JP3068924B2 - 熱線遮断膜 - Google Patents

熱線遮断膜

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JP3068924B2
JP3068924B2 JP03331363A JP33136391A JP3068924B2 JP 3068924 B2 JP3068924 B2 JP 3068924B2 JP 03331363 A JP03331363 A JP 03331363A JP 33136391 A JP33136391 A JP 33136391A JP 3068924 B2 JP3068924 B2 JP 3068924B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は耐久性、特に耐湿性に優
れた熱線遮断膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】基体表面に酸化物膜、Ag膜、酸化物膜
を積層した3層膜、または酸化物膜、Ag膜、酸化物
膜、Ag膜、酸化物膜を順次積層した5層膜等の(2n
+1)層(n≧1)からなる膜は、Low−E膜と呼ば
れる熱線遮断膜であり、Low−E膜を形成したガラス
は、Low−Eガラスと呼ばれている。
【0003】Low−Eガラスは、室内からの熱線を反
射することにより室内の温度低下を防止できる機能ガラ
スであり、暖房負荷を軽減する目的で、複層ガラス化さ
れて、おもに寒冷地で用いられている。また、太陽熱の
熱線遮断効果も有するため、合せガラス化されて、自
動車ガラスにも採用されている。透明でありかつ導電性
を示すため、電磁遮蔽ガラスとしての用途もある。導電
性プリント等からなるバスバー等の通電加熱手段を設け
れば、防曇、防氷用の通電加熱ガラスとして使用でき
る。
【0004】従来のLow−Eガラスは、空気中の湿度
や合わせガラスとする場合の中間膜に含まれる水分によ
り、白色斑点や白濁を生じるため、複層ガラスや合
ガラスとする前の、単板での長期保管やハンドリングに
注意を要していた。
【0005】従来のLow−Eガラス(膜構成:ZnO
/Ag/ZnO/ガラス)の劣化部を詳しく調査したと
ころ、最上層酸化物膜にシワ、ひび、剥離等の破損が
ていることがわかった。また、Agが著しく粒成長し
ていることがわかった。これらのことから、白濁発生の
メカニズムは、最上層酸化物膜が内部応力に耐えきれ
ず、Ag膜との界面から剥離、破損し、次にAgの粒径
が増大し、かかる破損した表面および大きなAg粒子に
より光が散乱されて白濁してみえることを見いだした。
【0006】このため、本発明者は、耐湿性改善策とし
て、酸化物膜の内部応力低減がきわめて効果的であるこ
とを見いだした(特願平3−191063号)。これに
より耐久性はかなり改善されたが、さらに向上させる必
要がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
技術が有していた上記の欠点を解決し、耐久性、特に耐
湿性の優れた熱線遮断膜付きガラスを提供しようとする
ものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述の課題を
解決すべくなされたものであり、基体上に酸化物膜、銀
を主成分とする膜、酸化物膜、と順次積層された少なく
とも(2n+1)層(n≧1)からなる熱線遮断膜にお
いて、熱線遮断膜のX線回折図における立方晶Agの
(111)回折線の積分幅βi (°)が、180λ/
(dπcos θ)≦βi ≦180λ/(dπcos θ)+
0.15、好ましくは180λ/(dπcosθ)≦βi
≦180λ/(dπcos θ)+0.10、最も好ましく
は180λ/(dcos θ)≦βi ≦180λ/(dπco
s θ)+0.05の範囲にあることを特徴とする熱線遮
断膜を提供する。ただし、上式において、d(Å)はA
gを主成分とする膜の膜厚、λ(Å)は測定X線波長、
θはブラッグ角である。
【0009】本発明は、Ag結晶の不完全性を改良し、
Agを安定化させることにより、耐湿性を改善させるも
のである。また、内部応力の低い酸化物膜4と組
せれば、耐湿性をより向上させることができる。
【0010】Agの安定性とLow−E膜の劣化の関係
について以下に詳しく述べる。従来のZnO/Ag/Z
nO/ガラスという膜構成のLow−E膜について耐湿
試験をった。耐湿試験は、50℃、相対湿度95%の
雰囲気中に6日間放置するというものである。耐湿試験
後のLow−E膜には、白色斑点や白濁が生じていた。
耐湿試験前後のLow−E膜をX線回折法で調べた。立
方晶Agの(111)回折線について、回折角2θ(X
線回折ピークの重心位置)、結晶面間隔d111 、積分幅
βi をそれぞれ表1に示す。
【0011】
【表1】
【0012】表1より、Ag(111)回折線は、耐湿
試験後、積分幅βi が大幅に小さくなり、回折ピークが
かなりシャープとなることがわかる。これは、Agの結
晶子径が著しく増大していることをあらわしている。A
gの粒径増大や凝集は耐湿試験後Low−E膜のSEM
(走査型電子顕微鏡)観察によっても確認された。この
ことから、Ag膜は変化しやすく不安定であるといえ
る。
【0013】このようなAgの不安定性のためLow−
E膜が劣化しやすくなるのは、以下の2つの理由による
と考えられる。
【0014】第1に、Agと酸化物界面での膜の剥離が
起きやすくなり、最上層酸化物膜の破損も起きやすくな
る。このようにして酸化物膜が剥離し、破損した部分が
白濁してみえる。(この現象は、当然、酸化物膜の内部
応力が大きいほど顕著である。酸化物膜の内部応力を低
くすれば、劣化を抑えられることは特願平3−1910
63号で詳しく述べた。)
【0015】第2に、酸化物膜破損に加え、前述のAg
の粒径増大、凝集が加わり、白濁の程度が一段と激しく
なる。これもAgの不安定さが原因である。Agが安定
化すると、Agと酸化物との界面での膜の剥離が起き
くくなるため最上層酸化物膜の破損が起きにくくなる、
また最上層酸化物膜の剥離が起きてもAgが著しく粒成
長および凝集しないため白濁の程度が軽くて済む、とい
う効果をもたらす。結果としてLow−E膜の劣化が抑
えられると考えられる。
【0016】以上より、Low−E膜の耐久性改良のた
めには、Agの安定化が不可欠であることがわかる。
【0017】X線回折線の様子からAgの結晶状態につ
いて推察し、Agの安定性との関係について以下に述べ
る。
【0018】シェラーは、一般的な結晶に関し、結晶に
不完全性がなくプロファイルの拡がりが結晶子の大きさ
だけによると仮定し、その大きさが均一であることを前
提として以下の実験式を導いている。 Dhkl =K・180λ/(πβi cos θ) Dhkl :hklに垂直方向の結晶子の大きさ(Å)、
K:定数(=1)、λ:測定X線波長(Å)、βi :積
分幅(°)、θ:ブラッグ角(2θがピーク位置)。
【0019】一般に、スパッタリング(以下、単にスパ
ッタともいう)法で作成したAg膜は、(111)面が
基体に平行に配向しやすい。したがって、通常、Ag
(111)回折線のみが観察される。
【0020】Agが膜厚方向(基体と垂直な方向、以下
同じ)に完全な結晶であれば膜厚方向の結晶子サイズは
膜厚と同じ大きさである。上述のような(111)面配
向膜の場合、結晶子サイズD111 と膜厚は等しくなる。
したがって、膜厚と積分幅は次の式に従う。 d=D111 =180λ/(πβi cos θ)すなわ ち、 βi =180λ/(dπcos θ) (1)
【0021】図2に、Agの膜厚とAg(111)回折
線の積分幅の関係を示す。実線は(1)式をす。各点
は、従来のZnO/Ag/ZnO/ガラスにおける実測
値である。
【0022】Agが膜厚方向に完全な結晶であれば、A
g(111)回折線の積分幅は図2の実線とほぼ一致す
るはずである。しかし、図2より、従来のLow−E膜
の積分幅の実測値は、実線より大きくなっている。
【0023】積分幅が大きくなる主な理由としては、A
g結晶が完全な結晶ではなく、不均一歪、欠陥などの不
完全性を含むことがげられる。これらの結晶性の不完
全性により、Agが不安定となり剥離や粒成長が起き
すくなる。結果として、前述の耐湿劣化が起きやすくな
り、白濁や白色斑点が生じると考えられる。
【0024】本発明では、湿気による白濁を抑えるに
は、Ag結晶の不完全性の低減が有効であることを見出
した。耐湿試験前のLow−E膜の立方晶Ag(11
1)回折線の積分幅βi 、Low−E膜の耐湿試験後の
積分幅の耐湿試験前の積分幅に対する変化率、および耐
湿性の関係を表2に示す。
【0025】最上層ZnO膜とAg膜はすべて同一条件
で作成した。Ag膜の膜厚は100Åであり、最上層Z
nO膜の内部応力は1.2×1010dyn/cm2 であ
る。サンプル4および5は成膜後200300℃の加
熱処理をしたものである。これらのサンプルをX線回
折法で調べたところ、加熱処理前後で、六方晶ZnO
(002)回折線のピーク位置の変化はほとんどなく、
これよりZnO膜の内部応力の変化はほとんどないと思
われる。
【0026】耐湿性は、50℃相対湿度95%の雰囲
気中に6日間放置するという試験を行い評価した。評価
基準は、膜の端部付近に白濁が無く、直径1mm以上の
白色斑点が現れなければ○、膜の端部付近に白濁が無
く、直径1mm〜2mmの白色斑点が現れたものを△、
膜の端部付近に白濁が存在するまたは直径2mm以上の
白色斑点が現れたものを×とした。
【0027】
【表2】
【0028】表2より耐湿性は耐湿試験前のLow−E
膜のAgの(111)回折線の積分幅に依存することが
わかる。すなわち、耐湿試験前のAgの(111)回折
線の積分幅が小さい方が耐湿性が良好であることがわか
る。これは、Ag結晶が完全な結晶に近い(結晶の不完
全性が少ない)方が耐湿試験前後でAg(111)回折
線の変化が少なく安定であることを意味する。
【0029】図3、図4にそれぞれサンプル2、サンプ
ル5のX線回折図における耐湿試験前後のAg(11
1)回折線のプロファイルの変化を示す。なお、図3、
4においては、耐湿試験前後のプロファイルの変化を
わかりやすく示すために、耐湿試験後のプロファイル
は、耐湿試験前のプロファイルに対してずらして示して
ある。また、図3、4は、プロファイルの相対的な変
化を抜き出して示したものであり、強度に関しては、必
ずしも絶対的な値を表すものではない。
【0030】耐湿試験により劣化し白濁した従来のLo
w−E膜と、本発明によるAg結晶の不完全性を低減し
たLow−E膜は、従来の劣化前のLow−E膜と比較
すると、どちらもAg(111)回折線の積分幅が小さ
い。しかし、図3図4からわかるように、X線回折プ
ロファイルに明確な違いが現れる。耐湿試験により劣化
して白濁したものは、図3のようにピークトップがシャ
ープになる。本発明によるAg結晶の不完全性の除去に
よって積分幅が狭くなっている場合は、図4のように、
耐湿試験後もピークの形がほとんど変らずなめらかであ
る。
【0031】また、上述のように、従来のLow−E膜
が劣化した時は、Agの粒径増大やAgの結晶の凝集
が、SEM(走査型電子顕微鏡)により観察でき、本発
明のLoW−E膜とは明確に区別できる。
【0032】通常、Agの膜厚によって膜厚方向の結晶
子サイズが異なるので当然積分幅も異なる。したがっ
て、最適なAg結晶の積分幅の値も、Agの膜厚により
異なってくる。表3にZnO/Ag/ZnO/ガラスと
いう膜構成のLow−E膜における、Agの膜厚が異な
る時のAg(111)回折線の積分幅と耐湿性の関係を
示す。耐湿性の評価基準は上記表1と同様である。
【0033】
【表3】
【0034】表3の( )内の値は、図2の実線上にあ
たる理想的な値であり、CuKα線(λ=1.54Å)
によるX線回折の場合の、Ag粉末の(111)回折線
のピーク位置2θ=38.11を(1)式にあてはめた
値である。表3より、いずれの膜厚においても、積分幅
が狭くなり、( )内の数値に近づくほど耐湿性が良好
となることがわかる。
【0035】図1に本発明の熱線遮断膜の代表例の断面
図を示す。図1(a)は、3層からなる熱線遮断膜の断
面図、図1(b)は、(2n+1)層からなる熱線遮断
膜の断面図、図1(c)は、Agを主成分とする膜3と
酸化物膜2の間に介在層5を形成した熱線遮断膜の断面
図である。1は基体、2は酸化物膜、3はAgを主成分
とする膜(以下Ag膜3ということもある)、4は、基
体からみて、基体から最も離れたAg膜3(A)の反対
側に形成された酸化物膜(B)、5はAgの結晶性の不
完全性を低減させる介在層である。
【0036】Agを主成分とする膜3の材料としては、
Ag膜、またはAu、Cu、Pdのうちの少なくとも一
つを含むAgを主成分とする膜が使用できる。Ag膜3
の膜厚は、Agの熱線遮断性能および可視光透過率との
かねあいを考慮して80〜160Å、特に90〜120
Åが好ましい。
【0037】本発明の熱線遮断膜においては、熱線遮
断膜のX線回折図における立方晶Agの(111)回折
線の積分幅βi (°)が、180λ/(dπcos θ)≦
βi≦180λ/(dπcos θ)+0.15、好ましく
は180λ/(dπcos θ)≦βi ≦180λ/(dπ
cos θ)+0.10、最も好ましくは180λ/(dπ
cos θ)≦βi ≦180λ/(dπcos θ)+0.05
の範囲にあればよい。ただし、d(Å)はAgを主成分
とする層3の膜厚、λ(Å)は測定X線波長、θはブラ
ッグ角(2θがピーク位置)である。
【0038】なお、本明細書におけるX線回折分析は、
リガク社のX線回折装置、RU200−RINT(回折
線湾曲結晶モノクロメーター付、リガク CN2726
A1)を用いて行った。CuKα線を利用し、0.00
2°のステップスキャニングで測定した。積分幅βi
値を算出する際、光学系によるプロファイルの拡がりの
影響を除くための補正をっている。
【0039】本発明のLow−E膜において、Agを主
成分とする膜3が複数層ある場合は、各Ag膜3の平均
の膜厚を、式(180λ/(dπcos θ)≦βi ≦18
0λ/(dπcos θ)+0.15)における膜厚dとし
てよいと考えられる。
【0040】本発明は、結晶化したAg膜に関して、そ
の結晶の不完全性の低減によりAg膜の耐湿性を向上す
るものである。よって、本発明は、結晶性のAg膜につ
いて特に効果が発揮される。結晶性の高いAg膜のX線
回折においては、(111)回折線のピークは顕著に現
れ、ピークトップの強度Iは、バックグラウンドの強度
B に対して、 I−IB ≧0.5nIB (2) (ここで、nは、Agを主成分とする膜3の層数)とな
るような、大きな値となることが多い。
【0041】ただし、(2)式は、Agを主成分とする
膜3が2層以上ある場合、各層の膜厚がほぼ等しい場合
に関するものであって、各層の膜厚が大きく異なる場合
は、(2)式にあてはまらないこともある。I−IB
0.5nIB であるような、小さなピーク強度Iを示す
Ag膜は、一部分のみが結晶化している状態、または、
アモルファス状態であると考えられる。本明細書のAg
のX線回折データ(実施例、比較例、表1〜3のデータ
を含む)は、(2)式を満足するような、顕著なピーク
が現れたプロファイルに関する値である。
【0042】結晶の不完全性が低減されたAg膜3を形
成する方法として、成膜中または成膜後の約200℃以
上の加熱処理や、Ag膜3と酸化物膜との界面の片面ま
たは両面に、Agの結晶性の不完全性を低減させる介在
層5を形成する方法がげられる。また、Ag膜3の成
膜条件や介在層5の種類および成膜条件にも依存すると
考えられる。それぞれの具体的な条件は、成膜装置に応
じて選べばよく特に限定されない。
【0043】かかるAgの結晶性の不完全性を低減させ
る介在層5としては、結晶化しやすく、基板に平行な結
晶面における原子間距離がAg格子のものと近い膜が好
ましい。C軸が基盤に垂直に配向しやすい六方晶系、ま
たは(111)面配向をしやすい立方晶系(面心立方、
ダイヤモンド型、NaCl型)の膜はAgの結晶化を促
す傾向にある。例えば、(001)面配向の強いTi、
Zr、ZnOや、(111)面配向の強いTiN、Zr
N、Pt、Au、Al、Pdがげられる。
【0044】同じ膜材料でも、その作成方法やさらにそ
の下にある層(酸化物膜2)の結晶状態によって結晶性
や配向性が異なり、それによりAgの安定性も異なって
くる。なお、酸化物膜2や酸化物膜4が、ZnOからな
る1層からなる場合や、多層からなっていてもAg膜3
との界面にZnO膜を有する場合には、これらのZnO
膜が介在層5と同様の効果を示すので、介在層5は存在
しなくてもよい。
【0045】介在層5の膜厚は、特に限定されない。薄
ければAgの結晶性の不完全性低減効果は小さくな
る。厚ければ熱線遮断膜全体の色調に影響をおよぼ
す、可視光透過率が小さくなるなどの問題があり好まし
くない。これらを考慮すると10〜40Åが好ましい。
【0046】なお、介在層5は、結晶化したAg膜に関
して、その結晶の不完全性を低減する膜であって、従来
知られている核形成層(nucleating lay
er、すなわち、核形成を促す下地層であり、例えば、
その上にごく薄い連続膜を形成する場合などに用いられ
る)とは、異なるものである。
【0047】酸化物膜2の材料は、特に限定されない。
ZnO、SnO2 、TiO2 等やこれらの複合酸化物、
またはこれらに他の元素を添加した酸化物、などの1層
からなる膜、これらの膜の2種以上を含む積層膜、等が
使用できるこれらのなかでも、生産性を考慮すると、
ZnO膜、SnO2 膜、Al、Si、B、Ti、Sn、
Mg、Crのうち少なくとも一つをZnとの総量に対し
合計10原子%以下添加したZnO膜、または、ZnO
とSnO2 を交互に2層以上積層させた多層膜が好まし
い。
【0048】酸化物膜2はAg膜3の結晶状態に、直
接、または介在層5を介して間接的に影響を与える。A
g膜3の結晶化を促すには結晶質の膜が好ましい。
【0049】酸化物膜4としては、上述の酸化物膜2と
同様の膜が使用できる。さらに、本発明のLow−E膜
を内側にし、プラスチック中間膜を介してもう一枚の基
体と積層して合せガラスとする場合に、かかるプラス
チック中間膜との接着力の調整または耐久性向上の目的
で、中間膜と接する層として、100Å以下の酸化物膜
(例えば、酸化クロム膜)を形成する場合があるが、こ
のような膜を含めて2層以上の構成とすることもでき
る。
【0050】酸化物膜4の内部応力が大きいと、膜が剥
離し、破損しやすくなり、Ag膜3(特にAg膜
(A))の劣化やすい。したがって、酸化物膜4
全体の内部応力は1.1×1010dyn/cm2 以下で
あることが好ましい。また、酸化物膜4がZnOを主成
分とする膜を有する場合には、内部応力の観点から、
uKα線を用いたX線回折法による六方晶ZnOの(0
02)回折線2θ(重心位置)の値が33.88°以上
35.00°以下であることが好ましい。
【0051】特に、酸化物膜、金属膜、酸化物膜、金属
膜、酸化物膜、という5層構成、または5層以上の膜構
成の熱線遮断膜の場合、酸化物膜4以外の酸化物膜2も
内部応力が1.1×1010dyn/cm2 以下の膜であ
ることが、耐湿性向上の点で望ましい。
【0052】酸化物膜2および酸化物膜4の膜厚は、熱
線遮断膜全体の色調、可視光透過率を考慮すると、20
0〜700Åが望ましい。積層膜の場合も、合計200
〜700Åであればよく、それぞれの層の膜厚は限定さ
れない。
【0053】本発明における基体1としては、ガラス基
板の他、プラスチック等のフィルムや基板も使用でき
る。
【0054】
【実施例】(実施例1) RFスパッタリング法により、ガラス基板上にZnO
膜、Ag膜、ZnO膜をそれぞれ450Å、100Å、
450Åの膜厚で、順次積層させた。本実施例は、第1
層のZnO膜を、基板温度200℃で成膜した例であ
る。
【0055】ターゲットは、ZnO、Agを用い、アル
ゴンガスによりスパッタリングをった。第1層ZnO
の成膜はスパッタ圧力5.0×10-2Torr、スパッ
タ電力密度(RF電力密度、以下同じ)は1.8W/c
2 、基板温度は200℃でった。Agの成膜はスパ
ッタ圧力3.0×10-3Torr、スパッタ電力密度は
1.1W/cm2 、基板温度は室温でった。第3層Z
nOの成膜はスパッタ圧力1.0×10-2Torr、ス
パッタ電力密度は1.8W/cm2 、基板温度は室温で
った。
【0056】得られたLow−E膜をX線回折法で調べ
たところ、Ag(111)回折線の積分幅βi は0.9
8°であった。上記Low−E膜について、50℃、相
対湿度95%の雰囲気中に放置するという耐湿試験(以
下の実施例、比較例においても同様の試験である)を
った。耐湿試験6日後の外観は、一部に無視できる程度
のごく微小の斑点は見られたものの、目立った白色斑点
および白濁は観察されず良好であった。
【0057】(実施例2) 施例1と同様のRFスパッタリング法により、ガラス
基板上にZnO膜、Ag膜、ZnO膜をそれぞれ450
Å、100Å、450Åの膜厚で、順次積層させた。本
実施例は、成膜後に240℃で真空加熱処理した例であ
る。
【0058】ターゲットは、ZnO、Agを用い、アル
ゴンガスによりスパッタリングをった。基板温度は室
温とした。第1層ZnOおよび第3層ZnOの成膜はス
パッタ圧力1.0×10-2Torr、スパッタ電力密度
は1.8W/cm2 、Agの成膜はスパッタ圧力3.0
×10-2Torr、スパッタ電力密度は1.1W/cm
2 とした。成膜後の膜を240℃で1時間真空加熱処理
った。加熱処理後のLow−E膜をX線回折法で調
べたところ、Ag(111)回折線の積分幅βi は0.
95°であった。
【0059】このLow−E膜の耐湿試験6日後の外観
は、微小斑点は見られたものの、目立った白色斑点およ
び白濁は観察されず良好であった。また、上述の耐湿試
験前の膜を内側にして、もう1枚のガラス板とポリビニ
ルブチラール中間膜を介して積層して合せガラスと
し、この合わせガラスについて同様の耐湿試験を行っ
た。耐湿試験14日後の合せガラスは、白濁や斑点が
まったく生じておらず、耐湿性は大変良好であった。
【0060】(実施例3) 施例1と同様のRFスパッタリング法により、ガラス
基板上にZnO膜、Ti膜、Ag膜、ZnO膜をそれぞ
れ450Å、40Å、100Å、450Åの膜厚で、順
次積層させた。本実施例は、介在層5としてTi膜を形
成し、また、Low−E膜を成膜後、真空加熱処理した
例である。
【0061】ターゲットは、ZnO、Ti、Agを用
い、アルゴンガスによりスパッタリングをった。基板
温度は室温であった。第1層ZnOおよび第4層ZnO
の成膜はスパッタ圧力1.0×10-2Torr、スパッ
タ電力密度は1.8W/cm2、Agの成膜はスパッタ
圧力3.0×10-3Torr、スパッタ電力密度は1.
1W/cm2 、Tiの成膜はスパッタ圧力3.0×10
-3Torr、スパッタ電力密度は1.8W/cm2 とし
。成膜後のLow−E膜を200℃で1時間真空加熱
処理をった。
【0062】加熱処理後のLow−E膜をX線回折法で
調べたところ、Ag(111)回折線の積分幅βi
1.03°であった。このLow−E膜の耐湿性は、上
記実施例と同様良好であった。
【0063】(実施例4) 施例1と同様のRFスパッタリング法により、ガラス
基板上にAlドープZnO膜、Ag膜、AlドープZn
O膜をそれぞれ450Å、100Å、450Åの膜厚
で、順次積層させた。本実施例は、酸化物膜2、酸化物
膜4としてAlドープZnO膜を形成し、また、Low
−E膜の成膜後、真空加熱処理した例である。
【0064】ターゲットは、Znとの総量に対しAlを
3.2原子%含む酸化物、Agを用い、アルゴンガスに
よりスパッタリングをった。基板温度は室温であっ
た。第1層AlドープZnOおよび第3層AlドープZ
nOの成膜はスパッタ圧力1.0×10-2Torr、ス
パッタ電力密度は1.8W/cm2 、Agの成膜はスパ
ッタ圧力3.0×10-3Torr、スパッタ電力密度は
1.1W/cm2 である。成膜後の膜を240℃で1時
間真空加熱処理をった。
【0065】加熱処理後のLow−E膜をX線回折法で
調べたところ、Ag(111)回折線の積分幅βi
0.96°であった。このLow−E膜の耐湿試験6日
後の外観は、肉眼では白色斑点が全く見られず、非常に
良好であった。
【0066】(比較例1) 施例2と同様のRFスパッタリング法により、ガラス
基板上にZnO膜、Ag膜、ZnO膜をそれぞれ450
Å、100Å、450Åの膜厚で、順次積層させた。タ
ーゲットは、ZnO、Agを用い、アルゴンガスにより
スパッタリングをった。ZnO、Ag成膜の際のスパ
ッタ圧力、基板温度、スパッタ電力密度は実施例2と同
様である。本比較例では、実施例2のような成膜後の真
空加熱処理はわなかった。
【0067】得られたLow−E膜をX線回折法で調べ
たところ、Ag(111)回折線の積分幅βi は1.1
2°であった。耐湿試験6日後のLow−E膜は、直径
1mm以上のはっきりした白色斑点も見られた。以上の
膜(耐湿試験前)について、実施例2と同様にして合
せガラスとした後に耐湿試験をった。耐湿試験14日
後の合せガラスは、端の方から6mm程度白濁が現れ
ていた。
【0068】(比較例2) 施例3と同様のRFスパッタリング法により、ガラス
基板上にZnO膜、Ti膜、Ag膜、ZnO膜をそれぞ
れ450Å、40Å、100Å、450Åの膜厚で、順
次積層させた。ターゲットは、ZnO、Ti、Agを用
い、アルゴンガスによりスパッタリングをった。Zn
O、Ti、Ag成膜の際のスパッタ圧力、基板温度、ス
パッタ電力密度、基板温度は実施例3と同様である。本
比較例においては、実施例3のような、成膜後の真空加
熱処理はわなかった。
【0069】得られたLow−E膜をX線回折法で調べ
たところ、Ag(111)回折線の積分幅βi は1.2
5°であった。このLow−E膜の耐湿試験6日後の外
観は、白濁および直径1mm以上のはっきりした白色斑
点が見られた。
【0070】
【発明の効果】本発明によるLow−E膜は、耐湿性が
著しく改善されている。このため、合せガラス化や、
複層ガラス化する前の、単板での取扱が容易になると考
えられる。また単板での室内長期保存可能となる。さ
らに、自動車用、建築用熱線遮断ガラスの信頼性向上に
つながる。また、合せガラスとした際にも中間膜が含
有している水分によって劣化することがないので、自動
車用、建築用等の合せガラスの耐久性が向上する。
【0071】本発明の熱線遮断膜は、Agを主成分とす
る膜を有しているため、熱線遮断性能とともに導電性も
ある。したがって、本発明の熱線遮断膜は、この導電性
を利用して、種々の技術分野に使用できる。例えば、エ
レクトロニクス分野においては電極として(太陽電池の
電極などにも使用できる)、通電加熱窓においては発
体として、窓や電子部品においては電磁波遮蔽膜とし
て、使用できる。
【0072】場合によっては、本発明の熱線遮断膜は、
基体の上に、各種の機能を有する膜を介して形成するこ
ともできる。このような場合には、本発明の熱線遮断膜
の各膜の最適膜厚を選択するなどにより、その用途に応
て光学性能を調節できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱線遮断膜をガラス上に形成した熱線
遮断ガラスの例の断面図
【図2】Ag膜の膜厚と立方晶Agの(111)回折線
の積分幅の関係を示すグラフ
【図3】サンプル2の耐湿試験前後のAg(111)回
折線のプロファイルの変化を示すX線回折図
【図4】サンプル5の耐湿試験前後のAg(111)回
折線のプロファイルの変化を示すX線回折図
【符号の説明】
1 基体 2 酸化物膜 3 Agを主成分とする膜 4 酸化物膜(B) 5 介在層

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基体上に酸化物膜、Agを主成分とする
    膜、酸化物膜、と順次積層された少なくとも(2n+
    1)層(n≧1)からなる熱線遮断膜において、熱線
    遮断膜のX線回折図における立方晶Agの(111)回
    折線の積分幅βi (°)が180λ/(dπcos θ)≦
    βi ≦180λ/(dπcos θ)+0.15の範囲にあ
    ることを特徴とする熱線遮断膜。ただし、d(Å)はA
    gを主成分とする膜の膜厚、λ(Å)は測定X線波長、
    θはブラッグ角を示す。
  2. 【請求項2】前記Agを主成分とする膜と酸化物膜との
    界面に、Agの結晶性の不完全性を低減させる介在層が
    形成されていることを特徴とする請求項1記載の熱線
    遮断膜。
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