図1は、本発明の第1の実施の形態に係る浮体構造物2を備える係留システム1の構成を示す側面図である。係留システム1は、浮体構造物2と、係留基体3と、係留ライン4とを備える。係留システム1は、水面91に浮かぶ浮体構造物2を係留ライン4により水底92に係留するシステムである。
浮体構造物2は、水底92から上方に離間した状態で水面91に浮かぶ構造物である。浮体構造物2が海上に設置される場合、当該水面91および水底92はそれぞれ、海面および海底である。浮体構造物2は、例えば、所定海域に係留されて津波および/または波浪を観測する観測用ブイである。浮体構造物2の全長は、例えば数m~十数mであり、浮体構造物2の全幅は、例えば数mである。
係留基体3は、例えば、水底92に沈められたシンカー(すなわち、錘)またはアンカー(すなわち、把駐力を有する錨)である。あるいは、係留基体3は、水底92に予め設置されている固定構造物であってもよい。係留基体3は、必ずしも水底92に直接的に固定される必要はなく、例えば、水底92に固定された他の構造物を介して、水中において間接的に水底92に固定される物体であってもよい。
係留ライン4は、浮体構造物2と係留基体3とを接続する略線状の部材である。係留ライン4は、例えば、係留ロープ、係留鎖、または、係留鎖と係留ロープとが接続されたものである。係留ロープは、例えば、合成繊維製またはワイヤーを含む金属製のロープである。図1では、図示の都合上、係留ライン4を線にて示す。図1に示す例では、浮体構造物2は、1本の係留ライン4によって係留基体3に1点係留されている。なお、浮体構造物2は、多点係留されてもよい。
図2は、浮体構造物2を示す側面図である。図3は、浮体構造物2を示す平面図である。図4は、浮体構造物2を示す正面図である。図2~図4では、互いに直交する3つの方向であるX方向、Y方向およびZ方向を設定している。X方向およびY方向は水平面に平行であり、Z方向は重力方向に平行である。浮体構造物2は、浮体本体21と、上部設備23とを備える。浮体本体21は、水面91上に浮かぶ浮体構造物2の本体部である。浮体本体21は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、FRP等により形成される。上部設備23は、浮体本体21の上面上に設けられる各種設備である。
浮体本体21は、図2~図4中のX方向(以下、「前後方向」と呼ぶ。)に略平行に延びる。浮体本体21は、前後方向に細長く延びるとともに前端(すなわち、(+X)側の端)に近づくに従って痩せる形状(いわゆる、船形)を有する部材である。浮体本体21の幅方向の幅(以下、単に「幅」とも呼ぶ。)は、前後方向の中央部近傍において最大となる。図3に例示する浮体構造物2では、浮体本体21は、後端(すなわち、(-X)側の端)に近づくに従っても痩せる形状を有する。
当該痩せる形状とは、浮体本体21の前端あるいは後端に近づくに従って浮体本体21の幅方向(すなわち、前後方向および重力方向に垂直な方向であり、図2~図4におけるY方向)の幅が減少する形状である。この場合、浮体本体21の前端部あるいは後端部における幅は、浮体本体21の前端あるいは後端に近づくに従って、漸次減少してもよく、前後方向の一部において少し増加する部分を含みつつ全体として減少してもよい。
図2~図4に例示する浮体本体21の前端部では、前端に近づくに従って幅が漸次減少する。また、浮体本体21の後端部では、後端に近づくに従って幅が漸次減少する。浮体本体21の形状は、例えば、前後方向(すなわち、長手方向)の中央において前後方向に垂直な仮想的な対称面に対して、略面対称(すなわち、略前後対称)である。
上部設備23は、浮体構造物2の使用目的に合わせて設けられた様々な機器や設備等である。上述のように、浮体構造物2が津波や波浪を観測する観測用ブイとして使用される場合、上部設備23は、例えば、浮体構造物2の3次元の動きを取得するためのGPS(Global Positioning System)受信機である。当該GPS受信機により取得された浮体構造物2の動きに基づいて、水面91の変動(例えば、波浪、潮位、津波等)が求められる。上部設備23は、例えば、GPS受信機等に電力を供給するためのソーラーパネルを含んでいてもよい。
図5は、図3に示す浮体本体21の前後方向の中央部の一部を拡大して示す平面図である。図2ないし図5に示すように、浮体本体21は、第1側壁部211と、第2側壁部212と、底部213と、強度部材214とを備える。
底部213は、浮体本体21の下端部(すなわち、(-Z)側の端部)を構成する前後方向に長い略板状の部位である。底部213は、例えば、上下方向(すなわち、Z方向)に略垂直な略平面状の部位である。図2および図4に示す例では、底部213の前端部および後端部は、浮体本体21の前端および後端に近づくに従って漸次上方へと向かう傾斜面である。底部213の平面視における幅は、浮体本体21の前端部において前端に向かうに従って漸次減少し、浮体本体21の後端部において後端に向かうに従って漸次減少する。
第1側壁部211は、底部213の周縁部から上方に延びて浮体本体21の側壁部を構成する略板状の部材である。第1側壁部211は、底部213の全周に亘って設けられる。第1側壁部211は、例えば、底部213の周縁部から上下方向に略平行に延びる複数の略平板状の部材が、底部213の周縁部に沿って全周に亘って連続する周状の部位である。周状の第1側壁部211の平面視における幅は、浮体本体21の前端部において前端に向かうに従って漸次減少し、浮体本体21の後端部において後端に向かうに従って漸次減少する。
以下の説明では、底部213および第1側壁部211により構成される構造を「内側本体部210」と呼ぶ。図2ないし図4に例示する浮体本体21では、内側本体部210は、前後方向に延びる船形である。内側本体部210の幅方向の中心を通るとともに幅方向に垂直な仮想的な面を本体中心面と呼ぶと、内側本体部210は本体中心面に対して略面対称な形状を有する。内側本体部210の上端開口は、略平板状の上甲板217により閉塞されている。
内側本体部210は、船首部201と、平行部202と、船尾部203とを備える。船首部201は、内側本体部210の前端部であり、船尾部203は、内側本体部210の後端部である。平行部202は、船首部201と船尾部203との間に位置する中央部であり、船首部201の後端および船尾部203の前端と前後方向に連続する。
船首部201の平面視における幅は、船首部201の前端(すなわち、内側本体部210の前端)から後方に向かうに従って漸次増大する。船尾部203の平面視における幅は、船尾部203の後端(すなわち、内側本体部210の後端)から前方に向かうに従って漸次増大する。平行部202の平面視における幅は、内側本体部210の最大幅であり、前後方向において略一定である。平行部202の前後方向に垂直な断面形状は、前後方向の各位置において略同じである。換言すれば、平行部202は、前後方向に垂直な断面形状が同じである部位が前後方向に所定の長さで連続している部位である。平行部202が設けられることにより、内側本体部210の製造を簡素化することができる。なお、内側本体部210では、船尾部203の平面視における幅は、前後方向において略一定であってもよい。また、内側本体部210では、平行部202は設けられず、内側本体部210の幅は、前後方向の1つの位置のみで最大となってもよい。
第1側壁部211の内側面(すなわち、周状の第1側壁部211により囲まれる空間に面する側面)には、複数の強度部材214が設けられる。複数の強度部材214は、第1側壁部211の内側面に沿って前後方向に互いに離間しつつ配列される。複数の強度部材214は、例えば、前後方向に関して略等間隔(例えば、0.5m~2m間隔)に配置される。各強度部材214は、第1側壁部211の内側面から、当該内側面に対して略垂直に、周状の第1側壁部211の内側に向かって突出する。
各強度部材214は、例えば、前後方向に対して略垂直な略平板状の部材である。各強度部材214は、例えば、内側本体部210の内部空間を前後方向に仕切る横置隔壁(すなわち、トランスバルクヘッド)である。この場合、第1側壁部211のうち上記本体中心面よりも幅方向の一方側の部位に設けられた強度部材214と、当該強度部材214と前後方向の同じ位置において第1側壁部211のうち本体中心面よりも幅方向の他方側の部位に設けられた強度部材214とは、同一の横置隔壁である。
また、各強度部材214は、いわゆる横フレームの一部であってもよい。この場合、第1側壁部211のうち上記本体中心面よりも幅方向の一方側の部位に設けられた強度部材214と、当該強度部材214と前後方向の同じ位置において第1側壁部211のうち本体中心面よりも幅方向の他方側の部位に設けられた強度部材214とは、同一の横フレームの一部である。上記一方側の部位に設けられた複数の強度部材214の下端部と、上記他方側の部位に設けられた複数の強度部材214の下端部とは、底部213の上面にて前後方向に配列されるとともにそれぞれが幅方向に延びる複数の強度部材(図示省略)を介して互いに接続される。なお、複数の強度部材214は、前後方向に関して必ずしも等間隔に配置される必要はなく、不等間隔にて配置されてもよい。
第2側壁部212は、周状の第1側壁部211の外側にて上下方向に略平行に延びる湾曲板状の部位である。第2側壁部212は、第1側壁部211と共に浮体本体21の側壁部を構成する。図3に示す例では、複数の第2側壁部212が第1側壁部211の外側にて周状に連続して設けられ、第1側壁部211の周囲を平面視において全周に亘って囲む。各第2側壁部212は、平面視における第1側壁部211の周囲において、第1側壁部211の周方向の一部に配置される。図3に示す例では、複数の第2側壁部212のうち、上述の本体中心面の一方側に位置する複数の第2側壁部212と、当該本体中心面の他方側に位置する複数の第2側壁部212とは、当該本体中心面に対して面対称に配置される。また、平行部202に配置された複数の第2側壁部212の形状は、互いに略同じである。なお、複数の第2側壁部212には、形状の異なる第2側壁部212が含まれていてもよい。
船首部201、平行部202および船尾部203では、それぞれ、第2側壁部212が、前端部および後端部(すなわち、平面視における第2側壁部212の両端部)にて第1側壁部211の外側面に固定されている。詳細には、各第2側壁部212の前端部および後端部は、複数の強度部材214のうち2つの強度部材214と第1側壁部211を挟んで対向する位置にて、第1側壁部211の外側面に固定される。1つの第2側壁部212の前端部および後端部と対向する2つの強度部材214の前後方向における間には、他の強度部材214が設けられてもよく、設けられなくてもよい。換言すれば、1つの第2側壁部212は、自身の前端部および後端部と前後方向の略同じ位置に位置する2つの強度部材214のみと第1側壁部211を挟んで対向していてもよく、当該2つの強度部材214を含む3つ以上の強度部材214と第1側壁部211を挟んで対向していてもよい。図3に示す例では、1つの第2側壁部212の前端部および後端部と対向する2つの強度部材214は、前後方向にて隣接する2つの強度部材214である。また、一の第2側壁部212の後端部、および、当該一の第2側壁部212の後側に隣接する第2側壁部212の前端部は、同一の強度部材214と第1側壁部211を挟んで対向する。なお、第2側壁部212の前端部および後端部はそれぞれ、第1側壁部211を挟んで強度部材214と実質的に対向していればよく、強度部材214から前後方向に多少ずれた位置にて第1側壁部211の外側面に固定されてもよい。
各第2側壁部212は、第1側壁部211から外側に向かって凸となるように湾曲しており、各第2側壁部212の前後方向の中央部は、平面視において周状の第1側壁部211から外側に離間する。これにより、各第2側壁部212と第1側壁部211との間に、上下方向に延びる空間215が形成される。空間215の上端および下端は、外部に向かって開口している。なお、空間215の上端および/または下端は、閉塞されてもよい。図3に例示する第1側壁部211では、平行部202において各第2側壁部212と対向する部位は略平板状である。また、第1側壁部211のうち、船首部201および船尾部203において各第2側壁部212と対向する部位も略平板状である。
各第2側壁部212の平面視における形状は、例えば略円弧状である。この場合、平面視において略円弧状の第2側壁部212の円周角は、好ましくは60°~90°である。図5に示す例では、第2側壁部212の円周角θは、約60°である。また、第2側壁部212と第1側壁部211との間に設けられた空間215の形状は、平面視において略弓形である。なお、円周角θは60°未満であってもよく、90°よりも大きくてもよい。
上述のように、図3に示す例では、平行部202に配置された複数の第2側壁部212の形状は、互いに略同じである。すなわち、平行部202に配置された複数の第2側壁部212の前後方向の長さは略同じであり、当該複数の第2側壁部212の第1側壁部211からの突出量は略同じである。したがって、平行部202において前後方向に並んで配置される複数の第2側壁部212では、当該複数の第2側壁部212のそれぞれの最大突出部(すなわち、第1側壁部211から幅方向に最も離れている部位)を結ぶ仮想的な直線は、前後方向に略平行となる。
上述の第2側壁部212の第1側壁部211からの突出量とは、平面視において第1側壁部211に垂直な方向に関して、第2側壁部212のうち第1側壁部211から最も離れた部位と第1側壁部211との間の距離である。例えば、平行部202に配置された第2側壁部212の場合、第2側壁部212の第1側壁部211からの突出量は、幅方向における突出量であり、第2側壁部212のうち第1側壁部211から幅方向に最も離れた部位と第1側壁部211との間の幅方向の距離である。
浮体本体21において、一の第2側壁部212が設けられる部位に注目すると、上述のように、当該第2側壁部212の前後方向の両端部が、第1側壁部211を介して2つの強度部材214に固定され、当該2つの強度部材214により支持される。また、第1側壁部211のうち当該第2側壁部212と対向する部位の前後方向の両端部は、第2側壁部212の前後方向の両端部に固定されるとともに、上記2つの強度部材214により支持される。
すなわち、浮体本体21では、湾曲板状の一の第2側壁部212(すなわち、アーチ)、および、第1側壁部211のうち当該第2側壁部212と対向する部位(すなわち、タイ)により、タイドアーチ構造が構成される。このため、第1側壁部211のうち第2側壁部212と対向する部位の板厚を、当該第2側壁部212が設けられないと仮定した場合の板厚に比べて薄くすることができる。また、第1側壁部211のうち第2側壁部212と対向する部位の板厚と、当該第2側壁部212の板厚との合計を、当該第2側壁部212が設けられないと仮定した場合の第1側壁部211の板厚に比べて薄くすることができる。その結果、浮体構造物2の軽量化が実現される。
上述の第1側壁部211および第2側壁部212の板厚は、通常、浮体構造物2の設置水域における水の流れや波等の外的条件等に基づいて側壁部に働く外力を算出し、当該外力に耐え得るように決定される。浮体構造物2に作用する応力をFEM(Finite Element Method)解析にて算出したところ、第1側壁部211および第2側壁部212にそれぞれ作用する応力は、第2側壁部212が設けられないと仮定した場合に第1側壁部211に作用する応力の約3%となった。したがって、第1側壁部211および第2側壁部212の合計板厚は、第2側壁部212が設けられないと仮定した場合の第1側壁部211の板厚の約6%以上であればよく、腐食等に対するマージンを含めたとしても、第1側壁部211および第2側壁部212を大幅に薄型化することができる。
浮体構造物2を製造する際には、例えば、第1側壁部211となる予定の複数のパネルと、複数の第2側壁部212とが準備され、各第2側壁部212と当該第2側壁部212に対応するパネルとが溶接等により固定されて複数の側壁要素が形成される。その後、底部213に固定された複数の強度部材214である複数の横置隔壁に、当該複数の側壁要素が溶接等により固定されることにより浮体構造物2が形成される。あるいは、内部に複数の強度部材214が固定された内側本体部210が予め形成されており、当該内側本体部210の外側面に複数の第2側壁部212が溶接等により固定されることにより、浮体構造物2が形成されてもよい。
なお、浮体本体21では、底部213の形状は、丸みを帯びたU字型や下端が尖ったV字型等、様々に変更されてよい。また、第1側壁部211および各第2側壁部212は、必ずしも上下方向に平行である必要はなく、例えば、底部213から上方に向かうに従って幅方向の外方に向かって傾斜する傾斜面であってもよい。平面視における第2側壁部212の形状も、略円弧状には限定されず、様々に変更されてよい。
また、浮体本体21では、必ずしも第1側壁部211の周囲の全周に亘って複数の第2側壁部212が設けられる必要はなく、第1側壁部211の周囲の一部のみに第2側壁部212が設けられてもよい。この場合、第2側壁部212の数は必ずしも複数である必要はなく、1つであってもよい。
以上に説明したように、係留ライン4により係留される浮体構造物2は、底部213と、第1側壁部211と、複数の強度部材214と、第2側壁部212とを備える。第1側壁部211は、底部213の全周に亘って底部213の周縁部から上方に延びる。複数の強度部材214は、第1側壁部211の内側面に設けられる。第2側壁部212は、平面視における第1側壁部211の周囲の一部において、第1側壁部211の外側面に固定される。第2側壁部212は、第1側壁部211から外側に向かって凸となるように湾曲する。平面視における第2側壁部212の両端部は、複数の強度部材214のうち2つの強度部材214と第1側壁部211を挟んで対向する位置にて第1側壁部211の外側面に固定される。また、平面視における第2側壁部212の中央部は、第1側壁部211から外側に離間する。
これにより、上述のように、第2側壁部212および第1側壁部211によってタイドアーチ構造が構成されるため、第1側壁部211のうち第2側壁部212と対向する部位と当該第2側壁部212との合計板厚を薄くすることができる。その結果、浮体構造物2を軽量化することができ、浮体構造物2および係留システム1の製造コストを低減することができる。
上述のように、第1側壁部211のうち第2側壁部212と対向する部位は平板状であることが好ましい。これにより、当該部位が湾曲板状である場合に比べて、当該部位の重量を低減することができる。また、鋼材を湾曲させるためのコストも不要となる。その結果、浮体構造物2の製造コストをさらに低減することができる。
上述のように、底部213および第1側壁部211により構成される内側本体部210は、前後方向に延びる船形であることが好ましい。これにより、円柱状等の浮体構造物に比べて、浮体構造物2に働く流体抵抗が低減されるため、係留ライン4に対して作用する係留張力を低減することができる。その結果、係留ライン4の小径化を実現することができ、係留システム1の製造コストを低減することができる。また、浮体構造物2では、上述のように、第1側壁部211および第2側壁部212の板厚を薄くすることができるため、浮体構造物2の上記構造は、円柱状等の浮体構造物に比べて重量が増大する傾向を有する船形の浮体構造物に特に適している。
上述のように、内側本体部210は、船首部201と、平行部202とを備えることが好ましい。船首部201では、平面視における幅方向の幅が、前端から後方に向かうに従って増大する。平行部202は、船首部201の後端に連続する。平行部202では、平面視における幅方向の幅が前後方向において一定である。そして、第2側壁部212は、平行部202において第1側壁部211に固定されることが好ましい。これにより、第1側壁部211のうち当該第2側壁部212と対向する部位において、薄型化による重量低減を効率的に実現することができる。
上述のように、浮体構造物2は、平行部202において第2側壁部212と前後方向に隣接して第1側壁部211の外側面に固定される他の第2側壁部212をさらに備えることも好ましい。当該他の第2側壁部212は、第1側壁部211から外側に向かって凸となるように湾曲する。平面視における当該他の第2側壁部212の両端部は、複数の強度部材214のうち2つの強度部材214と第1側壁部211を挟んで対向する位置にて第1側壁部211の外側面に固定される。平面視における当該他の第2側壁部212の中央部は、第1側壁部211から外側に離間する。当該他の第2側壁部212の第1側壁部211からの幅方向における突出量は、上記第2側壁部212の第1側壁部211からの幅方向における突出量と同じであることが好ましい。このように、平行部202において前後方向に隣接する2つの第2側壁部212の突出量を同じとすることにより、浮体構造物2に対する船舶の接舷等を容易とすることができる。
上述のように、浮体構造物2は、本体中心面に対して第2側壁部212と面対称であるもう1つの第2側壁部212をさらに備えることも好ましい。当該本体中心面は、内側本体部210の幅方向の中心を通るとともに幅方向に垂直な面である。当該もう1つの第2側壁部212は、第1側壁部211の外側面に固定されるとともに、第1側壁部211から外側に向かって凸となるように湾曲する。平面視における当該もう1つの第2側壁部212の両端部は、複数の強度部材214のうち2つの強度部材214と第1側壁部211を挟んで対向する位置にて第1側壁部211の外側面に固定される。平面視における当該もう1つの第2側壁部212の中央部は、第1側壁部211から外側に離間する。これにより、船形の浮体構造物2の左右舷における流体抵抗差を抑制し、船首部201を波上側に向けやすくすることができる。その結果、浮体構造物2に働く流体抵抗をさらに低減することができ、係留ライン4に対して作用する係留張力をさらに低減することができる。
上述のように、浮体構造物2では、上記第2側壁部212を含む複数の第2側壁部212が、平面視における第1側壁部211の周囲の全周に亘って設けられることが好ましい。当該複数の第2側壁部212の各第2側壁部212は、第1側壁部211の外側面に固定されるとともに、第1側壁部211から外側に向かって凸となるように湾曲する。平面視における各第2側壁部212の両端部は、複数の強度部材214のうち2つの強度部材214と第1側壁部211を挟んで対向する位置にて第1側壁部211の外側面に固定される。平面視における各第2側壁部212の中央部は、第1側壁部211から外側に離間する。これにより、第1側壁部211を略全周に亘って薄型化することができ、浮体構造物2をさらに軽量化することができる。その結果、浮体構造物2および係留システム1の製造コストをさらに低減することができる。
上述のように、略円弧状の第2側壁部212の円周角θ(図5参照)は様々に変更されてよい。図6は、円周角θと浮体構造物2の抗力との関係を示す図である。図6の横軸は円周角θ(°)を示し、縦軸は抗力(N)を示す。当該抗力(すなわち、浮体構造物2に作用する流体抵抗)は、浮体構造物2の喫水を1.0mとし、浮体構造物2の周囲における水の流速を1.5m/sとして、CFD(Computational Fluid Dynamics)解析により算出した。また、第2側壁部212の円周角θは、第2側壁部212の前後方向の長さを所定長さに維持しつつ変更した(図7および図8においても同様)。図6から、円周角θが大きくなるに従って抗力も大きくなることが分かる。
図7は、円周角θと第2側壁部212に生じる応力との関係を示す図である。図7の横軸は円周角θ(°)を示し、縦軸は応力(MPa)を示す。当該応力は、FEM解析にて算出した。図7から、円周角θが大きくなるに従って、第2側壁部212に生じる応力は小さくなることが分かる。同様に、円周角θが大きくなるに従って第1側壁部211に生じる応力も小さくなる。
図8は、円周角θと第2側壁部212の材料量との関係を示す図である。図8の横軸は円周角θ(°)を示し、縦軸は板厚10mm当たりの材料量(kg/10mm)を示す。当該材料量は、第2側壁部212の長さ(すなわち、湾曲する第2側壁部212の側面に沿う長さ)に基づいて算出した。図8から、円周角θが大きくなるに従って、第2側壁部212の材料量も大きくなることが分かる。
図6に示す抗力は、係留ライン4の小径化の観点から、小さい方が好ましい。図7に示す応力は、第1側壁部211および第2側壁部212の薄型化の観点から、小さい方が好ましい。図8に示す材料量は、浮体構造物2の製造コスト低減の観点から、小さい方が好ましい。これらを総合的に考慮すると、円周角θは、60°~90°であることが好ましい。
浮体構造物2では、図9に示すように、第1側壁部211と第2側壁部212との間に設けられた空間215に、水よりも比重が小さい充填材216が詰められていることが好ましい。図9では、図の理解を容易にするために、充填材216に平行斜線を付す。この場合、充填材216の浮力を利用することにより、浮体構造物2を小型化することができる。また、充填材216によって浮体構造物2の側壁部の強度が向上されるため、第1側壁部211および/または第2側壁部212の板厚をさらに薄くすることができる。充填材216としては、例えば、木材や発泡樹脂材が利用可能である。また、充填材216は、空間215の略全体に亘って充填されてもよく、空間215の一部に部分的に充填されてもよい。また、充填材216は、複数の空間215の全てに充填されてもよく、一部の空間215のみに充填されてもよい。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る浮体構造物2aについて説明する。図10は、浮体構造物2aを示す平面図である。浮体構造物2aの浮体本体21aでは、他の第2側壁部212とは前後方向の長さが異なる第2側壁部212aが、平行部202に設けられる。浮体構造物2aの他の構造は上述の浮体構造物2と同様であり、以下の説明では、浮体構造物2aの各構成のうち浮体構造物2の構成と対応するものに同符号を付す。
浮体構造物2aは、平行部202において第1側壁部211の外側面に固定される第2側壁部212に加えて、平行部202において当該第2側壁部212に前後方向にて隣接して第1側壁部211の外側面に固定される他の第2側壁部212aをさらに備える。第2側壁部212aは、第1側壁部211から外側に向かって凸となるように湾曲する。平面視における第2側壁部212aの両端部は、複数の強度部材214のうち2つの強度部材214と第1側壁部211を挟んで対向する位置にて第1側壁部211の外側面に固定される。平面視における第2側壁部212aの中央部は、第1側壁部211から外側に離間する。第2側壁部212aの前後方向の長さは、上述の第2側壁部212の前後方向の長さとは異なる。第2側壁部212aの第1側壁部211からの幅方向における突出量は、第2側壁部212の第1側壁部211からの幅方向における突出量と同じである。
このように、平行部202において前後方向に隣接する第2側壁部212および第2側壁部212aにおいて、当該2つの第2側壁部212,212aの前後方向の長さが異なる場合であっても、第2側壁部212,212aの幅方向における突出量を同じとすることにより、浮体構造物2aに対する船舶の接舷等を容易とすることができる。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る浮体構造物2bについて説明する。図11は、浮体構造物2bを示す側面図である。図12は、浮体構造物2を示す平面図である。図13は、浮体構造物2を示す正面図である。浮体構造物2bは、いわゆるカタマラン(双胴船)型の構造物である。浮体構造物2bは、2つの浮体本体21bと、連結部22bとを備える。
各浮体本体21bは、前後方向(すなわち、X方向)に略平行に延びる。2つの浮体本体21bは、幅方向(すなわち、Y方向)に間隙を空けて配置される。換言すれば、一の浮体本体21bの側方に、他の浮体本体21bが離間して配置される。2つの浮体本体21bの形状は、2つの浮体本体21bの幅方向中央にて前後方向に延びるとともに幅方向に垂直な仮想的な対称面に対して略面対称である。各浮体本体21bは、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、FRP等により形成される。
図11~図13に示す例では、各浮体本体21bの形状および構造は、幅が少し細い点を除き、上述の浮体本体21と略同じである。すなわち、各浮体本体21bは、第1側壁部211と、複数の第2側壁部212と、底部213と、複数の強度部材214とを備える。底部213は、浮体本体21bの下端部(すなわち、(-Z)側の端部)を構成する前後方向に長い略板状の部位である。第1側壁部211は、底部213の周縁部から上方に延びて浮体本体21bの側壁部を構成する略板状の部材である。第1側壁部211は、底部213の全周に亘って設けられる。底部213および周状の第1側壁部211により構成される内側本体部210は、前後方向に延びる船形である。
複数の第2側壁部212は、第1側壁部211の外側にて周状に連続して設けられ、第1側壁部211の周囲を平面視において全周に亘って囲む。各第2側壁部212は、第1側壁部211から外側に向かって凸となるように湾曲する板状の部位である。複数の第2側壁部212は、第1側壁部211と共に浮体本体21bの側壁部を構成する。各第2側壁部212の前端部および後端部は、第1側壁部211の内側面に固定された複数の強度部材214のうち、2つの強度部材214と第1側壁部211を挟んで対向する位置にて第1側壁部211の外側面に固定される。
各浮体本体21bでは、浮体本体21と同様に、必ずしも第1側壁部211の周囲の全周に亘って複数の第2側壁部212が設けられる必要はなく、第1側壁部211の周囲の一部のみに第2側壁部212が設けられてもよい。この場合、第2側壁部212の数は必ずしも複数である必要はなく、1つであってもよい。
連結部22bは、2つの浮体本体21bの上部を、浮体構造物2bの喫水線(すなわち、設計上における上限の喫水線)よりも上側において連結する。連結部22bは、2つの浮体本体21bの上端部(すなわち、(+Z)側の端部)を接続する上甲板221bを備える。上甲板221bは、上下方向に略垂直な略平板状の部材であり、水面から上方に離間した位置に配置される。上甲板221bは、例えば、2つの浮体本体21bの前後方向の略全長に亘って設けられる略矩形状の部材である。上甲板221bは、2つの浮体本体21bの上面の略全体、および、2つの浮体本体21b間の空間の上方全体を覆う。上甲板221bは、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、FRP等により形成される。上甲板221b上には、上述のGPS受信機等の上部設備23が設けられる。
なお、上甲板221bは、必ずしも、略矩形状である必要はなく、他の形状(例えば、略円板状)の部材であってもよい。また、連結部22bは、上甲板221bに加えて、あるいは、上甲板221bに代えて、2つの浮体本体21bを接続する他の接続部材を備えていてもよい。当該他の接続部材は、例えば、略直線状の鋼材を組み合わせて形成されたトラス構造であってもよい。
以上に説明したように、係留ライン4(図1参照)により係留される浮体構造物2bは、幅方向に並ぶとともにそれぞれが前後方向に延びる2つの浮体本体21bと、当該2つの浮体本体21bを連結する連結部22bと、を備える。2つの浮体本体21bのそれぞれは、底部213と、第1側壁部211と、複数の強度部材214と、第2側壁部212とを備える。第1側壁部211は、底部213の周縁部の全周に亘って当該周縁部から上方に延びる。複数の強度部材214は、第1側壁部211の内側面に設けられる。第2側壁部212は、平面視における第1側壁部211の周囲の一部において、第1側壁部211の外側面に固定されるとともに第1側壁部211から外側に向かって凸となるように湾曲する。
2つの浮体本体21bのそれぞれにおいて、底部213および第1側壁部211により構成される内側本体部210は、前後方向に延びる船形である。また、平面視における第2側壁部212の両端部は、複数の強度部材214のうち2つの強度部材214と第1側壁部211を挟んで対向する位置にて第1側壁部211の外側面に固定される。平面視における第2側壁部212の中央部は、第1側壁部211から外側に離間する。
浮体構造物2bの各浮体本体21bでは、浮体構造物2と同様に、第2側壁部212および第1側壁部211によってタイドアーチ構造が構成されるため、第1側壁部211のうち第2側壁部212と対向する部位と当該第2側壁部212との合計板厚を薄くすることができる。その結果、浮体構造物2bを軽量化することができ、浮体構造物2bおよび係留システム1(図1参照)の製造コストを低減することができる。また、各浮体本体21bの内側本体部210が船形とされることにより、浮体構造物2bに働く流体抵抗が低減されるため、係留ライン4(図1参照)に対して作用する係留張力を低減することができる。その結果、係留ライン4の小径化を実現することができ、係留システム1の製造コストをさらに低減することができる。
さらに、浮体構造物2bは、2つの浮体本体21bが幅方向に並ぶカタマラン型の構造を有するため、浮体構造物2bの復原力を維持しつつ、各浮体本体21bの幅に対する前後方向の長さの割合(いわゆる、L/B)を大きくすることができる。その結果、浮体構造物2bに働く流体抵抗がさらに低減され、係留ライン4の更なる小径化を実現することができる。
上述の浮体構造物2,2a,2bでは、様々な変更が可能である。
浮体構造物2では、第1側壁部211のうち第2側壁部212と対向する部位は、必ずしも平板状である必要はなく、例えば、湾曲または屈曲した板状であってもよい。浮体構造物2a,2bについても同様である。
浮体構造物2では、平行部202における複数の第2側壁部212の上記突出量は、必ずしも同じである必要はなく、異なっていてもよい。浮体構造物2a,2bについても同様である。
浮体構造物2bでは、浮体本体21bの数は2には限定されず、例えば、幅方向に並ぶ3つの浮体本体21bが設けられてもよい。この場合、3つの浮体本体21bの大きさや形状は同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、幅方向の中央に位置する浮体本体21bの前後方向の長さは、幅方向両側に位置する2つの浮体本体21bの長さよりも長くてもよい。
浮体構造物2では、内側本体部210の形状は必ずしも船形には限定されず、例えば、上下方向に延びる円柱状や多角柱状等であってもよい。浮体構造物2aにおいても同様である。
浮体構造物2は、必ずしも、津波および/または波浪を観測する観測用ブイとして利用される必要はなく、浮魚礁等、様々な用途に利用可能である。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。