JP3314830B2 - 耐遅れ破壊特性の優れた高強度ボルトの製造方法 - Google Patents

耐遅れ破壊特性の優れた高強度ボルトの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は125kgf/mm2 以上の引
張強度を有する耐遅れ破壊特性の優れた高強度ボルトの
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高強度ボルトは機械、自動車、橋、建物
に数多く使用されている他、PC鋼棒、自動車部品等数
多く使用されている。しかし、どの品種についても引張
強度が125kgf/mm2 を超えると遅れ破壊の危険性が高
まることがよく知られており、実際に使用されているボ
ルトの強度は110kgf/mm2 級が上限となっているのが
現状である。しかしながら近年構造物の大型化に伴い、
継ぎ手効率の向上、軽量化の目的からボルトの高強度化
に対する要求は高く、また燃費向上を要望されている自
動車においても軽量化を達成するためにボルトの高強度
化が強く要望されている。
【0003】高強度部材の遅れ破壊においては鋼中の水
素が原因とされている。特に常温近傍で容易に移動し得
る拡散性水素が引張応力集中部の結晶粒界に集積し、粒
界割れを助長するために遅れ破壊が起こると考えられて
いる。従って高強度機械構造用鋼を使用する場合、水素
特に拡散性水素に対する抵抗力のある鋼でなければなら
ない。
【0004】そこで本発明者らは、耐遅れ破壊特性に及
ぼす合金元素および焼戻し温度の影響を調べたところ、
機械構造用鋼に比べて、Si,Mn,Pの低下、Moの
増加および400℃以上での焼戻しが有効であることを
見いだした。また、V,Ti,Nbの添加により一層の
耐遅れ破壊特性向上が可能なことを見いだし、特願平3
−323146号において、鋼の化学成分の調整、焼戻
し温度の調整により125kgf/mm2 以上の引張強度を有
しかつ遅れ破壊に至らない限界の拡散性水素量(以下、
限界拡散性水素と呼ぶ)が増加できる機械構造用鋼と機
械部品への成形方法を特願平3−323146号にて提
案した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】特願平3−32314
6号記載のボルト製造法は、球状化焼鈍後の冷間鍛造に
よるボルト成形とその後の焼入れ・焼戻しを行ってお
り、2度にわたる熱処理を行っている。特に球状化焼鈍
は700〜800℃において10時間以上の加熱および
保持を必要とするため、エネルギーコストは膨大であ
る。また昨今、加工コスト低減に対する要望は高く、熱
処理省略が強く求められている。本発明は以上の知見お
よび課題に鑑みなされたものであり、圧延まま材の温間
鍛造によって特願平3−323146号で記載による方
法と同等もしくはそれ以上の鍛造時の金型寿命をもっ
て、125kgf/mm2 以上の引張強度を有する耐遅れ破壊
特性の優れた高強度ボルトの製造を可能にする方法であ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは、次の通りである。 (1)重量%で、C:0.15〜0.50%、Si:
0.05〜0.5%、Mn:0.1〜0.6%、P:
0.015%以下、S:0.02%以下、Cr:0.1
〜2.0%、Mo:0.2〜2.0%、Al:0.00
5〜0.05%、N:0.01%以下を含有し、残部が
Feおよび不可避的不純物よりなる圧延棒鋼または線材
を、鍛造直前温度が400℃以上になるように均一加熱
した直後、平均200mm/秒以上の加工速度で鍛造直前
の表面温度が100℃以下のパンチを用いて所定のボル
ト形状に鍛造成形し、その後焼入れ・焼戻しを行うに際
して焼戻し温度を400℃以上とすることを特徴とする
125kgf/mm2 以上の引張強度を有する耐遅れ破壊特性
の優れた高強度ボルトの製造方法。
【0007】(2)重量%で、C:0.15〜0.50
%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜0.6
%、P:0.015%以下、S:0.02%以下、C
r:0.1〜2.0%、Mo:0.2〜2.0%、A
l:0.005〜0.05%、N:0.01%以下を含
有し、さらに鋼成分としてV:0.001〜0.20
%、Ti:0.001〜0.050%、Nb:0.00
1〜0.050%の一種または二種以上を含有し、残部
がFeおよび不可避的不純物よりなる圧延棒鋼または線
材を用い、(1)記載のボルト成形法および焼入れ・焼
戻しを行うことを特徴とする125kgf/mm2 以上の引張
強度を有する耐遅れ破壊特性の優れた高強度ボルトの製
造方法。
【0008】(3)(1)または(2)記載の組成から
なる圧延棒鋼または線材を用い、鍛造直前温度が400
℃以上になるように均一加熱した後、鍛造直前の鋼材表
面が100℃以下で、表層から素材径の1/10での温
度が250℃以上になるよう潤滑液等を吹き付け抜熱
し、平均200mm/秒以上の加工速度で所定のボルト形
状に鍛造成形した後、焼入れ・焼戻しを行うに際して焼
戻し温度を400℃以上とすることを特徴とする125
kgf/mm2 以上の引張強度を有する耐遅れ破壊特性の優れ
た高強度ボルトの製造方法にある。
【0009】本発明で用いられる鋼の合金成分は次の理
由で決定した。Cは、焼入れ・焼戻しにより高強度を得
るためには0.15%以上必要であるが、多すぎると靭
性を劣化させるとともに耐遅れ破壊特性も劣化させる元
素であるために0.50%以下とした。Siは鋼の脱酸
および強度を高めるのに0.05%以上必要であるが、
素材強度が増加して鍛造性を損なう元素であるために、
0.5%以下とした。
【0010】Mnは鋼の脱酸および焼入れ性の確保に
0.1%以上必要であるが、オーステナイト域加熱時に
粒界に偏析し粒界を脆化させるとともに耐遅れ破壊特性
を劣化させる元素であるために0.6%以下とした。P
は焼入れ性元素としては有効であるが、凝固時にミクロ
偏析し、さらにオーステナイト域加熱時に粒界に偏析し
粒界を脆化させるとともに耐遅れ破壊特性を劣化させる
元素であるために0.015%以下とした。Sは不可避
的不純物であるが、オーステナイト域加熱時に粒界に偏
析し粒界を脆化させるとともに耐遅れ破壊特性を劣化さ
せる元素であるために0.02%以下とした。
【0011】Crは鋼の焼入れ性を得るためには0.1
%以上必要であるが、多すぎると靭性を劣化、冷間加工
性の劣化を招く元素であるために2.0%以下とした。
Moは鋼の焼入れ性を得るために必要であるとともに焼
戻し軟化抵抗を有し400℃以上の焼戻し温度で安定し
て125kgf/mm2 以上の引張荷重を得るのに有効な元素
であり0.2%以上必要であるが、多すぎるとその効果
は飽和しコストの上昇を招くために2.0%以下とし
た。
【0012】Alは鋼の脱酸に有効な元素であるために
0.005%以上必要であるが、多すぎると靭性の劣化
を招くために0.05%以下とした。Nはオーステナイ
ト加熱時に粒界に偏析し粒界を脆化させるとともに耐遅
れ破壊特性も劣化させる元素であるため0.01%以下
とした。V,Ti,Nbは、結晶粒の微細化に寄与し、
かつ水素との親和性に富み鋼中での水素の拡散、集積を
抑制することにより耐遅れ破壊特性向上に有効な元素で
あるため、それぞれ0.001%以上必要である。ただ
し多すぎるとその効果は飽和しむしろ靭性を劣化させる
元素であるため、それぞれV:0.2%以下、Ti:
0.05%以下、Nb:0.05%以下とした。
【0013】一方、本成分を有する圧延材を鍛造直前温
度が400℃以上になるように加熱することにより鋼材
強度を低減できるが、これより低い加熱温度では球状化
焼鈍後冷間鍛造成形した場合より金型寿命が低くなる。
また加工速度を平均200mm/秒以上とするのは、これ
より加工速度が遅くなると鍛造中に鋼材温度が低下し、
金型寿命が低下するからである。
【0014】パンチ温度を制御するのは、パンチ下部に
おいて鋼材の加工発熱による軟化が激しく成形後形状不
良を招くためであり、鍛造直前のパンチ温度を100℃
以下として鋼材からパンチへの熱移動を制御する必要が
ある。なお素材加熱に際しては、金型寿命を決定するボ
ルト頭部成形部分にあたる素材領域のみを加熱する部分
加熱とすることも可能である。
【0015】さらに加熱した素材を金型内に挿入した
後、素材の表層部を冷却することによってパンチ温度を
制御するのと同様の効果を得ることができる。この場
合、鍛造直前の鋼材表面が100℃以下で、表層から素
材径の1/10での温度が250℃以上になるよう潤滑
液等を吹き付け抜熱するが、鋼材表層の温度を100℃
以下とするのは、これより高い温度ではパンチ下部の鋼
材が加工発熱による軟化が生じるために、成形後形状不
良を招くことによる。また表層から素材径の1/10で
の温度が250℃以上とするのは、これより温度が低い
と成形加重が大きくなり金型寿命が低下するからであ
る。なお抜熱には液体の他、実質的に非酸化性のガスを
用いることも可能である。
【0016】
【実施例】供試鋼の化学成分を表1に示す。A〜Hは本
発明のボルト用鋼に従ったものであり、I〜Mは比較鋼
である。これらのφ22mm圧延棒鋼を用いて、M22ト
リミングボルト相当の頭部成形を行った。
【0017】
【表1】
【0018】鍛造時の荷重測定を行う供試材は、長さ1
00mmに切断した後、高周波により10〜20℃/秒の
速度で均一加熱し、サーボタイプの油圧圧縮試験機で所
定の加工速度で成形した。また金型寿命評価を行う場合
には、コイルを用いボルト成形用パーツフォーマーとコ
イルとの間で鋼材を高周波により均一加熱し、切断後ボ
ルト頭部成形を行った。なお、素材温度はどちらの場合
も、放射温度計により測温した。
【0019】パンチには図1に示すようにヒーターを埋
め込むとともに、水冷パイプを通じて温度制御を行っ
た。また黒鉛系潤滑材をパンチ表面に吹き付け、焼付き
防止とともにパンチ表面の温度制御を行った。パンチ温
度の測定は、図1に示すようにパンチ表面から2mmの位
置に埋め込んだ熱伝対によって行い、鍛造直前温度をも
ってパンチ温度とした。なお金型形状は図1に示す通り
である。
【0020】
【表2】
【0021】表2には成形実験の結果を示す。記号X1
〜X10が本発明法による場合であり、記号Y1〜Y8
が比較法の場合である。また記号Y9,Y10は、特願
平3−323146号記載による球状化焼鈍後に冷間鍛
造により成形した結果である。比較法Y3,Y4,Y7
では成形後図2に示すように、頭部側面が段状となる形
状不良に至った。そこで、金型寿命の評価は行わなかっ
た。また比較法Y1,Y2,Y5,Y6では金型寿命が
5万個であり、従来法のY9,y10の半分程度の金型
寿命であった。これに対し本発明法ではいずれの場合も
9万個以上であり、従来法のY9,Y10と同等ないし
それ以上の金型寿命で成形できた。
【0022】次に遅れ破壊特性を評価するために、本発
明法で成形されたボルト形状素材を表2に示す温度にて
焼入れ・焼戻しを行い、図3に示すM10ボルトで軸部
に2mmVの円周ノッチを設けた試験片を製作した。また
比較鋼I〜Mについても本発明法による成形を行い、焼
入れ・焼戻しを行った後に図3の試験片を製作した。な
おいずれの場合も焼入れ温度は900℃とし、焼戻し後
の引張強度が150〜160kgf/mm2 となるように焼戻
し温度を設定した。
【0023】以下に限界水素量を求める方法について述
べる。図3に示す試験片を2本組にして水素を富化する
ために、20〜36%HClに20〜120分間浸漬し
て試験片中の水素量を変化させる。このうち1本はHC
lに浸漬し大気中に30分放置した後、熱的分析法によ
り水素量を測定し、他の1本は浸漬後30分間大気中に
放置した後、図4に示した試験機で遅れ破壊試験を行
う。図4において1は試験片、2はバランスウェイト、
3は支点を示す。また遅れ破壊試験における試験荷重は
HCl溶液に浸漬する前の各試験片の破断荷重の70%
と一定にした。
【0024】以上の手順に従い、HClの濃度および浸
漬時間を種々変えた場合に、得られた拡散性水素量と遅
れ破壊試験における破断時間との関係を表3に示す。同
表から、4000分を経って遅れ破壊を起こさない上限
の拡散性水素量を限界拡散性水素量として各鋼種につい
て推定すると表4のようになる。この表より、開発鋼A
〜Eを用い本発明法により成形されたX1〜X10の試
験片は、比較鋼I〜Mを用いたZ1〜Z5に比べて限界
水素量が高く、遅れ破壊しにくいことがわかる。
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】表5には、鍛造前温度が400℃以上にな
るように高周波により均一加熱し、素材を金型に挿入し
た後にミスト状の黒鉛系潤滑液を試験片に噴射して抜熱
を行った場合の成形を示す。高周波加熱時の素材温度
は、放射温度計により測温した。また加熱した素材の抜
熱時温度は、荷重測定の際に用いるφ22*100mmの
試験片に表層から2.2mmの位置に埋め込んだ熱伝対と
表層に付けた熱伝対により、潤滑液噴射時の素材温度を
測温した。
【0028】そして表5に示す所定の温度条件になるよ
う噴出潤滑液の流量および液圧を設定した。荷重測定は
熱伝対を付けた試験片を用い、所定の温度条件にあるこ
とを確認した後に、そのまま鍛造成形した。金型寿命評
価では、設定した潤滑液の流量および液圧を用い、放射
温度計により表層温度を確認した後に鍛造成形した。
【表5】
【0029】表5より、本発明法では形状不良を生じる
こともなく、比較法Y12,Y13に比べ3倍以上の金
型寿命で成形でき、また従来法であるY9,Y10と同
等の金型寿命で球状化焼鈍を行うことなく成形できるこ
とがわかる。なお本発明法X11,X12について焼入
れ温度900℃、焼戻し温度450℃の焼入れ・焼戻し
を行い限界拡散性水素を測定した。その結果、限界拡散
性水素推定量はX11では0.64ppm 、X12では
0.67ppm と表4の本発明法と同様のレベルであり、
比較法に比べ高い耐遅れ破壊特性であった。
【0030】
【発明の効果】本発明により125kgf/mm2 以上の引張
強度を有し、耐遅れ破壊特性の優れた高強度ボルトが球
状化焼鈍を行うことなくできる。これによってボルトの
継ぎ手効率の向上が図られ、かつ自動車等の軽量化に寄
与できることになり工業的効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】鍛造時の金型形状とパンチ温度制御および温度
測定の説明図。
【図2】鍛造時の形状不良状況を示す試験片断面図。
【図3】試験片形状の説明図。
【図4】遅れ破壊試験装置の説明図。
【符号の説明】
1 試験片 2 パンチ 3 ダイス 4 水冷パイプ 5 ヒーター 6 熱伝対取り付け用のドリル穴
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI // B21K 1/46 B21K 1/46 Z (56)参考文献 特開 平5−148580(JP,A) 特開 平5−148576(JP,A) 特開 平4−263047(JP,A) 特開 平3−173745(JP,A) 特開 平3−6352(JP,A) 特開 昭64−47835(JP,A) 特開 昭59−6358(JP,A) 特開 昭62−86149(JP,A) 特開 昭61−117248(JP,A) 特開 昭60−114551(JP,A) 特開 昭59−162252(JP,A) 特開 昭58−61219(JP,A) 特公 昭55−31170(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21J 1/00 - 13/14 B21J 17/00 - 19/04 B21K 1/00 - 31/00 C21D 1/25 C21D 1/26 C22C 38/00 301 C22C 38/28

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で C :0.15〜0.50%、 Si:0.05〜0.5%、 Mn:0.1〜0.6%、 P :0.015%以下、 S :0.02%以下、 Cr:0.1〜2.0%、 Mo:0.2〜2.0%、 Al:0.005〜0.05%、 N :0.01%以下 残部がFeおよび不可避的不純物よりなる圧延棒鋼また
    は線材を、鍛造直前温度が400℃以上になるように均
    一加熱した直後、平均200mm/秒以上の加工速度で鍛
    造直前の表面温度が100℃以下のパンチを用いて所定
    のボルト形状に鍛造成形し、その後焼入れ・焼戻しを行
    うに際して焼戻し温度を400℃以上とすることを特徴
    とする耐遅れ破壊特性の優れた高強度ボルトの製造方
    法。
  2. 【請求項2】 重量%で、さらに鋼成分として V :0.001〜0.20%、 Ti:0.001〜0.050%、 Nb:0.001〜0.050% の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求
    項1記載の耐遅れ破壊特性の優れた高強度ボルトの製造
    方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の組成からなる圧
    延棒鋼または線材を用い、鍛造直前温度が400℃以上
    になるように均一加熱した後、鍛造直前の鋼材表面が1
    00℃以下で、表層から素材径の1/10での温度が2
    50℃以上になるよう潤滑液等を吹き付け抜熱し、平均
    200mm/秒以上の加工速度で所定のボルト形状に鍛造
    成形した後、焼入れ・焼戻しを行うに際して焼戻し温度
    を400℃以上とすることを特徴とする耐遅れ破壊特性
    の優れた高強度ボルトの製造方法。
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