JP3147511B2 - 工具用アルミナ焼結体 - Google Patents

工具用アルミナ焼結体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミナ焼結体の表面
部の組成成分を漸次変化させた、所謂、傾斜組成構造の
表面部を有した工具用焼結体及びその製造方法、並びに
その焼結体の表面に被膜を形成した工具用焼結体に関
し、具体的には、旋削工具,フライス工具,ドリル,エ
ンドミル等の切削工具、ダイス,パンチ,スリッター,
センター等の耐摩耗工具として最適な工具用アルミナ焼
結体及びその製造方法、並びにその焼結体の表面に被膜
を形成した工具用アルミナ焼結体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、主成分のアルミナ中にMgO,Y
23,Cr23,NiO,TiO2,ZrO2又は周期律
表の4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物,炭窒化
物等の添加物を均一に分布させた高密度アルミナ焼結体
が工具用として一部実用されている。しかしながら、こ
れらの高密度アルミナ焼結体は、均一に分布させた添加
物の特性に従って、焼結体自体の特性も変動するにすぎ
ず、結局、アルミナの有する優れた耐摩耗性を保持させ
ると靭性及び強度の向上が期待できず、逆に、靭性,強
度及び熱的特性を高めようとする耐摩耗性が低下してし
まうという二律背反的傾向を示すという問題がある。
【0003】この問題を解決しようとしているものに、
アルミナ焼結体の表面部を改質する方向のものが多数提
案されており、その1つに、アルミナ焼結体の表面に化
学蒸着法(CVD法)や物理蒸着法(PVD法)でもっ
て被膜を形成した被覆アルミナ焼結体があり、他に、C
VD法やPVD法以外の方法でもってアルミナ焼結体の
表面部を改質しているものがある。
【0004】この内、後者の代表的なものとして、特開
昭60−103090号公報,特開平2−157149
号公報がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】アルミナ焼結体の表面
部を改質した先行技術の内、特開昭60−103090
号公報には、SiO2を含むα−Al23の主成分中に
ムライト及びB23を添加し、焼結時に焼結体の表面に
ムライト析出層を形成させたアルミナ焼結体について記
載されている。
【0006】また、特開平2−157149号公報に
は、複数の組成からなるセラミックスの各組成の割合が
連続的に変化した多成分系セラミックス、具体的には、
Al23−SiO2焼結体の上部ではAl23が少な
く、SiO2の多くなる組成変化が連続的に起っている
ことが記載されている。
【0007】これら両公報に記載されている焼結体は、
CVD法やPVD法により形成される被膜とは異なり、
被膜の剥離が生じ難く又は表面部と内部との熱膨張差に
よる歪み等が緩和された優れた焼結体ではあるが、表面
部が軟質になっているために耐摩耗性が悪く、特に、工
具のような苛酷な用途では実用できないという問題があ
る。
【0008】 本発明は、上述のような問題点を解決し
たもので、具体的には、アルミナを主成分とする焼結体
の表面から少なくとも0.05mm内部までの表面調質
層に特定の化合物を形成し、この化合物を形成する元素
を内部に向かって漸減させることにより、表面調質層と
焼結体内部との特性を最大限に発揮させ、耐摩耗性、靱
性、強度及び耐熱性を高め、工具、特に切削工具として
実用できる工具アルミナ焼結体の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来のア
ルミナ基焼結体が組成成分の調整でもって、焼結体の或
る特性を向上させるとしても、逆に他の必要な特性が低
下してしまうという問題を解決するための検討を行って
いた所、アルミナ基焼結体の製造工程において、粉末成
形体を焼結する場合に拡散が容易な化合物で、焼結後の
焼結体の表面層において耐摩耗性,靭性,耐熱性,耐腐
蝕性を付与できる化合物を濃度勾配を持たせて拡散させ
ると、或る特性を低下させることなく、各種の特性が同
時に向上するという知見を得て、本発明を完成するに至
ったものである。
【0010】すなわち、本発明の工具用アルミナ焼結体
は、アルミナを主成分とする焼結体の表面の1部又は全
面における該表面から少なくとも0.05mm内部まで
の厚さに表面調質層が形成されており、該表面調質層に
は、周期律表の3a,4a,5a,6a族元素,Fe,
Ni,Co,Siの中の少なくとも1種を含む化合物が
含有されたアルミナ焼結体であって、該表面調質層は、
該化合物として含有している周期律表の3a,4a,5
a,6a族元素,Fe,Ni,Co,Siの中の少なく
とも1種の拡散元素が該表面調質層の表面から該焼結体
の内部に向かって漸次減少しており、表面より0.05
mm内部における表面調質層中に存在する該拡散元素の
濃度(Cs)と、該表面調質層を除いた焼結体内部にお
ける該拡散元素の濃度(Ci)との比が1.5以上(C
s/Ci≧1.5)であることを特徴とする。
【0011】本発明の焼結体におけるアルミナを主成分
とする焼結体とは、表面調質層を除いた内部が粒状,板
状及び/又は繊維状のα−アルミナを50重量%以上含
有し、残部がMgO,Y23,Cr23,HfO2,Z
rO2,NiO2,TiO2,希土類酸化物,周期律表の
4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物,炭窒化物,
窒酸化物,硅化物,ホウ化物及びこれらの相互固溶体の
中の1種以上からなるものである。
【0012】本発明の焼結体における表面調質層は、焼
結体の表面から0.05mm未満の内部までの厚さにな
ると、硬さ,靭性,耐摩耗性,耐熱性を高める効果が弱
くなる。この表面調質層の厚さは、製品の形状又は用途
により異なるが、焼結体の表面から0.05mm〜3.
0mmの内部までの厚さがあればよく、特に、焼結体の
表面から0.1〜2.0mmの内部までの厚さでなるこ
とが好ましい。
【0013】この表面調質層に存在する周期律表の3
a,4a,5a,6a族元素,Fe,Ni,Co,Si
の中の少なくとも1種を含む化合物とは、これらの元素
の炭化物,窒化物,酸化物,ホウ化物,及びこれらの相
互固溶体の中の少なくとも1種からなり、特にこれらの
元素を含む酸化物からなることが好ましく、具体的に
は、例えばY23,La23,CeO2,Dy23,T
iO2,ZrO2,HfO2,Nb25,Ta25,Cr2
3,FeO,Fe23,CoO,NiO ,SiO2,及
びこれらの酸化物同志の複合化合物,相互固溶体又は焼
結体内部の主成分であるアルミナと上述の酸化物との複
合化合物や相互固溶体の中の1種以上からなるものであ
る。
【0014】表面調質層に存在する上述の化合物は、表
面調質層の表面から内部に向かって濃度勾配を有してい
るもので、具体的には、上述の化合物を形成する周期律
表の3a,4a,5a,6a族元素,Fe,Ni,C
o,Siの中の少なくとも1種の拡散元素が表面から内
部に向かって漸減しているものである。特に、拡散元素
の濃度勾配は、表面より0.05mm内部における表面
調質層中に存在する該拡散元素の濃度(Cs)と、該表
面調質層を除いた焼結体内部における該拡散元素の濃度
(Ci)との比が1.5以上(Cs/Ci≧1.5)で
なる場合には、焼結体の耐摩耗性,靱性,耐熱性,耐欠
損性を顕著に高めるので好ましい。
【0015】表面調質層は、焼結体の1部又は全面に形
成した構成でなる場合、又は焼結体の面によって表面調
質層内に存在させる化合物の種類が異なるようにした構
成でなる場合、もしくはこれらの組合せた構成でなる場
合があり、これらの表面調質層の構成と前述の表面調質
層の厚さは、形状や用途により使い分けることができ
る。具体的には、例えば、本発明の焼結体を切削工具と
して用いた場合、特にスローアウェイチップとして用い
た場合、掬い面と逃げ面に、それぞれ異なった化合物の
存在した表面調質層を形成することが好ましく、さらに
詳述すると、掬い面には強度,靭性,耐熱性を高めるD
y,Zr,Hf,Cr(それぞれ、ガーネット,ZrO
2,HfO2,(Cr,Al)23固溶体として存在)の
存在した表面調質層を,逃げ面にはすきとり摩耗性を高
めたNiO,SiO2(それぞれスピネル,ムライトと
して存在)の存在した表面調質層とした構成にすること
が好ましい。
【0016】以上の構成からなる表面調質層を有する焼
結体の表面に、さらに周期律表の4a,5a,6a族元
素の炭化物,窒化物,酸化物,Alの酸化物,窒化物及
びこれらの相互固溶体、もしくはダイヤモンド、ダイヤ
モンド状カーボン,立方晶窒化ホウ素の中の少なくとも
1種の単層あるいは多層の被膜を形成すると、耐摩耗性
及び耐欠損性が向上することからより好ましいことであ
る。
【0017】本発明の焼結体を作製する場合、まず表面
調質層の形成は、従来の粉末冶金を利用した製造工程の
内、焼結工程の前工程、又は焼結工程中、もしくは焼結
後に焼結体の表面から拡散元素を侵入あるいは拡散させ
ればよいが、特に次の方法で行なうと表面調質層の厚さ
及び拡散元素の濃度勾配の制御が容易になることから好
ましい。
【0018】すなわち、本発明の焼結体の製造方法は、
アルミナ粉末を主成物として含む出発原料を混合及び成
形して粉末成形体とする第1工程、該粉末成形体の表面
を周期律表の3a,4a,5a,6a,鉄族金属および
Siの中の少なくとも1種を含む化合物に接触、又は該
化合物を形成するための前駆体の溶液に含浸させる第2
工程及び雰囲気ガス又は酸化性ガス中で加熱焼結する第
3工程により、上述の焼結体を作製する方法である。
【0019】本発明の焼結体の製造方法における第1工
程の粉末成形体は、従来の粉末冶金法で行なわれてい
る、押出し成形法,金型による加圧成形法,射出成形
法,鋳込成形法などにより成形された粉末成形体であ
る。
【0020】本発明の焼結体の製造方法における第2工
程の粉末成形体の表面を化合物に接触させるとは、具体
的には、例えば粉末成形体の表面に化合物粉末を上述の
粉末成形体の成形時に一体化成形する方法,粉末成形体
の表面に化合物粉末を塗布又は吹付ける方法,化合物粉
末を塗布した板体に粉末成形体を載置する方法,又は化
合物粉末中に粉末成形体を埋設する方法を挙げることが
できる。また、第2工程における化合物を形成するため
の前駆体の溶液とは、例えばY(NO33,Ti(SO
42,ZrO(NO32,CrO3,Co(NO32
NiCl2の水溶液を挙げることができる。
【0021】ここで第2工程で粉末成形体に接触させる
化合物あるいは含浸させる前駆体は、焼結時の酸化性雰
囲気ガスにより酸化物を形成する化合物であれば良く、
炭化物,窒化物,硫化物,塩化物および各種の塩が挙げ
られる。
【0022】本発明の焼結体の製造方法における第3工
程の雰囲気ガスとは、例えばTiCl4,CrO3,Ni
Cl2とN2との混合ガスを挙げることができる。また、
第3工程における加熱焼結とは、粉末成形体が緻密に焼
結される、例えば1400〜1800℃の温度でなるも
のである。
【0023】以上のようにして作製した表面調質層を有
する焼結体の表面に、さらに硬質被膜を形成する場合
は、従来から行なわれているCVD法やPVD法でもっ
て被膜を作製することができる。
【0024】
【作用】本発明の焼結体は、表面調質層中に存在する化
合物が工具として用いられる場合における強度,靭性,
耐摩耗性及び耐熱性を高める作用をし、表面調質層中の
化合物を形成している拡散元素の濃度勾配が表面調質層
と焼結体内部との熱応力緩和作用をしているものであ
る。特に、Dy,Zr,Hf,Crの拡散元素の場合
は、焼結体の強度及び靭性を高める作用が強く、Ni,
Siの拡散元素の場合は、焼結体の耐摩耗性を高める作
用が強くなるものである。
【0025】
【実施例1】平均粒径が約0.3μmのα−Al23
約0.03μmのMgO,ZrO2(3mol%のY2
3を含有)の市販粉末を用い、(A)99.5wt%A
23−0.5wt%MgOおよび(B)80.0wt
%Al23−20.0wt%ZrO2(3Y)の組成成
分に配合し、ウレタン内張りしたステンレスポットにメ
タノールとAl23製ボールと共に装入して48時間混
合粉砕し、乾燥後、80℃に加熱しながら4wt%のパ
ラフィンワックスを添加混合して混合粉末を得た。次に
ISO規格SNMN120408用モールドに、混合粉
末を充填し、1ton/cm2の加圧により粉末成形体
を作製した。こうして得た粉末成形体を表1に示した処
理方法および焼結条件でもって焼結し、本発明品1〜1
0および比較品1,2を得た。
【0026】
【表1】 こうして得た本発明品1〜10および比較品1,2の焼
結体を切断し、それぞれの表面調質層の厚さ、焼結体の
表面(表面調質層の表面より0.05mm内部点)と焼
結体の表面から2.3mm内部点における拡散元素の濃
度を測定し、その結果を表2に示した。拡散元素の濃度
測定は、EPMAにより行なった。
【0027】また、表面の色調および表面での生成物を
X線で回折により同定した結果を表2に併記した。
【0028】
【表2】 次に、本発明品2,5,6,8,9及び比較品1,2を
用いて、被削材:S48C,切削速度:400m/mi
n,送り:0.2mm/rev,切り込み:1.5m
m,チップ形状:SNMN120408(ブレーカ付
き,PH0.15×−25°),切削時間:10分,評
価:平均逃げ面摩耗幅(VB)による乾式旋削試験と,
被削材:S48C(外周に4本の溝入り),切削速度:
100m/min,切り込み:1.5mm,チップ形
状:SNMN120408(ブレーカ付き,PH0.1
5×−25°),切削時間:欠損又はチッピングによる
寿命まで,評価:3コーナーの平均寿命時間による乾式
断続旋削を行なった。その結果を表3に示した。
【0029】
【表3】
【0030】
【実施例2】次に本発明品9及び比較品2を、イオンプ
レーテイング装置を用い炉内圧力10-3 TorrでTi
を蒸発させながら、炉内流入ガスをAr,Ar/N2
50/50,Ar/CH4=50/50と順次変化させ
ることにより、その表面に被膜厚さ及び被膜材質が順次
0.5μmTi,1.0μmTiN,1.0μmTiC
からなる被膜を積層被覆した。
【0031】得られた被膜チップ(ISO SNMN1
20408)で、被削材:FCD60,切削速度:15
0mm/min,送り:0.3mm/rev,切り込
み:1.5mm,切削時間:20分による乾式切削を行
なった結果、平均逃げ面摩耗幅は本発明品9が0.15
mmと正常であるのに対し、比較品2は15分切削で
0.35mmと大きく、17分切削時に破損した。
【0032】
【発明の効果】本発明の焼結体は、添加物を均一に分散
した従来のアルミナ焼結体に比べて、切削工具として用
いた場合に耐摩耗性が少し向上し、耐欠損性が顕著に向
上するという優れた効果がある。また、硬質被膜を形成
させた本発明の焼結体は、従来の被覆アルミナ焼結体に
比べて、切削工具として用いた場合に耐摩耗性及び耐欠
損性共に顕著に向上し、寿命が著しく向上するという優
れた効果がある。さらに、本発明の焼結体は、表面調質
層の色調の制御が可能であり、例えば表面調質層にCr
を拡散させると赤紫色〜桃色系、Coを拡散させると青
紫色〜青色系、Niを拡散させると青緑色〜緑色系にす
ることができることから、工具の使用前後の判断が容易
となり、工具管理が容易にできるという効果もある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−117949(JP,A) 特開 平3−5362(JP,A) 特開 昭62−21776(JP,A) 特開 平2−157176(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/10 C04B 41/87 C04B 41/89

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミナを主成分とする焼結体の表面の
    1部又は全面における該表面から少なくとも0.05m
    m内部までの厚さに表面調質層が形成されており、該表
    面調質層には、周期律表の3a,4a,5a,6a族元
    素,Fe,Ni,Co,Siの中の少なくとも1種を含
    む化合物が含有されたアルミナ焼結体であって、該表面
    調質層は、該化合物として含有している周期律表の3
    a,4a,5a,6a族元素,Fe,Ni,Co,Si
    の中の少なくとも1種の拡散元素が該表面調質層の表面
    から該焼結体の内部に向かって漸次減少しており、表面
    より0.05mm内部における表面調質層中に存在する
    該拡散元素の濃度(Cs)と、該表面調質層を除いた焼
    結体内部における該拡散元素の濃度(Ci)との比が
    1.5以上(Cs/Ci≧1.5)であることを特徴と
    する工具用アルミナ焼結体。
  2. 【請求項2】 上記化合物は、酸化物でなることを特徴
    とする請求項1記載の工具用アルミナ焼結体。
  3. 【請求項3】 上記表面調質層は、上記焼結体の少なく
    とも2つの表面に形成されており、該焼結体の少なくと
    も2つの表面の内、1つの表面に形成された該表面調質
    層には他の表面に形成された該表面調質層とは異なった
    上記化合物が存在していることを特徴とする請求項1記
    載の工具用アルミナ焼結体。
  4. 【請求項4】 請求項1,2又は3記載のアルミナ焼結
    体の表面に、さらに周期律表の4a,5a,6a族元素
    の炭化物,窒化物,酸化物,Alの酸化物,窒化物及び
    これらの相互固溶体、もしくはダイヤモンド、ダイヤモ
    ンド状カーボン,立方晶窒化ホウ素の中の少なくとも1
    種の単層あるいは多層の被膜を形成したことを特徴とす
    る工具用アルミナ焼結体。
  5. 【請求項5】 請求項1、2、3又は4記載の工具用ア
    ルミナ焼結体が切削工具として用いられることを特徴と
    する工具用アルミナ焼結体。
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