JP3316541B2 - 大環状化合物及びその製造方法 - Google Patents

大環状化合物及びその製造方法

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和宏 田口
悌一 村上
利和 高橋
祐子 内丸
和久 平谷
和行 春日
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塩素を含有するピ
リミド[5,4−d]ピリミジンを鎖状化合物を介して
連結させた構造を有する大環状化合物及びその製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】環状オリゴ糖であるシクロデキストリン
は様々な有機、無機の物質と錯体を形成するので、物質
の分離、回収に利用されている。その際、シクロデキス
トリンが分子中の疎水性の内孔に物質を取り込むと、取
り込む物質が内孔の大きさに適合するかどうかによって
錯形成の強度は大きく変化するために、取り込まれる物
質の僅かな構造の違いによっても錯形成に選択性が見ら
れる。このためシクロデキストリン及びその修飾物は物
質の精製や分析にも利用されている。しかもシクロデキ
ストリンは酵素を用いて比較的容易に量産できるので極
めて有用な分離回収材料となっている。しかしながら、
製造できるシクロデキストリンの環の大きさは限定され
ており、一般にグルコース単位が6、7、8個からなる
環状体のみの製造が可能である。また糖の骨格構造など
の化学構造を大きく変化させることは全く不可能であ
る。物質の分離回収などを目的にシクロデキストリンと
同じように大きな環状構造をもつ合成化合物が開発され
てきた。その代表的な例はクラウンエーテルとカリクサ
レンである。基本的な構造を持つクラウンエーテルは、
エチレングリコールやそのオリゴマー、およびカテコー
ル等の鎖状の化合物を原料に、適宜に鎖長を延長して中
間体を合成し、最終的に鎖の末端同士を連結して閉環を
行うことにより製造される。鎖の末端の活性部が分子内
のもう一方の末端の活性部と連結すれば環は閉じて目的
物となるが、ここで分子間で連結反応が起こってしまえ
ば目的とする大環状化合物にはならず、鎖長の延伸が起
こるのみである。そこでいくつかの合成上の工夫がなさ
れてきた。鋳型となる金属を環化反応に利用すると、目
的とする環状化合物の収率が向上することが知られてい
る。フェノール誘導体とアルデヒドの縮合で合成される
カリクサレンの場合にも、しばしばアルカリ金属が鋳型
として使用され成功を納めている。しかし常に鋳型が有
効であるとは限らない。鋳型となる物質と相互作用する
官能基(クラウンエーテルではエーテル酸素、カリクサ
レンでは芳香環上のヒドロキシル基)が鎖状中間体に存
在しない場合には鋳型分子の適用はそもそも不可能であ
る。鎖状化合物の両末端の活性部間で分子内連結反応を
優先的に行い高収率で環状体を製造するためには、一般
的に高度希釈条件下における反応が必要となる。すなわ
ち、両末端に活性部をもつ鎖状中間体、及び鎖状中間体
の活性部と反応を起こす連結剤をそれぞれ不活性な反応
溶媒に溶かし、それぞれの溶液を、大量の反応溶媒を入
れた反応容器中に少量ずつ添加することにより、鎖状中
間体及び連結剤濃度が反応容器中で常に低濃度で保つよ
うにする。そうすると鎖状中間体は一分子内の両末端で
連結され環化反応が優先的に起こるようになる。鎖状中
間体と連結剤は活性基を分子内に持つために、溶媒中の
水などによって分解が起こり得る。水などの反応中の不
純物は収率を大幅に低下させる原因となるので、使用す
る反応溶媒は予め十分な乾燥と精製が必要である。この
ように、高度希釈法による環化反応は、高純度の大量な
溶媒を使用するばかりか、溶媒の除去、反応の長期化な
どの様々な欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、シクロデキ
ストリンと同じように物質の分離精製に適用し得る大環
状化合物及びその製造方法を提供することをその課題と
する。
【0004】
【課題を解決する手段】本発明者らは、前記課題を解決
すべく鋭意研究を重ねた結果、本研究を完成するに至っ
た。本発明によれば、以下の発明が提供される。 (1)下記一般式(1)で表される大環状化合物。
【化1】(1) (式中、Xは、−O−、−S−、又は−NHで表される
ヘテロ原子からなる2価連結基である。Yは、両末端に
メチレン基を有する以下の2価の有機基である。 (1)炭素数2〜20の炭化水素鎖 (2) −CH(CHZCH)mCH− 式中、Zは、−O−、−S−、又は−NHで表される
価のヘテロ原子又は基を示し、mは1〜8の数を示す。 (3) −CHArCH− 式中、Arは置換基を有していてもよいフェニル基を示
す。この場合、置換基としては、炭素数1〜6のアルキ
ル基又はハロゲン原子である。) (2)下記一般式(1)で表される大環状化合物の製造
方法において、下記式(2)で表される2,4,6,8
−テトラクロロピリミド[5,4−d]ピリミジンを、
下記一般式(3)で表される鎖状化合物と反応させるこ
とを特徴とする前記大環状化合物の製造方法。
【化2】(1)
【化3】(2)
【化4】(3) HX−Y−XH (式中、Xは、−O−、−S−、又は−NHで表される
ヘテロ原子からなる2価連結基である。Yは、両末端に
メチレン基を有する以下の2価の有機基である。 (1)炭素数2〜20の炭化水素鎖 (2) −CH(CHZCH)mCH− 式中、Zは、−O−、−S−、又は−NHで表される
価のヘテロ原子又は基を示し、mは1〜8の数を示す。 (3) −CHArCH− 式中、Arは置換基を有していてもよいフェニル基を示
す。この場合、置換基としては、炭素数1〜6のアルキ
ル基又はハロゲン原子である。)
【0005】
【発明の実施の形態】前記一般式(1)において、Xは
ヘテロ原子からなる2価の連結基を示す。この場合のヘ
テロ原子には、例えば、窒素、酸素、硫黄等が包含され
る。その連結基の具体例を示すと、−NH−、−O−、
−S−等が挙げられる。Yは、両末端にメチレン基を有
する鎖状化合物である。この基には活性塩素と反応する
ような官能基を含まないことが必要である。このような
官能基を含まない限りにおいて特に限定されるものでは
ない。この基には、以下に示すものが包含される。 (1)炭素数2〜20、好ましくは4〜12のアルキル
や炭化水素鎖 (2) −CH(CHZCH)mCH− 式中、Zは、−O−、−S−、−NH等の2価のヘテロ
原子を示し、mは1〜8、好ましくは2〜3の数を示
す。 (3) −CHArCH− 式中、Arは置換基を有していてもよいフェニル基を示
す。この場合、置換基としては、メチル基やエチル基、
ブチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6、好ましくは1
〜4の低級アルキル基や、ハロゲン原子等が挙げられ
る。
【0006】本発明の前記一般式(1)の大環状化合物
は、前記一般式(2)の2,4,6,8−テトラクロロ
−ピリミド[5,4−d]ピリミジン(以下、単にピリ
ミジン誘導体とも言う)を不活性溶媒に分散させ、これ
に前記一般式(3)の鎖状化合物を少量ずつゆっくりと
加えることによって製造することができる。ピリミジン
誘導体は、昇華法により精製した純度の高いものの使用
が好ましく、また微粉状であることが望ましい。不活性
溶媒としては、トルエンやヘキサンのような炭化水素、
クロロホルムやジクロロメタンのようなハロゲン化炭化
水素、テトラヒドロフランのようなエーテル化合物など
が利用できる。望ましくはピリミジン誘導体の溶解度が
低く、前記一般式(3)の鎖状化合物や、大環状化合物
の生成に至る過程で生じる中間物質の溶解度が高いクロ
ロホルムなどのハロゲン化炭化水素がよい。反応は冷却
しながら室温以下の温度で行い、−10度から10度の
温度範囲が望ましい。鎖状化合物の両末端に接続してい
活性基は、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基
などであり(前記Xで示される連結基であり)鎖状化
合物はこの活性基に接続されている。これらの活性基の
中では、活性の高い点ものとしてはアミノ基が優れてい
る。鎖状化合物の構造は、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水
素鎖(O,S,NHを中間に有するものでもよい)、エ
チレングリコールを構造単位とするもの、芳香環骨格を
もつもの、またはそれらの組合せなどで、活性塩素との
反応を起こす官能基を置換基として含まなければ特に限
定されない。反応系には副生する塩化水素を捕捉する塩
基が必要であり、この場合の塩基としてトリエチルアミ
ン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン等が適当で
ある。
【0007】ピリミジン誘導体に含まれる4個の塩素の
活性は、窒素、酸素、硫黄などの求核置換反応が起こる
と残りの塩素の活性が低下する。そのため、その4位と
8位の塩素が置換されると残りの2位と6位の塩素は環
化反応温度では事実上不活性となり、生成する大環状化
合物は安定な化合物として取り出される。両末端に活性
基を持つ鎖状化合物を適宜選択し、ピリミジン誘導体と
反応させれば、種々の化学構造と環内孔を有する大環状
化合物が製造でき、それらは金属イオン、有機イオン、
あるいは非解離性の有機物のための分離、回収、精製、
分析の材料として利用が可能となる。
【0008】
【発明の効果】本発明の大環状化合物は、従来のシクロ
デキストリンと同じように、物質の分離や精製、分析等
の用途に用いることができる。また、本発明の方法によ
れば、鎖状化合物のポリマー化を抑制しつつ、大環状化
合物を高収率で得ることができる。本発明の大環状化合
物の製造法では、2,4,6,8−テトラクロロピリミ
ド[5,4−d]ピリミジンが通常の溶媒に極めて難溶
であるがために、反応系中に多量にあるにもかかわらず
溶液中の濃度は低く、実質的に反応が高度希釈条件のも
とで起こるために目的としないポリマー化が押さえら
れ、環状化合物が好収率で生成する。またそのピリミジ
ン誘導体の特に活性な4位と8位の塩素が分子内の空間
的な相互位置が適当であるために、目的とする大環状化
合物が一段階の反応で好収率で生じる。
【0009】
【実施例】本発明を実施例により詳細に説明する。
【0010】実施例1 乾燥窒素雰囲気下、2,4,6,8−テトラクロロピリ
ミド[5,4−d]ピリミジン1.51gを微粉末とし
て乾燥クロロホルム50mlに攪拌により懸濁させ、0
〜5度に氷冷した。懸濁液の温度を保ちながら、1、1
0−ジアミノデカン0.961gおよびジイソプロピル
エチルアミン1.59gの乾燥クロロホルム溶液(30
ml)を2時間かけて滴下した。滴下後さらに室温で2
時間攪拌した。クロロホルム相を水で洗浄した後、硫酸
マグネシウムで乾燥し、溶媒を蒸発乾固させた。カラム
クロマトグラフ(シリカゲル/アセトン−クロロホルム
1:9)で目的物を精製した。(収量0.70g)。薄
層クロマトグラフ(シリカゲル/酢酸エチル:クロロホ
ルム1:29)Rf値 0.8。融点122℃。 H NMR:δ(CDCl、内標準物質TMS):
6.89(4H、t、NH)、3.57(8H、dt、
NCH)、1.66(8H、t、NCCH)、1.
31(24H、bs、CH) 13−CNMR:δ(CDCl、内標準物質TMS)
158.2、155.5、130.6(芳香核)、4
0.1(NHCH)、28.3、28.1、2 8.
0、25.8(CH)FAB−MS(m/e737)
【0011】実施例2 実施例1と同様にして、1,6−ジアミノヘキサンより
環状化合物を得た。収率40%。薄層クロマトグラフ
(シリカゲル/クロロホル)Rf値0.8。
【0012】実施例3 乾燥窒素雰囲気下、2,4,6,8−テトラクロロピリ
ミド[5,4−d]ピリミジン1.50gを微粉末とし
て乾燥クロロホルム50mlに攪拌により懸濁させ、7
〜10度に氷冷した。懸濁液の温度を保ちながら1,2
-ビス(2-アミノエトキシ)エタン0.853gおよび
ジイソプロピルエチルアミン1.59gの乾燥クロロホ
ルム溶液(30ml)を40分かけて滴下した。滴下後
さらに室温で2時間攪拌した。 得られた生成物を実施例1と同様にして精製し、これを
薄層クロマトグラフ処理した。Rf値:0.5 H NMR:δ(CDCl、内標準物質TMS):
7.23(4H,t,NH)、3.99(8H、dt、
NCH)、
【0013】実施例4 乾燥窒素雰囲気下、2,4,6,8−テトラクロロピリ
ミド[5,4−d]ピリミジン0.54gを微粉末とし
て乾燥クロロホルム10mlに攪拌により懸濁させ、5
〜10度に氷冷した。懸濁液の温度を保ちながらm−キ
シリレンジアミン0.28gおよびジイソプロピルエチ
ルアミン0.65gの乾燥クロロホルム溶液(30m
l)を30分かけて滴下した。滴下後さらに室温で2時
間攪拌した。クロロホルム相を水で洗浄した後、硫酸マ
グネシウムで乾燥し、溶媒を蒸発乾固させた(収量0.
5g)。カラムクロマトグラフ(シリカゲル/アセトン
−クロロホルム1:9)で目的物(2種類の回転異性
体)を単離した。 薄層クロマトグラフ(シリカゲル/アセトン:クロロホ
ルム1:9) Rf値0.4。H NMR:δ(CDCl、内標準
物質TMS):9.16(4H、t、NH)、7.30
と7.22(8H、b、芳香核)、4.56と4.54
(8H、b、NCH
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 合議体 審判長 竹林 則幸 審判官 横尾 俊一 審判官 大宅 郁治

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式(1)で表される大環状化合
    物。 【化1】(1) (式中、Xは、−O−、−S−、又は−NHで表される
    ヘテロ原子からなる2価連結基である。Yは、両末端に
    メチレン基を有する以下の2価の有機基である。 (1)炭素数2〜20の炭化水素鎖 (2) −CH(CHZCH)mCH− 式中、Zは、−O−、−S−、又は−NHで表される
    価のヘテロ原子又は基を示し、mは1〜8の数を示す。 (3) −CHArCH− 式中、Arは置換基を有していてもよいフェニル基を示
    す。この場合、置換基としては、炭素数1〜6のアルキ
    ル基又はハロゲン原子である。)
  2. 【請求項2】下記一般式(1)で表される大環状化合物
    の製造方法において、下記式(2)で表される2,4,
    6,8−テトラクロロピリミド[5,4−d]ピリミジ
    ンを、下記一般式(3)で表される鎖状化合物と反応さ
    せることを特徴とする前記大環状化合物の製造方法。 【化2】(1) 【化3】(2) 【化4】(3) HX−Y−XH (式中、Xは、−O−、−S−、又は−NHで表される
    ヘテロ原子からなる2価連結基である。Yは、両末端に
    メチレン基を有する以下の2価の有機基である。 (1)炭素数2〜20の炭化水素鎖 (2) −CH(CHZCH)mCH− 式中、Zは、−O−、−S−、又は−NHで表される
    価のヘテロ原子又は基を示し、mは1〜8の数を示す。 (3) −CHArCH− 式中、Arは置換基を有していてもよいフェニル基を示
    す。この場合、置換基としては、炭素数1〜6のアルキ
    ル基又はハロゲン原子である。)
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