JP3140057B2 - 細胞内成分の抽出法 - Google Patents

細胞内成分の抽出法

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JP3140057B2 JP04502774A JP50277492A JP3140057B2 JP 3140057 B2 JP3140057 B2 JP 3140057B2 JP 04502774 A JP04502774 A JP 04502774A JP 50277492 A JP50277492 A JP 50277492A JP 3140057 B2 JP3140057 B2 JP 3140057B2
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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、細胞内代謝産物を含めた細胞内成分の抽出
法に関するものである。本発明は、細胞から成分を抽出
するために用いられる多くの物質が抽出された成分につ
き実施されるアッセイその他の処理工程を妨害するとい
う問題に対処するものである。本発明は抽出用物質を中
和するためにサイクロデキストリンを用いる。本発明に
よる一例においては、細胞内代謝産物がアデノシン三リ
ン酸(ATP)であり、これは抽出剤を中和したのちホタ
ル−ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を利用してアッ
セイすることができる。他の例においては、細胞内成分
が核酸であり、これは抽出剤を中和したのち増幅する
か、または他の方法で後処理することができる。
細胞内成分抽出の一般的観点 生物学的試料中の細胞内成分のアッセイは、しばしば
酵素法により行われる。それらの方法は下記を必要とす
る:1)成分をアッセイに添加される酵素系に利用される
状態にするために、成分を細胞から放出させること。
2)抽出物の調製、保存またはアッセイに際してそれら
の成分に作用する可能性のある細胞由来の酵素を失活さ
せること。細胞内成分の抽出は、細胞壁および細胞膜を
開放し、かつ代謝産物プール全体を周囲の媒質中へ放出
させることを伴う。細胞内においては、代謝産物プール
はしばしば細胞内酵素の作用のため数秒程度の代謝回転
時間を有する。抽出剤が膜のインテグリティーに作用し
始めると直ちに、生じた作用に対して細胞の酵素系が対
抗しようとする。従って、時間を要する抽出期間中にか
なりの代謝産物水準の変化が起こる可能性がある。この
ため、最良の酵素アッセイ法を用いたとしても、細胞内
代謝産物水準に関する全く誤ったデータが得られること
は明らかである。この問題を避ける唯一の方法は、迅速
に細胞膜を開放し、同時に、細胞内成分に使用する酵素
をすべて失活させる抽出剤を用いることである。従って
酵素の失活は信頼性のあるすべての抽出剤本来の特性で
ある。細胞壁の存在は細胞を抽出剤から保護し、細菌、
菌類および藻類細胞を特に抽出困難にしている。従って
これらの種類の細胞の抽出には、トリクロロ酢酸(TC
A)または過塩素酸(PCA)などのカオトロピック(chao
tropic)アニオンを含む強酸がしばしば用いられる。こ
れらの物質は強力な酵素失活作用を有し、アッセイ前に
抽出物が著しく希釈されない限り必然的に酵素アッセイ
を妨害する。抽出物の希釈は、低濃度の代謝産物のアッ
セイを困難にする。
中間代謝産物の代謝回転速度が速いほど、抽出剤添加
時に細胞内酵素を直ちに失活させる必要性はいっそう高
くなる。この観点からみて、ATPは最も抽出困難な細胞
内代謝産物の1つである。すべての細胞において、ATP
はエネルギー産生反応からエネルギー要求反応へエネル
ギーを伝達する手段である。従って多種類のATP変換酵
素(キナーゼおよびATPase)が存在し、高い活性を有す
る。膜のインテグリティーがたとえば抽出剤によってわ
ずかに損傷を受けたとしても、細胞内代謝産物およびイ
オンが急速に失われる。細胞がこれらの事象を補償しよ
うとするのに伴って、大量のATPが消費される。本発明
に至る研究の目的の1つは、ホタルルシフェラーゼアッ
セイ法と適合する、信頼性のある微生物ATP抽出法を開
発することであった。微生物細胞においてはATP代謝回
転速度が高く、かつ厚い細胞壁が存在するため、微生物
ATPの抽出法はすべての種類の細胞における他の大部分
の細胞内代謝産物にも有効なものになると思われる(抽
出剤自身が代謝産別を分解しない限り)。さらにATPの
ホタルルシフェラーゼアッセイ法においては反応速度が
測定される。すなわちホタルアッセイ法は反応速度アッ
セイ法の一例である。従って抽出中または抽出後に添加
される阻害剤はいずれもアッセイに影響を及ぼすであろ
う。ホタルルシフェラーゼの活性は、単純な塩類を含め
て多種多様な化合物により阻害される。またホタルルシ
フェラーゼは狭い最適pHをもつ。従ってホタルアッセイ
法に有効な抽出法は、他の大部分の酵素アッセイ法にも
有効なものになると思われる。これは特に、単にアッセ
イ時間の延長によって阻害を補償しうる終末点アッセイ
法のいずれについても言える。
DNAおよびRNAの抽出 生物材料から核酸を抽出することは、多くの分子生物
学的研究における重要な第1段階をなす。抽出されたDN
AまたはRNAは後続の酵素反応のための基質または鋳型と
して必要であり、従って生物学的に活性でなければなら
ない。一般に細胞または組織からのDNAは、遺伝子のク
ローニングまたは同定のために、ポリメラーゼ連鎖反応
(PCR)または制限酵素を用いる開裂による特異的配列
の増幅に用いられる。遺伝子分析実験に後続使用するた
めの細胞または組織からのゲノムDNAの精製は、一般に
すべての細胞成分を放出させるための細胞溶解、次いで
特異的分解酵素による蛋白質およびRNAの選択的消化を
伴う。蛋白性物質その他の汚染物質から分離されたの
ち、DNA試料は比較的純粋であり、かつ機能的に活性で
ある。分離工程は一般に有機溶剤による抽出、次いでア
ルコールによるDNAの沈殿によって行われる(サムブル
ック、フリッチュおよびマニアチス(J.Sambrook,E.F.F
ritsch,T.Maniatis),Molecular Cloning−A Labora
tory Manua1,第2版,コールド・スプリング・ハーバ
ー・ラボラトリー・プレス,1989)。汚染蛋白質をたと
えば細胞溶解物のアルコール沈殿により特異的に除去す
ることなく機能的に活性なDNAを調製しうる方法が記載
されている(クス、ジェブニカルおよびルビン−ケリー
(H.Xu,A.M.Jevnikar,E.Rubin−Kelly),Nucleic Acid
s Research 18,4943)。従って重大な汚染物質は用い
られる抽出剤、通常はディタージェント、であると思わ
れる。従ってディタージェントを除去すればそのDNAは
後続反応に使用するのに十分なものとなりうる。しかし
一般にディタージェントの除去にはなお分離工程が必要
であり、これに伴って調製時間が延長され、収率低下の
可能性が増大する。従って分離工程を伴わない均質な系
は、現在の方法に優る著しい利点をもつであろう。
微生物ATPの抽出およびアッセイに関する現在の状況 迅速な微生物学的方法においては、ATPのホタルルシ
フェラーゼアッセイ法がしばしばバイオマス推定のため
に用いられる。細胞内ATP濃度はすべての細胞において
類似しており、細胞当たりのATP量は細胞内容積にほぼ
比例する。細菌は細胞当たりほぼ10-18モルのATPを含
み、藻類は細胞当たりこれよりかなり多量のATPを含
む。簡単な光学測定装置およびホタルルシフェラーゼ試
薬を用いて、1ml容量中に10-15モルのATPを容易に検出
しうる。これはほぼ103個の細菌細胞に相当する。生物
検体中の細菌性ATPは、等容量の2.5%トリクロロ酢酸を
添加することにより抽出しうる。しかしシフェラーゼ反
応に対するトリクロロ酢酸による妨害を避けるために、
最終アッセイ容量1mlにおいて0.01mlを越える試料容量
を用いることはできない。従って生物検体中における検
出限界は細胞105個/mlである。酸を中和することによっ
て状況は若干改善されるが、大部分の阻害はこの酸のカ
オトロピックアニオンにより起こる。
上記の状況により、代替となる抽出法が絶えず追及さ
れてきた。代替抽出剤としては第四アンモニウム化合
物、たとえば塩化ベンザルコニウムが示唆されている
(アンゼーン、ランディン、ニルソンおよびソア(S.An
sehn,A.Lundin,L.Nilsson,A.Thore),ATPの簡単なルシ
フェラーゼアッセイ法による細菌尿の検出,Proceeding
s:International Symposium on Analytical Applicatio
n of Bioluminescence and Chemiluminescence,pp.438
−445,ステート・プリンティング・アンド・パブリシン
グ社,カリフォルニア州ウェストレーク・ビレッジ,197
9)。しかし、第四アンモニウム化合物は抽出物をホタ
ル試薬に添加したのちホタルルシフェラーゼを失活させ
て、発光を徐々にディケイ(decay)させる。このよう
に測光に際してルシフェラーゼ活性が徐々にディケイす
るため、既知量のATPの添加によりアッセイを検量する
こと(国際的標準法)がほとんど不可能になる。上記の
報文には、ウシ血清アルブミンの添加により失活作用に
部分的に対抗しうると述べられている。しかし、のちに
この方法を最適なものにするための試みを行った際に、
第四アンモニウム化合物によるルシフェラーゼの失活を
完全に避けるのに必要な濃度のアルブミン(2.5−10
%)はルシフェラーゼ反応の強い阻害をもたらすことが
認められた(ランディン(A.Lundin)ATP、ADPおよびAM
Pの抽出および自動ルミノメトリーアッセイ。Analytica
l Application of Bioluminescence and Chemiluminesc
ence,クリッカ、スタンレイ、ソルペおよびホワイトヘ
ッド(L.Kricka,P.Stanley,G.Thorpe,T.Whitehead)監
修,pp.545−552,アカデミック・プレス,ニューヨーク,
1984)。しかし重要な知見は、アルブミンはその目的に
とって理想的ではなかったが、第四アンモニウム化合物
によるルシフェラーゼ失活作用を中和しうることであっ
た。第四アンモニウム化合物に対する他の中和剤はノニ
オン界面活性剤、たとえばツイーン20、ツイーン60、ツ
イーン80、ポリオキシエチレンエーテルW1およびトライ
トンX−100であることがのちに見出された(W.J.シン
プソンおよびJ.R.M.ハモンド、欧州特許第309184号明細
書)。S.コレーマイネンおよびV.タルカネンは抽出剤と
してノニオン界面活性剤を使用することを独自に提案し
た(英国特許第16004249号明細書)。ノニオン界面活性
剤は、ルシフェラーゼが第四アンモニウム化合物により
徐々に失活するのに対抗し、かつそれら自体がルシフェ
ラーゼ反応において強い阻害性を示すことがない。しか
しノニオン界面活性剤の存在下ですら、第四アンモニウ
ム化合物の添加に際してルシフェラーゼ反応のかなりの
阻害が生じる(実施例1参照)。従って、第四アンモニ
ウム化合物に関する両方の問題、すなわちルシフェラー
ゼの阻害および失活に対処する系は報告されていない。
ATPに適用した本発明の基礎となる考察 試料を実験室へ輸送することは、迅速微生物学におけ
るATPのホタルアッセイ法の主要な利点、すなわち分析
結果が数分で得られるという事実が排除される。このよ
うなアッセイ法に対する主な市場は、実際には生化学的
分析の訓練がほとんど、または全く無い者による非実験
室条件下での現地試験である。このような条件下では、
アッセイ法は普通は少数の試料を伴い、かつ周囲温度で
保存された試薬ならびに低価格の簡単な計測器を用いて
実施されなければならないであろう。分析操作は、単一
アッセイ法に適した形式の試薬を用いて極めて簡単な最
小数の工程を伴うべきであろう。ディップスティック手
法に基づくこのようなアッセイ法のための原型の分析シ
ステムが報告されている(ランディン(A.Lundin),ル
ーティン微生物学におけるATPアッセイ法:1980年代の現
実に対する洞察から、ATP Luminescence:Rapid Methods
in Microbiology,スタンレイ、マッカーシーおよびス
ミサー(P.E.Stanley,B.J.McCarthy,R.Smither)監修,
応用微生物学会テクニカルシリーズ26,ブラックウェル
・サイエンティフィック・パブリケーションズ,pp.11−
30,オックスフォード,1989)。
ホタルアッセイ法に用いる市販試薬キットの開発に際
しての重大な問題は、ホタルルシフェリン−ルシフェラ
ーゼ試薬よりATP標準品の方が不安定なことであろう。A
TPを周囲温度で長期間保存しうる方法を開発しうるとは
思えない。アッセイに際してATP標準品を再構成および
分配することは、さらに問題を生じる。ATP標準液は、
全アッセイ容量の正確に1%容量で添加されなければ
ならないであろう(ランディン(A.Lundin),ルミノメ
トリーによるATP監視の臨床応用,カロリンスカ・イン
スティテュートからの学位論文,1990)。熟練していな
い者が現地試験条件下でマイクロリットル容量を正確に
ピペット分取することは、極めて実施困難であろう。自
動装置の価格は、この市場では購入し難いものである。
以上の問題をすべて解決し得たとしても、内部基準手法
は2回の光学測定、すなわちATP基準の添加前および添
加後の測定を必要とする。従って幾つかの観点からみ
て、ATP標準品を用いずにアッセイを実施し得れば極め
て有利であろう。これは、すべての試料においてATP濃
度に対し常に同じ関係をもつ本質的な安定な発光を伴う
標定されたホタル試薬を用いることにより達成しうるで
あろう。活性の損失なしに数年間保存しうる、数分間本
質的に安定な発光を生じる凍結乾燥したホタル試薬が19
70年代後期以来、市販されている(ランディン(A.Lund
in),ルミノメトリーによるATP監視の臨床応用,カロ
リンスカ・インスティテュートからの学位論文,199
0)。測光機器の光応答の簡単な自動検量システムも十
分に確立された技術である。残された唯一の問題は、測
光に際して生物材料抽出物の添加が失活(発光のディケ
ィを生じる)または阻害(低下するが、安定な発光を生
じる)によりルシフェラーゼ活性に影響を及ぼすことが
ないのを保証することであろう。
微生物細胞については、細胞壁を迅速に透過して細胞
内酵素を失活させる極めて有効な抽出剤を用いなければ
ならない。このような抽出剤による酵素分析の妨害は下
記により排除しうる:1)抽出物の希釈(アッセイ感度を
低下させる)。2)抽出物から抽出剤を除去する(時間
がかかり、労力を要する操作となる可能性が最も高
い)。3)アッセイ緩衝液に中和剤を含有させることに
より抽出剤を中和する。最後の示唆が明らかに最も関心
のある代替法である。極めて有効な抽出剤に対する必要
条件が、同様にその達成を困難にする。中和剤が比較的
不活性であり、ルシフェラーゼ活性に影響を及ぼすべき
ではないという事実によってこの状況が簡単になること
はない。
この観点における本発明の目的は、ルシフェラーゼの
失活またはルシフェラーゼ反応の阻害をいずれも生じな
い抽出剤と中和剤の組み合わせの開発であると述べるこ
とができる。これらの目標を両方とも達成することによ
って初めて、現地試験条件下で、すなわちATP標準品を
用いずに、簡便かつ信頼性のあるATPアッセイを実施す
ることができる。
抽出剤の中和は、抽出剤を分解する化学反応の実施に
より達成しうる。最も簡単な例は酸性抽出剤を塩基の添
加により中和することであろう。しかし正確なpH調整が
必要であり(強い緩衝剤は阻害を生じる)、多くの状況
において実施不可能であろう。さらに、最良の酸性抽出
剤はカオトロピックアニオンを含み、これらは中性pHに
おいてすら強い阻害を生じる。イオン強度の増大ですら
ルシフェラーゼ活性を低下させる。別法は化学反応によ
って新たな非阻害性化合物を形成することにより抽出剤
を分解することであろう。しかしこれは酵素を阻害し、
または失活させる可能性のある、反応性の高い反応体を
用いなければならない可能性が最も高い。
最も関心がもたれる方法は、抽出剤分子と中和剤分子
の間でコンプレックスを形成することであろう。第四ア
ンモニウム化合物(1種のカチオン界面活性剤)を中和
するためにノニオン界面活性剤を用いることはこの方法
の一例である(W.J.シンプソンおよびJ.R.M.ハモンド、
欧州特許出願第88308677.9号明細書)。実施例1に示す
ように、実際にノニオン界面活性剤はあらゆる種類のイ
オン性界面活性剤(カチオン、アニオンおよびツビッタ
ーイオン)がホタルルシフェラーゼに及ぼす失活作用を
中和する。しかしノニオン界面活性剤の存在下ではすべ
てのイオン性界面活性剤が、失活を生じるものよりはる
かに低い濃度において阻害作用を及ぼす。これはノニオ
ン界面活性剤とイオン性界面活性剤との結合が低いこ
と、またはそれら2種類の界面活性剤間のコンプレック
スによる阻害に起因すると思われる。説明に関係なく、
この阻害はイオン性界面活性剤型の抽出剤が結合しうる
生物材料の水準に応じて試料毎に異なる可能性がある。
従ってアッセイ毎にATP標準品を用いる必要があろう。
中和剤としてのノニオン界面活性剤の他の欠点は、必ず
しもすべての酵素がこれらの試薬に対してホタルルシフ
ェラーゼと同様に抵抗性ではないということである。
抽出剤を中和するための理想的化合物は、抽出剤に対
して高い結合定数をもつものであろう。理想的にはそれ
は、酵素を失活させる抽出剤分子部分が保護層により囲
まれた包接コンプレックス(inclusion complex)を形
成するであろう。明らかに中和用化合物は酵素に対して
可能な限り不活性でなければならず、かつ分析的に重要
な細胞内代謝産物と不可逆的に結合すべきでない。ある
種の界面活性剤、たとえば第四アンモニウム化合物は有
用な抽出剤であることが認められている(ランディン
(A.Lundin),ATP、ADPおよびAMPの抽出および自動ルミ
ノメトリーアッセイ,Analytical Application of Biolu
minescence and Chemiluminescence,クリッカ、スタン
レイ、ソルペおよびホワイトヘッド(L.Kricka,P.Stanl
ey,G.Thorpe,T.Whitehead)監修,pp.545−552,アカデミ
ック・プレス,ニューヨーク,1984)。すべての界面活
性剤分子に共通の特色は、疎水性のテイルである。親水
性外表を有するコンプレックス中に疎水性テイルが埋め
込まれた包接コンプレックスの形成が理想的であろう。
これはミセルを形成する中和剤により達成される可能性
がある。しかし分析操作に際して添加された酵素がミセ
ルに取り込まれて、活性の変化を生じる場合がある。さ
らに、酵素とミセル内における抽出剤との相互作用を排
除することはできない。界面活性剤に対する理想的な中
和剤は、酵素に結合する可能性のない親水性外表、およ
び界面活性剤と包接コンプレックスを形成するのに適し
た大きさの疎水性の中空部を有する水溶性化合物であろ
う。
サイクロデキストリンの特性 サイクロデキストリンは6、7または8個のグルコー
ス単位(α−、β−およびγ−サイクロデキストリン)
からなるドーナツ形の分子である。環の内径はそれぞれ
6Å、7.5Åおよび9.5Åである。環の内側は界面活性剤
などの分子の疎水性テイルに結合する。生じる包接コン
プレックスは一般に界面活性剤とサイクロデキストリン
間で1:1の化学量論的量において形成される。α−、β
−およびγ−サイクロデキストリンとの結合定数は、界
面活性剤の疎水性テイルの大きさおよび化学的特性に依
存する。界面活性剤との結合定数は一般に103−104dm3m
ol-1であるが、5×104dm3mol-1のように高くてもよい
(I.サタケ、T.イケノウエ、T.タケシタ、K.ハヤカワお
よびT.マエダ,α−サイクロデキストリンとイオン性界
面活性剤およびそれらの同族体の結合の電導度分析およ
び電位差測定による研究,Bull.Chem.Soc.Jpn.58,2746−
2750,1985;パレプおよびリッカードソン(R.Palepu,J.
E.Rickardson),導電率測定によるβ−サイクロデキス
トリン/界面活性剤包接化合物の結合定数,Langmuir
5,218−221,1989;I.サタケ、S.ヨシダ、K.ハヤカワ、T.
マエダおよびY.クスモト,β−サイクロデキストリンと
両親媒性イオンの結合定数の電導度分析による測定,Bul
l.Chem.Soc.Jpn.59,3991−3993,1986;T.オークボ,Y.マ
エダおよびH.キタノ,コンダクタンス停止フロー法によ
り研究したイオン性界面活性剤とサイクロデキストリン
の包接プロセス,J.Phys.Chem.93,3721−3723,1989;パレ
プおよびラインスボロー(R.Palepu,V.C.Reinsboroug
h),コンダクタンス測定による界面活性剤−サイクロ
デキストリン相互作用,Can.J.Chem.66,325−328,198
8)。サイクロデキストリンの外表は親水性であり、大
部分の酵素と相互作用しないと思われる。さらにサイク
ロデキストリンは水溶性であるが、たとえば重合によ
り、または固体もしくは粒子の表面に付着させることに
よりそれらを固定化することができる。表面または溶液
から界面活性剤を除去するためにサイクロデキストリン
を使用することにつき報告されている(P.カナおよびR.
ドボルシャック。欧州特許出願第301,847号明細書)。
この特許出願によれば、界面活性剤を溶液から固定化サ
イクロデキストリンにより除去することができる。除去
するのではなく、包接コンプレックスの形成により界面
活性剤の作用を中和する可能性は評価されていない。P.
カナらの欧州特許第286367号明細書には、アッセイ前に
ペプチドフラグメントの安定剤として用いられた界面活
性剤を中和するためにサイクロデキストリンを使用する
ことが記載されている。ある総説には診断におけるサイ
クロデキストリンの種々の用途が記載されている(ゼト
リ(J.szeltli,診断におけるサイクロデキストリン,Kon
takte(ダルムシュタット)1988(1),31−36)。細胞
内代謝産物を放出させるために抽出剤として添加された
界面活性剤を中和するためにサイクロデキストリンを使
用することは、これまで記載がない。
発明の記述 本発明によれば、細胞内成分および該成分を抽出する
ために用いた物質を含有する溶液を供給することにより
細胞内成分の抽出物を調製する方法において、該溶液
を、抽出用物質を中和するために適切な種類および適切
な量のサイクロデキストリンまたはサイクロデキストリ
ン誘導体と接触させることを特徴とする方法が提供され
る。細胞内成分の性質は本発明の構成要素ではない。一
例は核酸、たとえばDNAおよびRNA、ならびにATPを含め
た他の前記の細胞内代謝産物である。
本明細書で用いる″中和する″という語は、pHを7.0
に調整することを意味するものではない。むしろ抽出剤
の中和は、そうしなければ抽出された細胞内成分の後続
処理において抽出剤が引き起こすであろう妨害の減少/
排除/克服をもたらすものである。
サイクロデキストリンまたは誘導体の機能は、抽出用
物質または抽出剤を中和することである。前記のよう
に、これは原理的には抽出剤の分解により行うことがで
きる。サイクロデキストリンまたは誘導体を不溶性の形
で用いる場合、抽出剤と共に形成されたコンプレックス
も不溶性であり、残りの溶液から容易に物理的に除去さ
れる。より一般的には、サイクロデキストリンまたは誘
導体は溶液状で用いられ、抽出剤とのコンプレックスを
形成することによりそれを中和する。次いでそのコンプ
レックスを溶液から除去することができるが、通常はそ
れは不必要であるか、または望ましくはない。界面活性
剤を完全に中和することが好ましいが、本発明は部分中
和を生じる条件をも考慮する;これらは後続のアッセ
イ、増幅または後続操作のいずれにおいても、抽出剤に
よる妨害を有意に減少させるものでなければならない。
他の観点においては、本発明はここに記載する方法に
よる生物検体中のATPの抽出およびアッセイのためのキ
ットにおいて、下記の構成成分: a)抽出用物質(他の成分と分離して保存する)、 b)サイクロデキストリン、 c)ホタルルシフェラーゼ試薬 d)アッセイ緩衝液 を含むことを特徴とするキットを提供する。
好ましくは、抽出用物質は流体検体と接触した際に適
切なサイズの試料を捕獲するキャリヤーの上または中に
おいて乾燥されており;サイクロデキストリンはアッセ
イ緩衝液に溶解されており;ホタルルシフェラーゼ試薬
はアッセイ緩衝液中へ試薬を放出しうるキャリヤーの上
または中において乾燥されている。
抽出剤とサイクロデキストリンの結合が分析操作に用
いられる酵素の阻害または失活を避けるのに十分なほど
強固である限り、いかなる種類の抽出剤およびいかなる
種類のサイクロデキストリンまたはサイクロデキストリ
ン誘導体も使用しうる。抽出剤は好ましくは界面活性剤
であり、これをいずれのサイクロデキストリンがその界
面活性剤を最も効果的に結合させるかに応じてα−、β
−またはγ−サイクロデキストリンと接触させることが
好ましい。カチオン、アニオンおよびツビッターイオン
界面活性剤をサイクロデキストリンにより中和すること
ができる(実施例1)。いずれのサイクロデキストリン
がその界面活性剤に最適である可能性があるかという概
念は、公表されている結合定数からしばしば得られる
(前記の文献を参照されたい)。個々の用途につき最適
な抽出剤およびサイクロデキストリンの種類および濃度
を定めることは、実施例の記載に従って実施しうる(後
記を参照されたい)。サイクロデキストリンは、形成さ
れる包接コンプレックスの化学量論的量を考慮したモル
量に基づいて、抽出剤より過剰に用いることが好まし
い。サイクロデキストリンは抽出終了後の分析操作のい
かなる工程においても、ただし常に、アッセイに関与す
る酵素の添加前またはそれと同時に添加することができ
る。
ATPのホタルアッセイ法における抽出剤の中和剤とし
てのサイクロデキストリンの主な利点は、発光が抽出剤
/中和剤のコンプレックスによる阻害または失活によっ
て影響されない分析条件を見出しうることである。これ
は、高い結合定数を有する抽出剤/サイクロデキストリ
ンの組み合わせを用いて達成しうる。従来用いられてい
る中和剤、たとえば第四アンモニウム化合物を中和する
ために用いられるノニオン界面活性剤(W.J.シンプソン
およびJ.R.M.ハモンド、欧州特許第309184号明細書)を
用いた場合、失活を避けることはできるが、阻害は避け
られない。サイクロデキストリンは酵素を阻害または失
活させる可能性がなく、酵素試薬の安定剤として実際に
用いられている(ゼトリ(J.Szeltli,診断におけるサイ
クロデキストリン,Knotakte(ダルムシュタット)1988
(1),31−36)。ルシフェラーゼ反応における発光に
対してβ−サイクロデキストリンによる見かけの阻害作
用が認められた(実施例1)。しかしこの作用はD−ル
シフェリン/β−サイクロデキストリンのコンプレック
ス形成によるものであることが示された。この問題はD
−ルシフェリンの濃度を高めることにより排除し得た。
他のいずれかのアッセイにおいて見かけの阻害作用が認
められた場合は、使用するサイクロデキストリンの存在
下ですべての補助因子の濃度を最適なものにすることが
推奨される。
本発明に基づいて抽出剤、サイクロデキストリンおよ
びホタル試薬を種々のタイプの微生物または特殊なタイ
プの試料中の細胞内ATPの抽出およびアッセイのための
キット形式に組み合わせることは簡単なことである。現
地用として適した分析システムは、本発明を前記のディ
ップスティック手法と組み合わせることにより開発しう
る(ランディン(A.lundin),ルーティン微生物学にお
けるATPアッセイ法:1980年代の現実に対する洞察から、
ATP Luminescence:Rapid Methods in Microbiology,ス
タンレイ、マッカーシーおよびスミサー(P.E.Stanley,
B.J.McCarthy,R.Smither)監修,応用微生物学会テクニ
カルシリーズ26,ブラックウェル・サイエンティフィッ
ク・パブリケーションズ,pp.11−30,オックスフォード,
1989)。これらのシステムにおいては、予め定められた
容量の試料を抽出剤(たとえばマトリックス上において
乾燥させた第四アンモニウム化合物)と接触させ、次い
で抽出された試料、およびホタル試薬(同様にマトリッ
クス上において乾燥させたもの)を、適切なサイクロデ
キストリンを含有する予め分配された緩衝液に溶解す
る。抽出されたATP、サイクロデキストリンにより中和
された抽出剤、ホタル試薬および緩衝液を含有するキュ
ベットからの発光を、携帯用計測器により直接に測定す
ることができる。標定された試薬および計測器を用いる
と、各アッセイを個々にATP標準品で検量する必要がな
いであろう。従ってピペットを使用にずに1分以内で操
作全体が完了するであろう。
以下においてホタルルシフェラーゼ法による微生物中
の細胞内ATPの抽出およびアッセイの例によって、本発
明をさらに説明する。微生物ATPの抽出に第四アンモニ
ウム化合物を用いることは十分に確立されている(ラン
ディン(A.Lundin),ATP、ADPおよびAMPの抽出および自
動ルミノメトリーアッセイ,Analytical Application of
Bioluminescence and Chemiluminescence,クリッカ、
スタンレイ、ソルペおよびホワイトヘッド(L.Kricka,
P.Stanley,G.Thorpe,T.Whitehead)監修,pp.545−552,
アカデミック・プレス,ニューヨーク,1984)。第四ア
ンモニウム化合物はカチオン界面活性剤である。実施例
において、アニオンおよびツビッターイオン界面活性剤
も使用しうることが示されるであろう。サイクロデキス
トリンによる界面活性剤の中和を含めたホタルアッセイ
法による微生物ATPの抽出法の開発に際して行った工程
が実施例に示される。
実施例1 サイクロデキストリンによる特定の抽出剤の滴定 従来の実験によりホタルルシフェラーゼを急速に失活
させることが知られている各種の界面活性剤から有効な
一連の抽出剤を選んだ。これらの抽出剤には下記のもの
が含まれていた:臭化ドデシルトリメチルアンモニウム
(DTAB;シグマ・ケミカル社;D8638)、塩化セチルピリ
ジニウム(CPC;シグマ・ケミカル社;C9002)、塩化ベン
ザルコニウム(BAC;ACOレーケメーデルAB;10%原液)、
塩化ベンゼトニウム(BZC;アルドリッヒ;B470−8)、
N−ドデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−
プロパンスルホネート(DDAPS;シグマ・ケミカル社;D45
16)、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS;シグマ・ケ
ミカル社;L4509)。DTAB、CPC、BACおよびBZCは第四ア
ンモニウム化合物に属するカチオン界面活性剤である。
DDAPSはツビッターイオン界面活性剤であり、SDSはアニ
オン界面活性剤である。これらの界面活性剤をα−、β
−またはγ−サイクロデキストリン(αCD、βCDまたは
γCD;シグマ・ケミカル社;C4642、C4767またはC4892)
またはツイーン80(ケボAB、スウェーデン、ストックホ
ルム;1.7267)で中和した。
下記の溶液を調製した: 1. T/E緩衝液;2mmol/ EDTA(E.メルク、F.R.G.;838
2)を含有し、酢酸でpH7.75に調整された0.1mol/トリ
ス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(E.メルク、F.R.
G.;8382)。
2. AMR;5mlの蒸発水中において再構成されたATP監視試
薬(バイオオービット・オイ、ツルク、フィンランド)
のバイアル1本。
3. ATP;10mlの蒸留水中において再構成されたATP標準
品(バイオオービット・オイ、ツルク、フィンランド)
のバイアル1本。
4. T/E緩衝液中における抽出剤の原液(SDSは1%w/
v、他のすべての抽出剤は2%w/v)。
5. T/E緩衝液中における中和剤、すなわちαCD、βC
D、またはγCD(2.5%w/v)またはツイーン80(10%w/
v)の原液(βCDは溶解するために高温の水道水中で加
温する必要がある)。
ホタル試薬(AMR)は、ルシフェラーゼ、D−ルシフ
ェリン、ピロホスフェート、ウシ血清アルブミン、およ
びマグネシウムイオンを含有する。10-11−10-6mol/
の濃度範囲でATP濃度に比例した本質的に安定な発光
(ディケイ速度<2%/分)が得られる(ランディン
(A.Lundin),ルミノメトリーによるATP監視の臨床応
用,カロリンスカ・インスティテュートからの学位論
文,1990)。測定は、3個のディスペンサー(AMR、ATP
および抽出剤につきそれぞれ1個)、電位差記録計およ
びプリンターを備えた自動1251ルミノメーター(バイオ
オービット・オイ、ツルク、フィンランド)を用いて行
われた。各実験の前に、0.0、0.1、0.2または0.3mlの中
和剤(2.5%αCD、2.5%βCD、2.5%γCDまたは10%ツ
イーン80)および最高0.9mlのT/E緩衝液を収容した一連
のキュベット最高25個をルミノメーターに装填した。特
別にデザインされたプログラム(本発明者から入手しう
る)を用いて、ルミノメーターにより下記の工程を実施
した: 1. 混合下に0.1mlのAMRを添加。
2. 混合下に0.01mlのATP(キュベット中の最終濃度10
-7mol/)を添加。
3. 最後の添加の5秒、20秒および35秒後に発光を測
定。
4. 0.01mlの抽出剤を添加。
5. 工程3および4の反復(10回)。
この滴定実験の結果を図1に示す。最初の8回のDTAB
の添加は、0.5%αCDの存在下で発光に及ぼす影響はご
くわずかである。9回目以降の添加はルシフェラーゼの
阻害(発光の不連続的低下)および失活(発光のディケ
イ速度の増大)を及ぼす。DTABおよびツイーン80を用い
た場合、明瞭な阻害が1回目の添加時に既に認められ、
失活は3回目または4回目の添加後に認められる。BZC
の最初の7回の添加は、0.5%βCDの存在下で阻害も失
活も生じない(発光のわずかな増大についてはのちに説
明する)。8回目の添加後に発光が低下する。ツイーン
80の存在下では、1回目のBZC添加が既に阻害を及ぼす
が、失活は8回目の添加後に初めて有意となる。
上記の操作により10回の抽出剤添加後に発光に対する
影響の測定が可能となった。各添加後に、一次反応が推
定される20および35秒の時点での測定から発光のディケ
イ速度を計算した。速度定数および20秒発光値を用い
て、抽出剤添加時(0秒)の発光を外挿した。これらの
外挿した発光値から、抽出剤添加前の発光抽出で割るこ
とにより、各抽出剤添加後に残留する発光のフラクショ
ンを計算した(35秒値)。各抽出剤添加についてのこれ
らのフラクション値を掛けることにより、阻害の影響を
受けているけれども経時的な失活の影響を受けていない
一連の相対発光値が得られた。最後に相対発光およびデ
ィケイを種々の中和剤の種類および濃度において抽出剤
濃度に対してプロットした(0.25、0.50および0.75%の
αCD、βCDおよびγCD、ならびに1、2および3%のツ
イーン80)。結果を図2−7に示す。中和剤を用いない
結果をも示す。ただしウシ血清アルブミン(0.1%w/v、
キュベット中)は部分中和剤であることを考慮すべきで
ある。抽出剤濃度(キュベット中の%、抽出剤の添加に
より生じるわずかな希釈については補正しない)をx−
軸に示す。y−軸は相対発光(100%から開始)および
ディケイ速度(0%/分から開始)を示す。
DTABについての結果を図2に示す。αCDおよびβCDを
用いた場合、ディケイ速度は一定の抽出剤水準に達する
まで本質的にゼロであり、その後急激にディケイ速度が
増大する。γCDおよびツイーン80を用いた場合、ディケ
イ速度は低いDTAB水準から既に増大する。αCDを用いた
場合、相対発光は抽出剤濃度が失活を生じる水準に達す
るまで100%付近に留まり、その後低下し始める。βCD
を用いた場合、相対発光は抽出剤濃度が失活を生じる水
準に達するまで抽出剤濃度と共にわずかに増大し、その
後低下し始める。γCDおよびツイーン80を用いた場合、
相対発光は抽出剤濃度と共に低下する。CPC、BACおよび
DDAPSについても同様な結果が得られた(図3、4およ
び6)。
BZCについての結果を図5に示す(中和は図2の場合
と同様であったが、ただし最高濃度の中和剤を除外し
た)。αCDを用いた場合、得られた中和効果はごくわず
かであった。βCDおよびγCDを用いた場合、一定の抽出
剤水準に達するまでディケイ速度は本質的にゼロであ
り、相対発光は100%に近く、その後急激にディケイ速
度が増大し、続いて相対発光が急激に低下した。ツイー
ン80を用いた場合、相対発光の連続的低下を伴ってディ
ケイ速度が連続的に増大した。
SDSについての結果を図7に示す(γCDは除外し
た)。αCDを用いた場合、ディケイ速度は一定の抽出剤
濃度に達するまで本質的にゼロであった。相対発光はデ
ィケイ速度が低下し始める少し前に低下し始めた。βCD
およびツイーン80を用いた場合、ディケイ速度は抽出剤
濃度と共に連続的に増大し、ただしかなり高い濃度まで
低い状態に留まった。相対発光強度は最低の抽出剤濃度
からですら低下した。
0.25、0.50および0.75%のサイクロデキストリンにお
いてディケイ速度を抽出剤濃度の関数として示す曲線は
類似していたが、サイクロデキストリン濃度が高いほど
高い抽出剤濃度の方へ変位した。これは明らかに抽出剤
とサイクロデキストリンのコンプレックスの形成による
滴定効果を反映する。曲線間の変位はディケイ速度100
%/分において、ある程度任意に測定された。変位は抽
出剤のモル数として表され、変位を生じたサイクロデキ
ストリンのモル数で割られた。ディケイ速度が一定の抽
出剤水準までゼロに近く、次いで急激に増大する場合、
これは包接コンプレックスにおける抽出剤とサイクロデ
キストリンのモル比のかなり正確な値を与えるであろ
う。遊離の形の抽出剤フラクションを生じる低い結合定
数の包接コンプレックス、またはそれ自体がルシフェラ
ーゼを失活させる抽出剤−サイクロデキストリンコンプ
レックスは、より不明瞭な滴定効果を与えるであろう。
これはコンプレックスにおけるモル比につきわずかな推
定を与えるにすぎない。αCDについてはこのモル比は0.
90(DTAB)、0.48(CPC)、0.71(BAC)、0.89(DDAP
S)および1.07(SDS)であった。βCDについてはこのモ
ル比は0.86(DTAB)、0.45(CPC)、0.74(BAC)、0.85
(BZC)、0.93(DDAPS)および1.25(SDS)であった。
γCDについてはこのモル比は0.87(BZC)および0.89(D
DAPS)であった。BACは数種の分子の混合物であり、分
子量は最も主要な分子種C12H25NC9H13Clから推定しなけ
ればならなかった。従って結果はCPC以外のすべてのデ
ィタージェントにつき1:1の化学量論的量に匹敵するも
のであった。CPC分子は芳香環構造および長い脂肪族炭
化水素テイルを有する。従って2個のサイクロデキスト
リン分子に結合し、その結果モル比0.50となる可能性が
ある。この研究に用いた大部分の抽出剤につき1:1の化
学量論的量が主張されている(前記の文献を参照された
い)。
中和剤の重要な観点は、それ自身が抽出剤の不在下で
発光に及ぼす影響である。図8は発光がツイーン80によ
り影響されたとしてもわずかであり、一方サイクロデキ
ストリンは濃度が増大した場合にわずかな阻害を生じた
ことを示す。阻害はβCDを用いた場合に最強であった。
この阻害はサイクロデキストリンがD−ルシフェリンと
包接コンプレックスを形成することによるものであり、
βCDにつき結合定数が最高であると思われる。これはβ
CDおよび高い濃度の大部分の抽出剤(DTAB、CPC、BACお
よびDDAPS)を用いた場合に生じる高い活性を説明する
ものであろう。この説明によれば、ある程度高い濃度の
D−ルシフェリンを用いることによって高い活性を失わ
せることができるであろう。この仮説は図9−10に示し
た実験において確認された。0.25mg/のルシフェラー
ゼ(エンザイマティックス社、英国ケンブリッジ)、種
々の濃度のD−ルシフェリン(バイオテーマAB、スウェ
ーデン、ダラロ)、5mmol/の酢酸マグネシウム、0.00
1mmol/のピロリン酸四ナトリウム(シグマ・ケミカル
・カンパニー、米国ミズーリ州;T6379)および0.1%ウ
シ血清アルブミン(A4503、シグマ・ケミカル・カンパ
ニー、米国ミズーリ州)を含有するホタル試薬を、0.75
%βCDを含有する、および含有しないT/E緩衝液中にお
いて調製した。10-8mol/のATPを添加したのち、1250
ルミノメーター(バイオオービット・オイ、フィンラン
ド、ツルク)により本質的な安定な発光を測定した。予
備実験(示されていない)において、βCDの不在下での
最適D−ルシフェリン濃度は0.2g/であることが見出
された。図9はβCDの不在下でD−ルシフェリン濃度を
増大させると発光が低下したことを示す(基質阻害)。
βCDの存在下ではD−ルシフェリンが0.2から0.4g/に
なると発光が著しく増大し、0.4から0.6g/になるとわ
ずかに増大し、0.6から0.8g/になるとわずかに低下し
た。最適D−ルシフェリン濃度がβCDの不在下での02g/
から0.75%βCDの存在下での0.6g/に移行したこと
は、βCDがD−ルシフェリンと包接コンプレックスを形
成することを強く示すものである。
βCDを含有しないホタル試薬に10μl容量の5%DTAB
を1回添加すると、ルシフェラーゼの失活のため発光が
急激にディケイした(示されていない)。0.75%(6.6m
mol/)βCDの存在下で、キュベット中0.2%(6.6mmol
/)に相当するDTABの4回目の添加時に、発光の緩除
なディケイが認められた。DTAB添加後の種々の水準のD
−ルシフェリンを含有する試薬からの発光強度を図10に
示す。測定はDTABを添加したのち直ちに行われたので、
DTABによるルシフェラーゼの経時的失活により影響され
なかった。最適より著しく低いD−ルシフェリン水準
(0.2g/または0.7mmol/)において、DTABの添加は
相対発光を増大させた。最適よりわずかに低い(0.4g/
)D−ルシフェリン水準において、DTABの添加が発光
に与えた影響はごくわずかであった。最適(0.6g/)
およびより高い(0.8g/)D−ルシフェリンにおいて
は、DTABの添加は発光を低下させた。これらの影響につ
いての最も可能性のある説明は、βCDに対してDTABがD
−ルシフェリンと比較してより高い親和性を有するとい
うものである。従ってDTABの添加はD−ルシフェリンを
βCDコンプレックスから解放し、その結果、最適より著
しく低いD−ルシフェリン水準においては発光が増大
し、最適よりわずかに低いD−ルシフェリン水準におい
ては発光が本質的に変化せず、最適またはより高いD−
ルシフェリンにおいては発光が低下した。
図2−7に示した結果を表1にまとめる。この表は6
実験すべてにつき5%の阻害または2%/分のディ
ケイ速度を生じる最低濃度(最終アッセイ混合物中にお
ける%として表す)を示す。これらの実験において抽出
剤は、各段階が0.01%であったSDS以外は0.02%ずつ段
階的に添加された。濃度の後の文字″d″はディケイ速
度が2%/分であったことを意味する。文字″i″は
阻害が5%であったことを意味する。許容し得ない阻
害およびディケイ速度についてのカットオフ限界は、あ
る程度任意に定められると思われる。それらが実際に意
味するものは、試料と試薬の混合の間で2.5分の遅延期
間に全5%の阻害および全2%/分のディケイ速度を与
える試料は10%低すぎるATP値を与えるであろうという
ことである。この水準における影響は、厳密に制御され
た分析操作を用いることにより数字的に補正しうるであ
ろう。
表1にまとめた実験においては、抽出剤は各段階が0.
01%であったSDS以外は0.02%ずつの段階的な濃度増大
を生じるように添加された。従って表中の濃度から0.02
%(SDSについては0.01%)を差し引いたものが分析上
の妨害を与えない許容しうる濃度を与える。これらの結
果は下記のとおり記載しうる: 1) 中和剤が無い場合、実験に含まれる抽出剤の許容
濃度は0.02%であり、これより高い濃度における主要
な問題はディケイ速度であった。
2) βCDの方が良好であったBZC以外は、αCDがすべ
ての抽出剤につき最良の中和剤であった。サイクロデキ
ストリン濃度を0.25−0.75%の範囲で増大させることに
より状況が改善された。SDS以外は阻害よりむしろディ
ケイ速度がサイクロデキストリンを用いる場合の制限因
子であった。
3) αCDを用いた場合の許容しうるディタージェント
濃度についての平均モル比は下記のとおり計算しうる:D
TABについては0.88、CPCについては0.37、BACについて
は0.48、DDAPSについては0.93、SDSについては0.19。β
CDを用いた場合の対応するBZCについての比は0.73であ
った。SDSについてはこのモル比は化学量論的量から予
想されるものよりかなり低い。SDSとαCDの比を0.19
に維持しない限り、すべての抽出剤を包接コンプレック
スとして中和した状態に維持するためには結合定数が低
すぎると思われる。
4) ツイーン80を用いた場合、許容濃度は一般に0.02
%(DDAPSについては0.04%、SDSについては<0.01)で
あり、主要な問題は阻害であった。スイーン80濃度を1
−3%の範囲で増大させることによって状況は改善され
なかった。
サイクロデキストリンはツイーン80と比較して、界面
活性剤型の抽出剤(カチオン、アニオン、ツビッターイ
オン)に対するより良好な中和剤であり、より高濃度の
抽出剤の使用が可能になると結論される(アッセイ前の
抽出物の希釈はより低いことが必要である)。大部分の
抽出剤につきαCDが最良の中和剤である。しかしBZCの
ように界面活性剤分子の疎水性テイルが嵩高すぎる場合
はβCD(またはよりいっそう嵩高なテイルについてはγ
CD)の方が良好である。明瞭な滴定曲線を示すサイクロ
デキストリン(高い結合定数を有する包接コンプレック
スの形成を示す)については、抽出剤の許容濃度は本質
的にサイクロデキストリン濃度に比例する。従って最終
アッセイ混合物中の抽出剤の予想水準にサイクロデキス
トリンの量を調整しうる。βCDの存在下である種のディ
タージェントにつき見られた発光刺激は、抽出剤添加時
にβCDから放出されるD−ルシフェリンの量を考慮して
常に最適D−ルシフェリン濃度でアッセイを実施するこ
とにより排除しうる。αCDおよびγCDも若干の発光阻害
を示すので、それらについても同様な、ただしはるかに
低い影響が見られるであろう(図8)。その場合も改善
策はβCDと同じ、すなわち若干高い濃度のD−ルシフェ
リンを用いることである。
実施例2 最適な抽出剤の種類および濃度の決定 特定の種類の細胞からのATPの抽出は、主として抽出
剤の種類および濃度、細胞の種類、ならびに全体的な試
料組成により影響される。細胞数、細胞の生理的条件
(増殖の位相など)、ならびに培地組成の相異による副
次的な影響を予想すべきである。高い緩衝能は酸による
抽出に影響を及ぼし、高い水準の蛋白質または脂質は界
面活性剤による抽出に影響を及ぼすであろう。従って特
定の種類の媒質中における特定の種類の細胞のいずれに
ついても、最適な抽出条件を見出す必要がある。数種類
の抽出剤に関し、各種類につき数種類の濃度を用いて得
たATP収率を比較することが、実際の細胞内ATP濃度を反
映する最適抽出条件を見出す唯一の方法である。これま
での研究(ランディン(A.Lundin),ATP、ADPおよびAMP
の抽出および自動ルミノメトリーアッセイ,Analytical
Applications of Bioluminescence and Chemiluminesce
nce,クリンカ、スタンレイ、トルペおよびホワイトヘッ
ド(L.Krinka,P.Stanley,G.Thorpe,T.Whitehead)監修,
pp.545−552,アカデミック・プレス、ニューヨーク,198
4)から、大部分の状況において最大ATP収率は10、5お
よび2.5%トリクロロ酢酸(TCA)を用いた収率と比較す
ることにより判定しうることが知られている。従って各
種抽出剤の比較には常に対照法としてTCAを含めるべき
である。最終的な抽出剤の種類および濃度は、試料のわ
ずかな変化がATP収率に影響を及ぼさないように選ぶべ
きである。抽出剤が最適濃度においてすら他の抽出剤よ
り有意に低い場合は、これはその収率が変動性であり、
わずかに変更した条件下ですら(たとえば他の増殖相)
かなり低いことを示す。抽出を妨害する試料成分の濃度
のわずかな増大がこれらの試料中のATP収率を低下させ
るのを避けるために、抽出剤濃度は最適濃度範囲内で可
能な限り高く選ぶべきである。
数種類の微生物を含む試料につき、各種抽出剤の最適
な種類および濃度を見出すために実験を行った。抽出剤
は第四アンモニウム型のカチオン界面活性剤(DTABおよ
びBZC)、ツビッターイオン型界面活性剤(DDAPS)、お
よびアニオン界面活性剤(SDS)であった。TCAは対照法
として含めた。微生物には細菌(緑膿菌(Ps.aeruginos
a)、大腸菌(E.coli)および枯草菌(B.subtili
s))、酵母(ビール酵母(Saccharomyces cerevisia
e))、および藻類(クロレラ・ブルガリス(Chlorella
vulgaris))が含まれる。細菌は振盪せずに30℃で一
夜、ルリア(Luria)ブロス(5g/ NaCl、10g/トリ
プトン、および5g/酵母エキス)中において増殖させ
た。酵母は振盪せずに37℃で一夜、ルリアブロス中にお
いて増殖させた。クロレラは既製培養物として、藻類お
よび原生動物のタイプカルチャーコレクション(フレッ
シュウォーター・バイオロジカル・アソシエーション、
英国LA22 OLPカンブリア、アンブレサイド、ザ・フェ
リー・ハウス)から得られた。クロレラ以外の培養物は
すべてアナラル水(Analar water)中に10倍希釈され
た。下記を含有する抽出剤の2倍希釈液を調製した:1
0、5、2.5、1.25、0.625、0.3125、0.15625、0.07812
5、0.0390625、0.01953125および0.009765625%の抽出
剤、5mmol/のEDTA中。等容量(0.1ml)の抽出剤およ
び希釈試料を混合した。1および30分後に、2%ツイー
ン80を含有するT/E緩衝液0.8mlを入れた2系列の平行し
たキュベットに、得られた抽出物50μlアリコートを移
した。ツイーン80は抽出剤の酵素阻害作用を中和する。
しかし抽出されたATPは、ATPを伴う酵素反応に必要なED
TAコンプレックス形成性2価金属イオンの存在下では希
釈後に本質的に安定であると予想される。高濃度の抽出
剤においては抽出は数秒以内に完了するが、低濃度では
抽出はこれよりかなり長期間を要し、低い収率を与え
る。高濃度の抽出剤における第1および第2系列からの
結果を比較すると、抽出物中におけるATPの安定性が推
定される。この実験においては、サイクロデキストリン
ではなくツイーン80を用いた。各アッセイにおいてATP
標準品を添加して自動1251ルミノメーターにより、高度
に希釈した試料を用いてアッセイを実施しうるからであ
る。キュベットをルミノメーターに装填し、以下のアッ
セイ操作を自動的に行った: 1) 温度を25℃に平衡化(10分)。
2) 0.1ml AMRの添加。
3) 20秒遅れて発光、Ismp、を測定。
4) 0.01ml ATPの添加。
5) 20秒遅れて発光、Ismp+std、を測定。
これらの遅れは安定な発光を確実に得るために採用さ
れた。キュベット中のATP濃度、Csmp、を次式により計
算した: Csmp=Cstd★Ismp/(Ismp+std−Ismp) 確実に細胞内ATPのみを測定するために、希釈物およ
びブランクにつき適宜な補正を行った(細胞内ATPのみ
を与える抽出剤はない)。結果を図11−15に示す。
緑膿菌(図11)および大腸菌(図12)については、最
適濃度のDTAB、BZCおよびTCAにつき類似のATP収率が得
られた。ツビッターイオン界面活性剤(DDAPS)もアニ
オン界面活性剤(SDS)も使用できないであろう。枯草
菌(図13)、ビール酵母(図14)、およびクロレラ・ブ
ルガリス(図15)については、最適濃度の5種類の抽出
剤すべてにつき類似の収率が得られた。図11−15のデー
タからは、いずれの微生物についても好ましい抽出剤に
ついての決定を行うことはできない。そのような決定に
は、たとえば異なる増殖位相の細胞についての研究を含
めた、より複雑な実験が要求されるであろう。さらに、
実際の試料において細胞を他の媒質に懸濁した場合、そ
の媒質中において抽出を行う必要がある。実際の試料が
数種類の微生物系統を含む場合、それらすべての系統に
つき研究を行う必要がある。しかし図11−15のデータ
は、抽出剤および各抽出剤につき後続実験に使用すべき
濃度範囲を選択するために利用しうる。このような選択
および若干の予備実験を特定の用途につき実施例3に示
す。
実施例3 微生物ATPのアッセイ法における抽出剤中和のためのサ
イクロデキストリンの使用 プロセス水中のバイオマス推定のためにATPのホタル
アッセイ法を採用しうる。プロセス水中の微生物には、
種々の細菌、酵母および藻類の系統が含まれるであろ
う。モデル実験において、共にルリアブロス中における
尋常変形菌(Proteus vulgaris)、枯草菌、エーロモ
ナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、蛍光
菌(Pseudomonas fluorescens)、緑膿菌およびビール
酵母の一夜培養物をアナラル水に10倍希釈した。ブロス
からの有機物質は界面活性剤を用いる抽出をある程度妨
害する可能性がある。プロセス水も若干の有機物質を含
有する可能性があるが、大部分は10倍希釈ブロスより低
い水準であると思われる。従ってモデル実験において有
効な抽出法は実際の試料においても有効であると思われ
る。希釈されていない藻類培養物(ミドリムシ(Euglen
a gracilis)、クロレラ・ブルガリスおよびアナベナ
・シリンドリカ(Anabaena cylindrica)、フレッシュ
ウォーター・バイオロジカル・アソシエーションから入
手)および実際のプロセス水試料についても同様に実験
を行った。
実施例2のデータによれば、すべての種類の微生物細
胞(細菌、酵母および藻類)に使用しうる3種類の抽出
剤はDTAB、BZCおよびTCAであった。これらの抽出剤それ
ぞれにつき、5mmol/のEDTAを含有するアナラル水中の
10、5および2.5%溶液を調製した。等容量の抽出剤溶
液を入れたキュベットに試料(50μl)を添加し、次い
でT/E緩衝液0.8mlを添加した。DTABを含有する抽出物に
ついては緩衝液は重量基準で5倍多いαCDをも含有し、
BZCを含有する抽出物については緩衝液は4倍多いβCD
を含有していた。その結果、モル比0.63(DTAB/αCD)
および0.61(BZC/βCD)、すなわち実施例1において計
算した最高許容比(それぞれ0.88および0.73)より十分
に低いものとなった。ATPのアッセイは実施例2の場合
と同様に1251ルミノメーターにより自動的に実施され
た。測定に際して第四アンモニウム化合物により発光の
ディケイをもたらすルシフェラーゼ失活は生じなかっ
た。これは、本発明の原理が実際の微生物ATPアッセイ
において確かに有効であることの重要な確認であった。
図16−18は上記9種類の微生物(尋常変形菌、枯草
菌、エーロモナス・ヒドロフィラ、蛍光菌、緑膿菌、ビ
ール酵母、ミドリムシ、クロレラ・ブルガリスおよびア
ナベナ・シリンドリカ)を用いたモデル実験で得た代表
的結果を示す。2種類の最低TCA濃度(有効濃度1.25お
よび2.5%)は、少なくとも4種類の微生物(枯草菌、
緑膿菌、ビール酵母およびクロレラ・ブルガリス)につ
いては不適当であった。最高TCA濃度(有効濃度5%)
は、6種類の微生物(枯草菌、エーロモナス・ヒドロフ
ィラおよびクロレラ・ブルガリス以外のすべて)におい
て最高または最高に近いATP収率を与えた。しかしこの
濃度は発光に著しい阻害を生じ、このためより低い感度
を与え、あらゆるアッセイにおいて内部ATP基準を用い
ることが必要となる。第四アンモニウム化合物(DTABお
よびBZC)による抽出は、調べた範囲においては抽出剤
濃度によりほとんど影響されなかった。最適濃度より2
倍過剰が安全性限界として好ましいであろう。従って実
験的証拠に基づいて、好ましい濃度は2.5%有効濃度と
すべきであるが、これより低い濃度も同様に良好に作動
するであろう。BZCは、4種類の微生物(エーロモナス
・ヒドロフィラ、緑膿菌およびビール酵母)において最
高または最高に近いATP収率を与えた。DTABは、7種類
の微生物(蛍光菌およびアナベナ・シリンドリカ以外の
すべて)において最高または最高に近いATP収率を与え
た。
抽出法についての最終決定は、各用途の実際の試料を
用いた実験に基づいてなされ、かつ可能な限り一般的で
あるように選定しなければならない。3種類のプロセス
水についてのこのような結果を図19に示す。3種類すべ
ての試料においてDTABを用いた場合に最良の結果が得ら
れた。等容量の抽出剤溶液(0.01−3.5%DTAB)で抽出
した他の3種類のプロセス水試料(0.05ml)について同
様な実験を行った。アッセイ混合物中において0.875%
の最終濃度(すなわち最高の最終DTAB濃度の5倍)を与
えるαCDをアッセイ緩衝液(0.85ml)に含有させること
により、抽出剤を中和した。アッセイは、0.05g/のル
シフェラーゼ(エンザイマティックス社、英国ケンブリ
ッジ)、4g/のD−ルシフェリン(バイオテーマAB、
スウェーデン、ダラロ)、100mmol/の酢酸マグネシウ
ム、0.02mmol/のピロリン酸四ナトリウム(シグマ・
ケミカル・カンパニー、米国ミズーリ州;T6379)および
2%のウシ血清アルブミン(A4503、シグマ・ケミカル
・カンパニー、米国ミジーリ州)を含有するホタル試薬
0.05mlを添加することにより実施された。各アッセイは
10-8mol/(アッセイ混合物1ml中の最終濃度)のATP標
準品の添加により検量された。ATP添加前および添加後
の発光測定を1251ルミノメーター(バイオオービット・
オイ、フィンランド、ツルク)により実施した。2重測
定で得た結果(図20)は、抽出物中1.25%のDTAB(等容
量の試料および2.5%DTABに相当)が安全性限界におい
て100%ATP収率を与えることを示す。ルーティン用とし
て用いるためにはこの結論をより多数の試料において確
認しなければならない。
実施例4 DNAの修飾または増幅反応における抽出剤の中和のため
のサイクロデキストリンの使用 この実験においては、細胞溶解後のディタージェント
の中和にサイクロデキストリンを使用することにつき調
べた。0.5ml PBS(シグマ)中のHeLa細胞(107)を1ml
の細胞溶解緩衝液(100mM Tris,pH8;1mM EDTA;1% S
DS;0.4mg/ml RNase A;40U/ml RNase T1)の添加に
より細胞溶解した。細胞溶解物を55℃で15分間インキュ
ベートしたのち、0.5mlのプロテイナーゼK(ベーリン
ガー;600μg/ml)を添加した。55℃で45分間消化を続け
た。溶解物のアリコート(200μl)を新鮮な試験管に
装入し、αCD(フルカ;H2O中10%w/v)を下記の量で溶
解物に添加した:10μl、20μl、50μl、100μlおよ
び200μl。緩和な撹拌により試料を混合したのち、PCR
によりDNAの機能活性を分析した。
PCR反応(反応容量50μl)を下記物質の添加により
設定した:10μlの5×PCR緩衝液(50mM Tris,pH8.5;2
50mM KCl、7.5mM MgCl2、1mM dATP、1mM dGTP、1mM
dCTP、1mM dTTP);2μlのCF座プライマー類(CF l
ocus primer)(各50μl):1μlのDNA(αCD処理細
胞溶解物または対照DNA);37μlの無菌H2O;2μlのTaq
ポリメラーゼ(エーメルシャム)。
反応プロフィルは下記のとおりであった: 93℃ 3分 55℃ 1分 30回 72℃ 2分 〃 〃 93℃ 30秒 〃 〃 55℃ 1分 〃 〃 72℃ 5分 PCR反応の終了後に、試料(20μl)をアガロースゲ
ル電気泳動により分析した(TBE緩衝液中1%アガロー
ス;サムブルック、フリッチュおよびマニアチス(J.Sa
mbrook,E.F.Fritsch,T.Maniatis),Molecular Cloning
−A Laboratory Manual,第2版、コールド・スプリ
ング・ハーバー・ラボラトリー・プレス,1989)。50μ
lまたは100μlのαCDを添加した細胞溶解物において
最大の増幅が達成され、200μlを添加した際にも増幅
が達成された。対照(αCDを添加しなかった細胞溶解
物)または10μlもしくは20μlのαCDを添加した細胞
溶解物においては増幅が生じなかった。
増幅可能な試料が制限酵素による消化も可能であるか
を評価するために、下記の実験を行った。50μlおよび
100μlのαCDで処理した細胞溶解物をHind III、EcoR
IおよびMsp I(エーメルシャム)により下記に従って消
化した:DNA(18μl)、緩衝液(2μl、製造業者によ
り供給されたまま)および酵素(約5U/μg)を混合
し、試料を37℃で1時間消化した。試料を上記に従って
アガロースゲル電気泳動により分析した。
制限消化後のαCD処理試料のバンディングパターンを
調べた。100μlのαCDを添加した試料のみが3種類す
べての酵素により消化され、これはこれらがこれらのHe
La細胞溶解物におけるDNAのPCRおよび制限分析双方に最
適な中和条件であることを示す。
PCRおよび制限消化実験は、粗製細胞溶解物中におい
てSDSを中和するためにαCDが有効であり、これらの細
胞溶解物中に存在するDNAが機能的に活性であることを
示す。
説明 図1:抽出剤による中和剤の滴定。測定は本文の記載に
従って実施された。それぞれ曲線上の第3地点の後で、
中和剤およびホタル試薬を含有する反応混合物約1mlに1
0μlの抽出剤を添加した。この図は2%DTABによる0.5
%αCD(◆)および2%ツイーン80(◇)の滴定、なら
びに2%BZCによる0.5%βCD(■)および2%ツイーン
80(□)の滴定を示す。
図2:各種中和剤の存在下でDTABがディケイ速度および
相対発光に及ぼす影響。中和剤の種類は図中に示され
る。ディケイ速度(%/分)は下記の記号により示され
る:◇(中和剤なし)、□(0.25%サイクロデキストリ
ンまたは1%ツイーン80)、△(0.50%サイクロデキス
トリンまたは2%ツイーン80)、および*(0.75%サイ
クロデキストリンまたは3%ツイーン80)。相対発光
(1回目の抽出剤添加の前の値に対する%)は下記の記
号により示される:◆(中和剤なし)、■(0.25%サイ
クロデキストリンまたは1%ツイーン80)、▲(0.50%
サイクロデキストリンまたは2%ツイーン80)、および
×(0.75%サイクロデキストリンまたは3%ツイーン8
0)。
図3:各種中和剤の存在下で、CPCがディケイ速度およ
び相対発光に及ぼす影響。中和剤の濃度および記号は図
2の場合と同様(γCDは省略)。
図4:各種中和剤の存在下で、BACがディケイ速度およ
び相対発光に及ぼす影響。中和剤の濃度および記号は図
2の場合と同様(γCDは省略)。
図5:各種中和剤の存在下で、BZCがディケイ速度およ
び相対発光に及ぼす影響。中和剤の濃度および記号は図
2の場合と同様(最高濃度の中和剤は省略)。
図6:各種中和剤の存在下で、DDAPSがディケイ速度お
よび相対発光に及ぼす影響。中和剤の濃度および記号は
図2の場合と同様(最高濃度の中和剤は省略)。
図7:各種中和剤の存在下で、SDSがディケイ速度およ
び相対発光に及ぼす影響。中和剤の濃度および記号は図
2の場合と同様(γCDは省略)。
図8:中和剤が相対発光に及ぼす影響。中和剤の濃度は
下記のとおりである:0.25、0.50および0.75%サイクロ
デキストリン(■、αCD;◆、βCD、▲、γCD)または
1、2および3%ツイーン80(×)。
図9:0.75%βCDの存在下(◇)および不在下(◆)で
ルシフェリン濃度がホタル試薬からの相対発光に及ぼす
影響。βCDの不在下で0.2g/のルシフェリンによる発
光を100%と設定する。
図10:DTABが、0.75%βCDおよび各種濃度のD−ルシ
フェリン(◆、0.2g/;◇、0.4g/;■、0.6g/、
□、0.8g/)を含有するホタル試薬の相対発光に及ぼ
す影響。各種試薬にDTABを添加する前の発光を100%と
設定する。
図11:抽出剤濃度が、水中に10倍希釈した緑膿菌の一
夜培養物におけるATP収率に及ぼす影響。抽出時間:1分
(×)および30分(□)。
図12:抽出剤濃度が、水中に10倍希釈した大腸菌の一
夜培養物におけるATP収率に及ぼす影響。抽出時間:1分
(×)および30分(□)。
図13:抽出剤濃度が、水中に10倍希釈した枯草菌の一
夜培養物におけるATP収率に及ぼす影響。抽出時間:1分
(×)および30分(□)。
図14:抽出剤濃度が、水中に10倍希釈したビール酵母
の一夜培養物におけるATP収率に及ぼす影響。抽出時間:
1分(×)および30分(□)。
図15:抽出剤濃度が、水中に10倍希釈したクロレラ・
ブルガリスの一夜培養物におけるATP収率に及ぼす影
響。抽出時間:1分(×)および30分(□)。
図16:各種抽出剤を用いた尋常変形菌、枯草菌および
エーロモナス・ヒドロフィラにおけるATPの収率。種々
の系統の一夜培養物を10倍希釈し、アリコートを、5mmo
l/のEDTAを含有する等容量の10、5または2.5%TCA
(□)、BZC(△)またはDTAB(◇)と混合することに
より抽出した。BZCを含有する抽出物は4倍(w/w)量の
βCDにより中和された。DTABを含有する抽出物は5倍
(w/w)量のαCDにより中和された。
図17:各種抽出剤を用いた蛍光菌、緑膿菌およびビー
ル酵母におけるATPの収率。抽出および記号は図16の場
合と同様。
図18:各種抽出剤を用いた3種類の藻類培養物におけ
るATPの収率。抽出および記号は図16の場合と同様。
図19:各種抽出剤を用いた3種類のプロセス水試料に
おけるATPの収率。抽出および記号は図16の場合と同
様。
図20:10種類の異なる濃度のDTABで抽出したプロセス
水試料におけるATPの収率。3種類の試料につき異なる
記号を用いて2重実験を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−203797(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07H 1/08 C12Q 1/00 - 1/68 BIOSIS(DIALOG)

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】細胞内成分および、該成分の抽出用物質を
    含有する溶液を供給することにより細胞内成分の抽出物
    を調製する方法において、上記抽出用物質はノニオン、
    アニオン、カチオン、ツビッターイオン界面活性剤また
    はそれらの界面活性剤の混合物であり、該溶液を該抽出
    用物質の中和のために適切な種類および適切な量のサイ
    クロデキストリンまたはサイクロデキストリン誘導体と
    接触させることを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】溶液が細胞を抽出用物質と接触させること
    により供給される、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】サイクロデキストリンが溶液状で使用され
    る、請求項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】サイクロデキストリンが抽出用物質より化
    学量論的に過剰に使用される、請求項1ないし3のいず
    れかに記載の方法。
  5. 【請求項5】サイクロデキストリンがα−サイクロデキ
    ストリン、β−サイクロデキストリンまたはγ−サイク
    ロデキストリンである、請求項1ないし4のいずれかに
    記載の方法。
  6. 【請求項6】細胞内成分がATPである、請求項1ないし
    5のいずれかに記載の方法。
  7. 【請求項7】抽出物中の細胞内成分が酵素アッセイされ
    る、請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
  8. 【請求項8】酵素アッセイがホタルルシフェラーゼ反応
    に基づくものである、請求項1ないし7のいずれかに記
    載の方法。
  9. 【請求項9】細胞内成分がDNAまたはRNAである、請求項
    1ないし5のいずれかに記載の方法。
  10. 【請求項10】抽出されたDNAまたはRNAが増幅または酵
    素による修飾もしくは制限処理により後続処理される、
    請求項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】酵素アッセイまたは後続処理がサイクロ
    デキストリンまたは誘導体の存在下で実施される、請求
    項7、8または10に記載の方法。
  12. 【請求項12】請求項1ないし8のいずれかに記載の方
    法により生物検体中のATPを抽出およびアッセイするた
    めのキットにおいて、下記の構成成分: a) ノニオン、アニオン、カチオン、ツビッターイオ
    ン界面活性剤またはそれらの界面活性剤の混合物である
    抽出用物質(他の成分と分離して保存) b) サイクロデキストリン、 c) ホタルルシフェラーゼ試薬、 d) アッセイ用緩衝液 を含むキット。
  13. 【請求項13】ノニオン、アニオン、カチオン、ツビッ
    ターイオン界面活性剤またはそれらの界面活性剤の混合
    物である抽出用物質が、流体検体と接触した際に適切な
    サイズの試料を捕獲するキャリヤー上または中において
    乾燥されており、 サイクロデキストリンがアッセイ用緩衝液に溶解されて
    おり、 ホタルルシフェラーゼ試薬が、該試薬をアッセイ用緩衝
    液中へ放出しうるキャリヤー上または中において乾燥さ
    れている、 請求項12に記載のキット。
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