスをもたらし、それ自体がより前向きな成果に寄与する。事実、処置からの安堵を初めに経験した患者は、永続する恩恵を提供する別の処置を受けるための動機付けとなる傾向がある。
TLVES/ケタミン処置は、TMS/ケタミン処置の良い候補者とならない患者に臨床的利点を提供する。特に、臨床医は、特定の患者がTMSの良い候補者ではないことを前もって理解している。例えば、患者が脳血流(cerebral blood flow)全体でTLVES/ケタミンの強い効果により極度に疲労してしまうので、患者は、TLVES/ケタミンによる、より優れた利点を得てもよい又は、患者は、興奮状態になり、長期に渡るTMS/ケタミンセッションのための場所にとどまるために特別な看護を必要とする。TLVES/ケタミン処置は、有効な別のアプローチを提供する。また、TLVES/ケタミンは、TLVES/ケタミン処置の副作用に敏感な患者にとっての移行治療として重要でありうる。TLVES/ケタミンは、あまり頑丈でない人への負担を少なくすることができ、安定的な回復のための方向性が既にあると、そのような人への優れた選択肢となりうる。
別の態様では、本開示は、解離性麻酔薬による視床皮質律動異常に関連する症状の処置に関連する副作用を抑制する方法に関する。例えば、副作用は、処置する患者に少量の麻酔薬を用いることにより最小化又は抑制されうる。この方法では、解離性麻酔薬は、TMS又はTLVESと組み合わせて投与される。同様に、別の態様では、本開示は、視床皮質律動異常に関連する症状を処置するための解離性麻酔薬の用量を低減する方法に関する。これらの態様では、麻酔薬の用量は、症状の処置のために通常投与される量の約2−20倍低減されうる。別の態様では、用量は、5−15倍、より具体的には10−15倍、更に具体的には5、10又は15倍低減されうる。解離性麻酔薬がケタミンである特定の実施例では、症状を処置するための用量は、約20mgから約400mg、約50mgから約350mg、より具体的には約100mgから350mg、更に具体的には約200mgから約300mgである。解離性麻酔薬がケタミンである別の実施例では、症状を処置するための用量は、約0.1−6.0mg/kg、より具体的には約0.5−5.0mg/kg、更に具体的には約1.0−4.0mg/kgである。
実施例1:TMS/ケタミン処置35人の患者が、ケタミンとTMSの組み合わせで処置された。表1で特定される処置を完了した28人の患者全員が、表2で特定される処置レジメンにより前向きな成果を有していた(表1及び表2は、特許請求の範囲の前の、発明の詳細な説明の最後に示される)。表2の記載を簡略化するために、週に一度以上処置を受けた患者は、その週に一回の処置を受けたと示される。また、間隔は、最も近い週に丸められる。
一部の患者は、毎日TMS処置を3日から2週間(通常、6又は7日)行う前処置(pretreatment(PT))を受けた(表2に「PT days」又は「PT weeks」と示される)。他の患者は、組み合わせ処置の前に、プライミングTMS処置を受けた。一部の患者は、前処置及びプライミングの両方共を受けなかったが、多くの患者は、どちらか一方を受けた。プライミング処置が、数日の前処置よりも厳密さが低いため、前処置を受ける全ての患者は、最終的にプライミング又はいずれも受けないことに切り替えられた。前処置及び/又はプライミング処置は、疾患及び患者のコンプライアンスに基づいて投与された。慢性疼痛に苦しむ患者は、前処置又はプライミングが投与されると、良好に反応したが、うつ病患者の違いは、はっきりと報告されなかった。
ケタミンのみ、TMSのみ又はTLVESのみの使用による以前の研究に報告された成功の欠如に基づいて、表1に示される前向きな成果は、ケタミン及びTMSによる組み合わせ療法の相乗効果を示唆している。また、組み合わせ療法を受けた患者は、ケタミンのみでは以前に報告されなかった持続する効果を有しており、以前に知られたものよりもケタミンの用量が非常に少なくなった。
実施例2:TLVES/ケタミン処置3人の患者は、上述したようにTMS/ケタミンにより事前処置され、非常に改善された。しかし、これらの患者は、集団の他のメンバーよりも病弱で、頑丈ではなかった。
患者は、正味の電流に関してF3での陽極及びF8での陰極を規定することにより、tACS又はtRNSで処置された。電極の電気刺激は、20分間印加された。ケタミンは、5分後に開始され、kg当たり0.5−5.0mgの総用量で15−50分連続的に注入された。tACSについて、パラメータは、オフセット無しで1200μΑmps又は1000μΑmpsのオフセットを有する1200μΑmpsである。tRNSについて、パラメータは、1000μΑmpsのオフセットを有する1300又は2000μΑmpsであった。TLVES/ケタミンにより、3人全ての患者は、後処置の疲労が少ないTMS/ケタミンと同様の治療効果を得ることができた。
様々な態様及び実施形態が本明細書に開示されているが、他の態様及び実施形態が当業者には自明であろう。本明細書に開示される様々な態様及び実施形態は、例示の目的であり、限定的であることを意図するものではなく、真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲により示される。