JP3672492B2 - TiCl4の精製方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属Tiの製造に使用されるTiCl4 の精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属Tiは通常、塩化法による粗TiCl4 の製造、粗TiCl4 の精製、精製TiCl4 を使用したスポンジチタンの製造等の各工程を経て製造される。粗TiCl4 の精製工程では、図4に示すように、蒸留塔10に供給したTiCl4 を塔底部で再沸器11により蒸発させ、塔頂部から抜き出した蒸気を凝縮器12により液体に戻して塔頂部に循環させる。蒸留塔10からの製品取り出し方法としては、塔底部の再沸器11から液体の状態で抜き取る缶出抜き取りと、塔頂部から還流液の一部を抜き取る塔頂抜き取りとが一般的であるが、TiCl4 の精製では塔頂抜き取りが用いられている。
【0003】
TiCl4 の精製で塔頂抜き取りが用いられる理由は次のとおりである。蒸留前の粗TiCl4 に含まれる不純物としては、TiCl4 に溶解している不純物(AlCl3 、FeCl3 、NbCl5 など)と、TiCl4 に溶解せずに懸濁している不純物(TiO2 、SiO2 、VOCl2 、MgCl2 、ZrCl4 、FeCl2 、Cなど)があり、前者はTiCl4 の沸点(136℃)より高い高沸点物であるため缶出液に濃縮され、後者も固形物として缶出液に濃縮される。このため、製品を塔頂から抜き取ることにより、これらの不純物が排除された精製TiCl4 が得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、金属Tiの用途として半導体配線材料が注目されている。半導体配線用Tiには通常Tiより格段に高い純度が要求される。このような高純度Tiは、特開平9−104931号公報に記載されているように、クラッド製の還元反応容器で製造されたスポンジチタンの中心部から製品を採取することにより得られる。しかし、最近の急速な高集積化や配線の微細化に伴い、これまでは問題にならかったAs、Sbなどの微量不純物についても、極低濃度に抑えた超高純度Tiが必要になってきた。
【0005】
しかしながら、このような半導体配線用の超高純度Tiは、上述した中心採りによっても得ることが困難である。そこで、本発明者らはAs、Sbなどの微量不純物の混入経路について詳細に検討した。その結果、金属Tiの製造原料である精製TiCl4 に含まれる微量不純物が製品の汚染源であることが判明し、その精製TiCl4 の製造工程である精製工程での蒸留能力を高めることを企画した。しかし、半導体配線用の超高純度Tiの原料に要求されるスペックの高純度TiCl4 を製造するためには、高性能な蒸留塔の新設が必要となり、莫大な経費のかかることが判明した。その理由は以下のとおりである。
【0006】
精製TiCl4 の製造には、これまで、実段数が30段程度の蒸留塔が使用されている。この2倍以上の段数があれば、半導体配線用の超高純度Tiの原料に要求されるスペックの高純度TiCl4 の製造が可能となるが、新規に蒸留塔を設置しなければならず、莫大なコストが必要になる。また、高純度TiCl4 を製造する一方で、通常純度のTiCl4 も今までどおり製造する必要があるが、高性能な蒸留塔を新設した場合、高純度TiCl4 専用の設備となり、通常純度のTiCl4 の製造に転用することができない。このため、生産計画に合わせた柔軟な運用が不可能となり、稼働率が上がらない結果となる。
【0007】
従来の設備を使用して高純度のTiCl4 を製造する方法として、サイドカットによる製品の抜き取りが考えられる。サイドカットとは、塔頂と塔底の間から製品を気体で抜き取る方法である。この方法によれば、理論的には段数を増加せずとも、As、Sbなどの微量不純物の分離除去が可能となる。
【0008】
例えば、AsはAsCl3 として粗TiCl4 中に微量に存在し、その沸点はTiCl4 の沸点(136℃)より低い約130℃である。これは塔頂部の還流液中に濃縮する。一方、SbはSbCl5 の形で存在し、その沸点は約170℃である。これは他の不純物に比べれば低沸点であるが、TiCl4 より高沸点であるので、塔底部の缶出液中に濃縮する。サイドカットを採用すれば、還流液の一部及び缶出液の両方が排出され、精製TiCl4 中のAs濃度及びSb濃度を下げることが可能になる。
【0009】
しかしながら、実際の操業では、As及びSbを共に要求レベルまで除去することはできなかった。ちなみに、これらの要求レベルは、As≦0.125ppm、Sb≦0.125ppmである。
【0010】
本発明の目的は、既存の設備を使用して、As及びSbを共に要求レベルまで分離除去することができるTiCl4 の精製方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは既存の蒸留塔を2段に直列接続して使用することを企画し、検討した。既存の蒸留塔を2段に直列接続して、高純度のTiCl4 を製造することができれば、その2つの蒸留塔を並列的に使用することにより、通常純度のTiCl4 の製造が可能になる。そして、2塔を直列に接続する場合の形態について検討した結果、2つの蒸留塔でのTiCl4 の取り出し形態が製品中のAs濃度及びSb濃度に大きく影響すること、両濃度を目標レベルまで低下させるには、1段目の蒸留塔からの取り出しをサイドカット又は塔頂抜き取りで行い、サイドカットで行った場合は、2段目の蒸留塔からの取り出しを塔頂抜き取りにより行い、1段目の蒸留塔からの取り出しを塔頂抜き取りで行った場合は、2段目の蒸留塔からの取り出しをサイドカットにより行う必要のあることが判明した。
【0012】
本発明のTiCl4 の精製方法は、かかる知見に基づきなされたものであり、粗TiCl4 を第1の蒸留塔に供給し、サイドカット又は塔頂抜き取りにより第1の蒸留塔から精製TiCl4 を取り出すと共に、第1の蒸留塔から取り出された精製TiCl4 を第2の蒸留塔に供給し、第1の蒸留塔からの取り出し形態がサイドカットの場合は塔頂抜き取りにより、また第1の蒸留塔からの取り出し形態が塔頂抜き取りの場合はサイドカットにより、第2の蒸留塔から精製TiCl4 を取り出すことを特徴とする。
【0013】
本発明のTiCl4 の精製方法では、2つの蒸留塔を直列的に使用し、各塔からのTiCl4 の取り出し形態を工夫することにより、高純度の精製TiCl4 を製造できる。また、2つの蒸留塔を直列的に使用するので、それらの蒸留塔を並列的に使用すれば、前記高純度の精製TiCl 4 より低純度である通常純度の精製TiCl4 の製造が可能になる。後者における製品取り出し形態は、サイドカット又は塔頂抜き取りのいずれでもよいが、サイドカットのほうがAs濃度及びSb濃度をより低減できる利点がある。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を示す設備構成図であり、(a)は高純度の精製TiCl4 を製造する場合、(b)は通常純度の精製TiCl4 を製造する場合を示している。
【0015】
本実施形態では、2つの蒸留塔10A、10Bを使用する。蒸留塔10A、10Bは、いずれも通常純度のTiCl4 の製造に使用される30段程度の既設塔であり、各蒸留塔に供給されたTiCl4 を塔底部で再沸器11により蒸発させ、塔頂部から抜き出した蒸気を凝縮器12により液体に戻して塔頂部に循環させる構成になっている。
【0016】
高純度の精製TiCl4 を製造する場合は、図1(a)に示すように、第1の蒸留塔10Aに粗TiCl4 を供給し、その蒸留塔10Aからサイドカットにより通常純度の精製TiCl4 をガス状態で取り出す。また、蒸留塔10Aからガス状態で取り出したAs濃度が低い精製TiCl4 を凝縮器12で液化して、第2の蒸留塔10Bに供給し、その蒸留塔10Bから塔頂抜き出しにより、製品である高純度の精製TiCl4 を取り出す。
【0017】
第1の蒸留塔10Aでは、サイドカットによる取り出しを行うことにより、TiCl4 中のAsは効率的に除去されるが、Sbは残留する。これに対し、第2の蒸留塔10Bでは、塔頂抜き出しにより、TiCl4 中のSbは効率的に除去されるが、Asの除去効率は低い。しかし、Asは第1の蒸留塔10Aで既に除去されている。従って、第2の蒸留塔10Bから取り出される製品は、As及びSbが共に低濃度に抑制されたものになる。サイドカットがAsの除去に有効で、塔頂抜き出しがSbの除去に有効な理由は以下のとおりである。
【0018】
TiCl4 に対し、As塩化物(AsCl3 )は低沸点物であるため塔頂に濃縮され、塔頂以下の棚段で製品の抜き取り(サイドカット)を行えば、塔頂よりAsCl3 が低いTiCl4 が得られる。また、Sb塩化物(SbCl5 )は高沸点物であるため塔底に濃縮され、塔底以上の棚段で製品の抜き取り(サイドカット)を行えば、塔底よりSbCl5 が低いTiCl4 が得られる。
【0019】
通常純度の精製TiCl4 を製造する場合は、図1(b)に示すように、第1の蒸留塔10A及び第2の蒸留塔10Bに粗TiCl4 を並列的に供給し、各蒸留塔からサイドカットにより精製TiCl4 を取り出す。塔頂抜き出しでもよいが、サイドカットのほうがAs及びSbの除去に有効である。その理由は以下のとおりである。
【0020】
TiCl4 に対し、As塩化物(AsCl3 )は低沸点物であるため塔頂に、また、Sb塩化物(SbCl5 )は高沸点物であるため塔底にそれぞれ濃縮される。このため、塔頂以下、塔底以上の棚段で製品の抜き取り、即ちサイドカットを行えば、塔頂よりAsCl3 が低く、塔底よりSbCl5 が低いTiCl4 が得られる。
【0021】
図2は本発明の他の実施形態を示す設備構成図であり、(a)は高純度の精製TiCl4 を製造する場合、(b)は通常純度の精製TiCl4 を製造する場合を示している。
【0022】
高純度の精製TiCl4 を製造する場合は、図2(a)に示すように、第1の蒸留塔10Aに粗TiCl4 を供給し、その蒸留塔10Aから塔頂抜き出しによりSb濃度が低い精製TiCl4 を取り出す。また、蒸留塔10Aから取り出したSb濃度が低い精製TiCl4 を第2の蒸留塔10Bに供給し、その蒸留塔10Bからサイドカットにより高純度の精製TiCl4 をガス状態で取り出す。取り出した高純度の精製TiCl4 は、図示されない凝縮器により液化される。
【0023】
第1の蒸留塔10Aでは、塔頂抜き出しにより、TiCl4 中のAsが効率的に除去される。第2の蒸留塔10Bでは、サイドカットにより、TiCl4 中のSbが効率的に除去される。これらの組み合わせにより、As及びSbが共に低濃度に抑制された高純度の精製TiCl4 が製造される。サイドカットがAsの除去に有効で、塔頂抜き出しがSbの除去に有効な理由は上述したとおりである。
【0024】
通常純度の精製TiCl4 を製造する場合は、図2(b)に示すように、第1の蒸留塔10A及び第2の蒸留塔10Bに粗TiCl4 を並列的に供給し、各蒸留塔からサイドカットにより精製TiCl4 を取り出す。塔頂抜き出しでもよいが、サイドカットのほうがAs及びSbの除去に有効である。
【0025】
蒸留塔10A,10Bへの粗TiCl4 供給位置は、蒸留塔の全段数を1とすると、下から0.7〜0.9段程度の位置が好ましい。
【0026】
また、蒸留塔10A,10Bからのサイドカットによる精製TiCl4 の取り出し位置については、蒸留塔の全段数を1とすると、下から0.1〜0.3段程度の位置が好ましい。
【0027】
図3(a)(b)は比較例を示す設備構成図であり、いずれも高純度の精製TiCl4 を製造する場合を示している。
【0028】
図3(a)では、第1の蒸留塔10Aに粗TiCl4 を供給し、その蒸留塔10AからサイドカットによりAs濃度が低い精製TiCl4 を取り出す。また、蒸留塔10Aから取り出したAs濃度が低い精製TiCl4 を第2の蒸留塔10Bに供給し、その蒸留塔10Bからサイドカットにより高純度の精製TiCl4 を取り出す。サイドカットを組み合わせることにより、Asは除去されるが、Sbは十分に除去されない。
【0029】
図3(b)では、第1の蒸留塔10Aに粗TiCl4 を供給し、その蒸留塔10Aから塔頂抜き出しによりSb濃度が低い精製TiCl4 を取り出す。また、蒸留塔10Aから取り出したSb濃度が低い精製TiCl4 を第2の蒸留塔10Bに供給し、その蒸留塔10Bから塔頂抜き出しにより高純度の精製TiCl4 を取り出す。塔頂抜き出しを組み合わせることにより、Sbは除去されるが、Asは十分に除去されない。
【0030】
なお、TiCl4 の精製では、塔底部からの缶出抜き出しは不適である。即ち、缶出抜き出しは、低沸点化合物の形で存在するAsの除去にはサイドカットよりむしろ有効と言えるが、比較的高沸点の化合物の形で存在するSbの除去には殆ど無力である。加えて、缶出液には、TiCl4 に溶解している他の高沸点化合物(AlCl3 、FeCl3 、NbCl5 など)や、TiCl4 に溶解せずに懸濁している不純物(TiO2 、SiO2 、VOCl2 、MgCl2 、ZrCl4 、FeCl2 、Cなど)も濃縮している。従って、塔底部からの缶出抜き出しは、TiCl4 の精製では不適である。
【0031】
2つの蒸留塔が高純度TiCl4 専用の場合は、1塔目は塔頂抜き取り、2塔目は缶出抜き取りとすれば、2塔目の缶出液中に前記の懸濁している不純物は濃縮しないため、特に問題にならない。しかし、2塔の蒸留塔を用いて通常純度の精製TiCl4 と高純度の精製TiCl4 とを選択的に製造する場合には問題になる。高純度の精製TiCl4 を製造する場合には、2塔目として通常純度のTiCl4 精製で使用した蒸留塔を転用するために、通常純度のTiCl4 精製時に発生する懸濁不純物が缶出液中に残留するためである。
【0032】
図1(a)、図2(a)、図3(a)及び図3(b)にそれぞれ示す形態で実際に粗TiCl4 から高純度の精製TiCl4 を製造した。製造された高純度TiCl4 中の不純物濃度を測定した結果を表1に示す。表1には、粗TiCl4 中の不純物濃度、1つの蒸留塔を用いてサイドカット・塔頂抜き採りにより製造したTiCl4 中の不純物濃度、半導体配線用の超高純度Tiに要求されるスペック、及びこの超高純度Tiの原料としての高純度精製TiCl4 に要求されるスペックを合わせて示す。濃度測定にはICP−MSを使用した。
【0033】
【表1】
Figure 0003672492
【0034】
表1中のケース1は、図1(a)に示す形態の本発明例であり、第1塔でのサイドカットと第2塔での塔頂抜き取りとを組み合わせたものである。また、ケース2は、図2(a)に示す形態の本発明例であり、第1塔での塔頂抜き取りと第2塔でのサイドカットとを組み合わせたものである。いずれにおいても、Sb及びAsが共に効率的に除去され、他の微量不純物も効率的に除去されている。その結果、半導体配線用の超高純度Tiの原料に要求されるスペックの高純度精製TiCl4 が製造された。
【0035】
ケース3は、図3(a)に示す形態の比較例であり、第1塔での取り出し及び第2塔での取り出しをいずれもサイドカットとしたものである。TiCl4 に対して低沸点物であるAsについては除去されているが、高沸点物であるSbについては除去しきれていない。また、ケース4は、図3(b)に示す形態の比較例であり、第1塔での取り出し及び第2塔での取り出しをいずれも塔頂抜き取りとしたものである。TiCl4 に対して高沸点物であるSbについては除去されているが、低沸点物であるAsについては、塔頂液を製品としているために濃縮されている。
【0036】
また、1塔処理の場合のサイドカットと塔頂抜き取りの比較では、高沸点物のSb、低沸点物のAsがそれぞれ除去しきれない。
【0037】
【発明の効果】
以上に説明したとおり、本発明のTiCl4 の精製方法は、2つの蒸留塔を直列的に使用し、各塔からのTiCl4 の取り出し形態の組合せに工夫を講じることにより、既存設備を使用して、半導体配線用の超高純度Tiに対応できる高純度の精製TiCl4 を製造できる。また、その既存設備で通常純度の精製TiCl4 を製造でき、生産計画に合わせた柔軟な運用を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す設備構成図であり、(a)は高純度の精製TiCl4 を製造する場合を示し、(b)は通常純度の精製TiCl4 を製造する場合を示す。
【図2】本発明の他の実施形態を示す設備構成図であり、(a)は高純度の精製TiCl4 を製造する場合を示し、(b)は通常純度の精製TiCl4 を製造する場合を示す。
【図3】(a)(b)は比較例を示す設備構成図であり、いずれも高純度の精製TiCl4 を製造する場合を示す。
【図4】従来例を示す設備構成図である。
【符号の説明】
10 蒸留塔
11 再沸器
12 凝縮器

Claims (2)

  1. 粗TiCl4 を第1の蒸留塔に供給し、サイドカット又は塔頂抜き取りにより第1の蒸留塔から精製TiCl4 を取り出すと共に、第1の蒸留塔から取り出された精製TiCl4 を第2の蒸留塔に供給し、第1の蒸留塔からの取り出し形態がサイドカットの場合は塔頂抜き取りにより、また第1の蒸留塔からの取り出し形態が塔頂抜き取りの場合はサイドカットにより、第2の蒸留塔から精製TiCl4 を取り出すことを特徴とするTiCl4 の精製方法。
  2. 前記第1の蒸留塔及び第2の蒸留塔は、前記第2の蒸留塔から取り出される前記精製TiCl 4 より低濃度の精製TiCl 4 の製造に使用される蒸留塔であり、その低濃度の精製TiCl 4 の製造では、粗TiCl4 前記第1の蒸留塔及び第2の蒸留塔に並列的に供給してサイドカット又は塔頂抜き取りにより各蒸留塔から精製TiCl4 を取り出す請求項1に記載のTiCl4 の精製方法。
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