JP3674943B2 - ガラス繊維用ガラス組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、ガラス繊維用ガラス組成物、該ガラス繊維用ガラス組成物からなるガラス繊維、該ガラス繊維を編組してなるガラス繊維編組物、該ガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂、及び、該ガラス繊維強化樹脂からなる層を備えたプリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線板などに使用されるガラス繊維には、高強度のものが要求され、このような高強度ガラス繊維用のガラス素材としては、例えば、MgO約4〜25重量%を加えた本質的にSiO2とAl23からなる組成であって、具体的には重量基準でSiO2 55〜85%、Al23 10〜35%およびMgO 4〜25%の組成を有するガラス(Sガラス)が知られている(特公昭48−30125号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記Sガラスからなるガラス繊維は、高強度であるという利点を有するものの、このガラスを用いてガラス繊維を作製する場合には、ガラスの失透に際して泡が発生しやすいという問題があった。失透時に発生する泡の泡径が小さい場合には、この泡がガラス繊維中に含まれた、いわゆるホローファイバーが生成され、このホローファイバーを含有したガラス繊維を、例えばプリント配線基板に強化繊維として用いた際には、絶縁抵抗が低下して絶縁不良の原因となっていた。一方、泡径が大きい場合には、紡糸時にガラス繊維が泡により切断されるという問題があった。
【0004】
さらに、上記Sガラスは1000ポイズ温度及び液相温度の観点からもガラス繊維の製造が困難であった。ここで、1000ポイズ温度とは、ガラスの溶融粘度が1000ポイズとなる温度をいい、液相温度とは、溶融ガラスの温度を低下させたときに最初に結晶の析出が生じる温度をいう。一般的に、ガラス繊維はガラスの溶融粘度を1000ポイズ付近にして紡糸した場合に効率的に製造可能であるため、1000ポイズ温度は紡糸の際の指標として用いられる温度である。また、液相温度は、ガラスの溶融状態の均一性の指標となる温度である。上記Sガラスは1000ポイズ温度と液相温度が近接しており、このために作業温度範囲(1000ポイズ温度から液相温度を差し引いた値)が小さく、ガラス繊維を良好に製造できる温度範囲が非常に狭いというガラス繊維製造上の問題があった。
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ガラス繊維製造時の作業温度範囲を十分に広くすることができることに加えて、ガラス組成物の失透時における泡の発生を充分に低減することができ、紡糸の際にガラス繊維の切断やホローファイバーの生成を伴うことなく、高強度且つ高弾性率のガラス繊維を得ることが可能な、ガラス繊維用ガラス組成物を提供することを目的とする。
【0006】
本発明はまた、かかるガラス繊維用ガラス組成物からなる高強度且つ高弾性率のガラス繊維、このガラス繊維を編組してなるガラス繊維編組物、このガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂、及びこのガラス繊維強化樹脂層を備え、絶縁不良が低減された低誘電率のプリント配線板を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ガラスの基本成分であるSiO2、Al23及びMgOの比率を調整し、ガラスの失透に際して最初に形成される結晶(失透初相)をムライト(Mullite)ではなくコージエライト(Cordierite)またはトリジマイト(Tridymite)にすることにより、失透に伴う泡の生成が激減するという従来全く知られていなかった現象を見出した。そして、この知見に基づいて更に研究を進めた結果、ガラス組成におけるSiO2/Al23の重量比およびAl23/MgOの重量比を特定範囲に制御することにより、泡の生成が十分低減されるばかりでなく、ガラス繊維製造時の作業温度範囲を十分に広くすることができ、高強度且つ高弾性率のガラス繊維が得ることも可能であることを見出した。
【0008】
さらに、かかるガラス繊維を編組することによりガラス繊維編組物が得られ、かかるガラス繊維からガラス繊維強化樹脂が形成可能であり、かかるガラス繊維強化樹脂を用いることにより、絶縁性が高く低誘電率のプリント配線板が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、SiO2、Al23及びMgOからなる基本組成を有するガラス組成物であって、SiO2/Al23が重量比で3.10であり、Al23/MgOが重量比で2.10であり、更にSiO2、Al23及びMgOの合計重量がガラス組成物全重量を基準として98重量%以上であることを特徴とする
【0010】
また、本発明の他のガラス繊維用ガラス組成物は、SiO 2 、Al 2 3 及びMgOからなる基本組成を有するガラス組成物であって、SiO 2 /Al 2 3 が重量比で3.30であり、Al 2 3 /MgOが重量比で2.20であり、更にSiO 2 、Al 2 3 及びMgOの合計重量がガラス組成物全重量を基準として98重量%以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明は、また、上記ガラス繊維用ガラス組成物からなることを特徴とするガラス繊維、上記ガラス繊維を編組してなることを特徴とするガラス繊維編組物、上記ガラス繊維と、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂と、を含むことを特徴とするガラス繊維強化樹脂、および、上記ガラス繊維強化樹脂からなるガラス繊維強化樹脂層と、該ガラス繊維強化樹脂層の最外層に接合された導体層とを備えることを特徴とするプリント配線板を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、SiO2、Al23及びMgOの合計重量がガラス組成物全重量を基準として98重量%以上である、SiO2、Al23及びMgOを基本組成とするガラス組成物であり、各成分の重量比が以下の条件を満たすものである。
SiO2/Al23=2.35〜3.40 …(1)
Al23/MgO=1.25〜2.30 …(2)
【0013】
上記条件を満たすガラス組成物を組成図を用いて説明する。図1は、SiO2、Al23及びMgOの3成分からなるガラス組成を示す組成図である。図1におけるA線は、SiO2/Al23=2.35の関係を満たす直線であり、B線はSiO2/Al23=3.40の関係を満たす直線である。一方、C線はAl23/MgO=1.25の関係を満たす直線であり、D線はAl23/MgO=2.30の関係を満たす直線である。したがって、上記(1)及び(2)の条件を満たす領域は、A線、B線、C線及びD線で囲まれた領域(図1においてIで表される領域)となる。
【0014】
図1におけるA線とC線の交点(図1における点X)は、(SiO2,Al23,MgO)=(56.63重量%,24.09重量%,19.28重量%)を示す点であり、A線とD線の交点(図1における点Y)は、(SiO2,Al23,MgO)=(62.09重量%,26.42重量%,11.49重量%)を示す点である。また、図1におけるB線とC線の交点(図1における点Z)は、(SiO2,Al23,MgO)=(65.39重量%,19.23重量%,15.38重量%)を示す点であり、B線とD線の交点(図1における点W)は、(SiO2,Al23,MgO)=(70.33重量%,20.68重量%,8.99重量%)を示す点である。したがって、上記(1)及び(2)の条件を満たす領域は、点X、Y、Z、Wで囲まれる範囲内ということもできる。
【0015】
なお、上記の点X、Y、Z、Wにおける各成分の重量%は、本発明のガラス繊維用ガラス組成物が含有するSiO2、Al23及びMgOの合計を100重量%とした時の含有量であるから、本発明のガラス繊維用ガラス組成物がSiO2、Al23及びMgO以外の成分(合計2重量%未満を含有可能である。)を含む場合は、実際のSiO2、Al23及びMgO含有量は上記数値とは異なるものとなる。すなわち、本発明のガラス繊維用ガラス組成物がSiO2、Al23及びMgO以外に、例えば、Na2O及びFe23を合計0.5重量%含む場合は、点X、Y、Z、Wにおける実際のガラス繊維用ガラス組成物におけるSiO2、Al23及びMgOの含有量は、上記数値に0.995を掛けた値となる。
【0016】
上述したように、本発明者らが今回新たに見出した知見によれば、SiO2、Al23及びMgOを基本組成とするガラス組成物の失透に伴う泡の発生は、失透に際して最初に形成される結晶(失透初相)の種類によって大きく左右される。すなわち、失透初相がムライト(3Al23・2SiO2)である場合には失透に際して泡が発生しやすいのに対して、失透初相がコージエライト(2MgO・2Al23・5SiO2)またはトリジマイト(SiO2)である場合は、失透に伴う泡の生成が激減する。
【0017】
図1におけるD線は上記知見に基づくものである。すなわち、図1のD線の右側の領域(Al23/MgO>2.30の関係を満たす領域)では、ガラス組成物の失透初相がムライトであるために失透に際して泡が発生するが、D線の左側の領域(Al23/MgO≦2.30の関係を満たす領域)では、ガラス組成物の失透初相がコージエライト又はトリジマイトであるために、失透に際する泡の発生が充分に低減される。
【0018】
本発明者らはいかなる理論にも制約されることを望むものではないが、結晶の種類によって泡の発生状況が変化するのは、失透初相の結晶の形状に関係しているものと考えられる。失透の際に発生する泡は、溶融したガラス成分にもともと溶け込んでいたガス成分が、失透で形成される結晶に溶け込むことができなくなることにより発生するものと考えられる。また、ガラス原料を溶融して攪拌する際に取り込まれた空気等の影響もあると推測される。ムライトの結晶形状は針状であり、これが失透に際して多数形成されると互いに重なり合って網目状構造を形成するようになるため、発生した泡はガラス組成物から抜けていくことが困難になると考えられる。一方で、コージエライト及びトリジマイトの結晶形状は粒子状であるため、泡が発生した場合であってもガラス組成物から容易に抜け出していくことが想定される。したがって、失透初相をコージエライト及びトリジマイトになるように、Al23/MgO≦2.30とすることにより泡の発生の問題が解決される。
【0019】
しかしながら、Al23/MgOの値が小さくなりすぎると形成されるガラス繊維の物理特性が不十分になる。すなわち、図1におけるC線より左側の領域(Al23/MgO<1.25の関係を満たす領域)では、ガラス繊維の引張強度や引張弾性率が不十分となる。C線より左側の領域においては、また、ガラス繊維製造上の問題も発生する。すなわち、この領域では、溶融ガラスの温度を低下させたときに最初に結晶の析出が生じる温度である液相温度が1000ポイズ温度よりも低くなるために、ガラス繊維の製造に最適な1000ポイズに温度調整した場合に溶融ガラス中に結晶が存在することとなり、1000ポイズ温度においてガラス繊維を製造することが事実上不可能となる。このような場合は、液相温度以上にガラス組成物を加熱し、粘度が非常に低い条件で紡糸をすることが必要となるため、良好なガラス繊維を得ることができない。したがって、ガラス組成物におけるAl23とMgOの比率の観点からは、Al23/MgOが重量比で1.25〜2.30の範囲内でなければならない。
【0020】
一方、図1におけるA線の下側の領域(SiO2/Al23<2.35の関係を満たす領域)のガラス組成においては、ガラス組成物の1000ポイズ温度が液相温度にくらべ非常に低くなるために、上記説明した理由により、工業的にガラス繊維を製造することが事実上不可能となる。
【0021】
また、図1におけるB線の上側の領域(SiO2/Al23>3.40の関係を満たす領域)のガラス組成においては、1000ポイズ温度が高くなるとともに、引張弾性率が低くなる。1000ポイズ温度が高いということは、良好なガラス繊維を製造するためには、通常より高温でガラス組成物を加熱溶融させる必要があることを意味するから、ガラス繊維の製造コストが高騰する。また、高い製造コストをかけてガラス繊維を製造したとしても引張弾性率が不足したものしか得られないために、このような領域のガラス組成からガラス繊維を製造することは現実的ではない。したがって、ガラス組成物におけるSiO2とAl23の比率の観点からは、SiO2/Al23が重量比で2.35〜3.40の範囲内でなければならない。
【0022】
以上のことから、ガラス組成を、図1におけるA線、B線、C線及びD線で囲まれる領域にすることにより、1000ポイズ温度を液相温度よりも十分に高くすることができるためガラス繊維製造時の作業温度範囲が十分に広くなり、更に失透初相をコージエライト又はムライトとすることができるためにガラス組成物の失透時における泡の発生を充分に低減することができ、紡糸の際にガラス繊維の切断やホローファイバーの生成を伴うことなく高強度且つ高弾性率のガラス繊維を得ることが可能となる。
【0023】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物においては、SiO2/Al23が重量比で2.50〜3.40であることが好ましい。また、Al23/MgOが重量比で1.45〜2.25であることが好ましい。本発明においては、SiO2/Al23が重量比で2.50〜3.40であり、且つ、Al23/MgOが重量比で1.45〜2.25であることが更に好ましい。SiO2/Al23及びAl23/MgOの重量比をこのような範囲にすることにより、作業温度範囲の拡大、失透時の泡の発生の低減、ガラス繊維の切断やホローファイバーの生成の防止、高強度・高弾性率化をより一層進めることが可能になる。また、本発明においては、SiO2、Al23及びMgOの合計重量をガラス組成物全重量を基準として99重量%以上とすることが好ましい。
【0024】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、SiO2、Al23及びMgOを基本組成としているが、SiO2原料、Al23原料及びMgO原料にはこれら以外の成分が微量に含まれていることがある。したがって、実際のガラス組成物の製造を考慮すれば、本発明のガラス繊維用ガラス組成物はSiO2、Al23及びMgO以外の成分(合計で2重量%未満)を含んでいてもよい。本発明のガラス繊維用ガラス組成物が含有していてもよいSiO2、Al23及びMgO以外の成分としては、CaO、Fe23、Na2O、TiO2、K2O、ZrO2、MoO2、Cr23等が挙げられる。
【0025】
本発明のガラス繊維は、以上説明したガラス繊維用ガラス組成物からなるものである。本発明におけるガラス繊維は、ガラス繊維のモノフィラメント、複数のガラス繊維モノフィラメントからなるガラス繊維ストランド、ガラス繊維ストランドに撚りをかけて得られるガラス繊維ヤーン、のいずれの態様をとってもよい。ガラス繊維のモノフィラメントの繊維径は、例えば3〜30μmとすることができ、ガラス繊維ストランドは、当該モノフィラメントを例えば50〜800本集束することにより得ることができる。また、ガラス繊維ヤーンは、当該ガラス繊維ストランドに例えば13回/25mmまたはそれ以下の撚りをかけることにより製造することができる。なお、本発明のガラス繊維は、紙またはプラスチック製の芯材の周囲に10〜200km程度巻き付けた巻糸体として提供されてもよく、あるいは1インチ程度に切断したガラス繊維(ガラス繊維チョップドストランド等)として提供されてもよい。
【0026】
本発明のガラス繊維は、モノフィラメントとして典型的には4GPa以上の引張強度及び80GPa以上の引張弾性率を示す。このような引張強度及び引張弾性率の値は、汎用されているガラス繊維(Eガラスからなるガラス繊維)に比べ格段に高い値である。
【0027】
本発明のガラス繊維の製造方法としては、再溶融法、直接溶融法等の公知の方法が採用可能であり、これらの公知の方法によれば、通常、溶融させたガラス組成物を数百〜数千個の白金ノズルから高速で引きだすことによりガラス組成物を繊維化する。
【0028】
本発明のガラス繊維編組物は、上記のガラス繊維を編組することにより得られるものである。ここで、編組とはガラス繊維を編む、組む等して、互いに絡み合うように、あるいは重ねるように集合させることをいい、編組物とは編組により得られたものをいう。本発明においては、ガラス繊維編組物は、ガラス繊維織物、ガラス繊維編物、ガラス繊維組布、ガラス繊維不織布等のいずれの態様を有していてもよい。
【0029】
本発明のガラス繊維強化樹脂は、上記のガラス繊維と、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂とを含むものである。本発明のガラス繊維強化樹脂におけるガラス繊維には、上記ガラス繊維の他、上記ガラス繊維編組物も含まれる。本発明のガラス繊維強化樹脂における熱可塑性樹脂としては、ポリアミド(ナイロン)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリサルフォン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、フッ素樹脂、飽和ポリエステル樹脂等が例示でき、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が例示できる。また、ガラス繊維強化樹脂が熱硬化性樹脂を含む場合は、本発明のガラス繊維強化樹脂には、当該熱硬化性樹脂が完全硬化したガラス繊維強化樹脂の他、熱硬化性樹脂を半硬化の状態にしたプリプレグをも含むものとする。なお、本発明のガラス繊維強化樹脂は、必要に応じて、低収縮剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、充填剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0030】
ガラス繊維と熱可塑性樹脂とを含むガラス繊維強化樹脂の製造方法としては、スタンパブルシート成形法等の公知の方法が採用でき、ガラス繊維と熱硬化性樹脂とを含むガラス繊維強化樹脂の製造方法としては、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、レジントランスファー法、シートモールディングコンパウンド法(SMC法)等の公知の方法が採用できる。
【0031】
本発明のプリント配線板は、上記ガラス繊維強化樹脂からなるガラス繊維強化樹脂層と、該ガラス繊維強化樹脂層の最外層に接合された導体層とを備えるものである。本発明のプリント配線板に用いられるガラス繊維強化樹脂としては、本発明のガラス繊維と熱硬化性樹脂とを含むものであることが好ましく、熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂の硬化物であることが好ましい。また、上記導体層としては、銅、銀、金等からなる導体層が挙げられる。本発明のプリント配線板は、上述した本発明のガラス組成物からなるガラス繊維を含むものであり、当該ガラス繊維は泡の混入等の欠陥を有していないため、絶縁不良が低減されたものになる。したがって、本発明のプリント配線板は、家庭電気製品、通信情報機器等に好適に用いることが可能である。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1〜2及び参考例1〜8
表1に示す組成となるようにガラス原料を調合し、それを白金ルツボに入れ、電気炉中で1600℃において8時間攪拌しつつ溶融させた。次いで、溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、実施例1〜2及び参考例1〜8のガラス繊維用ガラス組成物(ガラスカレット)を作製した。カーボン板上で徐冷させるにあたり、ガラス繊維用ガラス組成物の失透が生じる際に泡が発生するかどうかを目視で観察した。また、失透に際して最初に形成される結晶(失透初相)を採取し、理学電機株式会社社製、Geigerflexを用いて、失透初相の結晶構造をX線回折により同定した。さらに、実施例1〜2及び参考例1〜8の失透初相の光学顕微鏡写真(拡大倍率:40倍)を撮影し、それぞれ図3〜12に示した。
更に、徐冷して得られたガラスカレットを用い、以下の方法にしたがって、1000ポイズ温度、液相温度、作業温度範囲、引張強度、引張弾性率、熱膨張係数、誘電率を測定した。
【0034】
失透時の泡の発生の有無、失透初相の結晶構造、及び上記特性の測定結果をまとめて表1に示す。なお、表1には実施例1〜2及び参考例1〜8それぞれにおけるSiO/Al(重量比)及びAl/MgO(重量比)も記載した。また、実施例1〜2及び参考例1〜8のガラス繊維用ガラス組成物における、SiO、Al及びMgOの3成分の組成図を図2に示す。図2には図1と同様にしてA線、B線、C線及びD線を示し、また、失透初相がコージエライト、トリジマイト、ムライトのいずれであるかがわかるように組成を表示した。
【0035】
【表1】
Figure 0003674943
【0036】
[1000ポイズ温度]
ガラスカレットを溶融し、高温回転粘度計(芝浦システム株式会社製)で1000ポイズを示す温度(℃)を測定した。
[液相温度]
ガラスカレットの一部を297〜500μmの粉末にして白金ボートに入れた。この白金ボートを様々な温度に設定された電気炉内(設定温度は1300〜1600℃の範囲内)に入れて14時間保持した後、冷却し、失透の発現の有無を顕微鏡で観察して、失透が発現が見られた電気炉の設定温度を液相温度とした。
[作業温度範囲]
上記のようにして得られた1000ポイズ温度から液相温度を差し引いた値を作業温度範囲(℃)とした。
【0037】
[引張強度及び引張弾性率]
1ホールの白金製ブッシング用いて、温度1460〜1550℃、紡糸速度1100m/分の条件でモノフィラメントのガラス繊維を得た。得られたモノフィラメントを25cmの長さに切り、引張強度測定用試料とした。この試料をモノフィラメントの長さ方向に沿って、2.5cm×1cmの開口4個を有する板紙上に取り付け、この板紙の端部を切り取り、レーザー外径測定器で試料の直径を測定した。モノフィラメントを板紙の各開口間で接着し、開口部毎に切り取り、2.5cmのモノフィラメントについて、テンシロンUTMを用いて引張強度(GPa)及び引張弾性率(GPa)を測定し、60本測定の中央値をモノフィラメントの引張強度及び引張弾性率とした。
[熱膨張係数]
徐冷したガラスカレットを14mm×8mm×5mmに研磨したものを試料とし、Thermo Mechanical Analyzer(真空理工株式会社製、TM−7000型)を用いて熱膨張係数を測定した。
[誘電率]
徐冷したガラスカレットを直径45mm、厚さ2mmに両面光学研磨したものを試料とし、LCRメーター(横河・ヒューレット・パッカード株式会社製、HP4284A)を用いて、室温における周波数1MHzでの誘電率を測定した。
【0038】
(比較例1〜11)
表2に示す組成となるようにガラス原料を調合し、実施例1〜2及び参考例1〜8と同様にして比較例1〜11のガラス繊維用ガラス組成物(ガラスカレット)を作製した。また、実施例1〜2及び参考例1〜8と同様にして、比較例1〜11の失透初相の光学顕微鏡写真を撮影するとともに(図13〜23)、失透時の泡の発生の有無、失透初相の結晶構造、1000ポイズ温度、液相温度、作業温度範囲、引張強度、引張弾性率、熱膨張係数及び誘電率を測定した。なお、比較例1、5、6、7及び8は、特公昭48−30125号公報における実施例1、3、5、6及び7に相当する組成である。
【0039】
測定結果をまとめて表2に示すが、表2には比較例1〜11それぞれにおけるSiO/Al(重量比)及びAl/MgO(重量比)も記載した。また、図2には実施例1〜2及び参考例1〜8の場合と同様にして、比較例1〜11の組成(SiO、Al及びMgOの3成分)を、失透初相がコージエライト、トリジマイト、ムライトのいずれであるかがわかるように表示した。
【0040】
【表2】
Figure 0003674943
【0041】
実施例1〜2及び参考例1〜8における失透初相の光学顕微鏡写真(図3〜12)と、比較例1〜6及び8における失透初相の光学顕微鏡写真(図13〜18及び20)とを比較すると明らかなように、Al/MgO≦2.30の関係を満たす実施例1〜2及び参考例1〜8のガラス繊維用ガラス組成物においては、失透初相が粒子状のコージエライトまたはトリジマイトであり、泡の発生が見られないのに対して、Al/MgO>2.30である比較例1〜6及び8のガラス繊維用ガラス組成物においては、失透初相が針状のムライトであり、これが多数重なり合って網目状構造を形成しており、泡が混入している。
【0042】
Al/MgO<1.25である比較例7及び10では、図19及び22に示されるように失透初相はコージエライトであり泡の発生が見られないものの、Al/MgO=1.25〜2.30である実施例1〜2及び参考例1〜8に比べて引張強度及び引張弾性率が劣っており、また、1000ポイズ温度が液相温度よりも低く、作業温度範囲がマイナスであるためガラス繊維の製造が困難である。
【0043】
SiO/Al>3.40である比較例9では、図21に示されるように失透初相はトリジマイトであり泡の発生が見られないものの、SiO/Al=2.35〜3.40である実施例1〜2及び参考例1〜8に比べて引張弾性率の値が特に劣っている。これに加え、1000ポイズ温度が高いためにガラス繊維製造コストの点において不利である。また、SiO/Al<2.35である比較例11では、図23に示されるように失透初相はコージエライトであり泡の発生は見られないものの、1000ポイズ温度が液相温度よりも非常に低く、ガラス繊維の工業的生産の観点からは現実的でない。比較例5及び6も比較例11と同様にSiO/Al<2.35の領域にあるために、1000ポイズ温度が液相温度よりも非常に低くなっている。
【0044】
SiO/Al=2.35〜3.40、且つAl/MgO=1.25〜2.30である、実施例1〜2及び参考例1〜8のガラス繊維用ガラス組成物においては、失透の際に泡の発生がなく、1000ポイズ温度が液相温度よりも十分に高いために作業温度範囲が広い。また、実施例1〜2及び参考例1〜8のガラス繊維は、引張強度として4GPa以上、引張弾性率として80GPa以上を示すため、強度及び弾性率の点からも優れている。したがって、このようなガラス繊維からは泡による欠陥のないガラス繊維編組物が得られ、強度の優れたガラス繊維強化樹脂が作製可能となる。更に、表1に示すように、実施例1〜2及び参考例1〜8のガラス繊維用ガラス組成物は熱膨張係数が小さく誘電率が低いため、このガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂からなるプリント配線板は、高い絶縁性と低い誘電率が要求される家庭電気製品、通信情報機器等に向けて特に好適に用いることができる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガラス繊維製造時の作業温度範囲を十分に広くすることができることに加えて、ガラス組成物の失透時における泡の発生を充分に低減することができ、紡糸の際にガラス繊維の切断やホローファイバーの生成を伴うことなく、高強度且つ高弾性率のガラス繊維を得ることが可能な、ガラス繊維用ガラス組成物を提供することが可能となる。
また、かかるガラス繊維用ガラス組成物からなる高強度且つ高弾性率のガラス繊維、このガラス繊維を編組してなるガラス繊維編組物、このガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂、及びこのガラス繊維強化樹脂層を備え、絶縁不良が低減された低誘電率のプリント配線板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SiO2、Al23及びMgOの3成分からなるガラス組成を示す組成図である。
【図2】実施例1〜10及び比較例1〜11のガラス繊維用ガラス組成物における、SiO2、Al23及びMgOの3成分の組成図である。
【図3】実施例1のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図4】実施例2のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図5】実施例3のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図6】実施例4のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図7】実施例5のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図8】実施例6のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図9】実施例7のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図10】実施例8のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図11】実施例9のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図12】実施例10のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図13】比較例1のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図14】比較例2のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図15】比較例3のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図16】比較例4のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図17】比較例5のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図18】比較例6のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図19】比較例7のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図20】比較例8のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図21】比較例9のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図22】比較例10のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。
【図23】比較例11のガラス繊維用ガラス組成物における失透初相の光学顕微鏡写真である。

Claims (6)

  1. SiO2、Al23及びMgOからなる基本組成を有するガラス組成物であって、SiO2/Al23が重量比で3.10であり、Al23/MgOが重量比で2.10であり、更にSiO2、Al23及びMgOの合計重量がガラス組成物全重量を基準として98重量%以上であることを特徴とするガラス繊維用ガラス組成物。
  2. SiO2、Al23及びMgOからなる基本組成を有するガラス組成物であって、SiO2/Al23が重量比で3.30であり、Al23/MgOが重量比で2.20であり、更にSiO2、Al23及びMgOの合計重量がガラス組成物全重量を基準として98重量%以上であることを特徴とするガラス繊維用ガラス組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のガラス繊維用ガラス組成物からなることを特徴とするガラス繊維。
  4. 請求項3記載のガラス繊維を編組してなることを特徴とするガラス繊維編組物。
  5. 請求項3記載のガラス繊維と、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂と、を含むことを特徴とするガラス繊維強化樹脂。
  6. 請求項5記載のガラス繊維強化樹脂からなるガラス繊維強化樹脂層と、該ガラス繊維強化樹脂層の最外層に接合された導体層と、を備えることを特徴とするプリント配線板。
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