JP3557725B2 - 硬質層内装長尺複合金属管の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属管の内側に、硬質金属、セラミックス、サーメット等による硬質層を内装した長尺の複合金属管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、金属管の内部に硬質層を内装し複合金属管が、アルミダイキャスト用シリンダ等の用途に使用されている。こうした硬質層内装複合金属管は、金属管の内側に、硬質金属、セラミックス、サーメット等の粉末を収納し、熱間等方圧加圧焼結(HIP)によって一体化し、その後で旋削・研削加工やホーニング加工などにより内径を仕上げ加工して製造されていた。
【0003】
しかし、旋削・研削加工やホーニング加工では切削工具が片持ち状態であるため、硬質層からの反力による工具のたわみや偏心により、真直な孔を開けるのが困難となり、長尺管では内径加工精度が悪くなるという問題があった。また、ワイヤカット法によって内径を加工しようとしても限界があった。
【0004】
そこで、本発明は、硬質層を内装した長尺の複合金属管を、内径加工精度よく製造することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段、発明の実施の形態及び発明の効果】
本発明の硬質層内装長尺複合金属管の製造方法は、硬質層を内装した短尺の複合金属管を予め複数個製造し、これらを一本の長尺管となるように積み重ねると共に中心孔に芯金を挿入した状態にて缶体(以下、「HIP缶」という)内に収納し、熱間等方圧加圧焼結(以下、「HIP」という)を施した後、芯金を除去しながら中心孔を形成することを特徴とする。
【0006】
また、硬質層を内装した短尺の複合金属管、若しくは、硬質層となるべき短尺の内装管を予め複数個製造し、これらを長尺の金属管の内部に一本の管となるように積み重ねると共に中心孔に芯金を挿入した状態にてHIP缶内に収納し、HIPを施した後に芯金を除去しながら中心孔を形成するようにしてもよい。
【0007】
これら本発明方法によれば、最初に製造しておく複合金属管あるいは内装管は短尺であるから、通常の旋削加工した後、研削加工する加工方法(BTA加工ともいう)、ホーニング加工などといった加工方法で容易かつ精度よく内径加工をすることができる。そして、精度よく内径加工した短尺の複合金属管若しくは内装管を積み重ねて長尺化すると共に中心には芯金を挿入しておくので、HIP後も硬質層の内径が精度よくそのまま維持されて一体化される。芯金としては、切削の容易な硬度の低い金属材料(例えば、軟鋼など)を用いるとよい。長尺であっても、硬度が低い分だけ内径加工時の反力が小さく、結果的に工具がたわみにくくなるので内径の加工精度が十分に確保できるのである。
【0008】
こうして製造された長尺の複合金属管は、HIPによる金属拡散接合で一体化されているので、短尺の管体を接合したものであるけれども、最初から一本の長尺管として製造したものと差はなく、むしろ、内径の加工精度が良い分だけ性能がアップするといえる。
【0009】
ここで、短尺の複合金属管を予め製造する場合、短尺の金属管内に硬質層形成用の粉末材料を詰めてHIP缶に収納し、これをHIPにて複合化した後に中心孔を形成するようにしてもよいし、前記短尺の金属管内に粉末材料を収納する際に、金属管中心に芯金を挿入しておき、HIP後にこの芯金を除去しながら中心孔を形成するようにしてもよい。短尺であるから、芯金を用いなくても十分な加工精度で内径加工を行うことができる。芯金を挿入しておくと、この内径加工が楽になる。
【0010】
なお、本発明方法の利点をより明らかにするため、予め短尺の複合金属管や内装管を製造しておくのではなく、長尺の金属管の中心に芯金を挿入した上で硬質層形成用の粉末材料を詰めてHIPを行い、その後で芯金を除去する方法と比較して見る。
【0011】
この比較例としての方法では、HIPをかける際に、硬質層はまだ形成されておらず、単に硬質層形成用の粉末材料が詰められているだけであるため、芯金は横方向からはしっかりと支持されておらず、強力な軸荷重によって大きく座屈してしまう。このため、後から芯金を除去して中心孔を加工しようとすると、座屈した芯金に倣って切削が行われてしまうこととなり、中心孔の真直度が出なくなるのである。
【0012】
一方、短尺であれば、芯金が座屈してもその座屈量はわずかであり、しかも、短尺故に内径加工工具のたわみはごくわずかとなって十分に真直度の高い内径加工を行うことができる。この結果、本発明方法では、内径加工精度の高い長尺の硬質層内装複合金属管を製造することができるのである。
【0013】
なお、サーメットによる硬質層を形成する場合、金属及び/又は合金(以下、「メタル」という)とセラミックスとを溶体化して一方に他方を均一に分散状態で担持させた複合粉末を用いるとよい。ここで、溶体化とは、セラミックスとメタルとが、高温加熱状態で液相−液相又は固相−液相で分散・混合し、そのままの分散・混合状態で固化した状態をいい、鋼における溶体化処理状態と類似の状態をいう。ただし、鋼との違いは、本発明で用いようとする複合粉末ではセラミックス(炭化物や酸化物など)が多く含まれることから、これらのメタルに溶け込まないセラミックスが、均一に散らばった状態となり、かつ、メタルとセラミックスの界面が濡れあったまま固化した状態となるのである。
【0014】
また、一方に他方を分散させるとは、メタルが基地となってセラミックスの粒子を担持した状態、逆にセラミックスが基地となってメタルの粒子を担持した状態、あるいはメタルとセラミックスとが混ざりあった状態のいずれでもよい。
このようなサーメットの複合粉末は、例えば次の様にして製造することができる。
【0015】
即ち、メタルの粉末とセラミックスの粉末とを混合し、該混合粉末を所定の粒径に造粒した後、該造粒粉末粒子を少なくとも当該粒子内で溶融体又は半溶融体を形成するまで加熱した後に、急速に凝固せしめ、必要に応じて粉砕工程を経た後に所定の粒度に分級するといった方法にて製造することができる。
【0016】
ここで、混合粉末粒子内で溶融体又は半溶融体を形成するまで加熱し、急速に凝固させる実用的方法としては、造粒粉末粒子を溶接材料としてアーク加熱による粉体肉盛溶接でビードを水冷床に形成する方法や、混合粉末粒子を溶解材料としてアーク溶解又はプラズマアーク溶解をし、これを水冷炉床に堆積させつつ凝固させる方法や、高周波プラズマにて超高温層を形成しておき、ここを造粒粉末粒子を通過させ、パーティクル・トゥー・パーティクルにて溶融・凝固させる方法(粒子を粒子の形態のまま一旦溶融させ、そのまま粒子の状態に凝固させる方法)などを採用するとよい。
【0017】
また、必要に応じて粉砕すればよいのは、最終的な粒度に調整された造粒粉末をパーティクル・トゥー・パーティクルで溶融・凝固する場合には粉砕は不要となるからである。さらに、造粒の方法としては、プレス造粒を行うことにすれば、造粒に当たってバインダを必要としないので、複合粉末自体の性能に酸素や炭素等の混入による悪影響を生じさせることがない点でも望ましい。
【0018】
なお、前記混合される粉末原料として粒径1〜10μmの粉末を用い、粒径3〜8mmの造粒粉末とした上でプラズマ積層凝固炉(以下、「PPC炉」という)にて溶融・凝固せしめるとよい。この様にすることで、出来上りのサーメット粉末における組織の緻密か及び均一化を確実にすることができ、これをHIPにかけて形成される硬質層の性質も良好なものとなる。
【0019】
このようなサーメット粉末をHIPにて加圧焼結すると、伸び及び靱性の高いサーメット層が得られ、外周となる金属管とのマッチングがよくなり、拡散接合部での残留応力が小さくなる。この結果、こうした製法により得られたサーメット粉末を用いた硬質層内装長尺複合管では、熱疲労や熱衝撃といった外力が加わるような部品として使用したときの耐久性が高いという利点もある。特に、長尺となることから、伸びの性質が金属管と硬質層とでマッチしていないと、層間にき裂が発生したり、剥離したりするという問題が考えられるが、この製法によるサーメット粉末ではこうした問題がなくなる点で、特に、長尺化を目的とした本発明の複合金属管の製造方法に適している。
【0020】
以上説明した本発明方法は、特に、前記複合金属管に内装される硬質層がHRC30以上の硬度を有するものであるとき、その効果をいかんなく発揮するものである。このような硬質層としては、例えば、トリバロイ,ハイス,工具鋼,ステライト等の硬質金属、アルミナ,ジルコニア,シリコンナイトライドなどのセラミックス、Co−WC,Ti−SiC,Ni−TiB2 ,ステライト−VC等のサーメットをあげることができる。
【0021】
なお、本発明はここまでに述べた実施の形態に限らず、その要旨を逸脱しない範囲内においてさらに種々なる形態を取ることができる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明の実施の形態の理解を一層容易にするため、好適な実施例として、炭素鋼管(S45C)の内面にサーメット層(ステライト−VC)を形成した長尺のアルミダイキャスト用射出シリンダを製造する場合について説明する。サーメット層には、次の様な方法で製造された複合粉末(メタルとセラミックスとを溶体化して一方に他方を分散状態で担持させた複合粉末)を使用する。
【0023】
この複合粉末は、以下の工程により製造される。
まず最初に、粒径1〜10μmのステライト21粉末と、粒径1〜10μmのVC粉末とを準備し、これらを原料の配合・調整をする(▲1▼:原料配合)。そして、この原料混合物を混合撹拌機において均質な混合状態になる様に混合撹拌する(▲2▼:混合撹拌)。混合物が混合撹拌機にて均質な混合状態となったら、これをプレス造粒機にかけて造粒し、さらに焼結・粉砕・分級し、所定粒度(3〜8mm)の粉末に調整する(▲3▼:プレス造粒・焼結)。
【0024】
こうして所定粒度に調整された混合粉末粒子を得たら、これを用いてPPC炉にて溶融・凝固させる(▲4▼溶融・凝固)。ここで、溶融・凝固の工程についてもう少し詳しく説明すると、上記混合粉末粒子をプラズマアークによる超高温で急速溶解をした後、冷却炉床上に堆積させつつ急速に凝固させることにより、メタルとセラミックスとを溶体化して一方に他方を分散状態で担持させた複合粉末の溶融化堆積物を製造するのである。
【0025】
PPC炉により形成された溶融化堆積物を、次にスタンプミル等で粉砕し(▲5▼:粉砕)、振動分級機又は気流分級機にかけてHIP原料として使用するのに適した粒度(75μm以下)の複合粉末に分級する(▲6▼:分級)。
こうして硬質層形成用の複合粉末が準備できたら、図1に示すように、短尺のHIP缶11を準備し、この中にS45C製の短尺の金属管13をはめ込み、その中心にSS41製の芯金15を挿入した上で上記の複合粉末17を詰める。そして、これをHIPにかけた後、芯金15をBTA,研削及びホーニング加工により除去しつつ内径加工を実施して短尺の複合金属管19を得る。また、この複合金属管19の外周も次工程用に研削加工によって外径精度を出しておく。
【0026】
なお、この短尺の複合金属管19の硬質層19aは、HRC=45と非常に硬い層であるが、短尺故に十分な加工精度で内径を加工することができる。換言すると、この短尺の複合金属管19の長さとして、硬質層19aに対して十分な加工精度で内径加工をできる様な長さを設定しておくのである。この長さは、硬質層の材質だけでなく、内径の寸法にも関係してくる。即ち、内径が大きければその分だけ加工工具も太径のものが使用できるので長めの短尺複合金属管を精度よく製造できる。以上のような諸点を考慮し、短尺の複合金属管19としてどの程度の長さのものを製造するのかという条件が決ってくるのである。
【0027】
次に、長尺のHIP缶21を準備し、この中にS45C製の長尺の金属管23をはめ込み、その中心に先ほど製造した短尺の複合金属管19を積み重ねる様にはめ込む。そして、中心孔にSS41製の長い芯金25を挿入した上で、これをHIPにかける。その後、芯金25をBTA,研削及びホーニング加工により除去すれば、短尺の複合金属管19について確保された加工精度の内径を有する長尺の複合金属管29を得ることができる。
【0028】
この複合金属管29は、複数個の管を接合したものであるが、HIPによる金属拡散接合によって一体化されているので、接合部に境目はなく、最初から一体に製造したのと変わらない(図では、金属拡散接合となっている部分を点線で示している)。
【0029】
また、硬質層は上述の方法により製造した複合粉末をHIPによって加圧焼結したものであるため、その組織は均一で緻密化されており、伸びの性質が良好であるため、外装材としてのS45Cとの馴染みがよく、接合部には大きな残留応力が残らない。
【0030】
この結果、アルミダイキャストのために繰り返し使用して熱疲労や熱衝撃を受けても、この接合部が破損することがなく、耐久性の良好なアルミダイキャスト用シリンダを得ることができる。
以上本発明の実施例を説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々なる形態にて実現することができることはいうまでもない。
【0031】
例えば、図2に示すように、実施例よりも細いHIP缶31に短尺の複合金属管19を積み重ねて収納し、中心孔に芯金25を通したものをHIPにかけて長尺の複合金属管33を製造するようにしてもよい。また、図3に示すように、短いHIP缶41に複合粉末17を充填してHIPにかけて短い円柱体43を形成し、この円柱体43の内径と外径を機械加工して短尺のサーメットリング45を製造し、これを長尺のHIP缶47内に外側となる長尺の金属管49と共に詰めて長い芯金25を通し、これをHIPにかけて長尺の複合金属管51を製造するようにしてもよい。
【0032】
また、硬質層を形成するための粉末材料は、実施例の様な製法により得られたものに限らず、各種の硬質層形成用の粉末材料を使用することができる。この場合、サーメットに限らず、例えば、硬質金属、セラミックス、硬質金属とセラミックスの混合物等を用いてもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の説明図である。
【図2】変形例の説明図である。
【図3】変形例の説明図である。
【符号の説明】
11,41・・・短尺のHIP缶、13・・・短尺の金属管、15・・・芯金、17・・・複合粉末、19・・・短尺の複合金属管、19a・・・硬質層、21,31,47・・・長尺のHIP缶、23,49・・・長尺の金属管、25・・・長い芯金、29,33,51・・・長尺の複合金属管、43・・・円柱体、45・・・サーメットリング。
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属管の内側に、硬質金属、セラミックス、サーメット等による硬質層を内装した長尺の複合金属管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、金属管の内部に硬質層を内装し複合金属管が、アルミダイキャスト用シリンダ等の用途に使用されている。こうした硬質層内装複合金属管は、金属管の内側に、硬質金属、セラミックス、サーメット等の粉末を収納し、熱間等方圧加圧焼結(HIP)によって一体化し、その後で旋削・研削加工やホーニング加工などにより内径を仕上げ加工して製造されていた。
【0003】
しかし、旋削・研削加工やホーニング加工では切削工具が片持ち状態であるため、硬質層からの反力による工具のたわみや偏心により、真直な孔を開けるのが困難となり、長尺管では内径加工精度が悪くなるという問題があった。また、ワイヤカット法によって内径を加工しようとしても限界があった。
【0004】
そこで、本発明は、硬質層を内装した長尺の複合金属管を、内径加工精度よく製造することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段、発明の実施の形態及び発明の効果】
本発明の硬質層内装長尺複合金属管の製造方法は、硬質層を内装した短尺の複合金属管を予め複数個製造し、これらを一本の長尺管となるように積み重ねると共に中心孔に芯金を挿入した状態にて缶体(以下、「HIP缶」という)内に収納し、熱間等方圧加圧焼結(以下、「HIP」という)を施した後、芯金を除去しながら中心孔を形成することを特徴とする。
【0006】
また、硬質層を内装した短尺の複合金属管、若しくは、硬質層となるべき短尺の内装管を予め複数個製造し、これらを長尺の金属管の内部に一本の管となるように積み重ねると共に中心孔に芯金を挿入した状態にてHIP缶内に収納し、HIPを施した後に芯金を除去しながら中心孔を形成するようにしてもよい。
【0007】
これら本発明方法によれば、最初に製造しておく複合金属管あるいは内装管は短尺であるから、通常の旋削加工した後、研削加工する加工方法(BTA加工ともいう)、ホーニング加工などといった加工方法で容易かつ精度よく内径加工をすることができる。そして、精度よく内径加工した短尺の複合金属管若しくは内装管を積み重ねて長尺化すると共に中心には芯金を挿入しておくので、HIP後も硬質層の内径が精度よくそのまま維持されて一体化される。芯金としては、切削の容易な硬度の低い金属材料(例えば、軟鋼など)を用いるとよい。長尺であっても、硬度が低い分だけ内径加工時の反力が小さく、結果的に工具がたわみにくくなるので内径の加工精度が十分に確保できるのである。
【0008】
こうして製造された長尺の複合金属管は、HIPによる金属拡散接合で一体化されているので、短尺の管体を接合したものであるけれども、最初から一本の長尺管として製造したものと差はなく、むしろ、内径の加工精度が良い分だけ性能がアップするといえる。
【0009】
ここで、短尺の複合金属管を予め製造する場合、短尺の金属管内に硬質層形成用の粉末材料を詰めてHIP缶に収納し、これをHIPにて複合化した後に中心孔を形成するようにしてもよいし、前記短尺の金属管内に粉末材料を収納する際に、金属管中心に芯金を挿入しておき、HIP後にこの芯金を除去しながら中心孔を形成するようにしてもよい。短尺であるから、芯金を用いなくても十分な加工精度で内径加工を行うことができる。芯金を挿入しておくと、この内径加工が楽になる。
【0010】
なお、本発明方法の利点をより明らかにするため、予め短尺の複合金属管や内装管を製造しておくのではなく、長尺の金属管の中心に芯金を挿入した上で硬質層形成用の粉末材料を詰めてHIPを行い、その後で芯金を除去する方法と比較して見る。
【0011】
この比較例としての方法では、HIPをかける際に、硬質層はまだ形成されておらず、単に硬質層形成用の粉末材料が詰められているだけであるため、芯金は横方向からはしっかりと支持されておらず、強力な軸荷重によって大きく座屈してしまう。このため、後から芯金を除去して中心孔を加工しようとすると、座屈した芯金に倣って切削が行われてしまうこととなり、中心孔の真直度が出なくなるのである。
【0012】
一方、短尺であれば、芯金が座屈してもその座屈量はわずかであり、しかも、短尺故に内径加工工具のたわみはごくわずかとなって十分に真直度の高い内径加工を行うことができる。この結果、本発明方法では、内径加工精度の高い長尺の硬質層内装複合金属管を製造することができるのである。
【0013】
なお、サーメットによる硬質層を形成する場合、金属及び/又は合金(以下、「メタル」という)とセラミックスとを溶体化して一方に他方を均一に分散状態で担持させた複合粉末を用いるとよい。ここで、溶体化とは、セラミックスとメタルとが、高温加熱状態で液相−液相又は固相−液相で分散・混合し、そのままの分散・混合状態で固化した状態をいい、鋼における溶体化処理状態と類似の状態をいう。ただし、鋼との違いは、本発明で用いようとする複合粉末ではセラミックス(炭化物や酸化物など)が多く含まれることから、これらのメタルに溶け込まないセラミックスが、均一に散らばった状態となり、かつ、メタルとセラミックスの界面が濡れあったまま固化した状態となるのである。
【0014】
また、一方に他方を分散させるとは、メタルが基地となってセラミックスの粒子を担持した状態、逆にセラミックスが基地となってメタルの粒子を担持した状態、あるいはメタルとセラミックスとが混ざりあった状態のいずれでもよい。
このようなサーメットの複合粉末は、例えば次の様にして製造することができる。
【0015】
即ち、メタルの粉末とセラミックスの粉末とを混合し、該混合粉末を所定の粒径に造粒した後、該造粒粉末粒子を少なくとも当該粒子内で溶融体又は半溶融体を形成するまで加熱した後に、急速に凝固せしめ、必要に応じて粉砕工程を経た後に所定の粒度に分級するといった方法にて製造することができる。
【0016】
ここで、混合粉末粒子内で溶融体又は半溶融体を形成するまで加熱し、急速に凝固させる実用的方法としては、造粒粉末粒子を溶接材料としてアーク加熱による粉体肉盛溶接でビードを水冷床に形成する方法や、混合粉末粒子を溶解材料としてアーク溶解又はプラズマアーク溶解をし、これを水冷炉床に堆積させつつ凝固させる方法や、高周波プラズマにて超高温層を形成しておき、ここを造粒粉末粒子を通過させ、パーティクル・トゥー・パーティクルにて溶融・凝固させる方法(粒子を粒子の形態のまま一旦溶融させ、そのまま粒子の状態に凝固させる方法)などを採用するとよい。
【0017】
また、必要に応じて粉砕すればよいのは、最終的な粒度に調整された造粒粉末をパーティクル・トゥー・パーティクルで溶融・凝固する場合には粉砕は不要となるからである。さらに、造粒の方法としては、プレス造粒を行うことにすれば、造粒に当たってバインダを必要としないので、複合粉末自体の性能に酸素や炭素等の混入による悪影響を生じさせることがない点でも望ましい。
【0018】
なお、前記混合される粉末原料として粒径1〜10μmの粉末を用い、粒径3〜8mmの造粒粉末とした上でプラズマ積層凝固炉(以下、「PPC炉」という)にて溶融・凝固せしめるとよい。この様にすることで、出来上りのサーメット粉末における組織の緻密か及び均一化を確実にすることができ、これをHIPにかけて形成される硬質層の性質も良好なものとなる。
【0019】
このようなサーメット粉末をHIPにて加圧焼結すると、伸び及び靱性の高いサーメット層が得られ、外周となる金属管とのマッチングがよくなり、拡散接合部での残留応力が小さくなる。この結果、こうした製法により得られたサーメット粉末を用いた硬質層内装長尺複合管では、熱疲労や熱衝撃といった外力が加わるような部品として使用したときの耐久性が高いという利点もある。特に、長尺となることから、伸びの性質が金属管と硬質層とでマッチしていないと、層間にき裂が発生したり、剥離したりするという問題が考えられるが、この製法によるサーメット粉末ではこうした問題がなくなる点で、特に、長尺化を目的とした本発明の複合金属管の製造方法に適している。
【0020】
以上説明した本発明方法は、特に、前記複合金属管に内装される硬質層がHRC30以上の硬度を有するものであるとき、その効果をいかんなく発揮するものである。このような硬質層としては、例えば、トリバロイ,ハイス,工具鋼,ステライト等の硬質金属、アルミナ,ジルコニア,シリコンナイトライドなどのセラミックス、Co−WC,Ti−SiC,Ni−TiB2 ,ステライト−VC等のサーメットをあげることができる。
【0021】
なお、本発明はここまでに述べた実施の形態に限らず、その要旨を逸脱しない範囲内においてさらに種々なる形態を取ることができる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明の実施の形態の理解を一層容易にするため、好適な実施例として、炭素鋼管(S45C)の内面にサーメット層(ステライト−VC)を形成した長尺のアルミダイキャスト用射出シリンダを製造する場合について説明する。サーメット層には、次の様な方法で製造された複合粉末(メタルとセラミックスとを溶体化して一方に他方を分散状態で担持させた複合粉末)を使用する。
【0023】
この複合粉末は、以下の工程により製造される。
まず最初に、粒径1〜10μmのステライト21粉末と、粒径1〜10μmのVC粉末とを準備し、これらを原料の配合・調整をする(▲1▼:原料配合)。そして、この原料混合物を混合撹拌機において均質な混合状態になる様に混合撹拌する(▲2▼:混合撹拌)。混合物が混合撹拌機にて均質な混合状態となったら、これをプレス造粒機にかけて造粒し、さらに焼結・粉砕・分級し、所定粒度(3〜8mm)の粉末に調整する(▲3▼:プレス造粒・焼結)。
【0024】
こうして所定粒度に調整された混合粉末粒子を得たら、これを用いてPPC炉にて溶融・凝固させる(▲4▼溶融・凝固)。ここで、溶融・凝固の工程についてもう少し詳しく説明すると、上記混合粉末粒子をプラズマアークによる超高温で急速溶解をした後、冷却炉床上に堆積させつつ急速に凝固させることにより、メタルとセラミックスとを溶体化して一方に他方を分散状態で担持させた複合粉末の溶融化堆積物を製造するのである。
【0025】
PPC炉により形成された溶融化堆積物を、次にスタンプミル等で粉砕し(▲5▼:粉砕)、振動分級機又は気流分級機にかけてHIP原料として使用するのに適した粒度(75μm以下)の複合粉末に分級する(▲6▼:分級)。
こうして硬質層形成用の複合粉末が準備できたら、図1に示すように、短尺のHIP缶11を準備し、この中にS45C製の短尺の金属管13をはめ込み、その中心にSS41製の芯金15を挿入した上で上記の複合粉末17を詰める。そして、これをHIPにかけた後、芯金15をBTA,研削及びホーニング加工により除去しつつ内径加工を実施して短尺の複合金属管19を得る。また、この複合金属管19の外周も次工程用に研削加工によって外径精度を出しておく。
【0026】
なお、この短尺の複合金属管19の硬質層19aは、HRC=45と非常に硬い層であるが、短尺故に十分な加工精度で内径を加工することができる。換言すると、この短尺の複合金属管19の長さとして、硬質層19aに対して十分な加工精度で内径加工をできる様な長さを設定しておくのである。この長さは、硬質層の材質だけでなく、内径の寸法にも関係してくる。即ち、内径が大きければその分だけ加工工具も太径のものが使用できるので長めの短尺複合金属管を精度よく製造できる。以上のような諸点を考慮し、短尺の複合金属管19としてどの程度の長さのものを製造するのかという条件が決ってくるのである。
【0027】
次に、長尺のHIP缶21を準備し、この中にS45C製の長尺の金属管23をはめ込み、その中心に先ほど製造した短尺の複合金属管19を積み重ねる様にはめ込む。そして、中心孔にSS41製の長い芯金25を挿入した上で、これをHIPにかける。その後、芯金25をBTA,研削及びホーニング加工により除去すれば、短尺の複合金属管19について確保された加工精度の内径を有する長尺の複合金属管29を得ることができる。
【0028】
この複合金属管29は、複数個の管を接合したものであるが、HIPによる金属拡散接合によって一体化されているので、接合部に境目はなく、最初から一体に製造したのと変わらない(図では、金属拡散接合となっている部分を点線で示している)。
【0029】
また、硬質層は上述の方法により製造した複合粉末をHIPによって加圧焼結したものであるため、その組織は均一で緻密化されており、伸びの性質が良好であるため、外装材としてのS45Cとの馴染みがよく、接合部には大きな残留応力が残らない。
【0030】
この結果、アルミダイキャストのために繰り返し使用して熱疲労や熱衝撃を受けても、この接合部が破損することがなく、耐久性の良好なアルミダイキャスト用シリンダを得ることができる。
以上本発明の実施例を説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々なる形態にて実現することができることはいうまでもない。
【0031】
例えば、図2に示すように、実施例よりも細いHIP缶31に短尺の複合金属管19を積み重ねて収納し、中心孔に芯金25を通したものをHIPにかけて長尺の複合金属管33を製造するようにしてもよい。また、図3に示すように、短いHIP缶41に複合粉末17を充填してHIPにかけて短い円柱体43を形成し、この円柱体43の内径と外径を機械加工して短尺のサーメットリング45を製造し、これを長尺のHIP缶47内に外側となる長尺の金属管49と共に詰めて長い芯金25を通し、これをHIPにかけて長尺の複合金属管51を製造するようにしてもよい。
【0032】
また、硬質層を形成するための粉末材料は、実施例の様な製法により得られたものに限らず、各種の硬質層形成用の粉末材料を使用することができる。この場合、サーメットに限らず、例えば、硬質金属、セラミックス、硬質金属とセラミックスの混合物等を用いてもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の説明図である。
【図2】変形例の説明図である。
【図3】変形例の説明図である。
【符号の説明】
11,41・・・短尺のHIP缶、13・・・短尺の金属管、15・・・芯金、17・・・複合粉末、19・・・短尺の複合金属管、19a・・・硬質層、21,31,47・・・長尺のHIP缶、23,49・・・長尺の金属管、25・・・長い芯金、29,33,51・・・長尺の複合金属管、43・・・円柱体、45・・・サーメットリング。
Claims (7)
- 硬質層を内装した短尺の複合金属管を予め複数個製造し、これらを一本の長尺管となるように積み重ねると共に中心孔に芯金を挿入した状態にて缶体内に収納し、熱間等方圧加圧焼結を施した後、芯金を除去しながら中心孔を形成することを特徴とする硬質層内装長尺複合金属管の製造方法。
- 硬質層を内装した短尺の複合金属管、若しくは、硬質層となるべき短尺の内装管を予め複数個製造し、これらを長尺の金属管の内部に一本の管となるように積み重ねると共に中心孔に芯金を挿入した状態にて缶体内に収納し、熱間等方圧加圧焼結を施した後に芯金を除去しながら中心孔を形成することを特徴とする硬質層内装長尺複合金属管の製造方法。
- 請求項1又は請求項2記載の硬質層内装長尺複合金属管の製造方法において、前記短尺の複合金属管は、短尺の金属管内に硬質層形成用の粉末材料を詰めて缶体に収納し、これを熱間等方圧加圧焼結にて複合化した後に中心孔を形成することにより予め製造されたものであることを特徴とする硬質層内装長尺複合金属管の製造方法。
- 請求項3記載の硬質層内装長尺複合金属管の製造方法において、前記短尺の金属管内に粉末材料を収納する際に、金属管中心に芯金を挿入しておき、熱間等方圧加圧焼結後にこの芯金を除去しながら中心孔を形成することを特徴とする硬質層内装長尺複合金属管の製造方法。
- 請求項3又は請求項4記載の硬質層内装長尺複合金属管の製造方法において、
前記粉末材料が、金属及び/又は合金の粉末とセラミックスの粉末とを混合し、該混合粉末を所定の粒径に造粒した後、該造粒粉末粒子を少なくとも当該粒子内で溶融体又は半溶融体を形成するまで加熱した後に、急速に凝固せしめ、必要に応じて粉砕工程を経た後に所定の粒度に分級することによって製造されたものであることを特徴とする硬質層内装長尺複合金属管の製造方法。 - 請求項5記載の硬質層内装長尺複合金属管の製造方法において、前記混合される粉末原料として粒径1〜10μmの粉末を用い、粒径3〜8mmの造粒粉末とした上でプラズマ積層凝固炉にて溶融・凝固せしめることを特徴とする硬質層内装長尺複合金属管の製造方法。
- 請求項1〜請求項6のいずれか記載の硬質層内装長尺複合金属管の製造方法において、前記複合金属管に内装される硬質層がHRC30以上の硬度を有するものであることを特徴とする硬質層内装長尺複合金属管の製造方法。
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