JP3247367B2 - 半導体素子の特性評価方法 - Google Patents

半導体素子の特性評価方法

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【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は、半導体素子の電気特性を解析評価する手法
に係わり、特に電子及び正孔のエネルギー輸送効果を含
めて解析評価する半導体素子の特性評価方法に関する。
(従来の技術) 半導体素子内部のエネルギー輸送効果を含めて素子の
電気特性を解析評価する方法としては、例えば、「エネ
ルギー輸送モデルによるホット・キャリア解析」(片山
弘造他,電子情報通信学会技術研究報告CAS86−93,1986
年)がある。この技術は、第7図に示すように半導体内
部に離散化用の格子点を設け、各格子点の上でポアソン
方程式,電子電流方程式,正孔電流方程式,電子エネル
ギー保存式及び正孔エネルギー保存式の合計5つの連立
偏微分方程式を、未知数である電位分布ψ,電子濃度分
布n,正孔濃度分布p,電子エネルギー分布wE,電子エネル
ギー分布WHについて解くものであり、通常は大型コンピ
ュータ上で数値的に解くプログラムの形で実現される。
なお、第7図中701はp型半導体基板、702はn+拡散層
(ソース)、703はn+拡散層(ドレイン)、704は酸化
膜、705はソース電極、706はゲート電極、707はドレイ
ン電極を示している。
上記5つの連立偏微分方程式は、以下のように定義さ
れる。
▽・(ε▽ψ)=−q(p−n+ND−NA …(1) 但し、ε:半導体の誘電率、q:単位素電荷、t:時刻、
▽:空間微分演算子、ND:ドナー型イオン化不純物濃
度、NA:アククセプタ型イオン化不純物濃度、μE:電子
移動度、μH:正孔移動度、 :電子速度ベクトル、 :正孔速度ベクトル、kB:ボルツマン定数、TE:電子温
度、TH:正孔温度、GR:電子及び正孔の単位時間・単位体
積当りの生成消滅率、τWE:電子エネルギー緩和時間、
τWH:正孔エネルギー緩和時間、である。
なお、wE,wH,TE,THの間には、以下の関係がある。
但し、mE:電子の有効質量、mH:正孔の有効質量、であ
る。
前記の5つの方程式(1)〜(5)は、未知数である
ψ,n,p,wE,wHに関する非線形方程式であるため、物理的
な考察から定めた初期解を基にして反復的に解を求める
手法が用いられる。
エネルギー保存式(4)(5)の左辺第3項は、電子
及び正孔にエネルギーを供給する電力密度項である。従
来法では、この項を見積る際、第8図のように局所的な
電位勾配▽ψと速度 或いは を用いて、その内積を電力項としていた。このことを電
子について模式的に表すと第9図のようになる。即ち、
十分長い距離の間に電位勾配▽ψと速度 がほぼ一定とみなせる場所において、エネルギー緩和時
間τWEの間に電子が走行する距離は である。その間に得るエネルギーq△ψをτWEで割った
ものが、電子が単位時間当り電位勾配から得るエネルギ
ー、即ち電力である。その電力に電子濃度nを掛けると
(4)式の左辺第3項の電力密度項になる。正孔につい
ても同様である。
ところが、従来技術の電力の計算方法は、十分長い距
離の間に電位勾配▽ψと速度 がほぼ一定とみなせる場合にのみ適用可能である。非常
に微細な半導体素子内部において、電位ψ及び電位勾配
▽ψの変動が、第10図のように 以下の距離で発生する場合、従来技術では の間に得るエネルギーが第10図中の△ψとなり、実際
に電子が得られるエネルギー△ψよりも大きくなって
しまう。従って、エネルギーの供給源である電力項を過
大評価するので、最終的に得られるエネルギー分布も過
大評価することになる。これは、半導体素子の電気的特
性を誤って予測することにつながる。以上のことは、物
理的精度が最も高い粒子シミュレータによる解析によっ
ても指摘されている(例えば、M.Tomizawa,「Nonstatio
nary Carrier Dynamics in Quarter−Micron Si−MOS−
FET'S」,IEEE TRANSACTION ON COMPUTER−AIDED DESIG
N,VOL.7,NO.2,1988年)。
(発明が解決しようとする課題) このように従来、エネルギー輸送を含めた特性評価方
法では、非常に微細な素子等の解析において、エネルギ
ー緩和時間の間に電子や正孔が走行する距離の間で、エ
ネルギーを供給する電位勾配が急峻に変化する場合、得
られるエネルギー分布を過大評価し、誤った特性を予測
する問題があった。
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その
目的とするところは、微小距離で電位勾配が変動する場
合にも物理的に妥当なエネルギーが得られるように、エ
ネルギー保存式の電力項又は電力密度項を物理的な考察
から合理的に見積ることができ、特性予測の物理的精度
の高い半導体素子の特性評価方法を提供することにあ
る。
[発明の構成] (課題を解決するための手段) 本発明の骨子は、半導体素子内部のエネルギー輸送効
果を含めて素子の電気的特性を解析する評価方式におい
て、エネルギー保存式の電力項を見積る際、エネルギー
緩和時間の間に走行する始点と終点の間の電位差からエ
ネルギー緩和時間内に得られるエネルギーを求めること
を特徴とする。
即ち本発明は、半導体素子内の電位分布,電子濃度分
布及び正孔濃度分布の内の少なくとも一つの物理量を求
め、且つ電子と正孔のエネルギー分布の少なくとも一方
を求めるために、ポアソン方程式,電子電流連続式,正
孔電流連続式,電子エネルギー保存式及び正孔エネルギ
ー保存式を解くことによって、半導体素子の電気的特性
を評価する方法において、前記エネルギー保存式中の単
位時間当りのエネルギー供給項である電力項又は電力密
度項を定める際、電子又は正孔がエネルギーを保持する
平均時間であるエネルギー緩和時間の間に、電子又は正
孔が走行する始点と終点を検出し、該検出された始点と
終点の間の電位差をエネルギー緩和時間で割って終点に
おける電力項又は電力密度項とするようにした方法であ
る。
(作用) 本発明によれば、エネルギー輸送効果を含めて半導体
素子の電気的特性の解析評価において、エネルギー保存
式の電力項を見積る際、エネルギー緩和時間の間に走行
する始点と終点の間の電位差からエネルギー緩和時間内
に得られるエネルギーを求めるようにしている。従っ
て、エネルギーを供給する電位勾配が、エネルギー緩和
時間に走行する距離以内で大きな変動をしても、物理的
に妥当なエネルギー分布を求めることができるので、従
来技術よりも特性予測の物理的精度が高い。
(実施例) 以下、本発明の詳細を図示の実施例によって説明す
る。
第1図乃至第6図は本発明の一実施例を説明するため
のもので、この実施例は、電子伝導型の絶縁ゲート型ト
ランジスタにおける電子及び正孔の輸送現象をエネルギ
ーの保存式を含めて解析する例を示している。
本実施例は、基本的には従来と同様に、半導体素子の
形状,半導体部分のドナー,アクセプタ分布,取り出し
電極の形状及び電位を読み取り、半導体素子形状の半導
体素子内の電位分布,電子濃度分布及び正孔濃度分布の
内の少なくとも一つの物理量を求め、且つ電子と正孔の
エネルギー分布の少なくとも一方を求めるために、前述
した5つの連立偏微分方程式(1)〜(5)を、数値的
に解き、半導体素子の電気的特性を評価する方法であ
る。従来方法と異なる点は、エネルギー保存式(4)
(5)中の単位時間当りのエネルギー供給項である電力
密度項を定める際、電子又は正孔がエネルギーを保持す
る平均時間であるエネルギー緩和時間の間に、電子又は
正孔が走行する始点と終点を検出し、該検出された始点
と終点の間の電位差をエネルギー緩和時間で割って終点
における電力密度項としたことにある。
まず、第1図に示す電力項の計算手順を示すフローチ
ャートを用いて、本実施例による評価手順の概要を示
す。予め電位勾配の分布を求める(M1)と共に、電子及
び正孔の速度分布を求め(M2)、速度ベクトルに沿っ
て、エネルギー緩和時間の間に電子及び正孔が走行する
始点と終点を求める(M3)。そして、始点と終点の電位
差をエネルギー緩和時間で割って終点における電力とす
る(M4)。
次に、第2図の等電位線分布と第3図の電子の速度ベ
クトル分布を用いて、電力項の計算方法を模式的に示
す。なお、図において、201,301はp型半導体基板、20
2,302はn+拡散層(ソース)、203,303はn+拡散層(ドレ
イン)、204,304は酸化膜、205,305はソース電極、206,
306はゲート電極、207,307はドレイン電極を示してい
る。電力を求めたい所望の点A、即ち走行の終点から、
第3図の速度ベクトルに沿って、エネルギー緩和時間τ
に相当する距離を遡った点Bを求める。遡る距離及び
方向は電子速度 を用いて、以下の積分を数値的に行うことによって求め
る。
そして、A,B間の電位差q△ψをポアソン方程式から
求め、q△ψ/τをエネルギー保存式の電力項とす
る。正孔についても同様である。
なお、A点から速度ベクトルに沿って遡るのではな
く、次式 を用いて、反対に速度ベクトルが向いている方向にτ
に相当する距離を積分してもよい。その場合、求めた電
力は第2図中のB′点での値となる。
第4図に第2図中のC−C′で切った断面でのエネル
ギー分布を示す。実線が本実施例方法、破線が従来法に
よって求めたものである。従来法の方が大きなエネルギ
ー分布となっている。一般に、電子の散乱確率はエネル
ギーに対して単調増加関数であり、従来法では電流値を
過小評価することになる。第5図にドレイン電圧 に対するドレイン電流のID特性図を示す。白丸が実測値
で、実線が本実施例方法、破線が従来法による計算結果
である。このように、本実施例によれば実測をほぼ再現
できることから、物理的精度の高さが保証されることに
なる。
第6図に本実施例における具体的なフローチャートの
一例、即ち半導体素子の電気的特性を評価する計算手順
を示す。まず、物理的考察に基づいて初期解を求め、ポ
アソン方程式(1)のみをガンメルの方法(H.K.Gumme
l,'A Self−consistent iterative scheme for one−di
mensional steady state transistor calculations'.IE
EE Trans,on ED.,ED−ll,p.455 1964年)で解き、電位
分布ψを更新する。ここで、電位分布が前回の電位分布
に比べて、例えば10mV程度以下の変化しかない場合は、
収束したと見做して次の処理に進む。
次いで、電子及び正孔の電流連続方程式(2)(3)
を各々解いて、新たな電子分布n,正孔分布pを求める。
続いて、第1図の処理を用いて、電子速度に沿って、電
子エネルギー緩和時間に相当する距離を遡ることによ
り、電子の電力密度項を計算する。その後、前記電力密
度項を含めてエネルギー保存式(4)を解き、新たな電
子エネルギーwEを求める。
次いで、第1図の処理を用いて正孔速度に沿って、正
孔エネルギー緩和時間に相当する距離を遡ることによ
り、正孔の電力密度項を計算する。続いて、前記電力密
度項を含めてエネルギー保存式(5)を解き、新たな正
孔エネルギーwHを求める。そして、ポアソン方程式
(1)を解き、電位分布ψを修正する。
次いで、収束判定を行う。この判定は、例えばψ,n,
p,wE,wHの修正量の最大値が全て各々所定の値以下であ
るか否かを判定する。所定の値以上なら再び、電子の電
流連続式(2)を解く処理まで戻り、今回の解を初期値
として同じ処理を繰り返す。そして、収束したら必要に
応じてグラフィック・データ及び数値データを出力す
る。
このようにして各方程式(1)〜(5)を解くことに
より、半導体素子の電気特性を解析評価する。そしてこ
の場合、エネルギー緩和時間の間に電子や正孔が走行す
る距離の間で、エネルギーを供給する電位勾配が急峻に
変化する場合であっても、得られるエネルギー分布を過
大評価することはなく、妥当なエネルギーが得られる。
このため、エネルギー保存式の電力密度項を物理的な考
察から合理的に見積ることができ、特性予測の物理的精
度を高めることが可能となる。
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものでは
ない。実施例では、各方程式を別個に解くデカップル法
について示したが、一部或いは全ての方程式を一度に解
くカップル法を用いてもよい。また、電子エネルギー保
存式及び正孔エネルギー保存式として、(4)(5)式
の代わりに次の(4)′(5)′式を用いてもよい。
この場合、エネルギー保存式の電力密度項ではなく電
力項を定めることになる。その他、本発明の要旨を逸脱
しない範囲で、種々変形して実施することができる。
[発明の効果] 以上詳述したように本発明によれば、エネルギー保存
式の電力項を見積る際、エネルギー緩和時間の間に走行
する始点と終点の間の電位差からエネルギー緩和時間内
に得られるエネルギーを求めることにより、非常に微細
な半導体素子内部で電子や正孔がエネルギー緩和時間に
走行する距離以内で、電位勾配が変動している場合で
も、正確なエネルギー分布を求めることができ、物理的
に精度の高い電気的特性の予測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図乃至第6図はそれぞれは本発明の一実施例を説明
するためのもので、第1図は電力項の計算手順を示すフ
ローチャート、第2図は半導体素子内部の2次元断面図
中における等電位線分布を示す模式図、第3図は半導体
素子内部の2次元断面図中における電子速度分布を示す
模式、第4図は第1図中のC−C′の線で切った断面に
おける電子エネルギー分布を示す特性図、第5図は実施
例と従来法による計算結果を実測値と比較して示す特性
図、第6図は半導体素子の電気的特性を評価する計算手
順を示すフローチャート、第7図乃至第10図はそれぞれ
従来方法を説明するためのもので、第7図はデバイス・
シミュレーションの離散化用格子点を示す模式図、第8
図は電力項の計算手順を示すフローチャート、第9図は
電力項の計算の物理的意味を示す概念図、第10図は電力
項の計算の物理的限界を示す概念図である。 201,301……P型半導体基板、 202,302……n+拡散層(ソース)、 203,303……n+拡散層(ドレイン)、 204,304……酸化膜、 205,305……ソース電極、 206,306……ゲート電極、 207,307……ドレイン電極。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】半導体素子内の電位分布,電子濃度分布及
    び正孔濃度分布の内の少なくとも一つの物理量を求め、
    且つ電子と正孔のエネルギー分布の少なくとも一方を求
    めるために、ポアソン方程式,電子電流連続式,正孔電
    流連続式,電子エネルギー保存式及び正孔エネルギー保
    存式を解くことによって、半導体素子の電気的特性を評
    価する方法において、 前記エネルギー保存式中の単位時間当りのエネルギー供
    給項である電力項又は電力密度項を定める際、電子又は
    正孔がエネルギーを保持する平均時間であるエネルギー
    緩和時間の間に、電子又は正孔が走行する始点と終点を
    検出し、該検出された始点と終点の間の電位差をエネル
    ギー緩和時間で割って終点における電力項又は電力密度
    項としたことを特徴とする半導体素子の特性評価方法。
  2. 【請求項2】電子又は正孔の速度ベクトルをVとし、電
    子又は正孔のエネルギー緩和時間をτ間の走行の終点
    を指定した後に、その終点を積分の起点として、 によって、走行の始点を求めることを特徴とする請求項
    1記載の半導体素子の特性評価方法。
  3. 【請求項3】電子又は正孔の速度ベクトルをVとし、電
    子又は正孔のエネルギー緩和時間をτとして、τ
    し、τ間の走行の始点を指定した後に、その始点を積
    分の起点として、 によって、走行の終点を求めることを特徴とする請求項
    1記載の半導体素子の特性評価方法。
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