JP3700521B2 - 車道用防護柵の支柱 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車道の路肩における地覆や車道間の中央分離帯に沿って配置される車道用防護柵に用いる支柱に関する。
【0002】
【従来の技術】
車道用防護柵は、自動車が誤って衝突しても、乗用者の安全を図り且つその車体が車道の外に飛び出す事態を防ぐため、衝突エネルギを吸収すると共に破断しないことが求められる。このため、車道用防護柵の支柱は、自動車が衝突する横梁と共に或る程度の範囲で塑性変形する機能が求められる。
係る塑性変形を可能とするため、従来における車道用防護柵の支柱70は、図7(A)に示すように、車道Rの路肩における地覆T上に、アンカーボルト79により下端のベース71を固定して立設されている。支柱70はアルミニウム合金からなる一体の鋳造材で、図7(B)に示すように、ベース71上で車道R側に面した厚肉のフランジ72と、その反対側で薄肉のフランジ76と、これらの中央を直角に結合するウェブ75とからなる水平断面が略H字形状を有する。
【0003】
図7(A)に示すように、車道R側のフランジ72は、側面視で細長い略S字形状を呈し、その中間と上端に略半円形の支持部73,74を有する。この支持部73,74には、アルミニウム合金の押出形材からなる断面略楕円形の横梁78a,78bが図示しないボルト・ナットにより固定されている。尚、受け部73の上部とフランジ72との間には、補強用のステイ73aが設けてある。
また、背面側のフランジ76も側面視で細長い略S字形状を呈すると共に、下部に座屈誘発用の凹部77を有する。且つ、フランジ76の上端は、上記受け部74の一部を形成すると共に、その背面に補強用のフィン74aを有する。
【0004】
そして、図7(A)に示すように、自動車が横梁78a,78bに衝突した場合、支柱70には略水平な荷重Pが加わる。この際、支柱70は、前記背面側の凹部77近傍のウェブ75を座屈させ、全体として図7(A)で左側に傾くようにして塑性変形する。その結果、支柱70の上端は、衝突エネルギを吸収しながら少なくとも300mm左側に水平移動するが、下端のベース71は各アンカーボルト79によって地覆T上に強固に固定されている。これにより、衝突した自動車に過度の衝撃を与えず、且つ車道Rの外側に飛び出す事態を防ぐことが可能となる(特公昭60−7088号公報参照)。
【0005】
【発明が解決すべき課題】
しかしながら、上記のような支柱70は、凹部77近傍のウェブ75により生じる座屈に、衝突エネルギの吸収を依存している。このため、支柱70を例えば鋳造法により製造した場合、この製法によって生じる形状誤差により、吸収エネルギにバラ付きが生じ易い。従って、高い寸法精度を有しないと、衝突の際における塑性変形がスムースに行われない場合がある、という問題があった。
また、支柱70は、図7(A)に示すように、前記凹部77を背面側の下部に必須とし、側面視で略S字形状のデザインにせざるを得ず、防護柵を設置する場所毎の景観に応じた任意のデザインを有する支柱にし難い、という問題もあった。
更に、設計変更に際して、従来の支柱70のような構造では、エネルギ吸収を座屈に依存するため、設計時に正確なエネルギ吸収性能を予測することが困難であった。このため、試行錯誤により種々の試験体に対する破壊試験を繰り返すことにより、支柱の形状やサイズを決定する必要があった。
しかも、前記支柱70では車道間に挟まれた幅の狭い中央分離帯にて、両側の車道に沿った横梁を支持する防護柵の支柱には、適用しにくい難点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上において説明した従来の技術における問題点を解決し、衝突の際における塑性変形が常にスムースに行われると共に、設置する場所の景観に応じたデザインを容易に適用でき、且つ上述したような中央分離帯にも設置が容易な車道用防護柵の支柱を提供する、ことを課題とする。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、自動車を走行する車両が誤って横梁に衝突した際、係る横梁を支持する支柱本体が座屈変形することなく、その支柱のベースの塑性変形により、支柱全体が車道と反対側に傾くようにする、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明の車道用防護柵の支柱(請求項1)は、車道に沿った地覆又は中央分離帯上に立設され、係る地覆等に配設されたアンカーボルトにより固定されるベースと、上記ベース上に一体に形成され且つ車道側に横梁の支持部を有する支柱本体とからなり、上記支柱本体は、その水平断面が略T字形又は略H字形を呈する一つ又は一対のフランジとその中央に直角に接続するウェブとからなり、車道側に位置する上記フランジに上記横梁の支持部が形成されていると共に、上記ベースに穿孔されるアンカーボルトの貫通孔は、上記支柱本体を形成するウェブ下端の両側に対称に形成され、上記支柱本体を形成するフランジ下端の左右先端部の外側に位置しており、上記横梁に車両が衝突した際、上記支柱本体の座屈変形に依存することなく全体が車道と反対側に傾くように、上記ベースが塑性変形する、ことを特徴とする。
尚、本明細書において「支柱本体の座屈変形に依存することなく」とは、ベースの塑性変形と共に、座屈によらずに支柱本体が塑性変形して衝突エネルギを吸収するものも含んでいる。
【0008】
これによれば、横梁に車両が衝突してもベースが塑性変形することにより、支柱本体の座屈変形に依存することなく支柱全体が車道と反対側に傾くため、衝突した自動車に過度の衝撃を与えず且つ車道の外側に飛び出す事態を防ぐことが可能となる。更に、支柱本体はある程度の剛性を有すれば、高欄を設置する場所の景観に応じた任意のデザインにできると共に、車道間に挟まれた幅の狭い中央分離帯において、両側の車道に沿って各車道寄りに位置する横梁を支持する防護柵の支柱にも適用することができる。
しかも、支柱本体が前記フランジとウェブとからなり、係るフランジに横梁の支持部が形成されているため、支柱本体にある程度の剛性を与えつつ、任意のデザインを適用することも容易となる。
加えて、アンカーボルトの貫通孔が前記位置に穿孔されているため、ベースにおいて支柱本体の下端を挟んで対称に形成されるボルトの貫通孔の位置に応じて、ベースにおける車道側寄りの付近全体が持ち上がるように塑性変形するか、又は、ベースにおける車道側寄りで且つ支柱本体の下端付近のみが塑性変形するか、を設計段階から容易に設定できる。従って、上記ボルトの貫通孔の位置を選択することにより、支柱本体のデザインやサイズに応じ、且つ所要の変形量を容易に確保することも可能となる。
【0009】
また、前記ベースの板厚は、26〜34mmである、車道用防護柵の支柱(請求項2)も含まれる。
更に、前記ベースに穿孔されるアンカーボルトの貫通孔は、前記支柱本体を形成するウェブ下端の左右先端部の両外側に複数個が対称に形成され、係る貫通孔間の中心間距離は、200〜240mmである、車道用防護柵の支柱(請求項3)も含まれる。これらによれば、前記効果を具体的に得ることが可能となる。
【0010】
尚、前記ベースには、平面視で正方形を含む矩形の他、車道側を長辺とし且つ反対側を短辺とすると共に、係る短辺の両側に位置する傾斜辺が対称な平面視で台形状のものも含まれる。
また、前記防護柵の横梁は車道に沿って互いに平行な2本又は3本以上の他、支柱の上端に支持される1本のみの形態も含まれ、その数に応じて支柱の上記支持部が形成される。
【0011】
また、前記支柱の素材には、アルミニウム合金の他、鉄や鋼を用いることができ、その製造方法も金型鋳造や砂型鋳造により、支柱本体部分とベース部分とを一体に成形する他、これらを別々に成形した後で溶接により一体化する方法も含まれる。しかし、本発明の支柱の好ましい素材として、アルミニウム合金を用いることが、耐食性に優れ且つ塗装等のメンテナンスが不要であると共に、軽量なため現場での設置工事における作業性の点でも望ましい。
【0012】
そこで、前記支柱の素材であるアルミニウム合金が、Al−Mg系合金であり、具体的にはMgを2.5〜3.5wt%含む鋳物用アルミニウム合金であり、より一層具体的には、Mg2.5〜3.5wt%、Si0.1wt%以下、Fe0.20wt%以下、Ti0.05〜0.2wt%、B0.0007〜0.01wt%、Cu0.1wt%以下、Na0.001wt%以下、Be0.001〜0.005wt%を含み、上記Si,Fe,Cu,Naを除く不純物の合計が0.1wt%以下で、且つTi/Bが30以下であり、残部Alからなる靭性及び耐食性に優れた非熱処理型の鋳物用アルミニウム合金である、車道用防護柵の支柱(請求項4〜6)も本発明に含まれる。
これによれば、砂型鋳造品で15.4%、金型鋳造品で30%の伸びを有し、前述したベースの塑性変形と、支柱本体の剛性を確保しつつ破断しないという優れた靭性と共に、高い耐食性を支柱に与えることができるため、係る支柱を含む防護柵全体における耐久性を高められ、且つ乗用者等の安全を長期間に渉って図ることが可能となる。
【0013】
上記アルミニウム合金における各添加元素の範囲は、以下の理由に基づく。
Mgは非熱処理型で強度を得るのに必須の元素であり、添加量が2.5wt%未満では引張強度や耐力を十分得られなくなり、一方、添加量が3.5wt%を越えると強度が十分でも伸び及び衝撃値が低下し始めるので、これらを除いた上記範囲としたものである。Mgの好ましい範囲は2.7〜3.3wt%である。
Tiは機械的性質を改善する元素であり、添加量が0.05wt%未満では係る効果が十分に得られず、一方、添加量が0.2wt%を越えるとTi−Al系の巨大な金属間化合物が析出する等により靭性が低下し始めるので、これらを除いた上記範囲としたものである。十分な耐衝撃性を発揮し得るTiの好ましい範囲は0.10〜0.15wt%である。特に、Bが0.0007〜0.01wt%の範囲で併存していると、機械的性質が著しく改善され、本発明のような大きな支柱を鋳造した際に強度を高めることができる。しかし、Ti/B(比)が30を越えると効果が飽和乃至減衰するため、Ti/Bを30以下に限定したものである。
【0014】
Siを0.1wt%以下とし、且つFeを0.20wt%以下としたのは、これらの値を超えて添加すると、両者共に伸びと衝撃値を低下させるので、これらを防ぐべくそれぞれ上限を規定した。好ましい添加範囲は、Siでは0.05wt%以下、Feでは0.15wt%以下である。
Cuを0.1wt%以下としたのは、0.1wt%を越えて添加すると耐食性が急速に低下し始めるので、これを防ぐためである。
Naはアルミニウム合金を溶解、溶製、及び鋳造する過程で使用するフラックスから侵入するが、0.001wt%を越えると結晶粒界に偏析することにより、粒界を脆化させて靭性を著しく低下させるので、0.001wt%以下とした。
Beは溶湯中に添加されると溶解、溶製、及び鋳造工程でMgよりも優先的に大気と反応して緻密な酸化被膜を湯面上に形成し、これによりMgの酸化損失を抑制するために添加される。しかし、Beが0.001wt%未満では上記効果が十分に得られず、一方、0.005wt%を越えるとBe自体の酸化が激しくなり作業環境の上から好ましくないため、これらを除いた前記範囲とした。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下において本発明の実施に好適な形態を図面と共に説明する。
図1(A)は、本発明の支柱6,6を含む車道用防護柵1を車道R側から見た状態を示す。防護柵1は、車道Rの路肩に沿った地覆Tの長手方向に沿って立設した複数の支柱6,6と、これらに支持される上下一対の横梁2,3とからなる。
図1(A)及び(B)に示すように、上下一対の横梁2,3は、断面円形のアルミニウム合金からなる押出形材で、長手方向におけるそれぞれの継ぎ目には、隣接する横梁2又は横梁3の中空部に跨るスリーブ4をねじ止めして連結している。
【0016】
支柱6は、Mgを2.5〜3.5wt%含むAl−Mg系のアルミニウム合金の砂型鋳物からなり、図1(A)及び(B)に示すように、地覆T中でアンカーボルト9a,9cにより固定される下端のベース7と、このベース7上に一体に形成され且つ地覆T上で車道R側に向けてやや傾斜すると共に、車道R側の上端と中間に横梁2,3の支持部14,15を有する支柱本体10と、を備えている。
図1(C)に示すように、ベース7は平面視で長方形を呈し、上記ボルト9a,9cを貫通させる長円形の貫通孔8を対称に四個形成している。車道R寄りの一対の貫通孔8には、図1(A),(B)に示すように、直線形のアンカーボルト9aが貫通してナット止めされ、これらの下部に跨ってアンカープレート9bがナットで固定されている。一方、車道Rと反対側の一対の貫通孔8には、側面視で略L字形のアンカーボルト9cが貫通してナット止めされている。尚、ベース7は、地覆Tの表面上に突出するアンカーボルト9a,9cに、係る地覆Tの表面と接触させつつ固定するように配設しても良い。
【0017】
図1(B)及び(C)に示すように、支柱6の支柱本体10は、車道R側のフランジ12とその中央から直角に伸びるウェブ17とからなる断面略T字形を呈する。フランジ12には横梁2,3を受け入れる上下の円弧形の支持部14,15と、上端の水平部16とが連続して形成されている。支持部14,15では、横梁2,3が個別に図示しないボルト・ナットを用いて常法により固定される。係るフランジ12は、ベース7付近から上端に向けて車道R側に約15°程度の傾斜を付されている。このため、図1(B)に示すように、大径の横梁2がやや小径の横梁3よりも車道R側に突出して固定される。
また、ウェブ17は、フランジ12寄りの下部にこれに沿った厚肉部18を含み、且つ車道Rと反対側の下端に小さな凹み19を形成している。尚、凹み19は地覆T内にベース7を容易に埋設するために設けたものであり、本発明の支柱6において必須の要素ではない。
【0018】
車道Rを走行する自動車が誤って横梁2,3に斜め方向から衝突する場合がある。この際、図2(A)に示すように、横梁2,3を介して支柱6の本体10には図中で矢印で示す荷重Pが加わる。係る荷重Pを伴う衝突エネルギを吸収して自動車への衝撃を緩和すると共に、自動車が横梁2,3や支柱6を破断して車道Rの外側へ飛び出す事態を防ぐことが必要となる。
このため、図2(B)及び(C)に示すように、支柱6においては、支柱本体10自体は殆ど座屈変形することなく、ベース7の寄り車道Rにおける支柱本体10の下端付近が持ち上がるように塑性変形し、高さ800mmの位置において衝突前よりも水平方向に少なくとも300mmの距離Lの変位を可能としている。
係る支柱6の変形を可能とするため、その素材を高い靭性を有する前記Al−Mg系のアルミニウム合金とすると共に、ベース7の板厚とアンカーボルト9a,9cを貫通させる各貫通孔8の位置を選定する。例えば、ベース7における車道R寄りの各貫通孔8の位置を、支柱本体10寄りに近接させると、図2(D)及び(E)に示すように、ベース7における車道R寄りの長辺付近全体を、支柱本体10と共に持ち上がるように塑性変形させることができる。
【0019】
因みに、図1に示す形状を有し、且つ前記請求項6のアルミニウム合金の鋳物からなり、各部が以下の寸法等を有する支柱6を二本用意し、図示しないH鋼上にボルト(車道R側:M20×2本、反対側:M22×2本、何れもSUS304)で固定した。この状態で、各支柱6の高さ660mmの位置で車道Rと反対側に水平な静的荷重Pを加えて、高さ800mmの位置における変形量を測定した。
ベース7:320mm(長辺y)×240mm(短辺x)×35mm(厚さt)
ボルト貫通孔8の中心位置:車道R又は反対側と長辺端部から各々50mm(s)
支柱本体10:全高800mm、傾斜15°
フランジ12:幅160mm×厚さ30mm
ウェブ17:幅165mm×厚さ17mm
厚肉部18:高さ500mm×平均幅80mm×厚さ30mm
凹み19:高さ100mm×幅40mm
支柱6の重量:25.6kg
【0020】
その結果、各支柱6における最大支持力(Pmax)は、56.3kN,57.9kN、極限支持力(Pw)は、45.6kN,46.1kN、支柱6の上端(高さ800mmの位置)における水平方向の変形量が300mm時の支持力(P30)は、55.5kN,54.3kNであった。
しかも、何れの支柱6も上記300mmの変形時までに、それぞれの支柱本体10には座屈変形が生じていなかった。係る結果から、本発明の支柱6は、実用的な強度と変形能を有することが確認された。尚、上記支持力(P30)の一般的な目標値は29.4kNである。
【0021】
図3(A)は、異なる形態の支柱24を用いた防護柵20を示し、これは、車道Rの路肩に沿った地覆T上に立設した前記アルミニウム合金鋳物からなる支柱24と、これに支持される押出形材からなる上下一対の横梁21,22とを有する。
図3(A)に示すように、支柱24は、下端のベース25と、このベース25上に一体に形成され且つ車道R側に向けてやや傾斜すると共に、車道R側の上端と中間に横梁21,22の支持部29,30を有する支柱本体27と、を備えている。図3(C)に示すように、ベース25は、車道R側を長辺とし反対側に対称な一対の斜辺25aを有する平面視で略台形を呈し、車道R寄りの各アンカーボルト(図示せず)用の貫通孔26は長辺方向の両端寄りに、反対側の貫通孔26は支柱本体27の下端寄りに形成されている。
【0022】
また、支柱24の支柱本体27は、車道R側のフランジ28とその中央から直角に後方に伸びるウェブ32,34と反対側のフランジ36からなる断面略H字形を呈する。厚肉のフランジ28は横梁21,22を受け入れる上下の円弧形の支持部29,30と、上端の水平部31とを連続して形成している。支持部29,30では、横梁21,22が個別に図示しないボルト・ナットを用いて常法により固定される。上記フランジ28は、支持部30の上下で車道R側に向け数°の傾斜を付されている。このため、図3(A)に示すように、大径の横梁21とやや小径の横梁22の先端は、車道R側において同じ位置に突出する。
更に、図3(B)に示すように、ウェブ32,34は肉厚差を有し、中間のテーパ部33を介して上下に連続している。尚、フランジ28とベース25との内隅におけるウェブ34には、これよりも厚めの厚肉部35が配置されている。一方、薄肉のフランジ36は、上記テーパ部33の後方付近に屈曲部38を有する側面視で略く字形を呈し、且つその下辺39は二つの傾斜部分を有する。
【0023】
また、図3(D)は支柱24の変形形態の支柱44を含む防護柵40を示す。
防護柵40も、車道Rの路肩に沿った地覆T上に立設した前記アルミニウム合金鋳物からなる支柱44と、これに支持されるアルミニウム合金の押出形材からなる上下一対の横梁41,42とを有する。図3(D)に示すように、支柱44は、下端のベース45と、この上に一体に形成され且つ車道R側に向けてやや傾斜すると共に、車道R側の上端と中間に横梁41,42の支持部49,50を有する支柱本体47とを備えている。図3(F)に示すように、ベース45も、車道R側を長辺とし反対側に対称な一対の斜辺45aを有する平面視で略台形を呈し、車道R側の各アンカーボルト(図示せず)用の貫通孔46は長辺方向の両端寄りに、反対側の貫通孔46は支柱本体47の下端寄りに形成されている。
【0024】
また、支柱44の支柱本体47は、車道R側のフランジ48とその中央から直角に後方に伸びるウェブ52,54とからなる断面略T字形を呈する。厚肉のフランジ48は、横梁41,42を受け入れる上下の円弧形の支持部49,50と、上端の水平部51とを連続して形成している。支持部49,50では、横梁41,42が図示しないボルト・ナットを用いて常法により固定される。フランジ48は、支持部50の上下で車道R側に向けて数°ずつの傾斜を付されている。このため、図3(D)に示すように、直径が異なる横梁41と横梁42の先端は車道R側の同じ位置に突出している。更に、ウェブ52,54は互いに肉厚差を有し、図3(E)に示すように、中間のテーパ部53を介して上下に連続している。即ち、支柱44は、前記支柱24に比べ車道Rと反対側にフランジのない断面略T字形の支柱本体47を有し、且つウェブ54は一様な厚さである点で相違する。
以上のような支柱24,44によっても前述したのと同様の実用的な強度及び変形能を得ることが可能である。
【0025】
図4は更に異なる支柱60を含む車道用防護56に関する。この防護柵56は、図4(A)及び(B)に示すように、対面交通となる一対の車道R,R間に形成された中央分離体55上に、その長手方向に沿って立設される複数の支柱60と、これらの両側にて左右対称に支持される上下一対の横梁57,58とを含む。
図4(A),(B)に示すように、横梁57,58は、断面円形のアルミニウム合金からなる押出形材で、長手方向におけるそれぞれの継ぎ目では、隣接する横梁57又は横梁58の中空部に跨るスリーブ59をねじ止めして連結している。
図4(B)に示すように、支柱60は、下端のベース66と、このベース66の上に一体に形成され且つ垂直に立設すると共に、左右の各車道R側に横梁57,58の支持部63,64を有する支柱本体61と、を備えている。
【0026】
図4(C)に示すように、ベース66は、各車道R側に沿って長辺を有する平面視で長方形を呈し、各アンカーボルト69用の四つの貫通孔68は長辺方向の両端寄りに対称にして形成されている。
また、支柱60の支柱本体61は、図4(B)及び(C)に示すように、各車道R寄りの一対のフランジ62とその間の中央を結ぶウェブ65からなる断面略H字形を呈する。各フランジ62には横梁57,58を受け入れる上下の円弧形の支持部63,64を連続して形成されている。フランジ62は、支持部64の上下で肉厚が相違し、この肉厚差に応じてウェブ65の下方の幅が狭くなっている。更に、支持部63,64は、図示で奥行き方向にやや張り出すと共に、横梁57,58を個別に図示しないボルト・ナットを用いて常法により固定している。
以上のような防護柵56によれば、左右何れかの車道Rから自動車が誤って横梁57,58に衝突した場合、支柱60のベース66が前記図2(B)及び(C)に示したような塑性変形を生じ、且つこの間に支柱本体61は座屈変形することなく反対側に傾斜する。従って、衝突エネルギを吸収して自動車への衝撃を緩和すると共に、自動車が横梁57,58や支柱60を破損して反対側の車道Rへ飛び出す事態を防ぐことが可能となる。
【0027】
ここで前記図3(A)にて示した支柱24について、具体的に特性を測定した。
前記請求項6のアルミニウム合金の鋳物から成形し、各部が以下の寸法等を有する支柱24を複数本用意し、図示しないH鋼上にボルト(車道R側:M20×2本、反対側:M22×2本、何れもSUS304)で固定した。そして、高さ660mmの位置で車道Rと反対側に水平な静的荷重Pを加えて、この荷重P及び高さ800mmの位置での変形量を測定した。その結果、主としてベース25の塑性変形により、支柱24は十分な荷重に耐えると共に、水平方向に300mmの変形量が得られることが判った。
【0028】
以下において、上記支柱24に対して行った、有限要素法に基づく弾塑性解析によるシュミレーションの結果を示す。
ベース25:300mm(長辺y1)×120mm(短辺y2)×225mm(幅x)
支柱本体27:全高740mm、車道R側への傾斜5°
フランジ28:幅100mm×厚さ12〜33mm
フランジ36:幅100mm×厚さ7〜9mm
ウェブ32:幅113mm×厚さ10mm
ウェブ34:幅113mm×厚さ7mm
支持部29:半径80mm、 支持部30:半径67.5mm
【0029】
各支柱24について、図5(A)に示すように、そのベース25における車道R側のボルト貫通孔26間の中心間距離Lを200〜240mm間で変化させ、且つベース25の板厚tを26〜34mm間で変化させた状態で、前記静的荷重Pを加えた。尚、上記貫通孔26の中心は、車道R側端から75mmの距離sに統一した。その結果、図5(B),(C)に示すように、ベース25は、支柱本体27のフランジ28付近を中心に曲面状に高さ(h)分持ち上がる塑性変形を示した。
係る塑性変形した各支柱24につき、ベース25の板厚(t)を26,30,34mmと変化させ、且つ上記ボルト間距離Lを200,220,240mmと変化させた場合における、上記持ち上がり量(h)とその際における最大荷重との関係を、図5(D)のグラフに示した。
【0030】
図5(D)のグラフの結果によれば、実線で示す持ち上がり量(h)は、ボルト間距離Lが大きく且つベース25の板厚(t)が薄い程高くなる傾向にあった。
また、図5(D)中で破線で示す最大荷重は、一部を除きボルト間距離Lが小さく且つベース25の板厚(t)が厚くなる程大きくなる傾向にあると共に、全て一般的な目標される29.4kNを大きく越えていた。
更に、同じ各支柱24について、ボルト間距離Lを200,220,240mmと変化させ、且つ上記ベース25の板厚(t)を26,30,34mmと変化させた場合における、上記持ち上がり量(h)とその際における最大荷重との関係を、図5(E)のグラフに示した。
【0031】
図5(E)のグラフに示す結果によれば、実線で示す持ち上がり量(h)は、上記と同様にベース25の板厚(t)が薄く且つボルト間距離Lが大きくなる程高くなる傾向にあった。また、図5(E)中で破線で示す最大荷重も、ベース25の板厚(t)が厚く且つボルト間距離Lが小さい程大きくなる傾向にあり、且つ、全て一般的な目標される29.4kNを大きく越えていた。
以上の傾向を考慮して支柱24のベース25を設計し、前記横梁21等に自動車が衝突してもベース25が塑性変形することにより、支柱本体27が座屈変形することなく支柱24全体を車道Rと反対側に傾けさせ、衝突した自動車に過度の衝撃を与えず、且つ車道Rの外側に飛び出す事態を防ぐことが可能となる。
【0032】
次に、前記各部の寸法等の支柱本体27を有する参考形態の支柱24を複数本用意し、且つ前記と同様に固定して、高さ660mmの位置で車道Rと反対側に水平な静的荷重Pを加えて、その荷重と高さ800mmの位置での変形量とを測定した。
係る参考形態の支柱24のベース25′は、図6(A)に示すように、平面視で長方形を呈し、長辺255mm×短辺160mmで、ボルト貫通孔26は全て支柱本体27におけるフランジ28,36の両先端間の内側付近に位置する。
尚、車道R側の各ボルト貫通孔26の中心間距離Lを80mmに統一している。そして、車道R側の各ボルト貫通孔26の車道R側端からの距離(s)を55,60,65mmと変化させ、ベース25′の板厚(t)を25〜31mm間で変化させた支柱24に、前記同様に静的荷重Pを加えた。その結果、図6(B),(C)に示すように、ベース25′は、車道R寄りの付近全体が高さ(h)分持ち上がる塑性変形を示した。
【0033】
上記塑性変形した各支柱24につき、上記ベース25′の車道R側における各ボルト貫通孔26の車道R側端からの距離sを55,60,65mmと変化させ、且つベース25′の板厚(t)を25,28,31mmと変化させた場合における、上記持ち上がり量(h)とその際における最大荷重との関係を、図6(D)のグラフに示した。これによれば、実線で示す持ち上がり量(h)は、上記距離sが大きく且つベース25′の板厚(t)が薄い程高くなる傾向にあった。また、図6(D)中で破線で示す最大荷重は、上記距離sが小さく且つベース25′の板厚(t)が厚くなる程大きくなる傾向にあり、しかも、全て一般的な目標される29.4kNを大きく越えていた。即ち、前記図5(D)のグラフと同様な傾向が現れた。
【0034】
また、各支柱24について、上記ベース25′の板厚(t)を25,28,31mmと変化させ、且つベース25′における車道R側の各ボルト貫通孔26の車道R側端からの距離(s)を55,60,65mmと変化させた場合における、上記持ち上がり量(h)とその際における最大荷重との関係を、図6(E)のグラフに示した。尚、車道R側の各貫通孔26の中心間距離Lは、80mmに統一した。
図6(E)のグラフによれば、実線で示す持ち上がり量(h)は、ベース25′の板厚(t)が薄く且つ車道R側端部からの距離(s)が大きくなる程高くなる傾向にあった。また、図6(E)中で破線で示す最大荷重は、ベース25′の板厚(t)が厚く且つ上記距離(s)が小さい程大きくなる傾向にあると共に、全ての支柱24は一般的な目標される29.4kNを大きく越えていた。
【0035】
尚、以上の各支柱において、ベースの塑性変形と共に、座屈によらず支柱本体が塑性変形することにより、衝突エネルギの一部を吸収しても差し支えない。
【0036】
【発明の効果】
以上にて説明した本発明による車道用防護柵の支柱によれば、横梁に自動車が衝突してもベースが塑性変形することにより、支柱本体が座屈変形することなく支柱全体が車道と反対側に傾く。このため、衝突した自動車に過度の衝撃を与えず且つ車道の外側に飛び出す事態を防ぐことが可能となる。更に、支柱本体はある程度の剛性を有すれば、防護柵を設置する場所の景観に応じた任意のデザインにできると共に、例えば車道間における幅の狭い中央分離帯上であって、両側の車道に向けた横梁を支持する支柱を含む防護柵に適用することもできる。
しかも、支柱本体が前記フランジとウェブとからなり、係るフランジに横梁の支持部が形成されているため、支柱本体にある程度の剛性を与えつつ、任意のデザインを適用することも容易となる。加えて、アンカーボルトの貫通孔が前記位置に穿孔されているため、ベースにおいて支柱本体の下端を挟んで対称に形成されるボルトの貫通孔の位置に応じて、ベースにおける車道側寄りの付近全体が持ち上がるように塑性変形するか、又は、ベースにおける車道側寄りで且つ支柱本体の下端付近のみが塑性変形するか、を設計段階から容易に設定できる。
また、請求項4〜6のアルミニウム合金からなる支柱によれば、ベースの塑性変形と、支柱本体の剛性を確保しつつ破断しないという優れた靭性を有すると共に、高い耐食性を支柱に与えることができる。このため、係る支柱を含む防護柵全体における耐久性を高められ、且つ乗用者等の安全を長期間に渉って図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の支柱を用いた車道用防護柵の正面図、(B)は(A)中のB−B線に沿った一部に断面を含む側面図、(C)は(B)中のC−C線に沿った断面図。
【図2】(A)及び(B)は図1の支柱の変形前後の状態を示す概略図、(C)〜(E)は変形後におけるベース付近を示す概略図。
【図3】(A)は異なる形態の支柱を示す概略図、(B)は(A)中のB−B線に沿った断面図、(C)は(A)中のC−C線に沿った断面図、(D)は(A)の支柱の変形形態を示す概略図、(E)は(D)中のE−E線に沿った断面図、(F)は(D)中のF−F線に沿った断面図。
【図4】(A)は更に異なる形態の支柱を含む防護柵の平面図、(B)は(A)中のB−B線に沿った一部に断面を含む側面図、(C)は(B)中のC−C線に沿った断面図。
【図5】(A)は本発明の支柱におけるベースの平面図、(B)及び(C)は係るベースの変形後を示す概略図、(D)及び(E)は(A)のベースを有する支柱に対して行ったシュミレーションによる変形特性等を示すグラフ。
【図6】(A)は参考形態の支柱におけるベースの平面図、(B)及び(C)は係るベースの変形後を示す概略図、(D)及び(E)は(A)のベースを有する支柱に対して行ったシュミレーションによる変形特性等を示すグラフ。
【図7】(A)は従来の車道用防護柵の支柱を示す概略図、(B)は(A)中のB−B線に沿った断面図。

Claims (6)

  1. 車道に沿った地覆又は中央分離帯上に立設され、係る地覆等に配設されたアンカーボルトにより固定されるベースと、
    上記ベース上に一体に形成され且つ車道側に横梁の支持部を有する支柱本体とからなり、
    上記支柱本体は、その水平断面が略T字形又は略H字形を呈する一つ又は一対のフランジとその中央に直角に接続するウェブとからなり、車道側に位置する上記フランジに上記横梁の支持部が形成されていると共に、
    上記ベースに穿孔されるアンカーボルトの貫通孔は、上記支柱本体を形成するウェブ下端の両側に対称に形成され、上記支柱本体を形成するフランジ下端の左右先端部の外側に位置しており、
    上記横梁に車両が衝突した際、上記支柱本体の座屈変形に依存することなく全体が車道と反対側に傾くように、上記ベースが塑性変形する、
    ことを特徴とする車道用防護柵の支柱。
  2. 前記ベースの板厚は、26〜34mmである、
    ことを特徴とする請求項1に記載の車道用防護柵の支柱。
  3. 前記ベースに穿孔されるアンカーボルトの貫通孔は、前記支柱本体を形成するウェブ下端の左右先端部の両外側に複数個が対称に形成され、係る貫通孔間の中心間距離は、200〜240mmである、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の車道用防護柵の支柱。
  4. 前記支柱の素材であるアルミニウム合金が、Al−Mg系鋳物用合金である、
    ことを特徴とする請求項1乃至3に記載の車道用防護柵の支柱。
  5. 前記アルミニウム合金が、Mgを2.5〜3.5wt%含む鋳物用アルミニウム合金である、
    ことを特徴とする請求項4に記載の車道用防護柵の支柱。
  6. 前記アルミニウム合金が、Mg2.5〜3.5wt%、Si0.1wt%以下、Fe0.20wt%以下、Ti0.05〜0.2wt%、B0.0007〜0.01wt%、Cu0.1wt%以下、Na0.001wt%以下、Be0.001〜0.005wt%を含み、上記Si,Fe,Cu,Naを除く不純物の合計が0.1wt%以下で、且つTi/Bが30以下であり、残部Alからなる靭性及び耐食性に優れた非熱処理型の鋳物用アルミニウム合金である、
    ことを特徴とする請求項4又は5に記載の車道用防護柵の支柱。
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