JP3779128B2 - 光ディスク用超音波射出成形金型 - Google Patents
光ディスク用超音波射出成形金型 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスク用超音波射出成形金型に関し、転写性に優れ、複屈折やそりなどの発生を有効に防止することのできる光ディスク用超音波射出成形金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
CDやDVDなどの光ディスクは、可動金型と、固定金型と、これら可動金型及び固定金型の当接面に形成されたディスク成形用の円形状のキャビティと、このキャビティの底部に配置され前記ディスクの表面に凹凸(ピット)を形成するためのスタンパとを有する金型に、溶融したポリカーボネートなどの樹脂を射出して成形している。
【0003】
上記した光ディスクのように、薄肉の製品を射出成形で得る場合にはキャビティ内での溶融樹脂の流動性を向上させて充填ムラの発生を防止し、収縮変形や複屈折などの不良の発生を防止する必要がある。このような不良の発生を防止するべく、例えば特開平10−661号で開示された射出成形方法では、金型の相当直径(D)と超音波振動の波長(λ)との関係がD<0.6λとなるように射出成形を行っている。
【0004】
しかし、上記した従来の超音波成形方法では、縦振動のみを用いているため、光ディスク成形金型のキャビティを形成した面(固定金型と可動金型の当接面)の径(通常約210mm)を、超音波の共振波長(λ)の1/2以上(例えばSUS系の金型では、周波数19KHzで130mm以上)にすると、径方向に伝送される振動が生じる。そのため、金型の固定部分やノズルの取付部分を振動の「節」(振幅が0となる点)に一致させることができず、金型やノズルの保持が困難になるという問題があった。
【0005】
また、従来の超音波成形の金型構造では、縦振動のみを利用しているため、可動金型及び固定金型の金型全体で最低でも一波長分の厚みが必要であり、振動方向変換体を含めると全体の厚みが400mm以上になってしまうことから、生産機(30ton射出成形機)のダイプレート間に取り付けることができないという問題もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記の問題点にかんがみてなされたもので、光ディスクを射出成形する光ディスク用超音波射出成形金型において、キャビティの径方向に伝送される超音波の振幅を可能な限り小さく抑制することによって、転写性を良好に保ち、複屈折や収縮変形の発生を防止しながらダイプレート間で金型やノズルを良好に保持することのできる光ディスク用超音波射出成形金型を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の光ディスク用超音波射出成形金型は、可動金型と、固定金型と、前記可動金型及び固定金型の当接面に形成されたディスク成形用のキャビティと、このキャビティの底部に配置され前記ディスクの表面に凹凸を形成するためのスタンパ と、射出成形の際に前記キャビティに超音波を付与するべく前記可動金型又は前記固定金型に取り付けられた超音波発生手段とを有する光ディスク用超音波射出成形金型であって、前記可動金型及び固定金型の前記キャビティが形成された領域内に、前記キャビティの径方向と交差する方向に一つ又は複数のスリットを形成した構成としてある。
スリットを形成することにより当該部分の肉厚が薄くなるので、その部分で振動が抑制される。したがって、キャビティの径方向に伝送される振動の振幅を小さくすることができる。
【0008】
前記スリットは、前記可動金型又は前記固定金型の内部で伝送方向が転換された超音波の波長をλとしたときに、前記超音波が前記可動金型又は前記固定金型に入力する超音波入力部からnλ/4(n=1,3,5…)のところに形成するとよい。ここで、「超音波入力部」とは、超音波発生手段又は振動方向変換体と前記可動金型又は前記固定金型とが接触する部分を指す。
nλ/4(n=1,3,5…)で振動の共振の振幅が節となる。この位置にスリットを形成することにより、径方向に伝送される振動の振幅を最小に抑えることができる。
【0009】
特に大径の金型においては、キャビティの径方向に沿って前記キャビティの外周縁から内方に向けて複数列形成するとよい。この場合も、共振の振幅が節となる位置、すなわちnλ/4(n=1,3,5…)のところに設けることにより、径方向に伝送される振動の振幅を更に小さくすることができる。
【0010】
また、前記超音波発生手段は、前記可動金型又は前記固定金型の前記超音波入力部に出力端が連結された振動方向変換体の入力端に設けるものとするとよい。振動方向変換体はL−L形、L−L−L形、R−L形のいずれであってもよい。振動方向変換体を用いることにより入力振動を増幅して金型に出力することもでき、より振幅の大きい縦振動をキャビティに与えて流動性を向上させることができる。
【0011】
さらに、前記可動金型及び振動方向変換体又は前記固定金型には、射出成形された製品を前記キャビティから離型させるための製品離型手段を設けるとよい。離型手段としては、型開きの際にキャビティ内に突出する突出しピンが一般的である。このような製品離型手段を用いることにより、成形品を確実に金型から離型させることが可能になる。
【0012】
特に、前記離型手段を、前記スタンパを有する可動金型又は前記固定金型を振動させることによって前記製品を前記キャビティから離型させるものとすれば、スタンパの凹凸に抜きテーパーを形成する必要がなくなり、前記凹凸を高密度に形成することが可能になって、大量情報を記録可能なディスクを形成することが可能になる。
【0013】
なお、型締め時又は型開き時における前記可動金型及び前記固定金型のガイドをインロー形のガイド手段によって行うことが好ましい。
型開閉時の金型のガイドとしては、金型の一方に設けたガイドポストに、金型の他方に設けたガイドピンを挿通させるガイドポスト方式によるものと、金型の一方に設けた円錐状の穴に、金型の他方に設けた円錐形のピンを嵌め込むインロー方式によるものとがあるが、本願発明者は前記ガイドポスト方式と前記インロー方式とで比較実験を行った結果、インロー方式の方が固定金型側のノズル接合部の振動抑制効果が大きいことがわかった。
【0014】
また、前記超音波発生手段は、前記固定金型及び可動金型の全体に、縦振動の他に横振動又は前記キャビティの径方向に伝送される径方向振動を発生させるものであることが好ましい。
縦振動の他に横振動又はキャビティの径方向に伝送される振動を加え、振動を複合的にすることにより、可動金型及び固定金型の厚みを、縦振動のみを利用した場合に比して半分以下にすることができる。
また、前記可動金型及び振動方向変換体又は前記固定金型には、射出成形された製品の所定部位をパンチング(打ち抜き加工)するためのパンチ手段を設けてもよく、このパンチ手段で製品を突き出す製品離型手段を構成してもよい。
【0015】
なお、前記スリットに支持部材を挿入し、射出成形時に前記支持部材の一端で前記スリットの底部を支持させるようにするとよい。この場合、前記支持部材と前記スリットの内壁との間の隙間の幅tが、0.1mm<t<0.3mmの範囲内とするとよい。
また、前記支持部材の他端は、前記固定金型を固定する固定金型固定部材又は前記可動金型を固定する可動金型固定部材に取り付けるものとしてもよいが、前記固定金型又は前記可動金型の近傍に取付部材を設け、この取付部材に前記支持部材を取り付けるようにしてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光ディスク用超音波射出成形金型の好適な実施形態を、図面にしたがって詳細に説明する。
なお、本発明は以下の実施形態によりなんら限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に変更することが可能である。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる光ディスク用超音波射出成形金型の一部を断面した側面図、図2は、図1の金型内を伝送される振動の変位波形を説明する図である。
【0018】
[射出成形機]
本発明の光ディスク用超音波射出成形金型が適用される射出成形機には、溶融状態の樹脂を金型内に圧入し、前記樹脂をキャビティ形状に応じた形状に成形して金型から取り出す全ての光ディスク用超音波射出成形機が含まれる。
この実施形態の射出成形機は、次に詳しく説明する固定金型3及び可動金型4をまず無負荷状態で型締めし、次いで、ノズル1から溶融した樹脂をキャビティ6内に高圧で射出して固定金型3及び可動金型4を僅かに型開き状態にする。
この後、可動金型4に型締め圧力を付与しながら圧縮成形を行ない、冷却後に成形品を取り出すものである。超音波は、樹脂の射出開始から冷却までの間と、型開き後の離型時に印加される。
【0019】
[金型]
図1に示すように、この実施形態の光ディスク用超音波射出成形金型は、中心軸線X上にスプルー5を有する固定金型3と、この固定金型3に対向して配置された可動金型4とを有する。
【0020】
固定金型3は固定金型保持部材13によって固定金型固定板2に固定され、可動金型4は可動金型保持部材10によって可動金型固定板9に固定される。
また、可動金型固定板9は油圧シリンダ11のピストンロッドの先端に取り付けられ、前記ピストンロッドの進退移動とともに可動金型4を固定金型3に対して進退移動させて、固定金型3と可動金型4の型締め、型開きが行われる。
【0021】
固定金型3と可動金型4とが当接する当接面3a,4aには、光ディスクを成形するための円形状のキャビティ6が形成されている。キャビティ6の可動金型4側の底部には、光ディスクの表面に凹凸(ピット)を形成するためのスタンパ15が配置される。また、固定金型3及び可動金型4の内部には、キャビティ6の周囲に冷却水通路16が形成される。
【0022】
[金型の外周縁部の形態]
固定金型3及び可動金型4の外周縁には、肉厚方向(X軸線に平行な方向)にそれぞれ肉厚を薄くした段付き部3b,4bが形成される。ここで段付き部3b,4bの断面積と、段付き部3b,4bを形成しない部分の断面積の関係は、次のようにすることが好ましい。
すなわち、段付き部3b,4bを通るI−I、I′−I′線に沿って断面された部分の断面積に対して、段付き部3b,4bを形成しない部分を通るII−II、II′−II′線に沿って断面された部分の断面積を、0.85〜0.95倍の範囲内となるように形成することが好ましい。
【0023】
段付き部3b,4bの外周側にはさらにフランジ部3c,4cが形成される。フランジ部3c,4cは、それぞれ固定金型固定板2及び可動金型固定板9に固定金型3及び可動金型4を固定するための固定部である。段付き部3b,4bでは、キャビティ6の径方向に伝送される振動の振幅が節となる。したがって、これより外周側に設けられたフランジ部3c,4cの肉厚はできるだけ薄くすることが好ましい。型締め時にフランジ部3c,4cに付与される圧力を考慮して5mm〜10mmとするのが好ましい。また、フランジ部3c,4cが分担する前記圧力をできるだけ軽減させるために、可動金型保持部材10及び固定金型保持部材13は、フランジ部3c,4cだけでなく段付き部3b,4bにも当接するようにするのが好ましい。
【0024】
[スリット]
固定金型3及び可動金型4には、固定金型固定板2及び可動金型固定板9に面した面側からキャビティ6に向けてスリット20が形成される。このスリット20は、キャビティ6が形成された固定金型3及び可動金型4の径方向領域L(図2参照)内の円周上に形成される。
スリット20は、キャビティ6の径方向に伝送される振動波が節となる部分、つまり、振動方向変換体8と可動金型4とが接触する部分(超音波入力部)を通るX軸線上のキャビティ6の中心から、キャビティ6の径方向にnλ/4(n=1,3,5…)のところであって、キャビティ6の外周縁に最も近い位置に形成するのが好ましい。この位置にスリット20を形成すれば、最大の振動抑制効果を得ることができる。
【0025】
スリット20のキャビティ6の径方向幅Wは10mm以下が好ましく、金型3,4に振動を与えたときにスリット20の対向する開口縁が接触しない程度、具体的には0.1mm以上とするのが好ましい。また、スリット20の深さは、金型3,4の肉厚の半分程度とするのが好ましい。
【0026】
スリット20の形状及び固定金型3及び可動金型4にどのように配置するかは任意である。図3はスリット20の形状及び配置形態を示す金型の平面図である。
図3(a)に示す例では、単一のスリット20がキャビティ6と同心の環状に形成されている。
図3(b)に示す例では、円周を均等分割してなるスリット20が、キャビティ6の同心円に沿って複数配置されている。
図3(c)に示す例では、複数のスリット20が、半径nλ/4(n=1,3,5…)の径の異なる同心円に沿って二列に配置されている。
なお、図3(c)に示す例の場合には、最も内側に位置するスリット20が、nλ/4(n=1,3,5…)を半径とするキャビティ6の同心円に沿って形成されているのが好ましい。
【0027】
スリット20の断面形状は、振動の振幅や金型3,4を形成する金属に応じて適宜に選択することが好ましい。図4(a)に示すように、スリット20の断面形状を上向きコの字状に形成してもよいが、スリット20の底部の角部に応力集中が生じないように図4(b)に示すようなU字状に形成するのが好ましい。また、図4(c)に示すように、スリット20の対向する壁面に傾斜をつけてもよい。
【0028】
キャビティ6に溶融樹脂を供給するノズル1が、固定金型3のスプルー5の入口に接続されている。このノズル1から射出される樹脂としては、光ディスクの製造に使用されるポリカーボネート、ポリメチルメタクリネート、非晶性ポリオレフィンなどの光学系の非晶性熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0029】
[金型開閉時のガイド方式]
射出成形を行う際には、固定金型3及び可動金型4の相対的な位置決めを正確に行う必要がある。型締めの際に固定金型3に対して可動金型4を正確に移動させるには、固定金型3又は可動金型4のいずれか一方に設けられたガイドポスト(又はガイド穴)と、固定金型3又は可動金型4の他方に設けられ前記ガイドポストを挿通するガイドピンとから構成されるガイドポスト方式のガイド手段によるものと、固定金型3又は可動金型4のいずれか一方に設けられた円錐状の穴の中に、固定金型3又は可動金型4の他方に設けられた円錐形のピンを嵌め込むインロー方式のものとがある。
【0030】
本発明者は、後に説明するように、ガイドポスト方式及びインロー方式のうちいずれが振動抑制効果が大きいかを実験を行った。その結果、インロー方式のガイド手段の方が、固定金型側のノズル接続部における振動抑制効果に優れていることがわかった。そこで、この実施形態の金型には、可動金型4の当接面4aに、断面台形状の凸部17をキャビティ6を取り囲む円周に沿って連続形成し、この凸部17が嵌め込まれる断面台形状の凹部18を固定金型3の当接面3aに形成している。
【0031】
凸部17の先端(凸部17が当接面4aから突出する部分)の最大幅は10mm程度にすることができるが、ノズル1が固定金型3に接触する部分の振動の振幅を小さくするためには前記先端の幅を可能な限り小さくすることが好ましく、4〜5mm程度とするのが好ましい。
なお、凸部17はキャビティ6の外側であれば任意の位置に設けることができる。また、固定金型3及び可動金型4のいずれか一方に凸部を設け、他方に凹部を設けるものとしてもよい。
【0032】
[振動方向変換体及び振動子]
可動金型4の油圧シリンダ11を向く面には、中心軸線X上に振動方向変換体8が取り付けられている。振動方向変換体8は、振動入力面から入力した振動を、直交変換して振動出力面から出力することができるものである。この振動方向変換体8を構成する二つの振動体8a、8bのうち、中心軸線Xに直交する一方の振動体8aの端面に振動発生源としての振動子7が取り付けられ、中心軸線Xに平行な振動体8bの端面が可動金型4に接している。振動方向変換体8は、出力側の振動体8bを入力側の振動体8aよりも若干長く形成することが好ましい。このようにすることにより、振動体8aからの入力振動を増幅して振動体8bの端面から出力することが可能になる。
【0033】
なお、振動方向変換体8は、L−L変換体、L−L−L変換体、R−L変換体のいずれの多次元振動方向変換体であってもよい。振動子7の出力は1.2Kw程度のものを用いるとよいが、金型3,4が大型になるような場合は、R−L変換体を用い、この振動入力端に複数、例えば三つの振動子7を取り付けることで、振動子7の総出力を三倍にすることができる。
【0034】
また、振動子7から出力される振動は、金型全体に、縦振動の他に横振動又は前記キャビティの径方向に伝送される径方向振動を発生させるものが好ましい。これらの複合的な振動を用いれば、金型の肉厚を薄くすることができる。
振動子7によって生じさせられる周波数は、1KHz〜1MHz程度でよいが、騒音や振動子の出力を考慮して10KHz〜100KHz程度の超音波を出力するようにするとよい。
また、振動子7から出力される超音波の振幅は、固定金型3又は可動金型4を形成する金属の超音波振動に対する疲労強度に応じて決定される。例えば、ステンレス系の材料を用いた場合の最大振幅は約20μm、ジュラルミンの場合の最大振幅は約40μm、チタン合金の場合の最大振幅は約100μmである。
【0035】
振動子7で生じさせられた振動は、図2で示すように振動方向変換体8で直交方向に変換させられる。この場合、振動方向変換体8と固定金型3との接合部分に振動の共振の腹部が位置するように振動方向変換体8及び固定金型3を位置決めする。また、振動の共振の腹部にキャビティ6を位置させる。このようにすれば、キャビティ6を最大振幅で振動させることができ、溶融樹脂の流れを最適にすることができる。
【0036】
[製品離型手段]
光ディスクのように薄肉で表面に微細な凹凸(ピット)を有する成形品を射出成形する場合には、型開きの際にキャビティ6から成形品がピットずれなどを起こすことなく確実に離型するように、製品離型手段を設けるのが好ましい。
この実施形態では可動金型固定板9に製品離型手段としての突出しピン12が固定され、その先端が、中心軸線Xに沿って振動方向変換体8及び可動金型4を挿通し、キャビティ6まで延びている。この突出しピン12は、キャビティ6内で成形された成形品を突き出して取り出すために、図示しないシリンダによって進退移動自在である。また、突出しピン12はキャビティ6で成形された成形品に穴明け加工を行う場合に、前記シリンダを駆動体とするパンチ機構25により成形品を貫通して突き出される。
【0037】
なお、製品離型手段としては、型開きの際にキャビティ6に出没する上記したような突出しピン12が一般的ではあるが、例えば成形品を直接取り出すロボットハンドなどの他の手段であってもよい。
また、可動金型4を振動させるものであったり、可動金型4の振動とエアブローとの組み合わせによるものであってもよい。振動による離型手段を用いれば、スタンパ15の前記凹凸に抜きテーパーを形成する必要がなくなり、前記凹凸を高密度に形成することが可能になって、大量情報を記録可能なディスクを形成することが可能になる。
【0038】
【実施例】
次に、本発明の第1の実施形態にかかる光ディスク用超音波射出成形金型を用いて行った実験結果を、比較例と比較しつつ説明する。
(1)図1に示す固定金型3及び可動金型4で型開閉時のガイド方式をインロー方式とし、振動子から周波数19.5KHzの超音波を出力した実施例1について各部位の振幅を計測した。その結果、
可動金型の固定部の振幅(垂直方向/水平方向) 0.79μm/0.35μm
固定金型の固定部の振幅(垂直方向/水平方向) 0.25μm/0.11μm
ノズル接続部の振幅 0.42μm
であった。
【0039】
(2)比較例1として、固定金型及び可動金型をスリットを有しない(1)と同様の金型を使用し、ガイド方式をインロー方式として振動子から周波数19.5KHzの超音波を出力させた。(1)と同一部分の振幅を計測した結果、
可動金型の固定部の振幅(垂直方向/水平方向) 1.0μm/10μm
固定金型の固定部の振幅(垂直方向/水平方向) 0.35μm/3.5μm
ノズル接続部の振幅 9.0μm
であった。
前記固定部の水平方向の振幅及びノズル接続部の振幅が大きく、金型からの振動損失がきわめて大きいことがわかる。振動子7は過負荷状態となって発振が停止した。
【0040】
(3)比較例2として(1)と同一の金型を使用し、ガイド方式をガイドポスト方式として振動子から周波数19.5KHzの超音波を出力させた。(1)と同一部分の振幅を計測した結果、
可動金型の固定部の振幅(垂直方向) 1.9μm
固定金型の固定部の振幅(垂直方向) 1.7μm
ノズル接続部の振幅 3.4μm
であった。
ノズル接続部の振幅が(1)と比して約8倍に増加し、このまま成形を行うとノズル1からエアーを巻き込んで成形不良を生じさせるおそれがあった。
【0041】
上記結果から明らかなように、固定金型3及び可動金型4にスリット20を形成し、ガイド方式としてインロー方式を採用することによってキャビティ6の径方向に伝送される振動の振幅を低減させることができ、かつ良好な成形品を得ることができた。
【0042】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態を、図5及び図6を参照しながら説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態にかかる光ディスク用超音波射出成形金型の一部を断面した側面図、図6は、図5の光ディスク用超音波射出成形金型のスリットを設けた部分の拡大図である。
この第2の実施形態では、固定金型3及び可動金型4のスリット20を設けた部分を、支持部材30によって支持している。
【0043】
すなわち、本発明の固定金型3及び可動金型4のように、キャビティ6の形成された領域の背面側にスリット20を形成すると、有効に径方向の振動の振幅を減ずることができるものの、その部分の肉厚が薄くなるため、射出成形時にキャビティ6の内部圧力によって固定金型3及び可動金型4が撓みやすくなる。この金型3,4の撓みは、成形品の肉厚にばらつきを生じさせる原因となることから、この実施形態では、支持部材30によってスリット20を形成した部分を背後から支持して、金型3,4の撓みを小さくしているわけである。
【0044】
支持部材30は、一端が固定金型固定板2及び可動金型固定板9に、ボルトや溶接等によって固定され、他端が、固定金型3及び可動金型4のスリット20の底部20bに当接している。
スリット20の内壁20aと支持部材30との間には、図6に示すように、若干量の隙間が形成され、内壁20aと支持部材30とが接触しないようになっている。前記隙間の幅tは、金型3,4に振動を与えたときにスリット20の内壁20aと支持部材30とが接触しない程度、具体的には0.1mmより大きいのが好ましい。また、金型3,4に振動を与えたときにスリット20の内壁20aと支持部材30とが接触しない範囲内で支持部材30の剛性を可能な限り高く保持させるために、幅tは、0.5mm未満、特に0.3mm未満とするのが好ましい。
【0045】
さらに、支持部材30の材質としては、キャビティ6内の圧力に抗してスリット20を形成した部分の撓みを抑制するのに十分な大きさのヤング率を有し、かつ、固定金型3及び可動金型4の熱膨張率とほぼ同じ大きさの熱膨張率を有するもの(例えば、固定金型3及び可動金型4と同じ材質のもの)であることが好ましい。
支持部材30の熱膨張率が固定金型3及び可動金型4よりも小さ過ぎると、射出成形時に支持部材30の他端がスリット20の底部から離れて、スリット20を形成した部分を十分に支持することができなくなる。また、熱膨張率が固定金型3及び可動金型4よりも大き過ぎると、射出成形時に支持部材30が過大な力でスリット20の底部20bを押して、却って固定金型3及び可動金型4の撓みを大きくする。
【0046】
図7は、支持部材30の配置形態を示す平面図である。
図7(a)に示すように、支持部材30は、スリット20の全体にわたって設けるものとしてもよいが、スリット20を形成した部分に撓みを有効に抑制することができるのであれば、図7(b)に示すように、スリット20に所定の間隔、好ましくは均等間隔で複数(例えば4個)設けるものとしてもよい。
【0047】
【実施例】
以下に、本発明の第2の実施形態にかかる光ディスク用超音波射出成形金型を用いて行った実験結果を、比較例と比較しつつ説明する。
(1)図5に示す支持部材30を設け、固定金型3及び可動金型4の型開閉時のガイド方式をインロー方式とし、振動子から19KHzの超音波を出力した実施例2について、たわみ量の最大値と最小値を計測した。
その結果
金型内圧 5.5MPa
金型の撓み量 最大 7μm 最小 1μ
であった。
(2)実施例2と同じガイド方式で、支持部材を設け、超音波を出力しない場合を比較例3として、たわみ量の最大値と最小値を計測した。その結果を以下に示す。
比較例3(支持部材有り,超音波出力せず):
金型内圧 8.7MPa
金型の撓み量 最大 14μm 最小 2μ
(3)実施例2と同じガイド方式で、支持部材を設けない以外は比較例1と同じである場合を比較例4とし、たわみ量の最大値と最小値を計測した。その結果を以下に示す。
比較例2(支持部材なし,超音波出力せず):
金型内圧 8.7MPa
金型の撓み量 最大 22μm 最小 12μ
以上の比較結果からもわかるように、支持部材30を設け、さらに超音波を印加することで、金型3,4の撓み量を大幅に小さくすることができた。
【0048】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態を、図8を参照しながら説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態にかかる光ディスク用超音波射出成形金型の一部を断面した側面図である。
この実施形態では、可動金型4の近傍に、可動金型4に対面させて支持部材30の取付板35を設けている。この取付板35は、可動金型保持部材10にボルトや溶接等でしっかりと固定されている。支持部材30の他端は、この取付板35に固定されている。そして、第2の実施形態と同様に、支持部材20の一端をスリット20に挿入し、スリット20の底部20bに当接させている。
【0049】
取付板35を可動金型4の近傍に設けることで、可動金型4側の支持部材30の長さを第2の実施形態の支持部材30よりも短くすることができる。そのため、射出成形時における支持部材30の軸線方向の圧縮歪みを小さくして、スリット20を形成した部分の撓みをより小さくすることができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、キャビティの径方向に伝送される振動の振幅を有効に減じて、溶融樹脂の流れを良好に保って転写性を良好に保ち、複屈折や収縮変形の発生を防止することができるとともに、金型からの振動損失を可能な限り防止して金型やノズルを良好に保持することができる。
また、金型に形成したスリットの底部を支持部材で支持させるようにし、かつ、超音波を印加することで型内圧が低減するので、肉厚の減少による金型の撓みの増大を抑制し、肉厚のばらつきの小さい光ディスクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる光ディスク用超音波射出成形金型の概略を示す一部を断面した側面図である。
【図2】図1の金型内を伝送される振動の変位波形を説明する図である。
【図3】スリットの配置形態を示す金型の平面図である。
【図4】スリットの断面形状を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態にかかる光ディスク用超音波射出成形金型の一部を断面した側面図である。
【図6】図5の光ディスク用超音波射出成形金型のスリットを設けた部分の拡大図である。
【図7】支持部材の配置形態を示す平面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態にかかる光ディスク用超音波射出成形金型の一部を断面した側面図である。
【符号の説明】
1 ノズル
2 固定金型固定板
3 固定金型
4 可動金型
5 スプルー
6 キャビティ
7 振動子
8 振動方向変換体
9 可動金型固定板
10 可動金型保持部材
11 油圧シリンダ
12 突出しピン(製品離型手段)
15 スタンパ
17 凸部
20 スリット
20a スリットの内壁
30 支持部材
35 取付板(取付部材)
Claims (13)
- 可動金型及び固定金型と、前記可動金型及び固定金型の当接面に形成されたディスク成形用のキャビティと、このキャビティの底部に配置され前記ディスクの表面に凹凸を形成するためのスタンパ と、射出成形の際に前記キャビティに超音波を付与するため、前記可動金型又は前記固定金型に取り付けられた超音波発生手段とを有する光ディスク用超音波射出成形金型であって、
前記可動金型及び固定金型の前記キャビティが形成された領域の背面側に、前記キャビティの径方向と交差する方向に一つ又は複数のスリットを形成したこと、
を特徴とする光ディスク用超音波射出成形金型。 - 前記キャビティの径方向に伝送される超音波の波長をλとしたときに、
前記超音波が前記可動金型又は前記固定金型に入力する超音波入力部からnλ/4(n=1,3,5…)のところに前記スリットを形成したことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク用超音波射出成形金型。 - 前記スリットを前記キャビティの外周縁から内方に向けて複数列形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ディスク用超音波射出成形金型。
- 前記超音波発生手段は、前記可動金型又は前記固定金型の前記超音波入力部に出力端が連結された振動方向変換体の入力端に設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光ディスク用超音波射出成形金型。
- 前記可動金型及び前記超音波発生手段が取り付けられる振動方向変換体又は前記固定金型のいずれかに、射出成形された製品を前記キャビティから離型させるための製品離型手段を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光ディスク用超音波射出成形金型。
- 前記製品離型手段は、前記スタンパを有する前記可動金型又は前記固定金型を振動させることによって製品を前記キャビティから離型させるものであることを特徴とする請求項5に記載の光ディスク用超音波射出成形金型。
- 前記可動金型及び前記超音波発生手段が取り付けられる振動方向変換体又は前記固定金型には、射出成形された製品の所定部位をパンチングするためのパンチ手段を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光ディスク用超音波射出成形金型。
- 型締め時又は型開き時における前記可動金型及び前記固定金型のガイドを、インロー形のガイド手段によって行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光ディスク用超音波射出成形金型。
- 前記超音波発生手段は、前記固定金型及び可動金型の全体に、縦振動の他に横振動又は前記キャビティの径方向に伝送される径方向振動を発生させることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光ディスク用超音波射出成形金型。
- 前記スリットに支持部材を挿入し、射出成形時に前記支持部材の一端で前記スリットの底部を支持させたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の光ディスク用超音波射出成形金型。
- 前記支持部材と前記スリットの内壁との間の隙間の幅tが、0.1mm<t<0.3mmの範囲内であることを特徴とする請求項10に記載の光ディスク用超音波射出成形金型。
- 前記支持部材の他端が、前記固定金型を固定する固定金型固定部材又は前記可動金型を固定する可動金型固定部材に取り付けられていることを特徴とする請求項10又は11に記載の光ディスク用超音波射出成形金型。
- 前記固定金型又は前記可動金型の近傍に取付部材を設け、この取付部材に前記支持部材を取り付けたことを特徴とする請求項10又は11に記載の光ディスク用超音波射出成形金型。
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