JP3552002B2 - 金属錯体ポリマー - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な金属錯体ポリマーに関し、より詳しくは光導電性材料として使用される金属錯体ポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光導電性材料としては、下記式
【0003】
【化2】
(式中、pは数十〜数万の整数を表す)で表されるようなπ共役高分子系の材料や、下記式
【0004】
【化3】
(式中、Eは、Si、Ge、またはSnを表し、qは数百〜数万の整数を表す)で表されるσ共役高分子系の材料が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記π共役高分子系の材料は、可視光により光導電性を示すが、効率が低いため、通常はフラーレンなどの電子受容性の化合物を添加して使用せざるを得ない。また、π共役高分子系の材料は有機溶媒に対する溶解性が悪いため、製膜法が限られているという問題があった。
一方、σ共役高分子系の材料は、ホール移動度は大きいが、可視領域に吸収がなく、紫外光にしか光導電性を示さないという問題があった。また、光に対する耐久性が低いため、実用性に乏しかった。
従って、本発明は可視光にも光導電性を示し、製膜性に優れ、且つ耐光性の高い光導電性材料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
【0007】
【化4】
【0008】
(式中、Eは、Si、Ge、またはSnを表し、
Mは、遷移金属原子を表し、
Lは、配位子を表し、
Rは有機基を表し、
mは0〜3の整数を表し、
nは1〜4の整数を表し、
xは1〜6の整数を表し、
yは10〜100の整数を表し、
zは10以上の整数であって、y:zが0.1:0.9〜0.5:0.5の範囲である金属錯体ポリマーに関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
Mで表される遷移金属原子の例としては、Ru、Os、Pt、Rh、Cr、W、Mo、Fe、Cu等が挙げられる。但し、合成の簡便さ、熱及び光耐久性、並びに耐酸化性などの観点から、Ruが好ましい。
Lで表される配位子の例としては、ビピリジン、ホスフィン、フェナントレンカルボニル等が挙げられる。
Rで表される有機基の例としては、未置換または置換された脂肪族アルキル基、未置換または置換された脂環式基、未置換または置換された芳香族基が挙げられる。未置換または置換された脂肪族アルキル基は、例えば、炭素原子数1〜10個、好ましくは1〜6個の低級アルキル基、特に好ましくは3〜4個の炭素原子を有するアルキル基ものである。その例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル、n−ヘキシルが挙げられる。芳香族基は、好ましくは6〜12個、特に6個の炭素原子を有するものである。その例として、フェニル基、ナフチル、トルイル、ペンタフルオロフェニルが挙げられる。
【0010】
mは遷移金属イオンのイオン価であり、遷移金属の種類に応じて0〜3の整数を表す。
nは遷移金属イオンに配位する配位子の数であり、遷移金属のイオン価と配位子の種類に応じて1〜4の整数である。
xは1〜6、好ましくは2〜6、特に2〜4の整数を表す。
yは10〜100の整数を表す。
zは10以上の整数であって、y:zの比に応じて変化する。また、y:zの比は、0.1:0.9〜0.5:0.5の範囲であり、好ましくは0.3:0.7〜0.4:0.6の範囲である。x及びy:zの比によりポリマー中に含まれる遷移金属イオンの割合が変化する。
本発明の金属錯体ポリマーの数平均分子量(Mn)は、約1,000 〜100,000 の範囲であり、各種溶媒に対する溶解性という観点から、好ましくは1〜2万の範囲である。
本発明の金属錯体ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、約1,000 〜100,000 の範囲であり、溶解性、製膜性という観点から、好ましくは1〜2万である。
【0011】
金属錯体ポリマーの製法
本発明の金属錯体ポリマーは、下記の方法により合成され得る。
(A) 出発物質の製造
下記の反応式に従い、出発物質(II)を製造する。
【0012】
【化5】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、E,R,及びxは上記式(I)で定義した意味を表す)
(B) 出発物質(II)を用い、触媒の存在下、脱ハロゲン化カップリング反応を行うことにより、下記式で表されるポリマーを製造する。
【0013】
【化6】
(式中、E,R,及びxは上記式(I)で定義した意味を表し、wは10〜100の整数を表す)
【0014】
触媒としては、ニッケル、パラジウムを使用し得る。
溶媒としては、THF、DMF等を使用し得る。
反応温度は、通常50〜100℃の範囲であり、溶媒としてTHFを用いる場合60〜66℃の範囲、特に66℃であり、溶媒としてDMFを用いる場合70〜90℃の範囲、特に80℃である。
反応時間は、通常2〜6時間、好ましくは2〜3時間時間である。
(C) (B)で得られたポリマーを、適当な溶媒中、還流下で遷移金属錯体と反応させることにより、式(I)の金属錯体ポリマーが得られる。
【0015】
【化7】
(式中、E,M,L,R,m,n,w,x,y,zは、上記で定義した意味を表す)
溶媒としては、1,2−ジクロロエタン、塩化メチレン、エタノール、トルエン等を使用し得る。
反応温度は、通常20〜110℃、好ましくは70〜110℃の範囲である。
反応時間は、通常1〜24時間、好ましくは5〜10時間の範囲である。
【0016】
この反応において、反応に用いる遷移金属錯体を変えることにより、異なる遷移金属が配位された金属錯体ポリマーを得ることができ、これにより、可視光領域、近赤外領域の波長にも対応させることが可能になる。例えばルテニウム、白金を配位させた場合には、400 〜500 nm付近、オスミウムを配位させた場合には500 〜700nm 付近の波長の光に対応し得る光導電性材料を得ることができる。また、各種レーザー (半導体レーザー等) に対応し得る光導電性材料を得ることもできる。
種々の遷移金属を配位した金属錯体ポリマーの合成例を下記の反応式にまとめて示す。
【0017】
【化8】
【0018】
本発明の金属錯体ポリマーは、有機溶媒に対する溶解性に優れており、キャスティング、スピンコーティング、ディッピング等の方法により容易に製膜し得る。従って、光導電素子、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、電子写真用感光材料等の光電変換素子等として、幅広く利用され得る。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに説明する。
製造実施例:ポリ(テトラプロピルジシラニレン−2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル)のルテニウム錯体の製造
A) 1,2− ビス (2− ブロモ −5− ピリジル ) テトラプロピルジシランの合成
【0020】
【化9】
【0021】
2,5−ジブロモピリジン (12.1g)と1.7mol/lのn−ブチルリチウム溶液(30ml)を、ジエチルエーテル(150ml) 中、−78℃で反応させて、2−ブロモ−5− リチオピリジンを得た。これに、ジエチルエーテル10mlに溶解させた1,2−ジクロロ−1,1,2,2− テトラプロピルジシラン(7.24g) を加え、−78℃で反応させて、1,2−ビス (2−ブロモ−5− ピリジル) テトラプロピルジシラン(7.59g) を得た (収率58%)。B) ポリ(テトラプロピルジシラニレン−2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル)の合成
【0022】
【化10】
【0023】
Ni(PPh3)2Br(0.87g, 1.17mmol), 亜鉛粉末(1.50g, 22.9mmol) 及びEt4NI (1.53g, 5.95mmol) を二首フラスコに入れた。アルゴン下、5 mlの乾燥THF を、シリンジを介してゴム製セプタム(隔壁)を通して添加した。得られた混合物を室温で10分間攪拌した後、THF (10ml)中のA)で得られた1,2−ビス(2− ブロモ−5− ピリジル) テトラプロピルジシラン (6.40g, 11.8 mmol) の溶液をシリンジを介して添加した。得られた反応混合物を、還流下で2時間加熱し、その後濾過した。濾液をアンモニア水溶液に注いだ。有機層を抽出し、溶媒を留去した後、反応混合物を再沈殿により、純粋な標記ポリマー2.92 g (収率65%)が得られた。GPC によるMw=11000, Mn=7000, ポリスチレン標準。
該ポリマーは、一般的な溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、及びTHF に非常に良く溶けた。
【0024】
該ポリマーのNMRの結果を下記に示す。
1H NMR (CDCl3): δ0.94−1.02 (m, 20H), 1.30−1.40(m,8H), 7.73−7.76(m,2H), 8.27−8.32(m,2H), 8.53−8.65(m,2H); 13 C NMR (CDCl3): δ14.4 (m), 18.1(m), 18.7, 123.3(m), 132.9(m), 142.5(m), 154.2(m), 155.9(m); 29Si NMR : (CDCl3) δ−20.0
C)ポリ(テトラプロピルジシラニレン−2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル)のルテニウム錯体の製造
【0025】
【化11】
B)で製造されたポリ(テトラプロピルジシラニレン−2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル) 1gと、次式:
【0026】
【化12】
で表されるビス(ビピリジン)ルテニウム錯体1gを10mlの1,2−ジクロロエタンに溶解し、終夜加熱環流した。未反応物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで除去し、標記のルテニウム錯体ポリマー (1.26g)を得た(収率63%)。
【0027】
NMRの結果を下記に示す。
1H NMR (CD2Cl2): δ0.80−1.43 (m, 28H), 7.30−8.68 (m,11.6H); 13 C NMR (CD2Cl2):δ14.3 (m), 18.1(m), 120.1(m), 124.1(m), 128.1(m), 138.0(m), 143.1(m), 151.3(m), 153.8(m), 156.2(m); 29Si NMR (CD2Cl2): δ−19.9(m), −19.4 (m) 。
NMRの結果より、y:zの比が0.35:0.65であることが明らかである。
【0028】
試験例1:
製造実施例のB)で製造されたポリ(テトラプロピルジシラニレン−2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル) (ポリマー1)と、C)で製造されたルテニウム錯体ポリマー(ポリマー2)の吸収スペクトル (ジクロロメタン中)を調べた。結果を図1に示す。図中、ポリマー1のスペクトルを1で示し、ポリマー2のスペクトルを2で示した。ポリマー1及びポリマー2のいずれも、ビピリジンのπ−π* 遷移帯の吸収が300nm 付近に認められた。また、ポリマー2の460nm 付近の広い吸収は、金属から配位子への電荷移動に由来する。
【0029】
試験例2:
製造実施例1で得られた本発明の金属錯体ポリマーの耐光性を調べるために、空気中、キセノンランプで400nm以上の波長の光を24時間照射したところ、吸収スペクトルに変化は認められなかった。これより、本発明の金属錯体ポリマーが光により分解されておらず、高い耐光性を有することが明らかである。
試験例3:
製造実施例で製造されたルテニウム錯体ポリマーの光導電性を、図2に示すサンドイッチ型セルにより下記の方法により測定した。
上記で得られたルテニウム錯体ポリマーを1,2−ジクロロエタンに溶解し、透明電極としてITO膜3をコートした石英ガラス基板4上にスピンコートしてルテニウム錯体ポリマーの薄膜5を形成した。さらに、その上に上部電極6としてアルミニウムを蒸着して素子を作製した。作製した素子に直流電源を接続して、光導電性を調べた。光を照射しない場合、ルテニウム錯体ポリマーは絶縁体であった。この素子にルテニウム錯体ポリマーの吸収のある460nm付近の光を透明電極側から照射したところ、光電流が観測された。
タングステンランプを分光し、光電流強度の波長依存性を測定した。このスペクトルと、ルテニウム錯体ポリマーの吸収スペクトルとを図3のグラフに示した。このグラフより、光電流強度のスペクトルがルテニウム錯体ポリマーの吸収スペクトルと同様の形状を持ち、光電流強度が波長依存性であることが明らかである。
【0030】
【発明の効果】
本発明の金属錯体ポリマーは、可視領域、近赤外領域にも対応できる。また、有機溶媒に対する溶解性に優れており、容易に製膜され得る。さらに、本発明の金属錯体ポリマーは耐光性にも優れている。従って、光導電性材料としての性能及び適用性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造実施例で製造されたポリ(テトラプロピルジシラニレン−2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル) とルテニウム錯体ポリマーの吸収スペクトルを示すグラフ。
【図2】製造実施例で製造された金属錯体ポリマーの試験方法を示す説明図。
【図3】製造実施例で製造されたルテニウム錯体ポリマーの吸収スペクトルと光電流波長依存性スペクトルを示すグラフ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な金属錯体ポリマーに関し、より詳しくは光導電性材料として使用される金属錯体ポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光導電性材料としては、下記式
【0003】
【化2】
(式中、pは数十〜数万の整数を表す)で表されるようなπ共役高分子系の材料や、下記式
【0004】
【化3】
(式中、Eは、Si、Ge、またはSnを表し、qは数百〜数万の整数を表す)で表されるσ共役高分子系の材料が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記π共役高分子系の材料は、可視光により光導電性を示すが、効率が低いため、通常はフラーレンなどの電子受容性の化合物を添加して使用せざるを得ない。また、π共役高分子系の材料は有機溶媒に対する溶解性が悪いため、製膜法が限られているという問題があった。
一方、σ共役高分子系の材料は、ホール移動度は大きいが、可視領域に吸収がなく、紫外光にしか光導電性を示さないという問題があった。また、光に対する耐久性が低いため、実用性に乏しかった。
従って、本発明は可視光にも光導電性を示し、製膜性に優れ、且つ耐光性の高い光導電性材料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
【0007】
【化4】
【0008】
(式中、Eは、Si、Ge、またはSnを表し、
Mは、遷移金属原子を表し、
Lは、配位子を表し、
Rは有機基を表し、
mは0〜3の整数を表し、
nは1〜4の整数を表し、
xは1〜6の整数を表し、
yは10〜100の整数を表し、
zは10以上の整数であって、y:zが0.1:0.9〜0.5:0.5の範囲である金属錯体ポリマーに関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
Mで表される遷移金属原子の例としては、Ru、Os、Pt、Rh、Cr、W、Mo、Fe、Cu等が挙げられる。但し、合成の簡便さ、熱及び光耐久性、並びに耐酸化性などの観点から、Ruが好ましい。
Lで表される配位子の例としては、ビピリジン、ホスフィン、フェナントレンカルボニル等が挙げられる。
Rで表される有機基の例としては、未置換または置換された脂肪族アルキル基、未置換または置換された脂環式基、未置換または置換された芳香族基が挙げられる。未置換または置換された脂肪族アルキル基は、例えば、炭素原子数1〜10個、好ましくは1〜6個の低級アルキル基、特に好ましくは3〜4個の炭素原子を有するアルキル基ものである。その例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル、n−ヘキシルが挙げられる。芳香族基は、好ましくは6〜12個、特に6個の炭素原子を有するものである。その例として、フェニル基、ナフチル、トルイル、ペンタフルオロフェニルが挙げられる。
【0010】
mは遷移金属イオンのイオン価であり、遷移金属の種類に応じて0〜3の整数を表す。
nは遷移金属イオンに配位する配位子の数であり、遷移金属のイオン価と配位子の種類に応じて1〜4の整数である。
xは1〜6、好ましくは2〜6、特に2〜4の整数を表す。
yは10〜100の整数を表す。
zは10以上の整数であって、y:zの比に応じて変化する。また、y:zの比は、0.1:0.9〜0.5:0.5の範囲であり、好ましくは0.3:0.7〜0.4:0.6の範囲である。x及びy:zの比によりポリマー中に含まれる遷移金属イオンの割合が変化する。
本発明の金属錯体ポリマーの数平均分子量(Mn)は、約1,000 〜100,000 の範囲であり、各種溶媒に対する溶解性という観点から、好ましくは1〜2万の範囲である。
本発明の金属錯体ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、約1,000 〜100,000 の範囲であり、溶解性、製膜性という観点から、好ましくは1〜2万である。
【0011】
金属錯体ポリマーの製法
本発明の金属錯体ポリマーは、下記の方法により合成され得る。
(A) 出発物質の製造
下記の反応式に従い、出発物質(II)を製造する。
【0012】
【化5】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、E,R,及びxは上記式(I)で定義した意味を表す)
(B) 出発物質(II)を用い、触媒の存在下、脱ハロゲン化カップリング反応を行うことにより、下記式で表されるポリマーを製造する。
【0013】
【化6】
(式中、E,R,及びxは上記式(I)で定義した意味を表し、wは10〜100の整数を表す)
【0014】
触媒としては、ニッケル、パラジウムを使用し得る。
溶媒としては、THF、DMF等を使用し得る。
反応温度は、通常50〜100℃の範囲であり、溶媒としてTHFを用いる場合60〜66℃の範囲、特に66℃であり、溶媒としてDMFを用いる場合70〜90℃の範囲、特に80℃である。
反応時間は、通常2〜6時間、好ましくは2〜3時間時間である。
(C) (B)で得られたポリマーを、適当な溶媒中、還流下で遷移金属錯体と反応させることにより、式(I)の金属錯体ポリマーが得られる。
【0015】
【化7】
(式中、E,M,L,R,m,n,w,x,y,zは、上記で定義した意味を表す)
溶媒としては、1,2−ジクロロエタン、塩化メチレン、エタノール、トルエン等を使用し得る。
反応温度は、通常20〜110℃、好ましくは70〜110℃の範囲である。
反応時間は、通常1〜24時間、好ましくは5〜10時間の範囲である。
【0016】
この反応において、反応に用いる遷移金属錯体を変えることにより、異なる遷移金属が配位された金属錯体ポリマーを得ることができ、これにより、可視光領域、近赤外領域の波長にも対応させることが可能になる。例えばルテニウム、白金を配位させた場合には、400 〜500 nm付近、オスミウムを配位させた場合には500 〜700nm 付近の波長の光に対応し得る光導電性材料を得ることができる。また、各種レーザー (半導体レーザー等) に対応し得る光導電性材料を得ることもできる。
種々の遷移金属を配位した金属錯体ポリマーの合成例を下記の反応式にまとめて示す。
【0017】
【化8】
【0018】
本発明の金属錯体ポリマーは、有機溶媒に対する溶解性に優れており、キャスティング、スピンコーティング、ディッピング等の方法により容易に製膜し得る。従って、光導電素子、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、電子写真用感光材料等の光電変換素子等として、幅広く利用され得る。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに説明する。
製造実施例:ポリ(テトラプロピルジシラニレン−2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル)のルテニウム錯体の製造
A) 1,2− ビス (2− ブロモ −5− ピリジル ) テトラプロピルジシランの合成
【0020】
【化9】
【0021】
2,5−ジブロモピリジン (12.1g)と1.7mol/lのn−ブチルリチウム溶液(30ml)を、ジエチルエーテル(150ml) 中、−78℃で反応させて、2−ブロモ−5− リチオピリジンを得た。これに、ジエチルエーテル10mlに溶解させた1,2−ジクロロ−1,1,2,2− テトラプロピルジシラン(7.24g) を加え、−78℃で反応させて、1,2−ビス (2−ブロモ−5− ピリジル) テトラプロピルジシラン(7.59g) を得た (収率58%)。B) ポリ(テトラプロピルジシラニレン−2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル)の合成
【0022】
【化10】
【0023】
Ni(PPh3)2Br(0.87g, 1.17mmol), 亜鉛粉末(1.50g, 22.9mmol) 及びEt4NI (1.53g, 5.95mmol) を二首フラスコに入れた。アルゴン下、5 mlの乾燥THF を、シリンジを介してゴム製セプタム(隔壁)を通して添加した。得られた混合物を室温で10分間攪拌した後、THF (10ml)中のA)で得られた1,2−ビス(2− ブロモ−5− ピリジル) テトラプロピルジシラン (6.40g, 11.8 mmol) の溶液をシリンジを介して添加した。得られた反応混合物を、還流下で2時間加熱し、その後濾過した。濾液をアンモニア水溶液に注いだ。有機層を抽出し、溶媒を留去した後、反応混合物を再沈殿により、純粋な標記ポリマー2.92 g (収率65%)が得られた。GPC によるMw=11000, Mn=7000, ポリスチレン標準。
該ポリマーは、一般的な溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、及びTHF に非常に良く溶けた。
【0024】
該ポリマーのNMRの結果を下記に示す。
1H NMR (CDCl3): δ0.94−1.02 (m, 20H), 1.30−1.40(m,8H), 7.73−7.76(m,2H), 8.27−8.32(m,2H), 8.53−8.65(m,2H); 13 C NMR (CDCl3): δ14.4 (m), 18.1(m), 18.7, 123.3(m), 132.9(m), 142.5(m), 154.2(m), 155.9(m); 29Si NMR : (CDCl3) δ−20.0
C)ポリ(テトラプロピルジシラニレン−2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル)のルテニウム錯体の製造
【0025】
【化11】
B)で製造されたポリ(テトラプロピルジシラニレン−2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル) 1gと、次式:
【0026】
【化12】
で表されるビス(ビピリジン)ルテニウム錯体1gを10mlの1,2−ジクロロエタンに溶解し、終夜加熱環流した。未反応物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで除去し、標記のルテニウム錯体ポリマー (1.26g)を得た(収率63%)。
【0027】
NMRの結果を下記に示す。
1H NMR (CD2Cl2): δ0.80−1.43 (m, 28H), 7.30−8.68 (m,11.6H); 13 C NMR (CD2Cl2):δ14.3 (m), 18.1(m), 120.1(m), 124.1(m), 128.1(m), 138.0(m), 143.1(m), 151.3(m), 153.8(m), 156.2(m); 29Si NMR (CD2Cl2): δ−19.9(m), −19.4 (m) 。
NMRの結果より、y:zの比が0.35:0.65であることが明らかである。
【0028】
試験例1:
製造実施例のB)で製造されたポリ(テトラプロピルジシラニレン−2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル) (ポリマー1)と、C)で製造されたルテニウム錯体ポリマー(ポリマー2)の吸収スペクトル (ジクロロメタン中)を調べた。結果を図1に示す。図中、ポリマー1のスペクトルを1で示し、ポリマー2のスペクトルを2で示した。ポリマー1及びポリマー2のいずれも、ビピリジンのπ−π* 遷移帯の吸収が300nm 付近に認められた。また、ポリマー2の460nm 付近の広い吸収は、金属から配位子への電荷移動に由来する。
【0029】
試験例2:
製造実施例1で得られた本発明の金属錯体ポリマーの耐光性を調べるために、空気中、キセノンランプで400nm以上の波長の光を24時間照射したところ、吸収スペクトルに変化は認められなかった。これより、本発明の金属錯体ポリマーが光により分解されておらず、高い耐光性を有することが明らかである。
試験例3:
製造実施例で製造されたルテニウム錯体ポリマーの光導電性を、図2に示すサンドイッチ型セルにより下記の方法により測定した。
上記で得られたルテニウム錯体ポリマーを1,2−ジクロロエタンに溶解し、透明電極としてITO膜3をコートした石英ガラス基板4上にスピンコートしてルテニウム錯体ポリマーの薄膜5を形成した。さらに、その上に上部電極6としてアルミニウムを蒸着して素子を作製した。作製した素子に直流電源を接続して、光導電性を調べた。光を照射しない場合、ルテニウム錯体ポリマーは絶縁体であった。この素子にルテニウム錯体ポリマーの吸収のある460nm付近の光を透明電極側から照射したところ、光電流が観測された。
タングステンランプを分光し、光電流強度の波長依存性を測定した。このスペクトルと、ルテニウム錯体ポリマーの吸収スペクトルとを図3のグラフに示した。このグラフより、光電流強度のスペクトルがルテニウム錯体ポリマーの吸収スペクトルと同様の形状を持ち、光電流強度が波長依存性であることが明らかである。
【0030】
【発明の効果】
本発明の金属錯体ポリマーは、可視領域、近赤外領域にも対応できる。また、有機溶媒に対する溶解性に優れており、容易に製膜され得る。さらに、本発明の金属錯体ポリマーは耐光性にも優れている。従って、光導電性材料としての性能及び適用性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造実施例で製造されたポリ(テトラプロピルジシラニレン−2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル) とルテニウム錯体ポリマーの吸収スペクトルを示すグラフ。
【図2】製造実施例で製造された金属錯体ポリマーの試験方法を示す説明図。
【図3】製造実施例で製造されたルテニウム錯体ポリマーの吸収スペクトルと光電流波長依存性スペクトルを示すグラフ。
Claims (5)
- 式(I)中、EがSiである請求項1記載の金属錯体ポリマー。
- 式(I)中、MがRuである請求項1または2記載の金属錯体ポリマー。
- 式(I)中、Lが2,2’− ビピリジンである請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属錯体ポリマー。
- 式(I)中、Rが低級アルキル基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属錯体ポリマー。
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