JP2022123718A - 熱伝導シート - Google Patents

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Abstract

【課題】低荷重下における圧縮性が高く、且つ、高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性に優れる熱伝導シートの提供。【解決手段】樹脂と、熱伝導性充填材と、ゴム粒子とを含み、前記ゴム粒子の平均直径が5μm以上50μm以下である熱伝導シート。【選択図】図1

Description

本発明は、熱伝導シートに関するものであり、特に、樹脂、熱伝導性充填材およびゴム粒子を含む熱伝導シートに関するものである。
近年、パワー半導体(IGBTモジュールなど)や集積回路(IC)チップ等の電子部品は、高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、電子部品を用いた電子機器では、電子部品の温度上昇による機能障害対策を講じる必要が生じている。
ここで、一般に、温度上昇による機能障害対策としては、電子部品等の発熱体に対し、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を取り付けることによって、放熱を促進させる方法が採られている。そして、放熱体を使用する際には、発熱体から放熱体へと熱を効率的に伝えるために、通常、熱伝導性が高い熱伝導シートを介在させた状態で発熱体と放熱体とを密着させている。
そして例えば特許文献1には、樹脂と熱伝導性充填材とを含み、且つ、当該熱伝導性充填材を熱伝導シートの厚み方向に配向させてなる、被着体との密着性および熱伝導性に優れた熱伝導シートが開示されている。
また、特許文献2には、バインダ樹脂と、絶縁被覆炭素繊維と、前記絶縁被覆炭素繊維以外の熱伝導性フィラーとを含有する、荷重0.5kgf/cmにおける圧縮率が3%以上30%以下の熱伝導性シートが開示されている。この出願によると、通常、バインダ樹脂とフィラーの添加量をバランス化させることで、柔軟性と圧縮性を両立し被着体との密着性を向上させる手法があげられる。
国際公開第2016/185688号 特開2018-098515号公報
しかしながら、上記従来の熱伝導シートは、低荷重下では圧縮され難く(即ち、低荷重下における圧縮性が低く)、被着体との密着性に劣るという課題があった。また、熱伝導シートと被着体の間の密着性を向上させるためには、熱伝導シートの圧縮率を上げる必要があり、熱伝導シートに高荷重を掛ける必要がある。しかしながら、高荷重下で使用すると、熱伝導シートが潰れてしまい、その結果、熱伝導シートの熱伝導性が低下するという問題があった。そのため、高荷重下で使用する場合であっても、熱伝導シートの厚み方向の潰れを抑制でき(即ち、高荷重下における潰れ抑制に優れ)、且つ、高い熱伝導性を発揮できる熱伝導シートが求められていた。
そこで、本発明は、低荷重下における圧縮性が高く、且つ、高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性に優れる熱伝導シートの提供を目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして本発明者らは、樹脂と、熱伝導性充填材と、平均直径が所定の範囲内であるゴム粒子とを含む熱伝導シートが、低荷重下における圧縮性が高く、且つ、高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートは、樹脂と、熱伝導性充填材と、ゴム粒子とを含み、前記ゴム粒子の平均直径が5μm以上50μm以下であることを特徴とする。このように、樹脂と、熱伝導性充填材と、平均直径が上述の範囲内であるゴム粒子とを含む熱伝導シートは、低荷重下における圧縮性が高く、且つ、高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性に優れる。
なお、本発明において、ゴム粒子の「平均直径」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
ここで、本発明の熱伝導シートは、0.6MPa加圧下での前記熱伝導シートの厚みをT0.6とし、0.05MPa加圧下での前記熱伝導シートの厚みをT0.05として、下記式(1):
0.6=100×{1-(T0.6/T0.05)}[%]・・・(1)
により算出される圧縮率C0.6が10%以上であることが好ましい。上述の式(1)で算出される圧縮率(以下、「0.6MPaにおける圧縮率」と略記する場合がある。)が上記値以上であれば、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性を一層高めることができる。
なお、本発明において、熱伝導シートの「厚み」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて求めることができる。
また、本発明の熱伝導シートは、0.9MPa加圧下での前記熱伝導シートの厚みをT0.9とし、0.05MPa加圧下での前記熱伝導シートの厚みをT0.05として、下記式(2):
0.9=100×{1-(T0.9/T0.05)}[%]・・・(2)
により算出される圧縮率C0.9が15%以上であることが好ましい。上述の式(2)で算出される圧縮率(以下、「0.9MPaにおける圧縮率」と略記する場合がある。)が上記値以上であれば、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性を一層高めることができる。
そして、本発明の熱伝導シートは、ISO 22007-3に準拠して測定した、0.9MPa加圧下での熱伝導率が10W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導シートの0.9MPa加圧下での熱伝導率が上記値以上であれば、熱伝導シートの高荷重下における熱伝導性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、熱伝導シートの「熱伝導率」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
ここで、本発明の熱伝導シートは、厚みが50μm以上1000μm以下であることが好ましい。熱伝導シートの厚みが上述の範囲内であれば、熱伝導シートを発熱体と放熱体との間に挟み込んで好適に使用することができる。また、熱伝導シートの強度、耐久性およびハンドリング性を高めることができる。
また、本発明の熱伝導シートは、前記樹脂が、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂を含むことが好ましい。熱伝導シート中の樹脂が常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂を含めば、熱伝導シートの高荷重下における潰れ抑制を更に向上させると共に、熱伝導シートの難燃性、耐熱性、耐油性および耐薬品性を高めることができる。
なお、本明細書において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
そして、本発明の熱伝導シートは、前記熱伝導性充填材の含有量が、前記樹脂100質量部当たり40質量部以上130質量部以下であることが好ましい。熱伝導シート中における、樹脂に対する熱伝導性充填材の量比が上述の範囲内であれば、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性を一層高めると共に、熱伝導シートの高荷重下における熱伝導性を更に向上させることができる。
また、本発明の熱伝導シートは、前記ゴム粒子の含有量が、前記樹脂100質量部当たり1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。熱伝導シート中における、樹脂に対するゴム粒子の量比が上述の範囲内であれば、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性を一層高めると共に、熱伝導シートの高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性を更に向上させることができる。
そして、本発明の熱伝導シートは、前記ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)が20℃以下であることが好ましい。熱伝導シートに含まれるゴム粒子のガラス転移温度が上記値以下であれば、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性を一層高めることができる。
なお、本発明において、ゴム粒子の「ガラス転移温度」は、示差熱分析測定装置を用いて測定することができる。
更に、本発明の熱伝導シートは、前記ゴム粒子が(メタ)アクリル系ゴム粒子であることが好ましい。熱伝導シートに含まれるゴム粒子が(メタ)アクリル系ゴム粒子であれば、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性を一層高めると共に、熱伝導シートの高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
本発明によれば、低荷重下における圧縮性が高く、且つ、高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性に優れる熱伝導シートを提供することができる。
本発明に従う熱伝導シートの一例の構造を説明する斜視図である。 熱伝導シートの一例の厚さ方向に沿う断面図である。 熱伝導シートの他の例の厚さ方向に沿う断面図である。 熱伝導シートの別の例の厚さ方向に沿う断面図である。
本発明の熱伝導シートは、樹脂、熱伝導性充填材およびゴム粒子を含む熱伝導シートである。そして本発明の熱伝導シートは、例えば、発熱体に放熱体を取り付ける際に発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用することができる。
(熱伝導シート)
本発明の熱伝導シートは、樹脂と、熱伝導性充填材と、ゴム粒子とを含み、任意に、その他の成分を更に含有する。具体的には、例えば図1に示すように、本発明の熱伝導シート10は、樹脂と、熱伝導性充填材とを含み、任意にその他の成分を更に含有するシート本体11にゴム粒子20の一部または全部が埋設された構造を有している。
そして、本発明の熱伝導シートは、上述したゴム粒子の平均直径が5μm以上50μm以下であることを特徴とする。
<樹脂>
ここで、熱伝導シートに含まれる樹脂としては、常温常圧下で液体の樹脂と、常温常圧下で固体の樹脂との少なくとも一方を用いることができる。
常温常圧下で液体の樹脂としては、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂および常温常圧下で液体の熱硬化性樹脂が挙げられる。
そして、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
また、常温常圧下で液体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。
また、常温常圧下で固体の樹脂としては、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂および常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂が挙げられる。
そして、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2-エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2-エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン-プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン-アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン-ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン-イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。
また、常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。
中でも、熱伝導シートの難燃性、耐熱性、耐油性および耐薬品性を高める観点からは、樹脂としては、フッ素樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂は、常温常圧下で固体の樹脂を含むことが好ましく、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂を含むことがより好ましく、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂と、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂とを含むことが更に好ましい。常温常圧下で固体の樹脂を含んでいれば、熱伝導シートの高荷重下における潰れ抑制を更に向上させることができる。また、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂と、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂とを含んでいれば、熱伝導シートの難燃性、耐熱性、耐油性および耐薬品性を高めつつ、適度な柔軟性を有する熱伝導シートを得ることができる。
なお、上述した樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<熱伝導性充填材>
本発明の熱伝導シートに含まれる熱伝導性充填材としては、特に限定されることなく、既知の熱伝導性充填材を用いることができる。具体的には、熱伝導性充填材としては、粒子状熱伝導性充填材、繊維状熱伝導性充填材などを用いることができる。なお、粒子状熱伝導性充填材および繊維状熱伝導性充填材は、何れか一方を単独で使用してもよいし、両方を併用してもよいが、熱伝導シートの熱伝導性を容易に高める観点からは、少なくとも粒子状熱伝導性充填材を使用することが好ましい。また、熱伝導シートの熱伝導性を高めつつ、熱伝導シートから粒子状熱伝導性充填材が粉落ちすることを防止する観点からは、粒子状熱伝導性充填材および繊維状熱伝導性充填材を併用することがより好ましい。
なお、本発明において、熱伝導性充填材が「粒子状」であるとは、任意選択される100個の熱伝導性充填材の長径および短径を測定し、短径の平均値で長径の平均値を除して得られるアスペクト比が、1以上5未満であることをいう。
また、本発明において、熱伝導性充填材が「繊維状」であるとは、任意選択される100個の熱伝導性充填材の長径および短径を測定し、短径の平均値で長径の平均値を除して得られるアスペクト比が、5以上であることをいう。
<<粒子状熱伝導性充填材>>
ここで、粒子状熱伝導性充填材としては、特に限定されることなく、例えば、アルミナ粒子、酸化亜鉛粒子、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、酸化マグネシウム粒子および粒子状炭素材料(例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛、カーボンブラック等)などを用いることができる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、粒子状熱伝導性充填材としては、粒子状炭素材料を用いることが好ましく、膨張化黒鉛を用いることがより好ましい。粒子状炭素材料を使用すれば、熱伝導シートの熱伝導性をより向上させることができる。
そして、粒子状熱伝導性充填材として好適に使用し得る膨張化黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛を硫酸などで化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化することにより得ることができる。そして、膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業株式会社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50(いずれも商品名)等が挙げられる。
また、粒子状熱伝導性充填材の体積平均粒子径は、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。粒子状熱伝導性充填材の体積平均粒子径が上記範囲内であれば、熱伝導シートの熱伝導性を向上させることができる。
なお、本発明において「体積平均粒子径」は、JIS Z8825に準拠して測定することができ、レーザー回折法で測定された粒度分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
[粒子状熱伝導性充填材の含有割合]
そして、熱伝導性充填材中の粒子状熱伝導性充填材の含有割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましく、100質量%以下とすることができ、99.9質量%以下であることが好ましい。熱伝導性充填材中の粒子状熱伝導性充填材の含有割合が上記下限値以上であれば、熱伝導シート中で粒子状熱伝導性充填材がより良好に配向し、粒子状熱伝導性充填材同士が接触して良好な伝熱パスを形成する。その結果、熱伝導シートにより高い熱伝導性を発揮させることができる。また、粒子状熱伝導性充填材の含有割合が99.9質量%以下であれば、熱伝導シートからの粒子状熱伝導性充填材の粉落ちを防止し得る。
<<繊維状熱伝導性充填材>>
ここで、繊維状熱伝導性充填材としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などを用いることができる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。熱伝導シートに繊維状熱伝導性充填材を含有させれば、熱伝導シートの熱伝導性を更に向上させることができると共に、粒子状熱伝導性充填材と併用した際に粒子状熱伝導性充填材の粉落ちをより防止することもできる。なお、繊維状熱伝導性充填材を配合することで粒子状熱伝導性充填材の粉落ちを防止することができる理由は、明らかではないが、繊維状熱伝導性充填材が三次元網目構造を形成することにより、熱伝導性や強度を高めつつ粒子状熱伝導性充填材の脱離を防止しているためであると推察される。
上述した中でも、繊維状熱伝導性充填材としては、CNTなどの繊維状炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。CNTなどの繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、本発明の熱伝導シートの熱伝導性および強度を更に向上させることができる。
また、繊維状熱伝導性充填材として好適に使用し得る、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、CNTのみからなるものであってもよいし、CNTとCNT以外の繊維状炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。
なお、繊維状炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層CNTおよび/または多層CNTを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのCNTであることが好ましく、単層CNTであることがより好ましい。単層CNTを使用すれば、多層CNTを使用した場合と比較し、熱伝導シートの熱伝導性および強度を更に向上させることができる。
そして、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、例えば、CNT製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
ここで、スーパーグロース法により製造したCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTに加え、例えば、非円筒形状の炭素ナノ構造体等の他の炭素ナノ構造体が含まれていてもよい。
[繊維状熱伝導性充填材の含有割合]
そして、熱伝導性充填材中の繊維状熱伝導性充填材の含有割合は、0.001質量%以上であることが好ましく、100質量%未満であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。熱伝導性充填材中の繊維状熱伝導性充填材の含有割合が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの熱伝導性および強度を十分に向上させることができると共に、粒子状熱伝導性充填材と併用した際に粒子状熱伝導性充填材の粉落ちを十分に防止することができる。また、繊維状熱伝導性充填材の含有割合が上記上限値以下であれば、繊維状熱伝導性充填材の配合により熱伝導シートの硬度が過度に上昇する(即ち、柔軟性が過度に低下する)のを抑制することができる。
<<熱伝導性充填材の含有量>>
また、熱伝導シート中における熱伝導性充填材の含有量は、特に限定されないが、樹脂100質量部当たり、40質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましく、80質量部以上であることが更に好ましく、130質量部以下であることが好ましく、120質量部以下であることがより好ましく、110質量部以下であることが更に好ましい。熱伝導シート中における熱伝導性充填材の含有量が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの高荷重下における熱伝導性を更に向上させることができる。また、熱伝導シート中における熱伝導性充填材の含有量が上記上限値以下であれば、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性を一層高めることができる。
<ゴム粒子>
本発明の熱伝導シートに含まれるゴム粒子は、上述した樹脂とは異なる成分であり、熱伝導シート中において安定に存在し、その形状が維持される粒子である。すなわち本発明の熱伝導シートにおいて、樹脂で構成される部位と、ゴム粒子で構成される部位は明確に区別することができる。
ここで、ゴム粒子としては、特に限定されることなく、例えば、ポリアクリル酸アルキル粒子、ポリメタクリル酸アルキル粒子、具体的には、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリルアミドの重合体、またはその共重合体などの(メタ)アクリル系ゴム粒子;アクリロニトリル-スチレン共重合体、スチレン-エチレン共重合体、スチレン-ブチレン共重合体などのポリスチレン系ゴム粒子;ポリエーテル-ポリカーボネート共重合体などのポリカーボネート系ゴム粒子;ポリエーテル-ポリウレタン、ポリエステル-ポリウレタン共重合体、熱可塑性ポリウレタン(TPU)などのウレタン系ゴム粒子;ポリスチレン-ポリブタジエンなどのスチレン-ブタジエンゴム(SBR)系ゴム粒子;エチレン-酢酸ビニル共重合体などのエチレン酢酸ビニル(EVA)系ゴム粒子;等を用いることができる。
なお、ゴム粒子を形成するゴムは、架橋されていることが好ましい。これらの中でも、耐熱性および入手し易さの観点からは、ゴム粒子としては、(メタ)アクリル系ゴム粒子が好ましく、ポリアクリル酸アルキル粒子、ポリメタクリル酸アルキル粒子がより好ましく、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メトキシエチル、ポリエチレン-メチルアクリレートまたはそのモノマーの共重合体が更に好ましく、ポリメタクリル酸ブチルが特に好ましい。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ここで、ゴム粒子は、架橋度の高いシェル部と架橋度の低いコア部とからなるコアシェル構造を有することが好ましい。ゴム粒子が上述のようなコアシェル構造を有すれば、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性を一層高めると共に、熱伝導シートの高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性を更に向上させることができる。
また、ゴム粒子の形状は、特に限定されない。例えば、ゴム粒子の形状は、球状であってもよいし、非球状(おわん状、楕円状など)であってもよい。しかし、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性を一層高めると共に、熱伝導シートの高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性を更に向上させる観点からは、ゴム粒子は球状であることが好ましい。
そして、これらのゴム粒子は、既知の手法により合成してもよく、市販品を使用してもよい。なお、ポリアクリル酸アルキル粒子は、例えば、松本油脂製薬社製の「マツモトマイクロスフェアー(登録商標)Sシリーズ」(S-100、S-102)などとして市販されている。
[平均直径]
ここで、本発明に用いられるゴム粒子は、平均直径が5μm以上50μm以下であることが必要であり、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、45μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。ゴム粒子の平均直径が5μm未満であると、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性が低下する。一方、ゴム粒子の平均直径が50μm超であると、熱伝導シートの高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性が低下する。
なお、上述した平均直径を有するゴム粒子は、例えば図2に示すように熱伝導シートの厚み全体に亘って埋設されていてもよいし、図3および図4に示すように熱伝導シート内に埋没していてもよい。また、上述した平均直径を有するゴム粒子は、熱伝導シートの表面から一部が突出していてもよい。中でも、ゴム粒子は、熱伝導シート内に埋没していることが好ましい。
[ガラス転移温度]
また、本発明に用いられるゴム粒子は、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性を一層高める観点から、ガラス転移温度(Tg)が20℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-20℃以下であることが更に好ましい。また、ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)の下限は特に限定されないが、例えば、-120℃以上とすることができ、-60℃以上とすることができる。
そして、熱伝導シート中におけるゴム粒子の含有量は、特に限定されないが、樹脂100質量部当たり、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることが更に好ましく、20質量部以下であることが好ましく、18質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることが更に好ましい。熱伝導シート中におけるゴム粒子の含有量が、樹脂100質量部当たり上記下限値以上であれば、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性を更に向上させることができる。また、熱伝導シート中におけるゴム粒子の含有量が、樹脂100質量部当たり上記上限値以下であれば、熱伝導シートの高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性を更に向上させることができる。
<その他の成分>
熱伝導シートは、上述した樹脂、熱伝導性充填材およびゴム粒子以外に、任意で、その他の成分を含んでいてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、熱伝導シートの形成に使用し得る既知の添加剤などを使用することができる。そして、熱伝導シートの形成に使用し得る既知の添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、赤りん系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤等の難燃剤;可塑剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の受酸剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物等の接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ性向上剤;無機イオン交換体等のイオントラップ剤;などが挙げられる。
なお、熱伝導シート中の上記その他の成分の含有割合は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で任意に設定することができる。
<熱伝導シートの性状>
そして、熱伝導シートは、特に限定されないが、以下の性状を有していることが好ましい。
[厚み]
本発明の熱伝導シートは、常温常圧下において、厚みが50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることが更に好ましく、1000μm以下であることが好ましく、600μm以下であることがより好ましい。常温常圧下における熱伝導シートの厚みが上記上限値以下であれば、熱伝導シートを発熱体と放熱体との間に挟んで好適に使用し得る。また、熱伝導シートの厚みが上記下限値以上であれば、熱伝導シートの強度、耐久性およびハンドリング性を高めることができる。
[シートの厚みに対するゴム粒子の平均直径の割合]
また、本発明の熱伝導シートは、熱伝導シートの厚みに対するゴム粒子の平均直径の割合が、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることが更に好ましく、100%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。熱伝導シートの厚みに対するゴム粒子の平均直径の割合が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの厚み方向の潰れを抑制することができる。また、熱伝導シートの厚みに対するゴム粒子の平均直径の割合が上記上限値以下であれば、熱伝導シートの高荷重下における熱伝導性を一層高めることができる。
[0.6MPaにおける圧縮率]
そして、本発明の熱伝導シートは、0.6MPaにおける圧縮率が10%以上であることが好ましく、11%以上であることがより好ましく、12%以上であることが更に好ましい。熱伝導シートの0.6MPaにおける圧縮率が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性を一層高めることができる。また、熱伝導シートの0.6MPaにおける圧縮率の上限は特に限定されないが、例えば、25%以下とすることができ、20%以下とすることができる。
[0.9MPaにおける圧縮率]
更に、本発明の熱伝導シートは、0.9MPaにおける圧縮率が15%以上であることが好ましく、16%以上であることがより好ましく、17%以上であることが更に好ましい。熱伝導シートの0.9MPaにおける圧縮率が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性を一層高めることができる。また、熱伝導シートの0.9MPaにおける圧縮率の上限は特に限定されないが、例えば、35%以下とすることができ、30%以下とすることができる。
[熱伝導率]
また、本発明の熱伝導シートは、0.9MPa加圧下での熱伝導率が10W/m・K以上であることが好ましく、15W/m・K以上であることがより好ましく、20W/m・K以上であることが更に好ましい。熱伝導シートの0.9MPa加圧下における熱伝導率が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの高荷重下における熱伝導性を更に向上させることができる。また、熱伝導シートの0.9MPa加圧下における熱伝導率の上限は特に限定されないが、例えば、35W/m・K以下とすることができ、30W/m・K以下とすることができる。
[アスカーC硬度]
そして、本発明の熱伝導シートは、温度25℃でのアスカーC硬度が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましく、90以下であることが好ましく、85以下であることがより好ましい。熱伝導シートの温度25℃におけるアスカーC硬度が上記範囲内であれば、室温環境下における熱伝導シートの可撓性およびハンドリング性を良好にすることができる。
なお、本発明において、熱伝導シートの「アスカーC硬度」は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。
<熱伝導シートの製造方法>
上述した構成を有する熱伝導シートは、特に限定されることなく、例えば、樹脂と、熱伝導性充填材と、ゴム粒子とを含み、任意に、その他の成分を更に含有する組成物を用いて熱伝導シートを作製する方法(方法1)や、樹脂と、熱伝導性充填材とを含み、任意に、その他の成分を更に含有する組成物を用いてシート本体を作製した後、シート本体にゴム粒子を埋め込んで熱伝導シートとする方法(方法2)を用いて製造することができる。
[方法1]
ここで、方法1では、特に限定されることなく、例えば、上記組成物を加圧してシート状に成形し、プレシートを得る工程(プレシート成形工程)と、プレシートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、プレシートを折畳または捲回して、積層体を得る工程(積層体形成工程)と、得られた積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、熱伝導シートを得る工程(スライス工程)と、を経て熱伝導シートを製造することができる。
なお、方法1では、通常、ゴム粒子の平均直径が熱伝導シートの厚みの100%以下である熱伝導シートが得られる。
-プレシート成形工程-
プレシート成形工程では、樹脂と、熱伝導性充填材と、ゴム粒子とを含み、任意に、その他の成分を更に含有する組成物を加圧してシート状に成形し、プレシートを得る。ここで、樹脂、熱伝導性充填材、ゴム粒子、その他の成分としては、本発明の熱伝導シートに含まれ得るものとして上述したものを用いることができる。
そして、組成物は、上記各成分を撹拌混合することで得られる。なお、撹拌混合は、特に限定されることなく、ニーダー、ロール、ヘンシェルミキサー、ホバートミキサー、ハイスピードミキサー、二軸混錬機等の既知の混合装置を用いて行うことができる。また、撹拌混合は、酢酸エチルやメチルエチルケトン等の溶媒の存在下で行ってもよい。撹拌混合条件は、適宜設定することができる。また、撹拌混合温度は、例えば5℃以上150℃以下とすることができる。
なお、上述した成分のうち、特にCNTなどの繊維状熱伝導性充填材は、凝集し易く、分散性が低いため、そのままの状態でフッ素樹脂や膨張化黒鉛などの他の成分と混合すると、組成物中で良好に分散し難い。一方、繊維状熱伝導性充填材は、溶媒(分散媒)に分散させた分散液の状態でフッ素樹脂や膨張化黒鉛などの他の成分と混合すれば凝集の発生を抑制することはできるものの、分散液の状態で混合した場合には混合後に固形分を凝固させて組成物を得る際などに多量の溶媒を使用するため、組成物の調製に使用する溶媒の量が多くなる虞が生じる。そのため、プレシートの形成に用いる組成物に繊維状熱伝導性充填材を配合する場合には、繊維状熱伝導性充填材は、溶媒(分散媒)に繊維状熱伝導性充填材を分散させて得た分散液から溶媒を除去して得た繊維状熱伝導性充填材の集合体(易分散性集合体)の状態で他の成分と混合することが好ましい。繊維状熱伝導性充填材の分散液から溶媒を除去して得た繊維状熱伝導性充填材の集合体は、一度溶媒に分散させた繊維状熱伝導性充填材で構成されており、溶媒に分散させる前の繊維状熱伝導性充填材の集合体よりも分散性に優れているので、分散性の高い易分散性集合体となる。従って、易分散性集合体と、フッ素樹脂や膨張化黒鉛などの他の成分とを混合すれば、多量の溶媒を使用することなく効率的に、組成物中で繊維状熱伝導性充填材を良好に分散させることができる。
ここで、繊維状熱伝導性充填材の分散液は、例えば、溶媒に対して繊維状熱伝導性充填材を添加してなる粗分散液を、キャビテーション効果が得られる分散処理または解砕効果が得られる分散処理に供して得ることができる。なお、キャビテーション効果が得られる分散処理は、液体に高エネルギーを付与した際、水に生じた真空の気泡が破裂することにより生じる衝撃波を利用した分散方法である。そして、キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波ホモジナイザーによる分散処理、ジェットミルによる分散処理および高剪断撹拌装置による分散処理が挙げられる。また、解砕効果が得られる分散処理は、粗分散液にせん断力を与えて繊維状熱伝導性充填材の凝集体を解砕・分散させ、さらに粗分散液に背圧を負荷することで、気泡の発生を抑制しつつ、繊維状熱伝導性充填材を溶媒中に均一に分散させる分散方法である。
また、分散液からの溶媒の除去は、乾燥やろ過などの既知の溶媒除去方法を用いて行うことができるが、迅速かつ効率的に溶媒を除去する観点からは、減圧ろ過などのろ過を用いて行うことが好ましい。
そして、上述のようにして調製した組成物は、任意に脱泡および解砕した後に、加圧してシート状に成形することができる。なお、混合時に溶媒を用いている場合には、溶媒を除去してからシート状に成形することが好ましく、例えば真空脱泡を用いて脱泡を行えば、脱泡時に溶媒の除去も同時に行うことができる。
ここで、組成物は、圧力が負荷される成形方法であれば特に限定されることなく、プレス成形、圧延成形または押し出し成形などの既知の成形方法を用いてシート状に成形することができる。中でも、組成物は、圧延成形によりシート状に形成することが好ましく、保護フィルムに挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に限定されることなく、サンドブラスト処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃とすることができる。
なお、プレシートの厚みは、特に限定されることなく、例えば0.05mm以上2mm以下とすることができる。
-積層体形成工程-
積層体形成工程では、プレシート成形工程で得られたプレシートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、プレシートを折畳または捲回して、積層体を得る。ここで、プレシートの折畳による積層体の形成は、特に限定されることなく、折畳機を用いてプレシートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。また、プレシートの捲回による積層体の形成は、特に限定されることなく、プレシートの短手方向または長手方向に平行な軸の回りにプレシートを捲き回すことにより行うことができる。
ここで、通常、積層体形成工程で得られる積層体において、プレシートの表面同士の接着力は、プレシートを積層する際の圧力や折畳または捲回する際の引っ張り力により充分に得られる。しかし、接着力が不足する場合や、積層体の層間剥離を十分に抑制する必要がある場合には、プレシートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層体形成工程を行ってもよいし、プレシートの表面に接着剤を塗布した状態またはプレシートの表面に接着層を設けた状態で積層体形成工程を行ってもよい。
なお、プレシートの表面を溶解させる際に用いる溶剤としては、特に限定されることなく、プレシート中に含まれているフッ素樹脂などの樹脂成分を溶解可能な既知の溶剤を用いることができる。中でも、溶解性と揮発性の観点からはアセトンを用いることが好ましい。
また、プレシートの表面に塗布する接着剤としては、特に限定されることなく、市販の接着剤や粘着性の樹脂を用いることができる。中でも、接着剤としては、プレシート中に含まれているフッ素樹脂などの樹脂成分と同じ組成の樹脂を用いることが好ましい。そして、プレシートの表面に塗布する接着剤の厚さは、例えば、10μm以上1000μm以下とすることができる。
更に、プレシートの表面に設ける接着層としては、特に限定されることなく、両面テープなどを用いることができる。
ここで、接着剤や接着層には、得られる熱伝導シートが硬くなりすぎない範囲で熱伝導性フィラーが配合されていてもよい。
なお、層間剥離を抑制する観点からは、得られた積層体は、積層方向に0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力で押し付けながら、50℃以上120℃以下で1~60分加熱してもよい。
-スライス工程-
スライス工程では、積層体形成工程で得られた積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、積層体のスライス片よりなる熱伝導シートを得る。ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、熱伝導シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナやスライサー)を用いることができる。
なお、熱伝導シートの熱伝導性を高める観点からは、積層体をスライスする角度は、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが好ましい。
また、積層体を容易にスライスする観点からは、スライスする際の積層体の温度は-20℃以上40℃以下とすることが好ましく、-10℃以上30℃以下とすることがより好ましい。更に、同様の理由により、スライスする積層体は、積層方向とは垂直な方向に圧力を負荷しながらスライスすることが好ましく、積層方向とは垂直な方向に0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力を負荷しながらスライスすることがより好ましい。
[方法2]
ここで、方法2において、プレシート成形工程、積層体形成工程およびスライス工程は、組成物としてゴム粒子を含有しない組成物を用いる以外は、それぞれ方法1のプレシート成形工程、積層体形成工程およびスライス工程と同様にして行うことができる。
-埋め込み工程-
そして、方法2の埋め込み工程では、スライス工程で得られたシート本体に対し、任意の方法でゴム粒子を埋め込んで熱伝導シートとすることができる。具体的には、埋め込み工程では、例えば、シート本体の一方の表面上の所望の位置にゴム粒子を載置した後、ピンセット等の押し込み具を用いてシート本体の厚み方向に押し込むことにより、シート本体にゴム粒子を埋め込むことができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、実施例および比較例において、ゴム粒子の平均直径、ならびに、熱伝導シートのアスカーC硬度、厚み、圧縮率、熱伝導率および熱伝導率の変化率は、それぞれ以下の方法を使用して測定または評価した。
<ゴム粒子の平均直径>
ゴム粒子の平均直径は、以下のようにして求めた。
まず、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK-X250)を用いて100個のゴム粒子を倍率20~50倍で観察し、得られた各ゴム粒子の画像に平面計測ツールで円を描き、描いた円の直径の最大値と最小値を直線計測にて測定した。
そして、直径の最大値と最小値の算術平均値をゴム粒子の直径とし、100個のゴム粒子の直径の平均値をゴム粒子の平均直径とした。
<熱伝導シートのアスカーC硬度>
熱伝導シートのアスカーC硬度は、日本ゴム協会規格(SRIS 0101)のアスカーC法に準拠し、硬度計(高分子計器社製、製品名「ASKER CL-150LJ」)を使用して、温度25℃の環境下で測定した。
<熱伝導シートの厚みおよび圧縮率>
熱伝導シートの厚みは、デジマチックインジケーター(株式会社ミツトヨ社製、ID-C112X)を用いて、(1/1000mm)の精度で測定した。
具体的には、熱伝導シートについて、無加圧下での厚み、0.05MPa加圧下での厚み(T0.05)、0.6MPa加圧下での厚み(T0.6)、および、0.9MPa加圧下での厚み(T0.9)を測定した。そして、0.6MPaにおける圧縮率(C0.6)と0.9MPaにおける圧縮率(C0.9)を、それぞれ下記式(1)および(2)に基づいて求めた。
0.6=100×{1-(T0.6/T0.05)}[%]・・・(1)
0.9=100×{1-(T0.9/T0.05)}[%]・・・(2)
この圧縮率が大きいほど、熱伝導シートの低荷重下における圧縮性が優れていることを示す。
<熱伝導シートの熱伝導率>
熱伝導シートについて、厚み方向の熱拡散率α(m/s)、定圧比熱C(J/g・K)および比重ρ(g/m)を、それぞれ、以下の方法で測定した。
[厚み方向の熱拡散率α]
熱拡散・熱伝導率測定装置(株式会社アイフェイズ製、製品名「アイフェイズ・モバイル 1u」)を使用して、ISO 22007-3の規定に基づき測定した。
[定圧比熱C(J/g・K)]
示差走査熱量計(Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下における比熱を測定した。
[比重ρ(g/m)]
自動比重計(東洋精機社製、商品名「DENSIMETER-H」)を用いて比重(密度)(g/m)を測定した。
そして、得られた測定値を下記式(I):
λ=α×C×ρ・・・(I)
に代入して、熱伝導シートの熱伝導率λ(W/m・K)を求めた。
<熱伝導シートの熱伝導率の変化率>
熱伝導シートの熱伝導率は、熱伝導シートの熱抵抗値に基づいて算出した。具体的には、熱伝導シートの熱抵抗値を、樹脂材料熱抵抗試験器(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製)を用いて測定した。その際、ゴム粒子を含む0.5cm角の略正方形に切り出した熱伝導シートを試料とし、試料温度50℃において、0.05MPa加圧下での試料の熱抵抗値R1(℃/W)と、1.5MPa加圧下での試料の熱抵抗値R2(℃/W)とを測定した。
そして、熱抵抗値R1および熱抵抗値R2から、0.05MPa加圧下での試料の熱伝導率C1(W/m・K)と、1.5MPa加圧下での試料の熱伝導率C2(W/m・K)とを、熱伝導シート1cm角に換算したときの値として下記式:
熱伝導率(W/m・K)=[1/熱抵抗値(℃/W)]×[(試料厚み(mm)/(試料面積(mm)]×1000
より求めた。
また、下記式:
熱伝導率の変化率=[1.5MPa加圧下での試料の熱伝導率(C2)/(0.05MPa加圧下での試料の熱伝導率(C1)]
に基づいて、熱伝導率の変化率を求め、以下の基準で評価した。この熱伝導率の変化率が大きいほど、熱伝導シートの高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性が優れていることを示す。
A:熱伝導率の変化率が0.5超である。
B:熱伝導率の変化率が0.3超0.5未満である。
C:熱伝導率の変化率が0.3未満である。
(実施例1)
<繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体の調製>
[分散液の調製]
繊維状炭素ナノ構造体(ZEONANO(登録商標)SG101、日本ゼオン社製、比表面積:600m/g)を400mg量り取り、溶媒としてのメチルエチルケトン2L中に混ぜ、ホモジナイザーにより2分間撹拌し、粗分散液を得た。次に、湿式ジェットミル(株式会社常光製、製品名「JN-20」)を使用し、得られた粗分散液を湿式ジェットミルの0.5mmの流路に100MPaの圧力で2サイクル通過させて、繊維状炭素ナノ構造体をメチルエチルケトンに分散させた。そして、固形分濃度0.20%の分散液を得た。
[溶媒の除去]
その後、上述のようにして得られた分散液をキリヤマろ紙(No.5A)を用いて減圧ろ過し、繊維状熱伝導性充填材としての、シート状の繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体を得た。
<組成物の調製>
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエル(登録商標)G-101」、以下「G101」と称する。)を70部と、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオン(登録商標)FC-2211」、ムーニー粘度:27ML1+4、100℃、以下「FC-2211」と称する。)を30部と、ゴム粒子(架橋ポリブチルアクリレート系、ガラス転移温度(Tg):-40℃、松本油脂製薬社製、商品名「マツモトマイクロスフェアー S-100、平均直径20μm、以下「S-100」と称する。)を3.2部、熱伝導性充填材である粒子状熱伝導性充填材としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC300」、体積平均粒子径:50μm、短軸方向の平均粒子径:10~20μm、以下「EC300」と称する。)を93部と、繊維状熱伝導性充填材としての上記繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体を0.5部とを、加圧ニーダー(日本スピンドル製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
<プレシート成形工程>
次いで、得られた組成物50gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmのPETフィルム(保護フィルム)で挟み、ロール間隙550μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形(一次加圧)し、厚み0.5mmのプレシートを得た。
<積層体形成工程>
続いて、得られたプレシートを縦150mm×横150mm×厚み0.5mmに裁断し、プレシートの厚み方向に300枚積層し、更に、温度120℃、圧力0.1MPaで3分間、積層方向にプレス(二次加圧)することにより、高さ約150mmの積層体を得た。
<スライス工程>
その後、二次加圧された積層体の積層側面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して0度の角度で(換言すれば、積層されたプレシートの主面の法線方向に)スライスすることにより、縦150mm×横150mm×厚み0.3mmの熱伝導シートを得た。
(実施例2)
組成物の調製時に、S-100の使用量を3.2部から8.0部に変更し、EC300の使用量を93部から97部に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
組成物の調製時に、S-100の平均直径を20μmから30μmに変更した以外は、実施例2と同様にして、熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
組成物の調製時に、S-100の使用量を3.2部から12.9部に変更し、EC300の使用量を93部から101部に変更し、繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体の使用量を0.5部から0.6部に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
組成物の調製時に、S-100の使用量を3.2部から18.2部に変更し、EC300の使用量を93部から107部に変更し、繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体の使用量を0.5部から0.6部に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
組成物の調製時に、S-100を使用せず、またEC300の使用量を93部から90部に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
組成物の調製時に、FC-2211およびS-100を使用せず、またG101の使用量を70部から100部に変更し、EC300の使用量を93部から70部に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
組成物の調製時に、S-100の平均直径を30μmから3μmに変更した以外は、実施例2と同様にして、熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
組成物の調製時に、S-100の平均直径を30μmから60μmに変更した以外は、実施例2と同様にして、熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2022123718000002
表1より、樹脂と、熱伝導性充填材と、平均直径が所定の範囲内であるゴム粒子とを含む熱伝導シートを用いた実施例1~5では、低荷重下における圧縮性が高く、且つ高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性に優れる熱伝導シートを製造できていることが分かる。
一方、ゴム粒子を含まない熱伝導シートを用いた比較例1では、熱伝導シートの圧縮率が低下しており、低荷重下における圧縮性が低下していることが分かる。
また、ゴム粒子を含まない熱伝導シートを用いた比較例2では、熱伝導シートの柔軟性を表すアスカー硬度は実施例2と同じであるにもかかわらず、熱伝導シートの圧縮率および熱伝導率の変化率が実施例2に比べて低下しており、低荷重下における圧縮性と、高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性とが低下していることが分かる。
更に、ゴム粒子の平均直径が所定範囲外である比較例3および4では、熱伝導シートの圧縮率および熱伝導率の変化率が低下しており、低荷重下における圧縮性と、高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性とが低下していることが分かる。
本発明によれば、低荷重下における圧縮性が高く、且つ、高荷重下における潰れ抑制および熱伝導性に優れる熱伝導シートを提供することができる。
10 熱伝導シート
11 シート本体
20 ゴム粒子

Claims (10)

  1. 樹脂と、熱伝導性充填材と、ゴム粒子とを含み、
    前記ゴム粒子の平均直径が5μm以上50μm以下である、熱伝導シート。
  2. 0.6MPa加圧下での前記熱伝導シートの厚みをT0.6とし、0.05MPa加圧下での前記熱伝導シートの厚みをT0.05として、下記式(1):
    0.6=100×{1-(T0.6/T0.05)}[%]・・・(1)
    により算出される圧縮率C0.6が10%以上である、請求項1に記載の熱伝導シート。
  3. 0.9MPa加圧下での前記熱伝導シートの厚みをT0.9とし、0.05MPa加圧下での前記熱伝導シートの厚みをT0.05として、下記式(2):
    0.9=100×{1-(T0.9/T0.05)}[%]・・・(2)
    により算出される圧縮率C0.9が15%以上である、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
  4. ISO 22007-3に準拠して測定した、0.9MPa加圧下での熱伝導率が10W/m・K以上である、請求項1~3の何れかに記載の熱伝導シート。
  5. 厚みが50μm以上1000μm以下である、請求項1~4の何れかに記載の熱伝導シート。
  6. 前記樹脂が、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂を含む、請求項1~5の何れかに記載の熱伝導シート。
  7. 前記熱伝導性充填材の含有量が、前記樹脂100質量部当たり40質量部以上130質量部以下である、請求項1~6の何れかに記載の熱伝導シート。
  8. 前記ゴム粒子の含有量が、前記樹脂100質量部当たり1質量部以上20質量部以下である、請求項1~7の何れかに記載の熱伝導シート。
  9. 前記ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)が20℃以下である、請求項1~8の何れかに記載の熱伝導シート。
  10. 前記ゴム粒子が(メタ)アクリル系ゴム粒子である、請求項1~9の何れかに記載の熱伝導シート。
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