JP3550199B2 - 転がり軸受 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はいわゆる王冠型の保持器を備えた転がり軸受に関し、例えば、アイドラプーリ用転がり軸受として利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
潤滑剤例えばグリースを封入した転がり軸受においては、封入グリースの種類や周囲環境温度等の影響で、グリース粘度が高い場合、グリースがシールの内壁面に付着して、軌道面に充分に行き渡らない場合がある。また、転がり軸受を高速回転や外輪回転で使用する場合等では、回転に伴う遠心力によって軸受内のグリースが外径側に流れて溜り、軌道面に充分に行き渡らない場合がある。このようにして、グリースの軌道面への流動性が阻害されると、潤滑不足による種々の好ましくない現象が生じることがある。
【0003】
例えば、自動車のエンジンのタイミングベルトや補機駆動用ベルト等に係止されるアイドラプーリ(プーリ本体の内径に転がり軸受を嵌合した構造のもの等)を、寒冷時に始動すると特異音(笛吹き音)が発生する場合がある。この寒冷時の異常音、いわゆる冷時異音の発生原因については未だ明確には解明されていないが、次のように推測できる。すなわち、寒冷時におけるグリースの基油粘度上昇・稠度低下に伴う流動性の低下によって、軌道面に油膜むら・不均一化等が生じやすい。油膜むら・不均一化があると、転動体と軌道面との間の摩擦係数が微小な周期的変化を起こし、これにより転動体に自励振動が生じる。特に、油膜切れ部分が存在すると、その部分で転動体がスティク滑りを起こし、転がり・滑りの状態変化を周期的に繰り返すために、ある一定の振動数で転動体の自励振動の振幅はより大きくなる。そして、このような自励振動をする転動体と内・外輪の軌道面との接触部分において異音が発生すると思われる。さらに、転動体の自励振動が外輪を介してプーリ本体に伝わり、プーリ本体の固有振動と共振して増幅され、共鳴音となって拡大する場合もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、グリースの軌道面への流動性、特に寒冷時におけるグリースの流動性を促進することにより、上述したような潤滑不足による好ましくない現象を回避することを、その目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に介在する複数のボールと、ボールを収容する複数のポケットを円周等間隔に有する保持器と、外輪の両端部に嵌着された一対のシールとを備え、内部にグリースが封入され、外輪回転で使用される転がり軸受において、保持器は、複数のポケットと、ポケット間を仕切る柱部と、各柱部の先端から円周方向の相反した向きに円弧状に延びた一対の爪部とを備えていると共に、端部からポケット方向に向かって、円周方向幅が漸次拡大した形状の溝を外径に有する構成を提供する。
【0006】
【作用】
外輪の回転によって外径側に流れ、外輪のランド付近に滞留したグリースや、シールの内壁面に付着したグリースなどが、保持器の回転に伴い、外径の溝に沿ってポケットに流動し、軌道面に常時供給されるので、潤滑不足に陥りにくい。
【0007】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【0008】
図1に一例として示すのは、アイドラプーリ用深溝玉軸受である。この深溝玉軸受は、固定軸(図示省略)に嵌合される内輪1、プーリ本体(図示省略)の内径に嵌合される外輪2、内・外輪1、2間に介在する複数のボール3、ボール3を円周等間隔に保持する例えば樹脂製の保持器4、および、外輪2の両端部に嵌着された一対のシール5で構成される。軸受内にはグリースが充填され、シール5によって軸受内に密封される。図示されていないプーリ本体がベルトから回転駆動力を受けて回転すると、これに嵌合された外輪2がプーリ本体と一体となって回転する。
【0009】
図2に示すように、この実施例の保持器4は、いわゆる王冠型のもので、円周等配位置に設けられた複数のポケット4a、ポケット4a間を仕切る柱部4b、各柱部4bの先端から円周方向の相反した向きに円弧状に延びた一対の爪部4cを備えている。組み込みに際しては、内・外輪1、2の軌道面間に組み入れられたボール3に爪部4cの先端を押し当て、爪部4cをボール3によって弾性変形させながら、ポケット4a内にボール3を収容する。
【0010】
また、保持器4の外径には、シール5に面した端部4dからポケット4aに向かって、円周方向幅Wが漸次拡大した形状の溝4eが設けられている。溝4eがこのような形状を有するため、溝4eの両壁面4e1、4e2は、それぞれ、軸線に対して傾斜し、かつ、傾斜の向きが相反する。尚、この実施例において、溝4eの数はポケット4aの数と同数であり、溝4eと溝4eとの間隔はポケット間隔に対応している。また、溝4eの両側壁4e1、4e2を構成する外径の肉厚部分が、端部4dから突出して突出部4fをなしている。
【0011】
例えば、図2(a)において、軸受回転時、保持器4がY方向に回転したとすると、溝4eの両壁面4e1、4e2のうち、反回転方向の壁面4e1が一種のスパイラル羽根として働き、端部4d側にあるグリースをポケット4a側に強制的に流動させる力を生じさせる。逆に、保持器4がX方向に回転したとすると、溝4eの両壁面4e1、4e2のうち、反回転方向の壁面4e2が一種のスパイラル羽根として働き、端部4d側にあるグリースをポケット4a側に強制的に流動させる力を生じさせる。つまり、この保持器4は、軸受がいずれの方向に回転する場合にも、端部4d側のグリースをポケット4a側に強制的に流動させる力を生じさせる。端部4dから突出した突出部4fは、グリースの流動を促進する役割をなす。
【0012】
したがって、外輪2の回転によって外径側に流れ、外輪2のランド付近に滞留したグリースや、シール5の内壁面に付着したグリースなどが、保持器4の回転に伴い、溝4eに沿ってポケット4a側に流動し、軌道面に常時供給されるので、潤滑不足に陥りにくい。特に、寒冷時の始動直後、グリースの軌道面への流動性が促進されることは、アイドラプーリにおける冷時異音発生防止にきわめて有効であると考えられる。
【0013】
尚、端部からポケット方向に向かって、円周方向幅が漸次拡大した形状の溝は、保持器の外径のみならず、保持器の内径にも設けても良い。
【0014】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の転がり軸受は、保持器が、端部からポケット方向に向かって、円周方向幅が漸次拡大した形状の溝を外径に有するので、外輪の回転時、外輪のランド付近に滞留したグリースや、シールの内壁面に付着したグリースなどが、端部側から保持器の溝に沿ってポケット側に強制的に流動せしめられ、軌道面に常時供給される。そのため、本発明の転がり軸受は、寒冷時、高速回転時等においても、潤滑不足に陥りにくい。
【0015】
特に、寒冷時の始動直後、グリースの軌道面への流動性が促進されることは、アイドラプーリにおける冷時異音発生防止にきわめて有効であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るアイドラプーリ用深溝玉軸受を示す断面図である。
【図2】保持器の外径側からみた平面図(図a)、斜視図(図b)である。
【符号の説明】
1 内輪
2 外輪
3 ボール
4 保持器
4a ポケット
4d 端部
4e 溝
5 シール
【産業上の利用分野】
本発明はいわゆる王冠型の保持器を備えた転がり軸受に関し、例えば、アイドラプーリ用転がり軸受として利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
潤滑剤例えばグリースを封入した転がり軸受においては、封入グリースの種類や周囲環境温度等の影響で、グリース粘度が高い場合、グリースがシールの内壁面に付着して、軌道面に充分に行き渡らない場合がある。また、転がり軸受を高速回転や外輪回転で使用する場合等では、回転に伴う遠心力によって軸受内のグリースが外径側に流れて溜り、軌道面に充分に行き渡らない場合がある。このようにして、グリースの軌道面への流動性が阻害されると、潤滑不足による種々の好ましくない現象が生じることがある。
【0003】
例えば、自動車のエンジンのタイミングベルトや補機駆動用ベルト等に係止されるアイドラプーリ(プーリ本体の内径に転がり軸受を嵌合した構造のもの等)を、寒冷時に始動すると特異音(笛吹き音)が発生する場合がある。この寒冷時の異常音、いわゆる冷時異音の発生原因については未だ明確には解明されていないが、次のように推測できる。すなわち、寒冷時におけるグリースの基油粘度上昇・稠度低下に伴う流動性の低下によって、軌道面に油膜むら・不均一化等が生じやすい。油膜むら・不均一化があると、転動体と軌道面との間の摩擦係数が微小な周期的変化を起こし、これにより転動体に自励振動が生じる。特に、油膜切れ部分が存在すると、その部分で転動体がスティク滑りを起こし、転がり・滑りの状態変化を周期的に繰り返すために、ある一定の振動数で転動体の自励振動の振幅はより大きくなる。そして、このような自励振動をする転動体と内・外輪の軌道面との接触部分において異音が発生すると思われる。さらに、転動体の自励振動が外輪を介してプーリ本体に伝わり、プーリ本体の固有振動と共振して増幅され、共鳴音となって拡大する場合もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、グリースの軌道面への流動性、特に寒冷時におけるグリースの流動性を促進することにより、上述したような潤滑不足による好ましくない現象を回避することを、その目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に介在する複数のボールと、ボールを収容する複数のポケットを円周等間隔に有する保持器と、外輪の両端部に嵌着された一対のシールとを備え、内部にグリースが封入され、外輪回転で使用される転がり軸受において、保持器は、複数のポケットと、ポケット間を仕切る柱部と、各柱部の先端から円周方向の相反した向きに円弧状に延びた一対の爪部とを備えていると共に、端部からポケット方向に向かって、円周方向幅が漸次拡大した形状の溝を外径に有する構成を提供する。
【0006】
【作用】
外輪の回転によって外径側に流れ、外輪のランド付近に滞留したグリースや、シールの内壁面に付着したグリースなどが、保持器の回転に伴い、外径の溝に沿ってポケットに流動し、軌道面に常時供給されるので、潤滑不足に陥りにくい。
【0007】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【0008】
図1に一例として示すのは、アイドラプーリ用深溝玉軸受である。この深溝玉軸受は、固定軸(図示省略)に嵌合される内輪1、プーリ本体(図示省略)の内径に嵌合される外輪2、内・外輪1、2間に介在する複数のボール3、ボール3を円周等間隔に保持する例えば樹脂製の保持器4、および、外輪2の両端部に嵌着された一対のシール5で構成される。軸受内にはグリースが充填され、シール5によって軸受内に密封される。図示されていないプーリ本体がベルトから回転駆動力を受けて回転すると、これに嵌合された外輪2がプーリ本体と一体となって回転する。
【0009】
図2に示すように、この実施例の保持器4は、いわゆる王冠型のもので、円周等配位置に設けられた複数のポケット4a、ポケット4a間を仕切る柱部4b、各柱部4bの先端から円周方向の相反した向きに円弧状に延びた一対の爪部4cを備えている。組み込みに際しては、内・外輪1、2の軌道面間に組み入れられたボール3に爪部4cの先端を押し当て、爪部4cをボール3によって弾性変形させながら、ポケット4a内にボール3を収容する。
【0010】
また、保持器4の外径には、シール5に面した端部4dからポケット4aに向かって、円周方向幅Wが漸次拡大した形状の溝4eが設けられている。溝4eがこのような形状を有するため、溝4eの両壁面4e1、4e2は、それぞれ、軸線に対して傾斜し、かつ、傾斜の向きが相反する。尚、この実施例において、溝4eの数はポケット4aの数と同数であり、溝4eと溝4eとの間隔はポケット間隔に対応している。また、溝4eの両側壁4e1、4e2を構成する外径の肉厚部分が、端部4dから突出して突出部4fをなしている。
【0011】
例えば、図2(a)において、軸受回転時、保持器4がY方向に回転したとすると、溝4eの両壁面4e1、4e2のうち、反回転方向の壁面4e1が一種のスパイラル羽根として働き、端部4d側にあるグリースをポケット4a側に強制的に流動させる力を生じさせる。逆に、保持器4がX方向に回転したとすると、溝4eの両壁面4e1、4e2のうち、反回転方向の壁面4e2が一種のスパイラル羽根として働き、端部4d側にあるグリースをポケット4a側に強制的に流動させる力を生じさせる。つまり、この保持器4は、軸受がいずれの方向に回転する場合にも、端部4d側のグリースをポケット4a側に強制的に流動させる力を生じさせる。端部4dから突出した突出部4fは、グリースの流動を促進する役割をなす。
【0012】
したがって、外輪2の回転によって外径側に流れ、外輪2のランド付近に滞留したグリースや、シール5の内壁面に付着したグリースなどが、保持器4の回転に伴い、溝4eに沿ってポケット4a側に流動し、軌道面に常時供給されるので、潤滑不足に陥りにくい。特に、寒冷時の始動直後、グリースの軌道面への流動性が促進されることは、アイドラプーリにおける冷時異音発生防止にきわめて有効であると考えられる。
【0013】
尚、端部からポケット方向に向かって、円周方向幅が漸次拡大した形状の溝は、保持器の外径のみならず、保持器の内径にも設けても良い。
【0014】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の転がり軸受は、保持器が、端部からポケット方向に向かって、円周方向幅が漸次拡大した形状の溝を外径に有するので、外輪の回転時、外輪のランド付近に滞留したグリースや、シールの内壁面に付着したグリースなどが、端部側から保持器の溝に沿ってポケット側に強制的に流動せしめられ、軌道面に常時供給される。そのため、本発明の転がり軸受は、寒冷時、高速回転時等においても、潤滑不足に陥りにくい。
【0015】
特に、寒冷時の始動直後、グリースの軌道面への流動性が促進されることは、アイドラプーリにおける冷時異音発生防止にきわめて有効であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るアイドラプーリ用深溝玉軸受を示す断面図である。
【図2】保持器の外径側からみた平面図(図a)、斜視図(図b)である。
【符号の説明】
1 内輪
2 外輪
3 ボール
4 保持器
4a ポケット
4d 端部
4e 溝
5 シール
Claims (1)
- 内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に介在する複数のボールと、ボールを収容する複数のポケットを円周等間隔に有する保持器と、外輪の両端部に嵌着された一対のシールとを備え、内部にグリースが封入され、外輪回転で使用される転がり軸受において、
前記保持器は、前記複数のポケットと、前記ポケット間を仕切る柱部と、前記各柱部の先端から円周方向の相反した向きに円弧状に延びた一対の爪部とを備えていると共に、端部からポケット方向に向かって、円周方向幅が漸次拡大した形状の溝を外径に有することを特徴とする転がり軸受。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP32713194A JP3550199B2 (ja) | 1994-12-28 | 1994-12-28 | 転がり軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP32713194A JP3550199B2 (ja) | 1994-12-28 | 1994-12-28 | 転がり軸受 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH08177865A JPH08177865A (ja) | 1996-07-12 |
| JP3550199B2 true JP3550199B2 (ja) | 2004-08-04 |
Family
ID=18195664
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP32713194A Expired - Fee Related JP3550199B2 (ja) | 1994-12-28 | 1994-12-28 | 転がり軸受 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3550199B2 (ja) |
Families Citing this family (8)
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| JP4188666B2 (ja) * | 2002-11-15 | 2008-11-26 | Ntn株式会社 | 転がり軸受用樹脂保持器 |
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| JP2013241959A (ja) * | 2012-05-18 | 2013-12-05 | Jtekt Corp | 転がり軸受用の分割保持器 |
| DE102013209288A1 (de) | 2013-05-21 | 2014-11-27 | Schaeffler Technologies Gmbh & Co. Kg | Wälzkörperlager mit Käfig |
| DE102014224209A1 (de) * | 2014-11-27 | 2016-06-02 | Schaeffler Technologies AG & Co. KG | Wälzlagerkäfig und Wälzlager |
| DE102015207660A1 (de) * | 2015-04-27 | 2016-10-27 | Schaeffler Technologies AG & Co. KG | Kugelschnappkäfig für ein Wälzlager |
| US12180998B2 (en) * | 2020-09-18 | 2024-12-31 | Aktiebolaget Skf | Bearing cage and ball bearing |
-
1994
- 1994-12-28 JP JP32713194A patent/JP3550199B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH08177865A (ja) | 1996-07-12 |
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Legal Events
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