JP2021123799A - 金属酸窒化物薄膜および容量素子 - Google Patents

金属酸窒化物薄膜および容量素子 Download PDF

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Abstract

【課題】強誘電性を有しつつ、誘電損失が小さい金属酸窒化物薄膜を提供すること。
【解決手段】
一般式ABOで表される金属酸窒化物を含む金属酸窒化物薄膜であり、2.000≦x≦3.275、0.150≦y≦1.000であり、AがBa、SrおよびLaから選ばれる1つ以上、BがTaおよび/またはTiであり、Aがペロブスカイト構造のAサイトを占めた時のイオン価数をa、Bがペロブスカイト構造のBサイトを占めた時のイオン価数をbとした場合、6.7≦a+b≦7.3であり、金属酸窒化物は、中心対称性を示す回折を生じる領域と非中心対称性を示す回折を生じる領域とを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属酸窒化物薄膜および容量素子に関する。
デジタル機器の高性能化に伴い、誘電特性を利用する電子部品を構成する誘電体には、高いキュリー温度(Tc)を示し、かつ高誘電率を有することが求められている。しかしながら、これらは同時に達成することは難しい。たとえば、優れた誘電特性を示すチタン酸バリウムは、その高い誘電率を発現するために、構造相転移を利用しているため、Tcは低い。
ABONとして表されるペロブスカイト構造を有する金属酸窒化物は、誘電体材料として注目されており、その結晶構造に起因して高いTcを示す。しかしながら、この金属酸窒化物の誘電特性の発現機構に関して様々な提案がなされているが、明確になっていない。
たとえば、特許文献1には、窒素原子がc軸方向に配向している正方晶ペロブスカイト型酸窒化物が記載されている。特許文献1によれば、窒素原子がc軸方向に配向することにより、正方晶ペロブスカイト型酸窒化物は強誘電性を示し、圧電特性が良好であることが記載されている。
また、非特許文献1には、基板との格子不整合を利用して、当該基板上に酸窒化物薄膜をエピタキシャル成長させることにより、窒素原子をc軸方向に配向させる方法が記載されている。
また、特許文献2には、主組成がペロブスカイト型酸窒化物であって、強誘電性を示す多結晶体を有する誘電体磁器組成物が記載されている。
特開2010−143788号公報 国際公開2017/135298号
Daichi Oka, et al., "Possible ferroelectricity in perovskite oxynitride SrTaO2N epitaxial thin films", SCIENTIFIC REPORTS 4, DOI: 10.1038/srep04987
しかしながら、窒素原子をc軸方向に配向させるために、特許文献1では、形状異方性粒子を配向させる配向工程が必要となる。すなわち、余分な工程が必要となる。また、非特許文献1に記載された方法は、特殊な方法であり、工業的には適さない。特許文献2に記載されている酸窒化物は、強誘電体から構成されており、誘電損失が高いという問題があった。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、強誘電性を有しつつ、誘電損失が小さい金属酸窒化物薄膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、金属酸窒化物が、中心対称性を示す回折を生じる領域と、非中心対称性を示す回折を生じる領域と、を有していることにより、金属酸窒化物全体として強誘電性を有しつつ、常誘電性を示す構造に起因して誘電損失が小さい金属酸窒化物が得られることを見出した。
上記目的を達成するため、本発明の態様は、以下の通りである。
[1]一般式ABOで表され、ペロブスカイト構造を有する金属酸窒化物を含む金属酸窒化物薄膜であって、
Aが、バリウム、ストロンチウムおよびランタンからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、Bがタンタルおよびチタンからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
Aがペロブスカイト構造におけるAサイトを占めた場合に示すイオン価数をa、Bがペロブスカイト構造におけるBサイトを占めた場合に示すイオン価数をbとした場合、aおよびbが6.7≦a+b≦7.3である関係を満足し、
一般式中のxおよびyが、
2.000≦x≦3.275、
0.150≦y≦1.000である関係を満足し、
金属酸窒化物は、中心対称性を示す回折を生じる領域と、非中心対称性を示す回折を生じる領域と、を有する金属酸窒化物薄膜である。
[2]中心対称性を示す回折を生じる領域のみから構成され、金属酸窒化物薄膜と同じ組成を有するペロブスカイト型金属酸窒化物に対する、Cu−Kα線をX線源とする粉末X線回折または粉末X線回折シミュレーションにより得られるX線回折パターンにおいて、回折角2θが20°から25°の範囲内に現れペロブスカイト構造に帰属する回折ピークのうち、最強の回折ピークをP1とし、回折角2θが44°から50°の範囲内に現れペロブスカイト構造に帰属する回折ピークのうち、最強の回折ピークをP2とし、P2の強度に対するP1の強度比IRとし、Cu−Kα線をX線源とする面直X線回折および面内X線回折により得られる金属酸窒化物薄膜のX線回折パターンにおいて、P2の強度に対するP1の強度比をIRとしたときに、IRに対するIRの比率Aが0%以上80%以下であり、金属酸窒化物薄膜が残留分極を有する[1]に記載の金属酸窒化物薄膜である。
[3]中心対称性を示す回折を生じる領域と、非中心対称性を示す回折を生じる領域とにおいて、陰イオンの配置秩序範囲が異なる[1]または[2]に記載の金属酸窒化物薄膜である。
[4]中心対称性を示す回折を生じる領域と、非中心対称性を示す回折を生じる領域とは、同じ陽イオンを有している[3]に記載の金属酸窒化物薄膜である。
[5]xおよびyが、
2.450≦x≦3.275、
0.150≦y≦0.700である関係を満足する[1]から[4]のいずれかに記載の金属酸窒化物薄膜である。
[6][1]から[5]のいずれかに記載の金属酸窒化物薄膜を備える容量素子である。
本発明によれば、強誘電性を有しつつ、誘電損失が小さい金属酸窒化物薄膜を提供することができる。
図1は、本実施形態に係る容量素子の一例としての薄膜キャパシタの断面模式図である。 図2は、ABONの結晶構造を示す斜視図である。 図3Aは、ABONにおいて、窒素がcis配置であるBO八面体を示す模式図である。 図3Bは、ABONにおいて、窒素がtrans配置であるBO八面体を示す模式図である。 図4は、窒素がcis配置であるBO八面体がc軸方向に八面体鎖を形成していることを示す模式図である。 図5は、実施例の試料に行った分極処理パターンを示す模式図である。
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、以下の順序で詳細に説明する。
1.薄膜キャパシタ
1.1.薄膜キャパシタの全体構成
1.2.金属酸窒化物薄膜
1.2.1.金属酸窒化物
2.薄膜キャパシタの製造方法
2.1.金属酸窒化物薄膜の製造方法
3.本実施形態のまとめ
(1.薄膜キャパシタ)
本実施形態では、容量素子の一例として、本実施形態に係る金属酸窒化物薄膜を誘電体として有する薄膜キャパシタについて説明する。薄膜キャパシタ以外の容量素子としては、サーミスタ、フィルター、ダイプレクサ、共振器、発信子、アンテナ、圧電素子、トランジスタのゲート材料、強誘電体メモリ等が例示される。
(1.1.薄膜キャパシタの全体構成)
図1に示すように、本実施形態に係る容量素子の一例としての薄膜キャパシタ1は、基板51と、第1の電極52と、金属酸窒化物薄膜53と、第2の電極54とがこの順序で積層された構成を有している。
第1の電極52と金属酸窒化物薄膜53と第2の電極54とはキャパシタ部を形成しており、第1の電極52および第2の電極54が、図示しない外部回路に接続されて電圧が印加されると、誘電体である金属酸窒化物薄膜53が所定の静電容量を示し、キャパシタとしての機能を発揮することができる。
図1に示す基板51は、その上に形成される第1の電極52、金属酸窒化物薄膜53および第2の電極54を好適に形成できる材料で構成されていれば特に限定されない。このような材料としては、単結晶、アモルファス材料等が例示され、本実施形態では、Si単結晶基板を用いることが好ましい。
図1に示すように、第1の電極52および第2の電極54は、薄膜状に形成され、金属酸窒化物薄膜53を挟み込んでいる。第1の電極52および第2の電極54を構成する材料は、導電性を有する材料であれば特に制限されない。たとえば、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等の金属、または、それらの合金等が例示される。
(1.2.金属酸窒化物薄膜)
本実施形態に係る金属酸窒化物薄膜は、後述するが、所定の組成およびペロブスカイト構造を有する金属酸窒化物から構成されている。
本実施形態では、金属酸窒化物薄膜は、公知の成膜法により形成された薄膜である。このような薄膜は、通常、基板上に原子が堆積して形成されるので、金属酸窒化物薄膜は、金属酸窒化物堆積膜であることが好ましい。したがって、本実施形態に係る金属酸窒化物薄膜は、誘電体の原料粉末を成形した成形体を焼成して得られる(固相反応により得られる)焼成体は含まない。
金属酸窒化物薄膜の厚みは特に限定されず、所望の特性、用途等に応じて任意に設定することができる。本実施形態では、厚みは、好ましくは10nm以上2μm以下である。
(1.2.1.金属酸窒化物)
本実施形態に係る金属酸窒化物薄膜を構成する金属酸窒化物の組成は、一般式ABOで表される。一般式中、xは金属酸窒化物中の酸素の割合を示し、yは金属酸窒化物中の窒素の割合を示している。
本実施形態では、xは2.000≦x≦3.275である関係を満足し、yは0.150≦y≦1.000である関係を満足する。xおよびyが上記の範囲を満足することにより、強誘電性を有しつつ、誘電損失が小さい金属酸窒化物薄膜を得ることが容易となる。
xは、2.450以上であることが好ましく、2.750以上であることがより好ましい。xは、3.200以下であることが好ましく、2.900以下であることがより好ましい。
また、yは、0.200以上であることが好ましく、0.400以上であることがより好ましい。yは、0.700以下であることが好ましく、0.500以下であることがより好ましい。
また、一般式中、Aは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)およびランタン(La)からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、Aは、バリウムおよびストロンチウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。また、式中、Bはタンタル(Ta)およびチタン(Ti)からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
したがって、上記の組成式ABOは、(Ba1−p−qSrLa)(Ta1−rTi)Oと表すことができる。ここで、pおよびqは、0≦p≦1.0、0≦q≦1.0である関係を満足する。また、rは、0≦r≦1.0である関係を満足する。好ましくは、組成式ABOは、(Ba1−pSr1−qLa(Ta1−rTi)Oと表すことができる。ここで、pおよびqは、0≦p≦1.0、0≦q≦0.30である関係を満足することが好ましい。
また、金属酸窒化物はペロブスカイト構造を有している。図2にペロブスカイト構造を示す。図2に示すように、ペロブスカイト構造においては、陰イオン(11,12)が6つの頂点を占め、中心にBサイト原子13が存在する八面体15が頂点を互いに共有して3次元ネットワークを構成しており、このネットワークの間隙にAサイト原子14が配置されている。Aサイト原子は、上述したように、バリウム、ストロンチウムおよびランタンからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、Bサイト原子は、上述したように、タンタルおよびチタンからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
本実施形態では、Aがペロブスカイト構造におけるAサイトを占めた場合に示すイオン価数をa、Bがペロブスカイト構造におけるBサイトを占めた場合に示すイオン価数をbとした場合、aおよびbが6.7≦a+b≦7.3である関係を満足する。
なお、上記のイオン価数aとイオン価数bとは、それぞれ、平均価数として表される。平均価数は、Aサイト、または、Bサイトに存在するイオンの価数をその存在比に応じて平均化した値とする。例えば、AサイトにSrとLaが4:1のモル比で存在する場合について述べる。ペロブスカイト構造におけるSrイオンの価数は2であり、ペロブスカイト構造におけるLaイオンの価数は3である。よって、Aサイトの平均価数aは下記の(式1)により算出され、aは2.2価となる。
(式1)
(上記の場合の平均価数a)
=2(Srイオンの価数)×4/5(Srイオンの存在比)+3(Laイオンの価数)×1/5(Laイオンの存在比)
=8/5+3/5
=11/5
=2.2…(1)
同様に、BサイトにTaとTiが4:1のモル比で存在する場合について述べる。ペロブスカイト構造におけるTaイオンの価数は5であり、ペロブスカイト構造におけるTiイオンの価数は4である。よって、Bサイトの平均価数bは下記の(式2)により算出され、bは4.8価となる。
(式2)
(上記の場合の平均価数b)
=5(Taイオンの価数)×4/5(Taイオンの存在比)+4(Tiイオンの価数)×1/5(Tiイオンの存在比)
=20/5+4/5
=24/5=4.8…(2)
上記の平均価数は、Aサイトに存在するイオンと、Bサイトに存在するイオンとのモル比が1:1である場合に算出される価数である。一方、平均価数は、Aサイトに存在するイオンと、Bサイトに存在するイオンとのモル比が1:1ではない場合に算出される価数であってもよい。
たとえば、Aサイトに存在するSrイオンと、Bサイトに存在するTaイオンとのモル比が、1:1.02である場合には、上記の式(1)および式(2)を用いて、aは2価、bは5.1価となる。
(平均価数a)
=2×1=2
(平均価数b)
=5×1.02=5.1
上記のAサイトの平均価数aとBサイトの平均価数bとの和が上記の範囲を満足することにより、強誘電性を有しつつ、誘電損失が小さい金属酸窒化物薄膜を得ることが容易となる。
一方、陰イオンは、金属酸窒化物ABO中の酸素と窒素との組成比に応じて配分されており、ABOにおいてx=2、y=1である場合、当該八面体はBO八面体である。すなわち、図2に示すように、BO八面体において、陰イオンが占める6つの頂点のうち、2つの頂点を窒素イオン12が占める。
本実施形態では、金属酸窒化物は強誘電性を有している。強誘電性は、自発分極の向きが外部電界により反転し、外部電界を取り去っても分極が残る性質である。自発分極は、結晶中の陽イオンおよび陰イオンの位置が相対的に変化することにより生じる電荷分布の偏りである。
したがって、強誘電性を有する物質は、電荷分布の偏りが生じるような構造を有している。たとえば、ペロブスカイト型強誘電体として知られるチタン酸バリウム(BaTiO)は、室温において、正方晶系の結晶構造を有しており、c軸方向の格子長さが、a軸方向およびb軸方向の格子長さよりも長い。したがって、単位格子において、酸素イオンの重心位置からチタンイオンの位置がずれている配置に起因して自発分極が生じている。このような配置は、中心対称性を有していない配置である。このような自発分極が生じているか否かは、たとえば、金属酸窒化物が圧電応答をするか否かにより評価することができる。
一方、外部電界を取り去ると分極がなくなる物質を常誘電体と呼ぶ。チタン酸バリウムは高温において立方晶系の結晶構造に転移して、c軸方向の格子長さが、a軸方向およびb軸方向の格子長さと同じとなる。その結果、チタン酸バリウムは強誘電性を失い、常誘電体となる。すなわち、酸素イオンの重心位置とチタンイオンの重心位置とが一致する配置となり、電荷分布の偏りが生じない構造に転移することにより、自発分極が消滅する。このような配置は、中心対称性を有する配置である。
通常、強誘電性を有している物質は、中心対称性を有していない配置(非中心対称性を有する配置)が秩序を持って繰り返される領域のみを有している。しかしながら、本実施形態では、上記の金属酸窒化物は、中心対称性を示す回折を生じる領域と、非中心対称性を示す回折を生じる領域とを有しており、非中心対称性を示す回折を生じる領域に起因する強誘電性を示すことができる。
本実施形態では、中心対称性を示す回折を生じる領域と、非中心対称性を示す回折を生じる領域と、は、どちらも非中心対称性を有する配置から構成されている。しかしながら、中心対称性を示す回折を生じる領域と、非中心対称性を有する回折を生じる領域と、においては、陰イオン(酸素イオンおよび窒素イオン)の配置秩序が維持される範囲が異なる。
中心対称性を示す回折を生じる領域では、陰イオンの配置は非中心対称性を有する配置となっているものの、その配置が結晶粒子全体にランダムに存在しており、また非中心対称性を有する配置は単位格子の大きさ程度であり、非中心対称性に起因して生じる分極が影響を与える範囲が小さい。したがって、当該領域では、分極の向きが全方位的に存在しているので、当該領域は全体として特定の方向に向いた分極は存在せず、中心対称性を有していると見なすことができる。その結果、本実施形態に係る金属酸窒化物を回折法により分析すると、当該領域は、中心対称性を示す回折が生じる領域であり、第2相としての非中心対称性を示す回折を生じる領域としては検出されない。
一方、非中心対称性を有する配置が秩序的に配列している領域では、特定の方向に配置秩序が繰り返されるため、その方向において非中心対称性が強められる。このような領域がある程度の大きさになると、この領域において生じる回折が、中心対称性を示す回折に影響を与えることがある。後述するが、非中心対称性を示す回折が生じると、中心対称性を示す回折が影響され、中心対称性を示す回折が生じる領域のみから構成される金属酸窒化物が示す回折パターンとは異なる回折パターンが得られる。
このような回折パターンが得られる金属酸窒化物では、陰イオンが秩序的に配列している領域が大きく、強誘電性を発現させる起点となる。一方、金属酸窒化物が中心対称性を示す回折が生じる領域を有することにより、誘電損失が小さくなる。
BO八面体では、図3Aに示すように、2個の窒素(N)イオン12が互いに隣り合う配置(cis配置)と、図3Bに示すように、2個の窒素イオン(N)12が互いに隣り合わない配置(trans配置)と、がある。酸素イオンの結合長さと窒素イオンの結合長さとが異なるので、cis配置およびtrans配置のどちらも非中心対称性を有する配置である。
本実施形態では、非中心対称性を有する配置は、cis配置であることが好ましい。したがって、中心対称性を示す回折を生じる領域および非中心対称性を示す回折を生じる領域は、cis配置から構成されていることが好ましい。
図3Aに示すcis配置のBO八面体では、a軸方向とc軸方向とに窒素イオンが存在しているが、a軸方向とb軸方向とに窒素イオンが存在するBO八面体およびb軸方向とc軸方向とに窒素イオンが存在するBO八面体もcis配置である。したがって、これらのBO八面体がランダムに存在し、頂点共有することにより、非中心対称性が弱められ、中心対称性を示す回折を生じる領域が形成される。
これに対して、cis配置が秩序を持って存在する構造を図4に示す。図4において、cis配置秩序構造では、八面体の頂点のうち、c軸方向のサイト(4a)の1つと、a軸およびb軸に平行な面上のサイト(8h)の1つと、に窒素が配置されている。その結果、BO八面体は、Bを結ぶ軸(図3ではc軸)から傾いた状態で連なった八面体鎖を形成する。本実施形態では、窒素がcis配置である八面体が連なって形成されるこのような秩序構造が、BO八面体がランダムに存在にする(BO八面体の秩序範囲が狭い)領域に起因する回折パターンに影響を与える。
なお、中心対称性を示す回折を生じる領域と、非中心対称性を示す回折を生じる領域と、において、陽イオンの種類が同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、陽イオンの種類は同じであることが好ましい。金属酸窒化物を構成する元素の種類を少なくすることにより、コンタミが抑制でき、製造プロセスの負荷を低減することができる。
金属酸窒化物において、中心対称性を示す回折を生じる領域と非中心対称性を示す回折を生じる領域とが存在しているか否かは、たとえば、以下のようにして評価することができる。このような原子の位置により決定される構造は、XRD回折により評価することが多い。しかしながら、上述したように、上記の金属酸窒化物において、中心対称性を示す回折を生じる領域であるか、非中心対称性を示す回折を生じる領域であるかは、陰イオン(酸素および窒素)の配置の違いに依存している。酸素および窒素のような軽元素の位置を反映する回折ピークの強度は、金属元素(AおよびB)の位置を反映する回折ピークの強度よりも弱く、軽元素の位置を反映する回折ピークを直接評価することは困難である。
しかしながら、陰イオンの配置の違いは、XRD回折により観察される回折ピークの強度に影響を与えることがある。そこで、本実施形態では、所定の面で反射される回折ピークの強度と、別の面で反射される回折ピークの強度との比に基づき、金属酸窒化物中に、中心対称性を示す回折を生じる領域と非中心対称性を示す回折を生じる領域とが存在しているか否かを評価する。
まず、中心対称性を示す回折を生じる領域のみから構成されるペロブスカイト型金属酸窒化物に対する粉末XRD回折の測定結果またはシミュレーション結果を得る。X線源がCu−Kα線である場合、回折角2θが20°から25°の範囲内に現れる回折ピークのうち、最強の回折ピークP1の強度と、回折角2θが44°から50°の範囲内に現れる回折ピークのうち、最強の回折ピークP2の強度と、から強度比IR(P1の強度/P2の強度)を算出し、リファレンスとする。XRD回折シミュレーションは公知のソフトウェアで行うことができる。
次に、リファレンスと同じ組成を有する金属酸窒化物に対して、XRD回折測定を行い、回折ピークのパターンを得る。得られた回折ピークのパターンにおいて、回折ピークP1の強度と、回折ピークP2の強度と、から強度比IR(P1の強度/P2の強度)を算出して、リファレンスの強度比を100%としたときの比率A(IR/IR)を算出することにより、金属酸窒化物中において中心対称性を示す回折を生じる領域と非中心対称性を示す回折を生じる領域とが存在しているか否かを評価することができる。
なお、回折ピークの強度比は配向によっても変化するが、上記の強度比IRは配向に起因していないため、強度比IR(P1の強度/P2の強度)は面直(out of plane)方向、面内(in-plane)方向の両方から測定された回折ピークにおいて同じ関係を示す。例えば、P1の強度/P2の強度<1が維持される。一方、配向している場合は、面直方向、面内方向でその関係が逆転する。例えば、面直方向ではP1の強度/P2の強度>1であるのに対し、面内方向ではP1の強度/P2の強度<1となる。
本実施形態では、比率Aが0%以上80%以下である時に、金属酸窒化物中に、中心対称性を示す回折を生じる領域と、非中心対称性を示す回折を生じる領域とが存在していると判断する。
なお、本実施形態に係る金属酸窒化物薄膜は無配向であることが好ましい。本実施形態では、無配向であるか否かは以下のようにして判断する。まず、金属酸窒化物結晶において直交する2つの面を選択する。金属酸窒化物薄膜について、in-plane,out-of-plane方向の両方からXRD測定を行い、in-plane方向のXRD測定において強度が大きかった方のピークを基準とし、基準のピーク強度100%に対して小さい方のピーク強度の割合B1(小さい方なので<100%)を算出しておく。続いて、out-of-plane方向のXRD測定においてin-plane方向のXRD測定で基準とした位置のピークの強度100%に対して他方のピーク強度の割合B2を算出する。そして、この両者の差(|B1−B2|)が80%以内である場合に、薄膜が無配向であると判断する。
具体的な例を示すと、in-plane方向のXRD測定において、(220)面のピーク強度100%に対して、(002)面のピーク強度が80%であるところ、out-of-plane方向のXRD測定において、(220)面のピーク強度100%に対して、(002)面のピーク強度が120%である場合、(002)面のピーク強度の差は、40%(120%−80%)となる。したがって、この場合には、金属酸窒化物薄膜は無配向であると判断される。
また、中性子線回折を利用すれば、軽元素の位置を評価することができる。中性子線回折測定結果により精密化させた結晶構造において、ABONがSrTaONまたは(SrLa)TaONである場合には、中心対称性を有する構造は空間群I4/mcm(Table No.140)に属し、cis配置秩序構造に起因する非中心対称性を有する構造は空間群Pmc2(Table No.26)に属することが知られている。
ABONがBaTaONまたは(BaLa)TaONである場合には、中心対称性を有する構造は空間群Pm−3m(Table No.221)に属し、cis配置秩序構造に起因する非中心対称性を有する構造は空間群Pmc2(Table No.26)に属していることが知られている。
(2.薄膜キャパシタの製造方法)
次に、図1に示す薄膜キャパシタ1の製造方法の一例について以下に説明する。
まず、基板51を準備する。基板51として、たとえば、Si単結晶基板を用いる場合、当該基板の一方の主面に絶縁層(たとえば、SiO)を形成する。絶縁層を形成する方法としては、熱酸化法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の公知の成膜法を用いればよい。
続いて、形成された絶縁層上に、公知の成膜法、たとえば、スパッタリング法を用いて第1の電極を構成する材料の薄膜を形成して第1の電極52を形成する。
続いて、公知の成膜法を用いて、金属酸窒化物薄膜53を第1の電極52上に形成する。
公知の成膜法としては、たとえば、真空蒸着法、スパッタリング法、パルスレーザー蒸着法(Pulsed Laser Deposition:PLD)、有機金属化学気相成長法(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)、有機金属分解法(Metal Organic Decomposition:MOD)またはゾルゲル法、化学溶液堆積法(Chemical Solution Deposition:CSD)が例示される。
成膜用原料としては、たとえば、各種ターゲット材料、蒸着材料、有機金属材料等が例示される。成膜用原料には微量の不純物、副成分が含まれている場合があるが、本発明の効果を大きく劣化させるものでなければ、特に問題はない。
これらの成膜法のうち、成膜用原料を一旦原子レベルまたは分子レベルに分離または励起した後に、基板上に堆積させて成膜を行う公知の気相成長法が好ましい。以下では、気相成長法として、スパッタリング法を用いて、金属酸窒化物薄膜を成膜する方法について述べる。
スパッタリング法を用いて金属酸窒化物薄膜を成膜する場合、成膜用原料として、所定の組成を有するターゲットを用いる。また、Aサイト原子であるバリウムおよび/またはストロンチウムの一部をランタンで置換すると、ペロブスカイト構造が歪みやすい。したがって、Aサイト原子として、ランタンを所定の割合で含むターゲットを用いることにより、結晶構造の一部において、対称性を低下させ、中心対称性を示す回折を生じる領域中に、非中心対称性を示す回折を生じる領域を形成することが容易となる。
成膜時には、薄膜を結晶化させるために、基板を加熱することが好ましい。成膜時の基板温度は、薄膜の構成元素、組成等に応じて決定すればよいが、本実施形態では、強度比を上記の範囲内とするために、基板温度は500℃〜800℃の範囲内であることが好ましい。基板温度が低すぎると、薄膜が結晶化しない傾向にあり、基板温度が高すぎると、窒素が脱離する傾向にある。
また、強度比を上記の範囲内とするために、高周波電力(印加電力)は50W〜300Wの範囲内であることが好ましい。高周波電力が小さすぎると、成膜レートが顕著に低下する傾向がある。一方、高周波電力が大きすぎると、異常粒成長により特性が低下する傾向がある。
ターゲットとして、酸化物を用いる場合、成膜時の雰囲気ガスは、酸素ガスおよび窒素ガスを少なくとも含む。このような雰囲気ガスを用いることにより、得られる薄膜の絶縁特性が確保され、誘電体としての薄膜が得られる。本実施形態では、強度比を上記の範囲内とするために、酸素ガス圧は0.01Pa以上0.1Pa以下の範囲内であることが好ましい。酸素ガス圧を上記の範囲内とすることにより、結晶中において対称性の低下が生じやすくなり、強度比を上記の範囲内とすることが容易となる。同様に、窒素ガス圧は0.01Pa以上0.1Pa以下の範囲内であることが好ましい。
また、雰囲気ガスと別にArガス等の不活性ガスを導入すると良い。Arガスはターゲットから原子をたたき出すのに使用されるため、プラズマが安定に維持される圧力を得るために必要な量を導入すると良い。なお、プラズマが安定に維持される状態は入力電圧とArガス圧に依存するため、チャンバーの大きさおよびターゲットのサイズに合わせてそれらを調整すればよい。
また、本実施形態では、成膜時に、金属酸化物薄膜を経由せず、金属酸窒化物を基板上に直接成膜してもよいし、金属酸化物薄膜を成膜し、成膜した金属酸化物薄膜の結晶構造内に窒素を導入して金属酸窒化物薄膜を得てもよい。どちらの場合であっても、窒化処理として、金属酸化物膜の成膜時に窒素ラジカルを成膜室に導入する方法、窒素ガスなどを用いる反応性スパッタを用いる方法、プラズマ窒化により活性化された窒素を用いる方法等を用いることが可能である。
このような方法によれば、毒性のある気体を使用せずに金属酸窒化物薄膜を成膜できるので、好ましい。また、金属窒化物薄膜の部分酸化処理なども用いることが可能である。本実施形態では、金属酸化物の原料を用いて成膜する際に、窒化に用いる窒素を導入して、金属酸窒化物を得ることが好ましい。
このようにして得られる金属酸窒化物薄膜は、誘電体として働く堆積膜である。
次に、本実施形態では、形成した金属酸窒化物薄膜53上に、公知の成膜法を用いて上部電極を構成する材料の薄膜を形成して第2の電極54を形成する。
以上の工程を経て、図1に示すように、基板51上に、キャパシタ部(第2の電極52、金属酸窒化物薄膜53および第2の電極54)が形成された薄膜キャパシタ1が得られる。
(3.本実施形態のまとめ)
本実施形態では、金属酸窒化物は、中心対称性を示す回折を生じる領域と非中心対称性を示す回折を生じる領域とを有している。中心対称性を示す回折を生じる領域は、非中心対称性を有する配置から構成されており、微視的に見ると、非中心対称性に起因する自発分極が生じているものの、非中心対称性を有する配置はランダムな方向に存在しているので、生じる自発分極は打ち消される。その結果、非中心対称性を有する配置から構成されているにもかかわらず、中心対称性を示す回折が生じる。したがって、当該領域全体では自発分極は生じないので、当該領域は常誘電性である。
一方、非中心対称性を有する配置が秩序を持っている存在している領域が、自発分極が生じる程度に大きいので、当該領域では、結合長さが異なる2種の陰イオンの変位により自発分極が生じている。したがって、当該領域は強誘電性である。
その結果、中心対称性を示す回折を生じる領域と非中心対称性を示す回折を生じる領域との両方が存在していることにより、金属酸窒化物は、全体として強誘電性を示しつつ、誘電損失が小さい。したがって、強誘電性を利用する用途に好適でありながら、常誘電体の特徴である誘電損失の小ささを兼ね備えることができる。
また、非中心対称性に起因する分極は2種の陰イオンの変位により実現されているので、結晶の歪みが、陽イオンの変位により生じる歪みよりも小さい。したがって、強誘電性と誘電損失とを両立することが容易である。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
以下、実施例において、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実験1)
まず、成膜用原料としてのターゲットの原料として、炭酸ストロンチウム(SrCO)、炭酸バリウム(BaCO)、酸化ランタン(La)、酸化チタン(TiO)および酸化タンタル(Ta)を準備した。準備した原料を、表1に示す組成(実施例1〜14および比較例1〜5)になるように秤量した。秤量後の原料を、溶媒としてのエタノールとともに湿式ボールミルにて16時間混合を行った。得られた混合スラリーを恒温乾燥機にて80℃で12時間乾燥した。得られた混合物を乳鉢にて軽く解砕し、セラミック製のるつぼにいれ電気炉で1000℃、大気雰囲気中で2時間熱処理し、仮焼物を得た。
得られた仮焼物を、溶媒としてのエタノールとともに湿式ボールミルにて16時間粉砕を行い、粉砕後スラリーを恒温乾燥機にて80℃で12時間乾燥し粉砕物を得た。得られた粉砕物に対し、バインダーとしてポリビニールアルコール溶液を溶液中の固形物換算で0.6重量%添加、混合し造粒物を得た。造粒物を直径約23mm、高さ約9mmの円柱形状に成形し成形物を得た。成形物を電気炉にて、大気雰囲気中1400℃で2時間焼成し、焼結体を得た。得られた焼結体の上面および下面を鏡面研磨し、焼結体の高さを5mmとした成膜用ターゲットを得た。
上記のように得られた成膜用ターゲットを成膜装置に設置し、続いて、ターゲットに対向するよう表面に第1の電極としてPt膜を有するSi基板を設置した。窒素ラジカルを導入したスパッタリング法で厚さ500nmとなるように金属酸窒化物薄膜を成膜した。雰囲気ガスはAr、N、Oを用いた。
成膜条件は、基板温度を600℃、酸素ガス圧および窒素ガス圧を0.01Pa、プラズマ印加電力を150Wとし、実施例1〜14および比較例2〜5については、Arにより調整した全圧を2Pa以上とし、比較例1については、Arにより調整した全圧を1Pa以下とした。
次に、バルクの試料を以下のようにして作製した。まず、原料粉末として、炭酸ストロンチウム(SrCO)粉末および酸化タンタル(Ta)粉末を準備した。準備した粉末を、組成式SrTaONで表される金属酸窒化物が得られるように秤量した。
秤量したSrCO粉末およびTa粉末をエタノールで湿式混合し、1200℃−10時間の条件で仮焼きを空気中で2回行い、固相反応により、SrおよびTaを有する酸化物前駆体を得た。
続いて、得られた酸化物の前駆体に対して窒化処理を2回行い、組成式SrTaONで表される金属酸窒化物粉末を得た。窒化処理では、NHの供給速度を100ml/minとし、加熱温度を1000℃とし、加熱時間を20時間とした。
得られた金属酸窒化物粉末をボールミルにより16時間湿式粉砕した乾燥させた。乾燥後の金属酸窒化物粉末100質量%に対して、バインダーとしてポリビニールアルコールを0.6質量%添加して造粒し、造粒粉を得た。得られた造粒粉を金型に投入してプレス成形を行い、成形体を得た。
得られた成形体をN雰囲気下で焼成し、バルクの金属酸窒化物焼成体を得た。焼成条件は、保持温度を1400℃とし、保持時間を16時間とした。
得られた金属酸窒化物薄膜および金属酸窒化物焼成体について、下記に示す方法によりXRD測定を行い、X線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートにおいて、2θが20°から25°の範囲内に現れる最強回折ピークは、ABOの(002)面の回折ピークであり、2θが44°から50°の範囲内に現れる最強回折ピークは、ABOの(220)面の回折ピークであった。(220)面の回折ピークの強度に対する(002)面の回折ピークの強度(強度比)を算出した。
一方、中心対称性を有する構造のみから構成されるABOにおいて、(220)面の回折ピークの強度に対する(002)面の回折ピークの強度(強度比)は、メインピークの強度を100とすると20.4/21.9=0.93であった。この値をリファレンス(100%)として、各実施例および各比較例における強度比の比率を算出した。本実施例では、強度比の比率が80%以下である場合に、ABO中に、中心対称性を示す回折を生じる領域と非中心対称性を示す回折を生じる領域とが存在していると判断した。結果を表1に示す。
なお、バルクの金属酸窒化物焼成体では、強度比の比率が100%であった。すなわち、バルクの金属酸窒化物焼成体は、中心対称性を有する構造のみから構成されていた。また、金属酸窒化物の組成を変化させて金属酸窒化物焼成体を作製したが、どの試料も強度比の比率が100%であった。
続いて、得られた金属酸窒化物薄膜について、下記に示す方法により比誘電率および圧電応答の測定を行った。
(比誘電率)
比誘電率は、以下のようにして評価した。まず、得られた試料の金属酸窒化物薄膜上に、Agを直径100μmで蒸着し、上部電極とした。続いて、上部電極が形成された試料に対して、基準温度25℃において、周波数1kHzにおいて、上部電極が形成された試料に印加される電界強度が0.5Vrms/μmとなるように交流電圧を印加して測定された静電容量と、誘電体としての金属酸窒化物薄膜の厚みと、から、比誘電率(単位なし)を算出した。本実施例では、比誘電率は150以上である試料を良好であると判断した。結果を表1に示す。これは、たとえばSrTaONにおいて狙いの組成外のSrTaに準じる結晶が形成された場合に得られる比誘電率がおよそ50であり、サンプルや組成のばらつきを鑑みても比誘電率が100を超えることはないためである。比誘電率が100以上であればSrTaONに準じた結晶が形成されたと判断でき、また比誘電率が150以上であれば特に望ましい結晶構造が形成されたと判断できるためである。
(圧電応答)
圧電応答の測定は、AFMのモードの一つである圧電応答顕微鏡(PRM:Piezo−Response Microscope)を用いた。
得られた金属酸窒化物薄膜の表面に所定の電圧を印加し表面を分極させて、図5に示す分極パターンを作成した。具体的には、X1=10μm四方に−1Vの電圧を印加した。次にまたは同時に、中央のX2=7μm四方に+1Vの電圧を印加した。次にまたは同時に、中央のX3=5μm四方に−1Vの電圧を印加した。次にまたは同時に中央のX4=3μm四方に+1Vの電圧を印加した。次にまたは同時に中央のX5=1μm四方に−1Vの電圧を印加した。
そして、図5に示す分極パターンに、走査周波数0.5Hz、励振電圧(外部交流電場)を−0.3V〜+0.3Vの条件で電圧を印加し、PRMにより残留分極による変位が測定できるか否かを評価した。変位が測定される場合には、金属酸窒化物が圧電応答している。結果を表1に示す。
Figure 2021123799
表1より、中心対称性を示す回折を生じる領域と、非中心対称性を示す回折を生じる領域とが存在し、所定の組成および平均イオン価数を満足している場合には、金属酸窒化物薄膜全体として残留分極を有する、すなわち、強誘電性を有していることが確認できた。
1… 薄膜キャパシタ
51… 基板
52… 第1の電極
53… 金属酸窒化物薄膜
54… 第2の電極
15… 八面体
11… 酸素
12… 窒素
13… Bサイト原子
14… Aサイト原子

Claims (6)

  1. 一般式ABOで表され、ペロブスカイト構造を有する金属酸窒化物を含む金属酸窒化物薄膜であって、
    前記Aが、バリウム、ストロンチウムおよびランタンからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、前記Bがタンタルおよびチタンからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
    前記Aが前記ペロブスカイト構造におけるAサイトを占めた場合に示すイオン価数をa、前記Bが前記ペロブスカイト構造におけるBサイトを占めた場合に示すイオン価数をbとした場合、前記aおよびbが6.7≦a+b≦7.3である関係を満足し、
    前記一般式中のxおよびyが、
    2.000≦x≦3.275、
    0.150≦y≦1.000である関係を満足し、
    前記金属酸窒化物は、中心対称性を示す回折を生じる領域と、非中心対称性を示す回折を生じる領域と、を有する金属酸窒化物薄膜。
  2. 中心対称性を示す回折を生じる領域のみから構成され、前記金属酸窒化物薄膜と同じ組成を有するペロブスカイト型金属酸窒化物に対する、Cu−Kα線をX線源とする粉末X線回折または粉末X線回折シミュレーションにより得られるX線回折パターンにおいて、回折角2θが20°から25°の範囲内に現れ前記ペロブスカイト構造に帰属する回折ピークのうち、最強の回折ピークをP1とし、回折角2θが44°から50°の範囲内に現れ前記ペロブスカイト構造に帰属する回折ピークのうち、最強の回折ピークをP2とし、P2の強度に対するP1の強度比IRとし、Cu−Kα線をX線源とする面直X線回折および面内X線回折により得られる前記金属酸窒化物薄膜のX線回折パターンにおいて、P2の強度に対するP1の強度比をIRとしたときに、IRに対するIRの比率Aが0%以上80%以下であり、前記金属酸窒化物薄膜が残留分極を有する請求項1に記載の金属酸窒化物薄膜。
  3. 前記中心対称性を示す回折を生じる領域と、前記非中心対称性を示す回折を生じる領域とにおいて、陰イオンの配置秩序範囲が異なる請求項1または2に記載の金属酸窒化物薄膜。
  4. 前記中心対称性を示す回折を生じる領域と、前記非中心対称性を示す回折を生じる領域とは、同じ陽イオンを有している請求項3に記載の金属酸窒化物薄膜。
  5. 前記xおよび前記yが、
    2.450≦x≦3.275、
    0.150≦y≦0.700である関係を満足する請求項1から4のいずれかに記載の金属酸窒化物薄膜。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の金属酸窒化物薄膜を備える容量素子。
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