JP3380032B2 - 優れた伸線加工性を有する高張力鋼線の製造方法 - Google Patents

優れた伸線加工性を有する高張力鋼線の製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はC:0.3〜0.92質
、Si:2.0質量%以下、Mn:1.0質量%以
下、Cr:0.12.0質量、残部鉄および不純物
元素からなる鋼(亜共析鋼、共析鋼あるいは過共析
、または、それらに、Cu,Ni,Ti,Nb,
V,MoおよびBの一種以上を添加した合金鋼(以下
「共析鋼等」)を圧延して製造される鋼線(以下「共析
鋼等圧延鋼線」)を製造するに際して、鋳造から線材圧
延までの一貫的な工程において、該鋼材がオーステナイ
ト相から変態をさせることなく圧延を完了させ直ちに等
温変態熱処理させる製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】共析鋼等圧延鋼線は従来はブルームに鋳
造後、高温で長時間加熱保持することによって鋳片内の
偏析を低減し均質化された後、圧延されている。従来の
圧延工程は二段階に分かれ、前段はビレット圧延、後段
はビレットからの線材圧延となっており、両圧延とも圧
延前にブルームあるいはビレットの再加熱をしている。
【0003】特に前段の圧延は1200℃前後の温度、
場合によっては1300℃近い高温で加熱されており、
このため製造コストを上昇させているばかりでなく、工
程管理の簡略化を阻んでいる。このような加熱工程が採
用されているのは次のような理由による。すなわち、従
来の製造法では大断面ブルームを採用しているため鋳片
内部の偏析が著しいのでこれを低減させるために電磁攪
拌等の外部からの操作によって柱状晶の成長を抑制し、
内部に自由晶が形成されるような鋳造方法が採用されて
いる。このため鋳片の凝固組織は粗く、C,Mn,P,
S、等の局所的な偏析(「セミマクロ偏析」)部分が多
数散在した状態となっているのでブルームの高温加熱処
理と圧延による内部組織の均質化が不可避であった。と
くに本発明の対象とする共析鋼等圧延鋼線においては内
部組織の均質化が十分でないと鋼中に不可避的に残存す
る微少な介在物の弊害が助長され製品特性を損ないやす
い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は共析鋼等圧延
鋼線を製造するに際して、従来のプロセスであった圧延
前のブルームあるいはビレットの再加熱を省略し、鋳造
直後の鋳片の持つ熱を利用して圧延し、圧延後に再加熱
することなく圧延直後の鋼線の有する熱を利用して等温
変態処理まで行い、しかも従来のプロセスによる材料に
比べて優れた特性を有する共析鋼等圧延鋼線の製造法に
関するものである。
【0005】すなわち凝固完了後最終の等温変態熱処理
に至るまでにオーステナイト相から変態をさせることな
く一連の工程を処理することによって中間工程に要する
加熱エネルギーコストを削減させると同時に工程の直行
化を可能とするばかりでなく、凝固速度を所定の速度以
上に確保した鋳造をさせた凝固組織に、直ちに圧延加工
を加えることによって得られる加工組織を活用し、極め
て微細な変態組織を得ることを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は現在の共析鋼
等圧延鋼線の一貫的な製造工程における前段の圧延工程
である鋳片の圧延に先行して行われている1200℃を
越える高温での加熱処理(以下「ブルーム加熱」)と、
後段の圧延である線材圧延に先行する加熱処理(以下
「ビレット加熱」)との果たしている冶金学的な機能を
詳細に研究した。その結果、ブルーム加熱は鋳片中心部
のセミマクロ偏析を減少させてはいるが、その程度は従
来一般に考えられているように工業的に意義を認められ
るほどの偏析低減効果はなく、むしろ鋳片全域における
デンドライトミクロ偏析(以下「ミクロ偏析」)の平坦
化が極めて顕著である。
【0007】このことがビレット加熱においてオーステ
ナイト結晶粒の成長粗大化を容易にするため、このよう
な処理を施した鋳片は加熱温度を低めに設定しないとオ
ーステナイト結晶粒の粗大化を抑制できない。そのよう
にして加熱オーステナイトの粗大化を抑制した加熱処理
によっては、Cr,Ti,Nb,V,Mo,B、の炭化
物を窒化物がビレット圧延前に十分に鋼マトリックス中
に溶解しきれずそれらの析出強化や圧延再結晶に際して
の結晶粒微細化あるいはオーステナイトからの変態にお
ける種々の材質面での効果を著しく低減しているばかり
でなく、これら未溶解炭化物や窒化物のために最終的な
線材の冷間加工性を低下させているとの知見を得た。
【0008】一方共析鋼等を鋳造後直ちに圧延加工に付
した場合の鋳造組織と圧延加工組織との関係、および、
それからの変態を詳細に研究した。その結果、共析鋼等
の凝固ままのオーステナイト相に圧延加工を施した時の
加工組織は均一に導入されるのではなく、ミクロ偏析の
濃化部分すなわちデンドライト樹間部分(以下「濃化
部」)と、非濃化部分すなわちデンドライト樹枝部分
(「非濃化部」)とで加工組織の残存量が異なり、濃化
部は非濃化部に比べて極めて高い密度の加工組織が残存
する。この不均一な加工組織はオーステナイトからの変
態に際して変態核の機能を有し、この変態核機能はオー
ステナイト粒界よりも強い。従って不均一組織の単位の
大きさを微細にすればオーステナイト結晶粒が著しく粗
大であっても極めて微細な変態組織が得られることを見
い出した。
【0009】このような知見に基づいて工業的に採用し
得る鋳造条件と圧延条件との適性化を研究した結果、最
適な鋳造条件と圧延加工条件とを知得した。さらに、本
発明者は粗大な鋳造オーステナイト粒組織から微細な変
態組織を得るためには、さらに圧延加工組織から変態開
始までに回復・再結晶をさせないことが重要であること
を知るに至った。
【0010】以上の知見を工業的に実現する製造条件と
して、鋳片凝固中に溶鋼流動を起こさないようにして
柱状晶部分をできるだけ発達させるだけでなく、該柱
状晶部のデンドライトを微細化させるため凝固殻成長速
度を所定の速度以上にすること、鋳片全体に微細な加
工組織を行き渡らせるために上記の凝固殻成長速度で凝
固する範囲を鋳片断面積の所定の割合とすること、必
要なオーステナイト圧延加工量を確保すること、圧延
終了後の等温保持処理までの経過時間をできる限り短時
間とするように急冷すること等が必要であることを多数
の実規模の実験の繰り返しにより見い出し、本発明を完
成させた。
【0011】すなわち、本発明の要点は、 (1)C:0.3〜0.92質量、Si:2.0質量
%以下、Mn:1.0質量%以下、Cr:0.12.
質量、残部鉄および不純物元素からなる鋼(亜共析
鋼、共析鋼または過共析鋼を連続鋳造法において、5
mm/分以上の凝固殻成長速度で少なくとも鋳片断面の7
0%以上の部分を凝固させた鋳片を、鋳造後の冷却過程
でオーステナイトからの変態点を下回ることなく断面減
少率98%以上の圧延を行い、圧延終了後30秒以内に
急冷して600℃以下300℃以上の温度になし、その
温度において保持し変態させることを特徴とする優れた
伸線加工性を有する高張力鋼線の製造方法。
【0012】(2)圧延後の急冷と変態のための温度で
の保持とを、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムからなる溶
融塩浴内に浸漬あるいは該溶融塩を噴射させる方法によ
る(1)記載の優れた伸線加工性を有する高張力鋼線の
製造方法。 (3)圧延後の急冷の一部または全体を水または空気と
水の混合された冷媒による冷却によって行なう、(1)
または(2)記載の優れた伸線加工性を有する高張力鋼
線の製造方法。
【0013】(4)鋼成分として、更に、 Cu:1.0質量%以下 Ni:1.0質量%以下 Ti:0.2質量%以下 Nb:0.3質量%以下 V :0.3質量%以下 Mo:0.3質量%以下 B :0.005質量%以下 のうち一種または二種以上を添加し(1)〜(3)の
いずれかに記載の優れた伸線加工性を有する高張力鋼線
の製造方法である。
【0014】ここで成分限定の理由を述べる。Crは本
発明の効果を発現する上で必要不可欠の元素である。す
なわち、鋳造後の高温のオーステナイト状態におけるC
rの固溶状態から直接に圧延加工に付されるので、圧延
中および圧延後の加工オーステナイトの回復再結晶を抑
制するばかりでなく、圧延後のオーステナイトからの変
態において均一な変態組織の現出を援ける。
【0015】さらに、Si,Mn,Cu,Ni,Ti,
Nb,V、およびMoの添加量の上限を設けた理由を説
明する。Ti,Nb,V,Moはいずれも炭化物あるい
は窒化物による析出強化あるいはオーステナイトからの
変態に際して微細なθ相を形成する目的で添加するもの
であるが、過剰に添加しても効果が高まるわけではな
い。そのような上限値として、Ti:0.2質量%,N
b:0.3質量%,V:0.3質量%,Mo:0.3
%とした。
【0016】またSiはオーステナイト中のCの活量を
高めθ相の析出を容易にするので本発明の目的とする微
細な変態組織を得るのに望ましい元素であるが、過剰な
添加は鋳造を困難にするので2質量%を上限とした。M
n,Cu,Niはいずれも変態後の組織中のフェライト
を強化すると同時に等温保持条件範囲を拡大するので好
ましい添加元素であるが、過剰に添加すると鋳造時に鋳
片表面品位を劣化させるので、Mn:1.0質量%以
下、Cu:1.0質量%以下、Ni:1.0質量以下と
した。
【0017】また、Bはオーステナイトからの変態に際
して粒界からの変態を抑制し、併せて粒内での変態殻機
能を促進させるので0.005質量%を上限として添加
される。
【0018】
【作用】本発明法によれば過共析鋼圧延鋼線等の変態後
の組織は従来法による同鋼線等の組織と同等あるいはそ
れ以上に微細となる。加えて鋳造時に鋳片の鋼マトリッ
クス中に固溶状態にあるCr,Ti,Nb,V,Moの
濃度は従来法のビレット加熱後のビレット中のそれらに
比べて高く、鋼成分が同一であれば、より高い強度が得
られる。あるいは同一の強度とするのに必要な、これら
の合金元素の添加量は低減できる。これは、凝固時に鋼
マトリックス中に固溶状態で残る元素量は、同一の温度
であっても、いったんAr3 変態点を下回る熱履歴を経
た後に加熱されてその温度に持ち来たらされた方より
も、はるかに多いことによる。
【0019】一方本発明法によれば鋳片等の加熱が省略
できることは明らかであるが、実際的な生産の都合上、
鋳片の冷却を緩やかにするための保温処理をしたとして
も、以上に説明した本発明法の持つ金属学的な長所を減
ずることはなく、熱エネルギーコストの追加分は著しく
少なくて済む。本発明について、その実施例に基づいて
さらに説明する。
【0020】
【実施例】本発明法によって試作した亜共析鋼、共析鋼
および過共析鋼圧延鋼線と従来法による同鋼線との特性
値を表1および表2に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】なお、実施例にあるとおり、本発明例はR
>5mm/分すなわち凝固殻成長速度5mm/分以上で、鋳
片断面の72〜95%の部分を凝固させ、圧延終了から
冷却開始までの時間は、10〜30秒として急冷したも
のである。その急冷速度は特に限定するものではない
が、好ましくは変態域の冷却速度50℃/秒以上であ
る。
【0024】さらに、本発明では急冷と変態温度の保持
に、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムからなる塩浴に浸漬
するか、または同溶融塩をジェットまたはラミナー状に
噴射して冷却してもよい。また、冷却の一部に使用する
冷媒は、ミストまたは蒸気であってもよい。
【0025】
【発明の効果】本発明法によれば、過共析鋼圧延鋼線等
の製造において、従来の製造法と比較して、鋳片の加熱
工程を省き圧延と直結させることによって、熱エネルギ
ーコストを大幅に低減させるとともに、生産工程を簡略
化して生産工期を短縮できる。しかも、得られる製品は
従来法に比べてより高い強度を付与することに加えて、
特筆すべきは、二次伸線加工性を著しく高める。すなわ
ち、高温のオーステナイトに加工組織を導入して直ちに
等温変態させることにより、変態後の組織の単位は微細
かつ方位のランダムなものとなり、二次加工における加
工性を高める。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 38/00 301 C22C 38/00 301Y 38/18 38/18 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 1/00 - 3/02 C21D 8/00 - 8/10 C21D 9/52 B22D 11/06

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.3〜0.92質量、Si:
    2.0質量%以下、Mn:1.0質量%以下、Cr:
    0.12.0質量、残部鉄および不純物元素からな
    鋼を連続鋳造法において、5mm/分以上の凝固殻成長
    速度で少なくとも鋳片断面の70%以上の部分を凝固さ
    せた鋳片を、鋳造後の冷却過程でオーステナイトからの
    変態点を下回ることなく断面減少率98%以上の圧延を
    行い、圧延終了後30秒以内に急冷して600℃以下3
    00℃以上の温度になし、その温度において保持し変態
    させることを特徴とする優れた伸線加工性を有する高張
    力鋼線の製造方法。
  2. 【請求項2】 圧延後の急冷と変態のための温度での保
    持とを、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムからなる溶融塩
    浴内に浸漬あるいは該溶融塩を噴射させる方法による請
    求項1記載の優れた伸線加工性を有する高張力鋼線の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 圧延後の急冷の一部または全体を水また
    は空気と水の混合された冷媒による冷却によって行な
    う、請求項1または2記載の優れた伸線加工性を有する
    高張力鋼線の製造方法。
  4. 【請求項4】 鋼成分として、更に、 Cu:1.0質量%以下 Ni:1.0質量%以下 Ti:0.2質量%以下 Nb:0.3質量%以下 V :0.3質量%以下 Mo:0.3質量%以下 B :0.005質量%以下 のうち一種または二種以上を添加し請求項1〜3のい
    ずれかに記載の優れた伸線加工性を有する高張力鋼線の
    製造方法。
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