(評価用基材の製造方法、及び評価用基材の製造装置)
本発明の評価用基材の製造方法は、基材に、固定材Aを含有する溶液を付与する固定材A含有溶液付与工程と、前記固定材Aに対して混合(若しくは反応)が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液を付与する固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程と、を含み、前記固定材Aと、前記固定材Bとのそれぞれ少なくとも一部が混合(若しくは反応)されてハイドロゲルを形成し、前記細胞が、前記ハイドロゲルを介して前記基材に固定され、前記固定材A及び前記固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程を含むことが好ましく、更に必要に応じて、培地を付与する工程、その他の工程を含む。
本発明の評価用基材の製造方法は、従来の基体の製造方法、及び化合物のスクリーニング方法では、試験をする前準備として試験に使用する細胞を培養容器に播種して、細胞が培養容器に自ら接着するまで約24時間の培養時間を必要とするという問題があるという知見に基づくものである。
また、本発明の評価用基材の製造方法は、従来の基体の製造方法、及び化合物のスクリーニング方法では、少ない細胞数で培養容器に播種すると培養容器に接着する細胞が想定よりも少ない細胞数となり、正確な試験結果を得られないことがあり、かつ薬効乃至毒性の評価における試験時間や細胞数にかなり制約があるという問題があるという知見に基づくものである。さらに、1つの試験を行うためには、細胞が培養容器に接着するまでの時間を確保しなければならず、細胞数を一定数以上担保することが難しい細胞において、薬効乃至毒性試験をすることができず、試験方法や試験を行う細胞種に制限があるという問題があるという知見に基づくものである。
本発明の評価用基材の製造装置は、基材と、前記基材に、固定材Aを含有する溶液を付与する固定材A含有溶液付与手段と、前記固定材Aに対して混合(若しくは反応)が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液を付与する固定材B及び細胞含有懸濁液付与手段と、を有し、前記細胞が、前記固定材Aと、前記固定材Bとのそれぞれ少なくとも一部が混合(若しくは反応)されて形成されたハイドロゲルを介して前記基材に固定され、前記固定材A及び前記固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する手段を有することが好ましく、更に必要に応じて、培地を付与する手段、その他の手段を有する。
図1Aは、本発明の評価用基材の製造方法により製造された評価用基材の一例を示す概略平面図である。図1Bは、図1Aの評価用基材のA-A’断面図である。
本発明の評価用基材の製造方法によれば、図1Aに示すように、基材2上に、固定材A及び固定材Bのそれぞれ少なくとも一部が混合されて形成されたハイドロゲル3に、細胞4が所望の位置に配置された評価用基材1を得ることができる。また、図1Bに示すように、細胞4は、ハイドロゲル3に固定されることにより、ハイドロゲルを介して、基材2に接着することができる。これにより、細胞が培養されて基材に接着する時間を短縮することができ、短時間で評価用基材1を得ることができる。
また、本発明の評価用基材の製造方法によれば、所望の位置に細胞を配置した評価用基材を得ることができる。
<固定材A含有溶液付与工程、及び固定材A含有溶液付与手段>
固定材A含有溶液付与工程は、基材に、固定材Aを含有する溶液を付与する工程である。
固定材A含有溶液付与手段は、基材に、固定材Aを含有する溶液を付与する手段である。
固定材A含有溶液付与工程は、固定材A含有溶液付与手段により好適に実施することができる。
<<基材>>
基材としては、細胞の活性や増殖を阻害しないものであれば、その大きさ、形状、構造、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
基材の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディッシュ、マルチプレート、フラスコ、セルインサート等の立体形状;ガラスプレート、スライドガラス、カバーガラス等の平板状;平膜状などが挙げられる。
基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多孔質構造、メッシュ構造、凹凸構造、ハニカム構造などが挙げられる。
基材の材質としては、例えば、有機材料、無機材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
有機材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ウレタンアクリレート等のアクリル系材料、セルロースなどが挙げられる。
無機材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。
-固定材Aを含有する溶液-
固定材Aを含有する溶液は、固定材Aを含み、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
--固定材A--
固定材Aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コラーゲン、エラスチン、ゼラチン、フィブロイン等の生体由来ポリマー;フィブリノーゲン等の凝固因子;フィブロネクチン、ラミニン、リコンビナントペプチド等の接着因子;アルギン酸、ジェランガム等の多糖化合物金属塩;ポリ乳酸等の合成ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、凝固因子が好ましく、フィブリノーゲンがより好ましい。
-その他の成分-
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培地、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤などが挙げられる。
固定材Aを付与する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マイクロピペット等を用いたピペット分注法、マイクロマニピュレーター法、アスピレータ法、液滴吐出法(インクジェット法)、ゲル押し出し法、スクリーン印刷法等の転写法などが挙げられる。
<固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程、並びに固定材B及び細胞含有懸濁液付与手段>
固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程は、固定材Aに対して混合が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液を付与する工程である。
固定材B及び細胞含有懸濁液付与手段は、固定材Aに対して混合が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液を付与する手段である。
固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程は、固定材B及び細胞含有懸濁液付与手段により好適に実施することができる。
固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程、並びに固定材B及び細胞含有懸濁液付与手段としては、インクジェット法を好適に用いることができる。
-固定材Aに対して混合が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液-
固定材Aに対して混合が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液は、固定材B、及び細胞を含み、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
--固定材B--
固定材Bとしては、固定材Aと固定材Bとが混合されてハイドロゲルを形成するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、固定材A及び固定材Bが、混合により増粘することが好ましい。
固定材Bとしては、固定材Aと固定材Bとが混合されてハイドロゲルを形成するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多糖類、多価金属塩、フィブリノーゲン、トロンビン、フィブロネクチン、ラミニン、リコンビナントペプチド、キトサン、キチンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、固定材Aがフィブリノーゲンである場合、固定材Bとしてはトロンビンが好ましい。
--細胞--
細胞は、その種類等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、分類学的に、例えば、真核細胞、原核細胞、多細胞生物細胞、単細胞生物細胞を問わず、すべての細胞について使用することができる。
真核細胞としては、例えば、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、動物細胞が好ましく、前記細胞が細胞集合体を形成する場合は、細胞と細胞とが互いに接着し、物理化学的な処理を行わなければ単離しない程度の細胞接着性を有する接着性細胞がより好ましい。
接着性細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分化した細胞、未分化の細胞などが挙げられる。
分化した細胞としては、例えば、肝臓の実質細胞である肝細胞;星細胞;クッパー細胞;血管内皮細胞;類道内皮細胞、角膜内皮細胞等の内皮細胞;繊維芽細胞;骨芽細胞;砕骨細胞;歯根膜由来細胞;表皮角化細胞等の表皮細胞;気管上皮細胞;消化管上皮細胞;子宮頸部上皮細胞;角膜上皮細胞等の上皮細胞;乳腺細胞;ペリサイト;平滑筋細胞、心筋細胞等の筋細胞;腎細胞;膵ランゲルハンス島細胞;末梢神経細胞、視神経細胞等の神経細胞;軟骨細胞;骨細胞などが挙げられる。前記接着性細胞は、組織や器官から直接採取した初代細胞でもよく、又はそれらを何代か継代させたものでもよい。
未分化の細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、未分化細胞である胚性幹細胞、多分化能を有する間葉系幹細胞等の多能性幹細胞;単分化能を有する血管内皮前駆細胞等の単能性幹細胞;iPS細胞などが挙げられる。
原核細胞としては、例えば、真正細菌、古細菌などが挙げられる。
細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正常ヒト皮膚線維芽細胞などが挙げられる。
正常ヒト皮膚線維芽細胞としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、商品名:CC2507(Lonza社製)などが挙げられる。
-その他の成分-
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培地、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤などが挙げられる。
固定材A及び固定材Bにおいて用いられる材料としては、固定材Aで列挙される材料を固定材Bとして固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程に用い、固定材Bで列挙される材料を固定材Aとして固定材A含有溶液付与工程に用いてもよく、目的に応じて適宜、入れ替えることができる。
固定材B及び細胞含有懸濁液付与手段としては、液滴吐出法(インクジェット法)により、固定材B及び細胞を含有する懸濁液として吐出する手段(以下、「吐出ヘッド」とも称することがある)を好適に用いることができる。ただし、固定材Bを付与する方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、液滴(懸濁液)を所望の位置に付与できる方法であればよく、本実施例にて記載するインクジェット法以外にも、例えば、マイクロマニピュレーター法、ゲル押し出し法、スクリーン印刷法等の転写法などが挙げられる。なお、インクジェット法とはノズルより液滴を連続的に滴下させる方法である。
インクジェット法としては、例えば、オンデマンド方式、コンティニュアス方式などが挙げられる。これらの中でも、コンティニュアス方式の場合、安定的な吐出状態に至るまでの空吐出、液滴量の調整、ウェルプレートの各ウェル間を移動する際にも連続的に液滴形成を行い続ける等の理由から、用いる懸濁液のデッドボリュームが多くなる傾向にある。本発明では細胞数を調整する観点からデッドボリュームによる影響を低減させることが好ましく、そのため上記2つの方式では、オンデマンド方式の方がより好適である。
オンデマンド方式としては、例えば、液体に圧力を加えることによって液体を吐出する圧力印加方式、加熱による膜沸騰によって液体を吐出するサーマル方式、静電引力によって液滴を引っ張ることによって液滴を形成する静電方式等の既知の複数の方式などが挙げられる。これらの中でも、以下の理由から、圧力印加方式が好ましい。
静電方式は、懸濁液を保持して液滴を形成する吐出部に対向して電極を設置する必要がある。本発明の評価用基材の製造方法では、液滴を受けるための基材が対向して配置されており、基材構成の自由度を上げるため電極の配置は無いほうが好ましい。
サーマル方式は、局所的な加熱が発生するため生体材料である細胞への影響や、ヒーター部への焦げ付き(コゲーション)が懸念される。熱による影響は、含有物や基材の用途に依存するため、一概に除外する必要はないが、圧力印加方式は、サーマル方式よりヒーター部への焦げ付きの懸念がないという点から好ましい。
圧力印加方式としては、ピエゾ素子を用いて液体に圧力を加える方式、電磁バルブ等のバルブによって圧力を加える方式などが挙げられる。懸濁液の液滴吐出に使用可能な液滴生成デバイスの構成例を図2A~図2Cに示す。
図2Aは、電磁バルブ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。電磁バルブ方式の吐出ヘッドは、電動機13a、電磁弁112、液体収容部としての液室を構成する液室壁11a、懸濁液300a、及びノズル111aを有する。
電磁バルブ方式の吐出ヘッドとしては、例えば、TechElan社のディスペンサなどを好適に用いることができる。
また、図2Bは、ピエゾ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。ピエゾ方式の吐出ヘッドは、圧電素子13b、液体収容部としての液室を構成する液室壁11b、懸濁液300b、及びノズル111bを有する。
ピエゾ方式の吐出ヘッドとしては、Cytena社のシングルセルプリンターなどを好適に用いることができる。
これらの吐出ヘッドのいずれも用いることが可能であるが、電磁バルブによる圧力印加方式では高速に繰り返し液滴を形成することができないため、評価用基材の製造のスループットを上げるためにはピエゾ方式を用いることが好ましい。また、一般的な圧電素子13bを用いたピエゾ方式の吐出ヘッドでは、沈降によって細胞濃度のムラが発生することや、ノズル詰まりが生じることが問題として生じることがある。
このため、より好ましい構成として図2Cに示した構成などが挙げられる。図2Cは、図2Bにおける圧電素子を用いたピエゾ方式の吐出ヘッドの変形例の模式図である。図2Cの吐出ヘッドは、圧電素子13c、液体収容部としての液室を構成する液室壁11c、懸濁液300c、及びノズル111cを有する。
図2Cの吐出ヘッドでは、図示していない制御装置からの圧電素子13cに対して電圧印加することにより、紙面横方向に圧縮応力が加わりメンブレンを紙面上下方向に変形させることができる。
オンデマンド方式以外の方式としては、例えば、連続的に液滴を形成させるコンティニュアス方式などが挙げられる。コンティニュアス方式では、液滴を加圧してノズルから押し出す際に圧電素子やヒーターによって定期的なゆらぎを与え、それによって微小な液滴を連続的に作り出すことができる。さらに、飛翔中の液滴の吐出方向を電圧を印加することによって制御することにより、ウェルに着弾させるか、回収部に回収するかを選ぶことも可能である。このような方式は、セルソーター、又はフローサイトメーターで用いられており、例えば、ソニー株式会社製の装置名:セルソーターSH800を用いることができる。
図3Aは、圧電素子に印加する電圧の一例を示す模式図である。また、図3Bは、圧電素子に印加する電圧の他の一例を示す模式図である。図3Aは、液滴を形成するための駆動電圧を示す。電圧(VA、VB、VC)の強弱により、液滴を形成することができる。図3Bは、液滴の吐出を行わずに懸濁液を撹拌するための電圧を示している。
液滴を吐出しない期間中に、液滴を吐出するほどには強くない複数のパルスを入力することによって、液質内の懸濁液を撹拌することが可能であり、細胞沈降による濃度分布の発生を抑制することができる。
本発明において使用することができる吐出ヘッドの液滴形成動作に関して、以下に説明する。
吐出ヘッドは、圧電素子に形成された上下電極に、パルス状の電圧を印加することにより液滴を吐出することができる。図4A~図4Cは、それぞれのタイミングにおける液滴の状態を示す模式図である。図4Aは、まず、圧電素子13cに電圧を印加することにより、メンブレン12cが急激に変形することによって、液室壁11cとノズル部が形成されるメンブレン12cとによって形成される液室内に保持された懸濁液とメンブレン12cとの間に高い圧力が発生し、この圧力によってノズル部から液滴が外に押し出される。次に、図4Bに示すように、圧力が上方に緩和するまでの時間、ノズル部からの液押し出しが続き液滴が成長する。最後に、図4Cに示すように、メンブレン12cが元の状態に戻る際に懸濁液とメンブレン12cとの界面近傍の液圧力が低下し、液滴310’が形成される。
本発明に用いられる液滴形成装置について、図5から図7を用いて説明する。
図5は、液滴形成装置の一例を示す模式図である。図5に示すように、液滴形成装置1Aは、吐出ヘッド(液滴吐出手段)10と、駆動手段20と、制御手段70とを有する。
吐出ヘッド10は、液室壁11と、メンブレン12と、駆動素子13とを有しており、固定材B及び細胞350を含有する懸濁液300を液滴として吐出することができる。
液室壁11とノズル部が形成されるメンブレン12とによって形成される液室は、固定材B及び細胞350を含有する懸濁液300を保持する液体保持部であり、下面側には貫通孔であるノズル111が形成されている。液室は、例えば、金属やシリコン、セラミックス等から形成することができる。
メンブレン12は、液室壁11の上端部に固定された膜状部材である。メンブレン12の平面形状は、例えば、円形とすることができるが、楕円状や四角形等としてもよい。
駆動素子13は、メンブレン12の上面側に設けられている。駆動素子13の形状は、メンブレン12の形状に合わせて設計することができる。例えば、メンブレン12の平面形状が円形である場合には、円形の駆動素子13を設けることが好ましい。
駆動素子13に駆動手段20から駆動信号を供給することにより、メンブレン12を振動させることができる。メンブレン12の振動により、細胞350を含有する液滴を、ノズル111から吐出させることができる。
駆動素子13として圧電素子を用いる場合には、例えば、圧電材料の上面及び下面に電圧を印加するための電極を設けた構造とすることができる。この場合、駆動手段20から圧電素子の上下電極間に電圧を印加することによって紙面横方向に圧縮応力が加わり、メンブレン12を紙面上下方向に振動させることができる。圧電材料としては、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を用いることができる。この他にも、ビスマス鉄酸化物、ニオブ酸金属物、チタン酸バリウム、或いはこれらの材料に金属や異なる酸化物を加えたもの等、様々な圧電材料を用いることができる。
制御手段70は、駆動手段20を制御する機能を有している。以下、図6を参照し、制御手段70の動作を含有する液滴形成装置1Aの動作について説明する。
図6は、図5の制御手段のハードウェアブロックを例示する図である。
図6に示すように、制御手段70は、CPU71と、ROM72と、RAM73と、I/F74と、バスライン75とを有している。CPU71、ROM72、RAM73、及びI/F74は、バスライン75を介して相互に接続されている。
CPU71は、制御手段70の各機能を制御する。記憶手段であるROM72は、CPU71が制御手段70の各機能を制御するために実行するプログラムや、各種情報を記憶している。記憶手段であるRAM73は、CPU71のワークエリア等として使用される。また、RAM73は、所定の情報を一時的に記憶することができる。I/F74は、液滴形成装置1Aを他の機器等と接続するためのインターフェイスである。液滴形成装置1Aは、I/F74を介して、外部ネットワーク等と接続されてもよい。
図7は、図5の吐出ヘッドの他の変形例を示す模式図である。図7に示すように、液滴形成装置1Bは、液滴吐出手段10が液滴吐出手段10Bに置換された点が、液滴形成装置1A(図5参照)と相違する。なお、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
液滴吐出手段10Bは、液室壁11Bと、メンブレン12Bと、駆動素子13Bとを有している。液室壁11Bにより構成される液室は、液室内を大気に開放する大気開放部115を上部に有しており、懸濁液300中に混入した気泡を大気開放部115から排出可能に構成されている。
メンブレン12Bは、液室壁11Bにより構成される液室の下端部に固定された膜状部材である。メンブレン12Bの略中心には貫通孔であるノズル121が形成されており、液室に保持された懸濁液300はメンブレン12Bの振動によりノズル121から液滴として吐出される。メンブレン12Bの振動の慣性により液滴を形成するため、高表面張力(高粘度)の懸濁液300でも吐出が可能である。メンブレン12Bの平面形状は、例えば、円形とすることができるが、楕円状や四角形等としてもよい。
メンブレン12Bの材質としては特に限定はないが、柔らか過ぎるとメンブレン12Bが簡単に振動し、吐出しないときに直ちに振動を抑えることが困難であるため、ある程度の硬さがある材質を用いることが好ましい。メンブレン12Bの材質としては、例えば、金属材料やセラミックス材料、ある程度硬さのある高分子材料等を用いることができる。
特に、細胞を用いる際には、細胞やタンパク質に対する付着性の低い材料であることが好ましい。細胞の付着性は一般的に材質の水との接触角に依存性があると言われており、材質の親水性が高い又は疎水性が高いときには細胞の付着性が低い。親水性の高い材料としては各種金属材料やセラミックス(金属酸化物)を用いることが可能であり、疎水性が高い材料としてはフッ素樹脂等を用いることが可能である。
このような材料の他の例としては、例えば、ステンレス鋼やニッケル、アルミニウム等や、二酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニアなどを挙げることができる。これら以外にも、材料表面をコーティングすることで細胞接着性を低下させることも考えられる。例えば、材料表面を前述の金属又は金属酸化物材料でコーティングすることや、細胞膜を模した合成リン脂質ポリマー(例えば、日油株式会社製、Lipidure)によってコーティングすることが可能である。
ノズル121は、メンブレン12Bの略中心に実質的に真円状の貫通孔として形成されていることが好ましい。この場合、ノズル121の径としては、特に限定はないが、細胞350がノズル121に詰まることを避けるため、細胞350の大きさの2倍以上とすることが好ましい。細胞350が、例えば、動物細胞、特にヒトの細胞である場合、ヒトの細胞の大きさは一般的に5μm~50μm程度であるため、ノズル121の径を、使用する細胞に合わせて10μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。
一方で、ノズル121の径は、200μm以下であることが好ましい。つまり、液滴吐出手段10Bにおいては、ノズル121の径は、典型的には10μm~200μmの範囲となる。
駆動素子13Bは、メンブレン12Bの下面側に形成されている。駆動素子13Bの形状は、メンブレン12Bの形状に合わせて設計することができる。例えば、メンブレン12Bの平面形状が円形である場合には、ノズル121の周囲に平面形状が円環状(リング状)の駆動素子13Bを形成することが好ましい。駆動素子13Bの駆動方式は、駆動素子13と同様とすることができる。
駆動手段20は、メンブレン12Bを振動させて液滴を形成する吐出波形と、液滴を形成しない範囲でメンブレン12Bを振動させる撹拌波形とを駆動素子13Bに選択的に(例えば、交互に)付与することができる。
例えば、吐出波形及び撹拌波形を何れも矩形波とし、吐出波形の駆動電圧よりも撹拌波形の駆動電圧を低くすることで、撹拌波形の印加により液滴が形成されないようにすることができる。つまり、駆動電圧の高低により、メンブレン12Bの振動状態(振動の程度)を制御することができる。
液滴吐出手段10Bでは、駆動素子13Bがメンブレン12Bの下面側に形成されているため、駆動素子13Bによりメンブレン12が振動すると、液室の下部方向から上部方向への流れを生じさせることが可能である。
この時、細胞350の動きは下から上への運動となり、液室内で対流が発生して固定材B及び細胞350を含有する懸濁液300の撹拌が起きる。液室の下部方向から上部方向への流れにより、沈降、凝集した細胞350が液室の内部に均一に分散する。
つまり、駆動手段20は、吐出波形を駆動素子13Bに加え、メンブレン12Bの振動状態を制御することにより、液室に保持された固定材B及び細胞350を含有する懸濁液300をノズル121から液滴として吐出させることができる。又、駆動手段20は、撹拌波形を駆動素子13Bに加え、メンブレン12Bの振動状態を制御することにより、液室に保持された固定材B及び細胞350を含有する懸濁液300を撹拌することができる。なお、撹拌時には、ノズル121から液滴は吐出されない。
このように、液滴を形成していない間に固定材B及び細胞350を含有する懸濁液300を撹拌することにより、細胞350がメンブレン12B上に沈降、凝集することを防ぐと共に、細胞350を固定材Bを含有する懸濁液300中にムラなく分散させることができる。これにより、ノズル121の詰まりを抑えることが可能となる。その結果、固定材B及び細胞350を含有する懸濁液300を、長時間連続して安定的に液滴として吐出することができる。
また、固定材B及び細胞350を含有する懸濁液300中に気泡が混入する場合がある。この場合でも、吐出ヘッド10Bにおいては、液室の上部に大気開放部115が設けられているため、固定材B及び細胞350を含有する懸濁液300中に混入した気泡を、大気開放部115を通じて外気に排出できる。これによって、気泡排出のために大量の液を捨てることなく、連続して安定的に液滴を形成することが可能となる。
すなわち、ノズル121の近傍に気泡が混入した場合や、メンブレン12B上に多数の気泡が混入した場合には吐出状態に影響を及ぼすため、長い時間安定的に液滴の形成を行うためには、混入した気泡を排出する必要がある。通常、メンブレン12B上に混入した気泡は、自然に若しくはメンブレン12Bの振動によって上方に移動するが、液室には大気開放部115が設けられているため、混入した気泡を大気開放部115から排出可能となる。そのため、液室に気泡が混入しても不吐出が発生することを防止可能となり、連続して安定的に液滴を形成することができる。
なお、液滴を形成しないタイミングで、液滴を形成しない範囲でメンブレン12Bを振動させ、積極的に気泡を液室の上方に移動させてもよい。
-ハイドロゲル-
ハイドロゲルとしては、固定材Aと、固定材Bとのそれぞれ少なくとも一部が混合(反応)されて形成される。
細胞の周囲は、固定材Aと、固定材Bとのそれぞれ少なくとも一部が混合されてハイドロゲルを形成していればよく、ハイドロゲル以外にも、固定材A及び固定材Bが共存している状態でもよい。
ハイドロゲルは、基材上において、細胞を基材に固定する。
ハイドロゲルは、細胞の少なくとも一部を被覆することが好ましく、細胞の全体を被覆することがより好ましい。ハイドロゲルが、細胞の少なくとも一部を被覆することにより、細胞の乾燥を防止することができる。
<固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程、及び固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する手段>
固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程は、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液に少なくとも一部が被覆された細胞が乾燥する時間に達した場合に、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程である。
固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する手段は、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液に少なくとも一部が被覆された細胞が乾燥する時間に達した場合に、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する手段である。
固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程は、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する手段により好適に実施することができる。
固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程は、基材上に付与された細胞の表面の少なくとも一部が露出している(被覆されていない)場合に、実施することが好ましい。固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与することにより、細胞の乾燥を防止することができる。
固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液としては、少なくとも一部が露出している細胞の表面に付与することが好ましい。
固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液に少なくとも一部が被覆された細胞が乾燥する時間としては、例えば、予め細胞の乾燥時間を実験により求めておくことなどが挙げられる。
被覆されていない細胞に付与する材料としては、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかが好ましく、固定材A及び固定材Bの両方を付与して、少なくとも一部がハイドロゲルを形成することがより好ましく、完全にハイドロゲルを形成することが特に好ましい。
また、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液以外にも、細胞の乾燥防止の点から、露出した細胞を被覆することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培地などを用いることもできる。
<培地を付与する工程、及び培地を付与する手段>
培地を付与する工程は、細胞が、ハイドロゲルを介して前記基材に固定された後に、ハイドロゲル上に培地を付与する工程である。
培地を付与する工程は、培地を付与する手段により好適に実施することができる。
培地を付与する手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マイクロピペット等を用いたピペット分注法、マイクロマニピュレーター法、アスピレータ法、インクジェット法、スクリーン印刷法等の転写法などが挙げられる。
-培地-
培地としては、組織体の形成と維持に必要な成分を含み、乾燥を防ぎ、浸透圧などの外部環境を整える溶液であり、当該分野で公知のものを適宜選択することができる。常時培地液内に浸しておく必要のない場合においては適宜除去してもよい。
培地としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然培地、半合成培地、合成培地等の組成により分類される培地;半固形培地、液体培地、粉末培地(以下、「粉培地」とも称することがある)等の形状により分類される培地などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。細胞が動物由来である場合、動物細胞の培養に用いられる培地であればいずれも用いることができる。
動物細胞の培養に用いられる培地としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagles’s Medium;D-MEM)、ハムF12培地(Ham’s Nutrient Mixture F12)、D-MEM/F12培地、マッコイ5A培地(McCoy’s 5A medium)、イーグルMEM培地(Eagles’s Minimum Essential Medium;EMEM)、αMEM培地(alpha Modified Eagles’s Minimum Essential Medium;αMEM)、MEM培地(Minimum Essential Medium)、RPMI1640培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium;IMDM)、MCDB131培地、ウィリアム培地E、IPL41培地、Fischer’s培地、StemPro34(インビトロジェン社製)、X-VIVO 10(ケンブレックス社製)、X-VIVO 15(ケンブレックス社製)、HPGM(ケンブレックス社製)、StemSpan H3000(ステムセルテクノロジー社製)、StemSpanSFEM(ステムセルテクノロジー社製)、StemlineII(シグマアルドリッチ社製)、QBSF-60(クオリティバイオロジカル社製)、StemProhESCSFM(インビトロジェン社製)、Essential8(登録商標)培地(ギブコ社製)、mTeSR1或いは2培地(ステムセルテクノロジー社製)、リプロFF或いはリプロFF2(リプロセル社製)、PSGro hESC/iPSC培地(システムバイオサイエンス社製)、NutriStem(登録商標)培地(バイオロジカルインダストリーズ社製)、CSTI-7培地(細胞科学研究所社製)、MesenPRO RS培地(ギブコ社製)、MF-Medium(登録商標)間葉系幹細胞増殖培地(東洋紡株式会社製)、Sf-900II(インビトロジェン社製)、Opti-Pro(インビトロジェン社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
培地中の二酸化炭素濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2%以上5%以下が好ましく、3%以上4%以下がより好ましい。前記二酸化炭素濃度が、2%以上5%以下であると、細胞を好適に培養させることができる。
ここで、図8Aから図8Cを用いて、本発明の評価用基材の製造方法について説明する。図8Aは、固定材A含有溶液付与工程の一例を示す概略図である。図8Bは、固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程の一例を示す概略図である。図8Cは、培地を付与する工程の一例を示す概略図である。
図8Aに示すように、固定材Aを含有する溶液21を、マイクロピペット22により基材20に付与する。次に、図8Bに示すように、インクジェットヘッド23を用いて、インクジェット法により、固定材B及び細胞26を含有する懸濁液を液滴24にして吐出して、固定材Aを含有する溶液21を含有する基材20に付与する。固定材B及び細胞26を含有する懸濁液を固定材Aを含有する溶液21に接触させることにより、固定材Aと固定材Bとが反応して、ハイドロゲル25が形成される。形成されたハイドロゲル25を介して、細胞26が基材20に接着した評価用基材を作製することができる。次に、図8Cに示すように、細胞26を含有するハイドロゲル25上に、培地27をマイクロピペット22により滴下して、ハイドロゲル25の乾燥防止や評価の前準備をすることができる。
次に、図9Aから図9Dを用いて、本発明の評価用基材の製造方法における固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程を含有する場合について説明する。図9Aは、固定材A含有溶液付与工程の一例を示す概略図である。図9Bは、固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程の一例を示す概略図である。図9Cは、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程の一例を示す概略図である。図9Dは、培地を付与する工程の一例を示す概略図である。
まず、図9Aに示すように、固定材Aを含有する溶液21を、マイクロピペット22により基材20に付与する。次に、図9Bに示すように、インクジェットヘッド23を用いて、インクジェット法により、固定材B及び細胞26を含有する懸濁液を液滴24にして吐出して、固定材Aを含有する溶液21を含有する基材20に付与する。この場合、固定材B及び細胞26を含有する懸濁液を固定材Aを含有する溶液21に接触させることにより、固定材Aと固定材Bとの少なくとも一部が混合されて、ハイドロゲル28が形成されるが、細胞26の表面の一部が、ハイドロゲル28から露出している。
そこで、図9Cに示すように、(ハイドロゲルに被覆されていない)細胞上に、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を液滴24’にてインクジェットヘッド23’からインクジェット法により吐出して、細胞26の(ハイドロゲルに被覆されていない)表面に付与して、固定材A、固定材B、ハイドロゲル、又はこれらの混ざった被覆膜24”を形成する。これにより、細胞26のハイドロゲルに被覆されていない表面が乾燥することを防止することができる。なお、細胞26の乾燥防止については、例えば、予め細胞26の乾燥時間を実験により求めておき、その実験データから得られた乾燥時間に基づいて、適切な時間間隔(タイミング)で、該当する細胞に対し、固定材B(又は固定材A)を吐出させることにより、細胞の乾燥を防止する方法が一例として考えられる。
次に、図9Dに示すように、細胞26を含有するハイドロゲル28上に、培地27をマイクロピペット22により滴下して、ハイドロゲル28の乾燥防止や評価の前準備をすることができる。
本発明の評価用基材としては、薬効乃至毒性の評価に好適に用いることができる。
本発明の評価用基材としては、薬効乃至毒性の評価に用いる場合は、図8C及び図9Dに示す培地に、薬効乃至毒性の評価を行う試薬を事前に添加したものを用いることにより評価を行うことができる。
薬効の評価を行う試薬としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オキサゾロン、ベンゾキノン、2,4-ジニトロコロベンジン、4-フェニレンジアミン、グルタルアルデヒド、ベンゾイルペルオキシド、4-メチルアミノフェノール硫酸塩、ホルムアルデヒド、シンナムアルデヒド、エチレンジアミン、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、イソオイゲノール、硫酸ニッケル(II)、ベンジリデンアセトン、2-ノニン酸メチル、サルチル酸ベンジル、ジエチレントリアミン、チオグリセロール、2-メルカプトベンゾチアゾール、フェニルアセトアルデヒド、ヘキシルシンナムアルデヒド、ジヒドロオイゲノール、ベンゾイソチアゾリオーネ、シトラール、レゾルシノール、安息香酸フェニル、オイゲノール、アビエチン酸、アミノ安息香酸エチル、ベンジルシンナメート、シンナミルアルコール、ヒドロキシシトロネラール、イミダゾリジニル尿素、ブチルグリシジルエーテル、エチレングリコールジメタクリラート、グリオキサール、4-ニトロベンジルブロミドなどが挙げられる。
毒性の評価を行う試薬としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化亜鉛、1-ブタノール、安息香酸、エチルバニリン、4-ヒドロキシ安息香酸、スルファニル酸、酒石酸、サリチル酸メチル、サリチル酸、ラウリル硫酸ナトリウム、乳酸、ベンジルアルコール、デキストラン、ジエチルフタレート、グリセロール、プロピルパラベン、Tween80、ジメチルイソフタレート、フェノール、クロロベンゼン、スルファニルアミド、オクタン酸などが挙げられる。
本発明の評価用基材としては、例えば、ガラスプレート、スライドガラス、カバーガラス等の平板状の基材を用いた場合、評価用基材を、培地等を添加した別容器に浸漬し、ハイドロゲルを介して固定された細胞を培養することも可能である。
以下に、本発明の実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<固定材Aを含有する溶液の調製>
Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline(商品名:DPBS(1×)、Life technologies製)1mLに、固定材Aとしてフィブリノーゲン(商品名:Fibrinogen from bovine plasma、Sigma-Aldrich社製)25mgを添加して、25mg/mLフィブリノーゲン水溶液(固定材Aを含有する溶液)を調製した。
<固定材B及び細胞を含有する懸濁液の調製例>
市販の正常ヒト皮膚線維芽細胞(商品名:CC2507、Lonza社製、以下、「NHDF」とも称することがある)2×104個/mLを、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(商品名:DMEM(1×)、Life technologies製)10mL入れた100mmディッシュに添加して、インキュベーター(装置名:KM-CC17RU2、パナソニック株式会社製、37℃、5%CO2環境)内で、72時間培養した。培養した正常ヒト皮膚線維芽細胞を含有する培養液を除去し、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(以下「DPBS」とも称することがある)を2mL添加して洗浄した。DPBSを除去し、トリプシン(商品名:0.05% Trypsin-EDTA(1×)、Life technologies社製)2mLを加えて、インキュベーター内(37℃、5%CO2環境)で5分間、トリプシン処理して細胞を単離した。
単離した細胞を、トロンビン(商品名:Thrombin from bovine Plasma、Sigma-Aldrich社製)20U/mLに、細胞数が4×106個/mLの濃度になるように添加して、固定材B及び細胞を含有する懸濁液を得た。
96ウェルプレート(商品名:96well細胞培養用プレート 平底 低蒸発タイプ、フタ付 ポリスチレン、Corning社製)の各ウェルに、マイクロピペットを用いて、25mg/mLフィブリノーゲン水溶液(固定材Aを含有する溶液)10μLを添加した(図9A参照)。
次に、固定材B及び細胞を含有する懸濁液をインクジェット法のバイオプリンター(装置名:細胞対応インクジェット装置、自社開発品)を用いて、細胞が重ならないように配置されるように、96プレートのウェル上に吐出した(図9B参照)。固定材Aと固定材Bとが混合されてハイドロゲルを形成し、細胞が固定されるまで37℃のCO2インキュベーター内に静置した。
細胞が固定された96ウェルプレートにおいて、細胞がハイドロゲルに被覆されていない細胞には、インクジェット方式のバイオプリンターを用いて、トロンビン20U/mLを細胞表面に付与して被覆して(図9C参照)、評価用基材を得た。得られた評価用基材を、光学顕微鏡(装置名:CKX53、オリンパス株式会社製)を用いて観察した。その結果、細胞が1層に配置されているのが確認できた。光学顕微鏡で観察した細胞の状態を図10に示す。
(比較例1)
実施例1において、固定材Aを含有する溶液を、フィブリノーゲン(固定材A)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、固定材Aを含まない溶液を得た。
次に、実施例1において、固定材Aを含有する溶液を固定材Aを含有しない溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして、評価用基材を得た。
(比較例2)
実施例1において、固定材B及び細胞を含有する懸濁液を、トロンビン(固定材B)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、細胞を含有する懸濁液を得た。
次に、実施例1において、固定材B及び細胞を含有する懸濁液を細胞を含有する懸濁液(固定材Bを含まない)に変更した以外は、実施例1と同様にして、評価用基材を得た。
得られた評価用基材を用いて、以下のようにして、ハイドロゲル形成時間を測定した。
評価用基材の作製において、溶液に、懸濁液を添加した後、37℃のCO2インキュベーター内に静置した。その後、96ウェルプレートを手で振盪し、目視で細胞が固定されていて動かないかを確認することによりハイドロゲルが形成されるまでの時間を測定した。結果を下記表1に示す。
表1から分かるように、実施例1では9分間でハイドロゲルが形成(増粘)され、細胞がハイドロゲルを介して96ウェルプレート(基材)に接着したことが確認でき、短時間で、評価用基材を作製できることが分かった。
一方、比較例1及び2では、ハイドロゲルは形成されず、細胞は固定されなかった。
(比較例3)
Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(商品名:DMEM(1X)、Life technologies社製)10mL入れた容器(商品名:Tissue Culture Dish、旭硝子株式会社製)に、NHDF(商品名:CC2507、Lonza社製)を5×104個/mLとなるように添加し、インキュベーター(装置名:KM-CC17RU2、パナソニック株式会社製、37℃、5%CO2環境)内で、10時間培養した。培養時間が0時間後、3時間後、及び10時間後に、光学顕微鏡(装置名:CKX53、オリンパス株式会社製)を用いて、細胞を観察した。結果を図11A(0時間後)、図11B(3時間後)、及び図11C(10時間後)に示す。図11A~図11Cの結果から、培養時間が0時間後及び3時間後では、細胞は基材に接着していないが、10時間後には、細胞は基材にほぼ全て接着していることが分かる。
実施例1の評価用基材、及び比較例3の評価用基材を用いて、以下のようにして、「細胞生存率」、「細胞膜損傷率」、及び「炎症物質の分泌量」を評価した。
(細胞生存率)
実施例1及び比較例3の評価用基材に、被験物質として、0μM、100μM、160μM、及び220μMの4つの濃度条件の塩化亜鉛をそれぞれ添加したダルベッコ変法イーグル培地(和光純薬工業株式会社製、以下、「D-MEM」とも称することがある)をマイクロピペットで100μL加え、一晩(20時間)、37℃のCO2インキュベーター内に静置した。
次に、塩化亜鉛による細胞生存率への影響を評価するため、WST-1試薬(商品名:Premix WST-1 Cell Proliferation Assay System、タカラバイオ株式会社製)を1ウェルあたり10μL添加し、1時間、37℃のCO2インキュベーターに静置して反応させた。その後、プレートリーダー(装置名:Cytation5、BioTek社製)を用いて、450nm、リファレンスの値として570nmの吸光度を測定して、「細胞生存率」を評価した。結果を図12に示す。
(細胞膜損傷率)
細胞生存率の評価と同様にして、塩化亜鉛を添加したD-MEMを添加して、一晩(20時間)、37℃のCO2インキュベーター内に静置した。
塩化亜鉛による細胞膜損傷への影響を評価するため、マイクロピペットを用いて、培地のみ回収し、96ウェルプレートに入れ、さらに、LDH測定試薬(商品名:Cytotoxicity Detection Kit、Roche社製)をそれぞれ添加し、室温(23℃)にて5分間反応させた。その後、プレートリーダーを用いて492nm、リファレンスの値として620nmの吸光度を測定して、「細胞膜損傷率」を評価した。結果を図13に示す。
(炎症物質の分泌量)
細胞生存率の評価と同様にして、塩化亜鉛を添加したD-MEMを添加して、一晩(20時間)、37℃のCO2インキュベーター内に静置した。
塩化亜鉛による炎症物質の分泌量への影響を評価するため、マイクロピペットを用いて、培地のみ回収した。タンパク質測定キット(商品名:Human IL-8 ELISA Ready-SET-Go!(登録商標)、affymetrix社製)を用いて、ELISA法にてIL-8の分泌量を、プレートリーダーを用いて450nm、リファレンスの値として570nmの吸光度を測定した。結果を図14に示す。
図12から図14の結果からも分かるように、実施例1の評価用基材と、比較例3の評価用基材とでは、塩化亜鉛に対する細胞生存率、細胞膜損傷率、及び炎症物質の分泌量がほぼ同様の毒性反応の傾向を示した。これらの結果より、本発明の評価用基材は、毒性反応を評価するために有効であることが分かる。
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 基材に、固定材Aを含有する溶液を付与する固定材A含有溶液付与工程と、
前記固定材Aに対して混合が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液を付与する固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程と、を含み、
前記固定材Aと前記固定材Bとのそれぞれ少なくとも一部が混合されてハイドロゲルを形成し、
前記細胞が、前記ハイドロゲルを介して前記基材に固定されることを特徴とする評価用基材の製造方法である。
<2> 前記細胞の少なくとも一部が前記ハイドロゲルに被覆される前記<1>に記載の評価用基材の製造方法である。
<3> 前記固定材A及び前記固定材Bが、混合により増粘する前記<1>から<2>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<4> 前記固定材A及び前記固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液に少なくとも一部が被覆された細胞が乾燥する時間に達した場合に、前記固定材A及び前記固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程をさらに含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<5> 前記評価用基材を別容器に浸漬し、前記ハイドロゲルを介して固定された細胞を培養する前記<1>から<4>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<6> 前記固定材Aが、生体由来ポリマー、凝固因子、接着因子、多糖化合物金属塩、及び合成ポリマーから選択される少なくとも1種である前記<1>から<5>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<7> 前記生体由来ポリマーが、コラーゲン、エラスチン、ゼラチン、及びフィブロインから選択される少なくとも1種である前記<6>に記載の評価用基材の製造方法である。
<8> 前記凝固因子が、フィブリノーゲンである前記<6>から<7>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<9> 前記接着因子が、フィブロネクチン、ラミニン、及びリコンビナントペプチドから選択される少なくとも1種である前記<6>から<8>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<10> 前記多糖化合物金属塩が、アルギン酸、及びジェランガムの少なくともいずれかである前記<6>から<9>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<11> 前記固定材Bが、多糖類、多価金属塩、フィブリノーゲン、トロンビン、フィブロネクチン、ラミニン、リコンビナントペプチド、キトサン、及びキチンから選択される少なくとも1種である前記<1>から<10>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<12> 前記固定材Bが、トロンビンである前記<11>に記載の評価用基材の製造方法である。
<13> 培地を付与する工程をさらに含む前記<1>から<12>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<14> 基材と、 前記基材に、固定材Aを含有する溶液を付与する固定材A含有溶液付与手段と、 前記固定材Aに対して混合が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液を付与する固定材B及び細胞含有懸濁液付与手段と、を有し、
前記細胞が、前記固定材Aと、前記固定材Bとのそれぞれ少なくとも一部が混合されて形成されたハイドロゲルを介して前記基材に固定されることを特徴とする評価用基材の製造装置である。
<15> 前記固定材Aが、生体由来ポリマー、凝固因子、接着因子、及び多糖化合物金属塩、合成ポリマーから選択される少なくとも1種である前記<14>に記載の評価用基材の製造装置である。
<16> 前記固定材Aが、凝固因子である前記<15>に記載の評価用基材の製造装置である。
<17> 前記凝固因子が、フィブリノーゲンである前記<16>に記載の評価用基材の製造装置である。
<18> 前記固定材Bが、トロンビンである前記<14>から<17>のいずれかに記載の評価用基材の製造装置である。
<19> 培地を付与する手段をさらに有する前記<14>から<18>のいずれかに記載の評価用基材の製造装置である。
<20> 前記細胞が、正常ヒト皮膚線維芽細胞である前記<14>から<19>のいずれかに記載の評価用基材の製造装置である。
前記<1>から<13>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法、及び前記<14>から<20>のいずれかに記載の評価用基材の製造装置は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。