JP3698366B2 - 水中油滴型乳化魚油 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は乳化魚油に係り、特に水中油滴型乳化魚油を形成する魚油に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ドコサヘキサエン酸(DHA)や、エイコサペンタエン酸(EPA)等の高度不飽和脂肪酸は、心筋梗塞、動脈硬化、および高コレステロール血症等の血管障害を予防するという働きを有することが疫学的、または栄養学的研究から明らかにされてきている一方、DHAは脳細胞のニューロンという神経細胞にも影響を及ぼし、記憶・学習能力を高める作用を有し、また、EPAには抗炎症作用をも有することが知られている。
【0003】
このような、DHAやEPAは、マグロ、イワシ、サバ、ニシン、カツオ等の魚油に多く含まれ、例えばマグロ油にはDHAが22%,EPAが6%も含まれているという測定データもある。従って、最近の健康食ブームの高まりを受け、消費者の間では魚油を食材として利用したいという潜在的なニーズが強まっている。
【0004】
しかし、魚油はそのままの状態では口当たりが悪く、魚臭さや味の悪さのため食材として直接使用するには問題が多い。したがって、これを乳化させペースト状にした上でマスキング等の処理を行い、風味を改善することが必要であった。
【0005】
ところが、高度不飽和脂肪酸が多量に含まれる魚油を乳化することは難しく、たとえ一旦乳化しても安定性に欠け、油分が遊離してしまうなど完全な乳化状態を長時間にわたって維持することが困難であった。
【0006】
このような問題を解決するため、例えば特許文献1では、乳化剤として卵黄の他、カゼイン、アラビアガム、ポリグリセリン脂肪酸エステルを併用することによって、固体脂含量が50%以下の油脂に係る乳化物において、長期間の冷凍保存を行った後においても乳化の安定性を失わず、かつ耐熱性をも有する乳化物の技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2では、乳化を安定化させるためにホスホリパーゼA処理卵黄とオクテニルコハク酸化澱粉を使用することにより、製品に対して10%以上の食用油脂を含有する乳化物を得ており、強力な加熱処理をしても油相分離の生じない乳化安定性に優れた乳化物であることが報告されている。
【0008】
更に、特許文献3では、長期冷凍保存後解凍しても乳化が安定で、かつ耐熱性に優れたマヨネーズ類を得るため、蛋白質とアラビアゴムおよび/またはオクテニルコハク酸処理した澱粉加水分解物を併用するという技術が開示されている。
【0009】
また、特許文献4では、多価不飽和脂肪酸類を含む油脂に係る乳化物の、乳化安定性を確保するために澱粉及び/又はその分解物と卵を特定の割合で配合するという技術が開示されている。
【0010】
【特許文献1】
「冷凍解凍耐性および耐熱性のあるマヨネーズ様乳化食品」(特開平7-194336)
【0011】
【特許文献2】
「酸性水中油型乳化調味料」(特開2002-153237)
【0012】
【特許文献3】
「水中油型乳化組成物」(特開2001-327247)
【0013】
【特許文献4】
「澱粉―卵―油脂組成物及びその用途」(特開平8-23881)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述した従来技術においては、乳化剤または乳化安定剤としていわゆる食品添加物が使用されていることと、最近の消費者はこのような食品添加物に対する警戒感を根強く持っていることから、消費者の要求を満たしたものとは言えなかった。
【0015】
また、乳化剤または乳化安定剤としていわゆる食品添加物を使用せず、卵黄や全卵等を乳化剤として使用している場合であっても、乳化の安定性が低く、更なる乳化安定性の向上が求められていた。更に、卵黄や全卵はアレルギー源性蛋白質を含むことから一部の消費者からは敬遠され、この点からも消費者の要求を満たしたものとは言えなかった。
【0016】
本発明は、以上のような観点に基づきなされたものであり、食品添加物を使用せずに高度に安定した乳化状態を維持できる水中油滴型乳化魚油を提供することを目的とするとともに、更に食品添加物の他、卵黄や全卵をも使用しないで安定した乳化状態を維持できる水中油滴型乳化魚油を提供することを目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、種々の試行錯誤を続けた結果、従来乳化安定剤として使用されていた澱粉に関し、その澱粉の種類によっては乳化安定性に及ぼす効果に有意な差があること、および従来乳化安定剤として使用されていた澱粉が、所定の配合比で乳化剤としての機能をも果たし得ること、を発見し本発明に至った。
【0018】
すなわち、請求項1に記載の発明は、魚油50〜85重量%、卵黄または全卵3〜20重量%、部分分解澱粉2〜15重量%、並びに水または/および食酢5〜30重量%の配合とすることにより水中油滴型乳化魚油を得るものである。本構成においては、魚油は乳化の際の油相を成すものであり、卵黄または全卵は乳化剤としての機能を果たし、部分分解澱粉は乳化安定剤としての機能を果たす。また、水または食酢は乳化の際の水相をなすものであり、食酢は風味改良の他、魚油の酸化防止の機能をも果たすものである。
【0019】
請求項2に記載の発明は、魚油50〜85重量%、加工澱粉3〜20重量%、並びに水または/および食酢5〜40重量%の配合比とすることにより水中油滴型乳化魚油を得るものである。本構成において、魚油は乳化の際の油相を成すものであり、加工澱粉は乳化剤、乳化安定剤、および粘度調整剤としての機能を果たす。また、水または食酢は乳化の際の水相をなすものであり、食酢は風味改良の他、魚油の酸化防止の機能をも果たすものである。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の水中油滴型乳化魚油であって、前記加工澱粉が部分分解澱粉、親油性乳化用澱粉、およびα化澱粉から成る水中油滴型乳化魚油である。本構成において、部分分解澱粉は乳化安定効果を、親油性乳化用澱粉は乳化作用を、そしてα化澱粉は粘度調整作用および長期の乳化安定性効果を主として果たす。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の水中油滴型乳化魚油であって、前記魚油が不飽和結合を4個以上有し、炭素数20〜24の高度不飽和脂肪酸を含有する水中油滴型乳化魚油である。本構成における魚油も乳化の際の油相を成すものである。
【0022】
以上述べたような構成とすることにより、請求項1,に係る発明、およびこれに従属する発明においては、食品添加物を使用しないで従来技術よりも更に優れた乳化安定性を有する水中油滴型乳化魚油を得ることができ、また、請求項2,3に係る発明、およびこれらに従属する発明においては、食品添加物の他、アレルギー源性蛋白質を含む卵黄または全卵を全く使用しないで、優れた乳化安定性を有する水中油滴型乳化魚油を得ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0024】
本発明において使用する魚油としては、マグロ油、イワシ油、カツオ油、サバ油、およびその他の魚油であり、一種類または複数種類組み合わせて使用してもよい。
【0025】
また、同じく本発明において使用する澱粉としては、タピオカ澱粉、小麦澱粉、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉等があり、これらの加工品も含まれる。そして、これらは一種類または複数種類組み合わせて使用してもよい。
【0026】
なお、澱粉の分類として部分分解澱粉、親油性乳化用澱粉、およびα化澱粉等の名称で分類することもでき、部分分解澱粉は粉飴またはマルトデキストリンとも呼ばれる。部分分解澱粉に該当するものとして、例えば松谷化学工業株式会社製のTK-16(商品名)がある。また、親油性乳化用澱粉はオクテニルコハク酸澱粉とも呼ばれ、例えば松谷化学工業株式会社製のエマルスター30A(商品名)がある。更に、α化澱粉としては、例えば松谷化学工業株式会社製のパインゴールド(商品名)が知られている。
【0027】
本発明の目的である、食品添加物を使用せずに高度に安定した乳化状態を維持できる水中油滴型乳化魚油を得るためには、魚油50〜85重量%好ましくは60〜80重量%、卵黄または全卵3〜20重量%好ましくは6〜18重量%、部分分解澱粉2〜15重量%好ましくは5〜12重量%、並びに水または/および食酢5〜40重量%好ましくは5〜30重量%の配合比とする必要がある。ここで重量%とは、最終製品重量を分母とし、各構成成分の重量を分子として百分率で表したものである。
【0028】
本発明のもう一つの目的である、食品添加物や卵黄等を使用せずに安定した乳化状態を維持できる水中油滴型乳化魚油を得るためには、魚油50〜85重量%好ましくは60〜80重量%、澱粉加工品3〜20重量%好ましくは5〜15重量%、並びに水または/および食酢5〜40重量%好ましくは5〜30重量%の配合比とする必要がある。
【0029】
魚油が85%を超えると安定的な乳化状態が得られず、50%を下回ると安定的な乳化状態は得られるものの、乳化物中の高度不飽和脂肪酸の含有量が少なくなり実用的でない。
【0030】
また、澱粉加工品が20%を超えると粘度が高くなりすぎ、また2%を下回ると乳化効果または乳化安定効果が発揮できず実用的でない。
【0031】
本発明の水中油滴型乳化魚油を製造する方法としては、特別な製造方法または製造装置を必要とするものではなく、通常の乳化製品を製造する方法および装置がそのまま使用できる。即ち、澱粉加工品と水または/および食酢を混合させた後、魚油を少しずつ加えながら攪拌を続けることにより、水中油滴型乳化魚油は得られる。このとき、コロイドミルやホモミキサー等の混和装置を使用することもできる。
【0032】
なお、澱粉加工品と水または/および食酢を混合させる際には、天日塩や調味エキス等の調味料を混合させても良い。
【0033】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明の内容を更に詳細に説明する。なお、本発明は本実施例によってなんら限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
水5.0重量%、食酢5.0重量%、生卵黄10.0重量%、澱粉加工品8.0重量%(TK-16; 松谷化学工業株式会社製の加工澱粉であり、商品名を表す。)、天日塩1.0重量%、調味エキス0.2重量%を混合した後、精製マグロ油70.8%(横関油脂工業株式会社製)を少しずつ加えながら攪拌して、水中油滴型に乳化したペースト状の乳化魚油を得た。
【0035】
この水中油滴型乳化魚油を5℃の冷蔵庫に10時間、20℃の室温に14時間放置することを5回繰り返す環境サイクル試験にかけて乳化状況の変化を評価した。その結果油相と水相の分離現象は認められず、安定した乳化状態が得られていることを確認した。またその後、同じ水中油滴型乳化魚油を100℃30分間加熱後、室温に戻すという高温環境試験を行なうと共に、これを更に3ケ月間冷蔵保存した後に乳化状況の変化を評価したところ、同じく油相と水相の分離現象は認められず、安定した乳化状態が得られていることを確認した。
【0036】
(実施例3)
水24.0重量%、混合澱粉加工品10重量%(TK-16;4.5重量%、 エマルスタ-30A;4.5重量%、パインゴールド;1重量% の混合品であり、これらはいずれも松谷化学工業株式会社製の加工澱粉であり、各々商品名を表す。)、天日塩1.0重量%、調味エキス0.2重量%を混合した後、精製マグロ油64.8%(横関油脂工業株式会社製)を少しずつ加えながら攪拌して、水中油滴型に乳化した白色のペースト状の乳化魚油を得た。
【0037】
ここで得た水中油滴型乳化魚油の乳化安定性を評価するために、実施例1で述べた評価試験方法と同じ試験方法によって評価を行ったところ、いずれの場合においても油相と水相の分離現象は認められず、安定したした乳化状態が得られていることを確認した。
【0038】
(実施例2)、および(実施例4)〜(実施例13)
表1および表2に示す配合比率によって、実施例1および3で説明した方法と同一の製造方法で水中油滴型乳化魚油を製造し、更に実施例1および3で説明したものと同一の評価方法で乳化安定性の評価を行った。その結果を表1および表2に示す。
【0039】
ここで、乳化安定性の評価結果の欄に記載する、優は油相と水相の分離現象が全く認められない状態を表し、良、可については油相と水相の分離現象がわずかに認められ、分離量が比較的少ないものを良、分離量が比較的多いものを可と表現し、実用に耐えない程度まで油相と水相の分離現象が生じたものを不可と表現してある。
【0040】
また、表中に示す数字は、各成分の重量%を意味する。
【0041】
(比較例1)〜(比較例3)
表3に、比較例1〜比較例3を示す。比較例1は魚油の代わりに大豆サラダ油を使用した場合の例であり、この場合には高度不飽和脂肪酸が含まれていないため乳化が容易であり、本発明を適用するまでもなく、乳化剤として生卵黄だけ添加した場合であっても安定な乳化状態が得られることが確認された。また、比較例3も同じく魚油の代わりに大豆サラダ油を使用した場合の例であり、この場合であっても、本発明の一つの実施形態である部分分解澱粉、親油性乳化用澱粉、およびα化澱粉の混合澱粉を使用すれば魚油の場合と同様に優れた乳化状態が得られることを確認した。比較例2は、乳化剤として生卵黄を使用するだけでは、乳化後の油分の分離が甚だしく、本発明のように魚油を安定的に乳化することができないことを示している。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したような配合比に基づき魚油を乳化することにより、食品添加物を使用せずに高度に安定した乳化状態を維持できる水中油滴型乳化魚油を得ることができるとともに、更に食品添加物の他、卵黄や全卵をも使用しないで安定した乳化状態を維持できる水中油滴型乳化魚油を得ることができる。
【0043】
【表1】
Figure 0003698366
【0044】
【表2】
Figure 0003698366
【0045】
【表3】
Figure 0003698366

Claims (3)

  1. 魚油 50 85 重量 % 、加工澱粉 3 20 重量 % 、並びに水または/および食酢 5 40 重量 % の配合比を有することを特徴とする水中油滴型乳化魚油。
  2. 請求項 1 に記載の水中油滴型乳化魚油であって、前記加工澱粉が部分分解澱粉、親油性乳化用澱粉、およびα化澱粉から成ることを特徴とする水中油滴型乳化魚油。
  3. 請求項 1 乃至 2 のいずれかに記載の水中油滴型乳化魚油であって、前記魚油が不飽和結合を 4 個以上有し、炭素数 20 24 の高度不飽和脂肪酸を含有することを特徴とする水中油滴型乳化魚油。
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