JP3576827B2 - 同期電動機の回転子位置推定装置 - Google Patents

同期電動機の回転子位置推定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、同期電動機の回転子位置推定装置および回転位置推定方法に係り、特に、回転子の絶対回転角度検出器を設けることなく磁気飽和を利用して同期電動機の回転子位置を推定する同期電動機の回転子位置推定装置および回転子位置推定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、同期電動機の回転制御を行うためには、回転子の位置を把握し、その位置に応じた位相の電流を巻線に流す必要がある。通常は、同期電動機に回転子位置の絶対位置が分かる回転角検出器を設け、回転子の回転に応じて検出される回転子位置情報に基づいて電動機巻線電流を制御している。しかし、回転角検出器を使用する場合は、センサ自体の信頼性の問題、位置合わせ作業の煩雑さと据え付け精度の問題、コスト低減や電動機の軸方向の飛び出しなどレイアウト上の問題がある。
【0003】
これに対し、近年、センサ部分の信頼性確保の負担を考慮し、またセンサ自体の取り付け作業に伴うコストの低減を図るために、回転角検出器を省略したセンサレスの電動機制御が提案されてきている。平成10年度電気学会全国大会講演論文集[4]の883(P4−280〜281)「永久磁石同期電動機簡易磁極位置センサレス方式の性能評価」には、電動機として突極型電動機にセンサレスで磁極位置を推定する方式が開示されている。一方、平成10年度電気学会全国大会講演論文集[4]の882(P4−279)「永久磁石同期電動機の始動時の磁極位置推定法」には電動機の型式を問わずに、回転子位置と巻線電流の応答との間で電動機鉄心の磁束飽和を利用して回転子位置を推定する方式が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記前者の従来技術のものは、電動機が突極型に限定されたものであり、円筒型電動機への適用は難しい。また、後者の従来技術の磁束飽和を利用した回転子推定方式は、円筒型の電動機にも適用可能であるが、推定に時間がかかることや精度の点に改善の余地があり、また、原理提案にとどまるなど、実フィールドへの適用には未だ問題がある。
【0005】
本発明の目的は、回転角検出器を設けることなく、磁極飽和を利用して同期電動機の回転子位置を正確に求めることを可能にした同期電動機の回転子位置推定装置および回転子位置推定方法を提供することにある。
【0006】
さらに、本発明の他の目的は、磁極飽和を利用して円筒型の同期電動機の回転子位置を短時間に求めることを可能にした同期電動機の回転子位置推定装置およびその回転子位置推定方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
【0008】
同期電動機の回転子の回転を固定し、該同期電動機の電動機巻線に位相の異なる複数の指令電圧を印加し、該複数の指令電圧に対して検出されるそれぞれの応答電流の応答時間に基づいて、前記回転子の位置を推定する同期電動機の回転子位置推定装置において、
前記複数の指令電圧が印加される位相は、前記同期電動機の電気角360°を一定角度で区分した複数の主区間に設定された位相と、前記複数の主区間に設定された位相において検出される応答電流中の最大応答時間を呈する主区間を分割した複数の副区間に設定される位相であり、前記回転子の位置推定は、前記設定された複数の位相において検出される前記応答電流中の最大応答時間を呈する位相に基づいて算出されることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
はじめに、本発明の第1の実施形態を図1から図7を用いて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係わる回転子位置推定装置を備える同期電動機の制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【0018】
なお、同図において、同期電動機に接続されたPWMインバーターコンバータの制御部は電源相数に応じた単相または3相構成となるが、説明を簡単にするため1相のみに着目して表示している。
【0019】
同図において、1は交流電源、2は交流リアクトル、3はIGBT(絶縁型ゲートバイポーラトランジスタ)等の自己消弧素子を用いて構成したPWMコンバータ、4は平滑コンデンサ、5はPWMインバータ、6は同期電動機、7は電動機に接続された外力トルクを発生させる駆動装置として働く負荷、8は回転子の回転を固定させる制動機、9は交流電源1の電圧を検出する交流電圧検出器、10、11は前記PWMコンバータ3の交流側に流れる入力電流IcおよびPWMインバータ5の交流側に流れる出力電流Iiを検出する電流検出器、12は平滑コンデンサ4の電圧を検出する直流電圧検出器、13は同期電動機6の回転を検出するパルス発生器である。
【0020】
以下、14〜19はPWMコンバータ3を駆動するための制御部、20〜24はPWMインバータ5を駆動するための制御部であり、これらは次のような機能を持つ。14は直流指令電圧生成部であり、電源電圧Es(相電圧実効値)を入力し、PWMコンバータ3の直流側に接続された平滑コンデンサ4の電圧を指示する直流指令電圧Ed発生する。15は平滑コンデンサ電圧が直流指令電圧Edに基づく電圧となるようにPWMコンバータの入力側に流す電流の大きさを指示する電圧制御部であり、直流指令電圧Edと平滑コンデンサ4の電圧Edを入力し、指令電流Icを発生する。16は電源電圧と同相の単位正弦波を発生する位相演算部、17は大きさがIcで位相が単位正弦波と同相の入力電流Icとなるようにコンバータ入力側指令電圧ecを指示する電流制御部、18は搬送波信号etcを発生する搬送波発生部、19は指令電圧ecと搬送波信号etcとからPWMコンバータ3を駆動するためのPWMパルスGpcを生成するコンバータ部のPWMパルス生成部である。20は電動機6の速度を指示する速度指令発生部、21は電動機速度ωが速度指令ωに従うように電動機6の出力トルクを指示する速度制御部、22はそのトルク指令τを電動機指令電流に換算し、その指令電流と負帰還電流からPWMインバータ5が出力すべき電圧を指示する指令電圧を演算する電流制御部、23は搬送波発生部、24はインバータ部のPWMパルス生成部、25は、後に図2において詳述する、通常の回転時は回転子の推定値位相θを出力し、回転子位置の推定時は、電流の立ち上がり応答を測定した際に設定した所定位相θMとその条件における電流IdMの時間応答波形を関連づけて取り込み、回転子位置を推定する処理を行う位置推定部である。
【0021】
図2は、図1に示す電流制御部22の詳細な構成を示すブロック図である。
【0022】
同図において、220および221は通常運転モ−ドと回転子位置推定モ−ドとを切り換えるスイッチ、222は速度制御部21からのトルクτを指令電流Id ,Iqに分解して出力するトルク制御部、223はsin・cosテーブル、224は検出された3相の負荷電流Iiを2相の電流Id、Iqに変換する3相→2相変換器、225は指令電圧Vd ,Vqを3相の指令電圧eiに変換する2相→3相変換器、226は回転子位置推定モ−ド設定時にパルス状の指令電圧値Vdを発生する指令発生器、227は回転子位置推定モ−ド設定時に指令電圧値Vqを発生する指令発生器、228は回転子位置推定モ−ド設定時に用いられる測定時位相発生器である。
【0023】
通常運転時は、スイッチ切換・指令発生信号Mによって、スイッチ220、221を図示下側に倒すとともに、トルク指令τと回転子推定位相θ、インバータ出力電流Iiを取り込む。トルク指令τはトルク制御部222によって指令電流Id ,Iq に分解される。一方、位置推定部25によって推定された位相θによってsin・cosテーブル223が参照され、3相→2相変換器において、参照されたsin・cosテーブル223のデータに従って検出された3相のインバータ電流Iiを2相の電流Id,Iqに変換する。指令電流Id ,Iq のそれぞれに対して電流Id,Iqによる負帰還制御が行われ、指令電圧Vd ,Vq が作成される。さらに、指令電圧Vd ,Vq は2相→3相変換器225において3相の指令電圧ei が作成され、最終的には搬送波発生部23から出力される搬送波eti との大小比較によってパルス生成部24からPWM信号として出力される。
【0024】
一方、回転子位置推定モードにおいては、スイッチ切換・指令発生信号Mによってスイッチ220、221は図示上側に倒され、負帰還制御が外される。これにより、指令電圧Vd ,Vq はそれぞれ指令発生器226、227より電流立ち上がり時間応答測定用の指令電圧となる。図示するように、指令発生器226からはステップ状の電圧変化を発生させる測定用ステップ状指令電圧が出力され、指令発生器227からはゼロ指令電圧が出力される。さらに指令電圧Vd ,Vq は測定時位相発生器228から与えられる所定の位相発生情報θMに従って2相→3相変換225によって変換され、応答測定用の3相指令電圧ei が作成される。3相指令電圧ei は最終的にPWM信号に変換され電動機巻線に所定の電流が流れる。
【0025】
ここで、回転子を制動機により固定し、巻線に誘起電圧が発生していない場合には、等価巻線に鎖交する全磁束は、回転子の軸と電流ベクトルとの角度差に応じて変化する。この鎖交する磁束が大きい場合には磁束飽和の影響が大きく表れ、等価的なインダクタンスは小さくなり、逆の場合はインダクタンスは大きくなる。このインダクタンスの違いを応答電流の応答時間の変化として捉え、その差から回転子の位置を求めるものである。
【0026】
本発明のねらいの1つは、この応答電流の変化を計測する際に、電流制御系などの影響を受けにくくし、正確に応答時間を測定することにあり、この応答電流のみを精度良く捉えるため、図2ではスイッチ220を設けて負帰還制御機能を遮断している。
【0027】
なお、応答電流波形の取り込みは3相→2相変換224の出力のうちId分をIdMとして位置推定部25に出力しているが、指令発生器226、227で述べたように応答測定用ステップ状指令電圧発生器226からステップ状指令電圧を発生した場合にはIq分をIqMとして位相推定部25に送り出すことになる。
【0028】
次に、図1に示す回転子位置推定部25における位置推定の処理手順を図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0029】
ステップ100において、図2に示す信号Mにより起動指令が発せられ回転子位置推定処理の起動がかかると、先に説明したように、スイッチ220、221は上側に倒され、応答測定用ステップ状指令電圧発生器226からステップ状指令電圧が発生し、それに対して検出される電動機電流Iiから3相→2相変換器によって変換された応答電流IdMが逐次検出される。これをステップ101において、マイコンなどの処理装置により、同期電動機の電気角360°を一定角度で区分した複数の位相を設定し、この設定位相と関連づけて応答電流IdMを取り込む。ステップ102では、図2のステップ状指令電圧226のステップ持続時間情報などから同一位相条件における応答電流の取り込みが完了したかどうかの判定を行い、完了していなければ応答電流の取り込みを継続する。完了していれば、ステップ103で一連の取り込み応答電流から応答時間を求める。応答電流の取り込みの際、本発明では電流負帰還制御を動作させず、指令電圧を直接用いて開ループ制御の状態で動作させる。このようにすることにより、電流の立ち上がりは負帰還制御が付加されている場合よりも測定に時間がかかるが、インダクタンスの違いによる特性の違いを明確に示す特性が得られる特徴がある。次に、ステップ104ですべての設定位相での応答電流の取り込みと、各応答電流に対する応答時間の算出が完了したか判定し、完了していなければデータの取り込みを継続する。完了していればステップ105で既に測定した応答時間の中から最大値を検索し、ステップ106においてその最大値を生じさせる位相に所定値(ここでは180°)を加算して回転子の推定位置を求める。ここで、180°を加えるのは、応答時間の最大となる位相は回転子の磁極位置と180°ずれているためである。
【0030】
次に、本実施形態の回転子位置推定装置を用いた回転子位置の測定方式について図4から図7を用いて説明する。
【0031】
図4は、最小限度の応答波形測定回数で短時間に回転子位置を測定する測定方式(分割法)を説明するための図である。
【0032】
同図において、横軸は設定位相、縦軸は測定された応答電流の応答時間を表し、(a)〜(g)は、回転子の位置によって、設定位相に対する応答時間の違う特性の例を示し、図示される白丸は主区間における測定点を示し、黒丸は副区間に分割した時の副区間における測定点を示している。
【0033】
この測定方式(分割法)の重要点は応答電流測定時の位相条件の設定法にあり、同図に示すように、回転子と電動機巻線が発生する磁束が重なり、磁気飽和の影響が応答電流に現れるのはほぼ180゜区間で山形の特性を示す部分である。
【0034】
本測定方式(分割法)は、位相を0゜から360゜まで順に位相を変化させて応答電流の応答時間を求めるのではなく、まず、位相区間を大まかないくつかの主区間に分割して、その主区間の中央値位相における応答時間を測定する。その応答時間の中から最大の応答時間を発生させる主区間を選び、次いで、選ばれた主区間をさらにいくつかの副区間に分割する。さらに分割された各副区間の中央位相値における応答時間を求める。回転子の位置の推定は、選定された主区間および各副区間において測定された応答時間の中から最大となる設定位相に180°を加算し、その加算された位相角をもって回転子の位置と推定する。
【0035】
このように、本実施形態によれば、主、副区間数が全体の測定回数に関与する。図4(a)では、主区間を2つに分割する例であるが、この場合は180゜幅の山を認識することができない。従って、主区間は、図4(b)以降に示すように、少なくとも3分割以上することが必要であり、3分割以上にすることにより、180゜幅の山の存在区間を把握することができる。副区間については、図4(b),図4(e),図4(f)は2分割した場合を示し、図4(c),図4(d),(g)は3分割した場合を示している。副区間の最小分割数は主区間が3分割、つまり120゜よりも細かく分割されていさえすれば、2分割でも180゜幅の山の頂上付近の位相を探索できることが理解される。つまり、理想状態を想定すれば、最小の測定回数は主区間が3回、副区間が2回の計5回である。
【0036】
次に、この測定方式(分割法)による処理手順を図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0037】
まず、ステップ201において、応答電流の取り込みを行い、次いで、ステップ202で、1つの設定位相における応答電流の取り込みが完了しているどうかを判定する。未完了ならば、ステップ201に戻り応答電流の取り込み処理を継続する。完了していれば、ステップ203で取り込んだ応答電流波形の応答時間を算出する。次に、ステップ204で副区間内でのデータ取り込み中かどうかの判定を行い、未だ主区間内でのデータ測定中であれば、ステップ205で3つの主区間のデータをそれぞれ測定完了したか判定し、完了してないければステップ201に戻って応答電流の取り込みを継続する。取り込みを完了していれば、ステップ206で測定を完了した3つの応答時間の中から最大値が存在する主区間を検索する。次いで、ステップ207で、検索された主区間内で分割された2つの副区間に対応する応答電流の電流波形の取り込みが完了したか判定する。完了していなければ、ステップ201に戻り応答電流の取り込みを行う。完了していれば、ステップ208において、主区間および2つの副区間で計測された応答時間の中からその最大値を検索し、さらにステップ209において、最大応答時間を発生させた位相に180°を加算し、得られた位相角をもって回転子の位置として推定する。
【0038】
上記のごとく、この測定方式(分割法)によれば、少ない測定回数で回転子の位置を確認することができる。なお、ここでは検索時間の短縮を図るために、理想状態を仮定して主区間の分割数を3、副区間の分割数を2とした最小回数の例を示したが、ノイズ混入など検索システムの信頼度向上を図るためには、さらに、主区間の3区間と副区間の2区間を増加させると良好な結果が得られる。
【0039】
図6は、パターンマッチングを利用して短時間に回転子位置を測定する測定方式(パターンマッチング法)を説明するための図である。
【0040】
同図において、横軸は設定位相、縦軸は測定された応答電流の応答時間を表し、(a)〜(g)は、回転子の位置によって、設定位相に対する応答時間の違う特性の例を示し、図示される白丸および黒丸それぞれ各設定位相における測定点を示している。
【0041】
この測定方式の重要点は、システムの立ち上げ時など初期状態として詳細に位相を変化させ対応する応答電流波形の応答時間テーブル(同図で実線で示した特性)を事前に測定しておく点にある。この測定方式は、特に、停電などで回転子の位置が不明になったような事態が発生した際に、回転子位置を少ない測定回数で短時間に探索するのに好適である。
【0042】
同図において、図6(a)および図6(b)に示すように、黒丸で示した3回の設定位相において測定される応答電流(360゜区間を120゜位相毎に区分して測定される応答電流)による応答時間の測定では、図示するように、図6(a)と図6(b)の実線の違いを認識することができない。つまり、120゜位相毎の3回の測定結果と事前測定された位相・応答時間のパターンとによるパターンマッチングによる位置推定では、最大60゜の位置の推定誤差が生じることが理解される。これに対して、図6(c)〜図6(g)に示すように、白丸で示した4回の設定位相において測定される応答電流(360゜区間を90゜位相毎に区分して測定される応答電流)からの応答時間の測定では、特性の頂上(最大値)の存在区間をほぼ確認することができる。このように、この測定方式(パターンマッチング法)によっても応答の最大値に対応した回転子の位置推定を少ない探索回数で正確に行うことがができる。この測定方式(パターンマッチング法)では、はじめにテーブル構築用のデータを詳細に測定する手間と時間が必要であるが、前述の測定方式(分割法)よりも電動機駆動システムが稼働した後、停電などで回転子の位置がわからなくなった際には、素早く、正確に回転子の位置を把握できる点で優れている。
【0043】
次に、この測定方式(パターンマッチング法)による処理手順を図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0044】
ここでは測定回数を4回とし、初期状態の位相・応答時間テーブルは既に構築されているものとする。はじめに、ステップ300において、停電などで回転子位置を推定しなければならない事態が発生すると、本測定方式の処理が起動される。ステップ301でステップ状指令電圧に対する応答電流を取り込みを行う。ステップ302で、同一設定位相における応答電流の取り込みが完了しているどうかを判定する。未完了ならば、ステップ301に戻り、応答電流の取り込み処理を継続する。完了していれば、ステップ303で取り込んだ応答電流から立ち上がりの応答時間を算出する。次に、ステップ304で各測定回数に相当する各設定位相における応答電流の取り込みが完了したかどうかの判定を行う。ここでは、理想状態を仮定して原理的に位相を推定しうる最小回数である4回の測定を行う。360゜区間を4等分して、0゜,90゜,180゜,270゜の各設定位相の応答電流を測定する。応答電流の取り込みが完了していなければステップ301に戻って取り込みを継続する。取り込みが完了していれば、ステップ305で測定完了した4つの応答時間のうちで最大値(第一値)と2番目に大きな値(第二値)とを選択するとともに、第一値を与える位相(φ1)を特定する。ステップ306で、選択された第一値と第二値の応答時間が所定値よりも大きく、かつほぼ等しいかどうかの判定を行う。ここで、所定値よりも大きい条件を設ける理由は、4つのデータのうち、2つの値がほぼゼロとなる場合を排除するためである。これらの条件を満足しているときは、ステップ307において、第一値と第二値を与える両位相の中間位相値に180°を加算した位相を求め、これを推定された回転子位置とする。ステップ306を満足していないときは、第一値および第二値と位相・応答時間テーブルとの一致をとることにより回転子の位置推定を行う処理に入る。ステップ308で応答時間の最大値である第一値と等しい応答時間を与える位相(φT1)を位相・応答時間テーブルから検索する。ここで、第一値を与える位相は2つあり得るので、位相角の小さい方から検索する。次に、ステップ309において、位相・応答時間テーブル内で位相(φT1+90°)に対応する応答時間を位相・応答時間テーブルから検索する。ステップ310でこの検索した応答時間と先に取り込んだ第二値とがほぼ等しいかを判定する。等しい場合は、ステップ311において、位相・応答時間テーブル上で最大応答時間を生じさせる位相(φM)と第一値と等しい応答時間を与えるテーブル上の位相(φT1)との差が、位相(φM)と第一値を与える位相(φ1)とのズレに相当するので、φ1にφM−φT1との差を加算し、その加算値に180°を加算した位相角を求め、これを推定された回転子の位置とする。一方、ステップ310における判定で、検索値と第二値が異なっていると判定された場合には、ステップ312で位相・応答時間テーブルにおいて位相(φT1−90°)に対応する応答時間を検索する。次いで、ステップ313でこの検索した応答時間と先に求めた第二値とがほぼ等しければ、ステップ314において、位相・応答時間テーブル上で最大応答時間を生じさせる位相(φM)と第一値と等しい応答時間を与えるテーブル上の位相(φT1)との差は、位相(φM)と第一値を与える位相(φ1)とのズレに相当するので、φ1にφM−φT1との差を加算し、その加算値に180°を加算した位相を求め、これを推定された回転子の位置とする。ステップ313で検索した応答時間と先に求めた第二値とが等しくなければ、ノイズや測定誤差のためにパターンマッチング処理に失敗したとして、ステップ315において、マッチング処理のための許容値を緩め、ステップ310の処理を再度行って、一致を求める処理を実行する。
【0045】
なお、初期の位相・応答時間テーブルを構築するためのデータ測定、あるいは、停電時など回転子の位相を再推定しなければならない時の応答電流測定回数の最大値は、得られる有意な分解能と測定に要する総合所要時間などの観点から、位相角で約10゜間隔、回数で40回程度が実フィールドでは妥当な測定回数と言える。
【0046】
次に、本発明の第2の実施形態に係わる回転子位置推定装置の処理手順を図8に示すフローチャートを用いて説明する。
【0047】
本実施形態は、第1の実施形態が回転子を制動機により固定し、誘起電圧が発生しない状態において、電動機巻線に位相の異なる指令電圧を逐次印加して応答電流から応答時間を求めるのに対して、同一指令電圧を巻線に与える一方、回転子側に接続されるエレベータの乗りかごなどの負荷を利用して、乗りかごが平衡するために自動的に昇降することによる回転子にかかる負荷トルクにより回転変位させることにより、同一指令電圧を巻線に与え、応答電流波形の応答時間から回転子位置を推定するものである。
【0048】
なお、ここでは、同一の指令電圧を巻線に与え、応答時間測定に際して複数種類の指令電圧を与えることにより発生しうる指令作成に伴う条件の不均一性(誤差の混入)を排除している。また、回転子位置推定装置の構成は、図1および図2に示すものとほぼ同様であるので説明を省略する。
【0049】
はじめに、ステップ400において当該処理が起動されると、ステップ401で制動機が開かれ、負荷トルクを利用して回転子を回転させた後、制動機による制御をかけて回転子を固定する。負荷トルクが小さく回転子が回転しない場合には、周波数が低く、絶対値が小さな値を有する指令を使って低周波同期起動法などにより回転子を所定角度だけ回転させる。回転角度の目安としては測定精度と測定時間との関係から90゜以下が望ましい。その際、ステップ402で、前回停止位置からの回転角度を測定しておく。ここでは図1に示すように回転子に結合されたパルスエンコーダの発生するパルスを計数するなどして回転角度変位を測定する。測定条件の設定が終われば、ステップ403でステップ状指令電圧に対する応答電流の取り込みを行い、ステップ404で、同一位相条件下での応答電流の取り込みが完了しているどうかの判定を行う。未完了ならば応答電流の取り込みを継続する。完了すれば、ステップ405で応答電流の立ち上がり応答時間を算出する。次に、ステップ406において、ステップ405で求めた応答時間が所定値1よりも小さいどうかを判定する。ここで、所定値1とは判定を行うために設定されたゼロより大きいが、比較的小さな値である。小さいと判定された場合は、ステップ407で前回測定した応答時間が所定値1よりも小さかったかどうかの判定を行う。小さければ、未だ回転子位置を測定する回転角度から離れているとして、再度、ステップ401に戻って回転子を回転させ、応答電流を測定する動作に戻す。ステップ407において、前回測定した応答時間が所定値1よりも大きいと判定されたときは、ステップ408において、回転子位置測定の回転角度が行き過ぎであり、前回測定時の回転角度が適切であったとして、その回転角度に180°を加算した位相角を回転子の位置と推定して処理を終了する。一方、ステップ406において、今回測定された応答時間が所定値1よりも大きいときは、ステップ409において、その応答時間が所定値2よりも大きいかどうかの判定を行う。ここで、所定値2とは所定値1より大きいが、最大応答時間より少し小さな値である。ステップ409で大きいと判定された場合は、ステップ410で今回測定された回転角度に180°を加算した位相角を回転子の位置と推定して処理を終了する。ステップ409において、応答時間が所定値2よりも小さければ、ステップ411で、前回の応答時間が所定値1よりも大きかったかどうかの判定を行う。小さいと判定された場合は、回転子位置を推定すべき回転角度はもう少し先にあるとして、ステップ401に戻って再度回転子を回転させて処理を再試行する。ステップ411において大きいと判定された場合は、ステップ412において、前回測定の回転角度と今回測定の回転角度との中間の回転角度に180°を加算した位相角を回転子の位置と推定して処理を終了する。
【0050】
上記のごとく、本実施形態によれば、同一の指令電圧を回転子回転毎の応答電流測定に用いるので、指令電圧作成に伴い混入しうる誤差などの外的要因を排除することができ、磁束飽和の影響を最大限に把握して正確に回転子の位置を推定することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上のごとく、1つの発明によれば、回転子位置と指令電圧との間の位相差の違いによって生じる磁気回路の飽和が応答電流の応答時間に与える違いを、測定することにより少ない測定回数で、短時間に回転子の位置を測定することができる。
【0052】
また、他の発明によれば、回転子位置と指令電圧との間の位相差の違いによって生じる磁気回路の飽和が応答電流に与える違いを、指令作成の過程で混入しうる誤差を同一の指令電圧を用いることによって排除し、さらに、相対位相差の発生は回転子を外部トルク、または電動機の低周波同期トルクによって回転設定することにより回転子の位置を正確に測定できる。
また、他の発明によれば、回転子位置と指令電流との間の位相差の違いによって生じる磁気回路の飽和が応答電流に与える違いを、制御装置の応答に対する影響力を除去することにより回転子の位置を正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる回転子位置推定装置を備える同期電動機の制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す電流制御部22の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す回転子位置推定部25における位置推定の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態に係わる最小限度の応答波形測定回数で回転子位置を測定する測定方式(分割法)を説明するための図である。
【図5】本実施形態に係わる測定方式(分割法)による処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態に係わるパターンマッチングを利用して回転子位置を測定する測定方式(パターンマッチング法)を説明するための図である。
【図7】本実施形態に係わる測定方式(パターンマッチング法)による処理手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係わる同期電動機の回転子位置推定装置における回転子位置を測定する測定方式(回転子位置変更法)の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 電源
3 PWMコンバータ
5 PWMインバータ
6 同期電動機
7 負荷
8 制動機
9 交流電圧検出器
10,11 電流検出器
12 直流電圧検出器
13 パルス発生器
14 直流指令電圧生成部
15 電圧制御部
16 電源位相演算部
17,22 電流制御部
18,23 搬送波発生部
19,24 PWMパルス生成部
20 速度指令発生部
21 速度制御部
25 回転子位置推定部
226 応答測定用ステップ状指令電圧発生器
227 応答測定用零指令電圧発生器
228 応答測定用位相発生器

Claims (4)

  1. 同期電動機の回転子の回転を固定し、該同期電動機の電動機巻線に位相の異なる複数の指令電圧を印加し、該複数の指令電圧に対して検出されるそれぞれの応答電流の応答時間に基づいて、前記回転子の位置を推定する同期電動機の回転子位置推定装置において、
    前記複数の指令電圧が印加される位相は、前記同期電動機の電気角360°を一定角度で区分した複数の主区間に設定された位相と、前記複数の主区間に設定された位相において検出される応答電流中の最大応答時間を呈する主区間を分割した複数の副区間に設定される位相であり、前記回転子の位置推定は、前記設定された複数の位相において検出される前記応答電流中の最大応答時間を呈する位相に基づいて算出されることを特徴とする同期電動機の回転子位置推定装置。
  2. 請求項1記載の回転子位置推定装置において、前記区分される複数の位相数は、少なくとも4以上、40以下であることを特徴とする同期電動機の回転子位置推定装置。
  3. 請求項1または2記載の回転子位置推定装置において、前記主区間を3領域以上、前記副区間を2領域以上に分割したことを特徴とする同期電動機の回転子位置推定装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1記載の回転子位置推定装置において、前記回転子の位置推定時は、前記同期電動機の運転制御を行う制御装置に設けられる負帰還制御機能を停止させることを特徴とする同期電動機の回転子位置推定装置。
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