JP2632373B2 - β−ガラクトシダーゼ産生遺伝子を含むDNA断片及び該DNA断片を組み込んだプラスミド - Google Patents

β−ガラクトシダーゼ産生遺伝子を含むDNA断片及び該DNA断片を組み込んだプラスミド

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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、ラクトバチルス・ブルガリカス由来のβ−
ガラクトシダーゼ産生遺伝子を含むDNA断片、及び該DNA
断片をベクターに組み込んだプラスミドに関する。
従来の技術 近年、組み換えDNA実験技術を中心とする遺伝子操作
技術は急激に発展してきた。
とりわけ、組み換えDNA実験技術の基礎研究として、
発現ベクターの開発が盛んに行われており、特に、大腸
菌の系においては、種々の発現ベクターが造成されてい
る。そして、これらの発現ベクターに目的の遺伝子を含
むDNA断片を組み込むことにより、宿主での物質生産や
形質発現が行われるのである。
この組み換えDNA実験技術を用い、バシルス・ステア
ロサーモフィラス由来の耐熱性β−ガラクトシダーゼ遺
伝子を発現ベクターに組み込んで組み換えDNAとし、そ
の組み換えDNAによつて形質転換した枯草菌でバシルス
・ステアロサーモフィラス由来の耐熱性β−ガラクトシ
ダーゼを生産する方法(特開昭61−81788)、並びに高
度好熱菌サーマス・アクアティカス由来の耐熱性β−ガ
ラクトシダーゼ遺伝子を発現ベクターに組み込んで組み
換えDNAとし、その組み換えDNAによつて形質転換した大
腸菌でサーマス・アクアティカス由来の耐熱性β−ガラ
クトシダーゼを生産する方法(特開昭62−208285)が開
示されている。
β−ガラクトシダーゼは、別名ラクターゼと称する酵
素で、哺乳動物の乳中に含まれる二糖類である乳糖のβ
−1,4結合に作用してグルコースとガラクトースを生成
したり、また、その合成作用により、乳糖にガラクトー
スが1,6結合したオリゴ糖を生成することも知られてい
る。したがつて、乳及び乳製品の品質の改良や新しい用
途開発を目的として、β−ガラクトシダーゼの利用が活
発になつてきている。さらに、β−ガラクトシダーゼは
酵素免疫学的測定法において、標識酵素としても用いら
れるようになつてきている。
β−ガラクトシダーゼは、植物、動物小腸、そして、
酵母、カビ、細菌などの微生物に広く分布しているが、
その性状は給源によつて異なつている。そのなかで、乳
酸桿菌のラクトバチルス・ブルガリカスは、発酵乳の乳
酸菌スターターとして用いられており、その乳酸発酵に
寄与するβ−ガラクトシダーゼの性質などについても研
究されているが、培地や培養条件が複雑であり、酵素の
分離・精製操作も煩雑であるため、ラクトバチルス・ブ
ルガリカスを用いて、β−ガラクトシダーゼを生産する
ことは極めて困難である。しかも、組み換えDNA実験技
術を用いて、大量にラクトバチルス・ブルガリカス由来
のβ−ガラクトシダーゼを生産する試みも未だになされ
ていないのが現状である。
発明が解決しようとする課題 本発明者らは、β−ガラクトシダーゼ産生能を有する
乳酸桿菌ラクトバチルス・ブルガリカスの染色体に、制
限酵素を作用させてβ−ガラクトシダーゼ産生遺伝子を
含むDNA断片を取り出し、このDNA断片をベクターDNAに
組み込んだプラスミドを作製することによつて、ラクト
バチルス・ブルガリカス由来のβ−ガラクトシダーゼを
大量に生産することを可能にし、本発明をなすに至つ
た。
したがつて、本発明は、ラクトバチルス・ブルガリカ
スのβ−ガラクトシダーゼ産生遺伝子を含むDNA断片を
ベクターDNAに組み込んだプラスミドを提供することを
課題とする。
以下本発明を詳しく説明する。
課題を解決するための手段 本発明におけるβ−ガラクトシダーゼを産生する乳酸
桿菌ラクトバチルス・ブルガリカスの染色体DNAは、次
のようにして分離することができる。
乳酸桿菌ラクトバチルス・ブルガリカスSBT0034株を
培養集菌後、ムタノリシン溶液を加え、一定時間保温す
る。次いで、SDS溶液を加えて溶菌させた後、フェノー
ルおよびクロロホルム処理によつてDNAを抽出する。DNA
をエタノール沈澱によつて回収した後、RNase処理し、
染色体DNAを得る。
染色体DNAは、制限酵素で完全に切断する。この制限
酵素としては:制限酵素Sal Iが望ましく、これをアガ
ロース電気泳動にかけて約3kb−10kbの大きさのDNA断片
を採取し、精製する。一方、ベクターは、本発明で用い
るのに適したベクターであればどのようなものでもよい
が、大腸菌プラスミドpBR329が好ましい。このベクター
を、染色体DNAを切断した制限酵素と同じ制限酵素、例
えば制限酵素Sal Iで切断し、これにT4リガーゼを用い
て前記DNA断片を連結する。このようにしてβ−ガラク
トシダーゼ産生DNA遺伝子をベクターに組み込んだプラ
スミドが得られる。このプラスミドの制限地図の例を図
1に示した(実施例1参照)。
このプラスミドpBG1は約8.3kbと従来知られているラ
クトバチルス・カゼイ由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝
子を含むプラスミドpLZ15(28.3kb)(FEMS Microbiolo
gy Letters,Vol.44,No.2(1987),p.173−177)にくら
べて著しく小さく、宿主細胞に組み込み易く、また組み
込んだ後も安定である。
上記のようにして得られた組換体プラスミドを、β−
ガラクトシダーゼ遺伝子が欠損した大腸菌に形質転換す
る。乳酸桿菌ラクトバチルス・ブルガリカス SBT0034株
のβ−ガラクトシダーゼ産生遺伝子を含むDNA断片を組
み込んだベクターDNAを保持する大腸菌の選択は、5−
ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラク
トピラノシド(以下X−Galと称する)およびアンピシ
リンを含む寒天平板培地で培養し、X−Galがβ−ガラ
クトシダーゼにより分解されることによつて青色を呈し
たコロニーを選択することによる。
大腸菌からのプラスミドの抽出は、次のような常法に
よつて行うことができる。プラスミドを保持する大腸菌
を培養集菌する。菌体の懸濁液にリゾチーム溶液を加え
て一定時間保温した後、SDS溶液を加えて溶菌する。塩
化ナトリウム溶液を加え、氷中に一定時間放置した後、
遠心分離によつて上清を得、ポリエチレングリコール60
00を加えてDNAを沈澱させ回収する。DNAを緩衝液に溶解
し、エチジウムブロマイド−塩化セシウム平衡密度勾配
超遠心にかけて、プラスミドDNAを得る。このようにし
て得られたプラスミドDNAは、再び大腸菌に形質転換で
きる。
上記のようにして得られた、β−ガラクトシダーゼ産
生遺伝子を含むDNA断片が、乳酸桿菌ラクトバチルス・
ブルガリカスの染色体DNA由来であることはサザンブロ
ットハイブリダイゼーションによつて、また、β−ガラ
クトシダーゼ活性は活性染色によつて確認する。
実施例 1)乳酸桿菌ラクトバチルス・ブルガリカス SBT0034株
からの染色体DNAの調製と切断: 乳酸桿菌ラクトバチルス・ブルガリカス SBT0034株
(微工研菌寄第10081号)を、100mlのMRS BROTH(DIFC
O)に接種し、37℃で一夜培養して集菌した。菌体をSTM
緩衝液(10mMトリス−マレート、1Mシュクロース、pH6.
5)で2回洗浄した後、2mlの同緩衝液に懸濁した。これ
にムタノリシン(500μg/ml)を200μ加え、37℃で30
分間保温した後、トリス−SDS(0.1M トリス−塩酸、0.
1M NaCl、1%SDS、pH9.0)を3ml加え、65℃で15分間保
温した。これに、フェノールを加えて撹拌し、遠心して
上層を回収し、さらにクロロホルム:イソアミルアルコ
ール(24:1)を加えて抽出した。得られた染色体DNA溶
液に、2倍量の冷却エタノールを加え、遠心して回収
し、TE緩衝液(10mM トリス−塩酸、1mM EDTA、pH8.0)
5mlに溶解した。
次に、RNase(2mg/ml)を100μ加え、37℃で1時間
保温した後、再び2倍量の冷却エタノールを加え、遠心
して回収した。得られた染色体DNAは、2mlのTE緩衝液に
溶解した。
染色体DNA溶液を適当量とり、これに制限酵素Sal Iを
加えて37℃で反応させ、完全に切断した後、1%アガロ
ースで電気泳動し、その約3kb−10kbの大きさのDNA画分
を、泳動溶出、フェノール処理、クロロホルム抽出、エ
タノール沈澱によつて回収した。回収DNAは、TE緩衝液
に溶解させた。
2)ベクターDNAの切断および脱燐酸化: ベクターDNApBR329 0.2μgに対し、制限酵素Sal I1
ユニットの割合で、10mMトリス−塩酸(pH8.0)、7mM M
gCl2、150mM NaCl、7mM 2−メルカプトエタノールの反
応液中において、37℃で1時間反応させた後、フェノー
ル処理、クロロホルム抽出、エタノール沈澱によつ回収
した。回収したDNAは、TE緩衝液に溶解した。
Sal I切断したDNA溶液(DNA1μgを含む)に、10倍濃
度のBAP緩衝液(0.5M トリス−塩酸、pH8.0)20μを
加え、さらに滅菌蒸留水を加えて全体を200μにし
た。これに、0.5ユニットの大腸菌アルカリホスファタ
ーゼを加え、60℃で1時間反応させた後、フェノール処
理、エーテル抽出を行つた。抽出したDNA溶液に3M酢酸
ナトリウムを25μを加え、エタノール沈澱によつて回
収した。回収したDNAは、TE緩衝液に溶解した。
3)ベクターDNAへの染色体DNA断片の挿入: 上記1)及び2)項の染色体DNA断片とベクターDNA
を、およそ3:1の割合になるように混合し、DNAライゲー
ションキット(宝酒造)を用いて両者を連結させること
により、組換え体プラスミドを得た。連結方法は、ライ
ゲーションキットの説明書に従つた。
4)組換え体プラスミドの大腸菌への形質転換: 上記3)項の組換え体プラスミドを、大腸菌JM105株
のコンピテントセルに添加し、氷中に30分間放置した
後、42℃で2分間処理した。これを、1.5mlのLB培地
(塩化ナトリウム0.5%、トリプトン1%、酵母エキス
0.5%)に接種して、37℃で1時間培養した。この培養
液を、アンピシリン(50mg/)およびX−Gal(40mg/
)を含むLB寒天培地に塗抹し、37℃で一夜培養するこ
とによつて、アンピシリン耐性の大腸菌形質転換体を得
た。
5)β−ガラクトシダーゼを産生する大腸菌の選択: 上記4)項のようにして得られた大腸菌形質転換体の
なかから、産生したβ−ガラクトシダーゼがX−Galを
分解することにより、青色を呈したコロニーを選択し
た。
6)大腸菌からのプラスミドの抽出: 上記5)項で得られた、β−ガラクトシダーゼを産生
する大腸菌形質転換体からのプラスミドの抽出は、次の
ような常法によつた。
プラスミドを保持する大腸菌を培養集菌し、湿重量2g
の菌体を、緩衝液(25%シュクロース、50mMトリス−塩
酸、pH8.0)5mlに懸濁し、これにリゾチーム溶液(5mg/
ml)1ml、0.25M EDTA(pH8.0)2mlおよびRNase(5mg/m
l)0.2mlを添加して、氷中に5分間放置した。37℃で3
分間加熱した後、10%SDSを1ml加え、37℃で1分間保温
した。さらに、5M NaClを2.5ml加え、氷中に3時間放置
した後、遠心分離して上層(cleared lysate)を抽出し
た。等量の20%ポリエチレングリコール6000溶液を加え
て4℃に一夜放置し、プラスミドを沈澱させた。
遠心分離によつてプラスミドを回収し、少量のTE緩衝
液に溶解して、エチジウムプロマイド−塩化セシウム平
衡密度勾配超遠心にかけ、プラスミドを得た。このよう
にして得られた、乳酸桿菌ラクトバチルス・ブルガリカ
ス SBT0034由来のβ−ガラクトシダーゼ産生遺伝子を含
むDNA断片を組み込んだプラスミドを、pBG1と名付け、
その制限酵素地図を図1に示した。
7)サザーンブロットハイブリダイゼーション: pBG1に組み込まれた、β−ガラクトシダーゼ産生遺伝
子を含むDNA断片が、乳酸桿菌ラクトバチルス・ブルガ
リカス SBT0034の染色体DNA由来であることを確認する
ために、サザーンブロットハイブリダイゼーションを行
つた。
DNAのメンブレンへの移行は常法によつた。プローブ
は、ビオチン−dUTP(BRL)を、また、ハイブリダイゼ
ーションはブルージーンキット(BRL)を用い、実験方
法はキットの説明書に従つた。
上記サザーンブロットハイブリダイゼーションの結
果、プローブはpBG1のSal1 I切断物、pBG1のSal I−Pst
I切断物のpBG1に組み込まれたDNA切断部分と、乳酸桿
菌ラクトバチルス・ブルガリカス SBT0034株の染色体DN
Aの制限酵素Sal Iによる切断物におけるpBG1に組み込ま
れたDNA断片と同じ大きさのDNA部分とにハイブリダイズ
したが、宿主菌である大腸菌JM105株(2)およびβ−
ガラクトシダーゼ活性をもつている大腸菌HB101株
(1)の染色体DNAとはハイブリダイズしなかつた。
以上のことから、pBG1に組み込まれたβ−ガラクトシ
ダーゼ産生遺伝子を含むDNA断片が、乳酸桿菌ラクトバ
チルス・ブルガリカス SBT0034株の染色体DNA由来であ
ることが明らかとなつた。
8)β−ガラクトシダーゼ活性染色: pBG1を保持する大腸菌JM105株が産生するβ−ガラク
トシダーゼが、乳酸桿菌ラクトバチルス・ブルガリカス
SBT0034株の産生するβ−ガラクトシダーゼと一致する
ことを、活性染色によつて確認した。
大腸菌JM105株(pBG1を保持)、大腸菌JM105株(ベク
ターDNApBR329のみを保持)、大腸菌HB101株および乳酸
桿菌ラクトバチルス・ブルガリカス SBT0034株を培養集
菌し、それぞれ10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に懸
濁した。これを超音波破砕機にかけて、菌体内抽出物を
回収し、濃縮して、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動
を行つた。泳動後のゲルをX−Gal溶液に浸漬し、活性
染色を行つた。
その結果、β−ガラクトシダーゼ活性は、1、3およ
び4には検出されたが、ベクターDNApBR329のみを保持
する大腸菌JM105株には、活性は検出されなかつた。
また、pBG1を保持する大腸菌JM105株のβ−ガラクト
シダーゼ活性は、乳酸桿菌ラクトバチルス・ブルガリカ
ス SBT0034株の活性と同じ泳動値て検出され、また、大
腸菌HB101株の活性とは異なる泳動値で検出された。
以上のことから、pBG1を保持する大腸菌JM105株が産
生するβ−ガラクトシダーゼは、乳酸桿菌ラクトバチル
ス・ブルガリカス SBT0034株の産生するβ−ガラクトシ
ダーゼと一致することが確認された。
従つて、本結果と、上記7)項の結果を総合すると、
pBG1に組み込まれたβ−ガラクトシダーゼ産生遺伝子を
含むDNA断片は、乳酸桿菌ラクトバチルス・ブルガリカ
ス SBT0034の染色体DNAに由来するものであり、また、
この遺伝子が産生するβ−ガラクトシダーゼは、乳酸桿
菌ラクトバチルス・ブルガリカス SBT0034株が産生して
いるβ−ガラクトシダーゼに一致すると結論づけられ
る。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明によるβ−ガラクトシダーゼ産生遺伝子
を含むDNA断片を組込んだプラスミドの制限酵素地図を
示したものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12N 9/38 C12R 1:19) (56)参考文献 Kor.J.Appl.Microb iol.Bioeng.,Vol.14, No.1(1986),P.75−84 FEMS Microbiology Letters,Vol.44,No. 2(1987),P.173−177

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobac
    illus bulgaricus)由来のβ−ガラクトシダーゼ産生
    遺伝子を含むDNA断片。
  2. 【請求項2】ラクトバチルス・ブルガリカスの染色体を
    制限酵素Sal Iで切断することによって得られ、β−ガ
    ラクトシダーゼ産生遺伝子を含むDNA断片。
  3. 【請求項3】ラクバチルス・ブルガリカスが、ラクトバ
    チルス・ブルガリカスSBT0034(微工研菌寄第10081号)
    である請求項1又は2記載のDNA断片。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれかに記載のDNA断片
    をベクターに組み込んだβ−ガラクトシダーゼ産生能を
    有するプラスミド。
  5. 【請求項5】ベクターが大腸菌のプラスミドpBR329であ
    る請求項4記載のプラスミド。
  6. 【請求項6】下記の制限酵素地図で示され、βガラクト
    シダーゼ発現能を有する約8.3kbのプラスミドpBG1。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
FEMS Microbiology Letters,Vol.44,No.2(1987),P.173−177
Kor.J.Appl.Microbiol.Bioeng.,Vol.14,No.1(1986),P.75−84

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