JP3662955B2 - 回路基板および回路基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、回路基板およびその製造方法に関し、さらに詳しくはガラス封止性が良好な回路基板およびその製造方法に係わる。
【0002】
【従来の技術】
電子機器においては、IC、LSI等の電子デバイスの実装、回路形成、および絶縁を目的としてアルミナを基材とする回路基板が使用されている。しかしながら、前記アルミナ基材は熱伝導率が約20W/m・Kと低いため、近年のLSIの高密度化、高集積化に対応して高熱伝導性のAlN焼結体からなる基材を有する回路基板が注目されている。
【0003】
ところで、AlNは共有結合性が強く、難焼結材料であるため緻密な焼結体を得るためには、最低1800℃の焼結温度が必須であった。
【0004】
このようなことから、特開昭61−117160号公報にはAlN粉末に希土類元素化合物およびアルカリ土類酸化物を同時に添加した原料を用いることにより低温焼結化を図る方法が開示されている。しかしながら、前記焼結温度はせいぜい1700℃以上であり、1600℃程度もしくはそれ以下の焼結温度では緻密化は達成されず、また焼結体中にシミ等が発生しやすいという問題点があった。また、回路基板を半導体素子のパッケージに応用する際、前記回路基板のAlN焼結体からなる基材にキャップをガラス封止する工程においても、前記AlN焼結体はガラス封止に有効な効果をもたらす成分が含有されていないために、封止性が劣るという問題があった。
【0005】
また、特開昭62−153173号公報にはAlN粉末にIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、VII a族元素およびVIII族元素から選ばれる少なくとも1種を添加した原料を用いることによりAlN焼結体の高密度化、高熱伝導率化を図ることが開示されている。しかしながら、この発明においても焼結温度の低温化は不十分であり、ガラス封止が良好になる成分の添加が欠如している。
【0006】
一方、特開昭62−153173号公報や特開平4−130064号公報には原料中にマンガンを添加することが記載されているが、いずれも着色や透過性を改善するためであり、焼結温度の低温化は期待できないか、もしくは不十分である。さらに、ガラス封止に関しての特性の向上は望めない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、緻密で良好な熱伝導性を有し、かつガラス封止性が良好なAlN焼結体からなる絶縁層と、前記絶縁層に対して良好に密着した導体層とを備えた回路基板およびその製造方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、キャップがガラス成分により接合封止される回路基板であって、
AlNを主成分とし、かつ II a族元素および III a族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を酸化物換算で0.05〜15重量%含有し、さらに硼素もしくは硼素化合物を酸化物(B 2 O 3 )換算で0.01〜4重量%、マンガンもしくはマンガン化合物を酸化物(MnO 2 )換算で0.005〜4重量%含有する絶縁層と、
前記絶縁層に形成され、少なくとも一部が金属単体および/または導電性化合物、AlN、硼素もしくは硼素化合物およびマンガンもしくはマンガン化合物を含有し、かつ II a族元素−Al−O系化合物、 III a族元素−Al−O系化合物および II a族元素− III a族元素−Al−O系化合物から選ばれる少なくとも一つの化合物を含有する導体層と
を具備したことを特徴とする回路基板が提供される。
【0009】
本発明によると、キャップがガラス成分により接合封止される回路基板の製造方法であって、
(a)AlN粉末と(b)前記AlN粉末に対して酸化物換算で0.05〜15重量%配合されるIIa族元素化合物およびIIIa族元素化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と(c)前記AlN粉末に対して酸化物(B2O3)換算で0.01〜4重量%配合される硼素もしくは硼素化合物と(d)前記窒化アルミニウム粉末に対して酸化物(MnO2)換算で0.01〜4重量%配合されるマンガンもしくはマンガン化合物とを含む原料を成形してグリーンシートを作製する工程と、
(A)金属単体および/または導電性化合物と(B)AlN粉末と(C)IIa族元素化合物およびIIIa族元素化合物から選ばれる少なくとも1種と(D)硼素もしくは硼素化合物(E)およびマンガンもしくはマンガン化合物とを含む導体ペーストを調製する工程と、
前記グリーンシートの少なくとも表面に前記導体ペーストをパターン状に塗布した後、積層、脱バインダ、焼結を行う工程と
を具備したことを特徴とする回路基板の製造方法が提供される。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
(1)AlN焼結体
このAlN焼結体は、AlNを主成分とし、かつIIa族元素およびIIIa族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を酸化物換算で0.05〜15重量%含有し、さらに硼素もしくは硼素化合物を酸化物換算で0.01〜4重量%、マンガンもしくはマンガン化合物を酸化物換算で0.005〜4重量%含有することを特徴とするものである。
【0012】
前記IIa族元素としては、Ca,Ba,Sr等を挙げることができる。前記III a族元素として、Sc,Yを含む希土類元素を挙げることができる。
【0013】
前記IIa族元素および前記IIIa族元素から選ばれる少なくとも1種の元素の含有量を規定したのは、次のような理由によるものである。前記元素の含有量を酸化物換算で0.05重量%未満にすると、緻密で熱伝導率の高いAlN焼結体が得られなくなる。一方、前記元素の含有量が酸化物換算で15重量%を越えるとAlN焼結体の粒界相の成分が多くなり過ぎて、熱伝導率が低下する。より好ましい前記元素の含有量は、酸化物換算で0.1〜10重量%である。さらに好ましくい前記元素の含有量は、酸化物換算で0.5〜8重量%である。
【0014】
前記硼素化合物としては、例えば酸化硼素、硼酸、硼化チタン、硼化タングステン、硼化ジルコニウムのような遷移金属硼化物、硼化ランタンのように希土類硼化物、硼化カルシウムのようなアルカリ土類硼化物等を挙げることができる。
【0015】
前記硼素または硼素化合物の含有量を規定したのは、次のような理由によるものである。前記硼素または硼素化合物を酸化物換算で0.01重量%未満すると緻密でガラス封止性の優れたAlN焼結体を得ることができなくなる。一方、前記硼素または硼素化合物が酸化物換算で4重量%を越えるとAlN焼結体の粒界相の成分が多くなり過ぎて、熱伝導率が低下するばかりか、表面が荒れて平坦性が損なわれる。より好ましい前記硼素または硼素化合物の含有量は、酸化物換算で0.02〜3重量%である。
【0016】
前記マンガン化合物としては、例えば酸化マンガン(MnO、MnO2)、過マンガン酸カリウム等を挙げることができる。
【0017】
前記マンガンまたはマンガン化合物の含有量を規定したのは、次のような理由によるものである。前記マンガンまたはマンガン化合物を酸化物換算で0.005重量%未満すると緻密でガラス封止性の優れたAlN焼結体を得ることができなくなる。一方、前記マンガンまたはマンガン化合物が酸化物換算で4重量%を越えるとAlN焼結体の粒界相の成分が多くなり過ぎて、熱伝導率が低下するばかりか、表面が荒れて平坦性が損なわれる。より好ましい前記マンガンまたはマンガン化合物の含有量は、酸化物換算で0.008〜2重量%である。
【0018】
なお、本発明に係わるAlN焼結体は、必要に応じて着色化、高強度化のためにTi,W,Mo,Ta,Nb,Mn等の遷移金属またはこれら金属の酸化物、炭化物、窒化物、硼化物をAlNに対して遷移金属換算で0.05〜1重量%の範囲で含有することを許容する。また、機械的強度を向上させるために酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(Si3N4)等の珪素化合物をAlNに対して1重量%以下の範囲で含有することを許容する。
【0019】
(2)AlN焼結体の製造方法
まず、(a)AlN粉末と(b)前記AlN粉末に対して酸化物換算で0.05〜15重量%配合されるIIa族元素化合物およびIIIa族元素化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と(c)前記AlN粉末に対して酸化物換算で0.01〜5重量%配合される硼素もしくは硼素化合物と(d)前記AlN粉末に対して酸化物換算で0.01〜5重量%配合されるマンガンもしくはマンガン化合物とをボールミル等を用いて混合して原料を調製する。
【0020】
前記(a)成分のAlN粉末は、平均一次粒径が0.03〜1.2μmであることが好ましい。これは、次のような理由によるものである。AlN粉末の平均一次粒径を0.03μm未満にすると粉末の取り扱いが困難になり、かつ粉末の成形も困難になる恐れがある。一方、AlN粉末の平均一次粒径が1.2μmを越えると1700℃以下、特に1600℃以下での低温焼結が困難になる恐れがあり、また焼結後の粒径が2μmを越えて機械的強度が低下する恐れがある。より好ましいAlN粉末の平均一次粒径は、0.05〜1.0μmである。
【0021】
前記(a)成分のAlN粉末は、不純物酸素量が0.2〜3.5重量%であることが好ましい。ここで、不純物酸素量とは焼結直前の実効的に焼結に関与する量を意味するものである。前記不純物酸素量を前記範囲に規定したのは、次のような理由によるものである。不純物酸素量を0.2重量%未満にすると、1700℃以下、特に1600℃以下での焼結が困難になったり、焼結前の混合や成形の取扱い段階でAlN粉末が酸化等により変質したりする恐れがある。一方、不純物酸素量が3.5重量%を越えると熱伝導率の高いAlN焼結体を得ることが困難になる。より好ましい不純物酸素量は、0.5〜2重量%である。
【0022】
前記(b)成分のIIa族元素化合物としては、例えばCa,Ba,Sr等の酸化物、炭化物、シュウ酸塩、硝酸塩、アルコキシド等を挙げることができる。前記III a族元素化合物としては、例えばSc,Yを含む希土類元素の酸化物、炭化物、シュウ酸塩、硝酸塩、アルコキシド、ハロゲン化物、窒化物等を挙げることができる。これらの化合物は、1種または2種以上の混合物の形態で使用することができる。
【0023】
前記(b)成分の配合量を規定したのは次のような理由によるものである。前記(b)成分を酸化物換算で0.05重量%未満にすると、低温(1700℃以下)の焼結により緻密で熱伝導率の高いAlN焼結体が得られなくなる。一方、前記(b)成分の配合量が酸化物換算で15重量%を越えると得られたAlN焼結体の粒界相の成分が多くなり過ぎて、熱伝導率が低下する。より好ましい前記(b)成分の配合量は、酸化物換算で0.1〜10重量%である。
【0024】
前記(c)成分の硼素化合物としては、例えば酸化硼素、硼酸、硼化チタン、硼化タングステン、硼化ジルコニウムのような遷移金属硼化物、硼化ランタンのように希土類硼化物、硼化カルシウムのようなアルカリ土類硼化物等を挙げることができる。
【0025】
前記(c)成分の配合量を規定したのは、次のような理由によるものである。前記(c)成分を酸化物換算で0.01重量%未満すると、低温(1700℃以下)の焼結により緻密で熱伝導率の高く、かつガラス封止性の優れたAlN焼結体を得ることができなくなる。一方、前記(c)成分が酸化物換算で4重量%を越えると得られたAlN焼結体の粒界相の成分が多くなり過ぎて、熱伝導率が低下するばかりか、表面が荒れて平坦性が損なわれる。より好ましい前記(c)成分の配合量は、酸化物換算で0.02〜3重量%である。
【0026】
前記(d)成分のマンガン化合物としては、例えば酸化マンガン(MnO、MnO2)、過マンガン酸カリウム等を挙げることができる。
【0027】
前記(d)成分の配合量を規定したのは、次のような理由によるものである。前記(d)成分を酸化物換算で0.005重量%未満すると低温(1700℃以下)の焼結により緻密でガラス封止性の優れたAlN焼結体を得ることができなくなる。一方、前記(d)成分が酸化物換算で4重量%を越えるとAlN焼結体の粒界相の成分が多くなり過ぎて、熱伝導率が低下するばかりか、表面が荒れて平坦性が損なわれる。より好ましい前記(d)成分の配合量は、酸化物換算で0.008〜2重量%である。
【0028】
前記(b)〜(d)の成分は、いずれも平均粒径が5μm以下、より好ましくは4μm以下であることが望ましい。
【0029】
前記原料中には、前記平均粒径(0.03〜1.2μm)より大きい粒径を有するAlN粉末が含有されることを許容する。また、前記原料中には必要に応じて着色化、高強度化のためにTi,W,Mo,Ta,Nb,Mn等の遷移金属またはこれら金属の酸化物、炭化物、フッ化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、窒化物、硼化物を前記AlN粉末に対して遷移金属換算で0.05〜1重量%の範囲で配合してもよい。さらに、焼結温度の低減化に有効なAl2O3、AlF3等のアルミニウム化合物、リンの化合物や機械的強度を向上させるための酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(Si3N4)等の珪素化合物をAlN粉末に対して1重量%以下の範囲で配合することを許容する。
【0030】
次いで、前記原料にバインダーを加え、混練、造粒、整粒を行った後、成形した成形体を作製する。この成形法としては、例えば金型プレス、冷間静水圧プレスまたはシート成形などを採用することができる。つづいて、前記成形体を窒素ガス気流中などの非酸化性雰囲気中や水蒸気を含む不活性雰囲気中、空気中で加熱して前記バインダを除去した後、非酸化性雰囲気中、1400〜1700℃、好ましくは1500〜1650℃の温度で焼結することによりAlN焼結体を製造する。
【0031】
一方、前記常圧焼結に代えて前記原料をホットプレス、熱間静水圧プレスすることによりAlN焼結体が製造される。
【0032】
(3)回路基板
この回路基板は、AlNを主成分とし、かつIIa族元素およびIIIa族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を酸化物換算で0.05〜15重量%含有し、さらに硼素もしくは硼素化合物を酸化物換算で0.01〜4重量%、マンガンもしくはマンガン化合物を酸化物換算で0.005〜4重量%含有する絶縁層と、
金属単体および/または導電性化合物、AlN、硼素もしくは硼素化合物およびマンガンもしくはマンガン化合物を含有し、かつIIa族元素−Al−O系化合物、IIIa族元素−Al−O系化合物およびIIa族元素−IIIa族元素−Al−O系化合物から選ばれるすくなくとも1つの化合物を含有する導体層と
を具備したことを特徴とするものである。
【0033】
前記絶縁層において、IIa族元素およびIIIa族元素、硼素化合物およびマンガン化合物は前述したAlN焼結体(1)で説明したのと同様なものが用いられ、かつこれら成分の含有量を規定したのも前述したAlN焼結体(1)で説明したのと同様な理由によるものである。
【0034】
前記導体層に含まれる金属単体、導電性化合物としては、例えばタングステン、タングステン硼化物、タングステン炭化物、ケイ化タングステン、モリブデン、モリブデン硼化物、モリブデン炭化物、ケイ化モリブデン等を挙げることができる。これらの金属単体、導電性化合物は、導体層中に75〜99重量%含有することが好ましい。より好ましい金属単体、導電性化合物の含有量は80〜99重量%である。
【0035】
前記導体層中に含まれるAlNの量は、前記絶縁層との熱収縮性を整合させるために1〜20重量%にすることが好ましい。
【0036】
前記導体層中に含まれる硼素もしくは硼素化合物の量は、0.001〜0.2重量%にすることが好ましい。
【0037】
前記導体層中に含まれるマンガンもしくはマンガン化合物の量は、0.001〜0.2重量%にすることが好ましい。
【0038】
(4)回路基板の製造方法
まず、(a)AlN粉末と(b)前記AlN粉末に対して酸化物換算で0.05〜15重量%配合されるIIa族元素化合物およびIIIa族元素化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と(c)前記AlN粉末に対して酸化物換算で0.01〜5重量%配合される硼素もしくは硼素化合物と(d)前記AlN粉末に対して酸化物換算で0.01〜5重量%配合されるマンガンもしくはマンガン化合物とを含む原料を有機バインダと共に有機溶剤中に分散してスラリーを調製する。つづいて、このスラリーをドクターブレード法により成形してグリーンシートを作製する。
【0039】
前記(a)成分のAlN粉末は、前述したAlN焼結体の製造方法(3)で説明したのと同様なものが用いられる。
【0040】
前記(b)〜(d)の成分に用いられる化合物等は、前述したAlN焼結体の製造方法(2)で説明したのと同様なものが用いられ、かつ(b)〜(d)の成分の配合量を規定したのも前述したAlN焼結体の製造方法(2)で説明したのと同様な理由によるものである。
【0041】
また、(A)金属単体および/または導電性化合物と(B)AlN粉末と(C)IIa族元素化合物およびIIIa族元素化合物から選ばれる少なくとも1種と(D)硼素もしくは硼素化合物と(E)マンガンもしくはマンガン化合物とを有機バインダと共に有機溶剤中に分散して導体ペーストを調製する。
【0042】
前記(A)成分の金属単体、導電性化合物としては、例えばタングステン、タングステン硼化物、タングステン炭化物、ケイ化タングステン、モリブデン、モリブデン硼化物、モリブデン炭化物、ケイ化モリブデン等を挙げることができる。これらの金属単体、導電性化合物は、後述する同時焼結工程で形成される導体層中に75〜99重量%含有されるように配合することが好ましい。より好ましい金属単体、導電性化合物の配合量は80〜99重量%である。
【0043】
前記(B)成分のAlN粉末は、後述する同時焼結工程で形成される導体層中に1〜20重量%含有されるように配合することが好ましい。
【0044】
前記(C)成分のIIa族元素化合物とIIIa族元素化合物は、後述する同時焼結工程で形成される導体層中に酸化物換算で0.001〜3重量%含有されるように配合することが好ましい。
【0045】
前記(D)成分の硼素もしくは硼素化合物は、後述する同時焼結工程で形成される導体層中に酸化物換算で0.001〜0.2重量%含有されるように配合することが好ましい。
【0046】
次いで、前記グリーンシートの少なくとも表面に前記導体ペーストをスクリーン印刷法等によりパターン状に塗布した後、窒素等の非酸化性雰囲気中、1400〜1700℃、好ましくは1500〜1650℃の温度で焼結することにより回路基板を製造する。
【0047】
なお、多層回路基板は次のような手順で製造される。まず、前記グリーシートの所定位置に層間接続用の複数のビアホールを開孔し、前記導体ペーストの塗布時に前記ビアホールに前記ペーストを充填して複数枚のグリーシートを作製する。この工程において、前記ペーストを前記ビアホールに充填した後、圧入してもよい。つづいて、これらグリーシートを前記ビアホールが合致するように重ね、加熱プレスして積層体とした後、所定の寸法に端部等をカットする。ひきつづき、この積層体を窒素ガスなどの非酸化性雰囲気中、水蒸気を含む雰囲気中やアルゴンなどの不活性雰囲気中で加熱してバインダを除去した後、窒素等の非酸化性雰囲気中、1400〜1700℃、好ましくは1500〜1650℃の温度で焼結することにより多層回路基板を製造する。
【0048】
【作用】
前述したAlN焼結体(1)は、AlNを主成分とし、かつそれぞれ酸化物換算で所定量のIIa族元素および IIIa族元素から選ばれる少なくとも1種の元素と硼素もしくは硼素化合物とマンガンもしくはマンガン化合物と含有するため、緻密で100W/m・K以上の高い熱伝導率を有し、さらに優れたガラス封止性を有する。
【0049】
前記AlN焼結体(1)が優れたガラス封止性を有する機構については、現在のところ明確ではないが、発明者らの研究によれば以下のような組織になっていることに起因するものと考えられる。
【0050】
すなわち、前記AlN焼結体に含有される硼素もしくは硼素化合物とマンガンもしくはマンガン化合物は、ランダムに分散して入る。主には、IIa族元素−Al−O化合物またはIIIa族元素−Al−O化合物に均一に分散しており、微量はAlN中にも混入していると思われる。表面部分には、IIa族元素−Al−O化合物またはIIIa族元素−Al−O化合物とAlNの粒子が存在しており、その両方に硼素元素とマンガン元素が存在している。このような硼素元素とマンガン元素が共存すると、ガラスが軟化温度以上の温度でAlN焼結体表面に存在した時、ガラスの濡れ角を下げ、その結果ガラスが薄く均一に濡れる。また、硼素とマンガンがAlN焼結体の表面に存在すると、ガラス封止に用いられるガラス成分とミクロな結合が生成し、それらの間に接合性および整合性の良好な界面を形成すると考えられる。
【0051】
本発明に係わる回路基板(3)は、AlNを主成分とし、かつIIa族元素およびIIIa族元素から選ばれる少なくとも1種の元素、硼素もしくは硼素化合物およびマンガンもしくはマンガン化合物を含有する絶縁層と、金属単体および/または導電性化合物、窒化アルミニウム、硼素もしくは硼素化合物およびマンガンもしくはマンガン化合物を含有し、かつIIa族元素−Al−O系化合物、IIIa族元素−Al−O系化合物およびIIa族元素−III a族元素−Al−O系化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する導体層とを備える。このような回路基板(3)によれば、前記導体層は前記絶縁層と同材質の成分、特にマンガンが含有されているため、前記絶縁層と前記導体層とはマンガンを含む複合酸化物により良好に密着される。また、前記導体層には前記絶縁層と同材質の成分が含有されているため、それら絶縁層および導体層間の熱膨張係数を整合させることができる。その結果、前記絶縁層と前記導体層間の剥離等のない信頼性の高い回路基板を得ることができる。
【0052】
さらに、前記絶縁層は前述したAlN焼結体(1)と同様な成分組成からなり、硼素元素とマンガン元素が共存してガラスが軟化温度以上の温度でその表面に存在した時、ガラスの濡れ角を下げるため、良好なガラス封止性を有する。したがって、かかる回路基板はキャップ等がガラス成分により接合されるパッケージ等に有効に利用できる。
【0053】
【実施例】
以下、本発明を実施例に沿って、さらに詳細に説明する。なお、これら実施例は、本発明を容易にする目的で記載されるものであり、本発明を特に限定するものではない。
【0054】
(実施例1)
不純物酸素量0.98重量%、平均一次粒子径0.6μmのAlN粉95.5重量%、平均粒径0.1μm、純度99.9重量%のY2O33.0重量%、平均粒径0.3μmのMnO20.5重量%、平均粒径3μmのB2O30.5重量%および着色剤としてのWO30.5重量%からなる混合物をボールミルを用いn−ブタノール中において湿式混合した。この混合粉末を有機バインダーと共に有機溶剤中に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーをドクターブレード法に従ってシート化し、複数のグリーンシートを形成した。つづいて、これらのグリーンシートの所定位置に層間接続用の複数のビアホールを形成した。
【0055】
一方、平均粒径0.4μmのW粉末85体積%と平均粒径0.6のAlN粉末96重量%、Y2O33重量%、MnO20.5重量%およびB2O30.5重量%からなる混合粉末15.0体積%とを有機バインダーと共に有機溶媒中に分散し、導体ペーストを調製した。
【0056】
次いで、前記導体ペーストを前記グリーンシートのビアホール内に充填すると共に表面にスクリーン印刷し、導体ペースト層を形成した。つづいて、導体ペースト層が形成された複数グリーンシートを、ビアホールで位置合わせして積層した後、加熱プレスを施した。つづいて、得られた積層体を水蒸気を含む窒素雰囲気中、800℃で加熱して有機バインダを除去した。この脱バインダ体をN2 等の非酸化性雰囲気中、1680℃、8時間同時焼結した。その結果、導体層間がビアホールで導通させた多層配線構造のセラミック回路基板が製造された。
【0057】
得られたセラミック回路基板において、絶縁層は十分に緻密化しており、ポアは見られなかった。
【0058】
また、前記回路基板は反り、うねり、クラックやフクレがなく、表面が平滑であった。前記回路基板の形態をSEMで観察したところ、AlNを主成分とする絶縁層とWを主成分とする導体層とが共に充分緻密化していた。
【0059】
さらに、前記絶縁層と同じ組成の原料粉にアクリル系バインダーを5重量%添加して造粒した後、この造粒粉を50MPaの一軸加圧下で成形して凹型の形状をした圧粉体とした。この圧粉体を窒素ガス雰囲気中、700℃で加熱してアクリル系バインダーを除去した。脱バインダー体をAlN焼結体から成る焼結容器中にセットし、グラファイト製ヒータ炉内にて1気圧の窒素ガス雰囲気下、1700℃、6時間の焼結を行って2個の凹形AlN焼結体を製造した。得られた2個の凹型AlN焼結体をそれらの開口面が互いに当接するように重ねた後、窒素雰囲気中で下記組成のガラスを用いてガラス封止を行った。
【0060】
<ガラスの組成>
SiO 2 …6.60重量%、TiO 2 … 5.30重量%
Al 2 O 3 …1.80重量%、Fe 2 O 3 … 0.08重量%
Cr 2 O 3 …0.08重量%、PbO …57.7 重量%
CoO …0.02重量%、CaO … 1.00重量%
MgO …0.03重量%、Na 2 O … 0.01重量%
B 2 O 3 …6.40重量%、ZnO …19.00重量%
SnO 2 …0.01重量%、V 2 O 3 … 0.30重量%
Bi 2 O 3 …1.50重量%。
得られた試料について、5気圧のヘリウムガスで満たしたチャンバ中に40分放置した後、チャンバ内を10 -3 torrオーダに真空に引いて、再び空気を1気圧まで導入した。このヘリウム洗浄工程を3回行った後、試料をチャンバから取り出し、空気中で30分放置した。このように処理した後、ヘリウムリーク試験(ファインリークの検知)にかけた。ヘリウムリーク量の検出は、質量分析計で行った。その結果、1.0×10-10atm・cc・s-1以下であり良好な値であった。また、3M製フロリナート40番を120℃に暖めた中に前記試料を入れ3分間放置するグロスリーク試験を行った。その結果、気泡を発生はなく、グロスリークも確認されなかった。
【0061】
(実施例2〜5および参考例1〜12)
絶縁層用混合物として下記表1および表4に示す組成のものを用い、導体層用混合物として下記表2および表5に示す組成のものを用い、かつ同表2および表5に示す焼結条件に設定した以外、実施例1と同様な方法により16種の多層配線構造のセラミック回路基板を製造した。
【0062】
得られた各セラミック回路基板の表面状態を調べた。また、前記各絶縁層と同じ組成の2個の凹形AlN焼結体を実施例1と同様に製造した。得られた2個の凹型AlN焼結体をそれらの開口面が互いに当接するように重ねた後、窒素雰囲気中で前記組成のガラスを用いてガラス封止を行って試料を作製した。得られた試料について実施例1と同様なリーク試験を行った。さらに、各回路基板の導体層の抵抗率を調べた。これらの結果を下記表3および表6に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
前記表3および表6から明らかなように実施例2〜5の回路基板は、表面状態が良好で、かつガラス成分を封止材料として用いた時の封止特性に優れ、さらに低抵抗の導体層を有することがわかる。
【0069】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば緻密で120W/mK以上の高い熱伝導率を有し、かつ焼きムラ色や色ムラおよび反りやうねりがなく、さらにガラスを用いた封止特性の優れたAlNを主成分とする絶縁層を有し、かつ前記絶縁層と導電材料を主成分とする導体層とが良好に密着した高信頼性の回路基板、およびこのような優れた特性を有する回路基板を低温同時焼結により製造し得る方法を提供できる。
Claims (2)
- キャップがガラス成分により接合封止される回路基板であって、
窒化アルミニウムを主成分とし、かつIIa族元素およびIIIa族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を酸化物換算で0.05〜15重量%含有し、さらに硼素もしくは硼素化合物を酸化物(B2O3)換算で0.01〜4重量%、マンガンもしくはマンガン化合物を酸化物(MnO2)換算で0.005〜4重量%含有する絶縁層と、
前記絶縁層に形成され、少なくとも一部が金属単体および/または導電性化合物、窒化アルミニウム、硼素もしくは硼素化合物およびマンガンもしくはマンガン化合物を含有し、かつIIa族元素−Al−O系化合物、IIIa族元素−Al−O系化合物およびIIa族元素−IIIa族元素−Al−O系化合物から選ばれる少なくとも一つの化合物を含有する導体層と
を具備したことを特徴とする回路基板。 - キャップがガラス成分により接合封止される回路基板の製造方法であって、
(a)窒化アルミニウム粉末と(b)前記窒化アルミニウム粉末に対して酸化物換算で0.05〜15重量%配合されるIIa族元素化合物およびIIIa族元素化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と(c)前記窒化アルミニウム粉末に対して酸化物(B2O3)換算で0.01〜4重量%配合される硼素もしくは硼素化合物と(d)前記窒化アルミニウム粉末に対して酸化物(MnO2)換算で0.01〜4重量%配合されるマンガンもしくはマンガン化合物とを含む原料を成形してグリーンシートを作製する工程と、
(A)金属単体および/または導電性化合物と(B)窒化アルミニウム粉末と(C)IIa族元素化合物およびIIIa族元素化合物から選ばれる少なくとも1種と(D)硼素もしくは硼素化合物(E)およびマンガンもしくはマンガン化合物とを含む導体ペーストを調製する工程と、
前記グリーンシートの少なくとも表面に前記導体ペーストをパターン状に塗布した後、積層、脱バインダ、焼結を行う工程と
を具備したことを特徴とする回路基板の製造方法。
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