JP3710023B2 - クラツキ型スリット装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、小角散乱装置の光学系に用いられるクラツキ型スリット装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
小角散乱装置は、試料にX線を照射したとき、試料を中心とする低角度範囲(例えば、0°〜5°程度の角度範囲)に発生する散乱X線の強度に基づいて、試料を構成する粒子の大きさ,形状や、タンパク質の結晶に見られるような結晶の長周期構造などを測定するための装置である。
この小角散乱装置の光学系には、微細幅で高分解能のX線を試料へ照射するために、クラツキ型スリット装置が用いられている。
【0003】
図2は、従来のクラツキ型スリット装置の概要を示す平面構成図である。同図に示すように、クラツキ型スリット装置は、入射ブロック20、入射スリット21、およびブリッジ22を備えている。このうち、入射ブロック20は、X線幅制限用の突き出し端部20a,20bを二箇所に有している。この入射ブロック20とブリッジ22の一側面に形成した散乱抑制部22aとは、同一平面上に位置決めされる。また、入射スリット21は、入射ブロック20と対向する位置に、同ブロック20と所要の間隔をあけて配置してある。
【0004】
X線源のX線焦点1から出射してきたX線は、まず入射ブロック20の突き出し端部20a,20bと、入射スリット21の端部21aとで幅が制限される。さらに、ブリッジ22の散乱抑制部22aによりX線の散乱を抑制して試料ホルダ2に装着した試料へと照射される。
【0005】
なお、図2に示すように、同一平面上の二箇所に突き出し端部20a,20bを有する入射Uブロックを備えたものを、特にクラツキ型Uスリット装置と称している。この他、X線幅制限用の突き出し端部を一箇所にのみ形成した入射ブロックを備えた構造のもの等もある。クラツキ型スリット装置というときは、これら各種構造のものを含んでいる。
【0006】
さて、クラツキ型スリット装置を通過してきたX線は、入射スリット21の端部21aおよびブリッジ22の散乱抑制部22aを通る平面aと、その平面aに平行でかつ入射ブロック20の突き出し端部20aに接する平面bとで囲まれた領域が最大強度(Imax)を示す。小角散乱測定においては、このX線最大強度幅xの中央位置(x/2)を測定原点(2θ=0)におき、試料からの散乱X線の角度(2θ)と強度(I)とを検出する。
【0007】
X線最大強度幅xは、測定条件に応じて変更する必要がある。従来、このX線最大強度幅xは、入射ブロック20と入射スリット21との間のスリット幅を変更することにより調整していた。すなわち、図3に示すように、入射スリット21の位置を移動させることにより、入射スリット21の端部21aおよびブリッジ22の散乱抑制部22aを通る平面a′と、その平面a′に平行でかつ入射ブロック20の突き出し端部20aに接する平面b′とで囲まれた領域の幅(X線最大強度幅x′)を広げることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来のクラツキ型スリット装置は、次のような問題があった。
クラツキ型スリット装置は、X線の減衰を防止するために、各構成要素を真空室23内に配置している。したがって、入射スリット21の移動作業にあたり、この真空室23内を開放する必要があった。このように、X線最大強度幅xの調整に際して真空室23内を開放する結果、次の測定に移るために、再び真空室23内を真空引きする必要があり、これらの作業に時間がかかるという問題があった。
【0009】
また、従来のクラツキ型スリット装置は、入射スリット21の移動によりX線最大強度幅xを調整したとき、図3に示すように、受光面3における最大強度(Imax)を示すX線の照射位置が大きくずれてしまう。
このように、X線の照射位置に大きなずれが生じた場合、測定原点(2θ=0)および試料ホルダ2の位置を補正するか、あるいは受光面3および試料ホルダ2に対して装置全体を回動させてX線の光軸調整をしなければならない。この光軸調整は、従来、入射ブロック20に形成した一方の突き出し端部20bの位置を中心に、装置全体を回動させて行なっていた。
【0010】
このように、従来のクラツキ型スリット装置は、X線最大強度幅xを調整するために、入射スリット21の移動と、測定原点(2θ=0)および試料ホルダ2の位置補正または装置全体の回動とを実施しなければならないため、作業工数が多く煩雑であった。
【0011】
この発明は、上述した問題を解決するためになされたもので、各構成要素を内蔵する真空室を開放せずにX線最大強度幅を任意に調整できるようにすることを目的とする。
またこの発明は、X線最大強度幅を調整するために必要な作業工数を減らし、作業の容易化を図ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明に係るクラツキ型スリット装置は、X線幅制限用の突き出し端部を少なくとも一箇所に形成した入射ブロックと、X線幅制限用の端部を入射ブロックに対向させるとともに入射ブロックとの間に所要の間隔を設けて配置した入射スリットと、入射ブロックの突き出し端部と同一平面上に散乱抑制部が配置され、入射ブロックと入射スリットとの間を通過してきたX線の散乱を抑制するブリッジと、を真空室の内部に備えている。
さらに、入射スリットの端部およびブリッジの散乱抑制部を通る平面と、該平面に平行でかつ入射ブロックの突き出し端部に接する平面と、で囲まれた隙間から通過するX線の強度が最大となるように構成してある。
【0013】
そして、入射ブロックとブリッジとを一体に回動自在とするとともに、これら入射ブロックおよびブリッジを真空室の外部から回動操作する構成としたことを特徴としている。
X線最大強度幅は、入射スリットの端部およびブリッジの散乱抑制部を通る平面(以下、便宜上「第1平面」ということもある)と、その平面に平行でかつ入射ブロックの突き出し端部に接する平面(以下、便宜上「第2平面」ということもある)とに挟まれた領域の幅である。これら第1,第2平面の各位置は、入射スリットを固定したままで、入射ブロックとブリッジとを一体に回動することにより任意に変化させることができる。
【0014】
これら入射ブロックおよびブリッジは、真空室の外部から回動操作する構成としてあるので、X線最大強度幅の調整に際して、真空室を開放する必要がなく、その調整作業を迅速かつ容易に行なうことができる。
この構成をより具体化するために、本発明は、入射ブロックとブリッジとを搭載して回動自在な支持手段と、該支持手段を回動させる駆動手段とを備えた構成としてもよい。
【0015】
さらに、入射ブロックとブリッジとを、ブリッジの散乱抑制部における入射ブロック寄りのエッジ位置をほぼ中心として一体に回動自在な構成とすれば、上記第1平面が回動後も同じ位置となる。したがって、受光面における最大強度(Imax)を示すX線の照射位置、特に測定原点となるX線最大強度幅の中央位置のずれが、上記第2平面の移動のみに関連して生じる結果、当該位置ずれを補正不要なまでに抑制でき、作業性が向上する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の実施形態に係るクラツキ型スリット装置の概要を示す平面構成図である。
同図に示すように、この実施形態に係るクラツキ型スリット装置は、入射ブロック10、入射スリット11、およびブリッジ12を備えている。このうち、入射ブロック10は、X線幅制限用の突き出し端部10a,10bを二箇所に有している。
【0017】
入射スリット11は板状に形成してあり、その端部(先端部)11aが入射ブロック10と対向するように配置してある。この入射スリット11は、入射ブロック10と協同して入射X線の幅を制御する機能を有している。
ブリッジ12はブロック形状をしており、その一側面が散乱抑制部12aとなっている。この散乱抑制部12aは、入射ブロック10と入射スリット11との間を通過してきたX線の散乱を抑制する機能を有している。この散乱抑制部12aは、上述した入射ブロック10の突き出し端部10a,10bと同一平面c上に位置決めしてある。
【0018】
これら各構成要素は、真空室13の内部に設けられている。真空室13の内部は、図示しない真空吸引装置によって真空吸引され、真空雰囲気を形成する。真空室13の一方の側壁には、図示しないX線源で発生したX線を入射させるX線入射窓13bが設けてある。また、真空室13の他方の側壁には、X線出射窓13aが設けてあり、このクラツキ型スリット装置により幅を制御されたX線は、このX線出射窓13aから放出される。なお、図中の1は、X線源で発生したX線の焦点位置を示している。
【0019】
この実施形態に係るクラツキ型スリット装置は、上述した入射ブロック10とブリッジ12とを、支持台14上に搭載してある。この支持台14は、ブリッジ12の散乱抑制部12aにおける入射ブロック寄りのエッジ位置Pをほぼ中心として、回動自在となっている。支持台14には真空室13の外部から操作できる駆動機構15が連結してあり、この駆動機構15により、支持台14は外部から回動操作できるようになっている。
【0020】
図2はこの実施形態に係るクラツキ型スリット装置の構造を示す平面断面図、図3は図2のA−A線断面図である。
図2に示すように、上記エッジ位置Pにはボールベアリング16が配設してあり、支持台14はこのボールベアリング16に支持されて回動自在となっている。駆動機構15は、マイクロメータヘッドに用いられる精密ねじ機構を利用した構造となっており、スリーブ15aが真空室13の壁面に固定され、シンブル15bの回転操作により、スピンドル15cが軸方向に直線移動する。シンブル15bは、真空室13の外部に露出している(図2,図3参照)。
スピンドル15cの先端は支持台14に当接している。一方、支持台14におけるスピンドル15cの当接面と反対の面には、圧縮ばね17が当接しており、この圧縮ばね17とスピンドル15cとにより、支持台14の自由な回動が規制されている。
以上の構成により、支持台14はスピンドル15cの直線移動に伴いエッジ位置Pを略中心に回動する。
【0021】
上述した構成のクラツキ型スリット装置は、小角散乱装置のX線発生部に組み込まれ、試料ホルダ2に装着した試料に対して、微小幅に制御したX線を照射することができる。
すなわち、X線源から出射してきたX線は、まず入射ブロック10の突き出し部10a,10bと入射スリット11の端部11aとで幅が制限される。さらに、ブリッジ12の散乱抑制部12aにより、X線の散乱を抑制して試料ホルダ2に装着した試料へと照射される(図1参照)。
【0022】
ここで、クラツキ型スリット装置を通過してきたX線は、入射スリット11の端部11aおよびブリッジ12の散乱抑制部12aを通る平面(第1平面)aと、その第1平面aに平行でかつ入射ブロック10の突き出し端部10aに接する平面(第2平面)bとで囲まれた領域が最大強度(Imax)を示す。小角散乱測定においては、このX線が最大強度を示す領域の幅(X線最大強度幅)の中央位置を測定原点(2θ=0)におき、試料からの散乱X線の角度(2θ)と強度(I)とを検出する。
【0023】
この実施形態に係るクラツキ型スリット装置では、X線最大強度幅を、駆動機構15を操作することにより簡易且つ高精度に調整することができる。駆動機構15の操作は、既述したとおり真空室13の外部から行なえるので、X線最大強度幅の調整にあたり、真空室13を開放しなくてすむ。
【0024】
駆動機構15を操作して支持台14を、ブリッジ12の散乱抑制部12aにおける入射ブロック寄りのエッジ位置Pをほぼ中心として回動させると、入射ブロック10に形成した突き出し端部10aの位置が変動する。一方、入射スリット11は固定したままなので、その端部11aの位置は変動しない。さらに、ブリッジ12の散乱抑制部12aにおける入射ブロック寄りのエッジは、回動中心にあることからこのエッジの位置Pも変動しない。したがって、入射スリット11の端部11aおよびブリッジ12の散乱抑制部12aを通る第1平面aは変動せず、入射ブロック10の突き出し端部10aに接する第2平面b′のみが変動することになる。
【0025】
このようにしてX線最大強度幅(第1平面と第2平面との間の幅)を変化させることができる。このとき、第1平面aは固定したままなので、X線最大強度幅を変化させても、測定原点(2θ=0)であるX線最大強度幅の中央位置が大きくずれることはない。
【0026】
すなわち、変更前のX線最大強度幅xの中央位置(x/2)と、変更後のX線最大強度幅x′の中央位置(x′/2)とのずれは、(x′−x)/2となる。そして、小角散乱測定に用いるX線の最大強度幅(x,x′)は、もともと0.05mm以下の微小幅であるため、受光面3や試料ホルダ2において、この程度のずれが生じても測定結果に影響はない。したがって、既述した従来のクラツキ型スリット装置のように、測定原点(2θ=0)および試料ホルダ2の位置補正や、X線の光軸調整を行なう必要がなく、作業が容易となる。
【0027】
なお、図1では、X線最大強度幅の変更前後の状態を明確に表現するため、入射ブロック10およびブリッジ12の回動量を大きく示しているが、実際の小角散乱測定において必要とされる当該回動量は、例えば、ブリッジ12のエッジ位置Pと入射スリット11との間の距離が約140mm、ブリッジ12のエッジ位置Pと入射ブロック10の突き出し端部10aとの間の距離が約70mmとして、1°以内の微小角度である。
【0028】
また、上述した実施形態では、入射ブロック10の二箇所に突き出し端部10a,10bを形成した構造を示したが、一箇所にのみ突き出し端部を有する入射ブロックを用いたクラツキ型スリット装置にも、この発明は同様に適用することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したようにこの発明によれば、入射ブロックとブリッジとを一体に回動自在とするとともに、これら入射ブロックおよびブリッジを真空室の外部から回動操作する構成としたので、真空室を開放せずにX線最大強度幅を任意に調整でき、その調整作業を迅速かつ容易に行なうことができる。
またこの発明は、入射ブロックと前記ブリッジとを、ブリッジの散乱抑制部における入射ブロック寄りのエッジ位置をほぼ中心として一体に回動自在としたので、X線最大強度幅を調整するために必要な作業工数を減らし、作業の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態に係るクラツキ型スリット装置の概要を示す平面構成図である。
【図2】この発明の実施形態に係るクラツキ型スリット装置の構造を示す平面断面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】従来のクラツキ型スリット装置の概要を示す平面構成図である。
【図5】従来のクラツキ型スリット装置の問題点を説明するための平面構成図である。
【符号の説明】
1:X線焦点 2:試料ホルダ
3:受光面 10:入射ブロック
10a,10b:突き出し端部
11:入射スリット 11a:端部
12:ブリッジ 12a:散乱抑制部
13:真空室 14:支持台
15:駆動機構 16:ボールベアリング
17:圧縮ばね
Claims (3)
- X線幅制限用の突き出し端部を少なくとも一箇所に形成した入射ブロックと、X線幅制限用の端部を前記入射ブロックに対向させるとともに前記入射ブロックとの間に所要の間隔を設けて配置した入射スリットと、前記入射ブロックの突き出し端部と同一平面上に散乱抑制部が配置され、前記入射ブロックと入射スリットとの間を通過してきたX線の散乱を抑制するブリッジと、を真空室の内部に備え、
前記入射スリットの端部および前記ブリッジの散乱抑制部を通る平面と、該平面に平行でかつ前記入射ブロックの突き出し端部に接する平面と、で囲まれた隙間から通過するX線の強度が最大となるクラツキ型スリット装置であって、
前記入射ブロックと前記ブリッジとを一体に回動自在とするとともに、これら入射ブロックおよびブリッジを前記真空室の外部から回動操作する構成としたことを特徴とするクラツキ型スリット装置。 - 請求項1記載のクラツキ型スリット装置において、
前記入射ブロックと前記ブリッジとを、前記ブリッジの散乱抑制部における入射ブロック寄りのエッジ位置をほぼ中心として一体に回動自在としたことを特徴とするクラツキ型スリット装置。 - 請求項1または2記載のクラツキ型スリット装置において、
前記入射ブロックと前記ブリッジとを搭載して回動自在な支持手段と、該支持手段を回動させる駆動手段とを備えたことを特徴とするクラツキ型スリット装置。
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