JP3420582B2 - 新規レクチン様物質 - Google Patents

新規レクチン様物質

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Description

【発明の詳細な説明】 「技術分野」 本発明は、蚕の糞より抽出された、細胞凝集活性、イ
ムノグロブリンG(IgG)への特異的な結合性、マクロ
ファージの貪食作用の活性化作用、抗ウイルス作用等を
有する新規なレクチン様物質、ならびに当該レクチン様
物質を有効成分とした医薬組成物に関する。
「背景技術」 レクチンは、特異的な糖鎖構造を認識し、結合する糖
結合性タンパク質である。1888年にH.Stillmarkにより
初めてトウゴマの種子中に赤血球を凝集するタンパク質
としてレクチンが発見された。レクチンは細胞凝集素ま
たは赤血球凝集素とも呼ばれ、植物ばかりでなく、イン
フルエンザ・ウイルスの表面抗原や動物の肝臓などにも
存在することがわかっている。レクチンの主な生理作用
は、血液型特異的に赤血球を凝集させる、ある種の
ガン細胞だけを特異的に凝集させる、リンパ球の分裂
を促進する(マイトジェン活性)、細胞に対する毒
性、肝臓などにおける特異的な老廃蛋白の取り込みな
どが知られている。すなわち、レクチンは当初、赤血球
の膜表面に存在する血液型を決定する糖鎖との結合性を
利用して血液型検索試薬としてのみ利用されていたが、
その後、コンカナバリンAやインゲンマメレクチン等の
一部のレクチンに、休止期にあるリンパ球の幼若化、増
殖細胞への分化誘導等、種々の免疫学的現象を引き起こ
す作用が見出され、免疫現象解明のモデルとして、ある
いは免疫反応における生理活性物質生産の刺激物質とし
て利用されるようになった。また、レクチンは悪性化細
胞に対し強い凝集性を示すことが明らかとなり、これが
レクチンの悪性細胞表面に存在する特異的な糖鎖への結
合性によるものであることに基づき、標識レクチンを用
いてガン細胞を検出する診断にも利用されている。
近年多細胞生物の生体内で起こる発生、分化、免疫、
ガンなどの複雑な生命現象を細胞間協同作用、あるいは
細胞の情報認識という側面で解明しようとする見地か
ら、細胞膜上糖質の一定構造と特異的に結合することを
特徴とするレクチンが注目され、細胞表面の複合糖質の
検索、細胞膜の分子構造の検索などレクチンを応用した
研究が盛んとなった。このため現在レクチンは、血清
学、生化学、免疫学、細胞生物学、分子生物学等の幅広
い分野で研究試薬として利用されている。
よって、レクチン、就中、動物の体液、組織由来のレ
クチン、またはそれに類似した活性を有するレクチン様
物質は、動物発生、分化、神経系、免疫系における細胞
間認識反応を始め、免疫反応や蛋白代謝など様々な重要
な役割を担うものとして、今後新たな研究、応用が期待
されるものである。
したがって、本発明の課題は新規なレクチン様物質を
提供することにある。
「発明の開示」 本発明者らは、上記課題を解決するため、古来より新
鮮で民間薬として使用されている蚕の糞に注目し、この
蚕糞抽出物を筋分化系細胞(QM−RSV細胞)に添加した
ところ、培養皿に接着していた細胞がはがれ、凝集する
ことを発見した。本発明者らは、この活性物質を単一に
精製することに成功し、その生化学的特徴(分子量、等
電点、熱安定性等)を明らかにし、当該活性物質によっ
ておこる細胞の凝集について詳しく調べるとともに、そ
れがイムノグロブリンG(IgG)への特異的結合性、マ
クロファージの貪食能作用の活性化作用、ならびに抗ウ
イルス作用を有することを見い出して本発明を完成させ
るに到った。
レクチンは、糖結合性蛋白であり、細胞凝集作用を有
し、多糖類や複合糖類を沈降させ、その結合特性が単糖
やオリゴ糖により阻止される。これに対し、本発明によ
り精製された活性物質は、レクチン同様に細胞膜糖鎖、
または蛋白質に結合し、細胞を凝集させる作用がある物
質でありながら、主な糖がその活性を阻害しない。しか
しながら、マンノースのみはその活性を阻害することか
ら、当該活性物質はマンノースを認識するといえる。よ
って本発明における活性物質は、既知のレクチンとは異
なるものであると考えられるところの新規レクチン様物
質であり、これをNUEと命名した。
すなわち、本発明のNUEは、下記の生化学的特徴を有
する新規レクチン様物質に係わる。
蚕の糞から得られうる。
非還元条件下のSDS−PAGEによる推定分子量が60kD
a、還元条件下のSDS−PAGEによる推定分子量が50kDa及
び17kDa。
等電点がpH4.8。
糖タンパク質である。
細胞凝集活性を有する。
イムノグロブリンG(IgG)と特異的に結合する。
マクロファージの貪食能作用を活性化する。
抗ウイルス作用を有する。
先ず、本発明のNUEの製造方法につき詳述する。本発
明のNUEは、例えば蚕の糞より抽出した水溶性物質よ
り、単離することができる。
本発明のNUEは、蚕の糞を10倍容量のPBS(−)にて抽
出し、当該抽出液から不溶性物質を濾過と遠心分離によ
り除去して得られた上清を、NUEの物理化学的性質を利
用して各種分離手段の組合せにより精製することにより
得られる。本発明においては、塩析法、透析法、等電点
沈澱、逆相HPLCを組み合わせた手法が例示出来る。具体
的には、上記抽出上清に硫酸アンモニウムを50%となる
よう添加し、得られた沈澱をPBS(−)にて透析し、さ
らに、pH3.5の等電点沈澱して得られた沈澱を、逆相HPL
C等にかけることにより調整できる。
本発明においては、レクチンブロット法により認識さ
れるか否かを試験することによって、NUEが糖タンパク
質であることを判定した。当該レクチンブロット法に使
用される試薬として、コンカナバリンA、ピーナッツレ
クチン、コムギ胚レクチン−ペルオキシダーゼが使用さ
れる。
本発明のNUEは、非還元条件下でのSDS−PAGEで約60kD
a付近の単一の幅広いバンドを示し、還元条件下のSDS−
PAGEでは約50kDa、約17kDaの2本の鋭敏なバンドとして
移動する。
本発明において、NUEによって凝集を起こす細胞とし
ては、エールリッヒ腹水癌細胞、QM−RSV細胞、Hela細
胞等が挙げられる。本発明においては、その凝集活性の
検定に、ウズラ胸筋から調製した筋芽細胞(Quail myob
last,QM)にラウス肉腫ウイルス(Rous sacoma virus,R
SV)の温度感受性変異株を感染させ、トランスフォーム
したQM−RSV細胞を用いた。QM−RSV細胞は、RSVの許容
温度である35.5℃では未分化な筋芽細胞のまま増殖を続
けるが、41℃では分化を始め互いに多核の筋管を形成す
る。すなわち、温度によって筋分化過程を制御できる細
胞である。
本発明において、NUEとイムノグロブリンGとの結合
特性は、ウサギIgGを用いたウェスタンブロット法によ
り検定することができる。本発明のNUEは、IgGのFab,F
c,H鎖,L鎖のすべてに結合する。IgGのFc部分にしか糖鎖
は存在しないので、NUEは糖鎖以外の部位をも認識する
と考えられる。また、還元して高次構造をくずしたIgG
においても、NUEと結合することから、NUEが認識する部
位は、IgGの一次構造であると示唆される。さらに、IgG
のトリプシン処理によりNUEとIgGの結合は見られなくな
る。したがってNUEが認識する部位にはトリプシンで切
断されるアミノ酸配列が含まれていると考えられる。
本発明のNUEは、細胞凝集活性を有することにより、
細胞が増殖分化し複雑な組織を形成していく発生過程に
おいて、細胞が互いに接着凝集していく現象の解析に役
立つ可能性を有する。また、当該物質と組織(特に、悪
性化細胞)との結合特性を利用し、ガンの診断をはじめ
とする種々の臨床診断に応用できる。また、当該物質は
イムノグロブリンGとの特異的な結合性を有することに
より、免疫学分野における研究用試薬としての利用が期
待される。さらに、当該物質はマクロファージの貪食能
作用を活性化することにより、病原体(ウイルス、細
菌)による感染防御、またはそれらに対する免疫向上効
果を有する。また、当該物質は、抗ウイルス作用、特に
抗センダイウイルス(HVJ)、抗HIV作用、抗ハシカウイ
ルス作用、抗ヘルペスウイルス作用があることが認めら
れ、ウイルス、就中、上記ウィルスの他、インフルエン
ザウイルス、B型肝炎ウイルスを含めたエンベロープウ
イルスに対して強い抗ウイルス活性を示す。従って、本
発明のNUEは、そのマクロファージの貪食能作用の活性
化作用から免疫促進剤として、また抗ウイルス作用から
抗ウイルス剤として有効であり、また両作用を併せて広
くは感染症予防治療剤として有効である。
本発明におけるNUEを有効成分とする感染症予防治療
剤は、経口、あるいは低分子化後注射等によって投与さ
れる。その投与に際しては、それぞれの投与経路に応じ
て適宜の形態、例えば経口製剤、注射剤として製剤化さ
れて投与される。経口製剤(例えば、錠剤、カプセル
剤)および注射用製剤は、それぞれ常法によって製造さ
れる。それぞれの製剤には、通常それぞれの剤型に応じ
た製薬上許容される担体または添加物が配合される。ま
た、経皮により投与する場合は、剤型として代表的には
軟膏剤が挙げられ、該製剤は、必要に応じて賦形剤、乳
化剤、安定剤等の慣用の担体を用いて常套手段により調
製することができる。
当該感染症予防治療剤における有効成分NUEの含量
は、投与方法、剤型、適応疾患等により適宜変更するこ
とが可能であるので特に限定されない。
当該感染症予防治療剤の投与量は、適用疾患、疾患の
程度、患者の年令等により異なるが、 例えば軟膏剤としてヘルペスウイルスによる疱疹の治
療に対して使用する場合は、通常、50〜500mg/mlを1日
数回患部に塗布する。
「図面の簡単な説明」 図1は、蚕糞抽出精製物の逆相HPLCによる溶出パター
ンを示す。
図2は、“NUE"fractionによる筋芽細胞(QM−RSV細
胞)の培養器壁からの離脱状態(生物細胞の形態)を示
す。
図3は、蚕糞抽出物の各精製画分の還元下および非還
元下でのSDS−ポリアクリルアミド電気泳動パターンを
示す。
図4は、“NUE"fractionのコンカナバリンAによるレ
クチンブロット像(電気泳動パターン)を示す。
図5は、“NUE"fractionの吸収度曲線を示す。
図6は、“NUE"fraction添加、35.5℃での培養におけ
る筋芽細胞(QM−RSV細胞)の凝集状態(生物細胞の形
態)を示す。
図7は、“NUE"fraction添加、41℃での培養における
筋芽細胞(QM−RSV細胞)の凝集状態(生物細胞の形
態)を示す。
図8は、“NUE"fraction未処理、前処理、前処理後除
去した筋芽細胞(QM−RSV細胞)の35.5℃での培養器壁
への接着状態(生物細胞の形態)を示す。
図9は、“NUE"fraction未処理、前処理、前処理後除
去した筋芽細胞(QM−RSV細胞)の41℃での培養器壁へ
の接着状態(生物細胞の形態)を示す。
図10は、浮遊状態の細胞における“NUE"fractionによ
る凝集度を示す。
図11は、“NUE"fractionのウサギIgGを用いたウェス
タンブロット像(電気泳動パターン)を示す。
「発明を実施するための最良の形態」 以下に参考例及び実施例を示し、本発明をより具体的
に述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 蚕糞抽出と精製 (i)抽出法 蚕の糞は長野県蚕業試験場より乾燥状態で入手した。
蚕糞の重量(g)に対し、10倍容量(ml)のPBS(−)
(phosphate buffered saline;1L H2O中NaCl 8g,Na2HPO
4 1.15g,KCl 0.1g,KH2PO4 0.1g)を加え、ときどき攪拌
しながら60℃で一晩抽出した。この抽出液をガーゼでろ
過し、104×gで15分間遠心した。上清に50%になるよ
うに硫酸アンモニムを添加し、4℃で1時間放置した
後、104×gで15分間遠心して沈澱を適量のPBS(−)に
溶かした。これをPBS(−)に対し3日間透析後、凍結
乾燥し、−20℃にて保存した。
(ii)精製法 上記凍結乾燥した蚕糞抽出物を10mg/mlになるように
蒸留水に溶かし、0.5M酢酸でpH3.5にまでpHを下げた。
4℃で1時間放置し、104×gで15分間遠心した。1M Na
OHでpHを7までもどし、沈澱を適量のPBS(−)に溶か
した。
さらに、精製を進めるため、逆相HPLCを行った。逆相
HPLCは、U6K pump,Waters 600E system controller,Wat
ers 484 tunable absorbance detector,Waters 741 dat
a module(以上Waters),model 201 fraction collecto
r(Gilson)を用いて行った。カラムProtein C4カラム
(Vydac 10mm×25cm、粒径5μm、孔径300A)を使用
し、室温で行った。溶出液Aは0.1%トリフルオロ酢酸
を含む蒸留水、溶出液Bは0.1%トリフルオロ酢酸を含
むアセトニトリルを用い、3ml/分の流速で溶出した。溶
出液AとBの比が試料を注入後、0−20分,90:10、20−
30分,70:30、30−45分,50:50となるように段階的に変化
させた結果、二つの分画(Fr.1とFr.2)が得られた。図
1にその溶出パターンを示す。それぞれの分画について
以下の実施例2に述べる方法により凝集活性を見たとこ
ろ、初めに溶出されてきた分画(Fr.1)に活性が認めら
れた。当該活性分画(Fr.1)を“NUE"fractionとした。
実施例2 細胞凝集活性 (i)使用細胞;QM−RSV細胞 10日目のウズラ胚より胸筋を取り出し、0.25%トリプ
シン(Difco Labolatories)で細胞を懸濁後、増殖培地
にて1×106個/100mmガラス培養皿になるようにまきこ
んだ。トリプシンはPBS(−)に溶かし、増殖培地は20
%牛胎児血清(FBS;fetal bovine serum,Filtron)、2m
Mグルタミン(日水製薬(株))、0.2%炭酸水素ナトリ
ウム、100単位/mlペニシリンGカリウム、100μg/ml硫
酸ストレプトマイシンを含むDMEM(Dulbecoo's modific
ation of Eagle's medium,Flow Laboratories)を用い
た。筋芽細胞と繊維芽細胞を選別するために、10分おき
に培養皿を軽く振盪しながら37℃で1.5時間培養した。
選別をさらに十分行うために、この操作をもう1回行っ
た。このとき培養皿に接着していなかった細胞を筋芽細
胞とし、5.9×105個/3ml増殖培地となるように60mmプラ
スチック培養皿(CORNING)にまきこんだ。尚、プラス
チック培養皿はコラーゲン(Type−I−P,新田ゼラチン
(株))にて前処理した。これに温度感受性ラウス肉腫
ウイルス(RSV ts NY68)を氷上で30分間感染させた
後、増殖培地にて培養したものを実験に供した。
(ii)方法 QM−RSV細胞を2×105個/2ml増殖培地となるように、
コラーゲン処理した35mmプラスチック培養皿にまきこん
だ。35.5℃で24時間培養後、200μg/mlの蚕糞抽出物を
含む分化培地(5% PBS、2mMグルタミン、0.2%炭酸水
素ナトリウム、100単位/mlペニシリンGカリウム、100
μg/ml硫酸ストレプトマイシンを含むDMEM培地)に交換
し、35.5℃で培養し、一定時間ごとに観察した。培養皿
に接着していた細胞がはがれ、凝集が起こるまでの時間
は、蚕糞抽出物添加後6時間目で確実となるので、以下
添加後6時間目で活性の有無を判断した(図2参照)。
実施例3 “NUE"fractionの生化学的特性 (i)電気泳動による分析 SDS−PAGEはLaemmliらの方法[Laemmli,U.K.,Cleavag
e of Structual Proteins during the Assembly of the
Head of Bacteriophage T4,Nature,227,680−685(197
0)]に従って行った。分離用ゲルは全て12.5%アクリ
ルアミド(和光純薬工業(株)製)を加え調製した。20
mAの定電流を試料を泳動後、クーマシーブリリアントブ
ルーR250(fluka Chemie AG)にて染色した。
結果を図3に示す。非還元下では約60kDa付近に1本
の幅広いバンドとして現れた(図3,1レーン)。また還
元下は50kDaと17kDa付近にそれぞれ2本ずつ鋭敏なバン
ドを与えた(図3,4レーン)。
(ii)レクチン−ブロット法による確認 レクチン−ブロット法は次のようにして行った。SDS
−PAGE後、ゲル上に分離されたタンパク質のバンドを50
mAの定電流で2時間通電し、ニトロセルロース紙(Bio
Rad Laboratories)に転写した。このニトロセルロース
紙を蒸留水で5分ずつ2回洗浄し、25mM H2SO4に80℃で
1時間浸した。次に蒸留水で5分ずつ2回、T緩衝液
(0.15M NaCl−0.05% Tween20−10mM Tris・HCl,pH7.
4)で5分ずつ2回洗浄後、コンカナバリンA−ペルオ
キシダーゼ試薬(豊年製油(株))と4℃で1時間反応
させた。コンカナバリンA−ペルオキシダーゼ試薬はT
緩衝液で100倍希釈し、1mMのCaCl2.MnCl2.MgCl2を加え
た。反応後、ニトロセルロース紙をT緩衝液で15分ずつ
4回、15mMリン酸緩衝液pH6.7で5分ずつ2回洗浄し、3
mg/ml 4−クロロ−1−ナフトール(Bio Rad Laborator
ies)と0.02%H2O2を加え、発色させた。4−クロロ−
1−ナフトールはメタノールに添加し、H2O2は15mMリン
酸緩衝液で希釈した。この発色は蒸留水で洗浄して停止
させた。本ペルオキシダーゼ結合コンカナバリン試薬に
よるレクチン−ブロット結果を図4に示す。非還元下、
すなわち60kDaのタンパク質に糖の結合が確認された
(図4,2レーン)。また、ピーナッツレクチン、コムギ
−ペルオキシダーゼ試薬によっても同様に、この60kDa
のタンパク質は認識された。
(iii)等電点電気泳動 等電点電気泳動は、Phast Gel IFF4−6.5(Pharmaci
a)を用い、Phast system(Pharmacia)にて行った。等
電点4.8付近に広いバンドが現れた。よって“NUE"fract
ionの等電点は約4.8であることが示された。
(iv)他の特性 “NUE"fractionの凝集活性の熱安定性を調べたとこ
ろ、70℃、1時間の加温では安定であったが、100℃で1
5分間加熱すると失活した。
また、“NUE"fractionの吸光度曲線をDU−64吸光度計
(Beckmann(株))により作成したところ、230nmに吸
収極大を示した(図5)。
実施例4 “NUE"fractionの凝集活性の特徴 (1)温度による“NUE"fractionの凝集活性の違い (方法) QM−RSV細胞を2×105個/2ml増殖培地になるよう35mm
培養皿にまき、35.5℃で24時間培養した。200μg/mlま
たは400μg/mlの蚕糞抽出物を含む分化培地に交換し、3
5.5℃と41℃においてそれぞれ培養した。
(結果) 35.5℃では、“NUE"fraction添加後、6時間目には確
実に凝集が起こっていた。しかし41℃では添加後10時間
経過してもそのような凝集は観察されなかった(図6−
a,図7−f)。41℃においても“NUE"fraction添加後、
24時間経過すると単核の細胞が凝集してくるが、筋管の
形成は阻害されなった(図7−g)。このように、35.5
℃と41℃では、“NUE"fractionの作用に違いがあり、こ
のことは35.5℃と41℃において、QM−RSV細胞表面の性
質が異なることを示唆するものである。
また、“NUE"fractionの濃度を400μg/mlにすると、3
5.5℃、41℃のどちらにおいても“NUE"fraction添加後
6時間で凝集が起こり、最終的に細胞は死に至った(図
6−d,図7−h)。41℃での筋管形成も起こらなかった
(図7−i)。
(2)接着前のQM−RSV細胞に対する“NUE"fractionの
影響 (方法) QM−RSV細胞を0.02% EDTA/PBS(−)で回収し、蚕糞
抽出物を400μg/ml含む、あるいは含まない分化培地で
2×105個/mlになるように調整した。氷中で15分間放置
後、分化培地で2倍希釈後、35mmの培養皿に2mlずつま
きこみ、35.5℃および41℃で培養した。細胞に添加した
“NUE"fractionを細胞から取り除くときは、分化培地で
2倍希釈後に1000rpmで5分間遠心して上清を除去後、
残った細胞を2×105個/2ml分化培地になるように35mm
培養皿にまきこみ、同様にして培養した。
(結果) “NUE"fractionを加えなかった細胞は、培養して24時
間後に観察すると、培養皿に接着していた。しかし、
“NUE"fractionを添加したものは、35.5℃、41℃のどち
らにおいて接着しなかった(図8−a,b及び図9−d,
e)。氷中で15分間“NUE"fractionを作用させた後、“N
UE"fractionを細胞から除去し、同様に培養すると35.5
℃、41℃のどちらにおいても細胞は培養皿に接着した
(図8−c,及び図9−f)。
このように、遠心除去するだけで、“NUE"fractionの
活性が見られなくなることから、“NUE"fractionとその
結合部位は非常に弱いものと考えられる。
(3)浮遊状態のQM−RSV細胞に対する“NUE"fraction
の影響 (方法) QM−RSV細胞を1.6×106個/5ml増殖培地になるよう100
mm培養皿にまきこみ、35.5℃で24時間培養した。このQM
−RSV細胞を0.02% EDTAで回収し、5×106個/mlになる
ようPBS(−)に懸濁した。0.5mlずつ蓋付試験管に分注
し、ここに200μg/mlの蚕糞抽出物を加え、氷中で15分
間細胞に吸着させた。35.5℃にて100回/分の速さで振
盪し、一定時間ごとに細胞を取り出してPBS(−)で5
倍希釈後、フックス・ローゼンタール氏血球計算盤にの
せ写真を撮り、凝集度を次式に従い測定した。
式:凝集度(%)=(1−凝集塊を1としたときの細
胞数/細胞総数)×100 (結果) “NUE"fractionを作用させていない細胞では、35.5℃
で30分間振盪しても凝集はわずかにしか起こらなかっ
た。“NUE"fractionを作用させると細胞は凝集し、その
凝集度は時間がたつにつれて増していった(図10)。
このように培養皿に接着していない浮遊状態の細胞で
も“NUE"fractionによって凝集することから、“NUE"fr
actionは細胞表面に結合することで、細胞凝集活性を示
すと思われる。
(4)QM−RSV細胞以外の細胞に対する“NUE"fraction
の影響 (方法) 実施例2記載の方法に従って、それぞれの細胞につい
て“NUE"fractionによる凝集を調べた。
MDCK細胞は3×106個/5ml 10% CS−MEMになるよう
に、100mmガラス培養皿にまきこみ、37℃で24時間培養
した。0.25%トリプシン(Difco Laboratories)と0.2
% EDTAの1:1混液にて回収し凝集を見た。尚、トリプシ
ンとEDTAはPBS(−)に溶かした。Hela細胞もMDCK細胞
と同様にして凝集活性を見た。ニワトリ赤血球は、白色
レグホン翼静脈より採血したものを用い、PBS(−)で
洗浄後、同様にして凝集活性を見た。エールリッヒ腹水
癌細胞(ETC)はddy雄マウス腹腔内で増殖させ、PBS
(−)で洗浄後、同様に凝集活性をみた。またQM−RSV
細胞は0.25%トリプシンにて回収し、同様に凝集を見
た。結果を表1に示した。いずれの細胞も“NUE"fracti
onにより凝集した。特にエールリッヒ腹水癌細胞の凝集
が強かったが、その他の細胞についてはQM−RSV細胞ほ
ど強い凝集を示さなかった。
(5)既知のレクチンと“NUE"fractionとの比較 0.5Mのグルコース、マンノース、ガラクトース(以
上、和光純薬工業(株))、N−アセチルグルコース、
N−アセチルガラクトース(以上、ナカライテスク
(株))と20mg/mlの蚕糞抽出物を1:1の割合で混合し、
室温で2時間放置した。この混合液について、実施例2
記載の方法に従って凝集活性を調べた。その結果を表2
に示した。マンノース以外はいずれの糖も“NUE"fracti
onを阻害しなかった。このことから、“NUE"fractionは
既知のレクチンとは異なる、新規なものだと思われる。
実施例5 “NUE"fractionのイムノグロブリンGとの結
合特異性 ウェスタンブロット法は次のようにして行った。SDS
−PAGE後、ゲル上に分離したタンパク質を50mA,2時間通
電し、ニロトセルロース紙(Bio Rad Laboratories)に
転写した。このニトロセルロース紙をTBS(Tis buffere
d saline;20mM Tris・HCl pH7.4−0.5M NaCl)に10分
間、ブロッキング溶液[3%ゼラチン(Bio Rad Labora
tories/TBS]に1時間浸し、T・TBS(0.05% Tween20
−TBS)で5分ずつ2回洗浄した後、1次抗体と一晩反
応させた。尚、1次抗体はウサギIgGを用いた。ウサギI
gGは日本白色ウサギより得た血清よりAmpure(登録商
標)PA kitを用いて精製した。1次抗体と反応後、T・
TBSで5分ずつ2回洗浄後、2次抗体と反応させた。2
次抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギIg
Gヤギ抗体(Bio Rad Laboratories)を抗体溶液(1%
ゼラチン/T・TBS)で1500倍希釈して用いた。T・TBSで
5分ずつ2回、TBSで5分ずつ2回洗浄後、3mg/ml 1
−クロロ−4−ナフトールと0.02%過酸化水素水を加え
発色させた。1−クロロ−4−ナフトールはメタノール
に溶かし過酸化水素水はTBSで希釈した。発色はH2Oで洗
浄することにより停止させた。結果を図11に示す。
実施例6 “NUE"fractionのマクロファージ貪食能作用
活性化 ddy雄マウスの腹腔内にプロテオースペプトンを投与
し、マクロファージを腹腔内に遊走させた。投与後2,3
日したから、ヘパリンと10%子牛血清(CS)を含むMEM
(Minimum essential medium)にて腹水を採取し、マク
ロファージを回収した。同培養液でマクロファージを洗
浄後、2×106個/ml 10%CS−MEMの濃度で、カバースリ
ップの入った35mmのガラス培養皿に撒きこんだ。37℃で
4時間培養後、未接着の細胞を除去し、引き続き37℃で
24時間培養した。200μg/mlの“NUE"fractionを含む10
%CS−MEM 2mlに培養液を交換し、37℃で24時間、“NU
E"fractionを細胞に作用させた。ラテックスビーズを2
×106個/ml含む10% CS−MEMに培養液を交換し、37℃で
20分間細胞にビーズを取り込ませた。グルタルアルデヒ
ドで細胞を固定後、取り込まれたビーズの数を測定し
た。マクロファージ100個中に取り込まれたビーズ数を
数え、細胞1個あたりに取り込まれたビーズ数で結果を
表した。対照が3.16±1.51個/マクロファージだったの
に対し、“NUE"fractionを作用させた場合、11.02±2.6
4個/マクロファージとなり、3倍以上の差があった。
従って、“NUE"fractionによってマクロファージ貪食能
作用が活性化されることが示された。
実施例7 “NUE"fractionのセンダイウイルス(HVJ)
の感染阻害作用 HVJ 1HAu(3×107個ウイルス/ml)に対し、“NUE"f
ractionを400μg/mlの濃度で3分間作用させた後、PBS
(−)にて3倍希釈した。この溶液を10倍段階希釈後、
各々の希釈液を100μlずつ、10日目の孵化鶏卵5個ず
つに感染させた。感染後3日目に奨尿液を採取し、それ
ぞれについてニワトリ赤血球の凝集価を調べ、ウイルス
の感染の有無を判定した。対照(“NUE"fraction作用さ
せず)の孵化卵がすべて感染が成立したのに対し、“NU
E"fractionを作用させた場合、ウイルスの感染は全く認
められず、“NUE"fractionはHVJの感染を阻害すると示
唆された。
実施例8 “NUE"fractionの抗HIV作用 96穴の培養皿に200μg/mlの“NUE"fractionを20μl
ずつ分注し、10倍段階希釈したHIV(JMH−1株)を20μ
lずつ添加、混合した。37℃で1時間保温後、2×105
個/ml 10%牛胎児血清(FBS)−RPMIのMT−4細胞(HLV
のゲノムを入れたヒトT4リンパ球)浮遊液を、100μl
ずつ各穴に分注し、混合した。37℃、5% CO2中培養し
た後、細胞変性を指標に感染価を測定した。対照の感染
価が1×106.45TCID50/mlだったのに対し、“NUE"fract
ionを作用させた場合、感染価は1×105.45TCID50/mlに
まで抑制され(対照に比べて1/10倍)、“NUE"fraction
には抗HIV作用があることが示された。
製剤例1 軟膏剤 白色ワセリン 60% ポリエチレングリコール 1000 40% 上記のベース100gに、本発明の“NUE"fraction 1gを
混合し、60℃で混合して軟膏剤とした。
「産業上の利用可能性」 本発明の新規レクチン様物質は、細胞生物学上重要な
細胞凝集機構の解析に役立つばかりでなく、IgGとの特
異的な結合性を利用して免疫学分野における研究用試薬
としての利用が期待される。さらには、マクロファージ
の貪食能作用の活性化作用、ならびに抗ウイルス作用を
有することから、ウイルス感染をはじめとする各種感染
症に対する予防、治療、症状の軽減、症状の悪化防止ま
たは抑制を目的とする感染症予防治療剤として有効であ
る。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の特徴を有する新規レクチン様物質; 蚕の糞から得られうる。 非還元条件下のSDS−PAGEによる推定分子量が60kD
    a、還元条件下のSDS−PAGEによる推定分子量が50kDa及
    び17kDa。 等電点がpH4.8。 糖タンパク質である。 細胞凝集活性を有する。 イムノグロブリンG(IgG)と特異的に結合する。
  2. 【請求項2】次の特徴を有する請求の範囲第1項記載の
    新規レクチン様物質; マクロファージの貪食能作用を活性化する。 抗ウイルス作用を有する。
  3. 【請求項3】請求の範囲第1項または第2項記載の新規
    レクチン様物質を有効成分とする感染症治療剤。
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