JP3414364B2 - 鋼材の錆安定化処理方法およびこの錆安定化処理が施された鋼材ならびにこの鋼材によって構築された鋼構造物 - Google Patents

鋼材の錆安定化処理方法およびこの錆安定化処理が施された鋼材ならびにこの鋼材によって構築された鋼構造物

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JP3414364B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、海岸地帯等、飛
来塩分量が多い地域で使用する鋼材の錆安定化処理法に
関し、更に詳しくは、飛来塩分量が多い地域において、
耐候性鋼の表面に防食性能が高い錆、即ち、安定錆を早
期に形成する、錆安定化処理法およびこの錆安定化処理
が施された鋼材ならびにこの鋼材によって構築された鋼
構造物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】耐候性鋼材は、Cu、Ni、Cr、P、
Mo等の元素を少量含有する低合金鋼からなり、無塗装
で大気中に暴露すると、腐食して発錆する過程で防食性
に優れた錆、即ち、安定錆が自然に形成される。安定錆
が形成された後は、鋼材の腐食はほとんど進行しない。
耐候性鋼材は、塗装鋼材のように補修の必要がない、即
ち、メンテナンスフリーであることから、形鋼、鋼板、
鋼管等、各種鋼材に適用され、橋梁や鉄塔等の構造物と
して幅広い用途がある。
【0003】しかし、海岸地帯、融雪塩散布地域等、飛
来塩分量が多い地域では、耐候性鋼に安定錆が形成され
にくく、そのために耐候性鋼の適用可能地域は、飛来塩
分量の少ない地域に制限されてきた。
【0004】この問題に対して、飛来塩分量が多い環境
においても無塗装で十分な耐食性を有する、Niを主た
る添加元素とする耐候性鋼が特開平9−165647号
公報、特開平3−158436等に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
のNiを主たる添加元素とする耐候性鋼の場合でも、安
定錆が形成されるまでには5年以上の長期間を要する。
安定錆が形成されるまでの期間、特に使用初期段階にお
ける流れ錆および浮き錆により、鋼材および構造物の美
観の喪失、更には、周囲の環境汚染の問題が生じる場合
がある。
【0006】従って、この発明の目的は、飛来塩分量が
多い地域において安定錆を早期に形成させることができ
る、鋼材の錆安定化処理方法およびこの錆安定化処理が
施された鋼材ならびにこの鋼材によって構築された鋼構
造物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
Cr≦0.1質量%、Ni:0.4〜5.0質量%を含
有する耐候性鋼材の表面に、3価のクロムイオンを含む
水溶性または3価のクロムイオンを含む樹脂組成物から
なる錆安定化剤を塗布することに特徴を有するものであ
る。
【0008】請求項2記載の発明は、前記3価のクロム
イオンの前記耐候性鋼材への塗布量は、1〜200μm
ol/cm 2 の範囲内であることに特徴を有するもので
ある。
【0009】請求項3記載の発明は、請求項1または2
記載の方法によって錆安定化処理が施されたことに特徴
を有するものである。
【0010】請求項4記載の発明は、請求項3記載の鋼
材によって構築されたことに特徴を有するものである。
【0011】
【0012】
【0013】
【発明の実施の形態】次に、この発明の、鋼材の錆安定
化処理方法の一実施形態を説明する。
【0014】(鋼材)この発明において、下地鋼材の含
有元素の中で、飛来塩分量が多い地域における耐候性の
観点からNiおよびCrの範囲が特に重要である。他の
元素については特に限定はしない。また、処理面はブラ
スト処理等で表面のスケールや錆を落とした状態が好ま
しいが、必ずしもその必要はない。
【0015】Ni Niは、飛来塩分量が多い環境において、安定錆の形成
に優れ且つ防食性に優れた錆を形成する効果を有してい
る。しかしながら、Ni添加量が0.4質量%未満で
は、Niの有する上述した効果が得られず、一方、Ni
添加量が5.0質量%を超えると、経済性の点で不利で
あり、また、ベイナイト組織が生じやすくなり、機械的
特性、特に、靭性が劣化する。従って、Ni添加量は、
0.4〜5.0質量%の範囲内に限定することが好まし
い。
【0016】Cr Crは、飛来塩分量が多い環境において、孔あき腐食の
発生を助長する元素である。孔あき腐食は、塩化物イオ
ン等の腐食性アニオンが濃化して、安定錆の発生を阻害
する。また、孔あき腐食によって流れ錆量も増加する。
従って、鋼材中にCrは、実質的に含まないものとし
た。ここで実質的に含まないとは、0.1質量%以下は
含んでも良いことを意味する。
【0017】(錆安定化処理剤)この発明における錆安
定化処理剤は、3価のクロムイオンを含む水溶液または
樹脂組成物である。水溶液としては、3価のクロムイオ
ンと対アニオンからなる塩を溶解したものであり、かか
る塩としては、それぞれ3価の酢酸クロム、蟻酸クロ
ム、水酸化クロム、硝酸クロム、リン酸クロム、硫酸ク
ロムおよびこれらの水和物等が挙げられるが、これらに
限定されるものではない。これらの中では、適度な溶解
度を有する酢酸クロム、蟻酸クロム、硝酸クロム、硫酸
クロム等が好ましい。また、樹脂組成物としては、前記
3価のクロムイオンを含む塩および/または水溶液を溶
解または分散し得る樹脂が好ましく、具体的には、エポ
キシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、アミノ樹脂、ポ
リエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ブチラ
ール樹脂、フタル樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ
る。更に、これらを適宜、乾性油等で変性したものを用
いても良い。
【0018】3価のクロムイオンは、錆の欠陥や細孔に
浸透し、錆を緻密化させて安定錆を形成する作用を有し
ている。しかしながら、錆の緻密化に寄与するために
は、3価のクロムイオンの塗布量は、鋼材単位面積(c
2)当たり1μmol/cm2以上にすべきである。一
方、3価のクロムイオンの塗布量が鋼材単位面積(cm
2)当たり200μmolを超えても、その効果は飽和
する。従って、3価のクロムイオンの塗布量は、1〜2
00μmol/cm2の範囲内に限定した。
【0019】(錆安定化処理剤の塗装方法)錆安定化処
理剤の塗装方法は、公知の塗装方法、即ち、エアスプレ
ー、エアレススプレー、刷毛塗り等で良く、処理方法に
特に制限はない。また、特に、加熟・焼き付け等の処理
も不要であるため、工場施工、現地施工の何れもに対応
可能である。
【0020】(鋼材と錆安定化処理剤との組み合わせに
よる効果)Ni、Crとも錆を緻密化し、錆の防食性能
を向上させる効果を有している。これらの元素の錆層中
へ濃化する速度は異なり、Crは、比較的早期に、Ni
は時間をかけて濃化する。このために、Crは錆安定化
処理剤から供給することによって、早期に錆を安定化さ
せることが可能である。また、Crは、上述したよう
に、鋼材に含まれると孔あき腐食の発生を助長し、流れ
錆量を増加させる。この点からもCrは、錆安定化処理
剤から供給することが望ましい。
【0021】一方、Niを処理剤から供給すると、鋼中
に濃化するまでの間に、錆安定化処理剤の風化等によっ
て効果が低減してしまう。よって、Niは、鋼材に添加
し、ゆっくりと錆中に濃化させることが好ましい。
【0022】以上のことから、Ni添加、Cr無添加の
鋼材に、Ni無添加、Cr添加の錆安定化処理剤を塗布
するという組み合わせによって、CrとNiとが濃化し
た緻密な錆層が形成され、このことによって初めて防食
性能に優れた錆層の形成が可能となる。
【0023】
【実施例】次に、この発明の効果を実施例により更に詳
細に説明する。
【0024】先ず、表1に示すような化学成分からなる
鋼材を用意した。表1において、Aは、本発明鋼材であ
り、B、C、Dは、比較用鋼材である。各鋼材を150
mm×70mm×6mmの大きさに切削加工し、表面を
ショットブラスト処理した。このようにして調製した鋼
材A、B、C、Dに錆安定化処理剤を表2に示すような
組み合わせで塗布した。そして、錆安定化処理剤を塗布
した各鋼材を海岸地帯に、南に30°の角度に傾けて3
年間曝露し、流れ錆の有無、安定錆形成の有無を評価し
た。曝露期間中の平均飛来塩分量は、約0.4mdd
(mg・NaCl/dm2/day)であった。このと
きの安定錆の形成状況を以下のように評価した。
【0025】
【表1】
【0026】流れ錆は、サンプル鋼材の下端に白色ペン
キを塗布し、流れ錆による白色ペンキの汚染状態より、
下記の4段階で評価した。
【0027】◎:全く見られない。
【0028】○:殆ど見られない。
【0029】△:多少見られる。
【0030】×:顕著に見られる。
【0031】安定錆形成は、塗膜を剥がし、塗膜下の錆
の外観を調べ、下記の4段階で評価した。
【0032】◎:錆は緻密で、欠陥が少なく連続的に形
成されている。
【0033】○:錆は緻密だが、一部が欠陥を有し不連
続である。
【0034】△:錆の形成が不均一であり、粉状の剥が
れやすい錆が形成されている。
【0035】×:層状の剥がれやすい錆が形成されてい
る。
【0036】塗膜下の錆に対してフェロキシルテストを
実施した。フェロキシルテストは、錆の安定度を評価す
るもので、試験液(フェロシアン化カリウム、フェリシ
アン化カリウム、塩化ナトリウムの混合水溶液)に浸し
たろ紙を試験面に貼り付け、腐食活性点に対応して、ろ
紙に現われる青色の斑点を調べるものである。斑点の個
数密度を数え、下記の4段階で評価した。
【0037】◎:発色点数が50個/dm2未満であ
る。
【0038】○:発色点数が50個/dm2以上100
個/dm2未満である。
【0039】△:発色点数が100個/dm2以上20
0個/dm2未満である。
【0040】×:発色点数が200個/dm2以上であ
る。
【0041】塗膜下の錆に対してセロテープ(登録商
標)剥離テストを実施した。セロテープ剥離テストは、
浮き錆量を評価するもので、錆表面(供試面積は250
0mm2)にセロテープを粘着させて剥がし、セロテー
プに付着した錆粒子の数密度、大きさを調べるものであ
る。同一個所について3回繰り返し、浮き錆量の合計
を、下記の3段階で評価した。
【0042】○:浮き錆量が10mg未満である。
【0043】△:浮き錆量が10mg以上50mg未満
である。
【0044】×:浮き錆量が50mg以上である。
【0045】上述の評価結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】表2から明らかなように、この発明の錆安
定化処理鋼材である発明例1〜12は、何れも、飛来塩
分量が多い環境において良好な結果が得られた。即ち、
本発明鋼材と処理剤との組み合せにより流れ錆防止と錆
の早期安定化、更には、塗膜剥離性の改善が図られ、耐
候性および外観が大幅に向上することが分かった。これ
は、下地鋼材のNiと処理剤中の3価のクロムイオンと
による錆の緻密化と、鋼材中に実質的にCrを含まない
ことによる流れ錆防止効果による。
【0048】更に、塗膜性状が本発明の組み合せにより
優れた結果が得られたが、これは、下記のメカニズムに
よるものと推定される。 (1)Cr添加鋼では孔食が起こり、その結果、局所的
に錆厚の大きい部分ができる。 (2)局所的な錆厚の成長が塗膜を圧迫し、その結果、
塗膜に剥離が生じる。 (3)Cr無添加でもNiを添加しなければ、錆の緻密
化が不十分なため、錆層が厚くなり、凹凸が大きくなる
結果、外観にムラが生じる。
【0049】これに対して、各比較例は、以下の問題が
生じた。
【0050】比較例1は、3価のクロムイオンの塗布量
がこの発明の範囲を外れて少ないので、錆の緻密化が不
十分であり、このために安定錆形成およびセロテープ剥
離テスト結果に劣っていた。
【0051】比較例2は、3価のクロムイオンの塗布量
がこの発明の範囲内であるが、鋼材中のCr含有量が多
いので、鋼材中のCrに起因する局部腐食が発生して、
錆中の欠陥数が増加したため、耐流れ錆性およびフェロ
キシルテスト結果が劣っていた。
【0052】比較例3は、3価のクロムイオンの塗布量
がこの発明の範囲を外れて少なく、しかも、鋼材中のC
r含有量が多いので、全評価項目において劣っていた。
特に、鋼材中のCrに起因する局部腐食が発生して錆中
の欠陥数が増加したため、耐流れ錆性およびフェロキシ
ルテスト結果が著しく劣っていた。
【0053】比較例4は、3価のクロムイオンの塗布量
がこの発明の範囲内であるが、鋼材中のNi添加量がこ
の発明の範囲を外れて少なく、しかも、鋼材中のCr含
有量が多いので、全評価項目において劣っていた。特
に、鋼材中のNi含有量が少ないので、錆の緻密化が不
十分なため、セロテープ剥離テスト結果が著しく劣って
いた。
【0054】比較例5は、3価のクロムイオンの塗布量
がこの発明を外れて少なく、しかも、鋼材中のNi添加
量がこの発明の範囲を外れて少なく、更に、鋼材中のC
r含有量が多いので、全評価項目において著しく劣って
いた。
【0055】比較例6は、3価のクロムイオンの塗布量
がこの発明の範囲内であり、しかも、鋼材中のCr含有
量が少ないが、鋼材中のNi添加量がこの発明の範囲を
外れて少ないため、耐流れ錆性は優れていたが、他の評
価項目において劣っていた。特に、鋼材中のNi添加量
が少ないので、錆の緻密化が不十分であり、このために
セロテープ剥離テスト結果が著しく劣っていた。
【0056】
【発明の効果】以上述べたように、この発明の錆安定化
処理鋼材によれば、飛来塩分量が多い環境において安定
錆を早期に形成することができる。しかも、この発明の
錆安定化処理鋼材を構造物に使用することによって、飛
来塩分量が多い環境においても構造物のメンテナンスフ
リー化が図れるので、従来の塗装の塗り替え等の費用が
不要となる等、工業上有用な効果がもたらされる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 - 22/86 C22C 38/00 301

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cr≦0.1質量%、Ni:0.4〜
    5.0質量%を含有する耐候性鋼材の表面に、3価のク
    ロムイオンを含む水溶性または3価のクロムイオンを含
    む樹脂組成物からなる錆安定化剤を塗布することを特徴
    とする、鋼材の錆安定化処理方法。
  2. 【請求項2】 前記3価のクロムイオンの前記耐候性鋼
    材への塗布量は、1〜200μmol/cm 2 の範囲内
    であることを特徴とする、請求項1記載の、鋼材の錆安
    定化処理方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の方法によって錆
    安定化処理が施されたことを特徴とする鋼材。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の鋼材によって構築された
    ことを特徴とする鋼構造物。
JP2000179344A 1999-12-06 2000-06-15 鋼材の錆安定化処理方法およびこの錆安定化処理が施された鋼材ならびにこの鋼材によって構築された鋼構造物 Ceased JP3414364B2 (ja)

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