JP3638794B2 - 多孔質プラスチックフィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体や気体等の流体中に含まれる微粒子を分離ろ過するための多孔質プラスチックフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、液体や気体等の流体中に含まれるサブミクロン〜10μm程度の微粒子を分離ろ過するための多孔質フィルタが多数知られている。
【0003】
例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系材料の微小粒子を、金型内に充填し、材料の融点近傍まで加熱し、粒子表面のみを焼結成形した多孔質フィルタがある。
しかしながら、この種の材料は結晶性樹脂であるため、粘弾性挙動としては、融点以上で急激に弾性率が低下し、しかもゴム状平坦部がほとんど認められないので、フィルタを構成する材料が微小粒子の場合、少しの温度上昇で流動し、ラプラス原理により粒子間空隙の閉塞が起こりやすく、気孔率および気孔径のコントロールが難しくなる。従って、上記多孔質フィルタは、比較的粒径の大きな粒子による焼結成形を余儀なくされ、必然的に気孔径が大きくなり、フィルタとしての用途は自ずと限定される。
【0004】
また、微孔径の多孔質体を成形しにくいという上記課題を解決するために、ポリエチレンの中でも超高分子量ポリエチレンが多孔質フィルタ成形材料として多く用いられている。
超高分子量ポリエチレンは、特異な粘弾性挙動を示し、分子量が数百万と非常に高いため、結晶性高分子材料にも関わらず、融点以上の広い温度範囲でゴム状平坦部が認められる。このゴム状平坦部の温度域で焼結成形を行うと、結晶の融解は起こっているが、材料自体はある程度の弾性率を有しているため、粒子間空隙の閉塞が起こることなく容易に多孔質体の焼結成形が可能である。
ただし、この多孔質フィルタには、60℃程度の雰囲気下までしか連続使用できないという、耐熱性(測定法については後記する)不足の問題がある。
【0005】
一方、耐熱性を改善するために、非晶性樹脂のポリサルホン(ガラス転移温度190℃)やポリエーテルスルホン(ガラス転移温度225℃)の微小粒子を、金型内に充填し、これら材料のガラス転移温度近傍の200〜270℃の温度まで加熱し、焼結成形した多孔質フィルタが提案されている。確かに、耐熱性はポリサルホンで150℃、ポリエーテルスルホンで180℃程度でフィルタ用には十分である。しかし、上記両材料とも、多孔質体を形成するのに有利なゴム状平坦部が、たかだか205〜225℃(PS)および240〜260℃(PES)の範囲と狭いので、比較的粒径の大きな粒子を用いた焼結成形を余儀なくされ、多孔質フィルタとして、細かい塵を分離できるようにし、捕集性能を向上させためには、焼結した基材粒子の表面に、微粒子のポリテトラフロオロエチレン(以下「PTFE」と記す)を、接着剤とともに、直接的に被着して気孔径を小さくする方法が採られていた。
【0006】
このような方法で得られる多孔質フィルタでは、PTFEが粘着性に乏しく、上記多孔質基材と被着されたPTFEとの界面での接着性が不十分で、ろ過や逆洗の際に多孔質基材からPTFE粒子が脱落しやすい。結果として、払い落し性能の低下や、フィルタ表面での捕集性能の低下を招き、また脱落したPTFE粒子が捕集した微粒子中に混入する等の問題があった。
さらに、上記材料はガラス転移点温度が高く、しかも、ガラス転移温度以下では脆いという特性を有し、150℃や180℃というフィルタの使用温度は該ガラス転移温度以下となるため、壊れやすいものとなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プラスチック微小粒子を焼結成形した微粒子分離用多孔質フィルタにおける、上記のような問題の解決、すなわち焼結温度付近で弾性率の急激な低下がなく、連続使用に耐える耐熱性を有し、しかも、使用環境下で脆くなったり、壊れやすくなることのない技術の提供を課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討の結果、多孔質体の成形に有利なゴム状平坦部が広く、使用環境下で柔軟性があり、しかも、例えば硬質相としてポリプロピレンと、軟質相としてエチレン−プロピレンゴムとからなるポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等、材料の選択によっては140℃程度の環境下で使用できる、多孔質フィルタ用原料を見いだした。
【0009】
本発明の要旨とするところは、分子中にエントロピー弾性を発現する軟質相と塑性変形を防止するための硬質相とを有し、常温ではエラストマーの性質を示し、かつ高温では塑性変形が可能となり、融点以上の高温域において広い温度範囲にわたるゴム状平坦部を有する粘弾性挙動を示す、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、塩素化ポリエチレン系、ポリ塩化ビニル系及びフッ素系の熱可塑性エラストマーより選ばれた粒子を焼結成形してなることを特徴とする微粒子分離用多孔質プラスチックフィルタに存する。
【0010】
また、本発明の別な要旨は、上記要旨に加え焼結される粒子の平均粒径が10〜120μmである点にある。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の多孔質プラスチックスフィルタを構成する材料としては、分子中にエントロピー弾性を発現する軟質相と塑性変形を防止するための硬質相とを有し、常温ではエラストマーの性質を示し、かつ高温では塑性変形が可能となり、融点以上の高温域において広い温度範囲にわたるゴム状平坦部を有する粘弾性挙動を示す、熱可塑性エラストマーで、好ましは20℃を超え、特に好ましくは40℃以上の温度範囲にわたるゴム状平坦部を有するものが多孔質フィルタを形成する上で好ましい。
【0012】
ここで、粘弾性挙動は、通常、横軸に温度、縦軸に弾性率をとった図表によって示されるが、図1は後記実施例1に示すポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(融点163℃、ガラス転移温度−10℃)の例であり、常温では108 dyne/cm2 のオーダーの弾性率を有し、温度150℃までは昇温により若干低下するが107 dyne/cm2 のオーダーを保つ。弾性率は、温度が150℃を超えると急激に低下するが、融点以上の高温域において160℃あたりから、約2×106 dyne/cm2 で一定となり、この例では、250℃まで約90℃の広い温度範囲にわたるゴム状平坦部を有していることがわかる。なお、一般に、ゴムの粘弾性挙動として、ガラス転移温度以上の高温域に平坦部(ゴム状領域)が認められることから、ゴム状平坦部の名称で呼ばれる。
【0013】
本発明におけるフィルタ構成材料として、具体的にはポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、塩素化ポリエチレン系、ポリ塩化ビニル系、フッ素系等の熱可塑性エラストマーが挙げられ、使用環境等により適宜材料を選択することができる。
【0014】
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、ブレンドまたはアロイのポリマー構造を有し、硬質相としてはポリプロピレンやポリエチレン等があり、軟質相としてはエチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、天然ゴム等がある。また、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、ブロックのポリマー構造を有し、硬質ブロックとしては4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートやトルエンジイソシアネート等があり、軟質ブロックとしてはポリカプロラクトングリコール、ポリ(エチレン1,4アジペート)グリコール、(ヘキサンジオール1,6カーボネート)グリコール等がある。
【0015】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ブロックのポリマー構成を有し、硬質ブロックとしては、ポリエステル等があり、軟質ブロックとしては、ポリエーテル等がある。ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ブロックのポリマー構造を有し、硬質ブロックとしては、ポリアミド等があり、軟質ブロックとしては、ポリエステル、ポリエーテル等がある。塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーは、マルチブロックまたはランダムのポリマー構造を有し、硬質相としては、ポリエチレン等があり、軟質相としては、塩素化ポリエチレン等がある。ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーは、ブレンドのポリマー構造を有し、硬質相としては、結晶ポリ塩化ビニル等があり、軟質相としては、ニトリルゴム等がある。また、フッ素系熱可塑性エラストマーは、ブロックまたはグラフトのポリマー構造を有し、硬質相としては、フッ素樹脂等があり、軟質相としては、フッ素ゴム等がある。
【0016】
これら各種の熱可塑性エラストマー材料のなかでは、ゴム状平坦部における弾性率変化が特に少なく平坦性が高いので、安定した品質のものが得られる点から、ポリオレフィン系のものを選択するのが好ましい。特に、硬質相としてポリプロピレンを含むものが好ましい。硬質相由来の融点が150℃以上と比較的高い点が、フィルターの耐熱性向上に好影響を及ぼしていると考えられる。
【0017】
本発明の多孔質プラスチックフィルタにおいて、焼結される微小粒子の粒径としては、平均粒径が10〜120μmのものが好結果をもたらす。平均粒径が10μm未満では、粒子を成形金型内に均一に充填しにくい等、粉体の取扱性に問題があり、粒径が120μmを超えるものでは微粒子分離用フィルタとしての十分な捕集性能を発現できにくい。実際には、分離すべき流体中の微粒子の大きさによって、適切な気孔径となるように、焼結される熱可塑性エラストマー微小粒子の平均粒径が選択される。また、均一な気孔径を必要とする場合は、微小粒子の平均粒径だけでなく、粒径の分布の狭いものがよい。そのような微小粒子を得るためには、例えば粒子の分級や篩分が行われることもある。
【0018】
また、熱可塑性エラストマー微小粒子の焼結は、材料の融点以上の高温域にある弾性率の一定な範囲、すなわちゴム状平坦部内の温度で行われる。好ましくは、このゴム状平坦部における弾性率は、106 〜108 dyne/cm2 の範囲内にあるのがよい。なぜなら、焼結成形時の材料の弾性率が高すぎると、粒子相互間の融着が行われず、また、低すぎると流動して、融着した粒子が気孔を閉塞してしまうからである。
【0019】
本発明の多孔質プラスチックフィルタの焼結成形方法には、特に制限はなく、通常は、いわゆる型内焼結法による。すなわち、筒状等の内表面形状を有する外型とその内部に挿入した同様の外表面形状を有する内型とよりなる成形金型を用い、外型内表面と内型外表面の間隙部に形成されるキャビティ内に、熱可塑性エラストマー微小粒子を充填した後、成形金型ともどもこれを加熱する静的成形法のほか、(1)先端部に成形型を有する温度調整が可能なシリンダ内に往復運動するピストン(プランジャーともいう)を内蔵したラム式押出機を用いて行うラム押出法、(2)先端部に成形型を有する温度調整が可能なシリンダ内にスクリューを内蔵した射出成形機を用いて行う射出成形法、(3)先端部に成形型を有する温度調整が可能なシリンダ内にスクリューを内蔵した押出成形機を用いて行う押出成形法などの動的成形法がある。
【0020】
これら静的成形法や動的成形法等の方法から、最終的な多孔質体の形状など、要求に応じて適宜選択すればよい。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
また、実施例で使用した材料の物性の測定は、次の様にして行った。
【0022】
[実施例]
ポリプロピレン(硬質相)40wt%とエチレンープロピレンゴム(軟質相)25wt%、その他成分(潤滑剤等)35wt%からなるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのペレット(融点163℃、ガラス転移温度−10℃)を機械粉砕し、平均粒径98μmの多孔質フィルター用微小粒子を得た。
金型は筒状表面を有する内型と外型を組み合わせ、両型間の空隙に、上記微小粒子を振動充填し、粒子を充填した金型を160〜200℃の温度で30〜60分加熱し、いわゆる型内焼結法に従って焼結成形を行い、内径50mm、外径56mm、長さ1200mmの筒状の多孔質フィルタを得た。
【0023】
[フィルタの評価]−110℃における耐熱性
上記実施例において得られた筒状多孔質体を集塵装置に設置し、炭酸カルシウム(平均粒径:5μm)を25g/m3 含む110℃の含塵空気を送り込み、ろ過風速1m/minで連続1週間稼働させ、運転時の差圧、多孔質フィルタ通過後の粉塵濃度、およびフィルタの変形状態を観察した。その結果を下の表に示す。
なお、多孔質フィルタ表面に堆積する粉塵を払い落とす方法としては、通常の逆洗方式を用いた。
【0024】
【0025】
上の表に示したとおり、実施例の場合、運転時の差圧が200mmAq以下、粉塵濃度も0.1mg/m3 以下と良好な結果となり、連続運転の間多孔質フィルタの破損トラブル等は発生しなかった。
【0026】
[比較例]
上記実施例において、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーに代えて、超高分子量ポリエチレン(融点140℃)を使用したほかは、実施例と全く同様にして多孔質フィルタを得た。また、実施例と同様に、フィルタの耐熱性を評価したところ、1週間稼働後、大変形を起こして実用性がなかった。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、成形に有利なゴム状平坦部が広い温度範囲にわたり、材料の選択によっては140℃程度の環境下で連続使用できる、熱可塑性エラストマー材料を使用しているため、焼結される粒子が10〜120μmの微小粒子であっても、容易に所望の気孔径および気孔率を有する多孔質体の焼結成形が可能であり、PTFE微粒子の被着等の後工程がなくても、流体中の微粒子の高捕集性能を有する多孔質プラスチックフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 材料の粘弾性挙動を示す図表。
Claims (3)
- 分子中にエントロピー弾性を発現する軟質相と塑性変形を防止するための硬質相とを有し、常温ではエラストマーの性質を示し、かつ高温では塑性変形が可能となり、融点以上の高温域において広い温度範囲にわたるゴム状平坦部を有する粘弾性挙動を示す、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、塩素化ポリエチレン系、ポリ塩化ビニル系及びフッ素系の熱可塑性エラストマーより選ばれた粒子を焼結成形してなることを特徴とする微粒子分離用多孔質プラスチックフィルタ。
- 焼結される粒子が、20℃を超える温度範囲にわたるゴム状平坦部を有する熱可塑性エラストマーから構成されたことを特徴とする請求項1記載の微粒子分離用多孔質プラスチックフィルタ。
- 焼結される粒子の平均粒径が10〜120μmであることを特徴とする請求項1記載の微粒子分離用多孔質プラスチックフィルタ。
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