JP3146985B2 - 結晶成長方法および結晶成長用固体素子 - Google Patents

結晶成長方法および結晶成長用固体素子

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    • C30CRYSTAL GROWTH
    • C30BSINGLE-CRYSTAL GROWTH; UNIDIRECTIONAL SOLIDIFICATION OF EUTECTIC MATERIAL OR UNIDIRECTIONAL DEMIXING OF EUTECTOID MATERIAL; REFINING BY ZONE-MELTING OF MATERIAL; PRODUCTION OF A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; SINGLE CRYSTALS OR HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; AFTER-TREATMENT OF SINGLE CRYSTALS OR A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; APPARATUS THEREFOR
    • C30B7/00Single-crystal growth from solutions using solvents which are liquid at normal temperature, e.g. aqueous solutions

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子化合物の結
晶化を行なうための方法およびそれに用いる固体素子に
関し、特に、価電子が制御された半導体基板等を用い
て、蛋白質を初めとする種々の生体高分子の結晶化を行
なうための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】蛋白質を初めとする各種生体高分子およ
びそれらの複合体における特異的性質および機能を理解
する上で、それらの詳細な立体構造は不可欠な情報とな
っている。たとえば、基礎化学的な観点からは、蛋白質
等の3次元構造の情報が、酵素やホルモン等による生化
学系での機能発現のメカニズムを理解する上で基礎とな
る。また、産業界のうち特に薬学、遺伝子工学、化学工
学の分野においては、3次元構造は、ドラッグデザイ
ン、プロテインエンジニアリング、生化学的合成等を進
める上で合理的な分子設計に欠かせない情報を提供す
る。
【0003】このような生体高分子の原子レベルでの3
次元立体構造情報を得る方法としては、現在のところX
線結晶構造解析が最も有力かつ高精度な手段である。近
年のX線光源・回折装置のハードウェア上の改良による
測定時間の短縮、測定精度の向上に加え、コンピュータ
の計算処理速度の飛躍的な向上により、解析スピードが
大幅に向上してきている。今後も、この手法を主流とし
て3次元構造が明らかにされていくものと思われる。
【0004】一方、X線結晶構造解析により生体高分子
の3次元構造を決定するためには、目的とする物質を抽
出・精製後、結晶化することが必須となる。しかし、現
在のところ、どの物質に対しても適用すれば必ず結晶化
できるといった手法および装置がないため、勘と経験に
頼ったトライアンドエラーを繰返しながら結晶化を進め
ているのが実状である。生体高分子の結晶を得るために
は、非常に多くの実験条件による探索が必要であり、結
晶成長がX線結晶解析の分野での最も大きなボトルネッ
クとなっている。
【0005】蛋白質等の生体高分子の結晶化は、通常の
無機塩等の低分子量化合物の場合と同様、高分子を含む
水または非水溶液から溶媒を奪う処理を施すことによ
り、過飽和状態にして、結晶を成長させるのが基本とな
っている。このための代表的な方法として、(1)バッ
チ法、(2)透析法、(3)気液相間拡散法があり、試
料の種類、量、性質等によって使い分けられている。
【0006】バッチ法は、生体高分子を含む溶液に、水
和水を奪う沈殿剤を直接添加して、生体高分子の溶解度
を低下させ、固相へ変化させる方法である。この方法で
は、たとえば固体の硫酸アンモニウム(硫安)がよく使
用される。この方法は、溶液試料を大量に必要とし、塩
濃度、pHの微妙な調整が困難であること、さらに操作
に熟練を要し、再現性が低いといった欠点を有する。透
析法は、バッチ法の欠点を改善した方法で、たとえば図
12に示すように、透析チューブ101の内部に生体高
分子を含む溶液102を密封し、透析チューブ外液10
3(たとえば緩衝溶液)のpH等を連続的に変化させ結
晶化を行なう方法である。この方法によれば、内外液の
塩濃度、pH差を任意の速度で調節可能であるため、結
晶化の条件を見出しやすい。気液相間拡散法は、たとえ
ば図13に示すように、カバーガラス等の試料台111
上に、試料溶液の液滴112を載せ、密閉した容器11
3内にこの液滴と沈殿剤溶液114を入れることによ
り、両者間の揮発成分の蒸発によって緩やかに平衡を成
立させる手法である。
【0007】しかし、蛋白質等の生体高分子の結晶化に
は、前述したように種々の問題点があるのが実状であ
る。
【0008】まず、結晶性が良好なものや、大型の単結
晶を得ることが困難であった。これは、生体高分子が一
般的に分子量が大きいために、重力の影響を受けやす
く、溶液内で対流を引起こすことが原因であると考えら
れている(たとえばF. Rosenberger, J. Cryst. Growt
h, 76, 618 (1986))。すなわち、生体高分子や生成
した微小な結晶核が自重で沈降し、これによって分子や
核周辺での溶液の対流が引起こされる。さらには、生成
した結晶表面部でも、分子の濃度が低下するために局所
的な溶液の対流が発生する。以上のようにして発生した
溶液内の対流によって、生成する結晶は溶液内で移動
し、しかも、周辺の拡散による分子の供給層は著しく減
少する。このため、結晶成長速度が低下したり、結晶面
における成長の異方性等が発生し、結晶化が妨げられる
ものと思われる。
【0009】また、生体高分子結晶には、他の物質の結
晶とは異なり、多量の溶媒(主として水)が含まれる
(≧50体積%)。この溶媒が、無秩序であり、かつ結
晶中で分子間の空隙となっている部分を容易に動き得
る。また、分子が巨大であるにもかかわらず、結晶中で
広範囲な分子間のパッキングコンタクトがほとんどな
く、わずかの分子−分子間コンタクトまたは水を介した
水素結合によるコンタクトしか存在していない。このよ
うな状態も結晶化を妨げている要因である。
【0010】さらに、生体高分子は結晶条件に非常に敏
感である。生体高分子は、個々の分子表面間の相互作用
により溶媒中で安定化されている一方、分子表面の電荷
分布、特にアミノ酸の分子表面近傍でのコンフォメーシ
ョン等は、環境、すなわち溶液のpH、イオン強度、温
度、緩衝溶液の種類、誘電率等により大きく変化する。
したがって、結晶化プロセスは、複雑な種々の条件の絡
み合ったマルチパラメータプロセスとなり、どの物質に
対しても適用できる統一的な手法が確立できてない。ま
た蛋白質については、水溶性蛋白質に比べ、生化学的に
非常に重要であるにもかかわらず、疎水性の膜蛋白質の
結晶化が、現在非常に困難であり、結晶化を行ないさら
に高分解能の解析に成功した例はこれまでわずか2件の
みである。
【0011】以上のように、蛋白質を初めとする生体高
分子およびこれらの複合体の結晶化は、学術および産業
上の重要なプロセスであるにもかかわらず、これまで試
行錯誤を繰返しながら進められてきたため、X線結晶構
造解析の最大のネックとなっている。したがって、今後
結晶化の基本原理を理解して、どの分子に対しても適用
し得る結晶化技術を開発する必要がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
したように多様な特性を有するためにどの物質に対して
も適用できる手法がなく、試行錯誤を繰返しながら進め
られてきた従来の結晶化プロセスの欠点を、技術的に解
消することである。
【0013】具体的には、本発明は、種々の生体高分子
および生体高分子から主として構成される生体組織の結
晶化において、重力の影響による溶液内対流の影響を低
減し、核形成を制御することを目的とする。
【0014】さらに本発明は、微結晶の大量生成を抑制
または制御し、X線構造解析を可能にし得る大型の結晶
を得るための技術を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の結晶成長方法
は、溶液中に含まれる高分子化合物の結晶を成長させる
方法であって、高分子化合物を含む溶液の環境に応じて
表面部分の正孔または電子の濃度を制御できるよう価電
子が制御され、かつ深さおよび/または開口部の幅が異
なる2つ以上の溝または孔を有する固体素子を与える工
程と、該固体素子を高分子化合物を含む溶液に接触させ
て溝または孔に溶液を保持させる工程とを備える。該固
体素子において、溝または孔の外よりも内で高分子化合
物の結晶化が促進されるよう価電子が制御されている。
この方法では、溶液を保持する溝または孔において、制
御された価電子により固体素子の表面にもたらされる電
気的状態の下、高分子化合物の結晶を成長させる。
【0016】該固体素子として不純物添加された半導体
基板を用いることができる。半導体基板には、深さおよ
び/または開口部の幅が異なる2つ以上の溝または孔が
形成されている。
【0017】この半導体基板において、溝または孔の外
よりも内で高分子化合物の結晶化を促進させるため、添
加された不純物の種類および/または濃度を、溝または
孔の内と外とで異ならしめることができる。
【0018】本発明は、結晶成長を制御するための固体
素子を提供する。この固体素子は、深さおよび/または
開口部の幅が異なる2つ以上の溝または孔を有する。こ
の固体素子において、結晶化すべき物質を含む溶液の環
境に応じて表面部分の正孔または電子の濃度を制御でき
るよう価電子が制御され、かつ溝または孔の内と外とに
おいて異なる態様で価電子が制御されている。
【0019】このような固体素子として、上述したよう
に不純物添加された半導体基板を用いることができる。
添加された不純物の種類および/または濃度は、半導体
基板に形成された溝または孔の内と外とで異ならしめる
ことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】蛋白質を初めとする生体高分子の
ほとんどは、溶液内において幾何学的に特異的な構造お
よび静電的な相互作用(静電斥力・引力、ファンデルワ
ールス力)によって分子間同士の認識が行なわれてい
る。静電的なエネルギに基づく分子間の相互作用におい
ては、個々の分子最表面でのわずかな空間的な電荷分布
の相違が、分子間の認識度合い、分子集合体の作りやす
さに決定的な影響を及ぼすことが予想される。したがっ
て、溶液内をブラウン運動しながら衝突を繰返している
個々の分子では、周期的かつ規則的な構造を有する分子
集合体の核が非常に形成されにくいと考えられる。さら
に、結晶核が形成されたとしても、各分子表面の分子構
造、電荷分布が全く同一ではなく冗長性を有しておれ
ば、核の周囲に集合する各分子は互いに緩く結合するこ
とになり、よって結晶性が低下するものと考えられる。
【0021】蛋白質分子の結晶生成に関しては、その核
生成の初期過程が重要であるとの報告がなされている。
Yonath等は、Bacillus Stearothermophilus より抽出さ
れた巨大なリボソームサブユニットの結晶化初期過程を
電子顕微鏡により観察している。それによれば、結晶化
が進行するためには、初期過程として、各分子が2次元
的な規則構造(編み目状、星状、千鳥格子状等)をとっ
て凝集することが必須であると述べている(Biochemist
ry International, Vol. 5, 629-636 (1982))。
【0022】これがすべての物質に共通して必須である
かどうかは不明である。しかし、一般に蛋白質分子は分
子間相互作用が弱く、しかも分子表面が局部的に帯電し
ているため、凝集しにくいことを考慮すると、結晶化の
初期過程において核となる分子を2次元的に配列させる
何らかの条件が整えば、その後の結晶化は、これを核と
してエピタキシャル的に進行するものと考えられる。
【0023】本発明では、結晶核を安定して生成させる
ため、価電子が制御された固体素子を結晶化すべき物質
を含む液に接触させる。該固体素子は、液と接触する表
面から内部に向かって、あるいは該固体素子の断面内に
おいて、価電子制御により電子および正孔の濃度を制御
することができ、それによって固体素子表面の電気的状
態を制御することができる。たとえば図1に、本発明に
従い、固体素子表面において結晶核が固定され、結晶が
成長していく様子を模式的に示す。図1(a)に示すよ
うに、価電子制御により、所定の電気的状態とされる固
体素子1の表面に、結晶核2が静電的な作用によって固
定される。そして、図1(b)に示すように、蛋白質等
の化合物は、静電的な相互作用により、固体素子表面に
凝集し、結晶核の生成が促進され、結晶の成長がもたら
される。したがって、固体素子表面の電気的特性を制御
することにより、結晶化の制御が可能となる。たとえ
ば、固体素子表面に固定される結晶核の種類、量、配列
密度等を価電子制御により調整することができ、それに
よって結晶化の制御が可能となる。また、生成された結
晶核が固体素子表面に固定されるため、溶液内の対流等
による核の微小な変動が抑制され、核の形成に従って規
則的に分子が集合し、結晶性が向上することも期待され
る。結晶化すべき分子の表面の電荷分布が溶液のpHや
分子の変性によって微妙に変化しても、固体素子表面に
は必ず該分子の実効表面電荷と補償する空間電荷が誘起
されるため、結晶核の2次元的な生成が容易にかつ優先
的に行なわれることが期待される。
【0024】また、後により詳細に説明するように、固
体素子に形成された溝の底部では、結晶化すべき分子に
対して静電的相互作用をほぼ等方的に及ぼすことができ
る。溝の底部で結晶核が形成される場合、重力の影響に
基づく対流から結晶核を保護することが可能になる。す
なわち、静電的相互作用により結晶核を溝の底部に静止
させることができる。ほぼ静止した核に基づいて結晶が
成長していけば、過剰な微結晶の生成は抑制され、結晶
核の表面に規則的に分子が集合した大型の結晶を得るこ
とができると期待される。
【0025】また、一般に電解質溶液内における帯電物
質または分子の凝集性は、それらの間の電気二重層斥力
とファンデールワールス力との和に依存するため、物質
または分子同士を凝集させる場合、電解質溶液中に添加
する表面電位を調整するための塩濃度をコントロールす
ることが非常に重要となる。しかし本発明によれば、固
体素子表面の静電特性は予め価電子制御により調整でき
るため、塩濃度の調整が容易または不要になるというメ
リットも生じる。
【0026】このような目的に供される固体としては、
上述したような静電特性を有し、電荷量および極性の制
御が可能な物質で、さらに溶液中で化学的に安定な物質
であれば、どのようなものでもよい。この目的を達成す
るために最適な材料の1つとしてシリコン結晶を挙げる
ことができる。以下、シリコン結晶を用いた場合につい
て予想される結晶化のメカニズムを以下に説明する。し
かしながら、以下に記載されるメカニズムは、本発明に
従って用いられる他の固体素子にも当てはめることがで
きる。
【0027】図2および図3に、本発明による結晶成長
用固体素子の構造の概略を示す。図2は、溶液中で解離
して負の実効表面電荷を有する高分子化合物の結晶化を
対象としたものである。素子において、P型シリコン基
板10の表面には、N型シリコン層11が形成されてい
る。さらに表面には、複数のV字状の溝(V溝)12
a、12b、12cおよび12dが形成されている。そ
れぞれのV溝における深さおよび開口部の幅は異なって
いる。図3も同様の解離特性を有する高分子化合物の結
晶化を対象とする。P型シリコン基板20の表面にはN
型シリコン層21が形成されている。また表面には、複
数の凹状の溝22a、22bおよび22cが形成されて
いる。それぞれの溝における開口部の幅は異なってい
る。溝22aは、開口部の幅よりも深さの方が顕著に長
い井戸状または角柱状の溝である。溝22bおよび22
cは、階段状の内壁を有している。溝の深部に行くに従
って、開口部の幅は狭くなっている。このように、溝の
深部に行くに従って開口部の幅が狭くなっているものは
より好ましい。なお、上記と逆の解離特性を有する高分
子化合物に対しては、シリコン基板の極性を図2または
3に示したものと逆にすればよい。すなわち、溶液中に
おいて正の実効電荷を有する高分子化合物の結晶化を目
的とする場合、N型シリコン基板上にP型シリコン層を
形成した素子を用いることができる。なお、いずれの素
子においても、溝の内側には、基板表面が露出してい
る。すなわち図2または図3に示す素子の場合、溝の外
で溶液と接触する部分にはN型シリコン層が形成されて
いる一方、溝の内壁はP型シリコン基板で形成されてい
る。同様にN型シリコン基板上にP型シリコン層を形成
する場合、溝の内壁はN型シリコン基板で形成され、溶
液と接触する溝の外の部分はP型シリコン層が設けられ
る。
【0028】図4は、図2に示す素子の製造プロセスの
概略を示したものである。まず、表面が清浄にされ、た
とえば鏡面研磨されたP型シリコン基板30を準備する
(図4(a))。次いで、P型シリコン基板30の表面
にイオン注入等の方法によってN型シリコン層31を形
成する(図4(b))。その後、CVD等の方法によっ
てシリコン酸化膜(SiO2 )33を形成する(図4
(c))。次いで、リソグラフィ等の適当な方法を行な
った後、溝部を形成すべき領域のシリコン酸化膜を除去
する(図4(d))。酸化膜で覆われていない部分につ
いてエッチングを行なっていけば、溝32a、31b、
32cおよび32dが形成される(図4(e))。次に
シリコン酸化膜を除去すれば、必要な固体素子が得られ
る(図4(f))。なお、図示していないが、シリコン
酸化膜を除去した後、固体素子の全面にシリコン酸化膜
を再び形成してもよい。
【0029】図5は、図3に示す固体素子の製造プロセ
スの概略を示している。まずP型シリコン基板40を準
備する(図5(a))。次いで基板40上にイオン注入
等の方法によってN型シリコン層41を形成する(図5
(b))。適当なリソグラフィ等を行なった後、ドライ
エッチングにより所定の部分に溝42aを形成していく
(図5(c))。溝の開口部を広くしたい部分は、さら
にドライエッチングを繰返すことによって、異方的に深
くかつ開口部の面積の異なる複数の溝42bおよび42
cが形成される(図5(d)および(e))。
【0030】以下に、本発明の固体素子を用いて結晶化
が制御されるメカニズムを説明する。解離して負の実効
表面電荷を有する高分子化合物を含有する電解質水溶液
を、価電子制御されたNまたはP型シリコン結晶に接触
させると、N型シリコン表面に対してはショットキー障
壁が形成される一方、P型シリコン表面に対してはオー
ミック性接触が得られる。P型シリコン表面では、負の
電荷を有する高分子電解質に対して、バルクシリコン側
から常に正孔が供給されるため(オーミック特性)、高
分子は常にシリコン表面に凝集し続けることが予想され
る。一方、N型シリコンの表面には、水溶液の電解質濃
度に依存した表面電位が発生するとともに、内部に空間
電荷層領域が形成される。この空間電荷量は、N型シリ
コンのドーパント濃度にも依存する。したがって、電解
質溶液中において負の電荷を有する高分子は、このN型
シリコンの有する正の空間電荷を少なくとも補償するま
で、シリコン表面に凝集し続けることが予想される。よ
って、空間電荷層領域が形成されるシリコン表面に対し
ては、高分子化合物の凝集および結晶化が制限されて起
こるのに比べ、オーミック性接触が形成されるシリコン
表面に対しては、高分子化合物の凝集が無制限に進行す
ることが予想される。
【0031】また、たとえばN型シリコンにおいて、不
純物濃度が異なる2つ以上の領域が形成されている場合
も、それらの領域によって異なる態様で結晶化が進むこ
とが予想される。N型シリコンの不純物濃度が低く高抵
抗の場合と、不純物濃度が高く低抵抗の場合について、
その効果の相違について述べる。N型シリコンの場合、
低不純物濃度(あるいは高抵抗)基板では、ドーパント
濃度が低いため表面近傍に形成される空間電荷層の幅が
広くなることにより、空乏層容量が小さく、したがって
シリコン表面に誘起される表面電位は高不純物濃度(あ
るいは低抵抗)基板の場合と比較して、大きくなること
が予想される。この表面電位は、高分子化合物の有する
実効表面電位と極性が逆となるため、静電的な引力の作
用により凝集が促進されると予想される。すなわち、低
不純物濃度で高抵抗のN型シリコン基板の方が、高不純
物濃度で低抵抗のN型シリコン基板より、基板表面によ
り多くの結晶を析出させることができると予想される。
【0032】以上のように、空間的に抵抗の異なる領域
を形成するには、シリコン表面に選択的に不純物をドー
ピングすることで容易に達成される。また別の方法とし
て、シリコン表面をエッチングすることによって、抵抗
値の異なる表面を露出させることも可能である。
【0033】本発明に用いられるN型およびP型シリコ
ン結晶は、通常のLSIプロセスに用いられるシリコン
ウエハと同等の特性を有するものでよい。シリコン結晶
の比抵抗は0.0001〜1000Ωcm程度の範囲内
であればよく、より好ましくは0.001〜100Ωc
mの範囲のものを用いることができる。N型およびP型
に価電子制御されたシリコンの調製方法として、種々の
ものが考えられ、どのような方式のものでもよいが、最
も簡便で不純物濃度の制御が正確に行なえる方法とし
て、イオン注入法が挙げられる。この場合、P型および
N型の価電子制御は、それぞれ周期律表第III族およ
び第V族に属する元素のイオンをシリコン中に注入、ア
ニールすることによって容易に行なうことができる。P
型にするためのIII族元素としてB,Al、Ga、I
n、Tl等を挙げることができる。特にBが一般的であ
る。N型にするための第V族元素としてN、P、As、
Sb、Bi等を挙げることができ、特にP、As、Sb
が一般的である。また、結晶の表面は、ミラーポリッシ
ュされたものが、析出する結晶核の制御を行なう上で好
ましい。
【0034】本発明において、シリコン基板表面に不純
物層を形成する際、その厚みは、0.1〜200μmが
好ましく、1〜50μmの範囲がより好ましい。これ以
外の範囲では、作製が容易でなかったり、効果がなくな
ったりするため望ましくない。
【0035】以上、価電子制御が容易な半導体結晶シリ
コンを用いた例について説明したが、本目的を達成する
ため、同様の機能を有する他の材料を適宜用いることが
できる。たとえば、シリコン以外の半導体結晶を好まし
く用いることもでき、さらには、半導体結晶以外の材
料、たとえば電荷分布の制御された無機化合物、有機化
合物、高分子化合物、およびそれらの複合物を候補とし
て挙げることができる。
【0036】本発明において、固体素子には複数の溝ま
たは孔が形成される。図2に示す素子はV溝、図3に示
す素子は凹状の溝をそれぞれ有している。溝の代わり
に、たとえば角錐状または円錐状の孔を固体素子表面に
設けてもよい。これらの溝または孔は、深部に行くに従
って開口の幅が狭くなっていることがより好ましい。実
際の結晶成長に際しては、何種類かのサイズの溝または
孔を1つの素子表面に多数設けておく方が有利である。
【0037】結晶化のために用いる固体素子は、あらゆ
る高分子化合物について適用できることが望ましい。一
方、結晶化の対象となる分子のサイズや帯電特性等によ
って、必要とされる固体素子の特性も変わってくると考
えられる。溝または孔のサイズについても、結晶化すべ
き分子のサイズ、帯電特性等に応じて変える必要がある
と考えられる。しかしながら、対象となる個々の高分子
化合物ごとに溝を有する固体素子を調製していたので
は、コストおよび時間がかかり、効率的とはいえない。
そこで、予め固体素子上にサイズの異なる溝を複数形成
しておけば、対象となる分子種が変わったとしても、い
ずれかの溝において、より好ましい結晶化の条件を提供
できるはずである。したがって、1つの固体素子で、種
々の分子の結晶化を行なうことが可能になる。これによ
り、固体素子作製のための労力およびコストも低減され
る。
【0038】基板表面に形成される溝または孔の開口部
のサイズおよび溝または孔の深さは、対象とする高分子
の種類によって、適宜好ましい範囲を設定するのが望ま
しい。一般的には、溝または孔の開口部の幅は0.01
〜100μmの範囲が好ましく、溝の長さは1〜10m
mの範囲が好ましい。また、複数の溝または孔は、1μ
m〜1mmの範囲の間隔で適宜作製することができる。
溝または孔の深さは、たとえば0.01〜200μmの
範囲で調整するのが好ましい。しかしながら、以上に述
べたサイズは、主として固体素子の作製上の制約からく
るものであって、これ以外のサイズであっても、固体素
子の性能、すなわち結晶化に決定的な悪影響を及ぼすも
のではない。
【0039】図6および図7は、溝または孔の結晶成長
に対する作用効果を説明するためのものである。図6に
示すように、結晶化すべき分子を含有する電解質溶液中
に固体素子を浸漬すると、PまたはP- シリコンよりな
るV溝部52は、NまたはN+ シリコン層よりなる表面
部51と比較して、解離した高分子との静電相互作用が
及ぶ範囲(電気二重層の幅と考えてもよい)が広くなる
ことが期待される。図において、点線で示した領域54
が、電気相互作用の及ぶ範囲である。すなわち、表面部
51上よりもV溝部52において領域54は厚くなって
いる。特に、V溝部52の最も深い中央部は、この作用
の及ぶ領域の重なりにより、領域54の幅が最も広くな
ることが予想される。
【0040】したがって、PまたはP- シリコンからな
るV溝部52の最深部において、結晶核または結晶核と
なる分子凝集体55は、V溝表面から静電引力をほぼ等
方的に受け、V溝内において拘束されることになる。V
溝深部にある分子凝集体55について、重力に基づく溶
液内の対流の影響が静電引力によって抑制されるため、
結晶核の生成および結晶の成長が安定して起こり得ると
期待される。一方、NまたはN+ シリコンからなる表面
部51上では、上述したように結晶核の形成が抑制され
る。また、もしこの表面に結晶核が形成されても、溶液
内の対流の影響を受けて、結晶核近傍での拡散供給層の
幅が変動するため、結晶性の低下または成長速度の低下
がもたらされると考えられる。したがって、溝部52に
おいて選択的に結晶の成長が進み、大型の結晶が得られ
る。
【0041】図7に示す固体素子上においても、同様の
メカニズムによって安定した結晶成長が起こるものと考
えられる。すなわち、溝部62の開口幅が最も狭い部分
において、結晶核65が生成し、静電引力によって拘束
される。静電相互作用の及ぶ領域64は、溝部62の最
深部において最も幅が広くなっている。一方、基板60
上に形成されたNまたはN+ シリコン層61上では、上
述したように結晶の生成が抑制される。したがって、溝
部62の深部において結晶核が生成し、結晶が成長す
る。
【0042】図8は、本発明を行なうためのより具体的
な装置を示す。図8に示す装置では、容器71内に緩衝
溶液72が収容され、その中に透析膜チューブ73が設
けられている。透析膜チューブ73内には、高分子化合
物を含む母液72とともに、結晶成長用固体素子、たと
えば上述したようなシリコン半導体基板75が収容され
ている。透析膜チューブ73は、クローサ75aおよび
75bで密封され、緩衝溶液72に浸漬される。容器7
4の開口は、蓋76によって覆われる。この装置におい
て、透析が進められるとともに、シリコン半導体基板7
5上に母液74から高分子の結晶が析出されていく。な
お、この装置以外にも、たとえば透析チューブを使用せ
ず、シリコン基板上に母液を液滴状に保持して結晶化を
行なう等の方法および装置も適用可能である。
【0043】本発明は、種々の高分子化合物、特に高分
子電解質を結晶化するために用いることができる。本発
明は特に、酵素および膜蛋白質等の蛋白質、ポリペプチ
ド、ペプチド、ポリサッカライド、核酸、ならびにこれ
らの複合体および誘導体等を結晶化させるため好ましく
適用される。本発明は、生体高分子の結晶化のため好ま
しく適用される。
【0044】
【実施例】ニワトリ卵白製リゾチーム(Lysozyme, From
Chicken Egg White)をpH=6.8の標準緩衝溶液に
溶解し、20mg/mlの濃度とした。その溶液の5m
lを十分煮沸洗浄された透析チューブ内にシリコン結晶
とともに封入した。シリコン結晶として以下に示す2種
類のものを用い、図8に示すような装置においてリゾチ
ームの結晶化を行なった。
【0045】(1) サンプル−1 約20Ωcmの比抵抗のP型シリコン基板表面に、リン
のイオン注入によって低抵抗のN型シリコン層を全面的
に形成したもの。形成したN型シリコン層の比抵抗は約
0.1Ωcmであり、またその厚みは約0.5μmであ
った。このシリコン基板を縦5mm横10mmのサイズ
に切断し、結晶化に用いた。
【0046】(2) サンプル−2 サンプル−1と同様の方法でN型シリコン層を形成した
シリコン基板を用いて、図4に示すような方法で加工を
行ない、V溝を形成した。幅がそれぞれ0.8、2.
0、10、50、100μm、長さが5mm、深さがそ
れぞれの幅と同じ5種類のV溝を、0.5mmのピッチ
でシリコン基板上に形成した。V溝を形成したシリコン
基板を縦5mm横10mmのサイズに切断し、結晶化用
の固体素子として用いた。この固体素子において、V溝
を形成した部分は、上述したようにP型シリコンが露出
している。
【0047】上記(1)および(2)のシリコン結晶
を、リゾチームを含む透析チューブ内に収容し、図8に
示すような装置において透析チューブをpH=4.5の
標準緩衝溶液200mlと1MのNaCl20mlとを
混合した水溶液中に浸し、10℃の冷暗所内に保管し
た。冷暗所に96時間保管した後、試料を取出し顕微鏡
によってシリコン結晶上に生成したリゾチームの結晶を
観察した。
【0048】サンプル−1上では、図9に示すように、
シリコン基板表面全体にリゾチームの微結晶あるいは双
晶が無秩序に多量に析出していた。析出した結晶の平均
的なサイズは0.05mmであった。
【0049】一方、サンプル−2上では、溝のサイズに
よって析出する結晶の大きさが異なっていた。幅が0.
8、2.0μmのサイズのV溝部では、図10に示すよ
うにサンプル−1と同一の形態の結晶が無秩序に析出し
ていた。一方、幅が10、50、100μmのサイズの
V溝では、図11に示すように、サイズが約0.3mm
の大型単結晶が、規則的に溝に沿って析出した。このよ
うにV溝部に大型単結晶が生成したのは、N型シリコン
層上で結晶の生成が抑制される一方、P型シリコンから
なるV溝部に結晶の核となる析出物が選択的に凝集・集
合し、これが大きな結晶まで成長したためと考えられ
る。
【0050】なお、以上の実施例ではP型シリコン上に
N型シリコン層を形成した素子を用いたが、高抵抗であ
るN型基板上に低抵抗であるN型層を形成し、同様に溝
を形成して高抵抗N型基板を露出させても、同様の結果
が得られると予想される。すなわち、溝部において露出
した高抵抗N型領域に結晶の核となる析出物が選択的に
凝集、集合し、大きな結晶にまで成長することが期待で
きる。
【0051】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
上述したように多様な特性を有するためどの物質に対し
ても適用できる手法がなく試行錯誤を繰返しながら進め
られてきた従来の結晶化プロセスの欠点を解決すること
ができる。特に本発明によれば、重力による溶液の対流
の影響を抑制し、結晶化の初期過程における核の形成を
安定して行なわせることができる。また本発明によれ
ば、微結晶の大量生成を抑制または制御することがで
き、X線構造解析を可能にし得る大型の結晶を得ること
ができる。さらに本発明によれば、サイズの異なる複数
の溝を設けた固体素子を結晶化に用いることによって、
あらゆる種類の高分子の結晶化に対応することができ
る。複数の溝を形成することにより、結晶化すべき高分
子の種類に応じて基板を個々に加工する手間が省け、低
コストで結晶化が可能になる。
【0052】本発明は、製薬産業や食品産業等におい
て、有用な物質、特に蛋白質、核酸等の生体高分子の研
究、開発および製造に適用される。本発明によれば、X
線構造解析を可能にする結晶性の良好な結晶を成長させ
ることができる。結晶解析の結果、その分子構造および
活性のメカニズムについて得られる情報は、薬剤の設計
および製造に生かされる。また、本発明は、関心のある
分子の精製または結晶化に適用される。さらに、本発明
は、蛋白質等の生体高分子を用いた電子デバイスの作製
に応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従って、固体素子の表面に結晶核が固
定化され、結晶成長が進んでいく様子を示す模式図であ
る。
【図2】本発明の固体素子の一具体例を示す概略断面図
である。
【図3】本発明の固体素子の他の具体例を示す概略断面
図である。
【図4】図2の固体素子を製造するためのプロセスを示
す概略断面図である。
【図5】図3の固体素子を製造するためのプロセスを示
す概略断面図である。
【図6】固体素子に形成された溝において結晶成長がい
かに進むかを説明するための概略断面図である。
【図7】固体素子に形成された溝において結晶成長がい
かに進むかを説明するための概略断面図である。
【図8】本発明の結晶成長方法を行なうための装置の一
具体例を示す模式図である。
【図9】実施例において生成した結晶構造の顕微鏡写真
である。
【図10】実施例において生成した結晶構造の顕微鏡写
真である。
【図11】実施例において生成した結晶構造の顕微鏡写
真である。
【図12】従来の方法に用いられる装置の一例を示す模
式図である。
【図13】従来の方法に用いられる装置のもう1つの例
を示す模式図である。
【符号の説明】
1 固体素子 2 結晶核 10、20、30、40 P型シリコン基板 11、21、31、41 N型シリコン層 12a、12b、12c、12d、32a、32b、3
2c、32d V溝 22a、22b、22c、42a、42b、42c 凹
状溝
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B01D 9/02 620 B01D 9/02 620 621 621 625 625E 625Z C30B 7/00 C30B 7/00 30/02 30/02 (56)参考文献 特開 平2−18373(JP,A) 特開 平1−111799(JP,A) 特開 平8−294601(JP,A) 特開 平8−34699(JP,A) 特開 平6−116098(JP,A) 特開 平5−319999(JP,A) F.Rosenberger,”IN ORGANIC AND PROTEI N CRYSTAL GROWTH−S IMILARITIES AND DI FFERENCES”,Journal of Crystal Growt h,Vol.76,No.3,1986,p. 618−636 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00 B01D 9/02 C07B 63/00 C07H 21/00 C07K 1/14 C08H 1/00 C12N 9/00 CA(STN) JICSTファイル(JOIS)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶液中に含まれる高分子化合物の結晶を
    成長させる方法であって、 前記高分子化合物を含む溶液の環境に応じて表面部分の
    正孔または電子の濃度を制御できるよう価電子が制御さ
    れ、かつ深さおよび/または開口部の幅が異なる2つ以
    上の溝または孔を有する固体素子を与える工程と、 前記固体素子を前記高分子化合物を含む前記溶液に接触
    させて、前記溝または孔に前記溶液を保持させる工程と
    を備え、 前記固体素子において、前記溝または孔の外よりも内で
    前記高分子化合物の結晶化が促進されるよう前記価電子
    が制御されており、 前記溶液を保持する前記溝または孔において、前記制御
    された価電子により前記固体素子の表面にもたらされる
    電気的状態の下、前記高分子化合物の結晶を成長させる
    ことを特徴とする、結晶成長方法。
  2. 【請求項2】 前記固体素子が不純物添加された半導体
    基板であり、前記半導体基板における前記不純物の種類
    および/または濃度が、前記溝または孔の内と外とで異
    なっていることを特徴とする、請求項1の方法。
  3. 【請求項3】 請求項1の方法に用いる結晶成長用固体
    素子であって、 深さおよび/または開口部の幅が異なる少なくとも2つ
    以上の溝または孔を有し、 高分子化合物を含む溶液の環境に応じて表面部分の正孔
    または電子の濃度を制御できるよう価電子が制御され、
    かつ前記溝または孔の内と外とにおいて異なる態様で前
    記価電子が制御されていることを特徴とする、結晶成長
    用固体素子。
  4. 【請求項4】 前記固体素子が不純物添加された半導体
    基板であり、前記半導体基板における前記不純物の種類
    および/または濃度が、前記溝または孔の内と外とで異
    なっていることを特徴とする、請求項3の結晶成長用固
    体素子。
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