以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態)
図1は、実施形態に係るステアバイワイヤ式の車両用操向装置の全体構成を示す図である。図1に示すステアバイワイヤ(SBW:Steer By Wire)式の車両用操向装置(以下、「SBWシステム」とも称する)は、ハンドル1の操作を電気信号によって操向車輪8L,8R等からなる転舵機構に伝えるシステムである。図1に示されるように、SBWシステムは、反力装置60及び駆動装置70を備え、制御部としてのコントロールユニット(ECU)50が両装置の制御を行う。
反力装置60は、ハンドル1の操舵トルクTsを検出するトルクセンサ10及び操舵角θhを検出する舵角センサ14、減速機構3、角度センサ74、反力用モータ61等を備えている。これらの各構成部は、ハンドル1のコラム軸2に設けられている。
反力装置60は、舵角センサ14にて操舵角θhの検出を行うと同時に、操向車輪8L,8Rから伝わる車両の運動状態を反力トルクとして運転者に伝達する。反力トルクは、反力用モータ61により生成される。なお、SBWシステムの中には反力装置内にトーションバーを有さないタイプもあるが、本開示を適用するSBWシステムはトーションバーを有するタイプであり、トルクセンサ10にて操舵トルクTsを検出する。また、角度センサ74が、反力用モータ61のモータ角θmを検出する。
駆動装置70は、駆動用モータ71、ギア72、角度センサ73等を備えている。駆動用モータ71により発生する駆動力は、ギア72、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。
駆動装置70は、運転者によるハンドル1の操舵に合わせて、駆動用モータ71を駆動し、その駆動力を、ギア72を介してピニオンラック機構5に付与し、タイロッド6a,6bを経て、操向車輪8L,8Rを転舵する。ピニオンラック機構5の近傍には角度センサ73が配置されており、操向車輪8L,8Rの転舵角θtを検出する。ECU50は、反力装置60及び駆動装置70を協調制御するために、両装置から出力される操舵角θhや転舵角θt等の情報に加え、車速センサ12からの車速Vs等を基に、反力用モータ61を駆動制御する電圧制御指令値Vref1及び駆動用モータ71を駆動制御する電圧制御指令値Vref2を生成する。
コントロールユニット(ECU)50には、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。コントロールユニット50は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTsと車速センサ12で検出された車速Vsとに基づいて電流指令値の演算を行い、反力用モータ61及び駆動用モータ71に供給する電流を制御する。
コントロールユニット50には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40等の車載ネットワークが接続されている。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続可能である。
コントロールユニット50は、主としてCPU(MCU、MPU等も含む)で構成される。図2は、SBWシステムを制御するコントロールユニットのハードウェア構成を示す模式図である。
コントロールユニット50を構成する制御用コンピュータ1100は、CPU(Central Processing Unit)1001、ROM(Read Only Memory)1002、RAM(Random Access Memory)1003、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)1004、インターフェース(I/F)1005、A/D(Analog/Digital)変換器1006、PWM(Pulse Width Modulation)コントローラ1007等を備え、これらがバスに接続されている。
CPU1001は、SBWシステムの制御用コンピュータプログラム(以下、制御プログラムという)を実行して、SBWシステムを制御する処理装置である。
ROM1002は、SBWシステムを制御するための制御プログラムを格納する。また、RAM1003は、制御プログラムを動作させるためのワークメモリとして使用される。EEPROM1004には、制御プログラムが入出力する制御データ等が格納されている。制御データは、コントロールユニット30に電源が投入された後にRAM1003に展開された制御用コンピュータプログラム上で使用され、所定のタイミングでEEPROM1004に上書きされる。
ROM1002、RAM1003、及びEEPROM1004等は情報を格納する記憶装置であって、CPU1001が直接アクセスできる記憶装置(一次記憶装置)である。
A/D変換器1006は、操舵トルクTs、及び操舵角θhの信号等を入力し、ディジタル信号に変換する。
インターフェース1005は、CAN40に接続されている。インターフェース1005は、車速センサ12からの車速Vの信号(車速パルス)を受け付けるためのものである。
PWMコントローラ1007は、反力用モータ61及び駆動用モータ71に対する電流指令値に基づいてUVW各相のPWM制御信号を出力する。
このようなSBWシステムに本開示を適用した実施形態の構成について説明する。
図3は、実施形態に係るコントロールユニットの内部ブロック構成の一例を示す図である。本実施形態では、捩れ角Δθに対する制御(以下、「捩れ角制御」とする)と、転舵角θtに対する制御(以下、「転舵角制御」とする)を行い、反力装置を捩れ角制御で制御し、駆動装置を転舵角制御で制御する。なお、駆動装置は他の制御方法で制御しても良い。
コントロールユニット50は、内部ブロック構成として、目標操舵トルク生成部200、捩れ角制御部300、変換部500、転舵比率マップ部900、目標転舵角生成部910、及び転舵角制御部920を備えている。
目標操舵トルク生成部200は、本開示において車両の操舵系をアシスト制御する際の操舵トルクの目標値である目標操舵トルクTrefを生成する。変換部500は、目標操舵トルクTrefを目標捩れ角Δθrefに変換する。捩れ角制御部300は、反力用モータ61に供給する電流の制御目標値であるモータ電流指令値Imcを生成する。
捩れ角制御では、捩れ角Δθが、操舵角θh等を用いて目標操舵トルク生成部200及び変換部500を経て算出される目標捩れ角Δθrefに追従するような制御を行う。反力用モータ61のモータ角θmは角度センサ74で検出され、モータ角速度ωmは、角速度演算部951にてモータ角θmを微分することにより算出される。駆動用モータ71の転舵角θtは角度センサ73で検出される。また、電流制御部130は、捩れ角制御部300から出力されるモータ電流指令値Imc及びモータ電流検出器140で検出される反力用モータ61の電流値Imrに基づいて、反力用モータ61を駆動して、電流制御を行う。
以下、捩れ角制御部300について、図4を参照して説明する。
図4は、捩れ角制御部の一構成例を示すブロック図である。捩れ角制御部300は、目標捩れ角Δθref、捩れ角Δθ及びモータ角速度ωmに基づいてモータ電流指令値Imcを演算する。捩れ角制御部300は、捩れ角フィードバック(FB)補償部310、捩れ角速度演算部320、速度制御部330、安定化補償部340、出力制限部350、減算部361及び加算部362を備えている。
変換部500から出力される目標捩れ角Δθrefは、減算部361に加算入力される。捩れ角Δθは、減算部361に減算入力されると共に、捩れ角速度演算部320に入力される。モータ角速度ωmは、安定化補償部340に入力される。
捩れ角FB補償部310は、減算部361で算出される目標捩れ角Δθrefと捩れ角Δθの偏差Δθ0に対して補償値CFB(伝達関数)を乗算し、目標捩れ角Δθrefに捩れ角Δθが追従するような目標捩れ角速度ωrefを出力する。補償値CFBは、単純なゲインKppでも、PI制御の補償値など一般的に用いられている補償値でも良い。
目標捩れ角速度ωrefは、速度制御部330に入力される。捩れ角FB補償部310及び速度制御部330により、目標捩れ角Δθrefに捩れ角Δθを追従させ、所望の操舵トルクを実現することが可能となる。
捩れ角速度演算部320は、捩れ角Δθに対して微分演算処理を行い、捩れ角速度ωtを算出する。捩れ角速度ωtは、速度制御部330に出力される。捩れ角速度演算部320は、微分演算として、HPFとゲインによる擬似微分を行なっても良い。また、捩れ角速度演算部320は、捩れ角速度ωtを別の手段や捩れ角Δθ以外から算出し、速度制御部330に出力するようにしても良い。
速度制御部330は、I−P制御(比例先行型PI制御)により、目標捩れ角速度ωrefに捩れ角速度ωtが追従するようなモータ電流指令値Imca1を算出する。
減算部333は、目標捩れ角速度ωrefと捩れ角速度ωtとの差分(ωref−ωt)を算出する。積分部331は、目標捩れ角速度ωrefと捩れ角速度ωtとの差分(ωref−ωt)を積分し、積分結果を減算部334に加算入力する。
捩れ角速度ωtは、比例部332にも出力される。比例部332は、捩れ角速度ωtに対してゲインKvpによる比例処理を行い、比例処理結果を減算部334に減算入力する。減算部334での減算結果は、モータ電流指令値Imca1として出力される。なお、速度制御部330は、I−P制御ではなく、PI制御、P(比例)制御、PID(比例積分微分)制御、PI−D制御(微分先行型PID制御)、モデルマッチング制御、モデル規範制御等の一般的に用いられている制御方法でモータ電流指令値Imca1を算出しても良い。
安定化補償部340は、補償値Cs(伝達関数)を有しており、モータ角速度ωmからモータ電流指令値Imca2を算出する。追従性及び外乱特性を向上させるために、捩れ角FB補償部310及び速度制御部330のゲインを上げると、高域の制御的な発振現象が発生してしまう。この対策として、モータ角速度ωmに対し、安定化するために必要な伝達関数(Cs)を安定化補償部340に設定する。これにより、EPS制御システム全体の安定化を実現することができる。
加算部362は、速度制御部330からのモータ電流指令値Imca1と安定化補償部340からのモータ電流指令値Imca2とを加算し、モータ電流指令値Imcbとして出力する。
出力制限部350は、モータ電流指令値Imcbに対する上限値及び下限値が予め設定されている。出力制限部350は、モータ電流指令値Imcbの上下限値を制限して、モータ電流指令値Imcを出力する。
なお、本実施形態における捩れ角制御部300の構成は一例であり、図4に示す構成とは異なる態様であっても良い。例えば、捩れ角制御部300は、安定化補償部340を具備しない構成であっても良い。
転舵角制御では、目標転舵角生成部910にて操舵角θh及び後述する転舵比率マップ部900から出力される転舵比率ゲインGに基づいて目標転舵角θtrefが生成される。目標転舵角θtrefは、転舵角θtと共に転舵角制御部920に入力され、転舵角制御部920にて、転舵角θtが目標転舵角θtrefとなるようなモータ電流指令値Imctが演算される。そして、モータ電流指令値Imct及びモータ電流検出器940で検出される駆動用モータ71の電流値Imdに基づいて、電流制御部930が、電流制御部130と同様の構成及び動作により、駆動用モータ71を駆動して、電流制御を行う。
以下、目標転舵角生成部910について、図5を参照して説明する。
図5は、目標転舵角生成部の一構成例を示すブロック図である。目標転舵角生成部910は、制限部931、レート制限部932及び補正部933を備える。
制限部931は、操舵角θhの上下限値を制限した操舵角θh1を出力する。図4に示す捩れ角制御部300内の出力制限部350と同様に、操舵角θhに対する上限値及び下限値を予め設定して制限をかける。
レート制限部932は、操舵角の急変を回避するために、操舵角θh1の変化量に対して制限値を設定して制限をかけ、操舵角θh2を出力する。例えば、1サンプル前の操舵角θh1からの差分を変化量とし、その変化量の絶対値が所定の値(制限値)より大きい場合、変化量の絶対値が制限値となるように、操舵角θh1を加減算し、操舵角θh2として出力し、制限値以下の場合は、操舵角θh1をそのまま操舵角θh2として出力する。なお、変化量の絶対値に対して制限値を設定するのではなく、変化量に対して上限値及び下限値を設定して制限をかけるようにしても良く、変化量ではなく変化率や差分率に対して制限をかけるようにしても良い。
補正部933は、操舵角θh2を補正して、目標転舵角θtrefを出力する。本実施形態では、操舵角θh2に対し、後述する転舵比率マップ部900から出力される転舵比率ゲインGを乗じて、目標転舵角θtrefを求める。
以下、転舵角制御部920について、図6を参照して説明する。
図6は、転舵角制御部の一構成例を示すブロック図である。転舵角制御部920は、目標転舵角θtref、及び操向車輪8L,8Rの転舵角θtに基づいてモータ電流指令値Imctを演算する。転舵角制御部920は、転舵角フィードバック(FB)補償部921、転舵角速度演算部922、速度制御部923、出力制限部926、及び減算部927を備えている。
目標転舵角生成部910から出力される目標転舵角θtrefは、減算部927に加算入力される。転舵角θtは、減算部927に減算入力されると共に、転舵角速度演算部922に入力される。
転舵角FB補償部921は、減算部927で算出される目標転舵角速度ωtrefと転舵角θtとの偏差Δθt0に対して補償値CFB(伝達関数)を乗算し、目標転舵角θtrefに転舵角θtが追従するような目標転舵角速度ωtrefを出力する。補償値CFBは、単純なゲインKppでも、PI制御の補償値など一般的に用いられている補償値でも良い。
目標転舵角速度ωtrefは、速度制御部923に入力される。転舵角FB補償部921及び速度制御部923により、目標転舵角θtrefに転舵角θtを追従させ、所望のトルクを実現することが可能となる。
転舵角速度演算部922は、転舵角θtに対して微分演算処理を行い、転舵角速度ωttを算出する。転舵角速度ωttは、速度制御部923に出力される。速度制御部923は、微分演算として、HPFとゲインによる擬似微分を行なっても良い。また、速度制御部923は、転舵角速度ωttを別の手段や転舵角θt以外から算出し、速度制御部923に出力するようにしても良い。
速度制御部923は、I−P制御(比例先行型PI制御)により、目標転舵角速度ωtrefに転舵角速度ωttが追従するようなモータ電流指令値Imctaを算出する。なお、速度制御部923は、I−P制御ではなく、PI制御、P(比例)制御、PID(比例積分微分)制御、PI−D制御(微分先行型PID制御)、モデルマッチング制御、モデル規範制御等の一般的に用いられている制御方法でモータ電流指令値Imctaを算出しても良い。
減算部928は、目標転舵角速度ωtrefと転舵角速度ωttとの差分(ωtref−ωtt)を算出する。積分部924は、目標転舵角速度ωtrefと転舵角速度ωttとの差分(ωtref−ωtt)を積分し、積分結果を減算部929に加算入力する。
転舵角速度ωttは、比例部925にも出力される。比例部925は、転舵角速度ωttに対して比例処理を行い、比例処理結果を出力制限部926にモータ電流指令値Imctaとして出力する。
出力制限部926は、モータ電流指令値Imctaに対する上限値及び下限値が予め設定されている。出力制限部926は、モータ電流指令値Imctaの上下限値を制限して、モータ電流指令値Imctを出力する。
なお、本実施形態における転舵角制御部920の構成は一例であり、図6に示す構成とは異なる態様であっても良い。
このような構成において、実施形態の動作例を、図7のフローチャートを参照して説明する。図7は、実施形態の動作例を示すフローチャートである。
動作を開始すると、角度センサ73は転舵角θtを検出し、角度センサ74はモータ角θmを検出し(ステップS110)、転舵角θtは転舵角制御部920に、モータ角θmは角速度演算部951にそれぞれ入力される。
角速度演算部951は、モータ角θmを微分してモータ角速度ωmを算出し、捩れ角制御部300に出力する(ステップS120)。
その後、目標操舵トルク生成部202において、図7に示されるステップS10〜S40と同様の動作を実行し、反力用モータ61を駆動し、電流制御を実施する(ステップS130〜S160)。
一方、転舵角制御においては、目標転舵角生成部910が操舵角θhを入力し、操舵角θhは制限部931に入力される。制限部931は、予め設定された上限値及び下限値により操舵角θhの上下限値を制限し(ステップS170)、操舵角θh1としてレート制限部932に出力する。レート制限部932は、予め設定された制限値により操舵角θh1の変化量に対して制限をかけ(ステップS180)、操舵角θh2として補正部933に出力する。補正部933は、操舵角θh2を補正して目標転舵角θtrefを求め(ステップS190)、転舵角制御部920に出力する。
転舵角θt及び目標転舵角θtrefを入力した転舵角制御部920は、減算部927にて目標転舵角θtrefから転舵角θtを減算することにより、偏差Δθt0を算出する(ステップS200)。偏差Δθt0は転舵角FB補償部921に入力され、転舵角FB補償部921は、偏差Δθt0に補償値を乗算することにより偏差Δθt0を補償し(ステップS210)、目標転舵角速度ωtrefを速度制御部923に出力する。転舵角速度演算部922は転舵角θtを入力し、転舵角θtに対する微分演算により転舵角速度ωttを算出し(ステップS220)、速度制御部923に出力する。速度制御部923は、速度制御部330と同様にI−P制御によりモータ電流指令値Imctaを算出し(ステップS230)、出力制限部926に出力する。出力制限部926は、予め設定された上限値及び下限値によりモータ電流指令値Imctaの上下限値を制限し(ステップS240)、モータ電流指令値Imctとして出力する(ステップS250)。
モータ電流指令値Imctは電流制御部930に入力され、電流制御部930は、モータ電流指令値Imct及びモータ電流検出器940で検出された駆動用モータ71の電流値Imdに基づいて、駆動用モータ71を駆動し、電流制御を実施する(ステップS260)。
なお、図7におけるデータ入力及び演算等の順番は適宜変更可能である。また、転舵角制御部920での追従制御は、一般的に用いられている制御構造で行っても良い。転舵角制御部920については、目標角度(ここでは目標転舵角θtref)に対して実角度(ここでは転舵角θt)が追従する制御構成であれば、車両用装置に用いられている制御構成に限定されず、例えば、産業用位置決め装置や産業用ロボット等に用いられている制御構成を適用しても良い。
また、本実施形態では、図1に示されるように、1つのECU50で反力装置60及び駆動装置70の制御を行っているが、反力装置60用のECUと駆動装置70用のECUをそれぞれ設けても良い。この場合、ECU同士は通信によりデータの送受信を行うことになる。また、図1に示されるSBWシステムは反力装置60と駆動装置70の間には機械的な結合を持たないが、システムに異常が発生した場合に、コラム軸2と転舵機構をクラッチ等で機械的に結合する機械的トルク伝達機構を備えるSBWシステムにも、本開示は適用可能である。このようなSBWシステムでは、システム正常時はクラッチをオフにして機械的トルク伝達を開放状態とし、システム異常時はクラッチをオンにして機械的トルク伝達を可能状態とする。
図8は、転舵比率マップ部が保持する転舵比率マップの特性例を示す図である。
転舵比率マップ部900(図2参照)には、車速Vsが入力される。本実施形態において、車速Vsは、車両が前進しているか、又は後進しているかを示す情報を含む。例えば、車両が前進している場合には、車速Vsが正の値を示し、車両が後進している場合には、車速Vsが負の値を示す。なお、車両が前進しているか、又は後進しているかを示す情報はこれに限らず、例えば、トランスミッションのマニュアルシフトレバーやオートマチックシフトレバーのリバースポジションから検出される信号を入力し、この信号に基づき、車両が前進しているか、又は後進しているかを確定する態様であっても良い。
転舵比率マップ部900は、図8に示す転舵比率マップを用いて、車速Vsに応じた転舵比率ゲインGを出力する。
図8に示す例において、横軸は車速Vsを示し、縦軸は転舵比率ゲインGを示している。また、図8に示す例において、車速Vsが0[km/h]よりも右側の領域は、車両の前進速度を示し、車速Vsが0[km/h]よりも左側の領域は、車両の後進速度を示している。
図8に示す例では、車両の前進速度Vsの大きさが0[km/h]以上、かつ、第1車速V1未満の領域を第1領域とし、この第1領域における転舵比率ゲインGを第1ゲインG1としている。また、車両の前進速度Vsの大きさが第1車速V1以上、かつ、第1車速V1よりも大きい第2車速V2未満の領域を第2領域とし、この第2領域における転舵比率ゲインGを第2ゲインG2としている。また、車両の前進速度Vsの大きさが第2車速V2以上の領域を第3領域とし、この第3領域における転舵比率ゲインGを第3ゲインG3としている。また、車両の後進速度Vsの大きさが0[km/h]より大きく、かつ、第3車速V3未満の領域を第4領域とし、この第4領域における転舵比率ゲインGを第4ゲインG4としている。また、車両の後進速度Vsの大きさが第3車速V3以上、かつ、第3車速V3よりも大きい第4車速V4未満の領域を第5領域とし、この第5領域における転舵比率ゲインGを第5ゲインG5としている。また、車両の後進速度Vsの大きさが第4車速V4以上の領域を第6領域とし、この第6領域における転舵比率ゲインGを第6ゲインG6としている。
図8に示すように、第4ゲインG4は、第1ゲインG1、第2ゲインG2、第3ゲインG3、第5ゲインG5、及び、第6ゲインG6の何れよりも大きい一定値としている。
車両の後進時には、運転者が車両の背後の安全確認を目視で行う必要がある。このとき、ハンドル1の操舵角に対してタイヤ(操向車輪8L,8R)の転舵角の比率が小さい場合、ハンドル1の持ち替えが必要となる場合がある。車両の後進時には、運転者がハンドル1を操作しながら車両の背後の安全確認を目視で行うために体勢を崩し易く、運転者のハンドル1の持ち替えにより車両の挙動が不安定になる場合がある。
本実施形態において、車両の後進時における第3車速V3を例えば10[km/h]としたとき、車両の後進速度Vsが0[km/h]よりも大きく、かつ、10[km/h]未満の低速域、すなわち第4領域における第4ゲインG4を大きくする。これにより、車両の後進時における低速域でのハンドル1の操舵角に対するタイヤの転舵角の比率を大きくすることができる。換言すれば、小さい操舵角でより大きな転舵角が得られる。このため、例えば、パーキングエリア等に車両を駐車するために車両を後進(バック)させているとき、運転者がハンドル1を持ち替える頻度を減らすことができる。
また、第4領域における第4ゲインG4を一定値とすることで、車両の後進速度Vsが0[km/h]よりも大きく、かつ、10[km/h](=V3)未満の低速域、すなわち第4領域においてタイヤの転舵角を一定にすることができる。これにより、安定して車両をパーキングエリアに駐車することができる。
また、本実施形態では、第3領域における第3ゲインG3を一定値とし、第1領域における第1ゲインG1を、第3ゲインG3よりも大きく、かつ、第4領域における第4ゲインG4未満の一定値としている。
車両の前進時、特に低速域では、幅員が狭い十字路やクランク等においてタイヤの転舵角が大きくなる場合がある。このとき、ハンドル1の操舵角に対してタイヤの転舵角の比率が小さい場合、ハンドル1を大きく操作する必要がある。
本実施形態において、車両の前進時における第1車速V1を例えば10[km/h]としたとき、車両の前進速度Vsが0[km/h]以上、かつ、10[km/h]未満の低速域、すなわち第1領域における第1ゲインG1を大きくする。これにより、車両の前進時における低速域でのハンドル1の操舵角に対するタイヤの転舵角の比率を大きくすることができる。換言すれば、小さい操舵角でより大きな転舵角が得られる。このため、例えば、幅員が狭い十字路やクランク等を走行する際の運転者の負荷を減らすことができる。
また、第1領域における第1ゲインG1を一定値とすることで、車両の前進速度Vsが0[km/h]以上、かつ、10[km/h](=V1)未満の低速域、すなわち第1領域においてタイヤの転舵角を一定にすることができる。これにより、安定して十字路やクランク等を走行することができる。
また、本実施形態では、図8に示すように、第2領域における第2ゲインG2を、車両の前進速度Vsの大きさが第1車速V1から大きくなるに従い、第1領域における第1ゲインG1から、第3領域における第3ゲインG3に至るまでの範囲内で徐々に小さくなるようにしている。
本実施形態において、車両の前進時における第2車速V2を例えば25[km/h]としたとき、車両の前進速度Vsが25[km/h]よりも大きい高速域、すなわち第3領域における第3ゲインG3を小さくする。これにより、車両の前進時における高速域でのハンドル1の操舵角に対するタイヤの転舵角の比率を小さくすることができる。また、第3領域における第3ゲインG3を一定値とすることで、車両の前進速度Vsが25[km/h]よりも大きい高速域、すなわち第3領域においてタイヤの転舵角を一定にすることができる。このため、車両の前進時における車両の挙動を安定させることができる。
また、車両の前進速度Vsが10[km/h](=V1)以上、かつ、25[km/h](=V2)未満の中速域、すなわち第2領域における第2ゲインG2を、車両の前進速度Vsの増加に伴い徐々に小さくすることで、車両の前進時におけるタイヤの転舵角の急変動を抑制することができ、安定した操舵感を得ることができる。
なお、第1ゲインG1は、個々のSBWシステムに適した値とすれば良い。具体的には、例えば、第3領域における第3ゲインG3以上、かつ、第4領域における第4ゲインG4ゲイン以下とすることができる。
また、図8に示すように、第6領域における第6ゲインG6を、第3領域における第3ゲインG3以上、かつ、第4領域における第4ゲインG4未満の一定値とし、第5領域における第5ゲインG5を、車両の後進速度Vsの大きさが第3車速V3から大きくなるに従い、第4領域における第4ゲインG4から、第6領域における第6ゲインG6に至るまでの範囲内で徐々に小さくなるようにしている。なお、第6領域における第6ゲインG6は、個々のSBWシステムに適した値とすれば良い。
本実施形態において、車両の後進時における第4車速V4を例えば25[km/h]としたとき、車両の後進速度Vsが25[km/h]よりも大きい高速域、すなわち第6領域における第6ゲインG6を小さくする。これにより、車両の後進時における高速域でのハンドル1の操舵角に対するタイヤの転舵角の比率を小さくすることができる。また、第6領域における第6ゲインG6を一定値とすることで、車両の後進速度Vsが25[km/h]よりも大きい高速域、すなわち第6領域においてタイヤの転舵角を一定にすることができる。このため、車両の後進時における車両の挙動を安定させることができる。
また、車両の後進速度Vsが10[km/h](=V3)以上、かつ、25[km/h](=V4)未満の中速域、すなわち第5領域における第5ゲインG5を、車両の後進速度Vsの増加に伴い徐々に小さくすることで、車両の後進時におけるタイヤの転舵角の急変動を抑制することができ、安定した操舵感を得ることができる。
図9は、図8に示す転舵比率マップの特性例において、車速を絶対値化して示した図である。
図9に示す例において、実線は車両の前進時における転舵比率ゲインGを示し、破線は車両の後進時における転舵比率ゲインGを示している。
なお、図9では、車両の前進時における第1車速の大きさ|V1|と車両の後進時における第3車速の大きさ|V3|とが等しく、車両の前進時における第2車速の大きさ|V2|と車両の後進時における第4車速の大きさ|V4|とが等しい例を示したが、これに限らない。
本実施形態では、図9に示すように、車両の後進時における転舵比率ゲインG(図9中の破線)が、車両の前進時における転舵比率ゲインG(図9中の実線)以上である。
これにより、車両の後進時における挙動を安定させることができる。
なお、車両の前進時における第1車速V1、車両の前進時における第2車速V2、車両の後進時における第3車速V3、車両の後進時における第4車速V4の具体的な数値は一例であって、これに限らない。
また、上述した実施形態では、第2領域における第2ゲインG2を、車両の前進時における第1車速V1と第2車速V2との間で直線的に変化させる例を示したが、これに限らない。例えば、車両の前進時における第1車速V1と第2車速V2との間を2次曲線あるいは3次曲線等の曲線で結ぶ態様であっても良い。また、上述した実施形態では、第5領域における第5ゲインG5を、車両の後進時における第3車速V3と第4車速V4との間で直線的に変化させる例を示したが、これに限らない。例えば、車両の後進時における第3車速V3と第4車速V4との間を2次曲線あるいは3次曲線等の曲線で結ぶ態様であっても良い。
なお、上述で使用した図は、本開示に関して定性的な説明を行うための概念図であり、これらに限定されるものではない。また、上述の実施形態は本開示の好適な実施の一例ではあるが、これに限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。