JP3553311B2 - 炭化水素油の接触分解方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は粉粒体状の固体を流動接触分解溶媒として用いて、下降流型反応器で反応気体としての炭化水素油に分解反応を行わせる炭化水素質油の接触分解方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
重質油等の炭化水素質油を接触分解する場合に用いられる等、粉粒子状の固体を触媒または熱媒体として使用し、反応物気体と接触させる反応系は古くから知られている。このような流動床式反応器の中には濃厚流動層(気泡流動層)を用いるもの、高速移動層(高速流動層)を用いるものなどがある。固体と気体の接触時間を短くする必要のある反応では高速移動層が用いられる。現在重質油などの流動接触分解によるガソリンの製造装置ではライザーと呼ばれる上昇流型高速移動層反応器が主流となっている。これはガソリン等の好ましい生成物の選択性を上げるために触媒性能の向上とともに接触時間を短くして好ましくない過分解などの反応を抑制するようになったためである。
【0003】
しかし、ライザー型の反応装置では逆混合という問題が発生する。逆混合とは上昇する混合流に対して重力が下向きに作用することにより気体または固体の一部が本来の流れとは逆方向に運動する現象である。このような気体の逆混合が起こると気体のある部分は接触時間が短くなりすぎ十分に反応しないまま反応器から抜き出され、気体の他のある部分は接触時間が長くなりすぎ過分解等の好ましくない反応がおき、生成物の品質劣化を招く。また、固体の逆混合がおきると固体の一部は劣化した状態で反応器内に長く留まることになり反応の効率が低下する。
【0004】
これを回避するために近年は下降流型反応器を用いるようになっている。例えば、最近では特開平4−261494、米国特許5,462,652 、米国特許4,385,985 、日本特許第2523325号等において下降流型反応器を用いたシステムが紹介されている。これら提案は充分に接触時間を短くし、かつ固体や気体の逆混合を防いで生成物の選択性をより良くするとことを意図したものである。しかしながらこれらの技術は反応と再生を連続的に行う循環流動層システム全体としてみたときには未だ問題を含んでいる。これらの問題は下降流型反応器で固体を下に落下させた後、再生して再度反応に供するため、いかに効率よく固体を元の高さに戻すかという点で充分な成果が得られていないことに起因している。
【0005】
例えば上掲の特開平4−261494では再生後の触媒を移送用気体によって反応器入口の高さにまで持ち上げているが、この場合触媒を燃焼して再生する空気の他に触媒をリフトアップするための移送用媒体としての気体が必要となりブロアーの能力が過大となる、装置の構造が複雑になるなど経済的に好ましくない。米国特許5,462,652 も同様で触媒を再生するのに必要な空気以外に触媒をリフトアップするための移送用媒体としての気体を必要とするという難点がある。
【0006】
また、米国特許4,385,985 では上昇流型再生装置により燃焼用空気を用いて触媒のリフトアップも行うという手法が見られる。しかしこの手法も以下の点でその活用は実際には難しい。すなわち触媒をリフトアップするためにはその仕事量の代償として圧力損失が発生し、その結果再生用空気導入口は圧力が高くなるが、その圧力はストリッピング装置に形成された触媒の濃厚層の静圧で押さえる必要があるという点を見落としているということである。ストリッピング装置の触媒濃厚層の静圧より再生用空気導入口の圧力が高くなると燃焼用空気がストリッピング装置側に逆流し触媒循環ができなくなる。言い換えればストリッピング装置出口より再生装置入口の方が圧力が高くなりストリッピング装置から再生装置へ触媒が流れなくなる。
【0007】
これに対応すべくストリッピング装置の濃厚層高さを大きくすればストリッピング装置側の静圧も大きくなるが、その場合触媒をリフトアップしなければならない距離も大きくなり、その結果触媒リフトアップに伴う圧力損失も大きくなるため解決とならない。かといってストリッピング装置側の圧力を高くすると、ストリッピング装置は触媒循環の流れを遡ると反応器を介して再生装置の上部に接続しており、ストリッピング装置の圧力を高くすれば再生装置の上部圧力も高くなり、従って再生装置下部の再生用空気導入口の圧力も高くなるという堂々めぐりになってしまう。燃焼用空気の吹き込み量を大きくすれば再生装置内の触媒密度が小さくなり、圧力損失も小さくなるが使用する空気量が大きくなり経済的に好ましくない。また、日本特許第2523325号も再生装置下部から再生用空気を導入して、反応器入口高さまで触媒を持ち上げようとしている点で同じ問題を含んでいる。
【0008】
このように下降流反応器を用いた循環流動層反応システムにおいては使用する空気などの量を最小にしつつ、反応器、ストリッピング装置、再生装置、再び反応器という循環サイクルで圧力バランスを保つにはかなりの困難を伴う。固体の循環量の大きい装置では固体をリフトアップするために必要な動力が大きいため特に困難である。
【0009】
短接触時間で好ましい生成物の選択性を上げることをねらいとするプロセスでは接触時間をなるべく短くするとともに高転化率を維持するために高混合比を用いることが多く、そのような背景から循環流動層反応システムとして、構造が単純かつ固体の移送用気体が不要であり、固体をスムーズに循環させるための圧力バランス維持が容易なシステムがこれを活用する接触分解方法とともに求められていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した如き背景に鑑みてなされたもので、構造が単純かつ、固体の移送用気体が不要であり、固体をスムーズに循環させるための圧力バランス維持が容易との利点を備えた下降流型反応器を含む循環流動層反応システムを用いることで低ランニングコストで高品位な炭化水素質油の接触分解方法を提供することを目的としたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題解決のために、重質油などの炭化水素油とシリカアルミナ等で構成された流動接触分解触媒と下降流接触させる本発明の接触分解方法では、
(イ)上方から前記流動接触分解触媒(ct)が供給される垂直下降流型移動層反応器(12)と、(ロ)前記垂直下降流型移動層反応器(12)に下方に後続するストリッピング用不活性ガスの空塔速度が0.03〜0.7m/sに設定された濃厚流動層型ストリッピング装置(13)と、
(ハ)濃厚流動層型再生装置(14)であって前記ストリッピング装置(13)からの流動接触分解触媒(ct)が導入される導入口が装置高さの1/2より高い部分で、
前記ストリッピング装置(13)からの前記導入口における圧力を(P)、
当該濃厚流動層型再生装置(14)の塔頂圧を(PT )、
当該濃厚流動層型再生装置(14)の塔底圧を(PB )、
としたときに
P≦(PT +PB )/2
となる位置に接続され且つ再生用空気の空塔速度が0.1〜1.5m/sに設定された濃厚流動層型再生装置(14)と、
(ニ)前記濃厚流動層型再生装置(14)の上部に接続されて該濃厚層型再生装置内の流動接触分解触媒および再生用空気を全量受け入れて上端部を経て前記流動接触分解触媒(ct)を前記垂直下降流型移動層反応器(12)へと循環供給させるための再生用空気の空塔速度が2〜20m/sに設定された中高速稀薄移動層からなる上昇流型再生装置(15)、
とを用いる。
【0012】
或いは、(イ)上方から前記流動接触分解触媒(ct)が供給される垂直下降流型移動層反応器(12)と、
(ロ)前記垂直下降流型移動層反応器(12)に下方に後続するストリッピング用不活性ガスの空塔速度が0.03〜0.7m/sに設定された濃厚流動層型ストリッピング装置(13)と、
(ハ´)濃厚流動層型再生装置(14)であって前記ストリッピング装置(13)からスタンドパイプ(26 ´) を介して導入される流動接触分解触媒(ct)が導入される導入口が装置高さの1/2より低い部分で、
前記ストリッピング装置(13)からの前記導入口における圧力を(P)、
当該濃厚流動層型再生装置(14)の塔頂圧を(PT )、
当該濃厚流動層型再生装置(14)の塔底圧を(PB )、
としたときに
P>(PT +PB )/2
となる位置に接続され且つ再生用空気の空塔速度が0.1〜1.5m/sに設定された濃厚流動層型再生装置(14)と、前記ストリッピング装置(13)からの流動接触分解触媒(ct)が導入口が 装置高さの1/2より低い部分に接続された且つ再生用空気の空塔速度が0.1〜1.5m/sに設定された濃厚流動層型再生装置(14)と、
(ニ)前記濃厚流動層型再生装置(14)の上部に接続されて該濃厚層型再生装置内の流動接触分解触媒および再生用空気を全量受け入れて上端部を経て前記流動接触分解触媒(ct)を前記垂直下降流型移動層反応器(12)へと循環供給させるための再生用空気の空塔速度が2〜20m/sに設定された中高速稀薄移動層からなる上昇流型再生装置(15)、
とを用いる。
【0013】
また、上述各方法において、前記垂直下降流型高速移動層反応器(12)における接触時間を0.1〜2.0秒、触媒/油比が10〜50、該反応器出口における温度を530〜700℃に設定するとともに、導入される触媒/油比を10〜50とすることで目的を達成する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に係る接触分解システムにおいては下降流型反応器の下にストリッピング装置を配置し、ストリッピング用不活性ガスの空塔速度を低く制御することにより、ストリッピング装置内の濃厚流動層の静圧をなるべく大きくしている。また再生装置には濃厚流動層型再生装置とその上部に接続された中高速移動層の上昇流型再生装置を組み合わせることにより再生用空気を固体をリフトアップするための移送用媒体としても利用している。この方法により小さな圧力損失で固体を装置の上部までリフトアップすることができる。更にストリッピング装置から濃厚流動層型再生装置への触媒の導入を該再生装置内の触媒の静圧により圧力の高くなっている該濃厚流動層型再生装置の下部を避け、該濃厚流動層型再生装置の上部に導入する。そして本発明方法ではこのようなシステムを用いて、システム各部夫々で所定条件を保って炭化水素質油の接触分解を行う。以上のような工夫をすることにより、単純化されたフローで固体輸送用のための気体を余分に供給する必要もなく、また装置全体の高さを大きくすることもなく圧力バランスをとって固体の循環を確立することが可能となり好適な炭化水素質油の接触分解が行いうる。そして本発明方法では上述システムを用いて、システム各部夫々で所定条件を保って炭化水素質油の接触分解が可能となる。
【0015】
或いは別な接触分解システムとして該ストリッピング装置から該濃厚流動層型再生装置への固体導入管の一部をスタンドパイプとすることにより、スタンドパイプ内の固体の静圧を利用して該濃厚流動層型再生装置下部の圧力の高い部分に該ストリッピング装置からの固体を導入する装置を用いる。この方法にても上述態様と同等の好適な炭化水素質油の接触分解を行うことができる。
【0016】
〔実施例〕本発明方法を実施例をあげ図面に沿って説明する。第1図に本発明に用いる反応システムの典型的な接続例を示す。以下、システムの構成とシステム各部の条件を合わせた本発明方法の実施例について詳述する。
このシステムでは周知の垂直下降流型高速移動層反応器(12)において上方から供給される接触分解触媒として例えばシリカアルミナ等の粉粒体状の固体を用いて重質油などの炭化水素油を分解反応させている。反応器(12)に接続された分離器(10)で生成物気体が分離されライン(24)を通って系外へ抜き出されるようになっている。触媒である粉粒体状の固体が垂直下降流型高速移動層反応器(12)、ストリッピング装置(13)、濃厚流動層型再生装置(14)、中高速移動層上昇流型再生装置(15)(以下ライザー再生装置と称する)、フィードホッパー(16)、そして再び反応器(12)の順番に系内を循環している。なお、原料である炭化水素はライン(22)を通ってインジェクター(18)に供給される。原料は気体あるいは液体であるが、液体である場合はインジェクター(18)により固体と混合された時点でそのほとんどが気化する。
【0017】
垂直下降流型高速移動層反応器(12)からは下方に接続された上記高速分離器(10)へと反応生成物である炭化水素気体と粉粒体状の固体(触媒)との混合物が供給される。高速分離器(10)で大部分の固体が除去された気体はまず二次分離器(19)へ導かれる。ここで気体中に少量残存した固体が取り除かれ、ライン(24)を通って系外へ取り出され蒸留塔などを含む生成物回収系へ導かれる。二次分離器としては接線型サイクロンが好ましい。なお、接触時間を短くする必要のない場合は高速分離器10を省略し、固体と生成物気体の混合物を直接に接線型サイクロンへと導入することもできる。一方、高速分離器(10)で除去された固体はディプレグ(11)を通ってストリッピング装置(13)へと導かれる。
【0018】
ストリッピング装置(13)では固体が濃厚層を形成し、ライン(20)から導入されたスチーム等の不活性気体により固体上または固体間に残存した炭化水素が取り除かれる。この炭化水素はスチーム等の不活性気体とともにライン(23)を通って生成物回収系(図示せず)へ導かれる。ストリッピング装置内の不活性ガスの空塔速度は0.03〜0.7m/sが好ましい。不活性ガスの空塔速度が0.03m/sより小さい場合は流動が不完全になる、あるいはストリッピングが不完全になるなどの理由で好ましくない。より好ましくは0.07〜0.3m/sの速度が用いられる。0.3m/sより大きい場合はストリッピング装置内の固体の存在密度が小さくなり、固体の静圧が小さくなる結果、ストリッピング装置(13)下部の圧力が低くなるためストリッピング装置(13)から濃厚流動層型再生装置(14)への固体の導入がスムーズに行えなくなるため好ましくない。
【0019】
続いて、ストリッピング装置(13)の下部から抜き出された固体はライン(26)を通って流量調整用のバルブ(32)を介して濃厚流動層型再生装置(14)へ導入される。特に、ライン(26)からの濃厚流動層型再生装置(14)への接続位置は、装置内の固体の静圧により圧力の高くなっている濃厚流動層型再生装置(14)下部を避けた位置、即ち濃厚流動層型再生装置の高さの1/2より高い部分すなわち濃厚層型再生装置(14)の上半分で塔内勾配分布圧力が充分に低くなった部位に接続されており、これによりストリッピング装置(13)から容易に固体を導入することが可能となっている。なお、濃厚層の内部は完全混合層と見なすことができライン(26)が濃厚流動層型再生装置(14)の上半分に接続してあっても固体の再生効率が落ちることはない。なお、ライン(26)の一部をスタンドパイプとすることによって濃厚流動層型再生装置への接続位置をより下方にすることができるがこれについては後で詳述する。
【0020】
再生装置(14)の内部では固体がライン(21)から導入された再生用空気と接触し、固体上に付着した炭素質やストリッピング装置で除去しきれなかった未分解の炭化水素油等が燃焼し、固体の再生が行われる。この際、再生装置(14)の内部の再生用空気の空塔速度は0.1〜1.5m/s程度に設定し維持する。再生用空気の空塔速度が0.1m/sより小さいと流動が不完全になり、燃焼効率が低くなるため好ましくない。一方、1.5m/sより大きくなると不必要に燃焼用空気の流量を増加させる必要があるため好ましくない。より好ましくは0.3〜1.0m/sの範囲が用いられる。ちなみに、燃焼用空気の流量を変えずに再生装置(14)の直径を小さくして再生用空気の空塔速度を1.5m/sより大きくすることもできるが、この場合再生装置内の固体の滞留時間を確保するために再生装置(14)の高さを大きくしなくてはならない。すると装置全体の高さを押し上げる結果となりコストアップにつながり好ましくない。
【0021】
再生装置(14)の上部はそのまま中高速稀薄移動層からなる上昇流型再生装置としてのライザー型再生装置(15)に接続されていて、濃厚層型再生装置(14)に供給された固体および再生用空気は全量そのままライザー型再生装置(15)へと導入される。ライザー型再生装置(15)は濃厚層型再生装置(14)より直径が小さくなっており、ここでの再生空気の空塔速度が2〜20m/sとなるよう調整・設定されている。燃焼用空気の空塔速度が2m/sより小さい場合はライザー再生装置(15)内の固体の存在密度が高くなり、ライザー再生装置(15)の圧力損失が大きくなるため好ましくない。逆に空塔速度が20m/sより大きい場合は気体および固体の混合流とライザー再生装置(15)壁面との摩擦が大きくなることにより圧力損失が大きくなり、磨耗も激しくなるため好ましくない。
【0022】
ライザー再生装置(15)における燃焼用空気の空塔速度はより好ましくは3〜5m/sが用いられる。従って濃厚層型再生装置(14)内では濃厚流動層をなしていた固体と空気がライザー型再生装置(15)内では中速移動層または高速移動層を形成することになる。この結果、ライザー型再生装置(15)の中では固体の密度が低く、固体の静圧が小さくなる。このため小さな圧力損失で装置の上部まで固体をリフトアップすることが可能となっている。
【0023】
また、濃厚層型再生装置(14)の上部をそのまま絞ってライザー型再生装置(15)に接続することにより再生用空気が固体の移送用媒体としても用いられている。従って固体のリフトアップ用に移送用媒体を別途供給する必要が無くなって、ブロアー等の空気供給手段の能力を極小化できるから装置が単純化され、運転が容易になるとともに経済的にも好ましい。
【0024】
燃焼用空気内の酸素が濃厚層型再生装置(14)で全て消費される場合は、ライザー型再生装置(15)で空気は単に固体移送用の媒体となり、燃焼用空気内の酸素が濃厚層型再生装置(14)で全て消費されない場合は、ライザー型再生装置(15)でも燃焼が起こり、空気は燃焼に用いられると同時に固体移送用の媒体としても機能することになる。なお燃焼をさらに促進させるため、ライザー型再生装置入口でさらに再生用空気を供給するようにしても無論良い。また固体循環量の制御を容易にするためにライン(27)を通してフィードホッパー(16)から濃厚層型再生装置(14)へ固体を循環させることも可能である。
【0025】
一般に下降流型反応器を用いる装置では反応器で装置の下部に落下した固体を装置の上部にリフトアップすることが必要不可欠であり、この点で本システムでは非常に合理的に上方移送力を得ており、経済的な利点が大きい。
【0026】
ライザー型再生装置上部から噴出した固体は一時的にフィードホッパー(16)に蓄えられ、その後インジェクター(18)に導入され、再びライン(22)を通って供給される炭化水素原料と混合され反応器(12)で反応が行われる。一方、再生用空気は接線型サイクロン等で構成される分離装置(17)を介してライン(25)を通って排出される。なお、バルブとスタンドパイプの組み合わせ等でライザー型再生装置(15)からインジェクター(18)への空気のリークが防げれような条件下ではフィードホッパー(16)を省略することもできる。
【0027】
以上説明した実施例装置全体の圧力バランスを見ると、ストリッピング装置(13)の出口(下部)に始まってストリッピング装置の入口(上部)まで第1図において反時計回りに圧力が順次低下していく。その要因はバルブ(32)、ライザー再生装置(15)、バルブ(31)、インジェクター(18)、反応器(12)、高速分離器(10)等における圧力損失である。そしてそのままではストリッピング装置(13)の上部より下部の方が圧力が高い、すなわち流れの方向に向かって圧力が高くなることになり、固体の循環が確立しない。この圧力差を解消するのがストリッピング装置(13)内の固体濃厚流動層の静圧である。このため濃厚層型再生装置に始まって分離器までの圧力損失が大きくなりストリッピング装置の静圧より大きくなってしまうような設定では固体の循環ができなくなる。
【0028】
従って上述装置において固体の循環を確立するための条件は;
ストリッピング装置(13)の濃厚流動層の高さを:Hs(m)、
ストリッピング装置(13)の濃厚流動層の密度を:ρs(g/cm3 )、
ライザー再生装置(15)の流動層の高さを:Hr(m)、
ライザー再生装置(15)の流動層の密度を:ρr(g/cm3 )、
バルブ(31)、(32)の圧力損失を:ΔPb(kg/cm2 )、
その他の部分の圧力損失を:ΔP’(kg/cm2 )、
とした場合に;
Hs×ρs/10>Hr×ρr/10+ΔPb×2+ΔP’ (1)
で表される。
【0029】
第1図にても明らかなように、Hsを大きくとるとHrも大きくなる。その関係は下式で表される。
Hr=Hs+ΔH (2)
ΔHは反応器(12)等で占められる高さであり、システムを設計する上での自由度がない。(2)式を用いて(1)式は下式のように表される。
Hs(ρs−ρr)>ρr×ΔH+ΔPb×2+ΔP’ (3)
ΔPbはバルブの性能によって決定し、一般に0.1〜0.5kg/cm2 程度であり自由度がない。ΔP’は一般に0.1〜0.3kg/cm2 程度でありこれも自由度がない。
結局、(ρs−ρr)が小さくなるとHsが大きく、すなわち装置全体の高さが大きくなる。装置が高くなることは建設費の高騰につながる。
【0030】
本発明においてはストリッピング装置(13)およびライザー再生装置(15)内の気体空塔速度をそれぞれ0.03〜0.7m/s、0.1〜1.5m/sに制御することによりρsを最大、ρrを最小とするよう工夫がなされておりこのことに依ってHsを極力小さくした最適設計が可能となるものである。一般的に、ストリッピング装置(13)内の固体密度をライザー再生装置(15)内の固体密度よりも0.5〜0.75g/cm3 に維持することで所望の条件が得られる。
【0031】
ところで、以上説明した実施例と類似の別構成によっても目的とするシステムを得ることができる。即ち、別法として各部図1と略同様のシステムにおいて、前述したライン(26)の一部をスタンドパイプ(26 ´) とすることにより濃厚流動層型再生装置(14)へのライン(26)の接続位置を該装置(14)の高さの1/2より下、すなわち濃厚流動層型再生装置(14)の下半分にすることも可能である。本発明でいうスタンドパイプとは垂直あるいは垂直から45度以内の傾きを持った固体で満たされた配管部分を指す。スタンドパイプ(26 ´) には流動に必要な最小限の気体が供給されるか、あるいは全く気体の供給が行われず固体の存在密度は最大限となっている。このスタンドパイプの高さを濃厚流動層型再生装置(14)の1/2以上とすることにより、スタンドパイプ内の固体の静圧でライン(26)下部の圧力を高くすることができ、濃厚流動層型再生装置(14)の下半分に固体を導入した場合にも既述した図1のシステムと全く同等の作用・効果を得て安定した固体の循環維持が可能となる。
【0032】
以下、本発明を適用した実際の実験例について得られた結果を説明するが、これらにおける寸法・設定値その他は本発明内容を何ら限定するものではない。
〔実験例1〕;
固体としてかさ密度0.85g/cm3 の流動接触分解用触媒を用いた第1図に示したと同等の装置において、ストリッピング装置(13)の濃厚流動層高さを9m、ストリッピング用スチーム線速度を0.1m/s、濃厚流動層型再生装置(14)の高さを1m、燃焼用空気線速度を0.6m/s、ライザー型再生装置の高さを(14)m、燃焼用空気線速度を3.6m/sとしたところ、安定した触媒循環を確立した。
なおこのときのストリッピング装置(13)における触媒密度は0.77g/cm3 、濃厚流動層型再生装置における触媒密度は0.53g/cm3 、ライザー型再生装置(15)における触媒密度は0.07g/cm3 であった。またバルブ(31)、(32)における圧力損失は0.1kg/m2 であった。またライン(26)は濃厚流動層型再生装置(14)の上から0.2mの場所に接続した。
またこのとき反応器(12)に供給する原料として水素化処理した減圧軽油を用いた。反応器(12)における触媒/油比を20、反応器(12)出口温度を600°C、接触時間を0.5秒とした。反応成績を下記の表1に示す。このときライン(26)から取り出した再生前触媒の炭素濃度は0.21重量%、フィードホッパー(16)から取り出した再生後触媒の炭素濃度は0.01重量%であった。
【0033】
【表1】
【0034】
〔比較例1〕;
実験例A1と同様の運転条件において、ストリッピング用不活性ガスの空塔速度のみを0.2m/sに変更したところ、ライン(26)から取り出した再生前触媒の炭素濃度が0.3重量%に上昇したため、再生装置における燃焼熱が増加したため装置を停止した。
【0035】
〔比較例2〕;
実験例A1と同様の運転条件において、濃厚流動層型再生装置(14)の再生用空気の空塔速度のみを0.08m/sに変更したところフィードホッパー(16)から取り出した再生後触媒の炭素濃度は0.03重量%に上昇した。運転を続けるにつれてさらに上昇し、反応器(12)における転化率が低下したので装置を停止した。
【0036】
〔比較例3〕;
実験例A1と同様の運転条件において、濃厚流動層型再生装置(14)の再生用空気の空塔速度のみを3m/sに変更したところライン(25)における酸素濃度が上昇し、燃焼に必要な空気に対して充分な空気を使用しているため、経済的に好ましくないことがわかった。
【0037】
以上説明したように、本発明においては下降流型反応器の下にストリッピング装置を配置し、ストリッピング用不活性ガスの空塔速度を低く制御した点、ストリッピング装置内の濃厚流動層の静圧を極力大きくした点、また再生装置には濃厚流動層型再生装置とその上部に接続された中高速移動層の上昇流型再生装置を組み合わせることにより再生用空気を固体をリフトアップするための移送用媒体としても利用する等の技術により、小さな圧力損失で固体を装置の上部までリフトアップすることができる。また、ストリッピング装置から濃厚流動層型再生装置への触媒の導入を該再生装置内の触媒の静圧により圧力の高くなっている該濃厚流動層型再生装置の下部を避け、該濃厚流動層型再生装置の上部に導入しており、以上のような工夫をするとともに各部設定条件を最適なものとすることによって、構造が単純かつ、固体の移送用気体が不要であり、固体をスムーズに循環させるための圧力バランス維持が容易との利点を備えた下降流型反応器を含む循環流動層反応システムを用いて好適な炭化水素質油の接触分解するとの当初目的を達成している。
なお、別法として該ストリッピング装置から該濃厚流動層型再生装置への固体導入管の一部をスタンドパイプとすることにより、スタンドパイプ内の固体の静圧を利用して該濃厚流動層型再生装置下部の圧力の高い部分に該ストリッピング装置からの固体を導入することを可能にし同等の成果を得ている。
【0038】
【発明の効果】
本発明では上述した如く、略記すれば、(イ)上方から前記流動接触分解触媒(ct)が供給される垂直下降流型移動層反応器(12)と、(ロ)前記垂直下降流型移動層反応器(12)に下方に後続するストリッピング用不活性ガスの空塔速度が0.03〜0.7m/sに設定された濃厚流動層型ストリッピング装置(13)と、(ハ)濃厚流動層型再生装置(14)であって前記ストリッピング装置(13)からの流動接触分解触媒(ct)が導入される導入口が装置高さの1/2より高い位置に接続され且つ再生用空気の空塔速度が0.1〜1.5m/sに設定された濃厚流動層型再生装置(14)と、(ニ)前記濃厚流動層型再生装置(14)の上部に接続されて該濃厚層型再生装置内の流動接触分解触媒および再生用空気を全量受け入れて上端部を経て前記流動接触分解触媒(ct)を前記垂直下降流型移動層反応器(12)へと循環供給させるための再生用空気の空塔速度が2〜20m/sに設定された中高速稀薄移動層からなる上昇流型再生装置(15)とを含み構成されており従来のものに比してより構造が単純かつ、固体の移送用気体が不要であり、固体をスムーズに循環させるための圧力バランス維持が容易との利点を備えた好適な循環流動層システム用いることによって、適切な炭化水素質油の接触分解を行い低ランニングコストにて良質の生成物を得ることができる。また、略同様構成の既述したスタンドパイプを付加し対応した接続位置変更を行った構成のシステムによっても同等効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法に係る循環流動層システムの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
(10)…高速分離器、
(12)…下降流型移動層反応器、
(13)…濃厚流動層型ストリッピング装置、
(14)…濃厚流動層型再生装置、
(15)…上昇流型再生装置(ライザー再生装置)、
(16)…フィードホッパー、
(17)…分離装置、
(18)…インジェクター、
(19)…二次分離器、
(31)…バルブ、
(32)…バルブ、
(26 ´) …スタンドパイプ、
(ct)…触媒(流動接触分解触媒)。
Claims (3)
- 重質油などの炭化水素油とシリカアルミナ等で構成された流動接触分解触媒と下降流接触させる炭化水素油の接触分解方法であって、
(イ)上方から前記流動接触分解触媒(ct)が供給される垂直下降流型移動層反応器(12)と、(ロ)前記垂直下降流型移動層反応器(12)に下方に後続するストリッピング用不活性ガスの空塔速度が0.03〜0.7m/sに設定された濃厚流動層型ストリッピング装置(13)と、
(ハ)濃厚流動層型再生装置(14)であって前記ストリッピング装置(13)からの流動接触分解触媒(ct)が導入される導入口が装置高さの1/2より高い部分で、
前記ストリッピング装置(13)からの前記導入口における圧力を(P)、
当該濃厚流動層型再生装置(14)の塔頂圧を(PT )、
当該濃厚流動層型再生装置(14)の塔底圧を(PB )、
としたときに
P≦(PT +PB )/2
となる位置に接続され且つ再生用空気の空塔速度が0.1〜1.5m/sに設定された濃厚流動層型再生装置(14)と、
(ニ)前記濃厚流動層型再生装置(14)の上部に接続されて該濃厚層型再生装置内の流動接触分解触媒および再生用空気を全量受け入れて上端部を経て前記流動接触分解触媒(ct)を前記垂直下降流型移動層反応器(12)へと循環供給させるための再生用空気の空塔速度が2〜20m/sに設定された中高速稀薄移動層からなる上昇流型再生装置(15)、
とを用いることを特徴とする炭化水素油の接触分解方法。 - 重質油などの炭化水素油とシリカアルミナ等で構成された流動接触分解触媒と下降流接触させる炭化水素油の接触分解方法であって、
(イ)上方から前記流動接触分解触媒(ct)が供給される垂直下降流型移動層反応器(12)と、(ロ)前記垂直下降流型移動層反応器(12)に下方に後続するストリッピング用不活性ガスの空塔速度が0.03〜0.7m/sに設定された濃厚流動層型ストリッピング装置(13)と、
(ハ´)濃厚流動層型再生装置(14)であって前記ストリッピング装置(13)からスタンドパイプ(26 ´) を介して導入される流動接触分解触媒(ct)が導入される導入口が装置高さの1/2より低い部分で、
前記ストリッピング装置(13)からの前記導入口における圧力を(P)、
当該濃厚流動層型再生装置(14)の塔頂圧を(PT )、
当該濃厚流動層型再生装置(14)の塔底圧を(PB )、
としたときに
P>(PT +PB )/2
となる位置に接続され且つ再生用空気の空塔速度が0.1〜1.5m/sに設定された濃厚流動層型再生装置(14)と、
前記ストリッピング装置(13)からの流動接触分解触媒(ct)が導入口が 装置高さの1/2より低い部分に接続された且つ再生用空気の空塔速度が0.1〜1.5m/sに設定された濃厚流動層型再生装置(14)と、
(ニ)前記濃厚流動層型再生装置(14)の上部に接続されて該濃厚層型再生装置内の流動接触分解触媒および再生用空気を全量受け入れて上端部を経て前記流動接触分解触媒(ct)を前記垂直下降流型移動層反応器(12)へと循環供給させるための再生用空気の空塔速度が2〜20m/sに設定された中高速稀薄移動層からなる上昇流型再生装置(15)、
とを用いることを特徴とする炭化水素油の接触分解方法。 - 前記垂直下降流型高速移動層反応器(12)における接触時間を0.1〜2.0秒、触媒/油比が10〜50、該反応器出口における温度を530〜700℃に設定するとともに、導入される触媒/油比を10〜50としたこと特徴とする請求項1または請求項2に記載の炭化水素質油の接触分解方法。
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