JP3554732B2 - 質量分析計 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に蛋白質などの難揮発性物質の分離分析に重要な液体クロマトグラフと質量分析計とを結合した装置、すなわち液体クロマトグラフ・質量分析計におけるインターフェースに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、分析の分野では液体クロマトグラフ・質量分析計の開発が重要視されている。液体クロマトグラフは混合物の分離に優れるが物質の同定ができず、一方質量分析計は感度も高く物質の同定能力に優れるが混合物の分析は困難である。そこで、液体クロマトグラフの検出器として質量分析計を用いる液体クロマトグラフ・質量分析計は、混合物の分析に対して大変有効である。
【0003】
参考のために、従来の液体クロマトグラフ・質量分析計の全体の構成を示すブロック図を図14に示す。液体クロマトグラフから溶出してくる試料溶液は配管2によりイオン源に導入される。イオン源はイオン源用電源4により信号ライン5aを介して制御されている。イオン源で生成した試料分子に関するイオンは、質量分析部に導入されて質量分析される。この質量分析部は排気系により真空に排気される。質量分析されたイオンはイオン検出器8で検出され、検出信号は信号ライン5bを介してデータ処理装置に送られる。
【0004】
さて、このように液体クロマトグラフ・質量分析計の原理は簡単であるが、液体クロマトグラフは溶液中の試料を扱うのに対して、質量分析計は高真空中のイオンを扱うという相性の悪さから、この方法の開発は非常に困難なものとなっている。この問題を解決するためにいくつかの方法が開発されている。なかでも有力視されているのは、液体クロマトグラフからの溶出液を噴霧し、生成した液滴中に含まれる試料分子をイオン化して質量分析部へと取り込む噴霧イオン化法である。
【0005】
噴霧イオン化法の例として、非特許文献1に記載されている静電噴霧法について説明する。図15に静電噴霧イオン源を備えた液体クロマトグラフ・質量分析計の構造を示す断面図を示す。液体クロマトグラフ1から溶出してくる試料溶液を、配管2、コネクタ10を介して噴霧細管11に導入する。この噴霧細管11と対向電極12との間に数kVの電圧を印加すると、噴霧細管11の先端で試料溶液がコーン状態になりその先端から微小液滴が生成する、いわゆる静電噴霧現象が起こる。静電噴霧法では、噴霧用ガス噴出口13を設け、噴霧細管11のまわりから窒素などのガスを流し微小液滴の気化を促進させる。さらに、生成した微小液滴に向けて、窒素などのガスを対向電極12側に設けられた気化用ガス噴出口14から吹き付け、微小液滴の気化を促進させる。以上のような過程を経て生成したイオンは、イオン導入細孔15から直接真空中に導入され、高真空下の質量分析部6で質量分析される。
【0006】
特許文献1には、加熱して試料溶液の噴霧を行なう際に噴霧細管の位置はプロセスに無関係であり、細管をオリフィス板に対して90°にしてもよいとの記載がある。しかし、細管を加熱しない場合に、噴霧細管の中心線を細孔の中心線に対して傾斜することによって得られる顕著な効果を示唆するような記載は存在しない。また、特許文献2には、噴霧ノズルを二つに分けて噴霧を行なうことが示されている。しかし、液適の方向は細孔の中心軸に対して直角であり、また、イオン放電は電極を用いて行なっており、本発明とは全く別のものである。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第4,935,624号明細書
【特許文献2】
特開平3−235055号公報
【非特許文献1】
アナリティカル ケミストリー 1987年、59巻、2642頁(Analytical Chemistry 59 (1987) 2642)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
かかる従来の方法には次のような課題があった。静電噴霧イオン源に導入できる試料溶液の流量は、毎分10マイクロリットル程度に限られており、これを超える流量をイオン源に導入するとイオンを安定して観測することができなかった。これは、試料溶液の流量が増すとともに、静電噴霧により生成される液滴の直径が大きくなり、液滴を気化し液滴中に含まれるイオンを取り出すことが困難となるためである。一方、通常用いられる液体クロマトグラフの流量は毎分200マイクロリットルから毎分1000マイクロリットルである。この、液体クロマトグラフと静電噴霧イオン源との流量の不適合のために、液体クロマトグラフと静電噴霧イオン源とを直接結合することが不可能であった。従来は、液体クロマトグラフから溶出してくる試料溶液をスプリッターを用いて分離し、試料溶液のごく一部だけを静電噴霧イオン源に導入する方法が採られていた。スプリッターを用いて液体クロマトグラフと静電噴霧イオン源とを結合する構成図を図16に示す。液体クロマトグラフから溶出してくる試料溶液を、配管2aを通してスプリッター16に導入する。試料溶液はスプリッター16により分割され、ごく一部だけが配管2bによりイオン源3に導入されるが、大部分の溶液は配管2cより排出される。
【0009】
しかしながら、図16に示したような構成では、分離比1/100といった、分離比の高いスプリッターを用いなければならなかった。分割比の高いスプリッターは安定に動作させることが困難であり、観測されるイオン強度も安定しない。さらに、イオン源3に試料溶液を導入する配管2b内の流量が少ないと、配管2b内での拡散の問題も無視できなくなる。従って、スプリッターを用いずに液体クロマトグラフと静電噴霧イオン源とを直結できるような、高い流量でも安定して動作可能な静電噴霧イオン源の開発が望まれていた。
【0010】
本発明の目的は、高い流量の試料溶液を導入することができる静電噴霧イオン源を提供することであり、これにより液体クロマトグラフと静電噴霧イオン源を直結し、安定して使用可能にすることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的、すなわち、静電噴霧イオン源を高い流量でも安定して動作可能とするため、液体クロマトグラフから送られてくる試料溶液を噴霧細管の一端に導入し噴霧細管の他端から静電噴霧させイオンを生成するための静電噴霧イオン源、生成したイオンを真空部に導入するためのイオン導入細孔、及び導入されたイオンを質量分析するための質量分析部を備えた質量分析計において、噴霧細管の中心軸をイオン導入細孔の中心軸に対し傾けて、所定の角度を有するように配置する。より詳細には、噴霧細管より試料溶液を静電噴霧し生成した噴流に向けて、イオン導入細孔の中心軸に対して噴霧細管の中心軸を傾けた方向とは逆の方向から溶媒分子の分圧を下げ液滴の気化を促進させるとともに微粒化した液滴を前記イオン導入細孔の方向に押し戻すためのガス(クロスフローガス)を吹きかける。また、静電噴霧により生成した液滴を、摂氏50度から250度に加熱したイオン導入細孔を通して真空部へ導入する。静電噴霧イオン源の他の部分とは独立して、イオン導入細孔を有する電極を加熱する。さらに、試料溶液の流量を測定する機構を設け、測定された流量に応じて、噴霧細管の角度、噴霧細管の位置、噴霧用ガスの流量、クロスフローガスの流量、イオン導入細孔の温度のうち少なくとも一つを制御する機構を設ける。また、試料溶液の電気伝導度を測定する機構を設け、試料溶液の電気伝導度に応じて噴霧細管に印加する電圧を制御する機構を設ける。
【0012】
噴霧細管の中心軸をイオン導入細孔の中心軸に対し傾けて配置するので、静電噴霧により生成した微小液滴のうち特に粒径の小さなものだけを選択的にイオン導入細孔に導入し、真空部に取り込み質量分析することができる。加熱したイオン導入細孔を通すので、イオン導入細孔内で液滴の気化が促進される。試料溶液の流量を測定する機構を設け、流量に応じて、噴霧細管の角度、噴霧細管の位置、噴霧用ガスの流量、クロスフローガスの流量、イオン導入細孔の温度を制御する、さらに試料溶液の電気伝導度を測定する機構を設け、電気伝導度に応じて噴霧細管に印加する電圧を制御するので、液体クロマトグラフと静電噴霧イオン源とを直結して、毎分数百マイクロリットルというような高い流量の試料溶液を導入しても、安定してイオンを観測できる液体クロマトグラフ・質量分析計が可能となる。又、液体クロマトグラフから送られてくる試料溶液を噴霧細管の一端に導入し、この噴霧細管の他端から静電噴霧させイオンを生成するための静電噴霧イオン源、この生成されたイオンを真空部に導入するためのイオン導入細孔、およびこの導入されたイオンを質量分析するための質量分析部を備えた質量分析計において、前記噴霧細管の先端が前記イオン導入細孔から所定の距離をおいて配置され、前記噴霧細管の先端が前記イオン導入細孔の中心軸から所定の距離の範囲内にあり、かつ前記噴霧細管の中心軸と前記噴霧細管の先端を通る前記イオン導入細孔の中心軸と平行な直線とが所定の角度をなしている。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明による実施例を図1から図13により説明する。図1は、本発明による第1の実施例である静電噴霧イオン源を示す。液体クロマトグラフから溶出してくる試料溶液は、配管2、コネクタ10を介して噴霧細管11に導入される。噴霧細管11の中心軸の角度は、対向電極12に開口するイオン導入細孔15aの中心軸に対して傾けることができる。ここで述べる角度とは、噴霧細管11の中心軸と、噴霧細管11の先端を通りかつイオン導入細孔15aの中心軸と平行な直線とのなす角度を意味する。また、噴霧細管11の先端の位置は、イオン導入細孔15aに対して移動させることができる。噴霧細管11先端とイオン導入細孔15aとの間の距離は、近すぎると放電が起きやすくなり、遠すぎるとイオンが強く観測できないので、3mmから20mmの間が望ましい。細管11先端の、イオン導入細孔15aの中心軸に対するずれは、0mmから20mmの間が望ましい。試料溶液は噴霧細管11と対向電極12との間に高電圧を印加することにより静電噴霧されるが、同時に噴霧用ガス噴出口13より噴霧用ガスを流すことにより噴霧が容易となる。この噴霧用ガスは加熱してもよい。
【0014】
保護電極17は外界の電場の影響を遮蔽するために設けられているが、電源18aを用いて対向電極12との間に電圧を印加することにより、静電噴霧で生成されたイオンをイオン導入細孔15aの方向にドリフトさせることができる。また、この電極17を絶縁材に置き換え、噴霧細管11の先端と対向電極12との間に電界を集中させてもよい。得られたイオンは、イオン導入細孔15a、差動排気部19、イオン導入細孔15bを通して、質量分析部6に取り込まれ、質量分析される。イオン導入細孔15aとイオン導入細孔15bとの間には、電源18bにより数十ボルトのドリフト電圧を印加する。このドリフト電圧は、イオンの透過率を向上させるとともに、差動排気部19において溶媒分子の付着したイオンと残留ガスとを衝突させ、イオンから溶媒分子を取り除く効果がある。イオン導入細孔を有する対向電極12には、大気圧側あるいは中間圧力側のいずれかにヒーター20が設けられており、イオン導入細孔15aを通して気体が断熱膨張する際に温度が下がり、溶媒分子が再び凝集することを防ぐと同時に、イオン導入細孔15aの内部及びその周辺部における汚れを軽減している。
【0015】
図1に示したように、噴霧細管11とイオン導入細孔15aの中心軸との間の角度を傾けることにより、静電噴霧により生成した液滴の中で噴流の外周部に存在する特に粒径の小さい液滴だけをイオン導入細孔15aから取り込むことができる。しかも、イオン導入細孔15aの軸と噴霧細管11の軸とが平行である場合には、噴霧細管11から生成した噴流が対向電極12ではね返り、流れが不安定になるのに対して、イオン導入細孔15aの軸と噴霧細管11との軸が平行でない場合には、噴流が対向電極12に沿って流れるため流れが安定し、質量分析部6で観測されるイオン強度の安定性が向上した。噴霧細管11とイオン導入細孔15aの中心軸との間の角度は、イオン源に導入する試料溶液の流量により最適な角度は異なるので、10°から90°の間で流量に応じて調節する。
【0016】
静電噴霧により得られた微小液滴を含む噴流に対し、噴霧細管11を傾けた方向とは逆の方向からクロスフローガス21を当て、高い流量の場合にも十分なイオン強度を得ることができる。このクロスフローガス21は加熱してもよい。クロスフローガス21には、溶媒分子の分圧を下げることにより液滴の気化を促進させる効果とともに、微粒化した液滴をイオン導入細孔15aの方向に押し戻す効果がある。クロスフローガスの種類は、希ガス、窒素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガス、SFガス、あるいはこれらのガスの混合ガスが好ましい。
【0017】
対向電極12側に気化用ガス噴出口14を設け、クロスフローガス21とともに気化用ガスを液滴に吹き付け、さらに液滴の気化を促進させる第2の実施例を図2に示す。また、図2に示した構造の場合、対向電極12にヒーター20cを取り付け、噴流の中心付近に存在する粒径の大きな粒子を対向電極12に当てることにより消滅させ、かつ噴流の外周部に存在する粒径の小さな液滴だけをイオン導入細孔15aより真空中に取り込むことにより、噴霧細管11の軸とイオン導入細孔15aの中心軸とのなす角を必ずしも10°から90°の間にせず、10°より少ない角度でもイオン源に高い流量を導入することができる。
【0018】
高い流量の試料溶液を噴霧すると、噴流がイオン導入細孔15aに当ることによりイオン導入細孔15aの周囲が局所的に冷却され、液滴の気化が十分行なわれなくなり、質量分析可能なイオン量が減少する場合がある。これを避けるためには、図3に示す第3の実施例ように、イオン導入細孔付電極22とイオン導入細孔支持電極23とを断熱部24を用いて熱的に分離し、ヒーター20aによりイオン導入細孔付電極22を独立して加熱する。ヒーター20aは電界を乱さないようセラミック製が望ましい。イオン導入細孔の温度が低すぎるとイオンが得られにくくなり、高すぎると蛋白質等の熱解離しやすい試料が分解する恐れがある。このような場合、イオン導入細孔付電極22に熱伝対25などの温度計を接続しておき、温度を適温に保つようにヒーター20aの発熱量を制御して、安定にイオンを得ることができる。イオン導入細孔付電極22の温度は、50度から250度程度が望ましい。静電噴霧により生成した液滴のうち、噴流の中心部分に存在する粒径の大きな液滴は、ヒーター22bにより加熱されているイオン導入細孔支持電極23に接触し消滅する。イオン導入細孔付電極22の電位は、イオン導入細孔支持電極23と同電位でもよいが、電源18cを用いて独立に変化させてもよい。なお、イオン導入細孔支持電極23はイオン導入細孔付電極22を支持する部分である。
【0019】
より効果的に液滴を気化するために、加熱した長いイオン導入細孔を通して液滴を取り込む第4の実施例を図4に示す。静電噴霧により生成した微小液滴を、ヒーター20aにより加熱されている長いイオン導入細孔15cを通して差動排気部19に導入する。液滴が長いイオン導入細孔15c内を通過する際に熱エネルギーを得て、液滴の気化が促進される。イオン導入細孔15cの長さは、液滴の気化に限れば長いほど効果的だが、長くなるにつれてイオン導入細孔内部のクリーニングが困難となる。従って、イオン導入細孔15cの長さは、イオン導入細孔15cの内径の10倍から1000倍の間が好ましい。図1、図2、図3、図4に示した構造において、噴霧細管先端11の位置をイオン導入細孔15に対して移動させるのが困難な場合には、図5に示すように、噴霧細管先端11の位置をイオン導入細孔15の中心軸上の一点に固定し、この固定点を中心に噴霧細管11のイオン導入細孔15の中心軸に対する角度を変えることにより、噴霧細管11に導入可能な試料溶液の流量として毎分数マイクロリットルから毎分数百マイクロリットルまでの間で幅広く設定することができる。
【0020】
図6に、図4に示した静電噴霧イオン源のイオン導入細孔付近の拡大図を示す。真空シールはOリング26により行う。粒径の大きな液滴は、熱容量の大きなイオン導入細孔支持電極23に触れて消滅するので、イオン導入細孔付電極22とイオン導入細孔支持電極23との間の熱伝達を悪くしておけば、図6に示した断熱部24を特に設けなくともイオン導入細孔15cの温度が急に変化することはない。図7に示すように、イオン導入細孔付電極22とイオン導入細孔支持電極23とを独立の構造体とし、電極間の隙間に生ずる気層27により断熱を行なってもよい。図7に示した構造の場合、イオン導入細孔付電極22はイオン導入細孔支持電極23に取り付けられたヒーター20bにより加熱されるので、イオン導入細孔付電極用ヒーター20aは必ずしも必要ではない。
【0021】
図4、図6、図7に示した長いイオン導入細孔を有するイオン導入細孔付電極22は、金属ブロックに穴を開けることにより製造されるが、加工が困難な場合には、図8に示すように、金属ブロック28にイオン導入細管32を埋め込み、ロウ付け等の手段により金属ブロック28とイオン導入細管32を熱的に接触させても良い。イオン導入細孔付電極22に取り付けられるヒーター20aが気体の流れを乱さないように、図9に示すように、イオン導入細孔付電極22にヒーター20aを埋め込んでもよい。また、図10に示すように、イオン導入細孔付電極22は先端がシャープな形状でもよい。
【0022】
図11に、図4に示した静電噴霧イオン源を用いて測定した、静電噴霧イオン源に導入する試料溶液の流量と観測されるイオンの強度との関係を示す。試料溶液として、蛋白質であるチトクロームC溶液(濃度10−6mol/l(リットル)、水/メタノール/5%酢酸)を用い、試料分子にプロトンの付加した15価のイオンを観測した。噴霧細管とイオン導入細孔の中心軸とのなす角度は、0度、30度、45度として測定を行なった。イオン強度は、イオン源に毎分50マイクロリットルを導入したときに観測される強度を基準とした相対強度を表す。イオン源に導入する溶液の流量が毎分50マイクロリットルの場合には、噴霧細管とイオン導入細孔の中心軸とのなす角を変えても、観測されるイオン強度は実験誤差の範囲内でほとんど変わらなかった。しかし、角度が0度の場合には、溶液の流量を増すとともに、観測されたイオン強度は減少した。噴霧細管11をイオン導入細孔15cの中心軸より45度傾けた方向に配し、かつ、加熱した長いイオン導入細孔15cを通して液滴を取り込むことにより、試料溶液の流量を毎分50マイクロリットルから毎分200マイクロリットルまで変化させても、観測されるイオンの強度はほとんど変化しない。この時、イオン導入細孔径は0.25ミリメートル、イオン導入細孔の長さは30ミリメートル、温度は約100度、噴霧用ガスの流量は毎分1.5リットルであった。
【0023】
また、クロスフローガスの流量は、試料溶液の流量が毎分50マイクロリットルの場合には毎分0〜2リットル、毎分100〜150マイクロリットルの場合には毎分1〜4リットル、毎分200マイクロリットルの場合には毎分3〜5リットルの範囲においてイオンが強く観測された。このように、イオン導入細孔の中心軸から傾けた方向から試料溶液を噴霧し、かつ加熱した噴霧細管を通して真空中に液滴を導入し、さらにクロスフローガスを用いることにより、イオン源に導入する試料溶液の流量を増してもイオンが強く観測された。
【0024】
本発明の結果、静電噴霧イオン源に毎分数百マイクロリットルの流量を導入してもイオンが強く観測された。その結果、液体クロマトグラフと静電噴霧イオン源の直結が可能となった。
【0025】
また、図11より明らかなように、イオン源に導入する試料溶液の流量によって、イオン強度が最も強く得られる噴霧細管とイオン導入細孔の中心軸との角度が異なる。そこで、図12に示したように、液体クロマトグラフとイオン源を連結する配管2の途中に流量計を配し、この流量計からの信号を信号ライン5cによりイオン源制御部に送り、イオン源制御部により、(1)噴霧細管の中心軸のイオン導入細孔の中心軸に対する角度、(2)噴霧細管の先端のイオン導入細孔からの距離、(3)噴霧用ガスの流量、(4)クロスフローガスの流量、(5)イオン導入細孔の温度、のいずれかの条件、あるいは複数の条件を自動的に制御することにより、常に最高のイオン強度を得ることができる。
【0026】
また、静電噴霧イオン源に導入する試料溶液の組成、とくに溶液の電気伝導度により、試料溶液を静電噴霧させるために噴霧細管に印加する電圧の最適値が異なる。図13に示すように、溶媒をイオン源3に導入するための流路の一部に溶媒の電気伝度を測定する装置31を設け、その信号を信号ライン5dによりイオン源用電源に送り、噴霧細管に印加する電圧を自動調節することにより、安定にイオンを得ることができる。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、静電噴霧により生成した液滴の中でも特に粒径の小さいものだけを真空部へと導入できる。液体クロマトグラフと静電噴霧イオン源とを直結して、従来の数十倍の流量の試料溶液を導入しても、安定してイオンを観測できる液体クロマトグラフ・質量分析計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例である、噴霧細管の中心軸とイオン導入細孔の中心軸とを傾けて配置した静電噴霧イオン源の断面図。
【図2】本発明の第2の実施例である、クロスフローガスとともに気化用ガスを液滴に吹き付ける静電噴霧イオン源の断面図。
【図3】本発明の第3の実施例である、ヒーターによりイオン導入細孔付電極を独立して加熱する静電噴霧イオン源の断面図。
【図4】本発明の第4の実施例である、加熱した長いイオン導入細孔を通して液滴を取り込む質量分析計の断面図。
【図5】本発明の第5の実施例である、噴霧細管の先端をイオン導入細孔の中心軸上に配し、噴霧細管の先端を中心にして噴霧細管の中心軸とイオン導入細孔の中心軸とのなす角を可変とする静電噴霧イオン源の断面図。
【図6】第4の実施例のイオン導入部分の拡大断面図。
【図7】イオン導入細孔付電極とイオン導入細孔支持電極とを独立の構造体としたイオン導入部分の拡大断面図。
【図8】金属ブロックに噴霧細管を埋め込み製造した長いイオン導入細孔を有するイオン導入細孔付電極の断面図。
【図9】ヒーターが埋め込まれたイオン導入細孔付電極の断面図。
【図10】先端がシャープな形状のイオン導入細孔付電極の断面図。
【図11】第4の実施例の静電噴霧イオン源を用いて測定した、イオン源に導入する試料溶液の流量と観測されたイオン強度との関係を示す図。
【図12】試料溶液の流量を測定し、イオン源を制御するための構成図。
【図13】試料溶液の電気伝導度を測定し、イオン源を制御するための構成図。
【図14】従来の液体クロマトグラフ・質量分析計の構成を示すブロック図。
【図15】従来の静電噴霧イオン源を備えた液体クロマトグラフ・質量分析計の構造を示す断面図。
【図16】従来のスプリッターを用いて液体クロマトグラフと静電噴霧イオン源とを結合する構成を示す図。
【符号の説明】
1…液体クロマトグラフ、2、2a、2b、2c…配管、3…イオン源、4…イオン源用電源、5a、5b、5c、5d…信号ライン、6…質量分析部、7…排気系、8…イオン検出器、9…データ処理装置、10…コネクタ、11…噴霧細管、12…対向電極、13…噴霧用ガス噴出口、14…気化用ガス噴出口、15、15a、15b、15c…イオン導入細孔、16…スプリッター、17…保護電極、18a、18b、18c…電源、19…差動排気部、20、20a、20b、20c…ヒーター、21…クロスフローガス、22…イオン導入細孔付電極、23…イオン導入細孔支持電極、24…断熱部、25…熱伝対、26…Oリング、27…気層、28…金属ブロック、29…流量計、30…イオン源制御部、31…電気伝導度測定装置、32…イオン導入細管。

Claims (9)

  1. 試料溶液を静電噴霧する噴霧細管と、該静電噴霧により生成されたイオンが通過するイオン導入細孔を備えた電極と、前記イオンを質量分析する質量分析部と、前記イオン導入細孔を備えた前記電極を加熱する手段と、前記試料溶液の流量を測定する手段と、測定された前記流量に応じて、前記噴霧細管の中心軸の前記イオン導入細孔の中心軸に対する角度を制御する手段とを有し、前記噴霧細管はその中心軸が前記イオン導入細孔の中心軸に対して傾いているように配置されていることを特徴とする質量分析計。
  2. 試料溶液を静電噴霧する噴霧細管と、該静電噴霧により生成されたイオンが通過するイオン導入細孔を備えた電極と、前記イオンを質量分析する質量分析部と、前記イオン導入細孔を備えた前記電極を加熱する手段と、前記試料溶液の流量を測定する手段と、測定された前記流量に応じて、前記噴霧細管の先端の前記イオン導入細孔からの距離を制御する手段とを有し、前記噴霧細管はその中心軸が前記イオン導入細孔の中心軸に対して傾いているように配置されていることを特徴とする質量分析計。
  3. 試料溶液を静電噴霧する噴霧細管と、該静電噴霧により生成されたイオンが通過するイオン導入細孔を備えた電極と、前記イオンを質量分析する質量分析部と、前記イオン導入細孔を備えた前記電極を加熱する手段と、前記試料溶液の流量を測定する手段と、測定された前記流量に応じて、前記イオン導入細孔の温度を制御する手段とを有し、前記噴霧細管はその中心軸が前記イオン導入細孔の中心軸に対して傾いているように配置されていることを特徴とする質量分析計。
  4. 試料溶液を静電噴霧する噴霧細管と、該静電噴霧により生成されたイオンが通過するイオン導入細孔を備えた電極と、前記イオンを質量分析する質量分析部と、前記イオン導入細孔を備えた前記電極を加熱する手段と、前記試料溶液の流量を測定する手段と、測定された前記流量に応じて、前記噴霧細管に流す噴霧用ガスの流量を制御する手段とを有し、前記噴霧細管はその中心軸が前記イオン導入細孔の中心軸に対して傾いているように配置されていることを特徴とする質量分析計。
  5. 試料溶液を静電噴霧する噴霧細管と、該静電噴霧により生成されたイオンが通過するイオン導入細孔を備えた電極と、前記イオンを質量分析する質量分析部と、前記イオン導入細孔を備えた前記電極を加熱する手段と、前記試料溶液の流量を測定する手段と、測定された前記流量に応じて、前記静電噴霧により得られる微小液滴を含む噴流に対し、前記噴霧細管を傾けた方向とは逆の方向から流す所定のクロスフローガスの流量を制御する手段とを有し、前記噴霧細管はその中心軸が前記イオン導入細孔の中心軸に対して傾いているように配置されていることを特徴とする質量分析計。
  6. 試料溶液を静電噴霧する噴霧細管と、該静電噴霧により生成されたイオンが通過するイオン導入細孔を備えた電極と、前記イオンを質量分析する質量分析部と、前記イオン導入細孔を備えた前記電極を加熱する手段と、前記試料溶液の電気伝導度を測定する手段と、測定された前記電気伝導度に応じて、前記噴霧細管に印加する電圧を制御する手段とを有し、前記噴霧細管はその中心軸が前記イオン導入細孔の中心軸に対して傾いているように配置されていることを特徴とする質量分析計。
  7. 試料溶液を静電噴霧する噴霧細管と、該静電噴霧により生成されたイオンが通過するイオン導入細孔を備えた電極と、前記イオンを質量分析する質量分析部と、前記イオン導入細孔を備えた前記電極を加熱する手段とを有し、前記噴霧細管の先端位置を前記イオン導入細孔の中心軸上の一点に固定して、該固定点を中心に前記噴霧細管の中心軸の前記イオン導入細孔の中心軸に対する角度を変化させ、前記噴霧細管に導入する前記試料溶液の流量に応じて前記角度が設定され、前記噴霧細管はその中心軸が前記イオン導入細孔の中心軸に対して傾いているように配置されていることを特徴とする質量分析計。
  8. 試料溶液を静電噴霧する噴霧細管と、該静電噴霧により生成されたイオンが通過するイオン導入細孔を備えた電極と、前記イオンを質量分析する質量分析部と、前記イオン導入細孔を備えた前記電極を加熱する手段とを有し、前記噴霧細管に導入する前記試料溶液の流量に応じて、前記噴霧細管の中心軸と前記イオン導入細孔の中心軸との間の角度が調整されることを特徴とする質量分析計。
  9. 試料溶液を噴霧細管の一端に導入し前記噴霧細管の他端から静電噴霧させイオンを生成するための静電噴霧イオン源と、前記イオンを真空部に導入するためのイオン導入細孔を備えた電極と、前記真空部に導入された前記イオンを質量分析する質量分析部とを備え、前記噴霧細管に導入する前記試料溶液の流量に応じて、前記噴霧細管の中心軸と前記イオン導入細孔の中心軸との間の角度が調整されることを特徴とする質量分析計。
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