JP3146984B2 - 結晶成長方法、結晶成長用固体素子および結晶成長用装置 - Google Patents

結晶成長方法、結晶成長用固体素子および結晶成長用装置

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    • C30CRYSTAL GROWTH
    • C30BSINGLE-CRYSTAL GROWTH; UNIDIRECTIONAL SOLIDIFICATION OF EUTECTIC MATERIAL OR UNIDIRECTIONAL DEMIXING OF EUTECTOID MATERIAL; REFINING BY ZONE-MELTING OF MATERIAL; PRODUCTION OF A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; SINGLE CRYSTALS OR HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; AFTER-TREATMENT OF SINGLE CRYSTALS OR A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; APPARATUS THEREFOR
    • C30B7/00Single-crystal growth from solutions using solvents which are liquid at normal temperature, e.g. aqueous solutions

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子化合物の結
晶化を行なうための技術に関し、特に、価電子が制御さ
れた半導体基板等を用いて、タンパク質をはじめとする
種々の高分子化合物の結晶化を行なうための技術に関す
る。
【0002】
【従来の技術】タンパク質をはじめとする各種生体高分
子およびそれらの複合体における特異的性質および機能
を理解する上で、それらの詳細な立体構造は不可欠な情
報となっている。たとえば、基礎生化学的な見地から、
タンパク質等の3次元構造の情報は、酵素やホルモン等
による生化学系での機能発現のメカニズムを理解する上
で基礎となる。また、産業界のうち特に薬学、遺伝子工
学、化学工学の分野においては、3次元構造は、ドラッ
グデザイン、プロテインエンジニアリング、生化学的合
成等を進める上で合理的な分子設計に欠かせない情報を
提供する。
【0003】このような生体高分子の原子レベルでの3
次元立体構造情報を得る方法としては、現在のところX
線結晶構造解析が最も有力かつ高精度な手段である。近
年のX線光源・回折装置のハードウェア上の改良による
測定時間の短縮、測定精度の向上に加え、コンピュータ
の計算処理速度の飛躍的な向上により、解析スピードが
大幅に向上してきている。今後もX線結晶解析を主流と
して3次元構造が明らかにされていくものと思われる。
【0004】一方、X線結晶構造解析により生体高分子
の3次元構造を決定するためには、目的とする物質を抽
出・精製後、結晶化することが必須となる。しかし現在
のところ、どの物質に対しても適用すれば必ず結晶化で
きるといった手法および装置がないため、勘と経験に頼
ったトライアンドエラーを繰返しながら結晶化を進めて
いるのが実状である。生体高分子の結晶を得るために
は、非常に多くの実験条件による探索が必要であり、結
晶成長がX線結晶解析の分野での最も大きなボトルネッ
クとなっている。
【0005】タンパク質等の生体高分子の結晶化は、通
常の無機塩等の低分子量化合物の場合と同様、高分子を
含む水または非水溶液から溶媒を奪う処理を施すことに
より、過飽和状態にして、結晶を成長させるのが基本と
なっている。このための代表的な方法として、(1)バ
ッチ法、(2)透析法、(3)気液相関拡散法があり、
試料の種類、量、性質等によって使い分けられている。
【0006】バッチ法は、生体高分子を含む溶液に、水
和水を奪う沈殿剤を直接添加して、生体高分子の溶解度
を低下させ、固相へ変化させる方法である。この方法で
は、たとえば硫酸アンモニウム(硫安)がよく使用され
る。この方法は、溶液試料を大量に必要とし、塩濃度、
pHの微妙な調整が困難であること、さらに操作に熟練
を要し再現性が低いといった欠点を有する。透析法は、
バッチ法の欠点を改善した方法で、たとえば図14に示
すように、透析チューブ101の内部に生体高分子を含
む溶液102を密封し、透析チューブ外液103(たと
えば緩衝溶液)のpH等を連続的に変化させ結晶化を行
なう方法である。この方法によれば、内外液の塩濃度、
pHの差を任意の速度で調節可能であるため、結晶化の
条件を見出しやすい。気液相間拡散法は、たとえば図1
5に示すように、カバーガラス等の試料台111上に、
試料溶液の液滴112を載せ、密閉した容器113内に
この液滴と沈殿剤溶液114を入れることにより、両者
間の揮発成分の蒸発によって緩やかに平衡を成立させる
手法である。
【0007】しかし、タンパク質等の生体高分子の結晶
化には、前述したように種々の問題点があるのが実状で
ある。
【0008】まず、従来法では、得られる物質の結晶性
が良好でなく、大型の単結晶を得ることが困難である。
これは、生体高分子が一般的に分子量が大きいために、
重力の影響を受けやすく、溶液内で対流を引き起こすこ
とが原因であると考えられている(たとえば F. Rosenb
erger, J. Cryst. Growth, 76, 618(1986))。すなわ
ち、生体高分子や生成した微小な結晶核が自重で沈降
し、これによって分子や核周辺で溶液の対流が引き起こ
される。さらに生成した結晶表面部でも、分子の濃度が
低下するために、局所的な溶液の対流が発生する。この
ように発生した溶液の対流によって、生成する結晶は溶
液内で移動し、しかも周辺の拡散による分子の供給層は
著しく減少する。このため、結晶の成長速度が低下した
り、結晶面における成長の異方性等が発生して結晶化が
妨げられるものと思われる。
【0009】また、生体高分子結晶には他の物質の結晶
とは異なり、多量の溶媒(主として水)が含まれている
(≧50体積%)。この溶媒が、無秩序であり、かつ結
晶中で分子間の空隙となっている部分を容易に動き得
る。また、分子が巨大であるにもかかわらず、結晶中で
広範囲な分子間のパッキングコンタクトがほとんどな
く、僅かな分子−分子間コンタクトまたは水分子を介し
た水素結合によるコンタクトしか存在していない。これ
らは結晶化を妨げている要因である。
【0010】さらに生体高分子は結晶条件に非常に敏感
である。生体高分子は、個々の分子表面間の相互作用に
より溶媒中で安定化されている一方、分子表面の電荷分
布、特にアミノ酸の分子表面近傍でのコンフォメーショ
ン等は、環境、すなわち溶液のpH、イオン強度、温
度、緩衝溶液の種類、誘電率等により大きく変化する。
したがって、結晶化プロセスは、複雑な種々の条件の絡
み合ったマルチパラメータプロセスとなり、どの物質に
対しても適用できる統一的な手法は確立できていない。
またタンパク質については、水溶性タンパク質に比べ、
生化学的に非常に重要であるにもかかわらず、疎水性の
膜タンパク質の結晶化が現在非常に困難であり、結晶化
を行ないさらに高分解能の解析に成功した例はこれまで
僅か2件のみである。
【0011】さらに、得られる生体高分子は微量である
ことが多い。酵素等のタンパク質は一般に細胞等から抽
出、精製されるが、その含有量が少ないため、最終的に
得られる試料は非常に少ない場合が多い。結晶化を行な
う際には、生体高分子を含有する溶液の濃度は50mg
/ml程度必要であると言われている。このため、でき
るだけ溶液が少なくなるよう調製を行ない、種々の条件
にて結晶化の実験を繰返すこと(スクリーニング)を行
なわなければならない。
【0012】以上のように、タンパク質をはじめとする
生体高分子の結晶化は、学術および産業上の重要なプロ
セスであるにもかかわらず、これまで試行錯誤を繰返し
ながら進められてきた。このため、結晶化のプロセスは
X線結晶構造解析の最大のネックとなっている。したが
って、今後結晶化の基本原理を理解して、どの分子に対
しても適用し得る結晶化技術を開発する必要がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
したように多様な特性を有するためにどの物質に対して
も適用できる手法がなく、試行錯誤を繰返しながら進め
られてきた従来の結晶化プロセスの欠点を技術的に解消
することである。
【0014】具体的には、本発明の目的は、種々の生体
高分子および生体高分子から主として構成される生体組
織の結晶化において、重力の影響による溶液内の対流の
影響を低減し、核形成を制御する技術を提供することで
ある。
【0015】さらなる本発明の目的は、微結晶の大量生
成を抑制または制御し、X線構造解析を可能にし得る大
型の結晶を得ることができる技術を提供することであ
る。
【0016】さらなる本発明の目的は、少量の生体高分
子溶液で、結晶化を可能にするための技術を提供するこ
とである。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明による結晶成長方
法は、溶液中に含まれる高分子化合物の結晶を成長させ
る方法であって、高分子化合物を含む溶液の環境に応じ
て表面部分の正孔または電子の濃度を制御できるよう価
電子が制御された固体素子を与える工程と、該固体素子
を高分子化合物を含む溶液に接触させる工程とを備え
る。該固体素子は、対向する2つの主要面の一方の面側
に形成された深さおよび/または開口部の幅が異なる2
つ以上の溝または孔と、該2つの主要面の他方の面側か
ら上記溝または孔に高分子化合物を含む溶液を供給する
ための貫通孔とを有する。該固体素子の溶液と接触する
部分において、上記溝または孔の外よりも内で高分子化
合物の結晶化が促進されるよう価電子が制御されてい
る。このような固体素子を用い、下向きにした溝または
孔に貫通孔を介して高分子化合物を含む溶液を供給す
る。これにより、該固体素子上において溶液の液滴が重
力の方向に垂れ下がった状態で溶液を溝または孔に保持
させる。このようにして溶液を保持する溝または孔にお
いて、制御された価電子により固体素子の表面にもたら
される電気的状態の下、高分子化合物の結晶を成長させ
る。
【0018】本発明において、上記固体素子は不純物添
加された半導体基板とすることができる。半導体基板に
おける不純物の種類および/または濃度は、半導体基板
に形成された溝または孔の内と外とで異ならしめること
ができる。
【0019】また、固体素子上には、形成された複数の
溝または孔を取囲むように撥水層を設けることができ
る。
【0020】本発明において、溶液を保持する溝または
孔における結晶の成長は、該溶液に含まれる溶媒の蒸気
を吸収する沈殿剤または該溶液についての気液平衡を保
持するための緩衝溶液の存在下で行なうことができる。
【0021】本発明は、結晶成長に用いるための固体素
子を提供する。この固体素子は、結晶化させるべき物質
を含む溶液の環境に応じて表面部分の正孔または電子の
濃度を制御できるよう価電子が制御されたものである。
該固体素子は、2つの対向する主要面を有し、さらに該
2つの主要面の一方の面側に形成された深さおよび/ま
たは開口部の幅が異なる2つ以上の溝または孔と、該2
つの主要面の他方の面側から上記溝または孔に高分子化
合物を含む溶液を供給するための貫通孔とを有する。該
固体素子の溶液を接触させる部分において、溝または孔
の外よりも内で高分子化合物の結晶化が促進されるよう
価電子が制御されている。
【0022】このような固体素子は不純物添加された半
導体基板とすることができる。半導体基板には複数のサ
イズの異なる溝または孔が形成されており、半導体基板
における不純物の種類および/または濃度は、溝または
孔の内と外とで異なっている。
【0023】さらにこのような固体素子上において、複
数の溝または孔を取囲むように撥水層を設けることがで
きる。
【0024】本発明はさらに結晶成長装置を提供し、こ
の装置は、上述した固体素子と、固体素子を支持するた
めの手段と、固体素子および該手段を沈殿剤または緩衝
溶液とともに密閉状態で収容できる容器とを備える。
【0025】
【発明の実施の形態】タンパク質をはじめとする生体高
分子のほとんどは、溶液内において幾何学的に特異的な
構造および静電的な相互作用(静電斥力・引力、ファン
デルワールス力)によって分子間同士の認識が行なわれ
ている。静電的なエネルギに基づく分子間の相互作用に
おいては、個々の分子最表面での僅かな空間的な電荷分
布の相違が、分子間の認識の度合い、分子集合体の作り
やすさに決定的な影響を及ぼすことが予想される。溶液
内をブラウン運動しながら衝突を繰返している個々の生
体高分子は、周期的な規則構造を有する分子集合体の核
になりにくいと考えられる。さらに、結晶核が形成され
たとしても、各分子表面の構造、電荷分布が全く同一で
はなく冗長性を有しておれば、核の周囲に集合する分子
は互いに緩く結合することになり、よって結晶性が低下
するものと考えられる。
【0026】タンパク質分子の結晶生成に関して、その
核生成の初期過程が重要であるとの報告がなされてい
る。Yonath等は、Bacillus Stearothermophilus より抽
出された巨大なリボソームサブユニットの結晶化初期過
程を電子顕微鏡により観察している。それによれば、結
晶化が進行するためには、初期過程として各分子が2次
元的な規則構造(網目状、星状、千鳥格子状等)をとっ
て凝集することが必須であると述べている(Biochemist
ry International, Vol.5, 629-636(1982))。
【0027】このことがすべての物質に共通して必須で
あるかどうかは不明である。一般にタンパク質分子は分
子間相互作用が弱く、しかも分子表面が局部的に帯電し
ているため、凝集しにくい。このことを考慮すると、結
晶化の初期過程において核となる分子を2次元的に配列
できる何らかの条件が整えば、その後の結晶化は、これ
を核としてエピタキシャル的に進行するものと考えられ
る。
【0028】本発明では、結晶核を安定して生成させる
ため、価電子が制御された固体素子を結晶化すべき化合
物を含む液に接触させる。該固体素子は、液と接触する
表面から内部に向かって、あるいは該固体素子の断面内
において、価電子制御により電子および正孔の濃度を制
御することができ、それによって固体素子表面の電気的
性状を制御することができる。たとえば図1に、本発明
に従い、固体素子表面において結晶核が固定され、結晶
が成長していく様子を模式的に示す。本発明では、図1
(a)に示すように、価電子制御により、所定の電気的
状態とされる固体素子1の表面に、結晶核2が静電的な
作用によって固定される。そして、図1(b)に示すよ
うに、タンパク質等の化合物は、静電的な相互作用によ
り、固体素子表面に凝集し、結晶核の生成が促進され、
結晶の成長がもたらされる。したがって、固体素子表面
の電気的特性を制御することにより、結晶化の制御が可
能となる。たとえば、固体素子表面に固定される結晶核
の種類、量、配列密度等を価電子制御によりに調整する
ことができ、それによって結晶化の制御が可能となる。
また、生成された結晶核が固体素子表面に固定されるた
め、溶液内の対流等による核の微小な変動が抑制され、
核の形成に従って規則的に分子が集合し、結晶性が向上
することも期待される。結晶化すべき分子の表面の電荷
分布が溶液のpHや分子の変性によって微妙に変化して
も、固体素子表面には必ず該分子の実効表面電荷と補償
する空間電荷が誘起されるため、結晶核の2次元的な生
成が容易にかつ優先的に行なわれることが期待される。
【0029】また、一般に電解質溶液内における帯電物
質または分子の凝集性は、それらの間の電気二重層斥力
とファンデルワールス力との和に依存するため、物質ま
たは分子同士を凝集させる場合、電解質溶液中に添加す
る表面電位を調整するための塩濃度をコントロールする
ことが非常に重要となる。一方、本発明によれば、固体
素子表面に誘起される空間電荷層に基づく表面電位は、
たとえば価電子の制御のため添加される不純物の濃度に
比例して変化する。したがって、たとえば固体素子中の
不純物濃度を調整することによって素子表面にもたらさ
れる静電特性を予め調整することができる。したがっ
て、本発明では、電解質溶液中の塩濃度を調整しなくて
もよいかまたは調整するとしても簡単な調整でよい。
【0030】また後述するように、固体素子に形成され
た溝の底部において、静電相互作用が等方的に及ぶ領域
をもたらすことができる。このような領域では、静電相
互作用によって結晶核を固定することができ、重力の影
響に基づく対流によって結晶核が移動することを抑制す
ることができる。その結果、結晶は溝の底部において静
止した状態で成長することができる。このため、過剰な
微結晶の生成が抑制され、結晶核の表面に規則的に分子
が集合した結晶性の良い大型の結晶が得られることが期
待される。
【0031】さらに、本発明では、開口部の幅および/
または深さの異なる複数の溝または孔を固体素子に形成
している。適切な溝または孔のサイズは、結晶化すべき
分子のサイズ、帯電特性等によって変わってくると考え
られる。そこで、予め固体素子上にサイズの異なる溝ま
たは孔を複数形成しておけば、いずれかの溝または孔に
おいてより適切な結晶化の条件を実現できると考えられ
る。結晶化すべき分子種が変わったとしても、結晶化の
条件に合った溝または孔が必ず存在するはずで、1つの
固体素子を種々の分子の結晶化に適用できると考えられ
る。
【0032】本発明では、固体素子に貫通孔を形成して
いる。固体素子において溝または孔が形成された面を表
面、それに対向する面を裏面とすると、固体素子の表面
と裏面とは貫通孔によって連通している。図2(a)に
貫通孔が形成された固体素子の例を示す。貫通孔6を有
する固体素子5において、結晶化すべき化合物を含む母
液をその裏面5b側から貫通孔6に注入すると、その表
面5aに表面張力の作用により母液の液滴7を容易に形
成することができる。貫通孔を介することにより、固体
素子の表面に微量の溶液を保持させることができる。後
述するように、このような液滴の中で結晶化を行なえ
ば、結晶化に必要なサンプルはごく微量で済む。このよ
うに重力の方向に垂れ下がった状態にすれば、微量の液
滴を容易に保持することができる。一方、図2(b)に
示すように、母液を固体素子5′上に落として液滴を形
成しようとする場合、固体素子表面の母液に対する濡れ
性によって、適当な液滴が形成されたりされなかったり
する。濡れ性の高い表面では、液滴が形成されにくい。
また、貫通孔を介さずに重力の方向に垂れ下がった液滴
を形成することも困難である。たとえば、図2(c)に
示すように、まず液滴7を固体素子5′の表面に載せ、
これを裏返すことによって液滴7を重力の方向に垂れ下
がった状態とすることが考えられる。しかしながらこの
場合、液が固体素子5′上で流れてしまい、液滴を保持
できない場合が多い。また図2(d)に示すように、裏
返しにした固体素子5′の表面にスポイド9によって液
滴を形成させることも考えられる。しかしながら、この
場合、液がしばしば下に落下してしまい、規定量の液滴
を基板上に保持させることは困難である。上述したよう
に、貫通孔は重力の方向に垂れ下がった液滴の形成を容
易にする。
【0033】本発明において結晶化のために用いられる
固体としては、上述したような静電特性を有し、電荷量
および極性の制御が可能な物質で、さらに溶液中で化学
的に安定な物質であれば、どのようなものでもよいが、
好ましい材料の1つとして半導体結晶であるシリコンが
挙げられる。以下、シリコン結晶を用いた場合について
予想される結晶化のメカニズムを説明する。しかしなが
ら、以下に記載されるメカニズムは、本発明に従って用
いられる他の固体素子にも当てはめることができる。
【0034】図3に、本発明の固体素子の一具体例を示
す。図3(a)はその概略断面図であり、図3(b)は
その概略平面図である。この固体素子は、溶液中解離し
て負の実効表面電荷を有する高分子化合物の結晶化を目
的とするものである。固体素子において、P型シリコン
基板10の表面にはN型シリコン層11が形成されてい
る。またP型シリコン基板10の表面側10aには、開
口部の幅および深さの異なる複数のV字状の溝(V溝)
12a、12b、12c、12dおよび12eが形成さ
れている。シリコン基板10のほぼ中央部でV溝12c
と12dとの間には、貫通孔16が形成され、基板の裏
面側10bから表面側10aに液を供給できるようにな
っている。貫通孔16の裏面側の開口部は表面側の開口
部よりも広くなっている。さらにシリコン基板10の表
面側10aには、V溝12a〜12eを取囲むようにポ
リイミド等の撥水性樹脂からなる撥水層17が形成され
ている。
【0035】図4は、本発明の固体素子のもう1つの例
を示すものである。この固体素子も、溶液中解離して負
の実効表面電荷を有する高分子化合物の結晶化を目的と
している。P型シリコン基板20の表面にはN型シリコ
ン層21が形成されている。さらにその表面側20aに
は、複数の凹状の溝22a、22b、22c、22dお
よび22eが形成されている。溝22aは開口部の幅よ
りも深さが長い井戸状または角柱状の溝である。一方、
溝22b〜22eは階段状の内壁を有している。これら
の溝において、深部にいくに従って開口部の幅は狭くな
っている。このように、固体素子に形成される溝または
孔は、深部にいくに従って開口部の幅が狭くなっている
ものがより好ましい。シリコン基板20の中央部で溝2
2cと22dの間には貫通孔26が形成されている。貫
通孔26における裏面側20bの開口部は表面側20a
の開口部よりも広くなっている。シリコン基板20の表
面側20aには、さらに5つの溝を取囲むようにして撥
水性樹脂からなる撥水層27が形成される。
【0036】以上に示す固体素子において、溝内にはP
型シリコンが露出している一方、溝の外の表面はN型シ
リコン層によって覆われている。このような固体素子に
おいて、複数の溝が形成されかつ撥水性樹脂で覆われる
表面領域に溶液サンプルが供給される。なお、溶液中解
離して正の実効電荷を有する化合物を結晶化させる場
合、上述した固体素子においてシリコン基板とシリコン
層の極性を逆にすることが好ましい。すなわち、N型シ
リコン基板上にP型シリコン層を形成することが望まし
い。この場合、溝内にはN型シリコン基板が露出する一
方、溝の外の表面はP型シリコン層で覆われる。
【0037】図5は、図3に示す固体素子を製造するた
めのプロセスを示す概略断面図である。まず、たとえば
鏡面研磨されたP型シリコン基板30を準備する(図5
(a))。次いで、P型シリコン基板30上にイオン注
入等の方法によってN型シリコン層31を形成する(図
5(b))。その後、CVD等の方法によってシリコン
酸化膜(SiO2 )33を形成する(図5(c))。適
当なホトリソグラフィ工程等の後、溝部を形成すべき領
域のシリコン酸化膜を除去する(図5(d))。次い
で、シリコン酸化膜を除去した部分のN型シリコン層お
よびP型シリコン基板をエッチングしてサイズの異なる
V溝32a、32b、32c、32dおよび32eを形
成する(図5(e))。次いでシリコン酸化膜を除去す
る(図5(f))。その後、KOH溶液を用いた異方性
エッチング等により基板30に貫通孔36を設ける(図
5(g))。次に、溝を取囲むようにポリイミド等の撥
水性樹脂からなる撥水層37を形成する(図5
(h))。なお図示しないが、シリコン酸化膜を除去し
た後、固体素子の表面にシリコン酸化膜を再び形成して
もよい。また、貫通孔はプロセスの最初に予め形成して
おいてもよい。
【0038】図6は、図4に示す固体素子を製造するた
めのプロセスを示している。まずP型シリコン基板40
を準備し(図6(a))、イオン注入等の方法によって
N型シリコン層41を形成する(図6(b))。適当な
ホトリソグラフィ工程等の後、ドライエッチングにより
アスペクト比の高い溝42aを形成する(図6
(c))。さらにドライエッチングを繰返すことによっ
て、異方的に深くかつ開口部の幅の異なる凹状の溝42
b、42c、42dおよび42eを形成する(図6
(d)および(e))。次に、KOH溶液を用いた異方
性エッチングにより基板40に貫通孔46を形成する
(図6(f))。その後、ポリイミド等の撥水性樹脂か
らなる撥水層47を溝を取囲むようにして形成する(図
6(g))。
【0039】以下に本発明の固体素子において結晶が成
長するメカニズムをより詳細に説明する。解離して負の
実効表面電荷を有する高分子化合物を含む電解質溶液
を、価電子制御されたN型またはP型シリコン結晶に接
触させると、N型シリコン表面に対してはショットキー
障壁が形成される一方、P型シリコン表面に対してはオ
ーミック性接触が得られる。P型シリコン表面では、負
の電荷を有する分子に対してバルクシリコン側から常に
正孔が供給されるため(オーミック特性)、高分子化合
物はシリコン表面に凝集し続けることが予想される。一
方、N型シリコンの表面には溶液の電解質濃度に依存し
た表面電位が発生するとともに、内部に空間電荷層領域
が形成される。この空間電荷量はN型シリコンに含まれ
る不純物濃度にも依存する。したがって、N型シリコン
表面においては、溶液中負の電荷を有する高分子化合物
はN型シリコンの有する正の空間電荷を少なくとも補償
するまでシリコン表面に凝集し続けることが予想され
る。よって、空間電荷層領域が形成されるN型シリコン
表面に対しては分子の凝集および結晶化が制限されて起
こるのに比べ、オーミック性接触が形成されるP型シリ
コン表面に対しては、分子の凝集が無制限に進行すると
予想される。
【0040】一方、N型シリコンにおいて不純物濃度が
異なれば、以下に述べるように結晶化の程度も異なって
くると考えられる。不純物濃度が低く高抵抗のN型シリ
コンと不純物濃度が高く低抵抗のN型シリコンとの違い
について以下に述べる。不純物濃度の低い(抵抗の高
い)N型シリコンでは、表面近傍に形成される空間電荷
層の幅が広くなることにより、空乏層容量が小さく、し
たがって不純物濃度が高い(抵抗が低い)場合よりも大
きな表面電位が誘起されることが予想される。この表面
電位は、高分子化合物の有する実効表面電位と極性が逆
となるため、静電的な引力の作用により分子の凝集が促
進される。すなわち、不純物濃度が低く高抵抗のN型シ
リコン基板の方が、溶液中負の実効電荷を有する分子に
対して、不純物濃度が高く低抵抗のN型シリコン基板よ
りも、多くの結晶を析出させる効果を有すると予想され
る。
【0041】以上溶液中負の実効表面電荷を有する分子
について述べたが、正の実効表面電荷を有する分子に対
しては、上述と逆の極性を有するシリコンに対して同様
の効果を期待することができる。
【0042】上述したように、シリコン表面に選択的に
不純物をドーピングすることによって抵抗の異なる領域
を容易に形成することができる。さらに、シリコン表面
をエッチングすることによって、抵抗値の異なるシリコ
ン表面を露出させることもできる。
【0043】本発明に用いられるN型およびP型のシリ
コン結晶は、通常のLSIプロセスに用いられるシリコ
ンウエハと同等の特性を有するものでよい。シリコン結
晶の比抵抗は0.0001〜1000Ωcm程度の範囲
内であればよく、0.001〜100Ωcmの範囲がよ
り好ましい。また、結晶の表面はミラーポリッシュされ
ることが析出する結晶核の制御を行なう上で好ましい。
【0044】本発明において、シリコン基板表面に不純
物を含有する層を形成する場合、当該層の厚みは、望ま
しくは0.1〜200μmであり、より望ましくは1〜
50μmの範囲である。これ以外の範囲では作製が容易
でなかったり、効果的でなくなるため望ましくない。
【0045】本発明において用いられるN型およびP型
に価電子制御されたシリコンの調製方法として、種々の
ものが可能であり、どのような方式のものでもよいが、
最も簡便で不純物濃度の制御が正確に行なえる方法とし
てイオン注入法が挙げられる。この方法の場合、P型お
よびN型の価電子制御は、それぞれ、周期律表第III
族および第V族に属する元素のイオンをシリコン中に注
入、アニールすることによって容易に行なうことができ
る。P型にするための第III族元素としてB、Al、
Ga、In、Tl等を挙げることができ、特にBが一般
的である。N型にするための第V族元素としてN、P、
As、Sb、Bi等を挙げることができ、特にP、A
s、Sbが一般的である。
【0046】以上、価電子制御が容易な半導体結晶シリ
コンを用いた例について説明したが、本目的を達成する
ため、他の半導体や同様の機能を有する他の物質を適宜
用いることができる。また、溶液中において安定であれ
ば、半導体結晶以外の物質を用いることができ、たとえ
ば電荷分布の制御された無機化合物、有機化合物、有機
高分子等を結晶化のための固体素子の候補として挙げる
ことができる。
【0047】本発明において、固体素子には複数の溝ま
たは孔が形成される。第3図に示す素子はV溝、第4図
に示す素子は凹状の溝をそれぞれ有している。溝の代わ
りに、たとえば角錐状または円錐状の孔を固体素子表面
に設けてもよい。これらの溝または孔は、深部にいくに
従って開口の幅が狭くなっていることがより好ましい。
実際の結晶成長に際しては、何種類かのサイズの溝また
は孔を1つの素子表面に多数設けておくほうが有利であ
る。
【0048】結晶化のために用いる固体素子は、あらゆ
る高分子化合物について適用できることが望ましい。一
方、結晶化の対象となる分子のサイズや帯電特性等によ
って、必要とされる固体素子の特性も変わってくると考
えられる。溝または孔のサイズについても、結晶化すべ
き分子のサイズ、帯電特性等に応じて変える必要がある
と考えられる。しかしながら、対象となる個々の高分子
化合物ごとに溝または孔を有する固体素子を調製してい
たのでは、コストおよび時間がかかり、効率的とはいえ
ない。そこで、予め固体素子上にサイズの異なる溝また
は孔を複数形成しておけば、対象となる分子種が変わっ
たとしても、いずれかの溝において、より好ましい結晶
化の条件を提供できるはずである。したがって、1つの
固体素子で、種々の分子の結晶化を行なうことが可能に
なる。これにより、固体素子作製のための労力およびコ
ストも低減される。
【0049】固体素子表面に形成される溝または孔の開
孔部のサイズおよび深さは、対象とする高分子の種類に
よって、適宜好ましい範囲を設定することができる。一
般には、開孔部の幅は0.01〜100μmの範囲が好
ましく、長さは1〜10mmの範囲が好ましい。また、
複数の溝または孔は、1μm〜1mmの範囲の間隔で適
宜作製することができる。溝または孔の深さは、たとえ
ば0.01〜200μmの範囲で調製するのが好まし
い。しかしながら、以上に述べたサイズは、主として固
体素子の作製上の制約からくるものであって、これ以外
のサイズであっても、固体素子の性能、すなわち結晶化
に決定的な悪影響を及ぼすものではない。
【0050】図7および図8は、溝または孔の結晶成長
に対する作用効果を説明するためのものである。図7に
示すように、結晶化すべき分子を含有する電解質溶液に
固体素子を接触させると、PまたはP- シリコンよりな
るV溝部52は、NまたはN+ シリコン層よりなる表面
部51と比較して、解離した高分子との静電相互作用が
及ぶ範囲(電気二重層の幅と考えてもよい)が広くなる
ことが期待される。図において、点線で示した領域54
が、電気相互作用の及ぶ範囲である。すなわち、表面部
51上よりもV溝部52上の方が領域54は厚くなって
いる。特に、V溝部52の最も深い中央部は、この作用
の及ぶ領域の重なりにより、領域54の幅が最も広くな
ることが予想される。
【0051】したがって、PまたはP- シリコンからな
るV溝部52の最深部において、結晶核または結晶核と
なる分子凝集体55は、V溝表面から静電引力58をほ
ぼ等方的に受け、V溝内において拘束されることにな
る。V溝深部にある分子凝集体55について、重力に基
づく溶液内の対流59の影響と静電引力58とが相殺さ
れるため、結晶核の生成および結晶の成長が安定して起
こり得ると期待される。一方、NまたはN+ シリコンか
らなる表面部51上では、上述したように結晶核の形成
が抑制される。また、もしこの表面に結晶核が形成され
ても、溶液内の対流59の影響を受けて、結晶核近傍で
の拡散供給層の幅が変動するため、結晶性の低下または
成長速度の低下がもたらされると考えられる。したがっ
て、溝部52において選択的に結晶の成長が進み、大型
の結晶が得られる。
【0052】図8に示す固体素子上においても、同様の
メカニズムによって安定した結晶成長が起こるものと考
えられる。すなわち、溝部62の開口幅が最も狭い部分
において、結晶核65が生成し、静電引力68によって
拘束される。静電相互作用の及ぶ領域64は、溝部62
の最深部において最も幅が広くなっている。一方、基板
60上に形成されたNまたはN+ シリコン層61上で
は、上述したように結晶の生成が抑制される。したがっ
て、溝部62の深部において結晶核が生成し、結晶が安
定して成長する。
【0053】本発明において、固体素子表面には複数の
溝または孔を取囲むようにして撥水層が形成される。こ
の層は、固体素子上において保持すべき溶液の液滴が周
囲に流出するのを防止するためのものである。たとえ
ば、表面の酸化膜が除去されたシリコン表面は、一般
に、酸またはアルカリのみを含む水や純水に対しては撥
水性であるが、緩衝溶液のような塩を含有する水溶液に
対しては、撥水性でなくなる。したがって、塩を含有す
る水溶液の液滴を安定して保持するために、液滴を保持
すべき領域の周囲に撥水性の物質からなる層を形成する
ことが望ましい。このような目的を達成するため、撥水
性の材料として有機系の樹脂を用いることができる。最
も簡便に用いることのできる材料の1つとして、たとえ
ばポリイミドを挙げることができる。たとえば、感光性
または非感光性のポリイミド樹脂をコーティングし、硬
化させた後、所望のパターンとなるようエッチングまた
は現像により不必要なコーティング部分を除去して固体
素子上に撥水性の層を形成することができる。
【0054】本発明で用いられる撥水層の厚みは、機能
的に特に限定する必要はないが、作製しやすい厚みとし
て0.1〜100μmの範囲を設定することができる。
なお、撥水性を示し、かつ溶液に対して化学的に安定な
物質であれば、ポリイミドに限らずどのような材料を用
いてもよい。さらに、シリコン等の固体素子に対して撥
水性を示す溶液を用いる場合、このような撥水性の層は
不必要である。
【0055】図9は、本発明の結晶成長用装置の一具体
例を示すものである。図9に示す装置において、固体素
子100は支持台90に支持され、容器91内に収容さ
れる。容器91の開口は、蓋92によって密閉すること
ができる。このような装置において、結晶化をすべき分
子を含む母液の液滴88は、貫通孔86から注入され重
力の方向に垂れ下がるようにして固体素子100上に保
持される。容器91の底部には、液滴88中の溶媒蒸
気、たとえば水溶液の場合水分、を吸収して液滴中の分
子を過飽和状態にすることのできる沈殿剤、または液滴
についての気液平衡を保持するための緩衝溶液93が収
容される。蓋92により沈殿剤または緩衝溶液を収容す
る容器91を密閉した状態にすれば、液滴88内におい
て結晶化が促進されるようになる。
【0056】図10に、固体素子100上において液滴
88が保持される様子を拡大して示す。容器内に収容さ
れる沈殿剤または緩衝溶液93の上方に、支持台90に
よって固体素子100が保持されている。固体素子10
0を構成する基板(たとえばP型シリコン基板)80上
には、不純物の種類または濃度が異なるシリコン層(た
とえばN型シリコン層)81が形成されている。また、
基板80上には、複数のV溝82a、82b、82c、
82d、82e、82fが形成されている。これらの溝
を取囲むようにして撥水性の層(たとえば撥水性樹脂か
らなる層)87が形成されている。基板80のほぼ中央
部には、母液を注入するための貫通孔86が設けられて
いる。固体素子100は、支持台90上において、V溝
を下に向けて保持される。タンパク質等の結晶化すべき
分子を含む溶液(母液)を少量、固体素子の裏面側から
ピペット等によって貫通孔86に注入していくと、母液
は溝の形成された面に徐々に移行し、液滴が形成されて
いく。固体素子100の表面で母液の液滴が落下せず、
すべての溝内に液が行き渡り、安定に保持された状態と
なったところで母液の注入を終了する。このようにし
て、図10に示すように、母液の広がりが撥水性の層8
7で食い止められ、重力の方向に垂れ下がった状態で液
滴88が安定に保持される。このように液滴を保持すれ
ば、結晶化に必要な溶液の量は微量で済む。このような
装置において、上述したように溝の内部で結晶の成長が
行なわれる。
【0057】本発明は、種々の高分子化合物、特に高分
子電解質を結晶化するために用いることができる。本発
明は特に、酵素および膜蛋白質等の蛋白質、ポリペプチ
ド、ペプチド、ポリザカライド、核酸、ならびにこれら
の複合体および誘電体を結晶化させるため好ましく適用
される。本発明は、生体高分子の結晶化のため好ましく
適用される。
【0058】
【実施例】ニワトリ卵白製リゾチーム(Lysozyme, From
Chicken Egg White)をpH=6.8の標準緩衝溶液に
溶解し、50mg/mlの濃度とした。固体素子として
以下に示す2種類のシリコン結晶を用い、図9および図
10に示すような装置においてリゾチームの結晶化を行
なった。
【0059】(1) サンプル−1 約20Ωcmの比抵抗のP型シリコン基板表面に、リン
のイオン注入によって低抵抗のN型シリコン層を全面的
に形成した。その後、図5に示すようなプロセスに基づ
き加工を行ない、複数のV溝を有するシリコン基板を形
成した。サイズの異なるV溝の幅は、それぞれ、0.
8、2.0、10、50、100μmであり、深さはそ
れぞれの溝の幅とほぼ同じであった。溝の長さはすべて
7mmであり、5種類のV溝は1.0mmのピッチで形
成された。また貫通孔は基板中央部に直径約200μm
のサイズで形成した。5種類の溝を取囲むようにして形
成したポリイミド層の厚みは10μmであった。得られ
たシリコン基板を縦10mm、横10mmのサイズに切
断し、結晶化のための固体素子として供した。表面に形
成したN型シリコン層の比抵抗は約0.1Ωcmであ
り、厚みは約0.5μmであった。
【0060】(2) サンプル−2 サンプル−1と同様の方法でイオン注入を行ない、P型
シリコン基板上にN型シリコン層を形成した。比抵抗お
よびN型層の厚みはサンプル−1と同一である。その
後、サンプル−1と同一の条件で基板の中央部に直径約
200μmの貫通孔と、ポリイミド層を形成した。得ら
れたシリコン基板を縦10mm、横10mmのサイズに
切断し、結晶化のための固体素子として供した。したが
って、サンプル−2は、複数のV溝がない以外はサンプ
ル−1と同一の構造である。
【0061】サンプル−1とサンプル−2の基板をそれ
ぞれ、図9および図10に示す装置に供した。この装置
において、直径が約15mmのリアクティブバイヤルの
上部に、N型シリコン層を形成した表面が下になるよう
にシリコン基板を保持した。リゾチームの母液約0.1
mlを裏面から貫通孔に注入し、重力の方向に垂れ下が
るような液滴を形成した。なお、バイヤル中には予めp
H=4.6の標準緩衝溶液および1M NaClを1
0:1の容積比で混合した緩衝溶液を約3ml注入し、
その底に保持した。結晶化のための装置を10℃の冷暗
所内に保管し、静置した。
【0062】冷暗所に96時間静置した後、それぞれの
試料を取出し顕微鏡によってシリコン基板上に生成した
リゾチームの結晶を観察した。
【0063】サンプル−1の基板上では、溝のサイズに
よって析出する結晶の大きさが異なっていた。幅が0.
8、2.0μmのサイズのV溝部、およびN型シリコン
層表面では、図12に示すように微結晶および双晶が無
秩序に析出していた。一方、幅が10、50、100μ
mのサイズのV溝では、図11に示すようにサイズが約
0.3mmの大型単結晶が、規則的に溝に沿って析出し
た。P型シリコンからなる特定のV溝に結晶の核となる
析出物が選択的に凝集・集合し、これが大きな単結晶ま
で成長したためと考えられる。
【0064】一方、サンプル−2の基板上では、図13
に示すように、シリコン基板表面全体にリゾチームの微
結晶あるいは双晶が無秩序に多量に析出していた。析出
した結晶の平均的なサイズは0.05mmであった。
【0065】以上の結果から、本発明により微量な試料
について大型の品質の良い単結晶が得られる可能性が証
明された。
【0066】なお、以上の実施例ではP型シリコン上に
N型シリコン層を形成した素子を用いたが、高抵抗であ
るN型基板上に低抵抗であるN型層を形成し、同様に溝
を形成して高抵抗N型基板を露出させても、同様の結果
が得られると予想される。すなわち、溝部において露出
した高抵抗N型領域に結晶の核となる析出物が選択的に
凝集・集合し、大きな結晶にまで成長することが期待で
きる。
【0067】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
上述したように多様な特性を有するためどの物質に対し
ても適用できる手法がなく試行錯誤を繰返しながら進め
られてきた従来の結晶化プロセスの欠点を解決すること
ができる。特に本発明によれば、重力による溶液の対流
の影響を抑制し、結晶化の初期過程における核の形成を
安定して行なわせることができる。また本発明によれ
ば、微結晶の大量生成を抑制または制御することがで
き、X線構造解析を可能にし得る大型の結晶を得ること
ができる。さらに本発明によれば、サイズの異なる複数
の溝を設けた固体素子を結晶化に用いることによって、
あらゆる種類の高分子の結晶化に対応することができ
る。複数の溝を形成することにより、結晶化すべき高分
子の種類に応じて基板を個々に加工する手間が省け、低
コストで結晶化が可能になる。さらに本発明によれば、
結晶化すべき分子を含む溶液の液滴を貫通孔を介して固
体素子上に供給し、重力の方向に垂れ下がるように液滴
を保持することで、微量の試料について効果的な結晶化
を行なうことができる。
【0068】本発明は、製薬産業や食品産業等におい
て、有用な物質、特にタンパク質、核酸等の生体高分子
の研究、開発および製造に適用される。本発明によれ
ば、X線構造解析を可能にする結晶性の良好な結晶を成
長させることができる。結晶解析の結果、その分子構造
および活性のメカニズムについて得られる情報は、薬剤
の設計および製造に生かされる。また、本発明は、関心
のある分子の精製または結晶化に適用される。本発明
は、タンパク質等の生体高分子を用いた電子デバイスの
作製にも応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従って、固体素子の表面に結晶核が固
定化され、結晶成長が進んでいく様子を示す模式図であ
る。
【図2】本発明の固体素子において貫通孔から母液が注
入される様子を示す概略断面図である。
【図3】本発明の固体素子の一具体例を示す(a)概略
断面図および(b)平面図である。
【図4】本発明の固体素子の他の具体例を示す概略断面
図である。
【図5】図3の固体素子を製造するためのプロセスを示
す概略断面図である。
【図6】図4に示す固体素子を製造するためのプロセス
を示す概略断面図である。
【図7】固体素子に形成された溝において結晶成長がい
かに進むかを説明するための概略断面図である。
【図8】固体素子に形成された溝において結晶成長がい
かに進むかを説明するための概略断面図である。
【図9】本発明の結晶成長装置の一具体例を示す模式図
である。
【図10】図9に示す装置の要部を拡大した概略断面図
である。
【図11】実施例において生成した結晶構造の顕微鏡写
真である。
【図12】実施例において生成した結晶構造の顕微鏡写
真である。
【図13】実施例において生成した結晶構造の顕微鏡写
真である。
【図14】従来の方法に用いられる装置の一例を示す模
式図である。
【図15】従来の方法に用いられる装置のもう1つの例
を示す模式図である。
【符号の説明】 1 固体素子 2 結晶核 10、20、30、40 P型シリコン基板 11、21、31、41 N型シリコン層 12a〜e、32a〜e V溝 22a〜e、42a〜e 凹状溝
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B01D 9/02 605 B01D 9/02 605 620 620 625 625E 625Z C30B 7/00 C30B 7/00 30/02 30/02 (56)参考文献 特開 平2−18373(JP,A) 特開 平1−111799(JP,A) 特開 平8−294601(JP,A) 特開 平8−34699(JP,A) 特開 平6−116098(JP,A) 特開 平5−319999(JP,A) F.Rosenberger,”IN ORGANIC AND PROTEI N CRYSTAL GROWTH−S IMILARITIES AND DI FFERENCES”,Journal of Crystal Growt h,Vol.76,No.3,1986,p. 618−636 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00 B01D 9/02 C07B 63/00 C07H 21/00 C07K 1/14 C08H 1/00 C12N 9/00 CA(STN) JICSTファイル(JOIS)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶液中に含まれる高分子化合物の結晶を
    成長させる方法であって、 前記高分子化合物を含む前記溶液の環境に応じて表面部
    分の正孔または電子の濃度を制御できるよう価電子が制
    御された固体素子を与える工程と、 前記固体素子を前記高分子化合物を含む前記溶液に接触
    させる工程とを備え、 前記固体素子は、対向する2つの主要面の一方の面側に
    形成された深さおよび/または開口部の幅が異なる2つ
    以上の溝または孔と、前記2つの主要面の他方の面側か
    ら前記溝または孔に前記高分子化合物を含む溶液を供給
    するための貫通孔とを有し、 前記溶液と接触する前記固体素子の部分において、前記
    溝または孔の外よりも内で前記高分子化合物の結晶化が
    促進されるよう前記価電子が制御されており、 下向きにした前記溝または孔に前記貫通孔を介して前記
    高分子化合物を含む溶液を供給することにより、前記固
    体素子上において前記溶液の液滴が重力の方向に垂れ下
    がった状態で前記溶液を前記溝または孔に保持させ、か
    つ前記溶液を保持する前記溝または孔において、前記制
    御された価電子により前記固体素子の表面にもたらされ
    る電気的状態の下、前記高分子化合物の結晶を成長させ
    ることを特徴とする、結晶成長方法。
  2. 【請求項2】 前記固体素子が不純物添加された半導体
    基板であり、前記半導体基板における前記不純物の種類
    および/または濃度が、前記溝または孔の内と外とで異
    なっていることを特徴とする、請求項1の方法。
  3. 【請求項3】 前記固体素子上に、前記2つ以上の溝ま
    たは孔を取囲むように撥水層が設けられていることを特
    徴とする、請求項1または2の方法。
  4. 【請求項4】 前記溶液を保持する前記溝または孔にお
    ける結晶の成長が、前記溶液に含まれる溶媒の蒸気を吸
    収する沈殿剤または前記溶液についての気液平衡を保持
    するための緩衝溶液の存在下で行なわれる、請求項1〜
    3のいずれか1項の方法。
  5. 【請求項5】 請求項1の方法に用いられる結晶成長用
    固体素子であって、 対向する2つの主要面の一方の面側に形成された深さお
    よび/または開口部の幅が異なる2つ以上の溝または孔
    と、前記2つの主要面の他方の面側から前記溝または孔
    に高分子化合物を含む溶液を供給するための貫通孔とを
    有し、 高分子化合物を含む溶液の環境に応じて表面部分の正孔
    または電子の濃度を制御できるよう価電子が制御され、
    かつ前記溝または孔の内と外とにおいて異なる態様で前
    記価電子が制御されていることを特徴とする、結晶成長
    用固体素子。
  6. 【請求項6】 前記固体素子が不純物添加された半導体
    基板であり、前記半導体基板における前記不純物の種類
    および/または濃度が、前記溝または孔の内と外とで異
    なっていることを特徴とする、請求項5の結晶成長用固
    体素子。
  7. 【請求項7】 前記固体素子上に、前記2つ以上の溝ま
    たは孔を取囲むように撥水層が設けられていることを特
    徴とする、請求項5または6の結晶成長用固体素子。
  8. 【請求項8】 請求項5〜7のいずれか1項の固体素子
    と、 前記固体素子を支持するための手段と、 前記固体素子および前記手段を、沈殿剤または緩衝溶液
    とともに密閉状態で収容できる容器とを備えることを特
    徴とする、結晶成長用装置。
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