JP3552009B2 - 桟瓦 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、桟瓦に関する。
さらに詳しくいえば、桟瓦1枚当たりの有効活用面積を広くし、併せて雨水の漏水の抑制を可能とする桟瓦に関する。
【0002】
【従来の技術】
屋根に使用される数多い種類の瓦の中でも桟瓦はとりわけ使用数が多い。
したがって、瓦屋根の総重量は桟瓦により大きく影響を受けることはいうまでもない。
【0003】
瓦屋根の機能を損なうことなく、瓦屋根の総重量を軽減することは予てこの業界に要請されているものの、伝統的な桟瓦については未だ問題が少なくない。
【0004】
また、頭側の切り込みと尻側の切り込みの嵌合部からとりわけ風雨の激しい場合に雨水が浸入し、桟瓦の下方に敷設された野地材などを損傷させることが少なくないという問題があった。
【0005】
この種の一般的な従来例を図17ないし図20を参照して具体的に説明する。和形桟瓦W(日本工業規格A5208〔平成8年11月改正前〕では「和形桟がわら」と称されているが、この明細書では以下単に「桟瓦」と称し、断りのない限り単に符号を「W」と表示する)は、図18に示されるように山と谷が設けられ、断面が略波形状に形成されている。
【0006】
そして、桟瓦Wは一般的に、山側の端寄りが桟、谷側の端寄りが衿または差込み、また屋根に葺いた際の軒側に位置する端寄りが頭、棟側の端寄りが尻と称されているから、以下これらの用語に基づいて従来例およびこの発明の桟瓦Wを説明する。
また、この明細書において、用語「頭縁」、「尻縁」、「桟縁」および「衿縁」とは、それぞれの端を観念するものであり、断りのない限り前記した観念で使用する。
【0007】
桟瓦Wを屋根に葺く際に、隣接する瓦Wを相互に連結するため、頭と衿によって形成される隅部と尻と桟とによって形成される隅部にそれぞれ方形状の頭側の切り込みXと尻側の切り込みYが形成されることは知られるとおりである(図17および図18を参照)。
【0008】
そして、頭側の切り込みXが設けられることにより、頭側の切り込みXの内側には、桟瓦Wの長さ方向(頭側から尻側に至る方向をいう)に縦辺Xvが、幅方向(桟側から衿側に至る方向をいう)に幅辺Xhが形成される(図18を参照)。
また、尻側の切り込みYの内側には、桟瓦Wの長さ方向に縦辺Yvが、幅方向に幅片Yhが形成される(図18を参照)。
【0009】
そして、これらの桟瓦Wは図19に示されるように、少なくとも4枚が葺かれることにより、最小1単位の瓦屋根が構成されることも知られるとおりである。
【0010】
そこで、4枚1単位とする桟瓦Wによる屋根葺きについて説明すると、第1の桟瓦Waの衿側に、第2の桟瓦Wbの桟側が重ねられ、第1の桟瓦Waの尻側に第3の桟瓦Wcの頭側が重ねられるとともに、第2の桟瓦Wbの尻側の切り込みYbと第3の桟瓦Wcの頭側の切り込みXcが両切り込みYb、Xc間に間隙を生ずることのないように互いに嵌合され、第4の桟瓦Wdの桟側が第3の桟瓦Wcの衿側に重ねられるとともに、第4の桟瓦Wdの頭側が第2の桟瓦Wbの尻側に重ねられることにより伝統的な屋根葺きが行われている(図19を参照)。
【0011】
かくして、第1の桟瓦Waの衿側と第2の桟瓦Wbの桟側の重なりにより、桟と衿とによる重ね部Smが形成される。
この重ね部Smの幅は前記した幅辺Xhまたは幅辺Yhに相当し、また重ね部Smの長さは桟瓦Wの長さから前記した縦辺Xv、Yvを差し引いた長さに相当し、第3の桟瓦Wcと第4の桟瓦Wdとの桟と衿によっても同じように重ね部Smが形成される(図19を参照)。
【0012】
他方、第1の桟瓦Waの尻側と第3の桟瓦Wcの頭側の重なりにより、頭と尻による重ね部Snが形成される。
この重ね部Snの幅は桟瓦Wの幅と同一であり、また重ね部Snの長さは両者の切り込みXc、Ybが互いに噛み合うことにより形成されるから、縦辺XvとYvを加算した長さに相当し、この重ね部Snの面積は、桟瓦Wの幅と縦辺XvとYvを加算した長さから算出される(図19を参照)。
【0013】
この場合、第3の桟瓦Wcの頭側の切り込みXcと第2の桟瓦Wbの尻側の切り込みYbは互いに対応するように形成されているから、両者の切り込みXc、Ybが互いに嵌合されることにより両桟瓦Wb、Wcを妄動させないようにしていることは知られるとおりである。
【0014】
この点についてさらに詳しく説明すると、第3の桟瓦Wcの頭側の切り込みXcの幅辺Xhと第2の桟瓦Wbの尻側の切り込みYbの幅片Yhが互いに当接される。
【0015】
したがって、第3の桟瓦Wcの頭縁は、第2の桟瓦Wbの尻側の切り込みYbの位置よりも第1の桟瓦Waの頭側に臨んでいる。
そして、第3の桟瓦Wcの頭縁と第2の桟瓦Wbの尻側の切り込みYbの幅辺Yhとの距離は第3の桟瓦Wcの頭側の切り込みXcの縦辺Xvにほぼ等しく設定される。
【0016】
一方、第2の桟瓦Wbの尻縁は、第3の桟瓦Wcの頭側の切り込みXcの位置よりも第4の桟瓦Wdの尻側に臨んでいる。
そして、第2の桟瓦Wbの尻縁と第3の桟瓦Wcの頭側の切り込みXcの幅辺Xhとの距離は第2の桟瓦Wbの尻側の切り込みYbの縦辺Yvにほぼ等しく設定される。
【0017】
このようにして屋根葺きされた4枚の桟瓦Wa、Wb、Wc、Wdが、瓦屋根を構成する最小単位となり、この最小単位の瓦屋根が連続的に設けられることにより家屋などの瓦屋根が得られる。
【0018】
したがって、第1の桟瓦Waの尻側に第3の桟瓦Wcの頭側が重ねられるとともに、第2の桟瓦Wbの尻側の切り込みYbと第3の桟瓦Wcの頭側の切り込みXcが噛み合うように嵌合され、また、第2の桟瓦Wbの衿側に第4の桟瓦Wdの桟側を重ねることにより、桟瓦Wの妄動を抑制でき、切り込みYb、Xcに間隙を生ずることが少ないので雨水の浸入を抑制できる点で所期の目的を達成できた。
【0019】
しかし、これらの両重ね部Sm、Snの面積が小さいほど桟瓦W1枚当たりの有効活用面積の増加を図ることができるにもかかわらず、2種類の重ね部Sm、Snにより、重ねられる面積の占める割合が比較的大きくなることは止むを得ないものとされ、桟瓦W1枚当たりの有効活用面積に制約を受けているのが実情である。
【0020】
その上、頭側の切り込みXと尻側の切り込みYの嵌合部上には、第4の桟瓦Wdが重ねられ、かつ第1の桟瓦Waの尻と衿の隅部が嵌合部の下方に存在しているものの、切り込みX、Yを形成する幅辺Xh、Yhおよび縦辺Xv、Yvが互いに当接されるに止まるから、これらの当接部によって生ずる間隙は一般的に小さいとはいえ依然として残存することを回避できず、風雨が激しい場合には、とりわけ、その残存する間隙を通じて風雨が第1の桟瓦Waの尻と衿の隅部寄りを越えて第3の桟瓦Wcの下方に敷設された野地材N側へ浸入するおそれが少なくなかった(図20を参照)。
【0021】
上記の問題点についてさらに言及すると、第1の桟瓦Waと第2の桟瓦Wbの頭側を整然と統一させ、同様に第3の桟瓦Wcと第4の桟瓦Wdの頭側を揃えることが要請されるが、この場合、第3の桟瓦Wcの頭側の切り込みXcと第2の桟瓦Wbの尻側の切り込みYbを嵌合させ、第2の桟瓦Wbの尻側に第4の桟瓦Wdの頭側を重ねるとともに第3の桟瓦Wcの衿側に第4の桟瓦Wbの桟側を重ねなければならない。
【0022】
したがって、必然的に第1の桟瓦Waと第3の桟瓦Wcの尻と頭による重ね部Snの長さ(頭側から尻側に向かう方向の長さ)は、前記したとおり第3の桟瓦Wcの頭側の切り込みXcの縦辺Xvと第2の桟瓦Wbの尻側の切り込みYbの縦辺Yvを加算した長さにほぼ等しくなる。
【0023】
このことは、桟瓦Wの全面積に対して頭と尻による重ね部Snの占める面積が増大することになり、桟と衿による重ね部Smの面積と相待って単位面積当たりに必要な桟瓦Wの枚数(たとえば3.3平方メ−トル当たりの葺き枚数)が増加する結果、家屋に対する荷重が大きくなり、瓦屋根の荷重に抗する家屋の構造が必要になるという問題を生じていた。
【0024】
他の例として実公平7−14519号公報の第7図には、頭側の切り込みの裏面寄りに肉薄の略三角形の段落部8が設けられ、他方、尻側の切り込みの表面寄りに前記した段落部8に対応した薄肉の略三角部分5が形成された桟瓦が記載され、隣接する桟瓦の前記した三角部分5の裏面に段落部8が差し込まれることにより、切り込みの嵌合部分における雨水の浸入の抑制を図るようにしている。
【0025】
しかし、この例では、切り込みの嵌合部分における雨水の浸入の抑制を図ることができるとしても、屋根葺きにおける桟瓦の有効活用面積の増加を図り、もって瓦屋根の重量軽減を図ることについては一切言及されていない。
【0026】
そこで、前記した問題点の解決のため、本願出願人は、先に平成8年特許願第181168号の特許出願をしたので、その発明を開示すると、頭と衿によって形成される隅部に略方形の差込片が裏面寄りに設けられ、尻と桟によって形成される隅部に前記の差込片に対応した被覆片が表面寄りに設けられてなる桟瓦である。
【0027】
そして、その桟瓦が少なくとも4枚設けられ、第1の桟瓦の衿側に第2の桟瓦の桟側が重ねられ、第1の桟瓦の尻側に第3の桟瓦の頭側が重ねられるとともに、第2の桟瓦の被覆片の下方に第3の桟瓦の差込片が差し込まれ、第2の桟瓦の尻側に第4の桟瓦の頭側が重ねられ、第3の桟瓦の衿側に第4の桟瓦の桟側が重ねられてなることにより、頭と尻とによる重ね部における頭側から尻側に至る面積を従来に比較して、差込片または被覆片の長さに等しい分の長さと桟瓦の幅に乗じて算出される面積分だけ少なくでき、桟瓦の長さ方向における有効活用面積の増加を図ることにより、瓦屋根の単位面積に必要な桟瓦数の減少化を図ることができるようにしたから、よって瓦屋根の軽量化に寄与するなどの構成および作用効果が記載されている。
【0028】
したがって、従来の伝統的な桟瓦Wや実公平7−14519号公報記載の考案による桟瓦に比較して1枚当たりの桟瓦の有効活用面積の増加を可能にした点や切り込みによる嵌合部からの雨水の浸入を抑制できる点で評価できる。
【0029】
しかし、頭側の切り込みにその全面積を埋めるようにした略方形の肉薄の差込片が、また、尻側の切り込みにその全面積を埋めるようにした略方形の肉薄の被覆片が設けられ、差込片と被覆片の外側端が切り込みの最大面積を占めて形成されているため(略方形である)、これらが肉薄に形成されていることと相俟って、この桟瓦の生産工程や流通過程において、差込片と被覆片の外側縁がとりわけ損傷を受け易いという問題点があった。
成形から焼成に至る間の工程において搬送による物理的な損傷を受けるほか、とりわけ、乾燥工程や焼成工程の熱的操作を要因として差込片と被覆片の外側端が変形するおそれがあった。
【0030】
更に、差込片と桟瓦本体との境界を形成する内縁や被覆片と桟瓦本体との境界を形成する内縁がそれぞれ直角に形成されているため、内縁の直角部分から乾燥工程や焼成工程の熱的操作を要因とする亀裂が発生するおそれがあった。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
この発明が解決しようとする課題は、従来の桟瓦にあっては、屋根葺きにおいて桟瓦の1枚当たりの有効活用面積に制約を受け、その活用面積が減少する結果、瓦屋根の重量増加を回避できないほか、差込片や被覆片が生産工程において損傷を受けることや変形が発生するおそれがある点などである。
この発明の目的は、桟瓦の屋根葺きにおける有効活用面積を図り、瓦屋根の重量軽減に寄与することと併せて生産工程における差込片と被覆片の損傷や変形を抑制することにある。
【0032】
さらにこの発明の他の目的は、差込片と桟瓦本体との境界である内縁や被覆片と桟瓦本体との境界である内縁に生産工程時に発生し勝ちな亀裂を抑制することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段及び作用効果】
請求項1記載の発明の桟瓦は、桟瓦本体に頭、尻、桟および衿が備えられるとともに、頭側の切り込みおよび尻側の切り込みを有する桟瓦において、頭側の切り込みに肉薄の差込片が桟瓦本体の裏面寄りに設けられ、該差込片の外縁が頭側の切り込み内において衿側寄りの頭縁を延長させた頭側外縁部と、頭側寄りの衿縁を延長させた衿側外縁部と、前記した頭側外縁部と衿側外縁部との間の突き合わせ縁部とからなり、他方、尻側の切り込みに肉薄の被覆片が桟瓦本体の表面寄りに設けられ、該被覆片の外縁が尻側の切り込み内において尻側寄りの桟縁を延長させた桟側外縁部と、桟側寄りの尻縁を延長させた尻側外縁部と、前記した桟側外縁部と尻側外縁部との間の突き合わせ縁部とからなることを特徴とするものである。
【0034】
請求項2記載の発明の桟瓦は、請求項1の桟瓦において、
差込片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が被覆片の外縁にほぼ対応して設けられるとともに、被覆片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が差込片の外縁にほぼ対応して設けられてなることを特徴とするものである。
【0035】
請求項3記載の発明の桟瓦は、桟瓦本体に頭、尻、桟および衿が備えられるとともに、頭側の切り込みおよび尻側の切り込みを有する桟瓦において、
頭側の切り込みに肉薄の差込片が桟瓦本体の裏面寄りに設けられ、
該差込片の外縁が頭側の切り込み内において頭側寄りの衿縁を延長させた衿側外縁部と、衿側外縁部と衿側寄りの頭縁部との間の突き合わせ縁部とからなり、
他方、尻側の切り込みに肉薄の被覆片が桟瓦本体の表面寄りに設けられ、
該被覆片の外縁が尻側の切り込み内において尻側寄りの桟縁を延長させた桟側外縁部と、桟側寄りの尻縁を延長させた尻側外縁部と、前記した桟側外縁部と尻側外縁部との間の突き合わせ縁部とからなることを特徴とするものである。
【0036】
請求項4記載の発明の桟瓦は、請求項3の桟瓦において、
差込片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が被覆片の外縁にほぼ対応して設けられるとともに、被覆片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が差込片の外縁にほぼ対応して設けられてなることを特徴とするものである。
【0037】
請求項5記載の発明の桟瓦は、桟瓦本体に頭、尻、桟および衿が備えられるとともに、頭側の切り込みおよび尻側の切り込みを有する桟瓦において、
頭側の切り込みに肉薄の差込片が桟瓦本体の裏面寄りに設けられ、
該差込片の外縁が頭側の切り込み内において頭側寄りの衿縁を延長させた衿側外縁部と、衿側外縁部と衿側寄りの頭縁部との間の突き合わせ縁部とからなり、
他方、尻側の切り込みに肉薄の被覆片が桟瓦本体の表面寄りに設けられ、
該被覆片の外縁が尻側の切り込み内において桟側寄りの尻縁を延長させた尻側外縁部と、尻側外縁部と尻側寄りの桟縁部との間の突き合わせ縁部とからなることを特徴とするものである。
【0038】
請求項6記載の発明の桟瓦は、請求項5の桟瓦において、
差込片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が被覆片の外縁にほぼ対応して設けられるとともに、被覆片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が差込片の外縁にほぼ対応して設けられてなることを特徴とするものである。
【0039】
請求項7記載の発明の桟瓦は、桟瓦本体に頭、尻、桟および衿が備えられるとともに、頭側の切り込みおよび尻側の切り込みを有する桟瓦において、
頭側の切り込みに肉薄の差込片が桟瓦本体の裏面寄りに設けられ、
該差込片の外縁が頭側の切り込み内において衿側寄りの頭縁を延長させた頭側外縁部と、頭側寄りの衿縁を延長させた衿側外縁部と、前記した頭側外縁部と衿側外縁部との間の突き合わせ縁部とからなり、
他方、尻側の切り込みに肉薄の被覆片が桟瓦本体の表面寄りに設けられ、
該被覆片の外縁が尻側の切り込み内において桟側寄りの尻縁を延長させた尻側外縁部と、尻側外縁部と尻側寄りの桟縁部との間の突き合わせ縁部とからなること特徴とするものである。
【0040】
請求項8記載の発明の桟瓦は、請求項7の桟瓦において、
差込片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が被覆片の外縁にほぼ対応して設けられるとともに、被覆片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が差込片の外縁にほぼ対応して設けられてなることを特徴とするものである。
【0041】
ここで、差込片の外縁が頭側の切り込み内において頭側外縁部と、衿側外縁部と、頭側外縁部と衿側外縁部との間の突き合わせ縁部とからなるとは、先願(平成8年特許願第181168号)の発明では、差込片の外縁が頭側外縁部と衿側外縁部の延長線とこれらの延長線の交点により切り込みの全面積を占めて略方形を呈していたものを、本願発明はこれらの両延長線の外側端を結ぶようにして形成され、少なくとも前記した交点のない構成をいう。
【0042】
また、被覆片の外縁が尻側外縁部と、桟側外縁部と、尻側の切り込み内であって、尻側外縁部と桟側外縁部との間の突き合わせ縁部とからなるとは、先願(平成8年特許願第181168号)の発明では、被覆片の外縁が頭側外縁部と衿側外縁部との延長線のこれらの延長線の交点により切り込みの全面積を占めて略方形を呈していたものを、本願発明はこれらの両延長線の外側端を結ぶようにして形成され、少なくとも前記した交点のない構成をいう。
【0043】
ここで、差込片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が被覆片の外縁にほぼ対応し、被覆片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が差込片の外縁にほぼ対応して設けられてなるとは、桟瓦の屋根葺き時に桟瓦の尻側の切り込み内に設けられた被覆片の下方へ別の桟瓦の差込片を差し込んだ際に、前記した差込片の内縁と被覆片の外縁が互いに間隙を少なくして向き合うことにより、これらの桟瓦がこれらの差込片と被覆片により互いに妄動することなく、先願の切り込みの内側には直角部分が残存していたものをこの発明では、直角部分をなくした内縁を形成することにより、桟瓦本体に向けて発生し勝ちな亀裂を抑制できるようにしてなるものである。
【0044】
この発明の請求項1記載の桟瓦は、上記のように構成されているから、4枚の桟瓦を最少単位の瓦屋根の構成としたとき、第1の桟瓦の衿側に第2の桟瓦の桟側を重ね、第3の桟瓦の頭側を第1の桟瓦の尻側に重ねるとともに、第2の桟瓦の被覆片の下方に第3の桟瓦の差込片を差し込み、第2の桟瓦の尻側に第4の桟瓦の頭側を重ね、第3の桟瓦の衿側に第4の桟瓦の桟側を重ねることにより、桟と衿によって形成される重ね部の面積については従来例と変化しない。
【0045】
しかし、この発明では、頭側の差込片を尻側の被覆片の下方へ単に差し込むことにより重ねられ、従来のように両切り込みを噛み合うように嵌合させることがないから、桟瓦の頭と尻によって形成された重ね部の面積を従来例に比較して半減できる(図11を参照)。
【0046】
よって、桟瓦の長さ方向に活用できる面積の増加に寄与できる。
したがって、瓦屋根の単位面積に必要な桟瓦数の減少化を図ることができ、桟瓦の使用数の軽減化を図ることができることのほか、桟瓦の生産工程において差込片や被覆片の外縁に、成形から焼成に至る搬送中に発生し勝ちな物理的な損傷や、乾燥工程や焼成工程の熱的操作を要因とする変形を抑制することができる。
【0047】
この発明の請求項2記載の桟瓦は、前記のように構成されているから、請求項1記載の桟瓦の奏する作用効果のほかに、差込片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が被覆片の外縁にほぼ対応して設けられるとともに、被覆片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が差込片の外縁にほぼ対応して設けられてなるから、桟瓦の屋根葺きに隣接する桟瓦の尻側の被覆片の下方へ別の桟瓦の差込片を差し込んだ際に、これらの差込片と被覆片により桟瓦の妄動を抑制でき安定性を図ることができる。
【0048】
また、差込片と被覆片の内縁はそれぞれの外縁にほぼ対応して設けられることにより、内縁に直角部分が存在しないので桟瓦の生産工程における乾燥や焼成による内縁の直角部分からの亀裂を生じないようにできる。
【0049】
この発明の請求項3記載の桟瓦は、前記のように構成されているから、請求項1記載の桟瓦の奏する作用効果のほかに、差込片の外縁が衿側外縁部と衿側寄りの頭縁部との間の突き合わせ縁部とからなり、頭側外縁部がないので差込片の頭縁寄りが、成形から焼成に至る搬送中に発生し勝ちな物理的な損傷や、乾燥工程や焼成工程の熱的操作を要因とする変形を一層抑制することができる。
【0050】
この発明の請求項4記載の桟瓦は、前記のように構成されているから、請求項1および2記載の桟瓦の奏する作用効果のほかに、請求項3記載のように、頭側外縁部がないので差込片の頭縁寄りが、成形から焼成に至る搬送中に発生し勝ちな物理的な損傷や、乾燥工程や焼成工程の熱的操作を要因とする変形を一層抑制することができる。
【0051】
この発明の請求項5記載の桟瓦は、前記のように構成されているから、請求項1および3記載の桟瓦の奏する作用効果のほか、被覆片の外縁が尻側外縁部と尻側寄りの桟縁部との間の突き合わせ縁部とからなり、桟側外縁部がないので被覆片の桟縁寄りが、成形から焼成に至る搬送中に発生し勝ちな物理的な損傷や、乾燥工程や焼成工程の熱的操作を要因とする変形を一層抑制することができる。
【0052】
この発明の請求項6記載の桟瓦は、前記のように構成されているから、請求項1、2、3および4記載の桟瓦の奏する作用効果のほか、請求項5記載のように、桟側外縁部がないので被覆片の桟縁寄りが、成形から焼成に至る搬送中に発生し勝ちな物理的な損傷や、乾燥工程や焼成工程の熱的操作を要因とする変形を一層抑制することができる。
【0053】
この発明の請求項7記載の桟瓦は、前記のように構成されているから、請求項1記載の桟瓦の奏する作用効果のほか、請求項5、6記載のように、桟側外縁部がないので被覆片の桟縁寄りが、成形から焼成に至る搬送中に発生し勝ちな物理的な損傷や、乾燥工程や焼成工程の熱的操作を要因とする変形を一層抑制することができる。
【0054】
この発明の請求項8記載の桟瓦は、前記のように構成されているから、請求項1および2記載の桟瓦の奏する作用効果のほか、請求項5、6および7記載のように、桟側外縁部がないので被覆片の桟縁寄りが、成形から焼成に至る搬送中に発生し勝ちな物理的な損傷や、乾燥工程や焼成工程の熱的操作を要因とする変形を一層抑制することができる。
【0055】
前記した請求項1ないし8記載の発明の構成の概略を表したものが次の「表1」である。
【0056】
【表1】
【0057】
「表1」に示した発明の構成、差込片の外縁、被覆片の外縁および内縁の特定を表した符号の説明は、次のとおりである。
A 切り込みのある桟瓦の基本要素(30、X、Y)
B 差込片(28)
C 差込片の外縁(32)
頭側外縁部(32a)
衿側外縁部(32b)
突き合わせ縁部(32c)
D 被覆片(40)
E 被覆片の外縁(42)
尻側外縁部(42a)
桟側外縁部(42b)
突き合わせ縁部(42c)
F 桟瓦
G 差込片の外縁(32)
衿側外縁部(32b)
突き合わせ縁部(32c)
I 被覆片の外縁(42)
尻側外縁部(42a)
突き合わせ縁部(42c)
H 差込片と被覆片の内縁(44、46)
【0058】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態に係る桟瓦の組み合わせ構造を図面を参照して説明する。
図1は発明の実施の形態その1の概略を示す桟瓦の頭側の差込片と尻側の被覆片の要部拡大平面図、図2はその2の同要部拡大平面図、図3はその3の同要部拡大平面図、図4はその4の同要部拡大平面図、図5はその5の同要部拡大平面図、図6はその6の同要部拡大平面図、図7はその7の同要部拡大平面図、図8はその8の同要部拡大平面図、図9は実施例に係る桟瓦の表面斜視図、図10はその裏面斜視図、図11は4枚の桟瓦による瓦屋根の組み合わせ構造を示す平面図、図12は図9の差込片付近の要部拡大平面図、図13は図10の被覆片付近の要部拡大平面図、図14は図11における矢印P−P線の縦断面図、図15は図11における矢印Q−Q線の縦断面図、図16は表2における実施例の桟瓦の各寸法を示す参考図、図17は表2における従来品の桟瓦の各寸法を示す参考図、図18は従来例の桟瓦の表面斜視図、図19は従来例の桟瓦4枚による瓦屋根の組み合わせ構造を示す平面図、図20は図19における矢印V−V線の縦断面図である。
【0059】
図1ないし図8を参照して、この発明の実施の形態の8種類を説明する。
その1は、図示を省略してあるが、少なくとも桟瓦本体に頭、尻、桟および衿が備えられるとともに、頭側の切り込みおよび尻側の切り込みを有する桟瓦である。
【0060】
これらの構成は、以下に説明するこの発明の8種類の実施の形態において、共通する構成である。
また、以下の8種類の発明の実施の形態や実施例について言及しない構成は、断りのない限り共通する構成であり、その説明を援用する。
【0061】
頭側の切り込みに肉薄の差込片28が桟瓦本体の裏面寄りに設けられている。差込片28の外縁32が頭側の切り込み内において衿側寄りの頭縁を延長させた頭側外縁部32aと、頭側寄りの衿縁を延長させた衿側外縁部32bと、前記した頭側外縁部32aと衿側外縁部32bとの間の突き合わせ縁部32cとから構成されている。
【0062】
したがって、前記した先願の発明と比較してこの実施の形態の差込片28の外縁32は、頭側外縁部32aと衿側外縁部32bとの間の突き合わせ縁部32cとから構成され、交点のないものである。
【0063】
他方、尻側の切り込みに肉薄の被覆片40が桟瓦本体の表面寄りに設けられている。
被覆片40の外縁42が尻側の切り込みY内において桟側寄りの尻縁を延長させた尻側外縁部42aと、尻側寄りの桟縁を延長させた桟側外縁部42bと前記した尻側外縁部42aと桟側外縁部42bとの間の突き合わせ縁部42cとから構成されている。
したがって、前記した先願の発明と比較してこの実施の形態の被覆片40の外縁42は、前記した桟側外縁部42bと尻側外縁部32aとの間の突き合わせ縁部42cとから構成され、交点のないものである(図1を参照)。
【0064】
その2は、その1の構成と共通の構成を有するほかに、差込片28と桟瓦本体の境界を形成する内縁44が被覆片40の外縁42にほぼ対応して設けられるとともに、被覆片40と桟瓦本体の境界を形成する内縁46が差込片28の外縁32にほぼ対応して設けられてなるものである(図2を参照)。
【0065】
その3は、差込片28の外縁32が頭側の切り込み内において頭側寄りの衿縁を延長させた衿側外縁部32bと、その衿側外縁部32bと衿側寄りの頭縁部32dとの間の突き合わせ縁部32cとからなるものである。
他方、被覆片40の外縁42が尻側の切り込み内において尻側寄りの桟縁を延長させた桟側外縁部42bと、桟側寄りの尻縁を延長させた尻側外縁部42aと、前記した桟側外縁部42bと尻側外縁部42aとの間の突き合わせ縁部42cとからなるものである(図3を参照)。
【0066】
その4は、その3の構成と共通の構成を有するほかに、差込片28と桟瓦本体の境界を形成する内縁44が被覆片40の外縁42にほぼ対応して設けられるとともに、被覆片40と桟瓦本体の境界を形成する内縁46が差込片28の外縁32にほぼ対応して設けられてなるものである(図4を参照)。
【0067】
その5は、差込片28の外縁32が頭側の切り込み内において頭側寄りの衿縁を延長させた衿側外縁部32bと、その衿側外縁部32bと衿側寄りの頭縁部32dとの間の突き合わせ縁部32cとからなるものである。
他方、被覆片40の外縁42が尻側の切り込み内において桟側寄りの尻縁を延長させた尻側外縁部42aと、その尻側外縁部42aと尻側寄りの桟縁部42dとの間の突き合わせ縁部42cとからなるものである(図5を参照)。
【0068】
その6は、その5の構成と共通の構成を有するほかに、差込片28と桟瓦本体の境界を形成する内縁44が被覆片40の外縁42にほぼ対応して設けられるとともに、被覆片40と桟瓦本体の境界を形成する内縁46が差込片28の外縁32にほぼ対応して設けられてなるものである(図6を参照)。
【0069】
その7は、差込片28の外縁32が頭側の切り込み内において衿側寄りの頭縁を延長させた頭側外縁部32aと、頭側寄りの衿縁を延長させた衿側外縁部32bと、前記した頭側外縁部32aと衿側外縁部32bとの間の突き合わせ縁部32cとからなるものである。
他方、被覆片40の外縁42が尻側の切り込み内において桟側寄りの尻縁を延長させた尻側外縁部42aと、その尻側外縁部42aと尻側寄りの桟縁部42dとの間の突き合わせ縁部42cとからなるものである(図7を参照)。
【0070】
その8は、その7の構成と共通の構成を有するほかに、差込片28と桟瓦本体の境界を形成する内縁44が被覆片40の外縁42にほぼ対応して設けられるとともに、被覆片40と桟瓦本体の境界を形成する内縁46が差込片28の外縁32にほぼ対応して設けられてなるものである(図8を参照)。
【0071】
【実施例】
この発明の実施例に係る桟瓦10の構成を図9、図10を参照して説明すると、知られているように山14と谷16が設けられている。
この実施例の桟瓦10は、JIS規格に示されるように谷16の深さが35mm以上に設けられている例である。
【0072】
尻の表面に水返しのための突条18、19が衿から山14にかけて2本設けられている。
そして、尻縁の突条18の一部には外側を開放した凹部20が2個設けられ、衿の表面に、尻から頭に向けて水返しのために突条22が設けられている(図9を参照)。
【0073】
また、衿の表面の突条22の谷16側であって、突条22と平行になるように、尻から頭に向けて別の突条23が設けられている。
この突条23は水返しの目的のほかに、この桟瓦10の衿側に重ねられる別の桟瓦10の桟縁の位置決めと幅方向の妄動の抑制を図ることを意図しているものである(図9を参照)。
【0074】
他方、図10を参照して明らかなように、頭の裏面に水返しのための突条24、25が衿から桟に向けて2本設けられている。
これらの突条24、25は、この桟瓦10の頭側を別の桟瓦10の尻側に重ねたとき、この2本の突条24、25の間に、先に説明した別の桟瓦10の尻寄りの表面に設けられた突条19が配置されることにより雨水の浸入防止のほか、長さ方向の妄動抑制を図っているものである。
【0075】
さらに、桟の裏面の頭から尻に向けて突条26が設けられている。
また、尻側の裏面に一対の尻剣27、27が設けられ、尻剣27の傍らに小さな突起29が設けられている。
【0076】
そこで、引続き、この発明の桟瓦10の特徴について説明すると、略方形の頭側の切り込みXに肉薄状であって、かつ差込片28が桟瓦本体30の裏面寄りに設けられている(図9、図11および図12を参照)。
この差込片28の肉厚は一般的には桟瓦本体30の肉厚の2分の1程度が適当であり、差込片28の底面は桟瓦本体30の裏面と同一面を形成している。
【0077】
そして、この差込片28の外縁32は、頭側の切り込みX内において衿縁寄りの頭縁を延長させた頭側外縁部32aと、頭縁寄りの衿縁を延長させた衿側外縁部32bと、さらに前記した頭側外縁部32aと衿側外縁部32bとの間の突き合わせ縁部32cとから構成されている(図9および図12を参照)。
【0078】
つまり、この差込片28の外縁32は、桟瓦10の頭側の切り込みXの範囲内に存在し、切り込みXの範囲外に存在しないことを意味する。
【0079】
図示した外縁32は、頭側外縁部32a、衿側外縁部32bおよび突き合わせ縁部32cによって形成され、頭側外縁部32aと衿側外縁部32bとの間の突き合わせ縁部32cは直線を描いているが、もとより直線に制限する趣旨ではなく、後述する被覆片34の内縁38のとほぼ対称であって、切り込みXの範囲内であれば円弧、波形あるいは不定形を描くことは自由である。
【0080】
他方、略方形の切り込みYに肉薄の被覆片40が桟瓦本体30の表面寄りに設けられている(図10および図13を参照)。
この被覆片40の肉厚は差込片28と同様に一般的には桟瓦本体30の肉厚の2分の1程度が適当であり、被覆片40の表面は桟瓦本体30の表面と同一面を形成している。
【0081】
したがって、後述するように被覆片40の下方に差込片28が差込まれることにより、両者の肉厚は、桟瓦本体30の肉厚と等しくなり、両者28、40の裏面と表面は、それぞれ桟瓦本体30の表裏と同一面を形成するため、違和感を生ずることがない。
【0082】
そして、被覆片40の外縁42は尻側の切り込みY内において桟縁寄りの尻縁を延長させた尻側外縁部42aと、尻縁寄りの桟縁を延長させた桟側外縁部42bと、前記した尻側外縁部42aと桟側外縁部42bとの間の突き合わせ縁部42cとから構成されている。
【0083】
つまり、この被覆片40の外縁42は、尻側の切り込みYの範囲内に存在し、切り込みYの範囲外に存在しないことを意味する。
【0084】
図示した被覆片40の外縁42は、尻側外縁部42aおよび桟側外縁部42bおよび突き合わせ縁部42cによって形成され、突き合わせ縁部42cが直線を描いているが、もとより直線に制限する趣旨ではなく、切り込みYの範囲内であれば円弧、波形あるいは不定形を描くことは自由である。
【0085】
差込片28と桟瓦本体30の境界を形成する内縁44は被覆片40の外縁42にほぼ対応して設けられている。
前記した内縁44は、被覆片40の外縁42を構成する尻側外縁部42a、桟側外縁部42bおよび突き合わせ縁部42cにほぼ対応した横内縁部44a、縦内縁部44b、被突き合わせ内縁部44cから構成されている(図12を参照)。
【0086】
そして、被覆片40と桟瓦本体30の境界を形成する内縁46は差込片28の外縁32にほぼ対応して設けられている。
【0087】
したがって、被覆片40の内縁46は差込片28の外縁32を構成する頭側外縁部32a、衿側外縁部32aおよび突き合わせ外縁部32cにほぼ対応した横内縁部46a、縦内縁部46bおよび被突き合わせ内縁部46cから構成されている(図13を参照)。
【0088】
これらの内縁44、46の被突き合わせ内縁部44c、46cは、被覆片40の下方に差込片28を差し込んだときに、被覆片40の被突き合わせ内縁部44cに差込片28の突き合わせ外縁部32cが当接することやまた差込片28の被突き合わせ内縁部46cに被覆片40の突き合わせ外縁部42cが当接することあるいは、これらの突き合わせ外縁部32c、42cが差込片28、被覆片40に位置する条件を満たせば、その形状は問わない。
【0089】
差込片28の外縁32を構成する頭側外縁部32aおよび衿側外縁部32bを得るため、頭側の切り込みX内において衿縁寄りの頭縁を、また頭縁寄りの衿縁をそれぞれ延長させている理由は次のとおりである。
【0090】
差込片28の内縁44と被覆片40の外縁42が当接されるものの、依然として両縁44、42間に間隙が生ずることは否定できない。
したがって、雨水はこの間隙を通じて差込片28の表面に浸入することも否定できない。
【0091】
この場合、差込片28は、被覆片40の下方に位置することにより、浸入する雨水の受け皿の役割も果たすことになるから、本来的にはその面積は広いことが所望されるものの、頭側の切り込みX全体を占めるような大きさにすれば(方形状にする例)、先願について説明したとおり、桟瓦10の生産工程上において差込片28が損傷を受けるなどのおそれがある。
【0092】
他方、頭側外縁部32aと衿側外縁部32bを省略した場合、差込片28の外縁32が頭縁と衿縁を直接結んだものであって、つまり差込片28が略三角形を呈することになるが、このようにすれば、衿縁寄りの頭縁と桟縁寄りの尻縁には雨水の受け皿となる差込片28の一部が存在しないことになり、とくに衿縁に向けて浸入してくる雨水に対する受皿となる部分がないため、野地材Nに達するおそれがある。
【0093】
次に桟瓦10の組み合わせについて説明すると、一般的に多数の桟瓦10群によって構成されるものの、その基本は以下に説明するように4枚の桟瓦10により、従来例と基本的に同じ手段によって行われる。
【0094】
そこで、少なくとも4枚の桟瓦10a、10b、10c、10dを用意し、図11、図14および図15を参照して明らかなように、第1の桟瓦10aの衿側上に第2の桟瓦10bの桟側を重ねることにより、桟と衿とに重ね部48が形成される。
【0095】
この発明は、前記した桟と衿とによる重ね部48(弯曲された桟の裏面と衿の表面による重合による組合わせ)の面積を減少させることは桟瓦10の形態から困難性が高いため、桟瓦10の有効活用面積の増加を図ろうとするものではなく、頭と尻とによる重ね部50の面積を減少させることにより、桟瓦10の有効活用面積の増加を図ろうとするものであるから、この重ね部48の幅は、従来例の桟瓦Wの重ね部Smの幅と同じである。
なお、この発明は、桟と衿とによる重ね部48の活用面積を広くしようとするものではなく、桟と衿とによる重ね部48の活用については従来例と比較して変化しないことを念のため明らかにする。
【0096】
そして、第1の桟瓦10aの尻側に第3の桟瓦10cの頭側が重ねられるとともに、第2の桟瓦10bの被覆片40の下方に第3の桟瓦10cの差込片28が差し込まれ、第2の桟瓦10bの尻側に第4の桟瓦10dの頭側が重ねられ、第3の桟瓦10cの衿側に第4の桟瓦10dの桟側を重ねる。
【0097】
よって、第1の桟瓦10aと第3の桟瓦10cの頭と尻による重なりにより、重ね部50が形成される。
そして、この重ね部50の長さは、差込片28あるいは被覆片40の長さ方向の長さにほぼ相当している。
【0098】
ところで、従来例の桟瓦Wにおいては、第3の桟瓦Wcの頭が第2の桟瓦Wbの尻側の切り込みYbより頭側に臨み、第3の桟瓦Wcの頭側の切り込みXcと第2の桟瓦Wbの尻側の切り込みYbが嵌合され、第1の桟瓦Waの尻側と第3の桟瓦Wcの頭側により重ね部Snが形成され、この重ね部Snの長さは、切り込みXcの縦辺Xvと切り込みYbの縦辺Yvを加算した長さに相当する。
【0099】
これに対して、この発明の実施の形態における桟瓦10の差込片28および被覆片40の長さおよび幅をそれぞれ従来例の桟瓦Wの切込みX、Yの縦辺Xv、Yvと同じ寸法にすれば、頭と尻とによる重ね部50の長さが従来例の桟瓦Wと比較して半減することは明らかであり、結局、頭と尻とによる重なり部50の面積が2分の1に減少することになる。
【0100】
また、第2の桟瓦10bの尻側と第4の桟瓦Wdの頭側により、別の重ね部50が形成されるが、この重ね部50の長さもまた前記した第1の桟瓦10aと第3の桟瓦10cによって構成される重ね部50の長さに等しく形成される。
【0101】
因みに、この発明の実施の形態による桟瓦Wと従来品の桟瓦の形状寸法、そして単位面積(3.3平方メートル)当たりの葺き数を対比すると「表2」に示すとおりである。
【0102】
【表2】
【0103】
「表2」を参照すると明らかなとおり、一般的に広く採用される桟瓦としてたとえば、寸法区分により53A版と称される従来の瓦の場合では、単位面積当たり53枚を必要としたものが、この発明の実施の形態の桟瓦の場合では、46枚で足り、13%以上その必要枚数を減ずることができたことが示されている。
さらに、桟瓦の大きさが小さい形態になるにしたがって、一層単位面積当たりの桟瓦の必要枚数を従来例と比較して減少することも明らかになったことを示している。
【0104】
また、前記したように4枚の桟瓦10a、10b、10c、10dが組み合わせられることにより、第3の桟瓦10cの差込片28と第2の桟瓦10bの被覆片40との間に浸入経路52が階段状に形成される(図14を参照)。
【0105】
そして、この浸入経路52は、第2および第3の桟瓦10b、10cの表面から第3の桟瓦10cの差込片28の表面に向かう第1の垂直経路54、第1の垂直経路54から引き続いて軒側に向かうとともに垂直経路52に対してほぼ直角方向に設けられた水平経路56、水平経路56に引続きしかも直角方向であって第1の桟瓦10aに向かう第2の垂直経路58から構成される(図14を参照)。
【0106】
したがって、強風などに伴って第1の垂直経路54に浸入した雨水は、水平経路56および第2の垂直経路58へ誘導され、雨水が第1の桟瓦10a側に達するまでにその勢いが著しく減じられるので、雨水が逆流して野地材N側へ浸入させないように配慮されている。
【0107】
さらに、差込片28には衿側外縁部32bが設けられ、被覆片40には桟側外縁部42aが設けられているので、差込片28を被覆片40の下方に差し込むことにより、切り込みX、Y内には雨水を受ける二層の受皿となる部分が形成される。
【0108】
したがって、これらの切り込みX、Yに浸入した雨水は、まず被覆片40によって第1の桟瓦10aの谷側に確実に誘導され、仮に被覆片40の外縁42側から被覆片40の下方へ雨水が浸入しても、被覆片40下方には差込片28が存在し、かつ衿側外縁部32bが設けられているので、切り込みX、Yを越えて衿側に浸入することがなく、第1の桟瓦10aの谷側に確実に誘導されるので、野地材N側を損傷させることがない。
【0109】
このことは、従来の桟瓦Wにおいて第2の桟瓦Wbの切り込みYbの縦辺Yvと第3の桟瓦Wcの頭側の衿縁との当接部分に達する雨水が縦辺Ybと衿縁の当接部分に入り込み、第1の桟瓦Waの衿縁を通じて野地材Nに至り、野地材N側を損傷させるという問題を解消したことにほかならない。
【0110】
なお、この発明に係る桟瓦10を粘土により製造する場合、前記した課題の解決のほかに、次の製造工程上の有利性をも有するのでこの点について言及する。
【0111】
粘土瓦の製造は、乾燥後の瓦素地を焼成する際に、尻を底面としていわゆる焼成台車の棚上に起立させて行われることが一般的に知られている。
この場合、桟瓦は谷と桟との構成から断面略円弧状に形成され、一般的に尻側には尻剣が設けられていることと相待って起立させることが可能ではあった。
【0112】
しかし、起立させることが可能であるとしても、尻側の切込みによる空所が形成されている。
したがって、切り込みを備えた桟瓦の尻側を底面として焼成台車の棚上に起立させることは依然として不安定性が残存するものの、解消されないまま焼成台車を利用して焼成されているのが実情である。
このため、焼成台車の走行中の揺動などにより桟瓦が転倒するおそれがあり、生産技術上の問題であった。
【0113】
これに対してこの発明は、前記の問題点の解決を行うことができるようにするため、先に説明したように、桟瓦10の尻側の切り込みYに被覆片40が設けられており、この被覆片40の外縁42の一部である尻側外縁部42aは尻縁を桟縁に向けて延長されることにより形成されているから、従来の桟瓦の切込みによる空所が低減する。
【0114】
したがって、従来例では、空所が存在することにより、尻側を底面として起立させる場合、尻の面積が桟瓦の幅方向の断面に比較して少なくなり、不安定要素を構成したが、被覆片40が設けられることにより、空所をほぼ埋めることになるため、起立面となる尻の面積が増加し、不安定要素を低減するので、従来発生するおそれがあった転倒の問題を解消する利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態その1の概略を示す桟瓦の頭側の差込片と尻側の被覆片の要部拡大平面図である。
【図2】その2の同要部拡大平面図である。
【図3】その3の同要部拡大平面図である。
【図4】その4の同要部拡大平面図である。
【図5】その5の同要部拡大平面図である。
【図6】その6の同要部拡大平面図である。
【図7】その7の同要部拡大平面図である。
【図8】その8の同要部拡大平面図である。
【図9】実施例に係る桟瓦の表面斜視図である。
【図10】図9の裏面斜視図である。
【図11】4枚の桟瓦による瓦屋根の組み合わせ構造を示す平面図である。
【図12】図9の差込片付近の要部拡大平面図である。
【図13】図10の被覆片付近の要部拡大平面図である。
【図14】図11における矢印P−P線の縦断面図である。
【図15】図15は図11における矢印Q−Q線の縦断面図である。
【図16】表2における実施の形態の桟瓦の各寸法を示す参考図である。
【図17】表2における従来品の桟瓦の各寸法を示す参考図である。
【図18】従来例の桟瓦の表面斜視図である。
【図19】従来例の桟瓦4枚による瓦屋根の組み合わせ構造を示す平面図である。
【図20】図19における矢印V−V線の縦断面図である。
【符号の説明】
28 差込片
30 桟瓦本体
32 差込片の外縁
32a 差込片の頭側外縁部
32b 差込片の衿側外縁部
32c 差込片の突き合わせ縁部
32d 差込片の頭縁部
40 被覆片
42 被覆片の外縁
42a 被覆片の尻側外縁部
42b 被覆片の桟側外縁部
42c 被覆片の突き合わせ縁部
42d 被覆片の桟縁部
44 差込片と桟瓦本体の境界を形成する内縁
46 被覆片と桟瓦本体の境界を形成する内縁
Claims (8)
- 桟瓦本体に頭、尻、桟および衿が備えられるとともに、頭側の切り込みおよび尻側の切り込みを有する桟瓦において、
頭側の切り込みに肉薄の差込片が桟瓦本体の裏面寄りに設けられ、
該差込片の外縁が頭側の切り込み内において衿側寄りの頭縁を延長させた頭側外縁部と、頭側寄りの衿縁を延長させた衿側外縁部と、前記した頭側外縁部と衿側外縁部との間の突き合わせ縁部とからなり、
他方、尻側の切り込みに肉薄の被覆片が桟瓦本体の表面寄りに設けられ、
該被覆片の外縁が尻側の切り込み内において尻側寄りの桟縁を延長させた桟側外縁部と、桟側寄りの尻縁を延長させた尻側外縁部と、前記した桟側外縁部と尻側外縁部との間の突き合わせ縁部とからなることを特徴とする桟瓦。 - 差込片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が被覆片の外縁にほぼ対応して設けられるとともに、被覆片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が差込片の外縁にほぼ対応して設けられてなることを特徴とする請求項1記載の桟瓦。
- 桟瓦本体に頭、尻、桟および衿が備えられるとともに、頭側の切り込みおよび尻側の切り込みを有する桟瓦において、
頭側の切り込みに肉薄の差込片が桟瓦本体の裏面寄りに設けられ、
該差込片の外縁が頭側の切り込み内において頭側寄りの衿縁を延長させた衿側外縁部と、衿側外縁部と衿側寄りの頭縁部との間の突き合わせ縁部とからなり、
他方、尻側の切り込みに肉薄の被覆片が桟瓦本体の表面寄りに設けられ、
該被覆片の外縁が尻側の切り込み内において尻側寄りの桟縁を延長させた桟側外縁部と、桟側寄りの尻縁を延長させた尻側外縁部と、前記した桟側外縁部と尻側外縁部との間の突き合わせ縁部とからなることを特徴とする桟瓦。 - 差込片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が被覆片の外縁にほぼ対応して設けられるとともに、被覆片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が差込片の外縁にほぼ対応して設けられてなることを特徴とする請求項3記載の桟瓦。
- 桟瓦本体に頭、尻、桟および衿が備えられるとともに、頭側の切り込みおよび尻側の切り込みを有する桟瓦において、
頭側の切り込みに肉薄の差込片が桟瓦本体の裏面寄りに設けられ、
該差込片の外縁が頭側の切り込み内において頭側寄りの衿縁を延長させた衿側外縁部と、衿側外縁部と衿側寄りの頭縁部との間の突き合わせ縁部とからなり、
他方、尻側の切り込みに肉薄の被覆片が桟瓦本体の表面寄りに設けられ、
該被覆片の外縁が尻側の切り込み内において桟側寄りの尻縁を延長させた尻側外縁部と、尻側外縁部と尻側寄りの桟縁部との間の突き合わせ縁部とからなることを特徴とする桟瓦。 - 差込片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が被覆片の外縁にほぼ対応して設けられるとともに、被覆片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が差込片の外縁にほぼ対応して設けられてなることを特徴とする請求項5記載の桟瓦。
- 桟瓦本体に頭、尻、桟および衿が備えられるとともに、頭側の切り込みおよび尻側の切り込みを有する桟瓦において、
頭側の切り込みに肉薄の差込片が桟瓦本体の裏面寄りに設けられ、
該差込片の外縁が頭側の切り込み内において衿側寄りの頭縁を延長させた頭側外縁部と、頭側寄りの衿縁を延長させた衿側外縁部と、前記した頭側外縁部と衿側外縁部との間の突き合わせ縁部とからなり、
他方、尻側の切り込みに肉薄の被覆片が桟瓦本体の表面寄りに設けられ、
該被覆片の外縁が尻側の切り込み内において桟側寄りの尻縁を延長させた尻側外縁部と、尻側外縁部と尻側寄りの桟縁部との間の突き合わせ縁部とからなること特徴とする桟瓦。 - 差込片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が被覆片の外縁にほぼ対応して設けられるとともに、被覆片と桟瓦本体の境界を形成する内縁が差込片の外縁にほぼ対応して設けられてなることを特徴とする請求項7記載の桟瓦。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP35419796A JP3552009B2 (ja) | 1996-12-17 | 1996-12-17 | 桟瓦 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP35419796A JP3552009B2 (ja) | 1996-12-17 | 1996-12-17 | 桟瓦 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH10176387A JPH10176387A (ja) | 1998-06-30 |
| JP3552009B2 true JP3552009B2 (ja) | 2004-08-11 |
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ID=18435944
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP35419796A Expired - Fee Related JP3552009B2 (ja) | 1996-12-17 | 1996-12-17 | 桟瓦 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3552009B2 (ja) |
-
1996
- 1996-12-17 JP JP35419796A patent/JP3552009B2/ja not_active Expired - Fee Related
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| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH10176387A (ja) | 1998-06-30 |
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