JP3149060B2 - 陽極化成装置、陽極化成方法及びシリコン基板の製造方法 - Google Patents

陽極化成装置、陽極化成方法及びシリコン基板の製造方法

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JP3149060B2
JP3149060B2 JP03132792A JP3132792A JP3149060B2 JP 3149060 B2 JP3149060 B2 JP 3149060B2 JP 03132792 A JP03132792 A JP 03132792A JP 3132792 A JP3132792 A JP 3132792A JP 3149060 B2 JP3149060 B2 JP 3149060B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低消費電力と高速性を
兼ね備えたBi−CMOSデバイスを搭載したULSI
やセンサーデバイス、演算素子、メモリなどの機能素子
を積層した3次元構造デバイス、または電子交換機、放
電プリンタ、プラズマ・ディスプレイ用のパワー・トラ
ンジスタなどの高耐圧デバイス、等に用いられるSOI
(Silicon On Insulator)形成技
術や、マイクロ・マシニング技術の分野等で利用される
結晶シリコンの陽極化成処理装置及び方法、並びにシリ
コン基板の製造方法に関し、特に多孔質シリコンの製造
に用いられる陽極化成装置及び方法、並びにシリコン基
板の製造方法に関するものである。
【0002】尚、本発明で述べる多孔質シリコンとは、
単結晶構造を保有するとともに、その内部に多数の細孔
を有する構造を特徴とする結晶シリコンを意味する。
【0003】また、本発明において、結晶シリコン基板
と表現する場合は、半導体産業分野において利用される
結晶欠陥及び細孔を有しない単結晶シリコンウェーハを
意味する。
【0004】
【従来の技術】多孔質シリコンの形成は、ウィラー
(A.Uhlir)及びターナー(D.R.Turne
r)により、フッ化水素酸(以降、HFと略記する。)
水溶液中において、正電位にバイアスされた単結晶シリ
コンの電解研磨の研究過程において発見された。
【0005】その後、多孔質シリコンの反応性に富む性
質を利用して、シリコン集積回路製造工程において、厚
い絶縁物の形成が必要な素子間分離工程に応用する検討
がなされ、多孔質シリコン酸化膜によるICの完全分離
技術であるFIPOS(Fu−ll Isolatio
n by Porous Oxidized Sili
con)や、多孔質シリコン基板上に成長させたシリコ
ン・エピタキシャル層を酸化膜を介して非晶質基板上や
単結晶シリコン・ウェーハ基板上に貼付けるシリコン直
接接合技術などへの応用技術が開発されるに至った。
【0006】従来、多孔質シリコンは、図4に示す日本
国特許:特開昭60−94737号公報、及び米国特
許:No.4628591号、等に記載されているよう
な陽極化成装置を用いて形成されている。
【0007】このような従来の陽極化成装置は、図4に
示すように、縮退したシリコンウェーハ1を挟んで化成
槽2a及び2bを有しており、各化成槽は白金電極板3
a及び3bが配置してある。
【0008】また、化成槽2a及び2bの外壁面と、シ
リコンウェーハ1のウェーハラッピング面とは、Oリン
グ7を介してウェーハ装着が容易なように分解可能な構
造で接合し、陽極化成装置が組み立てられている。
【0009】更に、化成槽2a及び2bのシリコンウェ
ーハ1に接する側壁には、前記Oリング7の内径寸法に
対応する開口が設けてあり、化成槽2a及び2b内には
シリコンウェーハ1をエッチングする為の、純水で希釈
されたHF水溶液からなる電解質溶液6a及び6bが満
たされている。
【0010】各化成槽内のHF水溶液は、前記Oリング
7により、液漏れがないようにシールされている。
【0011】次に、外部直流電源(図示せず)により、
白金電極3aを陰極に、また白金電極3bを陽極にする
ことで、化成槽2a内のHF水溶液6aにおいてフッ素
イオン(以降、「F- イオン」と略記する。)が発生す
る。
【0012】このF- イオンは、シリコンウェーハ1の
陰極側表面でシリコン原子と反応し、四フッ化シリコン
(SiF4 )と水素(H2 )を化成することで、シリコ
ンウェーハ1を溶解して細孔を形成する。
【0013】結晶シリコンの陽極化成反応による細孔形
成において、シリコンウェーハ中の正孔の存在が不可欠
であることが知られている。その形成メカニズムは、次
のように想定される。
【0014】まず、縮退したP型シリコン内の正孔が単
結晶シリコンウェーハ表面に達すると、表面のシリコン
末結合手を補償するSi−H結合へのF- イオンの求核
攻撃が生じこれに代わってSi−F結合を形成する。
【0015】F原子は、Si原子に比べて電気陰性度が
大きいために、結合したFイオンによる分極誘導が生
じ、表面のSi−H結合を別のF- イオンが攻撃してさ
らにSi−F結合を形成する。これによりH2 分子が発
生すると同時に、陽極電極内に電子1個を注入する。S
i−F結合によって生じる分極のためバックボンド(b
ackbonds)の電子密度が低下し、Si−Si結
合が弱くなる。
【0016】この弱い結合(weakened bon
ds)は、HFあるいはH2 Oによって攻撃され、結晶
表面のSi原子はSiF4 となって表面から離脱し、表
面は水素や酸素で終端される。Si原子の離脱によって
生じた結晶表面の窪みは、正孔を優先的に引き寄せる電
場の分布を生じ、表面異質性が拡大して電界方向に細孔
が形成される。
【0017】このような細孔の優先的な形成は、P型シ
リコン基板において特有な現象ではなく、正孔が小数担
体となる縮退したn型シリコン基板においても生じる。
この場合、光の照射による電子−正孔対の生成が正孔の
供給源となる。
【0018】一方、陽極側電解質溶液6bにおいて化成
するF- イオンは、陽極側白金電極3bに引き寄せられ
るために、前記結晶シリコン基板1の陽極側表面には供
給されない。このため、陽極側電解質6bは液体電極と
してのみ作用し、細孔の形成は、結晶シリコン基板の陰
極側表面側からのみ進行する。
【0019】また、P型シリコン基板を使用する場合、
液体電極としての陽極側電解質溶液6bとの間でショッ
トキー障壁が生ずるため、その陽極側表面をP+ 化して
オーミックコンタクトをとる必要があるとする説もあ
る。
【0020】また一般に、前記電解質溶液にはアルコー
ルが混合されて使用される場合が多い。これは、反応に
より発生した水素ガスが、表面に付着してフッ化水素酸
の表面への供給を妨げて反応を阻害することを防ぐよう
に作用する。
【0021】このようにして形成された多孔質シリコン
の細孔の直径は、透過型電子顕微鏡による観察による
と、多孔質化率(Porosity)が20〜80%の
時、1〜100nm(ナノメートル)程度であり、内面
積は実に〜200m2 /cm3(平方メートル/立方セ
ンチメートル)にも達する。また、その密度は単結晶シ
リコンの2.33g/cm3 (グラム/立方センチメー
トル)に比べて1.1〜0.6g/cm3 の範囲に変化
させることができる。
【0022】一般に、単結晶シリコンを酸化するとその
体積は2.2倍に増加するが、多孔質シリコンでは密度
制御を行うことで酸化による体積変化を小さくすること
ができる。その結晶性は二結晶X線回折法による測定か
ら(400)回折面から求めた垂直方向の格子定数の変
化量は10-3のオーダで増減するが、(311)回折面
から求めた平行な方向の変化量は、検出限界以下(<1
-4)でほとんどないことが分かっており、X線回折強
度曲線からは多孔質シリコン層のシリコン格子が高度に
配列されていることが明らかになっている。
【0023】このような多孔質シリコン特有の構造が、
単結晶シリコンに比べて極端に早いエッチング速度や、
酸化速度を有することや、結晶性を損なうことがないこ
とから、多孔質シリコン上のエピタキシャル成長が可能
であること、更には縮退、非縮退、導電タイプの違いに
よる多孔質化の選択性等の特徴を生じさせている。
【0024】
【発明が解決しようとしている課題】近年、FIPOS
構造や結晶シリコン基板の他のSOI形成技術の急速な
進展に伴って多孔質シリコンの多量処理が切望されるよ
うになった。
【0025】一般に結晶シリコン基板の多孔質化処理に
要する時間は、例えばFIPOS構造の場合のように
0.01mm程度の多孔質層を形成する場合であれば、
約7分間程度で完了する。そこで、従来は図4に示した
ような陽極化成装置と同様な構造で、基板の装着や多孔
質シリコンの形成、搬送、水洗、乾燥、等を自動化する
ことで多量処理を行っていた。
【0026】ところが、厚い多孔質層を形成する場合、
例えば、直径4インチ、厚さ0.4mmのP型単結晶シ
リコン基板の全てを多孔質化処理する場合には、約4.
5時間もの長時間を要し、従来の構造のまま自動化する
のみでは処理能力は殆ど向上しないという問題があっ
た。
【0027】そのため、多孔質化処理時間そのものの短
縮が必要となった。ところが、多孔質シリコン層の構造
は、その形成条件に大きく依存し、HF混合水溶液の濃
度や化成電流の密度、及びその反応時の温度、反応電流
の電界分布、被処理基板の不純物密度、さらには化成速
度が最適化されることが必要であり、単に化成速度のみ
を高速化することは好ましくないという問題があった。
【0028】また、陽極化成装置において、被処理基板
面内の化成電流の電界の分布を均一にするために、電極
の面積はこれと対向する被処理基板の面積と等しくする
ことが好ましい。
【0029】ところが、従来の陽極化成装置のように白
金電極間に基板を配置する構造で、複数枚の結晶シリコ
ン基板を同時に多孔質化処理しようとした場合には、実
質的に被処理基板1の面積が増えるため、白金電極の3
a及び3bの面積もこれに比例して大きくなるという問
題がある。
【0030】しかも、化成槽2a及び2bが大型化し、
HF混合水溶液のような強酸を電解質溶液として使用す
る化成装置においては、気密不良によるHF混合水溶液
の漏洩の危険性を伴い、多孔質シリコンを安全に製造す
る上で問題があった。
【0031】一方、従来の陽極化成装置では、白金電極
が浸せきされている電解質溶液と被処理基板の表面が直
接接触する構造となっていた。このため、長時間の化成
を行う場合には、白金電極成分の一部が電解質溶液中に
溶解し、被処理基板表面に付着して金属汚染を生じる恐
れがあるという問題があった。
【0032】このような陽極化成反応における金属汚染
の影響については明瞭ではないが、集積回路製造行程に
おけるシリコン基板の汚染は極力抑えなければならな
い。
【0033】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解
決するための手段として、電解質溶液を介して被処理基
板と電極との間に電圧を印加することにより陽極化成反
応を生ぜしめる陽極化成装置において、前記電解質溶液
を介して対を成す電極間に、化成電流の電気力線に沿っ
て、互いに間隔をおいて、複数枚の前記被処理基板を配
置し保持するための基板支持手段を備え、前記被処理基
板間の電解質溶液が、前記被処理基板と該基板支持手段
とにより、互いに分離されるように、構成されており、
該複数枚の前記被処理基板のうち、前記電極としての金
属電極に最も隣接する被処理基板と前記金属電極との間
に擬似電極としてのシリコン基板を介在させることを特
徴とする陽極化成装置を提供する。また、本発明は、電
解質溶液を介して被処理基板と電極との間に電圧を印加
することにより陽極化成反応を生ぜしめる陽極化成方法
において、基板支持手段により、前記電解質溶液を介し
て対を成す電極間に、化成電流の電気力線に沿って、互
いに間隔をおいて、複数枚の前記被処理基板を配置し保
持することにより、 前記被処理基板間の電解質溶液を、
前記被処理基板と前記基板支持手段とにより、互いに分
離し、該複数枚の前記被処理基板のうち、前記電極とし
ての金属電極に最も隣接する被処理基板と前記金属電極
との間に擬似電極としてのシリコン基板を介在させて、
前記陽極化成反応を生ぜしめることを特徴とする陽極化
成方法を提供する。
【0034】さらにまた、本発明は、電解質溶液を介し
て被処理基板と電極との間に電圧を印加することにより
陽極化成反応を生ぜしめて、前記被処理基板の表面に多
孔質シリコンを形成する工程を含むシリコン基板の製造
方法において、基板支持手段により、前記電解質溶液を
介して対を成す電極間に、化成電流の電気力線に沿っ
て、互いに間隔をおいて、複数枚の前記被処理基板を配
置し保持することにより、前記被処理基板間の電解質溶
液を、前記被処理基板と前記基板支持手段とにより、互
いに分離し、該複数枚の前記被処理基板のうち、前記電
極としての金属電極に最も隣接する被処理基板と前記金
属電極との間に擬似電極としてのシリコン基板を介在さ
せて、前記陽極化成反応を生ぜしめることを特徴とする
シリコン基板の製造方法を提供する。
【0035】更にまた、電極の電気的極性を交互に反転
することにより、化成反応電流の向きを反転させる手段
を有するものである。
【0036】またその好ましい実施態様として、前記基
板の支持手段は電気的絶縁性、及び耐酸性、耐アルカリ
性、柔軟性、弾力性、気密性、機械加工性を有するフッ
素樹脂及び/またはゴム、プラスチック等、好ましくは
四フッ化エチレン樹脂からなり、被処理基板に対して対
称な構造を有する。
【0037】また、前記被処理基板としては、低抵抗の
結晶シリコン基板を使用し、前記陽極化成反応が該結晶
シリコン基板の多孔質化反応であり、前記結晶シリコン
基板が縮退した単結晶シリコン、さらに好ましくは縮退
したP型単結晶シリコンとする。
【0038】更に、前記電解質溶液としては、導電性を
有するシリコン溶解性溶液、好ましくは純水で希釈され
たフッ化水素酸及びアルコールから成るフッ化水素酸混
合液を使用し、また前記電極としては、前記シリコン溶
解性溶液に対して耐蝕性を有する金属材料、好ましくは
白金を使用するものである。
【0039】
【作用】既に説明したように、従来の陽極化成装置にお
ける陽極側電解質溶液は液体電極として作用する。しか
も、電解質溶液と結晶シリコン基板との間にはショット
キー障壁が生ずる。本発明者はこの点に注目し鋭意研究
を重ねた結果、結晶シリコン基板と電解質溶液が個々に
電気的に独立した構造であれば、これを電気的に接触す
ることで、複数枚の縮退した結晶シリコン基板のそれぞ
れに電位差を生じさせることができることから、複数枚
の結晶シリコン基板を、同時に一括して多孔質化処理す
ることが可能であることを見い出した。
【0040】本発明の陽極化成装置の作用について、そ
の概念を図を用いて説明する。
【0041】図3(a)は、本発明の陽極化成装置にお
いて、化成電流の電気力線に沿って4枚のP型結晶シリ
コン基板を配置した状態でのエネルギーバンド図であ
る。また図3(b)は、これを多孔質化処理するために
白金電極に直流電圧を印加した場合のエネルギーバンド
図である。
【0042】図中、1a〜1dはP型結晶シリコン基板
であり、6a〜6eはHF混合水溶液であり、HF混合
水溶液6a及び6eには白金電極をそれぞれ浸せきし
た。8はショットキー障壁を示す。
【0043】一般に、フッ化水素酸混合液の抵抗率はそ
の混合比率によって変化する。例えば、48wt.%
(重量パーセント)の純水希釈フッ化水素酸、純水、ア
ルコールをそれぞれ1:1:1の割合で混合した場合に
は23.6Ωcm(オームセンチメートル)程度の低い
抵抗率を有する。
【0044】また、縮退したP型結晶シリコン基板は、
0.01〜0.02Ωcm程度の抵抗率を有しているこ
とから、両者は電気的抵抗体として作用する。
【0045】即ち、図3(a)に示すように、P型結晶
シリコン基板とHF混合水溶液を化成電流の電気力線に
沿って交互に複数個配置することは、複数の電気的抵抗
体を直列に接続したものと電気的に等価である。
【0046】ところが、フッ素原子の仕事関数はシリコ
ン原子に比べて遥かに大きく、結晶シリコン基板と電解
質溶液との接触界面においてショットキー障壁8が発生
する。
【0047】本発明の陽極化成装置においては、結晶シ
リコン基板の両面に電解質溶液が接触する構造となって
いることから、ショットキー障壁8は全ての結晶シリコ
ン基板の両面に同じ高さで発生する。
【0048】ここで図3(a)においては、まだ、外部
電圧を印加していない。このため、結晶シリコン基板の
両面のショットキー障壁の電位差は0で、又HF混合水
溶液中においても同電位となることからF- イオンは積
極的に生成されない。
【0049】次に、本発明において電解質溶液は結晶シ
リコン基板により電気的に分離される構造となっている
ことから、化成槽の両端に配置した白金電極に電圧を印
加すると、図3(b)に示すように、個々の結晶シリコ
ン基板の両面のショットキー障壁8間には印加電圧に比
例した電位差が生じ、HF混合水溶液中にも電位差が生
じてF- イオンが生成され、化成電流が流れる。
【0050】ここで、白金電極が浸せきされたHF混合
水溶液6a及び6eは、それぞれ陽極及び陰極としても
作用し、隣接する2枚の結晶シリコン基板間に挿入され
るHF混合水溶液6b〜6dは一方の結晶シリコン基板
に対しては陽極電極として、また他方の結晶シリコン基
板に対しては陰極電極として作用する。
【0051】このため、更に前記HF混合水溶液を電気
的に分離したり、隣接する結晶シリコン基板間に白金電
極を挿入する必要がなく、個々の結晶シリコン基板の両
面には、それぞれ陽極と陰極を形成することができる。
しかも、すべての結晶シリコン基板における電界の向き
が一致する事から、化成は同一方向に進行する。
【0052】また、本発明においては、電界の形成にシ
ョットキー障壁を積極的に利用することから、従来指摘
されていたようなP型結晶シリコン基板の陽極側表面の
+化処理を行うこと無く多孔質化処理が可能である。
尚、この時印加する電圧は、被処理基板の枚数及び分離
された電解質溶液の槽の個数に比例する事はいうまでも
ない。
【0053】また、本発明においてはショットキー障壁
を利用することから、電解質溶液と被処理基板とを構成
する元素の電気陰性度差が大きい方が好ましい。従っ
て、被処理基板としてN型結晶シリコン基板を使用する
こともできる。
【0054】本発明における被処理基板及び電解質溶液
の抵抗率の範囲としては、陽極化成電流が流れることは
勿論のこと、電解質溶液中で電位降下による印加電圧の
損失をできるだけ無くすと同時に、化成反応が電解質溶
液の温度の影響を受け易いことから印加電圧による発熱
を伴わない程度の抵抗率以下であることが好ましい。
【0055】本発明によれば、白金電極に印加する直流
電圧の極性をその化成反応中を通して固定した場合に
は、前記複数枚の結晶シリコン基板の陰極側表面からの
み細孔の形成を行うことができる。
【0056】一方、多孔質化処理途中において白金電極
に印加する直流電圧の極性を反転させることにより、結
晶シリコン基板の両面に形成されるショットキー障壁の
高さを逆転させることができ、結晶シリコン基板内の電
界の向きを反転させることができる。
【0057】これにより、結晶シリコン基板の全域にわ
たって多孔質化処理を行う場合に、結晶シリコン基板は
固定したままで複数枚の結晶シリコン基板の裏面からも
一括して多孔質化処理を行うことが可能である。この場
合、本発明の陽極化成装置においては、前記結晶シリコ
ン基板の電解質溶液中での保持方法を統一し、その陽極
側及び陰極側構造が対称形状であることが好ましい。
【0058】既に説明したように、本発明において結晶
シリコン基板の両面に接触する電解質溶液は完全に分離
され、電気的にも絶縁されることが必要である。そこ
で、結晶シリコン基板間の電解質溶液を電気的に独立に
分離する方法としては、結晶シリコン基板の外周部側壁
面にて気密性を保持し、かつ支持する構造とする事が好
ましい。しかもこのような形状であれば、上記のような
対称形状を容易に実現できる。
【0059】このように電気的に分離された電解質溶液
には、外部電源により白金電極を介して直流電力が印加
され、縮退したP型結晶シリコン基板には、印加された
電界により電解質溶液及び結晶シリコン基板を介して化
成電流が流れる。白金電極の面積は、使用する結晶シリ
コン基板と同じ大きさでよい。
【0060】このとき形成される電気力線は、基板の厚
み方向に向かってほぼ基板を一直線に横切る。即ち、F
- イオンの優先的な誘引により細孔もほぼ厚み方向に陰
極側から陽極側に向かって優先的に形成される。
【0061】また、前記化成反応電流の電界の向きを交
互に反転させることにより、細孔の形成を前記結晶シリ
コン基板の両面から交互に進行させることができる。
【0062】一方、本発明においては、複数枚の結晶シ
リコン基板とこれに挿入された電解質溶液の内、白金電
極が浸せきされている両端の電解質溶液とこれに接触す
る結晶シリコン基板はそれぞれ陰極電極及び陽極電極と
しても作用する。
【0063】そこで、本発明においては、上記白金電極
に隣接する結晶シリコン基板を疑似電極として使用する
ことにより、従来の陽極化成装置において危惧されてい
た白金電極に隣接する結晶シリコン基板の金属汚染を回
避することができる。
【0064】この場合、疑似電極として使用した結晶シ
リコン基板については多孔質化処理後廃棄する必要があ
るが、その他の結晶シリコン基板は金属汚染の無い基板
として取り扱うことができる。
【0065】また本発明の手段によれば、装置構造は変
更する必要がなく、化成条件についての影響もない。
【0066】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例について図面
を用いて説明する。
【0067】(実施例1)図1に4枚の結晶シリコン基
板を同時に一括して多孔質化処理する為の本発明の実施
例装置Iの断面概略図を示す。図中、1a〜1dは結晶
シリコン基板、2は四フッ化エチレン樹脂(商品名:テ
フロン)製の化成槽、3a及び3bは図示しない外部直
流電源により負及び正に電圧を印加した白金電極板、4
a〜4dは基板支持手段としての四フッ化エチレン樹脂
(商品名:テフロン)製の基板支持治具、5a〜5dは
同様に柔軟性、弾力性及び気密性を有する四フッ化エチ
レン樹脂(商品名:ゴアテックス)製のシール材、6a
〜6eはフッ酸混合液からなる電解質溶液である。
【0068】本発明の実施例装置Iにおいて結晶シリコ
ン基板の多孔質化処理を行うには、先ずボロン(B)を
ドープして抵抗率が0.01〜0.02ΩcmとしたC
Z(チョクラルスキー)法で作製した直径4インチ、厚
さ0.4mmの同一形状の(100)面P型結晶シリコ
ンウェーハを結晶シリコン基板1として使用する。
【0069】基板支持治具4は、結晶シリコン基板1の
外形寸法と同様の開口を有しており、シール材5を介し
て結晶シリコン基板1をそれぞれ気密に支持する。ま
た、基板支持治具4の外周部にも化成槽2との接触界面
に当たる部分にシール材5’を配置した。化成槽2の内
部の両端には白金電極板3a及び3bを配置し、その間
に4枚の結晶シリコン基板1a〜1dを50mm(ミリ
メートル)間隔で配置した。白金電極板3a及び3bと
結晶シリコン基板1a及び1dとの間隔もそれぞれ50
mmとした。
【0070】次に、該化成槽2を48wt.%(重量パ
ーセント)の純水希釈フッ化水素酸、純水、アルコール
をそれぞれ1:1:1の割合で混合してフッ化水素酸混
合液とした電解質溶液で満たした。該フッ化水素酸混合
液の抵抗率は23.6Ωcmである。該電解質溶液は基
板1a〜1b及び基板支持治具4a〜4dにより6a〜
6eに電気的に独立した槽として分離される。
【0071】次に、白金電極3a及び3bにそれぞれ直
流定電流電源(図示せず)から13mA/cm2 の電流
密度でそれぞれ陰極と陽極に電流を流した。この時、要
した印加電圧は11.5Vであった。
【0072】電流を流すと同時に化成反応が始まり、結
晶シリコン基板1a〜1dの陰極電極3a側表面から陽
極側表面に向かって細孔の形成が進行する。約7分間で
厚み10μmの多孔質シリコン層が形成される。作製し
た多孔質シリコンの多孔質化率:P(Porosit
y)は55%であった。ここで、多孔質化率:Pの算出
には以下の式を用いた。
【0073】 ここで、2.33(g/cm3 )はP型結晶シリコン基
板の密度である。
【0074】図2は、上記条件での多孔質化処理途中の
結晶シリコン基板の光学顕微鏡による断面観察図であ
り、多孔質化処理層は陰極側表面から均一な厚さで形成
されており、しかも陽極側表面からの細孔の形成は皆無
であった。
【0075】また、同時に多孔質処理を行った4枚の結
晶シリコン基板の多孔質シリコン層の厚みの基板間の差
は10%未満であり、1枚ずつ処理を行った場合に比べ
て良好であった。
【0076】(実施例2)次に、本発明の実施例2とし
て、図1に示した本発明の実施例装置Iの白金電極3a
及び3bに印加する直流電圧の極性を交互に反転させ
て、該複数枚の結晶シリコン基板の両面から多孔質シリ
コン層の形成を行った。
【0077】ここでは、印加電圧の極性を交互に反転す
る手段として、直流定電流電源としてコンピュータ制御
による極性反転可能なバイポーラ電源(図示せず)を使
用した。結晶シリコン基板の枚数は、実施例装置Iと同
様に4枚とし、同じく結晶シリコン基板として厚さ0.
4mmの縮退したP型結晶シリコン基板を用いた。電解
質溶液も実施例1と同様とした。
【0078】実施例2においては、先ず白金電極3aを
陰極にし、白金電極3bを陽極にして2時間化成し、次
に極性を入れ換えて白金電極3aを陽極にし、白金電極
3bを陰極にして同じく2時間の化成を行った。更に、
極性を反転させ1時間ずつ交互に化成を行い、結晶シリ
コン基板全体の多孔質化処理を完了した。
【0079】処理後、4枚の結晶シリコン基板の全てが
その厚み全体にわたって多孔質化しており、単結晶層の
残存はなかった。
【0080】尚、上述した実施例の装置Iにおいては、
処理する結晶シリコン基板の枚数を4枚としたが、印加
する直流電圧を被処理基板の処理枚数に比例して大きく
すれば、さらに多くの枚数の結晶シリコン基板を処理す
ることができる。
【0081】また、被処理基板としてP型結晶シリコン
基板の多孔質化処理を例にとってその有効性を説明した
が、既に説明したように、電解質溶液と被処理基板の仕
事関数差によるショットキー障壁をその陽極化成反応に
おいて積極的に利用すれば、被処理基板として、縮退し
たN型結晶シリコン基板を用いて多孔質化処理をする事
もできる。この場合には、化成中の光照射が有効であ
る。
【0082】更にまた、トンネル電流が流れる程度の薄
い膜であれば、その表面に絶縁層を有する半導体基板で
あっても同様に処理することができる。
【0083】また勿論、ショットキー障壁を生じない様
な金属基板の陽極化成処理にも本発明の陽極化成装置を
用いることができることは言うまでもなく、電解質溶液
の種類や混合比率、また処理する基板の種類などを適宜
選択することで、結晶シリコン基板の多孔質化処理だけ
でなく陽極化成反応処理全般に利用することもできる。
【0084】また前記基板の支持手段は、電気的絶縁
性、及び耐酸性、耐アルカリ性、柔軟性、弾力性、気密
性、機械加工性を有するフッ素樹脂及び/又はゴム、プ
ラスチック等でもよい
【0085】また、前記電解質溶液としては、導電性を
有するシリコン溶解性溶液でも良い。
【0086】また前記電極としては、前記シリコン溶解
性溶液に対して耐蝕性を有する金属材料であれば良い。
【0087】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
厚い多孔質層を形成する場合でも、複数枚の被処理基板
を同時に処理可能なため、単に化成速度を高速化するこ
とによる弊害なく、処理能力を向上させることができ
る。
【0088】また電極の面積を大きくすることがないた
め、化成槽の大型化による気密不良から生じる電解液の
漏洩の危険性が無く、多孔質シリコンを安全に製造する
ことができる。
【0089】また、従来の陽極化成装置では、白金電極
が浸せきされている電解質溶液と被処理基板の表面が直
接接触する構造となっていたため、長時間の化成を行う
場合には、白金電極成分の一部が電解質溶液中に溶解
し、被処理基板表面に付着して金属汚染を生じる恐れが
あったが、本発明の装置では、電極に隣接する被処理基
板以外は金属汚染を防止できるという効果が得られる。
【0090】すなわち、本発明によれば、電解質溶液中
の電極間に複数枚の被処理基板を配置したという単純な
構造で、同時に一括して大量の結晶シリコン基板を短時
間に多孔質化処理することができる。
【0091】また、印加する電圧の極性を交互に反転す
ることにより、同様の構造で複数枚の結晶シリコン基板
を両面から交互に多孔質化処理することができ、基板全
域の多孔質化処理を短時間で同時に一括して大量に製造
することができる。
【0092】これにより、多孔質化処理した結晶シリコ
ン基板を短時間に大量に、且つ低コストで生産すること
ができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の陽極化成装置の実施例装置Iの断面概
略図。
【図2】本発明の陽極化成装置を使用して多孔質化処理
を行った結晶シリコン基板の光学顕微鏡による断面観察
写真。
【図3】本発明の陽極化成装置の作用を説明するための
エネルギーバンド図。
【図4】従来の陽極化成装置の断面概略図。
【符号の説明】
1a〜1b 結晶シリコン基板 2 化成槽 3a,3b 白金電極 4a〜4d 基板支持治具 5a〜5d,5’ シール材 6a〜6e 電解質溶液 7 Oリング
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−274325(JP,A) 特開 昭61−147540(JP,A) 特開 昭55−46568(JP,A) 特開 昭53−53972(JP,A) 特開 昭60−198829(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/306,21/3063,21/308 C25F 3/30

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電解質溶液を介して被処理基板と電極と
    の間に電圧を印加することにより陽極化成反応を生ぜし
    める陽極化成装置において、 前記電解質溶液を介して対を成す電極間に、化成電流の
    電気力線に沿って、互いに間隔をおいて、複数枚の前記
    被処理基板を配置し保持するための基板支持手段を備
    え、 前記被処理基板間の電解質溶液が、前記被処理基板と該
    基板支持手段とにより、互いに分離されるように、構成
    されており、 該複数枚の前記被処理基板のうち、前記電極としての金
    属電極に最も隣接する被処理基板と前記金属電極との間
    に擬似電極としてのシリコン基板を介在させる ことを特
    徴とする陽極化成装置。
  2. 【請求項2】 前記対をなす電極間に印加する電圧の電
    気的極性を交互に反転させ、化成反応電流の向きを反転
    させる手段を有することを特徴とする請求項1に記載の
    陽極化成装置。
  3. 【請求項3】 前記基板支持手段が、前記被処理基板に
    対して対称な支持構造を有することを特徴とする請求項
    1に記載の陽極化成装置。
  4. 【請求項4】 前記基板支持手段が、電気的絶縁性のフ
    ッ素樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の陽極
    化成装置。
  5. 【請求項5】 前記金属電極が、白金から成ることを特
    徴とする請求項1に記載の陽極化成装置。
  6. 【請求項6】 前記基板支持手段が、基板支持治具と、
    前記基板支持治具の前記被処理基板との接触部及び前記
    基板支持治具の前記電解質溶液を収容する容器との接触
    部に設けられたシール材と、を具備することを特徴とす
    る請求項1に記載の陽極化成装置。
  7. 【請求項7】 電解質溶液を介して被処理基板と電極と
    の間に電圧を印加することにより陽極化成反応を生ぜし
    める陽極化成方法において、 基板支持手段により、前記電解質溶液を介して対を成す
    電極間に、化成電流の電気力線に沿って、互いに間隔を
    おいて、複数枚の前記被処理基板を配置し保持すること
    により、 前記被処理基板間の電解質溶液を、前記被処理基板と前
    記基板支持手段とにより、互いに分離し、 該複数枚の前記被処理基板のうち、前記電極としての金
    属電極に最も隣接する被処理基板と前記金属電極との間
    に擬似電極としてのシリコン基板を介在させて、前記陽
    極化成反応を生ぜしめることを特徴とする陽極化成方
    法。
  8. 【請求項8】 前記対をなす電極間に印加する電圧の電
    気的極性を交互に反転させ、化成反応電流の向きを反転
    させる手段を有することを特徴とする請求項7に記載の
    陽極化成方法。
  9. 【請求項9】 前記被処理基板として低抵抗の結晶シリ
    コン基板を用いて、前記陽極化成反応により多孔質シリ
    コンを形成することを特徴とする請求項7に記載の陽極
    化成方法。
  10. 【請求項10】 前記結晶シリコン基板が、縮退した単
    結晶シリコンから成ることを特徴とする請求項9に記載
    の陽極化成方法。
  11. 【請求項11】 前記電解質溶液が、フッ化水素酸を含
    むことを特徴とする請求項7に記載の陽極化成方法。
  12. 【請求項12】 電解質溶液を介して被処理基板と電極
    との間に電圧を印加することにより陽極化成反応を生ぜ
    しめて、前記被処理基板の表面に多孔質シリコンを形成
    する工程を含むシリコン基板の製造方法において、 基板支持手段により、前記電解質溶液を介して対を成す
    電極間に、化成電流の電気力線に沿って、互いに間隔を
    おいて、複数枚の前記被処理基板を配置し保持すること
    により、 前記被処理基板間の電解質溶液を、前記被処理基板と前
    記基板支持手段とにより、互いに分離し、 該複数枚の前記被処理基板のうち、前記電極としての金
    属電極に最も隣接する被処理基板と前記金属電極との間
    に擬似電極としてのシリコン基板を介在させて、前記陽
    極化成反応を生ぜしめることを特徴とするシリコン基板
    の製造方法。
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