JP2957797B2 - 光記録媒体の多重記録方法 - Google Patents

光記録媒体の多重記録方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高密度の情報記録が可能
なフォトクロミック材料を用いたフォトンモードの光記
録媒体に於て、多重記録を行なう方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年書き換え可能な光記録材料としてフ
ォトクロミック材料を応用するための研究が盛んに進め
られている。
【0003】斯かるフォトクロミック材料は所定波長の
光を照射すると光化学反応により分子の構造が変化し、
その分子構造変化に応じて特定の波長の光に対応する吸
光度や、屈折率等の光学的特性変化が生じ、また他の波
長の光や熱を加えることで前記変化した分子構造が元に
戻るという性質を有している。
【0004】従ってフォトクロミック材料を用いた光記
録媒体への情報の記録は、特定波長の光照射による分子
構造の変化によって行なわれ、再生はこれに伴って生じ
る光学的特性変化を検出することにより実行される。
【0005】ところでフォトクロミック材料はその分子
構造の差に応じて夫々吸収スペクトルが異なるが、この
波長の自由度を利用した波長多重記録が特開昭61−2
03450号公報(G03C 1/733)で提案さ
れている。
【0006】上記公報の場合、波長多重記録は光吸収波
長が相異なるフォトクロミック化合物を数種類用いて、
これらを積層または混合して記録媒体を作成し、夫々の
材料に対応した波長の光を照射することによって独立に
記録、再生を行なうものであるが、記録、再生用のある
特定波長におけるフォトクロミック材料の反応の選択性
が不完全であるため、多重化されたチャンネル間でクロ
ストークが発生する恐れがあった。このクロストーク量
が大きいと再生信号の品質が劣化し、例えばデジタルデ
ータの記録、再生時にはエラーレートが増大するという
不都合が生じていた。
【0007】本発明者等は上記従来技術の問題点を解決
すべく、特願平3−291601号に於て前記クロスト
ークには多重化された記録信号の重ね合わせに相当する
線形クロストーク成分のほかに、相互変調による多重化
された記録信号間の積に相当する非線形クロストーク成
分が存在すること、及び斯かる線形、非線形クロストー
ク成分は低減可能であることを示し、その方法を開示し
た。
【0008】しかしながら斯かる方法に於て、そのクロ
ストーク低減の処理によって線形クロストーク成分の低
減については原理的にいくらでも可能であるが、非線形
クロストーク成分については限界があった。
【0009】特に記録用光の出力が不十分な時、あるい
は再生信号のC/Nが低い時に前記非線形クロストーク
成分の存在が大きく影響し、再生信号の信頼性が低くな
るという問題点が生じていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明はフォト
クロミック材料を用いた光記録媒体に情報の多重記録を
行なう際、各信号間に生じるクロストークの線形成分及
び非線形成分を同時に低減し、再生信号の品質、信頼性
を高めることを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】したがって本発明は、吸
収波長が夫々相異なる複数種類のフォトクロミック材料
からなる光記録媒体に対して、前記各種類のフォトクロ
ミック材料の吸収波長に対応する波長の光を出射する複
数個の光源から、記録しようとする多重信号に応じて夫
々独立して強度変調された記録用光を照射する光記録媒
体の多重記録方法において、前記複数個の光源から出射
される記録用光の強度を、前記多重記録された各信号間
に現れるクロストークの非線形成分が最小となる値に設
定することにしたものである。
【0012】
【作用】クロストークの非線形成分の強度は、多重記録
を実行する複数個の光源の出射強度に依存し、非線形成
分の強度は光源の出射強度の増加に応じて減少し、最小
値を境に増加する特性を持つ。
【0013】一方のクロストークの線形成分の強度は、
光源の出射強度の増加と共に減少する特性を有する。
【0014】これら2つの特性を利用して、光源の出射
強度を非線形成分が最小となる値に設定することによ
り、線形、非線形共に低減されたクロストーク成分が得
られる。
【0015】
【実施例】上述のごとく、波長多重記録におけるクロス
トークの線形成分は原理的には完全に除去できるが、非
線形成分は完全には除去できない。
【0016】一方前記非線形成分の強度は、多重記録を
実行する複数個の光源の媒体に対する照射強度に依存す
る。
【0017】従って記録時にこれら複数個の光源の出射
強度をクロストークの非線形成分が最小となるような値
に設定して記録を行ない、再生時にそれらの多重信号の
検出信号間でクロストーク低減のための演算処理を施せ
ば、クロストークがより低減化された高品質の再生信号
を取り出すことが可能となる。
【0018】以下に斯かる原理を踏まえて本発明の多重
記録方法を実施するための一実施例を挙げ、図面に基づ
いて詳細に説明する。
【0019】まず図1及び図2は本実施例で用いられる
フォトクロミック材料の代表例であるジアリールエテン
系材料2種の分子構造及び吸収スペクトルを示したもの
である。
【0020】図1の材料、すなわち2−(1,2−ジメ
チル−3−インドリル)−3−(2,3,5−トリメチ
ル−3−チエニル)マレイン酸無水物(非対称インドー
ル・チオフェンタイプと略称する)は、図中実線で示さ
れた吸収スペクトルを有する状態Aに於て、波長400
〜490nm付近の光を照射すると、破線で示された吸
収スペクトルを有する状態Bへと変化し、波長500〜
700nm付近の光を照射すると、これと逆の反応によ
って実線で示される状態Aに復帰する特性を持ってい
る。
【0021】この特性を用いれば、非対称インドール・
チオフェンタイプの記録材料に対しては、あらかじめ破
線状態Bにしておいて、これに633nmの波長を有す
るHe−Neレーザーを光源とする光を比較的強いパワ
ーで照射することで記録が実行でき、同じく633nm
のレーザーを光源とする光を比較的弱いパワーで材料に
照射し、その反射率の変化を検出することにより再生を
実行できることになる。
【0022】他方図2の材料、すなわち2,3−ビス
(2−メチルベンゾ[b]チオフェン−3−イル)マレ
イン酸無水物(対称ベンゾチオフェンタイプと略称す
る)は実線で示された吸収スペクトルを有する状態Cに
於て、波長400〜460nm付近の光を照射すると破
線で示された吸収スペクトルを有する状態Dへと変化
し、また状態Dに於て波長500〜600nm付近の光
を照射することによってこれとは逆の反応により実線で
示される状態Cへ復帰するという特性を有する。
【0023】したがってこの特性を用いれば、例えばこ
の対称ベンゾチオフェンタイプの材料に対しては、あら
かじめ破線状態Dにしておき、514.5nmのArレ
ーザーの光源を比較的強いパワーで照射することで記録
が実行でき、同じ514.5nmのレーザーの光源を比
較的低いパワーで材料に照射してその反射率変化を検出
することにより再生が実行できることになる。
【0024】図3は前記図1及び図2に開示した材料を
用いた光記録媒体の構造を示す。同図において101は
ガラス基板、102は記録層、103は反射層である。
【0025】前記材料をポリビニルブチラール樹脂に対
して5wt%で混合し、アノンによって溶解後、厚み寸
法1.2mm、直径120mmφのグルーブレスのガラ
スディスク基板101上にスピンコートし、乾燥して膜
厚約1mmの記録層102を形成したものである。
【0026】次に斯かる光記録媒体を用いた多重記録再
生装置について説明する。
【0027】図4は記録再生光学系を示すブロック図で
あり、1は前記記録媒体、2は対物レンズ系、3、4は
ダイクロイックミラー、5はフォーカス・トラッキング
サーボ用光学系、6は第1の記録再生用ビーム系、7は
第2の記録再生用ビーム系、8はフォーカスサーボ用制
御回路である。
【0028】前記第1の記録再生用ビーム系6及び第2
記録再生用ビーム系7は、第1、第2λ/4板61、7
1、第1、第2偏光ビームスプリッター62、72、第
1第2コリメーターレンズ63、73、第1、第2光フ
ァイバー出射部64、74、第1、第2光ファイバー入
射部65、75、第1、第2AO変調器66、76、第
1、第2NDフィルター67、77を夫々有し、各出射
部64、74〜入射部65、75間は光ファイバ−6
0、70にて結合されている。
【0029】また前記第1記録再生用ビーム系6では光
源として波長633nmのHe−Neレーザー68が用
いられ、第2記録再生用ビーム系7では波長514.5
nmのArレーザー78が用いられている。
【0030】さらに前記フォーカス・トラッキングサー
ボ用光学系5は、第3λ/4板51、第3偏光ビームス
プリッター52、第3コリメーターレンズ53、フォー
カスサーボ用光学系59を有し、光源として波長780
nmの半導体レーザー58が用いられている。
【0031】斯かる光学系に於て、He−Neレーザー
光源68から放射された波長633nmのビームは、N
Dフィルター67によりパワー調整されてAO変調器6
6へ入射する。
【0032】このAO変調器66は、記録時に於て外部
から変調信号周波数f1 で前記レーザー光源68からの
光を強度変調し、再生時に於ては一定パワーでレーザー
光源68からの光を透過させる働きを有する。
【0033】斯かるAO変調器66を通過した光は光フ
ァイバー入射部65により光ファイバー60へと入射
し、出射部64へと伝達される。この出射部64から出
射した光はレンズ63によりコリメートされ、偏光ビー
ムスプリッター62によりS波で入射・反射されて、λ
/4板61で円偏光へと変換される。
【0034】その後、ダイクロイックミラー4及び3で
反射され、対物レンズ系2によりフォトクロミック媒体
1上に集光される。ここでダイクロイイクミラー4は6
33nmの光を反射し、514.5nmの光を透過する
性質を有し、ダイクロイックミラー3は780nmの光
を透過し、700nm以下の光を反射する性質を有して
いる。
【0035】したがってHe−Neレーザー光源68に
よる再生時には媒体1からの反射光が再び対物レンズ系
2及びダイクロイックミラー3、4を通り、λ/4板6
1及び偏光ビームスプリッター62を通過してフォトデ
ィテクター65で検出されるようになっている。
【0036】またArレーザー光源78から出射される
514.5nmの光については、ダイクロイックミラー
4を透過する以外は前記633nmの光の場合と同様に
動作する。そして斯かるArレーザー光源78の光も前
記633nmの光と同一のスポットへと集光される。
【0037】さらに前記フォーカス・トラッキングサー
ボ用光学系5については、本実施例ではグルーブレスの
基板101を使用し、記録直後に再生を行なうという方
法を実施するものとし、特にトラッキングサーボは行な
わないことにした。
【0038】半導体レーザー光源58からの放射光は偏
光ビームスプリッター52、λ/4板51、ダイクロイ
ックミラー3を透過して、対物レンズ2により媒体1へ
と照射され、一方の反射光は再び同じ光路を通って偏光
ビームスプリッター52で反射され、フォーカスサーボ
用光学系59へと入射する。
【0039】そしてこのフォーカスサーボ用光学系59
を介して得られたフォーカスエラー信号により、フォー
カスサーボ用制御回路で対物レンズ系2を駆動してフォ
ーカスサーボが実行されることになる。
【0040】図5は前記フォトディテクタ65、75で
検出された再生信号からクロストークを低減するための
回路ブロック図を示し、601、701はI−V変換
器、602、702はDC除去フィルター、603、7
03、604、704は減算器、800は乗算器であ
る。
【0041】斯かる回路に於て、フォトディテクター6
5、75からの出力電流をI−V変換器601、701
にて電圧信号に変換し、フィルター602、702を通
ってDC成分を除去した後 、これら2つの信号の引算
を減算器603、703を用いて行ない、クロストーク
の線形成分をまず除去する。
【0042】そして次に乗算器800にてクロストーク
線形成分低減後の出力の積すなわち非線形成分を作成
し、こうして作成したクロストークの非線形成分を前記
線形成分が低減された信号から減算器604、704を
用いてさらに引算を行なうことにより、クロストークの
非線形成分の低減を行なうことができる。
【0043】なお、図中(A1)〜(A3)、(B1)
〜(B3)は各部分の出力を示している。
【0044】さて上記の光学系、光記録媒体、再生信号
検出系を用いて媒体1に対する波長多重記録再生の実験
を行なった。このときのディスク回転速度は300rp
m、相対速度は1.4m/sであり、再生時の光源の出
射強度はHe−Neレーザー、Arレーザーともディス
ク面上で0.3mWの一定パワーとして、記録時の出射
強度を種々変化させてその再生信号に含まれるクロスト
ーク成分の強度を測定した。
【0045】なお、記録時の周波数はHe−Neレーザ
ー系で100kHz、Arレーザー系で80kHzと
し、再生出力をスペクトラムアナライザーで解析した結
果を図6に示す。
【0046】図6ではHe−Neレーザー系の再生出力
に於てクロストーク低減処理を行なう前の出力(A1)
について、記録用Arレーザーパワーを一定(5mW)
とし、記録用He−Neレーザーパワーを1〜10mW
で変化させた時のクロストークの線形成分(80kH
z:X印で示す)及び非線形成分(180kHz:Δ印
で示す)を信号成分(100kHz)を基準(0dB)
としてプロットしたものである。
【0047】斯かる図6によれば、記録時にHe−Ne
レーザーの出射強度を増大させていくとクロストークの
線形成分は単調に減少していくことが明らかである。
【0048】一方の非線形成分の場合は出射強度を増大
させていくと5mW付近までは減少するが、ここで最小
値を取り、これを越えると逆に増大する傾向があること
がわかる。
【0049】したがってクロストークの線形成分だけを
低減するのであれば記録時の出射強度を単純に増大させ
れば良いことになるが、この場合クロストーク低減処理
(図5の回路による)によって完全に除去するのが難し
いクロストークの非線形成分が増加するという不都合が
生じる。
【0050】ところで表1はHe−Neレーザーの出射
強度が10mW時の前記(A1)の出力のクロストーク
量及びクロストーク低減処理後の(A3)出力と、He
−Neレーザーの出射強度5mW時の同じく(A1)出
力及び(A3)出力について比較したものである。
【0051】
【表1】
【0052】この表1を見ると記録パワー10mWの時
に比べ、5mWの時はクロストークの両成分ともクロス
トーク低減演算処理により−30dB以下のより低いレ
ベルに低減されているのがわかる。
【0053】このように波長多重記録時には記録パワー
をクロストークの非線形成分が最小となるように設定す
ることによって、クロストーク低減演算処理によりより
小さなクロストーク、すなわちより高品質の再生信号出
力を得ることができる。
【0054】なお、Arレーザー系の再生出力に関して
は、表2に示すように、He−Neレーザーパワーが変
化しても、クロストークの良性分は比較的低いレベルで
あり、クロストーク低減演算処理により−30dB以下
に低減するのは容易であった。
【0055】
【表2】
【0056】また本実施例ではフォトクロミック材料と
してジアリールエテン系2種を使用したが、その他のス
ピロピラン系、フルギド系等の種々の材料を使用した媒
体への記録時にも適用できる。
【0057】更に本発明を実施するための装置として図
4に示した装置以外の種々の変更、例えば光源として短
波長半導体レーザーやSHG素子を使用したもの等を用
いることができ、3波長多重以上の多重記録へも応用が
可能であることは言うまでもない。
【0058】
【発明の効果】本発明は以上の構成のごとくしたもので
あるから、波長多重記録時にクロストークの小さな、高
品質の再生信号出力を得ることができる効果が期待でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ジアリールエテン系材料の分子構造式及び吸収
スペクトルを示す図である。
【図2】他のジアリールエテン系材料の分子構造式及び
吸収スペクトルを示す図である。
【図3】光記録媒体の構造を示す断面図である。
【図4】記録再生用光学系を示すブロック図である。
【図5】再生出力のクロストーク低減回路を示すブロッ
ク図である。
【図6】記録用光源の出射強度とクロストークの線形及
び非線形成分との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1 媒体 2 対物レンズ系 3、4 ダイクロイックミラー 5 フォーカス・トラッキング用光学系 51、61、71 λ/4板 52、62、72 偏光ビームスプリッター 53、63、73 コリメーターレンズ 64、74 光ファイバー出射部 60、70 光ファイバー 65、75 光ファイバー入射部 66、76 AO変調器 67、77 NDフィルター 58、68、78 光源 69、79 フォトディテクター

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 吸収波長が夫々相異なる複数種類のフォ
    トクロミック材料からなる光記録媒体に対して、前記各
    種類のフォトクロミック材料の吸収波長に対応する波長
    の光を出射する複数個の光源から、記録しようとする多
    重信号に応じて夫々独立して強度変調された記録用光を
    照射する光記録媒体の多重記録方法において、前記複数
    個の光源から出射される記録用光の強度を、前記多重記
    録された各信号間に現れるクロストークの非線形成分が
    最小となる値に設定することを特徴とする光記録媒体の
    多重記録方法。
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