JP2900923B2 - 磁気ヘッドスライダおよびその製造方法 - Google Patents

磁気ヘッドスライダおよびその製造方法

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JP2900923B2 JP27894897A JP27894897A JP2900923B2 JP 2900923 B2 JP2900923 B2 JP 2900923B2 JP 27894897 A JP27894897 A JP 27894897A JP 27894897 A JP27894897 A JP 27894897A JP 2900923 B2 JP2900923 B2 JP 2900923B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録再生装置
に装備される磁気ヘッドとその製造方法に係り、特に、
スライダの記録媒体と対向する面に設ける保護膜の特性
向上を図った磁気ヘッドとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】浮上型磁気ヘッドを備えた磁気記録装置
は、コンピューターの外部記憶装置として広く用いられ
ている。この種の磁気記録装置では、停止時には磁気ヘ
ッドを搭載したスライダと記録媒体は接触しており、記
録媒体が回転すると回転によって生じる空気流によって
スライダは記録媒体と微小な間隔を保って浮上する。
【0003】このような浮上型磁気ヘッド装置では、装
置の起動時と停止時にスライダと記録媒体は摺動する。
また、スライダが浮上中であっても、偶発的にスライダ
が記録媒体表面と接触することがある。このようなスラ
イダと記録媒体の摺動や接触は両者の表面に磨耗や損傷
を与え、装置の信頼性や寿命の低下や、更には突発的な
故障の原因となる。
【0004】これらを防止あるいは低減するために、記
録媒体表面には、数10ナノメータ〔nm〕のカーボン
から成る保護膜および数ナノメータ〔nm〕の厚さの潤
滑層が設けられている。
【0005】近年、磁気記録装置の高密度記録化および
高速化はめざましい勢いで進んでおり、このため、磁気
ヘッドの浮上量はすでに50〔nm〕以下になり、ディ
スク回転数も7,200〔rpm〕になるなど、摩擦,
摩耗に対する環境はますます厳しい状況になりつつあ
る。そこで、昨今にあっては、摩擦・磨耗特性を改善す
るために、従来は記録媒体表面にのみに設けていた保護
膜を磁気ヘッドスライダの表面にも設けるようになって
いる。
【0006】この磁気ヘッドスライダの保護膜として
は、記録媒体の保護膜と同様に自己潤滑性を有し、硬度
が高い硬質非晶質炭素膜が用いられており、その厚さは
10〔nm〕程度が実用化されている。
【0007】しかしながら、硬質非晶質炭素膜は、内部
応力が高く、また、スライダ表面との密着性が弱いため
に、外力によって剥離しやすい問題がある。そこで従来
は、図9に示すように、スライダ基体101と硬質非晶
質炭素膜103の間に中間層102を設け、スライダと
の密着性を向上させている。
【0008】かかる中間層102としては、例えば、特
開平6−12615号公報では、Si,Cr,Ti,Z
r,Ta,Hf,およびNiCrから選ばれた元素を、
特開平8−45022号公報では、Si,Zr,Ti,
Ru,Ge,およびこれらの酸化物,窒化物,炭化物か
らなる物質が用いられている。又、特開平6−1261
5号公報では、スライダ表面をエッチングクリーニング
した後に中間層102を形成するようにし、これによっ
てスライダ基体101と中間層102の密着性を向上さ
せている。
【0009】更に、特開平8−153379号公報で
は、スライダ表面を水素あるいは不活性ガスでエッチン
グした後に中間層102を形成し、又この中間層102
の表面を不活性ガスによってエッチングした後に硬質炭
素膜103を形成することで、スライダ基体101と中
間層102,および中間層102と硬質炭素膜103の
密着性を向上させている。
【0010】又、最近では、高記録密度化に対応して、
読み出しヘッドに磁気抵抗効果素子(いわゆるMR素
子)が用いられるようになっている。この磁気抵抗効果
素子(MR素子)は、磁場の強さによって素子の抵抗が
変化することを利用しており、素子中には常に電流が流
れている。このため、磁気ヘッドと記録媒体間には電位
差が生じており、浮上量が小さくなりヘッドと媒体の距
離が近くなるとヘッドと媒体の間にアーク放電が生ずる
という不都合が生じていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、磁気
ヘッドスライダ上に保護膜を設ける技術は、摩擦・摩耗
特性に関しては効果があるが、保護膜を設けることによ
り磁気ヘッドと記録媒体の距離,即ち磁気分離長を増大
させるという不都合がある。一方、磁気記録装置の記録
密度を向上させるためには磁気分離長を短くすることが
重要であり、そのため磁気ヘッドスライダ上の保護膜
は、摩擦・摩耗特性が損なわれない範囲で、可能な限り
厚さの薄いものであることが要求される。例えば、1平
方インチあたりの記録密度が10ギガビットを越える高
密度磁気記録装置では、磁気ヘッドスライダ表面に形成
する保護膜の厚さとして3〔nm〕程度が要求されてい
る。
【0012】そのため、従来のような密着性を確保する
ための中間層と硬質非晶質炭素膜によって構成されてい
る保護膜では、中間層の厚さ分だけ磁気分離長が大きく
なることが問題となるが、スライダ材料と硬質非晶質炭
素膜との密着性を損なわないためには、中間層の薄膜化
には限界がある。例えば、特開平6−12615号公報
記載の技術では、中間層の厚さは1〔nm〕以上、特開
平8−45022号公報記載の技術では、0.5〔n
m〕以上であることが必要とされている。
【0013】しかしながら、このように中間層を用いた
場合、高密度磁気記憶装置で必要とされる3〔nm〕以
下の厚さの保護膜では、中間層が保護膜全体の厚さに対
して占める割合が大きくなるため、良好な摩擦・摩耗特
性に必要な硬質非晶質炭素膜の膜厚が薄くなり、十分な
保護膜特性が得られないという不都合があった。
【0014】これに対して、スライダ表面に保護膜を形
成せずに摺動性を向上させる技術として、特開平7−1
29943号公報では、スライダ表面にイオン注入処理
を施すことでスライダ表面を改質し、スライダ表面の面
荒さを4.5〔nm〕以上に制御している。
【0015】しかしながら、この特開平7−12994
3号公報記載の技術では、スライダ表面に保護膜を形成
しないため磁気分離長を増加させることはないが、MR
素子を搭載した磁気ヘッドにあっては、媒体とスライダ
とを近づけた場合に磁気ヘッドと媒体の間で放電が生じ
易いという不都合が生じている。
【0016】また、特開平7−129943号公報に
は、保護膜を形成した後にイオン注入処理を行い、保護
膜を含んだスライダ表面を改質して表面荒さを制御する
技術も記載されている。
【0017】しかしながら、この特開平7−12994
3号公報記載の技術では、イオンを注入して表面荒さを
制御する際に保護膜がエッチングされるので、高密度磁
気記録装置の磁気ヘッドスライダに要求されような極め
て薄い保護膜に適用することはできない。更に、スライ
ダだけでなく保護膜をも改質するため、保護膜自体の特
性が変化する問題もある。
【0018】
【発明の目的】本発明は、かかる従来例の有する不都合
を改善し、特に、硬質非晶質炭素膜などによる極めて薄
い保護膜を、磁気ヘッドスライダの表面に中間層を設け
ることなく密着性よく形成すると共に、これによって、
高密度磁気記録装置に要求される摩擦・磨耗特性および
絶縁性に優れた(極薄化保護膜を有する)スライダを提
供することを、その目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気ヘッドスラ
イダは、磁気ヘッドを搭載するスライダの本体、即ちス
ライダ基体の空気浮上面に保護膜を有し、且つスライダ
基体の保護膜と接する面が非晶質化されていることを特
徴とする。
【0020】ここで、スライダ基体を構成する材料の具
体例としては、Al2O3−TiC(AlTiC)が挙
げられる。AlTiC製のスライダでは、スライダ基体
の前記非晶質化された深さが、1〔nm〕以上10〔n
m〕以下であることが好ましい。更に、前述した保護膜
の例としては、硬質非晶質炭素膜が挙げられる。
【0021】又、硬質非晶質炭素は、抵抗率が10
12〔Ω・cm〕以上、絶縁耐圧も1〔MV/cm〕以上と
大きく、アーク放電防止に有効である。そして、この高
抵抗の物質を保護膜として用いると、摩擦・磨耗特性の
向上だけでなく、MR素子表面の絶縁性を高めるこがで
き、従って、このMR素子の場合にも、前述した従来例
に比較してより有効にアーク放電を抑制することができ
る。
【0022】更に、本発明による磁気ヘッドスライダ
は、スライダ基体の空気浮上面の保護膜と接する面が非
晶質化されている。スライダ基体の結晶構造が壊れて非
晶質になる際には、結晶構造を形成している原子同士の
化学結合が切断される。そのため、結晶状態と非晶質化
した状態では、スライダ基体の表面における構成元素の
化学状態が異なる。図3(A)、図3(B)は、それぞ
れ、表面を非晶質化したAlTiC製スライダ基体の表
面(図3(A)の場合)と、結晶状態のままのAlTi
C製スライダ基体の表面(図3(B)の場合)とについ
て、Al(アルミニウム)の2p軌道に存在する電子の
束縛エネルギーのケミカルシフトを、X線光電子分光分
析法で調べた結果である。
【0023】ここで、ケミカルシフトの大きさは、元素
の化学状態を反映する。図3では、スライダ基体中のA
lの状態,即ちAl2O3の状態でのケミカルシフトを
基準にして、相対的なケミカルシフトの変化を示してい
る。結晶状態のスライダの表面を測定した図3(B)で
は、ケミカルシフトの大きさはスライダの内部から表面
まで変化せず、Alの化学状態が一定であることを示し
ている。一方、スライダ表面を非晶質化した図3(A)
では、ケミカルシフトがスライダ表面の近傍で変化し、
Alの化学状態がスライダ内部とは異なっていることを
示している。
【0024】これにより、表面を非晶質化したスライダ
基体の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結
果、ケミカルシフトが変化している深さは非晶質化して
いる深さと一致することが分かった。また、非晶質化に
よる化学状態の変化はAlだけでなく、AlTiCスラ
イダを形成しているTi(チタン),C(炭素),O
(酸素)でも確認された。
【0025】このように、スライダの表面の化学状態
は、結晶状態から非晶質になることによって変化するこ
とを確認することができた。その結果、非晶質化するこ
とによってスライダ表面の化学反応性が高くなり、スラ
イダの上に形成された保護膜と化学結合を形成し易くな
る。
【0026】従って、中間層を設けることなく保護膜と
スライダの高い密着性を得ることができ、硬質非晶質炭
素膜をスライダ基体の空気浮上面に中間層を用いること
なく形成することができる。また、本発明では、スライ
ダ基体の表面を化学的に活性化することで保護膜との密
着性を高めているので、スライダ基体や保護膜の材質に
関わらず、密着性を向上させることができる。
【0027】更に、本発明では、磁気ヘッドスライダを
作製するに際して、前述したようにスライダの空気浮上
面を非晶質化した後に保護膜を形成することを、特徴と
するものである。このとき、スライダ基体の空気浮上面
を非晶質化した後、化学的に活性となった表面が汚染さ
れることを防ぐために、非晶質化した空気浮上面を大気
に曝すことなく保護膜を形成することが好ましい。
【0028】空気浮上面を非晶質化する方法としては、
イオンもしくは中性粒子を照射することが挙げられ、こ
のときのイオンもしくは中性粒子のエネルギーは、0.
5〔keV〕以上2〔keV〕以下が好適である。この
場合、照射したイオンもしくは中性粒子がスライダと反
応することを避けるためには、イオンもしくは中性粒子
としてはアルゴンや窒素などの不活性元素を用いること
が好ましい。
【0029】また、前述した保護膜の形成方法として
は、化学的気相成長法,スパッタ法,イオンビーム法,
蒸着法を用いることが好ましい。
【0030】スライダの表面を改質する技術としては、
特開平7−129943号公報に、スライダ上に保護膜
を形成した後にイオン注入処理を行い、保護膜とスライ
ダを改質して表面荒さを制御する技術が記載されてい
る。この技術では、注入されたイオンが保護膜やスライ
ダ基体の原子と衝突することによる原子衝突拡散が生
じ、保護膜とスライダ基体の界面で原子衝突拡散によっ
て密着性が向上することが予想される。
【0031】しかしながら、保護膜形成後にイオンを注
入するので保護膜のエッチングが避けられず、保護膜が
薄い場合には適用できない。また、注入されたイオンが
保護膜の原子と衝突しながら通過するため、保護膜の特
性が変化してしまう問題がある。さらに、スライダと保
護膜の界面での原子の拡散距離を制御することが困難で
あり、保護膜中に拡散したスライダを構成する原子によ
る保護膜の特性変化を制御することが困難となる。
【0032】本発明では、スライダ本体の空気浮上面を
非晶質化した後に、その非晶質化した空気浮上面に保護
膜を形成するので、前記の特開平7−129943号公
報のような問題は原理的に生じない。従って、保護膜が
薄い場合にも、保護膜を特性を損なうことなく、正確な
厚さで形成することができ、また、保護膜を形成する前
にスライダ基体を非晶質化するため、保護膜とスライダ
基体の接合界面状態を制御することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態につ
いて図面を参照して説明する。
【0034】図1は本発明の実施の形態による磁気ヘッ
ドスライダの模式図である。磁気ヘッドスライダ1は、
AlTiC等からなるスライダ基体2と、このスライダ
基体2の一端に装備された磁気ヘッド素子3とを備えて
いる。また、スライダ基体2の空気浮上面4(図1の上
面)における磁気ヘッド素子3側の反対側(空気流入
側)には、テーパー面5が設けられている。これによ
り、記録媒体の回転に伴う空気の流れを受けつつ磁気ヘ
ッドスライダ1を浮上させることが可能となる。
【0035】図1では空気浮上面4は左右二本のレール
状に加工されているが、このレールの本数や形状など
は、図1に示したものに限定されるものではない。図2
は磁気ヘッドスライダ1の空気浮上面4の表面近傍を模
式的に表した部分断面図である。スライダ基体2の表面
側には、結晶構造が壊れて非晶質となった非晶質化層2
Aが形成され、その上に保護膜8が形成されている。そ
して、この保護膜8の外面が、前述した空気浮上面4を
構成している。
【0036】非晶質化層2Aは、保護膜8を成膜する前
に、真空容器内でイオンや中性粒子を照射することで形
成される。イオンの照射の方法としては、真空槽内でス
ライダ基体2の表面へイオンガンでイオンを照射する方
法や、平行平板型電極を用いた高周波プラズマ装置の陽
極側にスライダ基体2を固定してプラズマを発生させ、
生じたイオンをスライダ基体2の表面に照射する、など
の方法がある。
【0037】スライダ基体2に照射するイオンのエネル
ギーは、イオンガンの加速電圧、あるいはプラズマを発
生させるときの電極への投入電力、スライダ基体2のバ
イアス電位などを考慮して設定制御される。また、加速
したイオンを中性化することで、中性粒子として照射す
ることも可能である。中性粒子を用いるとスライダ基体
2のチャージアップを防止することができる。
【0038】イオンもしく中性粒子の照射によるスライ
ダ基体2の表面の非晶質化は、イオンもしくは中性粒子
がスライダ表面に衝突して、その運動エネルギーによっ
て結晶を構成している原子間の化学結合を切断すること
によって生じる。このとき、非晶質化は照射されるイオ
ンまたは中性粒子の運動エネルギーに依存し、元素の種
類には依らない。そのため、任意の元素のイオンまたは
中性粒子を用いることができる。特に、不活性元素を用
いると照射したイオンまたは中性粒子がスライダ基体を
構成する原子と化学反応することを避けることができ
る。不活性元素の具体例としては、アルゴンや窒素が挙
げられる。
【0039】イオン又は中性粒子をスライダ基体2に照
射したとき、スライダ基体2の表面で生じる現象は、照
射したイオン又は中性粒子のエネルギーによって異な
る。例えば、エネルギーが低い場合には、スライダ基体
2の表面の汚染物質が除去されるだけで、非晶質化はほ
とんど生じない。これは特開平8−153379号公報
に記載されているように、スパッタ成膜でごく一般的に
行われているスパッタクリーニングである。
【0040】照射するイオンや中性粒子のエネルギーが
スパッタクリーニングに用いられるエネルギーよりも高
くなると、スライダ基体2の表面が非晶質化して非晶質
化層2Aが形成され、スライダ基体2の表面の化学状態
が変化して化学的に活性となる。照射するイオンや中性
粒子のエネルギーが高くなるのに従い、スライダ基体2
の表面は深くまで非晶質化するようになる。
【0041】しかしながら、エネルギーが更に高くなる
と、スライダ基体2の表面の原子がスパッタされるよう
になり、スライダ基体2の表面が削れて後退していく。
そのため、照射するイオンや中性粒子のエネルギー増加
に伴う非晶質化層2Aの厚さの増加は飽和するようにな
る。さらに、表面原子のスパッタによりスライダ基体2
の表面平坦性の低下や、表面近傍の原子密度の低下によ
る脆化が生じて、保護膜8を形成した場合にも十分な耐
摩擦磨耗性を得ることができなくなる。
【0042】このような理由により、スライダ基体2の
表面に照射するイオンあるいは中性粒子のエネルギーに
は好適な範囲があり、具体的には、スライダ基体2に照
射するイオンまたは中性粒子のエネルギーは、0.5
〔keV〕以上2〔keV〕以下が好ましい。
【0043】保護膜8の形成前に非晶質化層2Aを大気
に曝すと、大気中の水や有機物などが非晶質化した表面
に吸着して非晶質化層2Aの表面の自由エネルギーが低
下し、保護膜8との反応性が低くなる。そのため、保護
膜8の形成は、非晶質化層2Aを大気に曝さずに行うこ
とが好ましい。
【0044】非晶質化層2Aを大気に曝すことなく保護
膜8を形成することは、非晶質化層2Aを形成する装置
と保護膜8を形成する装置を、真空雰囲気下での搬送機
構で接続することや、一つの真空槽内に非晶質化層2A
と保護膜8を形成する機構の両方を設けることで行う。
また、保護膜8の形成に平行平板型の高周波プラズマ装
置を用いる場合には、アルゴンや窒素のプラズマを発生
させてスライダ基体2の表面に非晶質化層2Aを形成
し、次に、保護膜8の原料ガスを導入することで、非晶
質化層2Aを大気に曝すことなく保護膜8を形成するこ
とができる。
【0045】保護膜8は、スパッタ法、CVD法、イオ
ンビーム法、レーザー蒸着法などで形成される。保護膜
8の例としては、硬質非晶質炭素膜が用いられる。硬質
非晶質炭素膜は、炭素を主成分とした非晶質の膜で、ラ
マン分光法により1500〜1600cm-1付近と14
00cm-1付近に幅広いラマンバンドが見られ、ビッカ
ース硬度が1000以上の高い硬度を有している。成膜
方法や原料によっては水素を含有し、さらに窒素やケイ
素などが添加される場合もある。
【0046】スライダ基体2に非晶質化層2Aを形成す
る方法としては、イオンや中性粒子の照射の他に、スラ
イダ基体2を機械的に摩擦する方法もある。この方法で
は、非晶質化層2Aの形成後の大気との接触を避けるた
めに、スライダ基体2を摩擦するための機構を真空装置
内に設置し、摩擦するときの荷重や速度、磨耗粉の発生
などに注意しながら、スライダ基体2を摩擦する。
【0047】ここでは、既に所定の形状に加工されたス
ライダ基体2に、非晶質化層2Aおよび保護膜8を形成
したが、スライダ形状に加工する前の基板の上に非晶質
化層2Aと保護膜8を形成し、その後に、この基板を所
定のスライダ形状に加工してもよい。ただし、保護膜8
の形成後に、保護膜8に損傷を与えるような研磨加工な
どを行うことはできないため、前述の方法の方が好まし
いといえる。
【0048】
【実施例】上記実施形態を、実験例に基づいて更に具体
的に説明する。ここで、本実施例では、スライダ基体2
の材質としてAlTiCを用いた。
【0049】図1乃至図2において、非晶質化層2Aの
形成は、直径8インチの平行平板型電極を用いた高周波
プラズマ装置により、アルゴンガスを用いて行った。こ
のとき、スライダ基体2を一方の電極の表面に固定し、
この電極に周波数13.56〔MHz〕、出力300
〔W〕の高周波を印加して、アルゴンプラズマを発生さ
せた。アルゴンの圧力は10〔mTorr〕とした。
【0050】スライダ表面に入射するアルゴンイオンの
エネルギーは、スライダ基体2の表面電位を自己バイア
スと基板ホルダーに接続した直流高圧電源によって変化
させることで制御した。形成した非晶質化層2Aの厚さ
は透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察で測定し
た。
【0051】保護膜8の耐久性の試験は、記録媒体の起
動と回転、停止動作を繰り返すコンタクト・スタート・
ストップ試験(以下、「CSS試験」と記す)、記録媒
体を回転させた状態でスライダを記録媒体の内周と外周
を繰り返し往復させるシーク試験、雰囲気を減圧するこ
とでスライダが浮上しないようにして記録媒体と接触さ
せ、その状態で記録媒体を回転させる減圧高速摺動試験
の三種類の方法によって行った。
【0052】このCSS試験では、スライダの記録媒体
に対する摩擦特性を知ることができる。CSS動作を5
万回行った後、記録媒体表面を光学顕微鏡で観察して損
傷の有無を調べた。ここで、シーク試験および減圧高速
摺動試験は、スライダ保護膜の耐磨耗性を評価する手法
である。シーク試験では、シーク動作50万回後のスラ
イダ保護膜の損傷を光学顕微鏡で観察した。
【0053】減圧高速摺動試験では、スライダと記録媒
体が摺動することによって放出されるアコースティック
・エミッション(微小振動)の強度をモニターし、スラ
イダ保護膜が磨滅や剥離のために失われると生じるアコ
ースティック・エミッションの急激な増加までの時間
を、減圧高速摺動寿命とした。まず、保護膜8として硬
質非晶質炭素膜を用いた実施例について説明する。硬質
非晶質炭素膜は、非晶質化層2Aの形成と同一の装置を
用いて、メタンと水素の混合ガスを原料とした高周波プ
ラズマCVD法によって、硬質非晶質炭素膜を形成し
た。
【0054】実験例〜は、アルゴンのエネルギーを
0.5 ,1.0 ,1.5 ,2.0〔keV〕とし
て非晶質化層2Aを形成し、保護膜8として厚さ2〔n
m〕の硬質非晶質炭素膜を形成した。実験例〜は、
アルゴンのエネルギーを1〔keV〕として非晶質化層
2Aを形成し、保護膜8としてそれぞれ厚さ1.3〔n
m〕の硬質非晶質炭素膜を形成した。
【0055】比較例〜は、アルゴンのエネルギーを
0.0 ,0.3 ,2.5〔keV〕として非晶質化
層2Aを形成し、保護膜8として厚さ2〔nm〕の硬質
非晶質炭素膜を形成した。比較例〜は、は、アルゴ
ンイオンのエネルギーを1〔keV〕として非晶質化層
2Aを形成し、保護膜8としてそれぞれ厚さ0.0 ,
0.5〔nm〕の硬質非晶質炭素膜を形成した。
【0056】図4は、実験例〜と比較例〜にお
ける、アルゴンイオンのスライダ基体2の表面への入射
エネルギーと形成された非晶質化層2Aの厚さ、および
保護膜8として形成した硬質非晶質炭素膜の厚さをまと
めた図表を示す。
【0057】又図5は、前述した図4の図表における実
験例〜と,比較例〜のアルゴンイオンのエネル
ギーと,形成された非晶質化層2Aの厚さの関係をグラ
フにしたものである。アルゴンイオンのエネルギーが
0.5〔keV〕のとき厚さ1〔nm〕の非晶質化層2
Aが形成され、その後、アルゴンのエネルギーの増加と
共に非晶質化層2Aの厚さは増加し、2〔keV〕のと
きの10〔nm〕を越えると飽和し始める。即ち、アル
ゴンのエネルギーが、0.5〔keV〕未満の比較例
,では、スライダ基体2の非晶質化はほとんど生じ
ず、2〔keV〕を越える比較例ではスライダ基体2
の表面でスパッタ現象が生じている。
【0058】図6は、実験例〜、比較例1〜の耐
久性試験の結果をまとめた図表である。入射エネルギー
を0.5〜2〔keV〕としてアルゴンイオンを照射す
ると厚さが1〔nm〕〜10〔nm〕の非晶質化層2A
が形成され、硬質非晶質炭素膜を保護膜8として用いた
スライダの耐磨耗性と、記録媒体との摩擦特性が向上し
ている。
【0059】ここで、比較例,では、CSS試験、
シーク試験後のスライダ基体2の表面は、保護膜8とし
て形成した硬質非晶質炭素膜が失われていた。これは、
密着力が弱いために媒体との摩擦で保護膜8が剥離した
ためである。また、比較例では、シーク試験後のスラ
イダ基体2の表面に硬質非晶質炭素膜が残っていたが、
筋状の傷が見られた。この筋状の傷は硬質非晶質炭素膜
だけでなく、スライダ基体2にまで達していた。これ
は、アルゴンの照射エネルギーが高いために、スライダ
基体2の表面の原子がスパッタされてスライダ基体2表
面の原子密度が低くなり、硬度が低下して脆くなったた
め、摩擦によってスライダ基体2自体が損傷したためで
ある。
【0060】図7は、実験例,と比較例,の耐
久性試験の結果をまとめた図表である。硬質非晶質炭素
膜の厚さが1〔nm〕以上のとき、優れた耐磨耗性と摩
擦特性を示し、硬質非晶質炭素膜の厚さとしては1〔n
m〕以上が好ましいことが分かる。尚、保護膜8が厚く
なると、磁気記録装置の記録媒体と磁気ヘッドの磁気分
離長が長くなり、高密度磁気記録には不適である。具体
的には、1平方インチあたり10ギガビットを越える記
録密度のためには、保護膜8の厚さは3〔nm〕以下に
することが好ましい。
【0061】次に、保護膜8として窒化ホウ素と窒化ア
ルミニウムを用いた実施例について説明する。
【0062】実験例と実験例は、それぞれAlTi
C製スライダ基体2の表面にアルゴンイオンを1.5
〔keV〕のエネルギーで照射して厚さ7〔nm〕の非
晶質化層2Aを形成した後に、保護膜8として窒化ホウ
素と窒化アルミニウムをスパッタ法で3〔nm〕の厚さ
に形成した。一方、比較例と比較例は、それぞれA
lTiC製スライダ基体2の表面に非晶質化層2Aを形
成せずに、保護膜8として窒化ホウ素と窒化アルミニウ
ムをスパッタ法で3〔nm〕の厚さに形成した。
【0063】図8に、実験例と実験例、比較例と
比較例のシーク試験と減圧摺動試験の結果を示す。実
験例と実験例は、優れた耐摺動特性を示している。
一方、比較例と比較例をシーク試験後に観察する
と、保護膜8が剥離して失われていた。このように、保
護膜8として窒化ホウ素や窒化アルミニウムを用いた場
合にも、非晶質化層2Aを形成することで保護膜8の密
着性が向上する。
【0064】又、保護膜8として,ケイ素,酸化ケイ
素,窒化ケイ素を用いた場合にも、非晶質化層2Aを形
成することで、保護膜8の密着性が向上するという効果
を得ることができた。
【0065】以上で説明した実施例では、スライダ基体
2の材質としてAlTiCを用いたが、スライダ基体2
にMnZn、NiZn、CaTiO3を用いた場合に
も、アルゴンを0.5〔keV〕以上2〔keV〕以下
のエネルギーで照射して非晶質化層2Aを形成すること
で、スライダ基体2と保護膜8の密着性が向上した。こ
のとき、いずれの材質のスライダの場合にも、飽和した
ときの非晶質化層2Aの厚さは材質によって異なるもの
の、AlTiC製スライダと同様に、照射したアルゴン
イオンのエネルギーが0.5〔keV〕未満では、非晶
質化層2Aはほとんど形成されず、2〔keV〕を越え
ると、非晶質化層2Aの厚さの増加は飽和した。
【0066】また、実験例では、スライダ基体2に照射
するイオンとしてアルゴンを用いたが、窒素を用いた場
合にもアルゴンを用いた場合と同じ深さの非晶質化層2
Aが形成され、保護膜8の密着性もアルゴンを用いた場
合と同様に向上した。
【0067】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
スライダの表面を非晶質化することでスライダ表面の化
学反応性を高くし、スライダや保護膜の材質にかかわら
ずスライダ表面と保護膜との密着性を向上させることが
できる。そのため、密着性を得るための中間層を設ける
必要がなくなり、従って中間層を設けることなく保護膜
をスライダ表面に形成することができ、これがため、高
密度磁気記録装置に必要とされる極薄化された絶縁性の
高い保護膜を備えると共にこれによって性能向上が図ら
れた磁気ヘッドスライダおよびその製造方法を提供する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である磁気ヘッドスライダ
を例を示す斜視図である。
【図2】図1内に開示した磁気ヘッドスライダの要部を
成すスライダ基体の表面近傍の状態を模式的に示す断面
図である。
【図3】図3(A)は、AlTiC製スライダ基体の表
面を非晶質化した場合における当該スライダ基体に含ま
れるAlの化学状態の深さ方向変化をX線光電子分光分
析法で調べた結果を示す線図である。図3(B)はAl
TiC製のスライダ基体の表面が結晶状態の場合の当該
スライダ基体に含まれるAlの化学状態の深さ方向変化
をX線光電子分光分析法で調べた結果を示す線図であ
る。
【図4】実験例〜と比較例〜におけるアルゴン
イオンのスライダ基体の表面への入射エネルギー,形成
された非晶質化層2Aの厚さ,および保護膜として形成
した硬質非晶質炭素膜の厚さとの関係を示す図表であ
る。
【図5】図4の図表に基づいて形成したもので、AlT
iCスライダにアルゴンを照射したときのアルゴンのエ
ネルギーとスライダ表面が非晶質化する深さとの関係を
示す図である。
【図6】耐久性試験を実験例〜および比較例1〜
について行った結果を示す図表である。
【図7】耐久性試験を実験例〜および比較例1〜
について行った結果を示す図表である。
【図8】シーク試験と減圧摺動試験とを、実験例と実
験例,比較例と比較例について行った結果を示す
図表である。
【図9】従来技術による磁気ヘッドスライダの表面近傍
の様子を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 磁気ヘッドスライダ 2 スライダ基体 2A スライダ基体の非晶質化層 3 磁気ヘッド素子 4 空気浮上面 8 保護膜
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−6340(JP,A) 特開 平6−12615(JP,A) 特開 平9−245332(JP,A) 特開 平8−45022(JP,A) 特開 平8−153379(JP,A) 特開 平7−129943(JP,A) 特開 平6−36210(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G11B 5/60 G11B 21/21 101

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スライダ基体の空気浮上面上に保護膜を
    備えて成る磁気ヘッドスライダにおいて、 前記スライダ基体の前記保護膜と接する面を非晶質化し
    たことを特徴とする磁気ヘッドスライダ。
  2. 【請求項2】 前記スライダ基体を、Al2O3−Ti
    Cにより形成したことを特徴とする請求項1記載の磁気
    ヘッドスライダ。
  3. 【請求項3】 前記非晶質化された層の深さが1〔n
    m〕以上10〔nm〕以下であることを特徴とする請求
    項1又は2記載の磁気ヘッドスライダ。
  4. 【請求項4】 前記保護膜を、硬質非晶質炭素膜で形成
    したことを特徴とする請求項1,2又は3記載の磁気ヘ
    ッドスライダ。
  5. 【請求項5】 前記保護膜の厚さを、1〔nm〕以上3
    〔nm〕以下としたことを特徴とする請求項4記載の磁
    気ヘッドスライダ。
  6. 【請求項6】 スライダ基体の空気浮上面上に保護膜を
    備えて成る磁気ヘッドスライダにおいて、 前記磁気ヘッドスライダの空気浮上面を非晶質化した後
    に、前記空気浮上面上に保護膜を形成することを特徴と
    した磁気ヘッドスライダの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記保護膜の形成に際しては、前記磁気
    ヘッドスライダの空気浮上面を非晶質化した後に当該空
    気浮上面を大気に曝すことなく前記保護膜を形成するこ
    とを特徴とした請求項6記載の磁気ヘッドスライダの製
    造方法。
  8. 【請求項8】 前記スライダ基体の空気浮上面に、イオ
    ンもしくは中性粒子を照射することにより当該空気浮上
    面を非晶質化することを特徴とした請求項6又は7記載
    の磁気ヘッドスライダの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記空気浮上面を非晶質化に際しては、
    0.5〔keV〕以上2〔keV〕以下のエネルギーの
    イオンもしくは中性粒子を照射することを特徴とした請
    求項8記載の磁気ヘッドスライダの製造方法。
  10. 【請求項10】 前記イオンもしくは中性粒子として不
    活性元素を使用することを特徴とした請求項8又は9記
    載の磁気ヘッドスライダの製造方法。
  11. 【請求項11】 前記不活性元素がアルゴンまたは窒素
    であることを特徴とする請求項10記載の磁気ヘッドス
    ライダの製造方法。
  12. 【請求項12】 前記保護膜を、化学的気相成長法,ス
    パッタ法,イオンビーム法,又は蒸着法のいずれかの方
    法で形成することを特徴とした請求項6,7,8,9,
    10又は11記載の磁気ヘッドスライダの製造方法。
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