JP3674963B2 - 能動型騒音制御装置及び能動型振動制御装置 - Google Patents
能動型騒音制御装置及び能動型振動制御装置 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、騒音源から伝達される騒音に制御音源から発せられる制御音を干渉させることにより騒音の低減を図る能動型騒音制御装置及び振動源から伝達される振動に制御振動源から発せられる制御振動を干渉させることにより振動の低減を図る能動型振動制御装置に関し、特に、制御音源,制御振動源を駆動する駆動信号を生成する適応ディジタルフィルタと、この適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を適応アルゴリズムに従って逐次更新する適応処理手段とを備えた能動型騒音制御装置,能動型振動制御装置において、演算負荷を大幅に軽減できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の能動型騒音制御装置としては、英国特許第2149614号や特表平1−501344号等に記載のものがある。
これら従来の装置は、航空機の客室やこれに類する閉空間に適用される騒音低減装置であって、閉空間の外部に位置するエンジン等の単一の騒音源は、基本周波数f0 及びその高調波f1 〜fn を含む騒音を発生するという条件の下において作動するものである。
【0003】
具体的には、閉空間内の複数の位置に設置され音圧を検出するマイクロフォンと、その閉空間に制御音を発生する複数のラウドスピーカとを備え、騒音源の周波数f0 〜fn 成分に基づき、それら周波数f0 〜fn 成分と逆位相の信号でラウドスピーカを駆動させ、もって閉空間に伝達される騒音と逆位相の制御音をラウドスピーカから発生させて騒音を打ち消している。
【0004】
そして、ラウドスピーカから発せられる制御音の生成方法として、PROCEEDINGS OF THE IEEE,VOL.63 PAGE 1692,1975,“ADAPTIVE NOISE CANCELLATION :PRINCIPLES AND APPLICATIONS ”で述べられている‘WIDROW LMS’アルゴリズムを多チャンネルに展開したアルゴリズムを適用している。その内容は、上記特許の発明者による論文、“A MULTIPLE ERROR LMS ALGORITHM AND ITS APPLICATION TO THE ACTIVE CONTROL OF SOUND AND VIBRATION ”,IEEE TRANS.ACOUST.,SPEECH,SIGNAL PROCESSING,VOL.ASSP −35,PP.1423−1434,1987 にも述べられている。
【0005】
即ち、LMSアルゴリズムは、適応型ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新するのに好適なアルゴリズムの一つであって、例えばいわゆるFiltered−X LMSアルゴリズム(より具体的には、Multiple ErrorFiltered−X LMSアルゴリズム)にあっては、ラウドスピーカからマイクロフォンまでの音響伝達特性を表す伝達関数フィルタをラウドスピーカとマイクロフォンとの組み合わせについて設定し、騒音源における騒音の発生状態を表す基準信号をそのフィルタで処理した値と、各マイクロフォンが検出した残留騒音とに基づいた所定の評価関数の値が低減するように、各ラウドスピーカ毎に設けられたフィルタ係数可変のディジタルフィルタのフィルタ係数を更新している。
【0006】
しかしながら、このようなMultiple Error Filtered−X LMSアルゴリズムにあっては、マイクロフォンが一つの単なるFiltered−X LMSアルゴリズムとは異なり、複数のマイクロフォンを用いているので確かに騒音低減効果を制御空間内の広い範囲に渡って得ることができるが、マイクロフォンの個数が増えるということは、基準信号との畳み込み演算を実行する伝達関数フィルタの数や、適応ディジタルフィルタの更新演算に必要な残留騒音信号の数が増加するということであるから、マイクロフォンの個数に比例して演算量が増大してしまい、それだけ高速処理の可能な従って高価な演算処理装置を適用しなければならなくなるという問題点を有している。
【0007】
このような問題点を解決するための従来の技術として、いわゆるエラースキャンニング法がある。
即ち、エラースキャンニング法とは、Multiple Error Filtered−X LMSアルゴリズムを実施した場合の演算量を軽減させることを目的として開発されたアルゴリズムであって、簡単に説明すれば、あるサンプリング・タイミングにおいては複数のマイクロフォンのうちの一部のマイクロフォンだけを選択し、その選択したマイクロフォンの出力信号に基づいて適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新し、次のサンプリング・タイミングにおいては他のマイクロフォンだけを選択し、その選択したマイクロフォンの出力信号に基づいて適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新し、さらに次のサンプリング・タイミングにおいてはまた別のマイクロフォンを選択して同様の処理を行い、そしてそのようなマイクロフォンの選択を同様のパターンで何回も繰り返しつつ適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新処理を実行する、という具合に次々とマイクロフォンをスキャンニングしながらフィルタ係数を更新していくというアルゴリズムである(例えば、本出願人等が先に提案した特開平3−274897号公報や、“日本音響学会講演論文集”平成2年3月「アクティブ・ノイズコントロール・チェアー」等に詳しい。)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
確かに、上述したエラースキャンニング法を用いれば、上記公開公報や上記論文集に記載されているように演算量が大幅に軽減されるという利点がある。しかしながら、上記Multiple Error Filtered−X LMSアルゴリズムを、例えば車両の車輪及び路面間で発生するロード・ノイズを低減する能動型騒音制御装置に適用すれば、騒音源が複数であることから基準信号も複数となり、それに比例して伝達関数フィルタと基準信号との畳み込み演算における乗算や加算の回数が増大してしまう。さらには、制御性能を向上させるためにラウドスピーカを複数とすれば、ラウドスピーカ及びマイクロフォンの組合せがさらに多数となって伝達関数フィルタの個数はさらに増大するため、伝達関数フィルタ自体が多数となって、やはり伝達関数フィルタと基準信号との畳み込み演算における乗算や加算の回数が飛躍的に増大してしまう。
【0009】
例えば、K個の騒音源、L個のマイクロフォン、M個のラウドスピーカを備えたシステム構成にFiltered−X LMSアルゴリズムを適用した場合、k(k=1,2,…,K)番目の騒音源における騒音の発生状態を表す基準信号をx(k)、l(l=1,2,…,L)番目のマイクロフォンから出力される残留騒音信号をe(l)、l番目のラウドスピーカとm(m=1,2,…,M)番目のマイクロフォンとの間の伝達関数フィルタをC^(l,m)、基準信号x(k)を伝達関数フィルタC^(l,m)でフィルタ処理した結果である更新用基準信号をr(k,l,m)とすれば、適応ディジタルフィルタW(k,m)のi(i=0,1,2,…,I−1:Iは適応ディジタルフィルタのタップ数)番目のフィルタ係数をW(k,m,i)の更新式は、下記の(1)のようになる。ただし、適応ディジタルフィルタW(k,m)は、有限インパルス応答型のディジタルフィルタである。
【0010】
ただし、αは収束係数と呼ばれる係数であって、収束の速度及び安定性に関与し、添字n,n+1,n−iは、それぞれサンプリング時刻n,n+1,n−iにおける値であることを表している。
【0011】
また、伝達関数フィルタC^(l,m)のj(j=0,1,2,…,J−1:Jは伝達関数フィルタのタップ数)のフィルタ係数番目のフィルタ係数をC^(l,m,j)とすれば、更新用基準信号r(k,l,m)の演算式は、下記の(2)式のようになる。ただし、伝達関数C^(l,m)は、有限インパルス応答型のディジタルフィルタである。
【0012】
そして、ある一つのフィルタ係数W(i)について上記(1)式の演算を行うには、L+1回の乗算と、L回の加算とが必要であるため、全てのフィルタ係数W(k,m,i)について上記(1)式の演算を行うには、K×M×I×(L+1)回の乗算と、K×M×I×L回の加算が必要である。同様に上記(2)式で必要となる計算量は、K×L×M×J回の乗算と、K×L×M×(J−1)回の加算である。これらの計算を1kHzのクロックで行ったとし、簡略化のために乗算も加算も同じだけの時間を要するとすれば、K=12,L=8、M=6、I=128、J=64というさほど大きくないシステム構成であっても、上記(1),(2)式のために1秒間に必要な計算量は、
{12×6×128×(8+1)+12×6×128×8+12×8×6×64+12×8×6×(64−1)}×1000=229824000
となり、マイクロプロセッサには約230MIPS(Milion Instruction Per Second )という高性能が要求されてしまう。
【0013】
そして、上記とおなじシステム構成に上述したエラースキャンニング法を適用しても、フィルタ係数W(k,m,i)の更新式は、
となり簡単になるが、上記(2)式の演算は各添字k,l,mの全ての組合せについて行っていたため、結局上記(1),(2)式のために1秒間に必要な計算量は、
{12×6×128×2+12×6×128×1+12×8×6×64+12×8×6×(64−1)}×1000=100800000
となり、半分以下に計算量に軽減されるものの、やはりマイクロプロセッサには約101MIPSという高性能が要求されてしまうのである。
【0014】
本発明は、このような従来の技術が有する未解決の課題に着目してなされたものであって、さらなる計算量の軽減が図られる能動型騒音制御装置,能動型振動制御装置を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、複数の騒音源から発せられた騒音と干渉する制御音を発生可能な制御音源と、前記複数の騒音源の騒音発生状態を検出し基準信号として出力する複数の基準信号生成手段と、前記干渉後の騒音を検出し残留騒音信号として出力する残留騒音検出手段と、前記複数の基準信号生成手段に対応する複数の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御音源を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記制御音源及び前記残留騒音検出手段間の伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留騒音信号に基づいて前記干渉後の騒音が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型騒音制御装置において、前記複数の基準信号生成手段から供給される複数の基準信号のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された基準信号に基づいて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記複数の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新するようにした。
【0016】
また、請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明である能動型騒音制御装置において、前記適応ディジタルフィルタを有限インパルス応答型のディジタルフィルタで構成するとともに、k番(k=1,2,…,K:Kは前記基準信号生成手段の個数)の前記基準信号をx(k)、サンプリング時刻nにおける前記基準信号x(k)をx(k,n)、前記基準信号x(k)に対応した前記適応ディジタルフィルタをW(k)、前記適応ディジタルフィルタW(k)のi番目(i=0,1,2,…,I−1:Iは前記適応ディジタルフィルタW(k)のタップ数)のフィルタ係数をW(k,i)とし、前記選択手段は、前記サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号kc に従ってサンプリング時刻nに基準信号x(kc ,n)を選択し、前記適応処理手段は、前記フィルタ係数W(k,i)の添字k,iを加算した(k+i)を前記Kで割った余りmod(k+i,K)(ただし、mod(k+i,K)=0の場合は、mod(k+i,K)=Kとする。)が、前記選択番号kc に一致する前記フィルタ係数W(k,i)を更新するようにした。
【0017】
そして、請求項3に係る発明は、上記請求項1に係る発明である能動型騒音制御装置において、前記選択手段は、前記複数の基準信号のそれぞれの重要度を考慮して前記選択を行うようにした。
上記目的を達成するために、請求項4に係る発明は、騒音源から発せられた騒音と干渉する制御音を発生可能な複数の制御音源と、前記騒音源の騒音発生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の騒音を検出し残留騒音信号として出力する残留騒音検出手段と、前記複数の制御音源に対応する複数の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記複数の適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御音源を駆動する複数の駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記複数の制御音源及び前記残留騒音検出手段間のそれぞれの伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである複数の伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留騒音信号に基づいて前記干渉後の騒音が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型騒音制御装置において、前記複数の制御音源のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された制御音源に対応した前記伝達関数フィルタを用いて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記複数の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新するようにした。
【0018】
また、請求項5に係る発明は、上記請求項4に係る発明である能動型騒音制御装置において、前記適応ディジタルフィルタを有限インパルス応答型のディジタルフィルタで構成するとともに、m番(m=1,2,…,M:Mは前記制御音源の個数)の前記制御音源に対応する前記適応ディジタルフィルタをW(m)、前記適応ディジタルフィルタW(m)のi番目(i=0,1,2,…,I−1:Iは前記適応ディジタルフィルタW(m)のタップ数)のフィルタ係数をW(m,i)とし、前記選択手段は、前記サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号mc に従ってサンプリング時刻nにmc 番の制御音源を選択し、前記適応処理手段は、前記フィルタ係数W(m,i)の添字m,iを加算した(m+i)を前記Mで割った余りmod(m+i,M)(ただし、mod(m+i,M)=0の場合は、mod(m+i,M)=Mとする。)が、前記選択番号mc に一致するフィルタ係数W(m,i)を更新するようにした。
【0019】
そして、請求項6に係る発明は、上記請求項4に係る発明である能動型騒音制御装置において、前記選択手段は、前記複数の制御音源のそれぞれの重要度を考慮して前記選択を行うようにした。
上記目的を達成するために、請求項7に係る発明は、騒音源から発せられた騒音と干渉する制御音を発生可能な制御音源と、前記騒音源の騒音発生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の騒音を検出し残留騒音信号として出力する複数の残留騒音検出手段と、適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御音源を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記制御音源及び前記複数の残留騒音検出手段間のそれぞれの伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである複数の伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留騒音信号に基づいて前記干渉後の騒音が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型騒音制御装置において、前記複数の残留騒音検出手段のそれぞれの重要度を考慮してそれら複数の残留騒音検出手段のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された残留騒音検出手段に対応した前記伝達関数フィルタを用いて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新するようにした。
【0020】
そして、請求項8に係る発明は、上記請求項7に係る発明において、前記重要度を、前記複数の残留騒音検出手段から供給される各残留騒音信号のレベルとした。
一方、上記目的を達成するために、請求項9に係る発明は、複数の振動源から発せられた振動と干渉する制御振動を発生可能な制御振動源と、前記複数の振動源の振動発生状態を検出し基準信号として出力する複数の基準信号生成手段と、前記干渉後の振動を検出し残留振動信号として出力する残留振動検出手段と、前記複数の基準信号生成手段に対応する複数の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御振動源を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記制御振動源及び前記残留振動検出手段間の伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留振動信号に基づいて前記干渉後の振動が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型振動制御装置において、前記複数の基準信号生成手段から供給される複数の基準信号のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された基準信号に基づいて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記複数の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新するようにした。
【0021】
また、請求項10に係る発明は、上記請求項9に係る発明である能動型振動制御装置において、前記適応ディジタルフィルタを有限インパルス応答型のディジタルフィルタで構成するとともに、k番(k=1,2,…,K:Kは前記基準信号生成手段の個数)の前記基準信号をx(k)、サンプリング時刻nにおける前記基準信号x(k)をx(k,n)、前記基準信号x(k)に対応した前記適応ディジタルフィルタをW(k)、前記適応ディジタルフィルタW(k)のi番目(i=0,1,2,…,I−1:Iは前記適応ディジタルフィルタW(k)のタップ数)のフィルタ係数をW(k,i)とし、前記選択手段は、前記サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号kc に従ってサンプリング時刻nに基準信号x(kc ,n)を選択し、前記適応処理手段は、前記フィルタ係数W(k,i)の添字k,iを加算した(k+i)を前記Kで割った余りmod(k+i,K)(ただし、mod(k+i,K)=0の場合は、mod(k+i,K)=Kとする。)が、前記選択番号kc に一致する前記フィルタ係数W(k,i)を更新するようにした。
【0022】
そして、請求項11に係る発明は、上記請求項10に係る発明である能動型振動制御装置において、前記選択手段は、前記複数の基準信号のそれぞれの重要度を考慮して前記選択を行うようにした。
上記目的を達成するために、請求項12に係る発明は、振動源から発せられた振動と干渉する制御振動を発生可能な複数の制御振動源と、前記振動源の振動発生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の振動を検出し残留振動信号として出力する残留振動検出手段と、前記複数の制御振動源に対応する複数の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記複数の適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御振動源を駆動する複数の駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記複数の制御振動源及び前記残留振動検出手段間のそれぞれの伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである複数の伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留振動信号に基づいて前記干渉後の振動が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型振動制御装置において、前記複数の制御振動源のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された制御振動源に対応した前記伝達関数フィルタを用いて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記複数の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新するようにした。
【0023】
また、請求項13に係る発明は、上記請求項12に係る発明である能動型振動制御装置において、前記適応ディジタルフィルタを有限インパルス応答型のディジタルフィルタで構成するとともに、m番(m=1,2,…,M:Mは前記制御振動源の個数)の前記制御振動源に対応する前記適応ディジタルフィルタをW(m)、前記適応ディジタルフィルタW(m)のi番目(i=0,1,2,…,I−1:Iは前記適応ディジタルフィルタW(m)のタップ数)のフィルタ係数をW(m,i)とし、前記選択手段は、前記サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号mc に従ってサンプリング時刻nにmc 番の制御振動源を選択し、前記適応処理手段は、前記フィルタ係数W(m,i)の添字m,iを加算した(m+i)を前記Mで割った余りmod(m+i,M)(ただし、mod(m+i,M)=0の場合は、mod(m+i,M)=Mとする。)が、前記選択番号mc に一致するフィルタ係数W(m,i)を更新するようにした。
【0024】
そして、請求項14に係る発明は、上記請求項12に係る発明である能動型振動制御装置において、前記選択手段は、前記複数の制御振動源のそれぞれの重要度を考慮して前記選択を行うようにした。
さらに、上記目的を達成するために、請求項15に係る発明は、振動源から発せられた振動と干渉する制御振動を発生可能な制御振動源と、前記振動源の振動発生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の振動を検出し残留振動信号として出力する複数の残留振動検出手段と、適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御振動源を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記制御振動源及び前記複数の残留振動検出手段間のそれぞれの伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである複数の伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留振動信号に基づいて前記干渉後の振動が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型振動制御装置において、前記複数の残留振動検出手段のそれぞれの重要度を考慮してそれら複数の残留振動検出手段のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された残留振動検出手段に対応した前記伝達関数フィルタを用いて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新するようにした。
【0025】
また、請求項16に係る発明は、上記請求項15に係る発明において、前記重要度を、前記複数の残留振動検出手段から供給される各残留振動信号のレベルとした。
【0026】
【作用】
請求項1に係る発明にあっては、サンプリング・タイミングの度に、選択手段によって複数の基準信号のうちの一部の基準信号が選択され、更新用基準信号生成手段によって、その選択された基準信号が伝達関数フィルタでフィルタ処理されて更新用基準信号が生成される。従って、任意のサンプリング時刻nにおいては、選択された基準信号に応じた更新用基準信号は生成されるが、選択されていない基準信号に応じた更新用基準信号は生成されないことになり、更新用基準信号生成手段における演算量は、全ての基準信号について更新用基準信号を演算する場合の“(選択される基準信号の個数)/(基準信号の総数)”倍になる。
【0027】
そして、適応処理手段は、全ての適応ディジタルフィルタの全てのフィルタ係数を更新するのではなく、選択手段における選択に対応したフィルタ係数のみを更新する。より具体的には、適応処理手段は、更新演算を行うのに必要な更新用基準信号が存在するフィルタ係数のみを更新する。従って、適応処理手段における演算量も、全ての適応ディジタルフィルタの全てのフィルタ係数を更新する場合の“(選択される基準信号の個数)/(基準信号の総数)”倍になる。
【0028】
また、請求項2に係る発明にあっては、選択番号kc がサンプリング・タイミングの度にインクリメント(kc =kc +1又はkc =kc −1)され、その選択番号kc に従って選択手段が複数の基準信号のうちの一部の基準信号を選択するから、複数の基準信号は順繰りに選択されることになる。
すると、サンプリング時刻nにkc 番の基準信号x(kc ,n)を選択した場合、その基準信号x(kc ,n)に対応した更新用基準信号r(kc ,n)は存在するが、サンプリング時刻(n−1)には(kc −1)番の基準信号x(kc −1,n−1)又は(kc +1)番の基準信号x(kc +1,n−1)が選択されているから、そのサンプリング時刻(n−1)に生成された更新用基準信号はr(kc −1,n−1)又はr(kc +1,n−1)である。このように逐次インクリメントされる選択番号kc に従って規則的に基準信号が選択され、それに応じて更新用基準信号が生成される。
【0029】
そして、更新演算を行うのに必要な更新用基準信号が存在する適応ディジタルフィルタW(k)のフィルタ係数W(k,i)は、その添字k,iを加算した(k+i)を基準信号の個数Kで割った余りが選択番号kc に一致するか否かによって判断されるから、余りmod(k+i,K)を演算することにより、更新可能なフィルタ係数W(k,i)が判明する。
【0030】
なお、選択番号kc のインクリメントの増分が“+1”の場合に、余りmod(k+i,K)によって更新可能なフィルタ係数W(k,i)が判明するためには、適応ディジタルフィルタW(k)のフィルタ係数W(k,i)が添字iに従って昇順に並んでいることが条件となるし、選択番号kc のインクリメントの増分が“−1”の場合に、余りmod(k+i,K)によって更新可能なフィルタ係数W(k,i)が判明するためには、適応ディジタルフィルタW(k)のフィルタ係数W(k,i)が添字iに従って降順に並んでいることが条件となる。
【0031】
さらに、請求項3に係る発明にあっては、選択手段は、複数の基準信号のそれぞれの重要度を考慮した順番でそれら基準信号を選択するため、重要度に応じて選択頻度が異なってくる。例えば重要度が大きいほど高い頻度で選択されるようにすれば、重要度が高い基準信号に応じた更新用基準信号は頻繁に生成されて適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新演算に用いられるようになるから、重要度の高い基準信号に対応した適応ディジタルフィルタのフィルタ係数ほど頻繁に更新される。
【0032】
次に、請求項4に係る発明にあっては、サンプリング・タイミングの度に、選択手段によって複数の制御音源のうちの一部の制御音源が選択され、更新用基準信号生成手段によって、その選択された制御音源に対応した伝達関数フィルタを用いて更新用基準信号が生成される。従って、任意のサンプリング時刻nにおいては、選択された制御音源に応じた更新用基準信号は生成されるが、選択されていない制御音源に応じた更新用基準信号は生成されないことになり、更新用基準信号生成手段における演算量は、全ての伝達関数フィルタを用いて更新用基準信号を演算する場合の“(選択される制御音源の個数)/(制御音源の総数)”倍になる。
【0033】
そして、適応処理手段は、全ての適応ディジタルフィルタの全てのフィルタ係数を更新するのではなく、選択手段における選択に対応したフィルタ係数のみを更新する。より具体的には、適応処理手段は、更新演算を行うのに必要な更新用基準信号が存在するフィルタ係数のみを更新する。従って、適応処理手段における演算量も、全ての伝達関数フィルタを用いて更新用基準信号を演算する場合の“(選択される制御音源の個数)/(制御音源の総数)”倍になる。
【0034】
また、請求項5に係る発明にあっては、選択番号mc がサンプリング・タイミングの度にインクリメント(mc =mc +1又はmc =mc −1)され、その選択番号mc に従って選択手段が複数の制御音源のうちの一部の制御音源を選択するから、複数の制御音源は順繰りに選択されることになる。
すると、サンプリング時刻nにmc 番の制御音源を選択した場合、その制御音源に対応する更新用基準信号r(mc ,n)は存在するが、サンプリング時刻(n−1)に演算された更新用基準信号はr(mc −1,n−1)又はr(mc +1,n−1)である。このように逐次インクリメントされる選択番号mc に従って規則的に制御音源(伝達関数フィルタ)が選択され、それに応じて更新用基準信号が生成される。
【0035】
そして、更新演算を行うのに必要な更新用基準信号が存在する適応ディジタルフィルタW(m)のフィルタ係数W(m,i)は、その添字m,iを加算した(m+i)を制御音源の個数Mで割った余りが選択番号mc に一致するか否かによって判断されるから、余りmod(m+i,M)を演算することにより、更新可能なフィルタ係数W(m,i)が判明する。
【0036】
なお、選択番号mc のインクリメントの増分が“+1”の場合に、余りmod(m+i,M)によって更新可能なフィルタ係数W(m,i)が判明するためには、適応ディジタルフィルタW(m)のフィルタ係数W(m,i)が添字iに従って昇順に並んでいることが条件となるし、選択番号mc のインクリメントの増分が“−1”の場合に、余りmod(m+i,M)によって更新可能なフィルタ係数W(m,i)が判明するためには、適応ディジタルフィルタW(m)のフィルタ係数W(m,i)が添字iに従って降順に並んでいることが条件となる。
【0037】
さらに、請求項6に係る発明にあっては、選択手段は、複数の制御音源のそれぞれの重要度を考慮した順番でそれら制御音源を選択するため、重要度に応じて選択頻度が異なってくる。例えば重要度が大きいほど高い頻度で選択されるようにすれば、重要度が高い制御音源に応じた更新用基準信号は頻繁に生成されて適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新演算に用いられるようになるから、重要度の高い制御音源に対応した適応ディジタルフィルタのフィルタ係数ほど頻繁に更新される。
【0038】
請求項7に係る発明にあっては、サンプリング・タイミングの度に、選択手段によって複数の残留騒音検出手段のうちの一部の残留騒音検出手段が選択され、更新用基準信号生成手段によって、その選択された残留騒音検出手段に対応した伝達関数フィルタを用いて更新用基準信号が生成される。従って、任意のサンプリング時刻nにおいては、選択された残留騒音検出手段に応じた更新用基準信号は生成されるが、選択されていない残留騒音検出手段に応じた更新用基準信号は生成されないことになり、更新用基準信号生成手段における演算量は、全ての伝達関数フィルタを用いて更新用基準信号を演算する場合の“(選択される残留騒音検出手段の個数)/(残留騒音検出手段の総数)”倍になる。
【0039】
そして、適応処理手段は、全ての適応ディジタルフィルタの全てのフィルタ係数を更新するのではなく、選択手段における選択に対応したフィルタ係数のみを更新する。より具体的には、適応処理手段は、更新演算を行うのに必要な更新用基準信号が存在するフィルタ係数のみを更新する。従って、適応処理手段における演算量も、全ての伝達関数フィルタを用いて更新用基準信号を演算する場合の“(選択される残留騒音検出手段の個数)/(残留騒音検出手段の総数)”倍になる。
【0040】
しかも、選択手段は、複数の残留騒音検出手段のそれぞれの重要度を考慮した順番でそれら残留騒音検出手段を選択するため、重要度に応じて選択頻度が異なってくる。例えば重要度が大きいほど高い頻度で選択されるようにすれば、重要度が高い残留騒音検出手段に応じた更新用基準信号は頻繁に生成されて適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新演算に用いられるようになるから、重要度の高い残留騒音検出手段に対応した適応ディジタルフィルタのフィルタ係数ほど頻繁に更新される。
【0041】
さらに、請求項8に係る発明にあっては、複数の残留騒音検出手段のそれぞれの重要度を、各残留騒音検出手段が出力する残留騒音信号のレベルとしている。これは、残留騒音信号のレベルが高いということは、その残留騒音検出手段が配設された位置の騒音レベルが高いことを意味するから、それだけ重点的な騒音低減制御が必要であると判断できるからである。そして、残留騒音信号のレベルが高いほど高い頻度で選択されるようにすれば、騒音レベルの高い位置に配置された残留騒音検出手段に対応した適応ディジタルフィルタのフィルタ係数ほど、頻繁に更新される。
【0042】
ここで、上記請求項1乃至請求項8に係る発明はいずれも騒音を対象としているのに対し、請求項9乃至請求項16に係る発明は振動を対象としている。従って、それら請求項9乃至請求項16に係る発明の作用は、音と振動との違いはあるが、実質的に上記請求項1乃至請求項8に係る発明と同様である。
【0043】
【実施例】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施例の全体構成を示す図であって、この実施例は本発明に係る能動型騒音制御装置を、車両車室内の騒音の低減を図る車両用能動型騒音制御装置1に適用したものである。
【0044】
先ず、構成を説明すると、この車両用能動型騒音制御装置1は、騒音源としての路面及び各車輪2a〜2d(図1には、車両左側の車輪2a,2cのみ図示している。)間から車室6内に伝達される騒音としてのロード・ノイズを低減する装置である。なお、ロード・ノイズとは、走行路面上の凹凸を車輪が通過する際の車輪上下動に起因して発生する騒音であり、通常は多くの周波数成分を含むランダムノイズである。
【0045】
そして、車体9及び各車輪2a〜2d間に介在するサスペンション10a〜10d(図1には、サスペンション10a,10cのみ図示している。)のそれぞれには、各サスペンション10a〜10dの上下方向の振動入力を検出するための加速度センサ5a〜5d(図1には、加速度センサ5a,5cのみ図示している。)が取り付けられていて、各加速度センサ5a〜5dが検出したロード・ノイズの発生状態を表す加速度信号が、基準信号x(k)(k=1〜K:Kはロード・ノイズの発生状態を表す基準信号x(k) の個数であり、これは騒音源である車輪の個数に対応することから、本実施例ではK=4である。)として、コントローラ20に供給されるようになっている。
【0046】
一方、車室6内には、その車室6内に制御音を発生する制御音源としての複数のラウドスピーカ7a〜7d(図1には、ラウドスピーカ7a,7cのみ図示している。)が例えば前部座席の足下位置及び後部座席のヘッドレスト後方に配設されていて、これらラウドスピーカ7a〜7dは、コントローラ20から供給される駆動信号y(m)(m=1〜M:Mはラウドスピーカ7a〜7dの個数であり、本実施例ではM=4である。)に応じて駆動して制御音を発生するようになっている。
【0047】
さらに、車室6内の各座席の天井には複数のマイクロフォン8a〜8dが配設されていて、各マイクロフォン8a〜8dは、配設位置に残留する騒音の音圧を測定し、その測定値を残留騒音信号e(l)(l=1〜L:Lはマイクロフォン8a〜8dの個数であって、本実施例ではL=4である。)としてコントローラ20に供給するようになっている。
【0048】
ここでコントローラ20は、A/D変換器,D/A変換器等の必要なインタフェース回路やマイクロコンピュータ等から構成されていて、供給される基準信号x(k)及び残留騒音信号e(l)に基づいて所定の演算処理を実行し、車室6内に伝達されているロード・ノイズが打ち消されるような制御音がラウドスピーカ7a〜7dから発せられるように、各ラウドスピーカ7a〜7dに駆動信号y(m)(y(1)〜y(4))を供給するようになっている。
【0049】
コントローラ20は、基本的には、フィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタW(k,m)で各基準信号x(k)をフィルタ処理(実際には、畳み込み演算)し、その結果を添字m毎に加算することにより駆動信号y(m)を生成し、それら駆動信号y(m)を各ラウドスピーカ7a〜7dに供給する一方、適応ディジタルフィルタW(k,m)のフィルタ係数W(k,m,i)(i=0,1,2,…,I−1:Iは適応ディジタルフィルタW(k,m)のタップ数)をFiltered−X LMSアルゴリズムに従って逐次更新する処理を実行するようになっている。なお、駆動信号y(m)の演算処理は下記の(4)式に示すようになり、適応ディジタルフィルタW(m)のフィルタ係数W(k,m,i)の更新演算処理は、Filtered−X LMSアルゴリズムに従うことから、上記(1),(2)式に示すようになる。
【0050】
ただし、コントローラ20では、上記(2)式は、添字“l,m”については全範囲(l=1〜L,m=1〜M)の演算がなされるが、添字“k”については全範囲の演算がなされるようにはなっておらず、あるサンプリング時刻nにおいては、順番に選択される一つの基準信号x(k)についてのみ、更新用基準信号r(k,l,m,n)が演算されるようになっている。具体的には、サンプリング・タイミングの度に選択信号kc がインクリメント(kc =kc +1)されるようになっており、その選択信号kc に従って基準信号x(kc )が選択され、その選択された基準信号x(kc ,n−i)が上記(2)式に代入されて、更新用基準信号r(kc ,l,m,n)が演算されるようになっている。
【0051】
そして、コントローラ20では、更新用基準信号r(k,l,m,n)が、サンプリング時刻nにおいては一つの基準信号x(kc )についてのみ演算されることから、上記(1)式は、必要な更新用基準信号r(k,l,m,n)が存在するフィルタ係数W(k,m,i,n)についてのみ演算されるようになっている。具体的には、上記(1)式の右辺第2項に必要なのは、更新用基準信号r(k,l,m,n−i)であり、これはサンプリング時刻(n−i)における上記(2)式の結果であるから、そのサンプリング時刻(n−i)における選択番号kc を記憶しておけば、存在する更新用基準信号r(k,l,m,n−i)が判明し、それによって更新演算が可能なフィルタ係数W(k,m,i,n)が決定する。
【0052】
しかし、本実施例では、選択番号kc はサンプリング・タイミングの度にインクリメントされるようなっているから、基準信号x(k)は、x(1),x(2),x(3),x(4),x(1),…、という具合に順番に選択されるようになっている。このため、サンプリング時刻(n−i)における選択番号kc を記憶しておかなくても、サンプリング時刻nにおける選択番号kc (現時点の選択番号kc )に基づいて存在する更新用基準信号r(k,l,m,n−i)が判明し、それによって更新演算が可能なフィルタ係数W(k,m,i,n)を決定することが可能となっている。
【0053】
具体的には、下記の(5)式で求められる値ki が、現時点の選択番号kc に一致するようなフィルタ係数W(k,m,i,n)のみを更新するようになっている。
ki =mod(k+i,K) ……(5)
なお、この(5)式は、フィルタ係数W(k,m,i,n)の添字“k”と“i”とを加算した(k+i)を、基準信号x(k)の個数Kで割った余りを意味している。ただし、
ki =0
の場合には、
ki =K
とする。
【0054】
以上から、本実施例のコントローラ20は、その機能構成を表したブロック図である図2に示すように、上記(4)式に従って基準信号x(k)と適応ディジタルフィルタW(k,m)の各フィルタ係数W(k,m,i)とを畳み込んで添字m毎に加算して駆動信号y(m)を生成し出力する駆動信号生成部21と、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号kc に従って複数K個の基準信号x(k)のうちから一つの基準信号x(kc )を選択する選択部22と、この選択部22で選択された基準信号x(kc )及び伝達関数フィルタC^(l,m)に基づき上記(2)式に従って更新用基準信号r(kc ,l,m,n)を演算する更新用基準信号演算部23と、更新用基準信号r(kc ,l,m,n)及び残留騒音信号e(l,n)に基づき上記(1)式に従って且つ上記(5)式の条件を満足するフィルタ係数W(k,m,l,n)を更新するフィルタ係数更新部24と、を備えて構成されている。
【0055】
図3はコントローラ20内で実行される処理の概要を示すフローチャートであり、以下、図3に従って本実施例の動作を説明する。ただし、車両は走行中であって、車室6内にはロード・ノイズが伝達されているものとする。
即ち、この図3に示す処理はサンプリング・クロックに同期して各サンプリング・タイミングの度に実行されるようになっていて、先ずそのステップ101において各加速度センサ5a〜5dから供給される基準信号x(k)を読み込み、これをサンプリング時刻nにおける基準信号x(k,n)として記憶する。次いでステップ102に移行して、その基準信号x(k,n)と適応ディジタルフィルタW(k,m)とに基づき且つ上記(4)式に従って駆動信号y(m)を演算する。
【0056】
そして、ステップ103に移行し、駆動信号y(m)を各ラウドスピーカ7a〜7dに出力する。
次いで、ステップ104に移行し、各マイクロフォン8a〜8dから供給される残留騒音信号e(l)を読み込み、これをサンプリング時刻nにおける残留騒音信号e(l,n)として記憶する。
【0057】
次いで、ステップ105に移行し、上記(2)式に従って更新用基準信号r(k,l,m)を演算し、これをサンプリング時刻nにおける更新用基準信号r(k,l,m,n)として記憶する。ただし、このステップ105では、k=kc ,l=1〜L,m=1〜Mについて更新用基準信号r(kc ,l,m)を演算する。
【0058】
そして、ステップ106に移行し、上記(1)式に従って適応ディジタルフィルタW(k,m)のフィルタ係数W(k,m,i)を更新する。ただし、ki (=mod(k+i,K))が現時点の選択番号kc に一致するフィルタ係数W(k,m,i)のみを更新する。
次いで、ステップ107に移行し、選択番号kc が基準信号数Kに達しているか否かを判定し、ここで達していないと判定された(判定が「NO」の)場合には、ステップ108に移行して、選択番号kc をインクリメントする一方、ステップ107の判定が「YES」の場合には、ステップ109に移行して、選択番号kc を再び“1”に再設定する。
【0059】
ステップ108又はステップ109の処理を終えたら、今回のこの処理を終了し、次のサンプリング・タイミングとなるまで待機した後に、上記ステップ101に戻って上述した処理を再び実行する。
コントローラ20においてこのような処理が実行されると、各ラウドスピーカ7a〜7dには次々と駆動信号y(m)が供給されるため、車室6内にはその駆動信号y(m)に応じた制御音が発生するようになるが、制御開始直後は適応ディジタルフィルタW(k,m)のフィルタ係数W(k,m,i)が最適値に収束しているとは限らないので、ラウドスピーカ7a〜7dから発せられる制御音によって、ロード・ノイズが低減されるとはいえない。
【0060】
しかし、図3に示す処理が繰り返し実行されると、フィルタ係数更新部24がLMSアルゴリズムに従い適応ディジタルフィルタW(k,m)の各フィルタ係数W(k,m,i)を更新するので、それらフィルタ係数W(k,m,i)は最適値に向かって収束していき、車室6内に伝達されるロード・ノイズが制御音によって打ち消されるようになり、車室6内の騒音レベルが低減する。
【0061】
しかも、本実施例にあっては、更新用基準信号r(k,l,m)を演算する際に、全ての基準信号x(k)に基づいて演算を行うことなく、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号kc に基づいて一つの基準信号x(kc )についてのみ更新用基準信号r(kc ,l,m)を演算するようにしているため、ここでの計算量は全ての基準信号x(k)について更新用基準信号r(k,l,m)を演算する場合に比べて1/Kに低減する。
【0062】
また、適応ディジタルフィルタW(k,m)のフィルタ係数W(k,m,i)を更新する際にも、更新に必要な更新用基準信号r(k,l,m)が存在するフィルタ係数W(k,m,i)についてのみ更新演算を行うようにしているため、ここでの計算量も全てのフィルタ係数W(k,m,i)を更新する場合に比べて1/Kに低減する。
【0063】
このように、本実施例の構成であれば、演算負荷を大幅に低減することができるから、コントローラ20に要求される演算能力を従来よりも大幅に低くすることができる。
特に、本実施例では、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号kc に従って基準信号x(kc )を選択し、その順番に選択される基準信号x(kc )から更新用基準信号r(k,l,m)を演算するようになっているため、サンプリング時刻nにおける選択番号kc を記憶しておかなくても、現時点の選択番号kc の値に基づけば、過去のサンプリング時刻(n−i)にどの基準信号x(k)に従って更新用基準信号r(k,l,m)を演算したかを(つまり存在する更新用基準信号r(k,l,m)を)知ることができるという利点がある。
【0064】
なお、サンプリング時刻nには一部の基準信号x(kc )についてのみ更新用基準信号r(k,l,m)を演算し、これによりサンプリング時刻nにはフィルタ係数W(k,m,i)の更新演算を一部のフィルタ係数W(k,m,i)についてのみ行うこととしているが、各基準信号x(k)は繰り返し選択されるようになっているし、そもそもLMSアルゴリズム自体が、最適値に近づくと思われる方向を確率的に判断してフィルタ係数W(k,m,i)を逐次更新して、徐々に最適値に近づけるいくアルゴリズムであるため、本実施例(後述する他の実施例でも同様)のような構成としても、フィルタ係数W(k,m,i)の最適値への収束は保証される。
【0065】
ここで、本実施例では、ラウドスピーカ7a〜7dが制御音源に対応し、マイクロフォン8a〜8dが残留騒音検出手段に対応し、加速度センサ5a〜5dが基準信号生成手段に対応し、駆動信号生成部21及びステップ102の処理が駆動信号生成手段に対応し、更新用基準信号生成部23及びステップ105の処理が更新用基準信号生成手段に対応し、フィルタ係数更新部24及びステップ106の処理が適応処理手段に対応し、選択部22及びステップ107〜109の処理が選択手段に対応する。
【0066】
図4は本発明の第2実施例を示す図であって、上記第1実施例の図3と同様にコントローラ内で実行される処理の概要を示すフローチャートである。なお、全体構成等は上記第1実施例と同様であるため、その図示及び説明は省略し、上記第1実施例と同様の処理を実行するステップには同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0067】
即ち、上記第1実施例では、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号kc に従って順番に基準信号x(k)を選択するようにしているが、これでは全ての基準信号x(k)が同じ頻度で選択されることになる。従って、各基準信号x(k)間で重要度等に差がない場合には特に問題ないのであるが、差がある場合には、重要度の大きい基準信号x(k)と、重要度の小さい基準信号x(k)とが同じ頻度で選択されることになるため、必ずしも効率のよい演算が行われているとはいえなくなってしまうのである。
【0068】
そこで、本実施例では、その基準信号x(k)の重要度を考慮してその選択を行うことにより、そのような不具合を解決するようにしている。
具体的には、ステップ106からステップ201に移行し、選択番号kc を選択するに際に、基準信号x(k)の重要度を考慮することにしている。重要度としては、予め判っている場合と、制御中に判断する場合とが考えられる。前者としては、例えば、後部座席を重点的に消音したい場合に、後部座席の乗員の耳位置に近い後輪側の加速度センサ5c,5dから供給される基準信号x(k)の重要度を、前輪側のそれよりも高くして、選択番号kc を、サンプリング・タイミングの度に“1,3,4,2,3,4,1,3,4,…”という具合に設定することが考えられる。後者としては、騒音レベルの高い騒音源から供給される基準信号x(k)ほど車室6内騒音を悪化させていると仮定し、基準信号x(k)のレベルが高いほど重要度を高くして、頻繁に選択されるようにすることが考えられる。
【0069】
そして、ステップ201からステップ202に移行し、現在のサンプリング時刻nと関連して選択番号kc を記憶する。これは、選択番号kc の設定が上記第1実施例のように極めて規則的ではないため、選択番号kc を記憶しておかなければ、存在する更新用基準信号r(k,l,m)の判断ができなくなってしまいステップ106の演算に支障を来すことになるからである。ただし、上述した重要度が予め判っている場合のように、選択番号kc を規則的に設定するのであれば、特にステップ202の処理を実行しなくても、添字“k,i”の組合せから存在する更新用基準信号r(k,l,m)を判断して、更新可能なフィルタ係数W(k,m,i)を選出するようにしてもよい。ステップ202の処理を終えたら、今回のこの処理を終了し、次のサンプリング・タイミングとなるまで待機した後に、上記ステップ101に戻って上述した処理を再び実行する。
【0070】
このような構成であれば、重要度の高い基準信号x(k)ほど頻繁に選択されるため、効率のよい騒音低減制御が実行される。その他の作用効果は、上記第1実施例と同様である。
ここで、本実施例では、ステップ201の処理が選択手段に対応する。
図5及び図6は本発明の第3実施例を示す図であって、図5は上記第1実施例の図2と同様のコントローラ20の機能構成を示すブロック図、図6は上記第1実施例の図3と同様にコントローラ20内で実行される処理の概要を示すフローチャートである。なお、全体構成等は上記第1実施例と同様であるため、その図示及び説明は省略し、また、上記第1実施例と同様の構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0071】
即ち、上記第1,第2実施例では、サンプリング・タイミングの度に複数の基準信号x(k)のうちから一つの基準信号x(kc )を選択し、その選択された基準信号x(kc )に基づいて更新用基準信号r(kc ,l,m)を演算する一方、その選択状況に応じて更新されるフィルタ係数W(k,m,i)を選出して更新演算を行うことにより、演算負荷の軽減を図っているが、本実施例では、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号mc に基づいて複数のラウドスピーカ7a〜7dのうちから一つのラウドスピーカを選択し、その選択されたラウドスピーカに対応する伝達関数フィルタC^(l,mc )を用いて更新用基準信号r(k,l,mc )を演算する一方、その選択状況に応じて更新されるフィルタ係数W(k,m,i)を選出して更新演算を行うことにより、演算負荷の軽減を図るようにしている。
【0072】
具体的には、図5に示すように、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号mc に基づいて、更新用基準信号演算部23で使用する伝達関数フィルタC^(l,m)を選択する選択部31を設けている。また、その選択部31における選択状況は、フィルタ係数更新部24にも供給されるようになっていて、そのフィルタ係数更新部24は、現時点の選択番号mc に基づいて、更新されるフィルタ係数W(k,m,i)を選出するようになっている。具体的には、フィルタ係数更新部24は、下記の(6)式で求められる値mi が、現時点の選択番号mc に一致するようなフィルタ係数W(k,m,i,n)のみを更新するようになっている。
【0073】
mi =mod(m+i,M) ……(6)
なお、この(6)式は、フィルタ係数W(k,m,i,n)の添字“m”と“i”とを加算した(m+i)を、ラウドスピーカ7a〜7dの個数Mで割った余りを意味している。ただし、
mi =0
の場合には、
mi =M
とする。
【0074】
以上のような構成であるため、コントローラ20における処理の流れは図6に示すようになる。即ち、ステップ101〜104までは上記第1実施例の場合と同様であり、ステップ104からステップ301に移行し、k=1〜K,l=1〜L,m=mc について更新用基準信号r(k,l,mc )を演算し、これをサンプリング時刻nにおける更新用基準信号r(k,l,mc ,n)として記憶する。
【0075】
次いで、ステップ302に移行し、上記(1)式に従って、mi (=mod(m+i,K))が現時点の選択番号mc に一致するフィルタ係数W(k,m,i)を更新する。
そして、ステップ303〜305に移行し、上記第1実施例における図3のステップ107〜109と同様の処理を実行して、選択番号mc をインクリメントし、これで今回のこの処理を終了し、次のサンプリング・タイミングとなるまで待機した後に、上記ステップ101に戻って上述した処理を再び実行する。
【0076】
このような処理が繰り返し実行すれば、上記第1実施例と同様に、車室6内に伝達されるロード・ノイズが制御音によって打ち消されるようになり、車室6内の騒音レベルが低減する。
また、本実施例にあっても、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号mc に基づいて伝達関数フィルタC^(l,mc )についてのみ更新用基準信号r(k,l,mc )を演算するようにしているため、ここでの計算量は全ての伝達関数フィルタC^(l,m)ついて更新用基準信号r(k,l,m)を演算する場合に比べて1/Mに低減する。同様に、適応ディジタルフィルタW(k,m)のフィルタ係数W(k,m,i)の更新演算も、全てのフィルタ係数W(k,m,i)を更新する場合に比べて1/Mに低減する。
従って、本実施例の構成であっても、上記第1実施例と同様に、演算負荷を大幅に低減することができるから、コントローラ20に要求される演算能力を従来よりも大幅に低くすることができる。
【0077】
そして、本実施例でも、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号mc に従って選択を行っているため、サンプリング時刻nにおける選択番号mc を記憶しておかなくても、現時点の選択番号mc の値に基づけば、過去のサンプリング時刻(n−i)にどの伝達関数フィルタC^(l,m)に従って更新用基準信号r(k,l,m)を演算したかを(つまり存在する更新用基準信号r(k,l,m)を)知ることができるという利点がある。
【0078】
ここで、本実施例では、更新用基準信号生成部23及びステップ301における処理が更新用基準信号生成手段に対応し、フィルタ係数更新部24及びステップ302の処理が適応処理手段に対応し、選択部31及びステップ303〜305の処理が選択手段に対応する。
なお、この第3実施例のようにラウドスピーカ7a〜7dのうちの一つを選択する構成であっても、上記第2実施例と同様に、ラウドスピーカ7a〜7dの重要度を考慮して選択を行うようにしてもよい。ラウドスピーカ7a〜7dの重要度としては、例えば後部座席を重点的に消音したいのであれば後部座席に近い側のラウドスピーカ7c,7dの重要度を高くしてその選択頻度を高くしたり(重要度固定)、或いは残留騒音のレベルの高い空間(マイクロフォン8a〜8d)に近いラウドスピーカ7a〜7dの重要度を高くしてその選択頻度を高くする(重要度可変)ことなどが考えられる。このように重要度を考慮して選択するようにすれば、上記第2実施例と同様に、効率のよい演算を行うことができる。
【0079】
図7及び図8は本発明の第4実施例を示す図であって、図7は上記第1実施例の図2と同様のコントローラ20の機能構成を示すブロック図、図8は上記第1実施例の図3と同様にコントローラ20内で実行される処理の概要を示すフローチャートである。なお、全体構成等は上記第1実施例と同様であるため、その図示及び説明は省略し、また、上記第1実施例と同様の構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0080】
即ち、本実施例では、図7に示すように、残留騒音信号e(l)のそれぞれのレベル|e(l)|を演算するレベル演算部41を有していて、選択部31は、それらレベル|e(l)|を各マイクロフォン8a〜8dの重要度として受け、レベルの高い残留騒音信号e(l)を出力するマイクロフォン8a〜8dの選択頻度が高くなるように、サンプリング・タイミングの度にそれらマイクロフォン8a〜8dのうちから一つのマイクロフォンを選択するようになっている。
【0081】
そして、その選択結果は選択番号lc として更新用基準信号生成部23に供給されるようになっていて、更新用基準信号生成部23は、その選択番号lc に対応する伝達関数フィルタC^(lc ,m)を用いて更新用基準信号r(k,lc ,m)を演算するようになっているとともに、フィルタ係数更新部24は、その選択状況に応じて更新されるフィルタ係数W(k,m,i)を選出して更新演算を行うようになっていて、これにより演算負荷の軽減を図るようにしている。
【0082】
以上のような構成であるため、コントローラ20における処理の流れは、図8に示すようになる。即ち、ステップ101〜104までは上記第1実施例の場合と同様であり、ステップ104からステップ401に移行し、各残留騒音信号e(l)のレベル|e(l)|を演算する。なお、レベル|e(l)|は、残留騒音信号e(l)の瞬時値であってもよいし、或いは所定時間内の平均値であってもい。
【0083】
次いで、ステップ402に移行し、それらレベル|e(l)|の最大値を見つけ出し、その最大値を出力したマイクロフォン8a〜8dの番号を選択番号lc として設定する。そして、ステップ403に移行し、現在のサンプリング時刻nと関連して選択番号lc を記憶する。
次いで、ステップ404に移行し、k=1〜K,l=1c ,m=1〜Mについて更新用基準信号r(k,lc ,m)を演算し、これをサンプリング時刻nにおける更新用基準信号r(k,lc ,m,n)として記憶する。
【0084】
そして、ステップ405に移行し、上記(1)式に従って、フィルタ係数W(k,m,i)を更新する。ただし、このステップ405では、各サンプリング時刻(n−i)において選択した選択番号lc に基づいて存在する更新用基準信号r(k,lc ,m,n−i)を判定し、その更新用基準信号r(k,lc ,m,n−i)が存在するフィルタ係数W(k,m,i)についてのみ、更新演算を行う。ステップ405の処理を終えたら、今回のこの処理を終了し、次のサンプリング・タイミングとなるまで待機した後に、上記ステップ101に戻って上述した処理を再び実行する。
【0085】
このような処理が繰り返し実行すれば、上記第1実施例と同様に、車室6内に伝達されるロード・ノイズが制御音によって打ち消されるようになり、車室6内の騒音レベルが低減する。
そして、本実施例にあっても、サンプリング・タイミングの度に設定される選択番号lc に基づいて伝達関数フィルタC^(lc ,m)についてのみ更新用基準信号r(k,lc ,m)を演算するようにしているため、ここでの計算量は全ての伝達関数フィルタC^(l,m)ついて更新用基準信号r(k,l,m)を演算する場合に比べて1/Lに低減する。同様に、適応ディジタルフィルタW(k,m)のフィルタ係数W(k,m,i)の更新演算も、全てのフィルタ係数W(k,m,i)を更新する場合に比べて1/Lに低減する。
【0086】
従って、本実施例の構成であっても、上記第1実施例と同様に、演算負荷を大幅に低減することができるから、コントローラ20に要求される演算能力を従来よりも大幅に低くすることができる。
そして、本実施例では、選択番号lc を、残留騒音信号e(l)のレベル|e(l)|の最大値に基づいて選択しているため、残留騒音のレベルが高いマイクロフォンほど頻繁に選択されるようになるから、上記第2実施例と同様に、効率のよい演算を行うことができる。
【0087】
ここで、本実施例では、更新用基準信号生成部23及びステップ404における処理が更新用基準信号生成手段に対応し、フィルタ係数更新部24及びステップ405の処理が適応処理手段に対応し、選択部31,レベル演算部41及びステップ401,402の処理が選択手段に対応する。
なお、上記各実施例では、適応ディジタルフィルタW(k,m)のフィルタ係数W(k,m,i)の更新演算を上記(1)式に従って行うようにしているが、上記(3)式を用いるようにしてもよい。つまり、上記各実施例で説明した手法にさらにエラースキャンニング法を加味するようにしてもよく、エラースキャンニング法を加えれば、さらなる演算量の低減が図られる。
【0088】
また、上記各実施例では、基準信号x(k),ラウドスピーカ7a〜7d及びマイクロフォン8a〜8dのうちの何れか一つをスキャンニングして更新用基準信号r(k,l,m)を演算する構成としているが、それらのうちの二つ以上をスキャンニングするようにしてもよい。
さらに、上記各実施例では、あるサンプリング時刻nにおいては、複数の基準信号x(k)(又はラウドスピーカ7a〜7d、或いはマイクロフォン8a〜8d)のうちから一つだけを選択するようにしているが、これに限定されるものではなく、二つ以上を選択して更新用基準信号r(k,l,m)を演算するようにしてもよい。
【0089】
そして、上記各実施例では、制御対象となる騒音をロード・ノイズとしているが、低減し得る騒音はこれに限定されるものではなく、例えばエアコンディショナで発生する空調騒音,吸気管や排気管で発生する吸排気騒音,ドアミラー位置で発生する風切り音等を対象としてもよい。ただし、その場合には、騒音の発生状態を表す基準信号を適宜検出する必要があり、例えば空調騒音であればエアコンプレッサの回転に同期した信号を基準信号とすればよく、吸排気騒音であればエンジンの回転に起因することからエンジンのクランク軸の回転に同期した信号を基準信号とすればよく、風切り音であればドアミラーに振動ピックアップを固定してその出力を基準信号とすればよい。
【0090】
さらに、上記各実施例では、制御対象を騒音としているが、低減の対象は騒音に限定されるものではなく、例えば、サスペンション10a〜10d及び車体間に能動的な制御力を発生する制御アクチュエータを介在させるとともに、その車体側に残留振動を検出する加速度センサ(残留振動検出手段)を配設し、そして、かかる制御アクチュエータを上記実施例と同様の基準信号x及び加速度センサの出力信号(残留振動信号)に基づいて制御すれば、各サスペンション10a〜10dから車体側に伝達される振動を低減し得る車両用能動型振動制御装置となる。
【0091】
そして、本発明の適用対象は車両に限定されるものではなく、例えば航空機や建物の室内の騒音を低減する能動型騒音制御装置や、工作機から床に伝達される振動を低減する能動型振動制御装置に適用してもよい。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1,請求項4,請求項9及び請求項12に係る発明によれば、適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新演算に必要な更新用基準信号の生成を、複数の基準信号又は複数の制御音源,制御振動源のうちから選択された一部の基準信号又は制御音源についてのみ行い、その生成された更新用基準信号に対応するフィルタ係数を更新するように構成したため、演算負荷を大幅に軽減することができるという効果がある。
【0093】
特に、請求項2,請求項5,請求項10及び請求項13に係る発明によれば、上記選択をサンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号に従って行うようにしたため、各サンプリング時刻における選択番号を記憶しておかなくても、現時点の選択番号の値に基づけば、過去のサンプリング時刻にどの基準信号に従って更新用基準信号を演算したかを知ることができるという効果がある。
【0094】
また、請求項3,請求項6,請求項11及び請求項14に係る発明によれば、重要度を考慮して選択を行うようにしたため、騒音低減制御又は振動低減制御を行う上で、効率のよい演算が行われるという効果がある。
そして、請求項7又は請求項15に係る発明にあっては、LMSアルゴリズムのフィルタ係数の更新演算に必要な更新用基準信号の生成を、複数の残留騒音検出手段,残留振動検出手段のうちから選択された一部の残留騒音検出手段,残留振動検出手段についてのみ行い、その生成された更新用基準信号に対応するフィルタ係数を更新するように構成したため、演算負荷を大幅に軽減することができるとともに、重要度を考慮して選択を行うようにしたため、騒音低減制御又は振動低減制御を行う上で、効率のよい演算が行われるという効果がある。
【0095】
さらに、請求項8又は請求項16に係る発明にあっては、残留騒音検出手段又は残留振動検出手段を選択する際の重要度として残留騒音信号又は残留振動信号のレベルを用いたため、騒音レベルの高い残留騒音検出手段又は振動レベルの高い残留振動検出手段ほど頻繁に選択されるようになるから、非常に効率のよい騒音低減制御,振動低減制御が行えるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例における全体構成図である。
【図2】第1実施例におけるコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施例のコントローラ内で実行される処理の概要を示すフローチャートである。
【図4】第2実施例のコントローラ内で実行される処理の概要を示すフローチャートである。
【図5】第3実施例におけるコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図6】第3実施例のコントローラ内で実行される処理の概要を示すフローチャートである。
【図7】第4実施例におけるコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図8】第4実施例のコントローラ内で実行される処理の概要を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 車両用能動型騒音制御装置
5a,5c 加速度センサ(基準信号生成手段)
7a,7c ラウドスピーカ(制御音源)
8a〜8d マイクロフォン(残留騒音検出手段)
20 コントローラ
21 駆動信号生成部(駆動信号生成手段)
22 選択部(選択手段)
23 更新用基準信号生成部(更新用基準信号生成手段)
24 フィルタ係数更新部(適応処理手段)
31 選択部(選択手段)
41 レベル演算部
【産業上の利用分野】
この発明は、騒音源から伝達される騒音に制御音源から発せられる制御音を干渉させることにより騒音の低減を図る能動型騒音制御装置及び振動源から伝達される振動に制御振動源から発せられる制御振動を干渉させることにより振動の低減を図る能動型振動制御装置に関し、特に、制御音源,制御振動源を駆動する駆動信号を生成する適応ディジタルフィルタと、この適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を適応アルゴリズムに従って逐次更新する適応処理手段とを備えた能動型騒音制御装置,能動型振動制御装置において、演算負荷を大幅に軽減できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の能動型騒音制御装置としては、英国特許第2149614号や特表平1−501344号等に記載のものがある。
これら従来の装置は、航空機の客室やこれに類する閉空間に適用される騒音低減装置であって、閉空間の外部に位置するエンジン等の単一の騒音源は、基本周波数f0 及びその高調波f1 〜fn を含む騒音を発生するという条件の下において作動するものである。
【0003】
具体的には、閉空間内の複数の位置に設置され音圧を検出するマイクロフォンと、その閉空間に制御音を発生する複数のラウドスピーカとを備え、騒音源の周波数f0 〜fn 成分に基づき、それら周波数f0 〜fn 成分と逆位相の信号でラウドスピーカを駆動させ、もって閉空間に伝達される騒音と逆位相の制御音をラウドスピーカから発生させて騒音を打ち消している。
【0004】
そして、ラウドスピーカから発せられる制御音の生成方法として、PROCEEDINGS OF THE IEEE,VOL.63 PAGE 1692,1975,“ADAPTIVE NOISE CANCELLATION :PRINCIPLES AND APPLICATIONS ”で述べられている‘WIDROW LMS’アルゴリズムを多チャンネルに展開したアルゴリズムを適用している。その内容は、上記特許の発明者による論文、“A MULTIPLE ERROR LMS ALGORITHM AND ITS APPLICATION TO THE ACTIVE CONTROL OF SOUND AND VIBRATION ”,IEEE TRANS.ACOUST.,SPEECH,SIGNAL PROCESSING,VOL.ASSP −35,PP.1423−1434,1987 にも述べられている。
【0005】
即ち、LMSアルゴリズムは、適応型ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新するのに好適なアルゴリズムの一つであって、例えばいわゆるFiltered−X LMSアルゴリズム(より具体的には、Multiple ErrorFiltered−X LMSアルゴリズム)にあっては、ラウドスピーカからマイクロフォンまでの音響伝達特性を表す伝達関数フィルタをラウドスピーカとマイクロフォンとの組み合わせについて設定し、騒音源における騒音の発生状態を表す基準信号をそのフィルタで処理した値と、各マイクロフォンが検出した残留騒音とに基づいた所定の評価関数の値が低減するように、各ラウドスピーカ毎に設けられたフィルタ係数可変のディジタルフィルタのフィルタ係数を更新している。
【0006】
しかしながら、このようなMultiple Error Filtered−X LMSアルゴリズムにあっては、マイクロフォンが一つの単なるFiltered−X LMSアルゴリズムとは異なり、複数のマイクロフォンを用いているので確かに騒音低減効果を制御空間内の広い範囲に渡って得ることができるが、マイクロフォンの個数が増えるということは、基準信号との畳み込み演算を実行する伝達関数フィルタの数や、適応ディジタルフィルタの更新演算に必要な残留騒音信号の数が増加するということであるから、マイクロフォンの個数に比例して演算量が増大してしまい、それだけ高速処理の可能な従って高価な演算処理装置を適用しなければならなくなるという問題点を有している。
【0007】
このような問題点を解決するための従来の技術として、いわゆるエラースキャンニング法がある。
即ち、エラースキャンニング法とは、Multiple Error Filtered−X LMSアルゴリズムを実施した場合の演算量を軽減させることを目的として開発されたアルゴリズムであって、簡単に説明すれば、あるサンプリング・タイミングにおいては複数のマイクロフォンのうちの一部のマイクロフォンだけを選択し、その選択したマイクロフォンの出力信号に基づいて適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新し、次のサンプリング・タイミングにおいては他のマイクロフォンだけを選択し、その選択したマイクロフォンの出力信号に基づいて適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新し、さらに次のサンプリング・タイミングにおいてはまた別のマイクロフォンを選択して同様の処理を行い、そしてそのようなマイクロフォンの選択を同様のパターンで何回も繰り返しつつ適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新処理を実行する、という具合に次々とマイクロフォンをスキャンニングしながらフィルタ係数を更新していくというアルゴリズムである(例えば、本出願人等が先に提案した特開平3−274897号公報や、“日本音響学会講演論文集”平成2年3月「アクティブ・ノイズコントロール・チェアー」等に詳しい。)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
確かに、上述したエラースキャンニング法を用いれば、上記公開公報や上記論文集に記載されているように演算量が大幅に軽減されるという利点がある。しかしながら、上記Multiple Error Filtered−X LMSアルゴリズムを、例えば車両の車輪及び路面間で発生するロード・ノイズを低減する能動型騒音制御装置に適用すれば、騒音源が複数であることから基準信号も複数となり、それに比例して伝達関数フィルタと基準信号との畳み込み演算における乗算や加算の回数が増大してしまう。さらには、制御性能を向上させるためにラウドスピーカを複数とすれば、ラウドスピーカ及びマイクロフォンの組合せがさらに多数となって伝達関数フィルタの個数はさらに増大するため、伝達関数フィルタ自体が多数となって、やはり伝達関数フィルタと基準信号との畳み込み演算における乗算や加算の回数が飛躍的に増大してしまう。
【0009】
例えば、K個の騒音源、L個のマイクロフォン、M個のラウドスピーカを備えたシステム構成にFiltered−X LMSアルゴリズムを適用した場合、k(k=1,2,…,K)番目の騒音源における騒音の発生状態を表す基準信号をx(k)、l(l=1,2,…,L)番目のマイクロフォンから出力される残留騒音信号をe(l)、l番目のラウドスピーカとm(m=1,2,…,M)番目のマイクロフォンとの間の伝達関数フィルタをC^(l,m)、基準信号x(k)を伝達関数フィルタC^(l,m)でフィルタ処理した結果である更新用基準信号をr(k,l,m)とすれば、適応ディジタルフィルタW(k,m)のi(i=0,1,2,…,I−1:Iは適応ディジタルフィルタのタップ数)番目のフィルタ係数をW(k,m,i)の更新式は、下記の(1)のようになる。ただし、適応ディジタルフィルタW(k,m)は、有限インパルス応答型のディジタルフィルタである。
【0010】
ただし、αは収束係数と呼ばれる係数であって、収束の速度及び安定性に関与し、添字n,n+1,n−iは、それぞれサンプリング時刻n,n+1,n−iにおける値であることを表している。
【0011】
また、伝達関数フィルタC^(l,m)のj(j=0,1,2,…,J−1:Jは伝達関数フィルタのタップ数)のフィルタ係数番目のフィルタ係数をC^(l,m,j)とすれば、更新用基準信号r(k,l,m)の演算式は、下記の(2)式のようになる。ただし、伝達関数C^(l,m)は、有限インパルス応答型のディジタルフィルタである。
【0012】
そして、ある一つのフィルタ係数W(i)について上記(1)式の演算を行うには、L+1回の乗算と、L回の加算とが必要であるため、全てのフィルタ係数W(k,m,i)について上記(1)式の演算を行うには、K×M×I×(L+1)回の乗算と、K×M×I×L回の加算が必要である。同様に上記(2)式で必要となる計算量は、K×L×M×J回の乗算と、K×L×M×(J−1)回の加算である。これらの計算を1kHzのクロックで行ったとし、簡略化のために乗算も加算も同じだけの時間を要するとすれば、K=12,L=8、M=6、I=128、J=64というさほど大きくないシステム構成であっても、上記(1),(2)式のために1秒間に必要な計算量は、
{12×6×128×(8+1)+12×6×128×8+12×8×6×64+12×8×6×(64−1)}×1000=229824000
となり、マイクロプロセッサには約230MIPS(Milion Instruction Per Second )という高性能が要求されてしまう。
【0013】
そして、上記とおなじシステム構成に上述したエラースキャンニング法を適用しても、フィルタ係数W(k,m,i)の更新式は、
となり簡単になるが、上記(2)式の演算は各添字k,l,mの全ての組合せについて行っていたため、結局上記(1),(2)式のために1秒間に必要な計算量は、
{12×6×128×2+12×6×128×1+12×8×6×64+12×8×6×(64−1)}×1000=100800000
となり、半分以下に計算量に軽減されるものの、やはりマイクロプロセッサには約101MIPSという高性能が要求されてしまうのである。
【0014】
本発明は、このような従来の技術が有する未解決の課題に着目してなされたものであって、さらなる計算量の軽減が図られる能動型騒音制御装置,能動型振動制御装置を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、複数の騒音源から発せられた騒音と干渉する制御音を発生可能な制御音源と、前記複数の騒音源の騒音発生状態を検出し基準信号として出力する複数の基準信号生成手段と、前記干渉後の騒音を検出し残留騒音信号として出力する残留騒音検出手段と、前記複数の基準信号生成手段に対応する複数の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御音源を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記制御音源及び前記残留騒音検出手段間の伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留騒音信号に基づいて前記干渉後の騒音が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型騒音制御装置において、前記複数の基準信号生成手段から供給される複数の基準信号のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された基準信号に基づいて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記複数の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新するようにした。
【0016】
また、請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明である能動型騒音制御装置において、前記適応ディジタルフィルタを有限インパルス応答型のディジタルフィルタで構成するとともに、k番(k=1,2,…,K:Kは前記基準信号生成手段の個数)の前記基準信号をx(k)、サンプリング時刻nにおける前記基準信号x(k)をx(k,n)、前記基準信号x(k)に対応した前記適応ディジタルフィルタをW(k)、前記適応ディジタルフィルタW(k)のi番目(i=0,1,2,…,I−1:Iは前記適応ディジタルフィルタW(k)のタップ数)のフィルタ係数をW(k,i)とし、前記選択手段は、前記サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号kc に従ってサンプリング時刻nに基準信号x(kc ,n)を選択し、前記適応処理手段は、前記フィルタ係数W(k,i)の添字k,iを加算した(k+i)を前記Kで割った余りmod(k+i,K)(ただし、mod(k+i,K)=0の場合は、mod(k+i,K)=Kとする。)が、前記選択番号kc に一致する前記フィルタ係数W(k,i)を更新するようにした。
【0017】
そして、請求項3に係る発明は、上記請求項1に係る発明である能動型騒音制御装置において、前記選択手段は、前記複数の基準信号のそれぞれの重要度を考慮して前記選択を行うようにした。
上記目的を達成するために、請求項4に係る発明は、騒音源から発せられた騒音と干渉する制御音を発生可能な複数の制御音源と、前記騒音源の騒音発生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の騒音を検出し残留騒音信号として出力する残留騒音検出手段と、前記複数の制御音源に対応する複数の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記複数の適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御音源を駆動する複数の駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記複数の制御音源及び前記残留騒音検出手段間のそれぞれの伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである複数の伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留騒音信号に基づいて前記干渉後の騒音が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型騒音制御装置において、前記複数の制御音源のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された制御音源に対応した前記伝達関数フィルタを用いて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記複数の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新するようにした。
【0018】
また、請求項5に係る発明は、上記請求項4に係る発明である能動型騒音制御装置において、前記適応ディジタルフィルタを有限インパルス応答型のディジタルフィルタで構成するとともに、m番(m=1,2,…,M:Mは前記制御音源の個数)の前記制御音源に対応する前記適応ディジタルフィルタをW(m)、前記適応ディジタルフィルタW(m)のi番目(i=0,1,2,…,I−1:Iは前記適応ディジタルフィルタW(m)のタップ数)のフィルタ係数をW(m,i)とし、前記選択手段は、前記サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号mc に従ってサンプリング時刻nにmc 番の制御音源を選択し、前記適応処理手段は、前記フィルタ係数W(m,i)の添字m,iを加算した(m+i)を前記Mで割った余りmod(m+i,M)(ただし、mod(m+i,M)=0の場合は、mod(m+i,M)=Mとする。)が、前記選択番号mc に一致するフィルタ係数W(m,i)を更新するようにした。
【0019】
そして、請求項6に係る発明は、上記請求項4に係る発明である能動型騒音制御装置において、前記選択手段は、前記複数の制御音源のそれぞれの重要度を考慮して前記選択を行うようにした。
上記目的を達成するために、請求項7に係る発明は、騒音源から発せられた騒音と干渉する制御音を発生可能な制御音源と、前記騒音源の騒音発生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の騒音を検出し残留騒音信号として出力する複数の残留騒音検出手段と、適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御音源を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記制御音源及び前記複数の残留騒音検出手段間のそれぞれの伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである複数の伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留騒音信号に基づいて前記干渉後の騒音が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型騒音制御装置において、前記複数の残留騒音検出手段のそれぞれの重要度を考慮してそれら複数の残留騒音検出手段のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された残留騒音検出手段に対応した前記伝達関数フィルタを用いて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新するようにした。
【0020】
そして、請求項8に係る発明は、上記請求項7に係る発明において、前記重要度を、前記複数の残留騒音検出手段から供給される各残留騒音信号のレベルとした。
一方、上記目的を達成するために、請求項9に係る発明は、複数の振動源から発せられた振動と干渉する制御振動を発生可能な制御振動源と、前記複数の振動源の振動発生状態を検出し基準信号として出力する複数の基準信号生成手段と、前記干渉後の振動を検出し残留振動信号として出力する残留振動検出手段と、前記複数の基準信号生成手段に対応する複数の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御振動源を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記制御振動源及び前記残留振動検出手段間の伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留振動信号に基づいて前記干渉後の振動が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型振動制御装置において、前記複数の基準信号生成手段から供給される複数の基準信号のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された基準信号に基づいて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記複数の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新するようにした。
【0021】
また、請求項10に係る発明は、上記請求項9に係る発明である能動型振動制御装置において、前記適応ディジタルフィルタを有限インパルス応答型のディジタルフィルタで構成するとともに、k番(k=1,2,…,K:Kは前記基準信号生成手段の個数)の前記基準信号をx(k)、サンプリング時刻nにおける前記基準信号x(k)をx(k,n)、前記基準信号x(k)に対応した前記適応ディジタルフィルタをW(k)、前記適応ディジタルフィルタW(k)のi番目(i=0,1,2,…,I−1:Iは前記適応ディジタルフィルタW(k)のタップ数)のフィルタ係数をW(k,i)とし、前記選択手段は、前記サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号kc に従ってサンプリング時刻nに基準信号x(kc ,n)を選択し、前記適応処理手段は、前記フィルタ係数W(k,i)の添字k,iを加算した(k+i)を前記Kで割った余りmod(k+i,K)(ただし、mod(k+i,K)=0の場合は、mod(k+i,K)=Kとする。)が、前記選択番号kc に一致する前記フィルタ係数W(k,i)を更新するようにした。
【0022】
そして、請求項11に係る発明は、上記請求項10に係る発明である能動型振動制御装置において、前記選択手段は、前記複数の基準信号のそれぞれの重要度を考慮して前記選択を行うようにした。
上記目的を達成するために、請求項12に係る発明は、振動源から発せられた振動と干渉する制御振動を発生可能な複数の制御振動源と、前記振動源の振動発生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の振動を検出し残留振動信号として出力する残留振動検出手段と、前記複数の制御振動源に対応する複数の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記複数の適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御振動源を駆動する複数の駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記複数の制御振動源及び前記残留振動検出手段間のそれぞれの伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである複数の伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留振動信号に基づいて前記干渉後の振動が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型振動制御装置において、前記複数の制御振動源のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された制御振動源に対応した前記伝達関数フィルタを用いて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記複数の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新するようにした。
【0023】
また、請求項13に係る発明は、上記請求項12に係る発明である能動型振動制御装置において、前記適応ディジタルフィルタを有限インパルス応答型のディジタルフィルタで構成するとともに、m番(m=1,2,…,M:Mは前記制御振動源の個数)の前記制御振動源に対応する前記適応ディジタルフィルタをW(m)、前記適応ディジタルフィルタW(m)のi番目(i=0,1,2,…,I−1:Iは前記適応ディジタルフィルタW(m)のタップ数)のフィルタ係数をW(m,i)とし、前記選択手段は、前記サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号mc に従ってサンプリング時刻nにmc 番の制御振動源を選択し、前記適応処理手段は、前記フィルタ係数W(m,i)の添字m,iを加算した(m+i)を前記Mで割った余りmod(m+i,M)(ただし、mod(m+i,M)=0の場合は、mod(m+i,M)=Mとする。)が、前記選択番号mc に一致するフィルタ係数W(m,i)を更新するようにした。
【0024】
そして、請求項14に係る発明は、上記請求項12に係る発明である能動型振動制御装置において、前記選択手段は、前記複数の制御振動源のそれぞれの重要度を考慮して前記選択を行うようにした。
さらに、上記目的を達成するために、請求項15に係る発明は、振動源から発せられた振動と干渉する制御振動を発生可能な制御振動源と、前記振動源の振動発生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の振動を検出し残留振動信号として出力する複数の残留振動検出手段と、適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御振動源を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記制御振動源及び前記複数の残留振動検出手段間のそれぞれの伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである複数の伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留振動信号に基づいて前記干渉後の振動が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型振動制御装置において、前記複数の残留振動検出手段のそれぞれの重要度を考慮してそれら複数の残留振動検出手段のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された残留振動検出手段に対応した前記伝達関数フィルタを用いて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新するようにした。
【0025】
また、請求項16に係る発明は、上記請求項15に係る発明において、前記重要度を、前記複数の残留振動検出手段から供給される各残留振動信号のレベルとした。
【0026】
【作用】
請求項1に係る発明にあっては、サンプリング・タイミングの度に、選択手段によって複数の基準信号のうちの一部の基準信号が選択され、更新用基準信号生成手段によって、その選択された基準信号が伝達関数フィルタでフィルタ処理されて更新用基準信号が生成される。従って、任意のサンプリング時刻nにおいては、選択された基準信号に応じた更新用基準信号は生成されるが、選択されていない基準信号に応じた更新用基準信号は生成されないことになり、更新用基準信号生成手段における演算量は、全ての基準信号について更新用基準信号を演算する場合の“(選択される基準信号の個数)/(基準信号の総数)”倍になる。
【0027】
そして、適応処理手段は、全ての適応ディジタルフィルタの全てのフィルタ係数を更新するのではなく、選択手段における選択に対応したフィルタ係数のみを更新する。より具体的には、適応処理手段は、更新演算を行うのに必要な更新用基準信号が存在するフィルタ係数のみを更新する。従って、適応処理手段における演算量も、全ての適応ディジタルフィルタの全てのフィルタ係数を更新する場合の“(選択される基準信号の個数)/(基準信号の総数)”倍になる。
【0028】
また、請求項2に係る発明にあっては、選択番号kc がサンプリング・タイミングの度にインクリメント(kc =kc +1又はkc =kc −1)され、その選択番号kc に従って選択手段が複数の基準信号のうちの一部の基準信号を選択するから、複数の基準信号は順繰りに選択されることになる。
すると、サンプリング時刻nにkc 番の基準信号x(kc ,n)を選択した場合、その基準信号x(kc ,n)に対応した更新用基準信号r(kc ,n)は存在するが、サンプリング時刻(n−1)には(kc −1)番の基準信号x(kc −1,n−1)又は(kc +1)番の基準信号x(kc +1,n−1)が選択されているから、そのサンプリング時刻(n−1)に生成された更新用基準信号はr(kc −1,n−1)又はr(kc +1,n−1)である。このように逐次インクリメントされる選択番号kc に従って規則的に基準信号が選択され、それに応じて更新用基準信号が生成される。
【0029】
そして、更新演算を行うのに必要な更新用基準信号が存在する適応ディジタルフィルタW(k)のフィルタ係数W(k,i)は、その添字k,iを加算した(k+i)を基準信号の個数Kで割った余りが選択番号kc に一致するか否かによって判断されるから、余りmod(k+i,K)を演算することにより、更新可能なフィルタ係数W(k,i)が判明する。
【0030】
なお、選択番号kc のインクリメントの増分が“+1”の場合に、余りmod(k+i,K)によって更新可能なフィルタ係数W(k,i)が判明するためには、適応ディジタルフィルタW(k)のフィルタ係数W(k,i)が添字iに従って昇順に並んでいることが条件となるし、選択番号kc のインクリメントの増分が“−1”の場合に、余りmod(k+i,K)によって更新可能なフィルタ係数W(k,i)が判明するためには、適応ディジタルフィルタW(k)のフィルタ係数W(k,i)が添字iに従って降順に並んでいることが条件となる。
【0031】
さらに、請求項3に係る発明にあっては、選択手段は、複数の基準信号のそれぞれの重要度を考慮した順番でそれら基準信号を選択するため、重要度に応じて選択頻度が異なってくる。例えば重要度が大きいほど高い頻度で選択されるようにすれば、重要度が高い基準信号に応じた更新用基準信号は頻繁に生成されて適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新演算に用いられるようになるから、重要度の高い基準信号に対応した適応ディジタルフィルタのフィルタ係数ほど頻繁に更新される。
【0032】
次に、請求項4に係る発明にあっては、サンプリング・タイミングの度に、選択手段によって複数の制御音源のうちの一部の制御音源が選択され、更新用基準信号生成手段によって、その選択された制御音源に対応した伝達関数フィルタを用いて更新用基準信号が生成される。従って、任意のサンプリング時刻nにおいては、選択された制御音源に応じた更新用基準信号は生成されるが、選択されていない制御音源に応じた更新用基準信号は生成されないことになり、更新用基準信号生成手段における演算量は、全ての伝達関数フィルタを用いて更新用基準信号を演算する場合の“(選択される制御音源の個数)/(制御音源の総数)”倍になる。
【0033】
そして、適応処理手段は、全ての適応ディジタルフィルタの全てのフィルタ係数を更新するのではなく、選択手段における選択に対応したフィルタ係数のみを更新する。より具体的には、適応処理手段は、更新演算を行うのに必要な更新用基準信号が存在するフィルタ係数のみを更新する。従って、適応処理手段における演算量も、全ての伝達関数フィルタを用いて更新用基準信号を演算する場合の“(選択される制御音源の個数)/(制御音源の総数)”倍になる。
【0034】
また、請求項5に係る発明にあっては、選択番号mc がサンプリング・タイミングの度にインクリメント(mc =mc +1又はmc =mc −1)され、その選択番号mc に従って選択手段が複数の制御音源のうちの一部の制御音源を選択するから、複数の制御音源は順繰りに選択されることになる。
すると、サンプリング時刻nにmc 番の制御音源を選択した場合、その制御音源に対応する更新用基準信号r(mc ,n)は存在するが、サンプリング時刻(n−1)に演算された更新用基準信号はr(mc −1,n−1)又はr(mc +1,n−1)である。このように逐次インクリメントされる選択番号mc に従って規則的に制御音源(伝達関数フィルタ)が選択され、それに応じて更新用基準信号が生成される。
【0035】
そして、更新演算を行うのに必要な更新用基準信号が存在する適応ディジタルフィルタW(m)のフィルタ係数W(m,i)は、その添字m,iを加算した(m+i)を制御音源の個数Mで割った余りが選択番号mc に一致するか否かによって判断されるから、余りmod(m+i,M)を演算することにより、更新可能なフィルタ係数W(m,i)が判明する。
【0036】
なお、選択番号mc のインクリメントの増分が“+1”の場合に、余りmod(m+i,M)によって更新可能なフィルタ係数W(m,i)が判明するためには、適応ディジタルフィルタW(m)のフィルタ係数W(m,i)が添字iに従って昇順に並んでいることが条件となるし、選択番号mc のインクリメントの増分が“−1”の場合に、余りmod(m+i,M)によって更新可能なフィルタ係数W(m,i)が判明するためには、適応ディジタルフィルタW(m)のフィルタ係数W(m,i)が添字iに従って降順に並んでいることが条件となる。
【0037】
さらに、請求項6に係る発明にあっては、選択手段は、複数の制御音源のそれぞれの重要度を考慮した順番でそれら制御音源を選択するため、重要度に応じて選択頻度が異なってくる。例えば重要度が大きいほど高い頻度で選択されるようにすれば、重要度が高い制御音源に応じた更新用基準信号は頻繁に生成されて適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新演算に用いられるようになるから、重要度の高い制御音源に対応した適応ディジタルフィルタのフィルタ係数ほど頻繁に更新される。
【0038】
請求項7に係る発明にあっては、サンプリング・タイミングの度に、選択手段によって複数の残留騒音検出手段のうちの一部の残留騒音検出手段が選択され、更新用基準信号生成手段によって、その選択された残留騒音検出手段に対応した伝達関数フィルタを用いて更新用基準信号が生成される。従って、任意のサンプリング時刻nにおいては、選択された残留騒音検出手段に応じた更新用基準信号は生成されるが、選択されていない残留騒音検出手段に応じた更新用基準信号は生成されないことになり、更新用基準信号生成手段における演算量は、全ての伝達関数フィルタを用いて更新用基準信号を演算する場合の“(選択される残留騒音検出手段の個数)/(残留騒音検出手段の総数)”倍になる。
【0039】
そして、適応処理手段は、全ての適応ディジタルフィルタの全てのフィルタ係数を更新するのではなく、選択手段における選択に対応したフィルタ係数のみを更新する。より具体的には、適応処理手段は、更新演算を行うのに必要な更新用基準信号が存在するフィルタ係数のみを更新する。従って、適応処理手段における演算量も、全ての伝達関数フィルタを用いて更新用基準信号を演算する場合の“(選択される残留騒音検出手段の個数)/(残留騒音検出手段の総数)”倍になる。
【0040】
しかも、選択手段は、複数の残留騒音検出手段のそれぞれの重要度を考慮した順番でそれら残留騒音検出手段を選択するため、重要度に応じて選択頻度が異なってくる。例えば重要度が大きいほど高い頻度で選択されるようにすれば、重要度が高い残留騒音検出手段に応じた更新用基準信号は頻繁に生成されて適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新演算に用いられるようになるから、重要度の高い残留騒音検出手段に対応した適応ディジタルフィルタのフィルタ係数ほど頻繁に更新される。
【0041】
さらに、請求項8に係る発明にあっては、複数の残留騒音検出手段のそれぞれの重要度を、各残留騒音検出手段が出力する残留騒音信号のレベルとしている。これは、残留騒音信号のレベルが高いということは、その残留騒音検出手段が配設された位置の騒音レベルが高いことを意味するから、それだけ重点的な騒音低減制御が必要であると判断できるからである。そして、残留騒音信号のレベルが高いほど高い頻度で選択されるようにすれば、騒音レベルの高い位置に配置された残留騒音検出手段に対応した適応ディジタルフィルタのフィルタ係数ほど、頻繁に更新される。
【0042】
ここで、上記請求項1乃至請求項8に係る発明はいずれも騒音を対象としているのに対し、請求項9乃至請求項16に係る発明は振動を対象としている。従って、それら請求項9乃至請求項16に係る発明の作用は、音と振動との違いはあるが、実質的に上記請求項1乃至請求項8に係る発明と同様である。
【0043】
【実施例】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施例の全体構成を示す図であって、この実施例は本発明に係る能動型騒音制御装置を、車両車室内の騒音の低減を図る車両用能動型騒音制御装置1に適用したものである。
【0044】
先ず、構成を説明すると、この車両用能動型騒音制御装置1は、騒音源としての路面及び各車輪2a〜2d(図1には、車両左側の車輪2a,2cのみ図示している。)間から車室6内に伝達される騒音としてのロード・ノイズを低減する装置である。なお、ロード・ノイズとは、走行路面上の凹凸を車輪が通過する際の車輪上下動に起因して発生する騒音であり、通常は多くの周波数成分を含むランダムノイズである。
【0045】
そして、車体9及び各車輪2a〜2d間に介在するサスペンション10a〜10d(図1には、サスペンション10a,10cのみ図示している。)のそれぞれには、各サスペンション10a〜10dの上下方向の振動入力を検出するための加速度センサ5a〜5d(図1には、加速度センサ5a,5cのみ図示している。)が取り付けられていて、各加速度センサ5a〜5dが検出したロード・ノイズの発生状態を表す加速度信号が、基準信号x(k)(k=1〜K:Kはロード・ノイズの発生状態を表す基準信号x(k) の個数であり、これは騒音源である車輪の個数に対応することから、本実施例ではK=4である。)として、コントローラ20に供給されるようになっている。
【0046】
一方、車室6内には、その車室6内に制御音を発生する制御音源としての複数のラウドスピーカ7a〜7d(図1には、ラウドスピーカ7a,7cのみ図示している。)が例えば前部座席の足下位置及び後部座席のヘッドレスト後方に配設されていて、これらラウドスピーカ7a〜7dは、コントローラ20から供給される駆動信号y(m)(m=1〜M:Mはラウドスピーカ7a〜7dの個数であり、本実施例ではM=4である。)に応じて駆動して制御音を発生するようになっている。
【0047】
さらに、車室6内の各座席の天井には複数のマイクロフォン8a〜8dが配設されていて、各マイクロフォン8a〜8dは、配設位置に残留する騒音の音圧を測定し、その測定値を残留騒音信号e(l)(l=1〜L:Lはマイクロフォン8a〜8dの個数であって、本実施例ではL=4である。)としてコントローラ20に供給するようになっている。
【0048】
ここでコントローラ20は、A/D変換器,D/A変換器等の必要なインタフェース回路やマイクロコンピュータ等から構成されていて、供給される基準信号x(k)及び残留騒音信号e(l)に基づいて所定の演算処理を実行し、車室6内に伝達されているロード・ノイズが打ち消されるような制御音がラウドスピーカ7a〜7dから発せられるように、各ラウドスピーカ7a〜7dに駆動信号y(m)(y(1)〜y(4))を供給するようになっている。
【0049】
コントローラ20は、基本的には、フィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタW(k,m)で各基準信号x(k)をフィルタ処理(実際には、畳み込み演算)し、その結果を添字m毎に加算することにより駆動信号y(m)を生成し、それら駆動信号y(m)を各ラウドスピーカ7a〜7dに供給する一方、適応ディジタルフィルタW(k,m)のフィルタ係数W(k,m,i)(i=0,1,2,…,I−1:Iは適応ディジタルフィルタW(k,m)のタップ数)をFiltered−X LMSアルゴリズムに従って逐次更新する処理を実行するようになっている。なお、駆動信号y(m)の演算処理は下記の(4)式に示すようになり、適応ディジタルフィルタW(m)のフィルタ係数W(k,m,i)の更新演算処理は、Filtered−X LMSアルゴリズムに従うことから、上記(1),(2)式に示すようになる。
【0050】
ただし、コントローラ20では、上記(2)式は、添字“l,m”については全範囲(l=1〜L,m=1〜M)の演算がなされるが、添字“k”については全範囲の演算がなされるようにはなっておらず、あるサンプリング時刻nにおいては、順番に選択される一つの基準信号x(k)についてのみ、更新用基準信号r(k,l,m,n)が演算されるようになっている。具体的には、サンプリング・タイミングの度に選択信号kc がインクリメント(kc =kc +1)されるようになっており、その選択信号kc に従って基準信号x(kc )が選択され、その選択された基準信号x(kc ,n−i)が上記(2)式に代入されて、更新用基準信号r(kc ,l,m,n)が演算されるようになっている。
【0051】
そして、コントローラ20では、更新用基準信号r(k,l,m,n)が、サンプリング時刻nにおいては一つの基準信号x(kc )についてのみ演算されることから、上記(1)式は、必要な更新用基準信号r(k,l,m,n)が存在するフィルタ係数W(k,m,i,n)についてのみ演算されるようになっている。具体的には、上記(1)式の右辺第2項に必要なのは、更新用基準信号r(k,l,m,n−i)であり、これはサンプリング時刻(n−i)における上記(2)式の結果であるから、そのサンプリング時刻(n−i)における選択番号kc を記憶しておけば、存在する更新用基準信号r(k,l,m,n−i)が判明し、それによって更新演算が可能なフィルタ係数W(k,m,i,n)が決定する。
【0052】
しかし、本実施例では、選択番号kc はサンプリング・タイミングの度にインクリメントされるようなっているから、基準信号x(k)は、x(1),x(2),x(3),x(4),x(1),…、という具合に順番に選択されるようになっている。このため、サンプリング時刻(n−i)における選択番号kc を記憶しておかなくても、サンプリング時刻nにおける選択番号kc (現時点の選択番号kc )に基づいて存在する更新用基準信号r(k,l,m,n−i)が判明し、それによって更新演算が可能なフィルタ係数W(k,m,i,n)を決定することが可能となっている。
【0053】
具体的には、下記の(5)式で求められる値ki が、現時点の選択番号kc に一致するようなフィルタ係数W(k,m,i,n)のみを更新するようになっている。
ki =mod(k+i,K) ……(5)
なお、この(5)式は、フィルタ係数W(k,m,i,n)の添字“k”と“i”とを加算した(k+i)を、基準信号x(k)の個数Kで割った余りを意味している。ただし、
ki =0
の場合には、
ki =K
とする。
【0054】
以上から、本実施例のコントローラ20は、その機能構成を表したブロック図である図2に示すように、上記(4)式に従って基準信号x(k)と適応ディジタルフィルタW(k,m)の各フィルタ係数W(k,m,i)とを畳み込んで添字m毎に加算して駆動信号y(m)を生成し出力する駆動信号生成部21と、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号kc に従って複数K個の基準信号x(k)のうちから一つの基準信号x(kc )を選択する選択部22と、この選択部22で選択された基準信号x(kc )及び伝達関数フィルタC^(l,m)に基づき上記(2)式に従って更新用基準信号r(kc ,l,m,n)を演算する更新用基準信号演算部23と、更新用基準信号r(kc ,l,m,n)及び残留騒音信号e(l,n)に基づき上記(1)式に従って且つ上記(5)式の条件を満足するフィルタ係数W(k,m,l,n)を更新するフィルタ係数更新部24と、を備えて構成されている。
【0055】
図3はコントローラ20内で実行される処理の概要を示すフローチャートであり、以下、図3に従って本実施例の動作を説明する。ただし、車両は走行中であって、車室6内にはロード・ノイズが伝達されているものとする。
即ち、この図3に示す処理はサンプリング・クロックに同期して各サンプリング・タイミングの度に実行されるようになっていて、先ずそのステップ101において各加速度センサ5a〜5dから供給される基準信号x(k)を読み込み、これをサンプリング時刻nにおける基準信号x(k,n)として記憶する。次いでステップ102に移行して、その基準信号x(k,n)と適応ディジタルフィルタW(k,m)とに基づき且つ上記(4)式に従って駆動信号y(m)を演算する。
【0056】
そして、ステップ103に移行し、駆動信号y(m)を各ラウドスピーカ7a〜7dに出力する。
次いで、ステップ104に移行し、各マイクロフォン8a〜8dから供給される残留騒音信号e(l)を読み込み、これをサンプリング時刻nにおける残留騒音信号e(l,n)として記憶する。
【0057】
次いで、ステップ105に移行し、上記(2)式に従って更新用基準信号r(k,l,m)を演算し、これをサンプリング時刻nにおける更新用基準信号r(k,l,m,n)として記憶する。ただし、このステップ105では、k=kc ,l=1〜L,m=1〜Mについて更新用基準信号r(kc ,l,m)を演算する。
【0058】
そして、ステップ106に移行し、上記(1)式に従って適応ディジタルフィルタW(k,m)のフィルタ係数W(k,m,i)を更新する。ただし、ki (=mod(k+i,K))が現時点の選択番号kc に一致するフィルタ係数W(k,m,i)のみを更新する。
次いで、ステップ107に移行し、選択番号kc が基準信号数Kに達しているか否かを判定し、ここで達していないと判定された(判定が「NO」の)場合には、ステップ108に移行して、選択番号kc をインクリメントする一方、ステップ107の判定が「YES」の場合には、ステップ109に移行して、選択番号kc を再び“1”に再設定する。
【0059】
ステップ108又はステップ109の処理を終えたら、今回のこの処理を終了し、次のサンプリング・タイミングとなるまで待機した後に、上記ステップ101に戻って上述した処理を再び実行する。
コントローラ20においてこのような処理が実行されると、各ラウドスピーカ7a〜7dには次々と駆動信号y(m)が供給されるため、車室6内にはその駆動信号y(m)に応じた制御音が発生するようになるが、制御開始直後は適応ディジタルフィルタW(k,m)のフィルタ係数W(k,m,i)が最適値に収束しているとは限らないので、ラウドスピーカ7a〜7dから発せられる制御音によって、ロード・ノイズが低減されるとはいえない。
【0060】
しかし、図3に示す処理が繰り返し実行されると、フィルタ係数更新部24がLMSアルゴリズムに従い適応ディジタルフィルタW(k,m)の各フィルタ係数W(k,m,i)を更新するので、それらフィルタ係数W(k,m,i)は最適値に向かって収束していき、車室6内に伝達されるロード・ノイズが制御音によって打ち消されるようになり、車室6内の騒音レベルが低減する。
【0061】
しかも、本実施例にあっては、更新用基準信号r(k,l,m)を演算する際に、全ての基準信号x(k)に基づいて演算を行うことなく、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号kc に基づいて一つの基準信号x(kc )についてのみ更新用基準信号r(kc ,l,m)を演算するようにしているため、ここでの計算量は全ての基準信号x(k)について更新用基準信号r(k,l,m)を演算する場合に比べて1/Kに低減する。
【0062】
また、適応ディジタルフィルタW(k,m)のフィルタ係数W(k,m,i)を更新する際にも、更新に必要な更新用基準信号r(k,l,m)が存在するフィルタ係数W(k,m,i)についてのみ更新演算を行うようにしているため、ここでの計算量も全てのフィルタ係数W(k,m,i)を更新する場合に比べて1/Kに低減する。
【0063】
このように、本実施例の構成であれば、演算負荷を大幅に低減することができるから、コントローラ20に要求される演算能力を従来よりも大幅に低くすることができる。
特に、本実施例では、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号kc に従って基準信号x(kc )を選択し、その順番に選択される基準信号x(kc )から更新用基準信号r(k,l,m)を演算するようになっているため、サンプリング時刻nにおける選択番号kc を記憶しておかなくても、現時点の選択番号kc の値に基づけば、過去のサンプリング時刻(n−i)にどの基準信号x(k)に従って更新用基準信号r(k,l,m)を演算したかを(つまり存在する更新用基準信号r(k,l,m)を)知ることができるという利点がある。
【0064】
なお、サンプリング時刻nには一部の基準信号x(kc )についてのみ更新用基準信号r(k,l,m)を演算し、これによりサンプリング時刻nにはフィルタ係数W(k,m,i)の更新演算を一部のフィルタ係数W(k,m,i)についてのみ行うこととしているが、各基準信号x(k)は繰り返し選択されるようになっているし、そもそもLMSアルゴリズム自体が、最適値に近づくと思われる方向を確率的に判断してフィルタ係数W(k,m,i)を逐次更新して、徐々に最適値に近づけるいくアルゴリズムであるため、本実施例(後述する他の実施例でも同様)のような構成としても、フィルタ係数W(k,m,i)の最適値への収束は保証される。
【0065】
ここで、本実施例では、ラウドスピーカ7a〜7dが制御音源に対応し、マイクロフォン8a〜8dが残留騒音検出手段に対応し、加速度センサ5a〜5dが基準信号生成手段に対応し、駆動信号生成部21及びステップ102の処理が駆動信号生成手段に対応し、更新用基準信号生成部23及びステップ105の処理が更新用基準信号生成手段に対応し、フィルタ係数更新部24及びステップ106の処理が適応処理手段に対応し、選択部22及びステップ107〜109の処理が選択手段に対応する。
【0066】
図4は本発明の第2実施例を示す図であって、上記第1実施例の図3と同様にコントローラ内で実行される処理の概要を示すフローチャートである。なお、全体構成等は上記第1実施例と同様であるため、その図示及び説明は省略し、上記第1実施例と同様の処理を実行するステップには同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0067】
即ち、上記第1実施例では、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号kc に従って順番に基準信号x(k)を選択するようにしているが、これでは全ての基準信号x(k)が同じ頻度で選択されることになる。従って、各基準信号x(k)間で重要度等に差がない場合には特に問題ないのであるが、差がある場合には、重要度の大きい基準信号x(k)と、重要度の小さい基準信号x(k)とが同じ頻度で選択されることになるため、必ずしも効率のよい演算が行われているとはいえなくなってしまうのである。
【0068】
そこで、本実施例では、その基準信号x(k)の重要度を考慮してその選択を行うことにより、そのような不具合を解決するようにしている。
具体的には、ステップ106からステップ201に移行し、選択番号kc を選択するに際に、基準信号x(k)の重要度を考慮することにしている。重要度としては、予め判っている場合と、制御中に判断する場合とが考えられる。前者としては、例えば、後部座席を重点的に消音したい場合に、後部座席の乗員の耳位置に近い後輪側の加速度センサ5c,5dから供給される基準信号x(k)の重要度を、前輪側のそれよりも高くして、選択番号kc を、サンプリング・タイミングの度に“1,3,4,2,3,4,1,3,4,…”という具合に設定することが考えられる。後者としては、騒音レベルの高い騒音源から供給される基準信号x(k)ほど車室6内騒音を悪化させていると仮定し、基準信号x(k)のレベルが高いほど重要度を高くして、頻繁に選択されるようにすることが考えられる。
【0069】
そして、ステップ201からステップ202に移行し、現在のサンプリング時刻nと関連して選択番号kc を記憶する。これは、選択番号kc の設定が上記第1実施例のように極めて規則的ではないため、選択番号kc を記憶しておかなければ、存在する更新用基準信号r(k,l,m)の判断ができなくなってしまいステップ106の演算に支障を来すことになるからである。ただし、上述した重要度が予め判っている場合のように、選択番号kc を規則的に設定するのであれば、特にステップ202の処理を実行しなくても、添字“k,i”の組合せから存在する更新用基準信号r(k,l,m)を判断して、更新可能なフィルタ係数W(k,m,i)を選出するようにしてもよい。ステップ202の処理を終えたら、今回のこの処理を終了し、次のサンプリング・タイミングとなるまで待機した後に、上記ステップ101に戻って上述した処理を再び実行する。
【0070】
このような構成であれば、重要度の高い基準信号x(k)ほど頻繁に選択されるため、効率のよい騒音低減制御が実行される。その他の作用効果は、上記第1実施例と同様である。
ここで、本実施例では、ステップ201の処理が選択手段に対応する。
図5及び図6は本発明の第3実施例を示す図であって、図5は上記第1実施例の図2と同様のコントローラ20の機能構成を示すブロック図、図6は上記第1実施例の図3と同様にコントローラ20内で実行される処理の概要を示すフローチャートである。なお、全体構成等は上記第1実施例と同様であるため、その図示及び説明は省略し、また、上記第1実施例と同様の構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0071】
即ち、上記第1,第2実施例では、サンプリング・タイミングの度に複数の基準信号x(k)のうちから一つの基準信号x(kc )を選択し、その選択された基準信号x(kc )に基づいて更新用基準信号r(kc ,l,m)を演算する一方、その選択状況に応じて更新されるフィルタ係数W(k,m,i)を選出して更新演算を行うことにより、演算負荷の軽減を図っているが、本実施例では、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号mc に基づいて複数のラウドスピーカ7a〜7dのうちから一つのラウドスピーカを選択し、その選択されたラウドスピーカに対応する伝達関数フィルタC^(l,mc )を用いて更新用基準信号r(k,l,mc )を演算する一方、その選択状況に応じて更新されるフィルタ係数W(k,m,i)を選出して更新演算を行うことにより、演算負荷の軽減を図るようにしている。
【0072】
具体的には、図5に示すように、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号mc に基づいて、更新用基準信号演算部23で使用する伝達関数フィルタC^(l,m)を選択する選択部31を設けている。また、その選択部31における選択状況は、フィルタ係数更新部24にも供給されるようになっていて、そのフィルタ係数更新部24は、現時点の選択番号mc に基づいて、更新されるフィルタ係数W(k,m,i)を選出するようになっている。具体的には、フィルタ係数更新部24は、下記の(6)式で求められる値mi が、現時点の選択番号mc に一致するようなフィルタ係数W(k,m,i,n)のみを更新するようになっている。
【0073】
mi =mod(m+i,M) ……(6)
なお、この(6)式は、フィルタ係数W(k,m,i,n)の添字“m”と“i”とを加算した(m+i)を、ラウドスピーカ7a〜7dの個数Mで割った余りを意味している。ただし、
mi =0
の場合には、
mi =M
とする。
【0074】
以上のような構成であるため、コントローラ20における処理の流れは図6に示すようになる。即ち、ステップ101〜104までは上記第1実施例の場合と同様であり、ステップ104からステップ301に移行し、k=1〜K,l=1〜L,m=mc について更新用基準信号r(k,l,mc )を演算し、これをサンプリング時刻nにおける更新用基準信号r(k,l,mc ,n)として記憶する。
【0075】
次いで、ステップ302に移行し、上記(1)式に従って、mi (=mod(m+i,K))が現時点の選択番号mc に一致するフィルタ係数W(k,m,i)を更新する。
そして、ステップ303〜305に移行し、上記第1実施例における図3のステップ107〜109と同様の処理を実行して、選択番号mc をインクリメントし、これで今回のこの処理を終了し、次のサンプリング・タイミングとなるまで待機した後に、上記ステップ101に戻って上述した処理を再び実行する。
【0076】
このような処理が繰り返し実行すれば、上記第1実施例と同様に、車室6内に伝達されるロード・ノイズが制御音によって打ち消されるようになり、車室6内の騒音レベルが低減する。
また、本実施例にあっても、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号mc に基づいて伝達関数フィルタC^(l,mc )についてのみ更新用基準信号r(k,l,mc )を演算するようにしているため、ここでの計算量は全ての伝達関数フィルタC^(l,m)ついて更新用基準信号r(k,l,m)を演算する場合に比べて1/Mに低減する。同様に、適応ディジタルフィルタW(k,m)のフィルタ係数W(k,m,i)の更新演算も、全てのフィルタ係数W(k,m,i)を更新する場合に比べて1/Mに低減する。
従って、本実施例の構成であっても、上記第1実施例と同様に、演算負荷を大幅に低減することができるから、コントローラ20に要求される演算能力を従来よりも大幅に低くすることができる。
【0077】
そして、本実施例でも、サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号mc に従って選択を行っているため、サンプリング時刻nにおける選択番号mc を記憶しておかなくても、現時点の選択番号mc の値に基づけば、過去のサンプリング時刻(n−i)にどの伝達関数フィルタC^(l,m)に従って更新用基準信号r(k,l,m)を演算したかを(つまり存在する更新用基準信号r(k,l,m)を)知ることができるという利点がある。
【0078】
ここで、本実施例では、更新用基準信号生成部23及びステップ301における処理が更新用基準信号生成手段に対応し、フィルタ係数更新部24及びステップ302の処理が適応処理手段に対応し、選択部31及びステップ303〜305の処理が選択手段に対応する。
なお、この第3実施例のようにラウドスピーカ7a〜7dのうちの一つを選択する構成であっても、上記第2実施例と同様に、ラウドスピーカ7a〜7dの重要度を考慮して選択を行うようにしてもよい。ラウドスピーカ7a〜7dの重要度としては、例えば後部座席を重点的に消音したいのであれば後部座席に近い側のラウドスピーカ7c,7dの重要度を高くしてその選択頻度を高くしたり(重要度固定)、或いは残留騒音のレベルの高い空間(マイクロフォン8a〜8d)に近いラウドスピーカ7a〜7dの重要度を高くしてその選択頻度を高くする(重要度可変)ことなどが考えられる。このように重要度を考慮して選択するようにすれば、上記第2実施例と同様に、効率のよい演算を行うことができる。
【0079】
図7及び図8は本発明の第4実施例を示す図であって、図7は上記第1実施例の図2と同様のコントローラ20の機能構成を示すブロック図、図8は上記第1実施例の図3と同様にコントローラ20内で実行される処理の概要を示すフローチャートである。なお、全体構成等は上記第1実施例と同様であるため、その図示及び説明は省略し、また、上記第1実施例と同様の構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0080】
即ち、本実施例では、図7に示すように、残留騒音信号e(l)のそれぞれのレベル|e(l)|を演算するレベル演算部41を有していて、選択部31は、それらレベル|e(l)|を各マイクロフォン8a〜8dの重要度として受け、レベルの高い残留騒音信号e(l)を出力するマイクロフォン8a〜8dの選択頻度が高くなるように、サンプリング・タイミングの度にそれらマイクロフォン8a〜8dのうちから一つのマイクロフォンを選択するようになっている。
【0081】
そして、その選択結果は選択番号lc として更新用基準信号生成部23に供給されるようになっていて、更新用基準信号生成部23は、その選択番号lc に対応する伝達関数フィルタC^(lc ,m)を用いて更新用基準信号r(k,lc ,m)を演算するようになっているとともに、フィルタ係数更新部24は、その選択状況に応じて更新されるフィルタ係数W(k,m,i)を選出して更新演算を行うようになっていて、これにより演算負荷の軽減を図るようにしている。
【0082】
以上のような構成であるため、コントローラ20における処理の流れは、図8に示すようになる。即ち、ステップ101〜104までは上記第1実施例の場合と同様であり、ステップ104からステップ401に移行し、各残留騒音信号e(l)のレベル|e(l)|を演算する。なお、レベル|e(l)|は、残留騒音信号e(l)の瞬時値であってもよいし、或いは所定時間内の平均値であってもい。
【0083】
次いで、ステップ402に移行し、それらレベル|e(l)|の最大値を見つけ出し、その最大値を出力したマイクロフォン8a〜8dの番号を選択番号lc として設定する。そして、ステップ403に移行し、現在のサンプリング時刻nと関連して選択番号lc を記憶する。
次いで、ステップ404に移行し、k=1〜K,l=1c ,m=1〜Mについて更新用基準信号r(k,lc ,m)を演算し、これをサンプリング時刻nにおける更新用基準信号r(k,lc ,m,n)として記憶する。
【0084】
そして、ステップ405に移行し、上記(1)式に従って、フィルタ係数W(k,m,i)を更新する。ただし、このステップ405では、各サンプリング時刻(n−i)において選択した選択番号lc に基づいて存在する更新用基準信号r(k,lc ,m,n−i)を判定し、その更新用基準信号r(k,lc ,m,n−i)が存在するフィルタ係数W(k,m,i)についてのみ、更新演算を行う。ステップ405の処理を終えたら、今回のこの処理を終了し、次のサンプリング・タイミングとなるまで待機した後に、上記ステップ101に戻って上述した処理を再び実行する。
【0085】
このような処理が繰り返し実行すれば、上記第1実施例と同様に、車室6内に伝達されるロード・ノイズが制御音によって打ち消されるようになり、車室6内の騒音レベルが低減する。
そして、本実施例にあっても、サンプリング・タイミングの度に設定される選択番号lc に基づいて伝達関数フィルタC^(lc ,m)についてのみ更新用基準信号r(k,lc ,m)を演算するようにしているため、ここでの計算量は全ての伝達関数フィルタC^(l,m)ついて更新用基準信号r(k,l,m)を演算する場合に比べて1/Lに低減する。同様に、適応ディジタルフィルタW(k,m)のフィルタ係数W(k,m,i)の更新演算も、全てのフィルタ係数W(k,m,i)を更新する場合に比べて1/Lに低減する。
【0086】
従って、本実施例の構成であっても、上記第1実施例と同様に、演算負荷を大幅に低減することができるから、コントローラ20に要求される演算能力を従来よりも大幅に低くすることができる。
そして、本実施例では、選択番号lc を、残留騒音信号e(l)のレベル|e(l)|の最大値に基づいて選択しているため、残留騒音のレベルが高いマイクロフォンほど頻繁に選択されるようになるから、上記第2実施例と同様に、効率のよい演算を行うことができる。
【0087】
ここで、本実施例では、更新用基準信号生成部23及びステップ404における処理が更新用基準信号生成手段に対応し、フィルタ係数更新部24及びステップ405の処理が適応処理手段に対応し、選択部31,レベル演算部41及びステップ401,402の処理が選択手段に対応する。
なお、上記各実施例では、適応ディジタルフィルタW(k,m)のフィルタ係数W(k,m,i)の更新演算を上記(1)式に従って行うようにしているが、上記(3)式を用いるようにしてもよい。つまり、上記各実施例で説明した手法にさらにエラースキャンニング法を加味するようにしてもよく、エラースキャンニング法を加えれば、さらなる演算量の低減が図られる。
【0088】
また、上記各実施例では、基準信号x(k),ラウドスピーカ7a〜7d及びマイクロフォン8a〜8dのうちの何れか一つをスキャンニングして更新用基準信号r(k,l,m)を演算する構成としているが、それらのうちの二つ以上をスキャンニングするようにしてもよい。
さらに、上記各実施例では、あるサンプリング時刻nにおいては、複数の基準信号x(k)(又はラウドスピーカ7a〜7d、或いはマイクロフォン8a〜8d)のうちから一つだけを選択するようにしているが、これに限定されるものではなく、二つ以上を選択して更新用基準信号r(k,l,m)を演算するようにしてもよい。
【0089】
そして、上記各実施例では、制御対象となる騒音をロード・ノイズとしているが、低減し得る騒音はこれに限定されるものではなく、例えばエアコンディショナで発生する空調騒音,吸気管や排気管で発生する吸排気騒音,ドアミラー位置で発生する風切り音等を対象としてもよい。ただし、その場合には、騒音の発生状態を表す基準信号を適宜検出する必要があり、例えば空調騒音であればエアコンプレッサの回転に同期した信号を基準信号とすればよく、吸排気騒音であればエンジンの回転に起因することからエンジンのクランク軸の回転に同期した信号を基準信号とすればよく、風切り音であればドアミラーに振動ピックアップを固定してその出力を基準信号とすればよい。
【0090】
さらに、上記各実施例では、制御対象を騒音としているが、低減の対象は騒音に限定されるものではなく、例えば、サスペンション10a〜10d及び車体間に能動的な制御力を発生する制御アクチュエータを介在させるとともに、その車体側に残留振動を検出する加速度センサ(残留振動検出手段)を配設し、そして、かかる制御アクチュエータを上記実施例と同様の基準信号x及び加速度センサの出力信号(残留振動信号)に基づいて制御すれば、各サスペンション10a〜10dから車体側に伝達される振動を低減し得る車両用能動型振動制御装置となる。
【0091】
そして、本発明の適用対象は車両に限定されるものではなく、例えば航空機や建物の室内の騒音を低減する能動型騒音制御装置や、工作機から床に伝達される振動を低減する能動型振動制御装置に適用してもよい。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1,請求項4,請求項9及び請求項12に係る発明によれば、適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新演算に必要な更新用基準信号の生成を、複数の基準信号又は複数の制御音源,制御振動源のうちから選択された一部の基準信号又は制御音源についてのみ行い、その生成された更新用基準信号に対応するフィルタ係数を更新するように構成したため、演算負荷を大幅に軽減することができるという効果がある。
【0093】
特に、請求項2,請求項5,請求項10及び請求項13に係る発明によれば、上記選択をサンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号に従って行うようにしたため、各サンプリング時刻における選択番号を記憶しておかなくても、現時点の選択番号の値に基づけば、過去のサンプリング時刻にどの基準信号に従って更新用基準信号を演算したかを知ることができるという効果がある。
【0094】
また、請求項3,請求項6,請求項11及び請求項14に係る発明によれば、重要度を考慮して選択を行うようにしたため、騒音低減制御又は振動低減制御を行う上で、効率のよい演算が行われるという効果がある。
そして、請求項7又は請求項15に係る発明にあっては、LMSアルゴリズムのフィルタ係数の更新演算に必要な更新用基準信号の生成を、複数の残留騒音検出手段,残留振動検出手段のうちから選択された一部の残留騒音検出手段,残留振動検出手段についてのみ行い、その生成された更新用基準信号に対応するフィルタ係数を更新するように構成したため、演算負荷を大幅に軽減することができるとともに、重要度を考慮して選択を行うようにしたため、騒音低減制御又は振動低減制御を行う上で、効率のよい演算が行われるという効果がある。
【0095】
さらに、請求項8又は請求項16に係る発明にあっては、残留騒音検出手段又は残留振動検出手段を選択する際の重要度として残留騒音信号又は残留振動信号のレベルを用いたため、騒音レベルの高い残留騒音検出手段又は振動レベルの高い残留振動検出手段ほど頻繁に選択されるようになるから、非常に効率のよい騒音低減制御,振動低減制御が行えるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例における全体構成図である。
【図2】第1実施例におけるコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施例のコントローラ内で実行される処理の概要を示すフローチャートである。
【図4】第2実施例のコントローラ内で実行される処理の概要を示すフローチャートである。
【図5】第3実施例におけるコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図6】第3実施例のコントローラ内で実行される処理の概要を示すフローチャートである。
【図7】第4実施例におけるコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図8】第4実施例のコントローラ内で実行される処理の概要を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 車両用能動型騒音制御装置
5a,5c 加速度センサ(基準信号生成手段)
7a,7c ラウドスピーカ(制御音源)
8a〜8d マイクロフォン(残留騒音検出手段)
20 コントローラ
21 駆動信号生成部(駆動信号生成手段)
22 選択部(選択手段)
23 更新用基準信号生成部(更新用基準信号生成手段)
24 フィルタ係数更新部(適応処理手段)
31 選択部(選択手段)
41 レベル演算部
Claims (16)
- 複数の騒音源から発せられた騒音と干渉する制御音を発生可能な制御音源と、前記複数の騒音源の騒音発生状態を検出し基準信号として出力する複数の基準信号生成手段と、前記干渉後の騒音を検出し残留騒音信号として出力する残留騒音検出手段と、前記複数の基準信号生成手段に対応する複数の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御音源を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記制御音源及び前記残留騒音検出手段間の伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留騒音信号に基づいて前記干渉後の騒音が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型騒音制御装置において、
前記複数の基準信号生成手段から供給される複数の基準信号のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された基準信号に基づいて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記複数の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新することを特徴とする能動型騒音制御装置。 - 前記適応ディジタルフィルタを有限インパルス応答型のディジタルフィルタで構成するとともに、k番(k=1,2,…,K:Kは前記基準信号生成手段の個数)の前記基準信号をx(k)、サンプリング時刻nにおける前記基準信号x(k)をx(k,n)、前記基準信号x(k)に対応した前記適応ディジタルフィルタをW(k)、前記適応ディジタルフィルタW(k)のi番目(i=0,1,2,…,I−1:Iは前記適応ディジタルフィルタW(k)のタップ数)のフィルタ係数をW(k,i)とし、前記選択手段は、前記サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号kc に従ってサンプリング時刻nに基準信号x(kc ,n)を選択し、前記適応処理手段は、前記フィルタ係数W(k,i)の添字k,iを加算した(k+i)を前記Kで割った余りmod(k+i,K)(ただし、mod(k+i,K)=0の場合は、mod(k+i,K)=Kとする。)が、前記選択番号kc に一致する前記フィルタ係数W(k,i)を更新する請求項1記載の能動型騒音制御装置。
- 前記選択手段は、前記複数の基準信号のそれぞれの重要度を考慮して前記選択を行う請求項1記載の能動型騒音制御装置。
- 騒音源から発せられた騒音と干渉する制御音を発生可能な複数の制御音源と、前記騒音源の騒音発生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の騒音を検出し残留騒音信号として出力する残留騒音検出手段と、前記複数の制御音源に対応する複数の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記複数の適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御音源を駆動する複数の駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記複数の制御音源及び前記残留騒音検出手段間のそれぞれの伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである複数の伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留騒音信号に基づいて前記干渉後の騒音が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型騒音制御装置において、
前記複数の制御音源のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された制御音源に対応した前記伝達関数フィルタを用いて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記複数の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新することを特徴とする能動型騒音制御装置。 - 前記適応ディジタルフィルタを有限インパルス応答型のディジタルフィルタで構成するとともに、m番(m=1,2,…,M:Mは前記制御音源の個数)の前記制御音源に対応する前記適応ディジタルフィルタをW(m)、前記適応ディジタルフィルタW(m)のi番目(i=0,1,2,…,I−1:Iは前記適応ディジタルフィルタW(m)のタップ数)のフィルタ係数をW(m,i)とし、前記選択手段は、前記サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号mc に従ってサンプリング時刻nにmc 番の制御音源を選択し、前記適応処理手段は、前記フィルタ係数W(m,i)の添字m,iを加算した(m+i)を前記Mで割った余りmod(m+i,M)(ただし、mod(m+i,M)=0の場合は、mod(m+i,M)=Mとする。)が、前記選択番号mc に一致するフィルタ係数W(m,i)を更新する請求項4記載の能動型騒音制御装置。
- 前記選択手段は、前記複数の制御音源のそれぞれの重要度を考慮して前記選択を行う請求項4記載の能動型騒音制御装置。
- 騒音源から発せられた騒音と干渉する制御音を発生可能な制御音源と、前記騒音源の騒音発生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の騒音を検出し残留騒音信号として出力する複数の残留騒音検出手段と、適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御音源を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記制御音源及び前記複数の残留騒音検出手段間のそれぞれの伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである複数の伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留騒音信号に基づいて前記干渉後の騒音が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型騒音制御装置において、
前記複数の残留騒音検出手段のそれぞれの重要度を考慮してそれら複数の残留騒音検出手段のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された残留騒音検出手段に対応した前記伝達関数フィルタを用いて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新することを特徴とする能動型騒音制御装置。 - 前記重要度は、前記複数の残留騒音検出手段から供給される各残留騒音信号のレベルである請求項7記載の能動型騒音制御装置。
- 複数の振動源から発せられた振動と干渉する制御振動を発生可能な制御振動源と、前記複数の振動源の振動発生状態を検出し基準信号として出力する複数の基準信号生成手段と、前記干渉後の振動を検出し残留振動信号として出力する残留振動検出手段と、前記複数の基準信号生成手段に対応する複数の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御振動源を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記制御振動源及び前記残留振動検出手段間の伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留振動信号に基づいて前記干渉後の振動が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型振動制御装置において、
前記複数の基準信号生成手段から供給される複数の基準信号のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された基準信号に基づいて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記複数の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新することを特徴とする能動型振動制御装置。 - 前記適応ディジタルフィルタを有限インパルス応答型のディジタルフィルタで構成するとともに、k番(k=1,2,…,K:Kは前記基準信号生成手段の個数)の前記基準信号をx(k)、サンプリング時刻nにおける前記基準信号x(k)をx(k,n)、前記基準信号x(k)に対応した前記適応ディジタルフィルタをW(k)、前記適応ディジタルフィルタW(k)のi番目(i=0,1,2,…,I−1:Iは前記適応ディジタルフィルタW(k)のタップ数)のフィルタ係数をW(k,i)とし、前記選択手段は、前記サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号kc に従ってサンプリング時刻nに基準信号x(kc ,n)を選択し、前記適応処理手段は、前記フィルタ係数W(k,i)の添字k,iを加算した(k+i)を前記Kで割った余りmod(k+i,K)(ただし、mod(k+i,K)=0の場合は、mod(k+i,K)=Kとする。)が、前記選択番号kc に一致する前記フィルタ係数W(k,i)を更新する請求項9記載の能動型振動制御装置。
- 前記選択手段は、前記複数の基準信号のそれぞれの重要度を考慮して前記選択を行う請求項9記載の能動型振動制御装置。
- 振動源から発せられた振動と干渉する制御振動を発生可能な複数の制御振動源と、前記振動源の振動発生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の振動を検出し残留振動信号として出力する残留振動検出手段と、前記複数の制御振動源に対応する複数の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記複数の適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御振動源を駆動する複数の駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記複数の制御振動源及び前記残留振動検出手段間のそれぞれの伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである複数の伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留振動信号に基づいて前記干渉後の振動が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型振動制御装置において、
前記複数の制御振動源のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された制御振動源に対応した前記伝達関数フィルタを用いて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記複数の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新することを特徴とする能動型振動制御装置。 - 前記適応ディジタルフィルタを有限インパルス応答型のディジタルフィルタで構成するとともに、m番(m=1,2,…,M:Mは前記制御振動源の個数)の前記制御振動源に対応する前記適応ディジタルフィルタをW(m)、前記適応ディジタルフィルタW(m)のi番目(i=0,1,2,…,I−1:Iは前記適応ディジタルフィルタW(m)のタップ数)のフィルタ係数をW(m,i)とし、前記選択手段は、前記サンプリング・タイミングの度にインクリメントされる選択番号mc に従ってサンプリング時刻nにmc 番の制御振動源を選択し、前記適応処理手段は、前記フィルタ係数W(m,i)の添字m,iを加算した(m+i)を前記Mで割った余りmod(m+i,M)(ただし、mod(m+i,M)=0の場合は、mod(m+i,M)=Mとする。)が、前記選択番号mc に一致するフィルタ係数W(m,i)を更新する請求項12記載の能動型振動制御装置。
- 前記選択手段は、前記複数の制御振動源のそれぞれの重要度を考慮して前記選択を行う請求項12記載の能動型振動制御装置。
- 振動源から発せられた振動と干渉する制御振動を発生可能な制御振動源と、前記振動源の振動発生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生成手段と、前記干渉後の振動を検出し残留振動信号として出力する複数の残留振動検出手段と、適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御振動源を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記制御振動源及び前記複数の残留振動検出手段間のそれぞれの伝達関数をモデル化したディジタルフィルタである複数の伝達関数フィルタと、前記基準信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理して更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、サンプリング・タイミングの度に前記更新用基準信号及び前記残留振動信号に基づいて前記干渉後の振動が低減するように適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えた能動型振動制御装置において、
前記複数の残留振動検出手段のそれぞれの重要度を考慮してそれら複数の残留振動検出手段のうちの一部を前記サンプリング・タイミングの度に選択する選択手段を設け、前記更新用基準信号生成手段は、前記選択された残留振動検出手段に対応した前記伝達関数フィルタを用いて前記更新用基準信号を生成し、前記適応処理手段は、前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数のうち、前記選択手段における前記選択に対応したフィルタ係数のみを更新することを特徴とする能動型振動制御装置。 - 前記重要度は、前記複数の残留振動検出手段から供給される各残留振動信号のレベルである請求項15記載の能動型振動制御装置。
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