JP2025123777A - 触媒 - Google Patents

触媒

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鉄太郎 佐藤
Tetsutaro Sato
裕次 窪田
Yuji Kubota
純一 尾崎
Junichi Ozaki
里江子 亀山
Rieko Kameyama
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Abstract

【課題】酸素還元反応及び酸素発生反応について高い初期活性及び耐久性を有する触媒を提供する。
【解決手段】触媒は、炭素担体と、炭素担体に担持された遷移金属含有触媒とを含む触媒であって、ラマンスペクトルにおいてラマンシフト1350cm-1付近のD1バンドと、ラマンシフト1590cm-1付近のGバンドとを示し、XPSスペクトルにおいてB1sスペクトルをピーク分離して得られる、結合エネルギー192.0±0.3eVの特定のホウ素原子のピークを示し、下記特性:(p1)ラマン分光法によるD1-FWHMが112cm-1以下、且つXPSによる特定B/C%が0.7%以上;(p2)D1-FWHMが52cm-1以上、112cm-1以下、且つ特定B/C%が0.1%以上;(p3)ラマン分光法によるID1/I比が1.06以上、且つ特定B/C%が0.7%以上;、又は(p4)ID1/I比が1.06以上、1.99以下、且つ特定B/C%が0.1%以上;を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、炭素担体と当該炭素担体に担持された遷移金属含有触媒とを含む触媒に関する。
特許文献1には、炭素六角網面のプレートレット構造を有するカーボンナノファイバーを含む酸素発生電極用導電助剤が記載されている。また、非特許文献1には、コバルト、ホウ素原子、窒素原子及びカーボンナノチューブを含み、酸素発生反応及び水素発生反応について活性を有する触媒が記載されている。
国際公開第2019-039538号
Advanced Functional Materials, 2018, Volume 28, Issue 26, 1801136
一方、本発明の発明者らは、金属空気二次電池用電極触媒に関し、放電に関する酸素還元反応(ORR)のみならず、充電に関する酸素発生反応(OER)についても高い初期活性及び耐久性を有する触媒の開発を進めてきた。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、酸素還元反応及び酸素発生反応について高い初期活性及び耐久性を有する触媒を提供することをその目的の一つとする。
[1]上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る触媒は、炭素担体と、前記炭素担体に担持された遷移金属含有触媒とを含む触媒であって、ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1350cm-1付近にピークトップを有するD1バンドと、ラマンシフト1590cm-1付近にピークトップを有するGバンドとを示し、X線光電子分光法により得られる光電子スペクトルにおいて、ホウ素原子の1s軌道に由来するB1sスペクトルをピーク分離して得られる、結合エネルギー192.0±0.3eVの範囲内にピークトップを有する特定ホウ素原子ピークを示し、下記特性(p1)、(p2)、(p3)又は(p4):(p1)前記ラマン分光法により得られる前記D1バンドの半値全幅であるD1-FWHMが112cm-1以下であり、且つ、前記X線光電子分光法により得られる炭素原子の濃度に対する前記特定ホウ素原子ピークを示す特定ホウ素原子の濃度の比率である特定B/C%が0.7%以上である;、(p2)前記D1-FWHMが52cm-1以上、112cm-1以下であり、且つ、前記特定B/C%が0.1%以上である;、(p3)前記ラマン分光法により得られる前記Gバンドのピークトップの強度に対する前記D1バンドのピークトップの強度の比であるID1/I比が1.06以上であり、且つ、前記特定B/C%が0.7%以上である;、(p4)前記ID1/I比が1.06以上、1.99以下であり、且つ、前記特定B/C%が0.1%以上である;を有する。本発明によれば、酸素還元反応及び酸素発生反応について高い初期活性及び耐久性を有する触媒が提供される。
[2]前記[1]の触媒は、前記特性(p1)を有することとしてもよい。[3]前記[1]又は[2]の触媒は、前記特性(p2)を有することとしてもよい。[4]前記[1]乃至[3]のいずれかの触媒は、前記特性(p3)を有することとしてもよい。[5]前記[1]乃至[4]のいずれかの触媒は、前記特性(p4)を有することとしてもよい。
[6]前記[1]乃至[5]のいずれかの触媒は、CuKα線を用いた粉末X線回折により得られるX線回折図形における炭素の(002)回折線から得られる結晶子サイズLcが、2.50nm以下を示すこととしてもよい。
[7]前記[1]乃至[6]のいずれかの触媒は、ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1500cm-1付近にピークトップを有するD4バンドを示し、前記Gバンドのピークトップの強度に対する前記D4バンドのピークトップの強度の比であるID4/I比が0.05以上であることとしてもよい。
[8]前記[1]乃至[7]のいずれかの触媒は、ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1500cm-1付近にピークトップを有するD4バンドを示し、前記ラマン分光法により得られる前記D4バンドの半値全幅であるD4-FWHMが250cm-1以下であることとしてもよい。
[9]前記[1]乃至[8]のいずれかの触媒は、元素分析により得られる炭素原子含有量に対する窒素原子含有量の比率が0.1%以上であることとしてもよい。[10]前記[1]乃至[9]のいずれかの触媒は、X線光電子分光法により得られる炭素原子の濃度に対する窒素原子の濃度の比率が0.1%以上であることとしてもよい。
[11]前記[1]乃至[10]のいずれかの触媒は、X線光電子分光法により得られる光電子スペクトルにおいて、窒素原子の1s軌道に由来するN1sスペクトルをピーク分離して得られる、結合エネルギー399.5±0.3eVの範囲内にピークトップを有する特定窒素原子ピークを示し、前記X線光電子分光法により得られる炭素原子の濃度に対する前記特定窒素原子ピークを示す特定窒素原子の濃度の比率である特定N/C%が0.1%以上であることとしてもよい。
[12]前記[1]乃至[11]のいずれかの触媒は、窒素吸着法により得られる細孔径が2nm以上、50nm以下の細孔の容積が1.00cm/g以下であることとしてもよい。[13]前記[1]乃至[12]のいずれかの触媒は、窒素吸着法により得られる細孔径が2nm未満の細孔の容積が1.00cm/g以下であることとしてもよい。[14]前記[1]乃至[13]のいずれかの触媒は、窒素吸着法により得られるBET比表面積が1.0m/g以上であることとしてもよい。
[15]前記[1]乃至[14]のいずれかの触媒は、X線光電子分光法により得られる炭素原子の濃度に対するホウ素原子の濃度の比率が0.1%以上であることとしてもよい。[16]前記[1]乃至[15]のいずれかの触媒は、触媒粒子のメディアン径が5.00μm以下であることとしてもよい。[17]前記[1]乃至[16]のいずれかの触媒は、誘導結合プラズマ質量分析により測定される金属含有量が1.0重量%以上であることとしてもよい。
本発明によれば、酸素還元反応及び酸素発生反応について高い初期活性及び耐久性を有する触媒が提供される。
本実施形態に係る実施例において例6の触媒のラマン分光法により得られたラマンスペクトルを示す説明図である。 本実施形態に係る実施例において例6の触媒のX線光電子分光法により得られたベースライン補正時のN1sスペクトルを示す説明図である。 本実施形態に係る実施例において例6の触媒のX線光電子分光法により得られたN1sスペクトルのピーク分離の結果を示す説明図である。 本実施形態に係る実施例において例6の触媒のX線光電子分光法により得られたベースライン補正時のB1sスペクトルを示す説明図である。 本実施形態に係る実施例において例6の触媒のX線光電子分光法により得られたB1sスペクトルのピーク分離の結果を示す説明図である。 本実施形態に係る実施例において例6の触媒の粉末X線回折により得られたX線回折図形のピーク分離の結果を示す説明図である。 本実施形態に係る実施例において例6の触媒について得られた酸素還元ボルタモグラムを示す説明図である。 本実施形態に係る実施例において例6の触媒について得られた酸素発生ボルタモグラムを示す説明図である。 本実施形態に係る実施例において触媒の製造に用いられた炭素担体及び遷移金属含有触媒前駆体と、触媒の性能を評価した結果とを示す説明図である。 本実施形態に係る実施例において触媒の特性を評価した結果を示す説明図である。
以下に、本発明の一実施形態に係る触媒(以下、「本触媒」という。)について説明する。なお、本発明は本実施形態で示す例に限られない。
本触媒は、炭素担体と、当該炭素担体に担持された遷移金属含有触媒とを含む。炭素担体は、主に炭素から構成される。炭素担体の炭素含有量は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、70重量%以上であってもよく、75重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、85重量%以上であることが特に好ましい。
また、炭素担体の炭素含有量は、100重量%以下であってもよく、95重量%以下であってもよく、90重量%以下であってもよい。炭素担体の炭素含有量は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。炭素担体の炭素含有量は、元素分析(具体的には、燃焼法)により得られる。
炭素担体は、多孔質の炭素材料である。すなわち、炭素担体は、遷移金属含有触媒を担持するための細孔を含む。このため本触媒は、炭素担体の細孔内(より具体的には、細孔の内表面)に担持された遷移金属含有触媒を含む。
炭素担体は、炭素化材料であることが好ましい。炭素化材料は、有機物(具体的には、有機化合物、又は有機化合物を含む組成物)を含む原料を炭素化することにより得られる。
本触媒の炭素担体に担持される遷移金属含有触媒は、遷移金属を含み、触媒活性を示す。遷移金属は、元素周期表の3族から12族に属する金属である。遷移金属は、貴金属(すなわち、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、及び金)ではない遷移金属であることが好ましい。この場合、本触媒は、貴金属を含まないこととしてもよい。また、遷移金属は、元素周期表の3族から12族の第4周期に属する金属であることが特に好ましい。
具体的に、本触媒の遷移金属含有触媒に含まれる遷移金属は、例えば、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ランタノイド(例えば、ガドリニウム(Gd)、ランタン(La)、セリウム(Ce))及びアクチノイドからなる群より選択される1種以上であってもよく、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、及びZnからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、Mn、Fe、Co、Ni、及びZnからなる群より選択される1種以上であることがより好ましく、Mn、Fe、Co、及びNiからなる群より選択される1種以上であることがさらに好ましく、Fe、Co、及びNiからなる群より選択される1種以上であることが特に好ましい。
より具体的に、本触媒の遷移金属含有触媒は、純Co(合金を形成していないCo)及び/又はCo合金を含むことが好ましい。Co合金は、Coと、Coではない金属との合金である。Coと合金を形成する金属は、遷移金属であることが好ましく、貴金属ではない遷移金属であることがより好ましく、元素周期表の3族から12族の第4周期に属する遷移金属であることが特に好ましい。
具体的に、Co合金は、Coと、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、スズ(Sn)、La、及びCeからなる群より選択される1種以上とを含むことが好ましく、Coと、Mn、Fe、Ni、及びZnからなる群より選択される1種以上とを含むことがより好ましく、Coと、Mn、Fe、及びNiからなる群より選択される1種以上とを含むことがさらに好ましく、Coと、Fe及びNiからなる群より選択される1種以上とを含むことが特に好ましい。
より具体的に、Co合金は、CoとNiとを含む合金、CoとFeとを含む合金、及びCoとMnとを含む合金からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、CoとNiとを含む合金、及びCoとFeとを含む合金からなる群より選択される1種以上であることが特に好ましい。なお、CoとNiとを含むCo合金は、さらにFeを含んでもよい。また、CoとFeとを含むCo合金は、さらにNiを含んでもよい。
本触媒の金属含有量は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)により測定される金属含有量が1.0重量%以上であることとしてもよい。この場合、本触媒の金属含有量は、1.5重量%以上であることが好ましく、2.0重量%以上であることがより好ましく、2.5重量%以上であることがさらに好ましく、3.0重量%以上であることがさらに好ましく、3.5重量%以上であることがさらに好ましく、4.0重量%以上であることがさらに好ましく、4.5重量%以上であることがさらに好ましく、5.0重量%以上であることがさらに好ましく、6.0重量%以上であることがさらに好ましく、7.0重量%以上であることがさらに好ましく、8.0重量%以上であることがさらに好ましく、8.5重量%以上であることがさらに好ましく、9.0重量%以上であることがさらに好ましく、9.5重量%以上であることが特に好ましい。
また、本触媒の金属含有量は、40.0重量%以下であってもよく、30.0重量%以下であってもよく、20.0重量%以下であってもよく、15.0重量%以下であってもよく、14.0重量%以下であってもよく、13.0重量%以下であってもよく、12.0重量%以下であってもよく、11.0重量%以下であってもよく、10.5重量%以下であってもよく、10.0重量%以下であってもよい。本触媒の金属含有量は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
本触媒は、ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1350cm-1付近(具体的には、例えば、1340cm-1以上、1360cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するD1バンドを示す。
本触媒は、ラマン分光法により得られるD1バンドの半値全幅(以下、「D1-FWHM」という。)が112cm-1以下であることとしてもよい。この場合、本触媒のD1-FWHMは、110cm-1以下であることが好ましく、105cm-1以下であることがより好ましく、100cm-1以下であることがさらに好ましく、95cm-1以下であることがさらに好ましく、90cm-1以下であることがさらに好ましく、85cm-1以下であることがさらに好ましく、80cm-1以下であることがさらに好ましく、75cm-1以下であることがさらに好ましく、70cm-1以下であることがさらに好ましく、65cm-1以下であることがさらに好ましく、60cm-1以下であることが特に好ましい。
また、本触媒のD1-FWHMは、40cm-1以上であってもよく、45cm-1以上であることが好ましく、50cm-1以上であることがより好ましく、52cm-1以上であることがさらに好ましく、55cm-1以上であることが特に好ましい。
本触媒のD1-FWHMは、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。すなわち、本触媒のD1-FWHMは、例えば、52cm-1以上、112cm-1以下であることとしてもよい。この場合、本触媒のD1-FWHMの上限値は、112cm-1より小さい、上述した上限値のいずれかに置換されてもよく、及び/又は、本触媒のD1-FWHMの下限値は、52cm-1より大きい、上述した下限値のいずれかに置換されてもよい。
D1バンドは、触媒に含まれるグラフェン層におけるエッジや欠陥のような乱れた格子構造(具体的には、炭素担体に含まれるグラフェン層におけるエッジや欠陥のような乱れた格子構造、及び/又は、当該炭素担体に担持された遷移金属含有触媒に含まれるグラフェン層におけるエッジや欠陥のような乱れた格子構造)由来の成分である。そして、D1-FWHMは、D1バンドを示すエッジや欠陥のような乱れた格子構造(以下、単に「D1格子構造」という。)の均質性を示す。この点、触媒全体のD1格子構造の均質性が高くなるにつれて、当該触媒のD1-FWHMは小さくなり、触媒構造の安定性が高まる。したがって、上述した上限値以下のD1-FWHMを示す触媒構造は、本触媒の耐久性に寄与する。
ただし、小さすぎるD1-FWHMは、触媒全体のD1格子構造に対する炭素担体由来のD1格子構造の割合が大きすぎることを反映していることがあり、この場合、耐久性が損なわれることがある。これに対し、適度な大きさのD1-FWHMを示す触媒構造は、触媒全体のD1格子構造の均質性が高く、且つ、炭素担体由来のD1格子構造の割合が大きすぎないことを示しており、本触媒の耐久性のさらなる向上に寄与する。
本触媒は、ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1500cm-1付近(具体的には、例えば、1490cm-1以上、1510cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するD4バンドを示すこととしてもよい。
本触媒は、ラマン分光法により得られるD4バンドの半値全幅(以下、「D4-FWHM」という。)が250cm-1以下であることとしてもよい。この場合、本触媒のD4-FWHMは、240cm-1以下であることが好ましく、230cm-1以下であることがより好ましく、220cm-1以下であることがさらに好ましく、210cm-1以下であることがさらに好ましく、200cm-1以下であることがさらに好ましく、195cm-1以下であることがさらに好ましく、190cm-1以下であることがさらに好ましく、185cm-1以下であることがさらに好ましく、180cm-1以下であることがさらに好ましく、175cm-1以下であることがさらに好ましく、170cm-1以下であることがさらに好ましく、165cm-1以下であることがさらに好ましく、160cm-1以下であることがさらに好ましく、155cm-1以下であることが特に好ましい。
また、本触媒のD4-FWHMは、80cm-1以上であってもよく、90cm-1以上であることが好ましく、100cm-1以上であることがより好ましく、110cm-1以上であることがさらに好ましく、120cm-1以上であることがさらに好ましく、130cm-1以上であることがさらに好ましく、140cm-1以上であることがさらに好ましく、145cm-1以上であることがさらに好ましく、150cm-1以上であることが特に好ましい。本触媒のD4-FWHMは、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
D4バンドは、触媒に含まれる炭素sp構造(具体的には、炭素担体に含まれる炭素sp構造、及び/又は、当該炭素担体に担持された遷移金属含有触媒に含まれる炭素sp構造)由来の成分である。そして、D4-FWHMは、炭素sp構造の均質性を示す。この点、触媒全体の炭素sp構造の均質性が高くなるにつれて、当該触媒のD4-FWHMは小さくなり、触媒活性が高まる。したがって、上述した上限値以下のD4-FWHMを示す触媒構造は、本触媒の初期活性に寄与する。
ただし、小さすぎるD4-FWHMは、触媒全体の炭素sp構造に対する炭素担体由来の炭素sp構造の割合が大きすぎることを反映していることがあり、この場合、耐久性が損なわれることがある。これに対し、適度な大きさのD4-FWHMを示す触媒構造は、触媒全体の炭素sp構造の均質性が高く、且つ、炭素担体由来の炭素sp構造の割合が大きすぎないことを示しており、本触媒の耐久性のさらなる向上に寄与する。
本触媒は、ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1590cm-1付近(具体的には、例えば、1580cm-1以上、1600cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するGバンドを示す。
本触媒は、ラマン分光法により得られる、Gバンドのピークトップの強度に対するD1バンドのピークトップの強度の比(以下、「ID1/I比」という。)が1.06以上であることとしてもよい。この場合、本触媒のID1/I比は、1.08以上であることが好ましく、1.10以上であることがより好ましく、1.12以上であることがより好ましく、1.15以上であることがさらに好ましく、1.20以上であることがさらに好ましく、1.25以上であることがさらに好ましく、1.30以上であることがさらに好ましく、1.35以上であることがさらに好ましく、1.40以上であることがさらに好ましく、1.45以上であることがさらに好ましく、1.50以上であることがさらに好ましく、1.55以上であることがさらに好ましく、1.60以上であることが特に好ましい。
また、本触媒のID1/I比は、1.99以下であってもよく、1.95以下であることが好ましく、1.90以下であることがより好ましく、1.85以下であることがさらに好ましく、1.80以下であることがさらに好ましく、1.75以下であることがさらに好ましく、1.70以下であることがさらに好ましく、1.65以下であることが特に好ましい。
本触媒のID1/I比は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。すなわち、本触媒のID1/I比は、例えば、1.06以上、1.99以下であることとしてもよい。この場合、本触媒のID1/I比の上限値は、1.99より小さい、上述した上限値のいずれかに置換されてもよく、及び/又は、本触媒のID1/I比の下限値は、1.06より大きい、上述した下限値のいずれかに置換されてもよい。
D1バンドは、上述のとおり、触媒に含まれる結晶性D1格子構造由来の成分である。また、Gバンドは、触媒に含まれるグラフェン層の網面中央の結晶格子由来の成分である。このため、ID1/I比は、結晶性D1格子構造の多寡を示す。この点、触媒全体の結晶性が高くなり、結晶性D1格子構造が多くなるほど、当該触媒のID1/I比は大きくなり、触媒構造の安定性が高まる。したがって、上述した下限値以上のID1/I比を示す触媒構造は、本触媒の耐久性の向上に寄与する。
ただし、大きすぎるID1/I比は、触媒全体の結晶性D1格子構造に対する炭素担体由来の結晶性D1格子構造の比率が大きすぎることを反映していることがあり、この場合、耐久性が損なわれることがある。これに対し、適度な大きさのID1/I比を示す触媒構造は、結晶性D1格子構造が多く、且つ、炭素担体由来の結晶性D1格子構造の割合が大きすぎないことを示しており、本触媒の耐久性のさらなる向上に寄与する。
本触媒は、ラマン分光法により得られる、Gバンドのピークトップの強度に対するD4バンドのピークトップの強度の比(以下、「ID4/I比」という。)が0.05以上であることとしてもよい。この場合、本触媒のID4/I比は、0.08以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましく、0.20以上であることがさらに好ましく、0.25以上であることがさらに好ましく、0.30以上であることが特に好ましい。
また、本触媒のID4/I比は、1.00以下であってもよく、0.90以下であってもよく、0.80以下であってもよく、0.70以下であってもよく、0.60以下であってもよく、0.50以下であってもよく、0.40以下であってもよい。本触媒のID4/I比は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
D4バンドは、触媒に含まれる炭素sp構造由来の成分であり、Gバンドは、触媒に含まれるグラフェン層の網面中央の結晶格子由来の成分である。このため、ID4/I比は、炭素sp構造の多寡を示す。この点、触媒に含まれる炭素sp構造が多くなるにつれて、当該触媒のID4/I比は大きくなり、触媒活性が高まる。したがって、上述した下限値以上のID4/I比を示す触媒構造は、本触媒の初期活性のさらなる向上に寄与する。
本触媒は、ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1620cm-1付近(具体的には、例えば、1610cm-1以上、1630cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するD2バンド、及び/又は、ラマンシフト1200cm-1付近(具体的には、例えば、1190cm-1以上、1210cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するD3バンドをさらに示すこととしてもよい。
本触媒は、ホウ素原子を含む。このため、本触媒は、X線光電子分光法(XPS)により得られる光電子スペクトルにおいて、ホウ素原子の1s軌道に由来するB1sスペクトルを示す。
そして、本触媒は、XPSにより得られる光電子スペクトルにおいて、B1sスペクトルをピーク分離して得られる、結合エネルギー192.0±0.3eVの範囲内にピークトップを有するホウ素原子ピーク(以下、「特定ホウ素原子ピーク」という。)を示す。
具体的に、本触媒は、例えば、XPSにより得られる光電子スペクトルにおいて、下記(b1)~(b4)のホウ素原子ピーク:(b1)結合エネルギー189.5±0.3eVの範囲内にピークトップを有する第一のホウ素原子ピーク;、(b2)結合エネルギー190.6±0.3eVの範囲内にピークトップを有する第二のホウ素原子ピーク;、(b3)結合エネルギー192.0±0.3eVの範囲内にピークトップを有する第三のホウ素原子ピーク;、及び(b4)結合エネルギー193.0±0.3eVの範囲内にピークトップを有する第四のホウ素原子ピーク;に分離される、ホウ素原子の1s軌道に由来するB1sスペクトルを示す。
すなわち、この場合、本触媒のXPSにより得られる光電子スペクトルにおいて、B1sスペクトルは、後述の実施例で説明されるピーク分離によって、上記(b1)~(b4)の4種のホウ素原子ピークに分離することができる。換言すれば、本触媒のXPSにより得られる光電子スペクトルにおいて、B1sスペクトルは、上記4種のホウ素原子ピークが重なり合って形成されたスペクトルとして現れる。
そして、上述の特定ホウ素原子ピークは、上記(b3)第三のホウ素原子ピークとして特定される。ここで、特定ホウ素原子ピークは、ホウ素原子と、当該ホウ素原子に結合した3個の窒素原子とを含み、且つ、当該3個の窒素原子のうち少なくとも1つが炭素原子と結合した化学構造(以下、「BNC構造」という。)に含まれる当該ホウ素原子、及び/又は、ホウ素原子と、当該ホウ素原子に結合した3個の窒素原子とを含み、且つ、当該3個の窒素原子のうち少なくとも1つが、当該3個の窒素原子とは異なる他の窒素原子と結合した化学構造(以下、「BNN構造」という。)に含まれる当該ホウ素原子に由来すると考えられる。
具体的に、例えば、下記の化学式(C-I)に示す化学構造は、BNC構造の一例であり、ホウ素原子に結合した3個の窒素原子のうち1つが炭素原子と結合している。
また、下記の化学式(C-II)に示す化学構造は、BNC構造であり、且つ、BNN構造でもある化学構造の一例であり、ホウ素原子に結合した3個の窒素原子のうち1つが、炭素原子と結合するとともに、当該3個の窒素原子とは異なる他の窒素原子とも結合している。
また、下記の化学式(C-III)に示す化学構造は、BNC構造であり、且つ、BNN構造でもある化学構造の他の例であり、ホウ素原子に結合した3個の窒素原子のうち1つが炭素原子と結合し、且つ、当該3個の窒素原子のうち他の1つが当該3個の窒素原子とは異なる他の窒素原子と結合している。
特定ホウ素原子ピークは、上記化学式(C-I)で示される化学構造、上記化学式(C-II)で示される化学構造、及び上記化学式(C-III)で示される化学構造からなる群より選択される1以上の化学構造に由来するホウ素原子ピークであることとしてもよい。ただし、特定ホウ素原子ピークが由来する化学構造は、BNC構造及び/又はBNN構造であれば、上記化学式(C-I)、(C-II)及び(C-III)に示されるものに限られない。
なお、上記(b1)第一のホウ素原子ピークは、BC構造及び/又はBNC構造に含まれるホウ素原子に由来すると考えられ、上記(b2)第二のホウ素原子ピークは、ヘキサゴナル-BN構造に含まれるホウ素原子に由来すると考えられ、上記(b4)第四のホウ素原子ピークは、酸素原子と結合したホウ素原子に由来すると考えられる。
そして、本触媒は、XPSにより得られる、炭素原子の濃度(原子%)に対する、特定ホウ素原子ピークを示すホウ素原子(以下、「特定ホウ素原子」という。)の濃度(原子%)の比率(以下、「特定B/C%」という。)が0.1%以上であることとしてもよい。この場合、本触媒の特定B/C%は、0.3%以上であることが好ましく、0.5%以上であることがより好ましく、0.7%以上であることがさらに好ましく、1.0%以上であることがさらに好ましく、1.3%以上であることがさらに好ましく、1.5%以上であることがより好ましく、2.0%以上であることがさらに好ましく、2.5%以上であることがさらに好ましく、3.0%以上であることがさらに好ましく、3.5%以上であることがさらに好ましく、4.0%以上であることがさらに好ましく、4.5%以上であることがさらに好ましく、5.0%以上であることがさらに好ましく、5.5%以上であることがさらに好ましく、6.0%以上であることがさらに好ましく、6.5%以上であることが特に好ましい。
また、本触媒の特定B/C%は、20.0%以下であってもよく、18.0%以下であってもよく、15.0%以下であってもよく、12.0%以下であってもよく、10.0%以下であってもよく、9.5%以下であってもよく、9.0%以下であってもよく、8.5%以下であってもよく、8.0%以下であってもよく、7.5%以下であってもよく、7.0%以下であってもよい。本触媒の特定B/C%は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
なお、特定B/C%は、XPSにより得られる、特定ホウ素原子の濃度(原子%)を炭素原子の濃度(原子%)で除して得られた値に100を乗じることにより算出される比率に相当する。
具体的に、特定B/C%は、例えば、次の式により算出される:[特定B/C%]=[B/C%]×[B3/Btotal比(-)]。ここで、B/C%は、XPSにより得られる、炭素原子の濃度(原子%)に対するホウ素原子の濃度(特定ホウ素原子を含むホウ素原子の総濃度)(原子%)の比率であり、当該ホウ素原子の濃度(原子%)を当該炭素原子の濃度(原子%)で除して得られた値に100を乗じることにより算出される。また、B3/Btotal比(-)は、XPSにより得られる、上記(b1)~(b4)のホウ素原子の含有量の合計に対する、上記(b3)第三のホウ素原子(特定ホウ素原子)の含有量の比であり、当該第三のホウ素原子(特定ホウ素原子)のピーク面積を当該(b1)~(b4)のホウ素原子のピーク面積の合計で除することにより算出される。
触媒のXPSによる特定B/C%は、当該触媒全体の表面付近における炭素原子の濃度に対する特定ホウ素原子の濃度の比率を示す。そして、特定ホウ素原子は、上記BNC構造及び/又はBNN構造を構成するホウ素原子である。このため、触媒全体の表面付近における特定ホウ素原子に関連する活性点が増加するにつれて、特定B/C%は大きくなり、触媒活性が高まる。したがって、上述した下限値以上の特定B/C%を示す触媒構造は、本触媒の初期活性に寄与する。
本触媒は、XPSにより得られる炭素原子の濃度(原子%)に対するホウ素原子の濃度(原子%)の比率である上記B/C%(以下、「総B/C%」という。)が0.1%以上であることとしてもよい。この場合、本触媒の総B/C%は、0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることがさらに好ましく、2.0%以上であることがさらに好ましく、2.5%以上であることがさらに好ましく、3.0%以上であることがさらに好ましく、3.5%以上であることがさらに好ましく、4.0%以上であることがさらに好ましく、5.0%以上であることがさらに好ましく、6.0%以上であることがさらに好ましく、7.0%以上であることがさらに好ましく、8.0%以上であることがさらに好ましく、9.0%以上であることがさらに好ましく、10.0%以上であることがさらに好ましく、11.0%以上であることがさらに好ましく、12.0%以上であることが特に好ましい。
また、本触媒の総B/C%は、40.0%以下であってもよく、35.0%以下であってもよく、30.0%以下であってもよく、25.0%以下であってもよく、20.0%以下であってもよく、18.0%以下であってもよく、16.0%以下であってもよく、15.0%以下であってもよい。本触媒の総B/C%は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
本触媒は、XPSにより得られる、炭素原子の濃度(原子%)に対する、上記(b1)第一のホウ素原子ピークを示すホウ素原子(以下、「第一のホウ素原子」という。)の濃度(原子%)の比率(以下、「B1/C%」という。)が0.0%以上であってもよく、0.1%以上であることが好ましく、0.2%以上であることが特に好ましい。
また、本触媒のB1/C%は、2.0%以下であってもよく、1.5%以下であってもよく、1.2%以下であってもよく、1.0%以下であってもよく、0.8%以下であってもよく、0.6%以下であってもよく、0.5%以下であってもよい。本触媒のB1/C%は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
本触媒は、XPSにより得られる、炭素原子の濃度(原子%)に対する、上記(b2)第二のホウ素原子ピークを示すホウ素原子(以下、「第二のホウ素原子」という。)の濃度(原子%)の比率(以下、「B2/C%」という。)が0.1%以上であってもよく、0.2%以上であることが好ましく、0.3%以上であることがより好ましく、0.4%以上であることがさらに好ましく、0.5%以上であることが特に好ましい。
また、本触媒のB2/C%は、8.0%以下であってもよく、6.0%以下であってもよく、5.0%以下であってもよく、4.0%以下であってもよく、3.0%以下であってもよく、2.0%以下であってもよく、1.5%以下であってもよく、1.0%以下であってもよく、0.8%以下であってもよい。本触媒のB2/C%は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
本触媒は、窒素原子を含むこととしてもよい。この場合、本触媒は、XPSにより得られる光電子スペクトルにおいて、窒素原子の1s軌道に由来するN1sスペクトルを示す。
そして、本触媒は、XPSにより得られる光電子スペクトルにおいて、N1sスペクトルをピーク分離して得られる、結合エネルギー399.5±0.3eVの範囲内にピークトップを有する窒素原子ピーク(以下、「特定窒素原子ピーク」という。)を示すことが好ましい。
具体的に、本触媒は、例えば、XPSにより得られる光電子スペクトルにおいて、下記(n1)~(n6)の窒素原子ピーク:(n1)結合エネルギー398.6±0.2eVの範囲内にピークトップを有する第一の窒素原子ピーク;、(n2)結合エネルギー399.5±0.3eVの範囲内にピークトップを有する第二の窒素原子ピーク;、(n3)結合エネルギー400.5±0.2eVの範囲内にピークトップを有する第三の窒素原子ピーク;、(n4)結合エネルギー401.3±0.3eVの範囲内にピークトップを有する第四の窒素原子ピーク;、(n5)結合エネルギー403.5±0.4eVの範囲内にピークトップを有する第五の窒素原子ピーク;、及び(n6)結合エネルギー404.0±0.5eVの範囲内にピークトップを有する第六の窒素原子ピーク;に分離される、窒素原子の1s軌道に由来するN1sスペクトルを示す。
すなわち、この場合、本触媒のXPSにより得られる光電子スペクトルにおいて、N1sスペクトルは、後述の実施例に記載されるピーク分離によって、上記(n1)~(n6)の6種の窒素原子ピークに分離することができる。換言すれば、本触媒のXPSにより得られる光電子スペクトルにおいて、N1sスペクトルは、上記6種の窒素原子ピークが重なり合って形成されたスペクトルとして現れる。
そして、上述の特定窒素原子ピークは、上記(n2)第二の窒素原子ピークとして特定される。ここで、特定窒素原子ピークは、金属原子と結合した窒素原子に由来すると考えられる。また、上記(n1)の第一の窒素原子ピークは、ピリジン官能基に含まれる窒素原子に由来すると考えられ、上記(n3)の第三の窒素原子ピークは、ピロール官能基に含まれる窒素原子に由来すると考えられ、上記(n4)の第四の窒素原子ピークは、炭素網面内に存在する窒素原子に由来すると考えられ、上記(n5)の第五の窒素原子ピークは、N-O結合に含まれる窒素原子に由来すると考えられ、上記(n6)の第六の窒素原子ピークは、炭素網面中に存在する窒素原子の外殻軌道に由来するサテライトピークであると考えられる。
そして、本触媒は、XPSにより得られる、炭素原子の濃度(原子%)に対する、特定窒素原子ピークを示す窒素原子(以下、「特定窒素原子」という。)の濃度(原子%)の比率(以下、「特定N/C%」という。)が0.1%以上であることとしてもよい。この場合、本触媒の特定N/C%は、0.2%以上であることが好ましく、0.3%以上であることがより好ましく、0.4%以上であることがさらに好ましく、0.5%以上であることがさらに好ましく、0.6%以上であることがさらに好ましく、0.7%以上であることがさらに好ましく、0.8%以上であることがさらに好ましく、0.9%以上であることがさらに好ましく、1.0%以上であることがさらに好ましく、1.1%以上であることがさらに好ましく、1.2%以上であることが特に好ましい。
また、本触媒の特定N/C%は、20.0%以下であってもよく、15.0%以下であってもよく、10.0%以下であってもよく、8.0%以下であってもよく、6.0%以下であってもよく、4.0%以下であってもよく、3.5%以下であってもよく、3.0%以下であってもよく、2.5%以下であってもよく、2.0%以下であってもよい。本触媒の特定N/C%は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
なお、特定N/C%は、XPSにより得られる、特定窒素原子の濃度(原子%)を炭素原子の濃度(原子%)で除して得られた値に100を乗じることにより算出される比率に相当する。
具体的に、特定N/C%は、例えば、次の式により算出される:[特定N/C%]=[N/C%]×[N2/Ntotal比(-)]。ここで、N/C%は、XPSにより得られる、炭素原子の濃度(原子%)に対する窒素原子の濃度(特定窒素原子を含む窒素原子の総濃度)(原子%)の比率であり、当該窒素原子の濃度(原子%)を当該炭素原子の濃度(原子%)で除して得られた値に100を乗じることにより算出される。また、N2/Ntotal比(-)は、XPSにより得られる、上記(n1)~(n6)の窒素原子の含有量の合計に対する、上記(n2)の第二の窒素原子(特定窒素原子)の含有量の比であり、当該第二の窒素原子(特定窒素原子)のピーク面積を当該(n1)~(n6)の窒素原子のピーク面積の合計で除することにより算出される。
触媒のXPSによる特定N/C%は、当該触媒全体の表面付近における炭素原子の濃度に対する特定窒素原子の濃度の比率を示す。そして、特定窒素原子は、金属原子と結合した窒素原子であり、当該特定窒素原子から当該金属原子への電子供与によって、当該金属原子の触媒としての活性化に寄与する。したがって、上述した下限値以上の特定N/C%を示す触媒構造は、本触媒の初期活性のさらなる向上に寄与する。
本触媒は、XPSにより得られる炭素原子の濃度(原子%)に対する窒素原子の濃度(原子%)の比率である上記N/C%(以下、「総N/C%」という。)が0.1%以上であることとしてもよい。この場合、本触媒の総N/C%は、0.2%以上であることが好ましく、0.4%以上であることがより好ましく、0.6%以上であることがさらに好ましく、0.8%以上であることがさらに好ましく、1.0%以上であることがさらに好ましく、1.2%以上であることがさらに好ましく、1.4%以上であることがさらに好ましく、1.5%以上であることがさらに好ましく、2.0%以上であることがさらに好ましく、2.5%以上であることがさらに好ましく、3.0%以上であることがさらに好ましく、3.5%以上であることが特に好ましい。
また、本触媒の総N/C%は、30.0%以下であってもよく、25.0%以下であってもよく、20.0%以下であってもよく、15.0%以下であってもよく、13.0%以下であってもよく、10.0%以下であってもよく、8.0%以下であってもよく、6.0%以下であってもよく、5.0%以下であってもよく、4.5%以下であってもよい。本触媒の総N/C%は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
本触媒は、XPSにより得られる、炭素原子の濃度(原子%)に対する、上記(n1)第一の窒素原子ピークを示す窒素原子(以下、「第一の窒素原子」という。)の濃度(原子%)の比率(以下、「N1/C%」という。)が0.1%以上であってもよく、0.4%以上であることが好ましく、0.8%以上であることがより好ましく、1.0%以上であることがさらに好ましく、1.2%以上であることがさらに好ましく、1.5%以上であることが特に好ましい。
また、本触媒のB1/C%は、15.0%以下であってもよく、12.0%以下であってもよく、10.0%以下であってもよく、7.0%以下であってもよく、5.0%以下であってもよく、3.0%以下であってもよく、2.5%以下であってもよく、2.0%以下であってもよい。本触媒のN1/C%は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
本触媒は、上述したラマン分光法により特定される特性の1以上と、上述したXPSにより特定される特性の1以上とを兼ね備えることが好ましい。すなわち、本触媒は、次の特性(p1)、(p2)、(p3)又は(p4)を有することが好ましい:(p1)D1-FWHMが112cm-1以下であり、且つ、特定B/C%が0.7%以上である;、(p2)D1-FWHMが52cm-1以上、112cm-1以下であり、且つ、特定B/C%が0.1%以上である;、(p3)ID1/I比が1.06以上であり、且つ、特定B/C%が0.7%以上である;、(p4)ID1/I比が1.06以上、1.99以下であり、且つ、特定B/C%が0.1%以上である。
すなわち、本触媒は、例えば、上記特性(p1)を有する。この場合、本触媒のD1-FWHMの上限値は、112cm-1より小さい、上述した上限値のいずれかに置換されてもよく、及び/又は、当該D1-FWHMの上限値は、上述した下限値のいずれかと組み合わされてもよい。また、本触媒の特定B/C%の下限値は、0.7%より大きい、上述した下限値のいずれかに置換されてもよく、及び/又は、当該特定B/C%の下限値は、上述した上限値のいずれかと組み合わされてもよい。
また、本触媒は、例えば、上記特性(p2)を有する。この場合、本触媒のD1-FWHMの上限値は、112cm-1より小さい、上述した上限値のいずれかに置換されてもよく、及び/又は、当該D1-FWHMの下限値は、52cm-1より大きい、上述した下限値のいずれかに置換されてもよい。また、本触媒の特定B/C%の下限値は、0.1%より大きい、上述した下限値のいずれかに置換されてもよく、及び/又は、当該特定B/C%の下限値は、上述した上限値のいずれかと組み合わされてもよい。
また、本触媒は、例えば、上記特性(p3)を有する。この場合、本触媒のID1/I比の下限値は、1.06より大きい、上述した下限値のいずれかに置換されてもよく、及び/又は、当該ID1/I比の下限値は、上述した上限値のいずれかと組み合わされてもよい。また、本触媒の特定B/C%の下限値は、0.7%より大きい、上述した下限値のいずれかに置換されてもよく、及び/又は、当該特定B/C%の下限値は、上述した上限値のいずれかと組み合わされてもよい。
また、本触媒は、例えば、上記特性(p4)を有する。この場合、本触媒のID1/I比の下限値は、1.06より大きい、上述した下限値のいずれかに置換されてもよく、及び/又は、当該ID1/I比の上限値は、1.99より小さい、上述した上限値のいずれかに置換されてもよい。また、本触媒の特定B/C%の下限値は、0.1%より大きい、上述した下限値のいずれかに置換されてもよく、及び/又は、当該特定B/C%の下限値は、上述した上限値のいずれかと組み合わされてもよい。
また、本触媒は、上記特性(p1)又は(p2)と、上記特性(p3)又は(p4)とを有することとしてもよい。すなわち、本触媒は、例えば、上記特性(p1)と(p3)とを有してもよく、上記特性(p1)と(p4)とを有してもよく、上記特性(p2)と(p3)とを有してもよく、上記特性(p2)と(p4)とを有してもよい。
本触媒は、元素分析により得られる炭素原子の含有量(重量%)に対する窒素原子の含有量(重量%)の比率(以下、「EA-N/C%」という。)が0.5%以上であることとしてもよい。この場合、本触媒のEA-N/C%は、0.8%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましく、1.2%以上であることがさらに好ましく、1.7%以上であることがさらに好ましく、2.0%以上であることがさらに好ましく、2.5%以上であることがさらに好ましく、3.0%以上であることがさらに好ましく、3.5%以上であることがさらに好ましく、4.0%以上であることがさらに好ましく、4.5%以上であることがさらに好ましく、5.0%以上であることがさらに好ましく、5.5%以上であることがさらに好ましく、6.0%以上であることがさらに好ましく、6.5%以上であることが特に好ましい。
また、本触媒のEA-N/C%は、30.0%以下であってもよく、25.0%以下であってもよく、20.0%以下であってもよく、15.0%以下であってもよく、10.0%以下であってもよく、8.0%以下であってもよい。本触媒のEA-N/C%は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
なお、EA-N/C%は、本触媒の元素分析により得られる窒素原子の含有量(重量%)を、本触媒の元素分析により得られる炭素原子の含有量(重量%)で除して得られた値に100を乗じることにより算出される。
本触媒は、元素分析により得られる炭素原子の含有量が15.0重量%以上であることとしてもよい。この場合、本触媒の元素分析による炭素原子の含有量は、25.0重量%以上であることが好ましく、31.0重量%以上であることがより好ましく、35.0重量%以上であることがさらに好ましく、37.0重量%以上であることが特に好ましい。
また、本触媒の元素分析による炭素原子含有量は、99.0重量%以下であってもよく、95.0重量%以下であってもよく、93.0重量%以下であってもよく、90.0重量%以下であってもよく、88.0重量%以下であってもよく、87.0重量%以下であってもよく、86.0重量%以下であってもよく、85.0重量%以下であってもよい。本触媒の元素分析による炭素原子含有量は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
本触媒は、CuKα線を用いた粉末X線回折により得られるX線回折図形における炭素の(002)回折線から得られる結晶子サイズLcが、2.50nm以下を示すこととしてもよい。この場合、本触媒のLcは、2.20nm以下であることが好ましく、2.00nm以下であることがより好ましく、1.90nm以下であることがさらに好ましく、1.80nm以下であることがさらに好ましく、1.70nm以下であることがさらに好ましく、1.65nm以下であることがさらに好ましく、1.60nm以下であることがさらに好ましく、1.55nm以下であることがさらに好ましく、1.50nm以下であることが特に好ましい。
また、本触媒のLcは、0.50nm以上であってもよく、0.80nm以上であることが好ましく、0.90nm以上であることがより好ましく、1.00nm以上であることがさらに好ましく、1.10nm以上であることがさらに好ましく、1.20nm以上であることがさらに好ましく、1.25nm以上であることが特に好ましい。本触媒のLcは、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
なお、結晶子サイズLc(nm)は、後述の実施例に詳しく記載されているとおり、CuKα線を用いた粉末X線回折により得られるX線回折図形における回折角2θが26°付近(具体的には、例えば、2θが18°以上、35°以下の範囲内)の回折線をピーク分離することで得られる、回折角2θが24.0°±4.0°の範囲内である回折ピークfbroadのブラッグ角及び半値全幅を用いて、次に示すシェラーの式により算出される:Lc=Kλ/(βcosθ)。この式において、Kは、シェラー定数(0.94)であり、λは、CuKα線の波長(0.15418nm)であり、βは、fbroadの半値全幅(radian)であり、θは、fbroadのブラッグ角(radian)である。
結晶子サイズLcは、触媒に含まれる炭素構造における結晶性炭素網面の積層方向の大きさを示し、実質的に当該結晶性炭素網面の積層数を反映する。そして、上記結晶子サイズLcが上述した上限値以下である炭素構造は、本触媒の初期活性のさらなる向上に寄与する。
本触媒は、窒素吸着法により得られる細孔径が2nm以上、50nm以下の細孔(以下、「メソ孔」という。)の容積が1.00cm/g以下であることとしてもよい。この場合、本触媒のメソ孔容積は、0.90cm/g以下であることが好ましく、0.80cm/g以下であることがより好ましく、0.70cm/g以下であることがさらに好ましく、0.60cm/g以下であることがさらに好ましく、0.50cm/g以下であることがさらに好ましく、0.40cm/g以下であることがさらに好ましく、0.30cm/g以下であることがさらに好ましく、0.20cm/g以下であることがさらに好ましく、0.15cm/g以下であることがさらに好ましく、0.14cm/g以下であることがさらに好ましく、0.13cm/g以下であることがさらに好ましく、0.10cm/g以下であることがさらに好ましく、0.09cm/g以下であることがさらに好ましく、0.08cm/g以下であることがさらに好ましく、0.07cm/g以下であることが特に好ましい。
また、本触媒のメソ孔容積は、0.01cm/g以上であってもよく、0.02cm/g以上であってもよく、0.03cm/g以上であってもよく、0.04cm/g以上であってもよく、0.05cm/g以上であってもよい。本触媒のメソ孔容積は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
遷移金属含有触媒は、炭素担体の孔径が小さい細孔内に担持されることが好ましい。この点、炭素担体のメソ孔内に遷移金属含有触媒が効果的に担持されるほど、当該炭素担体と当該遷移金属含有触媒とを含む触媒のメソ孔容積は減少する。したがって、上述した上限値以下のメソ孔容積は、本触媒の初期活性のさらなる向上に寄与する。
本触媒は、窒素吸着法により得られる細孔径が2nm未満の細孔(以下、「ミクロ孔」という。)の容積が0.090cm/g以下であることとしてもよい。この場合、本触媒のミクロ孔容積は、0.070cm/g以下であることが好ましく、0.050cm/g以下であることがより好ましく、0.030cm/g以下であることがさらに好ましく、0.020cm/g以下であることがさらに好ましく、0.015cm/g以下であることがさらに好ましく、0.012cm/g以下であることがさらに好ましく、0.010cm/g以下であることがさらに好ましく、0.008cm/g以下であることがさらに好ましく、0.006cm/g以下であることがさらに好ましく、0.005cm/g以下であることが特に好ましい。
また、本触媒のミクロ孔容積は、0.001cm/g以上であってもよく、0.002cm/g以上であってもよく、0.003cm/g以上であってもよい。本触媒のミクロ孔容積は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
遷移金属含有触媒は、炭素担体の孔径が小さい細孔内に担持されることが好ましい。この点、炭素担体のミクロ孔内に遷移金属含有触媒が効果的に担持されるほど、当該炭素担体と当該遷移金属含有触媒とを含む触媒のミクロ孔容積は減少する。したがって、上述した上限値以下のミクロ孔容積は、本触媒の初期活性のさらなる向上に寄与する。
本触媒は、窒素吸着法により得られるBET比表面積が550.0m/g以下であることとしてもよい。この場合、本触媒のBET比表面積は、400.0m/g以下であることが好ましく、250.0m/g以下であることがより好ましく、150.0m/g以下であることがさらに好ましく、100.0m/g以下であることが特に好ましい。
また、本触媒のBET比表面積は、1.0m/g以上であってもよく、5.0m/g以上であることが好ましく、7.0m/g以上であることがより好ましく、10.0m/g以上であることがさらに好ましく、12.0m/g以上であることが特に好ましい。本触媒のBET比表面積は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
炭素担体の細孔内に遷移金属含有触媒が担持されることにより、触媒のBET比表面積は減少する。このため、炭素担体の細孔内に遷移金属含有触媒が効果的に担持されるほど、当該炭素担体と当該遷移金属含有触媒とを含む触媒のBET比表面積は減少する。したがって、上述した上限値以下のBET比表面積は、本触媒の初期活性のさらなる向上に寄与する。
ただし、小さすぎるBET比表面積は、遷移金属含有触媒が炭素担体に安定に担持されておらず、化学反応に寄与する遷移金属含有触媒が少ないことを反映していることがあり、この場合、耐久性が損なわれることがある。これに対し、適度な大きさのBET比表面積は、炭素担体の細孔内に遷移金属含有触媒が効果的に且つ安定に担持されていることを示しており、本触媒の耐久性のさらなる向上に寄与する。
本触媒は、触媒粒子のメディアン径(すなわち、炭素担体と、当該炭素担体に担持された遷移金属含有触媒とを含む触媒粒子のメディアン径)が5.00μm以下であることとしてもよい。この場合、本触媒粒子のメディアン径は、4.00μm以下であることが好ましく、3.00μm以下であることがより好ましく、2.00μm以下であることがさらに好ましく、1.50μm以下であることがさらに好ましく、1.20μm以下であることがさらに好ましく、1.00μm以下であることがさらに好ましく、0.90μm以下であることがさらに好ましく、0.80μm以下であることがさらに好ましく、0.70μm以下であることがさらに好ましく、0.60μm以下であることがさらに好ましく、0.55μm以下であることが特に好ましい。
本触媒のメディアン径は、0.10μm以上であってもよく、0.20μm以上であることが好ましく、0.30μm以上であることが好ましく、0.40μm以上であることが好ましく、0.45μm以上であることが特に好ましい。本触媒のメディアン径は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。なお、メディアン径は、粒径分布において積算相対粒子量が50%となる粒子径である。
本触媒は、上述した先行技術において用いられている導電助剤を含む必要がない。したがって、本触媒は、カーボンナノファイバーを含まないこととしてもよい。また、本触媒は、カーボンナノチューブを含まないこととしてもよい。
本触媒は、酸素還元反応及び酸素発生反応について高い初期活性及び耐久性を有する。すなわち、本触媒は、例えば、金属空気二次電池の電極触媒として用いられた場合において、酸素還元反応(ORR)について高い初期活性及び耐久性を有し、且つ、酸素発生反応(OER)についても高い初期活性及び耐久性を有する。
したがって、本触媒は、酸素還元反応及び酸素発生反応用触媒(酸素還元反応及び酸素発生反応用のBifunctional触媒)として好ましく用いられる。より具体的に、本触媒は、例えば、金属空気二次電池の電極用触媒として好ましく用いられ、金属空気二次電池の空気極(正極)用触媒として特に好ましく用いられる。
ここで、金属空気二次電池とは、アノードが金属極、カソードが空気極で構成されており、充電により繰り返しの使用が可能な電池である。本触媒が適用される金属空気二次電池は、例えば、亜鉛空気二次電池、リチウム空気二次電池、又はナトリウム空気二次電池であることが好ましく、亜鉛空気二次電池であることが特に好ましい。
本触媒が適用される金属空気二次電池は、水系金属空気二次電池であることが好ましい。ここで、水系金属空気二次電池とは、電解液に水溶液を用いた金属空気二次電池である。
本触媒は、炭素担体と、遷移金属含有触媒の前駆体との混合物を加熱することにより好ましく製造される。すなわち、本触媒の製造方法は、炭素担体と遷移金属含有触媒前駆体とを混合して、当該炭素担体及び遷移金属含有触媒前駆体を含む混合物を調製すること、及び、当該混合物を加熱して、当該炭素担体と、当該炭素担体に担持された遷移金属含有触媒とを含む本触媒を得ること、を含むことが好ましい。
遷移金属含有触媒前駆体は、炭素担体に担持された金属触媒として機能する遷移金属を供給する化合物又は組成物であれば特に限られないが、例えば、遷移金属源及びホウ素源を含むことが好ましい。また、遷移金属含有触媒前駆体は、さらに窒素源及び/又は炭素源を含むことが好ましい。
遷移金属源は、上述した本触媒の炭素担体に担持される遷移金属、及び/又はその化合物である。遷移金属としては、本触媒の遷移金属含有触媒に含まれる遷移金属として上述したものが用いられる。遷移金属化合物は、遷移金属塩化物であることが好ましい。
ホウ素源は、分子中にホウ素原子を含む化合物、又は当該ホウ素含有化合物を含む組成物である。具体的に、ホウ素源は、例えば、ホウ酸、窒化ホウ素、炭化ホウ素、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、りん酸ホウ素、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、三ヨウ化ホウ素、三臭化ホウ素、メチルボロン酸、四ホウ酸ナトリウム及び四フルオロホウ酸カリウムからなる群より選択される1種以上であってもよい。
窒素源は、分子中に窒素原子を含む化合物、又は当該窒素含有化合物を含む組成物であり、窒素原子を含む有機物であることが好ましい。窒素原子を含む有機物は、分子中に窒素原子を含む有機化合物、又は当該有機化合物を含む組成物である。
炭素源は、有機物が好ましく用いられる。有機物は、有機化合物、又は当該有機化合物を含む組成物である。また、窒素源であり、且つ炭素源である化合物又は組成物を用いることとしてもよい。
具体的に、窒素源及び/又は炭素源は、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル-ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリアクリル酸メチル共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリメタクリル酸共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリメタクリル酸-ポリメタリルスルホン酸共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリメタクリル酸メチル共重合体、メラミン、メラミン樹脂、窒素含有キレート樹脂(例えば、ポリアミン型、イミノジ酢酸型、アミノリン酸型及びアミノメチルホスホン酸型からなる群より選択される1種以上)、ポリアミドイミド樹脂、ピロール、ポリピロール、ポリビニルピロール、3-メチルポリピロール、アクリロニトリル、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ビニルピリジン、ポリビニルピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、モルホリン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、キノキサリン、アニリン、ポリアニリン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ポリアミノビスマレイミド、ポリイミド、ベンゾイミダゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド、キチン、キトサン、ピッチ、絹、毛、ポリアミノ酸、核酸、DNA、RNA、ヒドラジン、ヒドラジド、尿素、サレン、ポリカルバゾール、ポリビスマレイミド、トリアジン、ポリウレタン、ポリアミドアミン及びポリカルボジイミドからなる群より選択される1種以上を含むこととしてもよい。
遷移金属含有触媒前駆体は、例えば、上述した遷移金属源及びホウ素源(及び、必要に応じて窒素源及び/又は炭素源)を混合することにより調製される。遷移金属含有触媒前駆体の組成は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、当該遷移金属含有触媒前駆体が遷移金属源、ホウ素源及び窒素源を含む場合、当該遷移金属含有触媒前駆体は、当該遷移金属含有触媒前駆体100重量部に対して、20.0重量部以上、40.0重量部以下の遷移金属源と、20.0重量部以上、40.0重量部以下のホウ素源と、30.0重量部以上、50.0重量部以下の窒素源とを含むことが好ましい。
炭素担体と遷移金属含有触媒前駆体との混合物を加熱する温度は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、500℃以上であることが好ましく、600℃以上であることがより好ましく、650℃以上であることがさらに好ましく、700℃以上であることが特に好ましい。
また、炭素担体と遷移金属含有触媒前駆体との混合物を加熱する温度は、例えば、1100℃以下であることが好ましく、1000℃以下であることがより好ましく、950℃以下であることがさらに好ましく、900℃以下であることが特に好ましい。炭素担体と遷移金属含有触媒前駆体との混合物を加熱する温度は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
遷移金属含有触媒前駆体が炭素源を含む場合、炭素担体と当該遷移金属含有触媒前駆体との混合物を加熱する温度は、当該炭素源が炭素化される温度であることが好ましい。この場合、本触媒は、炭素担体と遷移金属含有触媒前駆体との混合物を炭素化することにより得られる。
本触媒の製造に用いられる炭素担体は、上述のとおり、炭素化材料であることが好ましい。すなわち、この場合、炭素担体は、有機物を含む原料を炭素化することにより製造される炭素化材料である。炭素化の原料における有機物の含有量は、例えば、5重量%以上、90重量%以下であってもよく、10重量%以上、80重量%以下であることが好ましい。
炭素担体の原料に含まれる有機物は、炭素化できるものであれば特に限られない。有機物に含まれる有機化合物は、ポリマー(例えば、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂)であってもよいし、及び/又は、より分子量が小さい有機化合物であってもよい。原料は、窒素原子を含むことが好ましく、窒素原子を含む有機物を含むことが特に好ましい。
具体的に、有機物は、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル-ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリアクリル酸メチル共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリメタクリル酸共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリメタクリル酸-ポリメタリルスルホン酸共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリメタクリル酸メチル共重合体、フェノール樹脂、ポリフルフリルアルコール、フラン、フラン樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミン、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、窒素含有キレート樹脂(例えば、ポリアミン型、イミノジ酢酸型、アミノリン酸型及びアミノメチルホスホン酸型からなる群より選択される1種以上)、ポリアミドイミド樹脂、ピロール、ポリピロール、ポリビニルピロール、3-メチルポリピロール、アクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ビニルピリジン、ポリビニルピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、ピラン、モルホリン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、キノキサリン、アニリン、ポリアニリン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ポリスルフォン、ポリアミノビスマレイミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ベンゾイミダゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、リグニン、キチン、キトサン、ピッチ、絹、毛、ポリアミノ酸、核酸、DNA、RNA、ヒドラジン、ヒドラジド、尿素、サレン、ポリカルバゾール、ポリビスマレイミド、トリアジン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリウレタン、ポリアミドアミン及びポリカルボジイミドからなる群より選択される1種以上であってもよい。
炭素担体は、窒素原子を含むことが好ましい。具体的に、炭素担体は、その炭素構造に窒素原子(例えば、ドープされた窒素原子)を含む炭素化材料であることが好ましい。窒素原子を含む炭素化材料は、窒素原子を含む原料の炭素化、及び/又は、窒素ドープ処理により好ましく得られる。
炭素担体は、炭素化の原料に由来する金属(以下、「原料金属」という。)を含むこととしてもよい。原料金属は、遷移金属(周期表の3族から12族に属する金属)であることが好ましく、貴金属ではない遷移金属であることがより好ましく、周期表の3族から12族の第4周期に属する金属であることが特に好ましい。
具体的に、原料金属は、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、ランタノイド(例えば、ガドリニウム(Gd))及びアクチノイドからなる群より選択される1種以上であってもよく、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、及びZnからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、Fe、Co、Ni、Cu、及びZnからなる群より選択される1種以上であることがより好ましく、Fe、Co、Ni、及びZnからなる群より選択される1種以上であることがさらに好ましく、Co、Ni、及びZnからなる群より選択される1種以上であることが特に好ましい。
炭素化材料である炭素担体が原料金属を含む場合、当該原料金属は、当該炭素担体の細孔を構成する骨格の内部に含まれる。すなわち、炭素担体が、有機物と金属(原料金属)とを含む原料の炭素化により製造される炭素化材料である場合、当該炭素担体は、その細孔の内表面のみならず、当該細孔を構成する骨格の内部にも含まれる。
ここで、炭素担体は、炭素化後に金属除去処理が施された炭素化材料であってもよい。金属除去処理は、炭素化材料に含まれる原料由来の金属の量を低減する処理である。具体的に、金属除去処理は、例えば、酸による洗浄処理及び/又は電解処理であることが好ましい。
炭素担体が炭素化後に金属除去処理が施された炭素化材料である場合であっても、当該炭素担体の細孔を構成する骨格の内部には、原料金属が残存する。炭素担体の細孔を構成する骨格の内部に含まれる原料金属は、例えば、当該骨格に表面エッチング処理を行い、当該エッチング処理により露出した断面を分析することで検出され得る。すなわち、この場合、炭素担体の1つの粒子をエッチング処理すると、エッチング処理により露出した当該粒子の断面に原料金属が検出される。炭素担体に含まれる原料金属は、例えば、炭素担体の誘導結合プラズマ発光分光分析によって検出することができる。
一方、本触媒の遷移金属含有触媒に含まれる遷移金属は、主に炭素担体の細孔の内表面に担持される。すなわち、本触媒が、細孔を構成する骨格の内部に遷移金属である原料金属を含む炭素担体と、遷移金属含有触媒のための遷移金属を含む遷移金属含有触媒前駆体との混合物を加熱して製造される場合、本触媒は、当該炭素担体の細孔の内表面に担持された当該遷移金属含有触媒に含まれる第一の遷移金属と、当該炭素担体の細孔を構成する骨格の内部に含まれる第二の遷移金属(原料金属)とを含む。
この場合、第一の遷移金属の種類は、第二の遷移金属の種類と同一であってもよいが、異なっていることが好ましい。すなわち、本触媒は、炭素担体の細孔の内表面に担持された遷移金属含有触媒に含まれる第一の遷移金属と、当該炭素担体の細孔を構成する骨格の内部に含まれる、当該第一の遷移金属とは異なる種類の第二の遷移金属とを含むことが好ましい。
炭素化材料である炭素担体の製造における炭素化は、原料に含まれる有機物が炭素化される温度で当該原料を加熱することにより行う。炭素化温度は、原料が炭素化される温度であれば特に限られず、例えば、1200℃以上であることが好ましく、1300℃以上であることがより好ましく、1400℃以上であることがさらに好ましく、1500℃以上であることが特に好ましい。
また、炭素化温度は、例えば、3000℃以下であってもよく、2500℃以下であることが好ましく、2000℃以下であることがより好ましく、1900℃以下であることが特に好ましい。炭素化温度は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。炭素化温度までの昇温速度は特に限られず、例えば、0.5℃/分以上、300℃/分以下であってもよい。炭素化は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
炭素化は、常圧(大気圧)下で行ってもよいが、加圧下(大気圧より大きい圧力下)で行うことが好ましい。加圧下で炭素化を行う場合、当該炭素化を行う雰囲気の圧力は、例えば、ゲージ圧で0.05MPa以上であってもよく、ゲージ圧で0.15MPa以上であることが好ましく、0.20MPa以上であることがより好ましく、0.40MPa以上であることがより一層好ましく、0.50MPa以上であることが特に好ましい。炭素化を行う雰囲気の圧力の上限値は特に限られないが、当該圧力は、例えば、ゲージ圧で10MPa以下であってもよい。
炭素担体は、炭素化後に黒鉛化処理が施された炭素化材料であることが好ましい。すなわち、炭素担体は、例えば、有機物を含む原料の炭素化により得られた炭素化材料に、さらに黒鉛化処理を施すことにより得られた炭素化材料であることが好ましい。
黒鉛化処理は、黒鉛化が進行する温度で炭素化材料を加熱することにより行う。黒鉛化処理において炭素化材料を加熱する加熱温度は、当該炭素化材料において黒鉛化が進行する温度であれば特に限られないが、当該炭素化材料を得るための炭素化温度より高い温度であることが好ましい。
具体的に、黒鉛化処理における加熱温度は、例えば、1300℃以上であってもよく、1400℃以上であることが好ましく、1500℃以上であることがより好ましく、1600℃以上であることがさらに好ましく、1700℃以上であることがさらに好ましく、1750℃以上であることがさらに好ましく、1800℃以上であることが特に好ましい。
また、黒鉛化処理における加熱温度は、例えば、3000℃以下であってもよく、2500℃以下であることが好ましく、2400℃以下であることがより好ましく、2300℃以下であることがさらに好ましく、2200℃以下であることが特に好ましい。黒鉛化処理における加熱温度は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。黒鉛化処理における加熱温度までの昇温速度は特に限られず、例えば、0.5℃/分以上、300℃/分以下であってもよい。黒鉛化処理は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
炭素担体は、触媒活性を示す炭素材料であることが好ましい。すなわち、この場合、炭素担体は、それ自身が単独で触媒活性を示す炭素触媒である。炭素触媒である炭素担体は、上述のように有機物と金属とを含む原料を炭素化することにより得られる炭素化材料であることが好ましい。
炭素担体が示す触媒活性は、例えば、還元活性及び/又は酸化活性であることが好ましく、酸素還元活性及び/又は酸素発生活性であることがより好ましく、少なくとも酸素還元活性であることが特に好ましい。
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
[炭素担体]
<炭素担体A>1.0gのポリアクリロニトリルと、1.0gの2-メチルイミダゾールと、6.0gの塩化亜鉛(ZnCl)と、30.0gのジメチルホルムアミドとを混合した。得られた混合物から乾燥により溶媒を除去した。乾燥した混合物を大気雰囲気中で加熱して、250℃で不融化を行った。
不融化後の混合物を、窒素雰囲気中、ゲージ圧力が0.90MPaの加圧下、1500℃で加熱することにより、炭素化を行った。炭素化により得られた炭素化材料に希塩酸を加え、撹拌した。その後、炭素化材料を含有する懸濁液を、ろ過膜を使用してろ過し、ろ液が中性になるまで蒸留水で炭素化材料を洗浄した。こうして酸洗浄による金属除去処理を行った。
微粉砕機によって、金属除去処理後の炭素化材料を、その粒子径の中央値が0.4μm以下になるまで粉砕した。粉砕後の炭素化材料の真空乾燥を行い、水分を除去した。その後、炭素化材料に窒素雰囲気中で300℃の加熱処理を施した。さらに、こうして得られた炭素化材料を窒素雰囲気中、常圧下、2000℃で加熱することにより、黒鉛化処理を行った。こうして得られた粒子状の炭素化材料を炭素担体Aとして用いた。
<炭素担体B>2.0gのポリアクリロニトリルと、2.0gの2-メチルイミダゾールと、8.6gの塩化亜鉛(ZnCl)と、0.04gの塩化鉄(III)六水和物(FeCl・6HO)と、30.0gのジメチルホルムアミドとを混合した。得られた混合物から乾燥により溶媒を除去した。乾燥した混合物を大気中で加熱して、250℃で不融化を行った。
不融化後の混合物を、窒素雰囲気中、ゲージ圧力が0.90MPaの加圧下、1300℃で加熱することにより、炭素化を行った。炭素化により得られた炭素化材料に希塩酸を加え、撹拌した。その後、炭素化材料を含有する懸濁液を、ろ過膜を使用してろ過し、ろ液が中性になるまで蒸留水で炭素化材料を洗浄した。こうして酸洗浄による金属除去処理を行った。
微粉砕機によって、金属除去処理後の炭素化材料を、その粒子径の中央値が1μm以下になるまで粉砕した。さらに、粉砕後の炭素化材料を、100%アンモニアガスを0.15L/分で流通させた雰囲気中、常圧下、900℃で1時間、加熱した。その後、アンモニアガスを窒素ガスに置換し、窒素雰囲気中、常圧下、炭素化材料を500℃で10分、加熱した。その後、窒素雰囲気中で自然放冷により炭素化材料を冷却した。こうして得られた粒子状の炭素化材料を炭素担体Bとして用いた。
<炭素担体K>市販のケッチェンブラック(KB EC600J、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)を炭素担体Kとして用いた。
<炭素担体KG>炭素担体Kを窒素雰囲気中、常圧下、2000℃で加熱することにより、黒鉛化処理を行い、得られた炭素材料を炭素担体KGとして用いた。
<炭素担体SG>市販の人造黒鉛(AGB、伊藤黒鉛製)を炭素担体SGとして用いた。
[触媒の製造]
例1~例9においては、炭素担体Aと、ホウ素源、窒素源及び遷移金属源を含む遷移金属含有触媒前駆体との混合物を加熱することにより、当該炭素担体Aと、当該炭素担体Aに担持された遷移金属含有触媒とを含む触媒を製造した。
<例1~例4>具体的に、例2においては、まず1-プロパノールと水とを体積比1:1で混合して調製された溶液3.75mLに、ホウ酸0.148g(ホウ素原子2.4mmol相当)、2-メチルイミダゾール0.197g(窒素原子2.4mmol相当)、及び塩化コバルト(CoCl・6HO)0.145g(Co原子0.6mmol相当)を加え、マグネティックスターラーを用いて撹拌を行った。
次いで、撹拌後の溶液に、炭素担体Aを0.5g加え、マグネティックスターラーを用いて撹拌を行った。撹拌後の溶液を入れた容器を超音波水槽に浸し、当該溶液に超音波処理を2分間施した。そして、超音波処理後の溶液を、まずゲージ圧力が-0.10(マイナス0.10)MPaの減圧下で1時間保持し、次いでゲージ圧力が0.15MPaの加圧下でさらに1時間保持した。その後、マグネティックスターラーを用いた溶液の撹拌を16時間行った。
撹拌後の溶液をゲージ圧力が-0.10MPaの減圧下、60℃で乾燥して固形物を得た。この固形物を窒素雰囲気中、常圧下、800℃で30分加熱して、例2に係る粒子状の触媒を得た。
例1においては、ホウ酸、2-メチルイミダゾール、及び塩化コバルトの使用量をそれぞれ半分に減じた以外は上述の例2と同様にして、粒子状の触媒を得た。
例3においては、ホウ酸、2-メチルイミダゾール、及び塩化コバルトの使用量をそれぞれ4倍に増やした以外は上述の例2と同様にして、粒子状の触媒を得た。
例4においては、ホウ酸、2-メチルイミダゾール、及び塩化コバルトの使用量をそれぞれ6倍に増やした以外は上述の例2と同様にして、粒子状の触媒を得た。
<例5~例7>例5においては、塩化コバルト0.145gに代えて、塩化コバルト0.097g(Co原子0.4mmol相当)、塩化ニッケル(NiCl)0.021g(Ni原子0.16mmol相当)、及び塩化鉄(FeCl・6HO)0.0107g(Fe原子0.04mmol相当)を用いた以外は上述の例2と同様にして、粒子状の触媒を得た。
例6においては、塩化コバルト、塩化ニッケル、及び塩化鉄の使用量をそれぞれ4倍に増やした以外は上述の例5と同様にして、粒子状の触媒を得た。
例7においては、塩化コバルト、塩化ニッケル、及び塩化鉄の使用量をそれぞれ6倍に増やした以外は上述の例5と同様にして、粒子状の触媒を得た。
<例8及び例9>例8においては、塩化コバルトに代えて、塩化鉄0.165g(Fe原子0.6mmol相当)を用いた以外は上述の例2と同様にして、粒子状の触媒を得た。
例9においては、塩化コバルトに代えて、塩化マンガン(MnCl)0.118g(Mn原子0.6mmol相当)を用いた以外は上述の例2と同様にして、粒子状の触媒を得た。
<例C1~例C4>例C1、例C2、例C3及び例C4においては、それぞれ炭素担体として、炭素担体Aに代えて、炭素担体K、炭素担体KG、炭素担体SG及び炭素担体Bを用いた以外は上述の例2と同様にして、粒子状の触媒を得た。
<例C5>例C5においては、ホウ酸及び2-メチルイミダゾールを用いなかった以外は上述の例2と同様にして、粒子状の触媒を得た。
<例C6>例C6においては、ホウ酸を用いなかった以外は上述の例2と同様にして、粒子状の触媒を得た。
<例C7>例C7においては、2-メチルイミダゾールを用いなかった以外は上述の例2と同様にして、粒子状の触媒を得た。
<例C8>例C8においては、炭素担体Aを用いなかった以外は上述の例2と同様にして、粒子状の触媒を得た。
[ラマン分光法]
触媒をラマン分光法により解析した。ラマンスペクトルは、HORIBA顕微レーザーラマン分光測定装置(LabRam、HORIBA Jobin Yvon)を用いて測定した。測定に用いたレーザーは532nmの励起波長で、出力が50mW、減光フィルターD3を介し、露光90秒×積算2回の条件で測定することにより、ラマンスペクトルを得た。
得られたラマンスペクトルにベースライン補正を施した。すなわち、ラマンシフト(cm-1)が900cm-1付近の散乱強度と、2000cm-1付近の散乱強度とを結ぶ直線をベースラインに決定し、散乱スペクトルの各ラマンシフトでの強度から当該ベースラインを差し引くことでベースライン補正を行った。
一方、ラマンシフト1590cm-1付近(具体的には、1580cm-1以上、1600cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するバンドをGバンド、ラマンシフト1350cm-1付近(具体的には、1340cm-1以上、1360cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するバンドをD1バンド、ラマンシフト1620cm-1付近(具体的には、1610cm-1以上、1630cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するバンドをD2バンド、ラマンシフト1200cm-1付近(具体的には、1190cm-1以上、1210cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するバンドをD3バンド、及び、ラマンシフト1500cm-1付近(具体的には、1490cm-1以上、1510cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するバンドをD4バンド、とそれぞれ定義した。
そして、ベースライン補正後のラマンスペクトルにおいて、Gバンド、D2バンド、及びD4バンドのピーク波形の近似にはガウス関数を用い、D1バンド、及びD3バンドのピーク波形の近似にはローレンツ関数を用いて、それぞれフィッティングを行った。フィッティングは残差の絶対値の和が最も小さくなるように行った。残差とは、各ラマンシフトにおけるラマンスペクトルの散乱強度から、全バンドの近似波形の強度を差し引いた値のことをいう。
ここで、フィッティングの詳細について説明する。iバンドについて、ラマンシフトx(cm-1)におけるスペクトル強度をf(x)とすると、ガウス関数は下記式(I)で表され、ローレンツ関数は下記式(II)で表される。
なお、上記式(I)及び(II)において、iはバンドの種類であるG、D1、D2、D3又はD4を示し、Iはiバンドのピークトップの強度を示し、σはiバンドの半値半幅の尺度母数を示す。
フィッティングには、市販のソフトウェアであるMicrosoft Excel(商標)のソルバー機能を利用した。すなわち、まずコンピュータにインストールされたMicrosoft Excel(商標)において、変数セルとして、iバンド(Gバンド、D1バンド、D2バンド、D3バンド又はD4バンド)のピークトップの散乱強度I、当該iバンドの半値半幅の尺度母数σ、及び、当該iバンドのラマンシフトxを設定した。そして、各iバンドの近似曲線について、変数セルI、σ、及びxの各々に当該近似曲線に関する数値を入力した。
また、Microsoft Excel(商標)において、下記式(III)~(IX)に対応する制約条件を設定した。
さらに、Microsoft Excel(商標)において、「制約のない変数を非負数にする」の項目にチェックを入力し、変数セルの初期値を全てゼロに設定した。そして、「解決方法の選択」の項目において、「エボリューショナリー」を選択した状態で「解決」ボタンを3回押した。その後、「解決方法の選択」の項目において「GRG非線形」を選択した状態で「解決」ボタンを1回押した。こうして得られた結果をパラメータとして採用した。
具体的に、例えば、上記操作により、iバンドのピークトップの強度であるIが得られた。そこで、D1バンドのピークトップの強度ID1をGバンドのピークトップの強度Iで除することにより、当該Gバンドの強度に対する当該D1バンドの強度の比であるID1/I比を算出した。また同様に、D4バンドのピークトップの強度ID4をGバンドのピークトップの強度Iで除することにより、当該Gバンドの強度に対する当該D4バンドの強度の比であるID4/I比を算出した。
また、上記操作により得られた、iバンドの半値半幅の尺度母数σを下記の式(X)に代入し、D1バンド及びD4バンドの半値全幅であるD1-FWHM及びD4-FWHMをそれぞれ算出した。
なお、上述のようなラマンスペクトルのピーク分離を実施した結果、全ての例において、I及びσの値が、上記式(III)~(IX)の範囲内に収まり、且つ、当該各式の上限値又は下限値にはならなかった。すなわち、全ての例において、ラマンスペクトルに含まれているGバンド、D1バンド、D2バンド、D3バンド、及びD4バンドが特定された。
ここで、図1には、例6の触媒のラマン分光法により得られたラマンスペクトルを示す。図1に示すように、上述したピーク分離を実施した結果、例6の触媒のラマンスペクトルにおいて、Gバンド、D1バンド、D2バンド、D3バンド、及びD4バンドがそれぞれ特定された。なお、図1において「ベースライン補正後」は、上述のベースライン補正が施されたラマンスペクトルを示す。
[X線光電子分光法(XPS)]
X線光電子分光装置(AXIS NOVA、KRATOS社製)及びデータ解析ソフトウェア(Vision Processing)を用いて、触媒の表面における炭素原子、酸素原子、窒素原子、Co原子、Ni原子、Fe原子、Mn原子及びホウ素原子の内殻準位からの光電子スペクトルを測定した。X線源には、AlKα線(10mA、15kV、Pass energy 40eV)を用いた。また、計算には、装置固有の相対感度係数(RSF値)を用いた。
<総N/C比及び総B/C比>触媒のXPSワイドスキャン分析により得られた光電子スペクトルにおけるピーク面積と検出感度係数とから、触媒の表面における炭素原子、窒素原子及びホウ素原子の原子濃度(原子%)を求めた。具体的に、まず炭素原子、窒素原子及びホウ素原子のそれぞれについて、ピーク面積をその元素の検出感度係数で除して得られる値であるピーク面積/検出感度係数比を算出した。続いて、炭素原子のピーク面積/検出感度係数比、窒素原子のピーク面積/検出感度係数比、及びホウ素原子のピーク面積/検出感度係数比のそれぞれを、当該炭素原子のピーク面積/検出感度係数比、窒素原子のピーク面積/検出感度係数比、及びホウ素原子のピーク面積/検出感度係数比の合計で除して得られた値に100を乗じることにより、炭素原子濃度(原子%)、窒素原子濃度(原子%)及びホウ素原子濃度(原子%)をそれぞれ算出した。
そして、窒素原子濃度(原子%)を炭素原子濃度(原子%)で除して得られる値に100を乗じることにより、触媒の総N/C%を算出した。また、ホウ素原子濃度(原子%)を炭素原子濃度(原子%)で除して得られる値に100を乗じることにより、触媒の総B/C%を算出した。
<N1sスペクトルのピーク分離>触媒のXPSナロースキャン分析により得られた光電子スペクトルにおいて、窒素原子の1s軌道に由来するN1sスペクトルを、(n1)結合エネルギー398.6±0.2eVの範囲内にピークトップを有する第一の窒素原子ピークと、(n2)結合エネルギー399.5±0.3eVの範囲内にピークトップを有する第二の窒素原子ピークと、(n3)結合エネルギー400.5±0.2eVの範囲内にピークトップを有する第三の窒素原子ピークと、(n4)結合エネルギー401.3±0.3eVの範囲内にピークトップを有する第四の窒素原子ピークと、(n5)結合エネルギー403.5±0.4eVの範囲内にピークトップを有する第五の窒素原子ピークと、(n6)結合エネルギー404.0±0.5eVの範囲内にピークトップを有する第六の窒素原子ピークと、の6成分に分離した。
ここで、(n1)第一の窒素原子ピークは、ピリジン官能基に含まれる窒素原子(第一の窒素原子)に由来すると考えられ、(n2)第二の窒素原子ピークは、金属原子と結合した窒素原子(第二の窒素原子)に由来すると考えられ、(n3)第三の窒素原子ピークは、ピロール官能基に含まれる窒素原子(第三の窒素原子)に由来すると考えられ、(n4)第四の窒素原子ピークは、炭素網面内に存在する窒素原子(第四の窒素原子)に由来すると考えられ、(n5)第五の窒素原子ピークは、N-O結合に含まれる窒素原子(第五の窒素原子)に由来すると考えられ、(n6)第六の窒素原子ピークは、炭素網面中に存在する窒素原子(第六の窒素原子)の外殻軌道に由来するサテライトピークであると考えられる。
窒素原子の1s軌道に由来するN1sスペクトルのピーク分離は、次のようにして行った。すなわち、まず得られた光電子スペクトルに対してShirley法によりベースライン補正を行った。Shirley法は、文献(吉原一紘、J. Vac. Soc. Jpn., Vol.56, No.6, 2013)を参考にして行った。
ここで、ベースライン補正の例として、図2Aには、例6の触媒について得られたN1sスペクトルを示す。図2Aに示すように、実線で示すベースライン補正前のN1sスペクトル(図中の「N1sスペクトル」)と、点線で示すベースライン(図中の「ベースライン」)とから、破線で示すベースライン補正後のN1sスペクトル(図中の「ベースライン補正後」)が得られた。
続いて、ベースライン補正後のN1s光電子スペクトルにおいて、文献(小島勇夫ら、分析化学、1986年35巻10号、p.T96-T100)を参考に、下記式(XI)により表されるVoigt関数f(x)に対して、非対称性の項を導入するために下記式(XII)の変換を行うことにより得られた非対称Voigt関数F(x)によって6成分を特定した。すなわち、式(XI)中の(x-x)を式(XII)の右辺で置き換えて得られた非対称Voigt関数F(x)により、6種のピーク成分の各々を特定した。
上記式中、Iはピークの高さを表し、xは結合エネルギー(eV)を表し、xはピークトップの位置を表し、Γはピークの幅を表すパラメータを表し、Mはガウス-ローレンツ関数の混合比を表し、αは非対称項係数を表す。ただしMは0≦M≦1の範囲内の値であり、αは-2≦α≦2の範囲内の値であり、いずれも得られた光電子スペクトルの形状に合わせて決定されるパラメータである。
すなわち、ベースライン補正後のN1s光電子スペクトルの分離は、当該分離により得られる複数の窒素原子ピークの各々が上記非対称Voigt関数F(x)で表されると仮定し、光電子スペクトルの各結合エネルギーにおける、当該ベースライン補正後のN1sスペクトルの散乱強度と、当該複数の窒素原子ピークの各々の非対称Voigt関数F(x)の値の合計との差(残差)の平方を全ての結合エネルギーについて足し合わせて得られる残差平方和が最も小さくなるように、当該複数の窒素原子ピークの各々の高さI、幅パラメータΓ、及びピークトップ位置xを最適化することにより行った。
ここで、ピーク分離の例として、図2Bには、例6の触媒について得られたベースライン補正後のN1sスペクトル(図中の「ベースライン補正後」)と、当該N1sスペクトルのピーク分離により得られた6つの分離ピーク(図中の「第一の窒素ピーク」、「第二の窒素ピーク」、「第三の窒素ピーク」、「第四の窒素ピーク」、「第五の窒素ピーク」及び「第六の窒素ピーク」)とを示す。
図2Bに示されるように、上記ピーク分離によって、光電子スペクトルにおいて、N1sスペクトルが、(n1)第一の窒素原子ピーク、(n2)第二の窒素原子ピーク(特定窒素原子ピーク)、(n3)第三の窒素原子ピーク、(n4)第四の窒素原子ピーク、(n5)第五の窒素原子ピーク、及び(n6)第六の窒素原子ピークに分離された。
そして、上述のようにして得られた光電子スペクトル及びピーク分離の結果に基づき、窒素原子の含有量に関し、以下のように評価した。まず、第一の窒素原子ピークの面積N1、第二の窒素原子ピークの面積N2、第三の窒素原子ピークの面積N3、第四の窒素原子ピークの面積N4、第五の窒素原子ピークの面積N5、及び第六の窒素原子ピークの面積N6の合計を窒素原子ピークの総面積Ntotal(Ntotal=N1+N2+N3+N4+N5+N6)として得た。
次いで、金属原子と結合した第二の窒素原子(特定窒素原子)に由来すると考えられる上記(n2)第二の窒素原子ピーク(特定窒素原子ピーク)の面積N2を、6種の窒素原子ピークの総面積Ntotalで除した値を、6種の窒素原子の含有量の合計に対する当該第二の窒素原子(特定窒素原子)の含有量の比である「N2/Ntotal比」として算出した。
そして、総N/C%(%)に、第二の窒素原子の含有量比(N2/Ntotal比)を乗じることにより、炭素原子の原子濃度(原子%)に対する、当該第二の窒素原子(特定窒素原子)の原子濃度(原子%)の比率である特定N/C%を得た。
また同様に、上記(n1)第一の窒素原子ピークの面積N1を用いて、炭素原子の原子濃度(原子%)に対する、第一の窒素原子の原子濃度(原子%)の比率であるN1/C%を得た。
<B1sスペクトルのピーク分離>触媒のXPSナロースキャン分析により得られた光電子スペクトルにおいて、ホウ素原子の1s軌道に由来するB1sスペクトルを、(b1)結合エネルギー189.5±0.3eVの範囲内にピークトップを有する第一のホウ素原子ピークと、(b2)190.6±0.3eVの範囲内にピークトップを有する第二のホウ素原子ピークと、(b3)192.0±0.3eVの範囲内にピークトップを有する第三のホウ素原子ピークと、(b4)193.0±0.3eVの範囲内にピークトップを有する第四のホウ素原子ピークと、の4成分に分離した。
ここで、(b1)第一のホウ素原子ピークはBC構造及び/又はBNC構造に含まれるホウ素原子に由来すると考えられ、(b2)第二のホウ素原子ピークはヘキサゴナル-BN構造に含まれるホウ素原子に由来すると考えられ、(b3)第三のホウ素原子ピーク(特定ホウ素原子ピーク)は、BNC構造及び/又はBNN構造に含まれるホウ素原子(特定ホウ素原子)に由来すると考えられ(b4)第四のホウ素原子ピークは酸素原子と結合したホウ素原子に由来すると考えられる。
ホウ素原子の1s軌道に由来するB1sスペクトルのピーク分離は、次のようにして行った。すなわち、まず得られた光電子スペクトルに対してShirley法によりベースライン補正を行った。Shirley法は、文献(吉原一紘、J. Vac. Soc. Jpn., Vol.56, No.6, 2013)を参考にして行った。
ここで、ベースライン補正の例として、図3Aには、例6の触媒について得られたB1sスペクトルを示す。図3Aに示すように、実線で示すベースライン補正前のB1sスペクトル(図中の「B1sスペクトル」)と、点線で示すベースライン(図中の「ベースライン」)とから、破線で示すベースライン補正後のB1sスペクトル(図中の「ベースライン補正後」)が得られた。
続いて、ベースライン補正後のB1s光電子スペクトルにおいて、文献(小島勇夫ら、分析化学、1986年35巻10号、p.T96-T100)を参考に、上記式(XI)により表されるVoigt関数f(x)に対して、非対称性の項を導入するために上記式(XII)の変換を行うことにより得られた非対称Voigt関数F(x)によって4成分を特定した。すなわち、上記式(XI)中の(x-x)を上記式(XII)の右辺で置き換えて得られた非対称Voigt関数F(x)により、4つのピーク成分の各々を特定した。
すなわち、ベースライン補正後のB1s光電子スペクトルの分離は、当該分離により得られる複数のホウ素原子ピークの各々が上記非対称Voigt関数F(x)で表されると仮定し、光電子スペクトルの各結合エネルギーにおける、当該ベースライン補正後のB1sスペクトルの散乱強度と、当該複数のホウ素原子ピークの各々の非対称Voigt関数F(x)の値の合計との差(残差)の平方を全ての結合エネルギーについて足し合わせて得られる残差平方和が最も小さくなるように、当該複数のホウ素原子ピークの各々の高さI、幅パラメータΓ、及びピークトップ位置xを最適化することにより行った。
ここで、ピーク分離の例として、図3Bには、例6の触媒について得られたベースライン補正後のB1sスペクトル(図中の「ベースライン補正後」)と、当該B1sスペクトルのピーク分離により得られた4つの分離ピーク(図中の「第一のホウ素ピーク」、「第二のホウ素ピーク」、「第三のホウ素ピーク」及び「第四のホウ素ピーク」)とを示す。
図3Bに示されるように、上記ピーク分離によって、光電子スペクトルにおいて、B1sピークが、(b1)第一のホウ素原子ピーク、(b2)第二のホウ素原子ピーク、(b3)第三のホウ素原子ピーク(特定ホウ素原子ピーク)、及び(b4)第四のホウ素原子ピークに分離された。
そして、上述のようにして得られた光電子スペクトル及びピーク分離の結果に基づき、ホウ素原子の含有量に関し、以下のように評価した。まず、第一のホウ素原子ピークの面積B1、第二のホウ素原子ピークの面積B2、第三のホウ素原子ピークの面積B3、及び第四のホウ素原子ピークの面積B4の合計をホウ素原子ピークの総面積Btotal(Btotal=B1+B2+B3+B4)として得た。このBtotalは、B1sスペクトルに含まれる4種のホウ素原子の含有量の合計に相当する。
次いで、第三のホウ素原子(特定ホウ素原子)に由来すると考えられる上記(b3)第三のホウ素原子ピーク(特定ホウ素原子ピーク)の面積B3を、4種のホウ素原子ピークの総面積Btotalで除した値を、4種のホウ素原子の含有量の合計に対する当該第三のホウ素原子(特定ホウ素原子)の含有量の比である「B3/Btotal比」として算出した。
そして、総B/C%(%)に、第三のホウ素原子の含有量比(B3/Btotal比)を乗じることにより、炭素原子の原子濃度(原子%)に対する、当該第三のホウ素原子(特定ホウ素原子)の原子濃度(原子%)の比率である特定B/C%を得た。
また同様に、上記(b1)第一のホウ素原子ピークの面積B1、及び上記(b2)第二のホウ素原子ピークの面積B2を用いて、炭素原子の原子濃度(原子%)に対する、第一のホウ素原子の原子濃度(原子%)、及び第二のホウ素原子の原子濃度(原子%)の比率であるB1/C%、及びB2/C%をそれぞれ得た。
[燃焼法による元素分析]
触媒の燃焼法による元素分析を行った。すなわち、有機微量元素分析装置(2400II、パーキンエルマー株式会社)を用いて、触媒の窒素原子含有量、炭素原子含有量、及び水素原子含有量を燃焼法により測定した。具体的に、ヘリウムをキャリアガスとして用い、2mgの触媒を、燃焼管温度980℃、還元管温度640℃の条件で分析した。
そして、触媒に含まれていた窒素原子の重量、炭素原子の重量、及び水素原子の重量をそれぞれ、当該触媒の重量で除した値に100を乗じることにより、当該触媒の窒素原子含有量(重量%)、炭素原子含有量(重量%)、及び水素原子含有量(重量%)をそれぞれ算出した。さらに、窒素原子含有量(重量%)を炭素原子含有量(重量%)で除して得られる値に100を乗じることにより、元素分析によるN/C%(EA-N/C%)を算出した。
[粉末X線回折]
触媒の粉末X線回折(XRD)測定を行った。すなわち、触媒のXRD測定で得られた回折パターンから、炭素の(002)回折線の解析を行い、当該触媒が有する炭素構造の結晶子サイズLc(nm)を求めた。
まず、炭素(002)回折線の解析においては、「日本学術振興会 第117委員会」により作成された「炭素材料の格子定数および結晶子の大きさ測定法」に基づいて補正を行った。この補正の詳細については、参考文献(炭素,No.221,pp.52-60(2006))に記載されている。
具体的に、「炭素材料の格子定数および結晶子の大きさ測定法」においては、各測定角度における測定強度を、事前に次の式で計算しておいた各測定角度における補正因子FCTで除することで補正を行った:補正因子FCT=L・P・A・Fc
ここで、上記補正因子の式において、Lは次の式で表され:L=1/(sinθ・cosθ)、Pは次の式で表され:P=(1+cos2θ・cos2θ´)/(1+cos2θ´)、Aは次の式で表される:A=[1-sin2θ/2μ´br][1-exp(-2μ´t/sinθ)]+(2t・cosθ/br)exp(-2μ´t/sinθ)。これらの式において、θはゴニオメータの角度であり、θ´はカウンターモノクロメータを使用した時のモノクロメータ結晶の回折角であり、カウンターモノクロメータを使わないときは0°である。μ´は試料の見かけの線吸収係数(0.4219mm-1)であり、tは、サンプルフォルダにおける試料深さであり、brは次の式で与えられる試料面におけるX線の照射幅である:br=Rsinβ。この式において、βは発散スリット幅(2/3°)であり、Rはゴニオメータ半径(285mm)である。
また、上記補正因子の式において、Fcは原子散乱因子であり、次の式で得られる:Fc=(2.26069・exp(-0.226907・s)+1.56165・exp(-0.00656665・s)+1.05075・exp(-0.0975618・s)+0.839259・exp(-0.555949・s)+0.286977)。この式において、λはX線の波長であり、sは次の式で与えられる:s=(sinθ)/λ。
そして、得られたXRD図形において回折角2θが26°付近(具体的には、例えば、2θが18°以上、35°以下の範囲内)の回折ピーク(すなわち、炭素の(002)回折線)のピーク分離を行った。ピークの分離は、重なり合った回折ピークをガウス型の基本波形の重ね合わせにより近似することにより行った。バックグラウンド補正を行ったXRD図形に対して、各成分となるガウス関数のピーク強度、ピーク半値全幅及びピーク位置をパラメータとして用いて最適化することにより、フィッティングを行った。バックグラウンド補正は、回折角(2θ)が10~20°付近の回折線と、30~40°付近の回折線とを結んだ直線をバックグラウンドとして、当該バックグラウンドを各回折強度から差し引くことで行った。
そして、XRD図形において回折角2θが26°付近にピークトップを有する回折ピークを、5種の回折ピークfbroad、fmiddle、fnarrow、fmetal-1及びfmetal-2のうち2種以上の回折ピークに分離した。
ここで、回折ピークfbroadは、その回折角(2θ)が24.0°±4.0°であり、半値全幅が10°±7.0°である回折ピークとして定義される。回折ピークfmiddleは、その回折角(2θ)が26.0°±1.0°であり、半値全幅が2.0°±0.9°である回折ピークとして定義される。回折ピークfnarrowは、その回折角(2θ)が26.0°±0.6°であり、半値全幅が0.5°±0.5°である回折ピークとして定義される。回折ピークfmetal-1は、その回折角(2θ)が27.7°±0.4°であり、半値全幅が0.7°±0.5°である回折ピークとして定義される。回折ピークfmetal-2は、その回折角(2θ)が29.6°±0.7°であり、半値全幅が1.1°±1.0°である回折ピークとして定義される。
なお、ピーク分離においては、上記5種の回折ピークのうち1種以上が現れないこともあった。すなわち、例えば、回折ピークfmetal-1及びfmetal-2については、一方のみが現れるか、又はいずれも現れなかった。また、回折ピークfmiddle及びfnarrowのそれぞれについては、回折角(2θ)及び半値全幅が異なる2種以上の回折ピークが同時に現れることもあり得る。
より具体的に、ピーク分離は、以下の手順で行った。上記のバックグラウンド補正を行ったCuKα線によるXRD図形において、回折角2θが26°付近にピークトップを有する回折ピークをガウス型の基本波形の重ね合わせにより近似し、ピーク強度、ピーク半値全幅及びピーク位置を最適化し、当該回折ピークに含まれる上記5種の回折ピークのうち、2種以上の回折ピークの各々をカーブフィッティングすることにより、ピーク分離を行った。
なお、カーブフィッティングは残差平方和が最も小さくなるように行った。ここで、残差平方とは、測定した各回折角における残差の平方のことをいい、残差平方和とはこれらの残差平方の和である。また、残差とは、補正されたCuKα線によるXRD図形における回折角2θが26°付近にピークトップを有する回折ピークの強度と、分離して得られた回折ピークの強度和(例えば、ピーク分離により4種の回折ピーク(例えば、fbroadと、fmiddleと、fnarrowmetal-1又はfmetal-2との4種)が得られた場合には当該4種の回折ピークの強度の合計)との差のことをいう。このようなピーク分離により、上述した5種の回折ピークfbroad、fmiddle、fnarrow、fmetal-2及びfmetal-2のうち、2種以上の回折ピーク(具体的には、2種、3種又は4種の回折ピーク)が得られた。
図4には、例6の触媒について得られたXRD図形において回折角2θが26°付近の回折ピークのピーク分離を行った結果を示す。図4に示すように、ピーク分離によって、3種の回折ピークfbroad、fnarrow及び、遷移金属由来のピークfmetal-1が得られた
そして、上述のピーク分離により得られた回折ピークfbroadを解析することにより、結晶子サイズLc(nm)を算出した。すなわち、結晶子サイズLcは、上記ピーク分離で得られた回折ピークfbroadのブラッグ角及び半値全幅を、次のシェラーの式に代入して算出した:Lc=Kλ/(βcosθ)。この式において、Kは、シェラー定数(0.94)であり、λは、CuKα線の波長(0.15418nm)であり、βは、fbroadの半値全幅(radian)であり、θは、fbroadのブラッグ角(radian)である。
[窒素吸着法]
窒素吸着法によって、触媒の細孔容積及び比表面積を、比表面積・細孔分布測定装置(ASAP 2020、micromeritics製)及び付属の解析ソフトウェア(ASAP 2020、micromeritics製)を用いて測定した。
すなわち、まず、0.1gの触媒を、100℃、6.7×10-2Paで、3時間保持することにより、当該触媒に吸着している水分を取り除いた。次いで、BET法により、77Kにおける窒素吸着等温線からBET比表面積(m/g)を得た。この77Kにおける窒素吸着等温線は、77Kの温度で、窒素ガスの圧力の変化に伴う、触媒への窒素吸着量の変化を測定して得た。そして、温度77Kにおける窒素吸着等温線から、DFT法により、触媒のメソ孔容積(cm/g)及びミクロ孔容積(cm/g)を得た。
[誘導結合プラズマ発光分光分析法]
ICP-AESにより、触媒の金属含有量を測定した。すなわち、まず25mgの触媒を、大気雰囲気下、800℃で、3時間加熱保持することにより、当該触媒中の非金属成分を取り除いた。次いで、触媒を王水5mL中に浸漬することにより、当該触媒に含まれている金属を溶解させた。さらに、全重量が25gとなるように蒸留水を加えて希釈し、金属溶液を得た。その後、得られた金属溶液の金属濃度を、シーケンシャル形プラズマ発光分析装置(ICP-8100、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
そして、金属溶液の金属濃度(mg/g)に当該金属溶液の重量(25g)を乗じて得られた値を、触媒の重量(25mg)で除して得られた値に100を乗じて、当該触媒の金属含有量(重量%)を算出した。
[メディアン径]
触媒粒子のメディアン径を測定した。まず触媒の分散液を調製した。すなわち、ガラス容器に触媒10mg、界面活性剤(中性洗剤)1滴(約0.05mL)、及び蒸留水40mLを入れた。その後、ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所、MODEL:US-150T TIPΦ12)を用い、OUTPUT ADJを8に合わせて20分間分散処理を行い、触媒の分散液を得た。
次いで、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所、SALD-7100H)を用いて、適切な散乱光強度が得られるように触媒の分散液をセル中に滴下し、横軸が粒子径(μm)を示し、縦軸が積算相対粒子量(%)を示す粒度分布データを取得した。粒度分布データにおいて、積算相対粒子量が50%となる粒子径を、触媒のメディアン径(μm)として得た。
[初期活性及び耐久性の評価]
触媒の初期活性及び耐久性を、回転リングディスク電極装置(RRDE-3A回転リングディスク電極装置ver.1.2、ビー・エー・エス株式会社製)と、デュアル電気化学アナライザー(CHI700C、株式会社ALS社製)とを用いた回転リングディスク電極法により評価した。
<回転リングディスク電極装置>まず触媒を含む作用電極を有する、三極式の回転リングディスク電極装置を作製した。具体的に、触媒5mgと、5%ナフィオン(登録商標)(シグマアルドリッチ社製、ナフィオン 過フッ素化イオン交換樹脂、5%溶液(製品番号:510211))50μLと、水400μLと、イソプロピルアルコール100μLとを混合してスラリーを調製した。次いで、このスラリーに超音波処理を10分行い、その後、ホモジナイザー処理を2分行った。そして、得られたスラリーを、触媒の塗布量が0.2mg/cmとなるように、作用電極(RRDE-3A用リングディスク電極 白金リング-金ディスク電極 ディスク直径4mm、ビー・エー・エス株式会社製)に塗布し、乾燥することにより、当該触媒が担持された作用電極を作製した。
また対極としては金電極(Auカウンター電極23cm、ビー・エー・エス株式会社製)を使用し、参照極としてはHg/HgO電極(アルカリ参照電極、インターケミ株式会社製)を使用した。こうして、触媒を含む作用電極、対極としての金電極、及び参照極としてのHg/HgO電極を有する回転リングディスク電極装置を得た。また、電解液としては、6MのKOH水溶液を使用した。
<酸素還元反応における初期活性>上記回転リングディスク電極装置を用いて、酸素還元反応(ORR)における触媒の初期活性(ORR初期活性)を評価した。すなわち、触媒を含む作用電極を有する三極式回転リングディスク電極装置を用いたサイクリックボルタンメトリ(CV)を実施し、続いて窒素雰囲気下におけるリニアスイープボルタンメトリ(N-LSV)及び酸素雰囲気下におけるリニアスイープボルタンメトリ(O-LSV)を実施することにより初期活性を測定した。
CVにおいては、まず窒素バブリングを10分間行い、下記プロトコルにてCV測定を行った。すなわち、電位範囲-0.418V~0.082V(vs. Hg/HgO)にて、掃引速度0.05V/secで電位掃引を10サイクル行い(0.082V→-0.418V)、電解液内の酸素を除去した。なお、掃引においては、開始電位をオープンサーキットポテンシャル(OCP)とし、ネガティブ方向への掃引から開始した。
次にN-LSVを実施した。すなわち、電極を回転速度1600rpmで回転させ、電位範囲-0.417V~0.282V(vs. Hg/HgO)にて、掃引速度0.02V/secで電位掃引した時の電流密度を電位の関数として記録した(N-LSV関数)。なお、掃引は、開始電位を0.282V(vs. Hg/HgO)、終了電位を-0.417V(vs. Hg/HgO)として行った。
その後、O-LSVを実施した。すなわち、まず酸素バブリングを10分行い、電解液内を酸素で飽和した。次いで、電極を回転速度1600rpmで回転させ、電位範囲-0.417V~0.282V(vs. Hg/HgO)にて、掃引速度0.02V/secで電位掃引した時の電流密度を電位の関数として記録した(O-LSV関数)。なお、掃引は、開始電位を0.282V(vs. Hg/HgO)、終了電位を-0.417V(vs. Hg/HgO)として行った。そして、O-LSV関数からN-LSV関数を差し引いて、酸素還元ボルタモグラムを得た。図5Aには、例6の触媒について得られた酸素還元ボルタモグラムを示す。
その後、上述のようにして得られた酸素還元ボルタモグラムから、触媒のORR初期活性を示す指標として、-0.1mA/cmの電流密度で電流が流れた時の電位であるEORR1(mV vs. Hg/HgO)を記録した。なお、EORR1の値が大きいほど、触媒の酸素還元反応における触媒活性が優れていることを示す。
<酸素発生反応における初期活性>上記回転リングディスク電極装置を用いて、酸素発生反応(OER)における触媒の初期活性(OER初期活性)を評価した。すなわち、触媒を含む作用電極を有する三極式回転リングディスク電極装置を用いたサイクリックボルタンメトリ(CV)を実施し、続いて窒素雰囲気下におけるリニアスイープボルタンメトリ(N-LSV)を実施することにより初期活性を測定した。
CVにおいては、まず窒素バブリングを10分間行い、下記プロトコルにてCV測定を行った。すなわち、電位範囲-0.418V~0.082V(vs. Hg/HgO)にて、掃引速度0.05V/secで電位掃引を10サイクル行い(0.082V→-0.418V)、電解液内の酸素を除去した。なお、掃引においては、開始電位をオープンサーキットポテンシャル(OCP)とし、ネガティブ方向への掃引から開始した。
次にN-LSVを実施した。すなわち、電極を回転速度1600rpmで回転させ、電位範囲0.2V~1.182V(vs. Hg/HgO)にて、掃引速度0.02V/secで電位掃引した時の電流密度を電位の関数として記録し(N-LSV関数)、酸素発生ボルタモグラムを得た。なお、掃引は、開始電位を0.2V(vs. Hg/HgO)、終了電位を1.182V(vs. Hg/HgO)として行った。図5Bには、例6の触媒について得られた酸素発生ボルタモグラムを示す。
その後、上述のようにして得られた酸素発生ボルタモグラムから、触媒のOER初期活性を示す指標として、10mA/cmの電流密度で電流が流れた時の電位であるEOER1(mV vs. Hg/HgO)を記録した。なお、EOER1の値が小さいほど、触媒の酸素発生反応における触媒活性が優れていることを示す。
<耐久性>上記回転リングディスク電極装置を用いて、負荷電位を作用極にかけ、その前後での活性変化を測定することにより、触媒の耐久性を評価した。すなわち、触媒を含む作用電極を有する三極式回転リングディスク電極装置を用いたクロノアンペロメトリ(CA)を実施した。
まず、上述した<酸素還元反応における初期活性>と同様の手順で、触媒のORR初期活性を示す指標として、-0.1mA/cmの電流密度で電流が流れた時の電位であるEORR2(mV vs. Hg/HgO)を記録した。
その後、まず窒素バブリングを10分間行い、続いてCA測定を行った。すなわち、電極を回転速度1600rpmで回転させ、電位を0V(vs Hg/HgO)から0.6V(vs. Hg/HgO)に1ステップで移行させ(0V→0.6V)、0.6Vに達した後、電位を20分間保持した。
次いで、上述した<酸素還元反応における初期活性>及び<酸素発生反応における初期活性>と同様の手順で、触媒のORR初期活性及びOER初期活性を示す指標として、それぞれ-0.1mA/cmの電流密度で電流が流れた時の電位であるEORR3(mV vs. Hg/HgO)、及び、10mA/cmの電流密度で電流が流れた時の電位であるEOER2(mV vs. Hg/HgO)を記録した。
そして、触媒のORRにおける触媒活性に関する耐久性を示す指標として、EORR3とEORR2との差の絶対値|EORR3-EORR2|(mV)を求めた。なお、|EORR3-EORR2|の値が小さいほど、触媒のORRにおける触媒活性に関する耐久性が高いことを示す。
また、触媒のOERにおける触媒活性に関する耐久性を示す指標として、EOER2とEOER1との差の絶対値|EOER2-EOER1|(mV)を求めた。なお、|EOER2-EOER1|の値が小さいほど、触媒のOERにおける触媒活性に関する耐久性が高いことを示す。
[結果]
図6Aには、各例の触媒について、その製造に用いられた炭素担体及び遷移金属含有触媒前駆体と、その触媒性能の評価結果とを示す。図6Bは、各例の触媒について、その特性を評価した結果を示す。なお、図6Aに示す耐久性に関し、例C5の触媒は、ORR初期活性が極めて低かったため、耐久性を評価する意義に乏しいと判断し、耐久性の測定試験は行わなかった。また、図6Bに示すLcに関し、例C3の触媒については、ピーク分離によって回折ピークfbroadが得られなかったため、Lcを算出することができなかった。
図6Aに示すように、例C1~例C8の触媒は、初期活性(ORR初期活性及び/又はOER初期活性)、及び/又は、耐久性(ORR耐久性及び/又はOER耐久性)が十分ではなかった。これに対し、例1~例9の触媒は、ORR初期活性及びORR耐久性に優れ、且つ、OER初期活性及びOER耐久性にも優れていた。
具体的に、ORR初期活性については、例1~例9のうち、例2~例7の触媒が優れており、例3~例7の触媒が特に優れていた。OER初期活性については、例1~例9のうち、例2~例7の触媒が優れており、例5~例7の触媒が特に優れていた。
また、ORR耐久性については、例1~例9のうち、例1~例7及び例9の触媒が優れていた。OER耐久性については、例1~例9のうち、例2~例4及び例6~例9の触媒が優れており、例2、例4、例6及び例9の触媒が特に優れていた。
図6Bに示すように、例C1、例C3、例C4及び例C8の触媒のD1-FWHMは113cm-1以上であった。これに対し、例1~例9の触媒のD1-FWHMは108cm-1以下であり、例1~例3及び例5~例9の触媒のD1-FWHMは84cm-1以下であった。また、例C2、例C5及び例C7の触媒のD1-FWHMは51cm-1であった。これに対し、例1~例9の触媒のD1-FWHMは56cm-1以上であった。例1~例9の触媒のD4-FWHMは227cm-1以下であった。
例C1~例C4及び例C8の触媒のID1/I比は1.05以下であった。これに対し、例1~例9の触媒のID1/I比は1.11以上であり、例1~例3及び例5~例9の触媒のID1/I比は1.29以上であった。また、例C5及び例C7の触媒のID1/I比は2.00以上であった。これに対し、例1~例9の触媒のID1/I比は1.81以下であり、例2~例7の触媒のID1/I比は1.63以下であった。例1~例9の触媒のID4/I比は0.10以上であり、例2~例7の触媒のID4/I比は0.16以上であった。
例C5及び例C6の触媒の特定B/C%は0.0%であり、例C2及び例C7の触媒の特定B/C%は0.6%であった。これに対し、例1~例9の触媒の特定B/C%は0.8%以上であり、例2~例7の触媒の特定B/C%は1.1%以上であり、例3、例4、例6及び例7の触媒の特定B/C%は5.6%以上であった。例1~例9の触媒の総B/C%は1.4%以上であった。
例1~例9の触媒の特定N/C%は0.1%以上であり、例2~例7の触媒の特定N/C%は0.5%以上であり、例3、例4、例6及び例7の触媒の特定N/C%は1.3%以上であった。例1~例9の触媒の総N/C%は0.3%以上であり、例2~例7の触媒の総N/C%は1.3%以上であった。
例1~例9の触媒の元素分析によるN/C%(EA-N/C%)は1.3%以上であり、例2~例7の触媒のEA-N/C%は2.9%以上であった。例1~例9の触媒の結晶子サイズLcは1.58nm以下であった。
例1~例9の触媒のミクロ孔容積は0.071cm/g以下であり、例2~例7の触媒のミクロ孔容積は0.011cm/g以下であった。例1~例9の触媒のメソ孔容積は0.16cm/g以下であった。
例1~例9の触媒のBET比表面積は357.4cm/g以下であり、例2~例7の触媒のBET比表面積は87.5cm/g以下であった。例1~例9の触媒の触媒粒子のメディアン径は0.87μm以下であった。例1~例9の触媒の金属含有量は2.2重量%以上であった。

Claims (17)

  1. 炭素担体と、前記炭素担体に担持された遷移金属含有触媒とを含む触媒であって、
    ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1350cm-1付近にピークトップを有するD1バンドと、ラマンシフト1590cm-1付近にピークトップを有するGバンドとを示し、
    X線光電子分光法により得られる光電子スペクトルにおいて、ホウ素原子の1s軌道に由来するB1sスペクトルをピーク分離して得られる、結合エネルギー192.0±0.3eVの範囲内にピークトップを有する特定ホウ素原子ピークを示し、
    下記特性(p1)、(p2)、(p3)又は(p4):
    (p1)前記ラマン分光法により得られる前記D1バンドの半値全幅であるD1-FWHMが112cm-1以下であり、且つ、前記X線光電子分光法により得られる炭素原子の濃度に対する前記特定ホウ素原子ピークを示す特定ホウ素原子の濃度の比率である特定B/C%が0.7%以上である;、
    (p2)前記D1-FWHMが52cm-1以上、112cm-1以下であり、且つ、前記特定B/C%が0.1%以上である;、
    (p3)前記ラマン分光法により得られる前記Gバンドのピークトップの強度に対する前記D1バンドのピークトップの強度の比であるID1/I比が1.06以上であり、且つ、前記特定B/C%が0.7%以上である;、
    (p4)前記ID1/I比が1.06以上、1.99以下であり、且つ、前記特定B/C%が0.1%以上である;
    を有する触媒。
  2. 前記特性(p1)を有する、
    請求項1に記載の触媒。
  3. 前記特性(p2)を有する、
    請求項1に記載の触媒。
  4. 前記特性(p3)を有する、
    請求項1に記載の触媒。
  5. 前記特性(p4)を有する、
    請求項1に記載の触媒。
  6. CuKα線を用いた粉末X線回折により得られるX線回折図形における炭素の(002)回折線から得られる結晶子サイズLcが、2.50nm以下を示す、
    請求項1乃至5のいずれかに記載の触媒。
  7. ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1500cm-1付近にピークトップを有するD4バンドを示し、
    前記Gバンドのピークトップの強度に対する前記D4バンドのピークトップの強度の比であるID4/I比が0.05以上である、
    請求項1乃至5のいずれかに記載の触媒。
  8. ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1500cm-1付近にピークトップを有するD4バンドを示し、
    前記ラマン分光法により得られる前記D4バンドの半値全幅であるD4-FWHMが250cm-1以下である、
    請求項1乃至5のいずれかに記載の触媒。
  9. 元素分析により得られる炭素原子含有量に対する窒素原子含有量の比率が0.1%以上である、
    請求項1乃至5のいずれかに記載の触媒。
  10. X線光電子分光法により得られる炭素原子の濃度に対する窒素原子の濃度の比率が0.1%以上である、
    請求項1乃至5のいずれかに記載の触媒。
  11. X線光電子分光法により得られる光電子スペクトルにおいて、窒素原子の1s軌道に由来するN1sスペクトルをピーク分離して得られる、結合エネルギー399.5±0.3eVの範囲内にピークトップを有する特定窒素原子ピークを示し、
    前記X線光電子分光法により得られる炭素原子の濃度に対する前記特定窒素原子ピークを示す特定窒素原子の濃度の比率である特定N/C%が0.1%以上である、
    請求項1乃至5のいずれかに記載の触媒。
  12. 窒素吸着法により得られる細孔径が2nm以上、50nm以下の細孔の容積が1.00cm/g以下である、
    請求項1乃至5のいずれかに記載の触媒。
  13. 窒素吸着法により得られる細孔径が2nm未満の細孔の容積が1.00cm/g以下である、
    請求項1乃至5のいずれかに記載の触媒。
  14. 窒素吸着法により得られるBET比表面積が1.0m/g以上である、
    請求項1乃至5のいずれかに記載の触媒。
  15. X線光電子分光法により得られる炭素原子の濃度に対するホウ素原子の濃度の比率が0.1%以上である、
    請求項1乃至5のいずれかに記載の触媒。
  16. 触媒粒子のメディアン径が5.00μm以下である、
    請求項1乃至5のいずれかに記載の触媒。
  17. 誘導結合プラズマ質量分析により測定される金属含有量が1.0重量%以上である、
    請求項1乃至5のいずれかに記載の触媒。

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