JP3746997B2 - エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」と略称する)樹脂組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
EVOHは、ガスバリヤー性、耐油性、保香性、透明性などに優れている。この特性を利用して、EVOHは、フィルム、シート、ボトルなどに成形され、食品包装用途などで利用されている。
【0003】
従来から、EVOH以外の各種成分を配合して、EVOHの各種特性を改善することが行われている。押出機内においてEVOHに各種成分を配合することも提案されている。例えば、特開平5−93092号公報には、デンプンとEVOHとをそれぞれ溶融した状態で混合してデンプンの分散性などを改善する方法が記載されている。同公報に記載された実施形態では、デンプンとグリセリンとの混合物を二軸押出機に供給して170℃で加熱溶融し、この二軸押出機のサイド供給口から、単軸押出機で210℃で加熱溶融したEVOHを供給し、二軸押出機内で両者が混練されている。
【0004】
押出機に乾燥状態のEVOHを導入すると、上記のように高温で溶融する必要が生じる。特開平5−9334号公報に開示されている方法では、含水状態のEVOHが用いられている。同公報には、含水率が20〜60重量%のEVOHペレットと生デンプン(含水率12%のコーンスターチ)とをヘンシェルミキサーに投入して混合し、この混合物をベント付き二軸押出機に供給して120℃で混練し、ストランド状に溶融押出し、このストランド状凝固物をペレタイザーを用いてペレット化する旨の記載がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
EVOHの用途の多様化に伴って、EVOHの製造ラインでは、通常銘柄を製造しながら、生産性を落とすことなく、適宜、必要な添加剤をさらに配合した特殊銘柄を製造することが求められている。上記のように、配合する成分の特性を考慮した混練方法については従来から検討されている。しかし、少量多品種生産の要請に適した混練方法は未だ提案されていない。
【0006】
そこで、本発明は、少量多品種のEVOH樹脂組成物の製造に適した方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のEVOH樹脂組成物の製造方法は、第1の押出機から押出された含水率が5〜40重量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(成分A)の少なくとも一部と、添加成分(成分B)とを第2の押出機に導入し、溶融混練してから吐出することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1の押出機においてEVOHの含水率を5〜40重量%に調整しているため、第1の押出機から得られるEVOHを安定化できる(例えばストランドの発泡やストランド切れの多発を抑制できる)とともに、第2の押出機への原料供給も円滑に行うことができる。このため、第2の押出機における押出し安定性が向上し、この押出機から得られるペレットの品質および形状を安定化できる。こうして、第1および第2の押出機を用いた一連の押出し工程、ならびにペレットを用いたその後のEVOH成形品製造工程を安定化させ、成形品の品質を改善できる。複数の押出機を用いる本発明によれば、例えば、第1の押出機から得た成分Bを配合しないEVOHと、第2の押出機から得た成分Bを配合したEVOH樹脂組成物とを安定して得ることができるから、これらを用いて銘柄の異なるEVOH成形品を効率的に製造できる。本発明によれば、銘柄切り換えの際のロスも回避できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本発明の一形態では、第1の押出機から押出された含水率が5〜40重量%のEVOH(成分A)の一部を成分Bととともに第2の押出機に導入し、第2の押出機内で溶融混練してから吐出することにより、第1の押出機から得た(成分Bが配合されていない)EVOHの残部と、第2の押出機から得た(成分Bが配合された)EVOH樹脂組成物とを同時に得ることができる。「第2の押出機」として複数の押出機を準備し、これら押出機にそれぞれ別の成分(成分B1,B2,B3・・・・)を導入して、さらに多品種の製造を行ってもよい。この場合は、第1の押出機から得られたEVOHのすべてを、(複数の)第2の押出機に配分して、異なる成分B1,B2,B3・・・・が配合された複数銘柄のEVOH樹脂組成物を得ることとしてもよい。
【0010】
本発明の別の一形態では、第1の押出機に、成分Aおよび成分B以外の成分(成分C)が導入される。例えば、第1の押出機においてEVOH(成分A)と成分Cとを溶融混練し、第1の押出機から含水率が5〜40重量%となるように押出し、押出された樹脂組成物の一部を成分Bととともに第2の押出機に導入し、第2の押出機内で溶融混練してから吐出することにより、第1の押出機から得た(成分Cが配合された)EVOH樹脂組成物の残部と、第2の押出機から得た(成分Bおよび成分Cが配合された)EVOH樹脂組成物とを得ることができる。従来は、専ら、単一の押出機において複数の成分を導入することが検討されてきた。しかし、単一の押出機に多様な機能を付加しようとすると、スクリュー径を大きくし、スクリュー径(D)に対するスクリュー長さ(L)の比率(L/D)も大きくしなければならない。これに対し、上記方法では、複数の押出機を用いて成分を配合するため、上記L/Dを過度に大きくする必要がなく、製造設備上のコスト増を回避し、設備選択の幅を広げることもできる。
【0011】
第1の押出機では、水を供給するか、水を除去するか、あるいは水の供給と水の除去とを組み合わせることによって、押出機内の樹脂の含水率を調整するとよい。この場合、水は、液体として供給し、除去することが好ましい。例えば、押出機内の圧力調整のために設けられるベント口からも水蒸気として水分は除去されるが、所定範囲の含水率の樹脂を効率的に得るには、少なくとも、脱液部からの脱水を行うことが好ましい。後述するように、第1の押出機には、洗浄液が導入されることもある。また、成分の配合が水溶液として行われることもある。これら洗浄液や水溶液を押出機に供給する場合には、各液に含まれる水を効率的に排出するために、特に脱液部の配置が望まれる。なお、水の供給および/または除去に際しては、供給、除去の回数、順序は問わない。
【0012】
上記のように、第1の押出機には、必要に応じて、成分Aおよび成分B以外の成分(成分C)が導入される。成分Cは、特に制限されないが、通常銘柄に必要とされる汎用性が高い添加剤から選択することが好ましい。成分Cは、通常の製造形態では、カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種が好適である。もっとも、成分Bの代表例として後述する各種樹脂を成分Cとして用いても構わない。
【0013】
第2の押出機に導入する成分Bについても特に制限はなく、成分Cの添加の有無、添加する場合にはその種類に応じて、適宜定めればよい。上記カルボン酸などを成分Bとして用いても構わない。
【0014】
成分Bおよび成分Cとしては、各種樹脂や、可塑剤、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、結晶核剤などのプラスチック添加剤が例示できる。プラスチック添加剤の中では、酸化防止剤が好適であり、酸化防止剤としては、無機化合物のハイドロタルサイト系化合物、有機化合物のヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、リン系酸化防止剤などが好適である。成分Bおよび成分Cは、それぞれ単一種である必要はなく、各押出機に複数種の成分を導入してもよい。
【0015】
また、無機物も成分Bとして使用できる。無機物としては、例えばガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズなどのガラス系フィラー;炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウムなどの金属塩;アルミナ、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、ゼオライトなどの金属酸化物;ワラストナイト;カーボンファイバー;無機層状化合物;などが挙げられる。無機層状化合物とは、原子が共有結合などによって強く結合して密に配列したシート状物を形成し、これらシート状物がファンデルワールス力、静電気力などによってほぼ平行に積み重なった構造を有する化合物をいい、例えば、タルク、マイカ、カオリナイト、モンモリロナイト、バーミキュライトなどが該当する。無機層状化合物は、天然品であっても合成品であってもよい。成分Bとして、成分Cの代表例として後述するカルボン酸などの添加剤を用いても構わない。さらに、上記添加剤を添加する方法としては,成分A以外の樹脂組成物に予めブレンドしたマスターバッチとしてブレンドする方法も好適である。
【0016】
成分Bとしては、特に樹脂が好適である。中でも、EVOHと相容性のある樹脂、EVOHと反応する官能基を有する樹脂またはEVOHに微分散する樹脂が好ましい。
【0017】
EVOHと相容性のある樹脂としては、6−ナイロン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびその部分ケン化物、デンプンなどが挙げられる。また、成分AのEVOHと組成または分子量が異なるEVOHを成分Bとして用いてもよい。
【0018】
EVOHと反応する官能基を有する樹脂としては、無水マレイン酸などのカルボン酸誘導体で変性したポリオレフィン、アイオノマーとポリアミドの溶融混合物、ボロン酸変性樹脂などが挙げられる。
【0019】
EVOHに微分散する樹脂としては、コアシェル構造を有するポリマー微粒子を挙げることができる。
【0020】
これら樹脂の中でも、ボロン酸変性樹脂については、本発明の適用が特に適している。ボロン酸変性樹脂は、EVOHの水酸基との反応により増粘するため、樹脂組成物の粘度コントロールが特に重要となるためである。従来、一般に行われてきたように、乾燥状態の樹脂同士を溶融混練する方法では、特に比較的多量のボロン酸変性樹脂をEVOHに配合した場合に、増粘斑が発生しやすく、結果としてストランド切れ、カットミスなどの不具合が発生しやすくなる。含水状態のEVOHとボロン酸変性樹脂とを溶融混練し、樹脂組成物の含水率を調整すると、上記不具合を抑制できる。
【0021】
ここで、ボロン酸変性樹脂とは、ボロン酸基および水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基(以下単に「ホウ素含有基」と略称する)から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する樹脂をいう。すなわち、ボロン酸基およびホウ素含有基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基が、ホウ素−炭素結合により主鎖、側鎖または末端に結合した樹脂である。
【0022】
ホウ素−炭素結合の炭素は、後述する樹脂のベースポリマーに由来するもの、あるいはベースポリマーに反応させるホウ素化合物に由来するものである。ホウ素−炭素結合の好適な例としては、ホウ素と主鎖、末端または側鎖のアルキレン基との結合が挙げられる。
【0023】
ボロン酸基とは、下記式(I)で示されるものである。
【0024】
【化1】
【0025】
ホウ素含有基としては、水の存在下で加水分解を受けて上記式(I)で示されるボロン酸基に転化しうるものであれば、特に制限はないが、代表例として下記一般式(II)で示されるボロン酸エステル基、下記一般式(III)で示されるボロン酸無水物基、下記一般式(IV)で示されるボロン酸塩基が挙げられる。
【0026】
【化2】
【0027】
【化3】
【0028】
【化4】
【0029】
ただし、上記式中、X,Yは水素原子、脂肪族炭化水素基(例えば炭素数1〜20の直鎖状、分岐状アルキル基またはアルケニル基)、脂環式炭化水素基(例えばシクロアルキル基、シクロアルケニル基)、または芳香族炭化水素基(例えばフェニル基、ビフェニル基)を表し、X,Yは同じ基でもよいし、異なっていてもよい。また、XとYは結合していてもよい。ただし、X,Yがともに水素原子である場合は除く(式(I)と同一)。また、R1,R2,R3は、上記X,Yと同様、水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す。ここでも、R1,R2,R3は同じ基でもよいし、異なっていてもよい。また、Mはアルカリ金属を表す。なお、上記のX,Y,R1,R2,R3には、他の基、例えばカルボキシル基、ハロゲン原子などが含まれていてもよい。
【0030】
一般式(II)で示されるボロン酸エステル基の具体例としては、ボロン酸ジメチルエステル基、ボロン酸ジエチルエステル基、ボロン酸ジプロピルエステル基、ボロン酸ジイソプロピルエステル基、ボロン酸ジブチルエステル基、ボロン酸ジヘキシルエステル基、ボロン酸ジシクロヘキシル基、ボロン酸エチレングリコールエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル基(ボロン酸1,2−プロパンジオールエステル基、ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基)、ボロン酸トリメチレングリコールエステル基、ボロン酸ネオペンチルグリコールエステル基、ボロン酸カテコールエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基、ボロン酸トリメチロールエタンエステル基などが挙げられる。また、ホウ素含有基とは、さらに詳しくは、樹脂を、水または水と有機溶媒(トルエン、キシレン、アセトンなど)との混合液体中で、反応時間10分〜2時間、反応温度25℃〜150℃の条件下で加水分解した場合に、ボロン酸基に転化しうる基を意味する。
【0031】
官能基の含有量は、特に制限はないが、0.0001〜1meq/g(ミリ当量/g)が好ましく、0.001〜0.1meq/gがさらに好ましい。
【0032】
ボロン酸基およびホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する樹脂のベースポリマーを構成するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、3−メチルペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類で代表されるオレフィン系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、t−ブトキシスチレンなどのスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンなどビニルナフタレン類などのビニル基含有芳香族化合物;インデン、アセナフチレンなどビニレン基含有芳香族化合物などに例示されるビニル芳香族化合物;ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエンなどに代表される共役ジエン化合物などが挙げられる。
【0033】
ベースポリマーはこれら単量体の一種、二種または三種以上からなる重合体として使用される。これらのベースポリマーでは、特にエチレン系重合体{超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体の金属塩(Na,K,Zn系アイオノマー)、エチレン−プロピレン共重合体}およびビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体が好適である。
【0034】
ボロン酸基およびホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する樹脂の代表的製法について説明する。この官能基を有する樹脂は、窒素雰囲気下で炭素−炭素二重結合を有する樹脂にボラン錯体およびホウ酸トリアルキルエステルを反応させることによって、ボロン酸ジアルキルエステル基を有する樹脂を得た後、水またはアルコール類を反応させることによって得ることができる。この製法において原料として末端に二重結合を有する樹脂を使用すれば、末端にボロン酸基またはホウ素含有基を有する樹脂が得られ、側鎖または主鎖に二重結合を有する樹脂を原料として使用すれば、側鎖にボロン酸基またはホウ素含有基を有する樹脂が得られる。
【0035】
原料の二重結合を有する樹脂の代表的製法としては、1)通常のオレフィン系重合体の末端に微量に存在する二重結合を利用する方法;2)通常のオレフィン系重合体を無酸素条件下、熱分解し、末端に二重結合を有するオレフィン系重合体を得る製法;3)オレフィン系単量体とジエン系重合体の共重合によりオレフィン系単量体とジエン系単量体との共重合体を得る製法;4)ビニル芳香族化合物と共役ジエン系単量体との共重合体を得る方法;などが挙げられる。
【0036】
1)については、公知のオレフィン系重合体の製法を用いることができるが、特に、連鎖移動剤として水素を用いず、重合触媒としてメタロセン系重合触媒を用いる製法(例えば、DE4030399)が好ましい。2)については、公知の方法(例えば、US2835659,3087922)によりオレフィン系重合体を窒素雰囲気下や真空条件下など無酸素条件下で300℃〜500℃の温度で熱分解することによって得られる。3)については公知のチーグラー系触媒を用いたオレフィン−ジエン系重合体の製法(例えば、特開昭50−44281号公報、DE3021273)を用いることができる。
【0037】
上記1)および2)の方法で得られた二重結合を有するオレフィン系重合体を原料とすることで、末端にボロン酸基およびホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基が結合したポリオレフィンが得られる。また、3)の方法で得られた二重結合を有するオレフィン系重合体および4)の方法で得られるビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物からなる共重合体を原料とすることで、上記官能基が側鎖に結合した樹脂が得られる。
【0038】
ボラン錯体としては、ボラン−テトラヒドロフラン錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラン−ピリジン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体、ボラン−トリエチルアミン錯体などが好ましく、ボラン−トリエチルアミン錯体およびボラン−トリメチルアミン錯体がより好ましい。ボラン錯体の仕込み量は、ベースポリマーの二重結合に対し、1/3〜10当量が好ましい。ホウ酸トリアルキルエステルとしては、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリブチルボレートなどのホウ酸低級アルキルエステルが好ましい。ホウ酸トリアルキルエステルの仕込み量は、オレフィン系重合体の二重結合に対し、1〜100当量が好ましい。溶媒は、特に使用する必要はないが、使用する場合は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリンなどの飽和炭化水素系溶媒が好ましい。
【0039】
導入する反応は、反応温度25℃〜300℃、好ましくは100〜250℃、反応時間1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間として行うのがよい。水またはアルコール類を反応させる条件としては、通常、トルエン、キシレン、アセトン、酢酸エチルなどの有機溶媒を反応溶媒として用い、水またはメタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1.3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコール類をボロン酸基に対し、1〜100当量以上の大過剰量を用い、25℃〜150℃の温度で1分〜1日程度反応を行うことによって得られる。
【0040】
これらボロン酸変性樹脂のなかでも、EVOH(成分A)と配合されるボロン酸変性樹脂としては、ポリオレフィンをベースポリマーとする樹脂が好ましく、ポリエチレンをベースポリマーとすることがより好ましい。また、EVOHとのブレンド時におけるゲル・ブツなどの発生を抑制しつつ、良好な耐衝撃性を得るためには、末端にボロン酸基およびホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する樹脂を用いることが好ましい。
【0041】
成分Bとして好ましい別の樹脂は、ポリウレタンである。ポリウレタンを、従来の通常の方法、すなわち乾燥状態のEVOHと溶融混練する方法により配合すると、押出機内で増粘斑が発生し、ストランド切れやカットミスなどの不具合が生じる。このため、これまで押出機内でポリウレタンを溶融混練することはできなかった。しかし、含水状態のEVOHとポリウレタンとを溶融混練して含水率を調整すると、上記不具合を抑制できる。
【0042】
さらに、ポリビニルアルコール、デンプン、エチレン含有量が少ないEVOHのように熱分解温度と融点との差が小さい樹脂の場合、乾燥状態のEVOHと溶融混練すると、ポリビニルアルコールやデンプンが押出機の中で熱分解し、発泡、着色などが発生し、安定に押出すことが困難であった。これらの樹脂は、水分の存在によって融点が低下し、比較的低温で溶融混練が可能となるため、やはり成分Bに適している。
【0043】
成分Bは、これら例示した樹脂に限られず、例えばEVOHとは非相容であるが、ブレンドすることによりEVOHに柔軟性を付与できるエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物、ポリエチレン、アモルファスナイロン、6−12ナイロン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体などを用いることもできる。
【0044】
成分Bは、融点および流動開始温度の少なくとも一方が170℃以下であることが好ましい。押出機内の温度で溶融状態となり、含水状態のEVOHに対して良好な分散性を示すからである。融点および流動開始温度が170℃を超えると、押出機内で未溶融部分が発生し、均一な分散状態が得られず、成形不良または外観不良を誘発する場合がある。
【0045】
ここで、流動開始温度とは、フローテスタ(定荷重押し出し形細管式レオメータ)を使用し、試験時間の経過と共に昇温しながら試料の流動性を連続的に測定し、試料の固体域よりゴム弾性域を経て流動域に到達したときの温度である。
【0046】
EVOH100重量部に対する成分Bの配合量は、0.01〜200重量部が好適である。成分Bが樹脂である場合は、1〜200重量部が好適であり、5〜100重量部がさらに好適である。樹脂の配合量が1重量部未満であると、樹脂配合の効果の発現が十分に得られない場合が多い。具体的には、ボロン酸変性樹脂の場合には柔軟性が十分に向上せず、ポリビニルアルコールやデンプンの場合には易崩壊性が十分に得られない場合が多い。一方、樹脂の配合量が200重量部を超えると、ガスバリア性が不十分となる場合が多い。成分Bが酸化防止剤である場合は、配合量の好適範囲は0.01〜5重量部である。0.01重量部未満であると酸化防止効果が発現しにくく、5重量部を超えると成形品から酸化防止剤がブリードアウトしたり、押出機への噛み込み性が悪化したりする場合がある。
【0047】
以下、図1および図2を参照して押出機内でのEVOHの溶融および混練についてさらに具体的に説明する。図1および図2には、本発明の一実施形態の説明を容易にするために、2軸押出機のシリンダとその内部に配置されるスクリューとを並べて示す。
【0048】
図1に示した第1の押出機の原料供給部1から供給されたEVOHは、加熱され、溶融ないし半溶融状態となってフルフライトスクリュー部7aによって前方(図示右方向)へと送られる。EVOHは、脱液部2において過剰の水分が絞られ、逆フライトスクリュー部8aで混合される。さらに、EVOHは、フルフライトスクリュー部7bに送られ、ベント口3から水蒸気が放出されて押出機内の圧力ともに樹脂の含水率がさらに調整される。
【0049】
引き続いて、EVOHは、逆フライトスクリュー部8bに送られ、必要に応じて、微量成分添加部4から供給された成分C(例えばカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種)と溶融状態で混練される。脱液されてはいるが、添加剤と混練されるEVOHは依然として含水状態にある。なお、EVOHの温度は、さらに後段の最終のフルフライトスクリュー部7cに配置された温度センサー5により測定した温度に基づいて制御される。
【0050】
第1の押出機から押し出されるEVOH樹脂組成物の含水率は、5〜40重量%に制御される。含水率が高すぎると樹脂と樹脂に含まれる水とが相分離を起こしやすくなり、押出機吐出直後のストランドが発泡しやすくなる。一方、含水率が低すぎると、樹脂の粘度が増大し、せん断発熱による熱劣化の原因となったり、押出機に過剰な負荷がかかって故障の原因となったりする。含水率が適切に調整されていないと、第2の押出機にペレットして供給する場合には、ペレットが表面水によってブロッキングすることもある。含水率を上記範囲内とすると、第2の押出機における押出安定性が向上し、この押出機から得られるペレットの品質および形状を安定化できる。
【0051】
含水率は、実施形態に応じ、押出機への水(洗浄液、添加剤に含まれる水を含む)の供給量、あるいは押出機からの水の排出量を適宜制御して調整すればよい。
【0052】
こうして得られたEVOH樹脂組成物は、そのまま第2の押出機に導入してもよいし、切断してペレットとしてから第2の押出機に供給してもよい。ただし、第1の押出機から得たEVOHの一部を、第2の押出機を経由せずに成形品へと加工する工程を併用する場合には、切断して得たペレットの一部を第2の押出機に供給し、残部を後述する乾燥工程にまわすとよい。図示した形態では、図2に示した第2の押出機の原料供給部11から、第1の押出機から吐出したEVOH樹脂組成物(成分Cが添加された成分A)の少なくとも一部とともに、成分Bが導入される。以下、フルフライトスクリュー部17a、逆フライトスクリュー部18、フルフライトスクリュー部17bを順次経て、第2の押出機からEVOH樹脂組成物が押し出される。ここでも、EVOH樹脂組成物の温度は、後段のフルフライトスクリュー部17bに配置された温度センサー15により測定した温度に基づいて制御するとよい。第2の押出機から押し出されるEVOH樹脂組成物の含水率も、上記と同様の理由から、押出直後において、5〜40重量%とすることが好ましい。
【0053】
成分A(場合によっては成分Cが配合された成分A)と成分Bの第2の押出機への投入は、成分Aと成分Bとを予めドライブレンドして押出機のホッパーへ投入してもよく、成分Aと成分Bとをホッパーに同時投入してもよく、成分Aおよび成分Bを2台のフィーダーにより別々に投入してもよい。これらの中では、2台のフィーダーにより成分Aおよび成分Bをそれぞれフィードする方法が定量的な投入に優れ、品質のバラツキを低減する点で優れている。なお、ホッパーへ投入する際の各成分の形状は、ペレット、粉体(クラム状も含む)などであればよく特定形状に限定されない。
【0054】
このように複数の押出機を用いると、各押出機のスクリュー径(D)に対するスクリュー長さ(L)の比率(L/D)を小さい範囲、例えば20〜50程度に抑えることができる。
【0055】
EVOHとしては、エチレン−ビニルエステル共重合体をケン化して得たものを用いればよい。エチレン含有量は、通常3〜70モル%が好適であるが、ガスバリア性と溶融成形性に優れた成形物を得るという観点からは、エチレン含有量は、10〜60モル%、さらに20〜55モル%、特に25〜55モル%が好ましい。EVOHにおけるビニルエステル成分のケン化度は、通常80〜100モル%が好適であるが、ガスバリア性に優れた成形物を得るという観点からは、95モル%以上、特に99モル%以上が好ましい。
【0056】
一方、エチレン含有量3〜20モル%のEVOHは、水溶性を付与したEVOHとして好適に用いられる。このEVOHを含む水溶液はバリア性、塗膜成形性に優れ、コート材料として用いることができる。また、ケン化度80〜95モル%のEVOHは、溶融成形性を改善するために好適に用いられる。このEVOHは単独で用いてもよいが、ケン化度が99モル%を超えるEVOHとブレンドして用いることもできる。
【0057】
エチレン含有量3〜20モル%のEVOHおよびケン化度80〜95モル%のEVOHは、いずれも、単にEVOHのメタノール溶液を凝固浴にストランド状に押し出したのでは、安定した形状のペレットとして析出させることが困難である。しかし、本発明を適用すれば、上記EVOHについても、ペレットを安定して製造し、かつEVOHに配合する樹脂を均一化できる。
【0058】
なお、EVOHのエチレン含有量が3モル%未満では溶融成形性が悪く、耐水性、耐熱水性、高湿度下でのガスバリア性が低下するおそれがある。一方、70モル%を超える場合は、バリア性や印刷適性などが不足する場合がある。また、ケン化度が80モル%未満では、バリア性、耐着色性、耐湿性が十分に得られない。
【0059】
第1の押出機に投入するEVOHの含水率は、0.5重量%以上、さらに5重量%以上、特に7重量%以上が好ましい。乾燥状態のEVOHの融点よりも低い温度でEVOHを溶融できるからである。こうして、押出機内におけるEVOHの熱劣化などを抑制できる。一方、押出機に投入するEVOHの含水率は、70重量%以下、さらに60重量%以下、特に50重量%以下が好ましい。含水率が70重量%を超えると、EVOH樹脂組成物において、樹脂と樹脂に含有される水とが相分離を起こしやすくなる。水が相分離を起こすと、樹脂表面が濡れ状態となって摩擦が大きくなるため、押出機ホッパー内でブリッジが発生しやすくなり、ペレットの生産性に悪影響を及ぼすおそれもある。
【0060】
第1の押出機に投入する前にEVOHの含水率を調整する方法は、特に限定されない。含水率を上げるためには、樹脂に水をスプレーする方法、樹脂を水中に浸漬させる方法、樹脂を水蒸気と接触させる方法などを採用すればよい。一方、含水率を下げるためには、各種の乾燥方法を用いればよく、例えば、流動式熱風乾燥機、静置式熱風乾燥機を用いて乾燥する方法を採用すればよい。ただし、乾燥斑を低減するという観点からは流動式熱風乾燥機を使用することが好ましい。なお、熱劣化を抑制するために、乾燥温度は120℃以下が好適である。
【0061】
EVOHは、凝固浴中に析出させたストランドをカットして得られるペレットが好適であるが、上記のようにEVOHの形状は特に限定されず、EVOHのペーストが不定形に凝固したクラム状析出物などを用いてもよい。EVOHのペーストを直接押出機に投入しても構わない。
【0062】
押出機内における洗浄により、EVOHからケン化触媒残渣を除去することもできる。具体的には、押出機の少なくとも1箇所から洗浄液を注入して、EVOHを洗浄し、注入部よりも下流側の少なくとも1箇所から洗浄液を排出すればよい。従来は、樹脂ペレットを固体状態のまま洗浄容器に入れて洗浄液と接触させることにより、ペレット内部からの拡散に頼ってケン化触媒残渣を抽出していた。しかし、押出機内において同時に洗浄を行うと、効率良くかつ省スペースで洗浄できる。
【0063】
押出機に供給するEVOHに含まれるケン化触媒残渣は、典型的には、アルカリ金属イオンである。そして、このアルカリ金属イオンの含有量が金属換算で0.1〜5重量%の範囲である場合に、押出機内における上記洗浄方法を適用すると大きな効果が得られる。含有量が0.1重量%未満では、従来の洗浄方法を適用した場合と大差はなく、逆に5重量%を超えると、十分な洗浄を行うためには本発明を適用してもスクリュー長さ(L)/スクリュー径(D)の大きい押出機が必要となってコストアップの要因となることがある。上記含有量は、0.2重量%以上、特に0.5重量%以上が好適であり、さらに、4重量%以下、特に3重量%以下が好適である。
【0064】
なお、洗浄後のEVOHに含まれるアルカリ金属イオンは、金属換算で0.05重量%以下、さらに0.04重量%以下、特に0.03重量%以下が好適である。0.05重量%を超えてアルカリイオン金属イオンが残留すると、EVOHの熱安定性が低下することがある。
【0065】
この場合に使用される洗浄液は、ケン化触媒残渣を除去できるものであれば特に限定されず、例えば水を用いることもできるが、25℃におけるpKaが3.5以上の酸の水溶液が好適である。上記pKaが3.5未満の酸の水溶液を用いると、EVOHの耐着色性や層間接着性が十分に得られない場合がある。pKaが3.5以上の酸としては、カルボン酸、特に酢酸またはプロピオン酸が好適である。カルボン酸水溶液におけるカルボン酸濃度は、0.01〜10g/リットル、特に0.1〜2g/リットルが好ましい。また、洗浄液の注入量は、EVOH1kgあたり0.1〜100リットル程度が好適である。
【0066】
洗浄液の注入方法は、押出機に注入できれば特に限定されず、例えばプランジャーポンプなどを用いて圧入すればよい。洗浄液の排出方法は、注入部よりも下流側において押出機から液体を排出できれば特に限定されず、例えば脱水スリットや脱水孔を用いればよい。こうして洗浄液の排出とともに樹脂の含水率が調整される。なお、複数の注入部、複数の脱液部を配置しても構わない。
【0067】
脱水スリットや脱水孔であれば、液体、気体のいずれであっても排出可能であって、含水率が高い樹脂から効率的に水分を除去できるから、特に単独の脱液部により脱水する場合には、脱水スリットまたは脱水孔を用いるとよい。これに対し、ベント口(減圧下に水蒸気を除去する真空ベント、常圧下に水蒸気を除去するオープンベント)は、一般に水蒸気しか排出できない。また、ベント口に付着した樹脂が劣化して押出機内に混入する可能性にも配慮する必要がある。なお、脱水孔からは溶融樹脂がはみ出ることがあるため、かかる観点からは脱水スリットがより好適である。脱水スリットとしては、ウェッジワイヤー式脱水スリット、スクリーンメッシュ式脱水スリットなどが挙げられる。
【0068】
上記に例示した脱水手段は、単独で用いてもよいが、同一種類のものを複数用いてもよく、あるいは異なる種類のものを組み合わせて用いてもよい。例えば、含水率の多い樹脂から脱水スリットを用いて水を除去し、その下流側でベント口からさらに水蒸気を除去してもよい。
【0069】
次に、カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる添加剤について説明する。これら添加剤は、単独で添加してもよいことは勿論であるが、実施態様に応じて選択した複数種を添加することにより、EVOHの各種性能を改善することが好ましい。
【0070】
EVOHにカルボン酸を添加すると、熱安定性を改善できる。カルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、安息香酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸などが例示できるが、コストなどを考慮すると、酢酸、プロピオン酸または乳酸が好ましい。
【0071】
カルボン酸の含有量は、乾燥したEVOH樹脂組成物ペレットにおいて、10〜5000ppmが好ましい。カルボン酸の含有量が10ppm未満であると、溶融成形時の耐着色性が十分に得られないことがあり、逆に5000ppmを超えると、層間接着性が不十分となるおそれがある。カルボン酸の含有量の下限は好適には30ppm以上、さらに好適には50ppm以上である。一方、カルボン酸の含有量の上限は好適には1000ppm以下であり、さらに好適には500ppm以下である。
【0072】
EVOHにリン酸化合物を添加すると、熱安定性を改善できる。乾燥EVOH樹脂組成物ペレット中のリン酸化合物の含有量は、リン酸根換算で1〜1000ppmが好ましい。リン酸化合物を適切な範囲で添加することにより、成形体の着色やゲル・ブツの発生を抑制することが可能となる。リン酸化合物の添加による上記改善効果は、EVOH樹脂組成物ペレットを用いたロングラン成形時および成形物の回収時に特に顕著となる。リン酸化合物としては、リン酸、亜リン酸などの各種の酸やその塩などが例示できるが、これらに限定されない。リン酸塩は、第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形で含まれていてもよく、そのカチオン種も特に限定されないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることが好ましい。中でも、リン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウムとしてリン酸化合物を添加することが好ましい。
【0073】
乾燥EVOH樹脂組成物ペレット中のリン酸化合物の含有量は、リン酸根換算で表示して、10ppm以上、特に30ppm以上がより好ましく、さらに500ppm以下、特に300ppm以下がより好ましい。かかる範囲のリン酸化合物を含有させると、より着色が少なく、よりゲル化しにくいペレットを得ることができる。なお、リン酸化合物の含有量が1ppm未満であると、溶融成形時の着色抑制効果が十分に得られないことがある。特に、熱履歴を重ねるときにその傾向が顕著となるために、ペレットを成形して得られた成形体が、回収性に乏しいものとなる場合がある。一方、リン酸化合物の含有量が1000ppmを超えると成形体のゲル・ブツが発生しやすくなる。
【0074】
EVOHにホウ素化合物を添加すると、EVOHの熱安定性や機械的性質を向上させることができる。これは、EVOHとホウ素化合物との間にキレート化合物が生成するためであると考えられる。ホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類などが挙げられるが、これらに限定されない。ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしては、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これら化合物の中では、オルトホウ酸(以下、単に「ホウ酸」と称する)が好適である。
【0075】
乾燥EVOH樹脂組成物ペレット中のホウ素化合物の含有量は、ホウ素換算で10〜2000ppm、さらに50〜1000ppmが好ましい。10ppm未満ではホウ素化合物を添加することによる熱安定性の改善効果が十分に得られないことがあり、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となるおそれがある。
【0076】
EVOHにアルカリ金属塩を添加すると、層間接着性や相容性を効果的に改善できる。乾燥EVOH樹脂組成物ペレット中のアルカリ金属塩の含有量は、アルカリ金属元素換算で5〜5000ppm、さらに20〜1000ppm、特に30〜750ppmが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、アルカリ金属塩としては、脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、燐酸塩、金属錯体などが挙げられる。例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩などが挙げられる。中でも酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、燐酸ナトリウムが好適である。
【0077】
EVOHにアルカリ土類金属塩を添加すると、耐着色性の改善効果が若干低下するものの、ペレットの溶融成形時において、熱劣化した樹脂の成形機のダイへの付着量を低減することが可能となる。アルカリ土類金属塩としては、特に限定されないが、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、ベリリウム塩などが挙げられ、マグネシウム塩およびカルシウム塩が好適である。アルカリ土類金属塩のアニオン種は、特に限定されないが、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、リン酸アニオンが好適である。
【0078】
乾燥EVOH樹脂組成物ペレット中のアルカリ土類金属塩の含有量は、同金属換算で10〜1000ppm、さらに20〜500ppmが好適である。アルカリ土類金属の含有量が10ppm未満の場合はロングラン性の改善効果が不十分となることがあり、1000ppmを超えると樹脂溶融時の着色を十分に抑制できないことがある。
【0079】
押出機内において、カルボン酸など上記添加剤を配合すると、これらの添加剤を均一に混練できる。こうして、溶融成形時の押出機のモータートルクおよびそのトルク変動が小さい方法により、押出安定性、耐着色性およびロングラン性に優れ、ゲル・ブツの発生およびダイ付着量が少ないEVOH樹脂組成物ペレットを得ることができる。また、上記の添加剤は、EVOHが含水かつ溶融状態となっている位置へと供給すると、上記効果が十分に得られる。また、押出機の混練部に供給すると、添加剤がより均一に配合されやすくなる。
【0080】
カルボン酸など上記添加剤の添加方法は特に限定されない。押出機内に乾燥粉末として添加する方法、溶媒を含浸させたペースト状で添加する方法、液体に懸濁させた状態で添加する方法、溶媒に溶解させて溶液として添加する方法などが例示されるが、添加量の制御や、EVOH中に添加剤を均質に分散させる観点からは、添加剤を溶媒に溶解させた溶液として添加する方法が特に好ましい。この場合、溶媒は特に限定されないが、添加剤の溶解性、コスト的なメリット、取り扱いの容易性、作業環境の安全性などを考慮すると、水(水溶液)が好適である。また、上記添加剤は、押出機の1箇所から添加してもよいが、2箇所以上から添加しても構わない。溶液の注入方法は、洗浄液と同様、特に限定されない。
【0081】
EVOHに対して、上記カルボン酸などの添加剤を溶液として添加する際には、EVOHの乾燥重量100重量部に対して、溶液の添加量の下限は1重量部以上、さらに3重量部以上、特に5重量部以上が好ましい。また、溶液の添加量の上限は、EVOHの乾燥重量100重量部に対して、50重量部以下、さらに30重量部以下、特に20重量部以下が好ましい。溶液の添加量を1重量部未満とすると、一般に、溶液の濃度が高くなって添加剤の分散性の改善効果が十分に得られないことがある。一方、溶液の添加量を50重量部よりも大きくすると、EVOHの含水率の制御が困難となることがあり、押出機内で樹脂と樹脂に含有される水とが相分離しやすくなる。
【0082】
従来からEVOHを処理溶液に浸漬させる処理方法は知られていたが、このような方法では、EVOHのクラム状析出物などについては良好な品質の製品を得ることが困難であった。しかし、押出機内で配合すると、かかる形態のEVOHについてもカルボン酸などの添加剤を均質に添加することが可能となり、安定した品質のEVOH樹脂組成物ペレットを得ることができる。
【0083】
第1および第2の押出機内における樹脂温度は、好ましくは70〜170℃である。樹脂温度が70℃未満の場合は、EVOHが完全に溶融しない場合がある。また、各種添加剤は、溶融状態のEVOHに配合したほうが分散性の改善効果が高くなる。樹脂温度は、80℃以上、特に90℃以上が好適である。一方、樹脂温度が170℃を超えると、EVOHが熱劣化を受けやすくなる。かかる観点から、樹脂温度は、150℃以下、さらに130℃以下が好適である。樹脂温度の調整方法は、特に限定されないが、押出機内シリンダの温度を適切に設定する方法が好ましい。特に第2の押出機において成分Bとして樹脂を配合する場合には、この押出機内における樹脂温度を上記範囲内とすることが重要となる。
【0084】
なお、樹脂温度は、押出機シリンダに設置した温度センサーにより測定した温度を適用して判断すればよい。温度センサーの設置場所は、押出機先端部吐出口近傍が適当である。
【0085】
押出機から吐出されたEVOH樹脂組成物をペレット化する方法は、特に限定されないが、樹脂組成物をダイからストランド状に凝固浴中に押出し、適切な長さにカットするとよい。ペレットの取り扱いを容易にするために、ダイの口径は2〜5mmφ(φは直径。以下同じ)が好適であり、ストランドは1〜5mm程度の長さでカットするとよい。
【0086】
第2の押出機から得られたペレット(および必要に応じ、第1の押出機から得られたペレットのうち、第2の押出機への投入を省略した残部)は、通常、乾燥工程に供される。乾燥後のEVOH樹脂組成物ペレットの含水率は、1重量%以下、さらに0.5重量%とすることが好ましい。乾燥方法は特に限定されないが、静置乾燥法、流動乾燥法などが好適であり、幾つかの乾燥方法を組み合わせた多段階の乾燥工程を適用してもよい。中でも、まず流動乾燥法で乾燥し、引き続いて静置乾燥法で乾燥する方法が好ましい。
【0087】
EVOH樹脂組成物ペレットを単に処理液に浸漬して処理すると、処理後のEVOHの含水率は、通常、40〜70重量%程度にまで至る。しかし、本発明のように、EVOHを押出機で溶融し、この押出機内で必要な処理剤を添加することとすると、押出機吐出直後のEVOH樹脂組成物の含水率を容易に調整できる。EVOH樹脂組成物における含水率は、好ましくは5〜40重量%である。このような含水率の小さいペレットを用いると、乾燥工程におけるエネルギー消費を削減することもできる。
【0088】
含水率が40重量%を超えるペレットは、乾燥温度を100℃以上にすると、ペレット同士の融着が発生することがある。この点においても、押出機内での添加物の配合は有利である。
【0089】
上記方法により得られたEVOH樹脂組成物ペレットに、重合度、エチレン含有率およびケン化度の異なるEVOHをブレンドし溶融成形することも可能である。また、このペレットに他の各種可塑剤、安定剤、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、金属塩、充填剤、各種繊維等の補強剤などを適量添加することも可能である。
【0090】
EVOH以外の熱可塑性樹脂を、本発明の目的を阻害しない範囲で適量配合することも可能である。熱可塑性樹脂としては各種ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体、ポリオレフィンと無水マレイン酸との共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、またはこれらを不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィンなど)、各種ナイロン(ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6/6,6共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリアセタールおよび変性ポリビニルアルコール樹脂などが用いられる。
【0091】
得られたEVOH樹脂組成物ペレットは、溶融成形によりフィルム、シート、容器、パイプ、繊維など、各種の成形体に成形される。これらの成形体は、再使用の目的で粉砕し再度成形してもよい。また、フィルム、シート、繊維などを一軸または二軸延伸することも可能である。溶融成形法としては、押出成形、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、射出成形などを適用できる。溶融温度は、共重合体の融点などにより適宜選択すればよいが、150〜270℃程度が好ましい。
【0092】
上記EVOH樹脂組成物ペレットは、フィルム、シートなどとして成形し、他の層との多層構造体として実用に供してもよい。多層構造体としては、特に限定されないが、EVOH樹脂組成物をE、接着性樹脂をAd、熱可塑性樹脂をTで表わすと、E/Ad/T、T/Ad/E/Ad/Tなどが挙げられる。各層は、単層であってもよいし、多層であってもよい。
【0093】
上記多層構造体は、そのまま各種の形状へと成形してもよいが、物性を改善するために延伸処理を施してもよい。延伸処理を施すと、破断、ピンホール、延伸ムラ、デラミなどが生じない延伸フィルム、延伸シートなどとすることができる。延伸は、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、一般には、できるだけ高倍率の延伸を行ったほうが物性的に良好となる。延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法などの他、深絞成形、真空成形などのうち延伸倍率の高いものを採用してもよい。二軸延伸の場合は、同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれを適用してもよい。延伸温度は、例えば80〜170℃、好ましくは100〜160℃である。
【0094】
延伸が終了した後、熱固定を行うとよい。熱固定は、従来から行われてきた方法により実施すればよく、例えば、延伸フィルムを緊張状態を保ちながら80〜170℃、好ましくは100〜160℃で2〜600秒間程度処理すればよい。得られた延伸フィルムは、必要に応じ、冷却処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液または溶融コート処理、製袋加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工などを行ってもよい。
【0095】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、水はすべてイオン交換水を使用した。各特性の評価方法は下記のとおりである。
【0096】
(1)含水率の測定
試料とする含水EVOH20gを良く乾燥した秤量ビンに取り、熱風乾燥機で120℃、24時間乾燥し、乾燥前と乾燥後のEVOHの重量変化から、下記式を用いてEVOHの含水率を求めた。
【0097】
含水率(重量%)={(乾燥前重量−乾燥後重量)/乾燥前重量}×100
【0098】
(2)添加した微量成分の定量
以下に示す方法に従って、定量を行った。なお、以下の「乾燥チップ」とは、押出機内でカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を添加されたEVOH樹脂組成物ペレットを、流動式熱風乾燥機を用いて100℃で15時間乾燥し、引き続いて静置式熱風乾燥機を用いて100℃で15時間乾燥を行って得られたものである。
【0099】
(2−a)酢酸含有量の定量
試料とする乾燥チップ20gを水100mlに投入し、95℃で6時間加熱抽出した。抽出液にフェノールフタレインを指示薬として1/50規定のNaOHで中和滴定し、酢酸含有量を定量した。
【0100】
(2−b)Na、K、Mgイオンの定量
試料とする乾燥チップ10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、Na、K、Mgイオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製「ICS−C25」を使用し、溶離液は5.0mMの酒石酸と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液とした。なお、定量に際してはそれぞれ塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液および塩化マグネシウム水溶液で作成した検量線を用いた。こうして得られたNa、K、Mgイオンの量から、乾燥チップ中のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の量を金属換算の量で得た。
【0101】
(2−c)ホウ素化合物の定量
試料とする乾燥チップにNa2CO3水溶液を加え、白金るつぼで600℃で灰化させた。得られたサンプルに塩酸を加えて溶解し、ICP発光分光分析法によりホウ素化合物の含有量をホウ素換算で定量した。
【0102】
(2−d)リン酸イオンの定量
試料とする乾燥チップ10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、リン酸イオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製「ICS−A23」を使用し、溶離液は2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液とした。なお、定量に際してはリン酸水溶液で作成した検量線を用いた。こうして得られたリン酸イオンの量から、リン酸化合物の含有量をリン酸根換算で得た。
【0103】
(3)流動開始温度の測定方法
フローテスタ(定荷重押出形細管式レオメータ)を使用し、試験時間の経過と共に昇温しながら試料の流動性を連続的に測定し、下記方法により付属の解析ソフトで流動開始温度を求めた。
【0104】
装置:島津フローテスターCFT−500D/100D(島津製作所製)
形式:定荷重押出式
試験法:昇温法
初期温度:100℃
昇温速度:5℃/分
ダイ:1mmφ×10mm
測定荷重:100kg
測定位置:0〜15mm
解析ソフト:CFT−500D形/100Dパソコンソフトウェア
操作:サンプルを2g取り、シリンダー内に投入する。サンプル投入後、6分間予熱し、測定を開始する。3℃毎にストローク(ピストン位置)を測定し、温度−ピストン押出ストローク曲線を作成する。
流動開始温度算出方法(1/2法):温度−ピストン押し出しストローク曲線(流動曲線)において、流出終了点(Smax)と最低点(Smin)の差の1/2を求め、(X=(Smax−Smin)/2)、XとSminを加えた温度を流動開始温度とした。
なお、融点は、JIS K7122に準じて測定した。
【0105】
(4)メルトインデックス(MI)
ASTM−D1238に準じ、メルトインデクサーを使用し、温度190℃、荷重2160gの条件にて測定した。
【0106】
(実施例1)
エチレン含有量44モル%、ケン化度99.5モル%、乾燥時のメルトインデックス5g/10分、含水率50重量%のEVOHペレットを図1に示したと同様の構造を有する第1の押出機の原料供給部1から投入し、脱液部(脱液スリット)2から過剰水を、ベント口3から過剰水蒸気をそれぞれ導出し、微量成分添加部4より酢酸/リン酸二水素カリウム/酢酸ナトリウム/酢酸マグネシウムからなる水溶液を添加した。
【0107】
EVOHペレットの単位時間当たりの投入量は10kg/時(含有する水の重量を含む)、微量成分添加部より添加した水溶液の添加量は0.25L/時とした。このときの水溶液の組成は、酢酸5g/L、リン酸二水素カリウム2.8g/L、酢酸ナトリウム9.2g/L、酢酸マグネシウム6g/Lであった。
【0108】
第1の押出機の仕様を以下に示す(構成は図1と同様)。
形式 二軸押出機
L/D 30
口径 30mmφ
スクリュー 同方向完全噛合型
回転数 300rpm
モーター容量 DC22KW
ヒーター 9分割タイプ
ダイホール数 5穴(3mmφ)
押出機内樹脂温度 130℃
引取り速度 5m/分
【0109】
第1の押出機のダイより吐出されたストランドをファンカッター(星プラスチック社製「FC−108S−1」)を使用して切断し、EVOHペレットを得た。このペレットの含水率は、20重量%であった。
【0110】
上記EVOHペレット(成分A)とともに、成分Bとしてポリウレタン(株式会社クラレ「クラミロン(登録商標)U1780」)を準備した。これら成分Aおよび成分Bを、図2に示したと同様の構造を有する第2の押出機の原料供給部8から投入した。ペレットの単位時間当たりの投入量は6.25kg/時(含有する水の重量を含む)、ポリウレタンの単位時間当たりの投入量は2kg/時とした。
【0111】
第2の押出機の仕様を以下に示す(構成は図1と同様)。
形式 二軸押出機
L/D 30
口径 30mmφ
スクリュー 同方向完全噛合型
回転数 300rpm
モーター容量 DC22KW
ヒーター 9分割タイプ
ダイホール数 5穴(3mmφ)
押出機内樹脂温度 140℃
引取り速度 5m/分
【0112】
ダイより吐出するストランドの含水率を測定した結果、15重量%であった。吐出口より得られるストランドを水槽中で冷却した後、上記と同様にファンカッターを使用し、EVOH樹脂組成物ペレットを得た。このとき、ストランドの安定性を評価した。その結果、ストランド切れなど発生せず、良好であった。
【0113】
得られたペレットを流動乾燥機を用いて100℃で25時間乾燥し、引き続き静置乾燥機を用いて100℃で15時間乾燥した結果、含水率は0.1重量%であった。乾燥後のEVOH樹脂組成物ペレット中の酢酸の含有量は200ppm、リン酸化合物の含有量はリン酸根換算で60ppm、アルカリ金属塩の含有量はカリウム換算で20ppm、ナトリウム換算で80ppm、アルカリ土類金属塩の含有量はマグネシウム換算で30ppmであった。また、上記樹脂組成物ペレットの形状を観察した結果、カットミスなども見当たらず、良好な形状であった。以上の結果をまとめて表1〜表4に示す。
【0114】
(実施例2)
EVOHを成分Bとし、実施例1と同様にしてEVOH樹脂組成物ペレットを得た。成分BとしたEVOHは、株式会社クラレ製「エクセバール(登録商標)RS4105」(エチレン含有量9モル%、ケン化度98モル%)、含水率5重量%のものを使用した。実施例1と同様、ストランドの安定性は良好であり、得られたペレットの形状も良好であった。押出条件、処理液組成、ペレットの分析結果などの詳細を、表1〜表4に示す。
【0115】
(実施例3)
EVOHを成分Bとし、実施例1と同様にしてEVOH樹脂組成物ペレットを得た。成分BとしたEVOHは、エチレン含有量52モル%、ケン化度95モル%、メルトインデックス6g/10分、含水率0.3重量%のものを使用した。実施例1と同様、ストランドの安定性、ペレットの形状とも良好であった。押出条件、処理液組成、ペレットの分析結果などの詳細を、表1〜表4に示す。
【0116】
(実施例4)
EVOHを成分Bとし、実施例1と同様にしてEVOH樹脂組成物ペレットを得た。成分BとしたEVOHは、株式会社クラレ製「エバール(登録商標)F101」(エチレン含有量32モル%)100重量部と、酸化防止剤としてチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「イルガノックス(登録商標)1098」1重量部とからなるEVOH組成物、含水率0.3重量%のものを使用した。実施例1と同様、ストランドの安定性、ペレットの形状とも良好であった。押出条件、処理液組成、ペレットの分析結果などの詳細を、表1〜表4に示す。
【0117】
(実施例5)
低密度ポリエチレン(LDPE)を成分Bとし、実施例1と同様にしてEVOH樹脂組成物ペレットを得た。低密度ポリエチレンは、日本ポリケム株式会社製「ノバテック(登録商標)LJ900N」を使用した。実施例1と同様、ストランドの安定性、ペレットの形状とも良好であった。押出条件、処理液組成、ペレットの分析結果などの詳細を、表1〜表4に示す。
【0118】
(実施例6〜8)
ボロン酸基含有熱可塑性樹脂を成分Bとし、実施例1と同様にしてEVOH樹脂組成物ペレットを得た。
【0119】
ボロン酸基含有熱可塑性樹脂の製造方法を以下に示す。まず、超低密度ポリエチレン(VLDPE、住友化学製「エクセレン(登録商標)EUL430」)を、投入口を1L/分の窒素で置換しながら13kg/時の速度で二軸押出機に供給した。次に、液体フィーダー1よりボラン−トリエチルアミン錯体とホウ酸1,3−ブタンジオールエステルの混合液(ボラン−トリエチルアミン錯体(TEAB)/ホウ酸1,3−ブタンジオールエステル(BBD)=29/71、重量比)を0.6kg/時の速度で、液体フィーダー2より1,3−ブタンジオールを0.5kg/時の速度で供給し、連続的に混練した。混練の間、ベント1およびベント2のゲージが約20mmHgを示すように圧力を調節した。その結果、吐出口から13kg/時の速度で、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を含有する超低密度ポリエチレン(BR−VLDPE)を得た。
【0120】
このBR−VLDPEは、官能基量47μmol/g、二重結合量0μmol/gおよびメルトインデックス(MI)4g/10min(190℃,2160g)であった。
【0121】
なお、反応に使用した二軸押出機の構成、運転条件は下記のとおりである。
同方向二軸押出機TEM−35B(東芝機械製)
【0122】
BR−VLDPEを用いた場合も、ストランドの安定性、得られたペレットの形状は良好であった。押出条件、処理液組成、ペレットの分析結果などの詳細を、表1〜表4に示す。
【0123】
(比較例1)
エチレン含有量44モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体の45重量%メタノール溶液をケン化反応器に仕込み、苛性ソーダ/メタノール溶液(80g/L)を共重合体中の酢酸ビニル成分に対し、0.4当量となるように添加し、メタノールを添加して共重合体濃度が20重量%になるように調整した。60℃に昇温し反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約4時間反応させた。4時間後、酢酸で中和し反応を停止させ、エチレン含有量44モル%、ケン化度99.5モル%のEVOHのメタノール溶液を得た。
【0124】
当該EVOH溶液を円形の開口部を有する金板から水中に押し出してストランド析出させ、切断することで直径約3mm、長さ約5mmのペレットを得た。得られたペレットは遠心分離機で脱液しさらに大量の水を加え脱液する操作を繰り返した。
【0125】
こうして得られたEVOHペレット(含水率55重量%)3.5kgを、酢酸濃度0.4g/L、リン酸二水素カリウム濃度0.1g/L、酢酸ナトリウム濃度0.4g/L、酢酸マグネシウム濃度0.3g/Lである水溶液6Lに室温で6時間浸漬した。浸漬後、脱液し、含水率55重量%のEVOHペレットを得た。さらに、このペレットを流動乾燥機に投入し、80℃で15時間、続いて静置乾燥機を用いて100℃で24時間乾燥を行い、含水率0.1重量%のEVOHペレットを得た。得られたEVOHペレットは、酢酸300ppm、リン酸化合物はリン酸根換算で100ppm、アルカリ金属塩はカリウム換算で40ppm、ナトリウム換算で130ppm、アルカリ土類金属はマグネシウム換算で50ppmであった。メルトインデックスは5g/10分であった。
【0126】
図2に示したと同様の構造を有する押出機(第2の押出機)の原料供給部より、上記EVOHペレットを10kg/時(含有する水の重量を含む)、実施例1で使用したポリウレタンを4kg/時で投入した。ダイより吐出されたストランドの含水率は0.1重量%であった。押出機の吐出口より得られるストランドを水槽中で冷却した後、実施例1と同様にファンカッターを使用し、EVOH樹脂組成物ペレットを得た。しかし、ストランドの安定性を低く、ストランド切れが多発して安定したサンプル採取ができなかった。得られたペレットの形状は、カットミスが目立ち不良であった。
【0127】
得られた樹脂組成物ペレットを流動乾燥機を用いて100℃で25時間、引続き静置乾燥機を用いて100℃で15時間乾燥した。乾燥後の樹脂組成物ペレットの含水率は0.1重量%であった。押出条件、処理液組成、ペレットの分析結果などの詳細を、表1〜表4に示す。
【0128】
(比較例2)
実施例6で使用したボロン酸基を含有する熱可塑性樹脂を成分Bとし、比較例1と同様にしてEVOH樹脂組成物ペレットを得た。ストランド切れが多発し、安定してサンプル採取ができなかった。得られたペレットの形状は、カットミスが目立ち不良であった。押出条件、処理液組成、ペレットの分析結果などの詳細を、表1〜表4に示す。
【0129】
(比較例3)
エチレン含有量44モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体の45重量%メタノール溶液をケン化反応器に仕込み、苛性ソーダ/メタノール溶液(80g/L)を共重合体中の酢酸ビニル成分に対し、0.4当量となるように添加し、メタノールを添加して共重合体濃度が20重量%になるように調整した。60℃に昇温し反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約4時間反応させた。4時間後、酢酸で中和し反応を停止させ、エチレン含有量44モル%、ケン化度99.5モル%のEVOHのメタノール溶液を得た。
【0130】
当該EVOH溶液を円形の開口部を有する金板から水中に押し出してストランド析出させ、切断することで直径約3mm、長さ約5mmのペレットを得た。得られたペレットは遠心分離機で脱液しさらに大量の水を加え脱液する操作を繰り返した。
【0131】
こうして得られたEVOHペレット(含水率55重量%)3.5kgを、酢酸濃度0.4g/L、リン酸二水素カリウム濃度0.1g/L、酢酸ナトリウム濃度0.4g/L、酢酸マグネシウム濃度0.3g/Lである水溶液6Lに室温で6時間浸漬した。浸漬後、脱液し、含水率55重量%のEVOHペレットを得た。
【0132】
得られた含水EVOHペレットを図2に示したと同様の押出機に投入する以外は実施例7と同様にしてEVOHとボロン酸変性樹脂をブレンドした。その結果、吐出後のストランドは発泡し、安定したサンプル採取ができなかった。押出条件、処理液組成、ペレットの分析結果などの詳細を、表1〜表4に示す。
【0133】
・樹脂種類に付した数値は、流動開始温度(ポリウレタン)または融点(その他)
・配合量は、EVOH100重量部に対する成分の配合量
・EVOH(エチレン含有量44モル%、ケン化度99.5モル%)の仕込量は、EVOHの揮発分込みの重量
・各比較例は、第2の押出機のみ使用
【0134】
・リン酸化合物は、KH2PO4
・アルカリ金属塩は、NaOAc
・アルカリ土類金属塩は、Mg(OAc)2
【0135】
・ホウ酸濃度はホウ素換算値
・リン酸化合物濃度はリン酸根換算値
・アルカリ金属塩濃度はアルカリ金属換算値
・アルカリ土類金属塩濃度はアルカリ土類金属換算値
【0136】
【0137】
なお、各実施例においては、第1の押出機から得たストランドの安定性も優れており、切断して得たペレットの形状も良好であった。
【0138】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、銘柄切換によるロスを回避しながら、少量多品種のEVOHを効率的にかつ安定して製造できる。EVOHの用途の多様化を鑑みれば、当該技術分野における本発明の利用価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一形態の実施に用いうる第1の押出機の2軸押出機のバレルとスクリューとを示す側面図である。
【図2】 本発明の一形態の実施に用いうる第2の押出機の2軸押出機のバレルとスクリューとを示す側面図である。
【符号の説明】
1、11 原料供給部
2 脱液部
3 ベント口
4 微量成分添加部
5、15 温度センサー
7a、7b、7c、17a、17c フルフライトスクリュー部
8a、8b、18 逆フライトスクリュー部
Claims (12)
- 第1の押出機から押出された含水率が5〜40重量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(成分A)の少なくとも一部と、添加成分(成分B)とを第2の押出機に導入し、溶融混練してから吐出することを特徴とするエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の製造方法。
- 第1の押出機に、成分Aおよび成分B以外の成分(成分C)を導入する請求項1に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の製造方法。
- 成分Cが、カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の製造方法。
- 第1の押出機に水を供給するか、第1の押出機から水を除去するか、あるいは第1の押出機への水の供給と第1の押出機からの水の除去とを組み合わせることによって、第1の押出機内の樹脂の含水率を調整する請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の製造方法。
- 第1の押出機から吐出したエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂を切断して得たペレットの一部を第2の押出機に導入する請求項1〜4のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の製造方法。
- 第2の押出機から吐出した直後の樹脂組成物の含水率が5〜40重量%である請求項1〜5のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の製造方法。
- 第2の押出機内の溶融樹脂の温度が70〜170℃である請求項1〜6のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の製造方法。
- 成分A100重量部に対する成分Bの配合量が0.01〜200重量部である請求項1〜7のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の製造方法。
- 成分Bが樹脂である請求項1〜8のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の製造方法。
- 成分Bの融点および流動開始温度の少なくとも一方が170℃以下である請求項9に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の方法によって第2の押出機から吐出したエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物を、ペレット状に切断した後、含水率が1重量%以下になるまで乾燥することを特徴とするエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物ペレットの製造方法。
- 請求項5に記載の方法によって第2の押出機から吐出したエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物を切断して得たペレットと、第1の押出機から得たペレットの残部とを、いずれも、含水率が1重量%以下になるまで乾燥することを特徴とするエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物ペレットの製造方法。
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