JP2624331B2 - 耐食性、耐水素脆性に優れた重防食被覆鋼材およびその製造方法 - Google Patents

耐食性、耐水素脆性に優れた重防食被覆鋼材およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は、温泉地、地熱地帯、工業地帯の海岸部およ
び土留め用等の鋼矢板、鋼管杭、コルゲートパイプ等に
用いられ、耐食性、耐水素脆性に優れた重防食被覆鋼材
およびその製造方法に関する。
〈従来の技術〉 一般に重防食被覆鋼材は、化成処理および/またはプ
ライマー処理を施した後、0.5mm以上の厚膜で有機およ
び/または無機樹脂を塗装、またはライニングされる。
このような方法は、通常の海岸部、河川、土壌において
は有効な方法であるが、温泉地、地熱地帯、工業地帯の
ような酸性および/または硫化水素が発生するような環
境においては、比較的短期間のうちに腐食性物質が塗膜
を透過し、界面での腐食反応により塗膜剥離が引き起こ
される。
このような腐食性の強い環境での防食性を向上させる
方法としては、ガラスフレーク、アルミニウム粉等の偏
平状顔料を樹脂中に添加する方法が知られている。
〈発明が解決しようとする課題〉 しかしながら、前記した方法では腐食性因子の透過を
幾分抑制する効果はあるものの、完全に遮断することは
困難であり、長期に渡って接着強度を保持することは困
難であり、十分な防食効果が得られないのが実情であ
る。本出願人らは、先に、特願昭62-268197号におい
て、この問題を解決する画期的な発明を開示した。
〈課題を解決するための手段〉 そこでさらに今回、鋼材表面に、バナジウム酸化物お
よび銅酸化物を含有するプライマー樹脂塗料を塗装した
後、重防食塗装を行なうことにより、硫化水素遮断性と
鋼中への水素透過防止性を維持しつつ、硫化水素および
/または酸が存在するような腐食性の厳しい環境におい
ても、塗膜の接着劣化が極めて抑制され、鋼材の長期防
食性が得られることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
すなわち本発明は、鋼材表面にプライマー層として樹
脂固形分100重量部に対し、VOX(1.5≦X≦2.5)で表さ
れるバナジウム酸化物およびCuyO(1≦y≦2)で表さ
れる銅酸化物をそれぞれ1〜500重量部含有する樹脂組
成物層を設け、その上に、重防食被覆層を設けてなるこ
とを特徴とする耐食性と耐水素脆性に優れた重防食被覆
鋼材を提供する。
また、本発明は、鋼材表面にプライマー層として樹脂固
形分100重量部に対し、VOX(1.5≦X≦2.5)で表される
バナジウム酸化物およびCuyO(1≦y≦2)で表される
銅酸化物をそれぞれ1〜500重量部含有する樹脂組成物
層を設け、その上に、重防食被覆層を施すことを特徴と
する耐食性と耐水素脆性に優れた重防食被覆鋼材の製造
方法を提供する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の重防食被覆鋼材は、鋼材表面にプライマー層
として樹脂組成物層を設け、その上に重防食被覆を施し
てなる。
特に本発明は、前記樹脂組成物層中に、バナジウム酸
化物としてVOX(1.5≦X≦2.5)および銅酸化物としてC
uyO(1≦y≦2)を含有する。バナジウム酸化物は、
その不定比性により、硫化水素および水素、水酸イオン
を吸着する能力が高く、銅酸化物は硫化水素等の腐食因
子を一時的にその表面に吸着する能力が高いので、腐食
因子を鋼材表面に到達するのを防ぎ、この両者の相乗効
果により、鋼材表面での腐食反応を抑制し、長期にわた
って接着強度が保持することができる。
バナジウム酸化物としてはVOXで表したとき、xが1.5
≦x≦2.5の範囲にある低級酸化物が用いられる。この
ような酸化物は不定比化合物とよばれ、化学式で組成を
特定することはできないが、安定もしくは準安定な酸化
物としてはVO2(x=2),V4O9(x=2.25),V2O5(x
=2.5)などを挙げることができる。
また銅酸化物は、銅の酸化数が1価または2価のいず
れのタイプのものであってもよく、一般にCu2Oおよび/
またはCuOと表記される化合物が包含される。これらの
銅酸化物の具体例には、酸化銅鉱、硫化銅鉱等の天然酸
化銅:アルカリ塩溶液中で銅または水溶性銅塩を電解酸
化し、または該溶液からの沈殿物を乾燥酸化して得られ
る酸化銅:金属銅を高温酸化して得られる銅酸化物、あ
るいはこれらの混合物等がある。また上記酸化銅には酸
化クロム、酸化亜鉛、二酸化マンガン等他の金属酸化物
が含まれていてもよく、例えば三酸化クロムの水溶液に
酸化銅の粉末を溶解し、この溶液に酸化亜鉛を加えて混
練し、乾燥することにより得られる混合物を用いること
もできる。
また前記VOXおよびCuyOにおけるxおよびyの範囲が
上記範囲外の酸化物は安定性がなく、また結晶格子も大
きく変動するので、使用には不適である。
上記、バナジウム酸化物および銅酸化物は、通常塗料
に使用される顔料と同程度の粒径を有していることが望
ましく、粒径があまり大きすぎると、表面積が小さくな
り、硫化水素および水素の吸着効果が期待できないばか
りか、塗膜物性そのものも悪化する傾向がみられる。し
たがって、0.1〜50μm程度の粒径のものを用いるのが
よい。
上記、バナジウム酸化物および銅酸化物の樹脂組成物
への配合は、それ自身既知の任意の分散装置および分散
工程を用いて容易に行うことができる。前記したバナジ
ウム酸化物および銅酸化物の配合割合は、それぞれ樹脂
固形分100重量部に対し1〜500重量部、好ましくは3〜
150重量部、さらに好ましくは5〜50重量部の範囲内で
ある。配合量が1重量部未満では本発明の目的である、
酸性および/または硫化水素が存在する環境での鋼材の
防食効果が充分に得られず、他方500重量部を越える
と、塗膜性能が劣化する傾向がみられる。
本発明におけるプライマー層を形成するのに用いられ
る前記バナジウム酸化物と銅酸化物を含有する樹脂組成
物において、バインダーとして用いられる樹脂成分とし
ては、一般に塗料に用いられる樹脂であり、重防食層と
の接着性の良好なものであれば特に限定されず、例えば
エポキシ樹脂、タールエポキシ樹脂、アクリル変性エポ
キシ樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシウレタン樹脂、
ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、塩素ゴム系樹脂、
シリコン樹脂、フッ素樹脂等の天然または合成樹脂;ボ
イル油等の重合油などが挙げられる。
これらの樹脂の中でも本発明で用いるプライマーの樹
脂組成物に好適な樹脂は、耐薬品性、耐溶剤性、密着性
に優れるという点で、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、
ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂等であり、さらに好適
には、常温または加熱下で架橋、三次元化して硬化被膜
を形成しうる樹脂組成物である。
具体的には、例えば、ビスフェノール型のジエポキシ
樹脂とポリアミン、アミノ・ポリアミド樹脂等の架橋剤
との組み合わせ;ノボラック型多官能エポキシ樹脂とポ
リアミン、または2官能フェノール樹脂架橋剤との組み
合わせ;ビスフェノール型ジエポキシ樹脂とレゾール型
フェノール樹脂架橋剤との組み合わせ;ポリウレタン樹
脂とポリオール架橋剤との組み合わせ等からなる樹脂組
成物を挙げることができる。
市販品としては、例えば、関西ペイント社製の「レタ
ンGPプライマー」(ポリウレタン樹脂系塗料)、「エポ
シール」、「エポマリン」(いずれもエポキシ樹脂系塗
料)等を挙げることができる。ただしこれらに限定され
るものではない。
本発明において、前記した樹脂組成物からなるプライ
マー層上に施される重防食被覆層形成用被覆材は、エポ
キシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ
プロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂等、従来
から一般に重防食被覆材として用いられる樹脂がすべて
適用される。これらの重防食被覆層は必要により接着剤
層を介して設けても良い。本発明において、重防食被覆
層とは、これらの樹脂を500μm以上の膜厚に施工した
ものを意味する。
また、プライマー層および重防食被覆層に用いられる
樹脂組成物は、通常、有機系溶媒を用いて塗料化される
が、水系の分散液としてもよい。塗料化に用いられる有
機系溶媒の例としては、メチルイソブチルケトン、メチ
ルエチルケトン等のケトン系溶媒;セロソルブ、酢酸セ
ロソルブ等のエステル・グリコール系溶媒;エチルアル
コール、n−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒な
どが挙げられる。
本発明の方法に従い、重防食塗装を施す対象鋼材とし
てはSS、SM、SD、SB、SPC等の構造用鋼材および合金鋼
が包含される。具体的には、鋼管杭、鋼管矢板、コルゲ
ートパイプ、型鋼などが挙げられる。
さらに、樹脂組成物には、通常塗料に使用される無機
系もしくは有機系の顔料または添加剤を配合することが
できる。添加剤の具体例としては、顔料分散剤、充填
剤、増粘剤、たれ止め剤、可塑剤、乾燥剤、硬化剤、界
面活性剤などを挙げることができる。
本発明の重防食被覆鋼材は、前述の鋼材上に、プライ
マー層および重防食被覆層を順次塗装することによって
得られる。
本発明において、塗装手段は特に限定されず、通常の
任意の方法を用いることができ、例えば、スプレー塗
装、ロール塗装、ハケ塗り塗装、しごき塗り、浸漬塗
装、粉体塗装等が挙げられる。
プライマー層における塗装量は、5〜300μm、好ま
しくは10〜100μmとするのがよい。5μm未満では本
発明の効果が得られず、他方300μm超ではタレが発生
するため好ましくない。
さらにその上層である重防食被覆層における塗装量
は、0.5mm以上とするのがよい。0.5mm未満では長期の防
食効果が得られない。なお、塗装の上限は特に定めない
が、経済性等から5mm以下程度とするのが適当である。
〈実施例〉 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明す
る。
(実施例1) 下記表1の配合量組成物を前練した後、ペブルミルで
16〜18時間分散を行った。分散後の粒子の大きさは40μ
m以下であった。
ついで、分散物に70%エポン1001樹脂ワニス23.0重量
部および酢酸セロソルブ3.5重量部を加え、さらに30分
間ペブルミルを稼働し、固形分75重量%、粘度82±10KU
(ストーマー粘度計による25℃での値)の塗料主剤を得
た。このようにして得られた塗料主剤100重量部に、下
記表2の配合物を加えてプライマー層用エポキシ樹脂塗
料を得た。
他方、重防食用塗料としては関西ペイント社製の「ゼ
ブロン」を用いた。
(実施例2〜7) 下記表3に示す。関西ペイント社製各塗料を用いて、
バナジウム酸化物、銅酸化物をロールミルで、粒径が40
μmになるまで分散してプライマー層用被覆組成物を得
た。
(比較例1〜5) 下記表3に示す仕様に基ずき、前記実施例と同様にし
てプライマー被覆組成物を調整し、重防食塗装を施し
た。
前記、実施例および比較例で調整したプライマー用塗
料を、アルミナ#46研掃材にてブラスト処理したSS41鋼
板に所定の硬化条件で20μmの膜厚で塗装後、重防食被
覆材を1.5mmの厚みで塗装しサンプルを得、以下の要領
で防食性試験を行い、評価を行った。
(防食性試験) 塩化ナトリウム3%、酢酸0.5%、硫化水素飽和水溶
液(pH=3)で50℃、100日間端面を露出させた100mm×
100mm角の供試材について浸漬試験を行い、端面から剥
離幅および中央部の接着強度を求めた。
表4にその結果を示す。
(接着強度残存率) (ウレタン系) 第1図のように、サンプル中央部に垂直引張試験用治
具1を、鋼材2表面にプライマー層5を介して形成した
重防食ポリウレタン被覆層3に接着剤を介して取り付
け、インストロン引張試験機を用い1cm/minの速度で引
張り、接着強度を得た。防食試験後の接着強度を試験前
のそれで割り、接着強度残存率とした。
(ポリエチレン系) 第2図のように鋼材2表面にプライマー層5を介して
形成した重防食ポリエチレン被覆層4を設け、その中央
部に2cm幅で鋼材に達するスリット6を入れ、ポリエチ
レン膜を一部剥離する。
母材を固定し、ポリエチレン膜を前記ウレタン系の場
合と同様1cm/minの速度で引張り接着強度を得、防食試
験前後の接着強度より、接着強度残存率を求めた。
第4表の結果より明らかなように、本発明の重防食用
プライマー層の樹脂組成物を用いた場合、バナジウム酸
化物あるいは銅酸化物だけを含有した樹脂塗料を用いた
場合あるいは全く含有していない場合に比較して、酸性
および/または硫化水素が存在するような環境でも、よ
り長期な接着耐久性が得られ顕著な鋼材の防食効果が発
揮される。
〈発明の効果〉 本発明によれば酸性および/または硫化水素が存在す
る環境で優れた接着耐久性を示し、長期防食性に優れた
重防食被覆鋼材が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、ポリウレタン系の重防食塗料を用いた場合の
接着強度残存率を求める試験方法を示す模式図である。 第2図は、ポリエチレン系の重防食塗料を用いた場合の
接着強度残存率を求める試験方法を示す模式図である。 符号の説明 1……垂直引張試験用治具、2……鋼材、3……重防食
ポリウレタン被覆層、4……重防食ポリエチレン被覆
層、5……プライマー層、6……スリット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 栗栖 孝雄 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株 式会社技術研究本部内 (72)発明者 杉島 正見 神奈川県平塚市東八幡4丁目17番1号 関西ペイント株式会社内 (72)発明者 大西 和彦 神奈川県平塚市東八幡4丁目17番1号 関西ペイント株式会社内 (72)発明者 宮田 信義 神奈川県平塚市東八幡4丁目17番1号 関西ペイント株式会社内

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼材表面にプライマー層として樹脂固形分
    100重量部に対し、VOX(1.5≦X≦2.5)で表されるバナ
    ジウム酸化物およびCuyO(1≦y≦2)で表される銅酸
    化物をそれぞれ1〜500重量部含有する樹脂組成物層を
    設け、その上に、重防食被覆層を設けてなることを特徴
    とする耐食性と耐水素脆性に優れた重防食被覆鋼材。
  2. 【請求項2】鋼材表面にプライマー層として樹脂固形分
    100重量部に対し、VOX(1.5≦X≦2.5)で表されるバナ
    ジウム酸化物およびCuyO(1≦y≦2)で表される銅酸
    化物をそれぞれ1〜500重量部含有する樹脂組成物層を
    設け、その上に、重防食被覆層を施すことを特徴とする
    耐食性と耐水素脆性に優れた重防食被覆鋼材の製造方
    法。
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