JP3556412B2 - デジタルオーディオ放送における受信装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はデジタルオーディオ放送(Digital Audio Broadcast:DAB)における受信装置に係わり、特に、2N個のデジタルデータを2ビットづつN組に分け、各組の第1データを実数部、第2データを虚数部として順次フーリエ逆変換部に入力し、該フーリエ逆変換部から出力される実数部、虚数部をアナログ信号に変換し、それぞれにキャリア周波数fcのcos波、sin波を乗算し、乗算結果を合成して空間に放射し、空間に放射された信号を受信し、受信信号に前記キャリア周波数のcos波、sin波を乗算し、それぞれの乗算結果を所定サンプリング周波数でデジタルに変換後フーリエ変換部に入力し、該フーリエ変換部から出力される実数部、虚数部を前記第1データ、第2データとして出力するデジタルオーディオ放送における受信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
音声信号をデジタル化して直列データとし、該直列データを2N個づつ区切り、該2N個のデジタルデータを2ビットづつN組に分け、各2ビットの1、0の組合せでそれぞれ周波数が異なるN個のキャリアを4相PSK変調し、各変調信号を周波数多重して送信局より送出し、受信機で該周波数多重された位相変調信号を受信、復調して音声出力するデジタルオーディオ放送(DAB)が提案され欧州等において実用化に向けて検討されている。
【0003】
このDAB方式は、選択性フェージングの影響を少なくするために、情報をパラレルに分けて多数のキャリアを用いて変調を行ない(周波数インターリーブ)、いずれかのキャリアがフェージングを受けても全体として影響を少なくする方法であり、基本的に周波数分割多重(FDM:Frequency Division Multiplex)方式である。ところで、単なるFDMの場合にはスペクトラムのオーバラップを避けるためにキャリアの間隔を十分に取らなければならなくなり、周波数利用効率があまり良くない。そこで、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式が提案されている。このOFDMの場合は各キャリアが直交条件を満たすように配置され、スペクトラムのオーバラップを許しており周波数利用効率が良い上に、変調器、復調器でIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform:離散フーリエ逆変換)、DFT(Discrete Fourier Transform:離散フーリエ変換)操作を利用することができハードウェアを非常に簡素化できる利点がある。
【0004】
(a) OFDM方式によるデジタルオーディオ放送の原理
図13はデジタルオーディオ放送の送信機の原理的構成図である。1は伝送速度fs(=2/Δt)で入力される直列データd(n)(a(0),b(0),a(1),b(1),・・・)を2Nビットの並列データに変換するシリアルパラレル変換器(S/P変換器)、20〜2N−1はN個のキャリア乗算部で、2×Nビットの並列データを2ビットづつのN組a(0),b(0);a(1),b(1);・・・;a(N−1),b(N−1)に分け、各組の第1ビットa(0),a(1),・・a(N−1)に周波数がf0〜fN−1のキャリア(cosωnt)を乗算し、第2ビットb(0),b(1),・・b(N−1)に周波数f0〜fN−1のキャリア(−sinωnt)を乗算するもの、3は各組のキャリア乗算部の出力信号a(n)cosωnt,−b(n)sinωnt(n=0〜N−1)を合成すると共に周波数多重して信号D(t)を送出する周波数多重化部(MUX)である。
【0005】
周波数多重化部3で各組のキャリア乗算部の出力信号を合成することにより、各組の2ビットの1,0の組合せでそれぞれ周波数f0〜fN−1のキャリアを4相PSK変調したことになり、周波数多重化部3の出力D(t)は
D(t)=Σ{a(n)cosωnt−b(n)sinωnt} (n=0〜N−1)
となる。尚、各キャリアの周波数間隔をΔfとすれば、(n+1)番目のキャリア周波数fnは
fn=f0+nΔf
となり、2ビットデータの伝送時間をΔt(伝送速度fs=2/Δt)とすれば、周波数間隔Δfは
Δf=1/NΔt
となる。
【0006】
図14は周波数多重化部3の機能説明図であり、Δf間隔のN個の各キャリアf0〜fN−1を2ビットづつのN組のデータa(0),b(0);a(1),b(1);・・・;a(N−1),b(N−1)で4φPSK変調し、各変調信号を周波数多重して伝送する。図15はシンボルの説明図であり、2×Nビットで1シンボルが構成され、1シンボルの時間長をTsとすれば、
Ts=NΔt
Δf=1/Ts
となる。1シンボル(2×Nビット)毎に上記4φPSK変調及び変調信号の周波数多重が行なわれて周波数多重信号D(t)が順次送信される。
【0007】
図16はデジタルオーディオ放送の受信機の原理的構成図である。40〜4N−1はN個のキャリア乗算部で、受信信号D(t)に周波数f0〜fN−1のキャリア(cosωnt,−sinωnt,n=0〜N−1)をそれぞれ乗算するもの、50〜5N−1は各乗算部の出力を積分してデータを復調する積分器、6は2×Nビットの並列データを直列データに変換するパラレルシリアル変換器(P/S変換器)である。
各積分器50〜5N−1は入力信号D(t)に対して次式
【数1】
Figure 0003556412
の演算を行なって、データa(0),b(0);a(1),b(1);・・・;a(N−1),b(N−1)を復調する。
【0008】
(b) DFTを用いたOFDM変復調方式
ところで、OFDMのベースバンド信号D(t)を発生するためにはN個の4φPSK変調器が必要になり、又、復調するにもN個の4φPSK復調器が必要になり、Nが大きくなると実用的でない。そこで、次にDFTを用いて変復調を簡単に行なう方法について説明する。
【0009】
(b−1) 変調部の構成
OFDMのベースバンド信号は
【数2】
Figure 0003556412
と表される。
d(k)=a(k)+jb(k)とすれば、(1)式は
【数3】
Figure 0003556412
と表わされる。ここで、*は複素数を意味し、R[ ]は[ ]の実数部を表わす。
【0010】
【数4】
Figure 0003556412
であるから、(3)式よりD(t)は(2)式で表わされることは明らかである。(2)式において、t=mΔtとすると、
【数5】
Figure 0003556412
となる。ここで、D(m)はd(k)のIDFT(離散フーリエ逆変換)の実数部になっていることに注目されたい。D(m)をΔt毎にD(0),D(1),・・・D(N−1)として出力すると図17に示すようになる。この信号は(2)式をΔt毎にサンプリングしたものに他ならない。従って、図18(a)に示す周波数特性と図18(b)に示すインパルス特性を備えた理想フィルタを通すと(2)式と同じものが得られる。
【0011】
以上のことから、変調器としては入力データd(k)(複素)をIDFTして、その実数部D(0)からD(N−1)までをΔt毎に出力し、理想フィルタを通せば変調波(ベースバンド信号)が得られることになる。図19はかかる点に着目して構成した送信機の要部構成図である。11は2ビットづつのN組のデータa(k),b(k)(k=0〜N)で複素表現した入力データd(k)に離散フーリエ逆変換を施すIDFT部、12aはIDFT部から出力される実数部をアナログに変換するDA変換器、13aは理想フィルタ、14aは理想フィルタ出力D(t)にcosωctを乗算して周波数変換する乗算部である。
【0012】
(b−2) 復調部の構成
受信周波数変換においてD(t)のみが得られた場合、2N点のサンプリングをしなければ原情報を取り出すことができない。これは、D(t)がN点IDFTの実数部だけになっているためである。又、図20(a),(b)に示すようにサンプリング定理からも明らかである。サンプリング定理によれば帯域N・Δfの信号は 1/(2・N・Δf)の周波数でサンプリングしなければならない。
1/(2・N・Δf)=Δt/2
であるから、Δt間隔でなくΔt/2間隔でサンプリングしなければならない。このため、Ts区間(N・Δt)において2N点のサンプリングが必要になる。
しかし、実数部D(t)と虚数部I(t)が得られた場合は次に示すようにN点のサンプリングで原信号を取り出すことができる。
受信周波数変換後の複素ベースバンド信号を(5)式に示す。
【0013】
【数6】
Figure 0003556412
右辺実数部、虚数部はそれぞれ伝送路、雑音によってD(t),I(t)が変形したもので、理想的な伝送路ではD(t),I(t)に等しくなる。
【0014】
【数7】
Figure 0003556412
(6)式をmΔt(m=0,1,2,・・・N−1)でサンプリングすれば、
【数8】
Figure 0003556412
とすれば、(7)式は
【数9】
Figure 0003556412
従って、d(k)は(8)式のDFTで次のように得られる。
【0015】
【数10】
Figure 0003556412
これより原信号d(k)の推定値が得られる。尚、参考までにDFT,IDFTの関係式は以下のようになる。
【0016】
【数11】
Figure 0003556412
以上から、受信信号S(t)を周波数変換して得られた複素ベースバンド信号をローパスフィルタを介してデジタルに変換し、DFT部でDFTを施せば原信号d(k)の推定値が得られる。図21はかかる点に着目して構成した受信機の要部構成図であり、15は周波数変換部、16a,16bはローパスフィルタ、17a,17bはAD変換器、18はDFT部である。
【0017】
(c) 送信側周波数変換
D(t),I(t)を用いた直交平衡変調方式は図22に示すように、SSB方式に用いられる周波数変換方式と同じである。図中11はIDFT部、12a,12bはAD変換器、13a,13bはローパスフィルタ、14は周波数変換部であり、cosωct,sinωctを乗算する乗算器14a,14b及び乗算器出力を合成して出力するハイブリッド回路14cで構成されている。
【0018】
周波数変換部14の出力信号S(t)は
【数12】
Figure 0003556412
となり、下側波帯を含まない。従って両側波帯方式に比べ、帯域は1/2になり、伝送効率が向上する。
【0019】
(d) 受信側周波数変換方式
図23はcosωct,sinωctによる直交周波数変換部の構成図である。15aは受信信号s(t)((11)式参照)に次式で示す雑音信号n(t)
n(t)=nc(k)cos2π(fc+fk)t−ns(k)sin2π(fc+fk)t
を加算して信号r(t)を出力する加算器(実際には存在しない)、15bはバンドパスフィルタ、15c,15dはバンドパスフィルタ出力にcosωct,−sinωctを乗算する乗算部である。振幅減衰や雑音がなく、しかも位相遅れの無い理想的な伝送路では、r(t)=s(t)となる。以下では、r(t)=s(t)として説明する。この直交周波数変換部の出力信号D′(t),I′(t)はそれぞれ次式
【数13】
Figure 0003556412
により表現される。尚、(12),(13)式において2fcの項は無視している。この(12),(13)式は送信側複素ベースバンド信号を表わす(3)式の実数部と虚数部にそれぞれ一致している。従って、前に述べたようにN点サンプリングDFT演算することにより原信号を取り出すことができる。
【0020】
(e) 差動符号化
(d)において、受信側周波数変換方式について説明したが、OFDM方式において送信ローカル周波数ωcに同期した受信ローカル周波数を作り出すことは非常に困難である。又、受信ローカル周波数に周波数誤差があった場合(非同期の場合)、復調ベクトルの回転という結果になり絶対位相による復調は困難である。そのため、送信側で絶対位相で情報を表わす代わりに位相回転の大きさで情報を表わすようにする。このことを差動符号化といい、若干の周波数誤差があっても復調が可能となる。
【0021】
(e−1) 差動符号器
図24は送信側差動符号器の説明図であり、差動符号器21の論理式は
【数14】
Figure 0003556412
である。差動符号器21は
【数15】
Figure 0003556412
で複素表現されたデータDl(k)を上記論理式でdl(k)に変換するものである。
【0022】
差動符号は、
(1) [Al(k),Bl(k)]=(1,1)の場合、
【数16】
Figure 0003556412
となり、(14)式に代入すると
【数17】
Figure 0003556412
となり、位相変化しない。
【0023】
(2) [Al(k),Bl(k)]=(−1,−1)の場合は
【数18】
Figure 0003556412
となり、位相反転、すなわち、πシフトする。
【0024】
(3) [Al(k),Bl(k)]=(1,−1)の場合は
【数19】
Figure 0003556412
となり時計方向にπ/2シフトする。
【0025】
(4) [Al(k),Bl(k)]=(−1,1)の場合は
【数20】
Figure 0003556412
となり反時計方向にπ/2シフトする。
【0026】
(e−2) 差動復号器
(14)式より、次式
【数21】
Figure 0003556412
が得られる。差動復号器22は図25に示すようにデータdl(k)を(15)式の論理式に従ってDl(k)に変換するものである。従って、差動符号器の前記(1)〜(4)に対応して以下の(1)〜(4)の差動復号結果を出力する。
【0027】
【数22】
Figure 0003556412
【0028】
(f) 送信系、受信系のブロック
以上より、OFDM方式によるデジタルオーディオ放送における送信系及び受信系は図26(a),(b)に示す構成となる。尚、送信系の周波数変換部14において、14dは周波数fcのcos信号(cosωct)を出力する発振器、14eは該cos信号を−900移相して−sinωctを出力する移相器である。又、受信系の周波数変換部15において、15eは周波数fcのcos信号(cosωct)を出力する発振器、15fは該cos信号を−900移相して−sinωctを出力する移相器である。送信系のcos波、sin波(キャリア)を送信ローカル信号、受信系のcos波、sin波を受信ローカル信号という。
送信側では、既知の位相基準シンボルとM個のデータシンボルとでDABフレームを構成し、各シンボルを2ビットづつN組に分け、各組の第1データを実数部、第2データを虚数部として差動符号化し、差動符号の実数部、虚数部を順次フーリエ逆変換部11に入力し、該フーリエ逆変換部から出力される実数部、虚数部をアナログ信号に変換し、それぞれに送信ローカル周波数fcのcos波、sin波を乗算し、乗算結果を合成して空間に放射する。
【0029】
受信側では、空間に放射された信号を受信し、受信信号に受信ローカル周波数のcos波、sin波を乗算し、それぞれの乗算結果をデジタルに変換後フーリエ変換部18に入力し、該フーリエ変換部から出力される実数部、虚数部を差動復号化して原データである第1データ、第2データとして順次出力する。フーリエ変換部18はDFTウィンドウ信号の発生タイミングに基づいてフーリエ変換処理を実行する。すなわち、図示しないウィンドウ信号発生部がフレーム間に設けられたヌル信号部分を検出して各シンボルのフーリエ変換実行タイミングであるDFTウィンドウ信号を出力し、フーリエ変換部18はこのDFTウィンドウ信号の発生タイミングに基づいてフーリエ変換を実行する。
【0030】
図27はDABフレーム、ウィンドウ信号の説明図である。DABフレームの先頭部分は同期チャネルと称され、ヌル信号部分NULLと位相基準シンボル部分PRS(Phase Reference Symbol)とで構成され、ヌル信号部分NULLの後にはマルチパスの影響を軽減するために62μsのガードインターバルGITが設けられている。同期チャネルの後には所定数(=m)のシンボルが配列され、各シンボルの前には62μsのガードインターバルが設けられている。ガードインターバルには対応シンボルの後半部の内容が繰り返し挿入されている。
【0031】
ヌル信号部分NULLはフレームの先頭を見つけるために設けられている。位相基準シンボル部分PRSは差動復号のためのリファレンス信号であり、毎フレーム固定の固有パターン(既知)が送られて来る。PRSウィンドウはヌル信号部分NULLを検出し、それを基準に所定の時間位置に設けられたウィンドウであり、DFTウィンドウはシンボル毎のDFT演算のタイミングを示すものである。
【0032】
【発明が解決しようとする課題】
以上のOFDM方式によるデジタルオーディオ放送の受信機において、AD変換器17a、17b(図26)のサンプリング周波数を送信側のデジタルオーディオデータの伝送速度(サンプリング信号周波数)fsと正確に一致させる必要があり、周波数がずれたり、位相差が生じると正しく原オーディオデータを復調できなくなる。そこで、サンプリング周波数の誤差量を監視し、該誤差量が0となるようにフィードバック制御する必要がある。
しかし、車載用DAB受信機では移動に伴ってマルチパスが発生する。このため、信号処理によって伝送路の特性を求めても、時間の経過とともに常に特性が変化すし、サンプリング周波数の誤差量を求めることが困難である。
以上から、本発明の目的は、マルチパスの発生環境下であってもサンプリング周波数の誤差量を検出し、該誤差量が0となるように制御し、これにより正しく原オーディオデータを復調することである。
【0033】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、本発明によれば、OFDM方式によるデジタルオーディオ放送の受信機において、DAB放送局から空間に放射された信号を受信し、受信信号にキャリア周波数のcos波、sin波を乗算してベースバンド信号を出力するRF信号復調部、それぞれの乗算結果を所定サンプリング周波数でデジタルデータに変換するAD変換器、DABフレームを構成する各シンボルのフーリエ変換実行タイミングであるDFTウィンドウ信号を出力するDFTウィンドウ発生部、シンボル毎に前記デジタルデータにフーリエ変換処理を施して原オーディオデータを復調するフーリエ変換部、位相基準シンボルのフーリエ変換出力に基づいて伝送路のインパルス応答を演算するインパルス応答演算部、インパルス応答に含まれる各インパルスの位置及びレベルに基づいてDFTウィンドウ内のインパルス重心位置を算出するインパルス重心位置演算部、前回のフレームにおけるDFTウィンドウ位置と今回のフレームにおけるDFTウィンドウ位置の偏差、前回のフレームにおけるインパルス重心位置、今回のフレームにおけるインパルス重心位置とから重心位置の変化量を計算し、該重心位置の変化量に基づいて前記サンプリングパルスの周波数誤差を検出し、該誤差が0となるように制御するサンプリング周波数制御手段とを備えたデジタルオーディオ放送の受信機により達成される。
【0034】
【発明の実施の形態】
(A) 本発明の原理
(a)送受信信号フレームのずれ量
DAB受信機は、以下の方法で送信されたDAB信号フレームと受信したDAB信号フレームのずれ量を特定する。
図1は伝送路のモデルであり、51はDAB信号送信機、52はDAB受信機、53は伝送路である。又、x(n)は送信信号、h(n)は伝送路の特性、y(n)は受信信号である。それぞれの信号は、以下の関係がある。
X(k)・H(k)=Y(k)
すなわち、
H(k)=Y(k)/X(k) (16)
の関係がある。ただし、X(k)、H(k),Y(k)はx(n),h(n),y(n)をフーリエ変換したものである。
【0035】
以上の関係があるため、x(n),y(n)、または、X(k),Y(k)が既知であれば、h(n)(インパルス応答)が導出され、このインパルス応答により送信された信号フレームと受信した信号フレームのずれ量を特定することができる。具体的には、図27に示すフレームの先頭に含まれる同期捕捉用の基準位相シンボル(PRS)をX(k)、受信したPRSをY(k)とすることで、h(n)を導出する。
【0036】
(b)インパルス応答h(n)とフレームのずれ量の関係
次に、インパルス応答h(n)とフレームのずれ量の関係を説明する。マルチパスが発生していない状態で、送信機51と受信機52のサンプリング周波数が一致している場合には図2の様に例えばn=0の位置でインパルス応答IPLが観測される。尚、図2においてWDWはDFTウィンドウである。以下にその理由を説明する。
DABではX(k)に次式に示す信号を使用する。
X(k)=ej π k/4 (−m≦k≦−1,1≦k≦m)
0(mが上記以外)
この信号を図示すると図3の様になる(−m≦k≦−1,1≦k≦mの範囲にキャリアが存在する)。従って、伝送路に遅延時間が無ければ、H(k)は
H(k)=Y(k)/X(k)=1(−m≦k≦−1,1≦k≦m)
0(mが上記以外)
となる。上式において近似的にH(1)=1とおくと、H(k)の逆DFTが以下のsinc関数で与えられることは明らかである。
【0037】
h(n)=(m/N)・[sin(nπm/N)/(nπm/N)] (17)
具体的にはDABのモードIではm=1536,N=2048であるため、上記のh(n)はn=0の時h(0)=1,n≠0の時h(n)≪1となり、図4に示すようにh(n)が最大となるn(=0)に鋭いピークが現れる。従って、伝送路に遅延時間がない場合には図5(a)に示すようなインパルス応答が得られる。しかし、伝送路にn0サンプリング分の遅延時間が存在する場合にはインパルス応答は、h(n−n0)と表現される。このため、式(17)において、nをn−n0とおきかえると、インパルス応答は図5(b)に示すようになりインパルスがn0ずれた位置に現れる。
【0038】
以上のように、信号遅延によりインパルス位置がずれることから、送信機と受信機のサンプリング周波数が一致しない場合にもインパルス位置がずれる。例えば、マルチパスが発生していない状態で、送信機と受信機のサンプリング周波数が一致していない場合には、図6に示すようにインパルス応答が観測される。
従って、マルチパスが発生していない場合には、インパルス応答におけるインパルスがDFTウィンドウの一定位置、例えばn=0の位置で発生するように受信機のサンプリング周波数を制御すればよいことになる。
【0039】
しかし、マルチパスが発生する場合には図7に示すようにインパルス応答に複数のインパルスが現れ、その数、位置、レベルが受信機の移動に伴うマルチパス環境の変動により刻々と変化する。更に、DFTウィンドウ位置がマルチパスの状態に応じて最もエラーレートが少なくなるようにシンボル区間内で前後にスライドされて変化する。図8はDFTウィンドウ位置の制御法説明図である。Δはガードインターバル、TsはシンボルBの区間である。ガードインターバルΔにはシンボルBの後半部が繰り返し挿入されている。受信機で受信される直接波のシンボル位置は(a)に示すようになり、マルチパスによる反射波1〜反射波3のシンボル位置は遅延により(b)〜(d)に示すようになる。この結果、直接波及び各反射波の合成波は(e)に示すようなる。合成波において区間aは隣接シンボルAにより干渉を受けているガードインターバル区間、区間bは隣接シンボルAの干渉を受けていないガードインターバル区間、cはシンボルBの区間である。DFTウィンドウWDWは隣接シンボルの影響を受けずに各シンボルをDFT復調できる位置に設定する必要があり、図示する位置になるように設定される。
以上のように、マルチパス環境下では、異なる位置とレベルを有するインパルスが存在するだけでなく、DFTウィンドウの位置が変化し、これにより、A/D変換器のサンプリング周波数を制御することが困難となる。
【0040】
(c)本発明の概略
▲1▼A/D変換器のサンプリング周波数に誤差がない場合
マルチパスが発生している場合には、インパルスが複数存在するために、どのインパルスが直接波を示しているかを特定することは困難である。そこでDFTウィンドウ内におけるインパルスの重心位置を計算し、その重心位置に基づいて制御を行う。図9に示すように、DFTウィンドウの始端位置を0、終端位置を(N−1)、Nをサンプル数(シンボルのデータ数)、iをDFTウィンドウ内のサンプル位置、Diをサンプル位置iにおけるインパルスの振幅とすれば、インパルスの重心gは次式
【数23】
Figure 0003556412
により計算できる。
【0041】
さて、マルチパス発生環境下においてA/D変換器のサンプリング周波数に誤差がないものとすると、図10(a)に示すようにマルチパスによりDFTウィンドウ内におけるインパルスの重心位置が変動し、又、図10(b)に示すようにDFTウィンドウ位置が変化する。従って、第(L+i)フレームのDFTウィンドウ(PRSウィンドウ)の始端位置をxi,第(L+i)フレームのDFTウィンドウ(PRSウィンドウ)内におけるインパルス重心位置をgi、第(L+i)フレームと第(L+i−1)フレームにおけるDFTウィンドウ(PRSウィンドウ)のずれ量をpiとすれば、フレーム間のインパルス重心位置の変化量Giは次式
pi=xi−1−xi
Gi=gi−gi−1−pi (19)
で与えられる。
【0042】
従って、各フレーム間のウィンドウ制御量piは
p1=x0−x1
p2=x1−x2
・
・
pL=xL−1−xL
となり、又、フレーム間の重心位置変化量Giは
G1=g1−g0−p1
G2=g2−g1−p2
・
・
GL=gL−gL−1−pL
となり、L個の各フレーム間の重心位置変化量の平均値Dは次式
D=ΣGi/L (i=1〜L) (20)
より求まる。
【0043】
この重心位置変化量の平均値を用いて周波数誤差量△Fは、
ΔF=D×fosc/K (21)
K:1フレーム当たりのサンプル数
fOSC:VCOの周波数(サンプリング周波数)
となる。従って、(18)、(19)、(20),(21)式より、L個のフレーム毎に周波数誤差ΔFを求め、該周波数誤差ΔFが0となるようにAD変換器のサンプリング周波数を制御する。
【0044】
A/D変換器のサンプリング周波数に誤差がない図10の場合において、重心位置変化量の平均値Dを計算すると
Figure 0003556412
となる。従って、A/D変換器のサンプリング周波数を発生するVCOの周波数誤差は0であることがわかる。
【0045】
以上は、L個のフレーム毎にサンプリング周波数を制御する場合であるが、1フレーム毎にサンプリング周波数を制御することもできる。この場合、周波数誤差量△Fは、
ΔF=Gi×fosc/K (21)′
で与えられる。従って、(18),(19),(21)′に基づいて1フレーム毎の周波数誤差量△Fを演算してサンプリング周波数を制御する。
【0046】
▲2▼A/D変換器のサンプリング周波数に誤差がある場合
マルチパス発生環境下においてA/D変換器のサンプリング周波数に誤差があるものとすると、図11(a)に示すようにマルチパス、周波数誤差によりDFTウィンドウ内におけるインパルスの重心位置が変動し、又、図11(b)に示すようにDFTウィンドウ位置が変化する。
図11において重心位置変化量の平均値Dを計算すると、
Figure 0003556412
となり、1フレーム当たり2サンプルのずれ量が発生したことがわかる。
以上のように計算すれば、マルチパスによって複数のインパルスが発生し、又DFTウィンドウの位置が変化しても、A/D変換器のサンプリング周波数の誤差成分ΔFを抽出することが出来、該誤差成分が0となるように制御することができる。
【0047】
(B)本発明の実施例
図12は本発明のDAB受信機の構成図である。
60は受信アンテナ、61は受信信号にキャリア周波数のcos波、sin波を乗算してベースバンドアナログ信号D(t)、I(t)を出力するDAB用RF信号復調部、62はベースバンドアナログ信号D(t)、I(t)を所定サンプリング周波数でデジタルデータD(m)、I(m)に変換するAD変換器、63はサンプリングパルスを出力するサンプリングパルス発生部、64はDABフレーム間のヌル信号部分を検出してヌル検出信号NDTを出力するヌル信号検出部、65はDABフレームを構成する各シンボルのフーリエ変換実行タイミングであるDFTウィンドウ信号及びPRSウィンドウ信号を出力するDFTウィンドウ発生部である。DFTウィンドウ発生部65は図8で説明したようにマルチパスにより隣接シンボルの干渉を受けない区間にウィンドウ(DFTウィンドウ、PRSウィンドウ)を設定する。
【0048】
66はシンボル毎にPRSウィンドウ、DFTウィンドウ内のデジタルデータD(m)、I(m)にフーリエ変換処理を施し、差動復号してX(k)((16)式参照)、オーディオ符号データ(例えばMPEGオーディオデータ)を復調するフーリエ変換/差動復号部、67はMPEGオーディオデータをPCMオーディオデータにデコードするオーディオ信号デコード部、68はPCMオーディオデータをアナログに変換するDA変換部、69は増幅器、70はスピーカ、71はDAB受信機の操作キー部、72は表示部、73は選局制御、その他の制御を行う制御部である。
81はPRSウィンドウ期間におけるフーリエ変換出力X(k)を用いて(16)式よりインパルス応答を演算するインパルス応答演算部、82は(18)式に基づいてインパルス重心位置giを演算するインパルス重心演算部、83は(19)〜(21)式によりサンプリング周波数の誤差量△Fを演算して出力するサンプリング誤差抽出部である。
【0049】
DAB用RF信号復調部61は受信信号にキャリア周波数のcos波、sin波を乗算してベースバンドアナログ信号D(t)、I(t)を出力し、AD変換器62はサンプリングパルス発生部63から出力されるサンプリングパルスに基づいてベースバンドアナログ信号D(t)、I(t)をそれぞれデジタルデータD(m)、I(m)に変換してヌル信号検出部64とフーリエ変換/差動復号部66に入力する。ヌル信号検出部64はDABフレーム間のヌル信号部分を検出してヌル検出信号NDTを出力する。DFTウィンドウ発生部65はヌル検出信号NDTが入力されると、マルチパス状況に応じて隣接シンボルに干渉されない位置にウィンドウを移動してフーリエ変換/差動復号部66に入力し、又、PRSウィンドウをインパルス応答演算部81に入力する。
【0050】
フーリエ変換/差動復号部66はシンボル毎にPRSウィンドウ、DFTウィンドウ内のデジタルデータD(m)、I(m)にフーリエ変換処理を施した後、差動復号してX(k)、オーディオ符号データ(MPEGオーディオデータ)を復調して出力する。オーディオ信号デコード部67はMPEGオーディオデータをPCMオーディオデータにデコードし、DA変換部68はPCMオーディオデータをアナログに変換し、増幅器69を介してスピーカ70に入力し、DAB音声を出力する。
インパルス応答演算部81はPRSウィンドウ期間におけるフーリエ変換出力X(k)を用いて(16)式によりインパルス応答を演算し、演算結果をDFTウィンドウ発生部65とインパルス重心算出部82に入力する。DFTウィンドウ発生部65はインパルス応答(マルチパス)に基づいて次のDABフレームにおいてウィンドウを隣接シンボルに干渉されない位置に移動する。
【0051】
インパルス重心算出部82は(18)式に基づいてインパルス重心位置giを演算し、サンプリング誤差抽出部83は(19)〜(21)式によりL個のフレーム期間におけるサンプリング周波数の平均誤差量△Fを演算してサンプリングパルス発生部63に入力する。サンプリングパルス発生部63は平均誤差量△Fが0になるようにサンプリング周波数を制御してサンプリングパルスをAD変換器62に入力する。
以後、上記動作が繰り返され、サンプリング周波数は送信機と受信機で一致し、マルチパス発生環境下においても良好なオーディオ音声をスピーカから出力できる。
【0052】
以上では、L個のフレーム期間におけるサンプリング周波数の平均誤差量△Fに基づいて該誤差量が0となるようにサンプリング周波数を制御した場合であるが、1フレーム毎にサンプリング周波数を制御することもできる。すなわち、サンプリング誤差抽出部84は(18),(19),(21)′に基づいて1フレーム毎のサンプリング周波数誤差量△Fを演算し、該誤差量をサンプリングパルス発生部63に入力してサンプリング周波数を制御するように構成することもでいる。
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は請求の範囲に記載した本発明の主旨に従い種々の変形が可能であり、本発明はこれらを排除するものではない。
【0053】
【発明の効果】
以上本発明によれば、DABの信号フレーム毎にインパルス応答の重心を計算し、かつ、DFTウィンドウの位置を考慮してサンプリング周波数の誤差成分を抽出し、該誤差が0となるようにサンプリング周波数を制御するようにしたから、マルチパス環境下でもDAB受信機のサンプリング周波数を送信機のサンプリング周波数と一致させることができ、良好なDAB音声を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】伝送路のモデルである。
【図2】マルチパスが発生していない場合のインパルス応答である。
【図3】位相基準シンボルにおける信号説明図である。
【図4】インパルス応答図である。
【図5】遅延の有無によるインパルス応答説明図である。
【図6】マルチパスが発生していない状態でサンプリング周波数に誤差を含む場合のインパルス応答である。
【図7】マルチパスが発生した状態でFFTウィンドウ位置を制御しながらインパルス応答を導出した場合の例である。
【図8】マルチパス環境下でのFFTウィンドウ位置制御説明図である。
【図9】インパルス重心位置計算法説明図である。
【図10】FFTウィンドウ位置と重心の位置関係(サンプリング周波数誤差が存在しない場合)である。
【図11】FFTウィンドウ位置と重心の位置関係(VCOの周波数誤差が存在する場合)である。
【図12】本発明のDAB受信機の構成である。
【図13】デジタルオーディオ放送の送信機の原理的構成図である。
【図14】周波数多重化部の機能説明図である。
【図15】シンボル説明図である。
【図16】デジタルオーディオ放送の受信機の原理的構成図である。
【図17】D(m)の説明図である。
【図18】理想フィルタの特性である。
【図19】IDFTを用いた送信機の要部構成図である。
【図20】サンプリング定理説明図である。
【図21】DFTを用いた受信機の要点部構成である。
【図22】直交平衡変調方式の構成である。
【図23】直交周波数変換方式の構成である。
【図24】差動符号器の説明図である。
【図25】差動復号器の説明図である。
【図26】送信系、受信系の構成である。
【図27】DABフレームの説明図である。
【符号の説明】
60・・受信アンテナ
61・・DAB用RF信号復調部
62・・AD変換器
63・・サンプリングパルス発生部
64・・ヌル検出部
65・・DFTウィンドウ発生部
66・・フーリエ変換/差動復号部
67・・オーディオ信号デコード部
81・・インパルス応答演算部
82・・インパルス重心演算部
83・・るサンプリング誤差抽出部

Claims (2)

  1. 1つの既知の位相基準シンボルとM個のデータシンボルとでフレームを構成し、データシンボルを構成する2N個のデジタルデータを2ビットづつN組に分け、各組の第1データを実数部、第2データを虚数部として順次フーリエ逆変換部に入力し、該フーリエ逆変換部から出力される実数部、虚数部をアナログ信号に変換し、それぞれにキャリア周波数fcのcos波、sin波を乗算し、乗算結果を合成して空間に放射し、空間に放射された信号を受信し、受信信号に前記キャリア周波数のcos波、sin波を乗算し、それぞれの乗算結果をAD変換器において所定サンプリング周波数でデジタルに変換してフーリエ変換部に入力し、該フーリエ変換部から出力される実数部、虚数部を前記第1データ、第2データとして出力するデジタル放送における受信装置において、
    サンプリングパルスを発生してAD変換器に入力するサンプリングパルス発生部と、
    各シンボルのフーリエ変換実行タイミングであるDFTウィンドウ信号を出力するDFTウィンドウ発生部と、
    位相基準シンボルのフーリエ変換出力に基づいて伝送路のインパルス応答を演算するインパルス応答演算部と、
    インパルス応答に含まれる各インパルスの位置及びレベルに基づいてDFTウィンドウ内のインパルス重心位置を算出するインパルス重心位置演算部と、
    前回のフレームにおけるDFTウィンドウ位置と今回のフレームにおけるDFTウィンドウ位置の偏差と、前回のフレームにおけるインパルス重心位置と、今回のフレームにおけるインパルス重心位置とから重心位置の変化量を計算し、該重心位置の変化量に基づいて前記サンプリングパルスの周波数を制御するサンプリング周波数制御手段を備えたことを特徴とするデジタルオーディオ放送における受信装置。
  2. 前記サンプリング周波数制御手段はL個のフレームの重心位置の平均変化量に基づいてサンプリング周波数を制御することを特徴とする請求項1記載のデジタルオーディオ放送における受信装置。
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